【閲覧注意・SS】ウタの唄 5スレ目

  • 1黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/10/14(金) 22:08:04
  • 2二次元好きの匿名さん22/10/14(金) 22:59:44

    保守しとくぜ

  • 3二次元好きの匿名さん22/10/14(金) 23:01:24

    とりあえず保守

  • 4二次元好きの匿名さん22/10/14(金) 23:16:35

    ほしゅ

  • 5二次元好きの匿名さん22/10/14(金) 23:27:41

  • 6黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/10/14(金) 23:29:45
  • 7二次元好きの匿名さん22/10/15(土) 00:13:57

    しゅ

  • 8二次元好きの匿名さん22/10/15(土) 07:58:37

    保守
    マジで展開が大波乱でどうなるのかワクワクだぜ

  • 9二次元好きの匿名さん22/10/15(土) 08:07:43

    ほしゅ
    キャラエミュが凄すぎて好き

  • 10二次元好きの匿名さん22/10/15(土) 08:31:03

    前スレ少しだけ余ってるし直近の感想はそこに書き込んだ方がええのんか〜?

  • 11黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/10/15(土) 10:31:00

    >>10

    是非お願いします。どんどん埋めてください!

  • 12二次元好きの匿名さん22/10/15(土) 18:28:24

    このお話べらぼうに大好きです!

  • 13黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/10/16(日) 00:45:12

    一応保守しときます

  • 14二次元好きの匿名さん22/10/16(日) 07:03:34

  • 15二次元好きの匿名さん22/10/16(日) 12:49:35

  • 16二次元好きの匿名さん22/10/16(日) 20:28:40

  • 17二次元好きの匿名さん22/10/16(日) 23:24:26

    保守

  • 18黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/10/16(日) 23:30:15

    (次回更新は五千文字以上を目途にしてます)

  • 19二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 07:12:19

    5000?!うせやろ?

  • 20二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 08:06:03

    ちょうどいいタイミングで黒ひげ海賊団の能力判明したね

  • 21二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 16:33:19

    ほしゅ

  • 22二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 22:22:08

    楽しみに待ってます!!

  • 23二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 07:46:41

    ホホホホホ、ブチ保守しますよ

  • 24二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 15:04:50

  • 25二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 23:08:29

  • 26二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 07:31:42

    しゅ

  • 27二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 15:58:56

    保守

  • 28二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 22:28:15

  • 29二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 07:49:43

    保守!

  • 30二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 14:05:02

    気長に待ってる

  • 31二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 20:40:50

  • 32二次元好きの匿名さん22/10/21(金) 02:04:53

  • 33黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/10/21(金) 07:35:17

    (本編でシリュウの技が来る前に更新したいです。六式使えるのかな…)

  • 34二次元好きの匿名さん22/10/21(金) 15:42:46

  • 35二次元好きの匿名さん22/10/21(金) 21:43:39

    本日付けでこのシリーズを知り、ここまで追わせてもらった。
    僭越ながら保守、及び応援をさせていただく。

  • 36二次元好きの匿名さん22/10/22(土) 02:56:47

    ほしゅ

  • 37二次元好きの匿名さん22/10/22(土) 10:08:38

  • 38二次元好きの匿名さん22/10/22(土) 18:24:18

    しゅ

  • 39二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 02:27:04

    しゅ

  • 40二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 12:04:00

    保守

  • 41二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 22:17:32

    ほっしゅ

  • 42黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/10/23(日) 22:20:10

    明日の夜に本編4000字弱+ハーメルンでの加筆分2000字弱を投稿するゆ
    んでもユーエンやレザンたち若手が黒ひげ海賊団と戦って無事生還できるかは一切が謎のままだゆねぇ

  • 43二次元好きの匿名さん22/10/24(月) 08:35:15

    保守

  • 44二次元好きの匿名さん22/10/24(月) 14:48:00

    しゅ

  • 45二次元好きの匿名さん22/10/24(月) 15:49:48

    >>42

    混ざってる混ざってる()

  • 46黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/10/24(月) 21:56:33

    (投下します)

  • 47二次元好きの匿名さん22/10/24(月) 21:58:33

    待ってたぜ

  • 48黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/10/24(月) 21:59:34

    ──ホールケーキアイランドの某所の市街地。


    「「走れェ〜〜〜!!!!」」


    黒ひげといつの間にか合流したドクQが情けない悲鳴を上げながらストロンガーで逃げ、シリュウが黙々とスケスケと月歩・剃を併用して走る。いつの間にやらストロンガーの背中には翼が生えていた。ウマウマの実モデルペガサスを食わされたのである。


    「ヒ……ヒン!」

    「提督……ストロンガー……重いってよ……」

    「ゾオンの底上げでおれら二人がやっととはなァ……かわいそうなストロンガー!ひとえにおれらがでけェせいだが!」

  • 49黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/10/24(月) 22:02:00

    とはいえ、二人乗りでもなんとか飛べる程度の体力はストロンガーにはある。地に足をつけて走るのならば実のところ結構余裕だった。

    「さて、どう合流したもんか……」

    ──音が聞こえる。

    「お?」
    『──怒りよ 今 悪党……ぶっ飛ばして!』

    万国全域に、血を吐くような歌声が届く。それと同時に黒ひげの部下たちの悲鳴が響いた。

  • 50黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/10/24(月) 22:04:08

    「ギャア〜!!!」

    「寄るな!寄るな!ああ!」

    「やだ、やだ、助けて誰かァ!」

    「おえ、おえええッ……!!」


    視界は急速に肉塊と内臓と蚯蚓の蠢く地獄に早変わりし、かつて肩を並べた戦友も、真下でぎゃあぎゃあ泣き喚く女子供も、火をつけられて叫ぶ一般市民も、激怒して飛び掛かってくる敵兵も、何もかもがみな平等に腐臭と汚液を散らす異形に代わる。


    「足を止めたぞォ!」

    「撃て!殺せェ!奴らの頭蓋を叩き割れ!」


    そして、瞬く間にあらゆる戦線が総崩れとなった。四皇の軍団がその隙を見逃すはずもなく、大量のビスケット兵と歩卒の猛撃を受けた黒ひげ海賊団は海賊と囚人とジェルマ兵の区別なく樟脳のように消え失せつつある。

  • 51黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/10/24(月) 22:06:32

    「げっ、視界がイカれちまった!精神を完全に取り込まないんならおれにも効くんだな。覇気で凌げる範囲だがこいつは困った……!」

    馬上の黒ひげ、辺り一帯をぐるりと見回す。肉塊に満ちた街並みに、かつて命だったものが美しい果実のようなものをぶちまけて転がっているのが見てとれた。

    「ゲホ、……ストロンガーや他の畜獣に異常はないようだ。対象はおれ達黒ひげ海賊団の『人間』だろう」
    「ゼハハ、相変わらず規模も精度も凄ェ使い手だ。惜しいなァ」
    「……だがよ歌姫、ウタウタの実の能力を応用した『五感の押しつけ』は想定内だぜ?」

  • 52黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/10/24(月) 22:08:54

    黒ひげは何処からか擲弾発射器を取り出し、特大の発煙弾を頭上に打ち上げた。猛然と煙が吹き上がる。

    「『幹部は集合』のサイン。やはり煙幕ならば快だの不快だのの区別は殆どなしか」
    「ゲフ……提督は何をやっても目立つ男。この分ならば生き残り得る者は遠からず来る……」

    異形に変貌した互いから目を背け、追手と混乱する友軍を斬り倒しながらシリュウとドクQは言葉を交わす。好き勝手言っているだけかもしれない。

    音楽は間もなく止んだ。追って視界も回復する。

    「せっかくだしもう少し聞きたかったが……仕方ねェな。進むぞ!」

    ──事前の予想の範疇だったので若干足並みが乱れる程度で済ませられた。何人か傘下を殺したようだが、それを気にするものも特にいない。

    川岸に辿り着く。

  • 53黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/10/24(月) 22:12:55

    「おうラフィット!バスコ!……オーガー!?なんてひでェ怪我を……!」

    「こんな事もあろうかと船を用意しておきましたよ“提督”。逃げましょう」

    「メモメモと“三眼”の確保はしくじった、すまん!」


    「……」


    ラフィット、バスコの二名が大河の沿岸で即席の丸太船を組み上げていた。周辺を警戒するオーガーが無言で血まみれの親指を立てる。

  • 54黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/10/24(月) 22:15:53

    「戦況は最悪だが、まァ、丸太船ってのは気が休まるよな!あと必要なのは……チャンピオン!」
    「──ウィ~ハッハッ!」

    噂をすれば、“チャンピオン”ジーザス・バージェスがようやく現れた。屈強な上半身は火傷と打撲に傷ついているが、その豪快な笑い声に陰りはない。悪魔の実と、大きな塊の入った袋をぶら下げている。

    「船長!オペラ、カウンター、カデンツァの首だ!旧四皇のガキを三人もまとめて討っちまったぜ!」
    「よくやった!ハデに火傷しやがってまァ……ともかく来てる奴らは全員揃ったな」


    「行くぜ野郎ども!」
    「「「「「「「「出航だァ~〜!!!!!!」」」」」」」」


    黒ひげ、シリュウ、バージェス、ラフィット、オーガー、ドクQ&ストロンガー、バスコ。残った部下やクローンを全部見捨てて、彼らは甘い大河を下る。漕手はバージェスとバスコが務めた。

  • 55二次元好きの匿名さん22/10/24(月) 22:17:52

    【悲報】C家3名死亡

  • 56黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/10/24(月) 22:18:39

    「それにしても……おれ達はものの見事に敵の内情を読み違えたな」

    ふとシリュウがぼやいた。当然、彼らは四皇を過小評価していたわけではない。むしろ大船団とシャーロット家の闘争心と殺傷力を過大に評価していたのがこの失敗の最大の原因だった。

    「全くその通りだ!なんでペロスペローと三将星と……いやいやいや、マム以外が全員健在なんだよ!?そこはもう少し死んどけよ人として!」

    ──つくづくクザンとデボンとピサロを後方に置いたのが惜しまれる。麦わらの一味は予備まで含めた全戦力を投じ、ルフィとローによるビッグマムの討伐に全てを賭けて見事に競り勝ったというのに。

    最も頼りになるシリュウが右手を痛め、オーガーが出血多量で息も絶え絶え、バージェスも豪快に笑ってはいるがなかなかに広範に火傷を負っている。手勢の兵力は随分と失ったし、ほぼ健在の麦わらの一味とハートと九蛇とシャーロット家に追われている。

    笑えてくるほどに自業自得の四面楚歌。

  • 57黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/10/24(月) 22:21:39

    「結果論だが、おれよりクザンの方がお前の役には立ったろうな。“海賊狩り”に先手を取られたのは紛れもなくおれの落ち度だ」
    「ウィ~ハッハッ、そう気に病むんじゃねェシリュウ!ほらよ、おれがオペラから分捕ったクリクリの実だ!」
    「私の狩ったククククの実はどうです?ロックスのクルーの遺産ですよ」
    「食わせようとしてねェかお前ら」

    「ドクQも実を食っとけばよかったか?」
    「後悔先に立たず、だ。それもまた……ゲフ」
    「巡り合わせなのである」

    オーガーの有するワプワプの能力は今回の奇襲の要であり、それゆえにゾロとアマンドとの戦いでは能力の回復が間に合わず重傷を負う羽目になった。

  • 58黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/10/24(月) 22:27:05

    「船長!おれのリキリキだけじゃ不安か!?」

    「提督と言ってるでしょうが」


    やんやややんやと騒ぐ彼らの耳に、またもや放送が届いた。今度は凄まじい大音量で。


    『──歓待しよう!黒ひげ海賊団の諸君!私はシャーロット・ペロスペロー、トットランド二代目国王にしてシャーロット家現当主として──』



    『手始めに“鉄の暴風”をご馳走しようじゃないか!』


    ペロスペローの号令とほぼ同時に、オーブンとタマゴ男爵の指揮のもと猛射撃が加えられた。


    「臆さず戦え!ヤツらを生かして返すな!“麦わら”の前だぞ!」

    「”半熟者”に二度の敗北はあってはならんのでソワール!」


    新造のもはや望めないチェス戎兵を肉壁にした、シャーロット家の私兵とオオロンブス麾下のヨンタマリア兵を主力とする長大な戦列。それが間断なく砲煙弾雨を降り注がせる。

  • 59黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/10/24(月) 22:36:38

    「ぐああ〜〜!!」
    「背を借りるぞバージェス」
    「いでぇ〜〜!!」
    「鬱陶しくて敵わんのう!」

    巨漢船長らに見え透いた銃撃が通じるはずもないが、しかしほんの数秒の混乱と前方不注意を招くには十分だった。

    「これがシャーロット家の陣容の一端か。……我ながら、よくこれとぶつかって誰よりも美しく生きのびたものだよ」

    前方で待ち構えるは、白馬ファルルを駆って先行したキャベンディッシュとガレット。
    ガレットの両の手からは川面を埋め尽くすほどのバターが放出されていた。

    「おい……油はやべぇぞ!」
    「じゃあね、黒ひげ」
    「よくやったガレット!──“熱視線”!」

    着火され燃え盛るバターが覆うその水面に、黒ひげの丸太船は突っ込んでいく。

  • 60黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/10/24(月) 22:38:46

    「ギャア〜!!熱い!熱ィ〜〜!」

    「ゲホッゲホッ……!グファ!」

    「ヒヒーン!!!」

    「おい〜!!!離脱せんでええのんか〜!?」

    「“焔裂き”!」


    黒ひげが炎を大方受け止めさせられ、彼でも厳しい分はバターの海諸共にシリュウが切り飛ばす。


    「ごふっ……ゼハハハ!!」

    「オーブン兄さんに焼かれて生きてる!?あり得なッ!?」

    「“金の斧・銀の斧”!」


    丸太船から離脱し、空を突進したシリュウによる不可視の居合は両手で振るう美剣で受け止められた。


    「く、手負いの居合でこの豪剣だと!?」

    (スケスケでこっちは消えてたんだが。……化け物が、寸分違わず止めに来やがって)

  • 61黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/10/24(月) 22:40:28

    「キャベツに続け!ガレット姉を援護するゆ!」
    「おい、深追いするんじゃねェ!お前らに勝てる相手じゃないんだ!」

    オーブンの制止も聞かず、ユーエンと10つ子の幾名かが”月歩”でシリュウに飛びかかる。レザンとミュークルが地上を這うように駆けて迫る。

    「無益」

    そこにオーガーの狙撃が飛んで三名が撃ち抜かれ、彼らを救うためにまた三名が離脱する。

    「ニューイチが撃たれた!」
    「ちくしょう!」
    「狙撃手がいるのに何故飛んだ!?……ミュークル姉さんは収容急げ!兄弟を死なせるな!」

    「毒性のある重金属弾頭だ。食らえば即死といかずとも、戦力を削ぐのにこれ以上のものはない」
    「いいぞオーガー!連中は兄弟思いだな!」

  • 62黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/10/24(月) 22:46:26

    「弟の仇は討つゆ『“剃刀”』……!?」
    「そこの猫耳野郎、“月歩”は独学か?」
    「ゆゆっ!?」

    狙撃を運よく凌いだユーエン。気付けば、頭上に人斬りが一人。

    「よく見ておけ、六式とはこうやって使う。──“嵐脚“『白雷』」

    打ち下ろす“飛ぶ蹴撃”。巨人の背骨をもへし折らんばかりの一撃を頭蓋から食らい、優しい巨漢は無惨にも撃墜された。

    「ユーエン!ユーエンがッ!」
    「よせ!……たった一人で戦える戦士などママ以外にいるものか!連携して攻めるぞ!」

    極度の興奮状態に陥りつつある一族の若者を掣肘するは、シャーロット・レザン。シャーロット家33男。黒刀を振るう彼の動きは、他の兄弟と比べても目に見えて油断と隙のないものである。

    「……蹴りも飛び道具も性に合わねェな。重要なのは指先に伝わる肉と骨の感触だ、剣士なら分かるだろ?」
    「黙れ、卑劣漢!」

  • 63黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/10/24(月) 22:50:31

    「“雨のシリュウ”、あの領域の剣士に卑怯に徹されるとここまで厄介なものか!……堂々と戦え!」

    (まったく隙だらけな野郎だ)


    憤るキャベンディッシュを観察しつつ、シリュウはこの場での最適解を模索する。


    「……ここで来るか、彼らが。やれやれ、僕にはライバルが多すぎるな!」

    (何を見つけた?)



    (……ああ。こりゃマズい)

    (さて、何時まで何人殺して逃げ出すか……放っておけば全滅するかな)


    “スイート三将星”筆頭のカタクリと“海賊女帝”ハンコックが飛ぶように駆け、遠い戦列から歓声が上がるのを他人事のように眺めながら、シリュウは葉巻を吐き捨て新たに紫煙を燻らせた。

  • 64黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/10/24(月) 22:54:08

    今回はここまでだゆ

    ここからは予告通りハーメルンでの加筆分を先行公開するゆ

  • 65黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/10/24(月) 22:57:22

    ──ウタとハンコックが外出したのと同日、昼過ぎのホールケーキアイランドの一角。

    ペロスペローとプリンの兄妹、そして“黒足のサンジ”と“白馬のキャベンディッシュ”の四人は、麦わら大船団とシャーロット家の間で頻繁に開かれていた茶会に出席していた。今はその帰路にある。

    お茶会と言ってもビッグマムが存命の時分ほどに剣呑なものではない。交流による関係の深化、情報の交換と収集、マムの死後大量に生じた食品ロスの転用、当面の雇用の維持といった多岐に渡る目的を達成するための手段である。

    「さ、サンジ……さん!あの、今度のお茶会ではシフォンケーキを作りましょう!一緒に!」

  • 66二次元好きの匿名さん22/10/24(月) 23:02:05

    このレスは削除されています

  • 67黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/10/24(月) 23:03:53

    「そいつはいい!ちょうどホイップクリームについて色々と試したいことがあったんだ。ケーキ作りは結婚式の時以来かな?」

    「け、結婚式……♡い、以来の大きなケーキにしましょうね……!打ち合わせとかは、また明日に!じゃあね皆!」

    「ああ、また明日!」


    何度も振り返りながらショコラタウンに帰っていくプリンの背中を見つつ、サンジは楽しげに呟く。


    「ここのところ毎日プリンちゃんと会ってるなぁ」


    「……」

    「……」


    「キャベツもペロスペローもどうしたんだ」

    「「いや、いい……」」

  • 68黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/10/24(月) 23:05:08

    「……ああもベタベタに惚れられていて気付かないものかねェ。ペロリン♪」
    「彼には困ったものだよ。僕の凄まじい人気に嫉妬の炎を燃やすのは仕方ないが……いい加減、貴公の妹君にも失礼というものだ」
    「いや全く。私としてもそろそろ『家族サービス』の必要性を感じていたところだ、くくくく」

    『家族サービス』、要は一族総出の外堀の埋め立て。兄弟愛にしろ打算にしろ、ヴィンスモークの三男坊などではなく麦わらの一味の大幹部との縁談が成るのならば願ったり叶ったりである。

    「相も変わらず底知れない組織だな、シャーロット家は」

    ──そもそもこの茶会、始まりはペロスペローとコンポートによるルフィとローを主賓に招いた大規模な料理会だった。しかしこれは、

  • 69黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/10/24(月) 23:07:00

    『ふへー食った食った、ごちそうさまでした!じゃあおれ船帰るよ』

    『ご馳走様でした。あとおれはパンは嫌いだ、今後は良いように頼む』


    『食うだけ食って即帰りやがった!』

    『んまっ!なんて好き嫌いが激しいんだい!』


    肝心の二人が早々に帰路に着き、


    『うう、罪悪感!……にしてもこのコンポート、どういう漬け方してるのかしら。オレンジの新鮮さまで漬け込んだみたい』

    『すまんプリンセス!治ったら好きなだけサンジに作ってもらってくれ!』

    『こんなに美味しいわたあめ食べてちゃ、おれ、ウ……アイツに顔向けできねェよ!』


    ナミとウソップとチョッパーが懺悔しながらバクバクと食べ、

  • 70黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/10/24(月) 23:08:28

    『酒がもたねェ。お、良い刀持ってるじゃねェか』
    『シャーロット・バニラってのはいねェのかな。コーラと合わせるんならバニラアイスに限るぜ』

    ゾロとフランキーが好き勝手にうろつき、

    『盃を返した相手との茶会……肝が冷えるというより、胃が痛いのう……』
    『同じくです。まあ私は内臓ないんですけど』

    ジンベエとブルックは当然警戒している。つまるところ、ペロスのポケットマネーまで引っ張り出した贅を尽くした歓待はさしたる効果を挙げなかった。

    『“悪魔の子”と“人食い”が来なかった理由は一切が謎のままだねぇ』
    『……その言い回し気に入ったのか?』

    ロビンとバルトロメオに至っては出席を拒否する始末。何食わぬ顔で全員が出席するほど抜けているとは思えないし意外でもないが。

    しかし例外はどんな場にもいるもので、

  • 71黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/10/24(月) 23:09:32

    『振る舞われる側になったのは久しぶりだな。相変わらず最高級の技術と食材だ!』
    『ビッグ・マムの茶会は三度に一度は首が舞うものと仄聞していたが。なかなかどうして行き届いたもてなしだ……美味なローズティーまで揃えてくれているじゃないか!』

    サンジとキャベンディッシュは素直に楽しんでいた。サンジはこの海賊団の料理人たちと肩を並べて料理に携わった経験があり、キャベンディッシュは単純にタフで能天気なので警戒する理由が皆無なのである。しかも呼べば大抵来る。それどころかシャーロット家の幾名かとは勝手に仲良くなっている始末。

    このようなありがたい二人だから、ペロスペローとしても厚遇しない理由がないのである。

  • 72黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/10/24(月) 23:11:07

    「“黒足”。ここのところ、君の料理は一層精彩を増したな」
    「お、気付いてくれたか。シャーロット家の料理人には学ぶところが多くてね」
    「技術も勿論だが、調理している時の表情がいっそう明るくなったじゃないか。あのプリン嬢と肩を並べて厨房に立って以来」
    「あんな素敵なレディと一緒に料理ができるんだ。コックとして冥利に尽きるってもんだからな」
    「……君の方からは彼女の態度に何か特別なものを感じないのかい?」
    「?」
    「やれやれ。少し羨ましいぞ、その鈍感さ」

  • 73黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/10/24(月) 23:14:55

    そこまで言ってキャベンディッシュは一拍分考えた。物理的に距離感を縮めるのはどうか、という至極平凡な結論に向けて。

    「そうだ、たまには君の方からプリン嬢に会いに行くといい。カカオ島で近日中に最高品質のカカオバターが完成する見込みがあると、ガレットが言っていたよ」
    「こんの色男、シレッとレディと仲良くなってやがる……!ありがとよ!」

    幸いなことに、ルフィやあのレディ達が遠出することもあって今日の夕食の時間は遅くなる予定である。これからカカオ島に向かい、いくつか食材を仕入れても余裕をもって調理には間に合うだろう。

    「カカオバターに合わせるなら……ワノ国で手に入れたアンコってのもアリかな?へへ、次の茶会が楽しみだ」

    キャベンディッシュたちに別れを告げ、サンジはプリンの飛び去った方向に向けて進み始めた。

  • 74黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/10/24(月) 23:24:14

    今回はここまでです。コンポートらしい周到なコンポート作りで兄弟たちから慕われてるんだろうねぇ…

  • 75二次元好きの匿名さん22/10/24(月) 23:29:07

    シャーロット家の戦死者と被害が本編より酷い事になってる...やっぱやべーわグラグラの実。

  • 76二次元好きの匿名さん22/10/24(月) 23:33:50

    なんかもう普通にコンポート語録紛れてて笑っちゃったよ ありがとう乙

  • 77二次元好きの匿名さん22/10/24(月) 23:37:12

    あまりにもさり気ないAIコンポート語録、俺じゃなきゃ見逃しちゃうね
    今回も面白かったです!しかし原作の現在進行形の黒ひげ一派とのすり合わせに苦労してそうですな……

  • 78二次元好きの匿名さん22/10/24(月) 23:39:52

    本編でも街が凍ってクラッカーが凍死してプリンが拉致られて散々だもんな

  • 79二次元好きの匿名さん22/10/24(月) 23:50:36

    シュトロイゼンも殺されてる…
    料理人いないし割と欲しがってそう

  • 80二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 01:12:22

    >>79


    つかククククってウタの食事改善に必須のモノだからここで死ぬ気で奪還しねーとやべーな!

  • 81二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 10:44:58

    このおばさん語録しか喋らないぞ…

  • 82黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/10/25(火) 15:25:54

    (ハーメルンの方で頂いた感想読んでる内に気付いたんですが、このルフィって世界政府や一般市民から見ればかなりカイドウめいてるんですよね。不満分子ことシーザーを『内応』させたり国家元首を討ち取って非加盟国を制圧したり元七武海を呼びつけたり)

  • 83二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 21:22:39

    ゾロまでちょっとバスコ化してるの笑う

  • 84二次元好きの匿名さん22/10/26(水) 06:39:45

    保守。

  • 85二次元好きの匿名さん22/10/26(水) 15:20:03

  • 86二次元好きの匿名さん22/10/26(水) 22:00:05

    しゅ

  • 87二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 08:13:20

    保守

  • 88二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 16:09:01

  • 89黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/10/27(木) 22:19:30

    なかなか使いやすい…悪ィなナメてたよハーメルン ジャキン!!

    明日ハーメルンに投稿します

    ハーメルン - SS・小説投稿サイト-syosetu.org
  • 90二次元好きの匿名さん22/10/28(金) 09:39:46

    保守

  • 91二次元好きの匿名さん22/10/28(金) 19:51:09

    保守

  • 92二次元好きの匿名さん22/10/28(金) 20:11:09

    >>78

    んでもクラッカーの生死は一切が謎のままだねぇ

  • 93二次元好きの匿名さん22/10/29(土) 07:24:57

    保守

  • 94二次元好きの匿名さん22/10/29(土) 16:44:24

    保守

  • 95二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 00:08:25

    保守

  • 96二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 07:48:08

    ほっしゅ

  • 97二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 15:01:31

    保守

  • 98二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 22:11:44

    保守。

  • 99黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/10/31(月) 02:40:35

    単純に執筆が滞っていること…!
    ハーメルン版の加筆修正その他の趣味に時間を取られていること…!
    ウタ唄と同一世界線ながら実質的に別のSSを書き始めようとしていること…!

  • 100二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 08:04:04

    >>99

    >ウタ唄と同一世界線ながら実質的に別のSS

    ?!?!

  • 101二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 18:40:03

    保守

  • 102二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 18:42:10

    >>99

    別のSSだって⁉︎

  • 103二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 18:46:16

    >>99

    作品が増えるのは嬉しい事だけどその流れは非常にまずいぞスレ主!!

  • 104二次元好きの匿名さん22/11/01(火) 00:24:57

    とりあえず完結させれば大丈夫っすよ!

  • 105黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/11/01(火) 07:56:37

    (正確に言うとREDで影も形もなかったキャラ中心に色々書いてたのが膨らみ過ぎたので他スレ・他SSとして分割しようとしてました。大人しく本編進めます!)

  • 106二次元好きの匿名さん22/11/01(火) 17:48:10

    保守

  • 107二次元好きの匿名さん22/11/02(水) 01:03:48

    ほっしゅ

  • 108二次元好きの匿名さん22/11/02(水) 09:35:40

    応援してるので無茶せず頑張ってください

  • 109二次元好きの匿名さん22/11/02(水) 16:52:10

    保守

  • 110二次元好きの匿名さん22/11/03(木) 00:14:15

    期待待機

  • 111二次元好きの匿名さん22/11/03(木) 09:21:20

    保守

  • 112二次元好きの匿名さん22/11/03(木) 16:51:30

    保守

  • 113二次元好きの匿名さん22/11/03(木) 22:05:20

    保守しかできねェのがもどかしいぜ……
    明日以降は情報の海が押し寄せて来るから話題に事欠かなさそうだけども

  • 114二次元好きの匿名さん22/11/04(金) 08:04:38

    このレスは削除されています

  • 115黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/11/04(金) 08:06:15

    (目処はついてきたのでもう少しお待ちください)

  • 116二次元好きの匿名さん22/11/04(金) 18:48:41

    保守

  • 117二次元好きの匿名さん22/11/05(土) 01:18:06

    おっほっほほ保守ゥーウホッホアアー!

  • 118二次元好きの匿名さん22/11/05(土) 10:08:41

    保守

  • 119黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/11/05(土) 10:27:34

    バージェス!今夜投下するぞ!

  • 120二次元好きの匿名さん22/11/05(土) 10:30:35

    オウ!

  • 121二次元好きの匿名さん22/11/05(土) 19:49:17

    保守

  • 122黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/11/05(土) 20:56:21

    (9時から6000字弱投下します)

  • 123黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/11/05(土) 21:00:01

    ──シリュウを除いた黒ひげの一党が下った先にはスムージー率いる一隊が待ち構えていた。



    「黒ひげ海賊団!これより、お前たちには一滴のジュースも飲ませはしない。己の血を啜って喉を潤すような戦場へお前たちを叩き込む……!」


    「やべぇ!?」

    「“ジューシースパークル”!!」

    「ぐあああ〜〜〜!!」


    強烈な水流を浴びた黒ひげの一党はバタバタと麻痺させられた。漕手のバスコ、そしてバージェスに代わったドクQは健在だが、このままでは明らかに限界が近い。バージェスとヴァン・オーガーの負傷は相当なものだ。


    さらに──

  • 124黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/11/05(土) 21:03:37

    さらに──

    「受けてみい!“槍波”!」
    「いい船じゃねェ〜の。だからこそここで沈んでもらうぜ……“フランキー・ロケットランチャ〜”!!」
    「追え~!」
    「能力頼りの連中に目にもの見せてやらァな!」

    ジンベエとフランキー、シャチとペンギンによる上流からの追撃。多様な戦闘技能を揃えた麦わらの一味とハートの海賊団ならではの間断ない攻撃が、丸太舟を一層揺らした。

    ──しかし、未だ堕ちない。黒色艦隊未だ潰えず。

  • 125黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/11/05(土) 21:05:43

    「まさかあの丸太船を丸ごと武装色で硬化させておるのか!?なんと無茶を……!」
    「ハ……ハッハァ、おれはこの船の操舵手だァ!最後の最後まで舵取りを間違えるこたァねェ!」

    リキリキの実を持ち効率的に覇気を配分できるバージェスならではの離れ業。巨漢船長らが座上できる巨大な丸太舟の全体に覇気を込め続けることで、これまでの追撃のすべてに耐えてきたのだろう。だが、いよいよ限界は近づきつつある。

    「もうよせバージェス!この仕儀に至って船での離脱にこだわる必要もねェだろ」
    「でもよ……」
    「提督の言うとおりだ。見ろ」

    オーガーの指差す先には黒い点が2つ。

    「ボア・ハンコックとシャーロット・カタクリだ。提督やシリュウとて背を向けて勝てる相手でもあるまい」

  • 126黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/11/05(土) 21:07:53

    「よし、聞けェお前ら!」
    「分散して逃げてそれぞれにクザンたちとの合流を目指せ!バージェスとオーガーとバスコは可能な限り足止め頼む!」

    一瞬の沈黙の後、丸太船の上の全員は首肯した。重傷者の二人と最も巨大なバスコが殿に向くのは否が応でも納得せざるを得ない。

  • 127黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/11/05(土) 21:11:59

    「……ああ、分かった。ティーチ“提督”、アンタの夢は終わらせねェ!」

    「これもまた巡り合せ。夢の果てを生きて見られぬのならば、身命全てを懸けてみるとしよう」

    「足止めは構わねェけどよ。別に全滅させてもええのんか?」

    「……運が良かったな、提督。おれも後からストロンガーと追いつく……グブッ」

    「ドクQは残るな。医者がいねェとシリュウやラフィットを治してやれねェだろう」


    「……だから、なんだァ、バージェス、オーガー、バスコ。……すまねェ!!夢を諦めて死んでくれ!!!」


    人の夢は終わらない、とかつて言い切った男の言葉。その男の懇願がどれほどの重みを持つか知らぬものはこの場にいない。


    「な~に!食い物のパラミシアなんかおれが全部食ってやるぜ!」

    「酒のつまみにモチを分捕るのもええの!」

  • 128黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/11/05(土) 21:13:55

    カタクリが迫る。黒ひげ海賊団の幹部をして心胆を寒からしめる強烈な覇気と殺意はもはや目と鼻の先にある。

    「バージェスに代わって大物は貰っていく。さぁ、上手く逃げ散れ」

    最後の力を振り絞り、オーガーは全員を陸地に短距離転移させながら弾丸の嵐を乱れ撃つ。それらの狙いはいずれも正確かつ避け難いものだったが、カタクリの流動回避と屈強な肉体の前にはさしてダメージにはならなかった。

    「──オオオッ!!」

    「最後がおれ、か。話したいことがあるんだな?」
    「長々と遺言を残すタチでもないのですが、一言だけ」

    「……勝てよ、『船長』」

  • 129黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/11/05(土) 21:15:06

    「受けて砕けろォ!“焼餅”ッ!!!」

    次の瞬間、寸前でオーガー以外の全員が消えた丸太船は彼と諸共に文字通り粉砕された。千々にへし折れた“千陸”と眼鏡は水底に沈み、二度とその姿を現すことはなかった。

  • 130黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/11/05(土) 21:24:40


    「カタクリ……!もう始めよった、歩幅の差を考えぬか!」


    駆けながらルフィのマントを揺らして、あえてハンコックは悠然と跳躍する。


    「──“メロメロ甘風”!」

    「へっ!対策してねェわけがあるか!」


    迎え撃つバージェスに不安はない。ラフィットにこの手の能力に対する催眠をとうにかけてもらっているから。


    『催眠しておきましょう──女帝の顔貌より君の筋肉のほうが美しい、とね。自信を持つんです、バージェス!!!』

    『オウ!!!』


    「ウィ〜ハッハァ!この均整の取れた肉体以外に魅力なんて感じねェ〜!!!“波動エ」

    「“芳香脚”!」

    「げっ……!?」

  • 131黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/11/05(土) 21:26:45

    視界を遮るほどに肥大し、さらには大火傷を負った筋肉。その背面に急降下して回り込んだ美脚が一瞬沿う。メロメロの能力はバージェスの覇気を容易に貫き、石化が体重のバランスも続けて崩した。

    「がああっ!?」
    「……覇気を使い過ぎたようじゃな。愚物といえど、主君に対するその献身には感心する」
    「う、クソッ!おれは……おれは、“船長”を勝たせるために……こんな呆気なく死──」
    「慣れておるじゃろう?人を呆気なく叩き潰すことなど、なッ!」

    バージェスは力を活かす機会なく蹴り砕かれた。

  • 132黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/11/05(土) 21:31:06

    「オーガーもバージェスもやられたか……いい奴らだったのう」


    バスコ・ショット、不利を悟って上流側に向かう。オーブン“程度”ならば雑魚と同時に相手取っても倒せるだろうが、カタクリやハンコックはさすがに無駄死にでしかないという打算によるものである。


    そして撃たれた。


    「いってえ……の?」


    反撃せんと起き上がろうとして、力が入らず転倒する。動かない身体、緩む意識、転倒する視界。


    「……トプァッ!?二日酔い!?」


    続けて何本もの針が四肢を縫い留めるように突き刺さり、現状を理解させた。


    「シュロロロ!よくやったぞフランペェェ!!」

    「シーザーさま〜!“シビレ針・シノクニエディション”の効きっぷりすご~い!」

  • 133黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/11/05(土) 21:33:24

    地理を把握し狙撃に長けるフランペ、そしてシーザー。成り行きで組んでひたすら逃げ続けていた二人は、黒ひげの不利が決定的と見るや否や大物を狩ることを目的に結託した。

    その目論見は大成功、バスコ・ショットの萎んで外部が硬化しつつある肉体がそこにある。勝ち誇ってゲラゲラと二人は笑った。

    「ざまぁみなさい!パンナおねー様の敵討ちよ!」
    「もっと笑える顔で固まりやがれェ!」
    (おれァ“レベル6”の大囚人!まさか……こんな毒針程度で──)
    「こんな小さなシビレ針が一瞬で効いたのが不思議か?無論のことおれは天才だが、ただでさえアルコールで中枢神経が麻痺しかけてるのに走り回って血圧上げてくれたからだよ!」

  • 134黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/11/05(土) 21:38:24

    「てめぇらの末路の何もかもが!『身から出た錆』だ──ぶぁぁぁあ、かっ!」

    「うプッ」


    狙撃を受けたのは己の酔いと孤立によるもの、毒が一瞬で効いたのも酔いのせい。すべては油断と敵の賢明な判断によるものである。硬化しつつある皮膚に既に感覚はなく、喉を僅かに動かすのがやっとの有様。



    「じゃあ死のうぜ。たまには肉を切り裂くってのも悪くねェ」


    傲然と笑いながらシーザーは“青炎剣”を生成した。透き通るような青色の、文字通りの炎の剣。

  • 135黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/11/05(土) 21:39:48

    「きゃーっ!血の気が多くてカッコいい♡」
    「……と、ププ……!お前ら……おれ一人が犠牲になっても、“提督”逃がしゃあ……勝ちなん……」
    「「出た!負け惜しみィ〜〜ッッ!!!」」
    「ぐおおおお、オオォアアァ〜〜!!!」

    ──“青炎剣”はバスコの喉笛から胸元までを何度も焼き切り、鮮血をそこら中にぶち撒けた。

  • 136黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/11/05(土) 21:40:28

    黒ひげ、シリュウ、ラフィット、ドクQ&ストロンガー。彼らはてんでバラバラに、されど個々の強みを活かして逃避する。

    「ビブルカードが燃えました。オーガーに続き、バージェスとバスコも戦死したようです」
    「もうやられちまったのか……アイツらにゃあ悪いことしたな。活躍できる戦場を与えられなかった。でけェ墓立ててやるからな……」
    「提督を生かしたのならそれだけで本望でしょう」
    「四皇幹部複数を相手に背を向けりゃ……ゲホ、こうもなる。次は誰が殿だ?ラフィットか?おれか?」

    ストロンガーの足が露骨に早まった。

    「……お前普通に走れるようになったんだな」
    「ヒヒーン……ヒィン」
    「仮病はやめろ、ゲブッ」

    黒い雲と煤煙が空を覆う中、三人と一匹はひたすらに海岸を目指して駆け続ける。

  • 137黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/11/05(土) 21:45:01

    海岸にほど近い森の中。隠して立てかけられた大鏡から、いくつもの人影が顔を出した。まず現れたのはナミとウソップとブリュレ。火の海と化した万国各地を飛び回って連絡や消火や救護に携わっていた彼女たちは、逃げ回る黒ひげの幹部らに対し追撃を仕掛けることに決めた。


    「頼むよ、みんなの仇をとってやってくれよ」

    「……分かってるわ、ブリュレ」

    「どうか慎重に頼むぞナミ!あいつらは……」

    「分かってる……!ルフィとゾロがいて仕留め切れない相手なのも、ためらいなく何百人も何千人も殺せる相手なのも……!」


    だからこそ最大の火力を叩きこみ、そして即座に撤収する。彼らがしようとしたことをそっくり返上するだけのこと。


    「──行くわよゼウス!“雷霆”!」

  • 138黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/11/05(土) 21:46:37

    「ヒィン!?」「黒雲……天に見放されたか」
    「やべェぞ避けられねェ!」
    「提督ッ!」

    ラフィットは咄嗟にストロンガーの上に割り込んだが、雷相手なので特に意味はなかった。

    「「「「ぐあああああ〜〜!!!!」」」」

    雷光が強かに三人と一匹を諸共に焼き尽くし、炎上する一塊は地に墜落する。それから間もなく大量のビスケット兵が落下地点を囲むように出現し、滅多矢鱈に名剣“プレッツェル”を振り下ろして燃え滓同然の彼らに追い討ちをかけた。

  • 139黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/11/05(土) 21:49:41

    「ママ!?……いや……クラッカーの兄貴と“麦わらの一味”がやったぞ!この機を逃がさず“エセ四皇”の首を討ち取っちまえ!」


    モンドール率いる軍団がビスケット兵を盾に肉薄し包囲網を形成する。黒ひげとドクQはビスケットの欠片にまみれつつ背中合わせに周囲を睥睨していたが、既にラフィットはステッキに支えられている有様だった。


    「ゴボッ、ストロンガーはもう立てん。仮に飛び立てたとして、それを奴らが許すと思えんが」

    「……申し訳ありません。これほどの攻撃をいきなり叩き込まれるとは……」

    「気に病むなよ」


    「ところで、だ……おれ相手に包囲っつうのは悪手じゃあねェか?なぁモンドール!」

    「てめェに許可してんのは辞世の句の三十一文字だけだぜ!人間詩集になりたいってんなら話は別だがな……!」


    19男“書司”シャーロット・モンドールに恐怖はない。いざ一撃を食らえばどうなるかは承知しているが、それが退く理由になるはずもない。

  • 140黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/11/05(土) 21:51:17

    (この領域の能力者相手に包囲は悪手──だからこそのクラッカーの兄貴だ、キャンディジャケット弾を備えた“ジ・オールドギャング”だ……!)

    ジ・オールドギャング、設立当初よりの古参兵、マムの子の腹違いの兄弟といった一般幹部以上家族未満の連中の共同体。第一次万国戦争でマムを討ち取られることを許した時点で彼らのレゾンデートルはほぼ失われており、今や現体制に対して曖昧に反抗するだけの固陋たる集団に堕していた。

    そんな彼らにとっては「リンリンの遺した万国」のために戦える機会はこれが最後。モンドールの指揮の下、刺し違え撃ち違える覚悟でいずれもがこの場に立っている。死を厭わず厭われない文字通りの死兵の群れ。

    「“黒ひげ”の抑え込みはクラッカーの兄貴に任せてあと二人を確実に削れ!撃て撃てェ!」
    「ゼハハハ!!!甘ェ……本当に甘ェよ。“震波”!」

  • 141二次元好きの匿名さん22/11/05(土) 21:53:18

    死亡確定したパンナ追悼

  • 142二次元好きの匿名さん22/11/05(土) 21:54:20

    >>141

    小動物的なかわいさあるから兄姉からも愛されていたんだろうな...合掌

    敵は討ってくれたからな!

  • 143二次元好きの匿名さん22/11/05(土) 21:56:13

    ワノ国レベルに死者がたくさんでとる。陰惨さも頂上戦争よりいってそう

  • 144黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/11/05(土) 21:57:01

    押し寄せるビスケットと古兵どもの波濤と、それを野分のように吹き散らす大地震。天災めいた光景の片隅で一筋の閃光が瞬く。


    「──革命舞曲ボンナバン!」

    「麦わらの一味かッ!」


    ブルックの仕込み刀とラフィットのステッキが交錯し、火花を散らす。

  • 145黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/11/05(土) 21:59:02

    「見事な杖術ですね。捕手術を基礎に組み立てたのか、人体の弱点をよくご存じなようで。目、鼻頭、鳩尾……」
    「クッ!?」
    「私は全部効かないんですけども。ヨホホ!」

    骨だけの彼に膂力と覇気では勝っていても、斬り結ぶにつれて疲労の分ラフィットの側がじわりと押されはじめる。背後への跳躍と突きの構え。

    (心臓を狙うか──!)

    それをやむなく硬化させた腕で受ける。冷気に満ちた「飛ぶ刺突」だった。

  • 146黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/11/05(土) 22:02:52

    「覇気ですか。ここに関しては泣き所ですねぇ」
    「……貴方の黄泉の冷気とやらの方が、よほど得体が知れませんよ」
    (恥ずべきことに、私はこの骸骨を恐れている!この払拭は実力で成し遂げねば……!)

    剣閃が止んで互いに睨み合ったのは数秒。それぞれが高速で跳んで姿を消し合う。


    「キエエエッ!」「……」


    ──背後から迫る白い影を、ラフィットは猿叫とともに殴り倒す。白い欠片が草木の上に雪のように飛び散って、骨形は泥にまみれた。

    「“鼻唄”は討ち取った!一矢報いましたよ、提督……!」

  • 147黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/11/05(土) 22:05:12

    必要最低限の暴力にとどめてほんの僅かに脱力する。ラフィットらしからぬ行いの報いはすぐに来た。

    「あ、そちら私じゃないんです」
    「……!」

    よくよく見れば、“骨”の砕け方は硬質なリン酸カルシウムのそれではない。粉々に砕けつつやや塊が残る破片、僅かに香る甘い香りは、まるで──

    「ビスケットだと!?おの、れッ!」
    「飛燕曲、バンドゥロル!」
    「!!!」

    ──広く深く抉る『黄泉の冷気』に焼かれ、その心中にあるのは悔恨のみ。

  • 148黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/11/05(土) 22:05:39

    (見誤った)

    シャーロット・クラッカーの能力の性質上、材質こそ違えど軟組織のないブルックを再現するのが容易なのは想像の範疇のはずだった。にも関わらず一対一と誤認し、正面から迫ってきたブルックの一撃への反応が遅延した。

    (──敵が烏合であることを疑わず、『大船団』『シャーロット家』『九蛇』の“共通の敵”として相対してしまった我々の負けだ──!)

    微睡む視界を緑色の塊が覆う。

    「緑星『サルガッソ』……っと!」
    「お前は『本』だ!即座の晒し首を免れたことを幸運に思いやがれ!」

    斯くしてウソップとモンドールの手でラフィットは拘束された。今や数えるほどしかいない黒ひげ方の生存者の一人として。

  • 149黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/11/05(土) 22:09:54

    一方黒ひげ。

    「があぁ〜!もうやべてくれェクラッカー!!死んじまうよォ〜〜〜!!!!」
    (言われなくても殺す気だ!何度刺したと……!)

    カタクリの槍、精神汚染、“鉄の暴風”、ガレットとオーブンによる焼夷攻撃、ジンベエの槍波、フランキーのミサイル、スムージーの水流、ナミとゼウスの雷霆、クラッカーの斬撃。

    これだけの攻撃を受けてようやく黒ひげにも判断の鈍りが見え始めたが、しかしその程度。

  • 150黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/11/05(土) 22:14:00


    「……あーらら。さすがにこりゃ、助け舟がいるかもね」


    ──彼の到来に気付かなかった者はある意味で幸せだった。これまでの奮戦の全てを無に帰しうる相手と相対し、どうしようもない無力を感じずに済んだから。


    「ウソでしょ──アイツ、本当にこんな連中と組んでたの!?」

    「やべェぞナミ!鏡の中に──」

    「クラッカーの兄貴ィ!元大将がッ……」




    「“氷河時代”!!!」




    ──次の瞬間、何もかもが凍てついた。

  • 151二次元好きの匿名さん22/11/05(土) 22:20:40

    このレスは削除されています

  • 152黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/11/05(土) 22:22:06

    今回はここまでです。黒ひげ危機一発!

  • 153二次元好きの匿名さん22/11/05(土) 22:23:53

    惜しかったな...もうちょっとで完全に黒ひげ海賊団を壊滅させられそうだったんだが

  • 154二次元好きの匿名さん22/11/05(土) 22:25:58

    イヤだよ、こんなに邪悪でクズな「負け惜しみ~」

  • 155二次元好きの匿名さん22/11/05(土) 22:27:34

    >>154

    シーザーはいつも通りだったけどフランペは姉のために戦ってたからまあ(負け惜しみを言っても)いいじゃないか

  • 156二次元好きの匿名さん22/11/05(土) 22:51:13

    パンナ、十つ子の三人、ユーエン、オペラ、カウンター、カデンツァ…

  • 157二次元好きの匿名さん22/11/05(土) 22:58:13

    >>156

    もう死にかけだったとはいえシュトロイゼンも殺されてる

  • 158二次元好きの匿名さん22/11/05(土) 22:59:34

    扉絵してしまうかクラッカー

  • 159二次元好きの匿名さん22/11/05(土) 23:02:54

    敵味方問わず死者がドンドン増えていく……

  • 160黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/11/05(土) 23:08:34

    “ジ・オールドギャング”は第二次世界大戦前のイギリスの戦車設計チームの仇名です。語感がどことなく万国っぽかったので名前を借りました。

    始末屋ボビンとか億超え幹部のしょぶn……置き場所に困って創設した感じですね

  • 161二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 00:36:45

    これまだ続いてたのか。てっきりPart 2くらいで完結したかと

  • 162二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 01:40:02

    孤立した若手がどんどん犠牲になってるのが生々しい
    プリンやフランペは運が良かったんだな…

  • 163二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 07:37:17

    TOGの侍っぽさよ

  • 164二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 14:34:38

    バージェス…パワーだけじゃ同じ土俵には立てなかったか

  • 165二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 21:16:46

    保守

  • 166二次元好きの匿名さん22/11/07(月) 07:54:09

  • 167二次元好きの匿名さん22/11/07(月) 16:03:07

  • 168二次元好きの匿名さん22/11/08(火) 00:20:55

    ほし

  • 169二次元好きの匿名さん22/11/08(火) 07:43:51

    ホシュ

  • 170二次元好きの匿名さん22/11/08(火) 16:21:24

    保守

  • 171二次元好きの匿名さん22/11/08(火) 22:06:59

    保守

  • 172二次元好きの匿名さん22/11/09(水) 08:03:25

    保守

  • 173二次元好きの匿名さん22/11/09(水) 16:49:34

    保守

  • 174二次元好きの匿名さん22/11/09(水) 23:50:48

  • 175二次元好きの匿名さん22/11/10(木) 08:45:28

  • 176二次元好きの匿名さん22/11/10(木) 18:07:26

    保守

  • 177二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 00:09:35

    ほっしゅ

  • 178二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 10:11:18

  • 179二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 19:04:43

    リアルが忙しいんかな

  • 180黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/11/12(土) 00:28:29

    ざっくり日曜までに次スレ立てと次話の投稿ができる確率……0%……

    200までにはなんとか

  • 181二次元好きの匿名さん22/11/12(土) 10:18:26

    つまり月曜日は大丈夫ということか!(ニッコリ)
    無茶せず自分のペースで投稿してください

    保守

  • 182二次元好きの匿名さん22/11/12(土) 20:02:38

    保守

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