【オリキャラ注意】「ドジって前世を思い出しちまったぜ」外伝その5

  • 1122/12/28(水) 23:44:09

    ナギナギの実を食べてすっ転んだら前世の記憶を思い出しちゃったコラさんの話、の続編。


    SS+ダイス+安価スレになると思います。ただしダイスと安価は要所要所。

    思いついちゃったボスがボスなのでボリュームが広がっていくかもしれない。

    書き溜めゼロなのでライブ感で行くのをご了承ください。

    転載は禁止とさせていただきます。



    前スレ

    【オリキャラ注意】「ドジって前世を思い出しちまったぜ」外伝その4|あにまん掲示板ナギナギの実を食べてすっ転んだら前世の記憶を思い出しちゃったコラさんの話、の続編。SS+ダイス+安価スレになると思います。ただしダイスと安価は要所要所。思いついちゃったボスがボスなのでボリュームが広が…bbs.animanch.com

    最初のスレ

    【オリキャラ注意】「ドジって前世を思い出しちまったぜ」外伝|あにまん掲示板前スレhttps://bbs.animanch.com/board/1079485/の続編です。ナギナギの実を食べてすっ転んだら前世の記憶を思い出しちゃったコラさんの話。SS+ダイス+安価スレになると…bbs.animanch.com

    前作

    「ドジって前世を思い出しちまったぜ」|あにまん掲示板ひっくり返って呆然と青空を仰ぎながら、おれは手に持った一口分齧られた跡があるその実をまじまじと見つめていた。一気に頭の中に起こった記憶の濁流はひどい頭痛と吐き気と倦怠感と悪寒と等々重たい風邪症状をタイ…bbs.animanch.com
  • 2122/12/28(水) 23:45:02

    【このスレだけのオリジナル設定・オリジナルキャラ】

    ・コラさん
    一応色々あって今世の名前をロシーと自称しているが、ローもとい他の船員からはコラさん呼びされています。
    身長166㎝の伸び盛り。将来的には288㎝(ダイスで決定)
    治安悪めのスラムみたいなとこ生まれだけど特別な血統とか病気とかはないまま育った(安価で決定)

    ・クオル
    オリキャラ
    安価で悪い医者と出たせいで徹底的にローと対比を取られつつ、神絵師のネコチャンイラストによって野良猫要素が継ぎ足された属性過多男。悪魔の実の能力者。
    不治の病の治療法を見つけるために勉強中の医者。
    現在船に同乗中。
    ホーキンスと馬が合っているかもしれない。

  • 3二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 23:45:45

    >>1

    スレ立て感謝です!

  • 4122/12/28(水) 23:46:31

    このスレからの新オリキャラ

    ・マリー
    色付き眼鏡、腕には入れ墨、屋台で威勢のいい掛け声をするファンキーなシスター。
    面倒見のいい姐さんタイプ。
    過去神様にあったことがあるらしい……?
    現在失踪中。

    ・クリストファー
    ギャンブル好きの生臭神父。人当たりはいいけれど結構適当でろくでなし。
    マリーのお父さん。
    右腕は義手。

    ・レミ
    本名レミリオ。優しそうな丸眼鏡のお兄さん。
    頬から首を渡って大きな傷がある。死んだ兄がいるらしい。
    過去失踪したことがあるらしい……?
    現在何かに乗っ取られている可能性有。

    ・ラミ
    レミのお兄さん。すでに故人。元神父。
    レミ曰く、『海賊に殺された』。
    コクレア様を蘇らせようとしていた?

  • 5122/12/28(水) 23:46:51

    ・このスレの時系列はごちゃごちゃです。劇場版時系列と思ってください。
    ・ワノ国後っぽい雰囲気が見られたりするかも知れませんが、時系列はパラレル。
    ・ローはK・ROOM、R・ROOM使えるローなのか現状定めていませんが、『凪(サイレント)』は使う事はないと思います。

  • 6二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 00:01:46

    前スレのあらすじ
    ・ペンギンの足跡を辿る→古本屋あたりが怪しい
    ・レミさんを怖がらせない為にコラさん一人で交渉
    ・ラミさんやコクレア様関連のことを詳しく聞くが少し様子がおかしい
    ・質問したら急変してやばいやつが出てきた
    ・逃げた先でペンギンの荷物発見
    ・シャチが乱入、レミさんの姿をしている何かは消えた
    ・とりあえず手がかりを探して情報ゲット
    ・船に戻って無力に打ちひしがれるコラさん、ベポに励ましてもらう
    ・朝に教会が荒らされてマリーさんがいないという報告がクリスさんによってもたらされる

  • 7二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 00:06:48

    立て乙です!もう5スレ目に入るのか…考察もたのしいしキャラの関わり見てるだけでもほんと楽しいな……

  • 8122/12/29(木) 00:17:26

    >>6

    いつもありがとうございます、あらすじを書いてくださりとても助かってます!

    わかりやすい……。

  • 9二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 00:18:07

    ホーキンスとクオルの独特の空気感大好き
    クリスさんのダメっぷりと微かに感じる過去の闇に足を取られかけているのでマリーちゃんともどもご加護あれ…ってなってる

  • 10二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 00:24:58

    人が二人も行方不明で大変不穏なのにワクワクしてる…

  • 11122/12/29(木) 00:44:08

    ひとまず教会まで向かうことになったおれたちだけれども、急ぎ足で向かう道中、クリスに気になることをいくつか問いかけることにした。
    普段の飄々とした雰囲気は鳴りを潜め、とにかく焦っている様子のクリスがちゃんと答えられるかはわからないけれど……まあ、聞くに越したことはない。

    「クリス、台所が荒らされてたんだよな」
    「……ええ、そうです。ひどい有様でした」
    「もしかして、そこさ。なんか野菜とか以外の植物とか……なんでもいいんだ。枯れ葉でも木の枝でも。落ちてなかったか?」
    「……?」

    質問の意図がつかめない、というような沈黙が落ちる。
    クリスはちらりとおれを横目で見てから、静かに首を振った。

    「……わかりません。気が動転していて、あまり他のことに気がとられることもなく」
    「わかった。ごめんな、それじゃついたら確認するよ」

    やっぱり、冷静ではいられなかったのかな。
    ……まあ無理もない。大事な娘さんが攫われたかもしれないんだ。あんなに転げながら船の前に突っ込んできたクリスさんのことを思うと、その心境は計り知れない。
    実は先ほどちらっと街中を走り回った、と聞いた。それから最後にこの船にまで来たのだと。
    どんな気持ちで、探し回っていたのだろうか。……想像するだけで苦しいな。

    「……なあ、クリス。今日レミを見たか?」

    その時、耐えきれない、といった調子でシャチがクリスに問いかけた。
    レミ?と不思議そうにしてから、見ていない、と答える。
    それに対して難しそうに押し黙るシャチ。……うん、言いづらいよなあ。だってこの二人こそ元から親交あるんだし。

  • 12122/12/29(木) 01:02:52

    「そのレミとやらがこの島の何かしらの怪異に体を乗っ取られて豹変したようだ。もしかしたらお前の娘もレミに攫われたかもしれない。思い当たることはないか」
    「………、…………?!?!?!?!??!」
    「ホーちゃんさあ!!!!!!」

    デリカシー!!!!と叫びたいけれど、でも言いづらかったこと言ってくれてありがとうな、という気持ちもあって微妙!
    ほらクリスのやつ滅茶苦茶混乱した顔してんじゃねェか!! 心なしか目がぐるぐるしてんぞ情報量!!

    「ええと、あの……?」
    「あー、うー……そう、そうなんだよ。ホーキンスの言っていたことは本当。昨日レミがおかしくなって、おれも襲われた」
    「言っている意味が……」

    見るからに困惑している。うん、わかる。急にそんな爆弾を並べられても、理解するよりもまず混乱が先行するよな。
    それが以前から親交のあったレミだ。それがいきなり襲い掛かったとか、豹変したとか、マリーさんを攫ったとか、どう考えてもクリスの想像を超える事情が多すぎる。

    仕方がないから、おれは手早く昨夜のことを最初から説明した。話せば話すほど、どんどんクリスの困惑の色が強くなっていっているが……、それは、仕方ないと飲み込んでほしい。
    信じがたい事実の羅列だったろうが、少なくとも嘘ではない、と信じてくれたようだ。

    「……レミは、決して悪いことをするような人では、ありません。だから乗っ取られた、という言葉を信じるとして……いったい、何に乗っ取られたんですか」
    「それはわからねェけど……」
    「お前こそ、心当たりはないのか」

    何を考えているかわからないホーキンスの目がクリスを射抜く。
    クリスは、教会まで早歩きするのは変わらず、そのまま考え込むが、すいすいと前方にある障害物を避けていく。おれだったら絶対一度はこけてたな。

  • 13122/12/29(木) 01:36:15

    (クリスのレミへの呼び方はレミくんでした。次の更新から直します!)

  • 14122/12/29(木) 01:36:27

    「心当たりはない、ですけど……」

    そういいつつ歯切れが悪い。いったいどうしたんだ、と思いつつ続きを促すと、意を決したように口を開く。

    「レミくんの傷、あるじゃないですか。見ましたよね」
    「ああ……うん、まあ、でっかい傷があるよな」
    「あれ、自分でつけたんです」
    「じ、自分で……?」

    自分でって……あれめちゃくちゃでかい傷だぞ。見えてる範囲は顔から首にかけてだけど、恐らくもっと下まで続いている、はず。
    自傷行為にしたら常軌を逸しているし、そうじゃなかったらなんのために?
    まさか……それも操られて?

    「どうしてつけたんだ?」
    「わかりません。治療されたあとすっかりその辺の記憶が吹っ飛んでしまったようで……。残ったのは、あの大きな傷だけでした」
    「………」
    「私が知るレミくんは、そんなことをするような子ではありません。記憶もなくしたこともあって、結局何があったのか聞きだせず、このままずるずると来ましたが……」

    それも、乗っ取った何かからの影響があるなら……。そう独り言のように呟くクリスに、さらにホーキンスからの質問が飛ぶ。

    「それは、いつの話だ?」
    「……およそ10…いや、9年前。ラミくんが死んで、一年後ぐらいのこと、ですね」

  • 15二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 01:38:15

    ん?儀式の時につけられた傷とかじゃないのか

  • 16122/12/29(木) 02:02:10

    ――なんか、いろいろ秘密がありそうだ。
    そんなことを考えている間に、教会に辿り着いた。
    教会の扉は開けっ放しで、というか金具が外れていて、どれだけの勢いで開けたんだ……とクリスの心境が伺える。
    そのまま厨房の方へと足を向ければ――なるほど、確かに荒らされている。

    散乱した料理道具や食材。割られた窓。クリスが言っていた通りだ。
    そして料理道具や食材と同じように散らばる、葉っぱや木の枝。
    ……間違いない、レミ、を乗っ取ったやつの仕業だ。

    「……マリー」

    苦しそうに、悔しそうにクリスが血を吐くようにマリーさんの名前を呼ぶ。
    ちゃらんぽらんな人のようだけど、それでも娘のことは心底大事にしていたもんな。こんな光景を見せつけられたら……うん、おれがローの帽子を見たときと同じ気持ちを、今抱いているだろう。
    この場が荒らされている以外に特に目立つ手がかりはない。だが、ベポが

    「……甘い臭いが強いよ。キャプテンの帽子と一緒だ」

    と言ってきたので。さらにやつの仕業だという確証ばかりが強くなった。

  • 17122/12/29(木) 02:20:15

    ここまで来てそういえばクリスからコラさんへの名前の呼び方考えてなかったことに気付いた。

    ハートの面子が読んでるしコラさんって同じように呼ぶのか、コラくんとなるのか、それとも既に名前を伝えていてロシーくんになるのか……


    なので安価で決めさせてほしい……

    >>18

  • 18二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 02:21:40

    じゃあロシーくんでお願いします

  • 19二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 02:21:52

    マリーさん過去にコクレア様と会った関係とかもありそうだけど18歳の若い女性っていうのが普通に生贄として適性高そうなのも心配すぎる

  • 20122/12/29(木) 02:25:33

    呼び方ロシーくんに決定しました 助かる……

  • 21122/12/29(木) 02:59:03

    ……そうだ、手紙。

    「あの、クリス。これ……」

    レミの家にあったこと、鍵付きの箱にあったこと、それらを伝えて、その手紙とフィルムを見せた。
    クリスは何がなんだかわからなそうな顔をしたままその手紙を受け取って、読み始める。
    そして読み終わっても、何がなんだかわからなそうな顔をして――けれど、思い出したようにハッとした顔をする。

    「そうだ、鍵……受け取っていました。ラミから。もしもこの島でおかしなことが起こり始めたらこれを使うように、これを使って自分の家にある箱を空けるように」

    そう頼まれていました。そう言いながら、なぜかクリスは呆然とした顔をする。

    「……なんで、忘れかけていたんだろう。ラミくんから、とても大事なことなんだって強く言われて……だから、決して忘れてはいけないのだと、胸に刻んでいたのに」

    クリスが自分の首元を探れば、そこから紐が引き出される。そこには一つの鍵がペンダントのように括り付けられていた。
    ――確かに、そんな風に身に着けているのに、なんで忘れかけていたんだ?
    確かにそれは……おかしく思える。

    「……おかしい、おかしいと。常におかしいことが起こるのならば、そこには理由がある」

    ホーキンスが、タロットカードを一枚眺めている。
    おれが下から見上げれば、そこには前と同じように月の絵柄が描かれている。
    何故か、睨むように眉間に皺を寄せながら、ホーキンスはそれを眺めていた。

    「忘れていたのではなく、忘れさせられようとしていたのなら、辻褄が合う」
    「え……?」
    「そのような力があるんじゃないか。今だ正体不明である、その敵には」

  • 22122/12/29(木) 03:19:13

    ……まさかそんなことが出来るのか?
    記憶に直接干渉を? でもいったいどんな風に。

    でも、思えば確かに、コクレア様について街の人があまりに知らないのも不自然、だよな。
    昔からその宗教があるとするならば、この島特有の神様のこと、もうちょっと知っててもおかしくないだろう。この島に住んでるものならば、教会だってあるのならば。
    ん~~~、なんかこう、胸に突っかかった感じがある! 気持ち悪い!

    「……まあ、わからねェことはともかく、まずはわかることからだ! クリス、ラミからの手紙についてわかることはないのか?」
    「わかること……このフィルムについても、わかることはありませんし、というかそもそも返してあげてほしいって、これもともとマリーのものなんですか? それにコクレア様を蘇らせてくれって……」

    駄目だ、わからない、と頭を抱える。
    ……そう、だよな。手紙には確かに、フィルムをマリーさんに返してあげてほしい、以外に明確な行動の指示はなかった。そりゃ何もわからない、もしくは忘れさせられている状態で動けって言われても、戸惑うだけだ。
    と、思っていたけれど。クリスはばちん!と音を立てて、両頬を叩いた。
    目を瞬かせるおれを横目に、深く、深く――息を吐く。

    そしてそのまま厨房を出ていく。
    おい、どこ行くんだよ!

  • 23122/12/29(木) 03:45:32

    「――――クリス?」
    「結局のところ、森に行けばマリーがいるんでしょう」

    低く冷たい声。それは、そうかもしれないけれど。
    いや待て、話の流れから行くと……クリスもまさか、森に行くってことか?
    それはさすがに無茶だ。ただの森ならまだしも、やつは何の力か、植物を思うがまま操ることが出来るようだ。しかもそれだけじゃなく、レミを乗っ取ってもいる。
    父親としてマリーさんを心配する気持ちもわかるし、弱いくせに森に突貫しようとしているおれが言うべきことじゃないかも知れねェけどさ!

    厨房から外へ出たクリスは、礼拝堂の真ん中で立ち止まっている。
    背中しか見えなくて、表情がわからない。――けれど、とてつもなくおっかねェ顔をしているんだな、なんてことは雰囲気で察することができた。
    これは……多分、おれと同じだ。止めても、後から一人で森に飛び込むやつ。おれがそのタイプだから、気持ちはすごくわかる。
    大事な人が捕まって、攫われて、今どうなってるかわからなくて。もどかしいよな、自分が腹立たしいよな、わかる、わかるけど……。

    「クリス、でもそれでお前にも何かあったら、マリーさんこそ悲しむんじゃないか」

    言いたくないことだけれど、おれが常日頃から思われているであろうことだから。だから、それを伝える。
    けれど伝えても、クリスの背中はこれっぽっちも揺るがない。

    「あの子は、」

    静かな礼拝堂に、クリスの声が響く。

    「あの子は、私の天運なんです」

    ……天運?

  • 24122/12/29(木) 03:59:43

    いったいどういうことだ、と聞こうとしたおれの視界に。
    クリスが懐から何かを取り出すのが見えた。

    鈍い黒色、そこに金色の装飾がなされた――けれど華美ではない、銃身が長い、拳銃。
    は、とする。
    ……拳銃、そう、拳銃だ。なんでそんなものを持ってるんだ。

    おれが何も言えないまま見つめるしかないでいると、クリスはくるりと振り返ってこちらに身体を向ける。それからシリンダーに銃弾を一つ、詰める。
    ゆっくりとした動作でそれを行い、シリンダーを回す。そしてごく自然に、それを自分の米神にあてた、―――はっ!?


    驚くほど迷いもなく、引き金が引かれる。がちり!、と空ぶった音が鳴る。


    ――――銃弾は、飛び出なかった。
    意味が分からないままのおれは、それでも銃弾がクリスの頭を貫かなかったことにホッとし、いったい何をしているのかとクリスを止めようとして、

    がちり!がちり!がちり!がちり!

    続けて四回鳴らされた音に、止めようとした身体を硬直させる。
    誰も何も言えなかった。
    背後のステンドグラスを光を背中に浴びて、こちらに向けられる無表情の中にある碧眼の目は、ぎらぎらと光っている。

    「天運は私を見放している、けれど――」

    「マリーこそが天運で、それならば、マリーがこの場所に戻るまで、私が天に見放されることは、ない」

  • 25122/12/29(木) 04:08:09

    銃口を天井に向ける。引き金が引かれ―――ばぁん!という破裂音とともに、銃弾が発射される。
    それは銃口が向けられた先――天井にあるシャンデリアを固定する金具に当てられ、あっけなく外れ、そして落下する。
    そして、シャンデリアが落下する先にはクリスがいる。

    「あ、ぶない……!」

    おれが飛び込むより前に、クリスに向かってシャンデリアはガシャアアン!とガラスの割れる音を激しく響かせながら落ちる。
    直撃は免れない、と思った。
    クリスの位置と、シャンデリアの位置。どう考えてみても、落ちたらクリスに当たる。おれも拳銃を扱ったことがある身、多少の距離感覚には覚えがある。

    けれど。
    シャンデリアが超至近距離で落下したにも関わらず――クリスは傷一つもついていない。
    破片がいくつも飛び散っただろうに、それはクリスの服すらも切り裂くことはなかった。
    粉々に砕けたシャンデリアを踏みしめ、こちらに向かって歩いてくる。
    その異様な雰囲気に身を固くする。

    拳銃、度胸、発言。どう考えても、ただの神父にはもう、思えなかった。
    おれを守るようにシャチが前に出るけれど、それよりも先に声をあげたのは、ベポだった。

    「えっと、クリスは……マリーさんが大好きなの?」

    ……ここでその質問する!?
    と、思ったけれど。そう声をかけられて、クリスの顔に、どこか生気が戻ったように、光が灯る。
    どことなく泣きそうな顔で笑いながら、小さく頷いた。

    「私の――なにものにも代えられない、宝物ですよ」

  • 26122/12/29(木) 04:09:16

    というところで今日はここまでにさせていただきます。
    また保守の方をよろしくお願いしたいです。
    物語が動いている実感……。

  • 27二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 06:48:37

    ギャンブルよわよわ爆負けのクリスさんがここに来てこれはギャップがやばいの……

  • 28二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 14:44:37

    …ここに来てクリスさんの新たな一面を見てしまってドキドキしてる

    そっか、今更ながらコクレア様について忘れさせられるのが島での常時デバフみたいになっているのか
    それならラミのコクレア様を蘇らせなければの言葉にも繋がってくるな
    レミの姿を乗っ取っている何かにとってはコクレア様が邪魔な存在で
    コクレア様はいまも弱っている、もしくは封印されているから敵方の方が強力な力を持っている、あたりが妥当かな

  • 29122/12/29(木) 17:20:42

    保守兼感想ありがとうございます。いろいろ想像してくれるの嬉しい。
    続きをのんびり書いていきます。

  • 30122/12/29(木) 17:39:26

    一分で準備をしてきます、と言って自室に戻った後、どがんとかがちゃんとか騒音を扉の奥から響かせながら、言われた通りきっちり一分。出てきた格好は変わらず、けれど大きなケースを持って戻ってきた。

    恐る恐るその中身は何か聞いたら、『ロケットランチャーです』と特に隠すことなく答えてくれた……いや神父がなんでそんなもん持ってるの!?


    「一応手入れはしているので暴発はしないと思いますよ、多分」

    「発言は適当なままなのか……」


    なんだかんだお前も豹変しているぜ……と呆れつつ。なし崩しにクリスも一緒に行くことになった。これホーキンスと流れが一緒だな。

    ……けれどもまあ、クリスも只者ではないってことはわかった。

    というか、おれより強そうな雰囲気も今のクリスからは感じられて、一番のお荷物おれじゃね? 疑惑が再浮上だ。

    ……足手まといにならないようにしねェと……!


    さて、森に行くにしても。

    まずはどこから森に入るか――それが問題だ。


    どこから入ろうか、と相談してみる。



    どの場所から入るか下記の画像から数字を答えてください。

    >>31

  • 31二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 18:10:18

    3
    1は古本屋に近くてレミがいそうだし2はペンギンの様子からなんか危険そうだから比較的安全そうな3で
    もしかしたらペンギンの足取りを逆から追っていけそうだし

  • 32二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 18:10:51

    3!

  • 33122/12/29(木) 18:35:34

    教会の中で、どこから森に入るか決める。
    こういうのを直前になって決めるのもどうかと思うけれど、昨日は早くローやペンギンを助けなきゃ、という気持ちで焦っていたもんだから、仕方ない、……と思いたい。

    まず、森の真正面から入るのは満場一致で却下。森が相手のホームグラウンドだとするなら、巨大な敵に真っ向から挑むようなもんだ。おれとしてはそうしたい気持ちもないわけじゃないけど、相手は人間の理屈が通じるとは思えない。既におれの中で、敵の正体は人間以外の何か、だ。
    古本屋の近くからも考えた。レミがいた古本屋と近いから、相手の足取りが追えるかもしれないし。
    だがそれもリスクが高そうだ。何がどう繋がっているのかもわからないした。

    消去法で、教会近くの森から出発することにした。浅い森から様子を見るのも最適だと思ったし、教会と近いということは、比較的近くにマリーさんがいるかもしれないと、クリスさんも賛成のようだ。
    それに、シャチもペンギンの足取りを逆から追うことが出来るかもしれない、と言っていた。
    他反対意見もなかったので、教会近くの森から向かうことになった。


    「とりあえず、コラさんはおれから離れたらだめだからね!」
    「頼りになるなァベポは」
    「今まで一番ベポが弟って扱われてたし、なんだかんだコラさんを自分の弟分だって思ってんすよ。うちの中で一番の新人なのジャンバールだし」
    「そなの!?」
    「シャチ!!!!!!!」

  • 34二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 18:37:41

    仲良いわね
    かわいい

  • 35122/12/29(木) 18:41:54

    教会から森に向かうため、面々が出ていく。
    おれが一番奥にいたためか、出るのが最後になってしまった。
    みんなの背中を見ながらおれも続こうとして――ふと、背中でかたん、と物音が聞こえた。

    普段なら気にしないのに、この時のおれはどうもその音が気になって、教会の中に戻る。
    そうしたらどうだろう。教会の長椅子に見慣れないものが落ちていた、というか。
    さっきはなかった、と思う。気付いてなかっただけかもしれないが。

    「これ……」

    おれは恐る恐るそれを取る。少しばかり長い持ち手。鏡面の周りを覆うように装飾がなされたそれは、古びた品だったけれど……その鏡面自体は、驚くほど傷一つなくぴかぴかで、おれの顔を映し出している。
    ――手鏡、だ。間違いようもなく。

    「……それを持っていくがいい」

    背後から声をかけられておれの肩がびくっと跳ねる。
    恐る恐る振り返ると、例のサングラスのせいでさらに何を考えているのかわからないホーキンスがそこにぬぼっと立っていて、おれはちょっとだけ動揺しながらもその顔を見つめた。
    うん、と頷かれるが。何を頷いているのか。

    「か、勝手に持って行っていいのかな……」
    「その方がいい、と占いでは出た。お前の自由だが」
    「………」

    思えば。最初にラッキーアイテムで、手鏡と言われた。他でもないこの男に。
    なんか変な運命じみたものを感じて、おれはその手鏡を拝借することにした。
    懐に入れておくと割れそうなのでそこは困ったが、ホーキンスは自分のつけていたスカーフを貸してくれたので、ありがたく受け取りそれで鏡面をぐるぐる覆う。
    おれは、それを持っていくことにした。ホーキンスもどことなく満足そうだ。

  • 36122/12/29(木) 23:19:51

    【手鏡】

    上品な装飾がなされた古びた手鏡。にしては鏡面がやけに綺麗だ。

    全体的に傷だらけだが、手持ちの部分に横に向かって走った傷がある。



    アイデア、または目星ダイス

    50以下で追加情報が出る。


    コラさん dice1d100=23 (23)

    ホーキンス dice1d100=38 (38)

  • 37122/12/29(木) 23:23:33

    「ん、これ……」


    手鏡をよく見てみると、手持ちの部分と鏡面をつなぐ当たりの装飾に、うっすらとしたへこみが見られる。

    それは年月による風化によって浅くなったようだが……よくよく見たら、そこには長い竜のような、魚のようなものが彫られている。

    コクレア様、だろうか?

    ちら、とホーキンスを見上げれば、おれと同じようにその装飾を見ている。恐らく同じように気付いたのだろう。


    ……まあ、考えるのは今はいいか!

    スカーフで巻かれた手鏡を懐にしまう。

    ともかく、おれたちは森へと向かうために教会を出た。



    さて、森に向かうけれど、どうしようか。


    >>38>>40

    行動安価

  • 38二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 23:36:58

    とにかく奥に向かう

  • 39二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 23:42:05

    洞窟か祭壇を探す

  • 40二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 23:58:52

    ベポに匂いを辿ってもらう

  • 41122/12/30(金) 01:15:07

    1.とにかく奥に向かう

    2.洞窟か祭壇を探す

    3.ベポに匂いを辿ってもらう


    dice1d3=1 (1)

  • 42二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 01:29:08

    クリスさんが銃を自分の米神にぶっ飛ばして見せるシーン好きすぎる
    最愛の娘を失うかもしれない状況の中にいる男の狂気を感じる

  • 43122/12/30(金) 03:27:26

    おれたちは森の奥へと進んでいく。
    最初は木々もまばらで、太陽の光も差していることもあってピクニックには最適な環境だ。
    けれども、なんとなく。不自然な静けさを感じる。

    「うー……」
    「ベポ、どうした?」
    「なんかここ、不気味だよ。……鳥の声もしない」

    生き物の声がまったくしない、というベポ。
    確かに、辺りを見渡すが……なんだろう、おれたち以外の気配を感じられないというか。
    痛いくらいの静寂が肌に突き刺さる。嫌な予感しかしないというかさ。

    「すでに化け物の腹の中、ということか」
    「ホーキンス、怖いこと言うなよな~……、ってシャチ、どうしたんだ、きょろきょろして」
    「いや……なんか見られてるような気がして」

    でも誰かいるとも思えないんだよな、とシャチが困ったように返事をする。
    おれはそれを聞いて――確か、ペンギンも似たような挙動をしていたよな、と集まった証言内容のことを思い出す。同じタイミングでシャチも思ったのか、真顔になって、さっきよりも慎重に辺りを見渡している。
    クリスがノータイムで拳銃取り出して引き金を引いて銃声を響かせた。

    ……あの、クリスさん!?

    「私も視線感じたので……」
    「あの、視線感じたら即撃っちゃうタイプ? もしかしてクリスってなかなかやばいのか??」
    「あはは」
    「あははじゃねェが!?」

  • 44二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 09:59:46

    言い難いことでもさくさく口にするホーキンスとシームレスに銃を取り出すクリスよ……ある意味話が早い二人だな!

  • 45二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 13:41:12

    クリスさん拳銃の使用に躊躇いがない……
    普段の適当な神父さん像と本質的には頭のネジが外れてそうなギャップがすごく好き

  • 46122/12/30(金) 16:21:56

    いつどこから敵が現れるかわからないと各々警戒するが、どうにも見られている気配はするものの、向こうが手出しをしてくる様子はない。

    ひとまず、クリスも入れてどう行動するかを話し合う。


    ひとまず、個別行動は避ける。これは最初から話し合っていたことだ。

    一人でいたペンギンやローがあんな形で様子がおかしくなった、また攫われた以上、たとえどれだけ実力があろうとフォローできるものがいた方がいい。

    こうして少人数で行動しているのだから、それは当然だ。

    ちなみにおれたち以外にも船に残る面子。街を捜索する面子。森の外で見張る面子、と別れている。


    ベポの遠くまで聞こえる耳、また鼻を使って索敵しつつ、森を進んでいく。その間甘い臭いに関して聞いたが、ここら一体甘い臭いが充満している、とのこと。


    「それもどんどん濃くなってる……気がする。もしかしたらあまり鼻が利かないかもしれない」


    確かに甘い臭いばっかりしてちゃ、他の臭いを感じ取ることも難しいよな。

    それにその甘い臭い、どうやらおれたちも感じ取れるようになってきている。

    甘い芳香、というか。マリーさんが言っていたような、お菓子の匂いとか、そういう種類じゃない。


    じゃあ、なんだろうか。



    聞き耳(臭い判別)ダイス

    30以下で成功


    コラさん dice1d100=29 (29)

    シャチ dice1d100=58 (58)

    ベポ dice1d100=78 (78)

    ホーキンス dice1d100=78 (78)

    クリス dice1d100=17 (17)

  • 47二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 16:29:46

    コラさんとクリスが成功か
    この二人は何か持ってるな

  • 48122/12/30(金) 17:37:53

    「……花の匂い?」

    ぽつり、とクリスが言う。
    確かに、この特徴的な臭いは砂糖とかそういう…花の匂いとか、そういう類のものに似てる。
    にしては甘さが強すぎるけれど……、花って言われたら、十分納得するだろう。

    そう思って、一気に背筋が粟立った。
    おい、おいおい待てって……。クリスの方に視線をちらりとやると、真顔のままおれを見て、頷いた。
    ここ最近していた甘い臭いが花の匂いってことだったらさ、レミを乗っ取ったものがこう、植物とかを操っていたことを顧みると……すげェ、やばいんじゃないか?
    マリーさんはここ最近から甘い臭いがしていたって言っていた。
    ならここ最近にかけて、やつが何かをしでかそうと……?

    「……マジでなんなんだ」

    相手の正体はなんなのか?
    レミを乗っ取ることが出来て、ラミ曰く悪魔で、そして恐らくホーキンスが死相と呼ぶものの正体……。
    あ~~~~~!! わかんねェ!!!

    「やっぱり森林伐採も視野に入れるか……」
    「コラさん???」
    「いいですねそれ」
    「おい神父」

  • 49122/12/30(金) 17:48:45



    甘い、甘い臭いがする。

    「いい子だね、レミ」

    脳髄を融かすほどの甘やかな声に、レミはとろんと目を細めて頭を撫でられるのを享受する。
    何か大切なことがあったかもしれないけれど、そんなものはもはやどうでもいい、と思っていた。
    その人の膝に頭を預け、髪の毛をゆっくりと梳かされ――思考は、ただただ蕩けていく。

    「いい子、いい子。そうだね、あの子たちは邪魔だね。まさかだと思うけれど、“らせん”を蘇らせようなんて、馬鹿なことをしようとしているのかな」

    困った声に、視線だけ持ち上げる。そこにはいっそ穏やかで、何よりも優しい笑みがあって、それに安心してまた揺蕩みの中に陥る。
    なんでもいい。どうでもいい。この声と指先と体温さえあれば。
    まるでどろどろとした泥濘に身体が沈んでいくような感覚だった。それすらレミは許容した。

    「大丈夫、“らせん”はもうこの世界にいない。この世界にいないものが、蘇られる道理なんてないよ」
    「……ぁ」
    「“らせん”が蘇ることはない――だから、全部が終わった後。お前もちゃんと、丁寧に磨り潰して、融かして、食べてあげるからね」

    そうしたらおれとずっと一緒だよ、と。その声に、レミの頬が持ち上がる。

    “レミと同じ顔をしたそれ”は、まるでいっそ母親のような顔で、レミに語り掛け続けた。
    ―――“それ”の背後で、いくつもの金色の目が、じっと見つめている。

  • 50二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 19:04:11

    うわああああ!不穏!

  • 51122/12/30(金) 23:43:01

    ???ダイス

    50以下で成功


    dice1d100=47 (47)

    dice1d100=89 (89)

    dice1d100=39 (39)

    dice1d100=54 (54)

    dice1d100=33 (33)

    dice1d100=23 (23)

    dice1d100=39 (39)

    dice1d100=90 (90)

    dice1d100=67 (67)

    dice1d100=26 (26)

  • 52122/12/30(金) 23:45:13

    成功値6

    6×10=60


    気付いたかダイス判定・不意打ちにより数値減少

    30以下で成功


    コラさん dice1d100=5 (5)

    シャチ dice1d100=34 (34)

    ベポ dice1d100=90 (90)

    ホーキンス dice1d100=39 (39)

    クリス dice1d100=72 (72)

  • 53二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 23:47:43

    コラさんしか気づいてない!

  • 54122/12/30(金) 23:57:47

    ――気配とか、全く感じなかった。

    ただふと見上げただけなのだ。それだけだった。そして、おれはそれがまず理解することが出来ず――ひく、と喉を震わせて、一瞬出遅れた悲鳴を声をあげる。


    見えたそれはいくつも重なった木のつる――レミのところでみたものだ。それがいくつも折り重なり、おれたちを狙っている!


    「――――上だ!」


    叫んだ瞬間、一番に反応したのはクリスだった。

    おれの身体を掴んだと思うと、そのまま後方へ飛び跳ねながら拳銃で迫りくる木のつるを打ち抜く。

    銃弾の破壊力に木のつるは爆ぜ、辺りに飛び散るが、襲い来るいくつもの木のつるすべてには対処できない。

    その対処できなかった分をシャチのハルバードが一気に叩っ切る。高く飛び上がり、迫りくる何本ものつるを冷静に対処していく姿はさすが億越えハートの海賊団船員。……懸賞金高いことは褒められねェけどな!

    次いでホーキンスが腰に佩いた剣を抜く。けれど、おれはそれを見てぎょっとする。なんだその……紐みたいにうにょうにょしてるのは!

    だがしかし、剣ということに間違いないようで、振りぬかれたそれは正確につるだけを切り裂いていく。剣なんだよなそれ。変わった剣だな!?


    気付くのが出遅れたベポは多少木のつるが身体を掠ったようだ。それでも迎え撃つのに焦りはなく、自分の頬を掠めたそれを手で握りしめると思いっきり引きちぎった……ベポすげェな! さすがだ、可愛くてもふもふなだけじゃねェぜ!



    コラさんが気付いたため木のつるの被害減少(減少値半分固定)


    dice1d30=7 (7) +30

  • 55122/12/30(金) 23:59:19

    60-37=23


    各々の対処数


    シャチ dice1d23=7 (7)

    ベポ dice1d23=23 (23)

    ホーキンス dice1d23=20 (20)

    クリス dice1d23=21 (21)

  • 56122/12/31(土) 00:00:22

    さりげなくベポ全対処じゃんやば

    木のつるによる攻撃による被害はありません

  • 57二次元好きの匿名さん22/12/31(土) 00:01:54

    おお、良かった……
    コラさんナイスだ
    あとクリスさんが戦闘慣れしているな、この人のバックボーンも気になる

  • 58122/12/31(土) 00:10:45

    「もう捕捉されたか」


    特に驚いた様子もないホーキンスがそう言葉にする。

    言葉にされると……なんかこう、気分的に下がるなァ! 少なくとも森に入ったら遅からず見つかるとは思っていたけれど、それにしては早くないだろうか。


    辺りには引きちぎられた木のつるが散乱している。

    どうやらこの木のつるは、ある程度の長さを切断したらそのまま引き下がるらしい。動けなくなるのか、それとも分が悪いと判断して退いたのか。

    後者だったら最悪だ。そうしたらレミを乗っ取った何かしらの化け物は、思考することが出来るということなのだから、さらにまた別の手で襲ってくるかもしれない。


    「……にしてもさ、クリスってやけに動けるよな。何してた人なんだよ」

    「朝マリーちゃんにさせられるラジオ体操のおかげですかね~」

    「誤魔化すのかよ。……まあ、今はいいけどさ」


    追及してものらりくらりと躱されそうだ。だから突っ込まなくてもいいかな……。

    そう思いながら何の気なしに木のつるを見る。



    目星ダイス 70以下で成功


    コラさん dice1d100=28 (28)

    シャチ dice1d100=33 (33)

    ベポ dice1d100=97 (97)

    ホーキンス dice1d100=68 (68)

    クリス dice1d100=38 (38)

  • 59二次元好きの匿名さん22/12/31(土) 00:20:33

    ベポの気配察知とか目星の値が高すぎてちょっと心配
    聞き耳(嗅覚)に全振りしてる???

  • 60122/12/31(土) 00:25:37

    >>59

    ベポは可愛いので数値が高くても許されます

    100ファン出したら悪いこと起きるかもしれないけど……

  • 61二次元好きの匿名さん22/12/31(土) 00:46:06

    このメンバーでの探索面白いわ
    ドキドキする

  • 62122/12/31(土) 00:48:16

    落ちた木のつる、それにいくつも黒い線が走っていることに気が付く。
    何故だろう、おれはどうしてもそれが気になった。

    「……」

    おれがじっと見つめていたら、びくんっ!とその木のつるが一回だけ跳ねる。
    違う場所を見ていたベポ以外が一気に警戒する中、その黒い線が――開いた。
    ひら、いた?

    おれはその瞬間、背筋が凍るのを実感する。


    目、だ。


    金の目の中に何重にも黒く丸い線が浮かび上がっている目が、木のつるの表面に現れた。
    そして気付く。木のつるにいくつもあった黒い線は、瞼だ。それが開き、じろりとすべての目がおれを見てきた。

    「ッ……」

    思わず後ずさる。その目はぐにゃり、と下瞼を膨らませ、その金色の瞳が弧を描くように歪む。
    まるで笑っているかのようだった。
    悪意があるとしか思えない邪悪な笑み。同じように唇があったとしたら、ケタケタと笑っていることだろう。
    喉奥から悲鳴が漏れそうになった。……なんなんだ、こいつは!

  • 63122/12/31(土) 01:16:22

    けれどそれはすぐに爆ぜることになる。
    ――拳銃を持って、冷たい目をしたクリスによって。

    「……こんなものに、マリーが攫われたんですか?」

    感情の灯らない声は、聴いていて恐ろしささえ感じさせる。
    神父服で、じゃらじゃらしたアクセサリーをつけて、会った時と変わらない姿のままなのに、その目と声がこんなにも変わるだけで、得体のしれない雰囲気を出してくる。
    やっぱり何者か気になるな。

    今は追求するつもりはないけれど、後で聞きたいところだ。

    「クリス、行こうぜ。こんなのに構っている暇はないだろ?」

    そういうと、緩慢な仕草でクリスは振り返って……それからそうですね、と笑った。
    マリーさんが傍にいるときとはまったく違う笑みだと、思った。


    「え? え、今何があったの!?」
    「ベポお前……」

    ちなみに気付いてなかったベポは不思議そうに首を傾げていた。

  • 64二次元好きの匿名さん22/12/31(土) 01:33:53

    このレスは削除されています

  • 65122/12/31(土) 01:35:30

    「これじゃマジでホーキンスの言う通り怪物の腹の中って感じじゃねェか……」

    森はどんどん深くなっていく。最初は太陽の光が差していたのに、だんだんと空を大きな木が覆うようになってきている。
    だんだん不気味さを増していく森そのものが化け物に見えてくる。
    ……今のところ、さっきみたいな木のつるの襲撃はない。けれどいつやってくるかわからない。
    警戒を途切れさせてはいけない。このまま木のつるによって捕まるか殺されるかしたら――ローやペンギン、そしてマリーさんはどうなる。
    その一心で、気を抜かずに森を探っていく。


    現在位置

  • 66122/12/31(土) 01:37:56

    行動選択安価を行います


    >>67 誰が

    ≻≻69 どうする?

  • 67二次元好きの匿名さん22/12/31(土) 01:50:22

    みんなが居たらフォローも出来そうだし、とりあえずコラさん

  • 68二次元好きの匿名さん22/12/31(土) 02:10:55

    叫ぶ

  • 69二次元好きの匿名さん22/12/31(土) 02:19:49

    有効打が思いつかん…
    ここにいる人たちにカームかけるとか?
    それか誰かに木を切ってもらって太陽光差し込むようにしてから手鏡で辺りを照らしてみる?

  • 70122/12/31(土) 04:30:39

    気付いたらこんな時間だった。
    また次に安価結果を参考に書いていきます。
    どうか保守のご協力をお願いします。

  • 71二次元好きの匿名さん22/12/31(土) 13:14:26

    了解です、とても面白かった
    保守保守

  • 72二次元好きの匿名さん22/12/31(土) 23:15:07

    保守

  • 73123/01/01(日) 01:09:05

    保守ありがとうございます! そして明けましておめでとうございます!
    本編をいったん休んで、特別編を更新したいと思います。

  • 74123/01/01(日) 01:09:57

    【新年特別編】

    「ローにお年玉あげてェんだ」
    「ちょっ……とタイムもらっていいですか」

    シャチに相談してみたら、何故かペンギンと、近くにいたクオルを無理やり引っ張ってこそこそと話し始めた。なんなんだ、仲間外れにするなよ、寂しいだろ。

    お年玉。その概念をおれはずっと知らなかったが、ワノ国の中で新年、あらたな歳に親から子へと渡されるお小遣いのようなものらしい。
    初めに聞いた時にはそんなものがあるのかァ、くらいにしか思っていなかったが、意味を知っておれは感心した。
    どうやらお年玉とは。本来御年魂――魂を神様からもらう……つまり一年分の元気を分け与えてもらう、という意味があるらしい。
    昔、おれは小さくてあんなに弱っていたローに、少しでも自分の元気とかそういったものを分けたくてたまらなかった。そんなこと無理だとは知っていたけれど、この五体満足元気な自分がもどかしくて、何か自分からローに与えられるものがあれば、と常々思っていたのだ。

    無論、ただのそういう風習とか伝統とかそういうものであって、本当に出来るわけではない、と思う。
    だがしかし、おれは……昔出来なかったことを出来たらいいなって。例え本当に出来るわけじゃなくても、そういう伝統に則って何かしてやりたいと。
    ……あと、ローを猫かわいがりしたいって……。

    「最後本音出てませんでした今」
    「話合い終わったのか?」
    「ロスタイムで」

  • 75123/01/01(日) 01:10:27

    「これおれらどうすればいいんだよ。キャプテンは別にコラさんに怒りはしねェだろうけれど、多分複雑な顔するぞ絶対」
    「シャチ、なんか上手いこと言ってやめさせたりさ……」
    「出来ると思うか?」
    「無理だな……」
    「おれを巻き込むのやめてもらえるか」


    何やらこそこそ話をしている。気になるけれど、おれは物分かりのいいよいこなので(当社比)おとなしく待ってる。
    待ってたら通りすがりのベポがいたので、背後から抱き着きに行って軽くもふもふさせてもらう。
    ベポは『もうコラさんやめてよー』と言いながらおれを抱き上げてくるくるし始めた。楽しいぞこれ!


    「じゃあもう、キャプテンに妥協してもらうしかないだろ」
    「ペンギン~……こう、コラさんがキャプテンにベリー渡すのなんか絵面的に見たくねェよ~。だってキャプテン絶対こう、絶妙に微妙な顔するって。喜びと複雑さ混じったやつ」
    「おれだって見たくねェよ! 絶対受け取ったあと『これどうするか』ってなるぜ。しかもコラさんからのそういう親心たっぷり入ってやがる……。最悪そのベリー使えずにとっておいたりすんじゃねェか?」
    「何が悪いんだよ」
    「悪くないけど、お前キャプテンの複雑な心境とか考えてやれよ!! 図らずもなんだかんだ、魂は違ったってコラさんはうちの船の最年少なんだぞ!?」
    「魂……?」
    「あーーー! こら、シャチ! それは違うだろ!」
    「あっ……そうじゃなくて! つまりその……、おいクオル! お前もコラさんからお年玉もらったらどうするんだよ」
    「いらねェって返す」
    「ドライすぎるわ!!!!」
    「戻っていいか?」

  • 76123/01/01(日) 01:10:55

    ベポと遊び終わったおれは、まだかなー、と思いながら樽の上に座っている。
    そんなおれのもと近づく影がある。それはイッカクで、おれのもとにおにぎりを作って持ってきてくれたらしい。
    同じようにイッカクにおにぎりをもらったハクガンがやってきて、おれの横に座ってくる。わざわざおれの近くに来てくれたのだ。……それが嬉しくなって、つい身体をぐいぐいって押し付けたりしてふざけたりしながら、一緒におにぎりを食べた。


    「別にたかがベリーくらいあいつがどうにでもするだろ。もし子どもにもらったことに引け目を感じるんだったら二人でどこかに行って一緒に飯でも食えばいい」
    「建設的な意見! 確かにそれはそう」
    「二人で遊びに行ったりするのか。微笑ましいな……」
    「お前らの目線はなんなんだ」
    「あ、でもさ、気付いたんだけど……」
    「なんだよシャチ」
    「コラさんって自分のベリー持ってるのか?」
    「……確かに。お小遣い制だし、めぐりめぐってって感じだよな」
    「そういえばコラさんはお小遣い制ってのあまり気にしたことないよな?」
    「いや、最初は気にしてたぜ。でも『出世払いでいいよな!』って最終的に納得した」
    「コラさん、お小遣いのベリーでお年玉渡すのか……?」
    「最悪おれらの金だすか」
    「そうだな、クオル」
    「なんでおれも入ってるんだ」

  • 77123/01/01(日) 01:11:59

    ハクガンがいなくなったあと、ジャンバールを見かけたので手を振ったらすこしびっくりしてから恐る恐る振り替えしてくれた!
    あいつ図体でかいけど、ちょっと挙動が可愛いよな。
    おれなんかジャンバールから見たらガキ同然なのに、ちゃんと丁寧に接してくれるし。
    でもな~~おれもっと気楽に行きたいんだよな~~~!! ……いや、というかジャンバールの方が、前世のおれよりも年上なわけで、こう……おれが丁寧に行くべき!?


    「おい、あいつ待つの飽きてきてるぞ」
    「コラさんちょっとそういうとこ子どもっぽいところあるよな」
    「ああ。微笑ましいな」
    「戻っていいか」
    「あ~クオル待て待て。とりあえずコラさんに一度聞いてみることにしよう! ほら、行くぞ!」
    「なんでおれが」


    ……ようやく話が終わったのか、三人がこちらに戻ってくる。クオルはシャチに腕を引かれていた。仲いいな!

    「あのコラさん、そのお年玉のことなんですが」
    「あ、そうそう! お前らにも見せようと思ってたんだ~」
    「え?」

    ほら!とおれは手に持った金色のそれを見せる。

  • 78123/01/01(日) 01:12:58

    これはおれがまだ路地裏で生活していた街に居た時の話だ。
    ナギナギの実を食べて記憶を取り戻したおれは、早速この街を出てローを探しに行こうとしていた。
    出来る限り服の汚れを落として、さてどうやって移動手段を見つけるか、と街に出たとき。何やら祝い事のような催しがあって、そのイベントの中で無料でとあるものを配っていたのだ。
    おれみたいな小汚いガキにも普通にくれたから、マジでみんなに渡してたんだと思う。
    おれはそれをもらうだけもらって、あとは特に気にせず思い立ったら吉日!と行動したわけだから、その日以来ずっとポケットの中に入れてあった。
    記憶を取り戻していたから、ローに会えた時に渡せればいいか、と思って、そのまま色々あって忘れた感じだ! しょうがねェよ! 漂着するのは色々ありすぎな事態なんだって!

    「ローのやつ、子どもの頃記念コイン集めるの好きだったんだよ。今も好きなんだろ?」

    だから、ほら。
    ――三人に見せたそれは、とある街の創立を祝う祭りのコインだった。

    「お年玉ってお金を入れるみたいだけどさ、おれほら、養ってもらってる身だし。それにおれがお金渡してもローのやつ困っちまうだろ! でも記念コインだったらローも喜ぶんじゃないかって」

    いいアイデアだろ! と三人を見つめる。――何故か、揃いも揃って微妙な顔をしていた。

    「だ……ダメだったか!?」
    「駄目じゃないです! 駄目じゃないけどこう、おれらのこう、もちゃっとしたこの気持ちは……!」
    「戻っていいか」
    「黙れ二人とも! コラさん、いいアイデアだと思います!! プレゼント用の袋に入れましょ入れましょ!」
    「お、おう……?

    いいならいいんだけどよ!


    その後、おれはプレゼント用の小さな封筒に入れて記念コインをローに渡すことができた。
    ローはしばらくコインを眺めた後、コインを仕舞う用の箱の中にいれて、『大事にする』と笑ってくれた。
    どうか、この一年も元気でいてくれよ、ロー!

  • 79123/01/01(日) 01:13:13

    以上です。今年もよろしくお願いします。

  • 80二次元好きの匿名さん23/01/01(日) 01:42:33

    乙あけおめ!
    何て微笑ましいんだ

  • 81二次元好きの匿名さん23/01/01(日) 02:28:37

    新年特別編の情報量!!ペンシャチに作戦会議の頭数に入れられるクオルとクルーとコミュニケーション取ってるコラさんにいちいち全部良すぎて嬉しくなっちゃったな…ハクガンへの甘え方?が特に好き
    お年玉をあげようって発想になった経緯もだけどベリーじゃなくて最適解の記念コインにたどり着けたのコラさんがローのことや自分の立場ををたくさん考えてるからって感じで素晴らしかった…

  • 82二次元好きの匿名さん23/01/01(日) 11:27:38

    あけましておめでとう、今年もよろしくお願いします
    年明けににこにこできた
    スレ主と登場キャラたちにも幸多いことがありますように

  • 83二次元好きの匿名さん23/01/01(日) 22:19:57

    取り越し苦労になっちゃったけど会議してる比較的年上組も
    ハートの船員たちとわちゃわちゃしてるコラさんも微笑ましいな…
    本音が猫可愛がりしたいのも我関せずのクオルにも笑った

  • 84123/01/01(日) 23:22:01

    保守と感想ありがとうございます! 新年なので前レス返信させていただく


    >>80

    コラさんは基本魂はあれでも身体の年齢が年齢だし、精神が身体に引きずられていること多々あるし、普段から人懐っこい性格なのでみんなに可愛がられています。そのうちの一幕。


    >>81

    ハクガンやっと名前が出た一人なので、意気揚々と出しました。個別の性格が全員分知りたいところ…。

    コラさんは割と身体に精神が引っ張られて子どもっぽいテンションが多々ありますが、前世の経験も兼ね備えているので、今の自分がお金をあげてもな~、と考えられるコラさんです。


    >>82

    少しでも楽しい気持ちになってくれたら嬉しいです!

    新年パーティをやってるに違いない。ドライ()な海賊団だから……。


    >>83

    通りすがっていただけなのに引っ張り込まれたクオルはそこそこなじんでます。というか普通にペンシャチがコミュ強でクオルが陰方面なので勝てなかった。

    コラさんとハートの海賊団の面子のちまちまとした絡みも書きたかったので、微笑ましく思ってもらえてうれしいです!

  • 85123/01/02(月) 01:48:00

    「気休めだけど、『カーム』かけるか」

    と提案する。相手が人間ではない以上、音ではなく違うもので察知してくるかもしれないけれども、それでも自分たちの気配を極力消すのも有効……ではないだろうか。
    そう思って提案すれば全員から賛同を得られた。
    おれの能力のことを知らないクリスも、説明したうえで納得してもらった。『サイレンサーいらずですね』とやや物騒なことを言われたが。……そういう使い方も出来るけどさァ! おれとしてはその、安眠とかそういう風に便利だと思ってほしかったな!

    全員にカームをかけちまうと、誰も何も音を発せなくなるから、声での返答が出来なくなる。
    じゃあどうすればいいか、というと、簡単なサインを決めた。
    人差し指を立てたら、その方角に『進め』。手のひらを出して、グーパーと手を開いたり握ったりを繰り返したら『ここで待て』、親指を下に下げたら『攻撃せよ』……なお最後のはどうかと思ったんだが、クリスの提案にシャチが賛同した。お前らがいいならいいんだけどさあ!

    「カームを切ってほしかったらおれの背中を強めに叩いてくれ! すぐに切る」
    「コラさんがびっくりして転ばない程度の強さだよ!」
    「……フォローありがとうなベポ!」

    確かに、転ばないとは言い切れねェもんな。
    なんだか情けなくなってきた……。

  • 86123/01/02(月) 02:10:30

    「……なるほど。自分の発する音をすべて消す。自分が起こす音だけではなく、自分が起こした事象によって動かされた事象の音すら。便利だな」
    「コラさんは引き抜かせないぞバジル・ホーキンス!」
    「何も言っていないが……」
    「ベポ……」
    「それにコラさんはドジだから一日一回は自分の服燃やすからな! お前の船も全焼だぞ!」
    「それは困るな」
    「ベポ……」

    別にそんなことはねェ、服燃やすのなんて二日に一回くらいだ!
    ホーキンスはおれを引き抜くとかそういうの全く考えてなかったようだが、それでも食い止めようとしてくれたベポの優しさは嬉しい。でもおれのドジの認識って。

    ベポがホーキンスに喧嘩を売るのを押さえてから、改めてカームをかける。
    全く音を発さなくなったことを全員確認してから、再び森の奥へと向かい始めた。

    仕方ないことだけれど、無音の時間が続く。
    時折全員がいることを確認。アイコンタクトを取りながら、異常がないことを確認する。
    その状態で、特に接敵することなく、小一時間。
    だいぶ鬱蒼として薄暗い森は、なんだか今この場所が夜なのではないかという錯覚すらさせられる。太陽の光すら届かなくなった森は、こんなに暗いのか。

    ベポの視界に入り、自分の耳をとんとんとして、何か物音とか感じないかを問いかける。
    返答は、首を横に振ることによって表された。……まずいな。ここまで変化がないと逆に焦ってくる。

    ローの居場所、マリーさんの居場所、敵の動向。ここまで情報が落ちないと不安すら覚える。
    そう思っていた時―――、気が付けば、視界に見える範囲、森の向こう。どこか森が開けている場所があるようだ。
    とりあえず、警戒は怠らないまま、そこへ向かう。

  • 87123/01/02(月) 02:42:10

    「………!」


    立ち止まって、目を見開く。

    鬱蒼とした森の開けた部分、そこに小さな建物があった。

    遺跡……みたいなもの、だろうか? ところどころ崩れているし、蔦が白い壁を覆っている。

    転がっている瓦礫にはかなり風化しているが、どこか竜のような、魚のような装飾が彫られているようだ。


    これはまさか、コクレア様の……?


    振り返ってクリスを見つめる。クリスも驚いた顔で、こくこくと顔を振って頷いていた。


    僅かながら、茂る木でできた緑の天井の隙間から、柔らかな日差しが差してその建造物を照らしている。

    砂で薄汚れているが、もともとは美しい白亜の建物だったのだろうと予感させる。

    すごく……すごく、綺麗なものが、ここにあった気がするのだ。


    そして何故か、ベポはその光景を見ながら、自分の鼻を触りつつ首を傾げている。

    ……どうしたんだろうか、鼻でもかゆいのかな。


    「………」


    さて、問題は、だ。

    ここに入るかどうか、だけど……。



    どうする?

    >>88

  • 88二次元好きの匿名さん23/01/02(月) 08:25:12

    入る

  • 89二次元好きの匿名さん23/01/02(月) 15:14:53

    コラさん煙草吸わなくても燃えちゃうのか…筋金入りの天性ドジっ子め!

  • 90二次元好きの匿名さん23/01/02(月) 19:06:20

    このレスは削除されています

  • 91123/01/02(月) 23:12:53

    感想保守ありがとうございます、続きを書いていきます。

  • 92123/01/02(月) 23:20:24

    急に現れた建物だけれども、おれたちはそこに入ってみることにした。

    ベポに危険はないか確認したけれど、こくこくと頷いていたから恐らく大丈夫だと思う。ベポの耳は高性能だから、どこまでかはわからないけれど、結構遠くまで聞こえるようだし。


    それでも警戒は忘れずに中に入る。

    中に入ると、やっぱりボロボロで、いたるところが崩れていた。

    床の建材も剥がれたり出っ張りが出てたりして、ははーんこれはおれこけるやつだな、とすぐさま察したおれは慎重に歩く。床を見すぎて目の前の柱に頭をぶつけた。おれってばどうしてこうも……。


    中はほぼ何もなくて、真ん中に大きな台座に乗った、何かの石像らしきものがあるだけだ。

    その石像もほぼ砕けていて、台座付近にわずかに長い尾っぽのようなものが見えるだけ。……もしかして、これコクレア様の石像だったのだろうか。おれが見たコクレア様もだいぶ長い図体で、よく見たら身体の終わりの部分が蛇のようになっていた気がする。

    クリスの方を向けば顎に手を当てて真剣な顔で見ている。クリスも多分そう思ってそうだ。すっげえ凝視しているもん。


    ……うーん、他に何もなさそうだ。

    というか不自然なほど何もない。崩壊してから結構時間が経っているせいもあるだろうけれど、ここまで何もないのも逆に気になる。

    だって今のところ目立つものって言えば、この砕けた石像だけだし。

    うーん……んんん、何かないもんかな!



    目星ダイス 50以下で成功


    コラさん dice1d100=42 (42)

    シャチ dice1d100=43 (43)

    ベポ dice1d100=12 (12)

    ホーキンス dice1d100=27 (27)

    クリス dice1d100=62 (62)

  • 93123/01/02(月) 23:37:02

    「……?」

    ベポが何か気付いたように石像の近くに向かい、しゃがみ込む。
    どうしたんだ?とついていくと、その石像の近くの床に、わずかに線というか……何かを引きずったような跡が見える。
    なんだこれ、と一瞬思って。――すぐに気付く。

    いつの間にか同じように気付いたホーキンスが石像に手を置いて動かそうとしている。おれとシャチも続けて石像を押せば、ぎぎぎ……とめちゃくちゃ軋んだ音を立てながら石像が動き出す。
    石像っていうか、台座の部分? よくある隠し部屋、隠し通路ってやつだな。
    台座をどければ、そこには下に降りる階段がある。古びているけど、石作りなだけあってしっかりしている。

    降りるか、と口パクで尋ねる。
    ここに敵がいるとは正直あまり思わないけれど……でも、こんな風に隠されているものがあるってのは普通に怪しい。
    それぞれ難しい顔をしたけれど、全員が頷いた。だから入ろうと思ったけど……。
    中はだいぶ薄暗そうだな、これ。
    んー……うーん……。

    光源になりそうなものある?

  • 94123/01/02(月) 23:48:22

    とりあえず簡易的なものだけど松明を用意して向かうことになった。ちなみにおれは持たせてもらってはいない。普段の所業を見たら当然だけどな!

    階段を一段一段降りていく。

    カームをつけているせいで自分たちの声も、足音も、呼吸の音も聞こえないし、森の音も遠ざかっていくから嫌に静かだ。

    少しばかり怖いって気持ちはなくもないが、怖気づいてなんていられない。


    階段は結構長くて、降りた先には通路があった。なんだこの通路、と思いながら、歩いていく。

    方角的には、森のさらに奥に向かっているのだと思う。

    地下通路は別に整えられてはいなくて、壁は土とか岩で出来てるようだ。

    天井にはびっしりとコウモリがいて、おれとシャチは少しびびっちまった。だって天井にずら~っと光る眼があるんだぜ!?

    でも、コウモリがここにいるってことは、どこかに外に通ずる道があるってことだよな。だってこっちの道は台座でふさがれてたし。


    ……?

    ………ううん、なんか見覚えあるような……?



    アイデアダイス 40以下で成功


    コラさん dice1d100=75 (75)

    シャチ dice1d100=21 (21)

    ホーキンス dice1d100=31 (31)

  • 95123/01/02(月) 23:58:02

    「……!」


    シャチが何かに気付いたように振り返る。

    それから自分の懐を探ると、レミの家で回収した写真を手に取り、おれに向けて見せてくる。

    これ確か祭壇の……、とそこまで思い出してから、おれもはっとした。


    確か、あの時シャチがこの祭壇があるのは洞窟とか地下とか、その辺にあるんじゃないかって言っていた。

    ……まさにここじゃねェか!


    祭壇に何か意味があるのかはわからないけれど、でもレミの家に写真があったことから、何か関係があるかもしれない。


    「………」


    敵の気配はほぼない。

    ベポも特に何の反応をしていないことから、恐らく今おれたちの周りに敵はいないのだろう。

    ひとまずこの地下にいる間だけでもカームを切っていいだろうか?

    話し合いもしたいし、地下から出たらかけなおす形で。



    カームを消す? このままかけ続ける?

    >>96

  • 96二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 00:15:28

    消す

  • 97123/01/03(火) 00:39:41

    おれはカームをいったん消す。
    ……自分から音が出ることに気付いたみんなが一斉におれの方を振り向いた。……急に振り向かれるとびっくりするな!

    「ひとまず、ここら辺には敵の気配はなさそうだから消した。またここから出るようだったつけるぜ」
    「わかった。それで、話したいことがあるんだろう? ……祭壇のことか?」
    「祭壇?」

    確かクリスやベポに祭壇のことを話していなかった気がする。
    簡単にレミの家で見つかったことを教えて、写真を見せる。
    クリスは困惑した顔で祭壇を眺めていた。……存在を知らなかったんだろうか?

    「今更ですが、ラミくんから話をしっかり聞けてなかったことが悔やまれます。何やら、深い事情がありそうで……」
    「本当に何も聞いてなかったのかよ。何も言わないままあんたに神父をやるように勧めたのか?」
    「いやあ、あの……お恥ずかしいですが、まあ、無職だったので……」
    「そもそもどうやってラミと出会ったんだよ」

    よくよく考えれば、ラミと交流を持つことって出来なくないか?
    この島で神職を昔からずっと務めているし。それこそ商人のような飛び回る職業とか、漁師、海軍、海賊……くらいじゃないと、あまり島から出ないもんだ。海王類とかの心配だってあるしな。
    元々知り合いってどういうことなんだ?

    「あー……」

    クリスが言いづらそうに頭を掻く。
    ……言いたくないなら別にいいんだけど。
    そういう前に、クリスは観念したように口を開いたから、おれは口を閉ざすことになった。

    「ある意味私がラミくんを助けたからというか……」

    助けた?

  • 98123/01/03(火) 01:13:07

    「あの、あまり大きな声では言えないことなんですけれども、」
    「うん」
    「とある国でその……私兵士をちょーっとしてたことがありまして……」
    「ふんふん……兵士ぃ!?」
    「大きな声で言えないことなんですけれども!!!」

    大きな声で叫んじまった! おれは両手で口を押さえる。
    本当に言いづらそうにしていたから、あまり言いたくないことなのだろう。
    それでもちゃんとした情報を伝えるために、言いづらいことを話そうとしてくれる。ちゃらんぽらんな生臭坊主だけど、割と本質は誠実な人なんだろうか?

    「まあ……いろいろ合って、逃げたんですよね。このままじゃ捨て駒にされるなってわかったので……」
    「捨て駒に……?」
    「うーん……そのですね、地雷の余波で、片腕を無くしまして」

    片腕、を。
    おれはクリスの右腕を見つめる。――銀色の義手がそこにある。
    一度この腕のことを話した時、特に深刻そうでもなく、あっけらかんと話していたけれど……まさかそんなことがあった、なんて。

    「まあ、それはいいんですよ! ただそういうことがあって逃げて……ちまちまと賞金稼ぎをしながら生きていたら、島を出ていたラミくんが破落戸に暴力を振るわれてたので、助けました」
    「なんで襲われてたんだ?」
    「お金を奪い取ろうとしてたみたいです。ラミくんは必死に蹲って鞄を守っていて……放っておけなかったというか。マリーにも蹴りだされましたしね」

    そっか……そんなことが……。

    ……マリーさん島に来た時まだ子どもだったよな。つまり島の外にいたときはその時よりもっと子どもだったわけで、その頃から今の関係性が出来てたんだな。肝っ玉だ……。

  • 99二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 01:16:51

    …もしかしてスレ最初の天文的な確率でも死にそうにない体質?に目をつけられたのかな、クリスさん
    子どもの時分から力関係変わってなくて草

  • 100二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 01:21:43

    クリスさんは現役時代は二つ名がある名の通った兵士だったんじゃないだろうか

  • 101123/01/03(火) 01:27:24

    「それをラミくんはだいぶ恩に感じてくれていたみたいで。そこから親交が始まったというか」
    「へえ……そこから仲良くなったのか?」
    「あまりに私が適当に生きてたのでガチ目に説教されたり」
    「その時から性格は変わってないのか……」

    ってラミも意外だな。説教するような感じなのか? レミみたいな性格を想像してたんだけど。

    「ホラ、私にはマリーさんがいるじゃないですか。だから私も定職には着きたいと思ってて。でもさっき言った通り私、子どもの頃から兵士やってて、まともに働けるような知識もなくって」
    「それは初耳だぞ」
    「アレッ!? ……だめだな、普段適当に話してるから言ったもんだと思ってしまう……」

    なかなかに重い事情があったようだ。とりあえず、適当って自覚があるならもう少し真面目に話をした方がいいんじゃないか?

    「そうしたら自分の島に来て神父として働かないか、と勧誘されまして。ほいほい着いて行って、マリーさんともどもこの教会に住まわせてもらった、というわけです」
    「そうなのか……。悪いな、言いづらいこと言わせちまって」

    そう謝ると、クリスは目を丸くしてからいえ、と少しだけ笑う。
    そして、それを聞いていたホーキンスは、何かを考え込むような仕草をした。

    「……少し、引っかかる」
    「ホーキンス?」
    「確かに善意もあっただろうが……今の状況を見るに、ある程度こうなることを予測して、武力のあるものを教会に置こうとしたんじゃないのか?」

  • 102123/01/03(火) 01:45:12

    「つまり、ペンギンがああなったり、ローやマリーさんが攫われたり、レミが乗っ取られたりする、この状況をある程度予測してたって言いたいのか?」
    「その通りだ」

    ただの予測だが。そう言いながら、ちらりとクリスを見る。

    「恐らくラミとやらが、この島にコクレア以外の別の何かがいることがわかっていたのは、手紙を見ても明らかだ。10年前、その時点でわかっていた。だがしかし死んだ。レミ曰く『海賊の手で』殺されて」
    「……でも、海賊に殺されたとは、思えないよな」
    「ああ。海賊に殺されたと思い込まされていた。悪魔としては、ラミがその悪魔に殺されたという事実をレミに覚えさせたままでいるのは不都合があった」

    つまり、とホーキンスがカードを向ける。
    そこには悪魔の柄が描かれていた。

    「その時点で、悪魔がいることを……悪魔の正体を知れば、簡単に対処可能であった」
    「―――!」
    「それを防ぐためにレミは記憶を曇らされた。ならば、お前が神父になった意味は?」
    「私が……」

    意味。
    もしラミが悪魔のことを想定して、対処しようとして――けれど、何かが起こってそれは不可能になった。
    役割があったのだろうか。わざわざクリスを島に呼んだ理由も。

    「……あのさ、関係ない話していい?」

    ――全員が口をつぐみ、黙り込み思考する中。不意にベポの声が響く。

    「すごく不思議だったんだけど、今のあの……悪魔でいいや。悪魔って、キャプテンとか攫ったんだよね。それで、昨日はコラさんも襲って、その……食べようとしてた?」
    「ああ、そうだな」
    「どうして街の人を攫ったりしないの?」

  • 103123/01/03(火) 02:05:19

    「食べるってことは、こう……栄養ってことじゃん。10年前その悪魔がいたとして、栄養補給とかするために街の人を襲ったり、攫ったりすることってありえそうじゃん? でも、そういうのなかったんだ……よね?」
    「ええ、私の知る限りなかったし、そういう騒ぎになったこともなかった」
    「そういう記憶操作をされていたり?」
    「違う……とは言い切れません。現に10年前、マリーがいなくなった時のことを思い出すのに時間がかかりました」

    でも、思い出せはするんです。そうクリスが真剣な顔で告げる。

    「……こう考えられませんか?」
    「なんだ?」
    「レミは、何かを知って悪魔に強烈な催眠…のようなものを受けた。そうした結果、ラミが海賊に殺されたと思い込まされた。けれど、悪魔は、“そこで力の大部分を使った”。そして私たちに同様に催眠をかけたが、それは強烈なものではなく、だんだんと記憶を薄れさせていく類のものだった」
    「それって……!」
    「おかしいと思ってたんですよ。昔はもっと教会に人が来ていた気がするんです」

    額に手を当て、何かを思い出すように目をつむる。

    「私が神父向いていないって言われたらそうですけど、それでも信仰は誰しも持つ心だ。私なぞいなくとも、人は神を敬い祈る。教会はそうするのに都合のいい場所である限り、途絶えることはない」
    「……でも、人はだんだん来なくなった」
    「そうして、コクレア様を忘れていった」

    ――――忘れさせることが、必要だった?

  • 104123/01/03(火) 02:42:52

    「それじゃ……ペンギンは? ペンギンはどうしてあんな風に洗脳されたんだよ」
    「そこまでは……。……確かに、なぜマリーが攫われたのかだって疑問が残る。あなたたちの船長さんは何かを調べようとしたから攫われた可能性が高いですが……でも、マリーは普段通りに生活していました。攫う理由はどこにもないはずです」

    うーん……やっぱり、疑問は残る、か。
    それでも、なんとなく……相手が記憶とか、そういうものを操る力がある……ってことはわかった、気がする。
    コクレア様を忘れさせるのが目的だったのだろうか。でも、忘れさせたらどうなるんだ?
    それについての疑問にはクリスが『ただの推測ですが』と前置きしたうえで答えてくれた。

    「神とは、信仰されるものです。そしてその信仰こそが神に力を与えたり、その力を意味あるものに変えたりする。もしかしたら――コクレア様の力が、まだ残っているのかもしれません」
    「残っているからこそ、悪魔の動きを抑制している?」
    「のかと。けれど、真に受けないでください。ただの想像でしかないので」

    と言われた、けれど。
    ……あながち間違ってないんじゃないか、これ。


    と、色んな推測や疑問を口々に出し合いながら、歩き続けた先。
    ――ふと、風のようなものを感じた気がする。
    ……出口が近いのか?

  • 105123/01/03(火) 02:44:16

    というところは今日はここまでにします。
    いつも感想などくださる方、ありがとうございます。力になってます。
    やっぱりそういうの活力とかモチベにつながるので、すっごく助かる……。
    またどうか保守の方をよろしくお願いします。

  • 106二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 09:25:38

    一気読みしたけどはちゃめちゃに面白い……ワクワクが止まらないです!
    スレ主さんの文章力とお話の進行力が凄すぎる!
    楽しませて貰ってます!保守!

  • 107二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 17:55:24

    レミさんがいろいろ動いてたっぽいのを知ると覚悟決まってるなぁっていう気持ちと
    でもクリスさんにお金貸してあげてたんだな…って日常の一コマを思い出して心がぐちゃぐちゃになりますね

  • 108二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 20:18:02

    コクレア様の名前とかがあまり知られてないのって不自然だしなんか理由あるんじゃない?って過去スレでも話題になってたけどじわじわと核心に迫ってきて怖たのしい…

  • 109123/01/03(火) 23:54:41

    保守ありがとうございました、続きを書いていきます。


    >>106

    そこそこ長いのに読んでくれてありがとう。

    面白いって言ってくれて嬉しい!

  • 110123/01/04(水) 00:07:02



    「そうなんだ。つまり賞金稼ぎではなく、ちゃんとした定職に就きたいと」
    「そうそう。うちにはマリーちゃんがいるからあまり危険な仕事はね」

    でも生まれてこの方これ以外の生き方がよくわからなくて。そう困ったように眉を下げながら彼は言う。
    となりにちょこんと座っている銀髪の少女は、特に気にした様子もない風にストローでジュースを啜っていた。

    「まあ、確かに小さい子どもを連れまわすより、どこかに住み着いた方がいいだろうね」
    「ええ、そうです。あー、ラミさんそこらへんなんかいい職場知りません? こう、経験なくても大歓迎アットホームな職場みたいな……」
    「これは善意で言うけど、その宣伝文句の職場には入らない方がいいよ。人間性搾り取られるから」
    「え、怖……」

    まあ、それよか彼はずっと過酷な環境にいたのだろうけれど。
    ジュースを飲みながら話を聞いていたのだろう、マリーちゃんはごくん、と最後まで飲み切ってから口を開く。

    「まあ、多分クリスが働けなくともアタシが働くからサ。ちゃらんぽらんな男よりアタシみたいな小さい子どもの方が可愛がられたりするし」
    「強かだな。そのうえクリスくんよりよっぽどしっかりしてるんだけど」
    「発言権はマリーちゃんの方が上なので……」
    「かかあ天下って感じだな。姉さん女房?」
    「マリーちゃんは将来パパのお嫁さんになりたいもんね~♡」
    「寝言は定職についてから言いな」

    うわあばっさり。本当にマリーちゃんのが強いな。
    けれどもクリスはやけにきりっとした顔でこちらを見る。

    「どうです、うちのマリーちゃん可愛いでしょう」
    「バカ親だね」
    「おっとラミくん優しい顔して実はかなり辛辣では?」

  • 111二次元好きの匿名さん23/01/04(水) 00:38:19

    若クリスさんとマリーちゃんと若ラミくんかぁ…なんだこの三人組既になんか可愛いぞ

  • 112123/01/04(水) 00:46:48

    にしても働き先、か。
    クリスとマリー。二人を見ながら、ぼうっと考える。

    ……都合がいい、と言ったらそうだけれど。
    でも、助けてくれた人をそう言っていいものか。

    可能性は決して低い。けれども“あるかもしれない”それのための保険。
    ……………。

    「あのさ」
    「はい?」
    「一つ、聞いてほしい話があるんだ」
    「なんです?」

    島のこと。島に潜むもののこと。コクレア様のこと。“儀式”のこと。
    それを、おれは包み隠さず話した。
    唐突に突拍子もない話をする僕のことを、クリスくんは豆鉄砲を喰らった顔をしたけれどそうですか、と言って、気まずそうに視線をさ迷わせた。

    「こう……簡単に言っていいのかわかりませんが」
    「いいよ。好きな風に言って」
    「大変、でしたね」

    ……恐らく、心の底から呟かれたいたわりの言葉に、おれは目を丸くしてから、少しだけ目の奥が熱くなるのを感じた。
    別に泣きはしない。
    ただなんとなく、そんな風に言われたかったんだな、と、少しばかり自覚した。

  • 113123/01/04(水) 00:51:36

    「うん……だから、保険でね。もし駄目だったときは君がおれの役割をするために、おれの島に来てくれるかい?」
    「えっと……」
    「コクレア様を蘇らせる儀式を」

    おれの言った言葉に、クリスくんは戸惑い、マリーちゃんは怒りのこもった目でおれを見た。

    「なんだい、クリスに危険なことをさせようってのかい?」
    「マリーちゃん、落ち着いて。……もし駄目だったらって、その時はラミくんはどうなっているんですか?」
    「最悪、死ぬだろうね」

    自分がやろうとしていることが達成不可能だった場合、それこそ自分が食い殺される。
    二人は絶句したようにぽかんとした顔をする。……うん、物騒な話をしてごめん。

    「もしおれが駄目だった場合、きっと島に潜むものは活動的になると思う。だからクリス。君ならそれを潜り抜けられると思って頼んでいるんだ」
    「………」
    「こんな話、到底信じてもらえないだろうし。……二人には、信じてもらいたいけれど」
    「信じますよ」

    あなたがひどく切実そうなので。そういって眉を下げて笑うから、おれはほっと顔が緩まる。
    マリーちゃんは怒った顔と気まずそうな顔が混ざったような顔色をしていて、それが少し可愛らしい。

    「だから、おれがそんな風に君を保険に、あてにしているとして。そうだとしても、君が来てくれるなら、おれは君に住居と仕事を用意できるよ」

    この心臓に誓って。そういえば、クリスは少し考えたあと……頷いた。

  • 114二次元好きの匿名さん23/01/04(水) 00:52:45

    クリスさんやラミたちの回想パート面白いし、何よりも主さんの書くコラさんが本当に解釈一致で好きだ
    今日もこのスレが読めて幸せです、いつも更新ありがとうございます

  • 115二次元好きの匿名さん23/01/04(水) 00:54:04

    ホーキンスの読み通りだな
    ラミは武力のあるクリスさんを来るべきに備えて島に置いておきたかったのか

  • 116123/01/04(水) 01:03:18

    「多少の荒事に対する腕の覚えはあります。まあ……そこそこ?」
    「そこは自信もちな。あんた図体でかい癖にやたら素早く動くじゃないか」
    「まあ止まったら死ぬような場所にいたんで……」
    「ごく自然にひょいっと闇見せてくるよね君」

    え、闇?と自覚がないのがいただけない。
    こほん、と気を取り直してから、おれはクリスくんに顔を向ける。

    「おれは君を利用としている。そのことに対してどう思う?」
    「うーん、露悪的に言ってるなあって思います」
    「……なんだそりゃ」
    「だって、君ってやつはあれじゃないですか。ただただ、何かを守りたいだけに行動している。君を助けただけの私を信用するほど切羽詰まって」
    「これでも人を見る目はあるからね」
    「だったら、私もそこそこありますよ。それをもって、君は悪い人じゃないって感じました」

    ね、マリーちゃん、とクリスくんが言えば、マリーちゃんはややためらってから、じっとおれを見て。
    こくり、と頷いた。
    ……けれど。

    「でも、あんた人のいい嘘つきな感じする」
    「……それ矛盾してません?」

  • 117123/01/04(水) 01:04:32

    ラミはクリスのことを現時点ではクリスくんと呼んでいますが、うっかりクリスと呼び捨てにしているところが多々あります。こう、変換して読んでください。


    >>114

    ウワー!!嬉しい。こういう言葉嬉しい。こちらこそ読んでくれてありがとう!

  • 118二次元好きの匿名さん23/01/04(水) 01:47:52

    自信が持てないところはレミさんと似たのかね、ラミさん
    (やっべ、107でラミさんとレミさん間違えて感想書いちゃってた)

  • 119123/01/04(水) 02:05:49

    「ただの勘だけど。あんた、自分の無事を勘定に入れない気がするんだよね」
    「……ええと」
    「だから、命を無駄にしないこと。それが島に行く条件……ってのはどうだい」

    ……こんな幼い少女に、そんな風に言われるとは。
    クリスくんは苦笑しながら、隣の小さな頭を撫でている。
    おれは少し考えてから、頷く。そりゃおれだって、別に死にたいわけじゃない。……そういう可能性があるってだけで、おれ自身生き残る気満々なのだ。

    「マリーちゃんは人を見る目がありますからね」
    「クリス、アンタのことも一目で駄目な大人だってわかったよ」
    「え、それ初耳なんですけど……。なのに私をパパにしてくれたんですか? 愛じゃないですかこれ……」
    「アンタがパパだってことそんなに認めてないよ」
    「家庭崩壊の危機!?」

    愕然とするクリスくん。……にぎやかな家族だなあ。
    弟のことを思い出す。今もせっせと古本屋で働いているんだろうか。好きだったもんな、本が。
    そう、そうだ。レミのためにも。
    おれは、間違えたり、迷ったりしてはいけない。

    おれは、深く息を吸って、吐く。

  • 120123/01/04(水) 02:18:00

    「ありがとう」
    「……ラミくん?」
    「ラミ?」

    おれの様子が少し違うことに気が付いたのだろう。
    ちょっとだけ泣きそうな気持ちになりながら。おれは二人の頭に手を伸ばした。
    ちっとも警戒してないのか、二人は何をするんだろう、という顔でおれを見ていた。
    だからおれはいとも簡単に―――二人の頭から、フィルムを抜くことが出来た。

    「……あれ」
    「うん? 今何かした?」
    「……………いいえ、何もしてないよ」

    笑って、おれはそのフィルムを破棄する。

    破落戸から助けてくれて。幾日か交流を重ねて。いいやつだと知って。例えどんな過去があろうとも、友達になりたいとも思って。困っているなら助けてあげたいと思った。
    そんな彼を、保険にする。自分の目的のための。
    ――とんだ人でなしだ。

    口の中に苦く残る罪悪感。それを飲み込んで、嘘つきの顔で笑った。

    「ところで、クリスくん。定職に就きたいって話だけどさ」

  • 121二次元好きの匿名さん23/01/04(水) 02:56:16

    クリスを保険にするって話もその時自分は最悪死んでるって話も全部フィルムで抜き取っちゃった…?
    ラミくんが強かな嘘つきであると同時にすごく良い奴で困る…この後親子と交流を重ねてさん付けが取れたり小金貸したりするような関係になっていくんだと思うと故人なのが辛くて困る…

  • 122123/01/04(水) 02:59:17

    埃っぽいような、砂っぽいような空気の中に新鮮な空気が混じってくるのを感じた。

    見れば奥に階段がある。――どうやら上に上る階段のようだ。人一人分ほどの幅だ。

    おれたちは顔を見合わせてから、そこへと向かう。ここから地上に出られそうな気がするのだ。


    結構長い階段を昇って行った先は閉じていたけれど、台座のような仕掛けがあるんじゃないかと動かせば……、おれの力じゃ無理だったのでベポに動かしてもらえば、軋んだ音を立てながら出口が出てくる。

    そこは小部屋ほどの空間があって、真横はぽっかりと開いている――そこから覗けば、どうやらこの場所は割と高い場所にあるらしく、木の頂点がちょこちょこ見える。


    そして何より目立つものがある。――予想していたけれど、そこには祭壇があった。

    ほぼ写真と同じに見えたけれど、どこか違和感がある、と感じる。

    古い写真ではやはり劣化があるからこそ、ちゃんと自分の目で見たからこその違和感かと思ったが……、写真と台座を見比べてみる。



    目星ダイス 70以下で成功


    コラさん dice1d100=93 (93)

    シャチ dice1d100=27 (27)

    ベポ dice1d100=17 (17)

    ホーキンス dice1d100=61 (61)

    クリス dice1d100=95 (95)

  • 123123/01/04(水) 03:00:41

    というところで今日はここまでとさせていただきます。

    また保守のご協力よろしくお願いします。


    >>121

    愛着持ってくれるの嬉しい!

  • 124二次元好きの匿名さん23/01/04(水) 08:17:36

    保守

  • 125二次元好きの匿名さん23/01/04(水) 15:25:03

    コラさんが探索で結構外すのに危機的状況ではいい値出すのすっごい〝ぽい〟よね……

  • 126二次元好きの匿名さん23/01/05(木) 00:56:22

    ラミさんメモメモの前任者?だったのか…

  • 127123/01/05(木) 02:33:37

    保守と感想ありがとうございました!
    かなり遅くなりました、少しだけ書いていきます。

  • 128123/01/05(木) 02:54:45

    「んー、んん?」

    ベポが祭壇と写真を見比べながら、不思議そうに声をあげる。
    ねえ、と言いながら、祭壇を指さした。

    「なんか真ん中、欠けてない?」
    「え?」

    ベポの指さした方を見るために近づく。
    祭壇は三つの段となっており、それぞれ細かな装飾がされている。ところどころ金で彩られていたようで、すっかり黒ずんでいるがもともとはもう少し華やかだったのだろう。
    その一番上の段。そこの真ん中。ぽっかり空いたスペースがある。

    「……これ、写真だとわかりづらいけど……何かを置くような台座があったよな?」
    「うん。おれもそう思った。なんで欠けてるんだろう」
    「年月が経ってぶっ壊れちまったとかか?」
    「ありそう」

    ベポとシャチで顔を突き合わせて話をしている。
    その会話を聞きながら、ホーキンスが祭壇に近づき触れた。

    「……しかし、なぜ祭壇がこんな場所にある」
    「ホーキンス」
    「これでは隠されているようにしか思えない」

    ……確かにそれはそうだよなあ。
    だって、ほら。ここまで来るのに隠された地下通路使って登ってきたし。

  • 129123/01/05(木) 03:22:02

    「なあ、クリス。何かわかることはないか?」
    「……今必死にラミくんの言っていたことを思い出しているんですが、コクレア様が輪転の神あることとか、神父としての立ち振る舞いとか、賭場に行くのはほどほどにとか、仕事のやりかたとか、心構えとか、賭場に行くのはやめろとか……」
    「お前その頃から賭場に行ってたのかよ」

    なんかどっかでギリ真っ当に働こうとしていた頃って言ってなかったか? ああ、マリーさんが言っていたような。
    普通にラミがいたその頃から賭場通いをしやがってたのかよ。というか最初はほどほどにって言ってた注意がやめろって強い口調になってるじゃねェか。やめてやれよ。

    「と、まあ。結構ラミくんの言っていたことは思い出せるんですけど、この祭壇のことは初耳です」
    「でもこれ、レミの家にあったんだよな。だからラミが、」

    ……と言ったあと、はっと気づく。

    「あのさ、これ。レミの家にあったってことは……レミも知ってるんだよな」
    「それは……そうですね。恐らく」
    「だったらこの場所にあいつの手も入ってるんじゃないか、と、……思ったわけ、だけど」

    気付いた後、その可能性に至った。
    ……至ったんだけれども、でも、どうにもしっくりこない、と思った。
    自分から言い出したことなのに言葉尻が小さくなっていく。クリスが不思議そうにするなか、おれの言葉に同意したのはベポだった。

    「おれは、ここにはあの…悪魔はいないと思う」
    「ベポ? どうしてそう思うんだ」
    「ずっと思ってたんだけどさ、ここにいると甘い臭いが少し遠くなるんだ」

  • 130123/01/05(木) 03:39:32

    ……甘い臭いが。
    そういえば、ここに入る時ベポのやつ、自分の鼻を触ってたよな。鼻づまりでも起こしたのかなってちょっと思ってたんだ。割と頼ってる部分あるし。
    でもそうではなく。ここに入ると甘い臭いが遠く、なる……。

    「まあ、でもそれはそんなにおかしくないのでは?」
    「クリス?」
    「だって、ここは恐らくコクレア様の神殿です。ならばこの場所をコクレア様が守っていても――その加護が残っていても、不思議ではないのでは」

    ……それは、確かに。そういうの結構オカルト分野だと思うけど、ここまで立て続けにおかしなことが起こっちまうと、そりゃもう、信じるだろ。コクレア様を。
    じゃあつまり、ここら辺は安全地帯ってことなのだろうか。
    ――もし何かが起こっても、ここに逃げ込むことが出来るかもしれない。いや、立ち向かうやつばっかだろうけど、マリーさんとかいるじゃん?

    「神殿……か。ひとまずここが、またはさっきの建物が神殿かもしれないのはわかったが、それでこの祭壇が隠されていたわけは?」
    「あー……」

    確かに、それはまだわかっちゃいねェよな。
    うーん、と各々悩むが、……まあ、わからないよな。地下通路を渡っていったと思ったら、出た先がやや小高い場所で、そこに祭壇がある。
    ……でも、隠すんだったら、地下にそのまま隠さないのかな。やっぱりわかんねェ。

  • 131123/01/05(木) 04:00:07

    「いや、でもさ、これって逆に隠されてるのか?」

    「シャチ?」

    「だって別にほら、隠すなら地下に置いておく方がいいだろ」


    さっきおれが思ったことと同じことを言うシャチ。やっぱりそう考えるよなあ。

    ……おれの場合はそれで思考が打ち止めだったが、けれどもシャチは違うようだ。


    「むしろ、この場所に置いてある意味がある……とか?」

    「意味?」

    「いや、わかんないすけど……」

    「だが一理あるな。この場所に置くのが不自然であるのならば、ここにあるべく理由を探すべきだ」


    ホーキンスもシャチの意見に賛同する。賛同した瞬間シャチがホーキンスをえらい目で睨んだ。

    なんか因縁があるのか知らねえけど! 悪いけど今だけは仲良くしてな!



    ――とりあえず一通り調べたが、祭壇以外に何かあるわけでもなく。だからこそ、この祭壇だけがぽんと置かれている異質さを感じたけれども、ひとまずそれは置いておくことにした。

    第一の目的はローやマリーさんを探すこと。それを違うことはない。二人の無事が一番だ。

    なのでこの場所を出て、違う場所を探しに行くことにする。――ちょうど横穴の部分からすぐ外に出られるので、おれは改めてカームをかけなおしてから、ベポの背中にしょってもらった。

    ……そうだよ、ここから飛び降りるの危ないからっての気遣いだぜ!



    幸運ダイス 50以下で成功

    dice1d100=98 (98)

  • 132123/01/05(木) 04:01:17

    ファンブってるじゃん。
    ……というところで今日はここまでにさせていただきます。
    また明日書きにくるので、保守のご協力をお願いします。
    けれども、明日お仕事がお休みなので用事が出来なければお昼に来れるやもです。

  • 133二次元好きの匿名さん23/01/05(木) 11:59:37

    面白かったです
    コラさんが可愛いし、ギャップのあるクリスさんは魅力的だし、ホーキンスとシャチは仲よくしよう!

  • 134123/01/05(木) 20:30:17

    保守ありがとうございました。今日も書いていきます。

  • 135123/01/05(木) 20:57:52

    ――飛び降りた瞬間のことだった。

    がなる茂みの音と、風切る騒音。

    凄まじい勢いで、自分たちに向かって何かが襲ってくるのに気づく。


    「ッ……?!」


    まるで待ち構えていたように、いたるところからこちらに向かって襲い掛かる木のつる。

    場所を捕捉されていたのか!?と焦りつつ、反応が遅れたために、ベポともどもその攻撃を喰らってしまう。

    捕捉されちまっていたなら仕方がない、とおれはすぐさまカームを解除する。


    「ベポッ……!」

    「っ、了解コラさん、しがみついてて!」


    ベポが地面を蹴り上げながら一気に跳ねる。次々と迫ってくる木のつるを、ミンク族特有のパワーと素早さを武術に溶かし込みながら一気にさばいていく。

    むき出しにした爪で切り裂きながら、それぞれ大量に迫ってきた木のつるに対処していると、――森の奥から、何か違うものが大量にやってくるのがわかる。


    必死に振り落とされないようにしがみつきながらそれを確認する。

    茂みがそのまま丸く固まったようなそれから、八本の螺子くれ曲がった木がつるに巻かれながら生えている。

    まるで生きているかのように自由に八本足を動かしながら、植物で出来た大蜘蛛が、――凄まじい勢いでこちらにやってきた。


    その数dice1d50=24 (24) 体

  • 136123/01/05(木) 21:16:32

    木のつるによる攻撃に加え、大蜘蛛が敵対するように木を削ったような鋭い爪で一気に襲い掛かってくる。

    それをなんとか避けながらたまらず叫んだ。


    「はっや……!」

    「多分あいつ、中身がすかすかなんだよ! 機動性だけに特化してる!」


    ただでさえ木のつるでの攻撃も早いのに、あの蜘蛛の動きも同じうように早い。多分ベポよりも大きいのに、そんなに素早いってありかよ! かさかさ八本足を動かす動きも気持ち悪いし!

    そんな風にツッコんでも、敵は止まってくれはしない。

    シャチがハルバードを上空から一気に振り下ろす。ホーキンスが不思議な剣で一気に木のつるを切り裂く。クリスが的確に蜘蛛の根元や、誰かに当たりそうな木のつるを狙っていく。


    数を減らして行っているけれど……それでも、敵の数は多い。

    ああくそ! 本体はどこにあるんだよ!



    残っている木のつるの本数

    dice1d100=98 (98)

  • 137123/01/05(木) 21:19:52

    対処出来た数


    シャチ dice1d98=84 (84)

    シャチ dice1d24=5 (5)


    ベポ dice1d98=19 (19)

    ベポ dice1d24=17 (17)


    ホーキンス dice1d98=63 (63)

    ホーキンス dice1d24=10 (10)


    クリス dice1d98=2 (2)

    クリス dice1d24=5 (5)

  • 138二次元好きの匿名さん23/01/05(木) 21:23:45

    前回のスレに引き続き今回もコクレア様関連の目星失敗してて空気読みすぎだろ…
    そして今回もダイスが荒ぶっている…と思ったらシャチすげぇ!

  • 139二次元好きの匿名さん23/01/05(木) 23:38:09

    森の中の少し拓けた場所にある建物に入って、台座の隠し扉から長い階段を降りて地下通路を歩く……そこを進むと今度は上へ続く階段があったので登る。登った先は閉ざされていたけど仕掛けを動かすと出口が現れて祭壇のある場所に出た。
    ここまでは一本道だったんだろうか…あのたくさんのコウモリはどこから入ってきたんだろう
    祭壇が小高い場所にあったのは地下や低地よりも木のつるの攻撃が届きにくいからとか…?ローやマリーさんはもっと森の中心にいるのかな…わからん!

  • 140123/01/06(金) 00:00:41

    >>139

    ぬあっ……フィーリング書いていたものだから……。

    ちょっとだけ外に通じる隙間があったことにしておいてください。これは単純なミスで、他に抜け穴はありません。

  • 141二次元好きの匿名さん23/01/06(金) 00:03:27

    へんな深読みをしてしまった!りょうかいれす!

  • 142123/01/06(金) 02:31:40

    全員の手によって――特にシャチによる活躍によって、敵はすべてハルバードに切り裂かれている。
    次々と高速と言っても過言ではない動きで襲い来る木のつたを、その長い柄を存分に振り回しながら切り裂いていく姿は、獅子奮迅の活躍と言えるだろう。
    シャチは冷たい海の中でも自由自在に動けるうえに、肺活量も化け物レベルで強い。そのため陸での活動でもほとんど疲れなく俊敏に動き続けることができる。それはペンギン、ないしハートの海賊団のメンバーも同じだ。
    みんな強い。……そう思うたびに、守られている現状が歯がゆくなるが。

    同じく敵からの攻撃を叩き落しているのはホーキンスだ。
    あの謎の剣を使いながら、自由自在に柄部分からいくつも生えている刃……のようなもので的確に木のつるを打ち落としていく。
    一振りしただけで一気に木のつるが切り裂かれていく姿は圧巻だ。

    「あの人らつっよ……」

    とベポの後方に居つつ、こちらへ来るものだけ正確に撃ち抜き続けているクリスがびっくりしながら言う。
    おれからしたらクリスも大概だけれども、まあわかる。すげ~わかるぜ!!

    ひとまず、大体の敵は対処することが出来た。
    激しい波は止んだ、打ち漏らした数もなく無傷のまま終わる。
    ……にしたって、怖いな。気付かないうちに不意打ちで大量の手数とともに押し寄せてくるなんて。

  • 143123/01/06(金) 02:53:00

    戦いが終わっても全員特に疲れた様子はない。
    ……それにほっとしつつ、おれはベポの背中から降りる。

    「ベポ、ありがとな。おれのこと気にしながら戦ってくれてただろ。助かった」
    「ううん、気にしないで。コラさん一人くらいちょちょいのちょいだよ!」

    マジかすげェな! これだったら、おれが今よりもっと大きくなってもちょちょいのちょいなのかな。
    なんとな~く前世と同じくらいでかくなりそうな気がするし。あ、でもそうなったらおれがベポを背負ってやるのもいいかもしれねェ!



    全員の無事を確認しつつ、また森の奥へと進んでいく。
    一応歩いている最中はカームをかけつつ。
    それぞれの姿を確認しながらも、全方向に注意しながら進んでいった。
    どこに行けばいいのかはわからないが…とにかく、森が鬱蒼と茂る方角へと足を進める。

    ……ロー。
    カームをかけている以上、話をすることは出来ない。だから、ついあいつのことを考えちまう。
    無事でいてくれ、頼む。祈る気持ちが焦燥感を掻き立てる。
    ただ、ただ。あいつを失うのが怖い。怖くてたまらないのだ。

  • 144123/01/06(金) 03:06:11

    ――その後も、幾度か襲撃はあった。
    けれどもその度に危なげなく対処し、反撃していく。
    何度も大量のつると共に、虫に模したような化け物も現れる。敵の数は減ることはないうえに、その無機物的な存在のせいで、向こうにダメージがあるともあまり思えなかった。
    こう、いうなれば、こちらはじりじりと何かをすり減らされているのに対して、向こうはずっと万全の状態でいるような悪い予感。

    身体的な疲れは少ないけれど、それでも精神的な疲労はある。
    仲間が無事か、娘が無事か。そんなことを不安に思うたびに、心臓をがりっと削られているような痛みを感じるのだ。

    (無事でいてくれ)

    祈る。

    (無事でいてくれ。無事でいてくれ。無事でいてくれ)

    ……そんなことしか出来ない自分が、もどかしい。

    森の深さは増していく。上空は覆いかぶさる木々のせいで空はとっくに見えない。
    まるで夜のような薄暗さ。
    見たことのない植物や怪しいキノコも生えている。ただキノコに関してはベポたちが知っているようで、食べちゃだめ!と身振り手振りで伝えてきたため、毒キノコなのだろう。
    ……虫はいない。動物もいない。生命が感じられない森だ。木々だけが不自然なほど生い茂る。

    そんな風に歩いて行った先――それはあった。

  • 145二次元好きの匿名さん23/01/06(金) 03:36:03

    このレスは削除されています

  • 146123/01/06(金) 03:43:33

    ↑訂正
    ちなみに現在地と神殿と祭壇の位置。
    ……を開示したところで、今日はここまでにさせていただきます。
    また保守の方をどうかよろしくお願いします。

  • 147二次元好きの匿名さん23/01/06(金) 10:52:58

    祭壇は島の端なのか…
    祭壇の上にあったものってなんだろう、手鏡を置くには取っ手が邪魔だろうし

  • 148二次元好きの匿名さん23/01/06(金) 18:13:40

    このレスは削除されています

  • 149二次元好きの匿名さん23/01/06(金) 20:40:59

    神殿の地下通路から海の傍の祭壇まで出て、現在は地上を通って神殿方面へ戻っている途中って感じかな?
    神殿は森の正面入口から比較的近い場所にあったんだな…昔は人々が足を運ぶことも多かったのかもと思うと妥当な位置かもしれない

  • 150123/01/07(土) 01:11:50

    保守ありがとうございます。続きを書いていきます。

  • 151二次元好きの匿名さん23/01/07(土) 01:13:37

    >>1

    今更ですが、たて乙です!

  • 152123/01/07(土) 01:49:28

    「……!?」

    そこには建造物があった。それだけ言えば先ほど見た神殿と同じように思えるが――それに関しては大きさが違う。
    周りをかなり高い木が囲んでいたものだから気が付かなかったのだろう。何段にもくすんだ石がピラミッド状に積み重なり、真ん中を長い階段が走っている。
    その石すべてに幾何学模様のような不思議な文様が深く刻み込まれていて、見るだけで圧巻される。上から覆いかぶさるように苔や蔦が生えていることから、ずっと昔からあったように思える。

    (……なんだこれ)

    まるで祭壇のようだ、と頭によぎる。
    祭壇は確かさっき見たはずなのに、この大きなそれもおれには何故か同じように祭壇だと思えた。
    けれど、なぜだろう。寒気がする。
    ……嫌な予感がずっと止まないのだ。


    「こんにちは」

    ――涼やかな声が聞こえた。
    けれども、どこか脳髄に染み渡るような、深淵に引き込まれるような引力を持った甘い声のようにも聞こえた。
    見れば、階段の上から誰かが降りてくる。
    そこにいたのは、クリスと同じ神父服を首元まできっちりと着込んだ青年だった。
    どこかレミに似ている。似ているけれど、顔に傷はなく、丸眼鏡をかけている様子もない。

    「――――」

    反射的にカームを切った。……既に見つかっているから、という理由もあるけれど、それだけではなく。
    時と場合によったら、すぐさま逃げろと叫ばないといけないような気がしたのだ。

  • 153123/01/07(土) 02:03:54

    カームを切った瞬間、隣から息を呑む声が聞こえた。
    見れば、クリスが目を見開いて、青ざめた顔で、じっとその青年を見ている。
    心無しが腕が震えている。
    信じられない、といった風な声で、小さく呟いた。

    「ラミ、くん……?」

    ………え?

    青年の笑みが深まる。……いや、そうだ。そりゃ、レミに似ているけれどレミじゃないのならば、それはラミに決まっている。
    だがしかし、ラミは死んだはずだ。
    全員が口を揃えて言っていた。生きているはずがない。
    なのに目の前にいるその人は、まるで生き生きとした様子で、階段を下りてくるばかり。
    その得体の知れなさに――一歩、後ずさる。

    「やあ、クリス。元気にしていたかい?」

    友好的な様子で、両腕を広げながら下へとくだっていく。
    近づいてくるたびに、身の毛がよだつような思いがした。

    「ラミくん、なんで」
    「ああ、死んだかと思った? そんなことはないよ。運よく生き残っていたんだ」
    「は……」

    そんなことをにこやかに言いながら、それは語りだす。

  • 154二次元好きの匿名さん23/01/07(土) 02:06:15

    生きてたんかいワレェ!?!?

  • 155二次元好きの匿名さん23/01/07(土) 02:20:34

    本当に本物か!?
    ガワだけだったりしない?!

  • 156二次元好きの匿名さん23/01/07(土) 02:26:47

    今のレミくんに似てるなら肉体的には本当に生きてて中身だけ…みたいな事も有り得る?
    でもめちゃくちゃ童顔な兄弟だからどう…どうなんだ!?

  • 157123/01/07(土) 02:32:38

    それが階段を下りてくる様が、まるでスローモーションのようにゆっくりになる。
    どこか甘い臭いがさらに濃くなった気がした。

    「おれが殺されかけた時、なんと豊穣神様が助けてくださったんだ。おれは自分を恥じたね。“らせん”なんて悪神を信じて、豊穣神様を疎んじていた自分を殺してしまいたいくらい憎らしく思ったよ」

    「でも、そんなおれを豊穣神様は許してくださった。加護だってくださった。ああ、おれは本当に愚かだった。クリス、“らせん”なんてそんなものを信じるのはやめて、おれたちと一緒においで」

    「そこの金髪の少年。これには誤解があったんだ。悲しきすれ違いというやつだね。君たちも一緒においで。豊穣神様がみんなを受け入れてくださる」

    「さあ、こちらで幸せになろう。大丈夫、何も不安に思うことはない」

    「さあ―――おいで」

  • 158二次元好きの匿名さん23/01/07(土) 02:43:17

    め、目を隠せー!!

  • 159二次元好きの匿名さん23/01/07(土) 02:44:50

    いかにも悪魔っぽい事を言いなさる…

  • 160123/01/07(土) 02:47:11

    撃つ?撃たない?


    >>161

  • 161二次元好きの匿名さん23/01/07(土) 02:53:31

    撃つ

  • 162二次元好きの匿名さん23/01/07(土) 02:55:31

    マジか……!

  • 163二次元好きの匿名さん23/01/07(土) 02:58:03

    ヒェッ…どうしても万が一本物だったらを考えちゃうけど…そういうのが命取りになるかもしれないしな…

  • 164二次元好きの匿名さん23/01/07(土) 03:01:09

    この場で本物かどうか判断できる可能性があるのはクリスだけか 腕震えてたけど今メンタル大丈夫か

  • 165123/01/07(土) 03:04:56

    ばぁん!と――銃声が、鳴り響いた瞬間、ラミの姿をしたそれは仰け反る。
    今、見間違いじゃなかったら額に銃弾が当たったような、ってクリス……?!

    「――――貴様、誰だ」

    底冷えする声。見ればひどく凍えたような目をしたクリスが、睨むようにそれを見ていた。
    あれだけ動揺していたように見えたのに、一瞬で切り替わったそれは、柔らかな口調すらも一転させ、神父から兵士に変わる。

    「クリ、」
    「気を抜くな。アレから目を離すな。抜いたが直後食い殺されるぞ」

    ―――きゅ、急に性格変わった……?
    おれこそ動揺している間も、クリスは一直線に目の前のラミ?を見つめたままだ。
    おれは恐る恐る撃たれたラミを見る―――いや。
    間違いなく額を撃たれたはずなのに、仰け反ったままの状態で、それは停止している。

    「いたいなァ」

    そして――何事もなく、元の体勢に戻った。
    額に空いた穴は、しゅるしゅると修復していく。

  • 166123/01/07(土) 03:25:16

    「いたい、いたい、いたい、クリス、友達なのに、ひどいじゃ、ない、か?」
    「生憎俺が友人と呼んでいるのはラミロだけだ。貴様は決して違う。――貴様は、なんだ」
    「ふふ、ふふふふ、……ああ、ひどい、ひどい。いきなり友達の頭を撃つなんて」

    撃たれたのに、ラミはにこやかに笑いながら、弓なりに目を細める。

    「さすが、人殺し。そんなのでよく親のおままごとなんて出来るね」
    「……ッ」

    その言葉が、クリスを切り裂いたのがわかった。
    ずっと混乱の最中だったおれも、ようやく気付く。思い知る。あれは、たとえ見た目はラミだとしても、中身は別の、醜悪な何かだ!

    次の瞬間だった。ラミの真横から、シャチとベポが一気にとびかかる。
    シャチのハルバードが、ベポの爪がラミを切り裂こうと振り下ろされた。

    ――そして、その刃も、爪も、確かにラミを捕らえ、切り裂き、……その身体は、葉とつるとしなびた木に変わり、崩れ落ちた。

    あはは、あはは、あははははは……

    醜悪な笑い声が、森の中に響いて消える。
    沈黙が降りた後も、しばらく黙り込むことしか出来なかった。

  • 167123/01/07(土) 03:49:40

    やつがいなくなった瞬間、どこか空気が軽くなった気がする。
    なんで現れたのだろうか。様子でも見に来たのか? そして、なぜラミの姿をしてきたのか。
    ……わかることはただ一つ。
    あれは明確なおれたちの敵で、決して油断してはいけないということだ。

    「悪趣味だな」

    ぽつりとホーキンスがこぼす。ああ……お前もそう思うのか。
    クリスは拳銃を握ったまま、俯いている。ぎちぎちと拳銃を握る手に血管が浮かんでいるから、よほど強い力で握りしめていることがわかる。

    「ホーキンスは動かなかったけど、あいつが本物じゃないってわかってたのか?」
    「いや。様子見のつもりだった。アレの正体はわからなかったからな」

    どうだった、と目線だけでホーキンスは、こちらに戻ってくるシャチとベポに問いかける。
    シャチは消化不良みたいな顔をして『脆い草を切った感触しかしねェ』と答えた。
    そしてベポは――、

    「た、たたたたいへんだ……」
    「おい、ベポ、どうしたんだ?」

    どこか慌てた様子できょろきょろしているものだから、思わず声をかけたら縋るように腕を掴まれた。

    「は、花の臭いが強すぎてわからなかったんだ! でも今わかった! 近くからキャプテンの……キャプテンの匂いがする!」
    「……はあ!?」

    なんだって!?

  • 168123/01/07(土) 03:50:26

    というところで今日はここまでにさせていただきます。
    どうか保守のご協力をお願いします。
    あとうっかり豹変クリスの一人称を俺にしちゃった。おれって変換しておいてください。

  • 169二次元好きの匿名さん23/01/07(土) 04:20:54

    クリスさんのギャップにときめく・・

  • 170二次元好きの匿名さん23/01/07(土) 12:40:40

    クリスさんのギャップが本当に好きだ
    こんな魅力的なキャラを作ったスレ主さんを尊敬します

  • 171二次元好きの匿名さん23/01/07(土) 21:58:16

    やっとローの行方の手がかりが…!

  • 172123/01/07(土) 23:45:42

    保守と感想ありがとうございます。

    続きを書いていきます。


    >>170

    安価こねくり回したおかげなので、安価入れてくれた人の功績。

    ここだけの話、安価で二重人格って出たので、それを二面性って捕らえて全員に別の一面があるようにしてます。性格にかかわらず。

  • 173123/01/08(日) 00:04:42

    ローの匂いがする!? それってどういうことだよ!

    「花の臭いが強すぎて……? つまり今は」

    ホーキンスが何かぶつぶつ言ってるけれど、気にしてはいられない!
    おれはベポに飛びつくようにしてローがどこにいるかを叫ぶように問いかける。

    「ベポ! どこに! どこにいるんだ!」
    「待って、待って! 今、ちゃんと見つけるから……!」

    ベポは集中しだす。おれはいてもたってもいられなくくっついたままだったが、べりっとシャチに剥がされた。はーなーせー!!!
    じたばたしているおれをよそに、ベポは目をつむって、鼻をひくひくさせながら場所を特定しようとしている。
    ロー。ロー。ロー……! 心臓がばくばくと鳴る。痛いくらいだ。どうか、どうか、とただ祈る気持ちで、ベポの行動を待つ。

    そして、時が来たかというようにぱちりと目を開いた。

    「あっち!」

    そう言いながらベポはピラミッド状の神殿を指さす!
    まさかあの上に……!
    その頃になってシャチがようやく離してくれたので、おれは一目散に神殿へと走り出す。
    おれが階段を上ろうとして―――ベポは神殿の裏の方へと走っていた。あ、そっち!?

  • 174123/01/08(日) 00:23:36

    階段を下りてベポについていく。そのまま神殿を回って、裏の方へと向かって、それからもう一度立ち止まって確認。
    そして迷わずさらに奥へと走っていった。
    おれたちも後に続く。
    走りながら、おれはベポに向かって叫んだ。

    「ベポ、ロー、ローは無事なのか?!」
    「……生きてる! 生きてるよ! でも、血の臭いがすごくする……!」
    「なん、だって……」

    生きているのは喜ばしい。いや、死んでるなんて思ってもいなかったけれど、それでも確証が得られたのは嬉しい。
    だが血の臭いがすごく、する、だなんて……。
    ああ、くそ! 大丈夫だ! ローは海賊でドンパチやってきたんだろ?
    ……海賊でもあんまりドンパチやってほしくねェなあ!

    思考がまとまらない。余計な考えばっかり浮かぶけれど、次の瞬間には真っ白になったり、何も考えられなくなったりする。
    ああ、もう。おれって冷静に考えることすら出来ねェじゃねェか。
    役立たずにはなりたくねェのに!

  • 175123/01/08(日) 00:38:45

    そして走っていった先――そこで唐突にベポが止まる。
    同じく後ろを走っていたおれは止まりきらずにベポの背中に思いっきり突っ込んだ。
    いたた……と鼻を押さえながらベポ? と声をかける。

    「おい、どうしたんだよ」
    「ここら辺から……臭いがするんだけど……」

    動揺したベポの声に疑問を抱きつつ、おれはベポの横から前をのぞき込む。
    何もなかった。
    ……いいや、違う。ベポの目の前は、切り立った崖になっていて、森も何もない。
    海が、そこにある。
    ――おい、待てよ。

    辺りをきょろきょろと見渡す。
    崖ギリギリまで木や植物が生えている。
    ここら辺にいるんだろ。血がたくさん出ているのかもしれないなら、どこかに蹲っているかもしれない。
    無事だろうか。早く見つけてやらないと。
    ロー。どこにいる。どこにいるんだ。

    視線をあちらこちらにやっていたからだろうか。おれは視線を地面に向け――時が止まったような錯覚を、感じた。
    血が。
    掠れたような血が、崖から海に向かって――伸びている。

    「え、あ」

    ロー。

  • 176二次元好きの匿名さん23/01/08(日) 00:46:18

    コラさん、焦って自己犠牲に走るなよ……
    ホーキンスの助言が不穏なんだよなあ

  • 177123/01/08(日) 01:16:27

    おれは思わず前に向かって飛び出す。

    「コラさん!?」

    ベポの声に振り返ることすらしなかった。ただ前へ、前へ、手を伸ばして。
    そしてそのまま海の方へと向かって崖を蹴る。
    一気に足場がなくなる。身体が投げ出される。
    ――重力のまま、おれは一気に海へと落ちる。

    ロー。お前、海に落ちたのか?
    ……能力者は海に落ちたら泳げねェんだぞ、知らないのか? まったくしょうがないな。
    って、あれ。
    ――そこまで考えて、思わず笑っちまった。
    おれも能力者だろ。ばかだな。


    そのまま海にたたきつけられるはずだった身体は、それより前に胴体に腕をまかれ、口元を手で押さえられ、強引に体制を整えさせられる。

    「あんた、大説教ですからね……!」

    そう低く怒ったような声が耳元で聞こえた。――シャチの声だ。
    そこで、おれは自分の仕出かしたことを思い知ったのだ。
    ……ドジっちまったな、これ。

  • 178二次元好きの匿名さん23/01/08(日) 01:18:24

    シャチ説教してあげて……
    コラさんの捨て身の行動にヒヤっとしたよ
    ローの危機には体が勝手に動くんだろうなあ

  • 179123/01/08(日) 01:30:07

    シャチに庇われながら海に飛び込む。
    崖の上から海までなかなか距離がある。シャチが庇ってくれたとはいえ身体にそれ相応の衝撃と、そしてその瞬間一気に襲う虚脱感。まったく力が入らねェ。
    頭までしっかり海に入ったのに、口と鼻をシャチの手が覆ってくれるおかげで水を飲み込まずに済んだ。
    そのまま海中で体勢を整え、海上に浮上する。

    「ぶはっ、はあ、はあ、はあ……!」
    「あんたこれ、お仕置きものですよ……! 次のトイレ掃除しばらくコラさんですからね!」
    「げほっ、っは、ごほ……! あ、甘んじて受け入れるぜ……」

    本気のシャチの怒った声だ。うん、今回に関して10割おれが悪い。
    ……多分、今さっき、おれは自分のすべてがどうでもよくなっていたのだ。
    死にたかったわけじゃないけれど、ローの無事を考えすぎて、身体が勝手に動いていた。そこに自分の命とか無事とかをまったく考えなかった。……やっぱりちっとも冷静になれてなどいない。
    くそ、と。防ぎきれなかった海水が鼻に流れ込んでつん、とする。
    本当に役立たずじゃねェか、おれは。

    「まったく、いくらなんでも無茶しすぎだっての。これキャプテンが聞いたらマジ切れしますって」
    「……よく、わかってんじゃ、ねェか」
    「ほら、キャプテンもそう言って、」

    って、え? とシャチが呆けた声を出す。
    ――今、ローの声が。
    顔を上げる。上げて目を見開く。キュウ、と喉が閉まるような感覚がする。

    「………まったく、どういう……登場だよ」

    そこには、下半身を海に浸からせながら、岸壁に木のつるで肩や手のひらが突き刺された状態で磔にされているローがいたのだ。

  • 180二次元好きの匿名さん23/01/08(日) 01:31:02

    うわぁ……ローが……!

  • 181二次元好きの匿名さん23/01/08(日) 01:31:32

    能力者だから海水は弱点だしな
    やったのはラミか?考えたな

  • 182二次元好きの匿名さん23/01/08(日) 01:35:16

    シャチ~~!かっこよかったぞ…!
    コラさんは自己犠牲とかそういうつもりは全然ないんだろうな…だからこそ危ういんだけどとりあえずローと再会できて良かった!!

  • 183123/01/08(日) 01:40:04

    「っロー……!」
    「わ、コラさん、暴れるなって……!」

    よく見れば、ローの血が海水を赤くしているのがわかる。
    いつからそこにいたんだ。いつからそんな怪我の状態で浸かってたんだ。
    こんなの、ローみたいな医者じゃなくたって危ないってわかる!

    「ロー! ロー!」
    「……コラさん、落ち着け……。今の……あんたは、ガキ、そのものだぞ……」
    「ッでも、でもよォ!」
    「シャチ、おれはまだ平気だ。先にコラさんを上げさせろ」
    「……アイアイ」
    「ロー!」

    おれが必死に手を伸ばす。そんなおれにローはいつも通りの笑みで――青ざめた顔のままで、口を開く。

    「今のあんたじゃ、助けにならねェ。……わかるな」
    「っ……」
    「まず、落ち着け。もし危険な状態だったら……先に言ってる。まだ、おれは死ぬわけには……行かねェ、からな……」
    「ろ、ロー……」
    「コラさん。ひとまず上へ」

    おれは何も言えなくなる。だって、その通りだからだ。
    能力者だから海に浸かったら力が抜ける。子どもだからローを運べない。冷静になれないからまともに考えられもしない。
    ダメダメじゃねェか、おれ。

  • 184二次元好きの匿名さん23/01/08(日) 01:44:07

    コラさん子供の体にメンタル引っ張られてるし安堵と心配と無力感で内心ぐちゃぐちゃだろうな…ローの言うことが冷静で正しいのも分かるだろうし

  • 185123/01/08(日) 02:11:08

    おれが上にあげられたあと、シャチが再び海に飛び込み、ローを救出した。
    今現在、ローは手当てを受けている。
    もしもの時のように、シャチが荷物に手当て用の医療道具を持ち歩いていたのだ。それを木のつるに貫かれていた箇所に包帯が巻かれていく。

    「悪い……、助かった」
    「別にいいんですけど、キャプテン。いったい何があったんですか?」
    「油断した、としか言いようがねェな」
    「あんたともあろう人が、そんなことあるんですか?」

    信じられない、といった風にシャチが言う。

    「見誤っていた。やつのことを、豊穣の神と呼ばれていた一生物だと考えていたんだ」
    「……それは、あの手帳を読んだからですか? ってか内容がわかったんですか」
    「内容がわかったわけじゃない。時間の風化や何かしらの衝撃で大分紙の表面も削り取られているせいで、読み取れることはなかった。ただ、あの手記はかなり変色していた。それは風化のせいじゃない」
    「じゃあなんの……」
    「ほんの少量検出された。あれは花の蜜だ」

    花の蜜。……なぜ、花の蜜が?

    「花はどこにでもあるにせよ、ここまで手帳を覆うほどの蜜が垂れる状況がどこにある。そんな植物ならあるかもしれないが、そんなものがあるというなら森だろう」
    「だから、森に行ったんですか」
    「それだけじゃない」

  • 186123/01/08(日) 02:28:09

    「花の臭い、だ」
    「あ……」
    「手記に残った花の成分。ベポたちが街中から感じた花の臭い。コクレア様とやらには花の逸話はない。意味深に残った手帳。記された豊穣の神。だが、コクレアに残っているのは輪転の神という一面。豊穣の神として定義するにはあまりに弱い理由付け。ならば、手帳に書かれているすべては、コクレア様ではなく、別の何かについて」
    「………」
    「だから、森に別の何かがいるかの確認をしに行った。“ROOM”を使ってな」

    そこまで言ってため息を吐く。

    「あれは、とんでもねェ化け物だな」
    「キャプテンがそういうなんて……いったい何がわかったの?」
    「生きているんだ」

    ……生きている?
    ローは巻かれた包帯の強度をしっかりと確認しながら服を着る。
    それから立ち上がり、近くにある木に触れた。

    「正確に言うと、生命反応が絶えず点滅している。森全体に」
    「ええと……?」
    「つまり、森が、生物と化したり、非生物と化したりを繰り返しているんだ」
    「意味がよくわからないんだけど……」
    「……わかりやすく言うと」

    ローが自分の触れている木を指す。

    「この木が、五秒後に動き出しておれたちを襲ってくる。そんなイメージをすればいい」
    「……!」
    「この森は、やつの手足なんだ。好きなように操れて、好きなように動かせる。そのたび、その瞬間、血が通う。紛れもなくあいつの一部となる」

  • 187123/01/08(日) 02:34:45

    つまり、この森は――。

    「既に化け物の腹の中、ということか」

    ホーキンスが言う。そういえば、この森に来た当初も言っていた気がする。
    ……当たっちまったな。
    そう思うと項がぞわぞわしてくる気がする。

    「さらに面白いことを教えてやるよ」

    ホーキンスにローが視線を向けた。
    面白いこと――それはろくでもないことなのだろうと、さすがのおれでも察することが出来た。

    「“ROOM”で広範囲を調べた結果、この森は地中深くまで根を張っている。そして、伸ばしている。それはもう、この島全域に渡るまで」
    「……それって!」
    「ああ、そうだよ」

    忌々しそうにローは、地面を睨む。

    「森どころか、どうやらこの島自体がほぼ化け物の腹の中ってことだな」

  • 188123/01/08(日) 02:40:55
  • 189二次元好きの匿名さん23/01/08(日) 12:56:28

    良ければ小ネタ聞きたいです

  • 190二次元好きの匿名さん23/01/08(日) 13:27:39

    保守

  • 191二次元好きの匿名さん23/01/08(日) 14:26:28

    オリキャラ達の声がどんなイメージなのか知りたいです
    誰に似てるとか

  • 192123/01/08(日) 17:25:46

    >>191

    オリキャラ声のイメージ、あんまり考えてなかったので今考えたやつでも

    クリスはペドロっぽいかな。ポケモンのアニメとかでの情けない声とかを思い出すし、めちゃかっこいい声も出せるので

    レミ・ラミは声優的に高めの声だしてるキッド? 優しく穏やかだけど怖い声も出す(豹変ラミ参照)

    マリーはモネに声が似ているかな……ただの好み

  • 193123/01/08(日) 17:31:15

    【小ネタ】
    クオルがハートの海賊団でやっている仕事
    ・ある程度の雑用(基本的に嫌がる)
    ・病原採取(血液を抜かれる)、そこから効果的な治療法の検討
    ・抗体(ワクチン)作成
    あとは仕事じゃないけど勝手に機材借りたり本を借りたりしながら病気の研究も続けている。
    それ以外は昼寝……したいが、たまに絡まれたり、コラさんに引っ張られたりして何かしら巻き込まれたりする

  • 194123/01/08(日) 18:02:21

    【小ネタ】
    アフロミンゴが海賊団を立ち上げるとするならば骸骨にアフロで背後にミラーボールの旗をつけます。
    海賊船は改造の末ギラギラに輝くタイプで、ライトが至る所にあるし、甲板にでかいステージがついてます。
    多分嵐のたびにライトが吹っ飛んでくので、ライト作る職人とか(もしくはアフロミンゴが自分で作るか)います。
    商船とか連絡船とか見つけると襲わずにアフロミンゴのステージが始まるので、恐らくファンが結構いるはず。

  • 195二次元好きの匿名さん23/01/08(日) 20:23:58

    追いついた!
    楽しませていただいています!

  • 196123/01/08(日) 22:11:17

    >>195

    読んでくれてありがとう!


    【小ネタ】

    クリスに関して神父と出た瞬間頭の中にアンデルセン神父が浮かんだので戦わない理由はなかった

    分厚い神父服の中に拳銃と弾薬をたっぷり仕込んでる

  • 197123/01/08(日) 22:17:22

    【マリーの小ネタ】
    色付き眼鏡をかけている理由は、ちょっと光に弱いからという理由だったけれど、これまでの描写で出す余裕はなかったのでここに書いておきます。
    彼女のご飯はマジで人気で島の人の中で食べたことがない人がいないとか。
    姉御肌で慕われっぷりがすごくて求婚者もそこそこいるけれど『うちにはダメ神父がいるからね…』という理由でお断りしており、クリスへの求婚者の好感度が下がる模様。

  • 198二次元好きの匿名さん23/01/08(日) 22:20:07

    知らない内に目の敵にされてるクリスさん草
    クリスさんの面倒も見てくれそうな甲斐性ある人だったらマリーさん頷きます?

  • 199123/01/08(日) 22:29:55

    >>198

    「それじゃクリスのギャンブル癖止めてくれるかい?」と任せます。

    それでみんな挫折しました。

    そしてクリスも可愛い娘を嫁に出させてなるものかと意地でも賭場に行くので、止めることは叶わず。

    ちなみにクリス曰く『海王類を一人で倒すくらいの人じゃないと……』らしい。ノーランドみたいな人がいたら血涙出しながら頷いていたかもしれない。

  • 200123/01/08(日) 22:45:18

    うめ

オススメ

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