【クロスCP】シャンクスの娘ヴエコ3

ナイフ投げ勝負

ヒュンと風を切る音がして、ナイフがマキノの酒場に貼り付けられた木製の的の中心から大きく離れた場所に突き刺さった。
「ああ〜」
残念そうな声を上げ肩を落としたルフィを見、ウタは自慢げだ。
「今回の勝負も私の勝ちね」
「うそつけ！お前もおれと変わんねェじゃねえか！」
「そ、それは...」
実際ウタの投げたナイフの刺さっている位置もお世辞にも的の中心に近いとは言えず、いくらウタでも図星を突かれ黙り込むしかない。

今回のルフィとウタの勝負内容はナイフ投げ。どちらが的の中心にナイフを投げ刺せるかというオーソドックスな海賊の遊びだ。最初は「店を傷つけられるのはちょっと...」と難色を示していたマキノだったが、的以外に飛んだらおれたちが打ち落とすから心配いらないとベックマンやルウに言われ、了承することにした。
「そ、それでも私の方が中心に近い！」
「近くねェ！」
「近い！！」
「近くねェ！！」
顔を突き合わせ言い争うウタとルフィを微笑みながら見ていたシャンクスの視線は、そろそろ取っ組み合いが始まると思い、2人を仲裁しに行ったヴエコに移った。ウタより年上であり、年不相応に大人びているヴエコは2人の姉的な立ち位置としてこうして勝負がヒートアップしかけると仲裁しに行くのだ。
とある海賊団との抗争を制し乗り込んだ本拠地で見つけた時には随分驚いたものだ。今では随分と笑顔も見せるようになってきたが。などとシャンクスが2人目の娘の追憶に浸っていると、仲裁に行ったはずのヴエコは
「ヴエコも私のナイフの方が的に近いと思うでしょ？」
「ふへぇ…」
「変わらねェよ！ヴエコもそう思うだろ？」
「ふへぇ…」
逆にウタとルフィに問い詰められていた。押しに弱いところは相変わらずだ。
「もう引き分けでいいんじゃねェか？」
「じ、自分も賛成だなぁ…」
見兼ねたラッキー・ルウの出した助け舟にすかさず乗り込んだヴエコを見ているシャンクスの心の中に、ちょっとした悪戯心が芽生えた。

473922/10/31(月) 23:07:52

「せっかくだ。お前もやってみないか？ヴエコ」
「ふへぇ…！？」
突然の提案に目を見開いたヴエコ。その口から紡がれそうだった断りの言葉は無邪気な期待の声によって掻き消されてしまった。
「ヴエコもやるのか？いいぞ！ヴエコとも勝負だ！」
「悪いけど、負けてあげるつもりはないから」
段々と逃げ道が塞がれていくのに気づいたヴエコだったが時既に遅し。
「いいじゃねェか、やってみたら案外できたなんてことはよくあるもんだ」
ベックマンからの駄目押しで遂に覚悟を決めたヴエコは机の上に置かれていた一本のナイフを手に取った。
そのままウタ、ルフィの隣に並んだヴエコは目を閉じもうどうにでもなれと的にナイフを放った。ナイフは弱々しく飛んでいき、そのまま的の中心に突き刺さった。

一瞬店内を沈黙が支配した。てっきりあらぬ方向に飛んでいくものと思っていたヴエコが予想していた反応と違うことに疑問を抱き、目をおずおずと開けたのと、店内に歓声が響き渡るのは、ほぼ同時だった。

483922/10/31(月) 23:10:51

「おめでとう、ヴエコ。これは私からのちょっとしたプレゼント」
マキノが出してくれた特製ドリンクをくぴくぴと飲みながらヴエコは目の前の光景を見つめた。すごいすごいと無邪気にはしゃぎ回るウタとルフィ、「だから言っただろ」と笑うベックマン、さっきまでも飲んでいたのに祝いだとしてまた酒を飲もうとするシャンクスに赤髪海賊団のみんな。

それは永遠に見つめていたい楽しい時間だった。この後のあの悲劇で親娘の仲は引き裂かれることになるのだが、それでもこの一瞬、ヴエコはそう思ったのだ。

493922/10/31(月) 23:12:36

以上です

クロスSSは初めて書いたのでいろいろ拙いかもしれませんが読んでいただけると幸いです！

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50二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 23:15:22

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