- 1二次元好きの匿名さん22/08/24(水) 21:52:03
- 21/322/08/24(水) 21:52:52
店内が戦慄した。男女連れは身を寄せあい、女性グループはお喋りをやめ、店員は『いらっしゃいませ』の言葉すら忘れた。現れたのは高級コスメブティックにおよそ似つかわしくない、屈強な大男二人だった。人相の悪い赤髪の男はバンダナで前髪を上げ、金髪の男は使い捨てマスクと重い前髪で顔を隠している。半袖の派手なポロシャツから覗く腕にはいくつも傷があるうえ、赤髪に至っては左腕が金属の義手だ。同じ空間にいるだけで圧倒され肝が冷える感覚。とにかく、カタギではないとその場にいる全員が悟り身を固くしてしまう。
そんな反応に慣れているのか、赤髪はずかずかと奥のカウンターに近づく。金髪の方は少し進んでから店内を見渡し、丸太のような腕を軽く組みながら手近なショーケースをじっと見下ろす。襲われた草食動物のように客が数組玄関から飛びだしていく。店員達の脳裏に〝強盗〟と〝赤字〟の二文字がじわじわ浮かびあがり、裏にいた店長はいつでも通報できる体勢をとった。
「これを用意しろ」
突きだされた紙を受け取ったのはベテランの女性店員だった。裏表にびっしり並んだ文字列に死に物狂いで目を通す。比較的安価なものから最高級品まで、ブランドも種類も様々な化粧品達。他の店員も呼び、高級店ではまず有り得ない慌ただしさで商品を集めカウンターに並べていく。
「あの、急ぎますので、どうか……」
びくびくしながらベテランが海老のように腰を折る。途端、赤髪が咆哮した。
「つまらねェ物盗りと一緒にすんな!」
びりびり震えた空気に若い女性客が腰を抜かす。赤髪は不満と怒りをべたべたに貼りつけた顔でたっぷり膨らんだ麻袋をレジの横に投げだす。中身の金貨が溢れ机上で跳ねた。
「ルージュのテスターもありったけ持ってこい!!」
金髪の男は泣きかけている店員達を前髪の隙間から見とめると、赤髪の頭を後ろから小突いた。 - 32/322/08/24(水) 21:53:43
「あ゛ーおい、広告の画像よりだいぶ明るいじゃねェか!」
「こっちは伸びが悪い」
男たちの手の甲には虹がかかっていた。指の付け根から手首のキワまでルージュの試し書きまみれになっている。店員がおずおず差しだした拭き取りシートを彼らは迷いなく受け取った。そうしてリセットされた肌にまた他の色を乗せていく。
「落ちにくさ優先ならティントにしたらどうだ」
「肌染まるんじゃ他の塗りたくなった時面倒だろ」
「お前割と白いしな」
「うるせェ。……このテクスチャーはクインシーあたりが喜びそうだ」
「追加で買ってってやるか」
「いつもは倹約しろって厳しいくせによ」
ベテランが縮こまる脳味噌をなんとか稼働させる。自分用にコスメを買う男性が少数ながら存在することを彼女は知っている。対応もある程度心得ている。しかし、今目の前にいる二人は全く未知のタイプであった。口調や所作に女性的な要素は皆無。役者やダンサーの類でもなさそうだ。男女の狭間を邁進している様子もない。それでもただただ、ネクタイでも選ぶかのようにルージュを選んでいる。そうそういないレベルの熱量と真剣さで。
赤髪の男は手の甲を険しい表情で見つめていたが、卓上ミラーがそれとなく目の前に出されるとしゃがみこみルージュを迷いなく唇に移した。暫く己の顔を睨んだあと、指先で拭いまた別の色を移す。はっとした店員がもう一台ミラーを寄せると今度は金髪の方が屈む。そして、黒いマスクを顎へずらし後ろ髪を括ってから色選びを始めた。大きな口を夜空のように暗い青が縁取る。
引きつった表情でばたばた椅子を出そうとされると『いらねえ』の一言で押しとどめてしまう。大柄な男が揃って体を丸め鏡を覗き懸命に唇を弄っているのはどうにも滑稽だ。しかし当人達は気にしていないらしい。
「どうだ」
「もう少しマットのがいいだろ、ただ色はすげー似合ってる」
「ああクソ迷うな。そっちは例の新作か」
にい、と引き伸ばされた赤髪の唇は、その髪色に負けないくらい鮮烈で目を奪う赤だった。そんなものが大きな傷の目立つ男臭い顔にあるのは奇妙であるはずなのに、すぐ前にいた店員は不思議とそんな風には思えなかった。 - 43/322/08/24(水) 21:54:11
結局、一番大きな紙袋を四つ提げて彼らは帰っていった。
第一印象よりもだいぶ穏便な態度だったことに加え代金も多めに置いていったと報告され、店長は謎の目眩を覚えた。なんとか倒れず踏みとどまったが、男達の詳しい顔立ちを伝えられた彼はいよいよ床に崩れてしまった。
左右から支えられつつ立ち上がった彼は事務机に縋りつく。二枚の指名手配書を引き出しから引っ張りだし店員達に向ければ、部屋に困惑と悲鳴が満ちた。
「おら、買ってきてやったぞ」
どさ、と甲板のど真ん中に置かれた紙袋にクルー達が我先にと群がる。皆口々に礼を述べながら早速封を開け、誕生日会での子供のように盛りあがり始める。
「カモメに餌やってるみてェだ」
紙袋から少し離れた位置。あぐらをかくキラーが仮面の下でくつくつ笑う。どっかり腰を下ろしたキッドもまたにやにやと騒ぎを見つめていた。
「しかし本当に良かったんスか、こんな使いっ走りみたいな真似」
「おれらの買い物のついでだ」
新人の問いにキラーが穏やかに返していると、大きな影がのそのそ近づいてきた。ワイヤーだ。腕にはリキッドファンデーションや化粧水が丁寧に抱えられている。
「昔は貧乏性で一本を一緒に使ってたのに、豪勢になりましたよね」
新人が信じられないといった表情になる傍らキラーが顎を揉む。
「金銭の問題もあったが、肌の色気にするようになってからは自然とやめたな」
「つっても、今でもたまに貸し借りするだろ」
「そりゃ似合うかどうか抜きで単純に気に入った色使いたい時あるだろ?」
「まあな」
共用自体はいいんスかという新人のツッコミは海風に攫われ消えた。ワイヤーがゆっくり首を傾げる。
「……お二人みたいなタイプが口紅に凝ってんの未だに不思議なんですが。理由とかあるんですか」
不躾にも聞こえる尋ね方だったが、ぴりりとしたのは新人だけだった。キッドが特に表情も変えずルージュの蓋を外す。繰りだしたスティックの赤は直射日光を受け鮮やかさを増していた。
「決まってんだろ」
ルージュが口元に寄る。彼の唇が更に燃えあがる。
「アガるからだ。なあキラー」
「違いない」
単純だがあまりにも〝らしい〟。ワイヤーも新人も、盗み聞きしていた連中も、納得した様子で声を立てて笑った。 - 5スレ主22/08/24(水) 21:55:21
お目汚しすまない、よろしく頼んだ
- 6二次元好きの匿名さん22/08/24(水) 22:01:03
好き
- 7二次元好きの匿名さん22/08/24(水) 22:03:45
最高…化粧する男好き…天才…
- 8スレ主22/08/24(水) 22:05:58
- 9二次元好きの匿名さん22/08/24(水) 22:08:43
その後の店員さんの阿鼻叫喚を考えるとおいたわしいけど楽しすぎる好きです
何か貢献出来るか分からないけど自分も書いてみるー! - 10二次元好きの匿名さん22/08/24(水) 22:12:10
男のロマンの塊みたいなやつがアガるってシンプルな理由で男らしく真面目に化粧してるのがいいんだよ!
粗雑な態度で怖がられるのも流石キッド!常識人に見えて実害なきゃ咎めないキラーもいい性格!
クルーがきゃっきゃしてるのを穏やかに眺める相棒概念もよい!
最高! - 11二次元好きの匿名さん22/08/24(水) 22:13:37
クオリティの高すぎるスレ主のSSにびっくりすると共にほっこりしちゃった
凶悪な顔の二人が揃いも揃ってちまちまと口紅塗ってると思うと面白いし可愛いしたまらない
店員さんなんだかんだ手配書見るたびに(ルージュを真剣に選んでた人だ……)(色にこだわりある人だ……)(けど身をかがめながら口紅試してた人だ……)って思い出すんだろうと思うとさらにいい - 12二次元好きの匿名さん22/08/24(水) 22:19:31
- 13二次元好きの匿名さん22/08/24(水) 22:25:32
- 14スレ主22/08/24(水) 22:54:31
- 15二次元好きの匿名さん22/08/24(水) 22:58:51
超短い駄文ss こんなのでよかったのかな…書いてみました
自己解釈多めなので解釈違いごめんなさい
モブ視点
私が億越えの賞金首と話したと言って、信じる人はいないだろう。それは実に不思議な出来事で、いまだに現実だと思えないものだった。
ある晴れた昼間。ぬっと伸びた影が落ちたかと思うと、視界のほとんどがその男_バジル・ホーキンスで占められた。影とは違った原因で顔が青ざめる。バジル・ホーキンスと言えば最近勢いを増している最悪の世代と呼ばれる海賊である。私の店がある島は特筆すべきものもない小さな島で、海賊など、ましてや億越えが訪れることは全くない。バジル・ホーキンスは金の髪を揺らして店を見渡すと、ついと高い位置から私を見下ろす。不思議な眼力のある瞳に晒されて体がすくんだ私にかけられた言葉は「この店で一番人気のバスソルトはなんだ」だった。
近頃はローズ系統のものが人気だと答えると、「そうか」とひとつ頷き店を物色し始めた。海賊なのに風呂に入るのか、と驚いたが流石に口には出せなかった。バジル・ホーキンスは色白ながら長身で、筋肉も厚みもそこらの島の男と比べ物にならない。妙に小綺麗で、私たちの想像する有象無象の海賊とは異なる人物だった。そんな男が小さな島のちんけな店で物静かに品物を見る姿はどこかちぐはぐで、浮世離れした雰囲気が少し薄まり人間味を感じさせられる。かなり長い事商品棚の前で立ち止まり時たまカードを取り出して占いをしていたが、気が済んだのかいくつかのバスソルトとヘアオイル、石鹸を手に取りあの不思議な眼力で私に会計を促した。
紙袋に商品を詰めて渡す。ありがとうございました、と大きな背中を見送ると、後にはエキゾチックな薫りが残っていた。 - 16スレ主22/08/24(水) 23:27:23
書いてきてくださったか嬉しい!助かります!
「一般民衆や船員などのモブ視点でのネームドキャラの印象に纏わる描写」は大好物であることを教える
「不思議な眼力」を持った「こんな島にはいるはずのない億越え海賊」が、「海賊らしからぬ嗜好品」を「海賊のイメージとはかけ離れた様子」で熱心に物色している……それまで想像上の人物でしかなかったことも手伝って人間らしさや親近感みたいなものをつい感じてしまいますねこれは、そしてそういうギャップに大抵の人間は弱い
商品棚の前で長考するホーキンス、自分なりの拘りもありそうだし占いでの分析もあるのでまあそうなるよなあと エキゾチックな残り香も分かる、アロマとかお香ってスピリチュアルのお供ですし
この島に来たのも、部下さん連れてきてなかったのも、カードのお導きなんだろうな
ありがとう!
- 17スレ主22/08/25(木) 00:41:05
「ぬっと伸びた影」「ついと高い位置から私を見下ろす」って描写とてもホーキンスの動き方っぽくて好き
舞台になっている島及び店の田舎感もとても好き
ホーキンスにとっては気にもとめない一幕だろうとは思うんだが、モブさんにとって不思議で印象深い出来事なんだなーってのがよく伝わってくるんだ
- 18二次元好きの匿名さん22/08/25(木) 04:11:50
モブ幼女目線です
私はあ!と大きく叫んでからママの手を離して走り出した。後ろからママの呼ぶ声が聞こえるけれど、今はそれどころじゃない、一大事なの!
沢山の海兵さんが居て、ぎょっとした顔で私を見ていたけれど、私は全く気にしないで一番前を歩いていた人達のところに向かう。何故か止められそうになったけど、私は気にせず突き進んだ。
一番前を歩いていた三人はみーんな巨人みたいに大きくて、それでいておっかない顔! うっかり花瓶を壊したけれど怒られるのが怖くて嘘ついた私を叱るママよりも怖い顔ってあるんだなぁ、と思いながら、私はにっこりと笑顔でその人に向かって手を差し出した!
「はい、おじさん! 飴あげる!」
……どうしてかみーんな変な顔になった。海兵さんはどうしてか青い顔してて変なの。
しかめっ面にしかめっ面を重ねたようなスーパーしかめっ面のおじさんは、すごく怖い顔をしながら私を見た。
「……なんじゃこれは」
「あのね、お礼! 前ね、パパが海賊さんに危ない目にあった時、おじさんが助けてくれたでしょう!? 私見てたもの!」
「……………」
「おじさん! パパを助けてくれてありがとう!」 - 19二次元好きの匿名さん22/08/25(木) 04:12:13
そうたくさんたくさんありがとうの気持ちを込めてありがとうを言ったら、おじさんはさらに変な顔になった。
あれ、飴好きじゃないのかなあ、と思っていたら、なんか背後からごっちん!という音がして無理やり私の頭を下げさせられる。
「す、すみません! この子が失礼なことを……!」
「失礼なことなんてされてないよォ~、ね、サカズキ」
「あらら……こりゃ可愛らしいプレゼント、どうするんですかねぇ海軍本部サカズキ大将」
「……からかうな」
なんと私に乱暴したのは他でもないママだった。なんともひどい話である。暴力反対!って思っていたら、なんか海兵さん以上にすっごい青い顔をしていた。ママ風邪ひいたの?
おじさんは口元をへの字にしたまんま、私をじっと見ている。はあ、と深いため息を吐いてから、膝を折ってしゃがんでくれた。でもおじさんの頭は私よりずっと上にあって、やっぱり巨人みたいに大きい!
仏頂面っていうのかな。でもどこか困ったようなまま、私の手から飴を取っていく。
「……礼には及ばん。海兵として当然じゃけェ」
それだけ言うと、おじさんは私の頭をぽん、と一回だけ撫でてから、もう一度立ち上がってさっさと行ってしまった。
「照れてるの?」「珍しいもの見たねェ」「にしても怖いもの知らずだねあの女の子」「将来大物になるよォ」「お前ら黙っとらんか」――なーんか離れていくおじさんたちはぺちゃぺちゃ何か喋っていたみたいだけど、何を喋ってたんだろう。ただでさえ頭が空の方が近いくらい高いのに、離れてっちゃ何もわからない。
それよりも、今の問題はお母さんだ。
今私を叱る時以上の鬼のお顔をしているんだけど、どうやってここから逃げ出そうかなあ。 - 20二次元好きの匿名さん22/08/25(木) 11:39:25
名無しの海兵さんたちも町の人たちとイベントごとで関わったりするのかな…
迷子を保護したり男の子に絡まれたり酔っ払いの対処したり - 21二次元好きの匿名さん22/08/25(木) 11:52:03
これは良いスレを見つけた
スレ主の文才に拍手。ルージュ真剣に選んでるデカくて顔の怖い男たちは良い
私も家帰ったら書いてみる。日常の出来事ってあんま書いたことないから新鮮だわ - 22二次元好きの匿名さん22/08/25(木) 11:53:34
- 23二次元好きの匿名さん22/08/25(木) 12:13:08
どのSSも素敵でシチュもキャラ選もめちゃくちゃよくて大好き
1の感想の才能も凄いわ、やはり書き手は語彙力が高い - 24スレ主◆0BJlVKIe/nJ522/08/25(木) 12:39:10
- 25スレ主◆0BJlVKIe/nJ522/08/25(木) 12:48:16
格好いい戦闘シーンや因縁・しがらみ、心躍る冒険がつまっている作品だからこそ、日常的な場面を覗いてみたくなるんだ
- 26二次元好きの匿名さん22/08/25(木) 16:41:51
幼女目線の話を書いた人だけど、スレ主が丁寧に感想くれるからニコニコしちゃう
また子ども目線の話書きます。子どもには優しくする怖い人が好きなんだ…… - 27スレ主◆0BJlVKIe/nJ522/08/25(木) 18:19:06
全編から溢れ出してきて止まらない幼女の率直お転婆っぷりが本当にすがすがしいし、客観的に見たらヒヤヒヤするしかない行動なのも一目瞭然なので周囲の気持ちもよっく分かる 海兵達のリアクションの様子がありありと目に浮かぶ
「なんで頭押さえるのさ暴力反対!」「怒られそうだから逃げよう!」とかからも図太さが逐一滲んでて好き、頑張れ!お母様!
「スーパーしかめっ面のおじさん」の「すごく怖い顔」見ても一切ひるまないあたり、本当将来大物なるわね
飴(幼女ちゃんがおやつ用に持ち歩いていた奴だろうか?)ちゃんと受け取ってくれる赤犬ににやにやが止まらない、横の二人のフォローも最高なんだなこれが
物理的な体格差は勿論、「パパの恩人」ってのもあるからより「巨人」に見えるんだろうかなとか勝手に思ってじんわりしている 「頭が空の方が近いくらい高いのに」って表現好き
小さな飴をすぐ噛み砕かないように気をつけつつ口もごもごさせているしかめっ面おじさん見たいなあ……
ありがとう!
- 28二次元好きの匿名さん22/08/25(木) 20:06:41
- 29二次元好きの匿名さん22/08/25(木) 22:19:00
俺は小さな島の平和な村の海兵。
基地の門番をやってはいるが、何分平和な村だ。いつもと同じで事件も何も起きやしない。
珍しく見慣れない人に道を聞かれた。旅の者だと言う彼は仲間が集まっているはずのとある食堂を探していた。
ここをまっすぐ歩いた所にあるよ、旅人さん。
そう伝えると一言礼を述べて彼は歩いていった。
今日ものどかだと思っていると先程の旅人がまた来た。店が分からなかったと言う。
この道を曲がらずに進めば大丈夫だよ。
そう伝えるとぶっきらぼうに彼は進んだ。
迷う様な場所じゃないのになァ…。なんだか妙な男だと思っていたら三度旅人が来た。
曲がらずに進んだがここに着いたと言う。
そんなバカなと思ったが、仕方がないので旅人を連れてそう遠くない食堂まで歩いた。
道すがらどこから来たのかとか仲間はどんな人達なのかとかありきたりな質問をした。
旅人は言葉数こそ少なかったが質問には答えてくれた。結構良い人かもしれない。
さて、食堂についた。扉を開けると賑やかに食事をする面々がいる。
またアンタ迷ってたの!?なんて可愛い子に叱られ、苦虫を噛み潰したような旅人。
とにかく無事に迷子の旅人をお連れしましたよ。それでは皆さん良い旅を!
そう伝えて基地に戻った。
なんの気なしに基地の詰所に貼られている賞金首の一覧を見て腰を抜かした。
あの旅人、海賊狩りだったんだ…。 - 30二次元好きの匿名さん22/08/25(木) 22:47:27
夜のサニー号で船番を任された親分がいると仮定して、サニーの舵輪を緩く握りながら、近くのベンチに来た一味と話したりするんだ。
最初は就寝前のロビンちゃんが晩酌後に涼みにきて、しばらく親分とお話する。日付が変わる頃に「そろそろ夜も更けてきたから失礼するわ、ジンベエ、よろしくね」って挨拶して女子部屋に帰る。
親分は緩く波に揺られるんだけど、次は仕込みが終わったサンジが「悪いなジンベエ、これ差し入れだ」ってさりげなくホットドリンク(多分ジンジャー入ってる系)と簡単なおつまみを置いていく。厨房と船首は離れてるから、親分はいつものニッコリ顔で「ワハハ、かたじけない」と受け取る。それでサンジは船首の階段を降りながら背を向けたまま手を一振りする。
で、夜が明けるから、日の出と共に起きたゾロが気軽に声を二言くらいかけて、親分と船番交代。親分はサニーが迷子にならないかちょっとだけ心配するけど、まあナミがおるし問題ないかってなって仮眠に行く。
たぶん2、3時間くらい仮眠をして、ブルックの音楽とサンジの「おーい、野郎ども起きやがれ、朝飯だ」の呼びかけで起きる。
この時の親分はルフィの寝相が悪すぎて自分に半分乗ってることに気付く。朝飯の呼びかけがあるので、親分とルフィは同時に半分寝ぼけながら目を開く。
この日の朝食はメインのスクランブルエッグとサンジ特製のホームメイドベーカリーが美味しかった。食後のミルクティーをちまっと持ちながら、ルフィとナミの「今日は俺、面白島の洞窟行って探検するんだ~~!」「はあ?!面白島ってあんたその島の重力がおかしなことになってるの分かってる?!」みたいなやり取りをニコニコ見てる。ナミは結局ルフィに折れる。
あと折を見てサンジに昨日の差し入れのお礼と味の感想も伝える。気に入ったやつはまた食いたいのぅって言う。
今日はルフィの面白島上陸までは穏やかなので、天気が良いサニー号の看板でウソップとチョッパーとルフィに付き合う。半分遊びだけど、面白島上陸の準備として工作したり、釣りしてる。お昼前に疲れた寝ちゃうので、親分はみんなに抱きつかれてる。
風も波もなければ、フランキーがソルジャードック出してくれるので、プールで遊んだりする。
さて、面白島の上陸方法が判明したぞ。自分の好物も入ってる海賊弁当を持って、船長とその他道連れ3人と一緒に冒険だ。
今考えた。 - 31二次元好きの匿名さん22/08/26(金) 01:07:27
今日から日誌を書くことにした。
というのも拙者がワノ国の将軍をしゅう名して数日、ちらほらと書き物をせねばならなくなった。
オロチ城と鬼ヶ島には食料をふくめた多くの物資が備ちくされていた。今現在、食料庫は連日のうたげのため開放しているものの、農園から収かくした食べ物も無限にあるわけではない。ワノ国に農園を広げ、食料が民にゆきわたるようになるまではいくらか民への支給を制限せねばならぬ。また、花の都や九里の被害を修ぜんするため材木などの物資を運ぶ必要があり、それらの手続きの書状に拙者も目を通し許可を与える必要がある、と傳ジローが申しておった。
拙者元々読み書きはできるが、むずかしい漢字は書けぬし字も達筆とは呼べぬ。
大名であった父上が書き物をしているところなどとんと見たことがなく、傳ジローが言うような書き物が将軍の仕事に必要なことなのかはなはだぎ問なのだが、となりの部屋で話を聞いておったおナミが字の練習に日誌をかけばよいと申してきた。いささか不服ではあったが、おなごに「モモちゃんにきれいな字でお手紙書いて欲しいな~♡」と言われて挑まねば武士の名折れである。 - 323122/08/26(金) 01:08:09
何を書けばよいかわからぬので今感じていることを書くことにする。
部屋には拙者ひとり。錦えもんは九里に戻っておる。二十年の年月、積もる話もあるであろう。
となりの部屋では日和とホネ吉がせっしょんをしておる。拙者が夜眠れないときやルフィとケンカしているときに聞こえてきた曲が日和の琴といっしょに聞こえてくるのはなんともふしぎな気分だ。
さきほど、ゾロが竹林のほうへ歩いていくのが見えたが、巨大なだんべるのようなものを担いでいた。また修業であろうか。毎度思うがあれはどこから調達しているのだ…?拙者もあとでけいこをつけてもらおう。
城下から祭ばやしが聞こえてくる。うたげは昼夜を問わず続いており、今も中心で騒さわいでおるのがルフィ達であろう。見ずともわかる。またあちこちの屋台を荒らしまわっているに違いない。
そういえば拙者昨日ルフィに勝ったのだ。別に戦ったわけではないぞ。いや、戦っても負けはせぬが!
昨日ルフィが探しておった牛串の屋台を見つけたのだ。ルフィは四方八方かけまわってついぞ見つけられずにおった。拙者が牛串を持っていってやればさぞ悔しがるであろう。
日誌の次のページはルフィの悔しがる様子からはじめることにしよう。なんだ日誌を書くのも存外よいものではないか。 - 33二次元好きの匿名さん22/08/26(金) 03:09:14
ウッ一味にだんだん溶け込んでいく新入り親分…
本編幕間の日常大好きなのでうれしいスレだ また明日じっくり読ませてもらおう
スレ主さんは読んでるかもだけどワンピースマガジンで一時連載してた一般人視点の一味の話も好きだったなー
男部屋だったかの掘り炬燵でみっちりぬくぬくしてる男衆見たい
- 34二次元好きの匿名さん22/08/26(金) 09:41:03
モモ好き~~~~~!!!
- 35スレ主◆0BJlVKIe/nJ522/08/26(金) 12:59:14
なかなかのぞきに来れなくてすまない
みなのおかげで心が潤っている、助かっているありがとう - 36二次元好きの匿名さん22/08/26(金) 18:07:52
- 37青雉直後くらいのチョッパー目線22/08/26(金) 18:43:48
「確か、心臓が動かなくなると死ぬんだよな?」
夜遅く、突然ルフィにそんな事を尋ねられた。その時はオレ、ロビンの容態を見てて他に誰も起きてなかったんだ。全身が一瞬で氷漬けになるなんて聞いたことないから、せめて一晩は様子を見るべきだと思ったんだ。ロビンは遠慮してたけどオレは無理言って、最初は皆付き合ってたんだけど次第に寝に行って、気づけばオレとルフィだけだった。
正直言うとオレ、この時のルフィが少し怖かったんだ。いつもみたいに元気じゃない。真顔でロビンをじっと見つめながら、何か考えてるみたいなんだ。「ルフィだけどルフィじゃない誰か」みたいなんだ。
「あ、あぁそうだぞ。心臓が鼓動を打って全身に血を送ってるんだ。心臓が止まると全身に血が行かなくて、体は徐々に死んでいくんだ。それに血が滞ると全身の動きが鈍っていくんだ。だからもし意識がない人がいたら、心臓マッサージで蘇生しないといけないんだ。」
ドクトリーヌに始めの方に教えられた医術だ。
「えーと…つまり心臓が遅くなると体も鈍くなるんだな?」
「んー…まぁ大体合ってる。」
「じゃあ逆に心臓を速くすると体も速くなんのか?」
「いや無理じゃねぇかなぁ?血管って血が詰まってるから、変に負荷かけるとパンクしちゃうぞ?」
ルフィがわかるとは思わないが、高血圧の原理だ。人に出来るとは思わない。だけどそれを聞いたルフィは「そっか、ありがとな」というとそのまま出て行った。
ルフィは一体、なんであんな事を聞いたんだろう?
ギア2ってこうやって思いついてたら良いなって - 38二次元好きの匿名さん22/08/26(金) 18:50:21
あああ!ありそう!ルフィ意外と頭良いタイプだから蒸気機関をイメージしてギア2を発案するのは分かるんだけど、蒸気機関をいきなり人体に応用できる!はルフィにしては発想が飛んでるから間にチョッパーから聞いた話が入ってるの凄いしっくりくる
- 39二次元好きの匿名さん22/08/26(金) 22:17:23
夢小説っぽい奴はアウト?
- 40スレ主◆0BJlVKIe/nJ522/08/26(金) 23:05:39
- 41二次元好きの匿名さん22/08/26(金) 23:06:23
りょ!
- 42二次元好きの匿名さん22/08/27(土) 09:18:59
保守
いろんな日常みたいな - 43二次元好きの匿名さん22/08/27(土) 10:07:11
小さい頃、海賊に会ったことがある。
『偉大なる航路』の端の端、海賊も海軍も滅多に寄り付かないこの島にその船は来ていた。
「いやー! 楽しかった!」
島の周囲は大きな渦潮がよく発生し、砦の役割を担っている。出て行くのは簡単だけど、入ってくるのはとても難しいのに、みんな楽しそうだった。だけど特に大笑いしていた黒いお髭のおじさんは全身びしょぬれで風邪をひきそうだったので、幼い私はありったけのタオルを引っ張り出して家を飛び出した。
「あの、おじさん」
てててて、と駆け寄ってきた私に、一瞬だけ怖い風が吹く。けれど「どうした、お嬢ちゃん」とくろいお髭のおじさんがしゃがんでくれたことでパッとなくなった。しゃがんでくれたおじさんにタオルを差し出した私は、ワンピースの裾を掴みながら一生懸命言葉を探した。
「私の家、すぐそこなの。おじさんたちみんなは入らないけど、お風呂も貸せるよ」
おじさんはきょとんと目を丸くして、後ろのメガネをかけたおじさんを振り返る。一言二言難しいお話をして、もう一度おじさんは私の方を向いた。
「ありがとなぁ嬢ちゃん。くっせェ男だらけだがいいのか?」
「余計なことを言うなロジャー。小さなレディ、どうもありがとう。私らは一月くらい滞在する予定なんだが、宿屋はあるか? ちゃんと宿代も払うぞ」
「この島に宿屋はないよ。人が来ないもん」
でもおっきな原っぱはあるよ。私の秘密基地!
そうして幼い私は、何十人ものおっきな男を背中にぞろぞろ引き連れて案内した。途中船にも乗せてもらった。『オーロ・ジャクソン号』というのだとか。島から出たことがない私にとって、それすら冒険だった。
とても、とても楽しい日々だった。おじさんたちが訪れた島の話。冒険の話。ライバルの話。一番年が近くてよく遊んでくれた赤髪の子と赤鼻の子は、今でも元気にしているだろうか。 - 44二次元好きの匿名さん22/08/27(土) 10:07:33
今や私も歳をとった。島唯一の宿屋を開いて、またあのおじさんたちがやってくるのを待つ。
けれど幼い私はもういない。彼らが海賊王であったことも、その船長が数年後に処刑されたことも知っている。それでも私は、いつかあの港に黒くはためくドクロの旗が来やしないかと期待せずにはいられないのだ。
あの時よりも広いお風呂とたくさんのタオル。美味しい料理だって覚えたし、島のことなら誰よりもよく知っている。おじさんたちがいつ来てもいいように。
そうして──海賊が来た。
「もう! 最後にあんな高波くるとか、ウソでしょ!?」
「いやー! たのしかったァ!」
そういって笑う麦わら帽子の青年が、かつてのおじさんと重なった。常備していた真っ白なタオルを引っ掴んで、私は彼らに歩み寄る。
「もし、そこのお兄さんたち」
「んあ?」
「私の家、すぐそこなの。お兄さんたちみんなが入れるくらい大きなお風呂も貸せるわよ」
- 45二次元好きの匿名さん22/08/27(土) 17:57:14
めちゃくちゃよかった。タオルをたくさん持ってくる女の子が健気で可愛いし、ロジャーとルフィを重ねて書くところとても好き。そういう重ね合わせすごく良いと思う。
ロジャー海賊団の人らみんな女の子を可愛がってそうだなぁ……。シャンクスとバギーが女の子の遊びに付き合ってあげてるところ想像してにこにこした。
- 46スレ主◆0BJlVKIe/nJ522/08/27(土) 18:26:05