- 1二次元好きの匿名さん21/10/01(金) 19:46:53
「ごめん。ネイチャの気持ちには応えてあげられない」
アタシの恋が終わったのは、今からたった数時間前だった。
「もちろんネイチャのことが嫌いな訳じゃない。でも、俺には既に付き合っている人がいるんだ」
いや、そもそも初めから終わってたんだ。
「アハハ、そっか……ゴメンね、トレーナー」
「こちらこそゴメンな、ネイチャ」
「トレーナーが謝ることじゃないよ。それより彼女のことちゃんと幸せにしてあげてね」
バカみたいだ。勝手に好きになって一人で舞い上がって、今こうして辛そうな顔をさせて。自分がひどく嫌になる。
ぎこちない笑いで別れたあと、なんだか心が苦しくて、モヤモヤが止まらなくて……気がついたらアタシはカラオケに来ていた。 - 2二次元好きの匿名さん21/10/01(金) 19:48:22
数曲歌って軽く喉を温めたあと、とある曲を入れる。軽快なギターの音色がスピーカーから溢れ出してきた。
スピッツのロビンソン。アタシとトレーナーが大好きな曲。
「新しい季節は なぜかせつない日々で」
トレーナーと出会ったのは、あの春の日だった。キラキラと輝くあのウマ娘たちとは違って3着、なんていうパッとしない順位だったアタシのことを、トレーナーはスカウトしたいって声をかけてくれたっけ。
「河原の道を自転車で 走る君を追いかけた」
トレーニングによく利用したあの河原。晴れの日も雨の日も、ひたすらに練習に打ち込んだ。それがトレーナーの期待に応える事だと信じてたから。
「思い出のレコードと 大げさなエピソードを 疲れた肩にぶら下げて しかめ面……眩しそうに……」
休みの日はよく構ってもらった。一緒に商店街に出掛けたり、水族館にも行ったり。たまたま同じ曲を聴いてると知ってからは、CDショップなんかにも行った。なかなか趣味が合うね、なんて言いながら笑い合っていた。 - 3二次元好きの匿名さん21/10/01(金) 19:49:22
「同じセリフ……同じ時……思わず……口に……するような……」
だけどトレーナーの隣にはアタシじゃなくて、別の人がいる。だけどこんなの、いつもの事なんだ。アタシはトレーナーの一着にはなれなかった。よくあった事だ。何度も経験してきたじゃないか。
「ありふれた……この……魔法で……つくり……あげたよ……」
だからきっと、気のせいなんだ。画面が歪んでぼやけているのも、歌声が震えているのも。
「だ……れも……さわ……ない……二人…だ……の……グズッ……くに……」
こんなに苦しい思いをするくらいなら、あの日手を取らなければ良かった。
「き……みの……ヒクッ……て……を……はな……さ……ように……」
なんだか胸の奥から熱いものが湧き出て止まらなくて、その先の歌詞を紡ぐことができなかった。
「ヒグッ……グズッ……!」
伴奏だけが響く個室。子供のように泣きじゃくるアタシ。そんななか、妙に頭の中だけはしんと冷えていて……やっと受け止める事が出来た。
ああ、そうか。
アタシって、失恋したんだ。
ひとしきり泣いたあと、アタシはフードメニューを片っ端から注文した。今日だけはカロリーは気にしないことにした。流石にちょっと食べ過ぎたかもしれない。
失恋した事は今でもとても苦しい。だけど、なんとなく心の整理はつける事が出来たと思う。少なくとも、トレーナーと出会ってから今までの事は、大切な思い出として心の内にしまうことができた。
今なら素直に祝福できる。そう思えた。 - 4二次元好きの匿名さん21/10/01(金) 19:50:03
完
- 5二次元好きの匿名さん21/10/01(金) 19:51:53
乙。失恋は辛いな…
- 6二次元好きの匿名さん21/10/01(金) 19:53:20
- 7二次元好きの匿名さん21/10/01(金) 20:02:47
- 8二次元好きの匿名さん21/10/01(金) 20:12:53
ネイチャ…幸せになってくれよ…
- 9二次元好きの匿名さん21/10/01(金) 20:19:02
ウマ娘は失恋が似合うなぁ
- 10二次元好きの匿名さん21/10/01(金) 20:21:26
おつ
- 11二次元好きの匿名さん21/10/02(土) 00:50:30
自演
- 12二次元好きの匿名さん21/10/02(土) 00:53:59
ウララ 宇宙の風に乗る〜
- 13二次元好きの匿名さん21/10/02(土) 01:26:42
天才
- 14二次元好きの匿名さん21/10/02(土) 11:44:11
自演