【閲覧注意・SS】ウタの唄 3スレ目

  • 1黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/18(日) 01:47:50
  • 2二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 01:54:46

    たて乙だが時間ァ!!!

  • 3二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 01:55:16

    保守

  • 4黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/18(日) 01:55:41

    クハハハ!即死判定は避けたいけど本文が書き進んでないんなら…
    各キャラの現状を軽くまとめてお茶を濁してもいいよな?

  • 5二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 01:57:15

    保守

  • 6二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 01:57:25

    このレスは削除されています

  • 7二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 01:57:37

    鬱々しい雰囲気が凄く好き
    それはそれとしてウタちゃんには幸せになってほしい

  • 8黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/18(日) 02:03:52

    ウタ


    ネズキノコを生食して線虫に脳をやられたせいで五感が発狂して地獄めいた世界に囚われっぱなしのかわいそうな歌姫。覇王色持ちはまともに見えるのでルフィたちを頼りに何とか生きてる。


    一見して回復傾向にあるものの、聞く喜びを失ってライブも作曲もできないしモチしか食べられないので実はジリ貧。頼みの綱はあのシーザー。


    ルフィ


    現四皇。エレジア事件の直後にウタのカウンセリングをしつつWCIに殴り込んでビッグマムを速攻で撃破した狂犬。

  • 9黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/18(日) 02:07:55

    ゾロ

    副船長。カタクリとの戦闘で覇王色に目覚めた。言わずと知れた幼馴染推しなのでモチを肴に一歩退いたところから見ている。




    カタクリ

    モチ屋。ウタからの印象はモチを食べさせてくれる優しいお兄さん。




    シーザー

    科学者。ウタの五感を侵食しない無味無臭の気体になれる上に気体操作でウタウタを制圧でき、さらにネズキノコ中毒の研究を進めてくれてる超有能。それはそれとして文句なしのクソ野郎。

    ビッグマムに折檻を受け続けた結果フィジカルも無駄に鍛えられている。

  • 10二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 02:09:56

    これシーザー確保しての応急処置間に合わずにメンタル限界迎えてたらバッドエンドルート突入だったのかな?
    自分の目玉くり抜いて「治ったよルフィ!今度も負けないよ勝負しよう!」とぽっかり黒い闇が空いた目元と子供の頃と同じ血まみれの笑顔を向けて立ち尽くしてるルフィに飛びつくウタ

  • 11二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 02:11:13

    >>10

    めくらエンドとかしんど過ぎるわ!!?

  • 12黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/18(日) 02:18:41

    サンジ



    シェフ。自らウタに食の喜びを取り戻すことを苦渋の判断で諦め、チョッパーらと共同し栄養摂取と咀嚼を続けさせることに徹した。この経緯もあってカタクリに多大な恩義を感じていたりもする。



    ロビン



    考古学者。家族と引き離され世界を敵に回したウタへの同情心は人一倍篤く、能力の適性もあってウタの介護を任されている。ハンコックへの使者としても抜擢された。




    バルトロメオ



    ファンボーイ。ウタの護衛を陰ながら続けた功労者。ウタの事情を知らない大船団とサニー号が合流した際にはバリバリの能力でウタの聴覚を保護し(1スレ目>>41)、同時に自分自身の存在も一貫して隠し通した縁の下の力持ち。ダイフク兄さんをナレーションで撃破した。

  • 13黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/18(日) 02:28:15

    他の一味のメンツはウタを見守るほかないしシャンクスやゴードンはウタの病状を知らされてないから今のところ上記のキャラがメインになってるシュロね

    ちなみに狂気は元ネタ通り視覚から他の五感に伝染したのでウタがそれに勘づいていれば藤虎って琵琶法師になっていた可能性もあるシュロ

  • 14二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 02:29:41

    (けど盲目のウタはちょっと見てみたいかも)

  • 15二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 08:56:12

    保守

  • 16二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 10:28:05

    前スレで怯えた目で見られる医者二人の顔を思い浮かべてひどく興奮した
    どっちも「化け物」として見られて怯えられる事に関してはド地雷だろうからな…

  • 17二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 15:12:57

    盲目エンド描いてみました
    バッドエンド「漆黒の闇と懐かしき笑顔」
    条件:タイムリミットまでにビッグマムを倒せないorシーザーを確保できない

    ルフィたちの攻撃も虚しくビッグマムをなかなか倒せずこのままでは全滅だとローに進言され撤退することになるルフィ一行
    しかし何度試しても予定を超えて数日も時間を無駄にするだけの状況に一度船に戻ることに
    しかし船に連絡がつかず急いで戻ると時間がかかりすぎた故に過労で倒れたロビンが!?ルフィが慌ててウタを探しに部屋に入ると部屋に佇む彼女を見つけ無事で安心するそして彼女は振り返り幼き思い出の頃と同じ笑顔を見せた

    「治ったよルフィ!」

  • 18二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 18:22:22

    >>17

    シーザーが絶叫する光景を更に長いこと見続けた結果がこれか……納得はするわな(白目)

  • 19二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 18:50:00

    ローなら何とか治せそうかな…視神経ってかなり単純と聞くし…

  • 20二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 18:50:35

    >>19

    (肉体は)直せそうだけど(治せるとは言ってない)

  • 21二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 18:53:36

    保存していつでも治せるようにはして、食べて寝て安定させてからか…
    あれ、ホントにいつでも目を治せるならありなのでは…?そのくらいならがっつり目隠しでも作るほうがいいけど

  • 22二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 18:58:27

    時間が経ちすぎてたら眼球が常温でダメになってるだろうし無理やり素手でくり抜いて引きちぎったから神経も瞳孔もズダボロだろうな

  • 23二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 19:00:55

    >>22

    保管は冷凍したらいいし神経は…時間を掛けず着けるならなんとかなる、よってダメだな

  • 24二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 19:13:03

    こんなことをしでかした時点で心は壊れてるそれ故バッドエンド

  • 25二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 19:20:15

    目をつぶった時点で嫌悪感溢れる音がへってんならいいんだけどどうも目が使える時点で連動して副作用出てるっぽいんだよなぁアレ

    ロー…1回ウタの眼球取ってくれ…

  • 26二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 21:33:55

    けどルフィに手を引かれて嬉しそうに歩くウタは見たいと思いました
    すいません自首します

  • 27二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 22:13:42

    >>26

    続けて…!

  • 28二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 02:56:53

    ほしゅ

  • 29黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/19(月) 06:31:53

    保守ありがとうございます
    この月曜を利用して書き進めたいとは思ってます(更新するとは言ってない)

  • 30二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 08:06:27

    >>27

    文才はねぇし絵心もないので無理!!

  • 31二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 08:17:59

    盲目ウタは精神崩壊の影響で幼い性格になってると思い出の彼女を知ってるルフィのメンタルに刺さりまくっていい感じになりそう(人の心)

  • 32二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 15:15:16

    ほし

  • 33黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/19(月) 19:49:35

    (早々にスレ立てといてなんですがまとまりがもうちょっと…)
    (本誌もあるので明日には頑張りたいです)

  • 34二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 21:11:26

    ほす

  • 35二次元好きの匿名さん22/09/20(火) 01:10:16

    しゅ

  • 36二次元好きの匿名さん22/09/20(火) 10:42:48

    保守

  • 37二次元好きの匿名さん22/09/20(火) 16:51:15

    保守

  • 38二次元好きの匿名さん22/09/20(火) 23:00:44

    保守

  • 39二次元好きの匿名さん22/09/20(火) 23:22:02

    保守

  • 40黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/20(火) 23:56:51

    ようやく目処が立ったので明日には投稿するシュロ
    やっていたのは“海賊無双4”……!コエテクが作った“時間泥棒”だ……!

  • 41二次元好きの匿名さん22/09/21(水) 08:23:58

    保守

  • 42二次元好きの匿名さん22/09/21(水) 14:26:40

    しゅ

  • 43二次元好きの匿名さん22/09/21(水) 16:00:28

    このスレのシーザーのバリエーションが豊富だな

  • 44二次元好きの匿名さん22/09/21(水) 17:29:29

    >>43

    クズとゴミとカス

    様々なシーザーを豊富に取り揃えております

  • 45二次元好きの匿名さん22/09/21(水) 19:32:21

    保守
    誰か日付変わるくらいに保守を頼む

  • 46二次元好きの匿名さん22/09/21(水) 23:38:18

    保守

  • 47黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/21(水) 23:41:06

    そろそろ投下しますね…

  • 48黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/21(水) 23:44:37

    ──ホールケーキアイランドの瀟洒なホテル、そのラウンジの一角。

    ルフィのマントを羽織った女が己を愛しげに抱きしめる異常事態に際し、ハンコックの脳は限界に達し凍結している。

    「……!!!!???」
    「あったか……」



    「……何見せられてんだおれら?」
    「次にお前は『何聞かされてんだ』という」

    十数秒、あるいは数十秒の抱擁の後、顔を青くしてウタは離れた。

  • 49黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/21(水) 23:46:52

    「す、すいません!すいません!私、き、距離感、下手で!」
    「い……いや、構わぬ!ルフィの残り香ごとまとめて抱いてくれるわ!」
    「あうっ!や、やわらかひ……!良い匂い……!」

    「すーっ……」「すーっ……」
    「ふう……」「ふう……」

    「何聞かされてんだ。……ハッ!?」
    「フ」

    カタクリのサムズアップ。

  • 50黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/21(水) 23:50:31

    「やー、よかったよかった!」

    それらを見て、ルフィはあっけらかんと笑った。

    「……わらわへの要件とは、単にこの娘に会うことか?」
    「それもある。……まぁ、色々あってさ」

    ──ルフィが話す事情。エレジアでのウタとの邂逅、ウタの野望、その顛末。秘すべき事項を慎重に隠しつつ、彼女の苦しみがいかに耐え難いものかを伝える。

    この場にいる者だけが、今のウタにとっての世界のすべてであることを。他は何もかもが血とミミズに覆われた異形であることを。

  • 51黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/21(水) 23:52:18

    「おれにもモチくれよォカタクリ」
    「……」
    「イヤそう!」
    「……”すすりモチ”!」

    一方、シーザーとゾロの前に水気の多い柔らかなモチと新鮮な水が供された。水でさらに柔くしながら一息に飲み干せというのである。 

    「死ぬ気で食えってか!やってやらァ!……うめ……ェ」
    「はは、アホが。こんなもんこうして……ッ」
    「シーザーッ!ロロノアーッ!」

  • 52黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/21(水) 23:54:18

    「──あはは!」
    「アイツらアホだなー」
    「……なるほど、その病状で頼りがルフィとあやつらのみか。道理でわらわに白羽の矢が立ったわけじゃ」

    胸に抱きつきながらニコニコと笑うウタ。然るにその視線が尋常ではないことに、ハンコックはとうに気づいている。

    (一にわらわ、二にルフィ、三にあやつら……それ以外に意識をやることが一切ない。……症状が真実なら、それも当然か)

  • 53黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/21(水) 23:56:15

    どこも血まみれ赤まみれ。万国に特有の薄甘い芳香や陽気な建築物は彼女の脳にどう捉えられているのやら。

    「……?」

    この幼げな目が、耳が、鼻が、唇が、肌が。地獄を全身で感じているというのなら、少しくらいは慰めてやるのが女人の国の女帝たるものの責務であろう。柔こい頬に手をやってさする。

    「あ、あ、ああ~~……」
    (ちょろいのう)

    髪に指を添わせ、一通りさすって満足する。哀れにもウタは半ば石化していた。

  • 54黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/21(水) 23:59:17

    「お前は島のこともあるから長居は頼めないけど……どうしても触れ合える相手は必要だと思うんだ」
    「耐えられないよ私!?」
    「留守はレイリーとシャクヤクに任せている。数ヶ月程度ならば問題はなかろう」

    多分。遺憾なくルフィに会うためにもろもろの準備は済ませてあるのだ。エレジア事件とクロスギルドとの戦争で余力を削りに削られた海軍に、敢えて”麦わら”と対峙する戦線を増やす選択肢は取れまいし。

    「そりゃそうか、ハンコックならそのくらい考えてるよなァ」

    感心したように笑うルフィの顔がまぶしかった。

  • 55黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/22(木) 00:00:50

    ──そのころ。

    「……ん?おお、例の連中が着いたのか!分かった、すぐに会いに行く!」

    先刻死にかけたシーザーが、何事かを聞いてホテルからいそいそと出て行く。彼にはまるで似合わない悪意の欠けた表情で。

  • 56黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/22(木) 00:02:47

    ──シーザーの研究所、WCI支部。事実上の本部。パンクハザードから運び込まれてきた大量の物資を除染し、搔き集めて増設されつつある異形の要塞。

    その内部には数多の実験体が詰まっている。今のところペロスペローらに黙認されているのは、その研究成果を上納する義務と”万国”民への非人道的扱いを厳禁する責任を果たしているから。

    もちろん周囲におおっぴらに告げてはいない。何にせよ、多少の理性はビッグマムに地獄の折檻を受け続けた際に会得せざるを得なかった。このシーザーでさえ。

  • 57黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/22(木) 00:05:28

    (自慢してェ〜!)
    (“殺戮兵器”なくしてシーザー・クラウンは在り得ない……魚から水を取り上げて生きていけるわけねェだろう……?)
    (だから、こっちも切り札は隠しておくのさ……シュロロロ!)

    ニコ・ロビンには確実に勘付かれている。カタクリやペロスペローあたりの目ざとい連中も、自分が“特効薬”を掌中に収めたことは察するだろう。どうあれ──

  • 58黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/22(木) 00:06:57

    (おれの手にある“ヤツら”にしかウタはどうしようもねぇ)
    「シーザー様!例の”彼”と”彼女”はここに!」

    台車で運ばれてくる大型のタンクが2つ。明らかに人間の入る形状でないそれらを、シーザーは数年ぶりに知己を見るような目で迎えた。

    「……自分は失礼いたします」
    「そうしろ。……よう、久しぶりだなお前ら」

  • 59黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/22(木) 00:10:11

    助手を追い出してシーザー自ら栓を開けると、赤黒い液状の肉が垂れた。ドロドロと流れるそれらは触手と全方向に収縮できる筋肉を形成し、醜悪な肉塊としての本質を露わにする。そして口──機能からこう形容せざるを得ない穴──から雑音を漏れさせた。

    「シーザー!パングバザードカラダズゲテグレデアリガドウ!……ケドナンダッデボグラヲヅレデギダンダイ?」

    「昔のお前の同類が現れたんだ」

    「ババッ!ボグライガイニギノゴヲナマデタベルビドガイルンダナ」

    笑ったように肉塊は震えた。見るにおぞましい光景であるが、何食わぬ顔でシーザーは眺めている。

    肉塊がもう一方のタンクの栓を開いた。

  • 60黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/22(木) 00:11:26

    「ムギュヴヴヴヴ……ブビオイイイイイ」

    垂れた汚液がもう片方の肉塊に絡みつき、ジュクジュクと音を立て、まじりあう。恋人同士が抱き合って手を絡めるかのように。

    「バカップルどもが」
    「アラ、ゴンニヂバ、ジーザー」

    タンクの中身は似たようなものである。厳密に見れば仔細の違いは大いにあるが、敢えてそれらを意識する意味は実際のところない。

  • 61二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 00:13:33

    こいつまた余計なことをしそうだぞ…

  • 62黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/22(木) 00:13:38

    「──ゾノビドヲワダジダヂニナオジデアゲデボジイノネ?」

    聞くに堪えない雑音、という意味ではこちらのほうが幾分かひどい。

    「まァ……な。治してやるとその瞬間におれの首が飛びかねないんだが」
    「ワゲアリノヨウズダネ。ギミラジイナ」

    ゴボゴボと泡立つような発声で”彼”が軽口を挟む。

  • 63黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/22(木) 00:15:36

    「いつものことだろ。まァ、お前らの世話になるのは当分先のことになるだろうから……見つからないようこの建物で適当にイチャついてろ。メシはネコとか培養肉で工面してやるから人には手出すなよ。おれが殺されるから」
    「キミラジグモナイヤザジザダナ……ゼワニナル、アリガドウ」
    「アリガトウ」



    「……じゃあな。フミノリ、サヤ」

  • 64黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/22(木) 00:18:03

    ──この数日前、ジェルマ66旗艦、セント・ジェルマン号。

    「やめろ……やめでぐれ……!」

    ジェルマ66は“黒ひげ”エドワード・ティーチの襲撃で瞬時に壊滅した。“怪鳥”ジャッジの悲鳴じみた懇願が響く。

    イチジ、ニジ、ヨンジ。実子の三名が半死半生の深手を負わされ、さらに精鋭のクローン兵の惨死体が無数に転がる広間で、銃口をいくつも向けられてジャッジは跪かされていた。

  • 65黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/22(木) 00:20:28

    「ゼハハハ……一つ聞くけどよォ、ジャッジ!お前ェ戦争屋なら『やめろ』とか『やめて』って言葉は聞き慣れてるんじゃねェのか!?」
    「聞き慣れているとも!見慣れてもいるとも!だから……だからやめてくれ!あんな風に惨めに死にたくない!まだ死ぬわけには……!」
    「こ、この野郎……!」

    黒ひげも呆れる生き汚さを晒すジャッジ。しかし、その情けなさが彼の命を繋いだ。

    「まァ、夢を追う姿勢は好感が持てるな!……そういやレイジュはどこにいるんだ?」

  • 66黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/22(木) 00:21:36

    「し、知らんものは知らん、よしんば知っていても誰がお前に教えるものか!」
    「そりゃそうか。じゃあジャッジ、お前おれの仲間になれ!」


    「!?」

  • 67黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/22(木) 00:22:51

    「──で、ジェルマ66を併呑したわけか。クローン兵をもう少し生かしておくべきだったな」
    「ええのんか?女の子のクローン頼んでええのんか〜?」
    「ヌルンフッフッ!レイジュのクローンでも量産してほしいわねぇ」

    シリュウ、バスコ、デボン。全員が兵卒の返り血に塗れている。呻くニジがまたも踏みにじられた。

    「悪鬼どもめ……!」

    彼らに虜囚の辱めを受け、さらには息子と娘の尊厳を愚弄される。またもジャッジは泣いた。

  • 68黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/22(木) 00:24:28

    「クローン兵力はまだまだ“在庫”があんだろ、予算はやるから増産してくれよ。お前らの財産だけどな」

    「ううう」

    「コレはもういいだろう……”次”はどうする?」

    シリュウの問いに、黒ひげは顎に手をやって熟考する。明晰な頭脳と異常な思考回路がフル回転し、利益と危険とを天秤にかけたり放り捨てたりを繰り返す。そこにデボンが声をかけた。

  • 69黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/22(木) 00:26:51

    「女ヶ島とかどうかしら?首切りがいのある屈強な美女がウヨウヨいそうよね」
    「ハンコック抜きの女ヶ島はレイリーだけじゃなく“赤髪”の傘下が留守を守ってるからなぁ……勝てるがいったんスルーだな!碌な悪魔の実がないから旨味がねェ!」
    「あら残念」
    「……ん、”実”か」

    黒ひげ、ポン、と手を打つ。考えに考えて最高のいたずらを思いついた子供の表情。

  • 70二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 00:28:34

    このレスは削除されています

  • 71二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 00:30:18

    このレスは削除されています

  • 72黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/22(木) 00:31:57

    「どうせ狙うなら……一石二鳥、いや三鳥だな!“旧七武海”“旧四皇”──“現四皇”!!」





    「──殴りこんじまおう“万国”!パッと行ってパッと帰りゃ容易い“戦争”だ!」

  • 73二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 00:32:31

    何いってんだこいつ…

  • 74二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 00:34:13

    ウタウタの天敵が乗り込んでくる!?

  • 75黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/22(木) 00:35:20

    今回はここまでです。


    最後の最後で2回もコピペに失敗し……!スレ立てから4日も更新を怠ったこと……!

  • 76二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 01:24:30

    困った…とんでもない規模の戦いになってきたぞ?

  • 77二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 02:22:56

    フッフッフッフッ!退屈さねぇなぁ!神SSは!

  • 78二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 02:55:10

    あ…ルフィが一度カチコミ成功させてるからか

  • 79二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 09:07:43

    保守

  • 80二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 14:36:07

    しゅ

  • 81二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 18:43:44

    ローの能力でビッグマムの胃の中に入ったルフィが「マムにもウタをくるしめる悪夢にも一発かましてやる!」ってなってる幻覚が突如降りてきた。その内時間が出来たら短いssに纏めて投下しようと思う。

  • 82黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/22(木) 23:58:54

    (黒ひげ海賊団だと雨のシリュウが一番好きです。軍服めいたガチガチの制服とポン刀のビジュアルに大将級の強さが備わった剣士なんて活躍が見たいに決まってますよね)

    (更新は明日か明後日の夜に…)

  • 83二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 08:17:26

    保守

  • 84二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 14:22:32

    しゅ

  • 85二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 19:52:02

    ほし

  • 86黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/23(金) 23:52:25

    明日の23時頃から投下する予定です。残り一割ほどと推敲は明日済ませますね…

  • 87二次元好きの匿名さん22/09/24(土) 06:16:09

    ほしゆ

  • 88二次元好きの匿名さん22/09/24(土) 13:53:42

    保守

  • 89二次元好きの匿名さん22/09/24(土) 18:18:57

    ほしゅ

  • 90二次元好きの匿名さん22/09/24(土) 23:58:19

    このレスは削除されています

  • 91黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/24(土) 23:59:57

    ごべーん!!明日!明日には8000字くらい投稿するから!



    >>86 取り消すわけにはいかねェがなァー!

  • 92二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 00:07:02

    ”文豪のウソ”は許すのが男だ(スレ主のペースで無理せず作ってね♡)

  • 93二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 09:24:19

  • 94二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 17:42:25

    しゅ

  • 95黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 20:59:27

    私はワンピース本編が大好きでねェ……
    日付が変わる前に更新をすませたいのだよ

    ということで一万字弱投下します

  • 96黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 21:01:35

    ──日目

    恥ずかしいことは鍵付きの日記の方に書くことにする。『健全な乙女ならば秘め事の一つはあるじゃろう』だって。

    健全かぁ。少しだけメンタルはまともになってきたかな。

  • 97黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 21:02:46

    ──日目

    既に分かっていたことではあるけど、自分が着たとたんに衣服がまともに見える。……わけがわからない。ぶよぶよの血生臭い皮に手を通した瞬間、スイーツの芳香のする桃色のドレスに変貌するのだから。

    で、なぜか私自身は一貫してまともに見える。そんなにひどい顔をしているのか、とか、自己嫌悪によるものだろうか、とか、色々自分なりに考えていたが……

    シーザー曰く、「人間てヤツは誰しも五感で近くした情報に脳内で補正をかけている」らしい。そして、その作用が悪意すら感じるほどに醜悪にゆがめられているのが私の病気であるとも。

  • 98黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 21:04:03

    だから、私が「ウタの服」とか「ルフィの帽子」とか服装を個人の一部と認識した途端に正常に見えるのだそうだ。「いくらお前でも人間を思い浮かべるとき常に全裸で想像するほどスケベじゃねェだろ」とか言われた。超失礼。

    ハンコックさんに少し砕かれてら。

  • 99黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 21:05:04

    ──日目

    体力がガタガタに落ちてることに今更気付いた。階段を下りた時、足を滑らせたからだ。ルフィが抱きかかえてくれたから事なきを得たものの、ゾロが物凄い顔をしてた。

    ……感触は嫌だけど、今度から手すりを掴むことにしよう。最期に見るのが血まみれの床なんて最悪だもんね。

  • 100二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 21:06:21

    待ってた

  • 101黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 21:06:45

    ──日目

    踊った。

    (数行分丹念に塗り潰した跡)

    結論、外に出て荒療治するしかない。



    「ふー……」

    ウタは悄然とした顔つきで何日分かの記述を読み返す。それから鍵付きの日誌を取り上げ、そちらもまた読み始めた。

  • 102黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 21:07:48

    ──日目

    後から確認できる文章に本音を気兼ねなく書けるっていうのは気分がいい。不安定だった時期は割と無茶苦茶書いてたし、そういうのはこっちにまとめてしまう。

    ──日目

    シーザーにルフィを舐め回していた過去を知られているのはヤバい。アレはアレでちょっと感謝してるけど許せない。消そうかな。

    大っぴらには言ってくれないけど、ハンコックさんがルフィと遠出に行ってきたらしい。いいなぁ。いいことだ。

    多分、あの人みたいな人がルフィには相応しいんだよね。ルフィが言えない時に言うべきことを言ってくれる人だと思う。

  • 103黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 21:09:15

    ──日目

    足にちょっと痛みは残ってるけどルフィやゾロやチョッパーの手を煩わせるのも悪い。自然に治るのを待つ。氷を当てたり薬を塗ったら腐った泥団子みたいな感触だったから放置だ。

    ……痛みも反転してくれればいいのに。

  • 104黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 21:10:18

    ──日目

    軽く踊ってみた。……何度も何度も練習してきたから音楽が無くても踊れはするし、極彩色の部屋では景観や感触に耐えられるけど。ハッキリ言ってジリ貧だ。新曲のインスピレーションが湧くはずもない。

    足は痛いしもう寝よう。


    人生このままか。




    「……もう。何書いてんの、私」

  • 105黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 21:11:58

    『人生このままか』そう書いた自分が急に憎らしくなって、鍵付きの日記帳に二重線を引く。だが、書き直すに相応しい言葉は見つからなかった。

    「私の人生がこのままでも、ルフィはついていてくれるんだろうなぁ……」

    「……違う。お膳立てはしてもらってたけど……あの日歌えたことを思い出せ、私!」

  • 106黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 21:14:23


    『わたしの声、きっと変に聞こえるから』と書かれたメモを取り出した。顔も知らない娘がくれた、千や万の声援に並ぶ愛の言葉。


    それをしおり代わりに挟んで、ウタは鍵付きの日誌を閉じた。

  • 107黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 21:16:28

    ──翌朝のサニー号。

    「外に出たい?」

    ルフィが首を傾げた。一度記憶を垣間見たルフィにとって、ウタのこの望みはにわかには信じがたい。

    「……うん!歌うだけなら不可能じゃないってこの間わかったでしょ」
    「だから、運動とか?ほら、ずっと引きこもりだと肌も荒れちゃうしさ。おかしいのは脳みそだけだから、身体に無理させてるもの」

    ぱん、と手を合わせて懇願するウタ。

    ──筋は通っている。通っているが。

    そんな彼女を、何かしら言いたげな表情でルフィは見ている。

  • 108黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 21:18:20

    「……本当にいいのか?どこまで行っても血まみれなんだろ」
    「ええと、例外がいるかもしれないじゃん。……自分のことだから、少しでも自分で手がかりを探したいの」

    自分で探す、という言葉を聞いてどことなく硬かったルフィの表情が綻んだ。

    「なんだそっか!ウタがそう思うんならおれが止める理由はねェな!……あ、でもまだ一人では出歩けないだろ?おれが──」

  • 109黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 21:27:07

    「わらわが同行しよう。ルフィ、そなたはその眩しさがゆえに人目を惹きすぎる」

    そこにハンコックが口を挟む。この海で最も人目を惹ける女が言えたことではないが、あながち間違いではなかった。

    「ハンコックも大概だと思うけどなァ」
    「ロロノア・ゾロは一室で迷子になる男、カタクリはあの巨体かつ多忙で有名人、シーザーは論外……ならば、わらわが敢えて美貌を封じて案内をする他あるまい」
    「……じゃあ、頼んだ!」

    白を基調としたフォーマルな服装にサングラス──視線しか美貌は隠せていないが、ハンコックは特に気にせず出て行く。桃色のフードを目深に被ったウタも大概目立つ格好ではある。

    ルフィは笑顔のまま、そんな二人が見えなくなるまでサニー号から見送った。

  • 110黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 21:27:58

    ──日が沈みつつある時刻、ホールケーキアイランドの一角。かつてホールケーキ城があった場所の近郊に、シャーロット家の家人が経営する大病院がある。
    そのVIPルームで安らかに寝息を立てるシュトロイゼンを、鬱屈した表情でペロスペローは見ていた。

    ──実父の死に際が、近い。あえてお互いに父子と呼び合うことはなかったが、五十年来共にリンリンを支えてきた家族。

    「総料理長。……今まで世話になった」

    シュトロイゼンは答えない。

  • 111黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 21:29:39

    「大将を……母親を殺された敗軍の将、それも長子の首が未だに繋げられてやがる。運命の塩辛さだ、情けなくて涙が出ちゃうぜ」

    「戦後処理を頑張っちゃいるが、“麦わら”と大船団の連中の気まぐれ一つで何もかもがオシマイだ。……これはママが健在でも似たようなもんだな」

    「結局やることは何一つ変わらねェ。おれ達兄弟が命や年月を投じて奪ったナワバリや傘下が、失われていく一方ってだけで……ペロリン♪」



    「おーい、いるかペロス?」

  • 112黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 21:30:18

    コン、コンと扉が叩かれる。

    「“麦わら”、入……いや、おれが出る」

    モンキー・D・ルフィ。母親とビッグマム海賊団の直接の仇であり、右腕の間接的な仇。この男がなぜシュトロイゼンの見舞いに来ているのか、漠然とは知っている。彼をそれとなく誘導し、適当な座椅子に腰掛けさせる。
    「お前の目当てがククククの実なのは先刻承知している。欲しけりゃ殺して奪うなり誘拐なりすりゃいいものを、キャンディみてェに甘ェ行動だな」

  • 113黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 21:31:41

    「ヨボヨボの爺さんにそんなことしねェよ。それに……性に合わないけど、もうしばらくこの島に留まるしかねェんだ」
    「ありがてェな」

    皮肉と本音が半々。ペロスペローとしても新四皇の武力と名声を利用せざるを得ない事情がある。そのために多忙なカタクリを派遣したり、プリンの身柄を貸し出したり、サンジやその他の一味を招いて茶会を開いたりして歩み寄りに努めているのだ。

  • 114黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 21:32:42

    「……そういやペロス、甘いもんって食べ過ぎたら早死すんのかな」




    「は?」ペロリン

  • 115黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 21:33:40

    「アメ食ってる相手によく言えちゃうなァ。食べ過ぎたら何でも毒になるだろ、ママじゃねェんだから」
    「……じゃあ、食って長生きするもんってあるのか」
    「三色栄養の取れた適正な量の……待て、お前のとこの医者か料理人に聞け。私はお前の保険の先生じゃないんだよ“麦わら”」

    「そりゃそうだけどよ。でも、兄貴ってのはなんでも聞かれるもんだろ?」

  • 116黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 21:34:58

    「……?……ああそうか」

    ルフィに処刑された兄がいたことに今更ながら思い至る。リーダーシップは本物だが、それとは別に根幹の気質が弟なのだろう。

    「こっちからも聞かせてもらうが。どうして今更死ぬのを恐がるようになりやがった?初手でママに挑んだ挙げ句、寿命縮めて勝ったお前が」

  • 117黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 21:35:43

    「早死にしたくて寿命縮めるほどイカれてねェよ。どうしてもすぐにお前の母ちゃんを殺して、シーザーをとっ捕まえる必要があったからああしただけだ」

    「……くくくく。あんなガスゲス野郎の為によくやったよ、お前」

    「あいつの為じゃねェ」

    イヤそうな顔。

    「じゃあ、なんだ。女か?」

  • 118黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 21:39:05

    「女だ」
    「えっ」
    「あれ?カタクリやプリンから聞いてなかったのか?ウタだよ、ウタ。お前らが誘拐しようとしたあのウタだ」

    「んな……」

    ──歌姫?

  • 119二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 21:43:01

    このレスは削除されています

  • 120黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 21:44:02

    (ウタをサニー号に囲ってるのは知ってたが……幼馴染だか妾だかを拐われかけた報復のため“だけ”にこの国滅ぼしやがったのか……!?父親の“赤髪”は……!?いや、それなら実際に手を出したオーブンやブリュレになんの咎めもないのは?)



    (──結局コイツは、何考えていやがるんだ!?)

  • 121黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 21:44:50

    「……ウタはよ」

    どうもこの男、立ち振舞いから受ける第一印象とは裏腹に謎が多い。“歌姫”ウタのいる地獄を知らされるのと同時に、ペロスペローは否が応でもルフィの性質に詳しくならざるを得なかった。

    「──なるほど、道理でカタクリやプリンが言わねェわけだ。どこも似たような気苦労を抱えていやがる。覇王色ねェ……」

  • 122黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 21:46:15

    「“海賊女帝”をいきなり呼びつけやがったときは刺し違えてでも止めてやろうと思ったが。そういう次第か、ペロリン」
    「あー……その、お前らには悪いことしたな」
    「今更その件で文句は言わねェよ。奔放で傲慢だが最低限の仁義は通せる女だ」

    ──その時、焦燥を感じさせる足音と息遣いが聞こえた。誰かを探している様子である。

  • 123黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 21:48:06

    「は、はぁ、ッ、ペロスペロー様!緊急事態です!こちらを──」

    伝令を務めた従者による耳打ち、手渡される紙切れ。

    「何だと!?──万国全域に通告しろ!そうだ、一時間の放置で一島が皆殺しにされると思え!」
    「どうしたんだよ!?」
    「来やがった!”黒ひげ”の艦隊が、この万国に殴り込みをかけに来やがったぞ!」
    「……!!?」

  • 124黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 21:50:09

    「……どうじゃ。成果はあったか」
    「ごめんなさい、何も……付き合ってもらったのに」

    血、内臓、胆汁。悪臭に雑音。それらの渦巻く光景は、残念ながら特筆するほどの変化をすることはなかった。今歩いているのは、人通りを避けられる閑静たる海岸沿い。海の血の匂いこそあれ、甘い芳香の反転した悪臭は避けられる。

  • 125黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 21:51:48

    ──なぜか、赤い海と血の潮風にはあまり恐怖を感じなくなっていた。

    幼心に刻まれた、海を見る度に感ずる絶望が反転していたのやもしれない。赤い海から幾度も帰ってきたルフィやゾロの印象が内心でとても大きなものになっていたのかもしれない。

  • 126黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 21:54:21

    「無駄足ではないぞ。単純な成果はなかったやも知れぬが、そなたは自ら立ち直ろうとする意志を示したではないか」


    自らの意志で軛からの解放を目指す少女を助けない理由が、ハンコックの何処にあろうか。──あの日の彼らも、きっと同じ心持ちだったはすだ。

  • 127黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 21:55:26

    「全部ハンコックさんのおかげだよ。あの子達を追い払ってくれてなかったら、今頃船に戻ってメソメソ泣いてたもの」

    ──歓迎のつもりで飛び出してきたホーミーズをいつもの調子で片端から蹴り飛ばしたところ、ウタからのハンコックへの視線はより熱を帯びたものになった。

    なお、蹴撃にあまりにも躊躇がないものだからウタとしては特にホーミーズへの同情は湧いていない。野良犬やクマか何かだと思っている。

  • 128黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 21:56:13

    「……いつまでかかるか、わからないけど。治ったら、また同じ道を歩きたいな、って。今度はみんなと──」

    ──何事か答えようとしてハンコックが唇を動かした瞬間、大音響でペロスペローの声が響いた。



    『万国全域に告ぐ!“黒ひげ”の艦隊が攻めてきた!海岸と河川から可能な限り離れ、高所や頑丈な建物に避難しろ!その後は……追って指示する!現場では兄や姉の指示に従え!』

  • 129黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 21:57:13

    思わず耳を抑えるウタ。

    「……え、え?」
    「わらわの手を離すな。……帰るぞ、ルフィのもとへ!」

  • 130黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 22:00:06

    ──サーベル・オブ・ジーベック号は、長大な丸太を両舷にくくりつけた巨大な海賊船である。黒い帆を掲げたその船上で、マーシャル・D・ティーチは野心滾る双眸と強靭な両腕を“万国”に向けて指し向けた。


    「ゼハハハハハ!



    ──まずは一合目ェ!」


    グラグラの実の最大出力で激烈な大津波を巻き起きし、港湾施設と沿岸にある万物に致命打を与える。さらにサンファン・ウルフの巨体が押し退けた海水を殴り、ローコストで大波を幾度も巻き起こした。

  • 131黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 22:01:37

    ──後日の集計では、この津波のみで一万人を越える犠牲者が発生したと算出されている。

    橙色の空と濃紺の海を砕け散らせ、黒ひげは大笑した。
    黒い空と赤い海が砕け散る様を、ウタは呆然と見ていた。

    「ここはおれをお使いくだせェ!」

  • 132黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 22:04:01

    ウタの目前に肉塊が転がり込む。これまで陰ながら見守ってきたバルトロメオだった。

    「きゃっ!?」
    「申し訳……!ハンコック様、この津波は頑丈な地下に籠っておれの“バリアボール”で凌ぐほかねェ!あの質量と速度に対応できるのはジンベエ先輩くれェで……!」
    「……それが得策じゃな。頼りにしておるぞ。ウタ、ついて参れ!」
    「恐悦至極だべ!」

    ──三人はシャーロット家の家人が住む屋敷を訪れ、その地下室に潜った。家主はウタと同じ年頃の娘。彼女は蛇姫と歌姫とニワトリの来訪に目を白黒させつつも、粛々となすべきことをこなしてみせた。

  • 133二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 22:06:42

    >>99

    ゾロのトラウマ抉られとる…

  • 134黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 22:06:57

    地鳴りと海水の狂乱が止まるのには相当の時間を要した。マムの血族だけあって、その家の地盤と地下室も尋常ならざる強度を誇ったようである。

    「家が……でもよかった。地盤が崩れたりはしなかったようですね。私が外を見てきます」
    「まだ何があるか分からねェべ。おれが護衛を──」

    震動が”一閃”。

  • 135黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 22:08:11

    「あがぁッ!?」

    まず、バルトロメオが吹き飛ばされた。瞬く間に脱力し、口から血を吐いて倒れ伏す。

    「ウィ〜〜〜……この女と仲ようしてから殺してええのんか~~?」

    続けて酒瓶を携えた大男が現れる。シャーロット家の娘を見るや否や、大男はその凶相をにいっと歪めた。

    「た、助けて、ママっ──」

  • 136黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 22:11:45

    ゴキャ、と硬質なものが砕け散る音。強烈なアルコール臭と、血の匂い。それらが渾然一体となって猛然と漂った。

    「ゼハハハ、んなことしてたら作戦に支障が出ちまうじゃねェか!少ォ〜し許す!」

    ──“黒ひげ”の笑い声が空気を震わせて響く。

    「もう死んじまった!壊してええか?」
    「いけません!その綺麗な首でもぶった斬って脅しに使いなさい!”麦わら”や適当な能力者を一刻も早く見つけるんですよ!」

    ラフィットがステッキを死体の上半身に引っ掛け、細身に似合わぬ膂力で釣り上げる。

  • 137黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 22:12:53

    バキボキと骨を折る音。ぐちゃぐちゃと内臓が擦れる音。べりべりと肌を割く音。

    先刻までこちらを気遣ってくれた女性(おそらく)が、瞬く間に解体された。ウタから見て、バラバラと“美しく、芳香のする果実”が溢れ出す。おそらくは、ない、ぞ──

    「──あ」

    眼前で行われている惨事と自分の狂気。長長とした硬直の末にその二つを認識したウタは、

  • 138黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 22:15:05

     



    ただ、悲鳴を上げた。


    「やだ、やだあああああっ!!!」
    「──見るでない!」

  • 139黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 22:15:59

    他の肉塊には感じなかった悪意の精髄──否、人が人に見えていた頃からこれほどの悪意は目にしたことがなかった。

    ウタが知るものは人の優しさと孤独だけであって、人の悪意を直接見る機会はなかったから。



    「じゃ、頼むぜシリュウ」

  • 140黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 22:17:38

    「──“剃”」
    「“芳香脚”!」

    シリュウのウタに向けられた切っ先は阻まれた。強烈な覇気同士の衝突が空気を轟と揺るがす。

    ──そしてそれが戯れに見えるほどの“震動”が、この“場”をなぎ倒した。

    「もらったぜ海賊女帝ェ!」

  • 141黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 22:20:01

    如何なハンコックと言えど、シリュウの斬撃を掻い潜りウタを庇いながら黒ひげの掌底は止められなかった。胸元から這い上がる大きく毛深い指。

    「触れるな下郎ッ……!」

    「──っ、“ひとりぼ」

    「それは困る」

    歌おうとするや否や、“雷雨”の柄がウタの柔らかい腹を叩いた。嘔吐には至らない、内臓全体への緩やかな振動と、単純な鈍痛。

  • 142黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 22:22:00

    「げほっ……ヒッ!」

    ねちょりとした肉の壁に背が包まれた。340cmもの上背、筋肉量も骨格もウタとは段違いの巨体を誇る醜悪な怪物が背面にいる。

    「うちのシリュウも化け物に感じるのか。残念だ!シブくて頼れるいい男なんだがな」
    「……なんで、私の病気を……」
    「ネズキノコ食ってたのは政府の連中も知ってるんだぜ。おれらが知らない道理があるか?」

  • 143黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 22:23:05

    「“ニトロ株”を共生する微生物と同時に生食した場合、微生物が脳に作用すれば甚大な知覚障害を起こす……だったな。今の気分はどうだ、歌姫」

    化け物に耳元で囁かれる。何もかもが知られていた。あれだけの我慢を皆に強いてまで守り通してもらっていたのに。

    「ウチのドクQとラフィット……ああ、医者と航海士な。すげェだろ?シーザー・クラウンのネズキノコ研究をもとに、適当な捕虜にお前と同じ知覚障害を負わせて色々調べたんだ」

    「なんてことするの!?」

  • 144黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 22:24:17

    「そりゃ『知りたい』だろ?……可哀想に三日で自殺したよ。──その点お前はすげェ!」」

    この男に称賛されるたびに、自分が人生で行ってきたありとあらやる選択が正論と暴論の両輪で押し潰されるように感じた。

    「なんで……こんなやつが、人に見えるの……!?」

    「“四皇”だから!ゼハハハ!!」

  • 145黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 22:25:32

    ルフィやシャンクスと同列……ならば、覇王色か。こんな、下品で、野蛮で、この地獄の時代を続けようとしている悪魔が!

    「ンでも覇王色使いじゃあねェんだな、おれは!“麦わら”やアンタの親父さんみてェにバリバリやりたいんだけどよ!」

    「っ……馴れ馴れしく、私の大切な人のことを言わないで!」

    もはや恐怖は限界だが、ルフィとシャンクスのことを侮辱されて黙ってはいられなかった。

    「やっぱいい気概だな!……そうだ!」

  • 146黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 22:29:46

    「お前おれの仲間になれよ!」



    「おれはお前に人間に見える!ウチのドクQもネズキノコの症例の研究はしてる!しかもお誂え向きに音楽家もいねェ……お前の歌は、世界に響くに足る歌だ!」

    「く……ううっ……!」

    シャンクスやルフィにかけてほしかった言葉を、よりにもよってこの男に!

    「誰がッ!あんた達と!」
    「おっと」

    ハンコックの骨の軋む音。艷やかな首が、赤く、青く、惨く染まる。

    「あ、やっ、やめて、やめてよぉ!ハンコックさんを放して!放して、くださ……」

  • 147黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 22:31:42

    「──たわけが!」

    一喝。

    「このような男に平伏するな、首を垂れるな!わらわは──そのような女に手を差し伸べたつもりはないぞ!」

    黒ひげの巨体に首を締めあげられ、吊るされる。ヤミヤミの能力殺しでメロメロの石化も封じられた現在、ハンコックをもってしても逆転は不可能だった。

    「……この状況ですげェ気迫だ。四皇に選ばれた女どもは伊達じゃあねェな。だからこそ一人はここで殺しちまったほうが、後腐れねェか……!」

  • 148黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 22:33:09

    「ひぐ……うぐぅ……っ!」

    いよいよ涙が止まらないが、歌うしかない。『これ』に、賭けるしかない。この至近距離で顕現すれば剣士は倒せるはずだから、ハンコックが逃げる機会ができる。

    この状況で体力を使い切れば殺されるだろう。もっとひどいことをされるかもしれない。助けてくれた彼を巻き込むことになるかもしれない。しかしこの方法に勝るものも考えつかなかった。

    ──トットムジカを!

  • 149黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 22:35:42

    「“ᚷᚨᚺ ᛉᚨᚾ……」
    「そこまで」

    喉に、指がかかった。いよいよ全身がぬるついた壁に拘束されたように知覚される。

    「インペルダウンで見てきたが……人間っつうのは下顎が切り飛ばされたり砕かれた程度じゃ死 ねない程度には頑丈なもんらしい。ウタウタの収監者には喉を潰す措置が取られた先例がある。それでも歌おうとした当代の“歌姫”は動物実験のカエルのように顎を切り取られた」



    「やべで……やぁ…あっ……!!」

  • 150黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 22:37:16

    革手袋に覆われた巨大な指が、小さな唇を押し開いて口内に侵入した。ウタには口腔を触手に蹂躙されるかのように知覚される。嘔吐すら許されないまま、噛み砕くことなど以てのほかの硬質で軟質な質感を舌と喉で感じ、窒息の恐怖に必死に抗う。

    「……ああ、実験で切るのは上顎か」
    「……!」

    ──喉に指が届いた。秘奥に土足で踏み込まれる恐怖と絶望。紛れもない尊厳の凌辱。

  • 151黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 22:38:29

    (きもちわるい)

    掻き回される。

    穿られる。



    ──弄ばれる。

  • 152黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 22:40:48

    (まだ私……好きな人にキスしてもらったことも、なかったっけ……)

    ウタの心に去来したのは、この地獄で烏滸がましいほどに場違いな悲しみ。

    (……ルフィ)



    「抉り折るか?」
    「おいおいそりゃねェだろシリュウ、可哀想だ!……ハンコックの背中も死なねェ程度に刻んでくれ!顔や胸ェ刻んだら文句言われちまう!」

  • 153黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 22:42:55

    「相分かった」
    「待て──」

    ぞんっ

    と、ハンコックの背が深々と斬られた。白服が赤く染まる。

    「ぐ、ううっ……!」

    この呻きは、痛みへの悲鳴ではない。多大な出血で背中がすぐに覆われたのは、彼女にとっては幸いだったろう。

    「このまま殺すか。実が取れりゃいいよな。何にせよ女ヶ島に直接殴り込むよりは少なくすんッ……」

  • 154黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 22:46:26

    「……は?」

    黒ひげの視界の端できらめくは、鏡。

  • 155黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 22:47:25

    「嘘だろ、おい!バルトロメオのヤツ生きてやがった!おれの震動をぶち込んだはずだぞ!?」

    「へ……へは……これがおれの“とっておき”ッ!バリバリのォ……“ミラーシールド”ォ!」

    グラグラの振動を真正面から食らい、脳をも粉々に攪拌されたはずの男が、なぜ──

  • 156黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 22:49:00

    「そうかそうか。頭と胴体にだけ完全にバリアを施したわけか。……やるなぁ!」

    「あとはおねげェしますッ!……ルフィ先輩!!」



    「黒ひげェェェェェッ!!!」
    「“牛鬼勇爪”!!」
    「”モチ突”!!」

  • 157二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 22:49:28

    きた!

  • 158黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 22:51:51

    ゾロの閃光のような一撃がシリュウの咄嗟の防御を弾き、別の一刀が硬化させた利き腕を深く刻む。それと同時にカタクリの三叉槍”土竜”が黒ひげの胴を深々と貫き、さらに猛回転をかけて体表を抉った。

    「ぐおおおお!!??いっでええええよおおお!!!」
    「ぐうッ!“海賊狩り”の剣を真正面から受けるハメになったか……!どうだ、No.2同士の決闘といくか?」

    涙と唾液に塗れた指をウタの喉から引き抜いて、シリュウは傲然と笑いながら透明化した。決闘する気などないし、ウタがゴムの腕に絡め取られて回収されたのも最早気にしてはいない。

  • 159黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 22:53:11

    「女の背をコソコソ切るクズ野郎がNo.2か?船長の度量が伺えるってもんだな」
    「手厳しい意見だ。参考にしよう、ロロノア・ゾロ」

    抜刀の後、ゾロとの剣閃が何度か瞬く。幾度かの接戦の後、シリュウは躊躇うことなく退いた。

    「……切れてりゃ格好もついたんだがな。今日の『雷雨』は野郎の血は吸いたがってねェようだ。逃げるぞティーチ!」

    「ちょっと待て!今ァカタクリの武器を分捕ろうと……どわァ〜〜〜!!!!??」

  • 160黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 22:54:33

    その体を刺し貫くは、黒い稲妻。

    「ルフィ……来て、くれたのじゃな……」
    「その汚ェ手ハンコックから離せ。……できねェんなら、首も腕も千切り落としてやる」





    「……怖い目してるじゃねェか麦わら。似合わねェ顔すんなよ」

  • 161黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 22:56:12

    「……よし!こりゃ殺したらこっちが殺されちまうな!退くぞォ全員!」

    安堵から半ば脱力したハンコックを寸前でモチ化した地面に叩きつけ、その勢いのまま黒ひげとシリュウは遁走した。

    「ハンコック!……ありがとう、カタクリ!」

    「女帝ならば致命傷は避けられたはずだ。だが……」

  • 162黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 22:59:22

    「傷は、傷は浅い!誰にも、わらわに触れさせてくれるな……ルフィ以外には、誰にも!」

    ──背中の出血は少なくない。ウタならば即死、ナミやロビンでもすぐに担ぎ込まなければ後遺症が懸念されるほどの重傷である。

    「るふぃ……ハンコックさんが、みんなが……」

    左腕の中で泣きじゃくるウタ。

    「おい──」
    「お兄ちゃん、見ちゃダメ!」

    変わり果てた妹の骸を見つけるや否や、血相を変えて駆け寄るカタクリ。鏡世界から飛び出してきたブリュレも続く。

  • 163黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 23:01:15

    「……ハンコック。ありがとうな」

    ハンコックの背をマントで覆い、右腕でかき抱いた。両腕に二人の美姫を抱き、やっと僅かに狂おしいほどの激怒から醒める。しかしその心の熱が冷めることはない。


    「は、範囲を狭めさせていただくべ……」
    「ロメ男、これ以上無理すんな。……ありがとうな」
    「──仕方ねぇ、電伝虫を投げる!使えよ“麦わら”ァ!」

  • 164二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 23:02:08

    このレスは削除されています

  • 165黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 23:02:50

    ペロスペローが鏡世界越しに投げてよこした電伝虫を手に取り、

    「追撃はみんなに任せる」

    冷めた声色で告げた。今は、今だけは両腕に抱いた二人を手放すわけにはいかない。

    「万国各島に告ぐ!“麦わら”からの要請だ……シャーロット家と幹部の戦闘員は総力をもって黒ひげを追撃しろ!」

  • 166黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 23:03:14

    「……もう一言言わせてくれ」

    息を吸って、吐く。鏡を貫き、ペロスペローの持つ放送機器が音を拾えるように、覇王色を乗せた最大の声量で叫んだ。



    「……いいか“お前ら”ァ!!!絶対に!絶対にヤツらをタダで帰すんじゃねェぞ!!!」

  • 167黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 23:12:10

    ……今回はここまでです。



    Q.地雷処理戦車の如き勢いでウタとハンコックの地雷をぶち抜きつつ生還できるのってだ〜れだ

    A.黒ひげ海賊団

    というわけで今回は黒ひげ海賊団の皆さんに活躍してもらいました。剣技一本でマゼラン並みの戦力のくせにスケスケなんて姑息な実を食べちゃうところがシリュウの推しどころですよね

  • 168黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 23:18:03

    (ちなみにバスコに殺されたシャーロット家の娘はプリンやフランペではありません。プリンとメモメモを喪って詰みにさらに近づくのを一瞬考えてたけど晴らせる範囲越えるんで……)

    (発症後に一味以外で初めてウタの歌を聞いてくれたプリンがそうとは知られないままウタの目の前で肉塊として死亡するのはなかなか虚淵っぽいすね)

  • 169二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 23:20:38

    黒ひげ達の言動が自然で感動した
    あいつらのエミュ本編で出番なさすぎて難しそうなのに

  • 170二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 23:23:31

    妹が酷いやり方で殺されたとかカタクリブチ切れだろこれ

  • 171二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 23:23:54

    プリンだったらサンジも立ち直れなくなる

  • 172二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 23:24:21

    いや凄いもんを見てしまった……
    本編でもまだ全然得体の知れない黒ひげだけど多分今まで見てきた黒ひげで1番怖かった……

  • 173二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 23:24:49

    ちゃんと海賊らしい手痛い傷を受けたなーと、感情移入がしやすい面白い展開でした。怒れる兄、カタクリの活躍を期待してます(スレチ

  • 174二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 23:26:35

    黒ひげたちは おまえみてェな ゲスだよ

    実際こんぐらいやってもおかしくない得体の知れなさがある奴らだから怖いんだよな黒ひげ……

  • 175二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 23:27:39

    一番海賊らしいことやってる海賊だからな黒ひげ…

  • 176二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 23:30:58

    黒ひげというウタの嫌いな海賊要素を詰め込みまくったキャラ

  • 177二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 23:52:55

    黒髭たちは海賊らしい海賊だから

  • 178黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/25(日) 23:52:57
  • 179二次元好きの匿名さん22/09/26(月) 00:02:13

    ありがとうございます!

  • 180二次元好きの匿名さん22/09/26(月) 01:25:17

    ウタ虐ハン虐ル虐どころかまさかカタ虐まで…

  • 181黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/26(月) 02:03:34

    ちなみに更新が遅延したのは黒ひげ海賊団とペロス兄のエミュレートに四苦八苦してたからです。それだけにお褒めの感想をいただくと嬉しいですね

  • 182黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/26(月) 09:39:14

    >>97

    訂正です

    「人間てヤツは誰しも五感で近くした情報に脳内で補正をかけている」

    「人間てヤツは誰しも五感で知覚した情報に脳内で補正をかけている」

  • 183二次元好きの匿名さん22/09/26(月) 11:07:23

    いやァ…えげつねェ
    だが好きだ!許すまじ黒ひげ

  • 184二次元好きの匿名さん22/09/26(月) 15:11:06

    >ハンコックの背中も死なねェ程度に刻んでくれ!顔や胸ェ刻んだら文句言われちまう!


    うわぁ……

  • 185二次元好きの匿名さん22/09/26(月) 18:30:16

    目の前で人を殺す
    触れられたくない喉や背中を攻撃する
    家族を手の届かないところで殺す

    ものの見事に各キャラの地雷踏みまくってるのマジ黒ひげ

  • 186黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/27(火) 02:33:25

    少々唐突ですが、ハーメルンにもログ代わりに投稿することにしました。内容はほぼ同じでメインの更新は変わらず掲示板で続けるつもりです。五時半にはリンクが見られるかと。

    ハーメルン - SS・小説投稿サイト-syosetu.org

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