【SS】ポケットにノスタルジー

  • 1二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 21:22:34

    注:明るい話ではないです

    ↓の10年後くらいの話です

    【SS】サウダージ|あにまん掲示板注:救いがないタイプの曇らせですbbs.animanch.com

    蛇足かなと思ったんですけど書いちゃったので出します

  • 21/622/06/28(火) 21:22:54

    なんとなくテレビをつけると平成の名曲特集がやっていた。出演者が放った「懐かしい」の一言に、まだ令和になって4年だと言うのに気が早くはないかと思ったが、私が二冠バになったのももう24年前のことであり、平成が懐かしいと呼ばれるようになるのも納得だった。
    GLAYやらラルクやらの曲が流れる中、ある曲が私の気を引いた。「ポケットにファンタジー」。確か私が現役だった頃はポケモンが流行っていて、フラワーと話を合わせるためにアニメを見ていたのを覚えている。「ポケットにファンタジー」は何番目かのエンディング曲だったと思う。今となっては詳しく覚えていないが。

  • 32/622/06/28(火) 21:23:13

    懐かしの名曲と言うがその手の曲は未だにカラオケで歌うためなんだかんだ馴染みがある。しかしアニメの曲は聞く機会がない。文字通り二十数年ぶりに聞くわけだ。なんとなく聞き入ってしまった。
    「はやく おとなに なりたいんだ」
    曲のせいか、私が現役だった頃を思い出す。中等部だった私も早く大人になりたいと思ったものだ。それは私の自惚れからくるものだった。私とトレーナーさんは両思いで、トレーナーさんと恋愛関係になれない理由が私がまだ子どもだからだと、当時の私は思っていた。それは半分は正しかったが半分は間違っていた。

  • 43/622/06/28(火) 21:23:33

    「もいちど こどもに もどってみたい」
    大人になりたい気持ちから子どもに戻りたいという気持ちには、大抵の場合ゆっくりと、それでいてシームレスに変化していくものだろう。しかし私の場合は違った。高等部になって以降、私はケガで半引退状態になっていた。トレーナーさんも私だけを見ているわけにもいかず、他の子を担当するようになった。幸いにもトレーナーさんは私との契約を解除しないでいてくれたが、だからこそ気づいてしまったのだ。トレーナーさんは私に特別好意を寄せているわけではなく、誰にでも分け隔てなく平等に親切であるということに。その事実を前に私は否が応でも大人にならなくてはいけなかった。その時の私もこう思った。もう一度子どもに戻ってみたいと。

  • 54/622/06/28(火) 21:23:48

    ともかく私はトレーナーと恋愛関係になれるという自惚れじみた子どもの妄想から卒業しなければいけなかった。なので私は気持ちを押し込めることで大人になろうとした。しかし私はそんなに早く大人になることはできなかった。結局のところ自分の恋心を押さえつけることができなかったのだ。だから最後の日、失敗すると分かっていながら告白して、それで彼の優しさと嘘に傷ついて、そしてそれを十数年引きずった。真の意味で私が大人になれたのは三十路を過ぎて孤独に慣れたころだったのかもしれない。

  • 65/622/06/28(火) 21:24:07

    そこで私はあることに気がついた。大人になりきれなかった頃の私は「もいちどこどもにもどってみたい」というフレーズの意味を、子ども時代に未練があってもう一度やり直したいのだという風に捉えていた。しかしそうではないのだ。このフレーズの意味はあくまでノスタルジー、ちょっと昔を思い出してあの頃はよかったな〜と感じているだけなのだ。そして今の私もまた過去への気持ちが未練からノスタルジーへと移り変わっていた。
    しかしそれはどうなのだろうか、と同時に思う。大人になりきれなかった頃の私にはどうにかしたい過去があったわけで、だからこそ歌詞の意味を未練だと捉えていた。そしてその未練は解決されることなく、ノスタルジーへと移り変わってしまった。それは実のところ移り変わったというより忘却に近いのかもしれない。未練を忘れ曖昧な記憶に郷愁を見出している、それが今の私なのだ。

  • 76/622/06/28(火) 21:24:27

    もうあの人の顔を思い出すのも難しくなってきた。あんなに好きだったのにだ。その感覚にさえ慣れを感じる。歳を取るというのはそういうことなのだろう。取りたくて歳を取ってるわけでもないというのに。
    「もいちど こどもに もどれたなら」
「なに したいの?」
「あってみたい ひとが いるの」
「え~ だれなの~?」
「いちにち だけでも あえないかな」
「あ!はつこいのひとだ!」
「あったり~!」
    またあの人に会いたい。その気持ちはかつては未練であったが、今は郷愁になっている。未練を抱いていた頃の私はそれが早く郷愁になることを望んでいたが、未練を忘却した後はそれが郷愁に変わってしまったことにすら悲しみを覚える。
    「ポケットの なかみは いつだって」
    「ポケットの なかみは だれだって ファンタジー」
    大嘘だ。ポケットの中に仕舞い込んだ夢はいつしか未練に変わり、そのことすら忘れている内に郷愁になってしまった。ポケットの中にはノスタルジーだけが残っていた。

  • 8二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 21:29:40

    言葉の節々から嫌なタイプのリアリティが出てて良い
    万人受けしないタイプだけど俺は好き

  • 9二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 21:34:26
  • 10二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 21:34:59

    最後のやつ見たことある…
    あなたでしたか…

  • 11二次元好きの匿名さん22/06/28(火) 21:36:38

    そういえばお前SS書けるんだったな…

  • 12二次元好きの匿名さん22/06/29(水) 08:58:13

    これがある意味のキチゲ発散なのかも

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