「トレーナーさん、釣りに行きましょう！」

1二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 16:30:57

前日の雨から一転、絶好の釣り日和。流れる雲は緩やかで、目の前の海は水平線の彼方まで透き通って綺麗だった。
今は秋が少し深まってきた頃。見頃を過ぎた紅葉は徐々にその姿を消し、変わりにこれから訪れる冬が、今か今かと寒風を吹かせていた。
次に出走する年末のレースに向けて、日々の調整も順調に進むなか、脚の調子や今日の気分と相談した結果、今日は釣りデーということになった。
秋には似合わないかな、と思いながら麦わら帽子を被り、竹の釣竿を担いでいざ出発、という段で、トレーナーさんに見つかった。そして、まあどうせ今日は休みだって報告するつもりだったし、せっかくだから、とダメもとで誘ってみたらあっさりOK。どうやらトレーナーさんも今日は休みにするつもりだったらしい。スカイが言うなら行こう、なんて笑って、結局こうして並んで海を眺めている。

しばらくアウトドアチェアに身を預けているうちに風も止んできた。
さざ波が耳を癒して、太陽が優しく肌を暖める。目を閉じればきっと直ぐに眠りに落ちてしまうけど、それはなんとなく勿体ない気がして、気づかれないように、こっそり隣を見つめてみた。

そういえば、この人と釣りに出かけるのは何度目だろうか。

いつものように釣りに出かけて、いつものようにのんびりと過ごす。いつも通りの日。
でも、いつのまにか隣にはトレーナーさんがいて、一緒に釣糸を垂らしたり、タモ入れをしてくれたり。
今は黙って海と向かってるけれど、リラックス出来ているのかな。最近はずっと忙しそうで、少し疲れ気味だったから。

2二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 16:31:24

学生生活、決して短くはない時間を共に過ごした。一人じゃどうしようもないことも、トレーナーさんと一緒なら乗り越えられた。前までは、何か壁ができる度にこうして釣りに出かけて、ただぼーっと竿を手繰りながらライバルたちに対抗する作戦を考えていた。
でも今は違う。

頼れる人がいる。

隣にいてくれる。

「……トレーナーさん、─────」

何気ない日常の、何気ない一幕。でも、こうして付き合ってくれている間はこの人の人生を少しだけ分けてもらっている。そして、私の人生も。
また釣りに行こう。それは明日かもしれないし、来週かもしれないし、もしかしたらもっと後になるかもしれないけど。

「おっ、掛かったよ！トレーナーさん！」

竿が引かれる。
こっちを向いて聞き返すトレーナーさんには悪いけど、セイちゃんは今、手が離せないので、後でお願いしまーす。

「トレーナーさん！タモ入れ早く！」

慌てて網を構えるトレーナーさんを尻目に、魚を上手く手繰り寄せる。

秋空に青雲が流れ、海は水平線まで輝いて綺麗だ。波は穏やか、風も止んだ。
今日は絶好の釣り日和。いつものように釣りに出かけて、隣にはあなたがいる。

そうしてセイちゃんは、

───これからも、そうであれば良いなぁ、と、思ったのでした。

3二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 16:34:22

いい…ありがとう…

4二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 16:34:27

この情景はまさにセイウンスカイ……いいもの読ませていただきました

5二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 16:35:32

ニヤニヤしてしまった
ありがとう…

6二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 16:36:43

解釈一致感がすごい

7二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 16:37:24

お読みいただきありがとうございます

過去作です

──夕立ちだ。｜あにまん掲示板今日はちょうど今年の紅葉が見頃を迎えて、秋めく木々に茜の空が似合っていたのに。そんな絶景を見ながらターフで一人自主練をしていたら、夕日が雲間に隠れて、空がふっと暗くなって。さあっと雨が降り出したかと思…bbs.animanch.com

スカイ「えーっ、トレーナーさんが入院！？」｜あにまん掲示板久しぶりにちょっとサボらずにトレーニングしようと思ったらこれだ。どうやら私のトレーナーさんは今朝階段で滑って腰をやってしまったらしく、念の為今日は検査入院するとトレーナーさんの同期の方が教えてくれた。…bbs.animanch.com