もしもこの娘がワンピの世界にいたら2【クロス注意】

「ウタ様。今月分のファンレターになります」

「うん、ありがとう………」

　いつもの声に覇気がない。天使のように歌う彼女の声は酷く沈んで、部屋を満たす。
　ヴァイオレットは傘を閉じ、窓から部屋に入れば、ベッドの上で彼女が膝を抱えていた。

「ウタ様、どうかなさいましたか？」

「別に、なんでもないよ！！　さあ、今月分のファンレターを読まなきゃ！　みんなに返事を………書かなきゃ………」

　震えた手先が手紙を掴むが力がない、すり抜けるように落ちた手紙を彼女は手に収めて、ウタにヴァイオレットは向き直る。

「何かございましたね？」

「何もないよ………本当だよ」

「何もないわけが………」

「何にもないから黙ってよ！！　さっさと部屋を出て行って！！」

　押し出されるようにして、部屋から出た彼女が最後に見たのは今にも泣きそうなウタの姿。

　しかし、再度声をかける猶予はなく、彼女の心のように固く扉は閉じられていた。