王子様♀のお胸は私のより大きいですわ〜！

　「……トレーナーさんっ」

　爆走猛姫、飛び出し注意。
　手に持つ書類の裏から、おでこをぶつけんばかりに飛び出してきた彼女──カワカミプリンセスの猛攻を軽く仰け反ることで華麗に回避。そんな彼女のお世辞にも芳しいとは言えない学業成績書類を机上にまとめ、トレーナーは微笑する。

「今日は一段と淑やかな入室だったね、プリンセス」

　何かあった？と小首を傾げてはみるものの、出逢って三年の仲なのだ。
　彼女が何か言いたげであること。それどころかこれから何を“お強請り”されるかということも、もう既にトレーナーには全て察しが付いている。

　愛バ相手にあまり意地悪はしたくはないけれど、真っ赤な頬をリスのように膨らませた──この何とも愛らしい表情を独り占めできるのなら。
　良くないことだと分かってはいるものの、今なら好きな子にちょっかいを掛けてしまう男子小学生の気持ちが分かるような気がするのだった。

483222/06/22(水) 05:21:32

　「そのお顔は『お分かりになっているときのお顔』ですわ。……トレーナーさんのいじわる」

　不機嫌そうにソファーに腰掛けて、いよいよ「つーん」とそっぽを向いてしまったプリンセスだが、やはり彼女にとってもトレーナーが何を考えているかなどお見通しらしい。

　「ごめんよプリンセス、許しておくれ」

　デスクから離れたトレーナーがプリンセスの隣に浅く腰掛ける。

　と。

　「お……っと！」

　一息つく間もなく真横からしゅばばっと伸びてきたのは愛バの両腕だった。
　気がつけばウマ娘パワーでガチガチにホールド──もとい彼女の腕の中に全身包まれており、それに気づいたトレーナーはああもう逃げられないと観念。自身の胸に顔を埋めるプリンセスを撫でた。（もとより逃げるつもりなど更々なかったけれど。）

493222/06/22(水) 05:22:08

　この決して純潔とはいえない干渉の仕方が何時始まったのかと言えば、あれはエリザベス女王杯の後。精神的にも、そして肉体的にも衰弱しきっていたプリンセスを咄嗟に抱きしめてしまった時だ。
　一回きりで止めてしまえばよかった。
　ところがその時プリンセスが「今後もこうしてほしい」とトレーナーに申し出たのだ。

　それに対しトレーナーがひとつ返事で了承するのは当然である。
　こんな事で彼女の気を少しでも紛らわせることが出来るのなら──と。

この習慣はこのように今もまだ続いている。当時と比べて頻度こそ減ったけれど、プリンセスがトレーナーに対して心の安定とまた違うものを求めるようになった分、より昵懇で、より密接になって。

「サラシ、解こうか？」
「……おねがい、いたします」

何度も接触を繰り返していくうちに、サラシを巻いていることがプリンセスに知れた。

　後から聞くと、胸の大きさが毎日明らかに違っていたから気付いたとのこと。確かに現在は、昔のように隠すことに対し全身全霊を傾けている訳ではない。出勤前にサラシを巻きつけるのも、惰性になりつつあった。

503222/06/22(水) 05:23:13

　その昔。

　トレーナーは丁度愛バと同じような年齢のときから、自分の発育に一種のコンプレックスを抱えていた。
　端的に言えば「胸が他より大きい」。たったそれだけで、周囲から奇異なものを見るような目線が向けられるのだ。当時思春期真っ只中だった彼女にはかなり堪えた。
　だから、彼女は隠した。親に隠れて呉服屋を訪ね、なけなしのお小遣いで“それ”を購入して、巻いた。
　するとどうだろう。以前から面識があった人間は最初こそおっかなびっくりといった様子だったけれど、そういった目線を感じることは格段に少なくなったのだ。

　大人になってからも、その方が何かと都合がよかった。自分が腰を据える「トレーナー業」といった男性社会の中では、上司や先輩からセクハラ紛いの接触をされることが少なくないと聞く。
　現在自分の身辺には親切な方ばかりなので実際に体験したことはないけれど、転ばぬ先の杖ということで“それ”を今に至っても変わらず普段使いしているのだ。（今更外すのもかえって面倒なんて思いもあったのは秘密である）

513222/06/22(水) 05:24:18

　退勤後のクタクタの身体を配慮した解きやすい結び目を一度解いてしまうと、押さえ込んでいた肉が膨張すると同時に、涼やかな開放感が胸元を包んだ。上半身が冷気に晒されて、身体が一度だけぶるりと震える。
　感じる肉感的な視線。覚束無い手先を何とか制御しながら、シャツのボタンを一つ一つ留めて。シャツのボタンが弾け飛ぶなど残念なことにならないよう細心の注意を払いつつ、王子様は両手を広げる。口もとには優しい微笑を湛えて。

「……さあ、おいで。私の可愛いプリンセス」

523222/06/22(水) 05:25:59

ごめんよ……ごめんよ……
文章書くの初めてなんだ、許して……

>>53 >>54 >>65

53二次元好きの匿名さん22/06/22(水) 05:27:03

>>52

最&高

54二次元好きの匿名さん22/06/22(水) 05:28:43

>>52

朝から良いもん見さしてもらいました

55二次元好きの匿名さん22/06/22(水) 07:59:03

(見た目はこんな感じか？)