ここだけモザイク世界線 3

  • 1二次元好きの匿名さん22/05/20(金) 22:21:50

    ※注意

    1がひたすらSSを書いているスレです。


    前スレ

    ここだけモザイク世界線 2|あにまん掲示板※注意1がひたすらSSを書いているスレです。前スレhttps://bbs.animanch.com/board/541438/以下初期設定。〇ドラルクΔとは違う世界線の吸対所属のクソ雑魚ダンピールおじ…bbs.animanch.com

    以下初期設定。


    〇ドラルク

    Δとは違う世界線の吸対所属のクソ雑魚ダンピールおじさん。

    本編世界よりも新横の治安が多少良いので悠々自適に公務員生活を謳歌している。

    以前は吸対のカナリアとして活躍していたが、最近優秀な新人が入ったのでもっと楽ができるぞーと息巻いていたところに謎の吸血鬼コンビのお世話係に任命されてしまった。

    アルマジロのジョンとはいつも一緒。たまに酷い悪夢を見て寝不足になるのが最近の悩み


    〇ロナルド

    突然ドラルクの前に現れた謎の吸血鬼コンビの片割れ。

    日光やにんにく、そして銀とあらゆる弱点が通用しない恐るべき吸血鬼だが何故かセロリが苦手。

    吸血鬼としての能力は非常に優秀で、大抵の能力は使えるみたいだが、ここ一番の場面ではなぜか銃か拳を重用する癖がある。

    過去に致命的な失敗をしたとのことで表情が険しい。

    ドラルクの後先考えない行動によく口を出しがちで、特に夜の勤務時間時はヒナイチともどもひな鳥のようにドラルクについてまわる。

    ドラルクが就寝中などにヒナイチとふらっと出かけてはボロボロになって帰ってくることがある。しかし何をしているのか絶対に話してくれない。


    〇ヒナイチ

    ドラルクの前に現れた吸血コンビの二人目。

    ロナルド程は弱点に耐性を持っておらず、特に日の光に弱い。

    日光に関しては「素質が無いのに無理やり転化した代償」とのことで、髪の赤色も若干濁ってしまっている。

    代わりに夜の闇において彼女を捕まえられるものはいないほど俊敏であり、また二刀流の達人でもある。

    ロナルドとは兄妹のように仲が良いが別に実の兄妹でもなければ恋人とかでもないらしい。

    たまにロナルドともども泣きだしそうな顔でドラルクを見ている時がある。

  • 2二次元好きの匿名さん22/05/20(金) 22:22:44

    〇半田
    吸対所属のエース。とにかく仕事ができるのだが、真面目過ぎて余裕がない所がある。
    同じダンピールで先輩にあたるドラルクには懐いているようだ。
    新たに表れた吸血鬼コンビには大いに警戒しているのだが、なぜか軽口をたたきやすく内心ホッとしている。なぜだろう?

    〇ヒヨシ
    レッドバレットの異名を持つ腕利きのハンター。妹が一人いる。
    無類の女好きだが過去に盛大にやらかしたこともあり、ある程度自制している。
    最近現れた吸血鬼が自分に似ているのが妙に気になる。あの半分でも身長があればな……。

    〇ミカエラ
    吸対所属のエースその2であり、人間。半田の先輩筋にあたり、弟が一人いる。
    きっちりと制服を着こなし真面目に職務に当たっているが、最近現れた吸血鬼がその事に茶々を入れてくるので困惑している。
    何が問題なのだ!

    〇ケン
    突然ハンターギルドに現れ、ハンターをやりたいと言い出した謎の吸血鬼。
    催眠と結界の二重使用という極めて高度な技術を持つ。ロナルドとヒナイチは以前からの知り合いのようで、たまに共同で戦ったりもしている。
    何故か吸対所属のミカエラをよく茶化す。

    〇ディック
    「揺らぐ影」の二つ名を持つ古き血の吸血鬼。
    ロナルドとヒナイチがピンチになるとどこからともなく現れ、変身能力で場をかき回して去っていくタ〇シード仮面的存在。
    2人に協力するのは何か目的があるようだ。以前、息子がいたらしい。

    〇カズサ
    神奈川県警吸血鬼対策部本部長。
    人員不足だった新横吸対の為に、渋るイギリス吸対から人材を引っ張ってきた人。
    人員の一人はクソ雑魚ダンピールおじさんだったが十分働いてくれるのでオッケー。
    (ヒナイチを見て)おや、そこの吸血鬼のお嬢さん、オレの顔に見覚えがあるのかい?

  • 3二次元好きの匿名さん22/05/20(金) 22:23:26

    〇ジョン

    ドラルクと永遠を誓う愛すべき〇。


    最近嫌な夢を見るんだヌ。黒い何かがドラルクさまに襲い掛かるんだヌ。

    そして、まるで存在をすする様にドラルクさまが消えていくんだヌ。


    ヌンは何もできなかったヌ。

    見ることしかできなくて、そしてヌンの体もぼろぼろと塵になっていくんだヌ。

    ……夢はいつもそこで終わりヌ。



    基礎ルール

    ・御真祖とフクマさんが存在していない

    ・そもそも竜の一族が存在していない。ノースディンは存在している。ドラウスたちは人間としてなら存在しているかもしれない

    ・記憶の持ち越しは元から吸血鬼か人→吸血鬼のみ。記憶のない吸血鬼もいる

    ・記憶を持ち越した者は、家族との血縁関係や友人関係がなかった事になる。

    ・吸血鬼が人間かダンピールになっている場合は確定で「何か」があった。

    ・本編で複数能力持ちだった吸血鬼のうち何人かは一部の能力が消えている場合がある(例、イシカナがタピオカの能力しか持っていない)

    ・一部の人間にもうっすらと記憶の残滓が残っている場合があるが夢のようにおぼろげ。

    ・存在が丸々消えている吸血鬼もいる(例、へんな)

    ・ロナルドヒナイチは頻繁に「何か」と戦っている


    ・「それ」は竜の臭いに惹かれている


    初代スレ

    ここだけ|あにまん掲示板ロナルドとヒナイチが吸血鬼の世界〇ドラルクΔとは違う世界線の吸対所属のクソ雑魚ダンピールおじさん。本編世界よりも新横の治安が多少良いので悠々自適に公務員生活を謳歌している。以前は吸対のカナリアとして活…bbs.animanch.com
  • 4二次元好きの匿名さん22/05/20(金) 22:25:46

    前回のあらすじ。
    ゼンラニウムは万能。

  • 5二次元好きの匿名さん22/05/20(金) 22:26:57

    ヒマリは山に向かうチノミダイダラに向かって小さくなるまで手を振る。
    なんとか誤解がとけてくれてよかった。
    自分を助けてくれただけなのに、余計なケガをさせてはあまりにも悲しかったから。

    「うむ!巨大な同胞の誤解が無事とけたようで良かった!」
    元祖股間満開男ことゼンラニウムが満面の笑みで言った。
    実は以前のヒマリの事を覚えている数少ない吸血鬼の一人だ。
    小兄の事務所の帰りに依頼相談の付き添いをした時以来ではあったのだが、まさかこんな縁ができると思わなかった。

    「時に同胞よ、大分能力が荒れていたようだが大丈夫なのか?」
    「あ」

    そういえばショックを受けた後なんだか何かの抑えが全く効かなくなった覚えがある。
    一度気絶する直前に小兄がいてくれて、それから……。

    「その件はこちらの方でしかるべき処置をしましたので大丈夫ですよ」

    ヒマリとゼンラニウムがばっと声の方向に振り返る。
    声の主は見えないが、背後には空間に人の上半身が収まるほどの真っ暗な大穴が開いていた。
    大穴から、またあの男性の声が聞こえる。

    「ひとつ、つじつま合わせのご協力をお願いしたいんです」



    ロナルドがようやくドラルク達の元へと降り立つと、上半身裸で項垂れているヒヨシを見て全てを察した。

    「あ、兄貴、その、大丈夫?」
    「……何も聞くな」「ごめん」
    「まーヒヨシ君は災難だったが、事実効果てきめんであのへんなバグっぽいのも消えて万々歳だ。種様様だな!」

  • 6二次元好きの匿名さん22/05/20(金) 22:27:59

    ドラルクが他人事のようにけらけらと笑う。
    (クソ砂笑ってっけどおめーも股間満開男になった事あっからな!!)
    ロナルドは本音を言いたいのをぐっとこらえた。

    「ところで、記憶の方はどうなったんだい?」
    ドラルクがふと思い出したように尋ねる。
    「それは、その」
    ロナルドは慌てた。またヒヨシの記憶を刺激したらさっきの影みたいなのが出てきてしまうのでは?
    ヒヨシが思い出してくれそうだった事実は嬉しかったが、それで今のヒヨシの経歴が無かったことになるのは別問題である。
    (なんとかそっち方面はごまかせねえか!?)
    ロナルドが一人テンパってわたわたしていると、ヒヨシはドラルクに尋ね返す。
    「記憶?何のことだ?」
    「いやだから、ヒマリ嬢とロナルド君が君と兄妹って言ってた話」
    「その事か、行方不明になった時は俺も焦ったが、こうして五体無事にヒマリは見つかったんだ。今はそれでいいだろ」
    「えっ?」

    「まあ、ロナルドどころかヒマリまで吸血鬼になったのは予想外じゃったがな!」
    ヒヨシはおおらかに笑う。まるで、ずっと抱え込んでいた重い悩み事がようやく晴れたかのような笑い方だった。
    「ヒヨシ君、行方不明の兄妹の話なんて私」
    「そうだな!俺もヒマリだけ見つからなくてどうしようかって思ったけど、無事に見つかって本当に良かったぜ!な!ヒナイチ!」
    「そうだな!ロナルド!」「ヌッ⁉」
    「なに二人して会話合わせてんの!?だって今のおかグエッ」
    ロナルドとヒナイチはドラルクの首根っこをひっつかむと急いで内緒話の為の円陣を組む。
    そして二人そろってドラルクに詰め寄る。
    「いいかドラ公、今は会話を合わせろ」「これ以上事件を増やして残業を伸ばしたくないなら話を合わせてくれ」
    「二人とも圧が強い強い!!」「ヌヌヌ~⁉」
    「三人と一匹ともどうしたんじゃ?」
    ヒヨシが訝しげにロナルド達を見る。

  • 7二次元好きの匿名さん22/05/20(金) 22:28:57

    「なんでもないぜ!なっ」「ああ」「ヌ……、ヌン!」
    「ならいいが」
    ヒヨシの追及が無くなったことに二人はホッとする。
    おそらく裏方の働きで記憶のつじつま合わせが行われたらしい。
    本来の事実と経緯はかなり違う事になっていそうだが、兄妹であるという事実が残っただけでも感謝しなければ。
    (あとでヒマリにも言っとかないと)
    ロナルドが今後の事を考えていると、上空から人影が降りてくる。

    「ゲッ」
    ドラルクがあからさまに嫌そうな顔を浮かべた。



    「どうやら火急の要件は解決したようだな?」
    「ノースディン」「氷笑卿!お前は一回俺がのしたはずじゃ!?」
    空に悠然と浮かんでいたのは氷笑卿ことノースディンであった。
    ヒヨシとの戦闘の名残か、すこし服が汚れてしまっている。

    「あんなものまともに受けるわけが無いだろう?確認が甘かったな、退治人くん」
    「とか言っておきながら時間稼ぎはかなりギリギリ、目標だったヒヨシ君撃破はままならなかったヒゲヒゲですよ」
    「お互いに必要以上の負傷は避けたと言ってもらおうか」
    「なーにぬかしとんのか負けは負けだ!」「ヌヌヌ、ヌヌヌ~!」
    ドラルクがここぞとばかりにノースディンの弱い所を刺していく。

    「いやでも、眼帯ありで銃撃戦は大変だったと、思うよ……?」
    「距離感掴めないしな」
    流石に臨時の弟子二人がフォローを入れる。
    さらにいうとノースディンの本命の能力である氷は封じられているし、ヒヨシはある事情によりチャームがほとんど効かないため念動力のみで戦う羽目になった大ハンデ戦であったことも記しておきたい。

  • 8二次元好きの匿名さん22/05/20(金) 22:29:44

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  • 9二次元好きの匿名さん22/05/20(金) 22:30:01

    「ハァーー!?こんなヒゲにフォローなどいれるんじゃない!!こういう時に細かい弱みを握らなければムガ」
    「お前は一回黙っとけ」
    ロナルドは落ち着いて会話をする為にドラルクの顔にアイアンクローをした。

    ロナルドは改めてノースディンに礼を言う。
    「時間稼ぎしてくれてありがとう。おかげで妹もなんとかなったし、兄貴ともちゃんと話せたよ」
    「……」
    ノースディンは少し驚いたように目を見開き、そしてあえて話題を逸らした。
    「飛翔と変身能力の制御ができるようになったようなのは何よりだ」
    「そうだ!俺、変身できるようになったんだよ!」
    「見ていた。分裂と大蝙蝠の切り替えで相手を翻弄していたのは見事だったぞ」
    「へっ!?あ、うん……」
    ロナルドは存外素直に褒められたので照れてしまう。
    そして、何故か隣にいるドラルクがめちゃくちゃ面白くなさそうな顔で二人を見ていた。

    「どうしたんだ、ドラルク?」
    見かねたヒナイチがドラルクに尋ねる。
    「べっつにーーーー???あんな素直な髭、天然記念物並みにレアだったから驚いただけですゥ~~~!!!」
    「その割に顔が穏やかじゃないが」
    「若造があんなヒゲヒゲヒゲごときの誉め言葉で照れてるのが滑稽なだけですゥ~~~~!!!!」
    「ヌヌ、ヌヌ」
    感情が複雑骨折したドラルクをジョンが撫でる。
    しかしこの面白くない感情を抱えたまま二人を見守るドラちゃんではない。
    ドラルクはキッと顔をしかめると、ロナルドに向かって絡んでいった。

    「おいゴリ造!!」「なんだよ?」
    「変身と飛翔が出来た程度で調子に乗るんじゃない!!まだ念動力で小石一つまともに動かせてないだろうが!」
    「わ、わかってるよ!そんなことぐらい!!」
    ドラルクはさらにロナルドに向かって畳み掛ける。
    「ならこんなとこでくっちゃべってないでとっとと練習にうつらんか!飛翔はたまたまコツをつかんだから良いが今のままでは何年かかるか見ものですなぁ~~~???ゴリルド君!!!」

  • 10二次元好きの匿名さん22/05/20(金) 22:30:59

    「お前絶対私情で俺に絡んでるだろ!!」
    「私情じゃないわ!!監督官としての当然の権利だ!!」「私情だろ」
    ヒナイチは切り捨てた。

    「さぁ!ここにあるコンクリの瓦礫一片を……!」
    「半田とサギョウ、作戦から戻りました」
    二人がやんややんやと騒いでいると、屋上の入り口をガチャリと開けて半田とサギョウがドラルクに報告に訪れた。

    「うわ、なんですかこの人数。というかレッドバレットさんなんで裸?」
    「む、なぜ氷笑卿がここに……」
    半田とサギョウがおのおの困惑した様子でいると、ドラルクは一つの物に注目した。

    半田が何か袋を持っている。あれは緑の、
    「……!! すまない半田君!!後で弁償するから!!」
    「隊長!?」
    ドラルクは半田から袋をひったくると間髪入れずにそれをロナルドに向かって投げた。

    ロナルドの目の前に、それは迫ってくる。
    袋から飛び出る、緑色の、


    __セロリ

  • 11二次元好きの匿名さん22/05/20(金) 22:31:30

    「ビャハーーーーーーッ!!!!」
    ロナルドは叫びながらも、天敵のそれに対して全神経を集中させた。
    弾けさせてはいけない、セロリの爆破が自分にかかる。何一つ、何一つ触れたくない。

    その強い思いが、奇跡を呼んだ。

    ピタッとロナルドの眼前でそれは止まる。
    爆破も、燃え盛りもせず、きっちりそのまま。

    「……や」
    やった!と喜ぼうとしたロナルドは、そこで集中力が切れて、セロリが眼前に覆いかぶさった。

    「ヴァヴィフリャゴリシャッフンダラバッハギャァアアアアア!!!!!!」

    屋上には、ロナルドのパニックによって起こされた小規模なトルネードが発生したのだった。


    ヌヌヌ(つづく)

  • 12二次元好きの匿名さん22/05/20(金) 22:32:23

    記憶の辻褄が合わせられたのか…。
    オチ笑いました。 続き楽しみにしてます。

  • 13二次元好きの匿名さん22/05/20(金) 22:32:53

    念動力コントロールのきっかけがセロリ
    というかコレ、半田にセロリ苦手ってバレたのでは……?

  • 14二次元好きの匿名さん22/05/20(金) 22:38:36

    三兄妹そろって良かった… ヘルシングとフクマさんが組んで編纂してくれてるのかな…お疲れ様です…

  • 15二次元好きの匿名さん22/05/20(金) 23:25:03

    新スレ&更新乙です!
    とてつもなく今更だけど、この世界ってフクマさんが作った…言うなれば「人工的な世界」では?そこに住む住人は何年も前からこの世界はあるって思ってるけど、実際には生まれてから数ヶ月ぐらいしか経ってなくね?(他誌の話で申し訳ないけど、アンデラ世界のUMA銀河を足された直後の宇宙人みたいな)

  • 16二次元好きの匿名さん22/05/21(土) 07:05:41

    師匠をめちゃくちゃ尊敬するルドくんとノースの組み合わせいいなあ
    ノースに記憶が残ってたらドラルクとの落差にびびっただろうな

  • 17二次元好きの匿名さん22/05/21(土) 09:43:50

    新スレ立て乙です!
    こうして辻褄合わせしてなんとかしていってるのか…フクマさんと御真祖様とヘルシングが裏方で働きまくるってかなりの異常事態だけど、本当に何に巻き込まれてるんだろう?続き楽しみにしてます

  • 18二次元好きの匿名さん22/05/21(土) 18:05:10

    半田くんにセロリバレしちゃったねロナルドくん
    今後の精神被害を考えたら一発くらいドラ公殴ってもいいよ!(死んじゃう)

  • 19二次元好きの匿名さん22/05/21(土) 18:09:29

    今更だけどヒマリちゃんも特訓に参加するんだろうか? 使う必要なさそうだけどロナルドみたいなレベルで強そうだし。


    >>15

    実際どうなんだろうね? 書き手さんが真相明らかにするまで待つしかないと思うよ。

  • 20二次元好きの匿名さん22/05/21(土) 21:19:18

    セロリ。

    セリ科の一年草または二年草で、ヨーロッパから地中海沿岸を原産地にもつ、独特の強い香りが特徴的な食用植物である。
    和名をオランダミツバ、日本で完全に食用として用いられるようになったのは18世紀の江戸時代の頃だが、独特の強い香りの為普及しなかったそうだ。(ここまでほぼWikipediaからの引用)

    ロナルドはこのセロリが非ッッ常に苦手である。
    もはや苦手という感情を通り越した何かである。セロリに関するありとあらゆることにノーを突きつけたい所存だ。

    ロナルドが今の生活でよかったことの一つとしてあげられるのがこのセロリの存在である。
    以前は「ある人物の存在」によってロナルドは普通に生活していたとしても、セロリの奇襲に合う可能性が少なからずあったが、今はその根本の原因が良くも悪くも無くなってしまったためその生活とも遠ざかっていたのだ。

    かつての友情とセロリの無い生活、どちらを取るかと選択肢をつきつけられたらかつての友情を取るが、今の段階だとセロリという特大のノイズがなくともまた別の友情を結べそうで、それならそれで構わないとロナルドは考えていた。
    むしろ友情とセロリ両立しなくてすんで万々歳である。

    ならばやるべきことは一つ、セロリの存在を奴の周りに匂わせない。
    だからこそ、クソ砂にすら秘密にしていたのだ。少しでも半田とセロリを引き合わせないために!

    なのにどうして……!

    新鮮なセロリが、ここに存在する。



    ひとしきりハリケーンやらなにやらでパニックを起こした後、ロナルドは静かに焦っていた。

    (やばい、半田にバレた)
    心臓がヤバイ方向にどくどく鳴っている。

  • 21二次元好きの匿名さん22/05/21(土) 21:20:24

    (なんでこんなとこにピンポイントでセロリ持ってきてんだ半田。あいつにとってのセロリはなんなんだよ)
    半田は単に観賞用?にセロリを買っただけだったが、それをロナルドは知る由もない。

    (っていうか、こんな醜態をよりにもよって兄貴の前で見せるなんて)
    ついでに臨時師匠のノースディンに見られたことも地味な追加ダメージとして効いている。

    (クソ砂は殺す(殺さない))
    あとで強めの十字固めをする事に決めた。


    「おい、ロナルド……」
    半田が黙りこくったロナルドに話しかける。
    ああもう駄目なのか、俺の桃源郷に両足が生えて全力ダッシュで逃げていく……! アバヨー!!

    「大丈夫か、俺の私物が失礼した」
    「マ゜???」
    半田が普通に謝った。あの、半田が。

    「何をバカみたいな顔をしているのだ。さっさと返さんか」
    「わ、悪い」
    ロナルドはあまりの衝撃に落ちたセロリを普通に半田に手渡して返す。

    (もしかしてこれは)
    まだチャンスがあるのでは?ここで全力で誤魔化せば俺に被害はこないのでは!?
    カムバックしてくれ俺の桃源郷君! 復路ダゼー!!

    「ドラルク隊長も勝手に私物を投げるのは止めていただきたい」
    「……え、ごめん」
    ドラルクにとっても予想外の反応だったようで、あっけに取られた顔をしている。
    しかし、すぐに何かを思いついたようでクワっと顔の表情を引き締めると、あのろくでもない事を考える時の顔ですかさず切り返した。

  • 22二次元好きの匿名さん22/05/21(土) 21:21:58

    「いや、待て半田君!それは使えるぞ!」
    「使えるとは?」
    「!?」

    (何を思いついたんだあの万年偏頭痛胃弱弱おじさん!!チクショー!何が何でも阻止してやる!)
    「半田の私物でこれ以上遊ぶのは半田に悪いだろ。ドラ公も余計な事に巻き込んで仕事の邪魔するんじゃねえよ」
    ロナルドはいかにも正論を装って自分の求める方向性に半田を誘導しようとする。
    根は真面目な半田には有効な筈だ。そのままカムバックだ桃源郷君! ゴールテープマデ後1キロ!

    「うむ、これは確かに私物の観賞用として買ったものだが」
    (そんなもん観賞用にすんじゃねえ)
    ロナルドは内心でツッコミながらもドラルクを見る。
    (残念だがクソ砂お前の企みはここでおわ……、何!?)
    だがドラルクはあのろくでもない顔と余裕な態度を崩していない。
    むしろ、ロナルドの言葉などまるでダメージにならないとでも言うように。

    「いや、余計な事ではないよ半田君。むしろこれはロナルド君の為にもなる」
    「隊長、では一体何を」
    「訓練をお願いしたいんだ」
    「訓練?」

    「そう、私が指定した時間の間、ありとあらゆる手を使い、そのセロリを使ってロナルド君を驚かせてくれ」
    「」(恐ろしい形相でフリーズしたロナルド)

    「驚かす?なぜ?」
    「このロナルド君はあまりにもゴリラすぎて念動力の訓練が上手くいっていないんだ。だが、今回そのセロリを使うことで奇跡的に能力の制御が上手くいった。これを利用しないわけにはいかないだろう」
    「……なるほど!それならば喜んで引き受けよう!」
    「」(とうとう泣いたロナルド)

  • 23二次元好きの匿名さん22/05/21(土) 21:22:46

    桃源郷君は、ゴールテープ直前で風船を付けてロナルドの目の前から去っていく。 アバヨ!
    ロナルドは泣いた。
    泣いて、キン肉バスターをドラルクに容赦なく決めた。

    「アア゛ア゛ァーーーーーーーーーッ!!!!」「ヌヌヌヌヌヌーー!!」

    新横浜の夜に貧弱な悲鳴と可愛いマジロの声が響く。
    一部始終を見ていたヒナイチたちは、

    「なんだこれ……」
    あきれ果てて何も口を挟めなかった。




    「あだだだだ、股関節が、股関節がヤバイ……!容赦なくやりおってゴリ造め……!」
    一応念の為に書いておくがもちろんロナルドはある程度手加減はしている。
    今回普段使っているプロレス技より数倍痛いのは大体ドラルクの自業自得だ。

    だが、訓練になると思ったのは一応本音ではあったのだ。
    ドラルクは屋上から下を眺める。
    後片付けで往来する部下たちの姿や、退治人の姿が見えた。
    その中で、ロナルド達兄妹3人が談笑している姿も見える。

    「……」
    「羨ましいか?」
    「なんの用ですかヒゲヒゲ」

    ドラルクは振り向きもせずそっけなく返事をする。
    ノースディンはさして気にした様子もなくドラルクの隣に立った。

  • 24二次元好きの匿名さん22/05/21(土) 21:23:39

    「やはり、血縁があったのだな」
    「似てましたからね、ヒヨシ君とロナルド君。それだけですか?」
    「お前は、」

    「父親の事をどこまで覚えている?」

    ドラルクはすぐに答えなかった。
    迂闊に掘り下げると、ろくでもない事が起こると知っている。
    だから、至極曖昧に返す。

    「違和感だらけですよ。ですが、」
    ドラルクは自分の胸に手のひらを置く。

    「今いるこの私は、あるがままで完璧だと確信している」

    「それだけで十分でしょ」
    「はっ、その言葉が頼もしく聞こえる日が来るとはな」
    「そういう師匠だって、時系列曖昧なんじゃないですか?」
    「……、その話はよそう。引っ張られそうになる」
    「はいはい」
    珍しい師匠の素直な弱音に驚きつつも、ドラルクは茶化さずそのまま聞き流した。

    「次はどうするつもりだ」
    「とりあえずロナルド君たちの訓練の目途は立ちました。となると、次はこちらからも攻めるべき段階ではありますかな」
    「攻められるのか?」
    「今日の大烏が現れたタイミングがやけに良かったことから、どこかに隠れ潜んでこちらを観察している可能性は高いでしょう」

    「まずはやつの巣を探さなければ」
    それこそ新横浜中をさらってでも見つけるべきだ。

  • 25二次元好きの匿名さん22/05/21(土) 21:24:04

    「……私もできる限りの事は手伝おう」
    「そう言ったからには容赦なく仕事振りますからね、私」
    ドラルクは言質を取ったと言わんばかりに悪い顔をしている。
    ノースディンは返事の代わりに苦笑した。

    「最後に一ついいか」
    「なんですか」

    「お前は吸血鬼に戻るつもりはないのか?」
    「なんだそんなこと」

    ドラルクは呆れた。
    このヒゲヒゲは全く分かっていない。
    天下無敵完璧かわいいドラちゃんが、なぜダンピールで吸対職員などという責任感は必要だわ無茶ぶりはさせられるわ副業出来ないわゲームは詰むわの二重三重に窮屈な事やってるのか。そんなの決まっている。


    「この身体、この立場じゃないとできない事がありますから」

    「いくら可愛いからって、深窓の令息にもピーチ姫にも収まってるつもりはないですよ。私はね?」


    ヌヌヌ!(つづく)

  • 26二次元好きの匿名さん22/05/21(土) 21:25:24

    セロリ地獄再来の巻

    ちょっとまて、ドラルクもなんか知ってるっぽい?

  • 27二次元好きの匿名さん22/05/21(土) 21:42:22

    ドラルクの記憶中途半端にあるっぽい⁉︎
    そして運命の糸でもついているかのように引き寄せられるセロリ

  • 28二次元好きの匿名さん22/05/22(日) 00:49:18

    わーい続き!いつも楽しみにしてます!
    セロリwiki引用と好青年半田に笑う

  • 29二次元好きの匿名さん22/05/22(日) 08:16:19

    やっぱ師匠だからノースのこと尊敬してルド君良いな

  • 30二次元好きの匿名さん22/05/22(日) 11:13:28

    保守セロリ
    安心と信頼のセロリ

  • 31二次元好きの匿名さん22/05/22(日) 21:59:49

    ドラ公の親父のスマホが見つかって二か月。
    相変わらず親父の手がかりは見つからず、そして新横浜の街にも変化が起きていた。

    吸血鬼の数が減ったのだ。
    まず下等吸血鬼の数が減った。
    以前におきたアブラムシの大量発生みたいな事態がまるで起こらなくなった。
    ここまではまだ、街が平和になったな程度で笑っていられた。

    そして次に、変態の数が減った。
    いつもなら雨後の筍のごとくぽこぽこ現れる変態吸血鬼どもの数が、ここ数か月でぐっと減った。
    最初は単に、雨季の時のようにテンションが下がって出てこないだけかと俺たちは考えてたが、吸対からの連絡で事はもっと深刻だと言う事が判明した。
    いわく、家賃を滞納したまま行方不明。いわく、一向に出社してこない。いわく、最近顔を見なくて心配だ。

    そこからは退治人ギルドと吸対が共同でパトロールをするようになった。
    地域に住んでいる変態どもをリストアップしてマメに安否確認をしたり、あけみさんや下半身透明のような普通に暮らしている吸血鬼たちにも注意喚起を促した。

    それでもへんなが行方不明になってしまった時は、大分心にきた。
    へんなの親父とお袋さんが、血相を変えてうちの事務所に駆け込んできたのだ。
    お使いから帰ってきていない。息子のよく使う道を家からたどってみたら、新品のエロ本が入った袋とお使いのメモだけが残されていたとのことだった。

    もちろん、できる限りの手は尽くした。
    俺は俺で心当たりのある場所は調べたし、ショットがよくへんなとY談をする場所なんかも探した。
    でも、痕跡は幻のように消えている。
    結局、エロ本とメモ以外の痕跡は見つからなかった。

    じわじわと真綿で締められているような状況が続いた。
    ドラルクの茶化しが以前よりも減った。
    ヒナイチが忙しさから前よりも事務所に顔を出せなくなった。
    街の空気がじわじわと重くなっているのを感じる。

  • 32二次元好きの匿名さん22/05/22(日) 22:01:10

    迷惑千万ではあったが、変態相手に暴力で解決している時代が懐かしかった。
    ぎゃーぎゃー文句を言えた賑やかな時間がこいしかった。
    皆せめて会話だけでも明るくしようと軽口を叩きあっているが、空元気なのが身に染みて辛かった。

    そして多分、あれが最大の転機だったんだろう。

    ギルドに緊急で吸対から電話が入る。
    最初にその報告を聞いたときはとても信じられなかった。
    トンチキな状況なんていままでいくらでもあったというのに、信じたくなかった。
    急いで現場に応援として向かった俺たちは、愕然とする。


    VRCが、ない。

    VRCがかつて立っていた場所には大穴がぽっかりと開いており、下層の地面からはねじ切られた水道管や電気コードの切れ端などが残っている。
    地下の施設まで丸ごと抉られて、VRCには瓦礫一つ残っていない。

    ヨモツザカも、施設の職員も、収容されていた吸血鬼も、パートのおばちゃんも、キャプちゃんも、ゼンラ二ウムも全て。
    VRCで働いていたその全てが、行方不明になった。


  • 33二次元好きの匿名さん22/05/22(日) 22:02:05

    このレスは削除されています

  • 34二次元好きの匿名さん22/05/22(日) 22:02:54

    女性吸血鬼事件の顛末を書くと、案の定ドラルクは始末書地獄へと落ちていった。
    とくに巨大小ゼンラニウム出動は相当なお怒りを食らったらしく、一時間ほど会議室から返してもらえなかった。
    終わった後流石にグロッキーな顔で出てきたが、「だがあのクソ映画VSモノとエセナウ〇カはこの小言に見合う価値だったと思うのだよ」とか抜かしていい顔をしていた。殴りてえ。

    その後のヒマリはどうなったのかというと、VRCで大方の検査を受けた後一旦兄貴の家で預かる事になった。
    記憶のつじつまは合わせられたとは言え、ヒマリが暮らしていたはずの家が無くなってしまっていることには変わりなく、なら誰が面倒を見るのかと言えば当然の帰結ではある。
    本当はロナルド自身に余裕があるのであれば手助けしたかったが、ドラルクの家に居候している身である以上はやれることが無かった。

    (なんか副業するべきかな。つっても今の状況で退治人はできねえし……)
    こういう時働いていないのは歯がゆい。一応もともとあった貯金をある程度崩して活動しているが、プラスがあまり無いのでどうしても目減りしていく。
    ドラルクが昼行燈から予算分捕ってきたとのことで、吸血鬼退治に協力した時は吸対からそれなりの額の謝礼金が出るが、コンスタントに出るわけではないのであんまり安定しない。

    (うーん)
    ロナルドがあれやこれやと考えていると、冷えピタを額に貼って腕には腱鞘炎防止のテーピング、書類仕事片手に据わった眼をしたドラルクが、骸骨の亡霊のような声でロナルドに話しかけた。
    「ロナルド君、ちょっとおつかい頼まれてくれない?」
    「なんだよ、今にも死にそうな顔して」
    今のドラルクにはデスリセットが無いので、疲労が蓄積している姿を見るのがちょっと新鮮だ。前のドラルクなら疲労が溜まるとか以前に砂ってただろう。

    「ちょっと始末書があんまりにもあんまりでね……、もうムリ、動けない」「ヌヌ」
    「ジョンまで参っちゃってるじゃねえか。なんだよ書類手伝えっていうのか?」
    「それはダメ」「なんなんだよ!」

    「おつかいだって言っただろうが。ちょっとギルドの方行ってくれない?もう私首回んなくて」
    「ギルド?俺はいいけど、他の吸対の職員は?」
    「皆には別件で頼み事してるから無理。ギルドの方には話通してあるからとりあえず行って」

  • 35二次元好きの匿名さん22/05/22(日) 22:04:04

    「……いいけどよ。ヒナイチはどうする?」
    隣で黙々と仕事を片付けていたヒナイチにも話を振る。

    「私はしばらくこのまま仕事を手伝うが、ギルドから帰ったら交代してほしい。一度行きたいところがあるんだ」
    「分かった。行きたいところって?」
    「マリアさんとターちゃんさんのお見舞いだ」
    「あーー、ヒマリの事もあったし俺も行かなきゃだな……」
    軽傷だとは聞いているが、今回の事件は二人にはかなりの迷惑をかけてしまった。あとで見舞い用の菓子折りなんかも持って行った方が良いだろうか……。

    「んじゃ、ギルドの方は行ってくるわ」
    ドラルクが書類をガン見したまま手だけひらひら、ジョンはぶんぶん腕を振り、ヒナイチは軽く手を振ってくれる。

    ロナルドは窓から雑に飛び降りると、そのまま蝙蝠羽を生やしてギルドの方まで飛んでいく。
    歩いても全然良い距離だが、掴んだコツを忘れない為に練習がてらこうして機会を見つけては飛んでいた。
    (飛行は大分慣れたな)

    ちなみに念動力の方だが、セロリ以外がまだ壊滅的である。
    訓練の方は……、言いたくない。

    (そういえばサテツは給料どうしてるんだろう)
    サテツもヒマリとほぼ同じ経緯で吸血鬼化しているので、家やもろもろの情報が消えているはずだ。
    退治人と同じ契約を結んでいるんだろうか。

    (一度マスターにも相談してみるか)
    考え事をしていると、ギルドへはあっという間にたどり着く。
    変身を解除しながら上手い事着地を決めると、そそくさとギルドの扉を開きに行った。

  • 36二次元好きの匿名さん22/05/22(日) 22:04:24

    「こんばんは、マスター」
    「おや、ロナルドさん」

    扉の開閉のベルの音とともにマスターがにこやかに話しかけてくれる。
    やっぱりギルドの空気は落ち着く。
    カウンターを見ると、ショットとサテツ、そしてシーニャが駄弁っていた。

    「あら、ロナルドォ~!私に会いに来てくれたの?」
    「シーニャ、今日は吸対からのおつかいだよ」
    「吸対?っていうとアレか」「アレ?」
    ショットとサテツがハテナマークを飛ばしている。二人も聞かされていないらしい

    「マスター、俺詳しい話はマスターから聞いてくれって言われてるんですけど」
    「ええ、ドラルクさんからギルド合同で頼まれていまして。ショットさんやサテツさん、シーニャにも同行してもらいますよ」
    「同行?」「はい」

    「これから、皆さんには吸血鬼が運営している施設のパトロールをしてもらいます」


    ヌヌヌ~(つづく)

  • 3722/05/22(日) 22:05:16

    しばらくちょっと小話が続きます。

  • 38二次元好きの匿名さん22/05/22(日) 22:27:49

    乙です!
    小話くるのちょっとほっとする

  • 39二次元好きの匿名さん22/05/22(日) 22:28:14

    VRCないってやばくね

  • 40二次元好きの匿名さん22/05/22(日) 22:29:16

    大きな変化の前は、予兆のように小さな変化が続くもの……

    改変後?のシンヨコでもロナルドが貯金つかえてるってことは、ある程度は前から引き継げるのかな
    事務所メンツはそのままだったし

  • 41二次元好きの匿名さん22/05/22(日) 22:50:48

    お疲れ様です!
    前半の痛々しい感じ引き込まれますね
    VRCがごっそり消えるのはゾッとします

  • 42二次元好きの匿名さん22/05/23(月) 00:20:27

    乙です
    少しずつ明かされていく前の世界の情報のヤバさがやばい(語彙力)

    アバヨした桃源郷くんには笑いました。

  • 43二次元好きの匿名さん22/05/23(月) 00:33:32

    乙です!
    地下の施設までがっぽり穴になってたとか、そりゃvrcが旧ドラルク城のような惨状になってもまだましに感じるわ。
    どや顔ルク好きよ。
    吸血鬼が運営している施設…この世界下半身透明も人間っぽいからホラーホスピタルではないよな?
    集会ってだけならシンヨコ連中とか古き血とかクソ能力学会とか思い付くけど、施設を運営しているとなると他に思い付かないな…。

  • 44二次元好きの匿名さん22/05/23(月) 10:23:40

    元の世界?大変なことになってる上にじわじわ持っていかれているのが恐ろしい…
    しばらくは大きな山場はなさそうかな?続き楽しみにしてます

  • 45二次元好きの匿名さん22/05/23(月) 20:31:09

    ほっしゅ

  • 46二次元好きの匿名さん22/05/23(月) 20:37:25

    ロナルド達は二組に分かれて、新横浜近辺にある吸血鬼が働く施設を順次回っていく。
    パトロールは普段通り経営されているか、違法な事はしていないかの抜き打ちチェックくらいのものだが、今回はそれ以外にももう一つ質問をして回っていた。

    最近、施設内とその付近でおかしなことはなかったか?

    「いや、ゲーセンでは特にないですね」
    「それよりもラーメンの味見を」
    「またマジロを連れてきてくれ。タピオカ無料券渡すから」
    「ハンターさん100円サバゲーしません?」
    「むしろ最近吸血鬼の客足が遠のいて困っている!君もボウリングボールにならないか!何!?人間状態でもうやった!?」


    「特に異常はなしかあ」
    ショットがリストにチェックを入れながらぼやいた。
    ロナルドもそれを横から眺めて考える。

    (こうやってみると店長系は結構そのまんまだな)
    能力がそもそもなかったり、癖が強すぎる能力だと以前と変わらない吸血鬼の割合が多い。
    タピオカのおねえさん?だけ腕が無いのが気になるが。
    スコスコ妖精の例もあるから油断はできないが、ロナルドにとっては嬉しい事だった。

    「ショット、次はどこ行くんだ?」
    「えーっと、占いがあと2店舗」「占い?」

    そんな店あっただろうか?


  • 47二次元好きの匿名さん22/05/23(月) 20:38:28

    駅ビル内のショップの片隅に、簡易的な死きりで区切られた手相占いやタロット占いをする小さなコーナーがある。
    その中に一つだけ、異様な文字列が看板として掲げられている。
    Y談相談、と。


    「ここで黄色のアレが来ると思いましたか?残念ですが私です」
    「誰かと思ったらおめーかよへんなの親父っ!!!!」
    ロナルドは突っ込んだ。肩透かしとこんなところにおったんかいお前の気持ち半々である。

    Y談紳士、ことシルクハットに燕尾服という正装なんだがここにいると場末の手品師にしか見えない男、ディッケーナは口ひげを整える。
    「実益と趣味を兼ね備えた素晴らしい職業ですよ、これは」
    「そもそも占いじゃねえだろ詐欺で訴えるぞ」
    「私はショット氏の素晴らしいムダ毛談義を聞いて考えたのです」「聞けや」
    「ムダ毛で占いができるのであれば、Y談を聞くことでわかる占いもあるのでは、と」「Y談はY談と百歩譲って相手の性癖しかわかんねーよ」
    「そして閃いたのです、Y談相談という形を取れば、様々なHTP溢れる話も聞けるうえに相手の悩みの解決もできてこれぞウィンウィン」「お互いの人生においてルーズルーズだろもっと違う事に時間使え」

    「大体Y談相談で解決できる悩みって何だよ!もうエロ本の趣味が分からねえとかすすめられたAVがニッチすぎて消化できないとかせいぜいその程度だろ!!」
    「いや、誰にだって自分だけで抱えられない悩みはあるぜ」「ショット!?」

    「ショット氏はいつだって私に新しい閃きを与えてくれます」
    「ああ、この間のY談相談も最高だったぜ」「常連なのショット!?」
    「もうすぐポイントカード一枚分埋まる」「こ、こんなにY談相談を……!」
    「先日の議題も実に有意義でした」「ああ」
    ショットとディックは遠い目で語る。

    「「巨大小ゼンラニウムについて」」「は?」
    ロナルドは耳を疑った。

    「いや、あれ、なんかY談になるネタあるの??俺には汚い絵面にしか見えなかったよ?」
    ロナルドは自分の常識がぐらついていくのが分かる。ダメだ落ち着け、流されるんじゃないルド君!

  • 48二次元好きの匿名さん22/05/23(月) 20:39:23

    「いえ、スタートからしてなかなかに刺激的だったじゃないですか。不定形巨大スライム生物と巨大尻植物の激突なんて言い換えればローションずもグフッ」
    ロナルドはディックの顔面を鷲掴みにした。クソ映画対面ではしゃいでたクソ砂の反応が不本意ながらも今の心のよりどころだった。

    「っていうか、あの現場にいたんじゃねえか変なの親父!なんで加勢に来なかったんだ!!」
    「いやー、タイミングを計っていたというのもあるんですが、あの巨大小ゼンラ二ウムの足について考えていたら思考の深みに嵌ってしまって……」
    ロナルドはこの段階でもうろくでもない予感しかしなかった。

    「あの足にね、何が似合うだろうかと考えていたんです」「は?」

    「私、基本何でも変身できるじゃないですか?試したことは無いですが、下着にも変身しようと思えば可能なんですよね」
    「聞きたくねえ」「続けてくれ」
    ロナルドのキャンセルをショットは無情にも却下した。

    「それでね、例えば私があの巨大小ゼンラニウムが着用できるほどのサイズの粗目の網タイツとかに変身するとして、それを着用してもらうじゃないですか」


    「内部からあの太ももの感触を感じられるのって、凄くエッチじゃないですか?」

    ショットに天啓が走る。ロナルドはこの手の話題に雑魚なのでついてこれない。
    「なるほど、至言だ……!」「小ゼンラニウムにもおっさんの意思が宿った網タイツを拒否する権利はあると思うんだ」
    「さらに私が変身したのは網タイツ!」「網目の食い込みすら内側から十分に堪能できるってことだな!」
    「適当な外灯に引っかかって伝線しちまえ」
    「俺ならそれにオプションを……」
    二人の話は際限なく盛り上がっていく。興がのったらしいへんなの親父などあの懐かしき象の妖精姿に戻っている。

  • 49二次元好きの匿名さん22/05/23(月) 20:40:27

    ロナルドは迷った。迷ったが、二人の話に水を差さなければ自分がY談の宇宙に飲み込まれてしまう。
    だから言う、何とか正気に戻ってくるために__!

    「でもさ、小ゼンラニウムってゼンラニウムの幼体だろ。あの足、成長してもゼンラニウムの男の足になるだけなんじゃないか」

    二人は黙った。
    「「……」」

    ディックの姿がスンッと人間形態に戻った。




    「ロナルド~!こっちよーって、どうしたの随分ぐったりしてるじゃない。ショットもだけど」
    「いや、余計な精神力を使っただけだから気にしないで……」
    シーニャの心配にロナルドはひらひらと手を振る。
    Y談で盛り上がりすぎて沈静化するのに疲れたなど言えたものではない。

    「本当に大丈夫か、ロナルド?」
    サテツも心配そうにこちらを見てくる。
    「まじで聞いたところで一銭の得にもならないから大丈夫」
    「なんか大変だったんだな」
    「ほら、それじゃあとっとと気持ちを切り替えましょ。次に行く場所は気合入れなきゃなんだから!」
    シーニャが場の空気を切り替えるようにパンパンと手をはたく。

    「これから行く場所ってそんなに気合入れる場所なのか、ショット。確かもう一つの占い店だよな」
    先に行った占い店があまりにもアレだったので次はまともだと信じたいが。

  • 50二次元好きの匿名さん22/05/23(月) 20:41:14

    「ああ、あそこの占い店は腕も確かだし、吸血鬼として厄介だ。そしてなにより……」
    「なにより?」

    「いや、これ以上言うのは失礼だ。直接会えばわかるさ」
    「……」
    ショットは何が、とは言わなかったがロナルドは何かを察した。
    遠くの占い店個室でHTPを感じとったへんな父「これはボインの気配」

    「トンチキ吸血鬼とかじゃないんだな」「ああ、ちゃんと店長はお姉さんだ」
    「よし、行こうぜ」「ああ」

    あくまでも仕事である、仕事だから!と自分に言い聞かせつつロナルド達はその占い店へと向かったのだった。




    占い店はビルの一室を借りた割と本格的なものだった。
    看板には「花咲の館」と書かれている。
    店内に入るとエキゾチックなお香がたかれており、占いの館特有のいかにもな雰囲気を醸し出していた。

    「お邪魔するわよー」
    シーニャが慣れた様子でずかずかと店に入っていく。
    それに続く形で、ショット、サテツ、ロナルドがそれぞれ入っていった。

    すこし狭い店の奥に入っていくと、小さい占い机と洒落た椅子のセットがある。
    その椅子に、足を組んで座る美しい女がいた。
    長いロングの髪と、ボリュームのあるまつ毛に釣り目、胸も豊かで非常にメリハリのある肉体をしている。
    だが、腕や足のいたるところに美しく紅がさされた口があり、やはりこの女は異形なのだと確信させられる。

    女はシーニャ達の姿を見ると、余裕のある顔で微笑んだ。

  • 51二次元好きの匿名さん22/05/23(月) 20:42:01

    (……、すご)
    ロナルドはすこしうろたえる。ここまで正統派に異形で美しい吸血鬼は以前の新横でも見たことがない。
    あまりのオーラに怯んでしまうほどだ。

    「ロナルド、前はこんな吸血鬼の人いたっけ?」
    サテツが小声で尋ねる。
    「いや、俺も見たことない。最近引っ越してきた人なのかな」

    「フランチェスカ、最近はどうかしら?」
    「上々だ。女子ばかり来るのが玉に瑕だが」

    (!?)
    ロナルドはこの喋り口に聞き覚えがあった。

    「相変わらずの趣味してるわね~」
    「仕事は順調。あとは岡田君が迎えに来てくれるだけだからな」

    「ねえ、ロナルド……」
    サテツも異変に気が付いた。
    そんなバカな。アレが、なんでこんなグラマーなお姉さんになっているんだ。

    「しかし今日はよく来てくれた。私好みのジャニ系がいる」

    そして、女はロナルドをロックオンする。
    この感じは間違いない。

    「熱烈キッス……!」


    ヌヌヌ(つづく)

  • 52二次元好きの匿名さん22/05/23(月) 20:45:28

    乙です!
    そもそも吸血鬼の中に「店長系」とかいうカテゴリがある事がおかしいんだよなぁ(遠い目)
    キッス姐さん無事で何よりだけど何故フランチェスカ様形態に……?
    次回も楽しみにしてます!

  • 53二次元好きの匿名さん22/05/23(月) 20:48:11

    キッスさんまさかの人型での登場でびっくり
    何気にへんな父のとこに常連なショットさんで笑ってしまう

  • 54二次元好きの匿名さん22/05/23(月) 21:04:11

    もしこのキッス姐さんにキッスされたら昇天しちゃうなと思いました(小並感)
    ゼンラニウムに網タイツもそれはそれでエッチだと思います

  • 55二次元好きの匿名さん22/05/23(月) 21:31:08

    乙です!
    そっか、つい「施設=不動産まるごと」って考えちゃったからホラーホスピタルしか浮かばなかったけど、屋台とか100均とかの、それこそ吸血鬼一人でも経営できる小規模なのだとたくさんあったわ。
    そして「人間状態でもうやった」で既に大草原だし、ニッチエロ談義で扉開きそうになったし、最後はシリアルの予感だしで楽しい。

  • 56二次元好きの匿名さん22/05/23(月) 21:40:12

    キスネキ人間体?なんだな!?

  • 57二次元好きの匿名さん22/05/23(月) 21:46:08

    フランチェスカって嘘予告の美人な熱烈キッスさん?

  • 58122/05/23(月) 22:00:40

    フランチェスカは嘘予告の「死の接吻」の姿で合っています

  • 59二次元好きの匿名さん22/05/24(火) 01:44:52

    乙です。
    嘘予告の熱烈キッスの顔ってかなり好みなんだよな
    もし仮に原作本編でこの姿だったらやらかしてた奇行の数々も……いややっぱりダメだな。美人でもヤバい奇行だ。嗅ぐな、吸うな、吐くな。

  • 60二次元好きの匿名さん22/05/24(火) 11:40:35

    フランチェスカの姿だと割とモテそうなのにそれでも岡田将生を待ってる意識の高さ?とてもすき

  • 61二次元好きの匿名さん22/05/24(火) 12:26:36

    なぜ姿が変わったかわからないのが一番のホラー

  • 62二次元好きの匿名さん22/05/24(火) 17:27:45

    っていうか美人形態でノースディンのチャーム事件解決したってこと?
    一体何が起きたってんだ…

  • 63二次元好きの匿名さん22/05/24(火) 22:18:03

    ロナルドとサテツは大混乱していた。

    「なんで??なんで熱烈キッスがあんなおっぱいなお姉さんになっちゃってるの???なんで???」
    「ロナルド、混乱しすぎて思考がそのまんま出ちゃってるけど元々キッスは巨乳だったよ」
    「アレはオバQの一種であっても巨乳ってカテゴリでは見れねえだろ!!せいぜいかわいいコックさんの亜種だわ!!!」
    人間から吸血鬼、あるいは吸血鬼から人間という変化はさんざん見てきたが、吸血鬼は吸血鬼であってもまさかキッスが人型のエッチなお姉さんになるとは。
    というか元々の熱烈キッスが吸血鬼って呼んでいいのかも謎だ。火星からの使者とか言われた方がまだ納得できる。

    「なんだ、私の美貌に酔ったか」
    「あ、すいません。いや、いろんな意味で情報に酔ってるだけなんで……」
    それを聞いたフランチェスカはズズズイとロナルドに近寄ってくる。
    「気分が悪いのか?お前のジャニさなら膝枕を許してやろう」
    「ひぃぃ~~結構です!!結構ですから!!!近いです!!!」
    声からは明らかにキッスの声なのに見える人物はエッチでおっぱいの大きなお姉さんという現象にロナルドは脳がバグリそうだった。

    「ちょっとフランチェスカ?新入りたちに魅了とかしないでちょうだい」
    見かねたシーニャがフランチェスカとロナルドの間を割って入ってくれた。
    「む、そのようなことなどしなくても人類は私の美貌にひれ伏している」
    「一周回って凄いわアンタのその自信」

    「えっ、魅了が使えるのか?ショット」
    「ああ。氷笑卿襲撃の時もフランチェスカがチャームで対抗してくれたんだぜ」
    「氷笑卿が?」
    ロナルドはノースディンの顔を思い出す。
    ロナルドが体験したチャーム事件は最終的にビキニとゼンラによって解決したが、それに比べるとえらい耽美な絵だ。
    さらに兄貴も加わっていたのだというからこちらの攻防戦はさぞかし絵になったのだろう。場末の素人お笑い劇場と宝塚ぐらいの差がある。むしろよく協力してくれたなキッス。

  • 64二次元好きの匿名さん22/05/24(火) 22:19:51

    「この街における魅了の視線は全て私の物だ」
    キッスが真顔で言い張る。つまり自分の縄張りが荒らされたのがムカついたらしい。

    「っていうか、この状態で魅了なんか使った日にはとんでもない事になるんじゃ」
    「その気になれば街一つ掌握できそうだよね」
    あのオバQ状態でジャニだの岡田将生だの菅田将暉だの羽生結弦だの言ってるからギャグになってるが、マジモンの美貌を持ったキッスなどギャグにならないのである!
    「それは大丈夫よ~?」
    ロナルドとサテツの心配を察したらしいシーニャが言った。

    「魅了(あれ)、本命には効かないから」
    「?」「どういうこと?」
    「あとでレッドバレットにでも聞くといいわよ。さて、仕事仕事」
    シーニャは改めてフランチェスカに向き直ると質問をしていく。
    最近の業務内容のチェック、そして変わった事はなかったか聞いていく。

    「……というわけで最近は男性モノの下着についての相談が多い」
    「個人的には凄くそそられる情報だけど、他にはないの?」
    シーニャがどんどん促していく。
    「変わった事とは少し違うが、ある廃病院の噂は聞いた」
    「へえ、聞かせて?」
    「なんでもその廃病院では」

    「顔を隠した男が出入りしているらしい」
    「……」

    「それだけ?」
    「顔を隠しているのだぞ」「うん」
    「ジャニ系か否か、私が直々に確かめに行かねばなるまい」
    「それ以外に情報はないの?」
    「忘れた」

  • 65二次元好きの匿名さん22/05/24(火) 22:20:34

    フランチェスカは清々しいほどにきっぱりと言った。

    (男以外の情報興味関心ゼロかよ!!顔隠した男が何やってるかとかもっと他になんかあっただろ!!)
    というツッコミをロナルドは必死に心の中で堪える。

    「話せることは以上だ。そろそろ予約の客が来る」
    「あら、もうそんな時間?長居しちゃってごめんなさいね」
    そろそろお暇しようかという空気になった時、サテツが何か気になるようでしきりに鼻をこすり始めた。
    「ん?」
    「どうしたんだサテツ?」
    ショットが尋ねる。
    「外から、嫌なにおいがする」




    占い店が入ったビルに面する道路で、突如として人の叫びが響き渡る。

    「吸血鬼がでたぞー!!」

    今宵現れたのは久しく見なかった巨大なモウセンゴケアルキである。
    モウセンゴケという食虫植物の一種が吸血鬼化したもので、先端が丸い葉からは鋭い棘が針山のように飛び出ている下等吸血鬼だ。
    モウセンゴケは棘山を吸血対象へむかって叩き、針を伸ばして食い込ませることで吸血をする。
    一般人が被害にあうと身体に数か所の深い刺し傷が発生し、非常に危険である。
    今日のモウセンゴケはいつもより巨大で針も太く、退治人も注意しなければ大ケガを負いかねない。

    モウセンゴケは早々にターゲットを定めたらしく、一人の逃げ遅れた眼鏡のサラリーマンに今にも襲い掛かんとしていた。
    「う、うわぁあああああ」
    針は男性のすぐそこまで迫っている。男性はカバンを前に出して、刺される覚悟を決めた。

  • 66二次元好きの匿名さん22/05/24(火) 22:21:29

    「オラっ!」
    ショットのドスの聞いた声とともにその攻撃はキャンセルされた。
    ショットは手持ちのフックショットを、モウセンゴケのヤマタノオロチのように生えた複数の葉の先端部分に巻き取っていき、そしてロデオのように紐を引いて動きを制御していく。

    「これあんまもたねーぞ!サテツ!とっとと処理しろ!」
    「わかった!!」
    サテツは爪を大きく出すと、まずは針山を支える首部分を一気に伐り裂いていく。
    ショットは伐られて軽くなったモウセンゴケの手綱を握りなおすと、勢いつけて引っ張る事でモウセンゴケ本体の体制をひっくり返した。
    まるでひっくり返ったカメのように足をじたばたとばたつかせるモウセンゴケ。
    サテツは爪を出すのではなく今度は拳を握り締め、その本体のど真ん中に体重を込めたパンチを叩きこんだ

    「ッ__!!!」
    金きり音のような独特な鳴き声とともにモウセンゴケは塵と返っていく。
    まるでベテランコンビのような見事な手際であった。

    今回はシーニャと一緒に一般人避難係に徹していたロナルドも感心してしまう。
    それくらい鮮やかな手さばきだったのだ。

    「どうだロナルドー!俺達だって負けてねえからな!」
    「うん!カッコよかった!」
    ロナルドは二人の活躍にぶんぶんと手を振る。

    しかし、ロナルドは背後に不意に嫌な気配を感じた。

    3人から少し離れた交差点脇、そこに一人のスーツ姿の女性がこちらをおそるおそる窺っている。
    女性はこちらを見るのに夢中になっているようで、自分の背後に気が付いていない。

    先ほどよりは小さなモウセンゴケアルキの幼体が、女性を狙っている。

    ロナルドは考えるより前に体が動いていた。

  • 67二次元好きの匿名さん22/05/24(火) 22:22:10

    バササァという小さな蝙蝠の羽ばたき音が鳴ったかと思うと、男は一瞬で女性の目の前に立っていた。
    女性を狙っていた下等吸血鬼は男の握力で握りつぶされ、すでに塵へと還っている。
    男は、ロナルドは何事もなかったかのように笑いかける。
    「大丈夫でしたか?」
    「……え、えっ!?ロ、ロナル……私狙われてました!?」
    女性は慌てたように周りをあちこち見る。
    「いえ、こちらの見落としミスです。危ない目にあわせてすいません」
    「そんな!私だって自分で気が付かなきゃいけなかったのにロナルドしゃんは悪くないです!!」
    女性はフォローしようとして自分の失言に気づいた。
    「俺の名前……」
    「あーー……」

    「あ、あのですね名前はですねいつも週バンの記事見てて私知ってて気持ち悪いですよねすいません!!!あのその応援しています今日はありがとうございました!!失礼します!!」
    「待ってください!!サンズさん!」
    そこでロナルドもサンズと同じミスをしたことに気が付いた。あまりにも勢いで帰ってしまいそうだったのでつい呼んで引き留めてしまった。

    しかし、サンズはむしろ硬直し、
    「ア、ァア、あああーーーーー!!!!」
    推しに何故か認知され名前を呼ばれた女は感情の行き場を完全に無くし、夜闇を全力で駆け抜ける。
    「サンズさぁあーーーーーん!!!」
    くのいち仕込みの全力パルクールにロナルドはそれ以上追いつけそうになかった。

    それを見ていたフランチェスカがぼやく。
    「予約の客が帰ったんだが」


    ヌヌヌ(つづく)

  • 68二次元好きの匿名さん22/05/24(火) 22:23:20

    ちょっと気になってたからサンズちゃんでてよかった
    相変わらず追っかけしてるようで何より

  • 69122/05/24(火) 22:23:29

    ちなみにモウセンゴケに襲われてたサラリーマンは吉田のおじさんです

  • 70二次元好きの匿名さん22/05/24(火) 22:29:26

    廃病院で顔隠してるだと下半身透明が思い浮かぶ
    能力取られてるのは確定してるけど消えてるかどうかまでは不明だったっけ

  • 71二次元好きの匿名さん22/05/24(火) 22:36:15

    >>70

    人物紹介でビキニが弟いるってあったし人間なってるっぽいよ

  • 72二次元好きの匿名さん22/05/24(火) 23:16:15

    乙です!
    新キャラが…新キャラが多い…!
    廃病院、顔を隠した男というと下半身透明が浮かぶけど、今はただのミカエラの弟で人間の筈のトールがなぜ顔を隠しているんだ?
    吉田のおじさん!巻き込まれ!不憫!!!
    フクマさんは「この世界には」いないし、他のオータムメンバーも今まで出なかったから、オータム書店そのものがフクマさんのいる時空にしかないのかと思っていたけど、サンズちゃんいるならオータム書店もありそうだなこの世界。神在月先生が無事に夢追えそうな世界で安心した。
    そしてサンズちゃんの相談内容が大体想像ついてニコニコしちゃう。

  • 73二次元好きの匿名さん22/05/24(火) 23:21:29

    かわいいコックさん(亜種)からの火星からの使者であほほど笑った
    サンズちゃんがかわいいし透くんも出てきそうだし続き楽しみにしてます!

  • 74二次元好きの匿名さん22/05/25(水) 08:34:19

    仮に姿が変わったのが例のやつが原因だとするとあの形態はキッスの持つ能力の一つということになってしまう

  • 75二次元好きの匿名さん22/05/25(水) 19:03:29

    ほしゅ

  • 76二次元好きの匿名さん22/05/25(水) 21:42:25

    このレスは削除されています

  • 77二次元好きの匿名さん22/05/25(水) 22:14:13


    真っ暗な空間にいる。
    視覚的な暗闇ではないその空間に、以前にもいたあの二人組の男性がテーブルを囲んでいない。

    眼鏡をかけた男性は書類の山の中地べたでくたばっており、長身の男はすぐそばでしゃがんで眼鏡の男の様子を観察している。相当な修羅場があったらしい。
    「……ァア゛」
    眼鏡の男性のゾンビのようなうめき声にドラルクはビクッと体をこわばらせた。
    眼鏡の男性は最後の力で顔を上げると、最後の断末魔のように声を絞り出す。

    「……締め切り、突発の締め切りは、本当無理だから!今回はガチでギリギリだったから!!くれぐれも、記憶の取り扱いは気を付け……アアア゛ーーー!!!!」
    眼鏡の男は後ろの暗闇にズリッ、ズリッと引きずられていく。長身の男はしゃがんだまま引きずられていく男を見つめている。
    そしてドラルクの方に振り返り、
    「じゃ」
    とだけ言って手を振った。




    ドラルクは一瞬の居眠りから目を覚ます。
    どうやら書類仕事の最中にわずかに寝落ちをしてしまったらしい。
    しかし何かを思い出せそうだ。なんだったろうか……。

    「あ」
    ぽんと、拳を手に置いた。

    「着信〇リ2」
    のどに突っかかっていたものが取れた気がした。

  • 78二次元好きの匿名さん22/05/25(水) 22:14:57

    「なんでいきなり映画のタイトルを言い出したんだ?疲れてるようなら少し休んだ方が良いぞ」
    ドラルクの突然の発言にヒナイチが心配し始める。
    「いや、なんかホラー映画のクライマックスで似たようなシチュエーション見たことあったなって」
    「ホラー?悪夢でも見たのか?」
    「私は別に怖くはなかったんだけど、締め切り前のロナルド君を見送るような気持ちに似てたかもしれない」
    「???」「ヌ?」
    「まあ、余談は置いといて。そろそろいい時間だけど、お見舞いはいいのかいヒナイチ君」
    「それはそうなんだが……、ロナルドが戻ってきてないしな」

    「ロナルド君とか関係なく行っちゃってよくない?私伝言しとくけど」
    というかスマホで連絡入れるなりすればいいのにとドラルクはのんきに考える。
    「いや、それは駄目だ」
    ヒナイチがかたくなにぴしゃりと言った。
    そこまで言われてようやく原因に気づいた、……自分が原因だ。

    あのビキニ襲撃事件からは特に顕著だが、ロナルドもヒナイチも基本的に自分から離れない、離れたとしても交代制をとるなどして片方は必ずドラルクの近くにいるようにしている。
    ドラルク的にはそんな過保護なという気持ちもあるが、一度それで大ポカをやらかしたのもありあまり強くも言えない。

    (それなら)
    多少区切りもついたし、少しくらいはいいだろう。

    「じゃあ、私も行こうかな。お見舞い」



    「お見舞いなんてそんな気にしなくてよかったのによ!」
    ギルドのテーブル席に座ったマリアがガッハッハッハと豪快に笑った。
    「ちょっとポカしただけね。捕まるの情けない……」
    一方のターちゃんは少し凹みがちだ。
    二人とも入院するほどの大きな怪我はないが、気絶した時の打ち身が原因か、ところどころに少し青あざが覗いている。特にマリアはがっつり目に吸血されたのもあって、首筋にまかれた包帯が痛々しかった。

  • 79二次元好きの匿名さん22/05/25(水) 22:16:07

    「でもあんまり大ごとにならなくてよかった。ロナルドも気にしてたし」
    「あー、そういや妹なんだっけ?これぐらいどうってことないから気にするなって言っといてくれ!」
    「マリアさん豪快~」
    ドラルクがその女傑ぶりに感心する。

    「マリア、もうちょっと気にする!相手、へんな能力あったら危ない!」
    「いやーでも、本当に飢えてたんなら仕方ねえよ。今回は献血みてえなもんだろ!」
    「危ないのは確かだからもう少し気にしてくれ、マリアさん……」
    「二人は今日は待機状態なのかい?」
    ドラルクがジョンにココアを渡しながら訪ねた。

    「俺としてはとっとと復帰したいところなんだけどさ、2~3日はあんまり動くなって医者から言われてて」
    「だから私たち、しばらく情報収集係ね」
    「なるほど、なにか面白い情報はあったかい?たとえば、前より薄気味悪くなった場所があるとか」
    ドラルクはにこやかに、けれど特に後半を強調して言う。

    「うーん」「マリア、廃病院」
    「あっ、そうそう。ここら辺に廃墟になった矢部病院って病院があるんだけどさ。そこでなんか変な噂聞くんだよ」
    「矢部病院?」
    ヒナイチにはその病院名に聞き覚えがあった。たしか、下半身透明のお化け屋敷があったはずだ。

    「なにあったけターちゃん」「子供の声!」
    「そうそう、子供の話声が病院内から聞こえてくるんだって。あまりにもうるさいから一度交番の方で見回ったらしいんだけど」
    「調べたら誰もいなかったってオチかい?随分ベタだね」
    「だけでもない」「ん?」

    「あとなんだっけ、ポルターガイストが起こるとか」「窓に手形一杯」
    「さらに小人が出たり」「小人なったり」「G大量発生」「一度入ったら全部の施設を回らないと出られない」
    「まてまてまてなにそのホラー要素の満漢全席」「ヌォー」
    「要素がおおすぎてコンセプトが全く分からない!」

  • 80二次元好きの匿名さん22/05/25(水) 22:16:57

    「だからいまスゲー評判らしいぜ」「肝試しするバカ多いね」
    「そりゃあ、それだけ怪現象もあれば何かしらは出くわすだろうしな……」
    「絶対に確定レアでるガチャみたい」

    そんな風に情報共有していると、ギルドのドアベルが鳴る。
    見慣れた赤い退治人服の男が入ってきた。

    「お、隊長とヒナイチたちも来てたのか」
    「ヒヨシ君」「レッドバレット」「ヌンヌンヌー!」
    ヒヨシは心安い態度で、二人の隣の席に座る。マスターは何も言わずにドリンクをヒヨシの前に置いた。

    「マリアたちと何話してたんじゃ?」
    「少し廃病院について情報収集を」
    「あそこの病院かー。廃墟は吸血鬼以前に普通に歩いてても危ないから止めてほしいんじゃがな。ところで、ロナルド達は?」
    「ロナルドさんやショットさんたちはパトロール中ですよ。今頃フランチェスカの所じゃないですかね」
    ずっと聞き役に徹していたマスターが喋った。

    「フラ……、なるほど」
    その名前を聞いた途端、ヒヨシの受け答えが妙に硬い。ドラルクはその様子を見逃さなかった。

    「ねえ、ずっと気になってたんだけどさ。ヒヨシ君」
    「なんじゃ藪から棒に」
    「フランチェスカってヒヨシ君の好みじゃないの?」
    ヒヨシが飲み物を噴出した。

    「な、なんでいきなり俺の好みの話になるんだ!」
    「だって、ヒヨシ君おっぱい星人じゃない?」「ヌインヌイン」
    「おまえ、ここに女性陣もいるんだぞ!」
    「私は知ってるから別に」「隠してないくせに何いってるある」「別に減るもんじゃねえしいいんじゃね!」
    「うわーー!!把握されてる!!」

  • 81二次元好きの匿名さん22/05/25(水) 22:17:41

    「まあ些事はおいといて」「些事じゃねえ」
    「チャーム事件の時からずっと不思議だったんだよね。フランチェスカの奴ヒヨシ君にはガチめに魅了かけようとしてたけどことごとく不発だったし。でも催眠耐性があるかっていうと、魅了以外はわりと素直にかかっちゃうし。なんか理由でもあるの?」

    「あー……、それはだな」
    ヒヨシが目を泳がせながら言う。


    「俺には、アイツがオバQに見える」

    「はあ?」
    ドラルクは意味が分からなかった。あの美人から、オバQ?

    「俺だって、俺だって普通におっぱい美人見たかったわ!!だが俺にはアイツがどっからどうみてもオバQに口が三つある怪物にしか見えん!!どんなに間近で責められてもオバQが口説いてるようにしか見えないからもうなんか魅了とかそれ以前の話なんじゃ!!!でも写真とか撮って見せてもらうと普通に俺好みのおっぱい美人だし!!」
    ヒヨシは心の声をあらん限り叫んだ。

    「なんでよりにもよってオバQなんじゃーーー!!!」

    ギルドにこだまする男の嘆きと、女性陣の総じて冷たい視線。
    そしてとりあえずヒヨシの慟哭をRECするドラルク。
    カオスな空間がしばらく続いたのであった。

    ヌヌヌ(つづく)

  • 82二次元好きの匿名さん22/05/25(水) 22:19:52

    ……こ、これは……??
    本編的にはオバQのすがたが本来の姿なんだけど、なぜヒヨシにだけ……???

  • 83二次元好きの匿名さん22/05/25(水) 22:27:33

    お疲れ様です 今日も面白いです
    ヒヨシにだけ真実?の姿なのもはや愛じゃん…(トゥンク)

  • 84二次元好きの匿名さん22/05/25(水) 22:29:35

    ええつまりヒヨニキが本命ってことじゃん…
    とぅるーらぶ

  • 85122/05/25(水) 22:36:35

    フランチェスカは愛が大きいので自分からがっつきにいくタイプのイケメン、ジャニ系にはもれなくノイズとしてオバQが付きまとうイメージです。
    ヒヨシが本命……、本命って言っちゃっていいのかキッスではないのでちょっと自信はないんですけど個人的には大分本命よりのイメージで書いてます。なのでヒヨシからはめちゃくちゃオバQに見える。
    ヒヨコちゃんだろうと推してたしね。

  • 86二次元好きの匿名さん22/05/25(水) 22:44:54

    乙です!
    ヘルシング&御真祖様空間の荘厳さが加速度的に大暴落してて草。
    マリアがヒマリちゃんのこと気にしてなくてホッとした。レッドバレットと他の退治人との間に亀裂が入らなくて良かった。
    フランチェスカの言ってた廃病院、矢部病院で確定か…。でも、下半身透明やあっちゃんだけなら起こらなそうなこともいくつかあるような…?(小人になるとかGとか…)
    そして本命に限って元のキッスの姿に見えるの、どゆこと⁉️

  • 87二次元好きの匿名さん22/05/26(木) 00:33:15

    半透明の記憶はなさそうだけど、あっちゃんが覚えていてホラーホスピタル開催した説あり…? 違いがどういったものなのかわからなくて不思議。
    みたい美人が見れないヒヨシで草。

  • 88二次元好きの匿名さん22/05/26(木) 07:08:53

    これもしかしておまま来ますかね?
    wktk

  • 89二次元好きの匿名さん22/05/26(木) 07:10:20

    そういえば怪異は記憶の引継ぎあるんだろうか

  • 90二次元好きの匿名さん22/05/26(木) 08:02:47

    「めちゃくちゃ」オバQに見えるは草
    ヒナイチちゃんもフランチェスカがキッスだってこれで分かるんだろうな

  • 91二次元好きの匿名さん22/05/26(木) 14:34:12

    撮るのはやめたげてよドラルクw

  • 92二次元好きの匿名さん22/05/26(木) 22:01:15

    本命(?)に魅了が効かなくてオバQに見えるってことは、こっちの世界でも真実の姿はオバQなのかな。
    それだと、ありのままの自分を美しいと自信に溢れていたキッスが意識的にか無意識にか他人に自分の姿を人型寄りに見せ掛けるようになったってことになるけど何があったんだろう。続きがとても気になる。

  • 93二次元好きの匿名さん22/05/26(木) 22:19:28

    すこしだけ、時間を遡ろう。

    あのクソ映画のポスターさながらの怪獣対決が起きたり、ロナルドが兄妹関連で散々トラブルが重なった日の夜の出来事である。

    あの夜の狂騒劇を、地上から観察していた人物がいた。
    その人物は見晴らしの良い屋上でレンズを構え続け、駅前通りの戦いをじっと見つめている。
    退治人たちの戦いも見事なものであったが、男には明確に撮りたい被写体がいた。

    別のビルの屋上に移動したのは分かっている。
    フォーカスしていくと、ちらちらと赤い服の裾が見え隠れした。
    屋上の上で大立ち回りをする赤い退治人は、今夜も夜闇に綺麗に生えている。

    だが、今夜の男の目的はそちらではない。
    男はじっと機会を待つ。

    何かトラブルがあったようで、屋上では一波乱起きているのが見える。
    大烏が来て、被写体は一転してスピード感のある状況に巻き込まれていった。
    男はカシャカシャとシャッターを切っていくが、被写体を追っていくのでやっとだ。
    被写体は一度振り落とされたのが見え、カメラで追えない場所へと落ちて行ってしまう。

    しかし、

    「!」

    蝙蝠の大群が地上から上空へと飛び上がっていく。
    男は息を止めた。逃してはならないタイミングに全神経をとがらせる為に。

    飛び上がった蝙蝠の大群はいつの間にか溶けていき、大きなシルエットを形作る。
    蝙蝠の大群は、巨大な蝙蝠の羽を携えた異形の男へと変っていた。

  • 94二次元好きの匿名さん22/05/26(木) 22:20:31

    異形の男が翼を羽ばたかせたタイミングでシャッターを切る。
    そのベストなタイミングは数秒もない。コマ送りのように何枚も撮られた写真の中に、確かに手ごたえのある写真が取れた気がした。

    異形の男は目にもとまらぬ速さで大烏を追っていく。
    これ以上の撮影は専門の機材がないと難しいと男は判断し、カメラを構える手をようやくおろした。





    「はぁ~~~!ロナルドしゃんかっこいいーー!!」
    社内にある自分用のデスクでサンズは一人身もだえる。
    やはり何度見てもこの表紙は芸術点が高すぎると思うのだ。

    週刊バンパイアハンターの特別号の表紙。
    「怪奇!?ゲテモノ怪獣大戦争!」「透明吸血鬼ふたたび」など様々な見出しがある中で、一番注目を集める表紙の大部分を飾るのは、大きな蝙蝠の羽を羽ばたかせたロナルドの写真だった。

    この表紙を書店で見た時はテンションが上がりすぎて、サンズの挙動が大分おかしなことになったくらいだ。
    「うう、他社のライバル雑誌社とはいえこの出来栄えは認めざるを得ない……!」
    さぞや腕の良いカメラマンが撮ったに違いない。

    ロナルドとヒナイチ、新横浜に突然現れた吸血鬼コンビは吸対に監督されていることもあって、出た当初はマスコミとは縁遠い存在であった。だが、ある週の週刊バンパイアハンターの表紙を二人が飾ったことにより、吸対隊長の懐刀として一躍その存在を知らしめることになる。
    活躍は華々しくも基本的に二人は吸対と行動しているため、表舞台にあまり出ることがないレアな存在だ。
    その為、他の退治人と比べると写真を撮られる機会も非常に少なく、追っかけている側としては端的に言ってしまうと供給が少ない。
    それでも週バンにこの二人を熱心に追っている記者がいるらしく、たまに動きがあったかと思えば今回のような非常に破壊力のある写真を出してくるのだった。

    「うちでもロナルドしゃんで特集とか組めないかなあ。でも吸対からはあんまり出れないみたいだし……、くそうドラルク」
    サンズがドラルクに謂れのない恨み節を放っていると、いつの間にやら後ろに同じ編集のクワバラが立っていた。

  • 95二次元好きの匿名さん22/05/26(木) 22:21:26

    「サンちゃん」
    「うわ!?なんですかクワバラ!!」
    「ちょっとブレイクタイムのところ堪忍な。サンちゃん、そろそろ新しい企画ださんとダメやで。業ちゃんも首を長ーくして待っとるし」
    「ああ~、分かってます!分かってますよ!ちゃんと出しますから!!それよりもさっさとアイジャ飯の原稿取りに行ったらどうですかクワバラ!」
    「いやー、もうちょいかかりそうでなあ」「急かすのも編集の仕事でしょうが!!」
    サンズがクワバラを強制的にスペース外へ押し出すと、再び頭を抱える。

    「とは言っても今ピンとくる企画無いんですよねえ。この間のフランチェスカ先生の人生相談コーナーは評判良かったけど、同じ方向性を続けるのはちょっと……」
    そこでこの間起きた良かったことを思い出し、つい顔がにやけてしまう。

    「あの時のロニャルドしゃまカッコよかった~~」
    個人的な趣味でフランチェスカ先生に占いをしに行った日。まさか偶然ロナルドに助けてもらい、おまけに名前まで呼んでもらえるなんて。自分の不注意を深く反省すべき事件ではあったのだが、それでも少し浮かれてしまう。

    「やっぱりなんとかしてお近づきになりたい!!そしてできればロナルドしゃんの特集組んで担当編集になりたい!!」
    あんな超ウルトラ級の幸運、そうそう起こらないだろうとサンズもわきまえている。
    だが諦めたら試合終了である。少しでも近づくためには何をすればいい?そうだ!

    「新横浜の吸血鬼のホットスポットを調べれば、どこかでニアミスするのでは……?」
    サンズはさっそく取材の準備を進めていく。





    吸対所属の職員であるミカエラは、最近話題の心霊スポットの存在に辟易していた。
    警察の一員として廃墟への無断侵入が多発していることに憤りを感じるのはもちろんだが、それよりもミカエラ個人的な理由が大半を占めている。
    ミカエラが自前のスマホを見ると、相変わらず欲しかった返事は返ってきていない。
    そしてスマホを懐にしまい、ため息をついた。

  • 96二次元好きの匿名さん22/05/26(木) 22:22:15

    「どうしたんだ、ミカエラ。随分と憂鬱そうだが」
    さっきからスマホを見てはしまいを繰り返すミカエラを見かねて、セロリトラップ制作中の半田が尋ねた。
    ちなみにトラップはもちろん次の対ロナルド用である。
    「貴様には関係な……、いや、すこし身内のことで悩んでいる」
    元気な時のミカエラなら自分で解決すると言わんばかりに一度突っぱねるのだが、珍しく人を頼っている。よほど参っているらしい。
    「悩み事なら相談に応じるが」
    「……弟が」「弟?」

    「弟が反抗期で、私の話を聞いてくれない……!」
    ミカエラは血を吐くように告白した。

    「反抗期、というと。下着とか靴下を別々に洗うというアレか?」
    「そこでどうして女子高生の反抗期が発想として出てくるんだ!弟はお前と同年代くらいの普通の男だ」
    半田自身には親への反抗期がほとんど無かったため反抗のイメージがフワッフワだった。

    「最近そもそも会話が成り立たなくて、RINEも既読無視だし、顔合わせてもすぐ帰ってしまうし……」
    ミカエラは行動を振り返るにつれて辛くなってきたのか段々とべちょべちょになっていく。だいぶ重症である。
    「む、なにか反発されてしまうような心当たりはないのか?たとえばビキニを無理矢理布教するとか」
    「ビキニは関係ないだろうが!!それにビキニは数年前にマジ切れされてからは一切すすめていない!」「布教はしたんだな」
    「だがそれはもう終わった話なのだ。困ったことにこれという原因が思い浮かばない。昔は、こんなことなかったのに」

    ミカエラは項垂れる。
    「ずっと何かが足りていないように感じるのだ。だから、透とも歯車が上手くかみ合っていないように感じられて。だが、それがなにかは分からない」
    「それなら、俺にも覚えがあるぞ」
    「本当か?」「ああ」

    半田はある二人の事を思い浮かべる。
    「昔から何か足りていない気がしたのだが、ある出来事がきっかけで足りない何かが解消されてきている。歪ではあるんだがパーツがそろったようで。このセロリトラップもその一環だな」
    「セロリが?」
    ミカエラは真に受けて良いのか分からない顔をした。

  • 97二次元好きの匿名さん22/05/26(木) 22:22:48

    「ただポイントなのは歪ではあるが、という点だ。まったく欲しかったものそのままではない。隙間をどう自分で折り合いをつけていくのかが重要だ。それに、ミカエラも何かが足りないと思っていても弟と真正面から向き合おうとしているところは誇るべきことだと思うぞ」

    「俺は一人だと歪みに上手く向き合えなかったからな」
    半田が自嘲する。
    「……わからない。私はただ理想に向けてがむしゃらに動いているだけだ」

    「最近、弟が例の廃病院に居ついているらしい」
    「廃病院、というとあの心霊スポットか」
    「ああ。容姿の特徴からして弟だと思う。だが、訪ねても何をしているのか私に教えてくれない」
    「ならば」

    半田はニッと不遜な笑みを浮かべる。
    「直接聞きに行くほかあるまいな!」





    その会話から数時間後の出来事である。
    職場に戻ったドラルクやロナルド達の元に、一本の内線がかかってきた。

    「はい、ドラルクです。はい、はい、私にお客?どなたです?」


    「……週刊バンパイアハンターからの取材?」


    ヌヌヌ!(つづく)

  • 98二次元好きの匿名さん22/05/26(木) 22:24:23

    まさか……カメ谷!?

  • 99二次元好きの匿名さん22/05/26(木) 23:24:08

    乙です!
    カメ谷か?!カメ谷なのか?!突撃吸対取材しちゃうのか⁉️
    サンズちゃんがロナルドしゃんって言ってたから記憶引き継ぎ組かも、と少しだけ不安だったけど、今生の記憶で安心した。けど準備していることはカタギがやると事故増やしそう…。まあオータム編集者はカタギじゃないから大丈夫か…?
    クワバラさんもアイジャ飯作者も元気(?)で良かった!オータム書店自体あるから当然っちゃ当然だけど業編集長も存在確認ヨシ!
    顔を隠した男、トオルで確定か…。

  • 100二次元好きの匿名さん22/05/27(金) 10:28:56

    クワさんも健在でなにより

  • 101二次元好きの匿名さん22/05/27(金) 19:14:51

    今回の話では野球挙の動向がわかるかな
    あっちゃんの記憶も気になる
    小人云々は体を分離させたあっちゃん(たち)のことだろうか?

  • 102二次元好きの匿名さん22/05/27(金) 21:43:06

    外灯もない、非常灯だけが点けられた無人の夜の病院は、営業していたころの賑やかさはかけらもなく、ただ静寂に包まれているように見える。

    きっちりと鍵をかけられて厳重に締まっている外門を開き、数人の男女がそろそろと入っていった。
    病院の3階の窓から暗視鏡でそれを確認した男は、準備の為に移動を開始する。



    「というわけでチキチキ!夕闇怪異探検隊in矢部病院〜~!」「ヌヌヌン~!」
    ドラルクがパフパフラッパを鳴らしながらジョンとともに軽快に小躍りする。

    「待てや」「なんだい車でドライブ系のホラーで窓の隙間から手が伸びてきて運転手を触ろうとする恐怖話にビビって車に乗るときやたら窓の隙間を気にすルドくん」
    「あれは虫が入らねえよう気にしとるだけじゃ!……そうじゃなくてだな、なんで俺らいきなり矢部病院に来てるんだ?明らかにもう一回展開噛ませる流れだった気がするんだが?」
    「ぶっちゃけた話、」

    「前振りに時間かけすぎて展開が押してる」「思いっきりメタ喋るんじゃねえよ」

    「このままだとネタがろくに出せないまま更新2日分くらい消費しそうだったんだ。んなもんカットだカット!」
    「億万歩ゆずってその主張は認めるがカメ…、週バンの記者はどうなったんだよ」
    「どうもはじめまして!週刊バンパイアハンター記者のカメ谷です!」
    「ウビャーーーーーー!!?」
    突然生えてきたカメ谷にロナルドはビビり散らかす。カメ谷はおなじみの見慣れた調子でぐいぐいとロナルドに迫っていく。

    「ロナルドさん、いつも活躍撮らせてもらってますよ!今日は密着取材よろしくお願いしますね!」
    「どどどどどっから出てきたんですかよろしくお願いします!!?密着取材!?」
    「吸対の仕事風景を某警察24時風に密着したいという申し出があったので広報活動の一環として許可した」
    「単に面白そうだったから許可しただけだろ」
    ヒナイチがすげなく横やりを入れる。

  • 103二次元好きの匿名さん22/05/27(金) 21:43:32

    「ちなみに取材や撮影の為に人が入れるハンマースペースみたいなものがあって、そこから出てきました」
    「かのブラタ〇リや笑ってはい〇ないなどでも使われる由緒正しい隠しスペースだ感謝しなさい」
    「俺は使ってねえんだよオメーがどや顔すんなというか現地の地理教えてくれる先生やバスのコントの乗客とかそこから出してたの???」
    もちろん嘘である。ロナルドがドラルクにコブラツイストをかけるとヒナイチが改めて場を引き締めにかかる。

    「いつまでも遊んでないで、今日の目的をもう一度確認するぞドラルク」「はいはーい」
    「まず、今日の調査で調べることは多発する怪奇現象についてだな。今の段階では吸血鬼の気配はするのか?」
    「一応調べたんだけども」
    ドラルクが悩ましい顔で顎をさする。
    「なんか混ざってるんだよなあ。複数の臭いがするのは間違いないんだけど、報告されてる心霊現象に対して数が足りないようにな……」
    「吸血鬼以外が原因の怪奇現象もあるのかもしれないな」「肝試ししに来た人間が原因、とかもあるんじゃね?」

    「その可能性は高い。今日はその精査も兼ねよう。あとは、巣を探すんだったか?」
    「今の段階では「アレ」の臭いはしなかったのかよ」
    ロナルドが尋ねる。
    「そこまでの腐臭はしていないね。「アレ」に関しては街中探しても残り香が探せないから正直望みは薄いかな。あと、言い忘れてたんだけど、今日は別機動隊として半田君とミカエラ君がいるから」
    「初耳なんだが」「報連相しろバカ」
    「今日決まったんだもの。私たちは正面玄関からのA棟をメインに、ミカエラ君たちは緊急外来入り口からB棟をメインに探索してもらう。一通り周り終わったら合流だ」
    「「了解」」

    「確認の方、終わりましたかね?」
    カメ谷がシャッターを切りながら訪ねる。
    「ああ、お待たせしたね。それでは、税金を使った肝試しでも始めるとしようか」

    ドラルクが、中央玄関の自動扉に手をかける。

  • 104二次元好きの匿名さん22/05/27(金) 21:44:07



    スマホが振動したのを確認すると、ミカエラは作戦開始の合図をする。
    「時間だ。作戦を開始する」「了解」
    半田が借りてきた緊急外来受付の鍵を取り出すとガチャリと、鍵を差し込んで回した。



    一方、サンズがいるのは中央玄関でも緊急外来でもない第三の入り口であった。
    「病院の管理主さんに取材許可とったんですけど、これ本当にはいっちゃって大丈夫ですかね……」
    夜中の廃墟の病院に一人で突撃取材。冷静になって考えるとなかなか怖いシチュエーションなのである。
    それにサンズは知る由もなかったが、この第三の入り口はいわゆる霊安室の近くに作られるもので、ご遺体を車に移動させる時に使われる入り口だ。
    他二つと違って薄暗く少し人目に付きにくい場所にあるのもあって、不気味さが他よりも色濃かった。

    「いやでも、女は度胸ですよサンズちゃん!ここで怖気づいてなどいられません!」
    サンズは鍵を片手にドアノブを握る。
    「えーい!!行ってしまえ!!」

    そして、鍵を差し込んで回した。



    役者が揃った。
    ジャラララララララというタイトルコールとともに、新たなる伝説が始まる。
    そう、タイトルは__

  • 105二次元好きの匿名さん22/05/27(金) 21:44:34

    『絶叫迷宮~廃病院のウワサ~』

    「え?」「ヌヌ?」
    「なんだこれ?」

    突然頭に浮かび上がったタイトルコールに一同が呆気に取られていると、先ほど自分たちが入ってきた入り口が全て自動的に閉まり、鍵がかかった。

    「扉が勝手に閉まった!?」
    「窓ガラスも全部黒塗りになって外が見えねえ!くそ!」
    ロナルドが躊躇なくガラスを叩き割ろうとするが壊すことが出来ない。完全に閉じ込められた。

    「絶叫迷宮、絶叫迷宮だと……?」
    「何か知ってるのかドラ公!?」

    「ああ、知っているとも。絶叫迷宮、実在するお化け屋敷を元に作られたホラー映画でいわゆる」

    「クソ映画だ……!」


    ヌヌヌ(つづく)

  • 106二次元好きの匿名さん22/05/27(金) 21:44:59

    おまけ


    「それでは、税金を使った肝試しでも始めるとしようか……」
    ドラルクは自動ドアに手をかけて、引っ張る。

    開かない。

    「失礼」
    ドラルクは両手を使って引っ張る。

    開かない。

    「もう少し待ってくれ」
    ドラルクは今度は腰を入れて自動ドアを引っ張る。

    開かない。

    「フンググヌァアッハァァアアアア!!!!」

    開かない。

    ヒナイチがつかつかと自動ドアに近づくと、片手で無情に自動ドアを開けた。

    ヌン(完)

  • 107二次元好きの匿名さん22/05/27(金) 21:59:11

    更新乙
    こんだけの人数動かせるのマジ畏怖い
    ハンマースペースに入るのボウリングのレーンに吸い込まれるより怖そうだけど、カメ谷だしな……SAN値減少ゼロっぽい

  • 108二次元好きの匿名さん22/05/27(金) 22:02:11

    ク、クソザコおじさん…!!

  • 109二次元好きの匿名さん22/05/27(金) 22:50:25

    乙です!
    ドラルクが御真祖様にお土産持たされた時のヘルシングのセリフも「メタ話…?いやまさか」ってなってましたけど、今回はガッツリメタ話!!!本っっっ当にいつもお疲れさまです…!
    カメラマンはカメ谷で確定か…。どんな世界でも変わらないなカメ谷は…。
    ミカエラと半田は隊長にちゃんと話通してるみたいで安心だけど、サンズちゃんが心配…!その管理主さん本当に管理主さん?普通吸対の調査と同時に一般人一人で別口から入れる?その上ご遺体を移動させる用とか、お化けが手招きしているようにしか見えない…。
    と思ったら突然のクソ映画‼️

  • 110二次元好きの匿名さん22/05/28(土) 07:43:49

    サンズちゃん嬉しい

  • 111二次元好きの匿名さん22/05/28(土) 11:00:50

    クソザコおじさん…自動ドア自体開けるの大変そうだけどそれにしたって…

  • 112二次元好きの匿名さん22/05/28(土) 11:35:57

    見逃したけどクソ映画吸血鬼いたらしいからそのへん…?

    色々メタ的な事情もそうじゃない部分も起きててわかんないなぁ…とりあえず次回楽しみにしてます!

  • 113二次元好きの匿名さん22/05/28(土) 14:03:35

    絶叫迷宮は富士急ハイランドの戦慄迷宮が元ネタかな
    映画は観たことないが、アトラクションの方はお化け屋敷苦手な人にはキツいだろうなって感じだった
    個人的には限界の人用のと出口が途中に設置してあって優しいなぁとほっこりした

  • 114二次元好きの匿名さん22/05/28(土) 19:10:21

    躊躇なく窓ガラスを割ろうとするゴリラ

  • 115二次元好きの匿名さん22/05/28(土) 22:19:09

    いかにもな死装束に天冠を付けた幽霊姿のような男、透は標的を確認する。

    男3人と女1人とマジロ1匹がいる。男の1人は白い制服……、きっと吸対だ。
    (警察、だがその程度で怖気づいてなどやるものか!!!ヒャハハハハハハ4名様+マジロご来店!!)

    4人と一匹が完全に入り切るのを確認すると、透は懐から血のように赤い宝石を取り出す。
    そして自分の人差し指を軽く傷つけ、ほんの少しだけ出血させるとその血を宝石に垂らした。

    沈黙していた宝石は脈動のようなきらめきを取り戻す。
    「今夜も頼むぞ~」

    『__この廃病院に、※※映画はあるかい?』

    ジャラララララララという効果音とともにタイトルコールが降りてくる。

    『絶叫迷宮~廃病院のウワサ~』

    タイトルが出ると同時に病院中の窓ガラスや入り口が締め切り、映画を撮影するための閉鎖空間が完成する。
    全ての恐怖を体験するまで、観客、もとい役者は何人たりとも出ることはできない。

    (病院でたまたま拾った珍品にまさかこんな応用力があるなんてな)
    肝試しに来た馬鹿どもをギリギリまで拘束し、恐怖を味合わせたのちに適当なタイミングで開放することが出来る。
    だが今の自分の目的にとって非常に好都合だ。なんとしてでも奴らにインパクトで勝たねばならないのだから。

    (この間の警察官二人組にはきっちりビビって帰ってもらったからな。この調子であいつらにも……!)

    透は4人と1匹を観察する、まずは何を仕掛けるべきか……。

  • 116二次元好きの匿名さん22/05/28(土) 22:20:02



    ピッという録音を開始すると音が鳴ると、まず、カメ谷が質問をする声が聞こえてきた。
    「矢部病院の怪談って知ってる?知ってたら教えてほしいな」

    「ここの病院ではね、昔医療ミスが原因で、植物状態になっちゃった子どもがいたんだって。
    ずっと長い間その子は寝たきりの状態だったんだけど、その子の病室の周りではね、悪い事が起きるんだって。

    段々皆が元気がなくなったり、隣の病室で急変が起きたり、入院が長引いたり。

    そういう事が続くから、看護師さんたちが皆怖がちゃって、最低限のお世話しかしなくなっちゃったんだって。お見舞いも誰も来てくれない。その子も段々と弱って、最後にはそのまま病室で死んじゃった。

    そしたらね、今度はその子が死んじゃってから、周りの病室にいる子供たちが立て続けに死んじゃうんだって。
    元気だったのに、ある日急に容体が変わってとか、階段から踏み外して大けがをするとか。
    皆、あの子がきっと呼んでるんじゃないか?って言ってた。

    あまりにも悪い事が起こりすぎて、事件にもなって、それで追いつめられちゃった院長先生が自殺しちゃった。
    病院も悪い噂ばっかりになって、そのまま潰れちゃったんだって」

    カチッ。

    「えー、以上が矢部病院でまことしやかにささやかれる、矢部病院没落のウワサ!でした~!」
    カメ谷がにっこにこで録音機材を持っている。周辺地域の聞き込みで仕入れてきたウワサらしい。

    「ねえ待って!?結構ガチめの怪談じゃん俺初耳なんだけど!?」「ヌヌイ~!!!」
    思った以上に本格的な怪談話にロナルドとジョンが半泣きでビビり散らかす。
    「私もこの話は初めて聞いた、そんな不祥事あったのかここ……」
    ヒナイチも怖がりはしていないが、単純に初めて聞く話として感心していた。

  • 117二次元好きの匿名さん22/05/28(土) 22:20:36

    「初耳なのはそりゃそうですよ、だってこの話9割嘘だし」
    「「は?」」「ヌ?」

    「ちゃんと該当する事件ないか調べたんだけど無かったんだよね!医療ミスも連続不審死もぜ~んぶ嘘!院長先生が自殺したのは本当だけど病院の廃業理由は資金繰りの悪化」
    「やだ一次ソース確認するマスコミの鏡」「じゃ、じゃあ何なんだよそのやたら本格的な噂話!」

    「ここ最近ぽっと湧いて出た話なんだよね。まるでここを心霊スポットとして盛り上げようとしてるみたい」
    「凝ったミステリー小説でありそうな、見立て殺人を起こす前にそれっぽいウワサ垂れ流しておく仕込みみたいだなあ」
    もっと具体的に言うとマガジンの某ミステリー漫画の犯人視点とかでありそうなやつだ。

    「それにこの噂話、一人の地味目の若い男が発信源みたいだからその人が仕掛け人で間違いなさそう」
    「そんなことまでわかるのか?」
    「ツィッターでエゴサすると噂話流してるやつの目撃情報がほとんど一致してる」
    「すげえな情報化社会……」
    ロナルドは感心すると同時に、わざわざ仕込みした人の苦労を考えると何とも言えない気分になった。



    (アアアア!!!全部論破されとる!!!!!)
    一方仕掛け人側は苦労して作った怪談のあら探しをされ、かつ噂を流した時の背格好まで把握されていて羞恥心と悔しさで身もだえていた。

    (だってしょうがねえだろ!!ちょっとへんな怪談あれば皆勝手に想像して怖がってくれやすくなるし!!俺だって過去の新聞記事全部削除するか地方図書館燃やすなりしてうやむやにしたかったわ!!四谷怪談だってほとんど事実と違うだろ!くっそ俺の4時間かけて考えた怪談ちゃんが!!)
    補足するとそれっぽい怪談を調べるために図書館で怪談小説を読みあさったので、その時間もいれると実際はもっとかかっている。

    (大体なんだよエゴサで身元把握って!もっと衣装変えて別人みたいに演出するかガキどもに賄賂(おかし)渡しとくんだった!こんなんだから現代社会はオカルトとミステリーが死ぬんだ!!分からないことは分からないままにしとく方が幸せなことだってあるんだよ!!!)

    「くそ、見てろよ。まずパンチのある現象から始めてやる……!」
    透は懐から血色の宝石をいくつか取り出す。
    事前のフレーバーテキストがダメなら、実力行使に限る、だ。

  • 118二次元好きの匿名さん22/05/28(土) 22:21:36




    一方、別隊の半田とミカエラ達である。

    「やはり扉も窓も開かないぞミカエラ。完全に閉じ込められたようだ」
    「こちらも隊長と連絡がつかない。圏外だ」

    二人は速やかに自分たちの状況を確認すると今後の方針をすり合わせる。
    「このまま助けが来るまで待機をしても良いが、私としては探索をしながら隊長たちとの合流を提案したい」
    「俺もその方針に賛成だ。棟が分かれているとはいえ1時間も探索にはかからんだろうしな」
    「では、まず一階から順に」

    ミカエラ達が現在いる棟はかつて放射線科やMRIなどの専門的な検査設備が揃った棟だ。
    一部屋一部屋見ていくが、がらんとした大部屋に診察用のイスや棚がわずかに残る程度だ。
    「吸血鬼の気配はしないのか?」
    「別の棟の方面からはわずかに匂うが、この近辺ではあまり強い気配はしないな……いても一人か?噂にあった怪奇現象は小人の出現、害虫の発生、ポルターガイスト、手形の発生で全てだったな?」
    「現象はな。あとは矢部病院にまつわる事実無根に近い怪談話くらいだ」「怪談話?」
    「ああ、ほとんど事実に則っていないふざけた怪談話だ。なんでも子供の幽霊が祟り殺すとか、バカバカしい。誰が考えたんだか」
    ミカエラは心底呆れたようにため息をつく。彼の弟が聞けばおそらく憤慨ものの発言だっただろう。

    「だが、ふざけた怪談話であってもフレーバーを汲むのも意外な手掛かりに繋がるかもしれないぞ。……む、次は産科だな」
    薄汚れた看板にはかろうじて母子センターと書かれているのが読める。
    この病院での産科施設の呼称なのであろう。

    「「……」」
    男二人はあまり縁のない文字列に入るのにすこしためらいを覚える。別にやましいことなどないはずなのだが。

    「入るか」「そうだな」
    何故か二人で確認しあってようやく歩みを進める。なんとなくすわりが悪かった。

  • 119二次元好きの匿名さん22/05/28(土) 22:23:12

    施設自体は他の専門施設との廃墟具合はそう変わらない、だが。


    オギャアアア、オギャアアアア

    「「!?」」
    突然赤ん坊のような泣き声が響いた。
    半田とミカエラはすぐに警戒態勢に入る。片手で刀の鞘を握りながら、何時でも抜刀ができるように。

    鳴き声は、分娩室の方から聞こえてくる。

    ミカエラが半田に視線を送ると、半田は首を振る。
    吸血鬼の気配はしない。
    これが何を意味するのか考えると、半田は少し背筋が寒くなった。
    もしかして、本当に出てしまったのか?

    二人は、ゆっくりと分娩室のスライドドアを開けた。


    「オギャア!!オギャアアアア!!!」

    半田の鼓膜にけたたましい鳴き声が届く。幻聴などではない。これは現実のものだ。
    だが、それ以上に信じがたいのが


    赤ん坊用のヨダレかけを付けたスーツを着た成人男性が、分娩台の上で、泣いている。

  • 120二次元好きの匿名さん22/05/28(土) 22:23:27

    「……」「……ォギャア」
    男性がこちらに気が付いて視線を向ける。三人の視線が交差する。
    誰も何も言えなかった。
    半田は脂汗をかいた。ミカエラは静かに泣いた。男性はおそらくこの事態に対する言い訳を考えている。

    半田は、なんとか事を丸く収めないかと思い、見なかったことにしてスライドドアを再び締めた。


    「違うんです待ってください!!!言い分けさせてください!!!」
    「ウワァアアアアア!!!!」「ギャアアアアア!!!!!」

    分娩室からヨダレかけをかけた男性が半田たちを全力で追いかけてくる。

    吸血鬼(ヘンタイ)の気配は分かっても、人間(ヘンタイ)の気配は分からない。

    半田は全力で逃走しながら、今後の教訓として頭に刻み付けた。


    ヌヌヌ(つづく)

  • 121122/05/28(土) 22:37:13

    一応念のため書いときますが、最後の変態はオリキャラです

  • 122二次元好きの匿名さん22/05/28(土) 22:51:18

    原作の方でもギリギリいそうな変態出てきたな…

  • 123二次元好きの匿名さん22/05/29(日) 00:04:23

    乙です!
    「交番の見回り」「警察官二人組」……もしかして:ヌリヌリヌンと魔法美少女
    本当にクソ映画監督の能力とは…。ってか心臓って使うこともできるの?!将棋でとった相手の駒か?
    そして透が作った怪談他方面から蹴られてて草。とはいえ心臓いっぱい持ってるのは少し怖いな…。
    透の把握してる来客が隊長チームだけなのが気になる…。ミカ兄チームに気付いてないのはまあ、兄貴だしこっそり近づくのはできるだろうけど、サンズちゃん把握されてないといやな想像が膨らんじゃう…。
    ……って思ってたら人間の変態(本スレオリジナル)だーーーーー!!!!!

  • 124二次元好きの匿名さん22/05/29(日) 00:27:03

    突然の人間の変態!!!
    これがロナルドたちなら殴れたんだろうな…変態だしな…半田たちは変態慣れしてないから仕方ないね…変態慣れってなんだ…

  • 125二次元好きの匿名さん22/05/29(日) 07:13:28

    すべての感想をラストの人間の変態が持っていった感がすごい

  • 126二次元好きの匿名さん22/05/29(日) 07:21:43

    こっちの半田はまだロナルドおじさん化してないから変態耐性も低そう

  • 127二次元好きの匿名さん22/05/29(日) 10:25:21

    透どこでそんなに吸血鬼の心臓を…危なくないのか?
    とか思ってたら人間の変態が全部持っていった。怖い。

  • 128二次元好きの匿名さん22/05/29(日) 12:46:39

    人間の変態が全て持っていってしまったけど謎が多いな…

  • 129二次元好きの匿名さん22/05/29(日) 21:42:51

    前半のシリアスが爆散した……
    やはり変態は強い

  • 130二次元好きの匿名さん22/05/29(日) 22:14:46

    ウワァアアアアア

    遠くから漏れ響いてくる突然の悲鳴にサンズはびくりと身体をこわばらせる。

    「な、なんですか今の音!人の声が聞こえたような……?」
    サンズも若輩ながらも編集者の端くれである。巷で噂になっている怪談は大体が作り話だという調べはついている。
    だがこんなに雰囲気のある空間で一人きりで調査中となると、怖いものは怖い。
    今となっては会社の侵入者よけのトラップの起動音のやかましさすら恋しくなる。

    「くそう、ビビっていられますか!これはむしろチャンスです!チャンス!」
    サンズはなんとか気合を入れなおすと、再び懐中電灯片手に一部屋一部屋見て回る。
    大部屋は見てはみたが特にわかることや異常は無い。
    フロアマップを見る。サンズのいる棟では3階以降は一般病室になっており、フロアマップにも詳しく書かれていない部分だ。

    「怪談って言ったら、やっぱり一番人の出入りが多い病室の方が本命ですよね」
    階段を登ろう。サンズはさらに闇の濃い上階へと足を踏み入れた。

    サンズがいなくなった後。
    サンズが最初に出入りした入り口のドアノブが、ガチャリと回った。



    一方の透である。

    「最初の怪異!ポルターガイスト!!」
    透はあらかじめ買っておいた血液パウチを取り出すとほんの数滴、最初に使った宝石よりもかなり小さめな宝石に垂らす。
    ちなみに以降は自分の指とかいちいち切ってられないので大体パウチ頼みである。最初の一回は気分を上げるための演出だ。

    (この宝石はなぜかは知らないがアベックにやたら憎しみを持ってるっぽい特級呪物!!男女がいなければ全く動いちゃくれないが今日のグループは男女!さあ動けえ!!!)

  • 131二次元好きの匿名さん22/05/29(日) 22:15:25

    ドラルク達一行は病院の正面玄関、外来受付やら薬局跡地を見て回っており、ロナルドとヒナイチ二人が少し離れた場所を調べ始めている。
    今こそ絶好のチャンス!
    上手くいく場合は、周辺の椅子や小物が一斉にぶん回される筈だ。
    血色の宝石が、男女の気配に反応したのかゆっくりと脈動していく。
    (いけえええ!!)

    「なあヒナイチ」
    「どうしたんだロナルド?何か見つけたのか」

    「忘れものっぽいペンギンのキーホルダー見つけた。ペギギー!」
    「」


    「チーーーーン!!!チンチンチーーーーン!!!!」
    「どうしたんだヒナイチ君!!」「ヌヌヌヌヌン!?」「何か事件でもありましたか!?」

    ドラルクとカメ谷が急いで駆け付けると、そこにはぜーぜー息切れしたヒナイチとセロリをぶっ刺され倒れたロナルドがいる。
    「なにがあったの?」「悪魔の化身から身を守るためにはやむを得ない犠牲だった」
    「そんな壮大な出来事がわずか一分の間に?」「ヌー……?」
    カメ谷はぶっ倒れたロナルドを無情にも写真に写していく。

    (なんで俺が驚かす以前に叫んでんだあいつら)
    そして透はさっきまで脈動していた筈の宝石を見る。
    (そして宝石がうんともすんとも言わなくなった!なんでだよさっきまでやる気あったじゃん!そこまでいったなら動いてくれよ!)

    透は知る由もなかったが、宝石はこいつら別にアベックじゃねえな判定で一気にやる気をなくしたのだ。
    (頼みます宝石様後で山崎のシングルブラッドシリーズ出しますから……!)
    宝石は透の必死の頼み込みに明らかにチッ、しゃあねえなあという空気とともに脈動を取り戻し、そして光った。

  • 132二次元好きの匿名さん22/05/29(日) 22:16:16

    ロナルドを無理矢理たたき起こした一行は、新たな怪異に遭遇する。
    「あ、あれは……!」

    外来受付に残された一本のボールペンが高速で回転していた。

    「……これがポルターガイスト?」
    ドラルクがしょっぱい顔でボールペンを指さす。
    「何も知らないで見るとニュートンのゆりかごとかそういうオブジェっぽい」「ヌヌヌヌヌーヌ(カチカチボール)」
    「確かに高速回転は凄いが、やろうと思えば磁石とかでも再現できそうな微妙さだ」
    「噂だともう少し派手なポルターガイスト起きてたんですけどね。椅子が大回転したり」
    「やっぱり回転はするんだな」

    (しょっぱい!!!!)
    透は拳で壁を叩いた。

    (駄目だ!これじゃ駄目だ!このままではがっかり名所ならぬがっかりホラースポットに名前をあげられる!)

    (なんとか恐怖のインパクトを出さないと!こうなったらGを……)
    透はもう一つの宝石に頼ろうとして、躊躇する。
    (いやでも、G、キツイ。後片付けとかその後の事考えると、精神的にキッツイ)
    作られる地獄絵図の事を考えて、結局懐に戻した。

    (それなら……!)
    透は拳を握り締めた。


    「今のところボールペン大回転以外は派手な怪奇現象は無いねえ、ジョン」「ヌー」
    「ボールペン動かすぐらいなら今の私たちでもできるしな」
    「俺も緑のアレだったらできるだろうけど絶対やりたくねえ」
    「まだまだ、院内広いですし、気長に探しましょう!」

  • 133二次元好きの匿名さん22/05/29(日) 22:17:34

    一行が別フロアへ続く廊下を歩きだすと、突然廊下に置かれた棚がひとりでに倒れる。
    「あぶね!?」「なんだ一体!」

    (第一の怪!)

    「これは書類棚か……?」「おい、ヒナイチ!落ちてきた箱から」
    「釘が打たれた、木製の人形?」

    (第二の怪!)

    「えっ、これは呪われた人形とかそういうやつじゃ」「落ち着けロナルド!」
    「なかなか興味深いですよ!ロナルドさんそのまま呪いとか受けませんか!」「鬼かお前は!」
    「ヌッ!?」「どうしたんだいジョン」
    ジョンは震える指で誰もいない方向を指さす。

    「ヌンヌヌヌヌ、ヌヌッヌ……(女の人が通った)」

    (第三の怪だーー!!)

    ポルターガイストが不発だった時用の透力作ホラー三点セットである。
    インパクトは宝石を使った能力に比べるとささやかなものだが、それでも恐怖を湧き立たせるのに十分な威力である!

    (さあ泣き叫べ!頼むから怖がってくれ!!)
    透は祈った。これ以上大した手が残っていないから何か刺さってくれという仕掛け人の切なる願いである。

    「やっぱりこの病院やばいんじゃないの!?さっきから凄いいっぱい起きるんだけど!!」
    「確かにこう現象が多いと気になるな……」

    「いや、駄目だ」「ドラルク?」
    ドラルクが珍しくキリっとした顔で言い切る。

  • 134二次元好きの匿名さん22/05/29(日) 22:18:08

    「何か分かったことでもあるのかよ、ドラ公」
    「いいかいロナルド君、いままで起きた怪奇現象もどきはね、全てまともすぎるんだ」

    「まとも?」
    「ああ、きちんと人を怖がらせようと考えて作られている」
    (ウッ)
    透は図星が突き刺さった。

    「じゃあいままでの現象も操ってるやつが」「そうじゃない」
    「ん?」


    「こんなまともなホラー要素でクソ映画名乗られてたまるか!最初に明らかにクソ映画を想像させるタイトル持ってきて人をワクワクさせておきながらなんじゃこの有様は!!現段階ではただのまともなお化け屋敷だ!!!クソ名乗るのなら時系列ごっちゃまぜで理解させる気のないストーリー、夢オチ、特に本筋と関係のない怪奇現象、人間が一番怖かったですエンド、グダグダ会話で尺伸ばし、薄暗い背景で何起こってるんだか分からないクソカメラワークとかそういうの持ってこいや!!!!!」


    ヌヌヌ(つづく)

  • 135二次元好きの匿名さん22/05/29(日) 22:19:01

    おまけ
    ※このおまけの世界線だけモザイクではなく本編の世界です。

    ド「なあロナルド君」ロ「なんだよ」
    ド「最近私ヌーチューブで面白い話をみつけてさ」ロ「興味ねえ」
    ド「その面白い話、怪談話なんだよね。その年の一番怖い怪談決める大会で優勝した話だったんだ」ロ「……怖かったのか?」
    ド「うん、結構ぞっとする話だったよ。ここで説明すると長いから概要だけ言うけど、殺人事件と絡んだ事故物件の話でさ。事件とは関係の無い人にも死者が出てたりする」ロ「ふーん」
    ド「危険な物件なんだけど、その怪談の話者の人はね、その事故物件に魅かれて仕方がないって話になるんだ」
    ロ「そんなヤバイ物件にわざわざ住もうとしてるのか?」ド「そうそう」
    ド「知人にも不動産屋さんにも相談して、皆から止められるんだけどどうしても住みたいって。内見もしたけど結局いまだに住めてないんだって」
    ロ「ならよかったんじゃないのか?オチはそれだけかよ?」
    ド「本題はここからで、私的に一番怖かったのがさ」

    ド「その物件、家賃が一万円だったんだ」

    ド「一万円だったんだよ、不動産屋さんからも止められたその物件」
    ロ「うちより二千円高いな」

    ド&ロ「「……」」

    ド「分かってんならもうちょっとその感覚どうにかしろやアホ造!!!」ロ「うるせえ!!今のところ変態おっさんが来る以外は無害じゃ!!!」
    ド「ダチョウも来るだろうが!!!」ロ「ダチョウは新横だったら皆等しく抱えるリスクだろ!!!」ド「悔しいが一利ある!!!」

    ヌン(完)

  • 136二次元好きの匿名さん22/05/29(日) 22:23:53

    おまけ草
    やっぱ8,000円はヤバいって!

  • 137122/05/29(日) 22:24:15

    おまけの怪談話は、怪談最恐戦の2021年度優勝者の怪談です

  • 138二次元好きの匿名さん22/05/29(日) 22:37:41

    透これ吸血鬼の心臓ってわかって使ってんのかな… 知らないで使ってたらそっちのがホラーな気もする
    そんで3グループ全部から噂がガセだって気づかれてるのもしょっぱいよ透…

  • 139二次元好きの匿名さん22/05/29(日) 22:41:06

    吸血鬼ならまだしも人間の身でこんなことしてる(しかも吸血鬼の心臓使って)ってバレたら誰にとは言えない状況だけど拳骨落とされそう

  • 140二次元好きの匿名さん22/05/30(月) 02:08:35

    そもそもなんで透くんはこんなことを?
    あとちゃんとG出したら片付けるの偉いね…

  • 141二次元好きの匿名さん22/05/30(月) 11:58:49

    にく美さんの自我が心臓だけになっても強すぎて草

  • 142二次元好きの匿名さん22/05/30(月) 14:21:53

    乙です!
    やっぱりサンズちゃんサイドだけホラー度高くない?まあオータムだしいざとなれば助けが…って亜空間使えるのフクマさんだけだった!!フクマさん抜きだとオータムのヤバいところは本社の増強中心だからアウェイには弱い…!あとこの世界多分ロクモンくんいない…!
    ロナルドくんとヒナイチちゃんは弟妹(きょうだい)だからね、ニクミさんもやる気出ないよね。
    心臓に頼らない小細工の方が怖い理不尽。そしてこの世界でもクソしか愛せない病にかかっているドラルク…w

  • 143二次元好きの匿名さん22/05/31(火) 01:34:03

    保守

  • 144二次元好きの匿名さん22/05/31(火) 07:45:37

    「た、確かにクソ映画っぽいタイトルが出た割には音沙汰ないなとは思ったけども」
    ロナルドがよせばいいのにドラルクのめちゃくちゃな主張に同意しかける。
    ドラルクの目が光った。

    「そうだろうロナ・ウッド君!!」「誰がクソ監督じゃ」
    「とにかくこのシチュエーションにはクソ要素が足りない!!もっと頭のねじが十本くらい弾け飛んで、誰が企画通したんだよ責任者の頭にゲボでも詰まってんのかといえるぐらいのエントロピーに溢れてなければ私は認めん!!」
    「そこまでいったらただの映画の形をしたゴミだろ」「趣味に走りすぎてて当初の目的を見失ってないかドラルク」「ヌ(生暖かい目)」
    ドラルクの力説を二人と一匹が雑に反応を返していく。しかしカメ谷は違った。

    「では、ドラルクさんが今の状況に何か要素を付けくわえるとしたらどんな要素をつけますか?」
    「カメ谷…さん!駄目だこのテンションのクソをたしなむフンコロガシおじさんにそんな提案したら……!」
    「私がこのシチュエーションにクソ要素を付け足すなら!!!」「水を得たクラゲのようにテンション上げやがってクソ野郎!陸に打ち上げられて静かに乾いて水分失ってろ!!」

    「いいかい、例えばサメであれば病院だろうと学校だろうとどんな場所でも生きるだろう。サメはクソ映画における主食、パンでありライスだ」
    「病院や学校に出没するサメがそもそも意味が分からないんだが」「最近のサメは水さえあればどこにでも特殊召喚可能なクソ映画における環境カードだからな……」「ヌーヌヌヌーヌ(ゴーストシャーク)」

    「では今回もサメを?」
    「いや、それは安直すぎる。今回は廃病院をテーマにした心霊ものだ。一応このシチュエーションを作った者に対して敬意は払わなければならない。となれば、付け加えるのは」
    ドラルクはパチンと指を鳴らした。

    「盆踊りだ」

  • 145二次元好きの匿名さん22/05/31(火) 07:46:41



    (あいつらさっきからクソ映画とか何言ってんだ。っていうか怖がってくれよ)
    予定外の事がおきすぎて透はいい加減に疲れてきていた。
    (本当に何やってるんだろうな俺……、ダメダメ、ふんばれ)

    本当は帰りたいが、自分の目的の手前帰ることも出来ない。

    すると、透の懐から一つの宝石が脈動しだした。
    (最初に使った閉じ込めようの宝石?なんで)

    『……、しい』
    「は?」

    『……すばら、しい、アイデアだ』

    宝石が生き生きと脈動しだす。まるで欲しかったものはこれだと言わんばかりにラーと輝きだしたのであった。





    ところ変わって半田とミカエラである。
    よだれ掛けを付けた成人男性と一定の距離を取りながらじりじりとにらみ合いをしている。
    さながら某恐竜映画の4頭の小型恐竜とにらみ合う飼育員のような状況だ。

    「話を、きいてください……!」

    半田は嫌だと言いたかったが自分の職務の手前それはできなかった。
    本当に渋々と返事をする。

  • 146二次元好きの匿名さん22/05/31(火) 07:47:57

    「一体何をしていたんだ不審者」
    「私はその、最近仕事に疲れていまして、楽しかった子供時代に、いっそのこと赤ん坊に戻りたかったんです。赤ん坊になって何もかも投げ出してただ泣いていたくて……」
    「本当にそれだけか?」
    ミカエラがいぶかしむが赤ん坊男は微妙に視線をそらした。
    「仕事に疲れていたからといって廃墟で変態行為をしていい理由にはならんぞ」
    「違うんです!許可は取っています!」
    「許可?」

    「ここの病院の管理主さんに許可とりにいったら自由に使っていいよって……」
    「そんなに気軽に借りていい場所なのかここ」
    「赤字経営が原因の破綻だから立て壊す経費もないらしく、ほっぽっておくしかないとのことで」
    「地方の経営破綻してそのまま廃墟になってる民宿みたいだな」

    「なので、ここでみんなと、自分たちのリビドーを開放していたんです」
    「「みんな?」」
    二人は猛烈に嫌な予感がした。

    ミカエラの耳元にフゥっと息が吹きかけられる。
    「ファアアアア!?」
    「どうしたミカエラ!?」
    半田がミカエラの方に振り返ろうとすると、そっと顎を触られる。

    「あなた、素敵な犬歯をしていますね」

    半田は口を抑え、ミカエラを引きずってその場から即座に離れた。まだ背筋がゾクゾクする。
    「だ、誰だ貴様ら!!!」

    「いい、いい悲鳴だ。とても想像力を掻き立てられる……!」
    「なんて素敵な牙なんでしょう!ダンピール様の牙はなかなか拝めないレアなんですよ!」
    高揚した二人の男女の声が聞こえる。どちらからも吸血鬼の気配はしない。

  • 147二次元好きの匿名さん22/05/31(火) 07:49:12

    「紹介します」
    赤ん坊の男が二人を手で示す。

    「人の耳に息を吹きかけた時の表情に人生を賭けた男、吹田さん(仮名)!」
    ミカエラに息を吹きかけた男が悠々と出てくる。若干イケメンよりなのが解せない。
    「老若男女、多種多様のぞくぞくする顔にリビドーを感じます。最近は動物や下等吸血鬼にもチャレンジしています」
    「下等吸血鬼に大体耳はないだろ」

    「吸血鬼の歯に魅了された女!最近の趣味は牙を褒め殺しさせ口内写真を撮影すること!紅一点姉歯さん(仮名)!」
    半田の歯をガン見していた女も出てくる。襟首を取り外せる服で吸血鬼受けばっちり狙ってる辺りがガチすぎて怖い。
    「吸血鬼様の、歯。素敵なんですよ、虫歯一つなくて真っ白で鋭くて……!」

    「そしてこの私!赤ちゃんプレイが最近のストレス発散法!極めるあまりにあらゆる人の潜在的母性力も測れるようになりました!赤夫(仮名)!」
    よだれかけの男は半田をじっと見る。
    「な、なんだ」
    「ダンピールのお兄さん。あなたからは豊かな母性力を感じます。優しい黒髪セミロングで母性溢れるお母さまに育てられた気配が」
    「やめろ本当に気持ち悪い!!やめろ!!!」
    「やっぱりただの変態じゃないか!!」

    赤夫(仮名)は今度はドン引きするミカエラをじっと見る。
    「あなたからはプライドが高く、一見厳しくも、一度懐にいれたら大切に面倒をみてくれそうなツンデレママ力を」
    「イヤァアアアアアア!!!!!」

    「やめろお前ら!!」
    場を締めるような男の一喝が響き渡る。
    さきほどまで浮かれたような様子だった人間の変態どもが一気に姿勢を正した。

  • 148二次元好きの匿名さん22/05/31(火) 07:49:36

    「「「ボス!」」」

    (ボス!?こいつらにボスがいるのか!?)
    (これ以上の変態は勘弁してくれ……!)

    赤夫(仮名)が最後の人物を紹介する。

    「勝って負け、脱いで脱がされ攻防戦!お互い身を削り全てをさらけ出すは男のロマン!」

    「ジャンケン一つで言葉のいらぬコミュニケーション!野球拳大好き!!!」

    ピンクの浴衣に手拭いを被った男が、憮然とした様子で立っている。

    「「野球拳大好き!?」」
    突然の意外?な人物に半田とミカエラは声を上げた。




    一方紹介された野球拳は、

    (……マジでどうするかな)
    凄く、困っていた。


    ヌヌヌ(つづく)

  • 149二次元好きの匿名さん22/05/31(火) 09:02:47

    人間の変態大集合してるし多分変態のことは知らなかった半透明の方では吸血鬼効果によるクソ映画祭りが開催決定してそうで草

  • 150二次元好きの匿名さん22/05/31(火) 11:35:14

    拳兄が人間の変態の総括やってんの最低すぎて最高 こっちのがよっぽどクソ映画してる

  • 151二次元好きの匿名さん22/05/31(火) 11:37:38

    シリアス続きだったからギャグ展開助かる、助かるけどクソ映画と人間の変態で交互に殴ってくるから腹筋が大変
    野球拳いたんかお前!って思ったけど兄弟関係どうなってるんだかな

  • 152二次元好きの匿名さん22/05/31(火) 11:52:16

    確かに吸血鬼の牙は虫歯もない綺麗な象牙色だろうからハマる人はハマるんだろうし、そういった癖を持つ人にとっては吸血鬼よりも大きい半田の牙はたまらないもんがあるんだろうな……半田って虫歯したことあるんかな?

  • 153二次元好きの匿名さん22/05/31(火) 13:02:42

    あらゆる人の潜在的母性力も測れる人間ってなんなんだよ!シンヨコならそういうの一人ぐらいいてもおかしくないな…なんならアカジャでもう出てたかもしれん…って納得できちゃうラインのオリジナル変態を持ってくるんじゃない!
    シリアス設定と伏線回収と軽快なやり取り以外のところに新種の面白さを追加するな!自分は既に赤夫(仮名)さんのこと割と気に入っちゃってるぞ!どうしてくれるんだ!

  • 154二次元好きの匿名さん22/05/31(火) 16:43:32

    野球拳大好きが大好きだからめっちゃ笑ったwww
    そんな登場でいいんかい!!!って思ったら困っとるんかーい!!!
    また面白い展開をありがとうスレ主さん!

  • 155二次元好きの匿名さん22/05/31(火) 20:31:47

    人間の変態集団だーーーーーー!!!

  • 156二次元好きの匿名さん22/05/31(火) 20:53:05

    早朝からお疲れさまです…!
    ドラルクの提案にクソ映画監督がのってて草。残念だがトオル、ここからはドラルクと監督の独壇場だ(二人だけど)。
    一方の人間の変態チーム…やっぱりサンズちゃんが許可とった人はマジの管理人で合ってるのか?ってレベルで放牧ぶりがひどい。
    トオルが言ってたインパクトで勝たなきゃいけない奴らってこいつらかまさかって思わせるボス・野球拳!

  • 157二次元好きの匿名さん22/05/31(火) 22:31:35

    イヤァアアアアアア!!!!!

    またもサンズの耳に男の悲鳴が届く。
    「ヒニャアアアアア、やっぱりなんかいるのでは!?」

    サンズは目の前の長く続く闇の色濃い廊下を前に、たじろぐ。
    (こ、これ以上いくのは……でも取材!ロナルドしゃん!!!!)

    サンズはそろそろと懐中電灯を片手に、一部屋一部屋、調べていく。

    サンズが昇ってきた階段から、そろりと、長身の人影が現れた。



    (うわー、やっぱり怖いなー)

    ごく平凡で優しい心を持つサラリーマン、半田白はひょんなことから廃墟の病院へ来ていた。
    白は善良な新横浜の一般市民だ。今日は新横浜のボランティア主催による街のゴミ拾い&雑草取りに参加していたのだ。

    ~回想~

    「本日はありがとうございました」
    白はかぱりと笑顔を作る。
    「ヒィッ!!お疲れさまでした!鎌をこちらに向けないで!!」「あっ、すいません」
    白は慌てて顔の真横で握っていた草刈り鎌をおろす。
    白は非常に善良なのだが、笑顔がいささか恐ろしく、小道具やシチュエーションによっては他人にいらぬ誤解をさせてしまうのが困りものだった。

    ボランティアは無事終了。荷物を持って早く愛する妻の元へと帰ろうとしていたところ、目の前の女性が手裏剣を落としたではないか。
    (手裏剣?すごいなあ、くのいちの方初めて見た)
    白が手裏剣をまじまじと見ていると、落とし物をした女性は素早い動きで歩き去って行ってしまう。

  • 158二次元好きの匿名さん22/05/31(火) 22:32:10

    (いけない、はやく渡さないと)
    白も慌てて追いかける。すると

    (廃病院?)
    女性はまっすぐに廃病院へと入っていく。

    (困ったな。勝手に入っちゃダメだろうし。でも、この手裏剣高価なものだったら、くのいちの方も困るよね)
    白は少し迷い、結局女性の後を追う事に決めた。

    ~回想終了~


    「やっぱりスマートフォンのライトだけだと心もとないな」
    白はスマホのライトで自分の顎下から顔を照らす。
    周りに人がいたらさぞかし悲鳴が響いたであろう芸術的なライティングによる芸術的な恐ろしい顔であった。
    白は笑顔が怖いと言えど普通の善良な市民である。一人きりの廃病院はやっぱり怖い。

    (さっきから悲鳴も上がってるし、早く渡さなきゃいけないのに歩くのに躊躇っちゃうな)

    (そうだ。少し面白い事をして気を紛らわせよう)
    白はいい事を思いついたと言わんばかりにカパァといい笑顔をした(怖い)。

    白は、廊下に一つ畳んでおかれた古い車いすを見つける。

    (……あれだ)

  • 159二次元好きの匿名さん22/05/31(火) 22:32:48

    「リアル」
    白はまず、車いすに自分を座らせた。ちなみにリアルは車いすバスケを題材にした漫画のタイトルだ。
    (車いすバスケってカッコイイよね。生で見ると迫力あって。でもこれだとただの車いすに座ったおじさんだなあ)

    白はしっくりこず、再び悩む。

    「子連れ狼」
    白は自分の荷物を椅子部分に置くと、車いすを押し始めた。
    (車いす押すの楽しいな。桃が子供の頃にショッピングカートに乗せて押してあげたことを思い出すや)カパァ←いい笑顔

    白はもう少し子供感のあるものは無いか探し始める。ああ、あれとかいいかもしれない。



    サンズが病室の一つから出ようとすると、奇妙な気配がするのを感じる。
    (誰です?)

    サンズは手裏剣を構えて警戒態勢に入った。
    サンズだってオータム出版の編集者の端くれである。戦闘の心得はもちろん持っている。

    サンズは息をのみながら、病室のスライドドアをわずかに開けた。

    キュ、キュ。

    大きめのキャスターを押しているような音が廊下から聞こえてくる。
    外の窓からはギャグマンガ演出の為にタイミングよくゲリラ豪雨が降り、雨が叩きつけられ、さらに雷が鳴り始めた。

  • 160二次元好きの匿名さん22/05/31(火) 22:33:58

    サンズは濃い暗闇の奥の方を目を凝らして、それをしっかりと見ようとする。
    雷の稲光が、暗い廊下を一気に照らした。


    「どこにいますか……?」

    光と影のコントラストによってはっきり映し出された男は、何を考えているのか掴めない底知れぬ笑顔を称え、車いすを押している。
    車いすにはだらんと力なく横たわった古い訓練人形が座らせており、男の異様さをさらに浮きだたせていた。

    (ニャアー)

    サンズは現実逃避の為赤ちゃん返りならぬ猫返りをした。
    (いやいやいやダメですここで現実から目を背けてはダメいやでも怖い怖い怖い怖い何あれなんでいきなりこんなガチホラーが始まってるんです!?)
    サンズは必死に深呼吸をする。
    (お、おおおおちつけ、落ち着くんです!ムカつくけどクワバラだって言ってたじゃないですか編集たるものどんな時でも冷静であれ!!冷静で__)

    「くのいちさーん、どこにいますか。くのいちさーん」
    男は大きな声で誰かを呼んでいる。
    (ムリィイイイイイ!!!この病院でくのいちってサンズちゃんしかいないじゃないですかサンズちゃんのことバレてる!!!ムリィィイイイイ!!!ロニャルドしゃん助けてぇえええええ!!!!)

    サンズはバックバクに鳴り響く心臓をなんとか宥めながら、事態を切り開く隙はないか必死に探す。
    (こっちの場所はバレてない、だから、病室でこのままやり過ごせば……)

    一方そんな誤解を与えているとはつゆほども思っていない白である。
    (あれ?いないなー。病室も調べていかなきゃダメか)

    そして白は、一つ一つ病室の扉を開けていく。
    「どこですかー?……ここにもいない」

  • 161二次元好きの匿名さん22/05/31(火) 22:34:26

    (ングルナァアアアアア一部屋一部屋丹念に調べられてる!!!駄目ですこのままじゃ100%バレる!!!なら、ならぁあ!!!)

    サンズは賭けに出た。まだ男から距離のあるうちに病室から出て走り出したのである。
    (サンズちゃんの脚力舐めんなよぉオオ!!アバヨ怪奇現象!!!)

    「……!?」
    白は突然走り出したサンズにビックリする。しかしすぐに気を取り直して、

    「そこにいましたか、待ってください」
    白は車いすを押しながら走り出した。しかも結構な速さで。

    (ンニャアアアアアア!!!やっぱり追っかけてくるし足早!!!捕まったら死!捕まったら死!)

    こうして、サンズと白の病院を使った全力の追いかけっこが始まったのである。


    ヌヌヌ(つづく)

  • 162二次元好きの匿名さん22/05/31(火) 22:35:49

    悲鳴が原作っぽい!
    白さん、どうあがいてもホラーな印象を与えてしまう星の下に生まれてきてしまったんだろうか

  • 163122/05/31(火) 22:37:44

    視点移動多くてすいません。そろそろ纏められたらいいなあ

  • 164二次元好きの匿名さん22/05/31(火) 22:42:51

    白さん相変わらずおっかない…
    それぞれのグループが種類の違う修羅場になってて面白いです

  • 165二次元好きの匿名さん22/05/31(火) 23:07:10

    乙です!
    ある意味良かった…。白さんいればガチ怪異も裸足で逃げ出すから…(本人の心の安寧は知らん)。
    ギャグマンガ演出でホラーを盛り上げるんじゃない!
    ドラルク隊長がクソホラー映画の例示で言ってた「人間が一番怖かったですエンド」が残り2チームの話のおちになりそうで草。

  • 166二次元好きの匿名さん22/06/01(水) 09:49:15

    これはいい阿鼻叫喚

  • 167二次元好きの匿名さん22/06/01(水) 18:58:34

    ヌシュワクワクヌシュ

  • 168二次元好きの匿名さん22/06/01(水) 22:53:55

    宝石は輝きだす、男の産業廃棄物に等しいロマンを抱えて。

    「一体何が……!」
    透が宝石の突然の指導にたじろぐと、どこからともなく軽快で愉快な音楽が流れていく。

    少し離れた場所にいるロナルド達にもその音楽は聞こえた。
    「なんだこの音楽!?いやってか、この空気に合わなくね……?」
    確かにロナルドの言うとおり音楽は妙に軽快で場の空気にあわないのだ。
    「おそらく場面と異質な音楽を流すことで違和感を醸し出し、気持ち悪さを演出したかったのだろうがタイミングも何も考えずに音楽を流し始めたのでただのミスマッチ感だけが残ったのだ。これがクソ映画におけるズラシだ、分かったかロナルド君」
    「分かりたくねえ」
    「というか、この音楽チープじゃないか……?」「なんだかヌーチューブの動画とかで聞いたことあるような音楽ですよね」
    「そりゃそうだこれはフリー音源だ!個人製作の為ギリギリまで予算をケチったと見える!いいじゃないかもっと来い!!」
    ドラルクはさらにギアを上げていく。宝石はドラルクの要望に応えるようにさらに煌めいていく。
    そして、ロナルドの体が無情にも光った。

    「ハァーーーーー!???」
    「ロ、ロナルドが突然ダチョウの恰好に!?」「ヌー!!」
    ロナルドはおなじみの上半身裸のダチョウの姿に変わってしまった。
    カメ谷はすかさずシャッターを切っていく。
    「解説のドラルクさん、どうしてロナルドさんはダチョウに!?」
    「いや違う、これはダチョウのコスプレを狙ったのではない!古い低予算映画とかにありがちな雑に裸体盛り込んで観客動員数を盛り込もうとするアレだ!だから別に上半身露出さえしていればどんな格好だっていいんだ、何だったらアヒルでもサメでも多分よかった筈だ!」
    ドラルクの予想は正解だったらしく、またロナルドの体が光っていく。
    「アーー!!」「今度はロナルドのコスプレが鮫に変わった!!」「オヌンヌン」

    カメ谷は撮り時と言わんばかりにどんどんとシャッターを切り、そしてドラルクに質問を重ねる。
    「つまりロナルドさんはこの映画におけるお色気要因になったって事ですか!?」「そういう事になる!」
    「俺のどこにお色気要素があったんだよ!!」
    「黙れ!ヒナイチ君じゃなくてよかったと考えろ!」「チン!?」「それはそうだな俺でよかった!!」

  • 169二次元好きの匿名さん22/06/01(水) 22:55:11

    ドラルクやロナルド達が騒いでいるのを横目に見ながら透は今のカオスな状況に焦る。
    「なんでこんな意味わからん現象が起き始めてるんだ!?と、止まれって!」
    透が宝石をぺしぺし叩くが宝石はただ生き生きと輝くばかりである。
    そしてとうとう透自身の体にも異変が起き始めた。
    「ファッ!?か、体が勝手に……アーーー!!」

    「なんだ今の悲鳴!?」
    ドラルク達が悲鳴の方向に視線を向けるとそこには、

    『ハア 踊り踊るなら チョイト
    東京音頭 ヨイヨイ
    ヤートナ ソレ ヨイヨイヨイ
    ヤートナ ソレ ヨイヨイヨイ』

    下半身透明がひたすら地道に盆踊りを踊り上げていた。

    「か、下半身透明、なんでここに」
    「というか、新横浜なのになんで東京音頭なんだ……」
    ロナルドとヒナイチがどこから突っ込むべきか迷っていると、再びロナルドに異変が起きる。

    「また体が勝手に!!もうヤダ!!!」

    『月が出た出た 月が出た ヨイヨイ』
    三池炭鉱の 上に出た
    あまり煙突が 高いので
    さぞやお月さん けむたかろ サノヨイヨイ』

    「今度はロナルドが別の盆踊りを踊り始めた……」
    ドラルクはハッと何かを閃く。
    「分かったぞヒナイチ君!カメ谷君!これは怪異の除霊対決を表しているのだ!」

  • 170二次元好きの匿名さん22/06/01(水) 22:56:06

    「どういうことですかドラルクさん!」「さっぱりわからん」

    「元来盆踊りとは念仏踊りが元であり、そこに盂蘭盆の行事と結びつくことで死者を供養するための行事として定着していった。今となっては盆に来た先祖の霊を送り返すという意味合いも込められている(ほぼwikipedia引用)!」

    「つまりだ!これはサメの悪霊と盆に来た先祖の霊が廃病院にて邂逅し、お互いの面子をかけて盆踊りを踊り狂うことで相手をとっとと成仏させようというスペクタクルムーb」「8割今あらすじ考えただろ、ドラルク」
    「ちなみにこれどれくらい踊るんですか」「1時間くらい踊るんじゃないかな」

    しかし、宝石はお気に召したようでさらに輝きを増していく!
    (グァアアアアクソ砂ぁああ!!1時間のくだりぜってえいらなかっただろ!!このままじゃマジで1時間盆踊り踊らされる!!)

    ロナルドは必死に考える。以前クソ映画の能力を攻略した時は偶然による力も大きかったのだ。
    だが今は自分で何とかしなければならない。能力者に暴力に訴えれば勝ちだが訴える相手もいない。
    どうすれば……!
    そこでロナルドは半べそかきながら踊っている下半身透明の懐が、赤く激しく光っていることに気が付く。

    (もしかして、アレは心臓!?なんで下半身透明が持ってるんだ!?いや、でもアレをなんとかすりゃあ……)
    ロナルドはそこでヒナイチとノースディンの会話を思い出す。確かあれは催眠の特訓の時の話だ。

    『頭蓋骨をすり抜けて、相手の脳に手で触れるようにイメージをしなさい』
    (手で触れる、だから、俺の頭に触れている奴がいるって事で)

    ロナルドは自分の頭部を意識した。ある、確かにある。
    自分の脳をくすぐる、何かが。

    ロナルドの目が赤く光った。頭から手を取るように意識をする。
    幸い、少し意識を向ければ手はあっけなくはじかれた。

    またロナルドの体が光出す。
    催眠から支配を解かれたロナルドの姿が元に戻った。

  • 171二次元好きの匿名さん22/06/01(水) 22:56:50

    「オオッと!ここでロナルドさんの姿が戻った!」「なんだつまら……催眠がどうやら解けたようですな!よくやったロナルドくイダァ!!!」
    ロナルドは恨みを込めたデコピンをドラルクにお見舞いすると、即座に下半身透明の着物の裾を掴む。
    そして懐からギンギンに光る赤い宝石を見つけると、先ほどの催眠の要領を思い出し、実行する。

    ロナルドは加減を考えながら、軽く一睨み。それだけで、宝石はあっけなく沈静化した。





    「や、やっと止まった……」
    下半身透明が疲れ切った体で息を切らしながらさめざめと泣いている。
    「まったくひどい目にあったぜ」
    ロナルドもようやく落ち着きを取り戻すが、下半身透明の服の裾を再び掴むと詰問した。

    「で、なんでお前が吸血鬼の心臓をもって悪さなんかしてたんだ!?」
    「えっ。し、心臓って何だよ」
    「お前が持ってるその宝石の事だよ!物騒なもん使いやがって!!」
    「宝石!?確かに、宝石は使ってたけど、知らないよ心臓だなんて!吸血鬼ってこんな心臓なの!?」
    下半身透明は心臓の事は本当によくわかっていないらしく、ただ混乱した様子だ。

    「ああ?とぼけてんのか」「ロナルド君、ちょっと待ちたまえ」
    見かねたドラルクが仲裁に入る。

    「君はこの宝石については詳しくは知らないんだね?」「そうだけど。血をかければ、変な事が起こるってことくらいしかわかんないよ」
    「……君はこれをどこで手に入れたんだい?」

  • 172二次元好きの匿名さん22/06/01(水) 22:57:28

    「ここの病院だけど」「なんだって?」
    ドラルクはさらに詳しく聞こうと下半身透明に近寄る。

    「ここの廃病院を徘徊してる時にたまたま見つけたんだよ。ガラスの破片で指切った時に宝石を持ったら、病院に閉じ込められて散々な目にあって。それ以来、この宝石に変な力があるってのが分かったから、脅かすのに便利だから使ってたんだよ」
    「便利って何だよ。お前人間だろ。なんで俺たちをあんなに脅かそうとしてたんだ?」
    「それは……、追い出すため」
    「追い出す?」

    下半身透明は、息を深く吸い込むと、怒りを思い出したらしく一気に叫んだ。

    「この病院を根城にしようと企んでる、B棟の変態人間どもを完膚なきまでに追い出すためだよ!!!」


    ヌヌヌ(つづく)

  • 173二次元好きの匿名さん22/06/01(水) 23:11:16

    9ソ映画ムーブの犠牲が自分で良かったなんていうところ、おまそういうところだぞロナルドォ!!
    あと吸血鬼の能力、だんだん制御できるようになってってるな
    ノースディン師匠のアドバイスが効いてる

  • 174二次元好きの匿名さん22/06/01(水) 23:27:45

    下半身透明くん……昨日までなに考えて吸血鬼の心臓で遊んでんだこいつとか思っててゴメンね
    変態排除の為に手段を選んでられなかっただけなんだね

  • 175二次元好きの匿名さん22/06/01(水) 23:28:53

    でもまずなんで人間なのに廃病院に入り浸ってたんだ…?

  • 176二次元好きの匿名さん22/06/01(水) 23:49:44

    乙です!
    ドラルク隊長の言ってた盆踊りが持ち主(?)を巻き込んで具現化してしまった…。催眠解除を会得したロナルドグっジョブ。
    インパクトで勝たなきゃいけない奴ら、マジで人間の変態チームだったんかい!とはいえ175の疑問はまだとけないし、何故追い出したいほどに廃病院に思い入れがあるのかもわからないな…。

  • 177二次元好きの匿名さん22/06/02(木) 00:52:37

    誰かに迷惑かけてる度なら双方不法侵入はイーブンとして、現状誰も寄り付かない場所で誰にも迷惑かけずに変態行為してた変態共と知らなかったとは言え吸血鬼の心臓使って変態共追い払おうとしてた(暴走してた可能性もあった)透だと透の方が上になってた可能性あるよ…

  • 178122/06/02(木) 01:19:51

    下半身透明の心臓使用に関しては、1が初期案で展開のメリハリを上手く作れなかった事からくるしわ寄せなので、倫理観的におかしい所とか有ればそのあたりは大体下半身透明ではなく1の責任としてとらえていただけると助かります。

  • 179二次元好きの匿名さん22/06/02(木) 04:06:11

    突然の盆踊り…!うーんクソ映画クオリティ
    ヒナイチでなくて良かったって即思えるロナルドはほんとに良いやつだなと思いました
    後多分裾じゃなくて襟

  • 180二次元好きの匿名さん22/06/02(木) 09:06:02

    お色気担当の被害がヒナイチじゃなくて自分にきてよかったって言えるロナルドそういうところだぞ。能力もだんだん制御出来るようになってきてて良いね!
    下半身透明と変態がとんでもない対決してるけどなんで追い出したいんだか…あっちゃん関係?
    続き楽しみにしてます

  • 181二次元好きの匿名さん22/06/02(木) 20:23:34

    ほしゅ

  • 182二次元好きの匿名さん22/06/02(木) 22:10:06

    透が変態に対する怒りをぶちまけている頃、噂の変態達とボス認定された野球拳はちょっとした修羅場になっていた。

    「野球拳大好き、なぜ貴様がここにいる!!」
    ミカエラが野球拳をキッと指さす。場合によっては確保も辞さない構えだ。

    一方ボスとして祭り上げられている野球拳はテンションが低い。
    (ほんとなんで俺ここにいるんだろう)

    「野球拳さん!ぜひとも野球拳さんの口からその愛を語ってやってください!」
    「そうですよ!私たちにあんなに熱く語ってくれたじゃないですか!」
    「ボスがいてくれたから今の自分たちがいるんすよ!!」

    (別に俺がいなくてもお前らは立派に変態やってたよ俺を絡めるな!)

    変態三人からの熱い眼差しに野球拳は胸焼けを起こしそうになる。
    確かに野球拳は人生におけるポリシーであり彼の根幹だが、それによって祭り上げられるのはお話が違うしマジで勘弁してほしい。
    だいたい最初は弟(透)の様子を見にこの病院に度々来ていただけだったのだ。
    それが何の因果か病院でリビドーを発散する変態達に出くわし、あいさつ代わりに野球拳をお見舞いした所その筋のスペシャリストとして一目置かれるようになってしまった。
    今日だって変態達に絡むつもりはほとほとなかったのだが、ミカエラが変態に迫られているとなるとさすがに出ないわけには行かない。

    一目置かれるのはやぶさかではないが、変態山のボスになるつもりはさらさらない。今の野球拳は自由を愛する男なのだ。重たい責任とかそんなもん過去に全部置いてきた。
    だが透の様子を見に来ようとすると必ずどこからともなくあの変態トリオがやってくる。まるでダンピールが吸血鬼の気配をたどるように、変態達には変態を探し出すセンサーのような勘があった。

  • 183二次元好きの匿名さん22/06/02(木) 22:12:03

    しかもクソ厄介なことに、

    「我ら変態同盟とともにさらなる高みを目指し、」

    「まずはこの病院の制圧を完了!」

    「肝試しのアベックたちに新鮮な悲鳴を上げさせるのは心霊現象ではなく、我々ニッチな変態なのだとA棟の幽霊たちに知らしめる!そう誓ったじゃないですか」
    (誓ってねえんだよ!!!)

    この変態ども、透と敵対関係にあるのだった。

    「幽霊に変態行為で制圧!?」「どういうことだ貴様!?」
    吸対の男二人が変態どもの世迷い事を真に受け、事態がさらにややこしくなっていくのを野球拳は感じる。
    (知らねえよ俺が聞きてえわ)

    赤夫(仮名)が重々しく語る。
    「私たちが借りているこの廃病院は、取り壊しは無理でもなんとか建物を再利用できないか検討されていた事があります。しかしそれは無理でした。なぜならばこの病院、心霊現象が起こる本物のホラースポットとして有名だったからです」

    「リフォームしようにも頻発する怪奇現象。しかし本物の除霊なんて高くて払えない。悩む管理主は一つの提案を思いつきました。……そうだ、変態を集めようと」「ちょっとまてなんでそこで変態が出てくるんだ」
    半田が頭を抱えながら話を止めた。
    「知らないんですか!?エッチな話や変態行為をすると幽霊が払われるという都市伝説を!!びっくりするほどユートピアとか有名じゃないですか!!」「知らんわバカめ!!!」

    「そして、偶然にも私たちがこの病院に貸し出し申請をしたことで管理主は閃きました!これはイケると!!」
    「何がどう考えればイケると思ったんだヴァカメヴァカメ!!」「ファ〇リーズで除霊した方がまだマシだ!!」「予算ねえなら近所の神社から札でも貰って塩撒いてろよ!!」
    赤夫(仮名)は外野のツッコミなどすべて無視し、キリっとした顔で話を締める。
    「そうして私たちはチームを組み、この病院に潜む怪異を祓う為に日夜性癖の発露にいそしんでいるんです」
    「1から100まで理解したくない裏事情だった」「登場人物総じてとち狂った奴しか出てこなかったんだが」

  • 184二次元好きの匿名さん22/06/02(木) 22:13:35

    「なるほど、ここで変態が集まっていた理由は分かりたくないが分かった。だがそれより、」
    ミカエラがわなわなと拳を握る
    「野球拳大好き!貴様変態人間をまとめ上げて徒党を組むとはどういうことだ!!」
    「ああ、こっちに戻って来る!?できればそのまま流してほしかった!」

    問い詰められそうな野球拳をすかさず姉歯(仮名)が庇う。
    「やめてください!野球拳さんは私たちに道筋を示してくれたんです!!」
    「貴様よりにもよって女性をたぶらかすとは!!」
    「たぶらかしてねえんだよ!!あっちが勝手に寄ってくるんだよ!!」「言い訳するなこの変態吸血鬼!!」
    「話聞けよ泥沼なんだよチクショー!!」

    野球拳が混迷する事態に困り果てていると、別の病棟の方面から何か声が聞こえてくる。

    「……、なんだ?」
    半田は気配に集中するが、吸血鬼の気配はやはりしない。
    声は、徐々に大きくなっていく。

    「…………ンナァァァァアアアアアアアア!!!!」

    女の声が、徐々にボリュームを上げて近づいていく。

    「なんだ!?」

    全員が声の方向を向くと、スーツを着た女が、長身の刃物を持ち、長い髪?を振り乱した男に追いかけられていた。




    「なるほど、大体の事情は分かった。廃病院の除霊をもくろむ変態集団を退けるため、日夜君は怪奇現象を起こしていた、と」
    ドラルクがうんうんと頷く。

  • 185二次元好きの匿名さん22/06/02(木) 22:14:56

    「私には変態行為で除霊するという発想がさっぱり分からないんだが。知ってるか、ロナルド」
    「……やったことあるけど、失敗した」「やったのかこれを!?」
    「ロナルド君のトンチンカンクソボケ過去話は置いといて、透くん、だっけ?ちょっとこっちに来なさい」
    「えっ、なに?」
    透は素直にドラルクの方による。ドラルクは懐から手錠を出すとそのまま透の腕に手錠をかけた。
    「え?」「はい、確保」
    ドラルクは無常な宣告をした。

    「まって逮捕!?逮捕なのこれ!?」「知ってた?吸対は一応警察。最近多いんだよね。ヌーチューバーの廃墟の不法侵入による逮捕」
    「ちょっとまって不法侵入じゃないからこれ!一応許可とってる!」「取ってたの?」
    「そうだよ!あのバカ管理主、こっちが勝ったらそれはそれで心霊スポットとして拍が付いて美味しいって事で、勝って追い出した方が病院好きに使っていいって事になってんの!!」
    「なんでこの病院が潰れたのかがよくわかるな」「ここの管理主が一番ホラーなんじゃねえかな……」「ヌヌヌヌヌー(うらめしやー)」

    「じゃあその言い分はひとまず信じるとして。怪しげな吸血鬼の術が使える宝石を吸対に報告せず、一般人に使ってたのは普通にお叱り案件だよ。もっと詳しい事を署で聞いたらあとで反省文ね」
    「ウェェエエエエエエエ」
    ロナルドもそれに乗じて下半身透明から宝石を没収していく。
    「反省文で済んでよかったな。ほらとっとと他に持ってる宝石出せ出せ」「ウェェエエエエエ」
    「さっきまでクソ映画ではしゃいでたとは思えないくらいまともに仕事するな……」

    「いやー!まさか吸血鬼案件の逮捕劇まで取材させていただけるとはラッキーですね!透さん、一つ取材しても良いですか!」
    ウキウキのカメ谷がカメラを撮りながらマイクを向ける。
    「なんだよもう!」
    「どうしてそうまでして、この廃病院にこだわるんですか?」

    「……その」
    透は明らかに言葉を濁す。
    「おっ、まだなんか秘密隠してますね!」「おら吐け吐け!胃腸が良くなるツボ!!」
    ロナルドが下半身透明の足つぼを容赦なく押していく。
    「やめ、指圧やめて痛い痛い痛い!!分かった!喋る!喋るから!!」

  • 186二次元好きの匿名さん22/06/02(木) 22:15:30

    「俺がここにいた理由は……」

    下半身が観念して理由を説明しようとすると、どたどたと大人数が駆けてくる音が聞こえる。
    「なんだこの音?」

    一同が音のする方向を向くと、半田とミカエラ、野球拳、そして何故かサンズが必死な顔でこちらに向かって走ってくる。

    「ミカエラ君に半田君!?なんで!?」「サンズさんや野球拳もどうして!?」
    「見ろ!ロナルド!まだ後ろに一人人影がみえ……」

    そして気が付く、一同がなぜ走っているのかを。

    4人の後ろから、長い髪を振り乱し、カバーが付いた草刈鎌と手裏剣を両手に持って走る男がいた。
    髪から除く両目には表情がなく、ただひたすら愚直に獲物を狙っている……!!

    「チーーーン!!!!」「パボーーーーーー!!!!!」「ヌーーーーーーー!!!!」
    「か、怪奇現象です!!あらたな怪奇現象が発生しております!」「馬鹿もん写真撮ってないでとっとと逃げろ!!!」
    ドラルク達が慌ててももう遅い、走ってきた4人と接触する……!

    だが、全員ぶつかりはしなかった。

  • 187二次元好きの匿名さん22/06/02(木) 22:15:55

    ポーン、ポーン

    丑三つ時の鐘が鳴る。
    中央玄関にある時計は、針が頂上を刺すと独特な音色を奏でだす。
    もう、随分長い間時計に電気は通っていないというのに。


    四人を追いかけていた男、半田白はひとりでにずっこけた。
    長髪に見えたものは白の頭にかぶってしまった長毛のモップで、走っている最中に絡まって取れなくなってしまったのだ。

    「いたた、あ、モップ取れてよかった」
    一度草刈鎌でなんとか切ろうとしたが上手くいかず、誰かに助けを求めたくてつい追いかけてしまった。
    (パニックになっちゃうなんていけないな、もっと落ち着いて行動しないと)

    「すいません、追いかけてしまって……あれ?」
    白は周囲を見る。あれだけ人数がいた筈なのに、今は誰もいない。

    「すいませーん、どなたかいませんか?すいませーん」
    病院は先ほどの騒動が嘘のように静まり返っている。

    「あれ……?」

    白は、怖くなってしまった。


    ヌヌヌ(つづく)

  • 188二次元好きの匿名さん22/06/03(金) 04:57:56

    野球拳がひたすら人間の変態に引いてて笑う
    変態は惹かれ合う……スタンド使いかな?

  • 189二次元好きの匿名さん22/06/03(金) 09:07:00

    管理人が一番のポンチじゃねーか!何をどうしたらそんな発想になるんだよ!シンヨコらしいっちゃらしいのか?!
    とか思ってたら急展開のホラー。続き楽しみにしてます

  • 190二次元好きの匿名さん22/06/03(金) 12:18:20

    もしかして白さん以外別次元とかに消えた…?
    前半と後半で別の種類のホラーが楽しめてお得!

  • 191二次元好きの匿名さん22/06/03(金) 17:12:31

    乙です!
    野球拳かわいそうに…この様子だと拳兄もトオルの目的聞けてなさそうだな…。からのサンズちゃんサイド合流!!白さんどっからだしたの長い刃物と長髪?!
    トオルも許可は取れたんかい!!やっぱり廃病院編全体の結論が「人間(管理人)が一番怖かったですエンド」になるのでは?
    前回の疑問の答え…を聞く前に残り2チームと合流!!人間の変態3人はどこへ?!あわや衝突事故………え?
    そっか、モップ絡まっちゃったんだ。草刈鎌私物だったんだ。取り扱い気をつけて下さい。取り残されたってことは、お化けも白さん怖かったんだね…。
    ……………人間のせいでした系の話からのガチ怪異話、すごく肝が冷える!!!続き楽しみにしてます!!!!!!

  • 192二次元好きの匿名さん22/06/03(金) 22:09:45

    一回スレ立てますね

  • 193二次元好きの匿名さん22/06/03(金) 22:16:36
  • 194二次元好きの匿名さん22/06/03(金) 22:20:27

    埋めます

  • 195二次元好きの匿名さん22/06/03(金) 22:22:30

    >>193

    立て乙です!

    🍑


    あっ間違えたこれ梅じゃなくて桃だ。

    (梅の絵文字がなかっただけ)

  • 196二次元好きの匿名さん22/06/03(金) 22:27:54

    当初の予定だと2スレで完走させる予定だったのにもう4スレ目です。
    いつも感想とかハートとかありがとうございます。

  • 197二次元好きの匿名さん22/06/03(金) 23:07:31

    梅です

  • 198二次元好きの匿名さん22/06/04(土) 03:24:51

    いつも楽しみにしてます!

  • 199二次元好きの匿名さん22/06/04(土) 07:19:37

    次も楽しみにしてます!
    埋め

  • 200二次元好きの匿名さん22/06/04(土) 08:45:31

    セロリ埋め

オススメ

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