「俺たちは別の世界に転生し三人兄弟として生まれ変わったわけだが」part91

  • 1125/08/11(月) 22:33:23
  • 2125/08/11(月) 22:34:50
  • 3125/08/11(月) 22:41:20

    十まで保守

  • 4125/08/11(月) 22:43:33

    エイッ!!
        ∧,,∧
    ☆二 ⊂(・ω・`)
        -ヽ  と)
         `u-u'

  • 5125/08/11(月) 22:44:36

    因みに明日は未定ですが、出来そうなら続きやります

  • 6二次元好きの匿名さん25/08/11(月) 23:03:12

    保守

    …もしかして周囲を振り回すタイプのマユを唯一振り回せたのがギルバートだったりします?

  • 7125/08/11(月) 23:08:25

    >>6

    そうですね、多分

    ……マユはもしかしたら、惚れた相手には滅法弱いタイプなのかもしれません

  • 8125/08/11(月) 23:24:34

    .〃∩ ∧_∧
     ⊂⌒( ・ω・)
      \_っ⌒/⌒c
        ⌒ ⌒

  • 9125/08/11(月) 23:36:43

    A____A
    |・ㅅ・|
    |っ c|
    |   |
    |   |
    |   |
    |   |
    |   |
    U ̄ ̄U

  • 10125/08/11(月) 23:37:44

    .   ∧_∧
       ( ˘ω˘ )  起床!
       | ⊃ ⊃
      └-⊃~⊃
       
       ||        
      _ _  /(___
    /  (____/ /

  • 11二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 06:20:54

    ほしゅ

  • 12二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 13:32:44

    ほしゅ

  • 13125/08/12(火) 18:53:54

    今日は出来そうにないのでお休みです……

    明日は20:30頃の開始予定です

  • 14二次元好きの匿名さん25/08/12(火) 23:15:01

    お疲れ様です

  • 15二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 08:25:48

    ☆彡

  • 16二次元好きの匿名さん25/08/13(水) 16:04:43

    ほしゅ

  • 17125/08/13(水) 20:52:55

    それでは再開


    ~マユが廃墟の中へと消えて約??時間後~


    気弱な男子「あ、あの子、いつ帰ってくるんだろう?もうだいぶ経ったよね?ま、まさか、もう」

    ギルバート「……」(思わず睨みつけてしまう)

    気弱な男子「ひっ!ご、ごめんなさい……」

    ラウ「ギル、落ち着け。……だが、流石に長いな。だが、下手に動くわけにも――」


    ―そう話していると、急に強い風が吹く。

    ―それは、強いと言っても枝葉や髪をなびかせる程度のものであるが、先ほどまで風など少しもなかったので、状況も相まって妙な気味の悪さを三人は感じる。

    ―そして数秒ののち、カタカタと黒い影が一斉に体を震えさせるとゆっくりと三人の元へと歩き始めた。

    ―しかし、なにか壁のようなもので行く手を阻まれているのか、数歩歩くとぶつかる素振りをする。

    ―そして、見えない壁を確かめるように手で確認したのち、力強く拳を振り上げ、何度も何度も空を打ち付ける。

  • 18125/08/13(水) 21:07:17

    気弱な男子「く、クルーゼくん!あ、あれ!」(黒い影を指さす)

    ラウ「動きだしたな。だが、やはり結界のようなものがあるのか、こちらに近づけないようだ」

    気弱な男子「だ、大丈夫なの?」

    ラウ「……少なくとも、今すぐ敗れるようなものじゃないだろう。だが、問題はなぜ今になって動き出したのかということだな」

    ギルバート「アスカさんに何かあったんじゃないか?」

    ラウ「それかアイツがなにかしたかだな……まったく、多少なら心得はあるとは言ったが、結界と形代以外にも何か残しておけ」

    気弱な男子「な、なんで、なんでこんな目に合わなくちゃいけないんだ……僕は、無理やり連れてこられただけだったのに……」

    ラウ「………」

  • 19125/08/13(水) 21:10:23

    すみません、ちょっと用事が発生したので今日はここまでにします

    明日は未定ですが、やれれば20:30頃からの開始予定です

  • 20二次元好きの匿名さん25/08/14(木) 01:14:03

    ☆彡

  • 21二次元好きの匿名さん25/08/14(木) 08:41:58

    保守

  • 22二次元好きの匿名さん25/08/14(木) 14:54:33

    ☆彡

  • 23125/08/14(木) 20:56:24

    今日もちょっとだけ進めて終わりになりそうです

    それでは再開


    ―急に動き出し、こちらに来ようと必死になる黒い影に三人の緊張と不安が高まる。

    ―ドン、ドン、と見えない壁を叩き続ける影の力が次第に大きくなっているのか、叩く音が大きくなっていく。

    ―それに比例して、一定間隔で周りの景色が歪み始める。

    ―クルーゼは結界の限界を感じ、形代を取り出すとあたりを見渡す。

    ―黒い影が取り囲んでいるが、唯一来た道だけは綺麗に通り道が出来ている。

    ―形代を投げるタイミングをミスすれば終わりだが、それでも逃げずに無抵抗でやられるよりはましだろう。


    ラウ「二人とも、逃げる準備をしろ。合図をしたら――」


    ―そうクルーゼが言いかけると、廃墟の方から大きな音がした。

    ―それは爆発音のようにも、何かが崩れる音にも聞こえる。

    ―そして、大きな音と同時に地面が大きく揺れる。

    ―立てないというほどではないが、バランスを崩すには十分なほどの揺れに、三人はしゃがみこみ、転ばぬように体を支える。

    ―揺れはかなり長く続く。それこそ、地震であればビルが倒壊していても、地盤沈下が起きても可笑しくないだろう。

    ―クルーゼは恐怖を必死に抑え、何が起きたのか冷静にあたりを見渡した。

    ―すると、先ほどまで空を叩いていた黒い影たちが、なぜか苦しみ悶えていた。

    ―悲鳴は聞こえない。しかし、確実に彼らは悲鳴を上げている。

  • 24125/08/14(木) 21:06:42

    気弱な男子「あああああ!!やだ!やだぁ!!死にたくないぃ!!!」(必死で立ち上がり逃げようとするが、揺れで転んでしまう)

    ラウ「落ち着け!くそ、あいつは一体何をやらかしたんだ!」

    ギルバート「……」


    ―ギルバートはしゃがみこみながら、先ほどの大きな音の方をジッと見つめている。

    ―きっと、この揺れもあの音も影たちが苦しむ理由も、彼女が何かした結果なのだろう。

    ―自分は何も知らないから、何をしているのかは検討もつかない。

    ―それでも、いや、だからこそ、不安がよぎる。

    ―彼女は無事なのか?もしかしたら、彼女は。

    ―そう考えたら、自然と体が動いた。

    ―揺れる地面に足を取られながら、彼女が消えた場所に向かって走る。

    ―誰かの静止が聞こえるが、今のギルバートにはそれを聞き入れる冷静さは残っていなかった。

    ―悲鳴を上げ続ける影たちの横を通り、廃墟へと入る。

    ―途端に体が重くなる。廃墟の外に居た時よりも、ここの空気は淀んでいて、とても息がしにくい。

    ―それでも、彼女のことが心配で、息が切れるのも気にせず、必死に走り続けた。

  • 25125/08/14(木) 21:27:22

    ~時を少し遡り、マユ視点~


    ―少女の目の前には、巨大な人が居た。

    ―いや、正確には干からびた人だ。

    ―ずさんな管理で放置されていた六つの肉体を集め、一つにした途端このように巨大化した。

    ―目の前のそれは、神ではないものの、悪鬼そのものと言っても差し支えない。

    ―目の前のそれは、怒り狂っていた。

    ―バラバラにされた上に、長い間封印されていたからなのか、それとも、若い人間に自分の肉体の一部をおもちゃにされたからなのか。

    ―とにかく、煩いぐらいに怒り狂っていた。


    マユ「わお、めっちゃくちゃ怒ってるなぁ」

    酒吞童子『数百年分の恨みもあるから、結構危険なんじゃない?逃げなくていいの?』

    マユ「この程度ならどうにか――わっ」(干からびた手に鷲掴みされて持ち上げられる)

    酒吞童子『あらあら、捕まっちゃったわね』

  • 26125/08/14(木) 21:40:24

    蘇った神「險ア縺輔〓縲よ?繧貞シ?s縺?蜈ィ縺ヲ縺ョ莠コ髢薙r險ア縺輔〓?」

    マユ「何言ってるのかわかんないなー。―――降ろしてよ」


    ―少女がそう言った瞬間、少女を掴んでいた神の手が一瞬にして何かに切り落とされる。

    ―神は痛みに耐えかね咆哮を上げる。

    ―びりびりと空気を揺らし、周囲にある脆くなった木の柱は、それだけで砕けていく。

    ―しかし、少女は何食わぬ顔で地面に着地すると、埃を払う。

    ―そして、よく見れば少女の周囲には白い球状の何かが複数漂っていた。

    ―少女は白い球体を撫でながら微笑む。


    マユ「有難う、助かったよ」

    酒吞童子『無理やり力を使ってるのにお礼を言うなんて、いつも思うけど結構変よね』

    マユ「満更でもないくせにー」

    酒吞童子『ぶっ飛ばすわよ』

    マユ「ごめんごめん。さてと、さっそく再封印するけど、終わるまで時間稼ぎお願いしてもいい?」

    酒吞童子『仕方ないわね。貴女が死ぬと、私も死ぬから今回も協力してあげるわ』

  • 27二次元好きの匿名さん25/08/14(木) 21:57:16

    このレスは削除されています

  • 28125/08/14(木) 21:59:04

    ―少女の周りを漂っていた白い球体が集まり、一つとなる。

    ―そこに現れたのは、銀髪の美しい女性である。

    ―しかし、人間とは違う点があった。それは角。額から生え出ている角は二つあり、片方は折られている。


    ―彼女はかつて、大江山という場所を拠点とし、多くの鬼を引き連れ悪事を働き、京の都を恐怖へと陥れ、最終的には源頼光らに退治されるに至った、酒呑童子という名の妖である。

    ―本来なら現代に居ないはずの妖だが、時に怪異というのは、人々に忘れ去れていなければ、長い年月を経て復活することがままあった。

    ―彼女もその一人である。千年以上の時を経て、彼女は復活を果たしていた。

  • 29125/08/14(木) 22:09:49

    ―そんな彼女がなぜ少女と共にあるのか。

    ―それは、彼女たち二人のみぞ知る秘密であるので今は割愛する。

    ―ともあれ、彼女は少女と契約をしている。折れた角は契約をする際に奪われたものであり、本来の肉体も少女との契約により奪われている。

    ―少女の目の前に居る彼女は、いわば蜃気楼のようなもの。

    ―しかし、千年前に実在した鬼の力はそれでも十分な力を発揮できる。

    ―足止めぐらいなら、何日だって出来るだろう。


    酒呑童子「でも、別にアレを倒してしまっても構わないわよね?」

    マユ「それ、死亡フラグってやつだから止めといたほうが良いよー」

  • 30125/08/14(木) 22:11:22

    と言ったとこで今日はここまでにします。

    明日はお休みです。

  • 31二次元好きの匿名さん25/08/14(木) 23:05:35

    お疲れ様でした

  • 32二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 08:05:39

    ほしゅ

  • 33二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 14:38:02

    保守

  • 34二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 20:56:16

    ☆彡

  • 35二次元好きの匿名さん25/08/15(金) 23:58:15

    保守

  • 36二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 08:15:40

    ho

  • 37二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 15:25:58

    保守

  • 38125/08/16(土) 19:32:59

    今の今まで山奥で書き込めませんでしたが、今日はお休みです……

  • 39二次元好きの匿名さん25/08/16(土) 23:12:42

    お疲れ様です

  • 40二次元好きの匿名さん25/08/17(日) 08:29:36

    保守

  • 41二次元好きの匿名さん25/08/17(日) 17:03:19

    保守

  • 42125/08/17(日) 17:08:14

    今日は19:30頃の予定です

  • 43125/08/17(日) 19:47:11

    それでは再開


    ~??時間後~


    マユ「これがこれで……」(周囲になにかを置いている)

    酒呑童子「ちょっとマユ、まだ終わらないの?」(ひたすら怪異と切り合い)

    マユ「もう少しだからもうちょっと粘ってー。わお、もうぼろぼろじゃん。見た目だけ」

    酒吞童子「こいつ意外と当ててくるのよねぇ。大した傷にならないけど」

    蘇った神「繧医◎隕九→縺ッ髫丞?縺ィ菴呵」輔□縺ェ!」(朽ちた大剣を酒呑童子に振り下ろす)

    酒吞童子「それはそれとして、こっちの攻撃もあまり通らないのは結構面倒だけど。まともにやるとしたら、我慢比べになりそうね。その場合、地の利的にはこの怪異の方が上そうね。で、本当にうまくいくの?」(大剣を軽くいなす)

    マユ「任せなさいって。そろそろ終わるから、頃合いを見て適当に離れてねー」

    酒吞童子「わかったわ」

  • 44125/08/17(日) 20:15:31

    マユ「……よし、これで終わり。酒吞童子!」

    酒吞童子「いつでもいいわ!」(怪異を動けないよう地面に縫い付け、素早くその場から離れる)

    マユ「……今から私は、アナタに酷いことをします。ですが、怨まないでくださいね。恨むべきはアナタの生前の行いです。大丈夫、刑期が終われば解放されます。それが今でなかったというだけの事です」

    蘇った神「縺?¥繧牙ー冗エー蟾・繧偵@繧医≧縺ィ繧ゅ?∵?縺ッ菴募コヲ縺ァ繧ょセゥ豢サ縺吶k!隲ヲ繧√※縺昴?鬥悶r蟾ョ縺怜?縺!!」(暴れまわるが拘束を解けずにいる)

    マユ「アナタをもう一度バラバラにします。ですが、今度は6つではなく3つ。本質たる魂、器たる肉体、そして、それらを繋ぐ精神……。

    本来これはとある宗教の概念から来ているものですが、考えた方自体は、実はこちらの国でも通用するんです。特に人間であれば猶更。アナタは元人間ですがね?」

    蘇った神「縺ェ縲√↑縺ォ繧偵☆繧!繧?a繧!!!」

    マユ「では、さようなら。おそらく、もう会うことは無いでしょう」(手に持っていた何かを地面に落す)

  • 45125/08/17(日) 20:33:05

    ―少女が隠し持っていたものが地面へと落ちると、周囲に設置していた札が一斉に燃え出す。

    ―そして、札を燃やしている炎が規則正しい模様を描きながら、中心にいる怪異に集まる。

    ―炎が完全に怪異に集まると、怪異の体は札のように全身が燃え始める。

    ―かなりの苦痛を伴うのか、怪異の咆哮があたりに響き渡る。

    ―折られ、千切れ、潰れ……。痛々しい音が、咆哮にかき消されながらも、血の匂いを残していく。

    ―耳を塞ぎたくなるような騒音を前に、少女はただ顔色一つ変えずにそれを眺めていた。

    ―しばらくした後、炎は消える。そして、残ったのは禍々しい色をした3つの石だけだった。

  • 46125/08/17(日) 20:55:45

    マユ「あとはこれをいい感じの方角に合わせて祀るだけだけど……疲れたから明日でいいかな?」(3つの石を拾う。因みに石の大きさは手のひら大)

    酒吞童子「良いんじゃない?領域も消えて、あの"妙な影"もあの怪異が封印されたことで消えて……多少穢れが残っているから、霊が寄ってくるだろうけど、少し細工をして帰れば1日だけなら十分持つわ」

    マユ「じゃあ、そうしようか。はあ、疲れたー」(借りてたカバンに石を詰め込む)

    酒吞童子「それじゃ、私は戻るから」(と言って消える)

    マユ「うん、お疲れさまー。はあ、久しぶりにやったから本当に疲れた。これ、帰れるかなぁ」


    ―少女は酷く疲れた顔をしながら、覚束ない足取りで元来た道を戻ろうとする。

    ―しかし、数歩歩いただけで足の力が抜ける。


    マユ「(あ、やば……)」


    dice1d2=1 (1)

    1.そのまま地面に倒れこむ

    2.寸でのところでマユを探し回っていたギルバートが受け止めてくれる

  • 47125/08/17(日) 21:15:00

    ―少女は受け身も取れず地面へと倒れこむ。

    ―幸いにもそこには大きな石などはなく、多少顔面が擦り傷だらけになるが、それでも致命的な怪我を負うことは無かった。


    マユ「(しくじったなぁ……。ここまで体力無くなるのは見れてなかったよ……。まあいいや、1日2日行方不明になるのはいつものことだし)」


    ―しかし、それはここへ来てからは一度も無かったことだ。

    ―きっと、あの優しい施設の職員たちは必至で私のことを探しに来る。

    ―そして、あの少年も。

    ―少女は以前居た施設のことを思い出す。

    ―最初に行方不明となったときはそれなりに心配する職員は居た。

    ―しかし、それを何度も繰り返していくうちに、彼らの表情は心配から蔑みや面倒へと変わっていった。

    ―「構って欲しいだけ」、「どうやっても治らない病気だから、関わるだけ損」。

    ―それでも心配してくれる人は居た。しかし、その人は少女のことを知るや否や、恐怖の顔へと変化した。

    ―「気味が悪い」、「呪われる」。

    ―でも、その方が少女にとって都合が良かった。体質上、どうしても怪異たちと関わらなければならなかったから。

    ―親しい人間が少なければ少ないほど、怪異とどう関わろうが、呪いを受けるのは自分だけだから。

    ―だけど、だからと言って心が痛まないわけではなかった。

  • 48125/08/17(日) 21:20:39

    マユ「(嫌だなぁ、って思うのは、多分贅沢なんだろうなぁ……)」


    ―意識が徐々に薄らいでいく。

    ―完全に意識を失う前に、誰かの声が聞こえて来た。


    マユ「(だ、れ……?)」


    ―ほとんど開いていない目を声がする方へと向ければ、誰かがこちらに駆け寄ってくる。

    ―それは、とても見覚えのある姿。少女が心の支えにしている人の姿であった。

    ―しかし、少女はそれを意識を失う前の幻覚だと断定し、そのまま意識を手放した。

  • 49125/08/17(日) 21:35:08

    ~病院~


    マユ「……?(消毒液の匂い?)」

    ギルバート「アスカさん!?」

    マユ「はえ?なんでヤマトくんが?というか、ここ何処?」

    ギルバート「病院だよ。あの後、廃墟の中で倒れてる君を見つけて、一向に目を覚まさないから救急車を呼んだんだ。……それから2日、その間君はずっと意識を失ってたんだよ」

    マユ「え、2日ぁ!?うわぁ、やらかしたぁ……ねえ、ヤマトくん。私が借りてたカバンってもう持ち主に返しちゃった?」

    ギルバート「返したけど……」

    マユ「中身事?」

    ギルバート「中身はあの廃墟に置いて来たよ。ラウが危険なものだから置いて行ったほうが良いと言ってね」

    マユ「……持ち帰られてるよりいいかぁ」(と言いながら、起き上がってベッドから降りようとする)

    ギルバート「何をしてるんだ!」

    マユ「何って、あの場所へ戻るの。さっさとやることやっちゃわないと大変なことになるしね。(未来が一切見えてないから凄く不安なのが一番の理由だけど)」

    ギルバート「駄目だ!目覚めたばかりなんだから大人しくするんだ!」(グイッとマユをベッドに戻す)

    マユ「ちょっと、離してよ!!」

  • 50125/08/17(日) 21:41:18

    ギルバート「離したら抜け出そうとするんだろ!だったら離さない!」

    マユ「別に何ともないんだからいいでしょ!」

    ギルバート「2日も意識不明だったのに何ともないわけないだろ!!」

    マユ「あるの!!」

    イアン「お前ら、他の患者もいるんだから、病室で大声出すなよ」(いつの間にか部屋の前に居た)

    ギルバート「す、すみません……」

    マユ「い、イアンさん……」

    イアン「マユ、おそよう。大声出すぐらい元気でよかったよ。とりあえず、医者呼ぶから見てもらえ。わかったな」

    マユ「……」

    イアン「返事は?」

    マユ「……はい」

  • 51125/08/17(日) 21:48:10

    ~色々と検査してもらった後、問題なしということで即刻退院になった~


    イアン「よかったな、すぐ帰らせて貰えて」

    マユ「……うん」

    イアン「事情は粗方坊主たちから聞いてる。元気みたいだから、帰ったら速攻で説教だ。いいな」

    マユ「……はい」

    イアン「坊主、俺たちはこれからまっすぐ施設に帰るが、今日は話した通り説教があるんでな。用事があるなら明日以降にしてくれ」

    ギルバート「わかりました。それじゃあアスカさん、お大事に」

    マユ「……」

  • 52125/08/17(日) 22:04:01

    ~道中、車の中~


    マユ「……イアンさん、どこまで聞いてるの?」

    イアン「ん?何がだ?」

    マユ「今回の事。ヤマトくん達から聞いてるんでしょ?」

    イアン「ああ、それな。熱中症かなにかで急に倒れて救急車呼んだって聞いたよ。施設を出て1時間、あの廃墟で一体何をやってたのかは聞けなかったがな」

    マユ「……」

    イアン「……お前の失踪癖については事前に聞かされてたから驚きはしてない。たまに意識不明で見つかることもな」

    マユ「……ごめんなさい」

    イアン「それは何に対してだ?」

    マユ「……色んなこと」

    イアン「……たく、お前さんは本当に面倒くさいガキだよ。話したくないなら深くは聞かないからな。だが、これだけは覚えておけよ。お前がどう思っていようと、誰かには必ず心配かけてるってことをな」

    マユ「……」

    イアン「心配すんな。これでもこの職について長いんだ。"そういう"ガキは何度も見て来た。薄気味悪かろうとなんだろうと、休める場所ぐらいは用意してやるさ」

    マユ「え?イアンさんってそういうの信じる系の人だったの?」

    イアン「いや?普段は信じねえよ。ただまあ、同じ世界を見ているようで、違う世界を見ている奴なんか、世の中にはごまんといる。ただそれだけだよ」

    マユ「……そっか。有難う」

    イアン「それはそれとして、今後も同じことやれば説教するからな。今日もこれだけで済むと思うなよ」

    マユ「えぇ?そこは無しって流れじゃん……」

    イアン「言っただろ?それはそれ、これはこれって」

    マユ「むぅ」

  • 53125/08/17(日) 22:11:49

    ~施設、マユの部屋~


    マユ「あ”-、疲れたぁ!病み上がりなのに、イアンさんたちの説教長すぎだよぉ。もうちょっと加減してよぉ」

    酒吞童子『いいじゃない別に。3日間ご飯を抜かれるよりましでしょ?』

    マユ「それはそう。ま、別に抜かれたところでって感じではあるんだけどねぇ」

    酒吞童子『それで、今日は行くの?行かないの?』

    マユ「……今日は大人しく施設に居ます。その代わり、酒呑童子はあそこに行って石がちゃんと残ってるかどうか確認してきて。ついでに取られないように見張りよろしく」

    酒吞童子『どうせ拒否出来ないだろうから素直に行ってくるわ。明日必ず後処理しなさいよ』

    マユ「はーい」

  • 54125/08/17(日) 22:13:12

    今日はここまでにします

    明日は未定です

  • 55二次元好きの匿名さん25/08/17(日) 23:10:23

    お疲れ様でした

  • 56二次元好きの匿名さん25/08/18(月) 08:53:02

    保守

  • 57二次元好きの匿名さん25/08/18(月) 18:16:37

    ほし

  • 58125/08/18(月) 19:22:37

    連絡が遅れてしまいましたが今日はお休みです

  • 59二次元好きの匿名さん25/08/18(月) 23:23:05

    お疲れ様です

  • 60二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 07:56:33

    保守

  • 61二次元好きの匿名さん25/08/19(火) 16:51:50

    ほしゅ

  • 62125/08/19(火) 18:52:09

    今日もお休みします

    明日明後日あたりにはやりたい……

  • 63二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 01:42:18

    ☆彡

  • 64二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 10:56:04

    保守

  • 65125/08/20(水) 18:54:58

    今日もお休みします……
    明日、明後日には再開します

  • 66二次元好きの匿名さん25/08/20(水) 23:46:09

    ☆彡

  • 67二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 08:55:08

    ほしゅ

  • 68二次元好きの匿名さん25/08/21(木) 18:12:17

    ほしゅ

  • 69125/08/21(木) 18:37:32

    今日もお休みします……

    明日はやります。明日はやります。(素振り)

  • 70二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 00:09:32

    保守

  • 71二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 08:47:44

    ほしゅ

  • 72二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 18:00:31

    ☆彡

  • 73125/08/22(金) 18:44:03

    今日は20:30頃の再開となります

  • 74125/08/22(金) 20:34:49

    それでは再開


    ~それからさらに時が進み、秋~


    ―放課後の学校近くの公園にて


    マユ「………」(今しがた凶悪な悪霊を除霊してきたばかりなのでちょっとボロボロ)

    ギルバート「………」(また無茶をして疲労困憊で倒れそうになってたマユを見つけ保護した)

    マユ「……君も飽きないね」

    ギルバート「それはこっちのセリフだよ。夏のあの事件以降、こういうことをし過ぎじゃないかな?イアンさんが心配していたよ?」

    マユ「病院送りになるのは避けてるから安心してって伝えて置いて?」

    ギルバート「自分で伝えなよ。どう返されるか分かってると思うけど」

    マユ「…………」

  • 75125/08/22(金) 20:43:59

    マユ「いや、それよりも。毎回君はどうやって私を見つけてくるの?君って霊媒体質ってだけだよね?」

    ギルバート「さあ?よくわからないけど、あれ以来なんとなくならわかるようになったというか……」

    マユ「もはやストーカーの域だよね」

    ギルバート「ストーカーと一緒にされるのは、なんか不名誉だね……」

    マユ「実際そうでしょ……」

    ギルバート「でも、君はなんだかんだで僕のことを受け入れてくれてるんだね」

    マユ「なんでそうなるのさ」

    ギルバート「嫌ならもっと上手く逃げてるだろ?というかこれ、何回目のやり取りかな?」

    マユ「…………さあ?」

    ギルバート「……あんまり無茶なことはしてほしくないんだけど」

    マユ「残念ながら無理です。諦めてください」

    ギルバート「ならせめて、無傷かつ体力もかなり残ってる状態で帰ってきてほしいな」

    マユ「無茶な注文過ぎるなぁ……」

  • 76125/08/22(金) 20:50:38

    ギルバート「ところで、今日はそのまま帰るかい?それとも、少し寄り道してなにか食べていくかい?」

    マユ「dice1d2=2 (2)

    1.そのまま帰りますー

    2.白いタイ焼き奢って

  • 77125/08/22(金) 20:57:10

    ギルバート「わかったよ。いつもの場所に来てるか分からないけどね」

    マユ「絶対やってるので大丈夫ですー」

    ギルバート「そう」


    ~移動販売のタイ焼き屋の前~


    ギルバート「君の予言はいつも当たるね」

    マユ「へへーん。私は勘のいい女なのです」

    ギルバート「その勘の良さで、悪いことに首を突っ込まないようにもして欲しいけどね」

    マユ「ワタシ、カンノワルイオンナナノデムリデスネー」

    ギルバート「都合よく勘が悪くなるね」

  • 78125/08/22(金) 21:09:43

    ギルバート「そうだ。今月のハロウィンの準備には、ラウと○○さん(いじめられっ子の人)が手伝いに行きたいと言っててね。確認を取りたいんだけど、今日は職員の人達は都合が付きそうかな?」

    マユ「大丈夫だよ。それにしても、その二人もよくうち(施設)に来るようになったね」

    ギルバート「ボランティア活動はいいことだからね」

    マユ「それはそう。だけど、約一名はボランティア目的じゃなさそうなのがねぇ」

    ギルバート「それは一体誰の事かな?」

    マユ「しらばっくれるのへたくそだね、ちみ」

  • 79125/08/22(金) 21:16:27

    ギルバート「……そろそろ帰ろうか。丁度用もあるし、施設まで送るよ」

    マユ「荷物持ちしてくれるならいいよ?」

    ギルバート「はいはい」(マユの荷物を持つ)

    マユ「いいんかい」

    ギルバート「良くなかったかな?」

    マユ「……いや、全然?」

    ギルバート「そう。ならよかった」

  • 80125/08/22(金) 21:22:56

    ~その日の夜、夕食中~


    施設の子供5「マユちゃん、それでなんで付き合ってないの」

    マユ「付き合うつもりが無いからでーす」

    施設の子供5「いやいや、傍から見たら付き合ってるじゃん。マユちゃんも満更じゃないんでしょ?」

    マユ「………」(目をそらす)

    施設の子供5「何が不満なの?凄くいい人に見えるのに」

    マユ「……べつに、不満とか、そいうのじゃなくて」

    施設の子供5「……やっぱり施設育ちっていうのが気になっちゃうとか?でも、ボランティア活動はしっかり真面目にしてくれてるし、施設の子たちや大人たちとも仲良くやってて問題一つ起こしてないから、そんなの気にしないと思うんだけど……まあ、不安なのはちょっとわかるけどね」

    マユ「育ちで人を判断する人とはそもそも距離を置くから大丈夫だよ。というか、そんなこと言うってことは、もしかして学校で何か言われてるんじゃないの?大丈夫?」

    施設の子供5「そういうわけじゃないけど……って、話しをそらさないでよ!」

    マユ「えー、別にそらしてなんかないよー(棒)」

    施設の子供5「そらしてるじゃん!」

  • 81125/08/22(金) 21:31:43

    施設職員1「こらそこ!喋ってないで早く食べちゃいなさい!」

    二人「「はーい」」


    ~マユの部屋~


    マユ「……酒吞童子ぃ」(ベッドにダイブして突っ伏している)

    酒吞童子『なによ』

    マユ「そんなに付き合ってるように見えるのかなぁ……」

    酒吞童子『そうなんじゃない?』

    マユ「……こんなはずじゃなかったのに」

    酒吞童子『いい加減諦めたら?吹っ切れると楽よ?』

    マユ「そうだねぇ……酒呑童子みたくいっそのこと開き直った方が楽だよねぇ……」

    酒吞童子『なんでそこで私を引き合いに出すのよ』

    マユ「でも、お父さんお母さんとの約束破りたくない……」

    酒吞童子『約束?』

    マユ「………何でもない」(ふて寝する)

  • 82125/08/22(金) 22:04:26

    ~ハロウィン準備期間~


    施設職員1「今日は手伝ってくれてありがとうね。ハロウィン時期は大したことはやらないんだけど、それでも準備が大変だから助かるよ~」

    ラウ「いえ、その為に着ているので」

    気弱な男子「あ、あの、これってどこに置けば……」

    施設職員2「それはそっちだね」

    気弱な男子「わ、わかりました」

    ギルバート「あの、この飾りなんですけど、ほぼ全部どこかしら壊れてますね……」

    イアン「マジか。去年雑に片付けすぎたか……しゃーない、今年は新しいの買うか」

    マユ「みんな忙しそうだねー」(下の子たちの勉強に付き合ってたが、休憩するために抜け出してきた)

    イアン「暇なら手伝え」

    マユ「暇じゃないですー。少ししたらまた戻りますー」

  • 83125/08/22(金) 22:10:32

    ラウ「冷やかしに来たならさっさと戻ってくれないか?」

    マユ「ちょっと覗きに来ただけなのに酷いなー……あれ、ヤマトくん、今日どこか変なところ行ってきたの?」

    ギルバート「?いいや、今日は寄り道せずに来たよ。施設に来てからもずっと倉庫とここを行き来してるだけだから、変な場所に行った覚えはないね」

    マユ「ふーん?」

    ギルバート「?」

    ラウ「……(おい、なにか見えてるのか?)」(マユにコソコソと耳打ち)

    マユ「(見えてないの?)」(同じく)

    ラウ「(ああ)」

    マユ「……」

  • 84125/08/22(金) 22:15:31

    ―私は改めてヤマトくんの方を見た。

    ―ヤマトくんには、今朝は見かけなかった黒い靄のようなものが体中に纏わりついていた。

    ―これが何なのか、しばらく分からなかったけど、じっくりと考える時間を取れば、すぐに思い出せた。

    ―これは、かつて両親にもまとわりついていた霧だ。

    ―そして、霧の正体は死相。

    ―つまり、ヤマトくんは近い将来、この世を去ることになるということだ。

  • 85125/08/22(金) 22:16:35

    今日はここまでにします

    明日は19:30頃の予定です

  • 86二次元好きの匿名さん25/08/22(金) 22:20:01

    お疲れ様です!
    何やらヤマト君がかなり不穏なことに...

  • 87二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 08:09:39

    保守

  • 88二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 17:16:02

    ☆彡

  • 89125/08/23(土) 19:40:22

    それでは再開


    ~その日の夜、マユの部屋にて~


    マユ「………」(もう何時間もベッドの上で座り込んで考え事をしている)

    酒吞童子『いつまで考えるつもりなのよ。死相が出てるなら、もう助からないんじゃないの?』

    マユ「死相にも段階があるの。一番ましなのだと、後ろから微かに靄が出てる感じのは、原因を取り除いたら無くなるの。今回のヤマトくんは、それよりも少し進行してるけど原因さえ取り除ければ助かる可能性はあるよ」

    酒吞童子『あらそうなの。ところで、一番最悪なのは何かしら?』

    マユ「……一番最悪なのは、死相の霧が濃すぎて顔が見えなくなってる状態。そうなってしまうと、何をやってもその人はシぬ。そして、死相って言うのは原因を取り除かずに放置していると、いずれはそうなってしまうの」

    酒吞童子『なるほどね。なら、どうするの?今の関係を解消したいなら、むしろ放置してた方が、貴女にとっては都合がいいんじゃないかしら?』

    マユ「そんなことは……どんな人間でも、助けられるのに助けないのは流石に後味悪いから助けるよ。でも、その助ける方法がね……」

    酒吞童子『難しいの?』

    マユ「難しいって言うか、わからないの。前に話したよね?私はヤマトくんの未来は見れないって。今回、それがネックになってるの」

    酒吞童子『ああ、なるほどね。いつもなら、未来を見て一発で解決方法を見つけ出せるけど、今回はそれが出来ないと』

    マユ「いつもどれだけ未来視に依存してたかがよくわかるよ……とりあえず、クルーゼくんも巻き込んで、解決方法を探さないと」

  • 90二次元好きの匿名さん25/08/23(土) 19:49:16

    このレスは削除されています

  • 91125/08/23(土) 19:51:06

    酒吞童子『といいつつ、今日は悩むだけで終わるのね』

    マユ「本当に未来が見れないのか確認するために瞑想してただけだよ……」

    酒吞童子『その結果、迷走してたと』

    マユ「……酒呑童子もおやじギャグなんて言うんだね」

    酒吞童子『おやじギャグって言い方やめないさいよ』

    マユ「じゃあ、なんて言えばいいの」

    酒吞童子『普通に言葉遊びでいいでしょ』

    マユ「言うほど言葉遊びかなぁ……」

  • 92125/08/23(土) 20:13:22

    ~次の日、学校にて~


    ラウ「事情は分かったが、俺は具体的には何をすればいいんだ?」

    マユ「私が未来視出来るっていうの、随分あっさり信じるんだね?」

    ラウ「質問を質問で返すな……。別に持ってても可笑しくないと思ってたんだ。先読みをしているような行動ばかりしていたからな。むしろ、未来視があるのであれば納得だ。けど……」

    マユ「けど、なに?」

    ラウ「なんでギルの未来だけ見れないんだ?」

    マユ「さあ?わかったら苦労しないんだけど」

    ラウ「それはそうか……とりあえず、登下校ではいつも以上に車に気を配らなくてはな」

    マユ「あとは、買い物なんかも気を付けなきゃね。一応、ヤマトくん以外に死相は出てなかったら、施設がどうにかなる感じではないと思う。というか、その場合だとヤマトくんの生死はともかく、他の人のものは見れるんだけども」

    ラウ「なら、事故の可能性が高いのか」

    マユ「もしくは誰かに恨まれてコロされるとか?クルーゼくんは何か心当たりないの?」

    ラウ「アイツに限ってそれはないだろ」

    マユ「わからないよ?逆恨みって言うのがあるし、たまに訳の分からない理由で恨んでくる人も居るから」

    ラウ「それなら猶更わからないな」

  • 93125/08/23(土) 20:27:59

    気弱な男子「ね、ねえ、何話してるの?」

    ラウ「ん?いや、別に大したことではないんだが」

    マユ「ちょっとヤマトくんの周り?が変な感じだからクルーゼくんに相談してたの」

    気弱な男子「や、ヤマトくんが?変な感じって、えっと、また幽霊?」

    マユ「そうじゃないと思うけどなぁ。君はなにか知らない?」

    気弱な男子「く、クルーゼくんがわからないことを僕が知ってるわけないよ……」

    マユ「だよねー」

    気弱な男子「……あ、でも」

    ラウ「でも?」

    気弱な男子「以前、ボランティア終わりにたまたま方向一緒になったから二人で帰ってたら、dice1d2=2 (2)

    1.変な女の子に話しかけられたことはあるよ

    2.何かに引っ掛かってこけたことはあるかな?引っかかるようなものなんて何もなかったんだけどね

  • 94125/08/23(土) 20:33:55

    マユ「……因みにどこで引っかけたか分かる?」

    気弱な男子「ど、どこだったかな……いつもの道じゃなかったことだけ覚えてるんだけど……」

    マユ「そっか、有難う」

    気弱な男子「や、役に立てたなら嬉しいよ」

    マユ「うん。あ、そうだ。今日はボランティアには来れないんだっけ?」

    気弱な男子「う、うん。病院の予約があるから」

    マユ「そっか。なら、気を付けてね」

    気弱な男子「……え?も、もしかして、僕なにか憑いてるの!?」

    マユ「あ、ごめん。何もないから安心して?」

    気弱な男子「そ、そっか……」

  • 95125/08/23(土) 20:43:19

    ~気弱な男子が去って~


    ラウ「……そういえば、彼のことも見えてたから、あのような助言をしていたのか?」

    マユ「ん?ああ、そうだよ。彼っていじめ以外にも抱えてる問題があったからね。それを一学生でしかない君が背負うのは無理がある話だったでしょ?」

    ラウ「そうだな……」

    マユ「碌でもない大人が居るのは確かだけど、だからと言って子供だけでなんでも解決できるわけでもないんだから、せめて専門家には頼るべきだよ」

    ラウ「……わかってるつもりだったんだけどな。今後は気を付ける。とはいえ、あそこで助けない理由にもならないんだけどな」

    マユ「私が助けなかったのは、君がどうせ止めるからってのが分かってたから、止めなかっただけだよ?」

    ラウ「(それにしてもじゃないか?)」

    マユ「それよりも、さっき行ってた帰りの話が気になるね……場所は聴き出せなかったけど、探る方法はあるから試してみようか」

  • 96125/08/23(土) 20:48:00

    ラウ「普通にギルに聞けばいいんじゃないのか?」

    マユ「まあ、そうなんだけど、あの様子だとヤマトくんのほうも覚えて無さそうだし……」

    ラウ「それは確かにそうだな……」

    マユ「とはいえ、ヤマトくんは呼ぶんだけどね」

    ラウ「……何をするつもりなんだ?」

    マユ「普段使わない方法で探るだけだよ。……いつも未来視に頼ってるから忘れるんだよね、この方法」

    ラウ「?」

  • 97125/08/23(土) 21:11:41

    ~放課後~


    ギルバート「……えっと、これはなに?」(何かのお札を張り付けられてる)

    マユ「んー?縁を可視化する術ってやつだよ。これで、君が誰と縁が繋がってるかわかるんだ。一応、こういうことしなくても見れはするんだけどさ、力む必要があるから疲れるんだよねぇ。と、これでいいかな?それじゃあ始めるね」(何かを唱える)


    ―少女が唱え終わると、ギルバートの周りに様々な色の糸がふわふわと浮かぶ。その中に、ひと際黒く異彩を放つ糸が一本繋がっていた。


    ラウ「縁が糸と表現されることは知っていたが、ここまではっきりと糸のようなものだったんだな」

    マユ「可視化するうえでわかりやすくそう見せてるだけだから、実際に糸ってわけじゃないけどね。……それにしても、こういう悪い縁は分かりやすくて助かるよ」

    ギルバート「……この糸は縁、というものなの?」

    マユ「うん。運命の赤い糸とか、そういうので表現される縁だよ。で、どういう繋がりかで色が決まるんだ。例えば黒色は悪い縁、とかね?」

    ギルバート「今まさに見えてるそれだね……」

    マユ「何か覚えは?」

    ギルバート「全くと言っていいほどないんだけど……」

    マユ「そう、じゃあこれを切れば万事解決!……したいところなんだけど、道具もないし、そもそもここまで絡まってると、他の縁も切りそうで怖いな……」

    ラウ「なら、直接怪異と相対したほうが良いのか」

    マユ「だねぇ……」

  • 98125/08/23(土) 21:31:11

    ギルバート「……また危険なことをするつもりなのかい?」

    マユ「危険になるかどうかは行ってみない事にはわからないなぁ」

    ギルバート「なら僕も同行するよ。いつ君が倒れるかもわからないし」

    ラウ「おい、馬鹿なことはよせ。今回ばかりはシぬかもしれないんだぞ」

    ギルバート「そうかもしれないけど……」

    マユ「ヤマトくん、今回ばかりは我慢してくれないかな?君と縁を繋いだ相手は、ただ一瞬会っただけの君にこれだけ太い縁を結んでる。これは、それほどまでに強い怪異である可能性が高いってことなんだ。そうなると、怪異に近づくだけでよくない影響が出ても可笑しくないんだよ」

    ギルバート「でも……」

    ラウ「安心しろ。こいつの事なら俺がよーく見ておく。倒れたらすぐにでも救急車を呼んでやるさ」

    ギルバート「………」

  • 99125/08/23(土) 21:40:25

    マユ「話はまとまったね。それじゃあ、最後に髪の毛何本か貰っておくね」(許可なく髪の毛を5,6本抜く)

    ギルバート「いっ!い、いきなり何をするんだ!?」

    マユ「形代とこの黒い縁を追う為の道具を作るために必要だから我慢して—」

    ギルバート「だからっていきなり抜くのはどうかと思うよ……」

    マユ「よいしょ、よいしょ……よし、出来た。はいこれ。とりあえず持っておけば、目くらまし程度にはなるから」(聞いてない)

    ギルバート「あ……うん……」

    マユ「それにしても、ヤマトくんたちは髪が長くて助かるなぁ。こういうの作る時って、ある程度の流さないと出来ないのに、男性は大体短く切っちゃうせいで、作りづらいんだよねぇ」

    ギルバート「そうなのかい?」

    ラウ「まあ、確かにそうではあるが……そもそも、それは古いやり方で、今は別の方法で作れるはずだから問題ないと聞くが」

    マユ「それはそうだけど、私は古い方法の方が相性いいの」

  • 100125/08/23(土) 21:59:26

    マユ「じゃ、イアンさん達には学校の用事が長引きそうだからって言っておいてねー」

    ギルバート「……わかった」


    ~学校を出て近くの図書館へ~


    マユ「んー、ここも違うかぁ」(周辺の地図を広げて、ギルバートの髪の毛と5円玉で作ったダウジングで調べてる)

    ラウ「もう少し縮尺が大きい地図が必要なんじゃないか?」

    マユ「とは言っても、ここらへんの地図で縮尺が大きいのはこれ以外だとないし……仕方ない、歩き回って探すかぁ」

    ラウ「手分けをするか?」

    マユ「いや、すぐ連絡が取れる手段がないから止めよう。私たち、携帯持ってないしね」

    ラウ「確かにそうだな……こういう時の為に買ってもらうべきか?いや、どちらにせよお前が無理なのか」

    マユ「トランシーバーって手もあるけど、値段的に現実的じゃないね……」

    ラウ「大人ならこういう悩みを解決できそうなんだけどな……」

    マユ「だねぇ……」

  • 101125/08/23(土) 22:05:07

    マユ「……あ、ヒットした」(ダウジングが特定の場所で激しく回る)

    ラウ「ここは……地図では空き地になってるな」

    マユ「ここ、確か荒れ放題だけど売り地に出されてない土地だね。前、地形を把握するために街を練り歩いた時に見かけたよ」

    ラウ「ということは誰かが管理してる土地なのか」

    マユ「多分そうだと思う。わからないけどね」

    ラウ「とりあえず行ってみるが……着いたら俺はどうしたらいい?」

    マユ「そうだなぁ……巻き込まれないようにある程度離れた場所で待機しててほしいかな。細かいところは着いたら説明するね」

    ラウ「わかった」

  • 102125/08/23(土) 22:06:42

    と言ったところで今回はここまでにします

    明日も同じく19:30頃の開始となります

  • 103二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 00:20:21

    お疲れ様でした

  • 104二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 08:45:44

    ☆彡

  • 105二次元好きの匿名さん25/08/24(日) 17:08:43

    ほしゅ

  • 106125/08/24(日) 19:41:30

    それでは再開


    ~空地へ~


    ラウ「確か地図ではこのあたりだったはずだが……」

    マユ「あ、あれだね」(指をさして教える)

    ラウ「あれか。それで、俺はどうすればいい?」

    マユ「その前に、ここからでもなにか見えてるとかない?」

    ラウ「?ないが」

    マユ「そっか……実は私もなんだ。妙な気配も感じないし……とりあえず、これ持っておいて」(一本の紐を渡す)

    ラウ「これは?」

    マユ「安全帯みたいなもの?いや、命綱かな。この紐が勝手にピンと伸びたら思いっきり引っ張って」

    ラウ「わかった」

    マユ「それじゃあ行ってくるね」

  • 107125/08/24(日) 19:46:34

    マユ「(何が出るかなぁ~)」

    酒吞童子『一見すれば何もないように思えるけど』

    マユ「(そうなんだよねぇ。異界ないしは神域の入り口があったり、領域が展開されてるかのどちらかかと思ったんだけど、それもぱっと見は無さそうに見えるんだよねぇ。これで実は本体は移動してて、反応したのがちょっとした残り香程度だったら、また探さなきゃいけなくなるから面倒だなぁ)」











    マユ「……およ?」(いつの間にか空き地を通り過ぎてる)

  • 108125/08/24(日) 19:51:17

    酒吞童子『あら、いつの間に通り過ぎたのかしら?』

    マユ「……スッー。戻ってみようか」











    マユ「……戻ってきちゃった☆」(またいつの間にか空き地を通り過ぎていた)

    ラウ「戻ってきちゃった、じゃないだろ。一体何が起きてるんだ?」

    マユ「んー、考えられるのは無意識を利用した結界で阻まれてるとか、もしくはあの部分だけ空間がゆがめられてるかだね……ちょっと作戦変更したほうが良いかもしれない」

    ラウ「作戦変更?」

    マユ「うん。少し座れるところに移動しよう。確か近くに公園あるはずだから」

    ラウ「わかった」

  • 109125/08/24(日) 20:20:45

    ~近くの公園へ~


    ラウ「次はどうするんだ?」

    マユ「まずはどっちなのか調べるところからかな。歪められてる方だと、現状私たちには手出しできない存在だから、そっちじゃないことを祈るしかないね……」

    ラウ「そうなのか?」

    マユ「自在に地殻変動起こせますよーってことだもの。あ、実際に地殻変動起こしてるわけじゃなくて、これは例えみたいなものね?異界や領域って、要するにもうそこに存在してる土地に家作ったみたいな状態の事なんだけど、空間を歪めるって言うのは、地殻変動を任意で起こすようなもので、”誰でも出来ることじゃない"だよね」

    ラウ「異界……領域……」

    マユ「あ、そこまでは知らないか」

    ラウ「生憎な……」

    マユ「ま、知らなくても大丈夫だよ。後半の事さえ理解してくれればいいから」

    ラウ「……とにかく、かなりの力を持つ者でないと、空間を歪ませることが出来ないということか?」

    マユ「うん。例外的に、力が弱くても空間に干渉することに長けた怪異も存在するけどね。そっちはそっちで、こっちじゃ干渉できない場所から攻撃してくるから厄介なんだよね……」

    ラウ「なるほど……なら、目くらましてあって欲しいな。それで、どうやって調べるつもりだ?」

    マユ「目くらましの結界の場合は、結界の媒体になってるものも見つかりづらくなってるんだけど、実はちゃんと意識してると途端に発見しやすくなるデメリットがあるの。とはいえ、ただ見つけようって思ってるだけじゃ無理だから、補助は必要だけどね」(と言いながら、紙に何かを書いてる)

  • 110125/08/24(日) 20:39:55

    ラウ「それが補助なのか?」

    マユ「うん。見つけたいものが近くにあると反応してくれる術式。こうやって紙に書いておくと、反応したら燃えて教えてくれるの。あとは、反応したあたりを見て、怪しいものがあったらそれが結界の媒体になってる奴ってことになるね」

    ラウ「その結界の媒体は具体的にどういったものなのか知りたいんだがな……」

    マユ「ミッ〇!とかサイゼ〇アの間違い探しとか、そういう感じのものを想像すればいいよ。直感的に、あ、これなんか変って思うから」

    ラウ「……まあ、とりあえずは探してみよう。反応しなかったらどうするんだ?」

    マユ「それはもう、覚悟決めて相手が行動起こしてヤマトくん襲いに来るまで待機だよ。……最悪、ヤマトくんを諦めなきゃいけないからそのつもりでいて」

    ラウ「……………」(マユを睨みつける)

    マユ「仕方ないよ。こればかりは私にはどうすることも出来ないから……あ、探しに行く前に、もう一つ用意するものがあるから、ちょっと取りに行くね」

    ラウ「あ、ああ。何を取りに行くんだ?」

    マユ「怪異を祓えない場合に備えて、一応縁切り用の道具は持っておきたいなって。本当は無くても大丈夫かなぁって思ってたんだけど、油断するとダメそうだし、念には念を入れ様かなって」

    ラウ「そうか……初めから用意していれば、あの場で切って終わりだったのでは?」

    マユ「他の縁も切っちゃうから駄目。絡まったものをほどいたところで、そこまで精度よく切れないやつだから。視覚で見えていた以上に、アレって凄い繊細なものなんだよ?普通の糸と同じように考えちゃ駄目」

    ラウ「なるほど……」

    マユ「まあ、今から使おうとしてるものは、手軽に誰でも使えるものではあるんだけどね。その分精度が終わってるのがとーっても不便」

    ラウ「逆に言えば、精度のいいものもあるのか」

    マユ「有名な縁切り神社あるでしょ?あそこがそうだよ。まあ、あれはあれで、精度良すぎてってのがあるけど」

  • 111125/08/24(日) 20:58:28

    ~道具を取りに行って戻り、結界の媒体探し~


    マユ「さてと、これで見つかってくださーい。ほんと、マジで」

    ラウ「……ところで、縁切りの道具を隠していた場所なんだが、なぜ自分の部屋に置いておかないんだ?」(人気のない場所に隠された)

    マユ「だって、いつ誰が使っても可笑しくないからさ。見た目普通の鋏でしょ?これ」

    ラウ「普通の鋏として使っては駄目なのか……」

    マユ「使えはするけど、縁まで巻き込んで切っちゃう可能性もあるからね。そんなこと流石にさせられないからさ」

    ラウ「なら、そういう道具は基本的には人気のない場所に隠しているということか」

    マユ「うん。普段から持ってると悪影響が出るものもあるしね。因みにそれらを隠すために使用していた術が、今から探そうとしてる目くらましの結界なんだ。もう要領はつかめたよね?」

    ラウ「なんとなく、だがな……」

    マユ「それで十分。それじゃあ、始めようか」


    どちらが見つける?dice1d2=2 (2)

    1.マユ

    2.ラウ

  • 112125/08/24(日) 21:13:00

    ラウ「っ!……本当に燃えたな。しかも残らないのか……アスカ!こっちに反応があった!」

    マユ「ナイス―⤴!なら、そこの近くに変なものない?」(結構離れた場所に居る)

    ラウ「………木札がある。おそらくこれだな」

    マユ「おK!今から確認するねー」


    ー木札を調べる


    マユ「……うん、これだ。でもこれ、一度直した形跡があるね。それも最近」

    ラウ「ということは、もしかすると結界が緩んでいた時にギルたちが通ったということになるのか?何かに躓いたと言っていたからな」

    マユ「多分そうかもね。普段は見えない、というか認識させないようにしてたのに、その時偶々緩んでいたから、ヤマトくんは何かに接触して、縁が出来てしまった……ってことになるかな?とりあえず、空き地まで戻ってみようか」

    ラウ「ああ、そうだな。先ほどと同じで、近くまで来たら例の紐を持って待機か?」

    マユ「うん、お願いね」

  • 113125/08/24(日) 21:21:10

    ~再度空地近くへ~


    マユ「……見えるようになったね」

    ラウ「ああ、あの黒いのはなんだ?空き地全体を覆っているように見えるが」

    マユ「結構嫌な感じだね……場合によっては、結界張り直ししなきゃいけないから、その木札大事に持っておいて」

    ラウ「わかった」

    マユ「それじゃあ行ってくるね」

    ラウ「気を付けろよ」

    マユ「うん」

  • 114125/08/24(日) 21:35:55

    ~空地へ入る~


    マユ「うへー、ヤバいなんてものじゃないね。これ、なんでずっと放置されてるんだろう?」

    酒吞童子『放置しか出来ないんじゃない?ほら、アレが発生源よ』

    マユ「井戸?……から引きずった跡伸びてるね。空き地の外まで跡があったはずだから、ヤマトくんはこの引きずられて井戸の中に入った何かに接触したってことかな。井戸の中はどうなってるのかな」(荷物から懐中電灯を取り出し、光らせながら井戸の中を覗く)

    酒吞童子『……暗くて何も見えないわね』

    マユ「懐中電灯で照らしてもわかんないね。……それにしても、かなり"臭うね”。死臭かな?これ」

    酒吞童子『黄泉比良坂みたいね』

    マユ「黄泉と現世を繋ぐ境目って事?そんなものがここにあるのって、経緯はあんまり考えたくないなぁ」

    酒吞童子『元からそうだった可能性は考えないの?』

    マユ「そうだとしてもだなぁ……とりあえず、元凶はこの奥みたいだから、入って調べないと」

    酒吞童子『命綱があるとはいえ大丈夫?』

    マユ「その為の酒呑童子様でございますことよ?」

    酒吞童子『あー、はいはい。今回は私は守りに徹しろと。わかったわ』

    マユ「よろしくねー……よし、気合入れなきゃ。ここがかの有名な黄泉比良坂なら、例え"ズル"が出来ても、無事に帰ってこれないかもしれないしね……」

  • 115125/08/24(日) 21:52:44

    ~黄泉比良坂~


    ―井戸の中を慎重に降りていく。

    ―外からもかなり強烈だった死臭は、下れば下るほどに強まっていく。

    ―臭いを我慢し、ようやく下に降りれば、そこは暗い洞窟のような場所。緩く坂になっているそこは、かつてイザナギがイザナミと再度会うために下り、その後岩で閉じた道だ。

    ―本来、黄泉比良坂は特定の地域にのみ存在するものだ。しかし、たまに人工的に発生させることもできる。

    ―例えば、遺体を供養せずに井戸の中に放り込む、だとか。

    ―黄泉比良坂が発生するほどの遺体が積み上げられた井戸。おそらく数にして100をゆうに超えているのではないか。

    ―一体、何をどうしたらそんな数の遺体を用意できるのだろうか。長年の風習だったとて、ここまで酷いとフォローしようも無い。

    ―しかし、ここにはあの少年が接触したと思われる怪異は見当たらない。

    ―おそらくは、もっと奥へと進む必要があるのだろう。

    ―少女は迷うことなく奥へと進んでいった。

  • 116125/08/24(日) 21:56:00

    今日はここまでになります

    明日は未定ですが、やれる場合は20:30頃となります

  • 117二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 00:18:58

    お疲れ様でした

  • 118二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 09:13:39

    ☆彡

  • 119二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 16:21:53

    ほしゅ

  • 120125/08/25(月) 20:42:26

    それでは再開


    ~場面変わって施設~


    施設職員1「今日は一人なんだね。一人は事前に聞いてたけど、もう一人は?」

    ギルバート「せ、先生に掴まって、時間かかる作業してるみたいです。なんだったかな……確か、何かコピーするとか、一人分ずつまとめて綴じるとか、そんなことを言っていた気がします」

    施設職員1「あらら、それは災難だったね。でもまあ、今日の作業はそこまで無いから、最終的に来れなくても何とかなるかな?むしろ、明日の本番が大変だから」

    ギルバート「明日は休みなので、突然用事が入ることはあまり無いと思います」

    施設職員1「わかった。じゃあ、昨日終わらなかった作業やり終わったら、今日は帰っていいからね」

    ギルバート「わかりました」

  • 121125/08/25(月) 20:51:11

    ~作業中~


    ギルバート「…………」(二人のことが心配し過ぎて、時折手が止まる)

    イアン「なんだ、あんまり進んでないが何か問題あったか?」

    ギルバート「い、イアンさん……すみません、ちょっと集中出来てなくて……」

    イアン「……またマユが変な事やってるのか?」(コソコソ)

    ギルバート「……まあ、はい」(コソコソ)

    イアン「まったく、大丈夫だって思うと遠慮がなくなるタイプだったか……もしかして、お前さんの友達もマユに巻き込まれてるのか」

    ギルバート「……そうですね」

    イアン「アイツは何をそこまで……」

    ギルバート「……あの、イアンさん」

    イアン「ん?なんだ」

    ギルバート「イアンさんはその……オカルトは信じる方ですか?」

    イアン「そうだな……基本は信じねぇな」

    ギルバート「基本は、というと」

    イアン「色んなガキを見て来たからな。たまに変なのが見えてるガキが来ることもあるんだ。ただまあ、そういうやつは大抵がイマジナリーフレンドだったり、親に捨てられたショックとストレスで幻覚が見えてることが大半だったが……それじゃあ片付けられないようなやつも中には居たんだ。かなり稀だがな」

    ギルバート「なるほど……」

  • 122125/08/25(月) 21:00:28

    イアン「俺は幽霊なんてものは見えねぇし、見えねぇもんを信じられるほどの頭もしてねぇ。だが、子供のことは信じてやらんといけねぇからな。ここに居る奴らは、そういうことを信じてくれて、慰めてくれる親も居ねぇわけだからな。ま、それはそれとして、嘘は疑うがな」

    ギルバート「立派なんですね」

    イアン「こんなのは常識だ。何のためにここで働いてると思ってんだって話だからな。……ただまあ、そん中でもマユはちと変わり種だがな」

    ギルバート「変わり種、ですか?」

    イアン「……ま、お前さんなら大丈夫か。少し人が来なさそうな場所に移動するぞ。付き合え」

    ギルバート「?は、はい」

  • 123125/08/25(月) 21:28:57

    ~施設の隅~


    ギルバート「それで、話しって」

    イアン「まあ、大した話じゃねぇんだ。……個人情報だから、今からする話は他言無用ってとこだけは注意だがな」

    ギルバート「は、はい」

    イアン「……実はマユがここの施設に来たのは今年に入ってからでな。今年に入る前までは別の施設に居たんだ」

    ギルバート「え、そうだったんですか?」

    イアン「ああ。言い方は悪いが、前の施設でトラブルがあって、それで体よく追い出されてきたのがマユでな。その前にも施設を移動してたりと、少々曰く付きのやつだったんだ」

    ギルバート「そ、そんな……どうしてそんなことに」

    イアン「さあな。マユが当時居た施設でなにがあったのかは分からん。注意事項には”虚言癖”あると書かれてはいるが、話しを聞くとただの虚言癖にしては、かなり"不思議な事"が起きているんだ。例えば、ガラスが割れた場所にマユが居たから犯人扱いしたが、ガラスの割れ方は明らかにガラスを挟んでマユの反対側に居なければ、そんな割れ方をしないものだった、とかな」

    ギルバート「(霊障かな……)」

    イアン「普段はそういうのを聞いても、はいはいって流すんだが……色々とあってな」

    ギルバート「色々ですか?」

    イアン「内容は聞かんでくれ。まだ少しごたごたが収まってないことなんでな」

    ギルバート「わかりました」

    イアン「……それに加えて、マユが来てからこまごまとしたところで、結構"色んなこと"が起きてるからな。アイツは知らん顔してるが、その"色んなこと"を解決してるのが、あいつだって言うことは、雰囲気でわかる。だからこそ、確証こそないが、個人的にはマユのことは信じざる負えなくなってるんだ」

  • 124125/08/25(月) 21:49:39

    ギルバート「……それはその、気味が悪いと思っていると?」

    イアン「気味が悪いっつうか……心配の方が勝つさ。さっきも言ったが、俺は幽霊なんてものを見たことがない。感じることも無い。だから信じてねぇ。……だが、あいつは、俺が信じてねぇ存在に常に脅かされてるってことになる。夏の時にも実感したさ。アイツが幽霊に襲われたとしても、俺は身を挺して守ってやることは出来ない。……大人ってのは、子供を守るのが義務なんだ。なのにそれが出来ねぇってのは、子供が思っている以上にキッツい事なのさ……」

    ギルバート「………よかった」

    イアン「何がだ」

    ギルバート「あ、え、えっと……アスカさんは人に頼るのが苦手な印象があったので。施設の人は優しい人ばかりだけど、それでも大丈夫かなって、勝手に心配してたんです。……けど、イアンさんみたいな人が居るんだったら、少なくとも独りぼっちになることは今後も無いのかなって思いまして……」

    イアン「……お前さんはどうなんだ?」

    ギルバート「え、ぼ、僕、ですか?」

    イアン「アイツの事が好きなんだろ?告らないのか?」

    ギルバート「こ、こく!?な、なんでいきなりそんな話になるんですか!?」

    イアン「話は変えてねぇよ。……俺が一番心配してんのが、あいつに理解者が一人も出来ねぇって状況なんだ。俺は確かにあいつのことは気にかけてるが、さっき話した通り理解者には程遠い。だからこそ、ずっとあいつの傍に居てくれそうなやつが出来ることを期待してんだ」

    ギルバート「………」

    イアン「で、お前さんはそこんところどうなんだ?」

    ギルバート「ぼ、僕は……」

  • 125125/08/25(月) 21:59:47

    イアン「俺から見た感じだと、お前さんは真面目で誠実なやつだ。少しストーカー気質はあるが、迷惑をかけるほどじゃない。むしろ、あいつ相手だと少し強引な方が丁度いい。それに、あいつは一見迷惑そうな顔をしてるが、内心では喜んでるのが丸わかりだ。とどのつまり、お似合いって話だ」

    ギルバート「………」

    イアン「で……ど う な ん だ?」

    ギルバート「……こ、告白はするつもりなんです。ただ……アスカさんは何かに怯えているような気がして。それでずっと二の足を踏んでる感じです……」

    イアン「怯えてる……どうしてそう思った?」

    ギルバート「なんとなくなんですけど……時折、なにか痛みを我慢しているような表情になることがあるんです。それは、大体が嬉しそうな顔をした後なので……」

    イアン「それは、幽霊のことに巻き込みたくないとか、そういうことじゃなくか?」

    ギルバート「……多分違うと思います。イアンさんは何か心当たりは……流石にないですよね……」

  • 126125/08/25(月) 22:19:02

    イアン「……一応、心当たりがないわけでもないな。ただ、それが原因かもわからん」

    ギルバート「教えてもらえますか?」

    イアン「……あいつがそもそも施設に入ってきたのは、ご両親が病気で亡くなったからなんだ。引き取る親戚も居なかったらしい」

    ギルバート「ご両親が……」

    イアン「まあ、それがその”怯える"に関係するのかは分からんが、もしかしたらその時になにかあったのかもしれないな」

    ギルバート「そうですか……」

    イアン「……これは年長者からのアドバイスだが、こういう時は深く考えず、思い切りでやったほうが良いぞ?」

    ギルバート「そうなんですか……?」

    イアン「そもそもの話なんだが、お前はあいつのことは大事だろ?」

    ギルバート「はい」

    イアン「で、あいつの事情についてはおそらくだが俺なんかよりも詳しいと見た」

    ギルバート「……そうなんですかね?」

    イアン「そう思っておけ。で、それでもなお気味悪いなんて思わず、あいつのことを気にかけてる。そうだろ?」

    ギルバート「……はい」

    イアン「なら後は、お前にどれだけ勇気があるかだ。玉砕については考えんな。若いもんの恋愛なんてな、玉砕覚悟で挑んでなんぼだ。安牌なんか取ろうとすんな。安牌取ろうとする奴は一生告白できずに終わるんだからな」

    ギルバート「……それは経験則ってやつですか?」

    イアン「さあ?どうだろうな」

  • 127125/08/25(月) 22:27:43

    ギルバート「……わかりました。実際に出来るかどうかはさておき、頑張ってみたいと思います」

    イアン「おう、頑張りな?あ、後一つだけアドバイスな。あんまり告白の場所やら雰囲気やらを考えんなよ?考えすぎる奴の大体は想像してたのとは違う形になるんだから。気楽に行け」

    ギルバート「はい、わかりました。………アスカさん?」(突然明後日の方向を向く)

    イアン「?ヤマト、どうかしたか?」

    ギルバート「………アスカさんが危ない気がする。すみません!僕、用事が出来たので帰ります!!」(ダッシュで施設の玄関へと走る)

    イアン「あ、おい!!」

  • 128125/08/25(月) 22:29:04

    今日はここまでにします

    明日は未定ですが、出来そうなら今日と同じく20:30頃になります

  • 129二次元好きの匿名さん25/08/25(月) 23:06:52

    お疲れ様でした

  • 130二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 08:24:56

    ho

  • 131二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 17:45:13

    ☆ 

  • 132125/08/26(火) 19:03:57

    今日はお休みします……

  • 133二次元好きの匿名さん25/08/26(火) 23:37:31

    お疲れ様です

  • 134二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 08:31:22

    ☆彡

  • 135二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 15:35:38

    ほしゅ

  • 136125/08/27(水) 18:36:32

    今日もお休みします……

  • 137二次元好きの匿名さん25/08/27(水) 23:22:18

    お疲れ様です

  • 138二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 07:51:23

    朝の保守

  • 139二次元好きの匿名さん25/08/28(木) 14:44:52

    ほしゅ

  • 140125/08/28(木) 19:00:51

    今日もお休みです……

    明日は20:30頃の開始予定です

  • 141二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 00:35:01

    お疲れ様です

  • 142二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 08:39:17

    ☆彡

  • 143二次元好きの匿名さん25/08/29(金) 16:43:10

    保守

  • 144125/08/29(金) 20:38:34

    それでは再開


    ~戻って黄泉比良坂~


    「……」


    ―少女は息を殺して物陰に隠れていた。

    ―井戸の底にあった黄泉比良坂、その奥は洞窟のような見た目で湿度が高いように感じられる。

    ―そこを奥へ奥へと進んでいった先で、少女は目的の怪異を発見した。

    ―それは辛うじて人と同じ形をしているが、四肢が長く怪我一本もない黒いバケモノ。そのバケモノは砕く音と共になにかを咀嚼しているようだ。

    ―後ろを向いて食事をしている為、完全に見えるわけではないが、少しだけ見える物体から察するに、おそらくだが人間を生きたまま食らっているのだろう。

    ―バケモノの横には、なにやらひものような何かに括り付けられた遺体がある。いや、遺体に見えるだけで、もしかしたらバケモノの一部なのかもしれない。

    ―ともかく、それはおそらくギルバートが足を引っかけたものであり、引きずられた跡正体である。

  • 145125/08/29(金) 20:57:38

    ―あのひものようななにかに括り付けられた遺体は要するに釣り餌のような役割をしているのだろう。興味を引くという使い方ではなく、接触して悪縁を繋ぐ役割をしているのだと思う。

    ―そうして悪縁を繋がれた人間は、最終的には意識を乗っ取られ、こちらに迷い込みあのバケモノの餌となる。こういう仕組みなのではないか。

    ―少女は考える。なぜあのバケモノはこんなところに留まっているのだろうかと。

    ―黄泉比良坂は黄泉へと向かう道でしかない。黄泉へと向かう霊魂を餌にするために留まってるならわからなくもないが、わざわざ生きた人間を釣って食べているということはそういうわけでもない。

    ―隠れ住んでいる可能性はある。しかし、なにに身を隠しているのかは不明だ。

    ―そもそもこの怪異は一体何なのだろうか。妖怪、神、精霊、妖精、悪魔etc……記憶にあるものを引っ張り出しても、よくわからない。

    ―そうなると、あり合えるのは悪霊の寄せ集めという線だ。しかし、この怪異には悪霊特有の悪感情(強烈な憎しみや怒り、悲しみなどのマイナスな感情)があまり感じられない。ああやって人を食らっているのも、ただの動物のように人を食べているだけに過ぎないように思える。

    ―正体不明の怪異。それだけで、どれほどの脅威であるかを少女は知っていた。


    「(うーん……あれ、祓えるなら祓いたいって思ったんだけど、そうもいかなさそうだなぁ。となると、このなまくらの鋏でどうにかこうにかヤマトくんと繋がってる縁を切って、すぐに外まで撤退して入り口を塞ぐしかないなぁ。バレずにやれるのが一番の理想だけど、未来が上手く見れない状態でどこまでやれるか……)」

  • 146125/08/29(金) 21:19:55

    ―少女は改めて周囲を見渡す。少し広い空間になっているそこは、今隠れている場所以外には碌な隠れ場所はない。だが、幸いなことにバケモノはこちらに背を向けて食事をしている。そしてなにより、まだ少女の存在に気づいていない。

    ―この機会を逃すとまずい、と思うぐらいには絶好の機会だ。そもそもの話、生身の人間が境目とはいえ黄泉に長時間居るのもかなり不味い。時間を掛けている暇はない。

    ―少女は覚悟を決めて鋏を構える。そして、"目"に力を入れて本来は見えない"糸"を映し出す。

    ―その糸は乱雑に絡まっていた。おそらくだが、ギルバート以外にも縁を結んでいるのだろう。ついでだからまとめて切ってしまいたいが、このなまくらでどのぐらい切れるのか分からない。

    ―兎にも角にも、本命だけはちゃんと切ろう。そう思い、鋏が縁を切れる有効範囲までゆっくりと近づく。

    ―バケモノにバレないように、足音を殺して、息も止めて。微かな音が致命的になってしまわないように。

    ―そして、バケモノのすぐ後ろに近づき、構えていた鋏を目的の"糸"へとかけ、そして勢いよく挟み込む。

    ―ジャキン、と糸が切れる感触がした。これで、ギルバートに繋がったバケモノとの悪縁は無事に切れただろう。

    ―なんとか目的が達成できたことに安堵する。しかし、その安堵も一瞬のうちに消えることになった。

    ―いつの間にか、バケモノ顔が少女の真横に近づいていた。

    ―後ろを向いていたからわからなかったが、バケモノの顔は位置こそあっているが、それぞれのパーツの向きが出たらめに張り付けられている状態だった。

    ―目と口は縦に、鼻は横に、耳は裏返しに。まるで、"化け物が人のマネをして失敗してしまった"かのような、そんな歪さを感じざる負えなかった。

  • 147125/08/29(金) 21:36:10

    「(まっず!?)」


    ―少女は咄嗟に来た方向まで跳び、そのままバケモノに背中を向けて走り出す。

    ―後ろからは複数の足音のようなものが追ってきているのが分かる。おそらく、あのバケモノが追いかけてきているのだろう。

    ―後ろを見て確認する余裕はない。そもそも、黄泉比良坂で"現世へ帰る時に後ろを振り返る"のはご法度だ。イザナギとイザナミの話では、その禁を破ってしまったがために、イザナギとイザナミの確執が生まれたと言ってもいい。

    ―同じような話でギリシャ神話のオルフェウスも、その禁を破ってしまったがために妻であるエウリュディケを取り戻すことは無かった。

    ―要するに、現世へ帰る途中で後ろを振り向くとよくないことが起きるということだ。

    ―例に挙げた彼らは神または神の血を引いている事実上の神だったからこそ、その程度で済まされてるにすぎず、ただの人間が振り向けば、その魂は肉体ごと黄泉へと縛られることとなる。だからこそ、ここで振り向いたら一環の終わりだった。

  • 148125/08/29(金) 21:56:33

    「(走れ走れ走れ!)」


    ―少女は必至で駆ける。途中、何度か何かが服を掴もうとしていたが、そのたびに"ズル"で無理やりスピードを上げて、捕まれないようにする。

    ―……本来、少女の未来は確約されたものであり、ここでは決して死ぬことは無い。しかし、例え未来視で将来が確約されていたとしても、ここで舐めてバケモノに掴まってしまえば未来への道は閉ざされる。

    ―ただし言い換えれば、全力で走っている分には絶対にバケモノには捕まらず、出口まで行けるということだ。

    ―とはいえ、それが五体満足であるかどうかは別だ。もしかしたら、五体は満足かもしれないが、精神がやられる可能性だってある。

    ―要するに、命だけは無事という状態になる可能性も残っているということだ。

    ―なるべくなら、そんなことは避けたい。腕や足が一本吹っ飛ぶのはともかく、生きているのに精神が死に廃人になるのは流石に嫌である。

    ―少女は走りながら、ポケットの中にある紐を取り出す。それは、クルーゼに渡した紐の片割れである。この紐は少女の髪の毛を混ぜて作った自作の紐だ。

    ―この紐が持つ片割れと再び繋がろうとする特性を生かして、緊急脱出用にと用意したものだった。

    ―少女は紐に念を送り、起動する。

    ―すると、紐はピンと張り詰めると、謎の力を働かせて片割れの方へと飛んでいく。

    ―少女はその紐を離さないように必死で掴む。紐の飛んでいく力で地面と平行になってしまった体が岩の壁に当たらないように制御をしながら。

  • 149125/08/29(金) 22:11:21

    ―紐が片割れに向かっていく速度の方が早いのか、後ろに居るはずのバケモノの気配が遠くなる。

    ―このまま順調に行けば、出口まで無事にたどり着けるだろう。

    ―そう思った矢先、突如として紐が切れる。


    「(えっ!?)」


    ―何が原因かは分からない。しかし、切れてしまった以上、地面と平行になって飛んでいた体はその勢いのまま地面へと落ちることとなる。

    ―幸いなことに、中に居る酒吞童子の守りがあるため、大怪我はしていないものの、かなりの衝撃を受けてしまい、しばらく動けなくなってしまう。

    ―このままではバケモノが追い付いて来てしまう。

    ―痛む体に鞭を討ちながら、壁伝いに立ち上がろうとした。

    ―その瞬間、体重をかけた壁が崩れてバランスを崩す。

    ―バランスを崩した先は、なんと崖のようになっており、底は暗闇で一切見えなかった。その底に体が傾いていく。


    「(踏んだり蹴ったり過ぎるでしょ……)」


    ―少女の頭は、あまりのことで逆に冷静になる。しかし、痛む体はそれでも言うことを聞いてはくれず、少女は底へと落ちて行った。

  • 150125/08/29(金) 22:23:36

    ~???~


    ―少女が目を覚ますと、そこは辛うじて人一人が寝転がれる岩棚だった。

    ―上を見上げると、落ちて来たであろう場所にはぽっかりと穴が開いており、そこから件のバケモノが下を覗き込んでいる。

    ―しかし、こちらを視認出来ないのだろうか。首を動かしては見当違いな場所を凝視しているように見える。

    ―少女はひとまず起き上がろうと体を起こそうとする。

    ―しかし、落ちた衝撃を二度も受けたからだろうか、少し動いただけでも激痛が走ってしまう。

    ―"ズル"のおかげで例え骨折していたとしても、しばらくすれば回復はするだろう。だが、それがいつになるかは分からない。

    ―酒吞童子の守りがあるとはいえ、人間が生身でこの場に居られるのにも限りがある。それを超えたら最後、太陽の光は二度と拝めないだろう。

    ―何とかしてここから脱出しなければならない。しかし、頼み綱の紐は切れ、体はあちこちが激痛に見舞われている。落ちてきた場所はバケモノが居座っている為、戻っての脱出も見込みがない。

    ―完全に詰みの状態だ。

  • 151125/08/29(金) 22:45:48

    マユ「(酒呑童子に助けを求めたいけど、この状態じゃ彼女は実体化出来ないし……はあ、まさかこんなことになるなんて……未来が確約されてるからって、少し舐めてかかりすぎたのかなぁ。そんなつもりなかったんだけど……)」


    ―少女は倒れながらボーっと上を眺める。バケモノは未だに首を動かし下を覗いている。しばらくはどけるつもりはないのだろう。


    マユ「(本当にどうしようかな……外からの応援を期待したいところだけど、十中八九助けてもらう前に助けに来た人がやられそうだから無理そうだなぁ……)」


    ―いくら考えても、助かる術は見つからない。自分はここで終わるのだと、少女は悟った。

    ―自身の未来視に振り回される人生だったが、まさか最後がこうなるとは予想出来てなかった。あの二択の選択は一体何だったのだろうか。それとも、自分が知らない第三の選択肢を取ってしまったからなのだろうか。

    ―少女の心は凪いで行く。ここで終わってしまうのであれば、それはそれでいい。巻き込んでしまっている酒呑童子は自分の死後は自由になるし、本来の目的はすでに済ませてある。だから、ここで自分が死んでも問題はない。

    ―少女はゆっくりと目を閉じる。


    マユ「(ああでも、ここで死んじゃうとお母さんとお父さんの約束を破ることになるんだ)」


    ―長く生きて欲しい。それは、亡くなった両親が遺した自分との約束。少女に託した、彼らの願いである。

    ―少女は今まで、それを胸に生き続けて来た。両親が叶えられなかった願いを自らが果たすために。


    マユ「(約束を破るのは嫌だなぁ……それに)」


    ―少女は少年のことを思い出す。

    ―約束を破ることになっても、どうしても助けたかった少年。

    ―少女の「運命の人」


    マユ「……ん?"運命"の人?」

  • 152125/08/29(金) 22:54:54

    マユ「………い、いや、でも、ヤマトくんの縁を見た時は、そんなの無かった気がするけど」


    ―少女は一つの可能性を思いついていた。しかし、記憶を辿ってもそんなものを見た覚えがない。だから、まだ普通のものなのだろうとスルーしていた。

    ―しかし、もしあるのだとすれば、この状況を打破するための手段となりえるかもしれない。

    ―意を決して少女はバケモノの縁を見た時のように、"目"に力を籠める。

    ―見えたのは自分と繋がっている縁だ。複数の縁の中には悪縁も混じっているが、ギルバートと繋がっているものほどのものではなく、そのうち切れてしまうと思うほどに細い縁だ。

    ―他には緑、青……様々な色の糸が漂っている。しかし、探している”赤"は見当たらない。


    マユ「(やっぱりないか……)」


    ―そう諦めかけた時、ふと左手の薬指に何かが絡まっているような気がした。

    ―まさかと思い、少女はさらに力を込めてそこを見つめる。

  • 153二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 01:59:16

    ホスト規制は悪い文明
    お疲れ様でした

  • 154二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 08:29:30

    ☆彡

  • 155125/08/30(土) 14:16:31

    昨日途中で終わってしまったので、この時間帯から再開します

    なお、進みはいつもよりも遅いです


    ―それは、鮮やかな赤色をした糸だった。

    ―キラキラと輝いているように見えるその糸は、太く丈夫そうな見た目をしている。簡単には切れないだろう。

    ―その糸を見た瞬間、少女の脳裏にはいくつもの映像が見えた。

    ―見えないと思っていた少年の未来。近い未来のことから遠い未来のことまで。断片的にだが、濁流のように流れてくる。

    ―少女は突然のことに混乱する。が、少し整理すれば、どうしてそんなことが起きたのか理解した。

    ―理解(わか)ってしまった。

    ―少女の顔が真っ赤に染まる。

    ―少女は少年―ギルバートーの未来が見れなかったわけじゃない。"見ないようにしていた"だけだった。

    ―その方が楽しくて心を揺さぶられるから。彼からの愛情を純粋に受け止めるから。彼との純粋な思い出が作れるから。

    ―そして、未来を見ないようにしていたことで、彼との強い縁を他者からも隠し、簡単に切れないよう守っていた。

    ―それはまるで、大事な宝物を箱に入れて大切にするように。


    マユ「(う、嘘っ、わた、わたし、え、そ、そんなにだったの!?)」

  • 156125/08/30(土) 15:10:49

    ―顔が熱い。頭が沸騰しそうだ。ついでに心臓も痛い。

    ―しかし、そんなことで時間と取られているわけにもいかない。

    ―深呼吸をして何とか息を整える。そして、"幼いころ、夢の中で出会った人物のことを想い出す。


    『これはキミに与える、未来視とは違うたった一つの権能だ。それはたった一度しか使えないかもしれないし、そうじゃないかもしれない。そして、使える場面は限定的だ。とても扱いにくいけど、それでもいつか必要になる。忘れるんじゃないぞ』


    ―1つ、この力は強い縁が必要になる。

    ―2つ、この力を使うことによって、その縁が切れてしまう可能性がある。

    ―3つ、この力を使えるのは全ての手段が使えないと確定した時。

    ―そして、最後の一つは……これは今は関係ないだろう。

    ―兎にも角にも、これで条件がそろったはずだ。そう思い、少女は赤い縁の主へと強い念を送る。

    ―左手の薬指に絡まった赤い糸がピンッと張る。糸が伸びる方向を向けば、暗い崖の底へと延びていた。

    ―ここから飛び降りろ、ということだろう。初めて使う力ゆえに不安はあるし、切れるという可能性という不安要素も消えてない。

    ―しかし、両親との約束を守るか少年を選ぶか決めるためにも、今は生きて帰ることが最優先だ。

    ―少女は未だに痛む体を無理やり動かし、崖の底へと落ちて行った。

  • 157二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 16:10:18

    このレスは削除されています

  • 158125/08/30(土) 16:27:36

    ~一方その頃、外のクルーゼは~


    ラウ「(……いきなり千切れてしまったが、不味いんじゃないのか?)」(紐の残骸を見つめながら)


    ―クルーゼは途方に暮れていた。

    ―安全帯だと渡された紐は、言われた通りにピンッと張った時に思い切り引っ張った。しばらくの間は、謎の力でこちらが逆に引っ張られそうになったが、それを何とかして耐えていた。

    ―しかし、突如として紐は切れ以降は何も反応はない。

    ―不味い状態なのはわかる。しかし、どうすればいいのかが分からない。なにせ自分は多少知識があるだけの一般高校生だ。出来ることは精々ちょっとしたお守りを作ったり、専門家の言われた通りのことをするのみだ。

    ―マユが入っていった空地へと目を向ける。依然として黒い靄のようなものに覆われており、内側の様子はうかがえない。

    ―近づいてもいいかもしれないが、余りにも嫌な気配がする為、二の足を踏んでしまっている。


    ラウ「(アイツに任せろと言ったのに、この体たらく……)」


    ―男として情けない事この上ないだろう。しかし、だからと言って二次被害が起きるのは避けたほうが良い。

    ―最悪、このまま戻る気配がないのであれば、マユの救出を諦め結界の張り直しをしたほうが良いだろう。

    ―やり方は今は分からないが、家に戻れば資料があるだろう。実物もあるのだから、見つけるまであまり時間がかからないはずだ。


    ラウ「(このままもう少し待ってみて、戻る様子が無かったら資料を見に家に戻ろう。それから、知り合いの専門家に連絡をして……)」


    ―なんにせよ、このまま少し待つこととなるので、頭の中でやるべきことを整理する。いや、というより、なにか考えていないと不安に押しつぶされそうで恐ろしい。

  • 159125/08/30(土) 17:03:50

    ―悶々とした状態で、一体どれだけの時間が経ったのだろう。実際にはさほど経っていないのかもしれないが、待っているだけの身だったために、かなりの時間が流れたように感じられた。

    ―急にこちらに走ってくるような音が聞こえたので振り返ってみる。するとそこに居たのは、かなり焦った顔をした幼馴染のギルバートだった。

    ―どうしてと思ったが、こいつの事だ。きっと心配になって結局探し回っていたのだろう。しかし、今ギルバートが来たところで何の意味も無い。むしろ、助けに行こうとしないように何とか引き返すように止める苦労が増えてしまう。

    ―ただでさえ心中穏やかではないのに、余計なことを増やすなと思わず文句を言いそうになる。


    ラウ「ギル、なんでここに」

    ギルバート「ラウ!アスカさんは!」

    ラウ「今はここに居ない。俺に任せろと言っただろう。お前はさっさと施設に――」

    ギルバート「アスカさんが危ないんだ!アスカさんは今どこにいるんだ!お願いだ、教えてくれ!」

    ラウ「教えられるわけないだろ!大体言ってどうする!お前が行ったところで何も出来ないのはわかっているだろう!」

    ギルバート「それでも行かなくちゃいけないんだ!!」

  • 160125/08/30(土) 17:26:06

    ラウ「大体なんであいつが危ないとわかるんだ。お前はずっと施設に居たんだろう?」

    ギルバート「そ、それは……わからない。けど、僕の直感がそう言ってるんだ!」

    ラウ「訳の分からないことを!再度いうが、お前が行ったところで何もならない!むしろ、被害が広がる可能性だってあるんだ。だから大人しくして――」

    ギルバート「――あの空き地に居るのかい?」(食い気味に問う)

    ラウ「……」

    ギルバート「居るんだな?わかった」(空地へ走って向かう)

    ラウ「待て!たく、面倒ごとを増やすな!」(追いかける)

  • 161125/08/30(土) 17:48:48

    ~空地~


    ラウ「うっ(なんだこの臭いは……しかも、ここまで強烈なのに、入るまで分からなかった……)」

    ギルバート「……あの井戸だ」(井戸の方へ近づく)

    ラウ「おい待て!」(ギルバートを止めようと手を伸ばすが間に合わない)

    ギルバート「……アスカさん!居たら返事をしてくれ!!アスカさん!!!」(井戸の中に顔を突っ込みながら大声で言う)

    ラウ「おい馬鹿!」(ギルバートを井戸から引きはがそうとギルバートの肩を思い切り掴む)

    ギルバート「!アスカさん!!」(両手を井戸の中へと広げる)

    ラウ「おい、なにやって」(慌てて胴体を掴み、ギルバートが落ちないように支える)


    ―クルーゼがギルバートの胴体を両手で掴んだ時、何かがギルバートへ向かって井戸の底から"落ちて"来る。その反動で二人は空き地の方へと転ぶが、ギルバートは"落ちて"来た"それ"を何とか受け止めることに成功していた。

    ―それはボロボロのマユだった。身を縮こまらせ、ぎゅっと目をつむっていたようで、恐る恐る目を開けて周囲を確認していた。


    ギルバート「……アスカさん、よかった」


    ―ギルバートは安心したせいなのか、目に涙を浮かべながらマユを抱きしめる。

    ―マユは驚いた表情で固まっていたが、次第に状況を理解できるようになると、縮こまらせていた体からゆっくりと力を抜いていく。


    ギルバート「アスカさん」

    マユ「……なにかな?」

    ギルバート「好きです、付き合ってください」(無意識)

    マユ「……は?」

    ラウ「は?」

    ギルバート「………………あ、ご、ごめん!安心したらつい!」

    ラウ「いや、ついで出る言葉がそれなのか?しかもこの状況で??」

    マユ「……………」(突然告白されたので固まってる)

  • 162125/08/30(土) 19:51:32

    ギルバート「ち、違うんだ!いや、違わなくはないんだけど、で、でも、このタイミングで言うつもりは全くなくて!」

    マユ「……」

    ラウ「(完全に固まってるな……個人的にはこのまま二人を置いて帰りたいんだが、今の状況的に放っておくのもな……)」


    ―三人が井戸の前でわたわたとしていると、井戸の中からなにやら轟音のような音が響いてくる。


    ラウ「ん?なんだ、この音」

    マユ「……はっ!い、いけない!」


    ―音を聞いて慌てて動き出したマユは、自分の指を少し噛みきり血を出し、その血で持っていたメモ帳に何かを書くと、すごい勢いで井戸に張り付ける。

    ―すると、井戸の中から聞こえてきた轟音は、不思議なほどぱたりと聞こえなくなった。


    マユ「……ふう、応急処置は出来たかな?後は流石に戻って準備し直してからだなぁ」

  • 163125/08/30(土) 20:17:29

    ギルバート「………」

    マユ「……さてと、施設に帰ろうかなぁ。二人はどうする?流石にもう遅いから帰ったほうが良いともうけど」

    ラウ「その前に、ギルと繋がっていた怪異との縁は一体どうなったんだ」

    マユ「切ってきたから大丈夫だよ。これでもう問題はないから安心して」

    ラウ「そうか……」

    ギルバート「あ、アスカさん」

    マユ「じゃ、私はこれでっ!?」(立ち上がろうとして上手く立てずにすっころぶ)

    ギルバート「……」

    ラウ「……」

    マユ「……」

    ギルバート「アスカさん、施設まで送るよ」

    マユ「エ”!?い、いいよ!一人で帰れるから!」(と言いつつも全然立てない)

    ラウ「……ギル、俺も着いて行く。異論はないよな?」

    ギルバート「うん……」(残念そうな顔をしながらマユを担ぐ)

    マユ「い、いや、ちょっと」(体中痛いのでされるがまま)

    ラウ「立てないなら諦めろ」

  • 164125/08/30(土) 20:48:04

    ラウ「その前に人除けの結界を張り直したいんだが、やり方を教えてくれないか?」

    マユ「……えっとね――」(と言って説明する)

    ラウ「――大体わかった。ギル、先に空き地から出ててくれないか?俺は結界を張り直してくる」

    ギルバート「わかったよ」(と言って、空き地から出る)

    マユ「……」

    ギルバート「アスカさん、足以外に痛いところは?」

    マユ「……全身痛いけど、ちょっとしたら治るから」

    ギルバート「あんまり過信するのは良くないよ。それにしても、いつにもまして随分とボロボロだけど、一体何があったの?」

    マユ「……ちょっと追いかけっこに失敗しかけただけ。心配ないから」

    ギルバート「施設に戻ったら、ちゃんと治療しようね」

    マユ「……うん」

    ギルバート「今日はちょっと素直だね」

    マユ「うるさい」

  • 165125/08/30(土) 21:01:05

    ―結界を張り直した後、三人はゆっくりと施設に戻っていった。

    ―途中、ある程度復活したマユが降ろしてくれと暴れたが、男二人掛かりで止められてしまったため、渋々と抵抗を辞めた。

    ―施設に着けば、門の前ではイアンがずっと帰りを待っていたようで、妙に汚れてボロボロのマユを見るや否や、深いため息をついて、急いで救急箱を取りに行っていた。

    ―幸いにも、マユの怪我は見た目ほど悪いものではなく、かすり傷が複数ある程度だったため、該当箇所に絆創膏を張る程度に留まった。(実際には、落ちた衝撃で骨折や内臓にダメージが入っていたが、驚異の回復力で事なきを得ていただけである。)

    ―それから、イアンの説教を受けた後、クルーゼとギルバートを見送りし、マユは今日の疲れを取るため早めに就寝をすることとなった。(因みに井戸の封印は、次の日朝早くに行くことでイアン達職員の監視の目を掻い潜った。)

  • 166125/08/30(土) 21:07:57

    今日はここまでにします

    明日はおそらく19:30頃の開始になります

  • 167二次元好きの匿名さん25/08/30(土) 23:22:04

    お疲れ様でした

  • 168二次元好きの匿名さん25/08/31(日) 08:20:41

    ☆彡

  • 169二次元好きの匿名さん25/08/31(日) 15:40:56

    ほしゅ

  • 170125/08/31(日) 19:31:51

    それでは再開


    ~そして月日は流れ、冬~


    ―施設


    ギルバート「………」(とてもどんよりしてる)

    施設職員1「相変わらずだねえ。まだ仲直り出来てないの?」

    ギルバート「……はい」

    施設職員2「これだけ長いとちょっと心配になりますね。というか、どうしてこうなったんですか?」

    イアン「こいつが告白タイミングミスったせいで拗れたんだと。タイミングを狙うなとは言ったが、まさかそれ以前の問題だったとはな……」

    ギルバート「……」

    ラウ「すみません、この馬鹿の相談に乗ってもらって」

    施設職員1「いいのよ、気にしないで。とはいえ、最近マユちゃんの元気も無いから、こっちもちょっと心配でねえ。まあ、青春してる分には放っておいてもいいとは思ってるんだけど、あんまりにも長いから小さい子たちがソワソワしてきちゃって」

    ギルバート「……本当にすみません」

    施設職員2「青春って言うのは失敗がつきものだから、そんなに悩む必要はないよ。でも、確かにきついよね。好きな子に今まで以上に避けられてる状況は」

    ラウ「同じクラスのはずなのに、見事に1ミリも話す機会が無いですからね。ダメ押しでボランティアついでに施設にも来ているのに、それでも無理ですから」

    施設職員1「話聞いただけでも、辛くて泣けてきちゃうよね……」

  • 171125/08/31(日) 19:48:28

    イアン「とはいえ、これ以上長引かせるのも他の奴らのストレスになるからな。何とか切っ掛けぐらいは作ってやらねぇといかんか」(立ち上がる)

    施設職員1「イアンさん?どこに行くんですか?」

    イアン「アイツ連れてくるわ。お前らは坊主が逃げ出さんように見張っておけ」

    ギルバート「え!?」

    施設職員2「い、イアンさん、それは流石にもっと拗れるのでは?」

    イアン「あいつにゃ、このぐらい強引なほうが良い」

    施設職員1「イアンさん!まっ――行っちゃったよ……」

    ギルバート「……」

    ラウ「まあ、いいんじゃないか?きっかけさえあれば話せるんだろ?」

    ギルバート「……こ、心の準備が」

    ラウ「この期に及んで何を言ってるんだお前は」

  • 172125/08/31(日) 19:55:35

    ~マユの部屋~


    マユ「………」(ベッドの上で瞑想中)

    イアン「入るぞ、マユ」(マスターキーで勝手に部屋の鍵を開けて入ってくる)

    マユ「……やっぱり来ちゃった」

    イアン「なんだ、その様子だと俺が来ることが分かってたみたいじゃないか」

    マユ「うん、"わかってた"よ。ヤマトくんの件でしょ?」

    イアン「なら話が早いな。あの坊主、相当参ってるみたいだぞ。振るにしてもなんにしても、一度ぐらいは会って話せ」

    マユ「……うん、わかってる」

    イアン「……何か引っかかってることがあるのか?」

    マユ「そうじゃ……ううん、引っかかってるかも」

    イアン「なら話してみろ。解決はしないかもしれないが、整理はつくかもしれんぞ?」(と言いながら、話しの内容を聞かれないように部屋の扉を閉める)

  • 173125/08/31(日) 20:09:52

    マユ「確かイアンさんは娘が居たよね」

    イアン「ああ、居るが……お前に話したことあったか?」

    マユ「……………前に職員さんたちの会話をたまたま聞いて、それで知ったの」

    イアン「なんだそうか。それで、それがどうかしたか?」

    マユ「……一人の親の目線で意見が欲しんだけど、親って子供がどうなったら幸せなの?」

    イアン「あん?そうだな……人並みだが、子供が幸せに暮らせてるなら幸せだろうな」

    マユ「……長生きしてほしいとかは?」

    イアン「長生きなぁ。確かに親として、生きてる内は子供の死に目には会いたくねぇとは思うな。それに、長く生きたほうが、幸せを掴む機会が多くなるのも事実だろうから、なるべくなら長く生きててほしいと思うさ」

    マユ「じゃあさ、もし仮に好きな人と結ばれて幸福な生活を送れるけど短命になる人生と、好きな人と結ばれず後悔をずっと引きずって長い時を生きる人生のどちらかを子供が選ぶとしたらさ、親はどっちの方が嬉しいと思う?」

  • 174125/08/31(日) 20:30:06

    イアン「なんだその二択。学校で流行ってる心理テストかなんかか?」

    マユ「いいから、早く答えてよ」

    イアン「……そうだな。これは結構難しい問題かもな。一人の親としては後者の方が嬉しい気もする。が、それはあくまで親の勝手な都合でしかないしな」

    マユ「親の勝手な都合……」

    イアン「……これは自論だが、親はあくまで子供に生き方の手本と手助けをしてやってるだけに過ぎないんだ。親が考えてる幸福論が、そのまま子供の幸福に繋がるなんてことは無い。それにな、親だからって親が示した道が絶対的に正しくなるわけでもねぇんだ」

    マユ「正しいわけじゃない……」

    イアン「親って言ってもただの人間だ。神じゃねぇ。常に正しいなんてことは一切ない。というか、人間の正しさなんて、極論ただの"結果論でしかねぇ"んだ。しかも、傍から見て正しくなかったとしても、本人たちにとっては正しいなんてことはごまんとある。……ま、だからと言って道を踏み外していいって訳じゃないがな」

    マユ「……なら、どうしたらいいんだろう」

    イアン「そんなの決まってる。子供自身が後悔しない選択をすればいいだけの話だ。親の意見なんて、一つの参考と思っておけばいい。結局、お前ら子供はいつかは親から巣立って行くもんだしな。……親としては、ちと寂しい話ではあるがな。ま、コレも親のエゴってやつだよ」

    マユ「………私自身が、後悔しない選択をする」

  • 175125/08/31(日) 20:40:41

    イアン「ま、こんなこと言われたところで、だから何だって話だろうがな!だけど、こういう悩みは若い奴の特権でもある。年を取ると、また別の問題に頭を悩ませることになるからな。今のうちに満足するまで悩んでおけ。解決しようがしまいが、多少は将来の糧にはなるだろうからな」

    マユ「………」

    イアン「……それでどうする?今日はやめとくか?」

    マユ「……ううん、大丈夫話すよ。話聞いてくれてありがとう」

    イアン「それが仕事だから気にすんな」

  • 176125/08/31(日) 21:10:36

    ~ギルバートたちの元へ~


    施設職員1「あ、来た」

    ギルバート「あ、アスカさん……」

    マユ「ヤマトくん、着いてきて」(と言って、ギルバートの腕を引っ張りどこかに行く)

    ギルバート「え、え?」(されるがまま)

    ラウ「……」

    施設職員2「……吹っ切れたんですかね?」

    イアン「強引な奴だな、全く。1時間以内に戻って来んかったら探しに行くからなー!」

    マユ「探しに来るなら私の部屋の机の上を調べてからにしてねー」(伝えに戻った後、すぐに玄関の方へと向かう)

    イアン「机の上……?」

    ラウ「………あの、仕事手伝うので今日はもう少しここでお世話になってもいいでしょうか?」

    施設職員1「……しょうがない、今日は特別だからね。親御さんにはこっちから連絡入れるから」

    ラウ「ご迷惑おかけします……」

  • 177125/08/31(日) 21:20:52

    ~施設から離れた隠れた空き地~


    ギルバート「アスカさん、ここは?」

    マユ「秘密基地ってところ。ま、今日で秘密じゃなくなるけどね」

    ギルバート「……」

    マユ「寒いでしょ。はいこれ」(マフラーを渡す)

    ギルバート「……手作り?」

    マユ「残念ながら、私の数少ない昔からの私物です。暖かさは保障するよ」

    ギルバート「……有難う」

    マユ「……」


    どちらから話し始める?dice1d2=1 (1)

    1.マユ

    2.ギルバート

  • 178125/08/31(日) 21:30:08

    ギルバート「……あの」

    マユ「その話の前に、少し私の話に付き合ってくれない?」

    ギルバート「……いいよ。どんなことを話してくれるの?」

    マユ「ま、今更って言うか、頭のおかしい話なんだけどさ」

    ギルバート「アスカさんの話すことなんだから、頭がおかしいなんてことは無いと思うけど」

    マユ「そういうの今はいいから」

    ギルバート「ご、ごめん……」

    マユ「……私はね、未来が見えるんだ」

    ギルバート「え、未来が?」

    マユ「うん。近いものから遠くのものまで。私が見通せない未来なんかないってぐらい」

    ギルバート「……それは、僕のも?」

    マユ「……ううん、アナタのだけは見えなかった」

    ギルバート「なかったということは、今は見えてるの?」

    マユ「うん。見えない理由が分かっちゃったからね」

  • 179125/08/31(日) 21:50:09

    ギルバート「じゃあ、理由は何だったの?」

    マユ「……恥ずかしながら、私は思った以上に君のことが好きだったのでございます」

    ギルバート「え……」

    マユ「なに、嬉しくないの?」

    ギルバート「い、いや、そんなことないよ!ま、まあ、薄々そうじゃないかって思っていたけど、やっぱり確証まではいかなかったから……なんというかその、ちょっと驚いたというか……嬉しすぎて上手く反応が出来なったよ」

    マユ「………」

    ギルバート「で、でも、だったってことは、今はそうじゃないって事になるのかな……」

    マユ「……どうだろうなぁ。考えれば考えるほど、よくわかんなくなるんだ」

    ギルバート「わからなくなる?」

    マユ「うん。ほら、私は未来が見えちゃうからさ、普通の人よりも考えることが多いって言うか、囚われてるって言うか……」

    ギルバート「囚われてる?」

    マユ「……未来が見える弊害だよ。私の未来視はいいものだけが見えるわけじゃないし、悲しみとか後悔とかも事前にわかっちゃうわけだからさ。今はまだ感じることがない感情に振り回されることも結構あるんだ」

    ギルバート「……それは、つまり君は常人の二倍以上、悲しみや苦しみを経験することになるんだね。それは……月並みになってしまうけど、辛いことだね」

    マユ「まあ、だからと言ってそれが苦しいとかは無いというか、慣れてるわけなんだけど……だからこそ、余計なことまで考えちゃうの」

  • 180125/08/31(日) 22:06:56

    ギルバート「余計な事?」

    マユ「要するにさ、私と君が付き合うことで生じる不幸とかも見えるわけでして。そういうのを考えると、どうしてもね」

    ギルバート「なら、今ここで聞いてもいいかな?君と僕が付き合うことで生じる不幸っていうのを」

    マユ「……普通はこういうの聞きたくない人の方が多くない?」

    ギルバート「そうなの?少なくとも僕は聞きたいと思うよ。それで、僕たちはどうなるの?」

    マユ「……結論から言いましょう。私は長く生きられないの」

    ギルバート「え……」

    マユ「わかってるともうけど、私は未来視以外にも霊媒体質だし、怪異ともよくバトってるからその分死にやすくはあるの。それに、最悪なことにこの早逝に関しては、回避方法が一つもない。例え私が怪異と関わることを辞めても、私は君を置いていくことになるんだ」

    ギルバート「………」

    マユ「……ヤマトくん、私はね、君をなるべくなら悲しませたくないんだ。だから、この未来がどうしても嫌なら、この鋏で私との縁を切って」(そう言って、ギルバートに縁切りの鋏を渡す)

  • 181125/08/31(日) 22:08:52

    今日はここまでにします。

    明日はやれたら20:30頃から開始いたします。

    多分そのタイミングでスレ立てすると思います。

  • 182二次元好きの匿名さん25/08/31(日) 23:46:24

    お疲れ様でした

  • 183二次元好きの匿名さん25/09/01(月) 08:55:40

    マユもギルに負けないくらい愛が重ぇ~w

スレッドは9/1 18:55頃に落ちます

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