ルフィ「おいウタ!!」 ウタ「え!? ルフィ!?」 part4

  • 1FILM N.G.22/09/16(金) 00:01:45
  • 2二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 00:02:23

    うおおお保守

  • 3二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 00:02:38

    立て乙!

  • 4二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 00:03:28

    立て乙埋め保守

  • 5二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 00:03:39

    サブタイトル不穏!

  • 6二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 00:03:55


    これは…いよいよあの赤鼻の出番じゃな?

  • 7二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 00:06:23

    サブタイトルがめっちゃ不穏なんじゃが!?

  • 8二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 00:07:16

    サンジが久々に策士としての活躍見せてくれそうなのも楽しみ

  • 9二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 00:10:17

    10まで梅

  • 10二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 00:11:14

    いよいよここからが本番だな

  • 11FILM N.G.22/09/16(金) 00:11:37

     ■■■

     おこられ バカにされ きずついても
     その人は がんばりました

    『子どもたちが わらえる あしたの ために』

     がんばって がんばって がんばって
     きずついて きずついて きずついて
     うしなって うしなって うしなって

     それでも 世界を 平和にする その日まで
     その人は がんばると 心に きめていたのです

     ■■■

  • 12二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 00:14:52

    出たわね謎の絵本

  • 13二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 05:10:14

    ほっ

  • 14二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 07:17:48

    とうとう対立してしまうのか…

  • 15FILM N.G.22/09/16(金) 09:30:06

     ライブの準備は滞りなく進んだ。それこそウタが当初予定した会場の状態より余程素晴らしい仕上がりに近付いている。


    「―――この風は―――」


    【Ado】風のゆくえ(ウタ from ONE PIECE FILM RED)

    月がよく見える。

     ウタは城の屋根に上って一人夜空に向かって歌う。月光に照らされ星々だけが観客の舞台は静謐な空気に包まれ、彼女の姿を幻想的に輝かせる。


    「―――問いかけても―――」


     木々のざわめき水のせせらぎ、そして歌声だけが夜に沈んだエレジアに響き渡る。

     その音はただただ優しく空気を撫でるように震わせる。


    「―――見つけたいよ―――」


     全てを夢の中へ誘うような、優しい歌。

     彼女一人だけの舞台。


    「―――ただひとつの―――」

  • 16FILM N.G.22/09/16(金) 09:30:30

     ―――その筈だった場所に誰かがやって来る。
     勢いよく伸びた腕が屋根の向こうから飛び出しその手が縁を掴む。

    「よっと!」
    「…………」

     伸びた腕が縮む反動で屋根の上へと躍り出たルフィ。歌を中断したウタは黙ってルフィを見る。これまでなら幼馴染みの登場に笑顔の一つでも返していた彼女だが、今その顔に可憐な花を咲かせる様子は無い。

    「……ルフィ」
    「よォ、ウタ! 今の懐かしいなァ! 昔よく歌ってくれたやつだろ」

     ルフィはウタの冷たさの理由には触れず彼女の傍に行くと隣りに座り込む。

  • 17FILM N.G.22/09/16(金) 09:32:25

    次は夜に更新、出来たら良いなぁ……
    というワケでここまで保守してくれたり読んでくれたりありがとうございました。この先も頑張って書いていきたいと思います

  • 18二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 09:40:31

    朝からサンキューイッチ

  • 19二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 09:43:33

    とても面白いです。

  • 20二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 11:55:08

    語り継がれるべき素晴らしいssだ・・願わくばどんな形でも最後まで見られますように

  • 21二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 11:57:57

    最高すぎるな

  • 22二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 17:51:16

    願わくばギスる前に照らしてやってくれ
    太陽の神よ

  • 23二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 21:27:40

    保守

  • 24二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 23:38:58

    ほっす

  • 25二次元好きの匿名さん22/09/17(土) 00:06:57

    ほしゅ

  • 26FILM N.G.22/09/17(土) 00:58:22

    「シャンクスがうちの歌姫のステージだって、それでみんなでお前の歌聞いて。楽しかったなァ」
    「…………」
    「なあ、ウタ」

     ルフィはエレジアの街を、廃墟を眺めながら静かに尋ねる。

    「あの日、シャンクス達と……何があった?」
    「…………」

     直ぐに答えは返ってこなかった。しかしルフィは構わず続ける。

    「あの日、風車村へ来たシャンクスの船に、お前は居なかった」



     12年前。
     夕暮れに染まる風車村、そこに赤髪海賊団の船が停まる。何度目かになるシャンクス達の来訪ですっかり彼らに懐いていたルフィは喜びを全身に漲らせて船着き場に行く。

    『―――おかえり!! 今回はどんな冒険してきたんだ!?』

     船を下りてくる海賊達。もう全員の顔を覚えていたルフィは彼らに冒険の話しをねだる。しかしどれだけルフィが「なあ聞かせてくれよォ!」と言っても暗い顔で俯くばかり。
     胸騒ぎがした。しかしそれを認めるにはルフィはまだ幼く、その持て余した感情を怒りや不機嫌でしか表せない。ただ拗ねたように大人達にそっぽを向く。

  • 27FILM N.G.22/09/17(土) 00:59:10

    『……良いよ!! ウタに聞くから!!』

     だからルフィは年の近いウタを探す。最近では次はどんな勝負をしようか、どんな遊びをしようか、なんてことばかり考えている。一人で居ることが嫌いなルフィにとって彼女の存在は本当に貴重で掛け替えが無かった。

    『ウタ―!! ウタ―!!』

     大事な友達だった。

    『どこだよウタ―!! また冒険の自慢話しきいてやるよ!! ウタ―!!』

     だから探した。探して探して……最後に船から下りてきたシャンクスを見て、胸の奥が鉛でも詰め込まれたかのように重くなった。

    『シャンクス! ウタは? ウタは……どこに行ったの?』
    『…………』

     シャンクスは快活に笑う男だった。それなのに、その時の彼は沈痛な面持ちで口を閉ざしていた。まるで―――

    『……ウソだろ? もしかして……ウタに、なんかあったのか?』

     大切な何かを失ったかのように。
     ルフィはシャンクス達がそれだけ“深い傷”を負って帰ってきたのだと幼心に感じ取った。声が震え目の端からは熱い涙が溢れてくる。

    『……心配するなルフィ』

  • 28FILM N.G.22/09/17(土) 01:00:06

     それまで黙り込んでいたシャンクスだったが、ルフィのそんな姿を見てようやくその顔に笑顔を浮かべた。子供を安心させようと浮かべた笑顔、だがそれが取り繕った物であることは直ぐにわかった。ルフィは自分の頭を撫でるシャンクスの手が僅かに震えていたのを覚えている。

    『ウタはな、歌手に成るために船を下りた。ただそれだけだ』

     憧れの男が見せた強がり。それがルフィにとってはショックだった。

    『―――どうしてだよ!!?』

     撫でる手を強かに打って払う。

    『あいつ!! シャンクスのこと大好きだったんだぞ!!』

     思い出すウタはいつだって自分の父親を誇らしげに語っていた。少し照れ臭そうに、だけどそれ以上に嬉しそうに。ルフィはそんな彼女から冒険の話しを聞くのが好きだった。

    『なのに船を下りるわけない!!! なんかあったんだろ!!?』

     彼女はいつだって言っていた。“わたしは赤髪海賊団の音楽家ウタ”だと。本当に嬉しそうに、誇らしそうに言っていたのだ。

    『答えろよシャンクスーッ!!!』

     だからルフィは本当の答えを求めた。ウタの行方を。皆がどうして心に傷を負ってしまったのかを。

    『…………』

     それでも、シャンクスは教えてはくれなかった。その心の内に隠した本音を。
     どれだけルフィが泣き喚いても。一言も、彼はただ優しく微笑むだけで。

     それが幼少期のルフィとウタとの別れだった。

  • 29FILM N.G.22/09/17(土) 01:00:31

    「―――結局、シャンクスの口からは何も聞けなかった。“歌手に成るため”だって、それだけしか。まあおれがもう聞かねェって言ったんだけど」

     ルフィはウタの顔を見ない。ただ伝えておきたかった。

    「皆、すっげー暗くてさ~。おれのことも無視すんの」

     赤髪海賊団にとってどれだけウタという少女が大きな存在だったのか。

    「そんだけ皆お前のこと大す―――」

     ちゃんと知って欲しかったのだ。

    「やめてッ!!!」

     だがルフィのその言葉は彼女の激しい拒絶の声によって遮られた。

  • 30FILM N.G.22/09/17(土) 01:02:23

    次は明日の晩……じゃなくて今日の晩に更新です
    ここまで保守と読んでくれてありがとうございます

  • 31二次元好きの匿名さん22/09/17(土) 01:05:22


    ここから先の展開考えると胃が痛いでござる

  • 32二次元好きの匿名さん22/09/17(土) 04:50:28

    頑張れルフィ、お前が照らしてやってくれ…

  • 33二次元好きの匿名さん22/09/17(土) 07:02:15

    ハッピーエンドで終わってくれ…

  • 34二次元好きの匿名さん22/09/17(土) 07:14:21

    頼むぞルフィ…

  • 35二次元好きの匿名さん22/09/17(土) 08:47:47

    保守

  • 36二次元好きの匿名さん22/09/17(土) 09:05:36

    もうこの頃には映像でんでん虫かトーンダイヤルかで真相を知っちゃってる時期だよな…んでも海賊嫌いを演じててで、いや本当に辛いな。マジでルフィさん照らしてあげて

  • 37二次元好きの匿名さん22/09/17(土) 13:07:59

    救われてくれぇ

  • 38二次元好きの匿名さん22/09/17(土) 13:39:28

    一気に読んだ
    素晴らしい…続きを楽しみにしています

  • 39二次元好きの匿名さん22/09/17(土) 17:18:19

    保守……!!

  • 40二次元好きの匿名さん22/09/17(土) 18:02:22

    ほしゅ

  • 41二次元好きの匿名さん22/09/17(土) 18:35:42

    すごいな、マジ凄い
    大団円を願ってるけどこの作者さんの腕前ならビターでもバッドでも全然いい、超期待

  • 42二次元好きの匿名さん22/09/17(土) 19:10:34

    捕手

  • 43二次元好きの匿名さん22/09/17(土) 21:11:36

    これは映画と違い明確にワノ国以降の時系列だ
    太陽の神が本当の意味でウタを照らしてくれることを祈ろう

  • 44二次元好きの匿名さん22/09/17(土) 23:03:09

    ほっす

  • 45FILM N.G.22/09/17(土) 23:20:11

     見上げたウタの顔には隠しきれない怒りが滲み、瞳は射貫くように鋭い光を宿している。

    「あの日ッ!!! シャンクスはわたしを捨てた!!!」

     血を吐くような激情で叫ぶウタ。

    「それはもうどうやったって変えられない!!! 今さらあいつらがわたしをどう思ってようが関係無い!!!」

     ルフィに向かって怒鳴りながら、ふらりと蹌踉(よろ)けるように後退るウタ。
     二人の間に距離が空く。ルフィは立ち上がり、左手で顔を押さえるウタと向かい合う。指の間から覗く彼女の眼光は先よりも鋭さを増し―――

    「ルフィ」

     かつて幼馴染みだった少女は自らが引いた一線を踏み越えてきた少年にその目を向ける。

    「アナタも……わたしの“邪魔”をするの? じゃあ―――」

     敵意を孕んだその目を。

    「君は“悪い海賊”だ」

     その言葉が始まりだった。
     ルフィの幼馴染みだった少女では無い。今の彼女はこの世界が望んだ“救世主”。

    「悪い海賊は……やっつけないと」
    「ウタ、お前」

     ルフィが一歩近付く―――その前に、ウタは指揮者のように掌を頭上へと勢いよく掲げる。

  • 46FILM N.G.22/09/17(土) 23:20:38

    「ッ!!!」

     エレジアの街が輝いた。
     七色の光の柱が爆発するように立ち昇り夜の闇を引き裂く。

    「なんだ!!?」

     突如発生した眩しい光りを腕で遮りながらルフィは周囲を困惑した様子で見渡す。
     ギラギラと輝く七色の光柱に囲まれた城の屋上で、ウタはまるで役者然とした素振りで朗々と告げる。

    「ライブの日……“約束の日”まであと三日。本当は一緒にその日を迎えて欲しかった―――けど、もう駄目」

     光を全身で浴びるように両腕を大きく広げるウタ。

    「わたしは……“歌姫ウタ”は悪い海賊を決して許さない」

     彼女の瞳は周囲の光よりもなお強く輝く。

    「“新時代”を迎える前に、今日ここで……始末してあげる」
    「…………」

     真っ直ぐ。ただ真っ直ぐにルフィは向かい合う少女を見る。強く握り締めた拳に何が込められているのか。

     今ここに、譲れぬ思いを掛けた両者のぶつかり合いが始まる。

  • 47二次元好きの匿名さん22/09/17(土) 23:22:19

    うぇ!?

  • 48二次元好きの匿名さん22/09/17(土) 23:23:50

    いつの間にウタワールドに取り込まれたのか

  • 49二次元好きの匿名さん22/09/17(土) 23:23:58

    そっか、会ったとき歌ってた…

  • 50二次元好きの匿名さん22/09/17(土) 23:42:50

    この激情見るとまさかもうキノコ食ってる…?

  • 51二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 00:58:56

    三日前からこの様子じゃとてもじゃないがライブの日までに死ぬぞ…?
    いや、ルフィを歩かせてどっかに閉じ込めておけばいいのか…?

  • 52二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 01:18:37

    このレスは削除されています

  • 53二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 01:21:41

    >>15

    >>16

    の時点でもう取り込まれてたか……?

  • 54二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 05:29:42

    好きから嫌い、嫌いから好きに転じる時とかは更に愛憎深くなるって言うけどウタは嫌いになってからの真実を知って好きだって気づいてるからな
    頭ん中ぐちゃぐちゃで、でも罪悪感から自分にできる唯一の贖罪と信じてる計画を実行に移そうとしてるんだよな

  • 55二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 09:08:58

    大丈夫…ライブの直前までネズキノコは食べないはずだから…まだ最悪の展開になるとは決まってないはずだ…

  • 56二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 11:51:13

    保守

  • 57FILM N.G.22/09/18(日) 12:50:41

     ―――昨日の昼。ウタがファンに向けての配信が有るからと一人部屋に籠もった時を見計らってのことだった。

    『君達に教えておきたいことが有る』

     そう言ってゴードンはルフィとその仲間達を城の地下へと招いていた。

    『ここは図書館かしら。古い様式の建築……随分と時代を感じるわ』

     壁一面を埋め尽くす膨大な数の書物。外界の陽光は完全に遮られ、淡い光を放つ照明によって照らされるそこはエレジア最大の蔵書施設。この国の文化や歴史を現代に残す場所だった。

    『で? おっさんはおれ達をここに呼んで何の用だ? 肉でもくれんのか』
    『さっき昼飯食ったばかりだろ手前ェ』
    『肉は無いんだ、すまない』
    『真面目か!? さっさと本題を進めろよ!!』

     ゴードンは重々しく頷くと彼らをこの場に呼んだ理由を話す。

    『言いたいことは他でも無い、君達にウタを……止めて欲しい』
    『……止める?』

     ウタを止めて欲しい。そう言ったゴードンは高い高い天井を見上げる。そこは照明の明かりが十分に届かず暗い影が掛かっていたが、だが何か大きな画が描かれていることだけは見て取れた。
     不気味な絵画。それを見てからゴードンは話しを続ける。

    『ウタの“計画”。彼女はライブ当日に―――』

  • 58FILM N.G.22/09/18(日) 12:52:43

     ゴードンの口から聞かされるウタの目的、真意。

    『…………』

     それを聞いたルフィは―――




     ドン!と足場に拳を叩き付けてルフィは前傾姿勢に、戦闘態勢に入る。

    「ウタ!!!」

     血流が唸りを上げる。蒸気機関の脈動のような音と共にルフィの肉体から湯気が立ち上る。
     強い決意を秘めた目がウタを映す。

    「お前は『死なせねェ』!!!」

     告げられた言葉にウタは目を細める。

    「……死ぬ? 死ぬって何? ……ああ、ゴードンから何か聞いたんだ」

     ウタは小さな声で「勝手なことを」と冷たく言い放つ。

    「ルフィが何を聞いたか……興味無い。でもね? わたしの“新時代”の夢は絶対に邪魔はさせない」

     歌姫が指先(タクト)を振るう。

  • 59FILM N.G.22/09/18(日) 12:53:55

     七色の光柱から黄金の五線譜が大量に噴き出る。それは凄まじい速度でエレジアを駆け抜けると島一帯をドーム状に包み込む。

    「君も、君の仲間も……わたしの“力”で愉しい愉しい“歌にしてあげる”」
    「ウタァああああああーーーーッッ!!!」

     ルフィの姿が消える。そう見える程のスピードで動き出した。次の瞬間にはルフィはウタの直ぐ傍に居て彼女に向かって手を伸ばしていた。
     今のルフィの速度を捉えられる者などそれこそ四皇幹部クラスでも無いと不可能。それより格下の者であれば何が起きたかも理解出来ず一撃で沈められる。
     “ギア2(セカンド)”。肉体を拡縮させポンプにし加速した血流によって身体能力を向上させる技。これでルフィは一瞬でこの場を収めようと考えた。
     だがしかし。

    「速いね」

     ウタには通じない。

    「わたしには意味無いけど」
    「ッ!!?」

     ルフィが伸ばした手。ウタを掴もうとした手が、その直前で阻まれた。
     エレジアを覆った黄金と同じ五線譜がウタの周囲を旋回している。それが壁となってルフィの手を防いだのだ。

    「強くなったんだね、ルフィ」

     触れようとする者を反発する力によってルフィの掌と五線譜の間でバチバチと閃光が弾ける。ウタはその光に目を細めながら自らもまた手を伸ばす。

  • 60FILM N.G.22/09/18(日) 12:55:17

     五線譜越しに互いの手が重なる。

     小さい女の手と大きな男の手。昔は自分の方が大きかったのに、ウタはそんなことを思った。こんなことでも過ぎ去った月日の流れを知る。
     ルフィは強くなった。昔の我儘でやんちゃなだけの弱い子供はもういない。

    「でも、わたしの方がもっと“強い”」

     五線譜に触れたウタの手からより強い力が流れ込む。より強化された反発力。

    「くっ!!? うわァああああああああああ~~~~ッ!!?」

     爆風にでも当たったかのようにルフィの体が吹き飛ばされた。

    「ルフィ!! ここで―――」

     その隙を突いてウタが勝負を決めようと動く。周囲に展開していた五線譜を枝分かれさせ帯のように飛ばす。大量の五線譜の鞭がルフィの体を包もうとした―――

  • 61FILM N.G.22/09/18(日) 12:55:57

     その時だった。

    「“三刀流”」
    「 !!? 」

     三つの軌跡が空間を走る。

    「“極(ウル)……虎狩り(トラがり)”ィいいッ!!!」

     剛剣によってまとめて断ち斬られる五線譜。力を失ったそれは黄金の粒子となって夜空に溶けて消えてく。

    「……勝手におっぱじめやがってこのバカが」
    「ゾロ!!!」

     ゾロは自分の隣りに降り立ったルフィに厳しい目を向ける。

  • 62二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 15:36:25

    やっぱウタウタ強ぇ…

  • 63二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 15:43:14

    最初にゾロ来るのがエモいわ
    船長の幼馴染が死のうとしてるとか言われたら本気で助けたいだろうな…

  • 64二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 17:48:54

    手重ねるところゾクゾクするな

  • 65FILM N.G.22/09/18(日) 20:35:20

    「……しかし、これがゴードンが言ってた“ウタワールド”ってやつか」

     エレジアを照らす七色の光柱をゾロは眩しそうに睨み、そして刀の鋒をウタへと定めながら構える。

    「本当に“無敵”かどうか試して―――」
    「このクソマリモォーーーーッ!!! レディに剣を向けるたァどういう了見だ!!?」
    「うお!!?」

     ゾロに向かって振り抜かれる炎の脚。咄嗟に刀で防いだが一撃の重さは冗談では済まない威力が込められていた。
     勿論、蹴ったのはサンジだった。

    「手前ェ、このアホコック!!! 急に何しやがる!!?」
    「うるせェ!! アホはお前だ!! 先ずは話し合いで何とかするって決めただろうが!!! その無駄に多い血の気をコックとして抜いてやろうか!? ああン!?」
    「……!」

     なんか怒りで全身から炎を迸らせているサンジにゾロは暑苦しそうに距離を取る。だが刀を下ろした所を見ればサンジの言い分の方が正しかったのだとわかる。
     ウタは訝しげにルフィ達を睨む。

    「……話し合い?」

     聞き捨てならないとでも言うように表情を顰めるウタ。そんな彼女に新たに屋上へと上がってきた者達が言葉を掛ける。

    「そ、そうだプリンセス・ウタ!!! おれ達は話し合いに来たんだ!!!」
    「そうだぞ!! おれ達の話しを聞いてくれェ!!」
    「ウタちゃん!! こんなことはもうやめて!!!」

  • 66FILM N.G.22/09/18(日) 20:38:10

     ウソップ、チョッパー、ナミ。3人はジンベエにしがみついた状態で屋上へと姿を表す。見ようによっては巨体の影に隠れているようにも見える。

    「お主ら……もう上がったんじゃ、そろそろ前に出て―――」
    「バカ野郎親分!? 周りを見ろォ!? とんでもねェ状況じゃねえか!!!」
    「そうだぞバカやろー!? 意味わかんなくておっかねェんだぞこのやろー!?」

     泣き喚く2人に溜息を吐きたくなるジンベエ。そんな中でナミだけは良い表情で力強く言う。


    「頼りにしてるわよジンベエ!!」
    「このタイミングで言うのか!?」

     別に変なことは言ってないはずだが色々と台無しな感じを覚えたジンベエはついツッコミを入れてしまった。

  • 67FILM N.G.22/09/18(日) 20:38:37

    「…………」

     どんな緊迫した状況であろうと発揮してしまう麦わらの一味特有の緩い空気。だがウタはそれに飲まれること無く毅然として立つ。

    「あー、まー……何だ、その……ウタちゃん。少しだけでも良いからおれ達の話しを聞いてくれないか? 君と戦うのはおれ達の本意じゃねえ」

     この場ではジンベエに次いで冷静で、同時に深く物事を考えているサンジがウタに対して話しを切り出す。

    「君だってこんなこと望んじゃいねえんだろ? だから物騒な表情はしないでくれ。可愛い顔が台無しだ」
    「わたしはいつも可愛い」
    「いやそこは問題じゃねえだろ!!?」

     ウタのズレた反論にウソップが突っ込む。

    「手前ェこらウソップ!!! ウタちゃんが可愛くねえってのか!!?」
    「お前は話しを拗らせんじゃねェ!!?」

     ウソップツッコミ2連続。

  • 68二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 20:45:38

    わたしはいつも可愛いで草

  • 69二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 20:46:52

    多分ルフィと再会したから素の部分が出てるw

  • 70二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 20:56:13

    ギャグ描写が挟まれてて癒される…

  • 71二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 22:57:16

    保守

  • 72二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 23:23:10

    ファンの好きなところ2位が「天然なところ」の女だからな……

  • 73二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 23:34:59

    逆に言えば天然な素の部分を出せるくらいの余裕はまだあるってことだよね

  • 74二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 23:44:38

    ネズキノコ食べてないから対話できるね。わたしはいつも可愛いは笑う

  • 75二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 00:34:38

    >>73

    ネズキノコで凶暴になってない素のウタだからな

    まだいける

  • 76二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 02:53:15

    保守

  • 77二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 07:34:10

    今のウタなら耐久戦に持ち込めればいつかは眠くなってウタウタ解除するはず
    と思ったけどその間に現実の体を操作されてライブの日まで動けなくされてたら意味無いから、やっぱりここで説得するしかないのか

  • 78二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 12:29:18

    保守

  • 79二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 15:47:53

    保守

  • 80二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 17:40:18

    保守じゃい

  • 81二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 21:26:52

    ほしゅぅ…

  • 82二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 22:10:34

    保守

  • 83FILM N.G.22/09/19(月) 22:39:02

    保守感謝ですです。書けた分を投稿します

    後先考えるな! とにかく書け! 書けば次書く時のおれが展開を何とかしてくれる!

  • 84二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 22:39:18

    ほっしゅ

  • 85FILM N.G.22/09/19(月) 22:40:12

     一気に騒がしくなった城の屋上。ウタは一つ溜息を吐くと指をパチンと鳴らす。

    「……何人来たところで変わらないよ」

     フィンガースナップの音が物質化。大きな音符となって出現したそれにウタは足を乗せるとそのまま宙に浮き上がる。
     麦わらの一味を見下ろす高さにまで上ったウタはエレジアを一望するようにその場で回る。

    「ゴードンから話しを聞いたなら……今のわたしに“勝てない”こともわかってるよね?」

     回る、回る、回る。踊るように回るウタの指先が宙を撫で、その軌跡を追うように大小様々な音符が出現して空中を漂う。

    「この世界―――“ウタワールド”はわたしの思い通りになる、わたしだけの世界」

     回転を止めたウタは片手を天高く掲げると再び指を鳴らす。
     パチンと響くと同時に、音符の全てが“食べ物”や“おもちゃ”に姿を変えた。無から有を生み出す。作り出す物も思いのまま。肉や野菜に果物、ぬいぐるみや積み木が七色の光に照らされながら宙に浮く。
     現実感の無い光景―――否。

    「悪魔の実。“ウタウタの実”の能力者であるわたしはこの“夢の中”では無敵なんだから」
    「…………」

     此処は現実では無い。ウタが言う通りこの世界は“夢の世界”なのだ。

  • 86FILM N.G.22/09/19(月) 22:42:55

     ゴードンがルフィ達にウタの能力を伝える。

    『“ウタウタの実”の能力者はその歌声を聞いた者を眠らせ……そうして夢の世界へと誘う』
    『夢の世界?』
    『ああ。だが夢の中と言っても意識ははっきりしている。それ故に術中に嵌まった者はそれが夢の中だと気付くことは難しい』
    『夢から抜け出すには?』
    『術者が任意で解除する、または眠った時に自動で解ける……能力の使用は体力の消耗が激しいようで3曲も歌えばウタはいつも眠そうにしていた』

     ゴードンがそう言うとルフィは「ああ」と手を叩く。

    『どお~りであいつが歌うとみんな直ぐ寝ちまってたのか~』
    『……知ってたのか? ルフィ君。ウタが能力を持っていると』
    『いやだってあいつ、“自分の思い通りになる特別なステージがある”って昔からよく言ってたし』

     ルフィのその言葉に仲間の全員が呆れる。

    『……知ってたんなら早く教えろよ』
    『いや~、あははは!! ……忘れてたぁ』

     だって12年も前のことだったから。他にも大変なこといっぱい在ったし。

    『ほんと、肝心なことばっかり忘れるんだから……』

     文句は言うが別にそこまで責めてはいない。そもそもウタと敵対することが無ければ知る必要すら無かった事柄である。お互いに懐かしい友に再会出来たことの方が重要だったのだ。

  • 87二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 22:57:52

    ネムネムの実にもこれくらいの性能があればなぁ。

  • 88二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 23:29:50

    映画でもそうだけどルフィに敵意を向けるウタを見るのは本当にキツいな…12年ぶりに再会した大切な幼馴染ってのも相まって本当に辛い

  • 89FILM N.G.22/09/20(火) 01:04:39

     ゴードンは一度咳払いすると持ち込んでいたノートを開いて絵を描いていく。

    『……ウタの能力は非常に強力だ。それは夢の中に限った話しでは無い』

     線を引いて上下二分割にしたページ、それぞれにデフォルメされたウタの顔を描く。

    『おっさん顔に似合わずかわいい絵描くんだな』
    『教鞭を執る時、こういうのを描けた方が子供受けが良かったからね』

     そうして上下別々に“夢”と“現実”を書き加える。

    『もし君達がウタと相対した時、彼女が本気で排除を考えたなら……勝ち目は無いと思った方が良い』
    『何でだ? 強ェぞおれたち』
    『単純な強さは無意味……むしろ相手が強い程ウタが“有利になる”と言えるかもしれない』

     現実のウタに音符を描き加えて歌っていると表現する。

    『彼女の歌を聞いて夢の世界に取り込まれたなら、それはもう既に生殺与奪を握られたと思って行動した方が良い』

     現実の方に人々の絵を描き足していき、それが夢のウタから伸びる線によって繋げられる。それはまるで糸で吊すマリオネットのように。

  • 90FILM N.G.22/09/20(火) 01:05:02

    『……情けない限りだが、私ではあの子を救えなかった』

     ウタの絵は笑顔。それは紙に描いた作り物……だがそれは皮肉にも現実の彼女と比べても大きな違いは無い。

     偽りの笑顔。孤独な想い。

     故にゴードンは頼る。ルフィ達を。彼女のあんなにも楽しそうな笑顔を引き出してくれた彼らを。それはまるで12年振りの……“あの事件”が起きる以前の彼女の笑顔のようにゴードンは見えたのだ。

    『だからどうか、どうかあの子を―――』

     ゴードンは托す。自分には出来なかったことを。

    『救ってくれ』

     その胸を引き裂くような切ない願いを、彼はこれまで隠してきた“12年前の真実”と共にルフィ達に托すのだった。

  • 91二次元好きの匿名さん22/09/20(火) 01:13:56

    こっちだと報われるといいなゴードン…

  • 92FILM N.G.22/09/20(火) 01:21:16

     ■■■

     少し その人は つかれていました

    『いっかい ふるさとに かえろうか』

     こころも からだも きずだらけ

    『子どもたちは げんきかな』

     それでも がんばれたのは
     子どもたちの えがおが こころにあったから

     だから

    『あれ』

     だから ふるさとが せんそうで ほろび

    『みんな』

     だいすきだった 子どもたちも みんな

    『死んじゃった』

     なくなったことを しって
     その人は こわれました  

     ■■■

  • 93二次元好きの匿名さん22/09/20(火) 01:22:14

    出たわね狂気の絵本シリーズ

  • 94FILM N.G.22/09/20(火) 01:24:53

    to be continued

    ねむいよパトラッシュ……寝るね。グッナイ
    ここまで読んでくれてありがとう。朝か夜に更新出来たら良いなぁ……

  • 95二次元好きの匿名さん22/09/20(火) 02:54:18

    >>94

    釜を煮込んで待ってるぞ!

  • 96二次元好きの匿名さん22/09/20(火) 07:28:02

    保守

  • 97FILM N.G.22/09/20(火) 09:28:30

     ウタは自らの能力によってルフィ達を夢の世界……“ウタワールド”に取り込んだことで勝ちを確信している。

    (ウタワールドでは無敵。現実の方じゃルフィ達は眠っている……)

     現実世界のウタは静まり返った城内を一人歩く。
     ウタワールドを展開している時、ウタは“2人”になる。

    (色々と“企んでいた”ようだけど……どんなに強い人だろうと眠っている間は無力)

     夢の中、城の屋上でルフィ達と相対するウタ。そして現実で城内を征くウタ。
     別々の物を見聞きして動くことが可能であると同時にどちらも正真正銘彼女自身。記憶も感覚も感情も共有している。それを利用してウタは現実でのルフィ達を拘束しようと考えていた。

    (夢でも現実でも絶対的有利な立場に立てる。これがわたしの“ウタウタの実”の力)

     余裕を感じさせる足取りでウタは城内を進む。
     勝利はもう目前。

    「―――ッ!!」

     そんなウタの足取りが急にふらついた。まるで立ち眩みのような症状、だが彼女はそうなることを予想していたようで壁に手を着き姿勢を正す。

  • 98FILM N.G.22/09/20(火) 09:28:48

    「……ふぅ」

     症状は軽かったようでもう調子を取り戻すウタ。彼女の意識を混濁させた原因は“睡魔”だった。

    「あと、2曲……3曲はいけるかな」

     心地の良い睡魔。夜に布団の中で感じるならばこれ程素晴らしい物は無いが……彼女にとってそれは邪魔でしかない。

     絶対無敵とも思えるウタウタの能力。だがその強力な力の代償として著しく体力を消耗するのだ。
     夢と現実。その両方で存在する2人分の感覚と情報を一つの心で処理することになる。その負荷は睡魔という形でウタを襲う。長期戦には向いていない。

    「……早く決着を付けよう」

     話し合い? 望む所だ。歌による増強(ブースト)を使わなくて済むならその方が体力の消費を少なく出来る。夢の世界で倒してしまうのもアリだがそれは現実の体を握ってしまっても同じこと。
     ウタは冷笑を浮かべる。通路の窓に彼女のそんな顔が反射している。

    「……うん。可愛い」

     自画自賛でモチベを上げつつウタは“ルフィが眠っている部屋”へと向かうのであった。

  • 99FILM N.G.22/09/20(火) 09:29:28

    次は夜……無理だったら明日の朝か夜に。では

  • 100二次元好きの匿名さん22/09/20(火) 14:49:01

    ぐつぐつ煮込んで保守しよう

  • 101二次元好きの匿名さん22/09/20(火) 19:48:18

    ホシュホシュの業火拳銃

  • 102二次元好きの匿名さん22/09/20(火) 21:43:43

  • 103二次元好きの匿名さん22/09/21(水) 00:28:55

    ホーッシュッシュッシュ!!

  • 104二次元好きの匿名さん22/09/21(水) 07:33:18

    保守

  • 105二次元好きの匿名さん22/09/21(水) 12:17:49

    ほーしゅ
    やっぱネズキノコとウタウタを組み合わせた本編がバグすぎる強さなんだな

  • 106二次元好きの匿名さん22/09/21(水) 17:26:38

    ウタウタの力使い放題は無法すぎるな

  • 107二次元好きの匿名さん22/09/21(水) 22:32:58

    保守

  • 108FILM N.G.22/09/21(水) 23:58:04

    すまぬ……忙しくて書く暇が無かったです……
    書きたい欲はあるので明日は更新します!
    保守してくれたり読んでくれた人、本当にありがとうございます

  • 109二次元好きの匿名さん22/09/21(水) 23:59:37

    🍲🐉たまには中身シチューにして待ってるぞ

  • 110二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 05:55:01

    楽しみに待ってる!

  • 111二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 07:56:05

    鍋をコトコト煮込んで待ってるから、気軽にな!!!

  • 112二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 11:00:48

    ハーメルンから流れてきた者です。
    素晴らしい作品をありがとうございます……!!
    瓶詰めされた手紙を受け取った気分で、送り主を探してここまで来てしまった。一ファンとして見守らせてください。

  • 113二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 13:56:20

    >>112

    瓶詰めの手紙は言い得て妙

  • 114FILM N.G.22/09/22(木) 15:30:06

    保守感謝です。読んでくれる人がいるのって本当に嬉しいですね

    それでは開幕です。

  • 115FILM N.G.22/09/22(木) 15:31:50

     気迫の籠もる強い眼差し。ウタはルフィのその視線と真っ向から対峙しながら戦闘態勢に入る。


    「残念だけどルフィ。“話し合い”なんて言葉で気を逸らして、私を捕まえようと考えてたみたいだけど……ちょっと迂闊すぎたね」


     初めからウタに話し合いに応じる気は無かった。だから彼女は容赦無く自らの敵へ力を振るう。

     頭上に掲げられた両手が拍子を打つ。一定のリズムを取って打ち鳴らすそれは周囲へと影響を及ぼしていく。


    【Ado】逆光(ウタ from ONE PIECE FILM RED)

    拍子が打たれる度にウタの周囲を飛んでいた食べ物やおもちゃが再び姿を変える。その形が崩壊するように小さな音符の集合体になると、それは再び一つの形になるよう構成される。


     ―――姿を表したのは“戦士”。


     音符の意匠を施された武装した戦士。槍や盾、機銃を携えて彼らは歌姫を守る為に現れる。


    「な、何だこりゃ……」


     ウタが無数に創造していた食べ物やおもちゃ、その全てが戦士に変わる。100や200ではきかない軍勢。突如として創られたそれに麦わらの一味は息を吞む。

     同時に夜空へ鳴り渡る演奏。音符の戦士一人一人から鳴るそれは一つの曲を作る。


    「わたしに“作戦”を聞かれていたのが運の尽き。抵抗は無駄……」

  • 116FILM N.G.22/09/22(木) 15:33:00

     歌姫は歌う。そうして世界に示すのだ。

    「―――散々な思い出は―――」

     自らの心に科した使命を。
     戦士達が武器を向ける。彼女の敵を殲滅せんと。

    「……お前に話し合いをする気が無いってんなら」

     だが臆さない。こんな物は何も怖くない。

    「無理矢理にでも!!! その気にさせてやる!!!」

     頑なな幼馴染みの心を開かせる為に、その拳を強く握り締めて彼は真っ先に駆け出す。

    「―――あんたらわかっちゃいないだろ―――」

     音符の戦士、その軍勢が一斉に進軍する。

    「―――今だけ箍外してきて―――」

     思いと思いがぶつかる。

  • 117FILM N.G.22/09/22(木) 15:33:58

    「怒りよ!!!」
    「おおおおおおおォーーーーッ!!!」

     黒い閃光。
     音符の戦士、その一番槍が雷光の如き黒い波動を纏った拳を受け―――弾け飛ぶ。

    「ウタァああああーーーーッ!!!」

     戦士の一体一体が並みの海賊など歯牙にも掛けない力を有しているのに、その男が放つ拳打と蹴撃によって次々に消し飛ばされる。
     軍勢が蹂躙される。

    「ッ!!!」

     覇王の威光が歌姫の世界を震撼させた。
     それはルフィのみならず彼の仲間達もその勢いに続けとばかりに武器を振るって戦士達を打ち倒していく。これまで幾つもの海を越え立ち塞がる敵を倒し、2年間の修行によって力を身に付けた麦わらの一味は凄まじい強さで軍勢を返り討ちにしていく。
     見る間にその数を減らす音符の戦士。

    「―――そう怒りを―――」

     だが彼女の心は揺るがない。
     10の戦士が落ちたなら11の戦士を生む。100が落ちれば110を。

     歌によって増強される“ウタウタの実”の能力。神に愛され悪魔に愛されたウタの歌声によってそれは真価を発揮する。

  • 118FILM N.G.22/09/22(木) 15:35:52

    「ッ!!!」

     500でも1000でも、ただ創造して進軍させる。自分達が打ち倒す数よりも更に早く増殖する戦士にルフィ達は目を見開く。
     尽きること無き不死の軍勢。
     文字通りのそれにルフィ達の快進撃は止まり、膠着状態に陥る。それはつまり―――

    「これは……!?」

     “詰み”と同義である。

    「逆光よォおおーーッ!!!」

     1万の軍勢が夜空に生まれる。歌との共鳴によって星々の如く輝く戦士達は創造主の敵へ武器を向ける。

    「――――――」

     その光景は圧倒的で、絶望的。普通なら勝負すら投げ出して許しを請うであろう一方的な状況……だがしかし。

     それは普通の者が相手だった場合の話である。

    「―――来いッ!!! まとめてぶっ飛ばしてやるッ!!! ……行くぞお前らァ!!!」
    「「「「おう!!!」」」」

     彼らの目から輝きは失われない。欠片も諦めていない。

    「ッ!!?」

     ウタの足が半歩後ろに退いた、退いてしまった。

  • 119FILM N.G.22/09/22(木) 15:39:40

    とりあずここまで
    続きは夜にでも。読んでくれた人に感謝です

  • 120二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 15:42:55


    そりゃここまでに万の敵よりよほど恐い
    💋とか🐉とか見てるもんな…

  • 121二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 16:05:33

    映画で一味が捕まったのは不意を突かれたのもあるよな

  • 122二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 16:46:51

    更新乙です!
    雑兵相手ならナミ&ゼウスやフランキーとかいるからねえ………頑張れ麦わらの一味!

  • 123FILM N.G.22/09/22(木) 19:55:57

    (強いッ!!?)

     それはウタの想像を越える物だった。最初のルフィとの激突も、彼は信じられないぐらい手加減してくれていたのだと今の戦いぶりから見て取れる。

    (今まで撃退した海賊と比べ物にならない!)

     歌によって1万の軍勢を生み出したが麦わらの一味はそれに飲み込まれることなく拮抗する。膠着状態に陥った時よりも遙かに多い戦力を投入したにも関わらずだ。
     この底力は何? ウタはそう戸惑う。まるで追い詰められれば追い詰められる程、彼らの力が増していくようではないか。

    「ッ! だけど!! それでも!!!」

     ウタは押し切れない現状に歯噛みしたがそれでも自分の勝利は揺るがないのだと思い直し、“現実”での行動に重きを置く。

    「全員が眠っている今!!! だれもわたしを止めることなんて―――」

     現実の体さえ掌握してしまえばルフィ達がどれだけ“ウタワールド”で奮闘しようと無に帰するのだ。だからウタは冷静に対処しようとする。

    「……え? あれ?」

     冷静になったからこそ、気付いてしまった。

    「全員……“じゃない”?」

     ルフィの必死さと、彼の仲間達の本気の戦いに気を取られてウタは見落としていた。
     その見落としは自分の能力を過信していたが為。城内全てに届くように歌ったのだから全員眠らせられたのだという思い込み。まだ合流していないからだと考えて後回しにしていた油断。

     ロビン。フランキー。ブルック。

     ここでようやくウタはこの世界に居らず“現実で行動している”麦わらの一味が居ることに気付いたのだった。

  • 124二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 19:57:07

    ジンベエいたから忘れてたけど
    そういやアダルトいねぇ!

  • 125FILM N.G.22/09/22(木) 20:01:29

     ■■■

     うたっても うたっても えがおに なれません

    『また いっしょに わらいましょう』

     したいは わらってくれません

    『歌を つくりました あたらしい みんなに きいて ほしくて』

     がらがら がらがら ほねが ばらばら くずれます

    『平和 みんなを だから 笑顔に したくて だけど なんで』

     ふるさとは しずかになった しずかになったのに
     とても うるさい

     その人 いがい だれも いないのに
     とても うるさかった

     ■■■

  • 126FILM N.G.22/09/22(木) 20:19:57

     どうしてウタは今日麦わらの一味全員を眠らせたのか、どうして今日ルフィが自分を説得しに来ると知っていたのか―――どうして“作戦”に引っ掛かってしまったのか。
     その理由は昨日の夜に遡る。




     “あれ”を人知れず廃棄されてしまったウタはその後の数日間、全てを疑って行動していた。

    (捨てたのは確実にルフィの仲間の誰か。それはつまりライブでする“計画”を知られたということ……わたしの邪魔をするために)

     険しい表情で歯軋りするウタ。

    『絶対にゆるせない!』

     強くそう思う。ただ同時に解せないことも有った。

    『……でもどうしてそれ以外に何も動きが無いの?』

     ウタの主観だが“あれ”を捨てられた以外では他に目立った行動が無かったのだ。その間のルフィ達と言えばライブまでの準備を精力的に手伝い、暇な時間が出来れば全力でバカをするという毎日。

    (ルフィは嘘が下手。それとなく話しを振ってみたけど知ってる様子は無かった。ならゴードンが? ……いや、ゴードンが隠し事してても“もう騙されない”。じゃあやっぱりルフィの仲間の誰かが……?)

     そこまで考えてウタは渋い顔をする。

    『でも船長に重要なことを報告しない船員って居る? 友達みたいな距離感だけどルフィ達はれっきとした海賊だし……』

     うんうんと悩みながら城の通路を歩く。静かにゆっくりと、ただし足取りは軽快に。それはルフィ達に見付からず、尚且つ彼らの情報を隠れて集める為の行動だった。

  • 127二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 20:25:12

    GOLDでも作戦がバレないようルフィにだけは言わずに隠してたことあったしな

  • 128二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 20:55:23

    ルフィには黙っておく 高度な作戦なんてできないという謎の信頼があるから…
    …うん作戦なんて無視して突っ込んでいきそうな部分は大いにある…

  • 129FILM N.G.22/09/22(木) 21:13:16

    (何か一つでも情報を……彼らの目的を知らないと)

     そうして物音に耳を欹(そばだ)てていた時である。その会話を聞いたのは。

    『―――その話しホントかサンジ!?』
    『バカ、声がでけェ! もっと静かに喋ろッ』
    『……!』

     急いで壁際に寄るウタ。

    (この声は……ウソップとサンジ?)

     会話の出所は城内の一室。過去には使用人の私室としても使われていた、今は誰も使うことのない寂れた部屋だった。僅かに隙間が空いている扉から中を窺うとそこには予想していた二人が居た。
     怪しい。こんな場所に二人きりで一体どんな話しをするというのだ。そう訝しんだウタはそこで息を潜めて会話を盗み聞きする。

    『―――良いか? ウソップ。この計画は当日に……明日の夜、ルフィに伝える』
    『いやでも直ぐ伝えた方が……』

     新しい煙草に火を点けたサンジはウソップにはっきりと言う。

    『ルフィはバカだ。この話しを聞けば一にも二にも無く飛び出して行く。それじゃおれ達にとって都合が悪い』
    『都合が悪いってお前……』
    『悪いさ。おれ達がウタちゃんを“捕まえる”にはな』
    『――――――』

     その言葉を聞いたウタの顔から表情がスッと消える。

  • 130FILM N.G.22/09/22(木) 21:23:43

    『準備には一日居る。なーに、うちの船長だって事情を知ったら許してくれるさ』
    『……そりゃそうだけど、騙してるみたいで気が引けるな……』

     ウソップは自分達の船長に嘘を吐くことになるのが気不味いようで困ったように眉を下げる。

    『そう言うなウソップ。この計画はおれ達の腕に掛かってる。その前準備としてウタちゃんが持ってた“あれ”も捨てたんだ』
    『……ああ、アレな。故郷の部下もよく集めてたからおれがよく捨ててやったもんさ。懐かしい』
    『…………』

     サンジは俯いて煙草を深く吸う。
     ここまでの会話を聞いたウタは彼らが普段の陽気さからは考えられない裏の顔を持っているのだと理解する。

    (計画? わたしを捕まえる? ……そっか。“あれ”を捨てたのはサンジだったんだ)

     ウタはその目に敵意を宿す。自分の目的を阻もうとするルフィの仲間に対して。

    『わかったかウソップ。計画は明日の夜、ルフィに伝えた後で、仲間の全員でウタちゃんを捕まえるんだ。絶対に逃がさないようにな』
    『……うっし、わかった! おれ様にど~んと任せておけ!』
    『だから声がでけェんだってこのアホ!!!』

     重要そうな部分は聞いた。
     そう判断したウタは来た時と同じように、静かにこの場を去る。

    (明日の夜、ね。……みんながその気なら……良いよ。迎え撃ってあげる)

     彼らが一体何を企んでいようと、“ウタウタの実”の力が有れば絶対に負けることは無いのだから。そうしてウタが使用人室から離れて行き―――

  • 131FILM N.G.22/09/22(木) 21:25:44

    『……行ったか』
    『行ったな』

     それを“見聞色の覇気”によって把握していたサンジとウソップは自分達の“企み”が無事に成功したと判断して肩の力を抜いた。

    『ど~よサンジ。このおれの見事な演技力!!』
    『まあ嘘吐き慣れてるお前だから頼んだが、変なアドリブ入れやがって。ウタちゃんが不審に思ったらどうするつもりだ』

     サンジはやれやれと煙を深く吐き出す。

    『だが狙ってやったとはいえ……レディに嫌われるのはちょっと堪えるな』
    『よくやったよお前は』
    『まあ一人で嫌われるのがイヤでお前を巻き込んだわけだが』
    『はっ倒すぞてめェ!!?』

     こうしてサンジ達は明日の夜に決行する“作戦”の仕込みを終わらせたのだった。

    『……さて、残りの仕込みも終わったし……あとは当日に全て賭けるだけか』

  • 132二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 21:27:10

    さすサン

  • 133二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 21:28:19

    サンジはこういう時頼りになる

  • 134二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 21:31:55

    サンジの策士としての活躍やっぱいいな

  • 135二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 21:37:49

    裏方で暗躍させてはいけない二人が揃うと強いな…

  • 136二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 21:41:43

    >>135

    暗躍と援護が花道の黄金コンビだ

    一味がそろってるとやっぱ心強いわ

  • 137FILM N.G.22/09/22(木) 22:33:21

     これがウタがこの夜にルフィ達を迎え撃とうと待ち構えていた理由であり、ウタウタの力で逆に彼らを一網打尽にしようと画策していたのであるが―――

    「……一杯食わされた、ってわけ」
    「ん~!! スーパー!! その通りだ歌姫ェ!!」
    「私達も手荒なことはしたくありません」

     ウタが足を踏み入れたルフィ達が眠っている筈の部屋。そこで待っていたのは眠りに落ちた無力な一味では無く。

    「ウタ。大人しく話し合いに応じてくれないかしら?」

     フランキーとブルック、そしてロビンが部屋の中でウタを待ち構えていた。それ以外でこの場に誰もいない。
     落ち着いた声色で対話を求めるロビンにウタは目を鋭く細める。

    「……どうやってわたしの歌を」

     彼ら3人が眠っていないということはつまり歌を聞いていなかったということ。だがしかし、どれだけ作戦を練ろうと歌うタイミング自体はウタ次第。しかも城全体に響き渡る歌を防ぐ術は限られる。

    「その答えはシンプル!!!」

     フランキーが大きな掌から小さなマジックハンドを出す。するとその指の間に挟まれている物体が。

    「これこそが歌姫のスーパーな歌声をシャットアウトしたスーパー秘密兵器!!! その名も~~……“インヴィジブル・シンフォニアシステム”!!!」
    「ただの耳栓!!」

     何処かで聞き覚えのあるただの耳栓だった。この秘密兵器の情報元は似た物を使ったことが有るブルックである。ウタは頭痛でも堪えるように頭を抱える。

  • 138二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 22:35:04

    完全に一味のペースですね…
    これには発案者のファザーもニッコリ

  • 139二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 22:36:06

    普段は馬鹿やってる方のくせして、ちゃんと頭脳派なんだよなコイツら……

  • 140FILM N.G.22/09/22(木) 22:41:56

    「そんな古典的な手で……すっごい悔しいんだけど」

     もう一度この場で歌ってやろうかと考えたが……ウタは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。

    (……今ここで歌えば3曲目……体力的にギリギリ。クソッ! 完全に嵌められた!!)

     もしこの場で歌ったとして、それで3人全員を確実に眠らせられる保証は無い。つまり後に残るのは3曲を歌って睡魔でフラフラになったウタと誰かが相対するという状況。
     耳栓一つで窮地に追い詰められたウタ。悔しいと冗談で言ったがここに来て本気でそう思い始める。

    「どうかしら? 私達は傷付け合って血塗れになるようなことは望んでいないわ」
    「ロビンさん物騒!! あ、でも私骨なんで血は―――」
    「チョッパーが血は骨から作られると言っていたわ」
    「ッ!!?」

     スカルジョークを潰されて愕然とするブルックを尻目にロビンは根気強くウタと話し合おうと行動する。

  • 141二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 22:45:25

    逆に言えばあと一曲は歌えるってことだよな……?

  • 142FILM N.G.22/09/22(木) 23:19:29

    本日の更新はここまで。続きは明日の夜になると思います
    ここまで読んでくれてありがとうございました

  • 143二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 23:53:06

    9億3000万+3億9400万+3億8300万
    =17億0700万ベリー

    …懸賞金が全てじゃないにせよ、
    コレ単独で突破できんのもしかして七武海の最上位か四皇クラスだけ…?

  • 144二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 23:56:04

    ロビンにブルックとか現実世界のウタなら軽く無力化出来そうだぞ

  • 145二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 23:59:42

    能力割れてるから歌う動作見せたら腕生やして口塞げば終了

  • 146二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 00:12:51

    ウタウタのデメリットの活かし方が面白いですね…

  • 147二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 00:33:26

    >>141

    寝てる仲間いますね……

  • 148二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 01:04:02

    そうか残った3人はウタウタに対処しやすい人選か

  • 149二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 01:40:28

    スカルジョーク潰しが尾田っち作画で想像できる
    相変わらずすげェ"セリフエミュ"だ

  • 150二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 01:47:27

    CVが完璧に聞こえてくる

  • 151二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 07:02:54

    保守

  • 152二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 07:12:57

    イ ッ チ 「未来の自分が面白い話考えつくだろ!」
    尾田っち「未来の自分が面白い話考えつくだろ!」

    イッチは尾田っちの弟子だった…?

  • 153二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 13:17:41

    保守

  • 154二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 16:20:19

    パワー自慢と手数の多さのフランキー
    ハナハナの能力ですぐ口を塞げるロビン
    一味最速かつ最年長のブルック

    非能力者と能力者の割合も1:2だから、こうして見ると対ウタにはもってこいなんだよなアダルト組

  • 155二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 16:46:56

    保守

  • 156二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 20:03:11

    ほしゅ

  • 157FILM N.G.22/09/23(金) 20:06:17

    「ウタ。うちの船長さんはあなたが“あんなこと”をしようだなんて望んでいないわ」
    「…………」
    「その先に待っているのは“死”よ。だからどうか考え直して―――」
    「…………」

     ウタは俯き覆って黙りこくっていた。追い詰められて諦めた、そんな様子にも見えたが……

    「……ウタ?」
    「……くっ……ふ……!」

     声が漏れ、それは直後哄笑へと変わる。

    「くふ……っ! あは! あははっははははははははは!!」

     笑う笑う笑う。

    「ははははははは!! あっはははははは―――……ふぅ」

     そして一頻り笑うと疲れたように溜息を吐いた。

    「あ~あ~……もう、いっか……わたしだって手荒なことはしたくなかったけど」

     ウタが目を細める。

    「しかたないよね?」
    「!!?」

     ロビン達の背筋にぞわりと冷たい感覚が走った。

  • 158二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 20:15:53

    この子ネズキノコ決めてなくてもこわい…こわくない?

  • 159二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 20:17:24

    そういえばウタウタの実は現実世界でも…

  • 160FILM N.G.22/09/23(金) 20:25:23

    「“六輪咲き(セイスフルール)”!!!」
    「うぐ!?」

     ウタの体から咲く6本の腕が彼女の肉体を拘束しながら口元を塞ぐ。ヘッドフォンからはいつの間にかマイクが展開されており、それはつまり彼女が自分の負担を度外視してウタウタの能力を使用しようとした証拠。
     間一髪でウタが能力を使うことを阻止したロビンは油断無く立つ。

    「歌わせないし、何より声が聞こえる前に耳を塞げるわ」

     視界内で有れば無類の制圧力を発揮するハナハナの能力。それを受けてウタは悔しがる―――

    「ふっ」

     ことは無かった。
     拘束されながらも彼女は笑った。まるで……自らの勝利を確信しているかのように。

    「……ウタ、あなた―――」
    「危ないロビンさん!!?」

     ロビンがウタに向かって歩み寄ろうとした時、横からブルックが飛び出してきてそのままロビンを抱えて駆け抜ける。

    「ッ!!?」

     それは一瞬の出来事だった。
     ロビンが直前まで立っていた場所が―――壁を突き破って“伸びてきた腕”によって粉砕されたのだ。ドゴンと重い音と共に壁と床の欠片が室内に舞う。
     もしブルックの俊足での救助が無ければ今の拳によってロビンは打ち倒されていただろう。

  • 161二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 20:26:48

    の、“伸びてきた腕”……!?

  • 162二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 20:28:57

    追いついた!この人数差に一歩も退かないウタが覚悟決まりまくっていて好き。
    今日映画2回目観てきたから助かる。

  • 163二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 20:29:17

    やっぱウタワールドに送られた人操れるの強すぎるって!

  • 164二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 20:29:19

    まさかルフィ…?

  • 165FILM N.G.22/09/23(金) 20:30:32

    「わあー、ブルック速いね! ロビンも怪我が無くて良かった!」

     土煙が視界を遮る中でウタの影はそう言う。先の衝撃によってロビンの集中が途切れハナハナが解除されたのだ。自由の身になったウタの影は愉快そうに話す。

    「まさかこんなに追い詰められるなんて思っても無かったよ! ルフィもみんなもとってもスゴいんだね!! だから―――」

     影が二人になる。ウタの隣りに誰かが降り立った。
     砕けた壁の穴から吹き込む風で土煙が晴れていく。そこで露わになったもう一人の影の正体。

    「容赦しないからね? 悪い海賊さん」

     ウタは自分の隣りに立つ者から“麦わら帽子”を取り上げると胸に抱く。
     そう、この場に現れた者とは―――

    「――――――」

     ルフィだった。

  • 166FILM N.G.22/09/23(金) 20:34:12

     麦わらの一味の船長であるルフィが、仲間に向かって拳を構え、ウタを守るように立っていた。

     それを見てフランキーが驚きながら叫ぶ。

    「オウオウ!? マジかよ!! マジで来やがったぜ!!」
    「これは確かに……少々拙(まず)そうですねェ」

     ブルックはロビンを丁寧に床へ下ろすと剣を抜く。その彼の背後でロビンは視線を鋭くして自分達の前に立ち塞がってきたルフィを見る。

    「……ゴードンが教えてくれた通りね。ウタウタの能力、眠らせるだけじゃない。もう一つの力」

     この場に来たのはルフィだけでは無かった。
     ある者は扉を蹴破り、ある者は壁を斬り裂いて―――そうして集まる“眠らされし者達”。

    「これがウタウタの……眠った者の肉体を操る力」

     事前に違う部屋で集まり眠っていた筈の、麦わらの一味。その全員がこの部屋を包囲するように姿を表したのであった。

  • 167二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 20:35:39

    予想可能回避不可能対処…可能そうですか?

  • 168二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 21:00:27

    まああくまで肉体を操るだけだから覇気系は使えないだろうしギア強化もないだろうしまだマシかな
    ゼウスまで操れたりチョッパーの変身使えたりしたら厳しいだろうけど

  • 169二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 21:01:41

    >>168

    でもよぉ、

    映画のウタウタマジの未見のはずのドアドア使えてるぜ?

  • 170二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 21:04:42

    >>169

    戦い方は本人の潜在意識に任せてるとかか?

  • 171二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 21:08:44

    事前にゴードンから聞いてるなら何とかなるかな
    ウタもまだ禁断の切り札を残してるけど

  • 172二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 21:25:43

    6式も使えるしエアドアも使える時点でウタが知ってるかとか関係なく能力しっかり使えると思われる

  • 173二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 21:28:48

    眠らせた奴をオートモードにして勝手に動かしてると思うと、マジでチートなんよなウタウタの実

  • 174二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 21:43:31

    夢と現実、両方でどう戦うのか楽しみだわ

  • 175FILM N.G.22/09/23(金) 22:13:05

     ウタはロビン達にとって最大の味方であるルフィ達を最大の敵として従える。

    「形勢逆転だね。わたしの歌を防ごうとしたのは悪くなかったけど、こうしたら歌おうが歌えなかろうが関係無いよね。……まあこれはこれで疲れるんだけど」

     顎に伝う汗を腕で拭う。息も心なしか安定を欠いている。しかし彼女はしっかりとその足で立って挑戦的な目を向ける。

    「それに動かすだけならまだしも戦わせるとなるとねェ……実力を発揮させるなら結局歌わないといけないし」
    「っ!!!」

     ロビン達は直ぐに耳栓を付けられるよう準備する。仲間を操られながら更に歌まで来ると思ったからだ。しかしその様子を見たウタが「あははは、そんな身構えてももう無駄だって」と小馬鹿にしたように言うと口角を上げる。

    「眠ってるルフィ達を本気で戦わせるには歌が必要……でもね」

     ウタは指を立てて自分の口元に添えると告げる。

    「必ずしも“現実(こっち)”で歌う必要は無いんだよね~」

     直後。

    「耳栓なんか有るなら初めから眠らなきゃ良かったのに。だからこんな風に―――」

     ルフィが自分の腕に歯を立てて“筋肉”に空気を吹き込む。ゾロは構える三刀が黒く染まり、サンジの脚からは火焔が立ち上る。他の仲間達も次々に全力戦闘体勢に入っていく。

    「……!!!」

  • 176FILM N.G.22/09/23(金) 22:13:41

     歌姫は不敵に笑う。

    「―――絶体絶命のピンチになるんだよ♡」

  • 177FILM N.G.22/09/23(金) 22:16:30

    【Ado】ウタカタララバイ(ウタ from ONE PIECE FILM RED)

    “ウタワールド”では音符の軍勢とルフィ達の戦いが激化していた。


    「―――直に脳揺らすベース―――!!!」

    「“ゴムゴムの”ォオオッ!!!」


     ルフィの巨大化した両腕が武装硬化で黒く染まり、大気を突き破りながら高速連打で放たれる。


    「“象銃乱打(エレファントガトリング)”ッ!!!」

    「―――心の臓撫でるブラス―――!!!」


     津波のように押し寄せる軍勢を無数に放たれる破壊の拳が押し返す。凄まじい衝突に地鳴りのような音が周囲に響く。

     “ウタワールド”各地で激しく起こる戦闘音、その全てを合わせてすら届いていない歌姫の歌声がエレジアを席捲する。彼女が歌う程に音符の戦士の苛烈さは増していく。

     終わること無き戦士の進撃。それを指揮する歌姫の行進曲(マーチ)が響く。


    「―――欺きや洗脳お呼びじゃない―――!!!」


     まるで魂ごと震わせて声を発するように歌姫は歌う。

     何が彼女をそこまでさせるのか。尋常ならざる気迫でウタは歌う。


    「―――耳を離さないで―――」


     ただ一つ、わかることが在る。


    「―――Hear my true voice―――」


     彼女の歌には、強い意志が、熱い血が通っている。

     行進する戦士の全てが彼女の鮮血なのだ。

  • 178FILM N.G.22/09/23(金) 22:18:51

    to be continued

  • 179二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 22:23:12

    最悪ブルックが眠り歌フランでウタを無理矢理眠らせるしか方法ないかも

  • 180二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 22:25:53


    筋肉風船とかやっぱウタウタチートじゃないかな…

    そしてそろそろ次スレになるのかな…

  • 181二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 22:38:45

    劇場版ボスを兼任した劇場版ヒロインだ
    面構えが違う

  • 182二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 22:41:52

    この感じはハッピーエンドかなと思って連載当初から追ってたけど
    この感じ滅茶苦茶胃に来ますね…ハッピー行けそうですかね…

  • 183二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 22:43:21

    シャンクス、バギー、海軍がエレジアに向かってるしそこからが正念場かな

  • 184FILM N.G.22/09/23(金) 23:38:56

    やあスレ主だよ
    ONEPIECEはジャンプで読んでるけど単行本は持ってないよ
    映画はFILMRED以外はどんな内容だったかよく覚えてないよ。スタンピードは地上波でやってたから見たよ

    この話しを書いてて一番驚いたのが、見てくれた人が「エミュが上手い」って言ってくれることだよ
    自分的にはルフィが一番動かしやすくて書きやすいよ

    以上唐突な自分語りでした
    御免!!!

  • 185二次元好きの匿名さん22/09/24(土) 00:33:41

    保守

  • 186二次元好きの匿名さん22/09/24(土) 06:41:20

    超面白いです続き期待保守

  • 187二次元好きの匿名さん22/09/24(土) 10:24:28

    ルフィはエミュが難しいと聞いたから意外
    本人視点が難しいのだろうけど

  • 188二次元好きの匿名さん22/09/24(土) 13:59:17

    大半の人はルフィが一番エミュ難しいって評判なんですがね…
    セリフにも違和感ないのすごいと思う

  • 189二次元好きの匿名さん22/09/24(土) 19:16:14

    追いついた!!
    映画とは違う展開を丁寧に描写してるからとっても読み応えあるね!

  • 190FILM N.G.22/09/24(土) 20:22:36

    保守感謝です。次のスレ立ててきますね

  • 191二次元好きの匿名さん22/09/24(土) 20:25:30

    ルフィどころか他のキャラの台詞もそれっぽい

  • 192FILM N.G.22/09/24(土) 20:26:32
  • 193二次元好きの匿名さん22/09/24(土) 20:34:26

    面白いです!
    埋め

  • 194二次元好きの匿名さん22/09/24(土) 20:38:18

    次スレが立ってんなら…感想言って埋めちまっても問題ねェよな?
    これで単行本未所持とかどうなってんだキャラの理解度!?
    あり得ねェだろ、人間の記憶力上…!

  • 195FILM N.G.22/09/24(土) 20:43:56

    一時間前の自分や昨日の自分がさァ!! 展開のキラーパスばっかしてくんのどうにかしてくんねェかなー!!?



    ……まあ一時間後のおれがきっと何とか畳んでくれるからヨシ!!!

  • 196二次元好きの匿名さん22/09/24(土) 23:24:45

    スレ立ちありがとうございます!
    埋めておきますね!!

  • 197FILM N.G.22/09/24(土) 23:34:33

    Thank you for reading

  • 198FILM N.G.22/09/24(土) 23:35:14

    「また見てね」

  • 199二次元好きの匿名さん22/09/24(土) 23:37:44

    あんた絵も描けるのかよぉ!?

  • 200二次元好きの匿名さん22/09/24(土) 23:39:52

    200なら語り継がれる

オススメ

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