【トレ→ウマ注意】君の眼差し【SS】

  • 1二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 00:08:14

    『………』
    疲れた。
    自分はひたすらにその一単語だけを思い浮かべながら、薄暗いトレーナー室の片付けをしていた。

    「…本気で言ってるんですか?」
    後輩トレーナーがそう言った顔が忘れられない。
    自分は担当と共に実績を積んできて、そこそこ後輩から頼られる機会も増えてきていた。
    『本気も本気だよ。だから…』
    「信じられない…そんなアホみたいな話あります?熱意だけあればトレーニングがどうにかなるわけじゃないんですよ!?真面目にアドバイスしてください!」
    『俺は真面目だぞ!熱意だけって意味じゃなくて、熱意を持ってトレーニングメニューを組むことで…』
    「はぁ…もういいです!」
    そう言って後輩のトレーナーは去って行ってしまった。

    もう思い出したくもないが、それ以外にも今日は人間関係のトラブルが多くあった。
    …”URAファイナルズ”。
    それを彼女が勝ったあの日から、周りから自分を見る目はあっさりと変わった。
    一般トレーナーから、伝説のトレーナーへと扱いが変わる。
    色んな人が、自分の技術を頼りにくる。
    戻りたいとは思わない。だって彼女が勝ったのだから。
    だが…あの頃の気楽さが忘れられないのも、事実だった。

  • 2二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 00:08:28

    不意にドアが開く大きな音がした。
    「…トレーナーさん!こんな時間まで何やってるんスか!?」
    『わっ…バンブー!?』
    「しかもこんな暗い部屋で作業してちゃ目に悪いっス!ほら、電気つけて…」
    …なぜだろう。
    出会ったあの日。ながら歩きを指摘されたあの日から変わらない。
    そんな彼女をみていると…
    「ふぅ…さ、片付けてかえりま…トレーナーさん!?なんで泣いてるんスか!?」

    その日あった出来事を、彼女にぽつぽつと話してしまった。
    「なるほど…道理で今日のトレーナーさんがいつもより暗かったわけっスね!」
    『はは、情けない限りだよ…』
    「情けなくなんてないっスよ!トレーナーさんは頑張ってるっス!アタシが保証します!」
    『…バンブー』
    彼女は真剣に、燃えるような眼差しでこちらを見つめてくる。
    出会った日から変わらない眼差し。

    『…あぁ』
    そうか。君は変わらないんだ。
    周りが自分への扱いを変えても、君は自分をずっと同じ目で見てくれる。
    『…ありがとう、バンブー』
    「いえ、アタシは何も!じゃあ片付けて帰りましょう!」

  • 3二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 00:08:40

    「トレーナーさん!今日もトレーニング、よろしくお願いします!」
    『ああ、よろしく。まずはコース10周だ!』
    「押忍!」
    …あの日。
    彼女が自分を見る目が変わらないことに気がついたあの日。
    自分の中に、認めてはいけないものを見つけてしまった。

    「はっ、はっ、はぁっ…!」
    汗を輝かせて、楽しそうにコースを駆ける彼女。
    その瞳にまた心を奪われる。
    『…駄目だ、ダメだ…』
    集中しなければ、いけないのに。

    「終わりました!次は何するっスか?」
    『ああ、次は…』

  • 4二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 00:08:54

    その日の夕方。改めて彼女を眺める。
    「ふぅ…!今日もいい汗かいたっス!」
    …輝いているようにすら見える彼女。
    認めてはいけないもの。しかし認めざるを得ないもの。
    ⦅…好き、だ⦆

    君が好きだ。
    ずっと俺のことを、ずっと俺として扱ってくれる君が好きだ。
    その真っ直ぐな眼差しが大好きだ。
    君は俺の夢だ。レースだけじゃない、一生の上での。

    …そんな考えが自分の中で溢れ出す。
    「…トレーナーさん?」
    『…なんでも、ないよ』
    理性がストップをかける。
    彼女はトレセンのウマ娘、自分は学園のトレーナー。
    一線を超えてはいけない。
    だけれど…

    『…なぁ』
    「んん…?やけに深刻そうっスね?」
    『…気が早いけどさ、約束したいんだ』
    「約束?」
    『ああ。…君の卒業式の日、話したいことがある』
    そういうと彼女は目を丸くする。
    「ずいぶん先の話っスね!?…でも、わかったっス!覚えておきます!絶対忘れないっス!」
    そう言って彼女は眩しすぎる笑みを浮かべた。
    ⦅………⦆

    やっぱり、君が好きだ。

  • 5二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 00:09:37

オススメ

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