ルフィ「おいウタ!!」 ウタ「え!? ルフィ!?」 part3

  • 1FILM N.G.22/09/06(火) 20:51:18
  • 2二次元好きの匿名さん22/09/06(火) 20:51:44

    縦乙

  • 3二次元好きの匿名さん22/09/06(火) 20:52:27

    乙っす

  • 4二次元好きの匿名さん22/09/06(火) 20:52:36

    おつおつ

  • 5二次元好きの匿名さん22/09/06(火) 20:53:02

    楽しみにしてましたわ

  • 6二次元好きの匿名さん22/09/06(火) 20:54:13

    おっつー!

  • 7二次元好きの匿名さん22/09/06(火) 20:55:35

    待ってた
    🍲
    🔥

  • 8二次元好きの匿名さん22/09/06(火) 20:55:54

    乙です~

  • 9二次元好きの匿名さん22/09/06(火) 20:56:05

    スレ建て乙です
    これはほんのお気持ち

  • 10二次元好きの匿名さん22/09/06(火) 20:59:51

  • 11二次元好きの匿名さん22/09/06(火) 21:20:13

    スレ立て乙

  • 12FILM N.G.22/09/06(火) 21:27:55

    「ルフィ大丈夫!!? ねえちょっと!!?」

     ウタは怪鳥から手を離して飛び降りる。向かうのは外壁が砕けて出来た穴。土煙がモクモクと舞うそこへと降り立った彼女はルフィの安否確認を急ぐ。

    「お願いルフィ返事をして!!?」

     泣きそうな顔で呼び掛けるウタ。彼女の頭の中には後悔の念が押し寄せてきていた。
     私が勝負なんて仕掛けなければこんな事にはならなかったのに。もしルフィの身に何かあったらどうしよう。そんな風に考えてウタは必死になってルフィを探す。だが城の外壁を砕く程の力で叩き込まれたのだ。ウタはもし自分だったら確実に大怪我、悪ければ死んでいると考える。
     頭の中がぐるぐるして気持ちが悪い。地面の感触が遠く感じて足取りが覚束ない。

    「ヤダヤダヤダ……ッ!!? ルフィ!!? ルフ―――」

     泣きそうな声で、いやもう泣いていたのかもしれない。それ程ウタは必死になってルフィを探していた。

    「おう! どうした?」
    「……え?」

     だからウタはルフィのその何でもないケロッとした返事を耳にして呆気に取られた。

    「いや~びっくりしたな~。まさかブン投げられるとは思ってなくてよ。ししし!!!」

     瓦礫の上で胡座を掻くルフィ。服は土埃などで汚れてはいるがその身に傷は一切無し。

    「え? え? あれ? 壁……ドカンって……え?」

     目の前の状況が上手く処理出来ないウタは「え? あれ~?」と戸惑うばかり。そんな彼女の様子を見てルフィは気付く。子供の時の自分と今の自分の“違い”を。

    「ああ、そういえば知らねえよな? おれさ、悪魔の実食ってゴム人間になったんだよ。ほら」

     そう言ってルフィは自分の頬を左右に大きくびよ~んと伸ばした。ウタは驚いて目を丸くしたが、直ぐに無事だった理由に合点がいって落ち着く。

  • 13FILM N.G.22/09/06(火) 21:58:36

    「……そっか。ルフィも能力者になってたんだね。でもとにかく無事で良かっ―――」

     色々と思う所は会ったが幼馴染みが無事だったことに喜ぼう。そう考えていたウタだったが、ルフィが“この部屋”でしていたことに気付いて再び冷静さを欠こうとしていた。

    「……ル、ルルルル……ルフィ? いいいいいいったい何を見て……」
    「お? “これ”か? この部屋に突っ込んだ時にいっぱい降ってきてよー」

     そう言ったルフィの手に有る何枚のも用紙。五線譜が引かれた物から幾つかの言葉(フレーズ)が書かれた物まで様々。それと同様の物がこの部屋には大量に収められている。

    「これって楽譜ってやつだろ? こっちは歌詞か? ウタが書いたのかこれ」

     ルフィの想像通りこの部屋はウタが歌う楽曲の製作場所、その保管場所であった。ルフィは面白そうに手に持ったそれに目を通していく。

    「え~何々? 『わたしは鳥。どこまでも羽ばたいていく鳥。あの太陽に向かっ―――」
    「ギャァアアアアアアアアアア!!? なに勝手に読んでんの!!? バカ!!? アホ!!? 信じらんない!!?」
    「ブッ!!?」

     乙女にあるまじき悲鳴と共にウタはルフィから用紙を取り上げ、ガンガンガンと顔へ蹴りを何度も叩き込む。

    「なに怒ってんだよ? こんなの見たぐらいで」
    「これ全部未完だったりボツにしたやつなの!!!」
    「じゃあ別に見ても減るもんじゃねえだろ?」
    「減るのよこっちはぁああ~!!? ほんと昔からデリカシー無いよねルフィは!!?」

     ウタは書きかけだったりボツにした楽譜や歌詞を他人に見られるのが恥ずかしいタイプの音楽家だった。

  • 14二次元好きの匿名さん22/09/06(火) 22:07:55

    あー分かる。ボツにした歌詞は痛いポエムみたいで見られると恥ずかしいよね。

  • 15二次元好きの匿名さん22/09/06(火) 22:15:07

    スレ主よ、生涯を油の中で過ごす気はないかね?

    pixivに投稿するしてくれると助かる.....!

  • 16二次元好きの匿名さん22/09/06(火) 22:17:28

    >>15

    ごめん草

  • 17二次元好きの匿名さん22/09/06(火) 22:20:39

    これかつての思い出を歌詞にしたんじゃ…

  • 18FILM N.G.22/09/06(火) 22:25:13

    >>15

    意味は分かるがワケが分からなくて草です

    pixivはまあ、その内登録したら投稿してみます

  • 19FILM N.G.22/09/06(火) 22:25:54

     しかしルフィは取り上げられたことが不満らしく何とか隙を付いて他の紙を拾おうとする。だがウタはそれを目敏く見付けるとルフィが手を伸ばす度にスパーンと叩き落とす。そんなやり取りを繰り返しながらルフィは尋ねる。

    「それよりさーウタ。“バードレース”の勝敗だけど―――」
    「私の部屋ぶっ壊しといて勝ちも負けもある!!? ちょっともう出て行ってよ!!?」
    「あ! おいちょっと押すなって!」
    「で~て~い~く~の~!!!」

     ウタはルフィを立たせるとぐいぐい押していく。そうして部屋の扉まで辿り着くとバンッと開けてルフィだけを追い出す。

    「そこで待ってて! 穴に布被せて塞ぐから!」
    「んん? おれも手伝うぞ?」
    「ルフィはもう部屋に入って来ないで!! わかった!!?」
    「おお。わかりました」

     怒った女は怖い。それを知ってるルフィは素直に頷き閉め出された部屋の前で待つことにした。

  • 20FILM N.G.22/09/06(火) 22:31:24

    本日はここまで。ここまで読んでくれたり保守してくれたりありがとうございます
    明日の夜にまた投稿したいけどちょっと忙しくなるから、遅くなると明後日の夕方になるやも……

  • 21二次元好きの匿名さん22/09/06(火) 22:41:26

    >>20

    今日も面白いssをありがとうございます

    無理せず豪水のんだりES飲んだりせず投稿してくれ

    完結まではいくらでも薪と油用意してまつので

  • 22二次元好きの匿名さん22/09/06(火) 22:52:09

    >>21

    なんかもう色々すごいこと言ってて草

  • 23二次元好きの匿名さん22/09/06(火) 23:06:44

    ネズキノコも食べてないウタの本来の性格って多分こんなものなんだろうな

  • 24二次元好きの匿名さん22/09/06(火) 23:37:39

    ネズキノコを食べる前ならまだ救いようはあるのかもしれない
    頼むぞ…

  • 25二次元好きの匿名さん22/09/06(火) 23:44:50

    最後に敬語で納得するのほんとルフィっぽくて好き

  • 26二次元好きの匿名さん22/09/07(水) 01:21:59

    敬語退散ルフィらしいけど
    よく考えたら多分子供の頃の、ウタといた頃の昔のルフィはそういうのなさそう
    ダダン~青年期に身につけたっつーかなんつーかこれも変化なんだろうな

  • 27二次元好きの匿名さん22/09/07(水) 05:05:44

    半泣きでルフィを探そうとするウタちゃんはとてもかわいかったですね。このあたり髪の動きがぴょこぴょこしてて…(幻覚

  • 28二次元好きの匿名さん22/09/07(水) 08:40:03

    追いついた ほ

  • 29二次元好きの匿名さん22/09/07(水) 10:08:28

    語り継がれる……オマエのssは

  • 30二次元好きの匿名さん22/09/07(水) 11:31:14

    はあ、相も変わらず神SS……まだまだ読みてえ!!

  • 31二次元好きの匿名さん22/09/07(水) 17:35:15

    保守

  • 32二次元好きの匿名さん22/09/07(水) 17:41:58

    🐉👍

  • 33二次元好きの匿名さん22/09/07(水) 20:31:08

    保守

  • 34二次元好きの匿名さん22/09/07(水) 22:33:16

    保守

  • 35FILM N.G.22/09/07(水) 22:48:49

    保守してくれてありがとうございます
    体力が尽きたので今日の投稿は一つだけだよ。もっと書きたいけど眠気がね……

    投稿したら寝るよ。明日は多分夕方から上げられるよ。それでは皆さんおやすみなさい

  • 36FILM N.G.22/09/07(水) 22:49:40

     待つこと数分。

    「終わったよ」

     わたし不機嫌ですけど? みたいな顔で部屋の応急処置を終わらせたウタが出て来た。そんな彼女を出迎えたルフィはと言えば―――

    「モウ(おう)、モマメリ(おかえり)! モフマレファン(おつかれさん)!」
    「ごはん食べてる!!?」

     頬をパンパンに膨らませながら弁当を食べていた。サンジの美味しい料理に彼はとってもご機嫌。

    「何で今!!? 私が頑張って部屋直してる時に食べるとか何考えてんの!!?」
    「ムマ~、ファファマッヘルノモフィファデ……」
    「食べるか喋るかどっちかにして!!?」

     そう言われてルフィは1秒考えて。

    「……モグモグモグモグパクパクパクパク」
    「あ~……食べることにしたんだぁ……そっかぁ……」

     途轍もない疲労感に襲われたウタは遠い目になる。100%ルフィの所為だ。
     何だか文句を言うのも面倒になったウタはルフィの隣りに腰を落ち着ける。

    「バクバクモグモグサクサクズルルル~ムシャムシャムシャ」
    「……もう。バカバカしくて笑えてくるよ」

     微笑むその顔はこれまでの中で最も穏やかで、ウタはそんな張り詰めていた気を緩めた表情でルフィが弁当を食べる姿を静かに眺めていた。

  • 37二次元好きの匿名さん22/09/07(水) 23:10:05

    >>36

    あっ、好き…

    釜の中でもっとネズキノコ食べながら書いて♡(無茶振り)

  • 38二次元好きの匿名さん22/09/07(水) 23:40:50

    >>35

    お疲れさん

    明日楽しみにしてるぞー

  • 39二次元好きの匿名さん22/09/08(木) 00:38:30

    >>36

    本来こうルフィがウタを振り回す筈だったんだ……けど、既に会ったときにはルフィはマジにならないといけなかったんだ……!?

  • 40二次元好きの匿名さん22/09/08(木) 07:01:12

    保守

  • 41二次元好きの匿名さん22/09/08(木) 07:09:20

    >>36

    凄く良い…95億点♡

  • 42二次元好きの匿名さん22/09/08(木) 09:07:50

    保守だ!!

  • 43二次元好きの匿名さん22/09/08(木) 13:52:47

    ただのルフィとただのウタのやりとり、いいね

  • 44二次元好きの匿名さん22/09/08(木) 15:16:56

    ほっす

  • 45二次元好きの匿名さん22/09/08(木) 17:36:16

    保守

  • 46FILM N.G.22/09/08(木) 19:59:45

    やあ。昼寝ってどうしてあんなにも気持ち良いのかな。夕方が消えて夜になっちゃたよ

    これから投稿します

  • 47二次元好きの匿名さん22/09/08(木) 20:00:22

    >>46

    分かるってばよ…

  • 48二次元好きの匿名さん22/09/08(木) 20:08:16

    >>46

    これ程の良作をリアルタイムで追えるとは…

  • 49FILM N.G.22/09/08(木) 20:19:31

     ■■■

     むかしむかし あるところに 
     へいわと 子どもたちの えがおが 大好きな 人が いました

     その人は ときに歌い ときにかなで ときにおどけ
     子どもたちを えがおに していました
     みんなが えがおに なれば その人も えがおになりました

    『いつか 世界の みんなを えがおに したいな』

     その人は たくさんの 子どもに じぶんの 夢を かたります
     子どもたちの えがおを 見れば なんだって できると おもったのです

     ■■■

  • 50二次元好きの匿名さん22/09/08(木) 20:21:50

    >>49

    辛い展開が始まりそうだ

  • 51FILM N.G.22/09/08(木) 20:28:25

     その後、ルフィとウタのゴールから遅れて麦わらの一味とゴードンが城に到着した。
     自分の目で確認するまでルフィの無事を信じきれてなかったゴードンはここでようやく安堵の息を漏らす。
     そうして全員集合してからこれからの“歓迎会”について話し合う。

    「君達を歓迎する……と決めたは良いが如何せん準備などしてなくてね。夕食に合わせて始めようと思っている。だからそれまでどうか寛いでいてくれ。何も無い場所だが……」
    「確かになんも無え島だよなここ」

     ゴードンの言葉にそんなことを言うルフィの頬をサンジはつねって伸ばしながら提案する。

    「料理を作るなら手を貸そう。おれは料理人(コック)だ」
    「それは助かるが、良いのか?」
    「勿論だ。この辺で採れる食材にも興味があったしな」

     サンジは歓迎会の料理を手伝うことに決定。

    「おうおうおう!? どこもかしこもボロボロじゃね~かこの城!! 自由にさせてくれるってんならこのおれがス~パ~暮らしやすく修繕してやるぜ~!!!」

     フランキーはウタ達が暮らす城の状態が気になったのか工具を取り出して修繕の許可を求める。

    「特に酷えのは外壁の穴だ。まるで大砲でも撃ち込まれたような……誰がいったいあんな―――」
    「ああ、それをおれ突っ込んだ穴だ」
    「お前かよ!!?」

     フランキー。ウタから許可を貰って外壁の修理をすることに決定。

    「―――それにしてもルフィのお友達って個性的な人が多いね」

     フランキーと会話したウタはそんなことを言う。それにルフィは笑顔で「そうだろ!」と答える。

    「全員すっげぇおもしれえ、自慢の仲間だ!」

  • 52FILM N.G.22/09/08(木) 20:49:30

    「おもしろい…確かに」

     ウタは丁度近くに立っていたブルックに目を向ける。

    「この人の仮装とかすごいよね。本物の骸骨みたい」
    「ん? ブルックは本物の骨だぞ」
    「あ、どうも。本物の骨です」

     ウタはよく見た。本物の骨だと理解した。

    「……きゃあああああああ!!? お化け!!?」
    「懐かしいこの反応、逆に新鮮! ……はっ」

     ブルック、ここで大事なことに気付く。

    「……あの~、ウタさん」
    「ひぇ……な、なんですか?」

     若干怯えるウタにブルックは尋ねる。

    「パンツ、見せて貰ってもよろしいですか?」

     最低な質問だった。

    「ウタちゃんになんてこと聞いてんのよアンタはぁーッ!!!」
    「ヨホッ!!?」

     ナミに殴られるブルック。当然と言えば当然の対応。

  • 53FILM N.G.22/09/08(木) 20:50:00

    「本っ……当にバカなんだから!!! ……ごめんね、この骨のことは別に気にしなくて良いか―――」
    「アンダースコート履いてるから別に見て良いよ?」
    「「ブーッ!!?」」

     まさかのスカートを捲って見せたウタと鼻血を吹き出し倒れるブルック、あとついでにサンジ。それを目撃したチョッパーは「ブルック―!!?」と叫んで慌てて駆け寄る。

    「ちょ、ちょっとウタちゃん!?」
    「あはははは!! 大丈夫大丈夫!! わたしって踊ること多いから下着の上にはいっつもこれ着てるの!」

     言いながら踊りのステップを踏んでスカートをひらひらさせるウタ。ちらちらと見えるアンダースコート。
     見られても良い下着と言われても刺激が強いことに変わりなく。予期してなかった“幸せパンチ”に撃沈したブルック、あとついでにサンジ。

    「……ヨホ、ホ……え? 天国?」
    「ブルックー!!? いっ、医者~!!? ……っておれだよ!!!」

     一人でボケて一人で突っ込むチョッパー。

    「……ジ、ジジィ……おれも今そこに……」
    「バラティエのおっさんまだ生きてるだろ」

     サンジの発言に突っ込むルフィ。
     一瞬で騒がしくなる空間。その中でウタは―――

    「……ぷっ」

     笑いが堪えきれなくなる。

    「あはは、あっははははははは!!! あ~おかしい!! 本当におもしろい人ばっかりだねルフィのお友だち!!」

  • 54二次元好きの匿名さん22/09/08(木) 20:51:13

    冷静なツッコミに回るルフィが実にらしいぜ

  • 55二次元好きの匿名さん22/09/08(木) 21:16:12

    ゼフ勝手に殺すなし!?

  • 56二次元好きの匿名さん22/09/08(木) 21:47:38

    ブルック…お前鼻血出るのか…

  • 57二次元好きの匿名さん22/09/08(木) 21:50:23

    相変わらず…すげえエミュだ

  • 58二次元好きの匿名さん22/09/08(木) 22:03:17

    >>56

    チョッパー「血管ねェのにな!!」

  • 59二次元好きの匿名さん22/09/08(木) 22:06:05

    >>58

    何ならもう血液もねえよな…ヨミヨミの実…すげえ力だ…

  • 60二次元好きの匿名さん22/09/08(木) 22:09:14

    >>56

    「人魚はパンツなんか履かねえよ♡」

    と言われたシーンでサンジ共々鼻血出してんだ

    何で鼻血が出てるのかは知らん

  • 61FILM N.G.22/09/08(木) 22:30:02

     目尻に浮かんだ涙を手で拭うウタ。それを見てルフィは「あ」と指差す。

    「ウタ。そういえばお前“それ”」
    「え?」

     ルフィが指差したのはウタが上げていた左手、その腕に身に付けられたアームカバーだった。

    「それだよそれ。その手の甲のマーク! 昔おれが描いたやつだろ! なっつかしいな~!!」

     そのマークとは頭が膨らんだ黄色い瓢箪のような物でそのくびれに赤いラインが引かれた物。そして頭部分の中に“UTA”と彼女の名が入れられている。

    「……覚えてたんだ」

     ウタはマークはそっと撫でるとそう呟いた。思い出すのは幼い頃、ルフィと二人で絵を描いていた時の記憶。


     ―――それは海からの潮風が涼しく吹き抜けていく晴れの日。

    『できた~!!』

     ルフィは画用紙に描いた絵をウタに見せる。

    『……なにそれ』

     その絵がなんなのかウタにはわからなかった。ルフィに絵心は無かった。

    『シャンクスの麦わらぼうし!!』
    『帽子~?』

     ウタはその不細工な瓢箪みたいな絵をじーっと見てシャンクスがよく身に付けている麦わら帽子と連想させる。連想させるのに時間が掛かるレベルで似てない絵だった。

  • 62FILM N.G.22/09/08(木) 22:30:42

    『下手クソ』
    『なんだと~!?』

     やいやいと喧嘩と呼ぶには可愛いじゃれ合いを始めるルフィとウタ。それも直ぐに終わっていつもの調子に戻るのだから二人の親しさが見て取れる。
     そうしてルフィはさっき酷評されたのを忘れたようにその絵を再びウタに差し出して言うのだ。

    『これやるよ! おれたちの“しんじだい”のマークにしようぜ!!』

     新時代。それはいつか語り合った二人の夢。どちらが先に新時代を作るのか、直ぐに勝敗が着くいつもの勝負とは違う。ずっとずっと先の夢。

    『え~……これをマークにするの?』
    『ししし!! 良いだろ!!』
    『……ぷっ……まぁ良いけど?』

     あまりにもルフィが自信満々に言う物だからウタはおかしくてついつい頷いてしまう。

     不格好な麦わら帽子。
     幼い頃の二人の間で交わされた“新時代の誓い”。それがこのマークには込められていたのだ。


     ―――ルフィの真っ直ぐな目がウタの視界に入る。

    「……せっかくルフィがくれた物だし、ありがたく使わせてもらってるよ」

     そう言ったウタは目を伏せて自分の視界からルフィを切った。
     今のウタはルフィと目を合わせるのが、その“麦わら帽子”を被った男と真っ直ぐ目を合わせることが出来なかったから。

  • 63二次元好きの匿名さん22/09/08(木) 22:30:47

    この流れはハッピーエンド行けるなヨシ!

  • 64二次元好きの匿名さん22/09/08(木) 22:40:40

    >>63

    (part2終盤辺りでスレ主が不穏なこと言ってたんだよな…)

  • 65二次元好きの匿名さん22/09/08(木) 22:43:46

    ハラハラしますね…

  • 66二次元好きの匿名さん22/09/08(木) 22:59:49

    >>60

    なんなら幽体離脱できるようになったこと話した時、魂からも鼻血でてなかったっけ?

  • 67二次元好きの匿名さん22/09/08(木) 23:22:31

    ルフィがボケじゃなくてツッコミやってる時は特におもろい法則まで再現するとかスレ主は尾田っちのクローンかなにか?

  • 68二次元好きの匿名さん22/09/08(木) 23:48:45

    保守

  • 69二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 00:11:52

    ゆっくりで大丈夫ですよ!楽しみにしてます!

  • 70二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 02:34:41

    保守

  • 71二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 05:54:50

    おは保守

  • 72二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 07:37:57

    ほーしゅ

  • 73二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 07:59:18

    出勤前に保守 続きに期待

  • 74二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 10:25:22

    保守さ

  • 75二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 11:02:48

    とても面白いわ

  • 76FILM N.G.22/09/09(金) 13:38:00

    やあ。保守ありがとう
    ちょっと書けたので投稿するよ。それを上げ終わったら次は夜かも

  • 77FILM N.G.22/09/09(金) 13:39:43

    「……?」

     楽しい思い出を語っていたはずなのに急に表情を暗くしたウタにルフィは首を傾げる。

    「なぁ、ウタお前―――」
    「さて!! せっかくルフィのお友だちが来てくれたんだし、私がこの城を案内してあげる!!」

     ルフィの言葉を遮るように、ウタは他の仲間へそう提案した。

    「確かナミちゃんとロビンさん、だっけ? ここお風呂もあるし場所教えとくね♡」
    「あらありがと♡」
    「助かるわ」

     同性が居ることが嬉しいウタはにこやかにナミやロビンに話し掛ける。

    「それにしても二人とも美人さんだね!! 初めて見た時ちょっとびっくりしちゃった!」

     ウタは上下に左右にと体を振ってナミとロビンの容姿を眺めて褒める。褒められて気を良くしたナミは「ウタちゃんも可愛いわよ♡」と親指を立ててグーサインをする。

    「あはは! わたしが可愛いってそんな……それほどでも有るかな!!!」

     得意満面(ドヤァアア)なウタ、自分の容姿に自信有り。

  • 78FILM N.G.22/09/09(金) 13:40:07

     調子が上がってきたウタはナミとロビンに尋ねる。

    「ちなみに二人は歌とかダンスに興味は?」
    「わたしは聴くの専門かなぁ」
    「わたしも。見ている方が好きね」
    「ありゃ、残念。キレイどころ三人でステージ立つのも面白そうって思ったんだけど……それだったらしょうがないね!」

     ウタは「無理強いは良くない良くない」とうんうん頷きながら、次は二人とは別に気になっていた相手に声を掛ける。

    「それはそれとして~……君!! そこの君!!」
    「え? ……おれ!?」

     ウタがビシッと指差したのはチョッパーだった。突然指名されるとは思っていなかったチョッパーは驚きながら自分を蹄で指差す。

    「そうそう君!! うっわ~~~ッ!!?♡ やっぱり近くで見るとすっごく可愛い~~ッ!!!♡ ねえねえ抱っこさせて抱っこ!!!♡」
    「うわわわわわ!?」

     チョッパーを抱き上げてそのふわふわとした毛並みを堪能するウタ。チョッパーはと言えば彼女のファンなので半分パニック状態だ。

    「彼はうちの船医さんなの。あと甘い物が好きよ」
    「そうなんだ~! きゃ~~!!!♡ 動物のお医者さんってうらやましぃ~~!!!♡」
    「どんな状況!!? おれ今どんな状況!!? ……飴うまっ」

     ロビンから受け取った飴玉をチョッパーに与えて御満悦のウタ。彼女は可愛い物が大好きなのだ。

  • 79二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 15:15:32

    マジで話おもろいな、頑張ってくれ

  • 80二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 16:22:38

    今更だけど一味の懸賞金紹介パートの時、低い人から順に紹介されてる事に気がついた。

  • 81二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 16:31:16

    ……あれ、こうやって一味のひとりひとりとコミュケーションを取ろうとした場合、
    ウソップの存在って地雷だったりする?

  • 82二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 17:00:54

    >>81

    映画の時はそれどころじゃなかったけど実の子供は育てず他人の娘を育てていた事にもなるからウソップにとっても地雷になりそうだけど大丈夫かな?

  • 83二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 19:47:17

    保守!

  • 84二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 21:38:37

    >>81

    >>82

    実の息子も義理の娘も碌に育てられなかった親か…

    こうやって文章にすると色々ヒドイ

  • 85FILM N.G.22/09/09(金) 22:04:14

    「じゃあみんな。わたし部屋に帰るから」
    「「「「持ってくな持ってくな」」」」

     チョッパーを抱えて立ち去ろうとするウタを引き留める一同。

    「あはははは!! 冗談冗談!! ごめんねチョッパー君、連れて行かないから」

     そう言ってウタはチョッパーをロビンに手渡し、そうして改めて一味を見渡す。

    「うんうん。ロボットに骨にチョッパー君、可愛い子に美人なお姉さんに魚人のおじさん……本当に色んな人が―――」

     ウタの視線がウソップで止まる。

    「……?」

     何故自分で視点が止まったのかわからないウソップ。ウタは少しばかり彼を観察するようにジッと見詰めると、ポンと何かに気付いたように手を叩く。

    「ああ、わかった! 君は“天狗”だね?」
    「おれも人間だよ!!?」

     まさかの妖怪扱い。いくらファンと言えど流石にこれは異議を申し立てるウソップだった。
     そんな風なやり取りをしていると、そこにルフィが来てウソップの肩を叩く。

    「なあ、ウタ。実はこいつヤソップの息子なんだ」

  • 86FILM N.G.22/09/09(金) 22:04:46

    「……え?」

     笑顔でルフィがそう教えると、ウタは目を丸くしてウソップを見る。

    「確かに、ちょっと名前が似てると思ったけど……」
    「狙撃の腕だって負けちゃいねえぞ!! うちの自慢の狙撃手だからな!!」
    「おいおいそう褒めんなよルフィ!! 照れるだろうが~!!」

     肩を組んで踊り出すルフィとウソップ。同年代の男同士だからこその仲の良さ、直ぐに盛り上がって騒がしくなるのが二人のいつもの姿である。
     そんな二人を見つつもどこか遠い目で、ウタは口元に手をやり誰にも聞こえないような声で独り言ちる。

    「……そういえば飽きるぐらい聞いたな~、ヤソップの子供話。わたしと年が近い、ルフィと同じくらいの息子が居るって……そっか、ウソップ君がそうだったんだ」

     僅かに浮かぶ微笑み。懐かしくも温かい過去の思い出。そして―――

    「―――赤髪海賊団の……シャンクスの、仲間」

     ズキリと、胸が痛んだ。

    「…………」

     ウタはその痛みから目を背けるように顔に笑みを貼り付けて声を上げる。

    「……さて、と!!! じゃあ早速城の中を案内しよっか!!! 城だから広いけど使ってない場所が殆どだから直ぐに案内終わっちゃうと思うけどね!!!」

     にこにこと。笑いながら。ウタはルフィとその仲間達に城の中を案内する。
     彼らの仲の良さにズキズキと痛みを発する自身の心から目を逸らして。

     ウタは見ない振りをする。達成すると決めた“目的”が、叶えると誓ったが“夢”が霞んで消えてしまはないように。

  • 87二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 22:26:11

    おっと、これはちょっとマズいのでは…?

  • 88二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 22:29:19

    こいつは一筋縄じゃいかねぇな

  • 89FILM N.G.22/09/09(金) 22:36:35

     ■■■

     その人は 世界へ たびだちました
     ふるさとの 子どもたちに 行ってきますと 言って

     その人は 行くさきざきで 歌をうたい おどり かなで
     おおくの 子どもたちを えがおにしました

    『えがおで 世界を 平和に するんだ』

     きのう いっしょに わらった子が しんでしまう
     そんな 世界を すくいたいから

     その人は あしたも あさっても そのつぎの日も
     であう 人を えがおに するのです

     ■■■

  • 90二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 23:13:45

    誰のことだ
    ゴードンさんか?

  • 91FILM N.G.22/09/09(金) 23:36:51

    やあ作者だよ。ハーメルンなる所で『ONEPIECE FILM N.G』の名前で本作を投稿してみたよ
    こっちでまとまった量が出来たら向こうに投稿するよ。特に内容に変化は無いからこっちで見るのでも十分だよ
    でもイッキ読みしやすいからハーメルンの方が読みやすいかもね。作者もよくわかってないけど

    それでは今後とも本作『ONEPIECE FILM N.G』をどうぞよろしくお願いします

  • 92二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 23:39:58

    >>91

    ハーメルン向きだよ間違いなく

  • 93二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 23:52:01

    >>91

    お気に入り登録しておいたぜ

    今後も楽しみにしてます

  • 94二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 23:53:45

    >>92

    スレチだが、pixiv向きの作品とハーメルン向きの作品の違いって何だ?

  • 95二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 23:55:38

    >>94

    体感的にだけど長編作品はpixivで追うのはキツく感じる

  • 96二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 23:56:48

    >>95

    あー…一気読みしにくいからかな…?ページ切り替えもしないといかんし

  • 97二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 23:57:32

    >>94

    pixivはどちらかというと短編向きかな

    後腐要素が強いやつもpixiv向きな印象

  • 98二次元好きの匿名さん22/09/10(土) 00:13:22

    幼馴染のルフィとの再会だけでなく、色んな人達との直に触れ合うことで生まれる葛藤や迷いがウタを救う鍵になるかな

  • 99二次元好きの匿名さん22/09/10(土) 00:34:20

    ウソップとはいっその事もっと話した方がいいのかもしれない
    ウソップとウタで自分を置いていった親への評価違うし

  • 100二次元好きの匿名さん22/09/10(土) 01:02:35

    >>97

    まじ? 俺ハーメルン使ったことないからわからねえや

    支部のUIでも何十万って作品普通に楽しめるんだけどスレ主の作品でハーメルンデビューするかぁ

  • 101二次元好きの匿名さん22/09/10(土) 01:04:20

    >>100

    ハーメルンの方はシステムがなろうに似てるからシンプルで読みやすいのよね。飾り文字もエフェクトもあるし、許諾番号さえ引っ張ってくれば音楽も使える

  • 102二次元好きの匿名さん22/09/10(土) 01:05:42

    >>100

    ハーメルン使ってると諸々の利便性の高さからpixivに戻れなくなる

  • 103二次元好きの匿名さん22/09/10(土) 01:11:17

    pixivは人気順無料にしてくれると助かるんだけどな
    ワンピースもそうだけどハーメルンに比べて検索がしにくい気がする

  • 104二次元好きの匿名さん22/09/10(土) 01:20:04

    ハーメルン色々できて便利だからなァ
    支部から移ってみたい

  • 105二次元好きの匿名さん22/09/10(土) 06:42:44

    保守

  • 106二次元好きの匿名さん22/09/10(土) 08:45:14

    スマホ版のハーメルン使いやすいから無限に時間潰してるわ…
    レイアウトがクソシンプルでわかりやすい

  • 107二次元好きの匿名さん22/09/10(土) 13:40:00

    保守

  • 108二次元好きの匿名さん22/09/10(土) 16:56:43

    お気に入り登録したぞ!
    6年ぶりくらいにハーメルンログインしたわ

  • 109二次元好きの匿名さん22/09/10(土) 19:22:28

    支援保守

  • 110FILM N.G.22/09/10(土) 22:28:04

    保守どうもです。書く時間があまり取れないので本当にスローペース更新だよ♡

    次の展開どうしよう……
     ↓
    一時間後のおれが何とかするからヨシ!
     ↓
    眠たい……
     ↓
    明日のおれが何とかするからヨシ!
     
    こんな感じで今日も始まります

  • 111FILM N.G.22/09/10(土) 22:41:51

     夕暮れ。エレジアの街が茜色に染まった頃、ルフィとその仲間達を歓迎するパーティーが開かれた。

    「ゥオッホン! それでは~、我らが船長ルフィとその幼馴染みであるプリンセス・ウタとの再会を祝いましてェ~~……カンパ~~イ!!!」
    「何でお前ェが仕切ってんだよ」

     杯を掲げてしれっと音頭を取るウソップにゾロは冷ややかな目を向けるが直ぐに目の前の酒に機嫌を良くする。そうしてテーブルを囲んだ全員が杯を掲げる。

    「「「「カンパーイ!!!」」」」

     キンと小気味良い音がそこかしこで打ち鳴らされる。

    「うまそ~!! いただきま~す!!!」

     ルフィは目をキラキラさせてテーブルの上に所狭しと並べられた料理に手を伸ばす。

    「おいルフィてめェ!! それはおれがウタちゃんの為に特別に作った料理だぞ!!?」
    「ブフォッ!!?」

     大皿ごと料理を抱え込もうとしたルフィに折檻するサンジ。それを見て笑う仲間達。
     そんないつも通りの感じで始まった歓迎会は賑やかで楽しい物となった。

    「……やあルフィ君。君のところのコックと比べるとかなり見劣りしてしまうがどうかね、私の料理は……」
    「ング? ……ゴックン! おう美味ェぞ!! おっさん料理も作れるんだな!!!」
    「そう言ってもらえると嬉しいな。頑張って来た甲斐があるというもの」

     ゴードンがルフィの隣りの席に座る。既に最初の位置は意味を成しておらず、皆が皆思い思いに席を移動して料理と会話を楽しんでいる。

    「…………」

     ルフィに話し掛けて来たゴードンであるが彼の視線はウタに向いている。ルフィも同じように目を向けて彼女が居る席を見る。

  • 112FILM N.G.22/09/10(土) 22:44:35

    「―――じゃあ君達もわたしのファンなんだ!! 嬉しいなぁ、ありがとう!!」
    「ほら! ウタちゃんの歌だってちゃ~んとこうして買ってるのよ」
    「へぇ~……じゃあサインでも書いちゃおうかな~、なんて!!」
    「サイン! 是非!」
    「売るなよ? ナミ」
    「誰が売るかァ!!!」
    「じゃあその金になってる目をやめろお前……」
    「ウ~タッちゅわ~~ん!!♡ 君の為のスペシャルパンケーキを作ってきたよ~ン!!♡」
    「わっ!! 可愛い♡ 美味しそ~!!♡」
    「おい酒もってこい色惚けコック」
    「お前は水でも飲んでろ飲んだくれ野郎!!」
    「ああン!? ウルセえぞこの気圧眉毛が!!!」

     ルフィの戦場のような食事風景もそうだがウタの周囲の賑やかさも負けていなかった。彼女はルフィの仲間達に囲まれて楽しそうにしていた。

    「……いつ振りだろうか、あんな風に大勢に囲まれて笑っているあの子を見るのは」
    「モグモグパクパク」
    「この12年、他者との交流の殆どが“あの電伝虫”だったから……」
    「ザクッザクッムシャムシャ」
    「こうして直接誰かと笑い合うウタを見られて、私は嬉しいんだ」
    「ゴクゴクゴク、プハァ~」
    「……聞いてるかい?」
    「ん? ああ……ぼちぼち?」
    「……そうか。どうぞ食事を楽しんでくれ」
    「ン~ババ(そーだな)」

     ゴードンの話しを聞いているのかいないのか。ルフィはひたすら料理を食べ続けていた。

  • 113二次元好きの匿名さん22/09/10(土) 22:51:49

    >>110

    俺達が保守するからヨシ!!

    そういえば本編ではルフィの仲間と良好な交流出来た時間短かったなぁ…

  • 114二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 00:05:21

    ほし

  • 115FILM N.G.22/09/11(日) 00:32:23

     ――――――


     何処を見ても笑顔が溢れる歓迎会。

    「あははははは!!!」

     ウタは笑う。

    「あー……」

     楽しい楽しい。ああなんて楽しいのだろう。

    「本当に、楽しいな~」

     12年前の、“あの日の夜”だってこんなに楽しかったのに。

    (思い出すのはいつだって―――)

     楽しければ楽しい程に、ウタの心に思い出されるのはあの光景。




    『―――どうしてェ!!?』

  • 116FILM N.G.22/09/11(日) 00:33:03

     炎に呑まれるエレジアの街。悲鳴さえ絶えてしまった死人の山。 

    『―――置いて行かないでッ!!?』

     少女を置き去りにして海の向こうへと消えていく海賊船。

    『―――何でだよォオおおおお!!? シャンクスゥーーッ!!?』

     どうして、どうして、どうして……どんな追い縋ろうと待ってはくれない愛しかった日々。誰も振り返ってはくれない。

     私は捨てられたのだ。

     その悲しみが、その怒りが、その恨みが。
     幼かった少女の心に絶望を刻んだ。
     獣の爪痕のような、赤い傷を。

  • 117FILM N.G.22/09/11(日) 00:33:40

     ――――――


    「―――ウタちゃん?」
    「え?」

     ウタはナミの声によって過去の記憶に飛んでいた意識が現実に引き戻された。

    「大丈夫? もしかして疲れちゃった? まあルフィに付き合ってたら体力がどんだけ有っても足りなくなるわよね~」
    「……あはは。そうかも。ちょっと眠たくなってきた気がする」

     ウタがそう言うと自然、この歓迎会もお開きの空気に変わっていった。旧交を温められるのは別に今日に限った話しでは無いのだ。時間ならまだまだ有る。
     歓迎会が終わって、各々が用意してもらった部屋に行く前だった。ルフィがウタに満面の笑顔で伝える。

    「じゃあなウタ!! また明日!!」

     そう、また明日。

    「……うん。また明日ね。ルフィ」

     風車村に居た時は幾度も聞いたであろうその言葉が、どうして今はこんなにも―――

    (……ライブ。ライブの日が来れば……私は……皆を“新時代”に)

     そうしてルフィ達がエレジアに来て最初の夜は更けていく。
     幼い少女の心を軋ませながら。

  • 118FILM N.G.22/09/11(日) 00:36:38

     ■■■


     えがおより 泣いている人が おおくなってきました
     それだけ 平和は とおいばしょに あるのでしょう

    『それでも わらって ほしいから』

     さあ 歌を うたいましょう
     ことばを しらずとも
     音を あわせて うたえば だいじょうぶ

     これは その人が つくった とくべつな歌
     世界の 平和を ねがって つくった たいせつな歌

     子どもたちの歌


     ■■■

  • 119二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 00:37:56

    毎度不穏なこの絵本はなんなんだ…

  • 120二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 00:55:52

    >>119

    トットムジカができるまでの話、とか?

  • 121二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 04:35:12

    おはほしゅ

  • 122二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 04:59:31

    伏字はトット ムジカかな

  • 123二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 10:00:14

    保守

  • 124二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 12:11:19

    トットムジカってラテン語とかドイツ語とかいろんな言語の意味で訳せるんだけど、要約するとムジカが「音楽」で、トットには「死せる」とか「たくさんの」とか「子供の」とかって意味があるんですよ。トットの訳し方で意味合いが変わってくるんだけど、子供たちのために歌われた歌って意味になるなら絵本は子供たちの歌が「死ぬまで」の物語になるのかなぁ…って。

  • 125二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 13:02:43

    >>124

    なんてことを…

  • 126二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 13:12:58

    >>124

    考察することで地獄度が上がってない?

  • 127二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 20:18:28

    保守

  • 128FILM N.G.22/09/11(日) 20:38:36

    すまぬ、今日は更新無理っぽいです
    明日の夕方から更新します。保守してくれて本当にありがとうございます

  • 129二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 20:42:39

    >>128

    🍲🐉🍶🍢ゆっくりやってくれ

  • 130二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 21:39:57

    保守は任せて欲しい事を教える

  • 131二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 23:52:14

    保守です

  • 132二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 02:19:10

    本誌は怒涛の展開だね

  • 133二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 08:57:37

    FILM HOSYU

  • 134二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 12:50:34

    保守

  • 135二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 17:19:36

    ほっす

  • 136FILM N.G.22/09/12(月) 19:26:21

    やあ。作者だよ
    ジャンプ本誌が面白すぎて震えてたよ。じゃあ書いたら上げていきます

  • 137FILM N.G.22/09/12(月) 19:27:09

     厨房の中で歓迎会の後始末をするサンジ。ゴードンは自分もそれを手伝いながらお礼をする。

    「ありがとう。あれほど素晴らしい料理を振る舞ってくれただけでなく後片付けまで……」
    「構わねえよ。包丁一本、皿の一枚に至るまでこだわってこそ一流の料理人(コック)だからな」

     サンジはニッと笑いながら「あんたの料理も中々のもんだったぜ」とゴードンが作ってくれた料理も参考に出来る部分が有ったと褒める。
     食卓から回収した食器類の洗浄を終わらせると次に生ゴミの処理に移る。可能な限り食材の廃棄を抑えるよう調理するサンジの手腕により、あれだけの人数での宴会だったというのに驚く程その量は少ない。手早くそれらをまとめると二人でゴミ捨て場に運ぶ。

    「普段は食材の買い出しはどうやって?」
    「定期便が有ってね。この島に思い入れを持つ人が巡回して来てくれている……有り難い話しだ」
    「へぇ~なるほど。……ん? それだと今回の宴会でかなり食材を使い込んじまったんじゃねえか? 次の便まで期間が空くならこっちの船の分を持ち出すが」
    「それは、助かるが……そちらに迷惑が」
    「気にすんな。腐らせるよりよっぽど良い。それに元はと言えばうちの船長がここに来たいって言ったから始まった話しだしな」

     ゴミ捨てが終わってから次にサンジはゴードンに案内され食材の保管庫に来た。

    「ここに有る物は自由に使ってもらって構わない」
    「ほぉ、城だけあってしっかりした貯蔵庫だ。ちょっとゆっくり見て行っても?」
    「大丈夫だとも。では私は他の用事が有るからここで」
    「ああ、お疲れさん」

     別れたサンジとゴードン。

    「さ~て……足の早そうな食材は、っと」

     自由に使って良いと言われれば腕を振るいたくなるのが一流の料理人というもの。サンジは貯蔵庫の食材を物色しながら滞在期間の献立を組み立てていく。

  • 138FILM N.G.22/09/12(月) 19:54:59

    「……ん? やけに厳重に封をした箱だな」

     それは一抱え程の大きさをした箱。貯蔵庫の奥深くにひっそりと隠すように置かれたそれをサンジは手に取り、ゴードンから手渡されていた目録に目を通す。だがそれを見ても該当しそうな物品は無かった。

    「何だ? ウタちゃんが個人的に買ったもんか?」

     プライバシーという物も有るが貯蔵庫内での食材管理を考えれば中を確認しないわけにもいかない。サンジは箱の封を外して蓋を開ける。

    「中身は……チョコレートやドライフルーツ、菓子類か。やっぱりウタちゃんのかねェ」

     箱の中身は甘味だった。今回の歓迎会で料理を作るにあたりサンジはゴードンからウタの好みを聞いてパンケーキを用意したから彼女が甘い物が好きなのは知っている。だからこれもそうなのだろうと再び蓋を閉めて―――

    「……箱の大きさのわりに浅くねえか?」

     サンジは箱の外観と容量が合わないことに不審な目を向ける。
     外板を軽く叩いて音を反響させる。

    「二重底?」

     菓子類の底、板で仕切られたさらに下に、何かが在る。

  • 139二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 19:57:17

    まさか…

  • 140FILM N.G.22/09/12(月) 19:59:08

     サンジは眉を顰めて僅かに逡巡する。

    「……レディの秘密を勝手に曝くのは趣味じゃ無いんだが……」

     甘い香りの下に隠されたそれを確かめる為に、サンジは箱の中身を空けて底板に手を伸ばす。意に反することをしてまで彼がそうしたのは嫌な予感がしたからだ。料理人として嗅覚が働いたのか、サンジは己の直感に従い板を外した。
     そこに有った物とは―――

    「おいおい……マジかよ、これは」

     “それ”は、ここに有ることがあまりに不自然であり異常だった。サンジは顔色を悪くしながら手に取ってそれを検分する。

    「……まさかそんな……だが何で?」

     サンジは貯蔵庫で一人、これから自分はどう行動すべきか考えるのであった。

  • 141二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 20:32:34

    ウタが隠し持っていてサンジが動揺しそうな食べ物とか一つしか思い浮かばないんだが…

  • 142二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 20:33:42

    よくやった!中身を覗いて正解だった

  • 143二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 20:40:34

    ヨシッ

  • 144二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 20:56:45

    ナイスだサンジよく気づいた!!

  • 145二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 20:59:55

    サンジなら捨てるんじゃなく中身をこっそりすり替えておくような策士みたいなことしそう

  • 146二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 21:00:30

    >>145

    レディをだますなんてサンジがするかね?

  • 147二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 21:03:39

    >>146

    間違えて美味しいきのこだと勘違いしてるかもな、すり替えとこう。みたいな気遣いとか?

  • 148二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 22:38:03

    やっぱネズキノコかなー…

  • 149二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 22:44:15

    捨てとけそんなもん!何であるんだ!

  • 150二次元好きの匿名さん22/09/13(火) 00:18:32

    ほしゅ

  • 151二次元好きの匿名さん22/09/13(火) 01:56:44

    ナイスだサンジ……!!

  • 152二次元好きの匿名さん22/09/13(火) 06:50:27

    隠し方がオクスリなのよ…

  • 153二次元好きの匿名さん22/09/13(火) 11:30:21

    保守

  • 154二次元好きの匿名さん22/09/13(火) 12:14:13

    この時点ではちょっと無理してもライブで歌いきるためのお薬かもしれないし…毒性まできちんと調べてないとか、甘めに見てるとか

  • 155二次元好きの匿名さん22/09/13(火) 17:04:59

    保守

  • 156二次元好きの匿名さん22/09/13(火) 17:14:05

    サンジファインプレー!

  • 157二次元好きの匿名さん22/09/13(火) 18:25:14

    保守

  • 158FILM N.G.22/09/13(火) 18:29:44

     ウタは作業部屋のテーブルに着き、真新しい壁の窓から見える月を見上げながら歌を口ずさむ。


    【Ado】世界のつづき

    「―――どうして、あの日遊んだ―――」


     机の上に置いたランプが照らす譜面。まだ音符が書き入れられていない紙に彼女は指を這わせる。そうして歌いながら思い出すのは今日の出来事。その全てに在った自分自身の笑顔。


    「―――どうして、すぎる季節に―――」


     民衆の期待、ファンなら誰もが知る『海賊嫌いのウタ』。しかし今日の姿からはそれを連想することは難しかっただろう。

     それが辛かった。まるで彼らを裏切っているようで胸が痛かった。


    「―――またおんなじ歌を―――」


     だからウタは歌う。

     自分が歩んで来た人生には常に歌が在った。どんな気持ちであろうと歌えば落ち着くことが出来た。ウタにとって歌うことは生きていることと同じなのだ。

  • 159FILM N.G.22/09/13(火) 18:30:19

     だから彼女は歌をのこす。

    「―――信じられる?―――」

     どれだけ辛くとも、揺るがぬ決意を抱く為に。

    「―――海の広さを―――」

     ウタには在るのだ。“新時代”の夢が。それはもう一人だけの願いじゃない。世界中に居る大勢のファンが彼女に托した想いなのだ。

    「―――信じられる?―――」

     揺らめく火の赤色に懐かしい影が映る。
     しかしどれだけ会いたい人が居ようとも。その声、その姿、その笑顔で、自分の手を握って歩んで欲しくとも。
     もう振り返ってはいけないのだ。

    「―――追い風の―――」

     過去に戻ることなど……出来はしないのだから。

    「―――いざなう空を―――」

     ランプの火を消す。室内に夜が流れ込み、思い出の影は押し流される。
     椅子から立ち上がり、テーブルから離れる際にウタは白紙の譜面にペンを走らせる。

    「そう。夢の続きで……皆と生きるんだ」

     描く“新時代のマーク”に思いを乗せて、ウタは部屋から立ち去るのであった。

  • 160二次元好きの匿名さん22/09/13(火) 20:09:14

    来たか

  • 161二次元好きの匿名さん22/09/13(火) 20:54:01

    始まったな……

  • 162二次元好きの匿名さん22/09/13(火) 21:18:40

    ハートを押すの忘れるぐらい一気読みしちゃった
    これから全部押してこよ〜

  • 163FILM N.G.22/09/13(火) 22:12:02

     ―――新世界“カライバリ島”。
     その島のサーカス劇場のような外観をした奇抜な建物には今最も世間を賑わせていると言っても過言では無い男が居た。

    「やべェやべェやべェ!!? どうするどうする考えろおれェーーー!!?」

     “四皇”・“千両道化のバギー”。懸賞金31億8900万ベリー。
     元海賊派遣組織“バギーズデリバリー”、現“CROSS(クロス)GUILD(ギルド)”の座長にして社長でもあるバギーは今とてつもないピンチに陥っていた。

    「とにかくてめェら!! 電伝虫が鳴っても出るんじゃねえぞ!!? わかったかァ!!?」
    「「へーい」」

     バギーは部屋に居る幹部、モージ、カバジ、アルビダなどのグランドライン活動初期から行動を共にしている者達にそう指示する。しかしバギーの焦りようとは裏腹に彼らは特に危機感を抱いていない。

    「まあヤバイのは座長だけだしな」「最悪でも上の首がすげ変わるだけだし」「アタシらに影響は無いからね」

     完全に他人事だった。

    「派手にふざけんじゃねェぞてめェら~~!!? おれ様の命がかかってんだぞォ!!?」

     バギーは薄情な幹部達に「くらァ~!!?」と罵倒して額に脂汗を滲ませつつ自身の置かれた現状を振り返る。

    「良いか!? この“クロスギルド”は生まれたばかりの組織!!! それなのにここに属する海賊がいきなり負けておめおめと逃げ帰ってきただとォ~~!!? 出鼻を挫かれるとはこのこと―――」

     それはヌイセマカが率いたアンダードッグ海賊団の一件。

    「って誰の『デカ鼻がくどい』だこのすっとこどっこい!!?」
    「誰も言ってねえ」「今日も座長は絶好調だな」

     バギーはこの“クロスギルド”が擁する海賊団が返り討ちにあった事件によって窮地に立たされていた……これから立ってしまうと言い換えても良い。

  • 164FILM N.G.22/09/13(火) 23:04:29

    「ジリリリリリリリ!!!」

     その時だった。部屋の電伝虫が着信を知らせてきたのは。

    「ひぇ」

     バギーの顔が絶望に染まる。

    「い、良いか!!? 出るなよ!!? 絶対に出るんじゃねえぞ!!?」

     必死に電伝虫に出るなと言い聞かせるバギー。それだけ電伝虫の向こうに居るであろう人物に恐怖を抱いているのだ。

    「これは死神からの死の宣告と同じ!!! 出ればおれ様の命は―――」
    「ガルルル」

     ガチャ。電伝虫の受話器をライオンのリッチーが取った。

    「……?」
    「ガル?」

     飼い主(モージ)共々食っちゃ寝生活が祟って肥満ライオンと化していたリッチーだが、逆にお行儀は良くなったのか電伝虫が鳴れば受話器を取るというお利口な行動を取れるようになっていた。
     それをボスであるバギーが喜んでくれるかは別として。

    「てめェえええ~~~~ッ!!? 派手になにしてくれてんだコラァあああああああああ!!?」

     絶叫するバギー。しかし状況が変わるわけも無く。受話器の向こうから発信.者である男の低い声が響いてくる。

    『……よォ、バギー。随分と楽しそうじゃねェか』

     受話器の向こうの男は煙草を吸っているらしく言葉の合間に喫する様子が聞き取れる。

  • 165二次元好きの匿名さん22/09/14(水) 00:37:30

    ワニさん…

  • 166二次元好きの匿名さん22/09/14(水) 01:20:35

    バギー幹部達の安定のドライさすき

  • 167二次元好きの匿名さん22/09/14(水) 04:32:23

    ほっす

  • 168二次元好きの匿名さん22/09/14(水) 07:19:59

    そうか かませ犬はここの所属だったか

  • 169二次元好きの匿名さん22/09/14(水) 12:27:10

    ほっす

  • 170二次元好きの匿名さん22/09/14(水) 17:23:03

    地味に保守する

  • 171二次元好きの匿名さん22/09/14(水) 21:05:48

    保守

  • 172FILM N.G.22/09/14(水) 22:38:07

    保守感謝です。書けた分をまた上げていきますね
    頑張れバギー

  • 173二次元好きの匿名さん22/09/14(水) 22:38:42

    やったぜ

  • 174FILM N.G.22/09/14(水) 22:40:11

     声や仕草以前に誰から電伝虫が来るか予想していたバギーは大量の冷や汗を掻いた硬い笑顔で応答する。

    「い、いやぁ~……でへへ♡ “クロちゃん”もお元気そうで~……♡」
    『聞いたぞ。うちの奴らが情けねえ様を晒したらしいな』
    「うっ!!?」

     はぐらかそうとしても無駄だった。電伝虫の向こうからはコツコツとテーブルを鉤爪で叩く音が聞こえる。それだけでバギーはもう泣きながら逃げ出したかったが出来る訳も無く。
     男、サー・クロコダイルは受話器越しですら背筋を冷たくする声でバギーに告げる。

    『わかっているとは思うが……おれと“鷹の目”まで舐められるような、ふざけた対応なんか……しねえよなァ? ……クロスギルドの社長さんよォ』

     “砂漠の王”サー・クロコダイル。懸賞金19億6500万ベリー。

    「とっ!! 当然じゃねェかもう!!? このおれがこの組織のボスらしくビシッと決めてやるってんだ!!? ギャハハハハハハハハ!!?」

     泣いた。バギーはもう泣いた。電伝虫が繋がった時点でもう逃げることは許されなくなったのだから。そもそもクロスギルドの長という立場もバギーが望んで得た立場では無いのだ。
     体面上ではあるが配下扱いになったクロコダイルと“鷹の目のミホーク”から不満と怒りを向けられ、それを信じてる部下からは過大な信奉、海軍からは世界を脅かす脅威と見なされ四皇扱い。

     確かにバギーは“七武海”や“四皇”などの巨大な名声を持つ海賊に成りたいと思っていた。だが彼が望んだそれはこんな常に命の危機を感じる胃が痛くなる毎日では無かったはずだ。

    (違う……おれが望んだ“四皇バギー”はもっと、こう……キラびやかな存在だったのに)

     妄想世界のバギーはそれはもう偉大な海賊だった。それこそ憧れの船長でもあった“海賊王”ゴールド・ロジャーとさえ肩を並べるような偉大な海賊。
     ―――ただ妄想は妄想でしか無く、現実は非情である。

    『期待してるぜ社長? 次に顔を合わせた時に鰐用の“ドライフード”が増えねェことを祈ってる』
    「おうとも!!? 大船に乗った気で吉報を待っててくれやァ!!?」

     ブツッと通話が切れる。声は聞こえなくなったがバギーは自分の首にあの恐ろしい右手が掛けられている光景が目に浮かんだ。それは気の所為であるが、しかしこれからの自分の行動次第では現実に成り得る“死神の鎌”だった。

  • 175FILM N.G.22/09/14(水) 22:42:52

    「―――ぅううおおおおおおおおお!!? 聞こえるか野郎共ォおおおおおおお!!?」

     拠点のテラスへ出たバギー。彼はこの街に居る配下へ宣言する。

    「おれ様はこれから“音楽の都エレジア”へ向かう!!! 理由は言わなくてもわかってるな!!?」

     どよめく配下。その目には期待の色が有り、バギーはそれを見て余計に自分は逃げられないのだと突き付けられる。

    「本来ならおれ様が出ることは無ェが……今回は話しが別だァー!!? 相手が相手ッ!!! “クロスギルド”の……おれ様のかわいいかわいい部下がそいつらにやられたと有っちゃァ!!! このおれ様が直々にケジメ付けに行かねェわけにはいかねえだろォ!!?」

     バギーが言葉を口にする度に部下達の熱気が上がっていく。

    「相手は“四皇”麦わらのルフィ!!! 相手にとって不足無し!!!」

     バギーはもうヤケクソだった。

    「行くぜてめェらァあああああああ!!? 派手に出航だァああああああああ!!?」
    「「「「ぅおおおお!!! キャプテン・バギー!!! キャプテン・バギー!!! おれ達の座長!!!」」」」

     もうどうにでもな~れ。バギーは半分諦めの境地でエレジアに向かうことに決めたのであった。
     この一件が終わって彼の命が無事なのかどうかは、誰にもわからない。

  • 176二次元好きの匿名さん22/09/14(水) 23:06:01

    お労しやバギ上…

  • 177二次元好きの匿名さん22/09/14(水) 23:07:08

    バギーもシナリオに本格的に関わるのか

  • 178二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 01:43:35

    派手にライブを盛り上げてほしいですね・・・4皇の三つが一堂に会するライブ・・・海軍大丈夫?逆に手を出せなくない…?

  • 179二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 01:49:08

    うおバギーも本格参戦するのか

    楽し未

  • 180二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 02:06:15

    これにはジャーナリストクソ鳥もニッコリ

  • 181二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 07:07:01

    バギーもエレジア来るのか ヤケクソ感ある語尾の「!?」が痛ましい…
    これどう影響してくるんだろう

  • 182二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 12:15:43

    ほっす

  • 183二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 18:33:46

    保守

  • 184二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 18:36:39

    そろそろ次スレか
    マジで語り継がれる名SSだなこりゃ

  • 185二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 22:25:28

    保守

  • 186二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 22:30:09

    素晴らしすぎんよ~

  • 187FILM N.G.22/09/15(木) 23:20:22

     ルフィ達がエレジアに辿り着いてから一週間経っていた。それまでの彼らの様子はと言えば――― 

    「―――ライブ会場を整備したい?」
    「アゥ!!! チラッと見たがあんまり良い状態じゃ無かったからなァ! 折角“良い席”用意してくれたんだ、おれがスーパー修繕してやるよ!!!」

     ウタは幼馴染みの誼(よしみ)でルフィ達に“偶然空けていた”枡席(ますせき)、センターステージを近くで見られる特等席を用意した。それに喜んだ仲間内のファンはお返しに何か出来ないかを考え各々のやり方でライブ開催までの準備を手伝うことにしたのだ。これがエレジアに着いてから二日目の話し。

    「何でおれまで……まあ筋トレだと思えば良いか」
    「ワハハハハ! ここまで大規模な祭りは滅多にないから楽しみじゃな!」

     フランキーがメインステージを改装するのに使う材料などをゾロを初めとしたジンベエなどの力自慢達がどんどん運ぶ。

    「人がいっぱい集まるなら怪我する人も出るだろうし、おれ救護場所考えとくよ」
    「チョッパー、おれも手伝う。少し相談したいことも有るしな」

     チョッパーはライブ当日の医療体制の見直し、それに付き合うサンジは並行して突発的に発生する傷病者用の栄養剤などを作れないか相談。その他色々。

     他の者達も忙しく動き回ることとなった。

    「―――……何か色々とありがとうね? 色々手伝ってもらって」

     ウタはルフィにそう言った。ゾロに負けじと巨大な石材を運んでいたルフィは「しししし!!」と笑う。

    「気にすんな! おれ達がやりたくてやってることだしな!」

  • 188FILM N.G.22/09/15(木) 23:22:25

    「そう? でも本当に感謝してるんだよ、わたし。だって皆のお陰でもっと素敵なライブに出来そうだから」

     ウタはどんどん綺麗に整えられてくステージを感慨深げに見詰める。そうしていると先程の石材を運び終えたルフィが別の石材を担いでもう一往復してくる。

    「ライブかァ……初めて見るからな~。楽しみだなウタ!!」
    「うん。その言い方だと一緒に観るみたいな感じだけど、ライブの主役わたしだからね?」
    「まあ良いじゃねェか細けェことは」
    「全然細かくない!!? ……あと石材運ぶの妙に様になってるのは何故?」
    「修行の成果だな!!」
    「何の修行!!?」

     修行というか強制労働というか……ワノ国での経験が活きていたルフィであった。

     別の場所ではウソップやブルック達がゴードンから話しを聞いて感心していた。

    「へぇ~~! ライブグッズの手配なんかもプリンセス・ウタが!? スッゲ~」
    「彼女の多才さには舌を巻きますね……私!! 舌無いんですけどォ~~!!」

     ライブ当日に会場で販売する予定のグッズなどの準備もウタ自身が主導でしていたのだと聞いたのだから驚きである。元々ウタのファンであったウソップは感動して手伝いにもより熱が入るという物。

    「ああ、ウタは本当にすごい子なんだ。だがこうしてライブがより良い物に成ろうとしているのは確かに君達のお陰でもある。私からも感謝を伝えよう」

     ゴードンは本来なら無関係だったルフィ達がここまで手を貸してくれていることに心から感謝して頭を下げる。

    「いや~おれらもライブ楽しみにしてたからさ~。あんな特等席用意してくれたし何か力になりてェって思うわけよ!!」

     ウソップは照れて鼻の下を擦りながら自分の作業を続ける。ちなみにウソップがしているのは『UTAシンボルマーク』を大きな無地の帆に描くことで、ブルックはウタの楽曲を彼女と相談した上で児童向けに簡略化した楽譜を作成していた。どちらも数量限定抽選形式でファンに提供する予定の物である。
     そうして熱心に手伝ってくれる彼らにゴードンは微笑む。

  • 189FILM N.G.22/09/15(木) 23:43:38

    「……本当にありがとう、君達なら……あの子を……」

     彼の目に何が見えたのか。ただゴードンはルフィやその仲間達に囲まれ楽しそうに笑うウタをただ静かに見守るのであった。




     ―――そうして彼らは一週間という時間を過ごした。
     それは長くもあり短くもあった。毎日が慌ただしく気が付けばこれだけの日数が経っていたのだ。時間の流れとはかくも早い物。

    「……本当に楽しいなー。ルフィ達が来てから」

     ウタはこれまでの一週間を振り返り、そのどれもが笑顔無しには思い出せない楽しく素敵な物となっていた。

    「会えて良かった」

     左手のアームカバーに描かれた誓いの印を撫でる。

  • 190FILM N.G.22/09/15(木) 23:45:09

     良かったと言ったウタ。しかしその彼女の表情には―――

    「……でもね?」

     笑顔は無く。

  • 191FILM N.G.22/09/15(木) 23:45:39

    「私の“邪魔”をするのは」

     城の貯蔵庫、菓子類を収めていた箱をガンッと蹴り飛ばしてウタは鋭い視線を彼方へ向ける。その視線の先に居るのはいったい誰なのか。

  • 192FILM N.G.22/09/15(木) 23:46:01

    「皆と“新世界”を迎える邪魔をするのは」

     引っ繰り返る箱。外れる二重底。そこに隠されていた筈の“中身”が空っぽになっていたそれを一瞥もせずウタは冷たく告げる。

  • 193FILM N.G.22/09/15(木) 23:46:35

    「―――ゆるさない」

     その言葉は誰にも届かず、されど一人の少女の覚悟を世界に知らしめる物であった。

  • 194二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 23:47:11

    ひょぇっ…バレーテラ…

  • 195二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 23:51:12

    あーここから対立が始まるのね

  • 196二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 23:54:11

    これは…どうなるんじゃ?、

    そして次スレもどうなるんじゃ…?

  • 197二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 23:56:13

    ワクワクが止まらない

  • 198二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 23:57:12

    流石のサンジもこっそり処分したんだな

  • 199二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 00:02:09

    バギー絡んでくるのか、ワクワクしてきた

  • 200FILM N.G.22/09/16(金) 00:03:25

オススメ

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