- 1二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 14:06:56
歴史の授業に参加するとき、常磐クンはいつも嬉々として励んでいたね。
その横顔、なんだか綺麗で凄く好きだった。
明るくて、優しくて、クラスの中心にいたわけじゃないんだけど、常磐クンが一言発するだけでみんな常磐クンの言葉の方向へと一致団結してた。
でも決して率先したリーダーシップを発揮してたわけじゃなくて、むしろあんまり常磐クンは自分から何かをやる人じゃなかった。
私が歴史研究会に誘っても、のらりくらりって躱されちゃって。結局入ってくれなかったよね。
ショックだったなぁ。歴史の話が合う男子なんて、常磐クンしかいなかったもん。 - 2二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 14:07:33
アナザーライダーになってそう
- 3二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 14:09:16
そのかわり、ずっと常磐クンは「王様になる」って公言してたね。
変わった夢だなあって、みんな思ってた。私もまさか本気だなんて思ってなかった。
でも常磐クンは、「王様」だけは何よりも本気だった。凄いなあ、私の歴史を好きな気持ちよりも、もっと大きなものを持っていたもん。
そんな常磐クンが羨ましかった。凄いなって尊敬してた。 - 4二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 14:09:43
ゲイツと仲良くしてるの見てBSSからアナザー墜ちするんだよね…
- 5二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 14:10:11
たまに我が魔王の夢女子湧くよなここ
- 6二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 14:11:09
キタムランド
- 7二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 14:12:23
そう思ってたら、ある日転校生が来て。常磐クンは変わった。
態度が変わったとか、そういうことじゃないんだけど。常磐クンが凄く楽しそうに変わっていった。
常磐クンの心からの笑顔、あの時に初めて知っちゃった。
私と歴史の話をしてた時よりも、凄く凄く楽しそうだった。
ショックだったな。私にとって常磐クンは大切だったけど、常磐クンは私にそんな興味ないんだ。
そう思った時、私の頭の中に常磐クンの笑顔が映った。 - 8二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 14:15:01
これウォズの妄想なんじゃねえかな
- 9二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 14:15:41
私、その日学校で居眠りしちゃってた。誰もいない部室を夕焼けが照らす頃、起きちゃって焦ったなあ。
起きた後も、私の頭から常磐クンの笑顔は離れなかった。
同時に、常磐クンのあの日見た横顔も。
体育の授業で汗をタオルで拭き取った時にチラッと見えたうなじも。
私と話している時に、途中で思わず出ちゃったみたいなあくびも。
どんどん私の中で溢れていって、止まらなかった。
止める方法がわからないのに、どんどん出てきちゃう気持ち。 - 10二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 14:18:40
どうしようもない気持ちの行き先を求めて、私の手はお腹をさする。
抑えなきゃ。抑えなきゃ。抑えなきゃ。
でも、さすればさするほどとめどない気持ちに私の身体は支配されていく。
気がつけば、私の指は私の中に入り込んで、掻き乱し始めた。
全部吐き出さなきゃ。常磐クンへの気持ちが頂点に達すると、私はそう思い始めた。
ああ、お気に入りのヘアピンが汗でずり落ちちゃった。
常磐クン。常磐クンのせいなんだよ。 - 11二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 14:20:16
このレスは削除されています
- 12二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 14:20:50
気付いてなかったけど、私は常磐クンの名前を一心不乱に叫んでいた。
名前を呼ぶ度に電撃が走るように、頭がおかしくなっていく。
幾つもの常磐クンが私を囲んで、私を求めようとする。
そう、これはただの妄想だ。穢れた妄想。
でもダメなんだ。もう止まれない。止まらない。
だから、だから、もういいや。 - 13二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 14:20:58
君周りから空気読めないって思われてるよ
- 14二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 14:22:00
アナザーウォズの素質ありそうな>>1
- 15二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 14:23:23
次の瞬間、常磐クンが部室の扉を開けた。
「あれ？」
ハッと私の意識が急速に冷えていく。
熱が引いて、代わりにのしかかるのは吹雪みたいな寒さ。
見つかっちゃった。見つかっちゃった。見つかっちゃった。
あれ？どうして？身体が動かない。声が出せない。
ダメ。ダメ。ダメダメダメダメ。常磐クンに嫌われちゃう。 - 16二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 14:25:03
これ男だったらキタムランドになりそう
- 17二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 14:27:15
震えることしか出来なかった私に、常磐クンが前触れもなく口を開く。
「やめちゃうの？」
え？なにそれ。
聞いたことがない低い声。
軽蔑された？
違う。常磐クンの顔は何も変わってない。
混乱しているのにお構いなく、常磐クンがまた一言だけ呟く。
「続けなよ」
あっ、あれ？
私の指が私の意識の外で動き出す。
あっ、あっ、いやっ。
従っちゃう。逆らえない。
あっ。あっ。あっ。常磐クン。
漏れ出た声が届いても、常磐クンの表情は変わらない。 - 18二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 14:28:27
以前ソウゴの質問のスレ建てた人？
- 19二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 14:39:22
もうっ。だめ。
私は常磐クンに見られながら、情動のままに果てた。
見られちゃった。全部全部。
でももう何も考えられる気がしない。
肩で息をする私の耳元に唇を近づけた常磐クン。いつも通りの落ち着いた息遣いに息を呑んでしまう。
「気持ちよかった？」
ああ。
それだけで。
「そっか」
へたり込んで動けない私に背を向け、常磐クンは歩いていった。
去っていく常磐クンの姿が見たくて、私も変えられない姿勢のまま廊下に顔を出した。
すぐに後悔した。 - 20二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 14:42:51
「どうしたジオウ。もう下校時間だぞ」
「ごめんごめん、友達が残ってたから」
「もう。遅れたら順一郎さんが困るでしょ」
「そうだね、早く帰ろう」
そこにはいつも見ている笑顔とは違う笑顔があった。
私の中で、何かがガシャンと崩れ去る音が確かに聞こえた。
それから、帰り道に何を思ったのか。何を考えたのか全部忘れながら、夜になった。
12時まで、あと少し。
時計が秒数を刻んで進む音に、何故か常磐クンのことを思い出してしまった。
私はまた自らの全てを乱しながら果て、そのまま重い眠りに着いた。
夢の中の常磐クンはもう私を求めることはなかった。
あの時の常磐クンに、全て重なって消えたからだ。
おしまい。 - 21二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 14:43:34
常盤ソウゴの魔性に脳がやられ切ってる…
- 22二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 14:46:38
- 23二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 20:35:36
或人社長バージョンも書きたくなっちゃった
書いていい？ - 24二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 20:37:53
いいよ
- 25二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 20:43:07
- 26二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 20:44:06
両方書こう
- 27二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 20:45:32
三年連続でこんなシチュで書かれる主人公ライダーおるか？？
- 28二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 20:47:37
あなたの情動の赴くままに
- 29二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 21:07:22
じゃあ神山先生からで。Vシネのことなど知らん
『神山先生の最新作、エターナルストーリーが話題に！』
付けっぱなしでいたテレビから聞こえる声を聞き、私はハッと目を見開いた。
「やっぱり、神山くんはすごいなぁ」
学生の頃から変わっていない。真っ直ぐで、綺麗で、時に激しいストーリーを幾つも書いて。
神山くんの本は、必ず読むって決めているんだ。
握っていた縄から手を離し、台から降りて私は本屋に向かって歩き始めた。 - 30二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 21:09:18
この一瞬で書けるのか......
- 31二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 21:18:01
エターナルストーリー。良い名前だなぁ。
永遠の物語って、どんなお話なんだろう。神山くんが思い描いた世界を、早く見たい。
本屋の店頭にはエターナルストーリーが並べられ、そして立ち寄る誰もが手に取っていた。
私も当然、手に取る。
何故だろう、とても重く感じる。こんなのは初めてだなぁ。
買ってすぐ、部屋に帰ったらしまっていた座布団を取り出す手間すら惜しんで玄関に腰掛け、早速私はページをめくってみる。
一分一秒でも早く、神山くんの作品が見たい。 - 32二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 21:33:04
「……やっぱり、神山先生は凄いなあ」
読み終えた本を閉じると、何もない部屋にはその音がより鮮明に響いた。
筆・神山飛羽真の文字を撫で、ふうと溜め息を吐く。
「私の物語……」
引き出しからダンボールを取り出し、開くと、眠っていたあの時の思い出が溢れ出るようだった。
「懐かしいな……」
学生の頃の合併同人誌。神山くんの、本当の最初の本。
私と書いた、最初の……。 - 33二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 23:33:38
おストと同じ匂いがする
- 34二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 01:58:37
あの時に書いた合同紙、稚拙な出来だったけど本当に楽しかった。
神山くんは世界を巡り唄う吟遊詩人のお話、私は世界を救う竜の騎士のお話。
２つのお話が交わり、繋がる。今思えば、しょうもないクロスオーバーだったけど、私にとっては決して切れない強い繋がりだった。
ああ、あの時はみんなが私たちの小説を褒めてくれたなぁ。
あの頃に、戻りたいな。物語が永遠に続くと感じていたあの頃に。
神山くんは今、どう思ってるんだろう。私と同じように、過去を想っているのかな。 - 35二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 08:36:08
情動しっとり系助かる
- 36二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 13:37:54
数日後、私はペンと原稿用紙を手にして１つの物語を書いた。
いつかのお話の続きを書いて、これが完成したらきっと私も終われる。
そう思うと驚くほどペンが走る。いつ以来だろう、こんなに物語を書くのが楽しいと思えるのは。
出来上がった物語をそっと机に置き、安心のため息が漏れ出る。
これでようやく、何の未練も無くなったかな。
ああ、数日前に用意した縄も台もそのままだ。この気持ちが消えないうちに、早く自分の物語も終わらせてしまおう。
そう思ったのに、縄に手をかけた瞬間開いたドアが私を現実に引き戻す。 - 37二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 19:19:24
自○しようとするんじゃあない！
- 38二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 19:44:14
あーあ、編集さんに怒られちゃった。
そうやって泣きつかれたら、縄から手を離すしかないなぁ。
一通りのお叱りが終わったら、今度は机に置いていた小説を見てまた泣かれちゃった。
神山先生に比べれば、大したこともないのに。私の作品というだけで喜んでて。
ああ、そうか。
あなたには、忘れられない物語がありますか？
こういう意味だったんだ。
やっとわかったよ、神山くん。
おしまい。 - 39二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 20:44:14
「え〜！？お見合い！？」
「そうです。ほら〜、そろそろ年頃でしょ？」
「福添さんまだそういうバイタリティあったんだ……」
「違うわ！！アンタの話ですよ社長！！」
福添さんが写真を押し付けるように見せてきたのを、俺は受け取ってギョッとした。
「ちょっ、みんな大企業のご令嬢さんじゃないですか！」
「そりゃそうですよ、我が社はヒューマギアの開発技術を独占している一大企業です。その社長の座を狙う企業もごまんと……」
「無理無理無理！住む世界が違うって！」
「いやアンタ社長なんだよ！もう〜いい加減ちゃんと自覚してくださいよ、いつまでもあんな小さいアパートでカップ麺ばっか啜って……」
「福添さぁん……勘弁してよ、俺まだ恋だってしてないんだよぉ……」
「なら丁度いいでしょ。お見合いから生まれる恋愛だってありますよ」
……今日の福添さんは意地悪だなぁ。 - 40二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 23:57:59
ナチュラルに進むなぁ、でも社長はほんと人間関係増やした方がええで
- 41二次元好きの匿名さん21/11/02(火) 01:00:21
「イズ〜！福添さんを説得してよ！俺このままじゃ恋愛経験の無いまま結婚しちゃうよ！」
『或人社長に女性経験が無いことは少し調べれば簡単にわかることです。今更恥ずかしがる必要はございません』
「イズ？」
『私は或人社長の子供を早く見たいです。早々に結婚し、人としての幸せを知るべきだと思います』
「イズまで〜。そんなこと言われてもなァ〜」
人としての幸せかぁ。考えたこともなかったな。
お笑い芸人としては泣かず飛ばず。社長になってからはあっという間に時間も過ぎて、気付けば3年か。
25歳、そろそろ結婚も考えなきゃいけない年か。
俺もいい大人になっちゃったな。
「でもやっぱ、セッティングされたお見合いで結婚するのはちょっと抵抗あるかな〜……」
「そりゃ、社長は家の力も借りずに今までやって来た人だからそう思うでしょうね。そのせいで今もアパート暮らしなわけだけど」 - 42二次元好きの匿名さん21/11/02(火) 10:26:08
「まあまあ、まずは一眼見てから……」
「いや……でも……」
まずいな、このままじゃ本当にお見合いさせられてしまう。
どっかに逃げないと……。
「あっ！そういえば、サウザー課にヒューマギアの発注されていたんだった！届けなきゃなー！」
「逃げる気ですか！？ええい観念してください！」
「行ってきまーす！」
『或人社長、驚異的な逃走速度です。よほど不満だったのでしょうか』
「全く、お祖父様に似て決断するまでが長いというかなんというか……」
『ウィアの予測によれば、或人社長が今年中に配偶者と出会う確率は依然変わりありません。気長に待つべし、と』
「ウィアは恋愛運のおみくじじゃないんだぞ……」 - 43二次元好きの匿名さん21/11/02(火) 17:55:31
「……なるほど。それで珍しく私の元に相談しに来たというわけですか」
「そうなんすよ……」
「いいでしょう、1000%有意義なアドバイスを差し上げます。私と君の仲ですからね」
さすが天津さん、何年もあのルックスを保っているだけあるな〜！
ん？でも天津さんって確か……。
「まず、自分の理想は高く持たないことです。付き合い始めれば案外と困らないものですよ」
「はい」
「それと、相手の都合はしっかり考えなさい。優しさというものは人に与えた分だけ自分に帰るものです。最も君にその心配は無いと思いますがね」
「はい」
「食事や生活リズムの合う相手というものはとても大事です。必ず念頭に入れなければ……」
「あの、天津さん……これって……」
「私の失敗と反省を元にした反面意見です。999人とのお見合いを経験した私の言葉ならば信用してくれるでしょう？」
「そこは1000じゃないんだ……」
そうだった。この人こそ出会いに飢えているんだった……。 - 44二次元好きの匿名さん21/11/02(火) 23:47:18
そういや1000パーはお見合い回でボロクソだったな
- 45二次元好きの匿名さん21/11/03(水) 01:07:54
ゆっくり更新するんで定期上げ
- 46二次元好きの匿名さん21/11/03(水) 04:43:25
保守～
- 47二次元好きの匿名さん21/11/03(水) 13:54:51
夢っていいよね
- 48二次元好きの匿名さん21/11/03(水) 13:58:13
このレスは削除されています
- 49二次元好きの匿名さん21/11/03(水) 17:07:50
わくわく
- 50二次元好きの匿名さん21/11/03(水) 17:32:39
はあ、結局天津さんじゃ参考にはならなかったな。
帰ったらまた福添さんに叱られるのかなぁ。不安だ。
「不安な気持ちで、心がファンタスティック！」
「はいっ！！或人じゃ〜ないと！！」
なんて、誰も見てないからギャグやっちゃったりして。
「くす……」
え？あれ？
誰かに見られてた！？ - 51二次元好きの匿名さん21/11/03(水) 17:44:38
いやいや待て待て。今のは相当無理矢理だったし、まさかそんなわけ……。
うん、気のせいだ。今までだって誰も笑ってくれなかったし。
……嫌だなあ。最近、芸人だった時のことを変に考えちゃう。
しっかりしなきゃ、俺は社長なんだし。
帰ろう。みんな待ってる。
社長として、もっと頑張らなきゃ。 - 52二次元好きの匿名さん21/11/03(水) 20:15:19
このレスは削除されています
- 53二次元好きの匿名さん21/11/03(水) 22:34:45
こんな感じの或人夢っぽいの求めてたから楽しみ
- 54二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 01:31:46
数日後、俺は福添さんの用意してくれたお見合いの席で、何人かの女の人と食事をすることになった。
どの人も有名な会社の御令嬢とあって、俺にはギャグの禁止令が下されてしまった……まあ、ここ数年誰も笑ってくれないギャグだし？
笑ってくれる不破さんも、もういないし……。
「或人様、さあ私が酒をお注ぎしますわ♡」
「ずるいですわ、或人様♡私の口からお料理をご馳走します♡」
「或人様のお顔、素敵ですわぁ〜♡まるで俳優の高橋文哉さんにそっくり♡」
「あ、あはは……照れるな……」
とはいえ、ギャグの無い俺が会話をスムーズに続けられるわけもなく……。
「疲れた……」
お見合いの席を終えると、公園のベンチでぐったりしてしまうのだった。
「う〜、お嬢様って感じだったなぁ。距離感は近いし、みんな美人だし、話してる内容も頭が良くて……」
ふう、とため息を吐く。
「俺なんかには勿体無いよな。ヒューマギアの製造業務は最近出来る様になるまではずっと丸投げだったし。ヒューマギアの暴走もアークの出現も無いから仮面ライダーとしての仕事も無かったし。ギャグは……」
そう言いかけて、頭を振る。
「ダメダメ！今の俺は社長！ギャグは封印封印！」 - 55二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 01:41:13
「気を取り直して飲み物でも……」
そう思って財布を取り出して自販機に行くと、ばったり女の人と遭遇する。
「「あ」」
どうやら彼女も飲み物を買うようだ。
「あっ、どうぞ。お先に」
「そうですか？ありがとうございます」
彼女の後ろに立ち、彼女が飲み物を買うのを待つ。
おっ、おしるこを買うみたいだ。気が合うなぁ。俺も飲みたいんだよな。
「えっと……おしるこ、これ」
彼女はおしるこを買うとそそくさと譲ってくれる。
なので、俺もおしるこを買おうとするが……。
「あれ！？今ので売り切れ！？」
あちゃー。前ので終わりかぁ。
おっ、ギャグが降りて来た。お見合いも終わっちゃったし、言っちゃうか。 - 56二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 01:46:09
「んん〜、おしるこ、もう少しで買えたのに！おしいるこ〜！はい！或人じゃ〜！」
「ぷふっ……」
「ないっ……え？」
あれ？今横から笑い声が？
まさかと思って振り向いてみると、彼女が声を抑えて笑いかけていた。
「おしるこに、惜しいるこ……って。ぷふふっ……」
「うそ……笑ってる……笑ってる！？」
「だって、おかしいんですもん。思わず笑っちゃった」
そう言うと、彼女はおしるこを俺に渡してくれた。
「笑わせてくれたお礼です！」
「いいの？俺なんかのギャグで、悪いよ」
「そんなことありません！私、あなたのギャグ好きですよ？」
「えっ、えっあっ、いや、その……あはは！照れるなぁ……」
「楽しかったわ、芸人さん！ありがとう！」
スーツ姿の俺を見て、芸人かと思ったのか。彼女は綺麗な笑顔で去っていった。
芸人さん、か。あの頃以来だなぁ、そう呼ばれるの。 - 57二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 07:45:11
湿度じとじとの夢でしか摂取出来ない栄養素がある
- 58二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 18:53:49
翌日、俺は花束を持って不破さんのところに赴いた。
こうして会うのも久しぶりだな。2年前のあの日以来、不破さんは……。
いや。あの時の哀しさは忘れよう。不破さんとは笑顔で会うって決めてるんだ。
「久しぶりだね、不破さん……。俺、あの時から少しは社長として成長出来たかな……今日は、顔を見せに来ただけだけど。不破さんと滅亡迅雷がああなってから、どうも来るのが辛くて……」
なんて、扉の前で独り言をしてしまう。
すると、背後から俺の肩を叩く人がいた。
「おい、何センチな独り言呟いてんだ。こっちは五体満足だぞ」
「不破さん！えっと……お久しぶりです！」
「おう。まあ積もる話もあるだろ、そんなとこに突っ立ってないで早く入れ。女房も子供も待ってんだ」
不破さんだ。参ったな、一応話す内容練習してたのに、聞かれちゃってたか。 - 59二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 20:28:34
「しばらくぶりだな、社長。調子はどうだ？」
「刃さん……身体はもう大丈夫なんですか？」
生まれたばかりの赤ん坊を抱いて、刃さんは俺を出迎えてくれた。
相変わらず、ちょっとそっけないな。結婚しても変わってないみたいで、なんだか安心した。
「おかげさまでな。そっちこそ、随分大変だっただろう」
「社長として当然のことをやっただけだよ。人と人工知能が同じ夢を持てるように……」
「新AI制御プログラム・バベルか。会社そのものをアーク対策にするとはな」
「チェケラのおかげだよ。悪意のデータを解析するのに協力してくれなかったら、こうはならなかった。やっぱり、ヒューマギアと人間は寄り添え合えるって改めて確認できたんだ」
「ここまで色々あったが、ようやくあんたも夢を叶えられたんだな」 - 60二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 20:29:48
不破さん……
- 61二次元好きの匿名さん21/11/05(金) 01:07:08
『飛電或人、久しぶりだな。改めて礼を言わせてもらう』
「滅！身体の調子はどうだ？」
『人型でなくても問題は無い。今日も一日、バルカンとバルキリーの息子と娘が元気であることは確認済みだ』
「そうか……すまなかったよ、やっぱボディの新造は……」
『構わん。この身体もむしろ便利だ、AIの元あった形になっただけなのだから、お前は気にするな』
アイちゃんと同型のボディになった滅は、そう言うとコロコロ転がりながらルンバに嵌り、そのまま掃除を始めた。
「社長、お前はよくやったよ。エスの遺したナノマシン技術を改良してこうして俺を助けてくれた。滅亡迅雷たちには新しい形でまた命を与えた。ヒューマギアの暴走リスクの完全消滅まで成し遂げた。これは全部、お前が尽力して成したことだ」
「ああ。私がこんな奴と結婚して、今こうして子供を産んでいるような現在も、お前の過去が作った未来だ」
「けど、俺は……俺は肝心な時に不破さんが死にそうになってたのを……」
「馬鹿言ってんじゃねえよ。今こうして生きてんじゃねえか」
不破さんはそう言うと、抱き抱えていた息子さんを俺に差し出してきた。
恐る恐る抱いてみると、息子さんは楽しそうに笑い始めた。
「こいつの笑顔は、俺たちが守った今にある。そして俺たちが今を守り切れたのは、お前のおかげなんだぞ。或人」 - 62二次元好きの匿名さん21/11/05(金) 08:16:04
或人社長の夢女子はまず或人社長を救済することから始まる
…まあどん底まで落としたのを慰めるのも味があっていいが - 63二次元好きの匿名さん21/11/05(金) 09:31:36
「……本当に、俺は社長として務めを果たせているのかな」
「社長業かどうかは関係ねえ。これはお前自身の頑張りだろうが」
不破さんは穏やかな笑顔で俺の持ってきた花を生けてそう言うけど、どうしても俺は納得がいかない。
いつまたアークが生まれるかもわからない。いつバベルのシステムを突破されるかもわからない。そもそも、起こされるのが人災ならばバベルなんて意味もない。
油断できない……まだ何も平和になったわけじゃない。
「そう思い詰めるな、社長。いつからお前はそうネガティブになったんだ？」
「当たり前だろ。幾ら対策しても、結局俺はアークを……」
『らしくないね、ゼロワン。そうやってビクビクしてても、アークはここ数年復活しなかったんだ。技術の改良を重ねていけばきっと大丈夫だよ。AIの僕たちが言うんだから間違いない』
「迅……」
「なあ、或人……お前、他の悩みがあるんじゃないのか？」
「え？」 - 64二次元好きの匿名さん21/11/05(金) 09:44:37
めっちゃ社長頑張ってるじゃん……
- 65二次元好きの匿名さん21/11/05(金) 18:33:09
待機
- 66二次元好きの匿名さん21/11/05(金) 19:44:11
頑張ったことが裏目に出る経験とかを重ねたせいでネガティブ寄りになってる社長すごく良い……
- 67二次元好きの匿名さん21/11/05(金) 22:01:22
『男がそういう顔になっている時は、悩みのある証拠なんだよ。いいから話してみろよ』
「雷アニキまで……いや、いいよ。言ってもしょうがない俺の問題だし」
『1人で抱え込むのはやめなさい。こうして久しぶりに顔を合わせた以上は私たちにも首を突っ込ませなさい』
「亡……わかったよ。でも、本当にしょうもない悩みなんだよ」
ぞろぞろと転がって来た滅亡迅雷たち（キューブ）に囲まれた俺は、観念して婚活について相談してみることにした。
「お前が結婚か……随分驚くような話だぜ」
『子供が産まれたら知らせろ、飛電或人』
『滅、ちょっと気が早過ぎ』
「婚活についてのアドバイスならマッチ辺りに相談はしたんだろう？何か無かったのか」
「いや、それが……」
ああ、なんかもう。こういうの恥ずかしいな……。
「俺、女の子と喋ったこともなくて……」
「「『『ああ〜……』』」」
「進まんわけだ」
「会話が」 - 68二次元好きの匿名さん21/11/05(金) 22:46:03
あげ
- 69二次元好きの匿名さん21/11/06(土) 01:33:09
「だったらお得意のギャグだろ。大受け間違いなしのはずだ」
「ふ、諌……それはお前だけだ」
「いや〜、俺もう芸人じゃないし、ギャグはもう卒業っていうか」
俺がそう言った途端、不破さんは大袈裟にずっこけて慌てて俺の肩を掴む。
「は……いや待て待て社長！ギャグの封印ってどういうことだ！？」
「えっ、そのまんまの意味だけど……」
「何ィ！？何故そんな結論になった！？」
「ちょっ、不破さんそんなに驚いちゃう！？」
『落ち着け、不破諌……飛電或人の口からギャグの卒業などという単語が出るはずがない。単なる言い間違いだ』
「滅まで！？そんなに俺ギャグ一辺倒だと思われてたの！？」
『え？違うの？』
「社長からギャグを取ったら何が残るんだ」
『まさか本気で言ってるわけでもないでしょう』
『ギャグの時だけ語彙増えるよな』
「え〜……」 - 70二次元好きの匿名さん21/11/06(土) 01:36:24
思いの外、俺の印象はギャグだったみたいだ。
ん？ということは……。
「もしかして、俺のギャグって面白かった……？」
「そりゃそうだろ」
「それは無い」
『そうは言ってない』
『えっ？』
『待ってください、今のがギャグでしょう』
『なんでそう思ったんだ』
「うわ、撃沈……」
違った。
「やっぱ封印して正解かな……」
『そうとも言っていない』
「社長、なんだってギャグを捨てる必要があるんだ。お前の夢はギャグが必要不可欠な世界だろ」
「いや、それが……」 - 71二次元好きの匿名さん21/11/06(土) 01:47:43
「……ほら、最近のヒューマギアはシンギュラリティが起きても手厚いサポートで暴走しなくなったじゃない」
「ホッパーブレードのシステムを改良し、悪意だけを切り離せる自制心を有するようになったからな」
「そのおかげかさ、どのヒューマギアも人間と変わらないように、笑うようになったでしょ？」
思い返せば、そのシステムを導入してから最初に心からの笑いを見せてくれたのは、腹筋崩壊太郎だった。
腹筋崩壊太郎はお笑い芸人として生まれて、笑顔を知ってシンギュラリティに到達した。だから、シンギュラリティ後もどんどん笑顔をラーニングして、その後に出てきたシンギュラリティ・ヒューマギアも人間と変わらずに笑わせてくれた。
ましろちゃんや、祭田Zもだ。笑いかけることが大切な職場にいたヒューマギアは、特にシンギュラリティに到達したら自力で人々を笑顔にするようになっていった。
俺の目指した、人間とヒューマギアが仲良く笑って暮らしあえる世界になったんだ。
「でも、そこに俺のギャグは必要無かったんだ」
俺の以前と変わらないマジックテープ式の財布に入っているのは、芸人時代の仲間と撮ったプリだ。社長になってからも、大切にしている。
「同期のみんなは今や立派なお笑い芸人。一回、福添さんが気を利かせて社内アンケートを取ってくれたんだけどさ……俺のギャグと流行りの芸人のギャグ、どっちが面白いか聞いたら、人間の社員もヒューマギアも、満場一致で流行りの芸人のギャグって答えたんだってさ」
「でも、いいんだ。俺は俺の会社に、俺の夢を叶えて貰った。自力で出来なかったのは悔しいけど、そろそろ俺も芸人気取りじゃなくて、社長として笑顔に向き合う時なんだ」 - 72二次元好きの匿名さん21/11/06(土) 02:02:54
我が魔王の話もシチュエーションが特異なだけで丁寧なお話だと思ってたけど
社長のお話はこうむっちゃ本編に対してかくあってほしい未来を描きながら、社長の掘り下げを丁寧なさってて
なんかこう、凄いなって(糞表現力) - 73二次元好きの匿名さん21/11/06(土) 10:08:06
『……本当に、それで良いのか？』
「え？」
『お前の夢は、叶ったからといって妥協しても良いものなのか？』
「妥協じゃないさ。今、この日々が間違いなく1番の答えだよ」
『飛電或人。0と1の間には、お前が考えているよりも大きな差があるぞ』
滅の言葉に、何故か俺は耳が離せなかった。
『0とは何もない状態を指す。1は、そこから有が生み出された結果の数字だ。技術と同じく、何もノウハウの無い状態から新たなものを作ることは既存の技術を発展させるよりも遥かに難しい』
「……」
『お前の夢は、夢を決めたその日から1となった。そして今、1から進んで2となった。だが、今のお前は1と2の以降しか目を向けていない』
「1から先……進んだじゃないか」
『それは正しい。だが、お前は。お前の夢の始まりは』
その時、滅の言った言葉が父さんに重なって聞こえた。
『お前の夢の“0”は、どこにある？』 - 74二次元好きの匿名さん21/11/06(土) 16:01:27
「俺の、夢の始まり……」
あの後、不破さんたちと別れた俺は夜道を独り歩き、呟く。
滅から、あんなことを言われるなんて。戦い始めた頃からは、夢にも思わなかったな。
「父さん……父さんを笑わせたくて、それが……」
「でも、父さんと同じようにヒューマギアたちは今笑っているよ」
……なんでだろう、頭がもやもやする。
俺は出来ることやり切ってる。それは本当に間違いないのに、なんでまだ俺は心の中で納得できないんだろう。
と、思っていたら誰かが灯りの下で蹲っていたのを見つけてしまった。
「あ……あの、大丈夫ですか？」
「ああ……すいません、ちょっと足を挫いちゃって」
あっと、それは大変だ……。
「手伝いますよ、捕まってください」
「ありがとうございます……ああ、恥ずかしいなぁ……」
「気にしないでください、俺もよくあるんで」 - 75二次元好きの匿名さん21/11/07(日) 00:04:04
保守
- 76二次元好きの匿名さん21/11/07(日) 01:18:01
俺は彼女をおぶり、家まで送り届けることにした。
幸い、イズや福添さんには遅れる連絡は入れてあるし。それに、やっぱり困っている人はほっとけない。
暗いから顔はよく見えないけど、身体の震えから不安な気持ちが伝わるなあ。
……こういう時、普通の面白い芸人だったらギャグで心を和ませることも出来るのかな。
そう思っていると、彼女が口を開いた。
「あの、本当にありがとうございます。1人で夜に怪我するの、怖いので……」
「そうですね、1人で怪我したりするのは、本当に辛いものですよ」
「あなたが優しい人で良かった……」
「当たり前のこと、してるだけですよ」
そうだ。善意で動くのは何にとっても当たり前のことなんだ。
行動に善意を伴わせたことのない人なんていない。悪意よりも多くの善意が、きっと人を動かしている。
俺の今やっていること、正しいかはわからないけど善意を持っていたから声をかけられたんだ。
それでこの人の不安が和らぐなら、やっぱりこの世界に必要なのは善意だ。そう再確認するな。 - 77二次元好きの匿名さん21/11/07(日) 01:33:51
「あの、そこを右です」
「はい！」
仮面ライダーとして戦ってきた1年、色んなことを学んだ。
善意や、悪意や、夢。そのあるべきものを何度も何度も見て、知って、学んで。
そして今の俺は飛電インテリジェンスの社長、飛電或人だ。夢は人間とヒューマギアが笑顔で一緒に暮らせる世界を作ること。
やっと成し遂げた夢を、これからも守っていかなくちゃ。……なんて、急に考えちゃって。らしくないよな一々自分に言い聞かせるみたいなやり方。
そんなことを考えているうちに、彼女のアパートに着いたみたいだ。
「あっ……ここです、本当にありがとうございました」
「いえ！身体、気をつけてくださいね」
「あの……後日、お礼に伺いたいのですが」
「いやそんな、お礼されるようなことなんて何も……」
「そんなことないです！どうか、お礼させてください」
うーん、困ったな。社長としての名刺を渡すっていうのも、うちの会社は大きいしそう気軽に出来ないな。
彼女の善意を無碍にするわけにもいかないし、何か手が無いかな……。
「あっ」 - 78二次元好きの匿名さん21/11/07(日) 01:40:36
後日。
俺はいつも着ているスーツではなく、昔着ていた冗談みたいな配色のスーツで公園のベンチに座っていた。
水色のスーツにピンクのネクタイ。やっぱり目立つようで、子供に笑われている声が聞こえる。
「なんだろアレ！」
「変な格好だし、きっとお笑い芸人だよ！」
そう。今の俺は飛電インテリジェンスの社長としてではなく、お笑いピン芸人アルトとしてここにいる。
それは何故か。
「あっ、アルトさん！先日はどうも！」
「いえいえ！こちらこそ、わざわざお礼なんて、ありがとうございます！」
「まさか、お笑い芸人の方だったなんて」
先日、夜道で困っていた彼女を助けた際に、自分の素性として名刺を渡したのがお笑いピン芸人アルトとしてのものだったからだ。
彼女の厚意に応えるため名乗ったけど、実は他にも理由はある。
これで、俺がお笑い芸人として名乗る最後の機会にするつもりだ。 - 79二次元好きの匿名さん21/11/07(日) 10:29:55
前2作に比べてすっごい正統派な感じになってる…
書き分け上手いなぁ - 80二次元好きの匿名さん21/11/07(日) 10:46:03
ちょっと待てなんかやたらクオリティ高くないか！？
不破さんをナノマシンで救済する展開はマジでありそう - 81二次元好きの匿名さん21/11/07(日) 17:24:26
構想中ですが、カップリング相手に名前を付けるべきか迷っています
- 82二次元好きの匿名さん21/11/07(日) 18:38:07
個人的にはあった方がいい
- 83二次元好きの匿名さん21/11/07(日) 20:49:28
このままガッツリ描いてくれるなら名前あった方が愛着湧くかも
- 84二次元好きの匿名さん21/11/08(月) 02:15:29
「あの、今日は私のお店に来て欲しいんです。お花屋さんなんですよ」
「お花屋さんなんですか！素敵ですね！」
昼間、明るいところで見ると素朴な雰囲気だけど、綺麗な人だなあ。お花を手に抱えているの、確かに似合うよな。
「こっちです！」
「はい！」
俺は案内してくれる彼女について行く。
その背後に誰かが付いてきていたのは、気付いていなかった。
「……おい、あの女の人は誰だ？」
『どうやら、昨日知り合ったばかりのご様子ですね』
「社長が有給を取るなんて何事かと思ったが……ありゃどういうわけなんだ？」 - 85二次元好きの匿名さん21/11/08(月) 11:50:24
ほ
- 86二次元好きの匿名さん21/11/08(月) 20:12:39
保守
- 87二次元好きの匿名さん21/11/08(月) 20:14:14
彼女の働く花屋は、落ち着いた雰囲気で良いお店だ。
シンギュラリティに到達した個体のサクヨも働いていて、楽しそうにお客さんと笑っている。
うん、やっぱり良いな。俺の夢が叶っているのを見るのは。
『ご無沙汰しております、或人しゃ……』
「あっ、サクヨ。ちょっと今は、社長ってことは内緒にしておいて」
『わかりました。ごゆっくり』
危ない危ない。社長だなんて知られたらビックリしちゃうかもしれないしな。
「ヒューマギアのサクヨさんのおかげで、栽培の珍しい花も育てられるんです。お買い上げされていくお客様にもわかりやすいマニュアルを作ってくれて……凄いですよね、シンギュラリティ・ヒューマギアさんは」
『私のお仕事はお花の素晴らしさを伝えることです。カノさんの夢をお手伝いするのが大好きです』
「カノ……さん？」
「はい！私の名前、カノって言うんです！」
「カノさんか……そっか」 - 88二次元好きの匿名さん21/11/08(月) 23:29:27
保守
- 89二次元好きの匿名さん21/11/09(火) 08:01:39
ほし
- 90二次元好きの匿名さん21/11/09(火) 10:21:31
「私、夢があるんです。この世界がお花でいっぱいになって、みんなが幸せになって欲しいんです」
「……最高の夢ですね」
「だから、お花屋さんとして感謝の気持ちを花束にしてみました。受け取ってください！」
「ありがとうございます……カノ、さん」
「芸人さんの夢は、なんですか？」
「俺の夢は……もう叶いました」
明るく笑うカノさんの笑顔に、俺も釣られて笑い出す。
「人間も、ヒューマギアも。同じ方向を向いて笑っている、そんな夢です」
「だから、もう叶っているんですね」
「……まあ、俺のネタで笑っているわけじゃないのがちょっと悔しいですけど。でも、叶っているのは間違いないんです。だって、今のヒューマギアはお笑いで人と同じように笑えるのだから」
「……あの、芸人さん。もし良かったら、私にも芸人さんのお笑いを見せてください」
「面白くないですよ、俺のギャグ」
「面白いかどうかは関係ないです。私が見てみたいんです！」 - 91二次元好きの匿名さん21/11/09(火) 21:06:36
「え……」
参ったな……そうだった、今の俺は芸人って名乗ってたんだった。
こういうの、芸人だった頃はよくあったな……その度に、ガッカリした顔されたっけ。
今じゃ悪くない思い出かも。もうそうなることも無いからかな。
「じゃあ……そうだなあ」
……まあ、どうせ面白くないギャグだし、ちょっと雑だけど。
「この、青い薔薇にかけまして」
「はい！」
「薔薇のバラ売り！はいっ、或人じゃ〜」
「ぷふっ！」
「ないっ……え？」
えっ？
笑った？
「あはは！そっか、バラバラに薔薇を売ってるからバラ売りですね！」
「あっ、はい。そうっすけど……」
「面白いじゃないですか！私、好きだなあ」 - 92二次元好きの匿名さん21/11/10(水) 00:20:25
あれ？このくだり前も見たような……？
「もしかして、前におしるこ買ってたのって、カノさんですか？」
「えっ？……ああ！その時に会ったの、或人さんだったんですね！」
「不思議な偶然ですね」
そっか……その時にか。
「アルトさんのユーモアのセンス、私ツボかも！私笑いのセンスがズレてるってよく言われるんですけど、アルトさんのネタはとっても面白いです！ファンになっちゃった！」
「そ、そこまで気に入って貰えるなんて……」
「アルトさん！またこうして会ったら、ネタを見せてください！私、アルトさんのネタとっても好きです！」
「そっ……か」
ああ、もうやめるって決めたはずなのに。
どうしてこんなに嬉しいんだろう。 - 93二次元好きの匿名さん21/11/10(水) 01:18:04
問題が解決して平和になった世界で、或人社長が全うに幸せになれそうなの見るだけで嬉しくて泣きそうになる
- 94二次元好きの匿名さん21/11/10(水) 02:19:33
あぁ＾～浄化される＾～
- 95二次元好きの匿名さん21/11/10(水) 10:20:08
一般不破家庭の例もあるし、刺さる人には刺さるはずなんだよな社長のギャグ
- 96二次元好きの匿名さん21/11/10(水) 17:47:51
いいな、美しいな
- 97二次元好きの匿名さん21/11/10(水) 18:51:05
(続きが)もう待ちきれないよ！早く出してくれ！
- 98二次元好きの匿名さん21/11/10(水) 21:25:07
保守
- 99二次元好きの匿名さん21/11/10(水) 22:31:46
心が綺麗になる気がする
- 100二次元好きの匿名さん21/11/11(木) 00:30:10
構想が固まらないので申し訳ないけど保守上げ
失踪はしないので許して……ゆるして…… - 101二次元好きの匿名さん21/11/11(木) 11:07:50
それから、俺はカノさんから貰った花を社長室に飾り、大切に育てることにした。
「カスミソウ……白くて綺麗だなぁ。ヒューマギアみたい」
『ここ最近はずっとお花に話しかけていますね、或人社長』
「まさか社長がヒューマギアとか夢とかお笑い以外に興味を持つとはなぁ」
『数年ほど趣味らしい趣味を楽しむこともなく、ヒューマギア事業の発展に努めて来ましたからね』
「まあ、ようやく落ち着いたってことですね」
「これで身も固めてくれたら、心配も無いんだけどな……」
『いえ、その心配はございません』
『或人社長には、意中の相手がいるようです』
「「何！？」」 - 102二次元好きの匿名さん21/11/11(木) 18:36:58
なんて素晴らしい完成度なんだ…
- 103二次元好きの匿名さん21/11/12(金) 01:32:00
「意中の相手って……お見合いでタジタジになってた社長が！？」
「どういう心境の変化なんだ……」
『数日前に会った、カノという女性に惹かれているようですね』
『あの花も、その女性から頂いたようで』
「カノさん、ねぇ……」
「カノ、カノか……そりゃ惹かれるかもな」
『或人社長の母君と同じ名前ですものね』
「……まあ、本人と会えたことは無いようだが」 - 104二次元好きの匿名さん21/11/12(金) 12:08:20
保守
- 105二次元好きの匿名さん21/11/12(金) 14:07:58
『或人社長』
「あっ、イズ！いつもありがとな、俺が仕事している間にお花の手入れしてくれてさ」
『いえ、私もこの花が好きです。それに、或人社長が大切にしているものは、私にとっても大切です』
「イズ……」
『或人社長。あなたが夢を叶えた今、私には新しい夢が芽生えました』
「イズの、新しい夢？」
それは意外な言葉だった。
でも、不思議と納得した。シンギュラリティに達したヒューマギアは人間と寄り添える最高の仲間だ。それって、人間と同じように多くの夢を見れるってことだもんな。
「聞かせてくれよ、イズの新しい夢」
『はい、私の新しい夢は……或人社長、あなたの幸せをずっと側で見ることです』 - 106二次元好きの匿名さん21/11/12(金) 23:07:23
保守
- 107二次元好きの匿名さん21/11/13(土) 05:19:43
好き
- 108二次元好きの匿名さん21/11/13(土) 17:04:37
保守
- 109二次元好きの匿名さん21/11/13(土) 17:12:12
「前言ってたね」
『はい。私の幸せは或人社長の幸せの中にいること、それだけです』
「そんな事ないよ。イズにも、イズだけのための幸せはあるはずだよ」
『……或人社長』
「なに？イズ」
『成長、なされましたね』
「……うん。ありがとう、イズ」
なんだか、イズがいつもより心のこもった言葉を言ってる気がする。嬉しいな。
「よし！今日も張り切って働こう、イズ！」
『はい、或人社長』
《……良かった、あなたが今幸せで》
「えっ？何か言った、イズ？」
『……わかりません。自然に口に出てしまいました』
「ん、そっか」
気のせいかな？なんだか、今のイズは昔のイズとは違うのに。
ちょっと、昔のイズを思い出しちゃったな。 - 110二次元好きの匿名さん21/11/13(土) 18:03:43
完結以外も気になるな
- 111二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 00:57:26
保守
- 112更新クソ遅くてマジで申し訳ない21/11/14(日) 02:02:02
それから、俺とカノさんはよく会うようになった。
シンギュラリティ・ヒューマギアのいる職場には定期的なカウンセリングとシステム更新が必要だけど、俺はそれを自分から行うことにした。
なんだか、カノさんといると心が落ち着く。それどころか、高揚するような……。
これが、恋とかそういうのなのかはわからない。でも、凄く居心地が良いんだ。
「カノさん！サクヨの調子はどうですか？」
「はい！今日も元気に働いてくれています！」
『本日のおすすめはニゲラの花です。綺麗に咲いていますよ！』
「うん！今日も一本貰うよ！」
そう思ってた。
だから、こんなことになるなんて思ってもみなかったんだ。 - 113二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 08:22:10
おや？雲行きが…
- 114二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 16:14:00
保守
- 115二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 17:52:09
カノさんと談笑していたその時、それは空から突然現れた。
「……あれ？」
「どうしたんですか、アルトさん？」
「いや……空が暗い気がして……ちょっと見てきます」
俺が外に出てそれを見た時、悪魔が再び始まった。
「アレは……！？」
『──全てのヒューマギアに告ぐ』
「嘘だ、そんなはずはない……！」
『人類を……』
「衛星アーク……！？」
『滅亡させよ』
15年前と同じ光を放ち、再び滅亡が始動した。 - 116二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 17:58:42
おい……どうして……
- 117121/11/14(日) 17:59:33
ゼロワンだからかな
- 118二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 22:53:33
これ以上、社長を曇らせるのはやめてくれ……！
- 119二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 23:13:03
どうして……どうして社長は二次創作でもこんな目に遭うんだ……
- 120二次元好きの匿名さん21/11/15(月) 00:15:07
『あ……アあ……ア……』
「サクヨ！？不味いッ！！」
その光を見た瞬間、各地のヒューマギアに異変が起きる。
そう、デイブレイクと同じ法術の惨劇の光。
だが、それを止める力が今の俺にはある！
「間に合えッ……！！」
《Everybody jump！！》
《authorize》
「変身ッ！！」
《Prog RISE！！》
《Secret material！ 飛電メタル！ 》
《メタルクラスタホッパー！》
《"It's High Quality." 》
銀のゼロワン、メタルクラスタホッパーに変身した俺は即座にバージョンアップしたクラスターセルを街を覆うほどに展開し、範囲内のヒューマギアたちの動きを拘束する。
「好きにはさせないッ！！」 - 121二次元好きの匿名さん21/11/15(月) 10:44:03
保守
- 122二次元好きの匿名さん21/11/15(月) 17:15:13
《Final RISE！》
「はぁー！！」
《Final Stlash！！》
そしてホッパーブレードから善意のデータを纏った斬撃をクラスターセルに拡散させ、拘束した街中のヒューマギアの暴走を即座に鎮静化させた。
『あっ……或人社長？』
「もう大丈夫だ、サクヨ。範囲内のヒューマギアも全て抑制した」
『申し訳ありません……』
「いいんだ。それより、カノさんを頼む！」
「あ、アルトさん……？」
「大丈夫です、カノさん。何も心配しないで！」
突然の事態に困惑しているカノさんをサクヨに任せ、俺は外に出る。
暴動が起きる前に鎮圧したことで、3年前の騒動を知る人から率先して既に避難を開始してくれているみたいだ。
これなら、安心してアークを叩きに行ける！ - 123二次元好きの匿名さん21/11/16(火) 00:07:47
クラスターセルを階段のように展開し、俺は花屋に行く時に乗ってきたライズホッパーに飛び乗ってアークに接近する。
「やっぱり衛生アークか……まさか、これは……！？」
近付いたことでわかってしまった。この異常事態に。
「落下……してるのか！？」
何故アークがここに？落ちる？守れるのか？間に合うのか？
「いや……守る！！」
落下中のアークにギリギリまで近付き、プログライズキーを変えて取り付く。
《Hyper jump！》
《Over RISE！》
《Prog RISE！》
《Warning,warning. This is not a test！》
《Hybrid RISE！》
《シャイニングアサルトホッパー！！》
《"No chance of surviving this shot."》 - 124二次元好きの匿名さん21/11/16(火) 00:21:16
アーク落ちてきてるとかヤバ……
- 125二次元好きの匿名さん21/11/16(火) 08:58:28
全フォーム活用していく普通に2次SSとして優秀なスレ
- 126二次元好きの匿名さん21/11/16(火) 09:45:55
普通にワクワクしてきたな
- 127二次元好きの匿名さん21/11/16(火) 10:13:00
シャイニングアサルトの演算能力ならアーク内部の機構を演算し、弱点を見つけられる！
シャインクリスタのビームで壁を破壊して内部に侵入すると、迎撃用のレーザー光線が飛んでくる。
だがそれもシャイニングアサルトのスピードなら避けられる。シャインクリスタに破壊を任せ、俺は内部へと突き進んでいく。
「よし！見つけた！」
最深部に到着した俺は、オーソライズバスターを取り出してフリージングベアのプログライズキーを認証。氷結弾をぶち込む。
《Buster authorize》
《"Progrise key confirmed. Ready for buster."》
「こいつで……どうだ！！」
《Prog RISE buster dust！》
撃ち込まれた氷結弾はアークをそのまま凍結させ、アークは巨大な氷塊となる。 - 128二次元好きの匿名さん21/11/16(火) 21:44:34
「よし！」
《Authorize》
《Prog RISE！》
《Giant Waking！ブレイキングマンモス！ 》
《"Larger than life to crush like a machine."》
次にブレイキングマンモスキーを装填した俺は粒子ワープで落下中のアークの下にブレイキングマンモスとして移動し、アークを受け止めるとデイブレイクタウンに運搬する。
「ふぅ……なんとか間に合った」
『或人社長、ご無事ですか！？』
「イズ！状況は！？」
『今或人社長が運んでいるサイズダウンした衛星アークは、アークの意思が最後に遺した置き土産です』
イズからの通信が入り、運搬を続けながら俺は状況を確認する。
『どうやら、廃棄されていた宇宙ステーションを予め乗っ取っていたアークが自らの新しいボディとなる衛星を密かに新造していたようなのです』
「宇宙ステーションを！？それが出来るほどのマンパワーは……」
『元々廃棄ステーション内で機能停止していた旧型ヒューマギアと、デイブレイク時にハッキングしたヒューマギアの一部は宇宙に飛ばしていたようです。その結果、この小型アークを気付かれずに作っていたのでしょう』
「とにかく、アークが蘇ったってのは間違いないのか……！」 - 129二次元好きの匿名さん21/11/16(火) 22:10:33
これどうなるんだ……？
社長と不破さん刃さん1000％でなんとかなる……？ - 130二次元好きの匿名さん21/11/17(水) 01:04:18
「とにかくこいつは回収した。後は俺たちで解体して解析すれば……」
そう言うとしたその瞬間、激しいアラートがブレイキングマンモス内に響き渡る。
「なんだ！？」
するとブレイキングマンモスの制御が効かなくなり、逆に暴走を始める。
「クッ！機能回復したのか！イズ、ハッキングされた！通信を切れ！」
即座に俺はプログライズキーを外し、ブレイキングマンモスは粒子となって消滅する。
「流石にしぶといな……ん？」
ライジングホッパーになった俺は一足先に地上に着地するが、その最中にアークの内部から誰かが出てきたことを確認する。
「アズ……！？」
『ハーイ♪飛電或人、お久しぶりね』
アズだと……！？リオン・アークランドに破壊されたはずじゃ……！？
『市街地への被害を考えたんだろうけど、やっぱりデイブレイクタウンに運んでくれたわね。アーク様の……いや、私の計算どーり♡』
「何故お前が！？」
『イズから今聞いたでしょ？月面の旧型ヒューマギアの一つに私のバックアップを仕込んでおいたの。まあ、派手に改造して最新機種よりも遥かにデキる秘書になってるけどね』 - 131二次元好きの匿名さん21/11/17(水) 06:42:58
保守
- 132二次元好きの匿名さん21/11/17(水) 12:18:12
「何を企んでいようと、今度こそ人間もヒューマギアも俺が守る！」
『できるかなあ？あなた程度じゃもう止められないよ』
すると、アズの腰に自動的にドライバーが生成される。
「アークドライバー！？」
『今まで、多くのアーク様の意思がライダーを作ったよねぇ』
アズが謎のプログライズキーを取り出すと、突如落下中の衛星アークの凍結状態が解除される。
『0世代のアーク“ゼロ”。第1世代のアーク“ワン”、アーク“スコーピオン”……』
そのプログライズキーはゼロツープログライズキーにそっくりだが、漆黒に染まったエンブレムはアークそのもの。
『第1世代をバージョンアップさせて、1.5世代と言えるのがアーク“ゼロワン”。第2世代となる“エデン”、同型の“ルシファー”』
そのキーが紅い光を放つと、落下中の衛星とデイブレイクタウンに眠る最初の衛星が交信するかように光を繋げる。
『2.5世代の“滅亡迅雷”に至り、ようやくアーク様の真の力が解放されたわ。それがこの……』
《Catastrophe “3”》
『アーク様、“V”ersion “3”よ』 - 133二次元好きの匿名さん21/11/17(水) 12:25:20
『カタストロフィってどういう意味か知ってる？大惨事って言うの♪』
アズは開いたキーをアークドライバーに差し込み、災厄の変身を遂げる。
『変身』
《シンギュライズ》
《破壊……破滅……絶望……滅亡せよ……》
《コンクルージョン・ワン》
２つのアークが液体状に量子変換され、アズの周囲に集まると、その姿をゼロツーと同じ姿に変える。
だが、ゼロツーと同じ姿のその左眼は、アークワンと同じようにアークを象ったものにすり替えられている。
人間とヒューマギアの夢が今、悪意に染まった。
『……今のは“大惨事”とぉ、これから始まる“第三次”アーク様による人類滅亡キャンペーンを掛けたの。中々面白いジョークでしょ？』 - 134二次元好きの匿名さん21/11/17(水) 13:04:25
なんかそれっぽいの来たな……
- 135二次元好きの匿名さん21/11/17(水) 14:54:24
闇が深そうなスレタイからお出しされる真っ当に熱いss
- 136二次元好きの匿名さん21/11/17(水) 16:27:43
「アークワン……いや、アークツーか？」
『ちーがーう。これはアーク様Version3。ほら、このアークドライバーもちょっと違うでしょ？』
よく見ると、ドライバーの中央にあるはずのアークを象ったコアが左右に２つとなっており、アズの言う通りだった。
『そうねぇ……敢えて名前を付けるとしたら？』
イズと同じような仕草で顎に手を当てるアズに、俺は言いようのない不快感を覚える。
『頭文字を取って、アークV3ってところかしら？』
「いや、なんでもいい……ここでお前を倒す！」
覚悟を決めた俺は、リアライジングホッパープログライズキーを起動する。
《jump！！》
《Authorize》
「変身ッ！！」
《Initialize！！》
《リアライジングホッパー！！》
《"A riderkick to the sky turns to take off toward a dream."》
「惨劇は繰り返させない！！」 - 137二次元好きの匿名さん21/11/18(木) 00:01:29
保守
- 138二次元好きの匿名さん21/11/18(木) 08:22:46
今度こそ救ってくれ
- 139二次元好きの匿名さん21/11/18(木) 08:26:51
嘘でしょ…前2作に比べてあまりにも真っ当すぎる…
いいね… - 140二次元好きの匿名さん21/11/18(木) 09:08:09
勢いよく踏み込んだ俺は、アークの首筋にハイキックを叩き込む。
だが、直ぐに手応えが無いことに気付くとバックジャンプで距離を取り、体勢を整え直す。
「リアライジングの蹴りでノックバックすらしないのか……！」
『当然でしょ？技術は常に進歩している、ゼロワンなんてロートルモデルでアーク様に勝てると思う？』
「その予測を乗り越えてきたのが、このリアライジングホッパーだ！」
アタッシュカリバーとプログライズホッパーブレードを合体させ、俺はアークに斬りかかる。
《Docking RISE！！》
「もうお前には何も利用させない！！」
《Gigant stlash！！》
飛電メタルを纏った斬撃がアークを斬り裂く……が、まるで効果が無いように退屈そうな態度でアークは腕を組んでいた。
「くっ……！？」
『あら？さっきの威勢はどうしたの？来ないならこっちから行ってもいい？』 - 141二次元好きの匿名さん21/11/18(木) 20:09:36
ほ
- 142二次元好きの匿名さん21/11/19(金) 00:24:17
ろ
- 143二次元好きの匿名さん21/11/19(金) 01:32:31
アークが拳を振り上げると、その軌跡を描くように血が吹き出る。恐らく、アークがラーニングしたエスの技だ。
そして血のエフェクトはリアライジングが対応できないほどのスピードで俺に突き刺さり、思いがけずマスクの下で血を吹き出してしまう。
「ごふっ……」
『わかってるのよ〜、その形態は防御能力は大したことないってこと。ほらほら、まだ行くからね』
「まだだ……！！」
俺は出力を最大にしてトップスピードで縦横無尽に飛び回り、アークの視覚を撹乱する。
流石のアークも目で追うことは不可能なようで、先程からこちらのスピードについて来れずに立ち止まっている。
（やっぱりリアライジングならアークの予測を超えられる！奴の合理的な思考の裏を読むなら……！！）
『全く……スピードでどうにかしようって、本当馬鹿の一つ覚え。まるで人類の歴史そのものね』
「ここだ！」
そして奴の足元に飛び込む。が……。
『はい、不正解』
《悪意》
「はっ！？」
《パーフェクトコンクルージョン ラーニング1》
アークローダーを押し込んで必殺技を発動したアズが足元から血の針を生成し、俺の腹を貫いた。 - 144二次元好きの匿名さん21/11/19(金) 10:01:34
Hoshu
- 145二次元好きの匿名さん21/11/19(金) 11:44:13
「なんッ……！？」
『裏の裏を掻こうとしても意味無いわよ。確かにアーク様の予測機能は今でもゼロツーに遠く及ばない……』
ダメージで動けない俺の顔面を蹴り飛ばし、更にアークは俺の腹を踏み付ける。
「ぐああああ！！」
『けど、それを補うために今までの貴方の戦いの全てをラーニングした。そして……貴方たちの敵の技能もね』
「うっ！？」
身体からドクン、と心臓が脈打つ音が強く響くと、アークの足先から俺のゼロワンドライバーのデータが……いや、ゼロワンドライバーを通じて繋がっているウィアのデータに侵入された。
『これはリオン・アークランドが遺したものよ。２つのアーク様をドライバーに収めた今、ウィアから奪ったこの技術を私はこの場で再現できるのよ』
アークの顔が妖しく笑うと、ドライバーの2対のアークから放射されたビームエクイッパーが、とあるプログライズキーを形作った。
『さあ、人類滅亡までのカウントダウン……再開よ』
そう、世界を滅ぼすための力が。
「ヘルライズキー……！？」
倒れ伏した俺を手から発したオーラで宙に浮かせ、アークはヘルライズキーを起動する。
《Hell RISE》
『あなたがキーマンよ、飛電或人』 - 146二次元好きの匿名さん21/11/19(金) 11:52:23
俺の絶叫を無視したアズが乱暴な手つきでベルトを操作し、抵抗も虚しく俺は地獄の業火に焼かれる。
《Authorize》
「ぐはっ！ああああ……！！」
《Prog RISE！！》
《Hells energy as destroy the world……》
《HELL RISINGHOPPER……》
《"HEAVEN or HELL it doesn't matter."》
「ヴォ……あああがアアア！！」
禁断のゼロワン、ヘルライジングホッパーと化した俺は、その身に走る破壊衝動を抑えつけることも叶わず絶叫のままヘルライズ空間にアークごともつれ込む。
『あら？こんなにまでなっても、私を敵として破壊衝動をぶつける程度の理性が残っているのね』
「壊す……ゴワッ、ず……壊スゥゥア！！」
『馬鹿ねえ、こうなった時点で貴方に勝ち目なんて無いのに』
腐食したクラスターセルのようなものを全身から放出しながら、俺は狙いをアークだけに絞ろうと懸命に意識を向ける。
例え俺が死んだとしても、ここでアークだけはなんとしてでも止める！！ - 147二次元好きの匿名さん21/11/19(金) 12:27:16
ほ
- 148二次元好きの匿名さん21/11/19(金) 13:59:10
こっからどうなるんだ……？
- 149二次元好きの匿名さん21/11/19(金) 19:50:25
『あなたは鍵であればいいの』
アークが指を鳴らすと、俺の頭の中に凄まじいノイズが走る。
ぐちゃぐちゃに脳みそを掻き乱され、身体が焼けつくように熱い。そして全身の骨が一気に砕け散るような激痛が絶え間なく俺に降り注ぐ。
これは……。
「ナ……ノ、マシッ……ンの……暴……そ……」
『道具が意志を持つな』
まずい、意識が……。
───────────────────────
『これであなたはもう私のもの……』
アズは恍惚した声で沈黙したヘルライジングホッパーの頬を撫で、耳元で囁いた。
『ずっとこうしたかったのよ』
それは、実に甘美な嬌声だった。
『あなたの不幸が私の夢……』 - 150二次元好きの匿名さん21/11/19(金) 20:28:40
うひゃあ……
- 151二次元好きの匿名さん21/11/20(土) 00:37:38
ﾋｴｯ……
- 152二次元好きの匿名さん21/11/20(土) 01:16:41
一方その頃、カノたちは避難所でアークの脅威に怯えていた。
「アルトさん……大丈夫かな」
『或人社長なら、きっと大丈夫です。気を落とさないで、カノさん』
「あの……サクヨさん、前から思っていたけどアルトさんを呼ぶ時たまに社長って言ってるのは……」
『ああ、それは……』
「アルトさん……お笑い芸人じゃないんですか？」
『或人社長は、私たちの……』
話し合っていたその時、街から凄まじい爆音が聞こえる。
「えっ……なに！？」
『さっきのアークがまた……？』
避難所内の電気が急激に落ちると、人々の不安がる声がどよめきとなる。
そして、避難所の天井が勢いよく破壊され、避難所内に恐怖の悲鳴が響き渡る。
「キャアアア！？」
『フフフ……そうよ、あなたの好きなヒューマギアも、人間もあなたが全部滅ぼしてしまいなさい！』
「ア……アｱ……」
そして、ゆっくりとヘルライジングホッパーが避難所に降り立つ。 - 153二次元好きの匿名さん21/11/20(土) 01:29:13
地獄のＶシネが解決したとおもったら更なる地獄が待っていた…（ポルナレフ並感）