- 1二次元好きの匿名さん21/10/10(日) 00:03:42
トレーナーさんが死んだ。
交通事故、本当に運の悪い人だ。
あの日、私が引き留めなければ、あの日私なんかの話を聞かなければ、あの日私との関係を持たなければ、彼は生きてただろうな⋯
関係を持ってすぐのことだったから何処の誰にもバレてない、新しく私のトレーナーになった奴は、彼の残したデータを使ってトレーニングをしてくれるから、やりやすい。
はいはいということを聞きながらトレーニングをしていると、長い一日は終わる。
真っ直ぐに寮に帰れば良いのだけど、どうしても、帰る前に寄ってしまう。
彼にスカウトされた小さな公園。
確かあの日もこんな雨だった。
あんな人影が⋯
なんで?
会いに来てくれたのかと思い傘を投げ出し駆け寄る。
人影はスッと消えていなくなる。
寂しげな雰囲気だけ残して。 - 2二次元好きの匿名さん21/10/10(日) 00:09:48
それから毎日、公園に寄った。
雨の日だけ、あの人影。
近寄ると消える、遠くで見ててもそこから動かない。
声をかけても返事はなく雨音だけが響く。
あの人との時間に似ていて心地よい時間。
長い沈黙、空から灯りが消えて街灯が灯る頃、私は人影に近寄る。
もちろん消えてしまうのだけれど、これが私達のさよなら。
秘密の時間は長く、長く続いた。
トレーニングは段々少なくなっていった。
気が付かなかったのはそのせいか、もしかしたら私は最初から感づいていたのかもしれない。
私の中にもう一つの命が出来ていた。 - 3二次元好きの匿名さん21/10/10(日) 00:13:17
でも、この子は彼と同じで運がない子。
バレたら死んだ彼の名前に傷がつく。
でも、彼よりは運が良い。
お母さんが一緒に死んであげるから。
最後の瞬間、いつもの人影が見えた気がした。
寂しそうな彼の顔、口が動いていた。
「こっちに来てはダメだよ」
もう、遅いよ。
完 - 4二次元好きの匿名さん21/10/10(日) 00:44:06
救いは⋯
- 5二次元好きの匿名さん21/10/10(日) 01:16:07
ないんですか?
- 6二次元好きの匿名さん21/10/10(日) 02:18:41
救いを…救いを…救われない…どうしようもない…どうしよう…