- 1122/09/23(金) 22:06:50
テゾーロとの出会いから第2の人生を歩み始めた"投資王"怪物・○○
四皇ビッグ・マムのお茶会や白ひげとの交渉など時代のうねりに巻き込まれながらも、新たな事業に着手する
まずは児童向け舞台の成功、そこからだ
第1幕
フッフッフッ、私はとある島の金持ち|あにまん掲示板偶々街を散策していたら、道端で庶民がまぁまぁ悪くない歌を歌っておった私が見ていることに気がついたその庶民はすぐにその場を離れようとしたが、その日は気分が良かったので興が乗り、見物料に小銭を恵んでやった…bbs.animanch.com第2幕
私はとある島の金持ち 第2幕|あにまん掲示板ある日街を散策していた私は、偶然ソコソコ良い歌を歌う庶民を見かけ、気まぐれに見物料をくれてやった思えば、この瞬間がすべての始まりだったテゾーロやステラ、タナカ、そして我が娘バカラ彼らとの出会いを経て、…bbs.animanch.com第3幕
私はとある島の金持ち 第3幕|あにまん掲示板テゾーロとの出会いから数年電伝虫放送の拡大、テゾーロとステラの結婚・娘の誕生、そしてステージ船「グラン・セーニョ」の完成新たにできた私の夢、世界最大のエンターテイメント船製造に向けて、事業は着々と進ん…bbs.animanch.com - 2122/09/23(金) 22:07:17
主要人物
○○:かつて新世界の怪物と呼ばれた"投資王"
現在はとある歓楽街のある島で歌劇団のオーナーをしている
テゾーロ:別世界線でいずれ怪物等おばれることになっていた男
○○に拾われ劇団に所属し、エンターテイナーとしての才能を開花させていく
ゴルゴルの実の能力者
ステラ:テゾーロの妻で、元奴隷
彼との間に第一子である娘のメテオリーテをもうける
メテオリーテ:テゾーロとステラの娘、現在2歳
○○のことを”おじいちゃま”と呼ぶ、舞台を見るのが好き
バカラ:○○の義理の娘、現在経営と投資を勉強中
タナカ:○○のボディーガード兼秘書 - 3122/09/23(金) 22:07:33
「みんな大変だ!この船、嵐に向かって進んでいる!」
舞台上で男が慌てたようにそう叫ぶ
観客たちは手に汗握り、食い入るように舞台を凝視している
現在場面は物語のクライマックス、突如襲撃してきた海賊との交戦中、船が嵐に飲み込まれるシーンだ
同時に海王類まで襲ってきて絶体絶命のピンチの中、戦っていた海賊が共闘を提案
力を合わせ海王類を辛くも撃破し、嵐の海域をようやく抜けようとした瞬間、船が大きく傾き主人公が投げ出される
それをヒロインがすんでのところで腕をつかむ事で救い、中を深めた二人は朝日が輝く船上で永遠の愛を誓う
それが、大まかな話の流れだ
ちなみにこの救出のシーンは舞台の冒頭で主人公がヒロインを救った際のシーンとの退避になっていたり、この時共闘した海賊が原作で元海賊だったという設定があるキャラの若い姿でエンディングに仲間になるシーンが入ったりと、いろいろネタのある場面なのだが、そこは割愛
通常であればおよそ2時間半ほどあるこの舞台だが、子供向けとして一部の台詞や場面を省略した結果、1時間40分ほどにまで短縮することに成功した
おかげで演者やスタッフたちの体力も、通常版と比べだいぶ余裕がある
場面はまさに今ヒロインが主人公を助けるシーンが始まったところだ
…そろそろ始まるな - 4二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 22:31:00
保守
- 5二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 23:05:40
保守
- 6二次元好きの匿名さん22/09/24(土) 00:18:23
立て乙です!
テゾーロとステラの舞台観たいなぁ… - 7二次元好きの匿名さん22/09/24(土) 01:16:02
金持ち様めちゃくちゃ顔広いの好き
あと原作でテゾーロが呼ばれてた『化け物』が通称なのも好き - 8二次元好きの匿名さん22/09/24(土) 05:25:53
楽しそうで何よりだよ
- 9二次元好きの匿名さん22/09/24(土) 05:27:22
そういやダイス……
- 10二次元好きの匿名さん22/09/24(土) 05:28:11
10レス、これで即死回避か
- 11二次元好きの匿名さん22/09/24(土) 14:12:14
このスレ1から追いかけてきたがワクワクするなあ
- 12122/09/24(土) 18:38:18
「…愛しています、君のことを、心から」
「はい…、私も、あなたのことが…」
そうしてステラと、いや、彼女が演じるヒロインと抱き合う
これで、舞台はフィナーレだ
ここに来るまで色々―主におれのせいだが―あったが、何とかうまくいった
ステラも最初は緊張していたが、場面が進むにつれ役になり切って実に楽しそうに演技してくれていた
客観的に見れてないので自己満足に過ぎないが、今回の舞台は大成功と言っていいと思っている
後は幕が下り、最後に出演者全員で三方礼をして終了、となるのが通例だ
しかし、今回は違った
カーテンが下りたと同時に、大道具のスタッフたちが慌ただしく舞台転換を行っている
その動きは皆練習を重ねたように手際よく鮮やかだ
もう劇は終わったのに、何をしてるんだ?と疑問の声を上げようとした瞬間、ステラと共に舞台の袖から出てきた衣装係の手によって早替えをさせられる
新しく纏わされた衣装は、おれは金と桃色で彩られた白のタキシード、ステラは同じく白をベースに金と彼女の瞳と同じ水色で彩られた豪奢なドレスだ
いや、あれはただのドレスではない、その様はまさにウエディングドレスといって言い代物だ
両の衣装も豪華で大きい割にすぐに着させられる特注らしきギミックが施されており、あっという間に着せられてしまった
余りのことに驚きで声が出せないでいると、同じく驚愕の表情を浮かべていたステラが何かを思いついたような顔になり、笑みを強くしている
説明が欲しかったが、そうこうしているうちに何かの準備が終わったようでスタッフたちが皆撤収し、徐々に幕が上がっていく - 13122/09/24(土) 18:39:18
上がりきった幕、煌々としたスポットライトに照らされた舞台上の風景は、おれの勘違いでなければ結婚式場のソレだ
なぜいきなり結婚式場?と、余計に混乱が加速していると、舞台袖からスタッフがカンペをこちらに向けているのが見えた
カンペには「アドリブで」と書かれている
なにをだ?何をアドリブでやればいい?
ステラを見ると、視線がおれからは見えない方の舞台袖をむいている
どうやら、同じものが出ているらしい
しかし、彼女はその内容を理解したようで、強くうなずいている
これはもしかして、そういう事なのか…?
おれが考えを纏めていると、突如会場中に結婚行進曲が流れ出し、神父の格好をしたベテランの先輩俳優がペアリング―舞台中は危ないからと外しておいた○○様から頂いた指輪だ―をもって登場した
ここまでくればさすがに俺でもわかる
どうやら、皆が仕掛けたサプライズ結婚式にようだ、おそらく○○様の差し金だろう
たしかに、おれとステラは式を挙げていない
相応の費用がかかるし、今更挙げなくても十分に幸せを感じていたため、上げようとする気が二人とも起きなかった
○○様のことだ、一発で子どもたちの印象に残すための演出と、ついでにおれ達の式も上げられれば一石二鳥、と考えてるのだろう
事実、観客の子供たちは舞台のおれ達を見て目を輝かせながら釘付けになっている
その顔をみればわかる、これぞまさにエンターテインメンツというべきものなのだろう - 14122/09/24(土) 18:39:50
改めてステラに向き直る
…綺麗だ、他に言葉がない
美しいドレスに身を包んだ彼女の輝きは、山と積まれた黄金でも霞むだろう程だ
少々幼稚な表現かもしれないが、本気でそう思っているのだ
「新郎に問う、汝、この女を妻とし、富めるときも貧しき時も共にあることを誓うか?」
「…はい、誓います」
神父(役)の台詞に、ステラの目を見ながら答える
そうだ、例えこの先何があろうと、おれは彼女と共にあり、彼女を愛しぬいてみせる
例えおれの持つ何を支払おうとも、必ずだ
「新婦に問う、汝、この男を夫とし、富めるときも貧しき時も共にあることを誓うか?」
「…はい、誓います!」
ステラが満面の笑みで返してくれる
この笑顔が、彼女の言葉が、夜空を彩る星のようにおれを暗闇のような世界から救ってくれた
彼女が居なければ、○○様に出会う事もなく、おれは今頃街の片隅で野垂れ死んでいただろう
本当に、奇跡のような幸運だ - 15122/09/24(土) 18:40:10
「では、指輪を交換し、婚姻の誓いを」
おれはステラの左手薬指に、彼女はおれの同じ指に、黄金に輝く指輪を嵌める
○○様が下さった指輪、おれ達の奇跡の象徴
その輝きはあれから4年近くたった今でも変わらない
…思えば、最初にゴルゴルの実の力で操った金もこの指輪だった
奇跡の象徴と同時に、おれの覚悟の証にもちょうどいい
刹那の間互いを見つめあった後、どちらともなく抱き合い、唇を重ねる
この時おれは、ここが舞台の上だということを忘れていた
今、世界にはおれとステラしかいない
ただ、ステラへの愛しさだけがおれの胸中を支配していた
…さっきの誓いの言葉は訂正する
おれはただ、ステラと共にいるだけじゃない
おれは歌い続ける
彼女のため、この奇跡をくれた○○様のため、メテオリーテや今おれを支えてくれている仲間たちのためにも
ステラが褒めてくれた、○○様が認めてくれたおれの歌を、声が届く限り、いつまでも
それがおれの夢であり願い、そして、おれの誓いだ - 16122/09/24(土) 18:40:57
…まぁ、アドリブにしては十分か
アドリブにしたのはテゾーロ達へのサプライズの面もあるが、それ以上に観客への演出の面が大きい
やはり、生の反応というのは演技にはない迫力がある
事実、観客たる子供たちは幕が降りた今も夢見心地の表情で呆けていたり、興奮した様子で周りの友人と話していたりと、反応こそ様々だが大きく心に残ったのは確かなようだ
これなら、十分に成功と言っていいだろ
結果に満足し立ち見していた場所から離れようとした私は、そこでふと、一人の少女に目が付いた
たしか孤児院観覧枠の一人で、紫の長髪をしたなかなかに目鼻立ちの整った少女だ
彼女も他の客の例にもれず、興奮した面持ちで周りの友人らしき子らと話し込んでいる
確か前にも似たようなことがあったような気もするが、なぜその少女に目が行ったのかは私自身分からない
とにかくなんとなく目についた、それだけだ - 17122/09/24(土) 20:42:01
本日の投稿分に関しまして
最後の描写にあります少女の過去に関しましては他のキャラと同じくねつ造よるオリジナル設定になります
ご不快に思われた方、申し訳ございません - 18二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 00:47:22
素敵な結婚式だなぁ…
金持ちさんの企画力と演出力パネェ! - 19二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 06:15:14
パネェっス
- 20二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 11:50:37
紫の長髪…?誰だっけ…?
スレ主さんのオリジナル設定凝ってて好きです! - 21二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 14:03:45
髪型はともかく色からするとカリーナかな
- 22二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 14:05:46
訂正 まとめてただけで現在も長髪だった
- 23二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 14:23:47
当たり前の、ありふれた誓いの言葉なんだけど
富めるときも貧しきときも共に…、で泣いちゃう
原作テゾーロが富んだときにはもう居ない…… - 24二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 19:51:15
ああカリーナか!なるほど…
原作テゾーロの所にいた人達が徐々に集まってきているんだな - 25122/09/25(日) 20:37:47
いつも当SSを閲覧いただきまして、誠にありがとうございます
今後の掲載に関しまして、筆者の都合により本日から火曜日までの間、更新を休止させていただきます
続きをお待ちいただいている皆様、誠に申し訳ございません - 26二次元好きの匿名さん22/09/26(月) 00:26:03
大丈夫ですよ〜、リアル大事に!
気長に待ってます - 27二次元好きの匿名さん22/09/26(月) 05:27:19
期待
- 28二次元好きの匿名さん22/09/26(月) 15:34:30
保守
- 29二次元好きの匿名さん22/09/26(月) 21:32:23
穂
- 30二次元好きの匿名さん22/09/27(火) 02:45:43
ほしゅ
- 31二次元好きの匿名さん22/09/27(火) 06:26:20
待機
- 32二次元好きの匿名さん22/09/27(火) 13:38:42
ほしゅ!
- 33二次元好きの匿名さん22/09/27(火) 21:23:06
保守
- 34二次元好きの匿名さん22/09/28(水) 01:36:12
保守
- 35二次元好きの匿名さん22/09/28(水) 06:52:40
保守ー
- 36二次元好きの匿名さん22/09/28(水) 13:20:27
保守
- 37二次元好きの匿名さん22/09/28(水) 19:00:43
Keep
- 38122/09/28(水) 21:36:46
今回の新事業、児童向け歌劇『星空の唄』はサプライズ部分も含めて、まぁ暫定的に成功と言っていい結果を残した
会場にいた子供らの反応はもちろんのこと、その後に実施したアンケート結果も上々
施設の職員や先生方に聞いても、あれから数日は劇の話題でもちきりだったそうだ
ただ正直に言えば、ここでの反応自体はどうでもいい
今回の目的は先行投資、ここで劇を見た子供らに舞台というものの存在を強烈に刻み込む事
その本来の目的の結果が出るのは少なく見積もっても10年はかかるだろう
だからこそ、暫定的に、というわけだ
しかし、目に見える結果が全く得られなかったというわけではない
劇と同時進行で行われていた、映像電伝虫による新ライブ放送システム、そちらの方は十分なデータが取れた
次々に視点の変わる映像を、配信を行った病院の子供たちはだいぶ楽しんでいたらしい
だが、設置した送信用電伝虫の角度に問題があったらしく、一部シーンで演者が見切れるなど何点かミスがあったそうだ
電伝虫の機能自体に問題はなかったが、今後はあらかじめ配置箇所を決めるのではなく、劇の内容ごとに配置箇所を調整するなど改善が必要そうだ
まぁそういった問題がありはしたものの好評だったのは事実であり、今後実験と改善を重ねれば、新たな興行として正式に打ち出せる日も遠くはないだろう
そうそう、新事業関連でいえば、特筆すべきことがもう一つ
男児向けに計画していた『海の戦士 ソラ』の実写舞台化に関して、元ネタである海軍と掲載している世経新聞との協議の末、我が劇団主導の元制作が正式に決まった
多少金を握らせたくらいで簡単に折れてくれたモルガンズと、世話になっているからと口添えしてくれたトキカケ君には感謝だな
とは言え、現時点では制作が決まっただけで内容や配役などもほとんど定まっていないが、実は敵役となるキャラの演者が一人だけ決まっている
それが、私の新しいボディガードとして雇ったダイスという名の大男だ - 39122/09/28(水) 21:37:18
彼は元々裏社会の格闘大会においてその打たれ強さからチャンピオンにまで上り詰め、少し前からは界隈でも最も危険なデスマッチショーにも参加、無敗を誇っている男だ
しかし、その打たれ強さが仇となり最近では挑戦者も激減、暇とフラストレーションを持て余し気味になっていたらしく、そこを私がスカウトした
余談だが、彼の打たれ強さの秘密はその巨体もあるがそれ以上に、彼の趣味嗜好にある
彼は実は筋金入りのマゾヒストであり、受けた痛みをほぼ快感に変換してしまうのである
…まぁこういった趣味の輩は昔から何人も見てきたが、彼ほどのものとなると私でもそうそうお目にかかれないレベルだ
デスマッチショーに参加したのも、より強い痛みを感じるためだからという
そのため、挑戦者が減る、ないしいなくなることは、彼にとってある意味の死活問題なのだそうだ
そこで私は彼に対し、私のボディガードと共に、我が劇団のスタントマンとして活動してはどうか、と提案した
先に挙げた『海の戦士 ソラ』はヒーロー物であり、当然戦闘シーンが存在する
また、他にも殺陣や危険なアクションシーンのある舞台はいくつかある
通常であれば演者の危険を考慮し安全第一で進めるところだが、演じるのがダイスであれば多少の衝撃であれば問題なく耐えきれるだろうし、本人は気持ちのいい思いができる
そして、観客は安全に考慮した生ぬるい演技ではなく危険度の高いアクションを見ることが出来る
まさに一石三鳥だ
この提案をしたところ、報酬の高さと万が一挑戦者が現れたときはデスマッチショーを優先して構わないという追加条件もあって二つ返事で了承してくれた
…提案しておいてなんなのだが、よく受けてくれたものだ
場合によっては爆発に巻き込むような演出も考えているといったのに、恍惚とした表情で使う爆薬の量を聞いてきたのにはさすがに驚いた
…今更になってこいつを引き込んで大丈夫だったか?という疑問も浮かんできてはいるが、確実に大きな戦力にはなるだろう
万が一起こるであろう問題とその対処法もすでにいくつか考えてある
実際に悩むのは、何かが起きた後からで十分だ - 40二次元好きの匿名さん22/09/29(木) 00:30:59
乙
ついにダイス来たか - 41二次元好きの匿名さん22/09/29(木) 02:24:36
待ってました!
ダイスいいキャラしてるなw - 42二次元好きの匿名さん22/09/29(木) 10:34:51
荒事担当が増えるのは心強いな
- 43二次元好きの匿名さん22/09/29(木) 13:11:21
ほしゅ
- 44二次元好きの匿名さん22/09/29(木) 21:24:06
星
- 45122/09/29(木) 22:36:50
…少々面倒なことになったかもしれん
それは、ダイスを雇い入れて一週間ほどした時のこと
事の発端は、先ほど政府からきた一本の電伝虫だ
それは、とある事件に関する報告
北の海はルーベック島にて行われる予定であったバレルズ海賊団との"オペオペの実"の取引失敗の報だった
オペオペの実―食した者は改造自在人間となり、特に医学知識の豊富な者がその力を得れば、いかなる難病奇病も治す奇跡の医者となる
しかしてその真の価値、その実の究極の奥義は『不老手術』
能力者の命と引き換えに、対象者に永遠の命を与えるというもの
それが真実かどうかは、まぁ正直どうでもいい、私自身は興味がない
しかし世界政府は別のようで、奴らは方々に手を尽くしてこの実を探していた
いや、オペオペの実だけではない
政府は特別危険な実やその能力者を血眼になって探している
物によっては世界を文字通りひっくり返すことが出来る物もあるのだから、ある意味では当然の話だ
それを言えば、テゾーロの食べたゴルゴルの実もそうだが、これに関しては私のは以下にいるということで、今のところは軽い監視程度で済んでいるらしい
…悪魔の実と言えば、政府が特に力を入れて探していた"ゴムゴムの実"が見つかったそうだ
食べれば全身ゴムになる実だそうだが、なぜそんなものを力を入れて探索していたのかは知らない
が、意味もなくそんなことをするほど、世界政府はヒマでも馬鹿でもない
実際にやっているということは、それだけ重要であり、かつ、厄ネタだという事だろう
関わらないに越したことはない - 46122/09/29(木) 22:37:33
少々脱線した、オペオペの実の話に戻ろう
実はこのオペオペの実、バレルズ海賊団が手に入れたという情報を政府に流したのは、他でもない私なのだ
今では一線を退きはしたが、私も昔はそれなりに名を売った身だ、相応の情報網は今でも持っている
それを駆使した結果、半分ほど偶然にだが、件の海賊団が手に入れたという情報を掴むことが出来た
私はその情報を『海の戦士 ソラ』の制作交渉をスムーズに進めるための手土産として海軍に渡し、それを受けて政府はバレルズ海賊団に接触、50億ベリーという大金での取引を持ち掛けた
彼らは二つ返事でこれを承諾し、取引はスムーズに行われる、はずだった
しかし、実際にはそうはいかなかった
取引自体がトップシークレットの機密情報のため全ては聞けなかったが、どうやら結果としてバレルズ海賊団は全滅、オペオペの実は忽然とその姿を消したらしい
私が知れたのはここまでだが、別ルートからの情報でルーベック島近海の海に北の海で悪名を轟かす海賊"ドンキホーテファミリー"の船も目撃されたとのことで、何らかの関与があったのかもしれない
万が一奴らに奪われていたらだいぶ面倒だ
特に船長の…いや、これ以上詮索すれば私の身にも危険が生じる可能性が出てくる
余り深入りはしないで置いた方がいいだろう
…しかしなぜだろうか
誰かに奪われたにしろ本当に紛失したにしろ、面倒なことには変わりない、はずなのに
なぜか私は、この一件により世界の動きが加速した、と
そんな根拠どころかそれに至った発想すらわからない考えが、ふと頭の中に浮かんだ - 47二次元好きの匿名さん22/09/30(金) 02:03:58
ここでオペオペの実が政府の手に渡らなくて本当に良かったよな…
- 48二次元好きの匿名さん22/09/30(金) 05:12:13
政府とコネクション強いのは安心材料か不安材料か……
- 49二次元好きの匿名さん22/09/30(金) 12:20:30
知りすぎが怖いよね
- 50二次元好きの匿名さん22/09/30(金) 13:34:41
白ひげとの繋がり知られてないし、暗殺される可能性があるのが怖いんだよな…
何とか金持ちさんを守ってくれテゾーロ! - 51二次元好きの匿名さん22/09/30(金) 18:42:46
ドフィが近くいたことを知ってるのがなんか気になる
- 52122/09/30(金) 21:20:07
申し訳ございません
作者都合により、本日の掲載は休止させていただきます - 53二次元好きの匿名さん22/10/01(土) 00:45:42
了解です!
スレ主さんのペースで大丈夫ですよ〜 - 54二次元好きの匿名さん22/10/01(土) 05:36:28
待ってます
- 55二次元好きの匿名さん22/10/01(土) 12:44:05
保守
- 56二次元好きの匿名さん22/10/01(土) 22:14:43
保守
- 57122/10/01(土) 22:45:24
先日の一件以降、大きな事件もなく島は平穏そのもの
正確には世間を騒がせる大事はいくつかありはしたが、私に直接関係のあるものはなかったため割愛させてもらう
興行も順調でテゾーロは舞台にショーにと大忙しだ
それでも、本人の気力は十分以上
あの時の結婚式のサプライズが効いたようで、舞台の直後こそ内密に話を進めていたことにぶつくさ文句を垂れていたが、今ではこれまで以上の気迫で仕事に打ち込んでいる
時折思い出したようににやけているのが目撃されその顔が気持ち悪いという報告も受けるが、それはまぁ愛嬌ということにしておこう
興行と言えばもう一つ、グラン・セーニョ号に関して
あれからも連結船の製造は続いており、すでにレストラン艦や商業艦の他、ホテル艦、カジノ艦改めアミューズメント艦、プール・浴場施設に特化したスパ艦、そして裏方作業等に用いる特別艦2隻、連結艦を含めてすでに8隻、現在はこれらを一つの船としてドッキングさせるための改修工事を行っている
完成すれば全長1031m、幅145m、総重量150tを超える、世界にも類を見ない超巨大エンターテイメント船となる
今後もさらに拡大させていく予定だ
ここまでくると問題は船の動力だが、これに関しては現在海軍の最新鋭軍艦にも搭載されている新型エンジンを複数機載せている上、今後さらに規模が拡大された際には私が出資している施設にて育成されている2匹のギガントタートルによる牽引を予定している
すでに街一つと変わらない規模だが、最終的には島と同等にまで発展させるつもりだ
これは私の人生最後の夢、いけるとこまで行ってやるさ - 58122/10/01(土) 22:46:20
興行ではないがもう一つ、私の本業である投資について
なんでもサンディ島はアラバスタ王国にて、無人のオアシスだが王国西部の交易ルートであったユバに街を作る計画が浮上したらしく、国王であるコブラ陛下から直々に出資を依頼されたのだ
コブラ陛下には今は亡き御父上の代から懇意にしていただいているし、アラバスタ王国は国土の大半が砂という過酷な環境だが偉大なる航路でも有数の文明国家だ
その交易の要所に街を作れば、そこで得られる利益は計り知れない
現時点でのユバの開拓計画書をコブラ陛下からもらい受け試算してみたが、完成後数年で出資分は回収できるという結果になった
以上のように断る理由もさしてなかったが、一応様々な確認のために手持ちの永久指針でもってアラバスタへ直行
コブラ陛下と再会のあいさつを交わしたのち、ユバへの開拓団の代表であるトトという男と面談、より詳しい開拓計画について話を聞いた
滞在中、砂漠というものを見せてやろうと思い連れてきていたリーテが最初はつまらなそうに―テゾーロとステラは仕事があったため私とリーテだけで来た―していたが、いつの間にか陛下の娘のビビ王女と仲良くなったらしく、彼女と共に王宮の中や外で王女の友人たちも含めてともに遊ぶようになった
護衛隊長のイガラム殿は私の孫(のような存在)のリーテに万一のことが合ってはいけないと王宮内での遊びに限定させようとしていたが、こうやって様々な人間と交流を深めるのも学びだ、護衛隊の目があるならば万一の場合も大丈夫だろうと、その申し出は断った
数日の滞在期間ののち、十分な利益を見込めることを確信した私はコブラ陛下に全面的な出資を約束し帰路に就いた
そのころにはリーテもビビ王女と相当に仲を深めたようで、泣いてぐずる彼女を必死になだめながら帰るのにだいぶ苦労したものだ
正直商談よりも疲れた、これが祖父の苦労というものか
まぁこれも彼女にとっていい経験になっただろう - 59二次元好きの匿名さん22/10/02(日) 01:24:35
まさかのアラバスタとも関わりが!?
ルフィ達とも間接的に関わったりとかないかな…長生きしてくれ金持ちさん… - 60二次元好きの匿名さん22/10/02(日) 06:09:28
やっぱツテがこえーわこの人
- 61二次元好きの匿名さん22/10/02(日) 07:02:09
何者なんだい⁉︎
- 62二次元好きの匿名さん22/10/02(日) 13:58:40
怖いねぇ〜この手の広さはぁ
- 63二次元好きの匿名さん22/10/02(日) 21:40:51
保守
- 64122/10/02(日) 22:22:12
先日からスタートした『海の戦士 ソラ』の舞台化企画だが、制作は少々難航していた
まず第一に、原作者との内容のすり合わせが出来ていない
正確には原作者との対面での話し合いができてない
多忙を極める人物らしく、電伝虫越しでの打ち合わせも難しいとのこと
こういった現行の原作ありきの企画は、作品の完成度にしてもその後の法的なアレコレにしても、初期段階での原作者との細やかなすり合わせが重要だ
そのためできれば一度でもいいから対面での打ち合わせを行いたかったのだが、受けてもらえないというなら仕方がない
本人からは文書にて、原作利用等に関する契約の遵守と定期的な進捗状況の報告、それと無いように意義があった場合最大限原作者側の要求を通すことを条件に大きく口出ししないことを明示されている
正直不安がないわけではないが、ある程度の内容はこちらで決めさせてもらおう
この時のためにソラは単行本の1巻から最新掲載話まで全て資料として取り揃えているし、今日までに全話読破してきたのだ
やるからには徹底的に、何一つミスのない物を作らなければならない - 65122/10/02(日) 22:22:53
問題はもう一つ、戦闘シーンに関してだ
正確に言えば生身の方は大丈夫だが、ロボの戦闘シーンに問題がある
問題というか、そもそもどう表現したらいいのかというのが分からない
実際に巨大合体ロボを用意するなんてことは不可能だし、着ぐるみを使用しても子供だましになるだけだろう
一部だけを胸像のようにして再現するという話もあったが、それではアクションなどできない
現状、ロボの戦闘シーンは再現不可能と判断し、原作者監修の元ロボ戦のないオリジナルストーリを展開するという意見でまとまりつつある
私としてはこの中途半端な舞台化を残念に思いつつ、しょうがないことではあると諦めていた
その流れを変えたのは、電伝虫放送や奴隷問題の際と同様、我が娘バカラだった
彼女にはアドバイザーとして私と劇団の幹部数名、そして海軍と世経の代表者たちとの企画会議に参加させていたが、そこでの彼女の発言が大きなきっかけになる
曰く、「舞台に固執しすぎではないか?」と
詳しく話を聞くと、「そもそも舞台上だけですべてをやろうとするから難しいのであって、例えば生身の戦闘シーンは舞台で、ロボのシーンは着ぐるみなどを使い別撮りした映像を電伝虫で流せばいいのではないか」とのことだ
これは…、なかなか面白い案かもしれない
確かに、巨大ロボが目の前の舞台上で、普通の人間と同じサイズで戦っている絵面は見れたものではないが、これが例えば、ミニチュアの街の中で着ぐるみのロボットが戦っている映像を流せば、会場の子供らの目には今まさに外の街で戦闘が行われているように映るのではないか?
ネックなのはタイミングだが、記録可能タイプの映像電伝虫を使えば、うまいこと舞台上の役者の退場と合わせられるかもしれない
時折操縦するソラのシーンなども織り込めば、より臨場感が増すだろう
前例のない話ではあるが、正直これは、ともすれば新しい舞台の形を作れるかもしれない
やってみる価値はあるだろう
この意見を聞いたほかの会議参加者たちも、前例はないが現状の打破になりうるかもしれないと乗り気だ
とは言え、先ほども言った通り前例のない話だ
そもそもうまくいくかもわからない
そして、わからないなら実際にやってみればいい
私は早速映像電伝虫とロボの着ぐるみ、街のミニチュアの用意を劇団の者に指示し、撮影の準備に取り掛かった - 66二次元好きの匿名さん22/10/02(日) 22:51:17
バカラちゃんの柔軟な発想力すげえ
イベントプランナーとかでも活躍できるな - 67二次元好きの匿名さん22/10/03(月) 05:27:53
組み合わせる力が恐ろしい
- 68二次元好きの匿名さん22/10/03(月) 12:18:14
ほしゅ
- 69二次元好きの匿名さん22/10/03(月) 21:21:16
ソラの原作者は誰なんだろうなぁ
ベガパンク説もあったけど - 70二次元好きの匿名さん22/10/03(月) 22:34:09
このレスは削除されています
- 71二次元好きの匿名さん22/10/03(月) 22:35:34
このレスは削除されています
- 72122/10/03(月) 22:36:21
バカラの案で進展を見せた『海の戦士 ソラ』の舞台化企画
巨大ロボ戦の映像を別撮りして舞台中に放映するという案は、なかなか面白いことになっている
例の会議の後、楽団の大道具に指示して作らせたミニチュアの街と着ぐるみは半月ほどで完成し、それらと原作ソラの中でも再現しやすい話をもとに製作された簡易的な台本をもとに実験的な撮影が行われた
結果は上々、同席した関係者たちの評価もいい
さすがに作成期間半月のため全体のチープさは否めないが、時間をかけてクオリティを追求すればそれは解消されるだろう
後はやはり、ずっと同じ視点で戦っている映像を流すだけでは、味気なくて飽きが来る
当初の予定では時折操縦席内の映像も挿入するつもりだったが、それだけではもの足りない
ここは先日の新ライブ放送システムを応用し複数視点からの同時撮影を行い、さらに映像に奥行きを持たせる
同時に撮影・送信用のカメコ側を設置するのではなく持ち運びながら撮影し、映像にスピード感を持たせるのもいいだろう
それらの映像をタイミングを合わせて切り替えていき、それをさらに記録可能な映像電伝虫で撮影することで一つの映像として完成させる
とにかく、映像が今まさに起きている状況を伝えているかのような臨場感が必要だ
道具類のクオリティはともかく、撮影方法に関しては必要機材がそろっているため今すぐにでも実践ができる
試しに台本はそのままに撮影方法を先のようにやってみた結果、さすがに初めての試みということもあり色々と拙い部分が多かったが、それを差し引けばなかなかに迫力のある映像に仕上がった
映像に奥行きも臨場感もあり、何より映像内の役者の動きに躍動感がある
スタッフの練度を上げれば、さらに完成度は高くなるだろう
企画会議に出席していた各代表者たちからも好評で、世経の編集君曰く、原作者からも「面白い試みだ」とお墨付きをもらえたらしい
おかげで、現時点で決まっている設定をもとにした舞台専用のオリジナルストーリーの執筆依頼まで話を持っていくことが出来た - 73122/10/03(月) 23:01:00
これで次の段階に進むことができる
演者のオーディションや道具類の制作、宣伝に実際の撮影・稽古と、まだまだやるべきことは山ほどある
おそらくは完成まで1年はかかるだろう
だが、それだけの時間と金をかけるだけの価値がある
今回の作品が成功すればこの撮影法を新たな技術として確立し、他の様々な作品に転用する事が出来るだろう
そうすればいずれ、この技術を用いた作品で一つカテゴリを成立させられるかもしれない
今は絵に描いた餅だが、今作品の出来によってはただの夢物語ではなくなるだろう
だからこそ、失敗は許されない
いくら膨大な時間や巨額の資金が必要になろうとも、必ずや成功させてみせるとも - 74二次元好きの匿名さん22/10/04(火) 00:07:41
どんどんアップデートしている…時代の最先端だな!
- 75二次元好きの匿名さん22/10/04(火) 05:18:24
保守
- 76二次元好きの匿名さん22/10/04(火) 12:31:32
損失より失敗が恐ろしい、か
- 77二次元好きの匿名さん22/10/04(火) 21:18:52
保守
- 78122/10/04(火) 22:12:56
申し訳ございません
作者都合により、本日の掲載は休止させていただきます - 79二次元好きの匿名さん22/10/05(水) 00:17:43
こんな神スレを見逃していたなんて…と追い付いたばかりの自分、早速待つ喜びを味わわされる
気にせず休んでくんなぁ! - 80二次元好きの匿名さん22/10/05(水) 05:23:19
保守
- 81二次元好きの匿名さん22/10/05(水) 11:16:08
1年先を見据えるって長期的だな
当たり外れがそりゃ見えないわ - 82二次元好きの匿名さん22/10/05(水) 18:54:11
リアル事情は大事だからね
待ってます - 83122/10/05(水) 21:39:18
演出方法の模索で停滞していた舞台版『海の戦士 ソラ』の制作はバカラの提案をもとに考案されたロボット戦の別撮り、わかりにくいので『特別に撮影した映像を用いた演出』を略して『特撮』と名付けたもので一応の進展を見せたが、この特撮がさらに現場を混乱に陥れた
というのも、この特撮という演出、言うまでもなく我が劇団が今回初めて導入した
つまり、前例がない
そのため、どのように魅せるのが最も効果的かというのが完全に手探りなのだ
スタッフの中でも、やれ着ぐるみは動かすからある程度デフォルメした方がいい、いや細部にこだわるべきだ、とか
やれミニチュアの縮尺はこの程度で、いやそれだと劇中の設定に合わない、だとか
とにかく意見がバラバラで、企画会議は毎度のように混沌としている
おかげで特撮の導入を決定してから早3ヶ月、未だに本格的な稽古はおろか道具類の制作すら始まっていない
あーでもないこーでもないと会議して、一応決まった内容をもとに実験して、しっくりこなければまた会議
この繰り返しだ
いくら資金や時間に糸目をつけないとはいっても、それは決して無駄使いを容認しているわけではない
そろそろ本当に動き出さねば、このまま企画自体尻すぼみになりグダグダしてるまに立ち消えてしまう
私が独断で意見を纏めることも考えたが、スタッフたちの熱量は本物だ
ここでしゃしゃり出てはその熱を奪うことになってしまう、それはできれば避けたい
さて、どうしたものか… - 84122/10/05(水) 21:40:06
本日の掲載は1レス分のみになります
短くて申し訳ありません - 85二次元好きの匿名さん22/10/05(水) 23:30:56
前列がない手探りの状態で一から作るのは大変だよなぁ…
- 86二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 05:23:19
ほしゅ
- 87二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 12:24:40
保守保守の実
- 88二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 21:37:45
保守
- 89二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 21:41:40
特撮は金に糸目をつけないより色々縛りがあった方が面白いのができそう
- 90122/10/06(木) 22:18:53
あれからさらに一月
スタッフたちの意見は一応のまとまりを見せ始めていた
使用する合体ロボの着ぐるみは、アクションの関係上最低限の運動性は確保しつつディティール重視で
街のミニチュアは実際の街の図面を元に、劇中の設定を流用し着ぐるみのサイズを基準にした忠実な縮尺で再現、など
おかげで道具類の制作に取り掛かることが出来る
原作者に依頼していた舞台用の特別エピソードを舞台用の台本に手直しする工程も完了、主人公のソラを始めとした各キャラのオーディションも無事に済んだ
これでようやく、本格的な舞台稽古に入れるというものだ
これまで私のボディーガードばかりさせていたダイスも、やっともう一つの仕事に就かせられる
とはいえ、彼は数か月前から実験の際のスタントマンとして何度か舞台に上がっている
最初は立ち位置の考察だったが、案が煮詰まっていくにつれ倒れ方や戦闘シーンの殺陣、とどめの爆発シーン等もやるようになり、その度に殴られたり蹴られたり刃をつぶしているとは剣で切りかかられたり
終いには爆発を中心で食らったりと、散々というかなんというか
ちなみにこれは、周りのスタッフが悪乗りしたという事ではなく、すべて本人の要望だ
そういった危ない実験はすべて自分を使ってやってくれとのこと
最初は私も本人意思だからと傍観に徹していたが、さすがに爆発まではやりすぎだと止めようとはした
しかし爆心地で黒焦げになりながら興悦の表情を浮かべているのを見たときは心配無用と言う諦めと共にドン引きしたものだ
まぁそんな、問題というべきかも悩むことがありながらも舞台の準備は着々と進んでいた - 91122/10/06(木) 22:19:05
そんなある日、私はとある島に来ていた
目的は、舞台の鑑賞
この島に住む私の興行主仲間が所有する劇団が新たな劇場を建設し、そのこけら落としの舞台に招待されたためだ
人気の女優が出演するとあって、客席は満員
皆お互いがお互いの熱気に中てられ、興奮のるつぼと化している
そんななか行われた華やかなショーは観客たちを魅了し、スタンディングオベーションで幕を下ろした
舞台の終了後、私は関係者として舞台裏に通された
そこでは、一組の男女が抱き合っている
男の方は見おぼえないが、女の方は今まさに客席で存分にその美貌を堪能していた
この劇場を所有する劇団の花形スターであり、島で一番の美人と名高い女優、ビクトリア・シンドリーだ
彼女はすぐに私に気付いたようで、男の方に一言断ってからこちらに掛けてきた
シンドリーのことは、この劇団に彼女が入団した時から知っているが、当時に比べ、その演技にも美貌にもさらに磨きがかかっている
そう褒めると彼女は照れたように頬を搔きながら、抱き合っていた男のことを紹介してくれた
なんでも彼女の婚約者らしく、すでに結婚の日取りも決まっているとのことだ
それはめでたい、特に挙式とくるとテゾーロとステラの舞台上での結婚式からそこまで日が経ってないこともあり、他人事にも思えない
二人を祝福し、式の際には祝いの品を送る約束をして、私は二人の元を離れた
その時ふと舞台裏の隅の方に目をやると、一人の男がうなだれているのが見えた
あれはたしか、ドクトル・ホグバック
この島に住む、世界でも指折りの天才外科医と呼び声高い男だ
足元の花束とあの様子を見るに、シンドリーに男がいることを知って玉砕したか
まぁ人生とはそういうものだ
医者としてすべてを持っている彼だが、こうやってうまくいかないこともある
これも、男の人生にはつきものの、いい経験というものだ
こういう時は見て見ぬ振りが一番、と私はそのままその場を後にし、帰路に就いた
シンドリーの死亡事故と遺体の盗難事件、そしてそれとほぼ同時期に起こったドクトル・ホグバックの失踪を知ったのは、それから数か月後のことだった - 92122/10/06(木) 22:20:38
申し訳ありません
作者都合により、明日の掲載は休止させていただきます - 93二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 00:05:26
ダイスがイキイキしてて草
嗚呼シンドリーちゃん…ホグバックは好きだけど、シンドリーちゃんにしたことは胸糞だよなぁ… - 94二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 05:17:40
ほっしゅ
- 95二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 13:34:55
ホグバック……あんたって人は……
- 96二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 22:29:02
保守
- 97二次元好きの匿名さん22/10/08(土) 01:06:19
ほしゅ
- 98二次元好きの匿名さん22/10/08(土) 01:36:55
保ー守保守保守
- 99二次元好きの匿名さん22/10/08(土) 06:00:39
何かトラブル起きそうで怖いな
- 100二次元好きの匿名さん22/10/08(土) 16:44:19
保守
- 101122/10/08(土) 22:22:11
有名女優だったシンドリーの事故死の報は、島を越えて瞬く間に業界に広まった
島では多くのも己が嘆き悲しみながら彼女の葬儀に列をなし、多くの業界関係者から悼辞が送られているそうだ
もちろん私も、その一人である
今回の事故死は、本当に不運な事故としか言えない
聴いた話だが、練習中に舞台から足を滑らせて転落、即死だったそうだ
まさに悲運というしかないだろう
しかし、遺体の盗難に関しては別だ
質の悪い彼女の追っかけか、趣味の悪い好事家か
どのみち、悲運の死を遂げたスターの遺体盗難は、彼女の死自体よりも世間の話題をさらった
そして同時期に起きた天才外科医、ドクトル・ホグバックの謎の失踪
こちらはこちらで、やれ誘拐されただの嫉妬した他の医者に殺されただの、いろいろと噂が立っている
中には時期の一致から彼がシンドリーの死体を盗んだ犯人ではないかという話も出たが、天才と謳われ医者としてすべてを持っていた彼がそんな危ない橋を渡るとは思えないと、自然と消えていった
私もそう思っていた
裏の世界としては銭ゲバとして有名で、かつ彼女の死後は病院をほとんど閉め切っていた彼だが、さすがに死体を盗むような外道ではないだろう、と - 102122/10/08(土) 22:22:40
しかし一つ、気になることがある
少し前のことだ、元は西の海に存在していたはずの島が偉大なる航路に入ったとの情報があった
もちろん、ただの島が勝手に流れつくはずはない
それは、とある男により改造された、世界一巨大な海賊船『スリラー・バーク号』
王下七武海が一人、ゲッコー・モリアの居城である
現在は年間に100隻を超える船が消息を絶つといわれる悪夢の海”魔の三角地帯(フロリアン・トライアングル)”に潜伏中とのことだが、場所が場所だけに詳細不明だ
それが何だという話だが、このモリアという男、悪魔の実の能力者なのだがその力は特に異質だ
人が生まれたときから共にある自身のもう一つの魂と言える”影”を自在に操る”カゲカゲの実”、その力でできることはままあるが、その一つに他者から奪った影を生物の死体に入れることでゾンビとして操ることが出来るという
私は直接見たことはないが、モリアがゾンビを操るところを見たという目撃談は多く、また、西の海にはそのために影を奪われたという人間が多数存在する
真実とみていいだろう
ここで考えられる可能性
ホグバックは言わずもがな、人体のスペシャリストだ
事故で切り落とされた腕を、瞬時に縫い合わせたこともあるという
これが物言わぬ死体であれば、より強靭な他人の腕を縫い合わせることも可能だろう
つまり、あくまで生きていればだが、人体をより強靭に作り替えることが出来る、という事だ
そして、モリアの力は影を死体に入れることで、死体を動かすことが出来るというもの
仮にホグバックが改造した死体にモリアが影を言えればどうなるか、考えるまでもないだろう
つまりモリアには、ホグバックを欲する理由がある
これでホグバック側にモリアに求める何かがあれば、相互利益をもたらす関係になる
ここで思い出されるのが、シンドリーの死体盗難事件
もし噂通り、死体を盗んだのがホグバックであり、それがモリアの提示した交換条件であったとすれば… - 103122/10/08(土) 22:22:52
そこまで考えて、私は頭を振った
仮にそうだったとしても、あの魔の三角地帯に潜まれては確かめようがない
それにそもそも、奴の能力の性質を見るにゾンビとは死者が復活したわけではなく、あくまで死体という実態を得た他人の影に過ぎない
そんなものでシンドリーの亡骸が動いたからと言って、決して彼女が蘇ってわけではない
死体という人形を影という糸で操り生きているかのように見せる、まさに人形劇のドールも同じだ
どんなに惚れていたとしても、そんな茶番で海賊に堕ちるほど愚かな男ではないだろう
そう、普通であればそのはずだ
私はそう納得しようとしたが、最後まで心の片隅に残り続ける一抹の不安をぬぐい去ることはできなかった - 104二次元好きの匿名さん22/10/09(日) 00:35:18
残念ながらマジの外道でしたね…
あのチョッパーがガチギレするくらいだもんなぁ
シンドリーちゃんが解放されて本当に良かった - 105二次元好きの匿名さん22/10/09(日) 05:31:16
心の闇だね、怖い怖い
- 106二次元好きの匿名さん22/10/09(日) 13:54:06
保守
- 107二次元好きの匿名さん22/10/09(日) 18:16:55
保守
- 108122/10/09(日) 22:08:45
シンドリーとホグバックの件は気にはなるが、そちらばかりに気をやっているわけにもいかない
舞台版ソラの進捗状況や、揺れる世界情勢など考えるべきことは尽きないが、今現在私が最も気にしているのは、ドッキング作業が間もなく完了するグラン・セーニョに関してだ
今後、世界最大級のエンターテイメント船として営業していくのに、必要な物がある
世界政府からのお墨付きだ
正確には、世界貴族・天竜人のお墨付き、と言うべきか
今現在持っている政府とのコネクションもないというわけではないが、できればもう一声欲しいところだ
それがなければならないというわけではないが、この海で大手を振るって商売をするなら、どうしても必要になるだろう
世界政府に認められる、すなわち世界政府の傘下であるということはそれだけで一定以上の示威行為になる
だが、そうなれば必然、避けて通れないものもある
天竜人の私的な介入だ
以前、我々の住む島に天竜人が訪れたときは島外に遠征公演という形で島を留守にしたため接触せずに済んだが、直接その名を借りるというのであればそうもいかないだろう
正直に言えば、どういった形であっても関わりたくはない
彼らは気まぐれであり、かつその権力は絶対だ
ある程度天上金を支払うことでこちらの要求を通すことが出来るかもしれないが、だからと言って安心はできない
非加盟国は言わずもがな、加盟国の王族ですらその鶴の一声で奴隷にできるというその権力の前では、何を持っていかれるかは分からない
最も被害が少なくすむであろう道は、世界政府ではなく天竜人個人を相手に名を借りることだが、どの道天竜人を相手にする以上、無害というわけにはいくまい
さてどうするべきか… - 109二次元好きの匿名さん22/10/09(日) 22:08:57
このレスは削除されています
- 110122/10/09(日) 22:09:51
そうして対応に悩みながら、書類仕事をしているある日のこと
「○○様、一大事でございます」
タナカが血相を変えて執務室に飛び込んできた
基本冷静なこいつら良くない、ひどい慌てようだ
「どうした、騒がしいぞタナカ」
「ハッ、申し訳ありません!ですが、早急にお伝えするべきと」
…どうやら本当に急を要する案件のようだ
「分かった、聞こう」
「はい、実はエレジアが…」
エレジア
国王ゴードン陛下の収める、音楽の都と名高い島だ
つい先月も、お譲りしたライブ専用電伝虫のメンテナンスのために、技術者たちを引き連れ訪れた、のだが…
「エレジアに、何かあったのか?」
「はい、そのエレジアが…」
タナカは一度息を吐き、意を決したように言葉を紡いだ
「先ほどエレジアが、赤髪海賊団の手により壊滅いたしました!!」
…この時、また、いつかのように
次代を動かす歯車が、軋みながら回り始める音が、聞こえた気がした - 111二次元好きの匿名さん22/10/09(日) 22:21:23
会心後のミョスガルド聖なら安心だけどなぁ
嗚呼エレジアが…ウター! - 112二次元好きの匿名さん22/10/10(月) 01:56:08
語り部である金持ちの激動の時代においても強かかつ豪快な行き方が好きです。保守
- 113二次元好きの匿名さん22/10/10(月) 05:21:28
保守
- 114二次元好きの匿名さん22/10/10(月) 14:59:35
ゴードンさん……
- 115二次元好きの匿名さん22/10/10(月) 20:25:00
保守
- 116122/10/10(月) 21:06:18
「早急に可能な限りの情報を集めろ
それと、これから先の予定はすべてキャンセルだ
私もエレジアに向かう、出航の準備を急がせろ
あと、テゾーロもここに呼んでくれ、ゴルゴルの力が必要になるかもしれん」
「ハッ、かしこまりました!」
一息に出した指令を受諾し、タナカが慌てた様子で部屋から出ていく
それを見送りながら、私は深く椅子に腰かけた
…まさかの出来事である
あのエレジアが、世界一の音楽の都と謳われたエレジアが壊滅など、欠片も想定もしていない
今のところ得られている情報によると、事件発生は数時間前、エレジアはほぼ壊滅状態で確認されている生存者は2名のみ
うち1名はエレジア国王であるゴードン陛下、もう1名は少女とのこと
下手人は国中の宝を奪取し逃走、海軍の追っ手を振り切り、現在は行方不明
海賊による襲撃事件としては最悪と打っていい結末だ、それは言うまでもない
だが、気になる点もある
この事件を起こしたのが、あの赤髪海賊団だという事だ
赤髪海賊団、実力派ぞろいの名うての海賊団だ
確か去年も海軍の護送船を襲って積み荷を奪取したと、一時期話題になっていた
何を奪ったのかは公表されていないが、海軍を自ら襲ったという時点で他とはかけ離れている
船長の名は”赤髪のシャンクス”
元は海賊王ロジャーの船で見習いをしていた男で、本人も二十歳のころにはすでに10億の賞金がかけられるなど、まさに他の海賊とは桁違いの実力者だ
とは言え本人の性格は基本気さくで陽気、私が最後に合ったのは10年以上前だが、彼らの噂を聞く限りその性格は今でも変わりないだろう
そんなシャンクスが率いる赤髪海賊団は、海賊としてはどちらかというと少数派である冒険・ロマンに重点を置いた集団だ
今回のような民間人に甚大な被害をもたらす行為をするイメージはなく、そういった行為はシャンクスより、ロジャーの船にいたころ常に一緒にいた青髪赤鼻のバギーとかいう少年の方がやりそうである
というか現在進行形で東の海にて暴れているそうだ - 117122/10/10(月) 21:06:33
とにかく今回の事件、本当にシャンクスが起こしたというのであれば、だいぶ本人の人物像からはかけ離れた行為と言えるだろう
これでも業界に長くいるため、人を見る目には長けていると自負している
無論10年以上も会っていないのだ、性格が変わることもあるし、私が彼の本質を見抜けなかっただけかもしれない
が、やはり違和感は拭えない
それに疑問点はまだある
なぜわざわざエレジアを狙ったのか、宝を奪うのに島民のほとんどを虐殺する必要があったのか、など
分からないことだらけである
とにかく、こんな遠い地で延々と悩んでいても仕方あるまい、現場に赴けば自然とわかることもあるだろう
私は椅子から立ち上がり、旅の準備をするためクローゼットの扉を開けた - 118二次元好きの匿名さん22/10/11(火) 01:05:37
シャンクスとも繋がりあるのか……
- 119二次元好きの匿名さん22/10/11(火) 10:17:47
エレジアで人と会う機会があればウタもゴードンさんも事態が好転するかも……?
- 120二次元好きの匿名さん22/10/11(火) 13:11:30
金持ちさん達と交流して外の世界を知れば、ウタも救済ルートいけるかな…?
とはいえあくまでメインは金持ちさんとテゾーロ達だしな - 121二次元好きの匿名さん22/10/11(火) 20:22:42
幸せになれるかどうか
- 122122/10/11(火) 21:48:44
申し訳ございません
作者都合により、本日の掲載は休止させていただきます - 123二次元好きの匿名さん22/10/12(水) 00:42:26
保守
- 124二次元好きの匿名さん22/10/12(水) 03:13:46
保守
- 125二次元好きの匿名さん22/10/12(水) 05:59:57
エンタメ繋がりだがさてどうなるか
- 126二次元好きの匿名さん22/10/12(水) 07:46:20
ロジャー関連かな
- 127二次元好きの匿名さん22/10/12(水) 13:54:50
ほしゅ
- 128二次元好きの匿名さん22/10/12(水) 18:23:50
期待待機
- 129122/10/12(水) 22:19:59
早急に準備を整えエレジアに赴いた私たちが見た光景は、まさに凄惨という一言に尽きるものだ
煉瓦でできた美しい町並みは見るも無残に崩れ落ち、所々に残る焦げ跡は事件当夜の凄惨さを物語っている
島の各所では海軍による実況見分と生存者の捜索が行われているが、すでに事件から相当の日数が経過している
可能性としては絶望的だろう
どちらかと言えば、行方不明者の遺体探索の割合が大きい
その様子を小高い丘の上から眺める影が一つ
この国の王、ゴードン陛下だ
「ゴードン陛下」
「!…○○殿」
私の存在に気付いた陛下は驚いた顔をされたが、すぐに目線を作業中の海軍たちに移す
その顔には、悲哀とも後悔ともとれる色が浮かんでいた
「…何があったのか、詳しくお聞かせいただいても?」
「…あぁ、わかった」
そういって、陛下は事件当日の話をし始めた
纏めると、赤髪海賊団は”ウタ”というこのエレジアでも並ぶもの無き、まさに世界の宝というべき歌の才能を持つ少女を出しに入国
陛下は彼女らの入国を盛大に歓迎し、その歌声を国中に届けるため私が贈ったライブ用電伝虫を用いて特別ライブを開催したが、その最中に彼らは態度を急変
油断していた国民たちを―ゴードン陛下とウタという少女を残して―皆殺しにし、金品を奪って逃げた、とのことだ
私に一通りの説明をした陛下は、海軍に呼ばれて去っていった - 130122/10/12(水) 22:21:43
私は連れてきた船員たちに海軍の補助を指示したのち、崩壊した街中を歩きながら陛下の説明に関して思考を巡らしていた
…やはり解せない
まず違和感を覚えたのは、『歌の上手い少女を出しに近づき、油断したところを襲った』という部分
エレジアは音楽の都と名高いが、国としての規模は正直そこそこだ
最寄りの海軍基地からもそれなりの距離があるし、保有戦力も国としてはどちらかと言えば少ない方
率直に言えば、普通の海賊ならともかく、赤髪海賊団の実力であれば真正面から略奪しても大した苦労もせずに制圧できただろう
そのウタという少女をいつ用意したのかは知らないが、あまりに回りくどすぎる
さらにもう一つ、街の破壊規模に関して
最初から違和感はあったし、先ほどチラッと聞いた話では、海軍側も不可解に思っているようだ
エレジアに残された破壊の痕が、海賊船一隻によって行われたにしては大きすぎる
それこそ、噂に聞くバスターコールでも受けたかのようだ
それに、建物の多くが崩れているため分かりにくいが、どうにも砲撃による破壊痕には思えない
たしか海軍本部にボルサリーノとかいうピカピカの実の能力者である中将がいたはずだが、どちらかと言えば彼が放つレーザービームによる破壊痕に似ている気がする
そもそも宝を奪うのに国にいた人間を皆殺しにするというのも不自然だ
エレジアへの攻撃の報を受けて出撃した海軍が逃げる赤髪海賊団を補足しているため、そこまでの猶予はなかっただろう
ならば、抵抗する人間だけ殺して宝を奪い、すぐに逃げるのが自然だ
不必要な虐殺をして時間を無駄にする必要性は―彼らが虐殺を好む残忍な人間たちでない限り―ないだろう - 131122/10/12(水) 22:22:07
考えれば考えるほど、この事件は不可解な部分が多い
海軍側もそれは気付いているようだが、赤髪海賊団という明確な実行犯が湧けっている以上、詳しい調査は行われないだろう
さて、そうなると私は今後どう動くべきか…
私がそう考えながら海岸を歩いていると、先の方で一人の少女が歌っているのが見えてきた
年齢は10歳前後だろうか、赤と白の二色に分かれた長髪をツインテールにし、それをヘッドセットでウサギの耳のような形にまとめている
おそらく、あれが話に聞くウタだろう
話を聞こうと思いさらに近づいていくと、不意に彼女の歌声が私の耳にも届いてきた
それを聴いた瞬間、私は衝撃を受けた
上手い、などというレベルではない
まさに神が与えた才能というべき代物だ
音程、音感はいうに及ばず、音域も高音から低音までかなり幅広く出している
リズム感も声量も子供とは思えない
何よりあの美声だ
なるほど、陛下が世界の宝とまで称したのも分かる
才能という意味ではテゾーロと同等かそれを超える逸材だろう
とにかく、業界人としてあの歌を放っておくことはできない
そう考えさらによく聴こうと彼女に近づいた瞬間、私は不意に強烈な眠気に襲われ、その場で意識を失った - 132二次元好きの匿名さん22/10/13(木) 01:50:06
やっぱウタウタの能力はタチ悪いな……
- 133二次元好きの匿名さん22/10/13(木) 05:33:43
やはり才能はあるんだな
- 134二次元好きの匿名さん22/10/13(木) 13:56:35
金持ちさんがウタワールドに!?
テゾーロとウタが一緒のステージで歌ったらすごいことになるだろうな… - 135二次元好きの匿名さん22/10/13(木) 20:15:38
保守
- 136122/10/13(木) 21:42:14
ふと気が付くと、私は見知らぬ土地に立っていた
どうやら小さな村のようで、周囲には簡素な家屋が立ち並び、遠方には何基もの風車が立ち並んでいる
逆方向には海が見えることから、どこかの港町、いや、港村というべきか
…ここはどこだ?私はなにをしていた
思考に靄がかかる、直前まで何をしていたかが思い出せない
確か私は、エレジアで…
と、そこまで考えたところで、海に方角に人影が見えた
どうやら歌っているらしい
背格好からして子供のようで、赤と白の髪が潮風に揺れている
波の音に交じって聴こえてくるその歌声は天使が奏でる笛のように透き通っているが、どこか物悲しげなメロディーだ
いや、今はどうでもいいとにかくここがどこなのかを聞かなければ
そう思ってその何者かに近づこうと一歩を踏み出し、そういえば昔何かでこんな景色を見たような、とおぼろげな記憶が頭をよぎった直後
私は、プツリと、再び意識を失った - 137122/10/13(木) 21:43:11
「…殿、○○殿!」
誰かに名を呼ばれて意識が覚醒する
眼を開けると、ゴードン陛下が私を必死の形相で揺すっていた
「…陛下」
「!よかった○○殿。起きられたか!」
陛下の手を借りて立ち上がる
ここは間違いなくエレジア、それも先ほどウタらしき少女を見かけた場所だ
「…私は、一体?」
「ここで倒れていたのだ、私も驚いたよ」
倒れていた?ここで?
言われて徐々に記憶がよみがえってくる
そうだ、私はここで彼女の歌を聴き、いつの間にかあの村にいたのだ
あの時は見覚えが無いように思っていたが、よくよく思い出してみると、どこかで見たような記憶がある
あれはたしかガープに…、と、そんなことを言っている場合ではない
問題は、あの現象が何だったのかという事だ
「彼女…、先ほどまであちらで歌っていた少女は?」
「あぁ、彼女がウタだ
今は城に戻して休ませた、ここ数日夜はあまり眠れてないようだったからな」
「そう、ですか…」 - 138122/10/13(木) 21:43:36
陛下に一言断り、近くの岩に腰かけ、思考を纏める
あの時、私は確かに突然の強烈な眠気に襲われ気を失った
どう考えても自然な現象ではない
起点はおそらく、彼女の歌を聴いたこと、それしか考えられない
そしてあの村は、状況的に夢の中というべきか
少なくとも、私の夢ではないだろう
見覚えがあるとはいえ未だ朧げにしか思い出せない村のことを、態々このタイミングで夢に見るとは考えづらい
それに、あの夢の中にも彼女はいた
となれば、あれは彼女の夢、というべきか
『歌』『眠り』『夢の世界』
これだけキーワードが出そろえば、答えは自ずと見えてくる
…”ウタウタの実”だ
その能力は、自身の歌を聴いたものの魂を仮想の世界へ誘い込む、というもの
私自身知識として知っているだけで実際に能力者を見たことがあるわけではないが、ここまで一致していれば確定だろう
そしてもう一つ、重要な問題がある
ウタが、彼女が本当にウタウタの能力者であるのなら、もう一つ大きな問題が浮上する
正直話としては荒唐無稽、しかしそう仮定すればある程度事件の疑問点に解を出せる
そう、それこそが…
「トットムジカ…」
「!!??」
私がポツリと出した単語に、陛下は大きく動揺した
この反応を見るに、どうやら当たりのようだ
…あまり、信じたい話ではないが
「本当のことをお聞かせ願えますか、陛下」 - 139二次元好きの匿名さん22/10/13(木) 23:04:43
行動力と知識のあるキャラ目線の話は読んでて面白い、紳士的な岸辺露伴みたい
- 140二次元好きの匿名さん22/10/14(金) 02:23:21
金持ちさんの推理力&分析力パネェ!
少ない情報で即答えにたどり着くとは… - 141二次元好きの匿名さん22/10/14(金) 04:31:18
そもそもの知識量がヤベェ
- 142二次元好きの匿名さん22/10/14(金) 13:58:23
ほしゅ
- 143122/10/14(金) 21:07:45
申し訳ございません
作者都合により、本日の掲載は休止させていただきます - 144二次元好きの匿名さん22/10/15(土) 00:19:37
はいさーい
- 145二次元好きの匿名さん22/10/15(土) 02:09:16
保守
- 146二次元好きの匿名さん22/10/15(土) 12:40:37
保守
- 147二次元好きの匿名さん22/10/15(土) 22:23:07
保守
- 148122/10/15(土) 23:14:58
トットムジカ、このエレジアに伝わる伝説だ
楽譜に封じられた、古の歌の魔王
かつてこの地を訪れたオハラの学者曰く、『触れてはならぬもの』『人の心に落ちし影』と、城の資料室の天井画に古代文字で記されているらしいが、正直抽象的過ぎて全く分からない
が、二つだけ、確かのことがある
一つは、トットムジカが蘇るとき、世界は滅亡の危機に瀕するという事
そして、魔王復活のカギはウタウタの実にある、という事だ
具体的に言えば、トットムジカをウタウタの能力者が歌うことで、魔王は解き放たれる、らしい
最初この話を宴の席で陛下に聞いたときは眉唾物のおとぎ話と思っていたが、世界の海を知り、悪魔の実を始めとした不可思議かつ危険な代物の存在を知った今となっては、『そういったものもあるかもしれない』と思うようにはなっていた
それにガープによれば、世界政府もトットムジカの存在は危険視しているらしい
それだけで、十分に信ぴょう性が上がるというものだ
さて、ここからが本題
あのウタが、本当にウタウタの実の能力者なのだとしたら
このエレジアに、トットムジカの眠る地に、その目覚めのカギが現れたことになる
「陛下、どうなのですか?本当にトットムジカが?」
「……」
陛下は口を閉ざしたまま
まぁ、これまでの話を聞いていればなんとなく察することが出来る
話せぬ内容も、話せぬ訳も - 149122/10/15(土) 23:18:08
「陛下」
「…」
「陛下、これはあくまで私の独り言、聞き流していていただいて構いません」
「…!」
まず、この事件に関する疑問点を排除しよう
赤髪海賊団、ひいてはシャンクスの人柄に合わない今回の事件
これはそのまま、シャンクスたちが実行犯ではない、真犯人をかばっていると考得てしまえばある種納得がいく
そして、街の不可思議かつ大規模な破壊痕と住人の虐殺
こちらは、伝説のトットムジカの復活によるものだと仮定する
そしてあの少女、ウタが本当にウタウタの実の能力者であるとすれば、この二つの点が一本の線でつながる
ウタと赤髪海賊団がいつから繋がりがあったのかは知らないが、彼女が彼らにとって重要な存在であり、かつ、彼女が原因でトットムジカが蘇ったのであれば、赤髪海賊団が王国滅亡の実行犯という汚名を被る理由になる
もし事件の詳細がこの仮説の通りだとすれば、真の実行犯と言えるウタを陛下が庇うような言動をしているのは…
「彼女はトットムジカの存在を知らぬままに歌った
そして、状況から考えるに歌ったこと自体覚えていない、違いますか?」
「…」
陛下は相変わらず黙ったままだが、顔は蒼白で脂汗がにじんでいる
そもそもトットムジカという存在自体、世界政府関係者を除けばこの国の住人ぐらいしか知らない話だ
事件当日に来たというウタには、その危険性を知る由もないだろう
仮にトットムジカの楽譜が目の前にあったとして、それを止める者が居なければ歌わないという選択肢自体出てこない
そして、歌った結果あの惨劇が起こったとして、生まれながらのサイコパスでもない限り、これほどの惨劇を起こして平静でいられる子供はいないだろう
しかし、先ほど遠目で見た彼女はもの悲しげな雰囲気でこそあったものの、何かを悔いたりおびえているような表情には見えなかった
とくれば、彼女自身トットムジカを蘇らせたことを覚えていないということだろう
そう考えれば、赤髪海賊団や陛下が彼女をかばう言動する理由にも納得がいく - 150122/10/15(土) 23:20:03
つまりまとめるならば
赤髪海賊団とエレジアを訪れたウタウタの実の能力者であるウタが、何らかの拍子にトットムジカを歌い、魔王が復活
魔王により国は蹂躙されたが、何らかの理由により再び消失
ウタはその間の記憶を持っておらず、赤髪海賊団と陛下は共謀し赤髪海賊団が襲撃の犯人であるとでっち上げた、というところか
もちろんこれはただの推測にすぎないし、所々理論が飛んでおり、推測というより妄想の類だ
しかし、この考え方であれば事件の様々な謎に説明がつくのもまた事実なのだ
だが同時に一つ、大きな問題がある
この推測だと、上記以外にもう一つ大きな疑問が生まれる、それすなわち…
「誰が、トットムジカをウタに渡したかという事」
「…」
トットムジカの楽譜は本来、エレジア王城の最奥に厳重に封印されているはずだ
間違っても、海外から来た少女が何のけなしに手に入れられるものではない
もし先の推測が正しいとすれば、何者かがトットムジカを持ち出し、彼女に渡したことになる
どのような意図かは知らないが、その人物こそこの事件の真犯人と言えよう
しかし…
「…そんな人間はいない」
「!!…陛下?」
陛下がポツリと、私の考えを否定した
「この国を、悪意を持って滅ぼそうとした人間など一人もいない
すべては、トットムジカが引き起こしたのだ!」
そういって、やっと
陛下はあの夜の真実を語りだしてくれた - 151二次元好きの匿名さん22/10/16(日) 06:44:28
お辛い話が来たな……
- 152二次元好きの匿名さん22/10/16(日) 12:31:11
誰も悪くないのが本当にやりきれない…
強いて言うなら元凶のトットムジカが悪いけど、あいつも可哀想な存在だしなぁ… - 153122/10/16(日) 22:52:53
サーバー―ダウンにより投稿分が消失したため本日分の掲載は休止させていただきます
誠に申し訳ございません - 154二次元好きの匿名さん22/10/16(日) 22:55:01
お気になさらずゆっくり書いてくだされ
- 155二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 05:21:00
保守!
- 156二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 15:05:38
保守
- 157二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 20:56:19
待ってるぜ!!保守
- 158122/10/17(月) 22:37:04
あの運命の日
シャンクス率いる赤髪海賊団と共にやってきたウタの歌声を聞いた瞬間、私は雷に打たれたがごとき衝撃を覚えた
彼女の歌はまさに天からの贈り物、世界の宝というにふさわしいものだった
ゆえに私は、ウタにこの国に留まるように求めた
あれほどの歌の才覚を持つものは、私でも見たことがない
是非ともこの国でその才能を伸ばし、さらなる高みを目指してほしい
私は本気でそう思っていたし、音楽院をはじめ彼女の歌を聴いた国中の者たちも同じ思いだった
しかし、彼女はそれを拒否
この国にいるよりも、彼女は家族である赤髪海賊団と共にいることを選んだのだ
その判断自体は非常に残念ではあったが、彼女自身がそれを選んだのであればしかたがない
せめてウタにとってこの国での思い出が一生心に残るもであってほしいと、私は国中の様々な名所を案内した
城の資料室、礼拝堂、音楽学校、などなど
案内している間、ウタは本当に楽しそうにしてくれていた
それを見ている私や赤紙海賊団の面々にも、自然と笑顔が浮かんでいいた
そして、その夜
彼らを歓迎するパーティーを開催したがその際、ウタがシャンクスたちと共に国を出ることを知った音楽院の者たちは、その意思を尊重しながらもせめて最後に歌を聞かせてほしいと、様々な歌を歌うように彼女に頼んだ
ウタ自身、己の歌が求められたことがうれしかったのだろう
求められるままに歌い続けていた
それを聴いていた私はせっかくだからと○○殿に譲っていただいたライブ用電伝虫を使い、国中の者たちに彼女の歌を聴いてもらえるよう取り計らった
…思えば、これがいけなかったのだろう
私の考えた通り、歌の歌声は島中に響き渡った
そしてそれは、本来なら届かぬはずの、城の奥深くに封じ込められていたヤツのもとにまで届いてしまった
――トットムジカ
己を復活させることが出来る、ウタウタの実の能力者の歌声を聞いた奴は、さぞ歓喜したに違いない
事実、奴は自ら封印を解き、ウタのもとに音もなく忍び寄ったのだ
トットムジカの危険性、いやその存在さえも知らないウタが、それを拾い上げ口ずさんでしまうのはごく自然なことだ
復活した奴は彼女を取り込み、己を顕現させ続けるため己が内で彼女を歌わせ続けていた - 159122/10/17(月) 22:39:29
「…そこからはおおむね、○○殿の推測通りだ」
「…それはつまり、トットムジカ――楽譜に意志があると?」
「あぁそうだ、奴は誰でもない、己の意志でウタに近づいた
自信を解放させるために」
…なんともまぁ、信じがたい話だ
確かに、偉大なる航路では悪魔の実には意志があり、自身を食うにふさわしいものを求め彷徨っているなどという伝説もあるが、まさか似たような事例が身近にあるとは
とはいえそれでは、対処の使用があるまい
危険物というのはそれを使う意思のあるものの手に渡ることを防げれば安全が保障される
しかし、危険物自体に意志があってはどうしようもない
勝手に弾を撃つピストルのようなものだ
まぁその対処について今は後回しだ
最優先で片付けなければならない問題は、陛下の、そしてウタの今後だ
「陛下、この後はどうなさるおつもりですか?」
「…私は、去り行くシャンクスたちと約束したのだ
ウタを、世界中を幸せにする最高の歌い手に育て上げると…」
「…それで?」
「…この島に残り、私が彼女を育てようと思う
海軍と話し、定期的に商船経由で物資を届けてもらう手はずになっているんだ
王城は被害も少ない、少し修繕すれば十分使えるだろう」
…やはりそうなるか
陛下の考えは理解できる、彼にとって最も避けるべきは再びのトットムジカの復活、そしてそれによる被害だ
少なくともウタがウタウタの実の能力者である限り、トットムジカの危険性はなくならない
彼女が人口の多い島に移り、再び魔王が顕現すれば、この惨劇の二の舞だ
しかしこの島であれば、例えトットムジカが現れても被害はゴードン陛下一人か、タイミングが悪くとも物資補給のための商船くらいで済む
それを考えれば、陛下の考えは間違っていないだろう - 160122/10/17(月) 22:41:06
しかしそれは、家族に置いて行かれた年頃の少女を、この廃墟の島で自身とたった二人きりにするという事だ
陛下自身、それを望んでいるわけではないだろう
事実、陛下は俯き続けており、その顔は苦虫を嚙み潰したかのように強張っている
苦渋の決断、という事だ
だがそれでも、音楽の都と謳われるエレジアの王、ゴードン陛下であれば、こんな島でもウタに世界最高のレッスンを施せるだろう
彼女の才能と合わせれば、技術だけ見れば世界最高の歌い手にするというのも夢ではない
しかし、それでは足りない
彼女を本当に世界を幸せにでき歌い手にするというのであれば、それだけでは足りない
もっと、根本的に必要な物がある
…ならば、業界人として私がやるべきことは何か
答えは、決まっている
「陛下、無理を承知で申し上げます」
私の声に陛下が顔を上げる
ともすればこれは、私自身の財産や命はおろか、多くの住民、私の部下や家族をも巻き込むかもしれない、リスクの大きな賭けだ
だが…
「陛下、ウタと共に、私共の島にいらっしゃいませんか?」
私も元はギャンブラー
ハイリスクハイリターンの賭けは、私の専売特許だ - 161二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 23:34:24
テゾーロだけでなくウタも救ってくれるんですか!?
ありがとう金持ちさん… - 162二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 23:36:09
そして賭けに勝ち続けてきた男だ
- 163二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 05:17:02
格好良い!説得力がありすぎる…
- 164二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 05:18:31
惚れる
- 165二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 17:08:22
保守
- 166二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 22:54:05
ほしゅ
- 167122/10/18(火) 23:46:32
「○○殿の島に、ですか…?」
「えぇ、もちろん陛下さえよろしければ、ですが」
「しかし、それでは万が一トットムジカが…」
「えぇ、その対策は当然考えますが、その上で、です」
本来、トットムジカの危険性を考えれば人口の多い私の島に迎え入れるという選択肢はない
しかし、今回は状況が状況だ
ウタ、彼女の歌声は現時点でも世界で十分通じるだけのポテンシャルがある
その上、音楽の都と謳われるエレジアのゴードン陛下による指導が加われば、世界一の歌い手にするというのも決して夢の話ではないだろう
しかし、それだけで足りないのだ
いくら彼女の歌唱技術を高めようとも、それに釣り合う精神的な成長が見込めなければ、世界を相手にすることはできない
早い話が、精神が幼いままでは世界を相手にすることはできない、ということだ
歌い手には技術はもちろんのこと、強靭な精神が求められる
どんな舞台であっても、決して挫けることも怯むこともなく歌いきれるだけの精神力だ
そして同時に、世界を相手にするというのであれば―これは何も歌い手に限った話ではないが―それに見合った価値観の形成と常識の習得、言い換えれば人間性の成長というのも重要になる
前者は言わずもがな、後者に関しては世界という多様な価値観で形成された集合体を相手執る以上、そこに存在する様々思惑に流されることなく己の意志を尊重し、なおかつ、ある程度社会や周囲に迎合し共通の認識を持つということが重要になってくる
得てしてそういったものは本などの文章で独りよがりに学ぶよりも、様々な他者、特に同年代の人間との触れ合いによって形成されていくものだ
正直に言えば、この崩壊したエレジアという、閉鎖された環境でごドン陛下と二人きりで過ごすことになるウタに、そういった、いうなれば健全な人間性というものが備わるとは考えづらい
特に他者との同一の認識の共有というものは日常的に触れ合える人間の数がものをいう
ゴードン陛下か、いても定期補給のための商船の乗組員くらいしか触れ合う相手がいないであろうウタに、それが備わる可能性は低いだろう
特に今の彼女の心理状態を鑑みれば、ここで精神的成長の場を奪うことは悪手だ - 168122/10/18(火) 23:48:31
彼女の立場からすれば、今の状態は長年信じてきた家族に裏切られ置いて行かれた挙句、その家族は最初から自身を利用することを考えていたということになる
想像するしかないが、現時点でのウタの精神面は最悪と言っていいコンディションだろう
ここで下手な手を打つ、もしくはなにも手を打たなければ、必ず今後の精神の成長に悪影響を及ぼすことになる
また、今は知らなくても、将来的に何らかの拍子に事件の真実を彼女が知ることがないとは言い切れない
正直今回の事件において彼女の責任を問えるほどの過失は認められないとは思うが、精神が幼い状態で事の真相を知れば、エレジアが滅んだすべての責任が自身にあると思い詰める可能性が高い
おまけにそれは、赤髪海賊団が汚名を被ることを厭わずに自身をかばったことを気付くことにもつながるだろう
そういう意味でも、ウタの精神面での成長・成熟は、今後彼女の歌い手としての成長のみならず、一人の人間としての成長にも必要不可欠なものであり、私が拠点の島への移住を進めたのも、ウタが少なくともこの島よりは多様な人間との接点を持てる可能性が高いと考えたからだ
陛下は技術面だけみれば全く問題ないが、こういった精神面では本人の優しい性格と真実を黙っているという罪悪感からこちらにはなかなか手を出しづらいだろう
ならば、その部分は他の者がフォローするしかあるまい
ウタの歌は、将来的に必ずこの世界に大きな影響をもたらすだろう
単純にその歌による影響力はもちろんのこと、彼女の生み出す利益とそこからくる経済効果は計り知れない
考えられるリスクもかかる経費も確かに大きくなるだろうが、それに見合うだけの超巨大なリターンがある
私は普段であればローリスクローリターンを信条にしている
が、未だにギャンブラーとしての勘が鈍っている気はしない
乗るべき賭けと乗るべきでない賭けの区別くらいはついているつもりだ
そして今夏の一件は、明らかに前者
リスクの大きさに尻込みしこのビッグチャンスを逃すようなことがあれば、ギャンブラーとしても投資家としても失格、といえるだろう
ゆえにこそ、取れる手段はすべて取り、あらゆる可能性を考慮し対策することで、このチャンスをものにする
それが私のギャンブラーとしての、投資家としての矜持というものだ - 169二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 04:57:25
>それが私のギャンブラーとしての、投資家としての矜持というものだ
かっこよすぎる……!!
- 170二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 05:27:27
ハッピーエンド確定だー!
- 171二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 07:16:09
勝ったな
- 172二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 07:47:55
目指せグッドエンド
- 173二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 18:00:28
エンタメ業界は明るくないとね
- 174122/10/19(水) 22:10:28
申し訳ございません
作者都合により、本日の掲載は休止させていただきます - 175二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 05:15:27
ほしゅ
- 176二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 07:51:08
保守して君を待つ!
- 177二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 18:30:38
保守
- 178122/10/20(木) 22:02:27
「…○○殿の意志は理解した
確かに私も、ウタをこの地で過ごさせることに抵抗はあったのは事実だ」
「…」
「しかし、やはりトットムジカの危険性を無視することは…」
「えぇ、まぁ移住の件はともかくとして
とりあえず簡単な対処だけでも早めにやっておくべきでしょう
トットムジカは今どこに?」
「…あの事件の後、城の地下に再び封印した
案内しよう」
「…お願いします」
ゴードン陛下の先導で、エレジア王城跡地まで出向く
その道すがら、ちょうどいいタイミングだったので私は今後のこの国に関しての話を切り出した
「陛下、今後のエレジアの復興計画に関してですが…」
「…○○殿、復興と言われても、すでに我が国の民たちは」
「えぇ、それは授受承知しております」
エレジアの国民は今回の事件で陛下を除き全滅している
こんな状態では復興など不可能だ、いやそもそも、復興の必要性すらない
陛下とウタがこの地から去れば、その時点でこの島は無人の廃墟と化すのだから
だが、私個人としては可能であれば復興させたいと考えている
このエレジアは長きにわたり音楽の聖地として栄え、世界中にその名を知らしめている
それがその消滅は音楽業界、ひいてはエンタメ業界において大きな痛手となるし、それほど高名な国が海賊に滅ぼされ廃墟となったとあってはこの大海賊時代に拍車がかかることにもつながりかねない
そういう意味でも可能であればエレジアの復興を進めたいところだが、とは言え人が居なければどうすることもできない
取れる手としては移民というのもあるが、連れてくる人間をどうするかという問題に行き着く
どこかで募集するか、奴隷を連れてくるか…
今のところ考えられる案としては、この地に何らかの生産施設―例えば放送電伝虫などの―を建設し、そこの労働力として奴隷を連れてくる
ある程度軌道に乗ったところで奴隷を解放しそのまま国民としての地位を約束、生産施設はそのまま国の主要産業として確立させ、国としての体裁が作れたら元の音楽の都としての姿に寄せていく、というのがある - 179122/10/20(木) 22:02:48
しかし、これはしょせん机上の空論
国としての前段階の時点で、施設の建設費や奴隷の調達、その奴隷たちに支給する物資や食料など問題が山積みだ
それだけでなく、世界政府への交渉や仮に施設を立てたとしても、海賊の襲撃への対策などやらなければならないことは尽きない
少なくともこの案を実行しようと思えば10年単位での準備が必要だろう
とは言え、簡単に言っているがこれはほとんど1から国を作ろうとするビッグプロジェクトになる
進ませるにしろやめるにしろ、焦らずじっくり時間をかけて考えていかなければならない
そう考えながら歩いていると、いつの間にか城に到着していたようだ
城の入り口の前では、テゾーロとタナカが待っていた
ここに来る途中で、持参した子電伝虫で呼び出しておいたのだ
二人を引き連れ、ゴードン陛下案内のもと、城を進んでいく
広大な城を進み、多数の彫像―なんでも防犯装置の一つで、侵入者が居れば実際に動き出すらしい―が置かれた資料室を抜け、ついにトットムジカの音へ行きつく
そこにあったのは、何の変哲もない普通の楽譜だ
だが、それにしては奇妙なほどに威圧感というべきものを感じる
テゾーロもタナカも、何かを感じ取っているようで緊張の面持ちで身構えていた
「陛下、これが」
「あぁ、トットムジカ…、この島で起きたすべてのすべての悲劇、元凶だ」 - 180二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 23:53:27
エレジアの復興も考えてるのか…
映画でゴードンさんが青空教室やってたけど、そこにウタもいたら楽しいだろうなぁ - 181二次元好きの匿名さん22/10/21(金) 05:14:51
ほしゅ
- 182二次元好きの匿名さん22/10/21(金) 13:17:42
保守
- 183二次元好きの匿名さん22/10/21(金) 19:46:31
待
- 184122/10/21(金) 23:04:54
「では陛下、よろしいでしょうか?」
「あぁ、こちらこそ頼む
私ではこれを封印することしかできなかった、○○殿であれば安心して任せられる」
「分かりました」
陛下の許可を取り、タナカとテゾーロを伴ってトットムジカに近づいていく
この場所への再封印と今後の対応に関しては、ここに来るまでに陛下と話してある
本来事件の規模を考えれば、こんな危険物は破棄しようとするのが自然だろう
しかし、ゴードン陛下はそれをしなかった
理由は至極単純、彼が一国の王である前に、一人の音楽家であったためだ
国を滅ぼした魔王の封じられたトットムジカだが、楽譜として、歌としての完成度はかなり高い
魔王という危険要素がなければ、歴史に名を遺す名曲となっていただろう
それだけに、陛下はこの楽譜を、トットムジカを破棄することが出来なかった
だが私は、それを責めることはできない
私も実物を見るのは初めてだが、確かにこれは見事なものだ
わたしの隣からのぞき込んでいるテゾーロも感嘆のため息を漏らしている
なるほど、音楽を生業とするものでこれを破棄できるのはよほど音楽性に違いがある者か音楽を金儲けの道具としてしか見ていないものだろ
私は自分のことをどちらかと言えば後者よりだと思ってはいるが、それはそれとしてこの楽譜を破棄するつもりは私自身、今のところはない
というのも、かつて資料室にトットムジカの危険性を残した人物たちが、この楽譜を破棄ではなく封印したという事実がある時点で、破棄という選択肢は捨てていた
古代人がその危険性を知っていながら破棄していないということは、何らかの破棄出来ない理由があったからに他ならない
それが陛下のような心情的な理由なのか、それとも何らかの物理的な理由なのかは現時点ではわからない
しかし、自身を解放できる能力者の歌が聞こえたからと言って自ら動き出すような楽譜だ、仮に破棄しても再びどこかで再生する、くらいの可能性は考えておいた方がいいだろう
その危険性を考慮すれば、ここで実験的に破棄するより最初から封印の方向で進んでいた方がいいだろう - 185122/10/21(金) 23:05:44
「よし、テゾーロ、頼む」
「はい」
私の指示のもと、テゾーロが楽譜に向かって手を翳す
翳された手からは黄金がにじみ出てきており、それが意志あるかのようにうごめきながら楽譜を包み込んでいく
うごめく黄金の波が引いた後には、楽譜を中心に形成された厚さ5mmほどの金の板が出来上がっていた
「タナカ」
「ハッ!」
タナカは後ろ手に持っていた黒いケースを開き、私に差し出してくる
このケースは私が貴重物運搬のために遠出の際は持ち出しているものであり、鋼鉄製で遮音性・クッション性ともに随一の特注品だ
ケースに金板を入れ、しっかりと施錠する
「では、トットムジカ、たしかにお預かりいたします」
「あぁ、頼む」
そういって、陛下は頭を下げてきた
現時点での封印の手段、それがこの物理的な重ね掛け
テゾーロに楽譜を金でコーティングしてもらい、それを防音付きのケースに収納、その上でこのケースごと拠点とは別の島にある私が借りている貸金庫に入れておく、というものだ
陛下の話を総合すれば、ウタが入国しパーティーで盛大に歌うまでは動きを見せていなかったようなので、物理的に封じたうえでウタから引き離せば大丈夫であろう可能性は高い
しかし、正直こいつは人知を超えた存在だ
こうやって何十に封じようとも、一度認識したウタウタの能力者の元には距離を飛び越えて飛来したり、いつの間には他の楽譜と入れ替わっている、なんて可能性も捨てきることはできない
とはいえ、今はそうなったらその都度対処するという方法しか取れないのも事実
今はこの対処で封印できた、そう信じるしかないのだ - 186二次元好きの匿名さん22/10/22(土) 01:21:13
トットムジカを歌うテゾーロを想像してしまった…格好良いだろうなぁ
このままずっと封印されててほしいけど、どうかな… - 187二次元好きの匿名さん22/10/22(土) 04:33:09
寂しがりだから放置すると悪化も怖い
- 188二次元好きの匿名さん22/10/22(土) 16:12:20
保守
- 189二次元好きの匿名さん22/10/22(土) 17:19:34
ラキラキでムジカの幸運を限界まで吸い取れないかな?
- 190122/10/22(土) 23:17:39
申し訳ございません
作者都合により、本日の掲載は休止させていただきます - 191二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 02:00:17
保守
- 192二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 06:13:57
期待待ち
- 193二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 15:42:01
期待を込めて
- 194二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 18:30:38
保守
- 195122/10/23(日) 22:01:25
トットムジカの対応に関しては、一応これで完了、ということにしておこう
まぁこれで解決したとは欠片も思っていないが、現状これ以上の対応ができないので仕方がない
それより、次の問題に取り掛かるべきだろう
次の問題、すなわちウタのことだ
回収したトットムジカをタナカに船まで運ばせている間に、私はテゾーロと共にウタと面会した
我々の島への移住に際し、彼女自身の意志を確認するためだ
彼女は最初、見知らぬ大人の男二人に警戒していたようだが、ゴードン陛下が古い友人であると紹介してくれたため比較的すぐに警戒を解いてくれた
そんなウタの様子は、まぁ見るに堪えないものだ
その目に光はなく、直前まで寝ていたはずなのに隈も濃い
髪も、先ほど遠目ではわからなかったが少々傷んでいる
総合的に言って、かなりやつれている
まぁそれもむべらぬかな
それだけ彼女の精神状態がひどいということの証左だろう
先にも言った通り、彼女の現在の状況は家族だと思っていた赤髪海賊団によってこの島に置いて行かれた上、当の彼らは最初から彼女の歌のみを必要としていた(と教えられた)状態であり、想像だがその心中のコンディションは最悪と言っていいだろう
事実、先ほどから移住の話をしているが、ほとんどうわの空な状態だ
正直に言えば、いくら彼女が島を壊滅させた原因を、知らぬうちに目覚めさせてしまい、かつその責任をだれかが取らなければならなかったからとはいえ、もう少しやりようはあったのではないかと考えてしまうが、海軍艦隊が間近に迫っており、筋の通った言い訳を用意する時間などほとんどなかったことを考えれば、しょうがなかったと言えるかもしれん
まぁそこはもういい、終わったことをいつまでも言ってもしょうがない - 196122/10/23(日) 22:02:13
どうにかゴードン陛下の説得も交えつつ移住の話は進めることが出来た
しかし、やはりウタの心中は想像以上に荒れているようだ
終始此方がしゃべることに対しての反応が薄く、移住を了承してくれた時もすべてがどうでもいいというような雰囲気を出しながらうなずいただけだ
このような雰囲気の者には覚えがある
海賊、戦争、政治
理由は関係なく、大切なものを失い未来に希望を持てなくなったものの多くが放っているものと同質だ
私も海に出て長い、そういった者たちはごまんと見てきたし、中には子供もそれなりの数いたが、やはり見ていて気持ちのいい物ではない
ここから回復させるには相当の時間が必要になるだろう
しかし、将来的にウタの歌を世界に羽ばたかせようとするならば、避けては通れぬ道だ
彼女の心を回復させ、同時に世界を相手にするにふさわしい価値観と精神性を養わせる
ついでに、万が一にも事件の真相を彼女が知ってしまった場合を考え、必要以上に罪悪感を感じないよう自己肯定力も高めておく必要がある
今回の事件、あえて犯人を挙げるとすれば自身が解放されるため自ら動いたトットムジカだろう
その危険性を知らなかったウタは、利用されただけと言っていい
しかし、彼女がそう簡単に割り切れるとも限らない
仮に真相を知り、罪悪感と責任感にかられた彼女が下手な行動をとる、なんてことが無いよう教育しておくべきだろう
これらは大事な下地作り
歌い手として以前に、彼女を一人前の人間として育てる
そのために必要なことなのだ - 197122/10/23(日) 22:46:33
- 198二次元好きの匿名さん22/10/24(月) 01:37:30
金持ちさんが真っ当な大人すぎて…修羅のワンピ世界じゃほんと貴重な存在だわ
この人がラキラキの能力者でギャンブラーやってたというギャップがすごい - 199二次元好きの匿名さん22/10/24(月) 10:19:51
新スレが落ちちゃってるのでこっち保守
- 200122/10/24(月) 20:51:57