【SS】スティルトレ「俺が巨乳好きだったせいで……スティルが……っ!」

  • 1◆SbXzuGhlwpak25/09/14(日) 12:29:21

     どうして俺は巨乳好きなんだろう。思わずそう自問自答する。
     続いて俺が巨乳好きでさえなければ、こんな事態にはならなかったのにと頭を抱える。

     その一方で、巨乳が好きで何が悪いのかという反発心も無くはなかった。
     こちとら性に目覚めた時から巨乳が好きなんだ。
     別に巨乳かどうかで女性への態度を変えたことは──極力首から下を見ないように心掛けはするが、その程度だ。
     他人に迷惑をかけない以上、好きにさせてほしい。

     そう、他人に迷惑をかけない限り。
     彼女は、俺にとって他人なわけがない。

     でもわからない。
     どうしてなんだスティル。
     どうして──





     どうしてパッドを着けて登校して、皆がいるカフェテリアでパッドを落としてしまったんだい?

  • 2◆SbXzuGhlwpak25/09/14(日) 12:30:52

    ──時は少しさかのぼる。


    「先輩、大変なんですよ先輩!」

     声を張り上げながら駆け寄ってくる後輩を見ても、特に慌てる気にはなれなかった。
     それなりに長い付き合いだから、こいつが些細なコトでも大騒ぎするのには慣れている。
     おおかた担当しているウマ娘にキツく当たられたとか、狙っていたチケットを入手できなかったとかだろうと思っていると──

    「先輩の担当しているスティルちゃんが!」

    「……っ!? スティルに何かあったのか!!」

     聞き捨てならない言葉を耳にして、思わず後輩の肩を掴む。

    「お、落ち着いてください先輩」

    「いいから言え。スティルに何があったんだ!」

    「……言いますよ。だから、落ち着いて聞いてください」

     後輩はそういって一呼吸する。
     それはここまで走って乱れた呼吸を落ち着けるためでもあっただろう。
     しかしそれ以上に──その見開いた瞳と異様なペースのまばたきから、後輩も事態をまだ受け入れている最中で、口にするには決心が必要であるコトがうかがえた。

     いったい、いったいスティルの身に何があったんだ……っ!

    「スティルちゃんが……パッドを……とても大きなパッドを着けて登校して……」

    「……うん?」

  • 3二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 12:32:20

    スティル、男は現金な生き物なんだ
    見てるだけの巨乳より揉める貧乳を選ぶんだ

  • 4◆SbXzuGhlwpak25/09/14(日) 12:33:36

    「でも最初は、あまり気づかれなかったようなんですけど……お昼に、お昼の大勢いるカフェテリアで……パッドが……ベちゃんと大きな音を立てて……落ちたんです。
     はい、流石に皆気づきましたよ。俺もその時に気づきましたから」

    「……何を言ってんだオマエ?」

    「……何を言ってんでしょうね俺?」

     まるで理解が追いつかない。
     スティルが何故パッドなんかを着けるのだろう。
     だってスティルは、何もかも既に美しいのに。

     男の俺で予想できる女性がパッドを着ける理由は、2つぐらいしか思い浮かばない。
     ファッションのためにボディラインを整えるためか、異性の関心を惹くためか。

     スティルのボディラインは整えるまでもなく美しい。
     1カップほど大きく見せる選択肢はあるだろうけど──

    「落ちるって……相当ムリをしたサイズだったのか?」

    「目測ですけど、アレは10センチ以上……ひょっとしたら15センチは増強しかねないデカさでしたね」

    「4カップ以上……最大で6カップか。それは落とすだろ」

     パッドが胸に張り付くといっても限度というものがある。
     それに大きすぎるパッドを入れるとなると、ブラも使い慣れたサイズから自然とかけ離れた物になるだろう。

  • 5◆SbXzuGhlwpak25/09/14(日) 12:35:28

    「そんな大きなパッドじゃボディラインが壊れるから、ファッション目的ではない……か」

     そうなると異性の関心を惹くためとなるが、ここはトレセン学園。つまり女子校だ。
     周りが女子ばかりの環境でパッドを着ける理由とは、すなわち──

    「異性ではなく、同性の関心を惹くためにパッドを……!?」

    「いや、先輩のためにでしょ」

     後輩にペチンと胸を叩かれる。
     心底あきれ果てた表情だ。

    「あの子が先輩を慕っているのなんて一目瞭然でしょ。
     慕いすぎていて、これってライン越えてないかな? まああの子目立たないから、せ……う~ん、セーフッて感じでしたけど」

     ……確かに俺たちは互いを想い合っている。
     そのコトに自負だってある。
     でもそれが、スティルが大きすぎるパッドを着ける理由にはならな──

    「だって先輩、巨乳好きじゃないっすか」

    「おま……っ!」

     教育の場で、それも女子校での迂闊な発言に慌てて辺りを見渡す。
     幸いなコトに付近に女生徒の姿はなかった。

  • 6◆SbXzuGhlwpak25/09/14(日) 12:37:47

    「……確かに俺は巨乳好きだ」

     そして後輩よ、それはオマエだってそうだろう。
     互いにおススメするコトもあるので知っている。

    「しかしスティルが、俺の好みを知っているはずがない」

     俺のためにパッドを着けたという推測は、俺が巨乳好きであるというコトをスティルが知っていなければ成り立たない。

    「……アドマイヤグルーヴ」

    「……何が言いたい」

     スティルのライバルであるアドマイヤグルーヴ。
     そんな彼女の名前だけを、後輩は意味深につぶやいた。
     にわかに緊張が高まっていく。

    「スティルちゃんと彼女の仲が良いのか悪いのかは知りませんけど、絡みはそこそこありますよね?
     そしてスティルちゃんと一緒にいるコトが多い先輩も、自然とアドマイヤグルーヴと絡む機会がある」

     これは、後輩が言っているコトだ。
     それなのに俺は、何故かスティルに非難めいた目で見られているような錯覚に襲われ、ドクンドクンと脈拍が速まるのを感じる。

    「アドマイヤグルーヴのあの豊かな膨らみを見て、一瞬でも目を奪われなかったと断言できますか?」



     それは──────────無理だ。

  • 7◆SbXzuGhlwpak25/09/14(日) 12:41:36

     最初からアドマイヤグルーヴがそこにいると知っていれば、耐えられる。
     しかし予想していないタイミング──例えば振り返ったらアドマイヤグルーヴがいた場合、あの豊かで柔らかそうな膨らみは強力な引力を発する。
     相手は未成年の学生だと自身に言い聞かせても、オッパイから視線を振り切るのにコンマ何秒か要するのは仕方のないコトなのだ。

     そして──俺のコトをよく見ているスティルが、そのコトを察していないはずがない。

    「俺の……俺のせいで、スティルが?」

     俺が巨乳好きだったせいで……スティルが……既にある美しさを損なってまで、こんな暴挙を……っ!?

    「俺が巨乳好きだったせいで……スティルが……っ!」

     今スティルは、どのような恥辱にまみれているのだろうか。
     衆人環視の中であまりにも大きすぎるパッドを落とし、好奇の視線にさらされているのかもしれない。
     だとすれば──俺が守らなければ!!!

    「……っ! 待ってください先輩」

    「止めるな! スティルが、スティルが俺を待っているんだ!!」

     走り出そうとした俺を、何を考えているのか後輩が腰に抱き着いてまで止めようとする。
     力ずくで振り払おうとしたが、相手も必死だった。

  • 8◆SbXzuGhlwpak25/09/14(日) 12:43:58

    「話はまだ終わっていません! 今先輩が行くとヤバいんです!」

    「……何だと?」

    「ええっと……スティルちゃんが先輩を慕っているのは、見る人が見ればわかるレベルじゃないっすか」

    「そうなのか?」

    「そうなんですよ。で、スティルちゃんがあんなに大きなパッドを着けるなんて彼女らしくない行動をした理由も、だからわかる子にはわかっちゃって……」

    「……うん?」

     話が別の意味で不穏な方向に進んでいるのを感じる。

    「これは担当ウマ娘のあるがままを愛さないトレーナーたちが悪いんだと、ペチャパイウマ娘たちの暴動に発展してるんですよ」

    「なんでさ」

     風が吹けば桶屋が儲かるという言葉があるが、これは意味がわからない。
     どうして俺が巨乳好きだったせいで、学園内での暴動につながるというのか。

  • 9◆SbXzuGhlwpak25/09/14(日) 12:46:24

    「スティルちゃんって……目立つのが苦手な、貞淑な子じゃないですか。
     そんな子がパッドを……それも明らかにファッション目的ではないサイズを着けたもんだから……そんなスティルちゃんを、ここまで追い詰めたトレーナーサイドへの義憤が、普段の不満に最悪な感じでつながったみたいで……」

     そう話す後輩の顔色は死人のように青ざめていた。
     ふと、後輩の担当するウマ娘を思い出す。
     あまり意識したコトはなかったが、そういえば彼女の胸はかなり控えめだった。

    「もしかして……オマエが担当している子も?」

    「暴動を、扇動してます」

  • 10◆SbXzuGhlwpak25/09/14(日) 12:48:05

    ※ ※ ※



    「これは義挙ですっ!」

     ここはカフェテリア。
     毎日厳しいトレーニングと勉強に励《はげ》む彼女たちにとっての憩いの場。
     その憩いの場で、倒されたテーブルによってバリケードが築かれ、拡声器を持ったウマ娘が中心に立って声を張り上げる。
     60年代を彷彿とさせる光景に思わず機動ウマ娘隊がいないかと辺りを見渡しても、頼もしい彼女たちの姿は見当たらない。
     いや、いても何割かは学生側につきかねないので、いなくて良かったか。

    「トレーナーたる者、レースに勤《いそ》しむウマ娘のあるがままを愛さなければなりません!
     ましてや、胸などという、走るのに邪魔で、わた──本人ではどうしようもないモノを求めるなど、言語道断!!」

     おお、そうだ、そうだ。言語道断、許されない。これは私憤ではなく義挙である。
     周りにいるウマ娘たちも野太い声で次々に賛同していく。

  • 11二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 12:49:43

    うわあ、なんだかスゴい事になっちゃったぞ(他人事)

  • 12◆SbXzuGhlwpak25/09/14(日) 12:49:51

    「あの……皆さん?」

     恐る恐るといった様子でスティルが熱狂の渦に声をかける。
     普段なら気づかれなかったかもしれない。
     そもそも影の薄い彼女でなくとも、この騒乱の中ではよほど声を張りあげなければ気づけないだろう。

     しかし彼女たちは気がついた。
     一斉に首をぐるんと動かし、血走った目でスティルを見る。

    「ひっ……」

     思わず声をあげて怯えるスティルであったが、彼女たちは別のコトに注目していた。
     スティルの身をまとう服──その上衣はあまりにも大きくぶかぶかで、一目でサイズが合っていないコトがわかる。
     15センチのパッドを装着するには、これほどまでの代償が必要であったのだ。
     このような暴挙を──こんなにも控えめで愛らしい少女に強いたというのだ!!!

    『これは──義挙である!!!』

     このような悲劇を二度と繰り返してはいけない。
     想いを改めて一つにした平たい胸のウマ娘族は、その拳を天へと高々に突き出すのであった──

  • 13二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 12:50:46

    畜生ドトウー!早く煽ってくれー!

  • 14◆SbXzuGhlwpak25/09/14(日) 12:51:47

    ※ ※ ※



    「何なんだアレは……」

    「何なんでしょうね本当に……」

     柱の陰から様子を見てみたが、人知の及ぶ領域ではなかった。
     地獄のような光景を前にして男二人ができるコトなど、寄り添うように震え合うのみ。
     
    「我々は権利を主張する! 担当トレーナーの歪んだ性癖を矯正する権利を!」

     地獄の王が声高に主張している。
     見覚えのあるウマ娘であった。
     彼女が拳を振りかざし声を張り上げる度に、隣にいる後輩が小突かれたかのようによろめく。

    「オマエさ……普段どんな風に担当と接してたらこんなコトになるんだよ」

    「担当するウマ娘にパッド着けさせた先輩には言われたくないっす」

     ならば俺たち二人とも悪いというのだろうか。
     巨乳が好きというのは、それほどまでの悪だというのだろうか。
     ともあれ──

    「こんな地獄にスティルを置いてはいられない」

  • 15二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 12:54:34

    持たざる者の僻みは醜いのぅ(煽)

  • 16◆SbXzuGhlwpak25/09/14(日) 12:54:40

     何も言わずに立ち去ればいいのだが、責任感の強い彼女のコトだ。
     自分が原因で暴走を続ける生徒たちを放ってはおけないのだろう。
     明らかにサイズが大きい上衣を着て困りきっている姿は、こんな場所でなければ天使のように愛らしい。
     俺の天使をこんな地獄に置き去りにするなど、できるわけがなかった。

    「え、どうやって回収するんですか?」

    「この騒動の中心はオマエの担当だよな」

     あまり背が高い方ではないが、椅子に乗りながら身振り手振りで主張しているためよく目立っている。

    「……ええ。全力で目を逸らしたいけど、そうですよね」

    「オマエが姿を見せれば、彼女はオマエのつるし上げに夢中になるだろう」

    「……え?」

    「骨は拾ってやる」

     そっと後輩を柱の陰から押し出した。
     まるで崖から突き落とされたかのような表情をして、後輩は二歩、三歩と後ずさる。

  • 17◆SbXzuGhlwpak25/09/14(日) 12:56:34

     その間の抜けた姿は、玉座から辺りを睥睨《へいげい》する地獄の王にはよく見えたのだろう。
     彼女は一瞬、恋する少女のように目を見開くと、次の瞬間には怒りと歓喜がない交ぜとなる修羅の顔をしていた。

    「トレーナーさぁん。来て、くれたんですね? のこのこと?」

    「ち、ちぎゃ……ちぎゃうっ」

    「そこを、動くな」

     蛇に睨まれた蛙とはこのコトか。
     震えて逃げ出せずにいる後輩の姿は哀れではあったが、オマエだって巨乳好きであるコトを担当に隠し通せなかった罪があるんだ。
     甘んじて受け入れろ。
     
     ゆっくりと、甲高い足音を立てながら歩きだす地獄の王。
     もはやその目には後輩しか映っていない。
     スティルを助けだすのは今だ!

    「スティル……っ」

    「……っ、トレーナーさん!」

     スティルの身に何かあったと聞いてから、駆けつけたい衝動が体の中を渦巻いていた。
     しかしあまりに不可解で特殊な状況がそれを許さず、ここまで時間がかかってしまった。
     申し訳なさと、ようやく会えたという喜びで、気がつけばスティルを抱きしめている。

  • 18◆SbXzuGhlwpak25/09/14(日) 12:58:46

    「ごめん……ごめんな。
     俺のせいで、こんな辛い目にあわせてしまって……っ!」

     俺が巨乳好きだったせいで、君に酷い恥をかかせてしまった。
     それだけで飽き足らず、こんな地獄の一丁目で困惑までさせてしまっている!

    「……トレーナーさんは、何も悪くありません。
     私が勝手に、馬鹿なマネをしたせいで……こんなコトに」

     スティルの視線に誘われて横を見れば、後輩が地獄の王に襟首を掴まれている。
     さらには「貧乳はステータスだ! 希少価値だ!」と復唱させられているではないか。
     それを囲む平たい胸のウマ娘族も、声が小さい、魂からの声ではない、何たる欺瞞かと声を荒げている。 

    「……ここは地獄だ。
     帰ろう、スティル……一緒に」

    「でも……」

    「大丈夫だ。ここは後で俺が何とか『たいへん心強い発言です。トレーナーの鑑と言っていいでしょう──巨乳好きでさえなければ』……っ!?」

     いつからそこにいたのか。
     先ほどまで後輩を矯正していた地獄の王が、後ろで仁王立ちしている。

  • 19◆SbXzuGhlwpak25/09/14(日) 13:01:04

    「ふふふ。トレーナーさんが姿を見せたから、貴方もきっと近くにいると思ってました。
     さあ、スティルさん。貴方もトレーナーさんを正しい道に導きましょう」

     爽やかな、それでいて肉食獣を連想させる笑みを浮かべながら、彼女はそっと手を差し伸べる。
     スティルを魔の手から守らなければ……っ!

    「この方は……私にとって……とても、大切な方です」

     スティルの前に立とうとした時だった。
     彼女は逆に俺を手で制すると、先ほどまでと違った毅然とした様子で一歩前へと進む。

    「この方を、傷つけることは……どのような理由であっても、許しません……!!」

     それは、普段の彼女しか知らない者にしてみれば、目を疑うほどの迫力であっただろう。
     現にこちらを囲もうとしていたウマ娘たちは、驚いて足を止めている。

     ただし──尋常でないのは相手も同じであった。

    「……うん。スティルちゃんの気持ち、よくわかります。
     大切なんですね、その人が」

     地獄の王は臆するどころか、彼女からも一歩前へと進んでくる。
     目と鼻の距離で、方や毅然とした態度で、方や悠然とした態度でにらみ合う。

    「その大切な人が、ただ胸がデカいだけの女に盗られても……スティルちゃんはいいのですね?」

    「……っ!」

     スティルに動揺が走ったコトは、傍から見ても明らかであった。

  • 20二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 13:01:49

    そこまで言うならその慎ましい胸を味合わせてくれるんだよn───(ここから先は血で汚れて読めない)

  • 21二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 13:03:37

    アルヴの胸はしゃーないだろ許してやってくれ

  • 22◆SbXzuGhlwpak25/09/14(日) 13:04:01

    「と、トレーナーさんは……胸だけでパートナーを選んだりは……しません」

    「本当に? 本当にそう思っているのなら、なんでスティルちゃんはこんなモノを胸に着けたのですか?」

    「そ、それは……」

     スティルは一瞬だけ俺を見た。
     その一瞬だけで、彼女が抱えている不安と恐怖がわかってしまった。
     ……俺の不甲斐なさが、彼女を悩ませている……っ。

     それでもスティルは、なおも言い返そうとした。
     その時であった──

    「ライトハロー」

     たった一つのつぶやき。
     しかしそのつぶやきが、スティルの動きを完全に止めてしまった。

    「ライトハロー、メジロラモーヌ、アドマイヤグルーヴ、ライトハロー、ライトハロー。さらにもう一つライトハロー……」

    「あ、嗚呼──」

     スティルは耳をふさいだ。
     呪文のように連なる言葉から逃れようと。

     スティルは頭を抱えた。
     勝ち誇った笑みで胸を揺らす女から、大切な人を奪われる幻覚に耐えようと。

     もはやスティルの精神は、限界に達しようとしていた。

  • 23二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 13:06:09

    お前らライトハローさんを何だと思ってんねん

  • 24二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 13:06:56

    >>23

    暴力的なおっぱい

  • 25◆SbXzuGhlwpak25/09/14(日) 13:07:28

    「怖いよね? 一緒に絆を深めている私たちじゃなくて、胸のデカいウマ娘に持っていかれるんじゃないのかって?
     そんな恐怖を担当ウマ娘に抱かせるのは──トレーナーの罪だとは思いませんか?」

    「ち、違います。
     悪いのは……トレーナーさんを信じきれない私であって、トレーナーさんでは……決して、決して……っ」

    「もういいよ、スティル」

     がくがくと震える足で、それでも俺を守ろうとするスティルの肩に手を置く。
     こんなにもか細い肩で、彼女は戦ってくれた。
     次は──俺に君を守らせてほしい。

    「だ、ダメですトレーナーさん!
     貴方も、あんな風になっちゃいます!」

     スティルが必死になって指をさす。
     スティルが人を指さすなんて珍しいなと、感覚が恐怖でマヒしているのか呑気なコトを思ってしまった。
     彼女の指さす先には、やつれた様子でうつむきながら「貧乳万歳、貧乳最高……きょにゅ、きょにゅにゅにゅうううううぅ」と口から泡をこぼす後輩の姿がある。

  • 26二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 13:08:14

    でもハローさんやアルヴさんよりラモさんが一番スティルには効きそう
    スティトレの思い出の走りは上回れてもおっぱいは逆転できないから……

  • 27二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 13:08:35

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  • 28二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 13:08:46

    クソッ!平たい胸族の怨嗟がここまでのモノだとは…!

    いつの時代も嫉妬と逆恨みは魂を歪めるという事かっ!!

  • 29二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 13:10:11

    性癖を歪めるのではなく性癖を増やす方向にすればいいものを……

  • 30◆SbXzuGhlwpak25/09/14(日) 13:10:47

    ──これは、間違っている。

     ただ巨乳が好きというだけで生み出される、悲劇の数々。
     その悲しみの連鎖を断ち切るには、根本からの誤解を解かなければならない。

     俺へと自然に視線が集まってくる。
     周りを囲むウマ娘たちからの非難がましい目は、スティルを思い詰めさせたからだろう。
     横にいるスティルからは、心配でたまらないという視線が。
     そして──真正面からは、遺言だけは聞いてやろうという寛容で残酷な瞳が。

    「君たちは皆、勘違いをしている」

    「勘違いとは?」

     平坦なその口調は、屁理屈は許さないという圧が込められている。
     でもこれは、屁理屈なんかじゃない。
     男ならば誰もがわかってくれる──真理なのだから!

    「確かに俺は、大きい胸が好きだ。
     そして男の多くがそうで、君たちを傷つけたかもしれない。
     けど、大きい胸よりも大切なモノがある」

    「……それは?」

  • 31◆SbXzuGhlwpak25/09/14(日) 13:12:45

     続きを促す声は、誰のものだったのだろうか。
     地獄の王かもしれないし、取り囲むウマ娘たちかもしれない。
     もしかするとスティルだったのだろうか。
     緊張と決意で茫洋《ぼうよう》とする意識の中で、俺は力の限り叫んだ。



    「ただ大きなだけの胸よりも、愛する人の胸の方が大好きなんだ!!!」


     
     オッパイに惹かれるコトはある。
     けどオッパイだけで人を好きになるコトはない。

     人を好きになるのに、オッパイは理由にならない。
     好きになった人のオッパイならば、たとえ小さくたって愛おしい。

    「だから……大きいのが好きだからって、矯正なんかする必要はないんだ。
     君たちも、俺たちも──ありのままでいいんだ」

  • 32二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 13:13:17

    デカけりゃいいんだぜ?((殴

  • 33二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 13:15:02

    ところでこんなに大騒ぎしたら緑の魔神がやってきませんかね

  • 34◆SbXzuGhlwpak25/09/14(日) 13:15:27

    トレーナーさん……」

     横を見れば、スティルの瞳が涙で潤んでいた。
     しかしそれは悲しみでない。
     不安と恐怖から解放された、安堵の涙だ。

     スティルは涙を拭うと、そっと口を開いた。





    「それはそれとして、大きい方が嬉しいんですよね」

    「それはそう」





    「ぎょめ、ぎょめんしゅてぃる! ついくちゅがしゅべって!」

    「もう……っ、トレーナーさんの……もう!」

     こうして俺は、怒ってるんですよと肩を怒らせるスティルに頬をつねられるのであった──

  • 35二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 13:18:49

    こんなイチャイチャシーン見せられて暴徒たちは冷静でいられるのだろうか…

  • 36◆SbXzuGhlwpak25/09/14(日) 13:19:17

    ※ ※ ※



    「何とか昨日は乗り切れたな……」

     昨日の惨劇を思い出しながら、トレーナー室で独り言を口にする。

     スティルへの失言で話は振り出しに戻るかと思ったが、囲んでいたウマ娘たちは途端にシラケた顔をして去っていった。
     去り際に「夫婦喧嘩は犬も食わぬ」と吐き捨てられたのがショックではあるけど。

    「アレだけの騒ぎだったんだ。多少の犠牲は……うん、このぐらいは多少のうちだ」

     去り行くウマ娘たちの一人が、後輩の襟首を掴んだままだったのを思い出してしまう。
     今朝再会できた後輩の様子はというと──

    『貧乳ハすてーたすダ! 希少価値ダ!』

     彼は口ではそう言いながら、焦点のあってない瞳もまま無心で手を動かしていた。
     それは平たい胸をさする動きではなく、豊満な果実──それも桃ではなくメロンを愛でようとするモノであった。
     精神が屈服してもなお抗う肉体の神秘には、戦慄を覚えざるを得ない。
     そして俺はというと──

  • 37二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 13:20:42

    慎ましいのもたわわなのも、どちらも楽しめればそれは人生を豊かにする嗜好である

  • 38◆SbXzuGhlwpak25/09/14(日) 13:21:26

    『あのトレーナーさんがそうらしいよ?』

    『え、パッドを着けるまで追い詰めたっていう巨乳好き?』

    『Dは貧なんだって』

    『は? 殺しておこうか?』

     などとあるコトないコト言われている次第である。
     しかしそんなつもりは無かったとはいえ、スティルに大勢の前で恥をかかせてしまったのは事実。
     そしてスティルの暴挙も、俺が彼女に不安を覚えさせたのが原因なんだ。
     この程度の風評被害は甘んじて受け入れよう。
     もう二度と、俺の性癖でスティルに不安なんか覚えさせやしない。

     そう覚悟を決めていると──

    「トレーナーさん……」

    「ん、スティル。お帰り」

     授業を終えたスティルがトレーナー室にやってきた。
     今日は次のレースについて打ち合わせをしてから練習に入る予定だ。

    「……」

    「……? スティル、どうかしたのかい?」

  • 39◆SbXzuGhlwpak25/09/14(日) 13:23:21

     これから打ち合わせだというのに、トレーナー室に一歩入ってからスティルが動こうとしない。
     体調が悪いのかと顔色を見ると、かすかに頬が紅潮している。

    「スティル? もしかして熱っぽくないか?」

    「熱っぽい……そうですね、ある話を聞いてから……体が熱いんです」

     自分の顔に手を当てると、彼女はそのままうなだれてしまい顔が見えなくなる。
     これには椅子を倒しながら慌てて立ち上がった。
     昨日の心労が原因だとすれば、俺のせいでスティルが苦しんでいるコトになる。

    「スティル? ちょっと熱を──」

     測らせてくれ。そう続けようとした言葉は止まってしまった。
     彼女の白く細い指の隙間から、ぞっとするほど美しい赤い瞳を見てしまったせいで。

    「知ってますか、トレーナーさん」

     ガチャリというカギを閉める音が部屋に鳴り響く。





    「妊娠すれば──────────胸が、大きくなるんです」



    ~おしまい~

  • 40二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 13:24:07

    これには貧乳ウマ娘たちもドン引き

  • 41◆SbXzuGhlwpak25/09/14(日) 13:25:08

    最後まで読んでいただきありがとうございました。

    スティルを育成していると、どうしてもシナリオとサポカのせいでアルヴっぱいに目を奪われてしまいます。

    ごめんね、ごめんよスティル。

    そして早く実装されてねアルヴ。


    後輩トレーナーは池添説を聞いたことがあります。

    そうなると当たりの強い担当ウマ娘はスイープなんでしょうけど、成長期がこれからのスイープは胸にコンプレックスは無さそうなのでオリウマ娘(地獄の王)にしました。

    それではさようなら。




    あにまんでのおきてがみ(黒歴史)

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  • 42二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 13:27:17

    なんだこの斜め上のオチは……
    楽しく読ませていただきました
    ありがとうございます

  • 43二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 13:29:02

    地獄の王…つまり、ハーデス…?

  • 44二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 13:30:51

    ……………ヤバい、最近アニメ見たせいか最後がぬきたしENDに思えてしまった……………

  • 45◆SbXzuGhlwpak25/09/14(日) 13:31:05

    >>23

    合法おっぱい

  • 46二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 13:40:59

    これ貧乳ウマ娘の暴徒の中に自分のトレーナーがデカ盛り性癖じゃないかと確認してみたら、更に尖った性癖を告白されてちょっと距離が出来たとかありそう

    T「俺、眼球フェチなんだ。だから──舐めたいぐらいに君の眼は好きだ。」
    モブウマ娘「契約解除で!!!」

  • 47二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 13:52:11

    スティルのssだからとんでもなオチで終わっても許されるんだ()

  • 48二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 13:55:31

    スティルとスティルトレのイチャイチャに巻き込まれ損した後輩T&担当ちゃんに幸あれ

  • 49二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 14:00:48
  • 50二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 14:03:31

    >>46

    待てよ?トレセン学園に異常性癖に溢れかえれば貧乳だ巨乳だと騒がなくなるのでは?!




    そしてトレセン学園から大量のトレーナーがクビになった

  • 51二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 14:07:01
  • 52二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 14:18:39

    このトレーナー次の担当はホッコータルマエなんですよね

  • 53二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 17:01:32

    Dは貧なんだって

    これだとトレセンで貧じゃないウマ娘20人もいないんじゃないか?

  • 54二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 17:05:39

    >>53

    Dというとだいたいネオユニぐらいか

  • 55二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 19:50:58
  • 56二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 20:08:11

    結構長いはずなのに面白くてあっと言う間に読み終えてしまった
    ありがとうございました

  • 57二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 21:14:10

    パッドエンドってこういう…

  • 58二次元好きの匿名さん25/09/14(日) 21:23:54

    普段SSはあまり見ないんだけど、スティルに惹かれて
    面白かったですありがと

  • 59二次元好きの匿名さん25/09/15(月) 01:47:25

    >>52

    またスティルが妬いてしまう

  • 60二次元好きの匿名さん25/09/15(月) 01:55:41

    男は大きいものに惹かれる生き物だからね、仕方ないね

  • 61二次元好きの匿名さん25/09/15(月) 02:38:01

    ふん、デカいだの小さいだの、ソレこそ呆れた話だ……













    触らせてくれる胸が一番いいに決まってるだろ

  • 62二次元好きの匿名さん25/09/15(月) 03:54:49

    >>61

    「それはそれとして、大きい方が嬉しいんですよね」


    「それはそう」

  • 63二次元好きの匿名さん25/09/15(月) 05:41:43

    なあこの大規模な扇動を行った「後輩の担当バ」って……

  • 64二次元好きの匿名さん25/09/15(月) 06:16:17

    どうせまた酷いイメソンだろと思ってたら神だった
    まじで面白かった。後輩トレもいい味出してて好きよ

  • 65二次元好きの匿名さん25/09/15(月) 06:42:03

    スティルは育成シナリオでトレーナーがラモーヌに目を奪われていたのを知っていて悋気丸出しでトリプルティアラ目指しますって宣言したからな……
    このやらかし、やるorやらないかでいえば結構な比率でやると思います

  • 66二次元好きの匿名さん25/09/15(月) 16:36:10

    ラモーヌがでかい側だからこそ説得力が強まってしまう

  • 67二次元好きの匿名さん25/09/15(月) 18:32:59

    スティルに危機感を抱かせるにはラモーヌが最適のはずなのに
    ライトハローの説得力が強すぎる

  • 68二次元好きの匿名さん25/09/15(月) 19:02:37

    まあデカいおっぱいが好きなのは男の性だからしょうがない

  • 69二次元好きの匿名さん25/09/15(月) 19:29:11

    読ませる文章だし見たことあるなぁと思ったらやっぱり童貞の人だった
    お疲れ様です

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