あのウマ娘は今〜ゼンノロブロイ編〜

  • 1二次元好きの匿名さん22/05/18(水) 21:06:08

    ゼンノロブロイ。
    本格化を迎えていなかったため王道のクラシック三冠路線を歩むことはできなかったが、黒鹿毛を靡かせて天皇賞秋、ジャパンカップ、有馬記念の秋シニア三冠を成し遂げたウマ娘。特に有馬記念ではレコード記録を打ち出し、その圧倒的な強さから"英雄"とも称された名ウマ娘である。
    しかし、世紀末覇王朝の繁栄と深い衝撃に世代を挟まれてしまっていたためか、どうしてもその知名度が高いとは言えない。
    そこで我々は彼女の活躍と、その後の生涯について世に広く知らしめるためにもゼンノロブロイに取材を申し込んだ。

  • 2二次元好きの匿名さん22/05/18(水) 21:06:50

    「ほ、本日はよろしくお願いします…」

    黒鹿毛に、ぴんと突き立つ大きなウマミミ。
    ゆったりとしたセーターに身を包んだ彼女こそ、あのゼンノロブロイである。
    今回我々が取材場所として使わせていただいているのは、彼女の仕事部屋だ。
    至るところに資料や原稿の山が積み重ねられ、開きっぱなしになっている本に囲まれるようにして彼女は座っていた。

    「すみません、散らかっていて……。本当はいつももっと綺麗にしてあるんですけど、〆切が近いとどうしても…」

  • 3二次元好きの匿名さん22/05/18(水) 21:07:17

    そう言うとロブロイ氏は照れくさそうに頬を掻いた。今、ゼンノロブロイ氏は月刊の文芸誌の連載を何本も抱える売れっ子小説家だ。
    テントウムシのページで開かれたままの昆虫図鑑の上に置かれたカレンダーに、いくつも印が付けられている。恐らくこれは一つ一つが〆切なのだろう。現に今も、彼女はパソコンに向かい合いながら取材を受けている。相当余裕がないと思われるのに、良く取材を許可して下さったことだ。
    思わず我々は恐縮してしまった。

    ーーー今回はどうして取材を引き受けて下さったのでしょうか?〆切が近いとお見受けしますが

    「私のことを知ろうとしてくれている方がいるというのが嬉しくて…。このところずっとカンヅメでしたし、もう長いこと編集者の方以外と話した覚えがありません…。それに、今回の取材を私の物語に活かせたら良いなと思ったんです」

  • 4二次元好きの匿名さん22/05/18(水) 21:07:52

    それから暫く、連載している小説についての話を伺った。ある一人のウマ娘が、ターフの王者に登り詰めるまでの物語。貴族の令嬢が怪盗と恋に落ち、深い闇の底を駆け回るラブロマンス。昆虫学者が不可解な難事件を次々解決していくミステリー。彼女の書く物語はどれも魅力的で、読む者に力と勇気をくれる。ちょうど、彼女の現役時代の凄まじいまでの走りのように。

    ーーーどうして小説家になろうと思ったんですか?

    元競走ウマ娘は、基本的に何らかの形でレースに関わろうとする者が多い。後進の育成に務める者、裏方でウマ娘が安全にレースをできるように下地を造る者、或いはウマ娘のことを世間に広めようと広報活動に勤しむ者など様々だが、皆根底には互いに切磋琢磨し、全てを出し切って死闘を繰り広げたターフが忘れられないという想いがあるに違いない。人間でしかない我々にはその気持ちを推し量ることしかできないが。それは恐らく彼女も例外でないが、ターフへの情熱を抑え込んでまで文学の道を志したのにはどのような理由があったのだろうか。
    ロブロイ氏は引退し学園を卒業した後、高名な小説の賞を幾つも受賞しそのままデビュー、そして今に至る。

  • 5二次元好きの匿名さん22/05/18(水) 21:08:19

    「私は昔から物語を読むことが好きでした。その中には色々な英雄がいました。三国志の人々、アーサー王、神話の神々。あの人たちのように私も輝きたい。ずっとそう思い続けて、トレセン学園に入りました。私も、英雄になるのだと。そして、その夢は見事に叶いました。テイエムオペラオーさん以来の秋シニア三冠。そんな偉業を成し遂げることができたのも、私のトレーナーさんのお陰なんです」

    力強い口調でそう述べた彼女の視線が、部屋の端に投げられる。我々もそこを見ると、そこだけ本が積まれておらず、物が遠ざけられていた。
    そこにあるのは、一枚の写真。
    現役時代、秋シニア三冠を達成した有馬記念のウィニングライブ。そこで撮られたと思われるロブロイ氏と涙ながらに映る一人の男性ーーー。
    これは、彼女の………?

  • 6二次元好きの匿名さん22/05/18(水) 21:09:20

    「…っ、そうです。彼こそ、私を"英雄"にしてくれたトレーナーさん。いえ…。トレーナーさん"だった"人です。あの人は、私が有馬記念で1着になって秋シニア三冠を達成し、暫くした後に病気で亡くなってしまいました…。元々身体が弱く、そう長く生きられないと言われていたらしいです。トレーナーになったのも、病室で見たウマ娘のレースに勇気を貰ったからだって、良く話してくれました。そして…、そして、私の走りにも元気づけられたって。私は彼の"英雄"だって、そう言ってくれたんです。私はクラシック三冠路線で活躍できず、歯がゆい思いでいっぱいでしたから、その言葉に何度も励まされました。私にとっての"英雄"は、トレーナーさんなんですよ」

    彼女は袖で目元を拭った。それほどまでに深い信頼関係に結ばれていたのだろうか。思わず、我々の胸も締め付けられるようだった。彼女は尚も、昔を想い返すように言葉を重ねる。

    「小説家を目指したのも、トレーナーさんが勧めてくれたからなんです。学園時代にもこっそり小説を書いていたんです。これは同室だったライスさんにもナイショでした。トレーニングの後、トレーナーさんがいない間も小説を書いていたんですけど、ある日それを見つかってしまって…。読ませてくれないか、って言われました。凄く恥ずかしかったですよ?本当に。あの人はいつもそうなんです。こっちがどう思っているかも良く考えないでずけずけと……。あっ、ごめんなさい。話が逸れてしまいました。まだ未熟な私の小説を読んで、『面白いな。君には才能があるよ』って言われました。トレーナーさんはいつもキザなことばかり言うんです本当に…私を"英雄"なんて風に呼んでくれたのだって…んんっ、ごめんなさい。また余計な話を。嬉しかった。初めての読者、応援してくれる人。真剣に書いてみようかな、と思い始めたのもその頃だったと思います」

  • 7二次元好きの匿名さん22/05/18(水) 21:09:48

    しかし、まだ彼女は厳しい競走生活が残っていた。そのため、小説からは少しずつ筆が遠のいていったとのことだ。転機が訪れたのは、彼女のトレーナーが世を去った時のことだったと言う。

    「トレーナーさんがある日突然倒れました。私、びっくりして。あの頃は心に余裕がなくて、ライスさんやスイープさん、代わりのトレーナーさんにも大変な迷惑をかけてしまいました…。私は毎日のようにトレーナーさんの病室に通いました。まだ英雄譚はページが埋まっていないのに、伝説はこれからなのに。こんな志半ばで終わりになるのなんて嫌だった。でも、分かってきてしまったんです。日に日に弱っていくトレーナーさんを見て、あぁ、もうここまでなんだって。そう思うようになってしまえば、もうレースに勝つこともままならなくなってきました。"英雄"の名が聞いて呆れます。でも、そんな私でもトレーナーさんは私に勇気づけられたと言ってくれたんです。そして、あの日。未だに忘れられない、私達の物語の終わり。トレーナーさんは最後に、小説家を目指してみないかと言いました。私の物語で、多くの人に夢と希望を与えてくれないかと。私にはその才能があるからと……」

  • 8二次元好きの匿名さん22/05/18(水) 21:10:36

    ロブロイ氏は、在りし日の約束を見事に守ったのだ。そして、多くの人の心に残る物語を次々と書き上げた。でも、彼女の物語はまだ続いている。彼女が今書いている物語こそ、新たな伝説の1ページになることだろう。少しだけ読ませていただいて、我々はそう確信した。

    『これは、とあるトレーナーの物語。ある一人のウマ娘と出会い、共に栄光を手にする物語』

    「ずっと、トレーナーさんのことは小説に書けなかった。どうしても、昔のことのように片付けたくなかった。でも、今回取材の話をいただいて、考えが変わりました」

    ーーー我々の?

    「はい。物語は、誰かの心に永遠に残り続けるから物語なんです。かつて生きた英雄たちが今もなお語り継がれるように、今を生きる人々の心に生き続けるから物語は物語たり得るのです。私と彼の物語はもう終わったと思っていた。でも、終わりじゃないんです!全てはここから始まるのです!何年何十年何百年、永劫語り継がれる物語を書いてみせます!私にはそれができます。だって、私は…トレーナーさんの"英雄"なんですから」

    "英雄"ゼンノロブロイ。彼女の物語は、今もなおそのページを刻み続けているのである。

  • 9二次元好きの匿名さん22/05/18(水) 21:11:14

    セイバー思い出した

  • 10二次元好きの匿名さん22/05/18(水) 21:11:25

    (またドトウの〜終〜を持っていなかった…今回少ないけど許して…明日も書けるか分かんないし)

  • 11二次元好きの匿名さん22/05/18(水) 21:14:54

    ウマ娘の歴史を感じるいいssでした……いい……

  • 12二次元好きの匿名さん22/05/18(水) 21:16:34
  • 13二次元好きの匿名さん22/05/18(水) 21:22:36

    トレーナーさんとの思い出を書いていくんだよね...

  • 14二次元好きの匿名さん22/05/18(水) 22:02:24

    (トレーナーの死は馬主さんから連想しました)

  • 15二次元好きの匿名さん22/05/18(水) 22:12:25

    >>9

    ストリウスがトレーナーのやつ好き

  • 16二次元好きの匿名さん22/05/18(水) 22:17:50
  • 17二次元好きの匿名さん22/05/18(水) 23:46:29

    (アイデアが切れたのでウマ娘と職業のネタ分けて下さい)

  • 18二次元好きの匿名さん22/05/18(水) 23:51:39

    マチタンの食堂?
    あとはネイチャさんの商店街のお店?

  • 19二次元好きの匿名さん22/05/18(水) 23:58:40

    あったよ!ドトウ!

  • 20二次元好きの匿名さん22/05/19(木) 10:02:48

    ageません!

  • 21二次元好きの匿名さん22/05/19(木) 19:34:35

    (今日は投稿できません…明日出来ればエイシンフラッシュを)

  • 22二次元好きの匿名さん22/05/19(木) 23:18:06

    一応age

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