ここだけエレジアでひっそりと暮らしていたウタが

  • 1二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 12:58:19

    SSG電伝虫を拾う前にトーンダイヤルを見つけてエレジア事件の真相を知り、自責の念とシャンクスたちにまた会いたいという願望に駆られた結果、心配から引き留めるゴードンを根負けさせて一緒に海へ出た世界線

  • 2二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 12:59:05

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  • 3二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 13:00:01

    ただしそれまでの航路で強敵との戦闘で追い詰められて万策尽きかけた時にいつの間にか手元にあの忌まわしき楽譜が現れ、迷った末にゴードンを守る為に使った結果暴走する展開が一回だけ起きる事とする

  • 4二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 13:08:16

    >>3

    描いたの!?

  • 5二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 13:09:34

    >>3

    描いてる!?!?

  • 6二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 13:10:03

    来たか…神絵師!

  • 7二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 13:10:06

    >>4

    はい

    だいたいこんなイメージかなぁと

  • 8二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 13:12:27

    >>3

    ナイスデザインすぎる

  • 9二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 13:19:41

    >>3

    語り継がれる・・・

  • 10二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 13:20:38

    >>3

    新たなムジカウタの誕生だ

    素晴らしい

  • 11二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 13:22:35

    このムジカウタは完全に制御してるのかな?

  • 12二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 13:30:29

    暴走させたっぽいからこの時はギリギリ崖っぷちの理性で頑張ってるかもしれない

  • 13二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 13:31:36

    トットムジカ第三楽章に続く最終楽章って感じがする

  • 14二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 15:26:51

    ―――最初にそれを見た時、私の中の感情はグチャグチャになった。

    私が今いるこのエレジア。それが国としての形を失ったのはシャンクスたちが滅ぼしたものだと思っていた。
    けど、実際は違っていた。その日私は見覚えの無い電伝虫を見つけて、興味本位で何が記録されてあるかを調べてしまった。

    そこに映っていたのは燃え盛る国に悲鳴を上げて逃げ惑う人々、そして―――見るもおぞましい巨大な怪物と、それに立ち向かっていくシャンクスたちの姿だった。

    『あの子の歌声は、世界を滅ぼしてしまう…!!』

    その声を聞いた瞬間、嫌でも察してしまった。意識を失う直前に手にしていたあの妙な楽譜、そしてこの映像。これらを繋げると恐らくあの楽譜は怪物を出現させる為の物だったのだろう。つまり―――

    「………私が、あの楽譜を歌ったせいで……国の皆が…国が……」

    自分が、滅ぼした。私はその真実を認めたくなかった。だけどそれなら辻褄が合う、合ってしまうのだ。
    何でゴードンがシャンクスたちを悪者扱いしたのか。何でシャンクスたちは何も言わずに黙って私の前から去っていったのか。

    「…全部、全部……私を、私なんかを…庇う為だったんだ…」

    こんな無責任かつ無自覚に国を滅ぼした大罪人を、それでもあの人たちは何よりも大事な娘として見ていた。
    だからこそ自分たちから泥を被ったんだ。娘の名誉と尊厳を、貶めない為に、守る為に。

    「なのに…今の今まで知らなかったからって、私は……」

    襲い来る自責の感情に情緒が狂わされそうになる。
    自分は裏切られてなんかいなかった。それどころか遠く離れた今でも父から、赤髪海賊団の皆から大切にされていた。

    「っ……うぅ、ぐううぅぅ…!!」

    その事実を認めた時に溢れ出る思いの放流は、私に後悔と感謝の涙を流させるには十分すぎた。

  • 15二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 15:28:10

    🍲

  • 16二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 16:38:37

    しばらくしてようやく落ち着いた私は、半ば放心しつつこれからどうすればいいかを考えた。

    真実を知ってしまった以上は、もう今までの様には振る舞えない。何も知らない振りをしていてもいずれゴードンに気づかれるだろう。

    (…考えろ、私。エレジアの真実を知って、シャンクスたちとの絆もウソじゃない事がわかった今、どうしたいの?)

    鬱屈とした気持ちに苛まれる中で自分に何度も問い質す。エレジア滅亡の真相と赤髪海賊団の真意、それらを知ってどうする?否、どうしたいのか?

    「………シャンクスたちに、会いたい」

    今の自分の望みは何か―――その末に出した答えは『赤髪海賊団との再会』だった。

    (会って、話すんだ。私のエレジアで過ごした日々を。あの日私を置いていった事、その真意に謝罪と感謝をする為に)

    何もかもが心に響かない日常の中で、初めて“目標”が出来た。初めて、前を向いて生きようと思えるだけの理由ができた。

    (―――そうと決まれば、早速あの人にも伝えなきゃ)

    どうせ気づかれるのも時間の問題ならいっそ今すぐ打ち明けた方がずっといい。どちらにせよ折角できた目標を諦めるなんて真っ平御免だ。



    そう強い意思を秘めてゴードンのところへ向かう彼女の瞳は、確かな光が宿っていた。

  • 17二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 16:42:04

    >>3

    ここに来て胸元解禁か

  • 1822/10/25(火) 16:55:45

    ちょっと仕事の時間なんで離れます
    続きは夜にあげますね

  • 19二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 22:39:04

    あげ

  • 2022/10/26(水) 01:11:57

    シャンクスたちと再会する。その決意の下に、私はある人物に会うべく廃墟に向かう。

    「ねぇゴードン、突然だけど少し聞いてほしい事があるの。料理作りながらでいいからさ」
    「…ウタ?話とは一体……?」

    料理の手を止めてその人は私の方を振り向く。この人はゴードン、エレジアが滅んだ日からずっと私の面倒を見てくれている元国王だ。

    「うん。とても、とても大事な話なの。多分長くなると思うから、食事が済んでから改めて話すよ」
    「…わかった。では手早く済ませよう」

    そして昼食を食べた後、私は彼に胸中の思いを打ち明ける。

    「それで…話とは何かね?」
    「………実はね。私、知っちゃったんだ」

    それから私は先ほどの事をありのままに話した。エレジア滅亡の真実を、シャンクスたちの真意を、そしてそれらを前に私が何を思ったのかを。話を聞き終えたゴードンは随分と沈んだ顔をしていた。

    「確かに、あの日この国は怪物に…トットムジカに滅ぼされた。そして君を庇っては彼らは進んで国滅ぼしの汚名を被った」
    「……………」
    「だが君が自罰的になる必要なんてない。悪いのは直接滅ぼしたトットムジカであって、君はヤツに利用されたに過ぎないんだ」

    …あくまで私は悪くないと彼は擁護してくれる。こんなロクデナシの罪人にそんな事を言うなんて、本当にどこまでも優しい人だ。

    「それに、私にはシャンクスとの約束がある。故に君を行かせる事は出来ない。そもそも外を知らない君が海へ出て何とかなるとでも?」

    確かにそれはそうだ。本でしか外の世界を知らない私なんかが一人で出たところですぐに未知という脅威に殺されるのは明白だ。そう、一人なら。

    「じゃあさゴードン。―――良かったら貴方も来てくれる?」

    一人で無理なら、そうならない様に支えてくれる誰かを付ければいい。その考えで私は彼に提案した。

  • 21二次元好きの匿名さん22/10/26(水) 01:14:55

    完結までこのスレ頑張ってほしい

  • 2222/10/26(水) 08:37:58

    私からの提案を受けた彼は神妙な面持ちになるが、すぐに口を開いて反論する。

    「……いや、それはダメだ。今言った約束もあるが、何より君はシャンクスたちだけでなく私にとっても大事な存在なんだ」

    まぁ、そう言うよね。けどこっちもそう簡単には引き下がれない。

    「そうは言うけどさゴードン。ここでの生活をいつまで続けても私の心は晴れないのは貴方もわかっている筈だよね?」
    「…っ!」

    そう、ただ生活する分なら現状でも問題はない。でも言い方を変えれば本当にそれだけしかなくて、『変化』と言える様な出来事が何一つとして無い。
    だけど今日、自殺さえ過った事もあった空虚な日々の中で初めて諦めたくないと思える様な生きる理由が出来た。
    というか、これを諦めたら今度こそ自殺すると思う。今の私にあるのはこれだけなんだから。

    「……それでも、それに頷く事は出来ない。私はただ、娘である君が生きてさえいてくれれば…」
    「その娘が成長する機会を、自ら奪う事になっても?」
    「!……それは…」

    私の返しに彼は何も言えずにいる。そういう反応をするって事は本当は彼もわかっているんだろう。

    「ねぇゴードン、約束に拘って意地固になるのやめなよ。そして一緒に外へ出よう?ここにいても私の心は死んだままで成長しないのは貴方が一番わかっている筈でしょ?」
    「……………」

    彼は俯いたまま黙りこくっている。恐らく約束を守り抜くか私の為にそれを破るかで葛藤してるのだろう。そのまましばらく様子を見ていると、ゴードンはゆっくりと顔を上げた。

    「………わかった。そこまで強く言うなら私も折れよう。君の思いを、受け入れる事にする」
    「―――ありがとう。感謝するよ」

    時間にして一時間程度の問答だったけど、彼が押しに弱い性格なのと本当は彼自身にも現状がわかっていた事が幸いしてスムーズに終わった。

    早くも本格的に見えてきた希望。それを実感した私は静かに笑みを浮かべた。

  • 2322/10/26(水) 10:20:31

    二週間後、私とゴードンはエレジアの海岸にて停めてある手製の舟の前にいた。

    「…正直、今でも実感が沸かない。本当に我々はここを…エレジアを、今日をもって離れるのだな……」
    「うん。シャンクスたちには悪いけど、ここまで来たからにはもう引き返すなんて嫌だからね」

    エレジアはゴードンの故郷だけれど、私にとっても第二の故郷だ。どんなに虚ろに感じる日々を送っていたとしても、それは変わらない。

    (…じゃあね。私を迎え入れてくれて、そして私に滅ぼされた音楽の国)

    この償いは、ゴードンを生きてシャンクスたちに会わせる事で晴らします―――そう誓って私は舟に乗り込む。

    「ほら、ゴードンも」
    「ああ、すまない…」

    続けて私の手を借りる形でゴードンも乗り込む。その際に二人で舟や食料の最終チェックを済ませた。

    「ウタ。念のためもう一度だけ確認するが…本当に今この時をもってこの国から旅立つんだな?」
    「うん、迷いも悔いもないよ。ゴードンの方こそどうなの?」
    「…私は、本音を言えば名残惜しさはある。だが君が逞しく育つ機会を潰してしまう事の恐怖に比べたらどうという事はない」
    「…そっか」

    どうやらこの二週間の間で彼も彼なりの覚悟と決意を固めてくれたみたいだ。全く…本当にどこまでも責任感があって人当たりのいい、お人好しとすら言える優しさに満ちた人だ。

    (まぁ、だからこそ―――心から感謝してるし、命懸けで守りたいと思えるんだけどね)

    そうして私は側のオールへ手を掛ける。それを見たゴードンもオールに手を移し、私たちは故郷を背にしてゆっくりと漕ぎ始める。

    (待っててね。シャンクス、赤髪海賊団の皆。いずれ必ず―――会いに行くわ)

    ―――かくして歌姫、そして元国王の旅は始まった。全ては幼き日に追い続けたあの赤き背中に、もう一度追い付く為に。これは少しでも運命のすれちがいがあればあり得たであろう、この世界の歌姫が歩む旅路である。

  • 2422/10/26(水) 10:25:09

    という感じで>>1の内容を文にするとこう言う流れになります

    ウタとゴードンが航海するパターンってのも良いと思うんすがね…

  • 25二次元好きの匿名さん22/10/26(水) 10:40:15

    >>24

    語り継がれることをお前に教える

  • 2622/10/26(水) 14:16:39

    一応挿し絵的なもの

    タイトルとかつけるとしたらどんな感じがいいんだろ

    >>25

    シャンクス、ありがとうございました。

  • 27二次元好きの匿名さん22/10/26(水) 14:19:38

    >>3

    めちゃ強そう

  • 2822/10/26(水) 15:57:54

    因みにここのウタが黒シャツ姿なのは舟に乗ってる時はルフィみたいなラフな格好がいいなという願望から来てます

  • 29二次元好きの匿名さん22/10/26(水) 18:30:36

    どんくらい強いんだろ?
    四皇最高幹部以上くらい?

  • 30二次元好きの匿名さん22/10/26(水) 18:39:43

    >>29

    ゴードンさんの体格だとそれぐらいが妥当だよね

    ウタちゃんが槍投げてからルフィを庇えるぐらいだし


    ウタちゃんはそれよりフィジカル弱めで能力に振ってる感じじゃない?

  • 31二次元好きの匿名さん22/10/26(水) 19:54:24

    >>26

    強い(確信)

  • 32二次元好きの匿名さん22/10/26(水) 20:01:47

    恩人のゴードンさんを護る気満々のウタさん逞しくて好きです 
    覚悟決めた人間は強い

  • 33二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 07:43:26

    保守

  • 3422/10/27(木) 08:11:16

    故郷エレジアに別れを告げて大海原へ出た私たちは、行く宛について話し合っていた。

    「ウタ、前々から君は言っていたがまず最初にフーシャ村を目指すのだな?」

    後ろでオールを漕ぎながら確認してくるゴードンに頷く。フーシャ村。東の海に属している小さな村で、かつて私とシャンクスたちが訪れた思い出深い場所だ。………思い出深い、と言えば誰かとよく顔を合わせて遊んでいた様な記憶がある。…誰だったっけ、確か――――――

    『歌ならオレも歌えるぞっ!』
    『こ~んな崖も登れないヤツ、シャンクスの役に立てるワケねぇーじゃん!』
    『やっぱ、オレも早く海賊んなって、海へ出てぇ~…!』

    …そうだ、そうだった。あまりに過ぎた時間が長かったから忘れかかっていたけど、あの村にはルフィという名前の男の子がいた。確か最後は私の183連勝目辺りで別れた気がする。……あれから約8年の歳月が経ったけど、彼は今何をしてるのだろう?覚えてくれているだろうか、私の事を。

    「…あの、ウタ?少し上の空になっているみたいだが……」
    「―――んぇ?あ、いや何でもないよ。…ちょっと懐かしさに浸っていただけだから」

    心配したゴードンに呼び掛けられて我に帰り、目の前の地図に集中する。

    「ふむ…しかしこうして地図を頼りに移動してはいるものの、羅針盤が手持ちにないのはかなり痛いな」
    「本当それね。全くこんな事ならシャンクスの船から一つくらい楠寝ておくべきだったわ」

    そう、今私たちは航海において必須アイテムである羅針盤を持ち合わせていない。………あれ、冷静に考えなくてもこれ不味くない??いや、でも地図に示されてる距離と今まで進んだ距離を照らし合わせて推測するとほぼ間違いなく東の海に入ってる筈なんだけど…。

    「…ん?なぁウタ、あれは―――陸地か?」

    唐突にそう言うゴードンの目線を追ってみると、確かにそこには陸地があった。

    「…よし、とりあえずあの場所に向かおう。もしかしたらフーシャ村があるかもしれないし、なくても休憩地点と現在位置の把握に繋がるからね」
    「わかった。ではまずは舟を停めれそうな場所から探すか」

    あーー良かった。危うく海のど真ん中でさ迷いかねないところだった……。

  • 3522/10/27(木) 14:26:18

    私たちは陸地に接近し適当なところで舟を停めてから早速上陸する。見たところ至って普通の森林が広がっているだけだ。

    「それでどうする?やはり人が住んでいそうなところでも探すか?」
    「そうだね。ただここがどこなのかわからない以上手探りになるだろうし、まずはなるべく安全に野営が出来そうな場所の確保かな」

    地図を見てもこの陸地がどこにあるのかはわからない。舟を停めるにあたって周囲を移動した際の規模を考えると多分大陸ではなく島である事と、東の海のどこかに分布している事は間違いないと思う。それから私たちは第一目標である野営地の確保をするべく周囲を警戒しながら森の中を静かに進んでいった。そしてそのまま探索を続けていると―――流れにある変化が起きた。

    「…!ゴードン、隠れて!」

    五感を出来るだけ集中させながら獣道を進んでいると奥から草の揺れる音がしたのだ。それに気づいた私はいち早くゴードンを側の茂みに引っ込ませた。

    「ウタ…?隠れろということは何かいるのか…?」
    「察しがいいね。あそこの草むらだよ…!」

    確かめてくるゴードンの問いに肯定する。…といっても彼のこのガタイだとちゃんと隠れられてるのか物凄く怪しいが。その懸念が過りつつ茂みを方を注視していると、やがて姿を現したソレに私は目を奪われた。

    「え…?何あれ……!!?」

    現れたソレは、実に奇妙な姿をしていた。一見すると間違いなくブタの姿をしているのだが、首回りに宛らライオンのソレみたいな鬣が生えているのだ。

    「な、何だあの生き物は…?ライオン?いやブタ、なのか?」

    ゴードンもその生き物を見て思わず混乱している。ブタもライオンもシャンクスたちとの航海で実際に見たことはあったし、本でもどういう生態をしているかは一応知ってはいる。だからこそ目の前の生き物は余計に不可解かつ不思議だった。

    ひとまず危険性があるかもわからないアレに近づきたくないので周囲に抜け道が無いかと見渡すが、よく観察すると周りの生き物も異常である事に気づく。鳥に猿、鼠や虫まで見たことのない種であり、かつ目の前のブタ?みたいな珍妙な姿形をしているのだ。

    (え?え?な、何なのこれ…?私たちはどこに辿り着いてしまったの!?)

    もしかすると私たちは偶々とんでもなく変な島に上がっちゃったのかもしれない。助けてシャンクス…。

  • 36二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 14:27:54

    珍獣島!

  • 37二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 16:52:23

    このレスは削除されています

  • 38二次元好きの匿名さん22/10/28(金) 00:21:00

    ほしゅ

  • 39二次元好きの匿名さん22/10/28(金) 00:39:03

    一番最初にあの箱入りに出会うことになるのか・・・

  • 4022/10/28(金) 10:56:18

    その後私たちは奇天烈な生き物たちを警戒し、時に観察しながら森を進み、ようやく野営に向いていそうな場所を見つけるに至った。

    「うん、決めた。地形的に肉食生物の目に付きにくそうだし、今日はここてやり過ごそう」
    「わかった。…はぁ、ようやく休めるな。老いぼれた私には中々きついものがある…」
    「あはは、酷使させてごめんね。あとはキャンプの設営さえすればもう休んでいいよ」

    そこから二人でキャンプを建てて備蓄している食料で適当に猥談しながら食事を楽しんだ。尚ストックはこれが最後なので次からは自力で調達しなければならないが、これは自前のナイフや弓矢でゴードンと協力すればいいし、最悪ウタウタの力を用いれば大抵は一応何とかなるだろう。
    そんなこんなでゴードンを休ませて、私は周囲を警戒しつつこれからの予定などを考えているとあっという間に夜を迎えた。

    「じゃあ私は寝るから、交代のタイミングまでゴードンは周りの警戒を頑張ってね」
    「ああ、だいたい3時間後に起こそうと思っているがそれでいいな?」
    「うん、問題ないよ」

    こういう交代作業をするのも私たち二人共初めてだから正直不安だけど、まぁこれも頑張って慣れていくしかない。

    「じゃおやすみ~…」
    「ああ、おやすみなさいウタ」

    サバイバル生活って大変だなぁ。…シャンクスたちもこういう体験を何度もしてきたんだろうか、なんて思いつつ私はゆっくりと意識を落としていった。


    そんな私たちのやり取りを遠くから見ていた者がいた事には、この時は露ほども知らずに。

  • 4122/10/28(金) 12:58:36

    翌日、寝不足に苛まれながらも野営の道具を片付けて回収した私たちは再び探索を開始。そのまま森の更に奥地に歩を進めていた。

    「お…?ねぇゴードン、ここ新しいキャンプ地に適してないかな?」

    しばらくすると私たちは少し開けた場所に辿り着いた。ちょうど良い広さで、かつ大なり小なり岩や木などの遮蔽物が充実している。キャンプの場所としては良好だった。

    「ふむ…確かに注意深く見ればそう思えない事もないな。ならまずは先に食料の調達と行こうか」
    「そうだね。迷わない様に目印を付けながらで行動しようか」

    早くもその日の予定が決まったので、とりあえずはウサギや鼠でも狩ろうかと話していた時。

    「おい、お前たち!」

    不意に、背後の茂みから声がしたのだ。それに私たちは反射的に振り向き、茂みを凝視する。そしてすぐにそれは姿を現した…んだけど、その姿に昨日に続いてまたしても驚愕と混乱を覚えざるを得なかった。何せその人は―――

    「は…?え、っと…何なのその姿!?」

    何て説明すればいいんだろ。その人は顔と手足だけ見ればまだ普通と言えるんだけど、胴体にあたる部分が、その…どう見ても宝箱にしか見えないのだ。わかりやすく言えば胴体部分だけが宝箱で…いや、宝箱に人間の頭と手足が生えていると言う方が伝わりやすいか??
    何て思っているとまたある事に私は気づく。よく見ると足を九の字に曲げて上手く収納しているのだ。まぁそんなに目立ってない上に初めて見た時の衝撃で大体の人が私たちみたいに誤認するだろうけど…。

    「おい。さっきから変なもの見てる感じの顔するな、おれも自分の見た目が普通じゃねえのはわかってんだよ。んな事より今知りてぇのはお前たちが何者なのかって事だ」

    それはこっちも同じ気持ちだ。こういう野生環境に人間がいる事自体は珍しくないと本で学んだが、実際にこうして遭遇したのは初めてだし危険でなければ是非コミュニケーションを取りたい。

    「私はウタ、こっちの人はゴードン。ここにいる理由はフーシャ村ってところを探しているからだよ。という訳で今度は貴方の番でいい?」
    「…ああいいぜ。昨日の夜から注視してたが、どうも宝を狙う海賊じゃねぇみてぇだからな」

    私が彼に何者かを喋る様に促すとあっさり同意してくれた。てか昨日から見られてたんだ…。

    「おれはガイモン!この島で20年以上暮らしてる元海賊さ!」

  • 4222/10/28(金) 13:30:38

    初めてss書いてるけど難しい
    1レス毎に1000文字+30行の制限はキツイっす
    書きたいけど全体の文を考えて削いだり切り捨てなきゃいけない描写が出てくるし、良作ss出してる文豪たちの凄さが身に染みてわかる……

  • 4322/10/29(土) 00:13:38

    ガイモン―――そう名乗った目の前の人は、自らを元海賊と称した。

    「元海賊…それが何でこんな島に20年以上も住んでるの?」
    「ああ、そりゃ…単純な理由さ。仲間に置いてかれたんだよ」
    「なっ…ぇ……?」

    さも当然の様に言ってくるものだから思わず私は声を漏らす。仲間に置いてかれたって……それって私と、同じ…。

    「…まぁ立ち話もなんだ、もしこの続きが聞きたかったらおれのねぐらに来い。おれも島の住人としてお前らの事を知れるだけ知っておきたいしな」

    話をしてほしければ住処に来るようにとガイモンは言ってくる。元海賊というのが若干危険な香りを匂わせてくるが、このまま手探りで探索し続けるよりは敢えて彼の誘いに乗った方が良いかもしれない。何か重要な情報が手に入るならそれに越した事はないしね。

    「わかった、なら貴方の言うねぐらまで付いてくよ。ゴードンもそれでいいかな?」
    「私は正直乗り気ではないが…ここは君の選択に同意しよう。いざとなれば君が力を使えばいいからな」
    「…その力が何なのかは後から聞くとして、その様子だと一応誘いに乗る気になったみたいだな」

    そこから私たちはガイモンの案内の下に険しい獣道を慎重に進んでいき、30分程度経った辺りで例の場所へ到着した。

    「ほら、ここがおれのねぐらだ。つってももうすぐ場所を移そうと考えてるからこれが最後の見納めになるかもな」
    「あ、そうなんだ…って、わわっ!?」

    彼の言葉に気を取られていると、突然周りの木々や草むらからこれまで散々見掛けたおかしな姿の動物たちが一斉に出てきた。

    「ああ、紹介するよ。こいつらはおれがこの島で暮らす中で出来た友達だ!」

    突然の事に驚く私とゴードンを他所に彼は何食わぬ顔でそう言い、私たちに興味津々そうに群がっていた動物たちを手慣れた感じで退かせると、落ち着いた声で“本題”を口にする。

    「―――じゃあ、さっきの通り続きを話そうか」

  • 44二次元好きの匿名さん22/10/29(土) 08:46:28

  • 4522/10/29(土) 10:58:33

    そう言うと早速彼は自分がどういう経緯で現在の状況に至ったのかを説明した。

    「……つまり?ただ単に存在を忘れられていた為に置いてかれて今日までこの島で過ごす羽目になった、と?」
    「置いていった側の事情とか知らねぇから断定は出来んけどな。まぁ結果的にこうして友達が出来たから、言うほど気にしてねぇが」

    彼はそう言って割り切っている感じだが、私は内心穏やかじゃなかった。私も昔シャンクスたちに置いてかれたが、先に見たあの映像のおかげでそれもまた私の為を想った行動だというのがわかっている。しかし彼の場合はどうだ。相手の事情が一切把握出来ていないという事は、私のそれと同じ可能性もあれば本当に存在自体が忘れ去られていた場合もあり得るのだ。

    「…あのさ、ガイモン」
    「ん、何だ?」
    「辛くない、の?」

    ……正直、聞かずにはいられなかった。事情は違えど仲間に置いてかれたという点では同じだし、他人事と割り切るには私からすれば些か無理があった。

    「…そうだなぁ、確かに最初はどう生きていけばいいかもわからなかったし置いていった奴らを恨んだ事もあった」

    私から聞かれた彼は澄み渡った空の方を見ながら当時を語る。

    「だがさっきも言った様にここで生活してる内にこいつらという友達が出来て、大方不自由なく暮らせているから今となっては『苦い思い出』程度でしかねぇのさ」

    …昔は私みたいに恨んでいた様だけど、今はあくまで過ぎた過去の域を出ないらしい。

    「……強いんだね、貴方は」

    友達の存在と20年という長い期間がそうさせているのだろうけど、それでもその憎しみを水に流せる彼はハッキリ言ってとても凄い。あの映像を見なければ未だ根強く恨み辛みを向けていただろう私はまだまだ幼い子供なんだなってつくづく痛感させられる。

    「ハハッ、んな事ねぇよ。多分、こいつらと仲良くなる事がなかったらとっくに限界が来て死んじまってただろうしな」

    彼は笑いながらそうでもないと否定し、自分が辿る可能性があっただろう末路を平然と言ってのける。私からすれば出来れば想像もしたくないのに、彼はそれも“あり得た事”として受け入れている。

    (……強い人間って、この人みたいな感じなんだろうな)

  • 4622/10/29(土) 16:01:38

    「んじゃおれの事はだいたい話したし、今度はお前らの番だな」
    「ん、そうだね。じゃーまずは………」

    そこから私たちも自らの事情をガイモンに説明した。話が終わると彼は複雑そうな感情が出てる顔をしていた。

    「そ、そうか。そんな事が………すまねぇ、何て言葉を掛けりゃいいのか…」
    「いや、別に気にする事はないよ。そういう過去もまた私たちの人生の一部なんだしね」

    彼に気を使わせない為に割り切った感じで私は答えたが、ちょっと前までその過去に縛られまくっていた自分が言っても説得力が無いなぁと心の中で苦笑した。
    何なら今でも完全に柵から解き放たれたかと言われればそうでもないし…。

    「…ウタの言う様に、私もこの子もそういう辛い過去はとうに飲み込んでいる。気持ちだけ受け取っておこう」
    「そう、か。まぁ、お前らがそう言うんなら……」

    私の意図を察してくれたのだろう。ゴードンが私の発言に合わせる形でフォローし、ガイモンも少し申し訳なさそうにしつつ納得してくれた。

    「…んで、お前らこれからどうすんだ?確かなんとか村を探してるとか言ってたよな?」
    「フーシャ村だよ。聞き覚えない?」
    「いんや、そんな村は聞いた事ねぇし第一この島に人間が集団で生活してる場所なんてねぇぞ」

    正直、可能性の一つとしては十分に考えられた。が、やはりというかここは彼を除いて人が住んでいない島らしい。まぁフーシャ村はここには無いってわかっただけでも良い収穫かな。

    「…この様な生き物たちがいる時点で薄々思っていたが、案の定フーシャ村が分布している所とは別の島だった様だな」
    「うん、残念ながらそうみたいね………」

    となると次の目標は―――この島から出る事、だよね。

  • 4722/10/29(土) 23:07:33

    島から出る、と言っても当然ながらそんな思い付いてすぐに出られるほど簡単じゃないし、出れても海の真ん中での垂れ死ぬのは火を見るより明らかだ。
    そう言う訳でまずは食料の備蓄などの入念な準備に取り掛かった。

    「ウキキッ、キキィー!」
    「お、ありがとう!結構高い位置にあったから助かったよ!」

    主に木の実や魚といった缶詰めに出来るものを集めたが、ガイモンによる手引きで森の動物たちも手伝ってくれる様になったので想定より早く作業が進んだ。
    たまに肉食獣に狙われた事もあったが、そこはウタの力で眠らせる事でやり過ごせた。そのあとすっごい疲れたけど……。
    他にもついでとして海上生活に備えた釣竿や銛、今回みたいな陸上での生活を想定したトラバサミや毒矢などの猟具も、なるべく持ち運びに支障が起きない程度に作っておいた。

    そんなこんなで2日後、あらかた準備を終えた私たちはガイモンと動物たちに別れを告げる為に今一度面と向かって合わせていた。

    「じゃあ、私たちはこれで。色々と手伝ってくれてありがとう」
    「おう、達者でな。一応聞くが舟はあるのか?」
    「うん、沖の方に一隻停めてあるんだ」

    もし仮に流されていたとしても、その時はもう少しだけ彼らの力を借りれば良いしね。いずれにしろ大きな問題にはならないだろう。

    「それじゃあね皆!短い間だったけどお世話になりました!」
    「私からも礼を言わせてほしい。ウタに協力してくれて本当にありがとう!」

    そうして私たちはガイモンと動物たちの皆が後ろで見送ってくれている中、事前に付けていた目印と記憶を頼りに舟の場所へ向かった。

    (待っててね、フーシャ村の皆!と言ってもちゃんと覚えてくれてるか怪しいけど!)



    「―――ここが珍獣たちの住むと言われる島か。噂が本当ならここに吾輩の求めるモノがある筈だ…!」

  • 4822/10/30(日) 00:59:44

    ガイモンたちと別れた私たちは、舟に着くまでの道すがらでこの島についての感想を話していた。

    「いやぁそれにしても目に移る生き物全てが見たことない種ってのも凄いというか、普通は信じられないよね~」
    「そうだな。あのライオンともブタとも言えない生物一匹に大きく動揺していたのが早くも懐かしく感じるな…」

    最初は想定外の連続に不安を隠せなかったが、結果的にこの島での体験は良い経験になった。フーシャ村に無事着けたら土産話として自慢しよう。
    そう呑気に考えながら私はゴードンと一緒に森の中を進んだ。
    ―――このあとにもう一波乱起きるなんて全く想定せずに。

    「……お!見てゴードン、海が見えてきたよ。てことはそろそろ…」
    「ああ、進んできた方角が正しければこの先に舟がある筈だ。流されていないと良いのだが…」

    意気揚々と森の外に出てそのまま舟の元へ向かう。だけど―――そこで信じられない光景を目にしてしまう。

    「―――は…?」
    「な…何だ!?舟が…真っ二つに壊れている!?」

    あまりの事態に私もゴードンも思わず声をあげる。塩水で底が腐っていた、または固定が甘くて流されていたは場合ならまだ懸念の範疇にあったので仕方ないと割り切れた。だが抉られている様にも見える感じで真っ二つに壊れている…否、壊されているのは全くもって想定外が過ぎる。

    (冷静に考えるならこれってどう見ても人為的なものよね。誰がやった?)

    一瞬、ガイモンたちの顔が過ったがすぐにそれはあり得ないと自分に言い聞かせる。たかが数日とはいえ曲がりなりにも共に飯を食って、協力し合って、過去を晒け出した仲だ。元海賊という事を加えても私たちに見せたあの笑顔にウソはない…筈。

    (となると他に考えられるのは………あ!)
    「ねぇゴードンっ!あそこを見て!」
    「?何だウタ……あ、あれは!?」

    ある一つの可能性が浮かんだ私は周囲を見渡し、少し離れた所にある『それ』を見つけるや否やゴードンに声を掛ける。私たちの視線の先にあるモノ。それは特徴的なドクロマークのマストこそなかったが、恐らく目の前の舟をこんな有り様にしてくれた直接的な原因に他ならない―――つまるところ。

    「多分だけど、海賊船…!海賊がこの島に来ているんだ!」

  • 49二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 08:20:33

    記憶がおぼろげで自信ないけど映画のあのキャラかな?

  • 5022/10/30(日) 09:09:49

    海賊と思われる存在が来ている―――その事実に気づいた私たちは急いで来た道を戻った。

    「う、ウタ!ガイモンたちが心配なのはわかるがあまり急ぐな!焦りは油断を生んでしまう!」
    「忠告ありがとう!でも彼らに何かあってからじゃ遅いのも事実でしょ?よってこのまま走る!!」

    私は人が死ぬところを見るのは心底嫌だし、まして大切な誰かが助けられる距離にいながら結局殺されるなんてのはもっての他だ。
    そして相手は海賊。いやもしかしたら違うかもしれないが、どちらにせよ見ず知らずの他人の舟をあんな躊躇なく破壊できる時点で物騒な集団に変わりない。そんな連中なら必要とあらば殺しだって平気でやってのけるだろう。

    (なら急がない理由なんてない。一刻も早く―――ん?)
    「ピー!ピーッ!!」
    「な、何だ…!?」

    すると突然、私たちの前に小さな鳥が現れた。よく見るとガイモンの友達の中にいた一匹だったけど、何やら物凄く鬼気迫る感じでパニックになっている。

    「…!ガイモンたちが危ないの!?」
    「ピーッッ!!」

    尋常じゃない取り乱し様にまさかと思ったけど、小鳥の反応を見るにやはりガイモンたちに危険が迫っているらしい。くそ、思った以上に接触するのが早くないか…!?

    「お願い、すぐに案内して!」
    「ピッ!!」

    私は小鳥の後を追いつつ、急ぐあまりゴードンを置き去りにしない様にギリギリの調整をしながら足を速める。彼がもう少し若くて体力があれば…と思ったが、そんな事より今は如何にして海賊?たちからガイモンらを守るかが重要だと思考を回す。

    (もう少し、もう少しの辛抱だよ!一瞬でも早くそっちに向かう!)

    だから―――どうか死なないで。その一心で私は足を前へ前へと進めた。

  • 51122/10/30(日) 19:07:53

    ウタたちが駆け付けている一方、ガイモンのねぐらでは彼と例の海賊らしき者らが接触していた。

    「な、何もんだお前ら!?海賊か!?」
    「ハッハッハ、この吾輩たちがその様な下賎で卑しい連中共な訳がなかろう!」

    ガイモンの目の前に立っているその男は病的な白い肌に丸々と太った体に背に悪の文字が描かれている黄色の外套を羽織り、バイオリンを片手に持って下卑た笑みを浮かべていた。

    「聞け!獣共と仲良しこよししている水簿らしい男よ。吾輩の名はバトラー伯爵!この島に眠っているだろう『王たる獣の角』をいただきに来た!」

    バトラー伯爵―――そう名乗った男は『王たる獣の角』を求めてやって来たという。

    「いや…何だそれ?おれはそんなもんここ20年の間で一度も耳にした事ねぇぞ!お前上陸する島間違えたんじゃねえのか?」

    しかし当たり前だがガイモンすればそんな代物など見た事もなければ聞いた事もない。崖の上にある宝箱の存在なら知っているが、男たちの狙いはそれではないらしい。

    「ほう、20年もこんな小さな島でしぶとく生きているのか。であるならば角の在処を知っているのではないか?否、知っているのだろう?」
    「いやだから知らねぇつってんだろ!さっさと帰らねぇとコイツをぶっ放すぞ!!」

    こちらの否定をまともに聞く事なくしつこく問い詰めてくる男に、これ以上の問答は不毛と判断したガイモンは懐から相棒である拳銃を取り出し脅しを掛ける。

    「……ふむ、あくまでシラを切るというのだな。全く大人しく早々に吐けば良いものを」

    しかしそれに対し男は少しもたじろぐ事なく冷静に判断すると、ため息混じりに指を鳴らした。すると―――

    「な―――ぐぶぉっ!?」

    突如として左右の茂みから二人の男が現れ、一人はその勢いのままガイモンを突き飛ばし、もう一人は鞭の様にしなる長剣で動物たちを人質に捕らえたのだ。倒れ伏すガイモンにバトラーは悪意の混じった笑みを浮かべる。

    「ぐ…ぅ……てめェ、ら…!」
    「よくやったお前たち。さぁそれでは―――尋問といこうか」

  • 52122/10/30(日) 21:53:23

    突如として襲撃してきたバトラーとその側近二人によって動物共々捕らえられてしまったガイモン。彼はそのまま理不尽な尋問を受けてしまっていた。

    「ほれ、早く角の在処を吐け。お前も苦しみたくはないだろう?」
    「何度も、言うが…知らねぇって―――ぶふぁっ!」

    彼が知らないと否定する度に、側近の一人である筋骨隆々の大男の拳が飛んでくる。殴っている当人は加減しているつもりだが、その拳を諸に受けているガイモンの顔は既にボロボロだ。

    「おいおい、ホットドッグ将軍よ。一応言っておくがやりすぎるなよ?殴った際の勢いでうっかり舌を切ってしまったら貴重な情報源を潰してしまう事になるからな」
    「わかったけん、伯爵」

    ホットドッグ将軍と呼ばれたその大男は伯爵の注意を素直に受けて退き下がる。どうやら彼らも考えなしにただ痛めつけている訳ではなく、彼らなりに本気でガイモンから情報を絞り出そうとしている様だ。
    …尤も彼はバトラーらの求めるモノについて本当に何も知らないので、聞き出すだけ無意味に時間を潰すだけであるが。

    「とはいえこれだけシラを切られると埒が開かぬのも事実。さてどうしたものか…」

    そう言ってガイモンを見据えながらバトラーはどうすれば吐く気にさせられるかを考える。
    その際に時々背を向けるのでその隙を突きたかったが、すぐ側のホットドッグが睨みを利かせている事に加え、尋問の時に頼みの綱である拳銃を取り上げられてしまったので彼一人では最早どうしようもなかった。

    「…………ふむ、ならばこうしよう。ヘビー総裁」

    しばらく熟考したのち、何やら思い付いたらしいバトラーはもう一人の長剣使いの側近…ヘビー総裁に声を掛ける。

    「フッ、何じゃ伯爵。いい考えでも思い付いたのじゃ?」

    何をするつもりだ。そんな不安を覚えるガイモンを尻目にバトラーは躊躇なくこう告げる。

    「―――今からこの男が一分間、喋らぬ姿勢を貫く度にそこの獣たちを一匹ずつ殺せ」

  • 53122/10/30(日) 23:12:38

    その言葉に一瞬、ガイモンは声を失った。直後にその意味を理解し、かつてない怒りと焦燥に駆られる。

    「て、てめェ!!フザけんのもいい加減に…」
    「ならさっさと吐きたまえ。あまり吾輩の気を立てない為にもな」

    射殺さんとばかりに自身に向けられる視線も、どこ吹く風と言った感じでバトラーは淡々と答える。ガイモンがそう思っている様に、ガイモン側の事情も彼にとってはどうでもいいのでそれも仕方ない事ではある。だからと言ってこれは悪辣極まるやり方であり、全くまともではないのも事実だ。

    「さぁ、わかったなら角の在処を言え。時間は待ってはくれないぞ?」
    「……っ!」

    何としても情報を吐かせるべくバトラーは不安を煽る。しかしそもそも知らないものは知らないのでガイモン側は吐きようがない。

    (クソ、時間が…!こうなったらもう即興のウソでどうにかこの場を乗り切るしかねぇ!!)

    バトラーの言う通りこうして頭を回している間も容赦なく時間は刻一刻と過ぎ去っていく。覚悟を
    決めた彼は一か八かの勝負に出る。

    「わ、わかった!喋るから!お前らの探してる角はな」
    「―――時間だ。ではまず一匹目だな、殺れ総裁」

    しかしこの男はそんなガイモンの覚悟すらも踏みにじる。今正に言おうとしているのを見ておきながら残虐な宣告を言い渡したのだ。

    「了解じゃ。という訳でそこの兎!まずお前からこの世と泣き別れにしてあげるのじゃあ!!」
    「あ、ああ待て、待て!待ってくれ―――!!」

    目に涙を浮かべながら必死に静止を呼び掛けるガイモン。その悲鳴をBGMに慈悲なき刃がか弱きその体へ振り下ろされ、そして―――

    「―――やめろォおおッ!!!」

    歌姫の投擲した石が、ヘビーの後頭部にクリーンヒットした。

  • 54二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 06:58:00

  • 55122/10/31(月) 10:51:12

    「んじゃッ!!??」

    私が咄嗟に放った投石の一撃は男の後頭部に炸裂し、怯んだ男はそのまま前のめりに倒れる。
    突然の事態に周りが動揺しているが、そんな事より優先しなきゃいけない事があるので私は男の襟首を掴んで適当なところに退かして兎の状態を確認する。

    「…ほっ、よかった。どうやら他の皆も一応無事みたいね」
    「ハァ…ハァ…ウタっ!」

    私が安堵した直後にゴードンも続けてその場に駆け付ける。…状況を察するに私以外に動けるのは彼だけの様だ。それならばと私は彼にあるお願いをする。

    「ねぇゴードン。お疲れのところ悪いけどもう一仕事頼まれてくれない?今からほんの数分、いや一分程度でいい。その間だけ動物たちを守っててほしい」

    私のお願いを聞いた彼はすぐに私の意図を察する。海賊とおぼしき男三人に手負いで動けないガイモン、対して動けるのは私たち二人だけで下手に抵抗すれば動物たちが巻き添えを喰らいかねない。この状況を覆してガイモンたちを助けるには、最早この力を使う他なかった。

    「おい、黙っていればさっきから何をヒソヒソ話している。貴様ら、今の横槍入れてくれた事の意味をわかっているのか?」

    今の今まで私たちを凝視していた太った男が話を遮る。どうやら相当ご立腹の様だが…堪忍袋の緒が切れているのは何もそっちだけじゃない。

    「―――横槍を入れた意味?アンタらこそ私の友達をそこまで傷つけた事が何を意味するか、わかってるの?」

    すぐそこで拘束されているガイモンを見やる。まだ息はあるみたいだが、それでも顔中に痛々しい痣が出来ている。…見やった際に彼は不安と恐怖を孕んだ目で私を見ていた。恐らく心配してくれているのだろう。

    (大丈夫。すぐ終わ…)
    「ほう、随分と生意気な口を叩くではないか。なら是非とも吾輩たちにわからせてほしいものだなぁ!」

    その言葉と共に男の部下と思われる大男といつの間にか起きていた細身の男が襲い掛かってくる。…人が友達にアイコンタクトしてる時に邪魔しないでほしい。

    (ああ全く。本っ当にイライラするなぁ)

    そうして男たちに対する怒りを募らせながら、私は躊躇なく『歌った』。

  • 56122/10/31(月) 19:53:59

    ―――バトラーは最初、その少女はただ大口叩くだけの鬱陶しい邪魔者としてしか見ていなかった。だから部下をけしかけて適当に痛め付ければすぐに態度を変えて許しを乞うだろうし殺したなら殺したで別にいいと、そう考えていた。
    しかし彼は知らぬが故に舐めきっていた。彼女の持つ悪魔の権能を。
    部下たちが攻撃を振るう直前、彼女が不意に歌い出す。それを見た彼が不可解に思った次の瞬間。

    「じゃぇっ!!?」
    「げんっ?!!」

    飛び掛かった部下二人が煌びやかな楽譜の帯に忽ち捕らえられたと思ったら、そのまま地面に叩き付けられる形で拘束されたのだ。

    (な、何だ!?何が起こっ―――むおっ!?)

    何を考える間もなく自身も拘束され、小娘の目の前まで移動させられる。あまりに想定外な事態を前にバトラーはつい先ほどまで保っていた冷静さをほぼ完全に欠いていた。

    (何だ、何なのだこの小娘は?何故吾輩たちをこうも容易く手玉に取れている!?)

    少女が他に何かをした様子はなく、ただ本当に歌っただけに過ぎない。過ぎないというのに、まるで赤子の如く一瞬であしらわれ一切の手を封じられたのだ。

    「―――ねぇ」

    自分たちはもしや、とんでもない奴を相手にしてしまったのではないか。そんなバトラーの恐怖と焦りを他所に少女が話し掛ける。

    「お、おい!一体何者なんだ貴様は!何をやったのだ!!?」
    「私はね。誰かを、ましてや友達を傷付ける様な奴は大嫌いなの。アンタたちは正にそんな人間だよ」

    バトラーの質問など無視して少女は語る。何故なら少女にとって彼の言葉など聞くに値しないのだから。

    「でも殺しはしないよ、アンタらにはそうする価値さえ無いからね。だから―――」


    「――――――“失せろ”」

  • 57二次元好きの匿名さん22/11/01(火) 03:53:06

    保守

  • 58二次元好きの匿名さん22/11/01(火) 12:40:59

    保守

  • 59二次元好きの匿名さん22/11/01(火) 12:44:30

    >>3

    書いたなこいつ!

  • 60二次元好きの匿名さん22/11/01(火) 13:30:47

    くっそカッケェ!

  • 61二次元好きの匿名さん22/11/01(火) 22:15:13

  • 62二次元好きの匿名さん22/11/01(火) 22:48:05

    最高だよアンタ…

  • 63二次元好きの匿名さん22/11/02(水) 07:45:23

    保守

  • 64122/11/02(水) 12:37:58

    「…う…うぅ……?」
    「―――あ、起きた!皆、彼が目覚めたよ!」

    私の呼び掛けにガイモンの元に動物たちが駆け寄る。あの時私の力が切れて皆が起きた後も、傷によって体が衰弱していた影響か目を覚まさずにいた彼を私とゴードンで懸命に治療していたのだ。

    「おお、良かった!このまま醒めなければどうすればと不安に思っていたよ」
    「う、ウタ…?それにゴードンも……。っ!あ、あいつらは!?」
    「ああ大丈夫。あの海賊っぽい奴らはそのまま丁重に『お帰り』していただいたから」

    今頃は海のど真ん中で海王類にでも襲われてるんじゃないかな。船に乗って島からある程度離れてもらうまでの間は眠気との勝負だったから結構危なかったんだけどね!

    「そんな事より…まずは謝らせて。私がもっと早く来ていれば貴方がこんなに傷付く事もなかったのに……ごめんなさい」
    「あ、謝らないでくれ!寧ろ頭を下げるのは助けてもらったおれの方だ!ありがとう、ありがとうな……!」

    そう言って彼は目尻に涙を浮かべながら、私とゴードンの前で頭を深々と下げる。…目に見えて本気で心から感謝しているのが伝わってきた。
    なら彼の気持ちを汲んでこれ以上自分を責めるのは止めておこう、他にも話すべき事があるし。

    「………あぁ、そう言えばさガイモン。貴方が起きたらお願いしたい事があったんだけど、いいかな?」
    「? 別に構わねぇけど…何だ?」
    「実はさ、私たちの船が壊れてたんだよね。多分アイツらの仕業だったんだろうけど、新しく舟を作る手伝いをしてくれない?」

    例えばこれがどっかが欠けていたとかならまだ補修で済んだけど、流石にあんな真っ二つに破壊されたとあれば新しく作り直した方がいい。国を滅ぼした私が言うのも何だけどつくづく人様に迷惑掛けるねアイツら…。

    「ああいいぜ、恩人の頼みなら喜んで聞き入れるさ。仮にも元海賊だし船の構造や作り方なんかも朧気ながら覚えているからな」
    「本当に?やったねゴードン、これは予定より早く終わりそうだよ!」
    「そうだな。とはいえ彼もそんなにハッキリとは記憶にない様だが…」

    ゴードンが若干懸念しているが、その点もエレジアを離れる際に持参した造船本があるので心配はない。まぁそれを見て完璧に思い出せるかはガイモンの記憶力に掛かってるけどね。

    (さて、スムーズに行って2、3日かな?ちょっと楽しみだな~新しく出来る舟!)

  • 65122/11/02(水) 14:11:20

    4日後、ようやく完成したそれを見た私とゴードンはそれまでの苦労もあって感慨深いものを覚えた。

    「あっはは!何か想定よりもずっと大きくなっちゃったね!」
    「そうだな。少なくとも二人で乗る分の大きさではなくなったのは確実だ」

    それまで乗っていた舟は大体4~5m程度だったのだが、今目の前にあるそれは10mは優に越えてるだろう規模だ。そんな最早舟ではなく船と言っていい新たな乗り物に私たちが魅入っていると後ろからガイモンが話し掛けてくる。

    「へへっどうだ、新しい船の感想は?」
    「色々あるけど、とりあえず言いたいのはよく4日で完成まで漕ぎ着けられたなってコトかな」
    「ハハハッ、まぁ動物たちの手伝いもあったからな!おれ自身こんなに手早く済んだ事に正直驚いてるぜ!」

    そう、食料調達の時みたいに今回もまた彼らは手伝いに回ってくれたのだ。もし私たちだけなら4日どころか一月掛かったって全然おかしくなかっだろうし、本当に彼らとガイモンには感謝しかない。

    「―――で、一応聞くが…もう行くんだな?」
    「………うん。短い間だったけど、今までありがとね」

    思えばここで過ごした日々は約一週間程度しかなかったし、ガイモンたちと一緒だった時だけに限ればもっと短い。しかしそれでも、あの海賊擬きが来た事を除けば良い意味で忘れられない記憶になった。

    「じゃあ、そろそろ私たちはここで。色々とお世話になったよ」
    「私からもウタを支えてくれた君たちの事は生涯忘れない。本当に、感謝する」

    私たちは一礼をしてから船に乗り込み、側にゴードンを立たせて私は甲板にある舵輪に手を掛ける。確かこっちに回すと船が……おお、思った通りに動き始めた。
    というか今思ったけどこれ大きさ的に海賊船と間違われないかな?今更になって心配に―――


    「おぉーーーーい!!ウター!!ゴードォーン!!」

  • 66122/11/02(水) 14:44:01

    不意に聞こえてきたガイモンの叫び声に顔を向けると、彼は動物たちと共に手を振っていた。

    「もう一度言うが本当にありがとな!!お前らのおかげでおれたちは助かった!!おれたちもお前らと出会った事は一生忘れねェっ!!!」

    出せる限りの大声を絞り尽くす勢いで、彼は私たちに感謝の謝辞を述べる。…こんなにも誰かから感謝されたの、いつぶりだっけ。

    「せいぜいお前らも良い出会いをしろよ!!おれと違って外に出られる分、おれよりずっとその機会がある筈だ!!!」


    ―――おれたちは、どんなに離れてても友達だぜ!


    彼はずっと、私たちが聞こえなくなるまで見送りの言葉を言い続けていた。

    「……っ…っっ~~……!!」

    ………あれ、おかしいな。たった一週間にも満たない時間を過ごしただけだってのに、何で、こんなにも…涙、が……。

    「…ウタ、操縦を変わろう。君は下で今しばらく休んでいなさい」
    「っ…うん、ごめん………ありがとう…」

    私を気遣ってくれたゴードンに礼をし、下甲板の自室に籠る。我ながら本当に、涙脆いなぁ。

    (…こっちこそありがとう、ガイモン。貴方の言葉を糧にして、私も目標に進むよ)

    赤髪海賊団が、貴方が私に対してそう思っているみたいに――――――ガイモン、貴方もまたどれだけ離れようと、私の『友達』だよ。

  • 67122/11/02(水) 14:50:33

    これにて最初の冒険である珍獣島編は終わりです
    アニメならこの直後に初めてOPが流れるパターンですね
    個人的にAdo氏のウィーアーとかめっちゃ聴いてみたい…

  • 68二次元好きの匿名さん22/11/02(水) 23:30:35

    保守

  • 69二次元好きの匿名さん22/11/03(木) 06:53:46

  • 70二次元好きの匿名さん22/11/03(木) 07:00:00

    よく文章も絵もかけるもんだ

  • 71二次元好きの匿名さん22/11/03(木) 16:22:03

    保守

  • 72122/11/03(木) 19:23:27

    ガイモンたちと別れてから数時間後。橙色に染まる夕日の空を眺めながら、私たちは改めて今後の目標について話し合っていた。

    「うーん…フーシャ村に着くのは大前提だから言うまでもないとして、問題は今私たちがどの辺りにいるかよね」
    「ああ、こういう時にせめて羅針盤の一つでもあれば示された方角から現在位置を推測する事も出来たのだがな…」

    島を出る直前にガイモンに一応聞いておいたのだが、少なくとも確実にわかっているのはあの島を含めてこの海域は東の海で間違いないという事だ。しかし20年ともなると流石に当時の記憶が欠け落ちていたらしく、残念ながら地図を見せても正確な場所は彼にもわからなかった。

    「だけど地図を見れば島や大陸までの距離は結構短めなのが多く見受けられるし、一先ずここは下手に方向を変えずに直進してみようか」
    「そうだな、食料も限られている事も考慮すればその方が無難だろう」

    という訳で船の進路をそのまま直進で維持する事に決めた私たちは、食料の残量とやりくりしつつのんびりと海鳥の見える大海原を航海し―――2日経った辺りでそれを視界に捉える。

    「ゴードン!あれ!」
    「ああ、私の方も見えている。陸地だな!」

    新しく見えた陸地は…多分島かな?ここから見える限りだとそう広くはないし、少なくとも大陸ではない様に思える。……うーん、でも何だろう。

    「……ねぇゴードン。よく見なくてもさ、何か、あの島…」
    「ああ…何というかこう、不気味というべきか禍々しいというべきか、出来れば近寄りたくないな…」

    そう、彼の言う通り目の前に見えているその島は全体に濃霧が掛かっていて、真っ昼間なのにも関わらずおどろおどろしい雰囲気を放っているのだ。

    「どうする?今からでも進路を変更するか?」
    「………いや、このまま上陸しよう。正直めちゃくちゃ気が引けるけど、食料の事を考えると背に腹は変えられないわ」

    それだけじゃない、長く航海すればするほど海賊船などに遭遇する確率も大きく上がってしまう。それならここは勇気を絞ってあの島に上がった方がまだ判断としては幾らかマシ……な筈だ。

    (大丈夫、大丈夫よ私。危険があればすぐに引き返せばいいし、いざとなればウタウタの力を使えばいい)

    そう自分に言い聞かせながら、私たちはその島へ向かった。

  • 73二次元好きの匿名さん22/11/03(木) 19:52:39

    この敵って珍獣島繋がりだからか
    スレ主さん珍しいとこから持ってくるね

  • 74122/11/03(木) 20:11:49

    >>73

    バトラー一味って何気にワンピ映画じゃ初の能力者でもなければ海賊でもないヴィランなんですよね

    珍獣島繋がりもそうですが、そういう劇場版の敵としては(言い方はアレですが)イマイチなスケールの彼らが、現時点で最強クラスのチート能力者であるウタに挑むとどうなるんだろうっていうのを書きたかった訳です

    結果は見ての通りですが

  • 75二次元好きの匿名さん22/11/04(金) 01:14:30

    これルフィさんたち今どこら辺だ?
    まだ2年間の修行中なのか?

  • 76二次元好きの匿名さん22/11/04(金) 12:19:13

    保守

  • 77122/11/04(金) 13:57:03

    生理的、或いは本能的な抵抗を覚えつつ不気味極まるその島へ接近する。
    …進めば進むほどに濃霧がより深くなっていく。最初に見つけた時点では全体的に霧に覆われていてうっすらと島の輪郭が見えると言った感じだったけど、今は文字通り一寸先も把握できないくらいに不明瞭だ。

    「…ねぇゴードン。ふと今思ったんだけどさ、この状況……前後不覚になっててめちゃくちゃ危険だったりする…?」
    「いや…だからと言って下手に引き返そうとすればそれこそ迷いかねない。この先に陸地があると信じて行こう」

    確かにゴードンの言う通り、この状況下で方向転換なんかしようものなら自分たちから進んで彷徨い始める様なものだ。
    とはいえこの視界の悪さの中で何が待ち受けているかもわからないまま進むのも、常識的に考えれば自殺行為に等しいのもまた事実。

    (ああくそ、こんな事なら島が目に入った時点でリスクを呑んででも進路を変えておくべきだったな)

    そもそもここはどう見てもフーシャ村でもなければそれが属しているゴア王国でもないし、先の島みたいに私たちが全く知らない場所だろう。

    そんな感じで頭を悩ませながら進んでいる内と徐々に霧が晴れていき、島と思われる陸地の影が見えてきた。

    「…!ようやく見えてきたね。ホント生きた心地がしなかったよ」
    「ああ、そうだな…。尤も生きた心地がしなかった、という点で言えば何もこの時に限った事ではないがな」

    ゴードンの言葉に私も深く同意する。この島に到達する半日前くらいだったかな。何故か航海中に海王類と度々出会して、何度も何度も船ごと海に沈められそうになったのだ。
    今思うと本当に恐ろしくて仕方ない。ウタウタの力だけじゃ凌ぎきれなかっただろうし、島を見つけた時は自分たちの天運に心底感謝した。

    「お、段々ハッキリと見え…て…!?」
    「…何なんだあの島は?巨大な城と、口の形をした、門…!?」

    ―――前言撤回。どうやら天運ではなく悪運だったらしい。何だあのお化け屋敷そのものな島!!?

  • 78二次元好きの匿名さん22/11/04(金) 19:45:49

    >>75

    原作だとSSG電伝虫を拾うのが3年前でそれより先に真実を知った設定ならルフィはフーシャ村まだ出てないことになる

    ルフィと別れて8年と言ってるからウタは17歳で現在の4年前かな


    ただ、ガイモンがおいていかれて20年以上と発言してるからそれだと2年前より後になるんでこれからここら辺の設定が開示されてくかもしれない

  • 79122/11/04(金) 20:00:12

    >>78

    すいません大変申し上げにくいんですが、ガイモンの20年以上発言は自分が時系列設定の調整を忘れてしまっていたせいです(汗)

    なのでここは『島に長く居続けた事で時間感覚に大きくズレが生じていた』という解釈で捉えていただけると幸いです

    とはいえ忘れていた事には変わりないので自罰としてバスコに殺されてきますね

  • 80二次元好きの匿名さん22/11/04(金) 20:20:39

    >>79

    了解しました

    リザレクション後もがんばってください

  • 81二次元好きの匿名さん22/11/05(土) 06:57:57

    保守

  • 82122/11/05(土) 08:19:16

    私たちの前に現れた、古城の聳える暗い雰囲気の孤島。周りを城壁で囲まれていて、正面には大部分が崩れているが人間の口をそのまま形にした…様に見えるデザインの門が構えている。

    「えっと…何あれ。ますます入るのに抵抗を覚えるんだけど…」
    「私もだ。やはり島を見つけた時点で避けておくべきだったか…?」

    ゴードンが今更な事を言うが、彼がそう言うのも仕方ない。
    まず漂わせている雰囲気から違う、ただでさえ外から見ても不気味だったのにこうして直接目にする限りだと完全な幽霊島なのだ。

    「いや、うん……でも、このまま入ろう。曲がりなりにも覚悟を決める事決めてここまで来たんだし。すっごく嫌ではあるけど、それでもね」

    仮にここで引き返して濃霧地帯を抜け出れたとしても今の残存食料と船の耐久でまたあの海王類たちに襲われたら今度こそ死ぬだろうし、どちらにせよこのまま上陸する以外の選択は無い。

    「ウタ………わかった。ではこのままあの島に接近し上陸しよう」
    「うん、お願いするよ。私は今の内に下で準備しておくからそのまま操縦をよろしくね」
    「ああ、ではあそこの崩落した隙間を目指して進入しておく」

    そして私たちは各々の役割を務め、しばらくしてその島に上陸する。

    (うわぁ…こうして上がってみるとますます幽霊が出そうな雰囲気が直に感じるなぁ)

    …いつか本で見た記憶があるけど、ワノ国というところではこう言った状況を『鬼が出るか蛇が出るか』って言葉で表すんだろうな。

  • 83二次元好きの匿名さん22/11/05(土) 13:25:32

    スリラーバークか………?でもなんでいつ晴れるかわからん東の海にたまたまある霧に………………違うわ。これ海王類に滅茶苦茶出会ったってとこカームベルトなんか。突っ切ってグランドライン入ったんか。



    ウタちゃんパなくね?

  • 84122/11/05(土) 21:21:15

    「さて、上陸したはいいがここからどうする?」
    「まずは食料調達と行こうか。こんな所にマトモに食べられる物があるかは怪しいけど…」

    そこから一時間ほど探索を続けていたが、やはりというかそう都合よく見つけられずに悪戦苦闘を強いられた。

    「いやぁ~…常に不気味な雰囲気で食料も手に入らないとかある?私この島嫌いになりそうなんだけど」
    「ウタ、気持ちはわかるが島そのものに罪はないぞ」

    そうはそうだが、これだけ探して一口サイズの木の実数個程度は正直おかしい。…いやもしかしてガイモンみたいにこの島にも住民がいて、その人たちが根こそぎ採集してたりするのかな?ちょうど巨大な城がある訳だし、怖いけど気になるな。

    「…ねぇゴードン、予定変更していいかな?」
    「? 別に構わないが何をするつもりだ?」
    「そんな大げさな事じゃないよ。森での探索は一旦止めて、あの大きなお城を目指そうと思っているんだ」

    今のままではどれだけ粘ろうとロクに食材は手に入らないだろうし、それなら人が住んでいる可能性に賭けて城へと向かった方が時間的にも効率がいい。もっと言うなら他にも小さな屋敷とかもあったし、そこを訪ねてみるのもいいだろう。

    「ふむ…だがしかし勝手に入ってよいのだろうか?もし人がいたなら不法侵入になるがそれでもか?」
    「うん、少なくとも今よりは状況が好転する可能性は高いと私は思うよ?」

    仮に誰かいたとして、話が出来る人なら事情を説明した上でそのまま食料提供の申し出を試みればいい。ただ、それならそれで懸念点も一つある。

    「だが、話が通じずにこちらに襲ってきた場合はどうする?ウタウタの力を使うにしてもリスクが伴う筈だ」
    「うん、問題はそこだよね。ウタウタの力無しだと手製の弓や小型のナイフ、あと鉈くらいしかないし逃げきるだけでも難しいかな…」

    勿論襲ってきた相手やその時の状況にもよるがウタウタの力に頼りすぎてるスタイルなのは私が一番痛感しているし、それ以外の迎撃手段が充実していない現状だと戦う事も逃げる事も容易にはいかないのは明白だ。

    「うーん……それじゃあとりあえずは遠目で様子見しつつ周辺の建物から手探りで行こう」
    「ああ、その方が直接城に行くよりはまだ安全だろうからな。そうしよう」

    という訳で私たちはまず民家や屋敷から手当たり次第に物色する事にした。どうか目ぼしい物があります様に。

  • 85122/11/06(日) 02:04:53

    指針が決まった私たちは早速行動に移り、城を観察しつつその周りに点在している廃墟を調べに取り掛かる。…のは良いのだが、ここで全く想定外の―――いや、こんな場所ならあり得なくもないし寧ろ必然とさえ言うべき障害にぶつかった。

    「いや、いやぁあああ待って待って!!ゾンビ!?なんて嘘でしょぉお!!?」

    そう、信じられない事に屋敷を探索している中で人の形をした腐った化け物…俗に言うゾンビ―――その“集団”に見つかって現在追われているのだ。

    「ハァ、ハ―――ウタっ!!そこから一旦外に出るぞッ!!」

    ゴードンの言葉に私は即座に頷き、外へ出た後は二人で交互に指示を飛ばし合って最終的に墓地の一角へ身を潜める形で難を逃れた。

    「ハァ…ハァ、ハァ~……。もう嫌、心が折れそう……」
    「う、ウタ、気を確かにしてくれ。見たところゾンビたちは我々を見失って何処かに行った様だから、一先ず安心だ」

    落ち込む私をゴードンが必死に宥めてくれるが、今ので私は察してしまった。この島、絶対にあのゾンビたち以外にも恐ろしい怪物がうじゃうじゃいる。あいつらだけな筈がない、ここは文字通り人間が来ちゃいけない魔境だったんだ。

    「いや、そんな事言ったって…またいつ来るかもわからないのにどう対処すれば―――」
    「何だ、ビビってんのか?」

    ―――え。…今の、ゴードン?ゴードン、だよね?

    「ね…ねぇ、ゴードン。こんな時に『ビビってるのか』なんて言ってからかわないでほしい、な…?」
    「な…何?私はそんな事言ってないぞ……?」
    「へ……?」

    じゃ…じゃあ、何?今の、誰、が………

    「おーい、こ っ ち こ っ ち」

    え―――――――――

  • 86122/11/06(日) 02:06:26

    「……………………」
    「ん?おい、聞こえ…はっはーん、私にビビって声も出ねェってか。そいつは悪い事したな、ホロホロホ…」

    「―――ぎ」
    「ロ…あん?ぎ??」















    「ぎゃあああああああああああ■☆Ⅱ〉%+Ⅱ「←?$◈(₩@!!!???」
    「うおぉおおぉぉぁああーーーーッッ!!??」

    その瞬間―――二人の姫による、可憐で美しい雄叫びがスリラーバーク全域に響き渡った。
    ついでにゴードンのサングラスも吹き飛んだ。

  • 87二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 02:40:10

    相変わらずの挿し絵付きとは・・・恐れ入ります

  • 88二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 03:23:38

    こんなに早く二人の共演が見られるとは思わなかった
    嬉しい

  • 89二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 13:41:06

    保守

  • 90二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 14:00:02

    絵のタッチいいね

  • 91122/11/06(日) 17:47:36

    「―――で、そろそろ落ち着いたか?爆音女」
    「あ、はい…すみません………」

    目の前の女の子に軽く罵られながらもコクリと頷く。
    どうやらあの時私は拡声器顔負けの悲鳴…というか咆哮を上げた直後に気絶したらしく、こうして再び起きるまでこの子が手前の幽霊二匹と一緒に自室に連行して面倒を見てくれていたみたい。

    「その…こちらのウタがすまない事をした。保護者として私も謝らせてほしい」
    「は?いやオッサンが謝る必要性はねェし、寧ろお前もこいつの爆音の被害者じゃんか」

    ぐっ…それはそうだけど、そんなスッパリと正論を言われると耳が痛いな。けどゴードンも捨て置かずに面倒を見てくれてた様だから、尚更この子に対して何も言えないな…。

    「むぐ…確かに客観的に見ればそうかもしれないが、しかし…」
    「アホくさ。そんなんだとホントは背負わなくていい責任とか罪とかを自分から受け入れちまうぞ!生きてりゃいい事だってあるんだし、今からでもその考えは直しな?」

    う"お、その台詞はこっちにも響くから止めてほしい…!
    というかこの子って自分が思った事を抵抗なくズバズバ言えるタイプの人間なのかな?だとしたらある意味一番の強敵だなぁ。

    「ふん…それはそうとお前たち、名前を言え。さっきはその場で聞こうとしたけど、生憎どっかの爆音女のせいで妨害されちまったからなぁ?」
    「うぐぐ…」

    くそぅ、言い返したところで順序立てられて正論をぶつけられるのが目に見えるから大人しくせざるを得ない…。そう言う訳で私たちは改めて彼女に名前を告げた。

    「ウタにゴードンか、なかなか悪くねェ響きじゃん。じゃ今度は私が名乗る番だな、耳かっぽじって拝聴しろよ」

    てっきりダッサイなどと言われるかなと思いきや、意外にも私たちの名前を評価してくれた。
    そして彼女もまた若干高らかな様子で自己紹介を告げる。

    「私はペローナ。お前たちが迷い込んだだろうこの島―――『スリラーバーク』を支配する“四怪人”の一角さ、ホロホロホロホロ!」

  • 92122/11/06(日) 19:23:05

    上機嫌気味に笑う彼女はペローナという名前らしい。それにしても四怪人はともかく、スリラーバークって名前…何かの本で目にした記憶が……。

    「…おい、どうしたそんな険しい顔してよ。私の自己紹介が何か変だったか?」
    「ああいや、全くそう言う訳じゃないんだけど、ただね?何か、そのスリラーバークって単語が……引っ掛かる…というか………」

    そう、何か引っ掛かるんだ。でももうすぐでその引っ掛かりが、取れそ――――――え?

    「はぁぁっ!!!??」
    「ウタ!?」
    「うおっ!?てめェまた叫びやが―――」

    ペローナが何か怒鳴っているがそれどころじゃない。は?は??えちょっと待って待っていやまさかそんな事ある!!?

    「ね、ねぇペローナ!!」
    「ひっ!!な、何だよ…!?」
    「貴方今スリラーバークって言ったけど、私の記憶違いじゃければそれってつまり私たちは地図上で言う『偉大なる航路』――――――それも『魔の三角地帯』にいるって、事…!?」


    「―――あぁ、うん。そうだけど…?何だ、その言い種だと今まで忘れてたのか?」
    「―――――――――」


    あ、あぁああ~~~なるほどなるほどぉ!つまり私たちが航海中に海王類に散々お世話になったのはあそこがこの島と同等かそれ以上の魔境たる『凪の海』だったからなんだねー!いやぁ~~道理で海上にしては荒波の一つも感じられなかった訳だよぉ~アッハハハ☆

    「―――いや羅針盤が無いってだけでこうはならんでしょッッッ!!!」
    「―――おう、だから急に叫ぶんじゃねぇよッ!!」

    誰だよほんの一瞬でも天運だなんて勘違いしたバカは。助けてシャンクスー…。

  • 93122/11/06(日) 23:40:03

    「魔、魔の三角地帯…生きて戻ってこれた船はいないと噂されている、あの死の領域に…!?」
    「そうだよゴードン、その死の領域だよぉ。…はぁ~…帰りたい…」
    「ため息つきてぇのはこっちだし、そもそも帰ろうと思って帰れるほど平和じゃねぇよここは」

    またペローナが的確にツッコミを入れてくる。いいじゃん、ほんの一時現実逃避に耽ったって…。

    「…おい、そういや今思ったけどよ。お前らどうやってこの島に来れたんだ?たった二人だけか?他に仲間は?」
    「ん~?あー、それについてはね………」

    そうして私たちは彼女にここまで来た経緯を話した。仲間はおらず、二人だけで海王類が跋扈する海域を死に物狂いで航海する中でここへ辿り着いた事。迷い込んだ訳ではなく、元々自分たちの意思で進んでこの島へ上陸した事。尤も後者に関しては凪の海に入った時点で迷ったと取れるけど…。
    あらかた事の次第を説明し終えると、ペローナは信じられないものを見る様な顔をしていた。

    「へ…??え、何、つまりお前らはリヴァース・マウンテンを経由する事なくそのまま道なりで凪の海を突っ切った訳?海のバケモンたちがうじゃうじゃいるあの海域を?そんな小っさい船で?……たった二人、で?」
    「うん、まぁ偏にウタウタの力と悪運の強さあっての結果に過ぎないけどね。私たちからしても予想外だったし」

    私たちの説明をとりあえずは理解したっぽいペローナは、尚も夢でも見ているのかと言わんばかりに顔をしかめ、頭に手を当てる。

    「………ああ…うん。わかりたくねぇが、わかった。とりあえずお前ら、ここでしばらく待機してろ。私は一旦あの方にこの事を報告した上でお前らと面会するよう申し付けてくる」

    頭いてェ、何てボソリと漏らしつつペローナはそう言って部屋を後にしようとするが、彼女の発言が気になった私は直前で声を掛ける。

    「ちょっと待って。あの方って?上司でもいるの?」
    「おいおい、スリラーバークを知ってて察しが付かないのかよ。あの方と言やぁお前、決まってるだろ」

    私の質問に呆れた様子を見せつつ、ペローナはその名を口にする。




    「このスリラーバークを支配する四怪人の頂点であり、同時にかつてあの“カイドウ”とも戦った大海賊であらせられる御方―――『ゲッコー・モリア』様だよ」

  • 94二次元好きの匿名さん22/11/07(月) 07:19:28

  • 95二次元好きの匿名さん22/11/07(月) 16:57:48

    保守

  • 96122/11/07(月) 23:09:44

    「ゲッコー・モリア…?それにカイドウって?」
    「えぇ…マジで知らねぇのかよ。チッ、後で説明してやるから待ってろ」

    そう言ってペローナは面倒そうな顔をしながら部屋を出て、そこまで時間を置く事なく戻って来ると私たちを連れてそのモリアという人について道すがら説明してくれた。

    「へぇ~この島そのものがその人の船なんだ。確かにそんな規模の船を持ってる海賊なんて他に聞いた事ないし凄い人だね!」
    「だろ?それだけじゃねぇぜ、あの御方にはそれはそれは凄ェ能力が……おっと、話の途中だがどうやら着いたみたいだ」

    ペローナが話を中断し、目的の場所に付いたと言う。……え、これ扉?何か異常に大きいけど、巨人族でもこの先にいるのかな??

    「モリア様!例のイカれた二人組を連れて来ましたよー!」
    『―――わかった。既に他の者たちも集まっている。おいアブロサム、開けてやれ』

    奥から威圧的な声が響く。その直後に大きな扉がゆっくりと開き、その先には見上げる程の巨大な大男がでんと構えていた。

    「―――ようこそスリラーバークへ。てめェらがペローナの言っていた奴らか」

    童話に出てくる悪役みたいな風貌をしているその男は、品定めをする様にじろじろとこちらを観察してくる。…そんなに見られるとちょっと気持ちが悪いなぁ。

    「ふん、みてくれは“普通”にしか見えんな。こんな奴らが本当に凪の海を越えられたのか非常に疑わしいが……まぁまずは自己紹介と行こうか」

    男もまたペローナみたいに怪訝な表情を見せつつも、それはそれとしてという感じで自らの名前を告げた。

    「ペローナから聞いているだろうが、おれはモリア、ゲッコー・モリア。ここの支配者であり、いずれは海の覇者―――即ち海賊王となる男だ!キシシシ!」

  • 97二次元好きの匿名さん22/11/08(火) 07:15:14

    保守

  • 98122/11/08(火) 09:29:18

    私たちの前にいるずんぐりとした体型の大男。彼がこの島の船長のゲッコー・モリアその人らしい。

    「自己紹介どうも。私たちの事もペローナから聞いてるでしょうけど、私はウタ。悪運が強いだけの小娘よ」
    「私はゴードン。彼女の付き人だ、以後お見知り置きを」
    「…………」

    一応私たちの方も名乗りを返したが、モリアも周りの人?たちも何故か黙りこくっている。急にどうしたんだろう、と思っているとモリアが口を開いた。

    「…なぁペローナ、お前がおれに対してウソを付かねェのはよくわかってる。だからこそ余計にこいつらがたった二人で凪の海を渡ってきたってのが尚更信じられねェんだが?」
    「ですよねっ!?私も聞いた時は頭痛めましたもん!こいつら色々とおかしいですよ!」

    まぁまぁの言われようだが否定は出来ない。私たちだってまさかそんな魔境をいつの間にか経由していたなんて夢にも思わなかったし、彼らの立場になったら大体同じ反応をしてたと思う。と言うよりしていた。

    「ああ…まぁそりゃ頭痛を覚えても仕方がねェ。お前らはどう思う?ホグバック、アブロサム」
    「フォスフォスフォス、おれもペローナ経由であんたから聞いた時は驚きはしましたが、なかなかクレイジーで嫌いじゃないですよ!」
    「おいらはご主人様やペローナと同じく…と言いたいところですが、現にこいつらがここにいるのは覆しようのない事実。恐らくウタウタの力とやらがそれだけ強力なのではと思いますよ」

    彼に問われた二人が各々に意見を述べる。アブロサムという獣人…なのかな?はともかく、とりあえずホグバックとか言う人はなるべく近寄らない方がいいかも。何かそこはかとなくヤバそうな感じがするし、後でゴードンにも伝えとこう。

    「なるほど、ウタウタの力か…。よし、ウタとか言ったな。今からおれの座興に付き合え、てめェのその力がどれほどのモンかが少し見てみたくなった」

    彼は何故か悪だくみを思い付いた様な笑みを浮かべて私にそう命令した。
    何だろう、ロクでもなさそうな事を言っ―――

    「内容としてはそうだな―――ゾンビ100体、加えて将軍2体と闘ってみろ」

  • 99二次元好きの匿名さん22/11/08(火) 19:27:30

    続き楽しみにしてます

  • 100二次元好きの匿名さん22/11/09(水) 01:36:09

    保守

  • 101122/11/09(水) 02:26:55

    「なっ…!?いきなり何を言い出すのだ!?」
    「いや全くだよ!急にそんな事言われてはいそうですかなんて言える訳ないじゃない!」

    第一そんな無茶苦茶な事を言われて首を縦に振れるのはそれこそ狂人くらいのものだろう。将軍とか言うのも何か響き的に如何にも強そうだし、この人は私を筋骨隆々の怪物か何かと勘違いしてないか?

    「キシシ、そうは言うがその力で海の化け物たる海王類どもが犇めく魔境を越えてきたのは事実なんだろう?第一この場で最も立場が高いのはおれだ、てめェらに拒否権はねェよ」
    「そうだぞ、爆音女もオッサンも身の程を弁えやがれ」

    理不尽にもモリアは私たちにそう突き付ける。ああそうだった、この人って海賊なんだよね。じゃあこう言う強引な手段を気分一つで強いてくるのも当たり前って事か。

    「あ、あのさ…それってあくまで腕試し的なものであって、本当に殺しに掛かってくる訳じゃないよね?」
    「ああ、そこは保証してやる…と言いてェところだが、敵と見なしゃ本能のままに襲い来るから“不慮の事故”が起きてもおかしくないぜ?何せゾンビだからなぁ!」

    淡い期待をもって尋ねるが、どうやら私の命の保証は全く出来ないらしい。ああもう、本当に何でこんな島に行こうって気になったの少し前の私は!

    「はぁ……あぁくそ、わかった!わかったよ!どうせ逃げられないなら、この際正面から貴方のお遊びに付き合ってやろうじゃない!!」

    そんなに私の力が見たいなら望み通り存分に見せつけてやる。
    …それにしても海賊ってこんなにも身勝手で理不尽なのか。まぁこの人が取り分けそうなだけかもしれないけど、同じ海賊でもシャンクスたちがどれだけ優しかったかがより理解出来たよ!

    「う、ウタ!?駄目だ!そう易々と乗るのは危け…」
    「てめェは黙ってろジジイ。そして良い返事と覚悟だ小娘。そうこなくちゃなぁ、キシシシシシ!!」

    彼はゴードンを威圧して黙らせると、私の方へ不敵な笑みを向ける。大丈夫だよゴードン、こんなのすぐに終わらせるから……!

  • 102二次元好きの匿名さん22/11/09(水) 09:54:28

    hosyu

  • 103二次元好きの匿名さん22/11/09(水) 19:33:09

    将軍ゾンビにもウタウタは効くのかな…
    続き楽しみにしてます

  • 104122/11/09(水) 22:50:29

    そんな訳でモリアの言う座興に敢えて乗った私は彼の案内の元で闘いの場所へと足を運んだ。

    「それじゃあおれたちとジジイはここで観戦するとして…おい、もう出てきていいぞ!」

    彼がそう命令すると、前方からゾンビたちが溢れる様にわらわらと出てきた。よく見ると…いや、よく見なくてもわかるくらいに、明らかに異質で歪な姿の大きなゾンビが二体いた。

    「えっと…モリア、さん?何あれ?」
    「あいつらがおれがさっき言っていた“将軍”たちだ!なぁローラ、タララン!」

    「そうよモリア様!てことでよろしくね♡ウタちゃん♡」
    「モンキー……モリア様のご命令だから仕方ねぇが、よりによってこいつと組まされるとか辛ぇぜ……」

    彼が将軍と呼んだその二体に思わずドン引きしてしまう。
    何しろそいつらは一方は継ぎ接ぎの目立ちやすいドぎついピンク色のイノシシでもう一方は猿の顔に蜘蛛の手足と胴体という、先の島で出会った珍獣たちが常識的に思えるくらい奇怪なフォルムをしているのだ。

    「それにしてもアナタ、私ほどじゃあないけどなかなかの別嬪さんじゃない!モリア様のご命令がなかったら是非ともお話ししたかったわぁ~♡」
    「モンキキー、一応殺すなと言われてるから加減はするが、代わりにこの辛さの発散するのに付き合ってくれよ。こいつらも丁度腹を空かしてるみてぇだしなぁ?」
    「あ、あはは。お、お手柔らかに~…」

    イノシシの方はともかく、蜘蛛猿…タラランとか言ったっけ。そっちは完全にヤル気で、配下と思われる鼠頭の子グモたちをちらつかせている。
    多分殺しさえしなければどれだけ追い詰めてもいいなんて思ってるんだろうな……気持ち悪い。

    「キシシ、お喋りはその辺りにしてもらおうか。さぁ―――存分に闘り合え!!」

    彼のその言葉を火蓋に将軍とゾンビたちが一斉に私へ向かってくる。その様に嫌悪感を覚えつつも、私は渋々ながら“歌”を口にした。

  • 105122/11/10(木) 03:37:16

    『歌った』その瞬間、私を中心に物寂しげで不気味なホールは色を変え、歌によって空間を、世界を塗り替えていく。

    「―――動かないで」

    その一言でゾンビたちは瞬く間に楽譜に縛り上げられる。将軍たちはいきなり自分たち以外が一瞬で拘束された事に動揺を隠せないでいる様だ。

    「!?あ、アナタ何をしたの…!?」
    「おいおい、まさか今の一言でこれを起こしやがったのか!?」

    将軍たちもだが、ゾンビたちもまた自分たちの身に何が起きたか理解が追い付いていないみたい。まぁ、そんな事は別にどうでもいいけど。

    「…その気になればアンタたちも拘束出来たけど、敢えて残したよ。何でだと思う?」
    「あ…?!てめェ何を言って」
    「―――こう言う事も出来るから、だよ」

    タラランが言い切るのを待たずに私は指を鳴らす。そして辺り一帯から『音符の兵士』を召喚し、彼らに容赦なくけしかける。

    「こ、今度は何!?どこからともなく変なのが出てきたわよ!?」
    「動揺してないで手ェ動かせ!!ウキャア!!」

    流石に将軍と言われているだけあって、それぞれ図体を活かした突進や子グモたちとの連携による糸の拘束で冷静に応戦していく。しかし多勢に無勢、次第に彼らは濁流の如く押し寄せる私の兵士に追い詰められていき、最終的に弱ったところを他のゾンビたちみたいに楽譜で縛り上げてやった。

    「ぐ、おぉ……ありえねェ、仮にも将軍のこのおれが、こんな小娘にぃ…!」
    「んんっ…!こんなにもあっさり負けるなんて、ウタちゃんの能力ヤバすぎない…!?」

    将軍も、ゾンビの群れも、この空間の中ではどれだけ抵抗しようと意味を成さない。その様はまさに他の追随を許さない、ウタの綴るサプライズ。

    「この空間においては全てが私の拳の上。私の意のままに動き、どんな存在も私には逆らえない。そういう風に出来ているの」

    この空間―――【ウタウタの世界】では私は何者にも脅かされる事のない、平たく言えば『最強』なのだ。

  • 106二次元好きの匿名さん22/11/10(木) 12:34:12

    保守

  • 107122/11/10(木) 19:54:41

    今仕事中ですので続きはこのあと夜遅くに上げます
    改めて見直したけど将軍はもう少し活躍させた方がよかったかなと若干後悔してる…

  • 108二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 00:50:52

    応援してる

  • 109122/11/11(金) 02:16:39

    「ほら、これでいいでしょモリアさん。見ての通り勝負は付いたわ」
    「…キシシ。あぁそうだな、正直思った以上だったぞ」

    私がそう呼び掛けると彼は余裕そうに返事をするが、どこか面食らってる様な気もする。多分、自慢の部下がこうもマウントを取られるとは想定してなかったんだろうな。

    「ええ!?ウソだろおい!?私たち四怪人に比べりゃ弱いけど、それでもそこらのゾンビ共なんかよりずっと強ェ筈なのに…!!」
    「フォスフォス、将軍2体がまるで相手にならねぇか。こいつはリューマでも厳しいかぁ?」
    「…ここに来て凪の海を越えたというのが少し信憑性を帯びてきたな」

    ペローナを始めとして四怪人の皆もそれぞれ意見を口にしている。どうやら彼女らにとっても予想外だったらしいけど、興味本位でこんな悪趣味な座興に付き合わされた私からすればどうでもよかった。

    「ウタ…大丈夫か!?あまりウタウタの世界の維持に体力を使うな、無理をしないでくれ!」
    「うん、わかってるよゴードン。て言っても限界を迎えないと解除は出来ないけどね」

    そう、この世界は能力者である私の意思一つで何でも出来るけど、解除して現実に戻す事に関してだけは『体力切れによる休眠』でしか出来ない。
    …とは言ってもさっきから段々と疲労感が襲って来てるし、この分だと間もなく意識を落とせるんじゃないかな。

    「ほう…?つまりウタウタの世界とか言うこの空間はそう長く保てはしないと、そう言う理解で良いのか?」
    「あー…うん、まぁそう言う事だよ。………ふわぁぁ…」

    モリアの質問に適当に答えつつ疲労に伴って生じた眠気で大きく欠伸をする。本来ならもう少し維持できるが、ここ最近缶詰めしか食っていないのでマトモに体力が付いていない。
    だから……まぁ、うん。限界を迎えるのも、ずっと早い、わけで……。

    「あー……そんな訳で私は、しばらく動けなくなるから……ペローナ…あと、よろしく、ね……」
    「は?ちょっと、おい!?なに気の知れた友達感覚で頼みこんでんだよ!こっちはお前の能力のヤバさに―――ビビって―――」

    彼女の声が徐々に途切れ途切れになっていく。
    ―――あ、これまた怒鳴ってるんだろうな。そう呑気に思いながら私は意識を深いところに手放した。

  • 110二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 12:14:30

    保守

  • 111122/11/11(金) 13:46:54

    「――?……ここは…」

    気が付けば、私はどこかの森の中にいた。…何故だかこの場所に既視感を覚える。いや、本当に何でだろう?

    (……じっとしていても仕方ないし、とりあえず歩くか)

    そのまましばらく道なりに歩いていると、やがて奥の方から何か赤い光の様なものが見えてきた。
    …恐る恐るその光の方に寄っていく。すると近付くにつれて妙な音が聞こえてきた。これは―――何かが、燃えている音?

    「―――うぁああああああっ!!!」

    突然光の方から男の人が飛び出してきた。その人の顔はこの世の終わりにでもあったかの様な焦りと恐怖に歪められていて、私には目もくれず通りすぎていく。

    「あ、ああ、何て事だ!あ…あの魔王が…トッ」
    (―――え?)

    その時、私は茫然とする。何故なら鬼気迫る様子で逃げていたその人は次の瞬間、光の方から伸びてきた“赤黒い雷”に跡形もなく消されたのだ。

    「…な、に?何が、起きて……」

    動揺のあまり呂律も上手く回らない。それでも私は誘われる様に光の方へと足を進める。

    「――――――」

    光の先にあった光景に、今度こそ私は何も言えなくなる。赤い光に見えていたのは“炎”で、それが森や街を根こそぎ焼き尽くしていた。
    そして―――その中心には。

    「――あ。…あ、あ………ああ、あああぁ…!!」

    私の知る限りで最もおぞましく忌まわしい『怪物』が、厄災の如く世界を蹂躙していた。

  • 112二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 13:50:07

    これ現実サイド大丈夫か?いや将軍たちも寝てるだろうけどウタが眠ったらまた起きるわけで「拘束」も「撃破」も出来てないからこの間に縛り上げるとかしとかなきゃ、「ゴードンvsゾンビ軍団で試合続行な」ってモリアに言われそう

  • 113二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 13:51:39

    >>111

    描いたの⁉

  • 114122/11/11(金) 14:33:01

    >>113

    はい

    基本的に押絵は全部自分で描いて上げます

    ただ場面によってはコラ画を用いるかも

  • 115二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 14:51:29

    >>112

    もう腕試しが終わったのに再会させる意味なくね

    そもそもウタの能力が強いって話だったのにゴードンにぶつける意味がないし

  • 116二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 22:55:30

    保守

  • 117122/11/12(土) 02:17:47

    名前を口にするのも不快なくらいに忌むべきその怪物は、男も女も、お年寄りも子供も、等しく悲鳴を奏でさせて一人一人消していく。その中で、消されていく人たちの…声、が………

    「ひ…や、やめろ!来るな来るな来―――」「いや、いやぁああ!!貴方、貴方ぁああ!!」「だ…誰か助けてくれぇ!!孫が、孫が瓦礫に挟まって動けないんじゃあっ!!」「おとうさん、おかあさん?なんで、あかいかみなりさんにあたったところがきえているの?なんで、なにもいわないの?……なんで、わたしをおいていったの……?」

    あ、あ………ちが、う。ちがう。ちがうちがうちがう!!!そんな、そんなつもりじゃなかった!こんなになるなんて知らなかった!!貴方たちの笑顔を奪い去るつもりなんてなかった、なかったんだよっ…!!

    『―――でも、滅ぼしたのは事実だろう?』

    ―――え……?

    『どんなに浅ましい言い訳をしようとそんなのは所詮言い訳。自分を少しでも正当化させる為のハリボテに過ぎない』

    ち…ちがう!!確かに切っ掛けを作ってしまったのは私だ。でもそこからはお前が私を利用して滅ぼしただろう!!

    『いいや、俺は一切悪くない』

    ………は?お前…何を、言ってる?

    『私は負の思いが凝り固まった存在であり、ワシはその思いのままに全てを滅びに導く存在。つまり僕は“生まれもった役割”を全うしているだけで罪はない』
    『そもそもを言えば自分は遠い昔より地下の奥深くにて封印されていた。でも近くにウタウタの力を持つ存在が来たから役割に従い、結果国は滅びた。故に貴方が来なければ、君さえいなければ』

    ――――――やめろ。

    『お前さえ、あんたさえ、てめえさえ、貴様さえ存在しなければエレジアは、“自分たち”は今も安泰だったのだ』
    『ああそうだとも。お前も、否、お前が一番わかっているだろう。この国の全てを殺したのは―――』

    やめろ、やめろやめろやめろやめろ!!
    聞きたくない!!黙って!!頼むから、頼むから!!―――やめてっっ!!!!

    『―――他ならない“お前自身”だ』

  • 118二次元好きの匿名さん22/11/12(土) 12:10:11

  • 119二次元好きの匿名さん22/11/12(土) 12:51:51

    てめぇトットムジカ!言っていいことと悪いことがあんだろ!!

  • 120二次元好きの匿名さん22/11/12(土) 13:12:51

    相変わらず凄い絵と文章

  • 121122/11/12(土) 13:26:15

    「うぁああぁああああぁあぁああ!!??」
    「ブフーッッッ!!?」「うぉっ!?」

    爆音女が起きるまでの間オッサンと紅茶を嗜みながら雑談してると、突然絶叫を上げながら目覚めやがったから思わず飲んでたモノを吹き出した。あ、やべオッサンの顔に掛かっちまった。

    「ゲホッ…てめェ起きる時も静かに出来…!?」
    「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃいぃい…!!」

    怒鳴りつけようとして、一瞬絶句する。そいつは焦点の合っていない目線でひたすら何かに謝っているという、誰がどう見ても明らかに異常な様子だった。

    「お、おい?ちょっと、大丈夫か!?」
    「う、ウタ!何があった!?」
    「いやっ来ないで!!もう、もう私に近寄らないで!話し掛けないでぇっ!!」

    私とオッサンの呼び掛けにもまともに応じる事なく、ウタは酷く錯乱した様子で拒絶する。精神的な情緒が不安定になってんのは言うまでもなく明らかだった。

    「~~~っ…オイっ!!」
    「ひっ!!?」

    それは半ば咄嗟の行動だった。こう言う事態に陥った事がねェから適した対処法がわからなかった私は、とりあえず抱擁して落ち着かせようと考えた。

    「い…や!離して、離れてよぉ…!」
    「いいや断るぞ。どんな悪夢を見てたか知らねェが落ち着け!ここは現実だ、お前を追い詰める奴はいねェ。ほら、私をハッキリ見ろ!」

    頬に手をやり、視線を私の顔に固定する。…落ち着かせるってだけならネガティブホロウを使う手もあった。だがその場合だとただでさえぐちゃぐちゃになってる心を粉微塵に壊しちまうだろうし、そもそも効かねェだろうから使う選択肢はあってない様なモンだった。

    「…………あ……ペロー、ナ?」
    「おう、誰もが羨む世界一可愛いペローナ様だ。やっと認識できたか」

    よーし、一先ず落ち着かせる事は出来た。ちょっと面倒だがこっからはこいつのメンタルケアだな。……にしてもこんなになるとかマジでどんな悪夢だったんだ??

  • 122二次元好きの匿名さん22/11/12(土) 22:02:04

    ペローナとウタ相性よさそう
    船旅にこのままついてきてほしい…

  • 123二次元好きの匿名さん22/11/13(日) 04:41:20

    保守

  • 124122/11/13(日) 07:56:15

    「…で、どう?そろそろ落ち着いたか?」
    「……うん。ありがと…」

    様子を確認してきたペローナに感謝の言葉を告げる。あれから彼女は、私がこうして最低限気持ちが安定するまでゴードンと共に宥めてくれていた。

    「ウタ…気を取り戻してくれて何よりだ。ペローナくんも会って間もないというのに彼女を慰めてくれた事、心より感謝する」
    「ハッ、全くだよ。爆音は飛ばすわ急に発狂しやがるわでこっちは大変だぜ!……ま、だからって目の前で泣いてる奴をほっとけるほど私は薄情でもねェけどな」

    つっけんどんな感じで彼女は言うけど、今の私にはその言葉だけでも凄く優しいものに思えてくる。
    そもそも突然情緒が狂い出して喚き散らしている奴に近寄ろうとする人間はいないだろう。
    でも彼女は嫌な顔一つせずに、今の今まで付きっきりで接してくれた。

    「…ふふ、優しいんだね。ペローナは」
    「勘違いすんな。私がこうまで丁寧に接してやってんのはお前らが海賊じゃねェからだよ。もし海賊だったらそのままモリア様に突き出したからな?」
    「……それでも、本当にありがとう」

    現にこうして私の精神が安定するまで面倒をしてくれていたのは事実だし、私からすればそれだけでも彼女は―――ペローナは、とても足を向けて寝れない恩人だ。

    「フン…じゃあ落ち着いたところでよ。ウタ、お前に一つ聞きてェ事があんだけどいいよな?」
    「え…うん、別にいいけど。何なの?」
    「ああ、担当直入に言うとだな―――お前、さっきまで寝てる時に何を見たんだ?あんな取り乱すとかどう考えても普通じゃねェし、もし覚えてんなら話しちゃくれねェか?」

    急に彼女からそんな事を聞かれた。……本音を言えばアレは一瞬たりとも思い出したくないけども、折角こうして聞いてくれている訳だしここは素直に打ち明けてみよう。
    察するに彼女も何かの能力者っぽいし、もしかしたら力になってくれるかもしれない。

    「う…うん。それ何だけどね―――」

  • 125122/11/13(日) 14:40:43

    それから私はペローナとゴードンに自分が一体何を見たのかを説明した。忌まわしい怪物…トットムジカにエレジアの街と人々が蹂躙されている事。そしてそいつから一方的に私が、私“だけ”が悪だと決めつけられ罵られた事を。

    「――と、いう訳だよ」
    「…………そう、か…」
    「エレジア…?トット、ムジカ…??ごめん、その辺りをもう少し説明してくれないか?今のところだと『何か恐ろしいバケモンに街が破壊されて執拗に責められた』ってくらいしかわからねェ」

    ん、どうやらペローナは怪物の事はともかくエレジアの存在も知らないみたい。まぁ場所が場所だから新聞とかの情報は基本的に届かないだろうし、それも仕方ないか。ゴードンは…まぁ、そういう反応するよね。

    「ねぇゴードン、私の口から説明していいかな?」
    「…ああ、構わない。だが辛くなったらすぐに言ってくれ」
    「ありがとう。じゃあ、まずエレジアという国からだけど………」

    そして私はペローナにエレジアという国にトットムジカという怪物の関係、何で国が滅ぼされたか、その真相は何なのかを大まかに話した。

    「…つまり?小国ながら平和だったエレジアを、トットムジカとか言うバケモンがたった一夜で滅ぼし尽くしたと…?あ、あの『四皇』の赤髪海賊団が挑んだのにも関わらずか…!?」
    「うん、そしてそのトットムジカが出現する切っ掛けを作ってしまった大馬鹿者がこの私なんだよ」

    …自分で言ってて虚しくなってくる。夢の中じゃ必死こいて口答えしていたけど、確かにあいつの言う通り私が歌いさえしなければあの国は今も平和だった筈なんだ。
    ……ペローナも多分、幻滅して―――

    「――いや、ちょっと待て。お前今大馬鹿者っつったけどさ、それは何か違くね?」
    「…え?」

    私の発言を彼女は否定してきた。だけど、私さえいなければ国は滅びなかった訳で…。

    「お前は自分が楽譜を歌ったせいで国が滅びたって言うけど、当のお前自身は後々真相を知るまでそれを知らなかったんだろ?」
    「それは、そうだけど…」
    「ならそれはあくまで結果論じゃねェか。少なくとも私からすれば、何も知らないお前を利用して勝手に国を滅ぼした挙げ句お前に責任転嫁してきやがってるクソムジカが徹頭徹尾悪いと思うぞ!」

    ペローナはあくまで悪いのは私ではなくトットムジカだと言い切る。…いつか、ゴードンにも同じ様な事を言われたなぁ。

  • 126122/11/13(日) 19:18:18

    「そういう事でハッキリ言わせてもらうが、お前は一切悪くねェ。寧ろお前もまたそのクソ楽譜の被害者だ、自分を責める必要なんかねェぞ!」

    ペローナはさも当たり前の様にそう言って、ニカッと笑顔を浮かべる。国を滅ぼした大罪人である筈の私に幻滅するどころか、逆に事情を知った上で私は悪くないと、擁護してくれた。

    「……っ…本当に、優しいん、だね…」
    「え、ちょ、泣くな泣くな!折角涙流さねぇ様に宥めてんのにまた泣かれちまったら意味ねェだろうが!」

    そうは言うけど、真実を知って尚もここまで肯定してくれたとあれば感極まって泣いたとしても何らおかしくないと思う。海賊なのにここまで優しいのは赤髪海賊団の皆だけだと思ってた。

    「あ、うん…ごめん、ちょっと涙脆いんだ、私……」
    「…あー、ごめん。ちょっと配慮が足りなかったな。気が済むまで泣いとけ、少ししたら治まるだろ?」
    「うん……ありがと…」

    ……思えばガイモンも、元とはいえ海賊でありながら真実を知った上で私の事を危険視せずに友達だと認めてくれていた。今までエレジアという鳥籠の中で過ごしていたからわからなかったけど、心優しい人間というのは案外こうして近くにいたりするんだな。

    「…ふぅ。うん、ようやく引っ込んだかな」
    「ん、そうか。じゃもう少しだけお前らの事情を」

    ぐぎゅるるるるるるる~~!!

    「――――――は?」
    「あ、あー…そう言えばここ最近非常食の缶詰めしか食べてなかったっけ。ねぇゴードン?」
    「ああ、うむ…そうだな」

    あ、自覚した途端にどんどん空腹感が襲ってきた。ヤバい背中とお腹がくっつきそう、早く何か口に入れたい。全くこんな唐突に鳴らないでよ、恥ずかしいじゃん!

    「んーとね、まぁそんな訳でさペローナ?こんな空気の中で凄く言いにくいんだけど~……ご飯ちょーだい☆」
    「いやめっっっちゃ図々しいなオイッ!!?ガキかてめェはよ!!まぁ一応作るけど!!」

    ―――ああでも、こうしてしんみりした雰囲気を良い意味で台無しにしてくれたのは良かったかな。

  • 127122/11/14(月) 00:37:29

    その後ペローナの案内で食堂まで移動した私たちは、彼女お手製の料理を有り難く食べて味を堪能した。

    「ふぃ~ごちそうさま!ペローナって料理の腕もあるんだね!」
    「ご馳走さま。わざわざ私の分まで用意してくれて感謝する、ペローナくん」
    「礼は要らねぇよオッサン。あと爆音女、私をただ可愛いだけが取り柄の小娘と思ってたら大間違いだかんな?」

    このくらいは出来て当然、と言わんばかりにペローナは得意気な顔を見せてくる。いいなぁ、私もこれを機にゴードンやこの子から色々と料理について教わろうかな。

    「それよりさっきの事情聴取の続きをするぞ。つってももうあと一つしかねェけど……赤髪海賊団とお前らってどういう関係だ?」
    「あぁ、そう言えばその辺りはまだ詳しく説明してなかったっけ。いいよ、私たちと彼らはね……」

    私たちはペローナに赤髪海賊団、そして船長のシャンクスとの関係を掻い摘まんで話した。そのついでに私たちが航海に踏み切った理由もその赤髪海賊団との再会を果たしたいからというのも伝えた。

    「ええっ…!!?お、おおお前シャンクスの娘なの!?かつてモリア様と鍔競り合った“百獣のカイドウ”と同じ四皇の、あの“赤髪のシャンクス”のか!?」
    「うん。と言っても実のそれじゃなくて義理の関係だけどね」

    話を聞いたペローナはこれまた信じられないと言った感じで驚いてた。……て言うかさっきも彼女がさらりと口にしてたけど、シャンクスも海の皇帝と言われる四皇になってたんだ。まぁあの人の実力なら寧ろなってないとおかしいと言えるし当然っちゃ当然か。

    「マジか…!さっきのクソ楽譜の話で何で赤髪海賊団が出てきたんだと思ったけど、まさかそういう事とか……クソ、モリア様に何て伝えりゃいい???」

    得られた情報の衝撃があまりに大きいからか、ペローナは頭を抱えて唸り始める。数時間前にもほぼ同じ光景を見たなコレ。

    「…別にそんなに悩まなくてもありのままに伝えれば良くない?下手に誤魔化したりするとそれこそモリアさんの不信を買ってしまうと思うよ?」
    「―――ああ、てめェの言う通りだ小娘」
    「「「!!」」」

    不意に横から聞こえてきたその声に全員が声のした方へ意識を向ける。いつの間に入ってきたんだこの人は。

    「も、モリア様…!」
    「よぅペローナ、今しがたおれも聞いたぜ。―――小娘、てめェ赤髪の娘だってな?」

  • 128二次元好きの匿名さん22/11/14(月) 08:30:01

    保守

  • 129122/11/14(月) 13:16:34

    「…そうだけど、それがどうしたの?あと盗み聞きは良くないよ?」
    「キシシすまんすまん、ハラ減ったから食堂に足を運んだら偶々話し声が聞こえてきたもんでな。今度から気を付けよう」

    ウソ、この適当な感じだと絶対に気を付けるつもりはない。…あ、今ペローナに注文してる。空腹なのは本当だったんだ。

    「…で話を続けるが、別に大した事ァねェ。ただてめェが“赤髪の娘”である事がどういう危険を孕むのかって事を教えてやろうと思ってな」
    「危険…?」

    何を言うかと思ってたら、そんな意味深な事をモリアは口にした。私がシャンクスの娘…それの何が危険だって言うの?

    「ああ。例えばだ小娘、てめェが賞金稼ぎで日々を食い繋いでいるとしよう。ある日てめェは二人の海賊に出会った。一人は名も知らねェ下っ端でもう一人は名のある奴の関係者。さててめェならどちらを選ぶ?」
    「それは…まぁ、選ぶなら後者かな。下っ端よりもそっちの方が得られる額も大きいだろうし…あっ」

    なるほど、つまり彼の言っている危険というのはそういう事か。

    「その顔だと察した様だな。そうだ、世間的に知れ渡っている奴ほど、その関係者ってだけでも“箔”ってモンが付く。そして箔はネームドの影響が大きいほど価値も比例する」
    「…つまり、シャンクスの娘である私は…」
    「その通り、街や国どころか全世界にその名を轟かせている『四皇』、加えてその“娘”とくりゃ―――あとは言わなくてもわかるよな?」

    彼の話を聞いた私は、ここに来てようやくと言うべきか自分の立場が如何に危ういかを理解した。
    同時に自分の口の軽さに怒りを覚える。ガイモンやペローナはともかく、海賊としての理不尽さと傲慢さを持つこの人にまで娘である事を知られてしまった、しかも盗み聞きとか言うタチの悪い形でだ。

    「…キシシシ、そう警戒しなくても金に変えるなんて三下のするマネはしねェよ。おれなら寧ろもっと有効的に活用してやるぜ」
    「は?…有効的に、活用…?」

    「ああ、どういう事かっつーとだな。―――てめェら、今日からおれの配下になれ」

  • 130二次元好きの匿名さん22/11/14(月) 21:30:36

    ここからどうするんだろう
    モリアの配下になってもシャンクスには会えないし…
    配下にならないとしてもどうやって脱出するんだろう
    続きが気になる

  • 131二次元好きの匿名さん22/11/15(火) 03:09:31

    保守

  • 132二次元好きの匿名さん22/11/15(火) 06:40:30

    耳を塞げば対応可能な能力だから、耳を塞ぐと対処しづらい能力や戦術持ちと組めば無双できそうだな

  • 133122/11/15(火) 16:17:15

    「は…配下?いきなりまた何を言っているのだ、モリアくん?」
    「何ってそのままの意味さ。おれの手足としてここで一生を共にしろって事だよ」

    …有効活用ってそう言う事?でも私たちからすれば勿論そんなのは願い下げだ、到底受け入れられるものじゃない。

    「悪いけど、お断りするよ。というより盗み聞きしてたなら私たちが海に出た理由も聞いてたでしょ?」

    そう、元より私たちの航海の目的の原点はシャンクスたちに再会する事。そしてそれは私がシャンクスの娘と打ち明かした直後に話しているのだから当然モリアの方も聞き及んでいる筈なのだ。

    「キシシ、じゃあ質問するがよ。てめェら一体どうやってこの島から出るつもりなんだ?」
    「っ!それ、は…」

    鋭く突いてきたモリアに思わず押し黙ってしまう。それはそうだ、このまま帰ろうとしたところでまず霧で迷いかねないし脱出出来ても海王類たちの脅威を凌ぐなんて今のままじゃ到底無理な話だ。

    「思いつかねェだろ?さっきのウタウタの力を見るにてめェらがあの海を乗り越えてきたっつーのは本当なんだろう、だがそれも結局は運が良かったからに他ならねェ。てめェらだってそう言ってたじゃねェか」

    …粗暴そうな見た目の割に意外と口の回る男だ。でも確かにそうなのだから彼の発言に否定する事は出来ない。何なら今でもあんな小船でよくあの場所を乗り切れたもんだなと思っているし。

    「だからおれの配下になってここで暮らせと言ってんだよ。どうせ帰れないんだ、ならいっそそうした方がてめェらにとっても悪かねェと思うがな?」
    「……ふぅん……」
    「…う、ウタ…?」

    ゴードン……そうだね。確かにここの食事は美味しいし、ペローナという仲良くなれそうな人も出来た。彼の言うことに大人しく従っている限りは暮らす分には問題ないだろうし、少なくともエレジアでのそれよりは楽しくやれるでしょう。

    「なるほど、それは素敵な提案だね―――まぁそれでも私たちは呑まないよ。絶対にこの島から出るわ」

    ―――しかし。そんな甘い誘いの一つで折れるほど私の、私たちのシャンクスへの想いは浅くなんかない。その確固たる意思の元、私はモリアの提案を蹴り飛ばした。

  • 134二次元好きの匿名さん22/11/16(水) 00:57:38

    保守

  • 135二次元好きの匿名さん22/11/16(水) 09:56:04

    保守

  • 136二次元好きの匿名さん22/11/16(水) 19:50:10

    保守

  • 137二次元好きの匿名さん22/11/17(木) 01:17:06

    保守

  • 138二次元好きの匿名さん22/11/17(木) 06:30:14

    保守するよ

  • 139二次元好きの匿名さん22/11/17(木) 15:36:31

    保守

  • 140二次元好きの匿名さん22/11/17(木) 18:42:37

    >>11

    バッカ!こういうのは完全に制御してるより暴走と理性の狭間で悶え苦しむからこそ面白くて性癖に刺さるんもんだロォ〜!

    まぁ正直、意識消されて完全にクソ楽譜野郎の傀儡になってるようにしか見えないけどね

  • 141二次元好きの匿名さん22/11/17(木) 22:44:48

    保守

  • 142二次元好きの匿名さん22/11/18(金) 07:01:50

  • 143122/11/18(金) 07:23:51

    あくまで私たちは下につく気はなく、ここに永住するつもりもない。シャンクスたちとの再会を果たす―――少なくともそれを完遂するまでは何者の誘いも受けない。決してそんな中途半端な意思で航海に踏み切った訳じゃないんだ。

    「フン、そうか。つまりてめェらはここまで聞いた上でおれの誘いを断るんだな?」
    「うん、悪いけどそれは無理な相談だよ。私たちには私たちの目標ってものがあるからね」
    「………なるほどな、てめェらのその強ェ思いは今ので十分伝わった」

    やけにあっさりとモリアはわかってくれた。何だろう、ちょっと……いや、凄く嫌な予感がする。

    「クク、そう疑うんじゃねェよ。それだけハッキリと言われちゃ、おれもこれ以上の提案は無理があると認めざるを得ねェからな」

    そう潔い感じで言ったモリアは、何故か不意に腕をゆっくりと上げる。……本当に彼の意図が読み取れない、でもこのざわつきは一体…

    「だからよ―――たった今から提案ではなく強行手段に出る事に決めたぞ」

    彼が凶悪な笑みを浮かべて指を鳴らした瞬間に私たちの背後から彼に似た巨大な影が現れ、抵抗する間もなく私もゴードンもその黒い腕に捕まってしまった。

    「な、何だこの影は!?…どういうつもりだモリアくん!?」
    「~~っ!~~~……!!!」
    「キシシ、口が自由だと厄介だからな。ウタウタの世界ってのは名前から察するに歌う事で初めて機能するんだろ?なら裏を返しゃ歌われる前に塞いじまえば済む話だ」

    ゴードンの問いを無視するモリアは、いとも簡単に私の能力は文字通り歌がトリガーとなっている事を看破してきた。この男、仮にも船長という立場だからか知性があまり感じられない見た目に反して頭がホントによく回る…!!

    「おーいモリア様~!食事の用意が……え、何やってんの!?」
    「おぉ!もう用意が出来たのか、御苦労ペローナ。…なぁに、ちょいとこいつらの影を“奪う”だけさ」

    そう言いながらモリアが徐に私の影へ手をかけると…信じられない事に影がベリベリと剥がされていくのだ。その光景に言い知れない恐怖を覚える私を他所に、モリアはどこから取り出したかもわからない大きな鋏で影の根元、を―――。

    ブツンッ!!
    (あ―――え―――?)
    「キシシ、これでてめェは―――おれの所有物だ」

  • 144二次元好きの匿名さん22/11/18(金) 16:59:29

    保守

  • 145二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 02:48:27

    保守

  • 146二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 12:02:27

    保守

  • 147122/11/19(土) 12:23:12

    「……っ…あ…?」
    「…!ウタ、目を覚ましてくれたか!」

    沈んでいた意識が徐々に浮上し、ゆっくりと私は瞼を開く。ふと隣を目をやれば、ゴードンが酷く心配した様子で私を見ていた。

    「ゴードン…?」
    「ああ、良かった!本当に良かった…!君がこのまま目を閉じたままだったら私は、どうしようかと…!!」

    彼は涙ぐみながらも安堵の表情を浮かべて私の目覚めを喜ぶ。その様子に改めて自分はこれほど大事に思われてるんだなって思った。

    「…聞くがウタ。目覚める前に何があったか、覚えているか?」
    「目覚める前?……あっ、確か…モリアに襲われたんだっけ」

    そうだ、交渉…と言うか命令を拒絶されたと見た瞬間に豹変したモリアに、自分の影を鋏で切り取られる形で奪われたんだ。

    「そうだ。あの直後に私も影をあの男に奪われ意識を落としてしまい、気が付けば見ての通りペローナくんの部屋に君と共にいたのだ」

    どうやらゴードンも同じ事をされてしまったみたい。ウタウタの力を持つ私だけならともかくどうして非力な彼まで当たり前の様に巻き込むのか。
    理不尽と傲慢の塊である海賊というのを含めてもそんな事を平気でやれるモリアに怒りが沸いてくる。
    …でもそれ以上に許せないのは、あの怪人の動きに注意しきれずゴードン共々に良い様にされてしまった私自身だ。

    「あの、ゴードン…ごめんなさい。私があいつをもっと注視していれば、貴方をちゃんと守れていたのに……」
    「な…何を言う!それなら君と違って真っ向から拒絶できず、それどころか彼を恐れさえしていた私に責任があるんだ!君は寧ろ誇っていい!」

    まぁ、どこまでも優しい故に責任感も強い貴方ならそう言うよね。でもだからって結果的にこうして私たち二人共影を奪われちゃってるんだし、正直とても誇れたものじゃないよ。

    「あーもう、何でモリア様は私だけにあいつらの面倒を押しつけ―――あ、もう起きてたのかお前ら」
    「あ…うん、おはようペローナ」

    …そう言えば彼女もあの時現場にいたな。事の次第もゴードンより正確に知ってそうだし、あの後どういう流れになったか聞いてみよう。

  • 148二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 20:12:17

    影とられちゃったけどここからルフィたちくるまでスリラーバークで過ごすのか…
    どうにかして影取り返すのか
    楽しみにしてます

  • 149二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 22:44:39

    ペローナはなんだかんだ世話焼きだね

  • 150二次元好きの匿名さん22/11/20(日) 07:29:16

    保守

  • 151二次元好きの匿名さん22/11/20(日) 15:41:15

    保守

  • 152二次元好きの匿名さん22/11/20(日) 22:18:30

    保守

  • 153二次元好きの匿名さん22/11/21(月) 03:38:48

    保守

  • 154二次元好きの匿名さん22/11/21(月) 08:25:57

    保守

  • 155二次元好きの匿名さん22/11/21(月) 16:42:41

    保守

  • 156二次元好きの匿名さん22/11/21(月) 22:36:56

    保守

  • 157二次元好きの匿名さん22/11/22(火) 06:35:26

    保守

  • 158二次元好きの匿名さん22/11/22(火) 16:20:11

    保守

  • 159二次元好きの匿名さん22/11/22(火) 23:09:40

    保守

  • 160二次元好きの匿名さん22/11/23(水) 07:57:15

  • 161二次元好きの匿名さん22/11/23(水) 07:57:24

    保守

  • 162二次元好きの匿名さん22/11/23(水) 17:55:01

    ほし

  • 163二次元好きの匿名さん22/11/23(水) 23:40:28

    保守

  • 164二次元好きの匿名さん22/11/24(木) 06:08:01

    保延

  • 165二次元好きの匿名さん22/11/24(木) 16:52:46

    保守

  • 166二次元好きの匿名さん22/11/25(金) 00:52:24

  • 167二次元好きの匿名さん22/11/25(金) 11:55:51

    保守

  • 168二次元好きの匿名さん22/11/25(金) 22:23:56

    自力でスリラーバーク抜けるんだろうか

  • 169二次元好きの匿名さん22/11/26(土) 08:08:31

    保守

  • 170二次元好きの匿名さん22/11/26(土) 10:25:02

    スレ主失踪した?

  • 171二次元好きの匿名さん22/11/26(土) 18:07:28

    >>170

    絵も描いてるから余計時間かかるんだろうよ。信じて待つしかないな。あと生存報告して欲しい。あのイラストが出てくる展開を読めるまで諦めんぞ

  • 172二次元好きの匿名さん22/11/27(日) 00:45:42

    どうやって抜けるんだろう

  • 173二次元好きの匿名さん22/11/27(日) 10:25:33

    保守

  • 174二次元好きの匿名さん22/11/27(日) 19:15:07

  • 175二次元好きの匿名さん22/11/28(月) 05:56:37

    保守

  • 176二次元好きの匿名さん22/11/28(月) 12:18:12

    保守

  • 177二次元好きの匿名さん22/11/28(月) 20:13:33

    保守

  • 178二次元好きの匿名さん22/11/29(火) 07:10:11

    塩に偶然気づくのかな

  • 179二次元好きの匿名さん22/11/29(火) 18:15:47

    ペローナと仲良くなるのかな

  • 180二次元好きの匿名さん22/11/30(水) 06:06:41

    待ってる

  • 181二次元好きの匿名さん22/11/30(水) 15:56:36

    保守

  • 182二次元好きの匿名さん22/11/30(水) 22:48:38

    先が気になる

  • 183二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 07:53:12

  • 184二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 18:42:05

    ほし

  • 185二次元好きの匿名さん22/12/02(金) 06:18:24

    保守保守

  • 186二次元好きの匿名さん22/12/02(金) 16:57:03

    保守

  • 187二次元好きの匿名さん22/12/03(土) 04:28:44

    保守

  • 188二次元好きの匿名さん22/12/03(土) 15:59:34

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