【閲覧注意】尊い犠牲でした【その9】

  • 1二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 18:51:46

    なかったようなので立てました
    何か問題があれば消します

  • 2二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 18:56:29
  • 3二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 18:57:47
  • 4二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 18:58:39

    保守

  • 5二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 19:04:38

    もう9スレまでいったんだな、すげえや

  • 6二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 19:10:49

    記念保守

  • 7二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 19:20:09

    スレ立てありがとうございます
    ドーナツホールトレスとかたまに出てくる超エモいSSとかまだまだ読みたいのです

  • 8二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 19:30:24

    「動けなくなった“チリ”を放っぽって、昔のまんまな、このチリちゃんを連れてくか?
    ハッサクさんらがやっとんのは、そういうことやで!」
    みたいに突きつける原作軸チリちゃんはカッコいいと思うが、SSの犠牲軸ハッさん悪い意味で決意固まっちゃってるから何言っても滑り止めにさえならなさそうなのが……

  • 9二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 19:33:56

    猛禽の翼は大地を撫でて、石造りの枝葉は逆鱗を穿つ。
    はや遠き黄金卿は、蜃気楼に消え往く。

  • 10二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 19:34:25

    瓦礫を踏み越えて、コルサとアオキが割って入る。後から列を成してキマワリ達が着いてくる。その光景は一見コミカルで、つい三秒前まで死闘が繰り広げられていたこの場において如何にも場違いであった。横っ面に一撃貰って蹲るセグレイブも含めて。
    「こ、コルサのおじちゃん……そのキマワリたちは……」
    ポピーが問う。コルサのポケモン達はポピーが保護している。では、この推定ソーラービームで壁をぶち破ったキマワリ達は一体。
    「一匹はワタシと共に連れてこられたジムテスト用のキマワリだ。残りは……うむ、流石は此方の世界のワタシと言うべきか。どうやら彼らも此方のワタシがジムテスト用に育てたキマワリ達らしいのだが」
    スッとコルサはキマワリ達を一瞥する。キマワリ達はわちゃわちゃとコルサの周りを踊るように回っていた。
    「ワタシが……というか"コルサ"が閉じ込められていると何処かで聞いたのか、それともポケモンの直感か……いずれにせよ、自らの意思でボウルタウンから行軍し窓から乗り込んできたのだよ!」
    「ガッツがありすぎますの」
    ガックリとポピーは肩を落とす。その後ろで床に座すチリの眉尻が僅かに下向いたのは、アオキの目の錯覚だろうか。それまでの戦いの緊張感とはまた別方向で、ドッと疲れるような気をポピーは覚えた。

  • 11二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 19:34:57

    よくよくキマワリ達の姿を見れば、コルサと共に連れてこられたであろう一匹を除いて、身体にこの先消えそうにないような深い傷跡が残るものが殆どだった。彼らもまた、パラドックスポケモン達と命をかけて戦った戦士達であることは言うまでもない。
    ふう、とアオキが息を吐く。ネクタイを締め直してスーツを正し、壁をぶち破った際に乱れた髪を整える。
    「ポピーさん、ここからは自分達も協力しましょう。今の此方のハッサクさんを、貴女一人に押し付けるべきではありませんから」
    「えっ、でも、コルサのおじちゃんのポケモンちゃんはポピーがあずかってますけど……アオキのおじちゃんは……」
    そう、生憎ながらアオキのポケモン達は現在チリの下にいる。今この瞬間において、ポケモンのいないアオキは言い方は悪いが戦力外だ。しかしアオキは問題はないと言う。
    「コルサさんのポケモンがいるならば大丈夫です。コルサさん、オリーヴァをお借りしても———」
    アオキがコルサに向かって言いかけた時だった。
    「……って」
    床に座り込んだまま動くことのなかったチリが、ゆっくりと腕をアオキに向けて伸ばす。生気のない褪せた赫い眼が、確かにアオキの姿を捉えている。

  • 12二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 19:35:33

    「チリさん……?」
    此方側のチリが自発的に動くところを初めて見たアオキは少しだけ驚いた顔をした。その様子を視界に入れたハッサクが、眼を大きく見開いて動揺しているのをコルサは横目で確かめる。
    チリの手には、モンスターボールが握られていた。
    「いっしょに……たたかって」
    掠れた声は普段のアオキよりも余程小さく、しかしハッキリとアオキたちの耳に届いた。
    アオキはそっと、ボールをチリから受け取る。中にいるのは、彼女のエースであるドオーだった。
    「おじちゃん」
    ポピーにスーツの裾を引かれたアオキは、小さく頷いてハッサクに向き直る。ポケモン達の入ったボールを受け取ったコルサが真剣な表情で見据える。
    「それでは、続きを始めましょう。覚悟の程、よろしいでしょうか。ハッサクさん」
    「ふむ、三人での合作もなかなか悪くない。アオキ!ポピギャルド!我々の芸術をハッさんに見せつけてやろうではないか!!」
    「だからポピギャルドってなんですか……。でも、ありがとうですの。ふたりにだけほんねをいいますと、すでにからだがとてもつらいのです」
    「後でちゃんと休んでくださいねポピーさん」
    ポピーのデカヌチャンの傍らに並ぶように、コルサのウソッキーとチリから託されたドオーがボールから躍り出る。

  • 13二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 19:36:13

    起き上がったセグレイブが三体を睨む。テラスタルの輝きが、威嚇するように増していく。
    「……致し方ありません。お望み通り、二回戦と洒落込ませていただきますですよ」
    ハッサクがカイリューとアップリューを繰り出す。三対三、数を揃えようということらしい。
    「カイリューはワタシが相手しよう。ウソッキーならタイプ相性も有利だ。最も、ハッさんがその程度でやすやす膝を屈してくれるとは思っていないが」
    「では自分とドオーはアップリューを。ポピーさん、引き続きセグレイブを任せてしまいますが、よろしいでしょうか」
    アオキの確認に、ポピーはフンスと鼻を鳴らして頷いた。
    先に動いたのはコルサとウソッキーだった。"くさわけ"で加速しカイリューに接近する。迎え撃つカイリューはストーンエッジで助走距離を取り、ドラゴンダイブを放った。
    豪快なゴングの音を皮切りに、アップリューが、デカヌチャンが、セグレイブが、ドオーが動く。アップリューの"やどりぎのたね"をドオーが"まもる"で防ぎ、仕返しのように"どくどく"をかける。猛毒にやられたアップリューはしかし、動きが鈍ることなく"つばめがえし"でドオーの横っ面を薙いだ。

  • 14二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 19:36:34

    一方で、セグレイブの"こおりのつぶて"をストーンエッジで撃ち落とし、デカヌチャンが"かわらわり"をセグレイブの脇腹に捩じ込む。カウンターを叩き込むように、セグレイブが"つららおとし"を至近距離から落としデカヌチャンの頭を地面に叩きつけた。
    「何故、折れないのですか」
    吹雪よりも凍てついた声がハッサクの喉から出たことに、コルサは内心で哀しくなる。ハッサクには、もっと溌剌として太陽のように暖かく、時に眼が痛いほどに眩くあって欲しかった。しかし、それを求める権利は今の、或いはこの世界で生きていないコルサには無い。
    だから、答えるべきは。
    「ワタシが"コルサ"で、アナタが"ハッサク"だからだが?」
    ウソッキーの"れいとうパンチ"がカイリューの顔にモロに叩き込まれる。ヤチェの実もマルチスケイルも無いカイリューに、こおりタイプの技はとても痛いはずだ。案の定、カイリューは顔を右手で覆ってよろめきながら地面に堕ちた。
    「ポピギャルドは言ったな、"チリの願いは曲げさせない"と!!であればワタシもそれに倣おうではないか!!!ハッさん!!ワタシは泥炭に埋もれたハッさんの本当の願いを、この手で掘り起こして見せようじゃないか!!!!」
    ビシッ、と腰に提げたロープを掲げる。隣にいるポピーは少しだけ耳を塞いで顔を顰めた。身長差で距離は存外にあるはずなのに何故かうるせえ。多分顔も込みなせい。
    突き付けられた、瓦礫の砦を護る守護竜は。
    「……小生の、願いなど」
    鍵はまだ、土に埋もれて見つからない。

  • 15二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 20:05:48

    SS続きやー!
    まさかキマワリたちもアヴァンギャルドだったとは……ボウルタウンから直接行軍ってガッツがすぎるは……
    そして廃人チリちゃんが少しずつだけど、どんどん感情が出てきてる
    反応に乏しい姿を見てきた犠牲軸ハッさん そらびっくりする

  • 16二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 21:19:40

    9!どんどん続け!!

  • 17二次元好きの匿名さん23/02/11(土) 03:18:04

    保守

  • 18二次元好きの匿名さん23/02/11(土) 09:27:26

    「油断しとる ? なら それは 間違いやったな」 ▼
    「ポピーのきもちはもう くつがえりませんの」 ▼
    「自分の求めた 平凡 取り戻させていただきます」 ▼
    「芸術とは あまりに 儚い …… だから 小生の 手で」 ▼

    四天王ゲーム風台詞

  • 19二次元好きの匿名さん23/02/11(土) 17:26:35

    追い詰められて並行世界に行くことが出来たのだから
    ポケモンの改造をするトップ概念もあるんじゃないかと思った
    鳴き声も感情もないそれこそ兵器みたいなポケモン
    トップがもはや大穴から湧き出る化け物と変わらないポケモンを使っているのを見て
    これでもう大丈夫だと思うものの
    自分達の望むこうあるべきだというポケモンはいなくなったという悲しさがありそう

  • 20二次元好きの匿名さん23/02/11(土) 17:29:36

    >>19です。妄想が止まらねえぜ。

    トップは追い詰められたらパルデアの為になんでも出来そうな節があるから…

    過去に戻って助けれるっていうの発明してくれてハッピーエンドでもいいし

    救うには誰かを犠牲にするしかないとかチャンスは数回とか制限あると個人的に好き

  • 21二次元好きの匿名さん23/02/11(土) 19:55:54

    >>19

    この文みてたら テツノシリーズを従えてるトップを妄想してしまった

  • 22二次元好きの匿名さん23/02/12(日) 00:00:41

    犠牲軸の主人公に相当する人物、原作世界線と同じでも逆でも、どちらでも良さげ
    もし同じだったら、「新チャンピオン……!? 生きていたのか!?」現象が発生する

  • 23二次元好きの匿名さん23/02/12(日) 00:09:09

    別スレネタで申し訳ないけどオモダカさん人体実験スレで出てくる研究組織の残党がやらかした結果が原因だと徹底的に潰しておかなかった事に対してオモダカさんは曇るし、別の方面で組織と同じように大穴の現象を利用しようとしていることが皮肉に感じる

  • 24二次元好きの匿名さん23/02/12(日) 00:18:33

    SSではアカデミーに並行世界観測の装置があるって話だったけど、復興作業に便乗してこっそり地下とか増設してそこに隠してる可能性もある

  • 25二次元好きの匿名さん23/02/12(日) 00:24:38

    >>22

    入れ忘れてた 犠牲世界軸と原作世界線の主人公の性別が男女同じでも逆でもどっちでもいい

    同じだったら「お前……生きてたのか!?」現象が発生する

  • 26二次元好きの匿名さん23/02/12(日) 10:40:52

    保守

  • 27二次元好きの匿名さん23/02/12(日) 12:32:23

    メガシンカ×テラスタル特盛りしてくる超絶本気な犠牲軸ハッさん……
    いやさすがに過剰インフレがすぎるかな……
    でも四天王の大将だし、なにより犠牲軸は竜の里ついじゃって強くあらねばとめっちゃ強化しまくってるだろうから出来なくはなさそうな気もするんや……
    下手したらトップもできるかもしれん……チャンピオンやし……

  • 28二次元好きの匿名さん23/02/12(日) 12:39:42

    メガボーマンダは古代マンダと酷似してるので視界に入ったら廃人チリちゃんが暴走しちゃいそうでは……

  • 29二次元好きの匿名さん23/02/12(日) 19:02:43

    ハッサクさんならそんなヘマしないさ
    離れた安全な場所へチリちゃんを避難させてからメガシンカさせるよ

  • 30二次元好きの匿名さん23/02/12(日) 20:11:57

    前スレでコルさんが自分から攫うようにいい犠牲軸ハッさんがびっくりするSSあったと思うんだけど、そっちでは美術4までいかなかったってのが……
    原作軸ではあった出来事が、パラポケ騒動のせいで犠牲軸では起こらなかったっていうのが多そう

  • 31二次元好きの匿名さん23/02/12(日) 21:31:16

    智慧の泉に生け贄を沈める。
    血に澱む水を口にして、探究者が得るのは叡智か狂気か。
    結末さえも探究心を満たす甘露となりて、枯れた大地を蝕まん。

  • 32二次元好きの匿名さん23/02/12(日) 21:32:22

    一歩、進むごとに学生服に身を包んだ子供たちが後ずさる。
    一歩、進むごとに職員達が狼狽える。
    幼馴染を取り戻すという強い意志が、キハダの周囲に対してプレッシャーとして放たれている。背後に続くサワロは少しだけ、今のキハダが恐ろしい。
    「リップさん何処にいるかわかるの?」
    普段通りに振る舞うミモザが問う。振る舞う、というよりもそもそも今のキハダを恐れる理由がないのだろう。彼女のより深い部分にある本質に、僅かながら触れているが故に。
    「さて、どうだろうな。少なくともアカデミーの状態を見るに、なるべく綺麗で無事な部屋を使っているとは思うが」
    ヒビ割れた床を足で叩く。何があったかは知らないが、ジムリーダー達が全滅するほどの何かが起きたのは間違いない。そして、おそらくそれは今も断続的に襲いきていると考えていい。
    「街の建物も崩落した箇所がいくつか見受けられたな。まあ、門の向こうに見えた灯台の壊れ方を考えれば、全くマシなのだろうが……」
    「一応説明は受けたけど、大穴に住んでるポケモンってそんなにやばいのかしら。バイオレットブック、読んでおけばよかったな」
    「いうほど当てになるか?アレ。何百年も前の著書だし、そも当時とは大穴の内情も大きく変わっているだろう。だいたいどこかの博士のせいで」
    エリアゼロ最深部、ゼロラボで起きた事態について、教師陣も大まかに話は聞いていた。詳細を知るのは理事長と校長、それから当事者の生徒達だけだが。別の時代から連れてきたやべーもんを地上に解き放とうと考えていた人間を理解し切れるものは、キハダが把握する限りではいなかった。

  • 33二次元好きの匿名さん23/02/12(日) 21:33:16

    特に邪魔もなくアカデミーを進む三人。しばらく意識に働きかけるものが見当たらない中、背後から声が一つ。
    「どぉも」
    聞き覚えのありすぎる、間延びした声に三人同時に振り返る。案の定、そこにいたのは生物学教師のジニアだった。
    「皆さん彼方側の先生方ですよね?いかがでしょう、少し話しません?」
    警戒、キハダから放たれていたプレッシャーが変質して、ミモザの、サワロの、ジニアの肌を焼く。ジニアは特にどこ吹く風と、宥めるように両手を挙げた。
    「何が目的だ?」
    思っていたより低い声が出て、キハダは自分で少しだけ驚いた。
    「何も。強いて言うならぼくが話したいだけですねえ」
    立ち話もなんですので、座りません?
    教室の一つの扉を開けて、ジニアが誘う。はたして罠なのか、それとも本当に話したいだけなのか。三人は視線で相談して、誘いに乗ることにした。
    どうぞお座りください、とジニアに促された三人は適当に椅子を引っ張って座る。

  • 34二次元好きの匿名さん23/02/12(日) 21:33:56

    「何から話そうかなあ。まずは皆さんが何をしに来たのか伺っても?」
    「リップを取り戻しに来た以外に、何があると思ったんだ」
    「あ、それじゃあここに何があるか何も知らない感じですかぁ。そっかそっか……」
    一人納得するジニアに、サワロは怪訝な顔をした。
    「リップさんが閉じ込められている以外にも、何かあるような口ぶりだな。ジニア先生、一体このアカデミーに何があるのですかな?」
    「そうですねぇ、それを答える前に、まずこの世界で起きたことと、今回の事態に至る経緯をお話しましょうか」
    そうしてジニアの口から語られたのは、惨劇。
    大穴から溢れ出たパラドックスポケモンによる蹂躙。届く迎え撃つジムリーダー達の訃報。破壊されたパルデアの都市。傷付き壊れたジムリーダー達の遺族。徐々に狂気に取り憑かれた理事長。そして、垣間見てしまった歪な希望。
    ミモザが眉を顰めた。サワロが片手で口元を覆った。キハダは。
    「だからって、奪っていい理由になるわけないだろう」
    毅然とした態度で言い切る。ジニアはその通りですね、と苦笑した。

  • 35二次元好きの匿名さん23/02/12(日) 21:34:42

    「もちろん反対する人たちもいらっしゃったんですよ。クラベル校長やセイジ先生、サワロ先生に意外なところだとレホール先生も。平行世界への侵略に否を唱えました」
    「本当に意外なところだな。あの人そんな良心あったのか」
    「逆に賛成派だったのはハッサク先生、タイム先生、それからキハダ先生とミモザ先生でした。お察しの通り、亡くなられたジムリーダー達の縁者は軒並み"取り戻す"ことに賛同した」
    「待って、今の話だと賛成も反対も同数じゃない。ていうかあんたは……」
    言いかけて、ハッとする。ジニアは不気味なほど変わらない、人畜無害な笑顔で。
    「ジムリーダー達の奪還自体は、ぼく個人としてはどうでもよかったんですけどねぇ」
    背中を嫌な汗が伝う。顔が引き攣る。
    「興味が湧いたんです。平行世界の実在性の証明に」
    ああ、研究者というのはどいつもこいつもマッドだ。
    「ぼく自身は何も失っていませんし、過去への回帰に興味はありません。ただ、それまで観測し得なかったものを観測できるようになった。あまつさえ、直接その足で訪うことができると言われれば、必然そちらに傾かざるを得ませんでした。何せぼくたちは、そういう生き物だからです」
    言い終えた瞬間、ミモザが立ち上がりジニアの白衣の襟元を掴み掛かった。サワロは慌てて止めようとして、しかしキハダに制される。今は、抑えない方がむしろ良い。

  • 36二次元好きの匿名さん23/02/12(日) 21:35:18

    「あんっった、ふざけないで!!それじゃあ何、あたしたちの世界が襲われたのは、ジムリーダー達が連れ去られたのは、あんたの好奇心のせいだっていうこと!?」
    「噛み砕いて言うのならそうなりますねぇ。最も、そもそも発案者は理事長なのでぼくを責めるのはお門違いですよぉ」
    それはそうだ。ジニアは所詮、バクーダの背骨を折る最後の葦の穂を乗せただけ。穴を穿ったのは理事長———オモダカ。
    ギリ、と歯を食いしばる。ミモザは髪が乱れるのも厭わず空いた方の手で頭を掻き毟った。
    「一つ聞くが、理事長がわざわざアカデミーに計画の可否を尋ねたのは、何故だ?」
    極力感情を抑えた声でキハダが問う。
    「そりゃあ、もちろんアカデミーに平行世界の観測装置を設置するためですよぉ。具体的にはグラウンドに、バトルコートの邪魔にならない位置に装置は配備されています」
    「何故アカデミーに?」
    「此処の真後ろがエリアゼロがあるからですねぇ。あの日以来、エリアゼロからテラスタルエネルギーがそれまでの比ではない量溢れていまして、その上澄を取り込んで稼働させています」
    「ジムリーダー達の所へ直接転移できたのは何故だ」
    「美術室の上の階に空いた教室があると思いますが、そこに座標演算用のコンピュータを設置して、転移の事前に座標指定を行なっています。帰還の際はリーグの屋上を指定していますから、ジムリーダーの皆さんはアカデミーに観測装置があることはご存知ないでしょうねぇ」

  • 37二次元好きの匿名さん23/02/12(日) 21:36:17

    そうか、キハダが一言言って、ミモザはジニアの白衣から手を離す。脱力したように、ドカッ、と椅子に座り直した。本当に冗談じゃない、と吐き捨てて。
    「それで、我が輩達にそれを話して、きみは何がしたいのかね」
    「何も。強いて言うなら早くこの厳戒態勢が終わって欲しいくらいですかねぇ。ぼく、いい加減ちょっと息が詰まってきたので」
    「それはまた勝手だな」
    「研究者なんて勝手くらいが丁度いいので」
    サワロはジニアの返答に、大きな溜息を吐き出した。

  • 38二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 03:05:09

    ジニア先生不穏すぎるな......
    あとマジでレホール先生が意外すぎる多分良心以外の所での反対なんだろうけど結果的に倫理観が生きてるというか

  • 39二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 07:05:32
  • 40二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 16:38:23

    ジニア先生の勝手な感じほんと"研究者"って言葉が似合う
    いつも良質なSS感謝

  • 41二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 20:49:58

    SS続き待ってました!
    レホール先生は並行世界興味なさそうだし中立派っぽいと思ってたけど、反対した理由は"パルデアの危機に立ち向かって亡くなった人たちが存在した"という"歴史"を守るため
    レホール先生にとってジムリたちの死は語り継ぐ歴史の一つになってるとかなのかなあとか考えた

  • 42二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 21:08:13

    クレ○んのこめかみぐりぐりを犠牲軸ハッさんにかます原作軸チリちゃんという概念でシリアスの中和を試みる

  • 43二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 01:34:06

    保守

  • 44二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 07:08:34

    幽霊になったジムリたちによる合同会議とかもあったりしたんだろうか

  • 45二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 18:07:14

    ほしゅ

  • 46二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 19:43:29

    犠牲軸四天王のどいつもこいつも元の人物から離れまくってギャップがすごい感すきだけど、個人的に一番ヤバいと思うのが
    真面目・フレンドリーとギャップ萌えの塊なチリちゃんが精神崩壊してほとんど反応に乏しくなってることだとオモフ

    もし主人公が廃人チリちゃんにあったら

    ▶この人は?
     どこかで見たような……

    みたいな選択肢でそう

  • 47二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 20:39:51

    星震巡り巡りて後、地母神の怒りは天を焼く。
    霊脈巡り巡りて後、産声上げたばかりの王は義旗を裂く。

  • 48二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 20:40:31

    オンバーンが地面に叩きつけられる。それを足蹴にして獲物を頭上に掲げるのはデカヌチャン。その横でゴロゴロと転がって脱力するフォレトスは、そのまま自身のトレーナー———カエデに寄り添った。
    その反対側で、ドラミドロに拳を叩きつけて血に伏させるのはケケンカニ。その後方ではドオーがのんびりした顔を溶けさせて、脱力した身体が重力に負けたスポンジケーキのように平べったく潰れていた。
    満身創痍、と言う言葉が相応しい有様だが、勝ちを拾ったのは拾ったのだ。ハイダイは腕で額を拭って詰まっていた息を吐き出す。
    「クッソ、ハッサクさんホンマに容赦ないなったなぁ!」
    タンタンッ、と右足を踏み鳴らすチリを、此方側のポピーが宥める。とはいえ、チリが苛立つのも無理はない。ポピーは無人の車椅子を見遣る。
    此方側のチリが死角から壁をすり抜けて現れたドラパルトに連れ去られた。それだけでなく、ポピーも攫われるチリにしがみついて諸共連れて行かれてしまった。己の不甲斐なさに、チリは遂に壁を殴った。怖い。
    「……もう、増援もなさそうですね〜。今のうちに進みませんか?」
    「そ、そうですね。もしかしたらほかのひとたちとごーりゅーできるかもしれませんし……」
    ポピーとカエデは顔を見合わせて、先へ進もうと促した。舌打ちをするチリと、車椅子を畳んだハイダイもそれに従う。

  • 49二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 20:41:25

    新手の奇襲を警戒しつつ、一同は他のジムリーダー、或いは突入者を探す。
    暫く歩いて、
    「わっ」
    「おっと」
    「のあっ」
    「わあっ!」
    妙にデジャヴ。何者かにぶつかって尻餅をついたポピーは頭の片隅でそんな一文が過ぎったのを覚えた。
    「って、ライムさん!?無事やったんですか!!」
    「チリ!それにハイダイとカエデもいるのかい。お互いなんともないようで安心したよ」
    ポピーがぶつかったのは、誰あろう探していたジムリーダーの一人ライムだった。共に行動していたのはやはりハルトと、おそらく救出できたのだろうナンジャモ。
    「なんとも……ないわけではないですけど〜、まあそれは置いておきまして」
    カエデはライムの後方、ハルトとナンジャモを見る。正確には、ナンジャモが腕の中に抱えているものを。釣られてチリ達も同じ方を見る。
    「ナンジャモさん?その腕の中におる見覚えありまくりなかわい子ちゃんは???」
    「推定ハッサク氏のとこのフカマル先輩だよー。リーグの中一人でポテポテ歩いてたから拾ってきた!」
    「フルッカ!」
    ナンジャモの腕の中で、フカマルが「よっ」と言うように片手を上げた。
    チリはさっきまでの不機嫌は何処へ行ったのか、フカマルに近付いて。

  • 50二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 20:41:58

    チリはさっきまでの不機嫌は何処へ行ったのか、フカマルに近付いて。
    「こっちのフカマル先輩も可愛らしいなぁ。もうこの際チリちゃんちの子にしたらあかんかなあ?フカマル先輩どないや?」
    「フ、フカ……」
    「この非常事態にポケモンナンパすんな」
    「しかも住んでる世界が文字通り違うから連れて帰っちゃダメなやつだよ」
    「チリちゃんはせかいがかわってもブレなさすぎるですの」
    「あっ、こっちのチリさんもフカマル先輩ナンパしたんだ」
    張り詰めていたはずの空気が一気に霧散してしまった。フカマル先輩パワーなのだろうか、それともチリの地面タイプ狂いのせいか。
    「しゃーないやん、かわええんやもん!見てみいこのぽやっとしたのんびりフェイスにまん丸お目目を!!なんなら自分でも育てたいわ!!」
    「育てれば??????」
    チリって本性こんなんだったのか。ナンジャモもカエデもライムもちょっとだけ、チリを見る目が温くなった。
    「あ、そうだったわ〜」
    カエデがポンと手を叩く。その様子を見て察したポピーも、あっ、と声を出す。
    「ライムさん、こちら貴女のポケモン達ですよ〜」
    「お、悪いね。アンタ達が保護してくれてて助かったよ」
    「な、ナンジャモおねーちゃんのはポピーがあずかってますの」
    「わー!ありがとうポピー氏〜!」

  • 51二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 20:42:32

    ライムがカエデから、ナンジャモがポピーからポケモンを受け取る。よかった、無事で。そんな言葉が小さく聞こえたポピーは、罪悪感にまだしても押し潰されかかった。
    「それで、ハルト達はこれからどうするんだい」
    「一応、ナンジャモさんが見つけた資料でアカデミーに平行世界の観測装置があるって分かったので、アカデミーにカチコミしようかなって思ってます」
    「アタイ個人の思惑としては姉さんに一言だけ文句と小言言っときたいしね」
    「ポケモン取り戻せたし、戦力的にボクも一緒に行く気だよー!」
    三人はアカデミーに行くつもりらしい。というか今完全に初耳な情報がなかったか。
    「ポピー」
    「はい」
    「アカデミーに装置があるとか、チリちゃん聞いとらん」
    「すみません、いってませんでしたの」
    「そういう大事なことは早よ言って」
    「はい……」
    しょんぼりしたポピーを、カエデとハイダイは慰めるようにそっと撫でた。

  • 52二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 21:07:12

    SS続きだー! ついにハルトたちと合流
    というか犠牲軸チリちゃんも(元気なころに)フカマル先輩ナンパしたのねww

  • 53二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 06:46:31

    新鮮なSSだー!
    やっぱり合流はアオキコルサ組が最後になったか
    ハッサクの説得が先か合流が先か…

  • 54二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 07:02:56

    ドーナツホールも楽しみにしておりますですよ

  • 55二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 18:25:03

    保守
    テスト頑張ります

  • 56二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 18:59:33

    やっと追いついたー!
    ここまで色々と妄想できて最高!

  • 57二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 19:01:44

    何個目のスレだった忘れたけど、ジムリーダーが一人だけ生き残った世界も気になるな
    VS世界だけがいいなら別スレ建てるけど

  • 58二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 19:20:32

    シリアスのただ中に投下されるコミカルネタ好きなんじゃ……前スレのプ○キュア風に元凶にとどめのテラバーストぶっ放すジムリ&四天王&チャンピオンみたいなコミカル路線のネタもあげたいが、いいのが思いつかなひ

  • 59二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 20:33:46

    大穴の一番近くの街であるテーブルシティでも戦闘はあったろうし、テーブルシティの被害どんくらいだろうか

  • 60二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 21:37:39

    VSの時系列知りたい

  • 61二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 22:24:15

    私SS書きたい民ですがどのシチュエーションで書けばいいのやら…あと書けっかやぁ……

  • 62二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 22:43:58

    >>61

    ここでは色んなシチュでSS書いてる方がいらっしゃいますので、自分が好きなシチュで書けばよいと思います

  • 63二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 22:55:07

    幼児よ、無垢なる娘よ。
    何故傷付き向かい風受けながらも、強く無垢なるままであるか。
    せめて打ちのめされ心の支柱斃れたならば、
    情けもかけようものなれば。

  • 64二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 22:55:49

    寒い、とかろうじて音になる声がアオキの口から漏れた。地面タイプ故に寒さに弱いドオーも、つぶらな眼を半月型に潰していた。それでもアップリューの"タネばくだん"に合わせるようにアクアブレイクで迎え撃つのは、流石は四天王のエースというべきだろう。
    氷の破片が飛んできて、咄嗟に身体を傾ける。顔面スレスレを破片が通り抜けていった。視線を飛んできた方向へ向けると、セグレイブの"つららおとし"をデカヌチャンが"かわらわり"で殴り壊していた。デカヌチャンはその勢いのままに"じゃれつく"で殴りかかり、セグレイブの"こおりのつぶて"を額にモロ受けて後ろに転げた。
    「デカヌちゃん!だいじょうぶですか!?」
    ポピーが叫ぶ。デカヌチャンは足で反動を付けて立ち上がり、振り返ってポピーに親指を立てた。
    折れない。折れない。誰一人。
    ポピーを、アオキを、コルサを睨むハッサクは苛立つ気持ちを抑えきれず舌打ちする。何故、挫けない。何故、諦めない。何故。
    「ポピーさん、コルサさん、部屋ごと薙ぎ倒します。跳んでください。カイリューにだけお気を付けて」
    アオキが珍しく声を張って(それでもようやく平均的な音量だが)、ポピーとコルサはそれぞれデカヌチャンとウソッキーにジャンプを支持する。次の瞬間、ゴ……ッ、と部屋全体が揺れた。ドオーの"じしん"である。

  • 65二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 22:56:22

    揺れでふらついたポピーをコルサが支えた。ひこうタイプの付いたカイリューには何のダメージもないとはいえ、セグレイブとアップリューは想定外の攻撃に膝を、或いは足を床に着いた。
    宙に浮く僅かな隙を突こうとカイリューが"しんそく"で突貫する。ウソッキーがストーンエッジで迎え撃ち、減速させたもののそのまま突っ込んで放たれたドラゴンダイブで床に叩きつけられた。
    「フハハハハ!!流石はハッさん!!一筋縄では行かんか!!だが、ワタシのウソッキーとてそうヤワな鍛え方はしていないぞ!!!!」
    「おじちゃんうるせえですの」
    知っている。ハッサクは下唇を噛んだ。コルサの強さは、自分とてよく知っている。知っているからこそ、あの日。
    落下の勢いを利用したデカハンマーがセグレイブに振り下ろされる。セグレイブは横に転がるようにそれを躱した。空ぶったデカハンマーが床を叩き割らん勢いでぶつかる。その衝撃で、割れた床の破片が飛び散った。
    「セグレイブ、"きょけんとつげき"!!」
    「デカヌちゃん、ストーンエッジ!!うえにのってよけて!!」
    セグレイブの巨体と巨剣が迫る。デカヌチャンはストーンエッジを足元に撃ち、競り上がる岩に乗って跳躍してそれを回避した。残されたストーンエッジにセグレイブの巨剣が突き刺さり、セグレイブは身体の自由を僅かに制限される。

  • 66二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 22:57:04

    さて、"きょけんとつげき"は威力命中ともに優秀な技だが、一つデメリットが存在する。
    即ち、技後の致命的という言葉では済まされない隙である。
    「デカヌちゃん、もういっかい、こんどこそあてる!!デカハンマー!!!!」
    空中で、鉄槌を振りかぶる。落下する勢いで加速して、縦に振り下ろす。動きの鈍ったセグレイブは、躱そうとしてしかし岩が邪魔をする。
    脳天にデカハンマーが叩きつけられ、セグレイブは頭から床に沈められた。そして遂に、セグレイブの頭上のテラスタルジュエルが砕け散った。
    土煙が上がる。視界が悪い。砕けたテラスタルジュエルの破片ががチカチカと光る。ハッサクは手の甲で口と鼻を庇い、片目だけで前を見る。アップリューとカイリューは無事か。セグレイブを降しフリーになったであろうデカヌチャンを警戒しなくては。

    瞬間、上方から翼が羽ばたく音。

    ハッとして、顔を上向ける。煙に紛れてアーマーガーが小さな何かを掴んだ状態で飛んでいる。なんだアレは、と目を凝らすより先に、アーマーガアは足で掴んでいたものをパッと離した。

  • 67二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 22:57:33

    「ハッサクおじちゃん!!!!」
    アーマーガアから落ちてきたのは、まさか、そんなことがあっていいのか。ポピーだった。
    「いじっぱりもいいかげんに……しろですの!!!!」
    重力に任せて落下する。速度はかなり速い上に、あまりにも想定外が過ぎて驚愕の余り足が、身体が動かない。そして呆けたまま、ゴンッ、とハッサクの額とポピーの頭が結構派手な音を立ててぶつかった。
    え、そんなことありますですか。ハッサクはどこか他人事のようにそんなことを考えて、衝撃を逃しきれずに背中から倒れ込んだ。なんならついでに頭も床にぶつけた。
    痛みと頭部に受けた衝撃で遠のいていく意識。完全にシャットダウンする直前にハッサクが知覚したのは、コルサの心配する声と、珍しくもアオキの動揺したような顔。それから、当たり前のように目を回して気絶したポピーの姿だった。

  • 68二次元好きの匿名さん23/02/16(木) 03:09:37

    >>57

    ちなみに派生のレジェンドではグルーシャが生き残ってる

  • 69二次元好きの匿名さん23/02/16(木) 03:15:06

    SS待ってました!! 手に汗握るようなバトルからのアヴァンギャルドなポピーちゃんで草

  • 70二次元好きの匿名さん23/02/16(木) 04:42:01

    白熱バトルからの「うるせえですの」で笑った
    これはポピギャルドですわ

  • 71二次元好きの匿名さん23/02/16(木) 06:42:22

    ポピーちゃんガッツありすぎる
    これはポピギャルドですわ

  • 72二次元好きの匿名さん23/02/16(木) 08:24:52

    ポピーちゃんははがねタイプの使い手なので、必然的ポピーちゃんが石頭よろしく鋼頭なのも当然

  • 73二次元好きの匿名さん23/02/16(木) 12:05:58

    保守

  • 74二次元好きの匿名さん23/02/16(木) 17:28:03

    涙しながらも一気にここまで追いついてしまった
    このスレ、全てがエモすぎるが……最終的に行き着く先はどうなるのか楽しみだ

  • 75二次元好きの匿名さん23/02/16(木) 17:40:26

    悪い子ポピー最新更新分ここだけの裏話

    書き始めた時は全身でフライングプレスよろしく犠牲軸ハッサク先生の顔目掛けて飛びついて、その衝撃で先生がぎっくり腰になるオチだったのですが、なんか、ポピーちゃんが気がついたら頭突きかましてました。ドウシテ……ドウシテ……

  • 76二次元好きの匿名さん23/02/16(木) 18:16:17

    犠牲軸のハッサクさんはオモダカさんの唯一の共犯者な感じがするから説得とか泣き落としが効かなそうで、オモダカさんと同時に攻略しないと降伏してくれなそう。せっかく戦闘不能にはしたけど起きたら逃げちゃいそうだしどうなるかな。
    素敵なss書いてくださる方々ありがとうございます!続き楽しみにしてます!

  • 77二次元好きの匿名さん23/02/16(木) 19:04:57

    保守します

  • 78二次元好きの匿名さん23/02/16(木) 19:40:27

    >>75

    シリアス一辺倒の犠牲軸ハッさんがぎっくり腰にww

  • 79二次元好きの匿名さん23/02/16(木) 20:08:02

    めちゃくちゃ読みごたえのあるSSばかりで時間も忘れて一気読みしてしまった…
    個人的なイメソンなんだけどBDFFのボーカル曲全般が似合いそうだなって思った

  • 80二次元好きの匿名さん23/02/16(木) 21:32:33

    やっと追いついた
    つよつよなポピーちゃん最高

  • 81二次元好きの匿名さん23/02/17(金) 07:07:05

    新規さんが来られたようでホクホク
    もっとファンが増えればよい

  • 82二次元好きの匿名さん23/02/17(金) 14:48:31

    保守

  • 83二次元好きの匿名さん23/02/17(金) 20:31:19

    シリアスもいいしシリアスブレイクもいいよな
    コルサさんがシリアスブレイカーの役どころ合いすぎるんよ

  • 84二次元好きの匿名さん23/02/17(金) 23:08:39

    シンオウ神話で、ポケモンが人の前に飛び出すのは、人を助けてやるためってのがあったけど、
    古代パラポケはシンオウ神話よりずっと前の存在だし、
    未来パラポケのころにはもう忘れ去られてそうだしで
    つまるところパラドックスポケモンたちには関係のない話ってのがつらい……ポケモンは怖い生き物だってことを思い出させる存在だと思う……

  • 85二次元好きの匿名さん23/02/18(土) 00:16:01

    フォニイ / phony - kafu [オリジナル]

    色んなSS読み進めて犠牲軸ハッサクさんのイメソンこれすごいしっくり来たんだが

  • 86二次元好きの匿名さん23/02/18(土) 10:06:04

    なんやかんやで事態が収束したあと、犠牲軸ハッさんに「なにやっとんねん」という意味合いで弱弱しくチョップしまくる車椅子チリちゃんという光景……

    あと、車椅子チリちゃんがずっと言いたかったことのひとつに「アオキさん、もうちょっと大きい声出してほしかったわ」みたいな些細な日常の言葉とかありそう
    意識を取り戻した時に原作軸アオキさんに向ける第一声がそれだとほのぼのしててでも切ない気がする……

  • 87二次元好きの匿名さん23/02/18(土) 18:36:05

    スカバイブックの三犬パラポケと聖剣士パラポケは
    騒動の際にパラポケたちを指揮するリーダー格だったとかありそう

  • 88二次元好きの匿名さん23/02/18(土) 18:38:10

    何も見ず、何も聞かず
    何も触れず、何も嗅がず
    何も味わわず、何も感じない。
    輝石の賢人は問う、何故に絶望した。
    錆鉄の先導者の答えて曰く、私がいるからだ。

  • 89二次元好きの匿名さん23/02/18(土) 18:38:50

    アカデミーに向かうハルト、ライム、ナンジャモの三人を見送って、チリ達は預かったフカマルの導きで此方の世界のハッサクがいるであろう場所へと駆ける。ポピーは果たして無事だろうか。此方のチリは。
    視界に自動ドアが映り込んだ。知っている、あのドアはチャンピオンテストの二次試験、即ち実技テストで使うバトルフィールドの出入口だ。
    チリは足をより大きく開いて歩幅を広げる。出せる全速力でぶつかるようにドアに向かって行き、そして。
    「邪魔すんでー!!!!」
    「チリちゃんいまのハッサクおじちゃんはコガネのおやくそくネタにのってはくれませんの!!」
    腕尽くでドアをこじ開け、チリは声を張り上げた。コンパスの差で引き離されていた此方側のポピーは、ヘロヘロになりながらチリのコガネ魂を諌める。ここはコガネ花月じゃないんだぞ。
    「あ、どうも」
    「む、遅かったな四天王チリ!!もう終わったぞ!!」
    ドアの向こうにいたのは、丁寧に畳まれたスーツのジャケットを枕代わりに眠る翼を捥がれたヴァルキュリアと、彼女に抱きしめられる未だ幼き鋼のアマゾネス。ジャケットを脱いだアオキは二人に寄り添うように胡座をかいて座っており、その少し向こう側でコルサが倒れた此方側のハッサクを介抱していた。何があった、一から十まで。

  • 90二次元好きの匿名さん23/02/18(土) 18:40:06

    「すみません、時間の猶予がそうないことは承知の上で、ポピーさんをもう暫く休ませてあげられませんか?」
    「あ、ハイ」
    大凡十度ほどの角度をつけて僅かに頭を下げるアオキに、チリは思わず素に戻った。アカンどないしよ、ハッサクさんどつき回すつもりやったんに。
    「情けない限りです。大人の自分達よりも、子供の……アカデミー生よりもずっと幼いポピーさんに、結局全て任せてしまいました」
    ぼそぼそと語るアオキに、チリ達は居住まいを正す。
    「そもワタシたちが乗り込んだ時にはもう戦いは始まっていたからな。ポピギャルドは既にかなり消耗していたし、よくもまあ、あそこからアレだけやれたものだ。末恐ろしいことこの上ない」
    「ポピーちゃん本当に何やったんですか〜……」
    「ちゅーかポピギャルドてなんやねん。ポピーに変なあだ名付けんなや」
    なんだとキサマ、とコルサがチリを睨みつけた。実際何度もポピー本人からツッコミを入れられているのを聞いていたアオキは、それはその通りですね、の意味を込めて頷く。
    此方側のチリとポピーが一緒に寝ていて、ハッサクが気絶している経緯をアオキは言葉を選びながらチリ達に説明する。話終わる頃には、チリはすっかり頭を抱えていて、カエデは眉を下げて両手で口元を覆い、ハイダイでさえそっと首を横に振り、此方側のポピーは頭痛がする思いで額に手を当て天井を仰いだ。もっと自分を大事にしてくれポピー。

  • 91二次元好きの匿名さん23/02/18(土) 18:40:49

    「あ、てことはまだハッサクさんちゃんと話できてへんのちゃう?大丈夫なん、手とか縛っとかんで」
    「ワナイダーちゃん出しますか〜?」
    「やめて差し上げてください。発想がヤカラなんですよね……」
    流石にアオキはチリとカエデの提案に首を横に振る。しかし、ハッサクを誰よりもよく知る此方側のポピーは。
    「こうそくは、したほうがいいとおもいますの。おじちゃん、たぶん、なにをいってもいまはきいてくれません……から」
    その言葉を聞いた瞬間、チリとカエデはあまりに行動が早すぎた。
    まずチリがコルサを押し退けてハッサクの上半身を起こす。カエデがワナイダーを出して、その糸でハッサクの腕と胴体を纏めて縛った。糸がハッサクの身体を縛り上げたのを確認したチリは起こしていた上半身を寝かし直し、両足を持ち上げた。持ち上がった両足をワナイダーの糸で拘束し、目を覚ましてもこれで大丈夫だろうとチリとカエデはハイタッチした。このヤカラどもめ、と押し退けられて此方側のポピーに止められていたコルサは歯噛みした。
    「あ、せやせやアオキさん。保護したポケモン返します」
    「おや、ありがとうございます。……無事でよかった」
    チリからポケモン達の入ったボールを受け取ったアオキは、その中の一つ———ネッコアラのボールをそっと撫でた。アオキの手の中で、ネッコアラのボールがクラ、と揺れる。
    「これで後はグルーシャさんとリップさんですね〜。グルーシャさんはともかくリップさんはアカデミーにいらっしゃ……あ"っ」
    「どうかしたんだい、カエデ……あっ」
    師弟が顔を見合わせる。

  • 92二次元好きの匿名さん23/02/18(土) 18:41:32

    「っ〜〜〜〜〜〜!!ライムさん達にリップさんのポケモン預けておけばよかった!!!!」
    「しまったんだい!!やっちまったんだい!!」
    「あっ!?」
    頭を抱えて叫ぶカエデとハイダイに、チリは思わずうっかりしていた、と顔を青くした。
    ワタワタと慌てふためくチリ達を、アオキは僅かに首を傾げて不思議そうに見る。後で自分達もアカデミーにも行けばいいんじゃないですかね、という意見も浮かんだが、まあ自分が言うこともないだろうと胸の内に留めた。そういうところですよ非凡サラリーマン、と頭の中のイマジナリーオモダカが人差し指を眉間に寄せるポーズを取って苦言を呈した。
    「ん、ゔぅ……」
    眠っていたポピーが身じろぎした。ゆっくり重い瞼を上げて、未だ眠る此方側のチリの腕の中から這い出るように身体をふらふら起こした。
    「ポピー!起きたんか……どっか痛いとこないか?」
    「んぁ……ちりちゃん……?」
    頭がふらふら揺れて、目をしぱしぱと瞬かせながらポピーはチリの顔を見上げる。
    腕の中から子供の体温が離れたのに気付いたのか、此方側のチリも凪いだ赫い眼をゆっくり開けた。目を開けはしたものの、此方側のチリは身体を横たえたまま何かを探すように手をヌメラが這うような速さで動かした。

  • 93二次元好きの匿名さん23/02/18(土) 18:42:17

    「ああ、チリさんも起きましたか……。もしや起き上がれませんか?自分でよければ手を貸しますが」
    アオキが此方側のチリに手を差し伸べる。果たして今の彼女はどこまで自分の意思で身体を動かせるだろうかと心配になったが、ややあってチリは弱々しくはあるもののアオキの手を掴んだ。
    ぐい、と腕を引っ張って空いている方の手で背中を支える。普段ならこんな草臥れたおじさんに触れられるなんてセクハラに該当しないだろうか、と考えようものだが、今はどちらかといえば介護に近いので触れなければどうしようもないと割り切っている。それはそれとして、やはり此方側のチリの身体があまりに軽く細いことに、アオキは眉を顰めた。
    「ポピーさん、全てが終わったら……チリさんをピクニックに連れて行ってあげてください。此方の自分のムクホークも、一緒に」
    「……はい、ですの」
    此方側のチリの身体を支えたまま告げられた頼み事に、此方側のポピーはスカートの裾を握りしめた。
    さて、これからどうしたものか。ハッサクが目を覚ましたら拘束こそしているものの何をするかわからない。しかしここに留まるのは得策ではない。ハッサクと戦ったポピー達のポケモンの手当をそこそこに、全員が顔を見合わせてううん、と唸っていると。

    ズゥン……、と建物全体が大きく揺れた。

  • 94二次元好きの匿名さん23/02/18(土) 18:43:00

    「!?なんやいまの!!」
    「上の方から揺れたんだい!!」
    「おいこの本部何度揺れれば気が済むのだ!!耐震性は大丈夫なのか!!?」
    「こんなにゆれることじたいがそうそうありませんの!!」
    動揺が広がる。そんな中で、真っ先に動いたのは。
    「アオキさん!?ポピー!?どこ行くねん!!」
    スーツのジャケットを羽織り直したアオキと、デカヌチャンの手当てを終えたポピーが走り出す。チリの静止を振り切って、二人はバトルコートから飛び出した。

    リーグの屋上はチャンピオンテストの最後の関門、トップチャンピオンとの勝負を行うためのバトルコートになっている。そこに、ハッサクとグルーシャはいた。
    いわんや、そこにいたのは彼らだけでなく。
    「ああもう、酷いではありませんか。二週間ほど前に美容院で整えていただいたばかりでしたのに」
    プッ、と口から血の混じった唾液を吐き捨てて、トップチャンピオンその人であるオモダカが機嫌の悪そうに言い捨てた。左側の髪の束一掴み分、何かしらの熱量で焼き切られたように先が焦げてチリチリになっていた。その傍らに、瀕死になって倒れるゴーゴートとクエスパトラの姿。

  • 95二次元好きの匿名さん23/02/18(土) 18:44:05

    「聞き捨てなりませんね。貴女こそ、人のスーツを随分ボロボロにしてくださったではありませんか。それなりに値の張るものだとよくご存知のはずでしょう?」
    余裕のある足取りで、次元の壁に開けた通り道から現れた此方側のオモダカは、テラスタルしたキラフロルと、古傷まみれのドドゲザンを侍らせている。
    ハッサクとグルーシャが屋上に到着したタイミングで、開かれた次元の通り道からオモダカが吹き飛ばされてきたのだ。自分達の世界で、別世界の自分と戦っていたはずの彼女が。
    「トップ!大丈夫ですか!?」
    「これが大丈夫に見えるならエナジードリンクもエスプレッソもいらないんですよ」
    「まず徹夜をやめてください」
    軽口を叩く余裕があるだけまだマシかもしれない。そう思いつつハッサクは此方側のオモダカに視線を向ける。
    なるほど、あの日記から推察されていた状態よりも余程酷いらしい。澱んで星の輝きを失った眼も、その下に深く描き込まれた隈も、ある種この世界の有り様そのもの。
    「……ああ、これを使いたくはありませんでしたが」
    そう溢す此方側のオモダカの手に握られていたのは、テラレイド結晶などで手に入れられるものよりも一際巨大なテラピース。
    何をする気だ、と言葉にする前に、此方側のオモダカは独り言のように言葉を並べる。

  • 96二次元好きの匿名さん23/02/18(土) 18:44:43

    「今のパルデアには、残念なことにエリアゼロから這い出でたパラドックスポケモンが各地に身を潜めています。悔しい話ですが、あの日全ては倒しきれなかった」
    なんの話だ、とグルーシャの頭に疑問が浮かぶ。続けて曰く。
    「私はエリアゼロに潜りました。パラドックスポケモン達をパルデアに招き入れたタイムマシンを調査するために。そこで拾ったのは、パラドックスポケモンの能力を大きく向上させる、ブーストエナジーという道具。持ち帰って調べてみれば、中に詰められていたエネルギーはテラスタル結晶から抽出されたものでした」
    段々と、嫌な予感がした。ハッサクは自身の背中に冷たい汗が流れていくのを感じる。
    「数度、エリアゼロに潜り検証を進めました。そして、奴等はテラスタルエネルギーに引き寄せられる性質があると確信した。これはまだ不確定な推察ですが、奴等の元いた時代と比較して、現代は大気中のエネルギーが奴等の生育に必要分達していないのではないか。それを補うために、テラスタルエネルギーを求めているのでは、と」
    「待ちなさいオモダカ、貴女まさか!!」
    ハッサクが耐え切れず叫んだ。今の話と彼女の手の巨大なテラピース。点と点が繋がってしまう。
    ヒュ、と此方側のオモダカはテラピースを頭上に投げる。キラフロルがテラバーストをテラピースに向けて放つ。テラスタルエネルギーが、テラピースを砕いた。
    「な……っ!!?」
    グルーシャが目を見張る。砕かれたテラピースから膨大なテラスタルエネルギーが解放される。そして。
    「……っ、アレは」
    空を飛び、リーグに向かってくるドラゴン。地鳴りを響かせながら、パルデアの大地を駆けてくる異なる時代ののポケモン達。
    「抗うならば抗いなさい。私達から全てを奪った、この絶望に」
    オモダカが、歪に笑った。

  • 97二次元好きの匿名さん23/02/18(土) 19:10:32

    続きありがとうございます!
    San値直葬日記から推察される状態より酷いって…
    そして取り返し付かない状態になってきましたね!

  • 98二次元好きの匿名さん23/02/18(土) 19:12:05

    わーいSS続きだーってうそでしょパラドックスポケモン大量召喚!?
    ホント手段えらばなくなってきたな!!
    しかし今、ライムさんナンジャモといっしょに新チャンピオンのハルトがいる、ならば希望はあるか

    話はそれるが原作軸チリちゃん抱えて眠ってる廃人チリちゃんかわよ……
    あと少しずつだけど自分で手を動かして、少しずつだけど動けるようになってきてる
    この戦いが終わったら君たち、ピクニックするんだよ……いやできるのか!? ホントに大丈夫か色々と!!

    あと犠牲軸ハッさん、拘束したはいいものの、陰にドラゴンのたねポケモン潜ませるなりして、自力で拘束といて犠牲軸トップの援軍に駆けつける可能性もなきにしもあらずでは……元とはいえ四天王の大将だし……
    いや、原作軸ハッサクさんが迎え撃てばなんとか!! なんとかなりませんか!!!

    なんにせよ波乱続きのSS、心より楽しみにしておりますですよ!!!!!!

  • 99二次元好きの匿名さん23/02/18(土) 20:33:20

    ◎みんなの居場所
    ①犠牲軸のポケモンリーグ
    ・本編軸のオモダカ、ハッサク、グルーシャ、(ポケモン無し)、アオキ、ポピー、犠牲軸のオモダカ→屋上のバトルコート
    ・本編軸のチリ、コルサ、カエデ、ハイダイ、犠牲軸のチリ、ポピー、ハッサク(気絶)、フカマル先輩→四天王のバトルコート
    ・本編軸ナンジャモ、ライム、ハルト→アカデミーに移動中
    ②犠牲軸のオレンジ/グレープアカデミー
    ・本編軸のキハダ先生、ミモザ先生、サワロ先生、犠牲軸ジニア先生→教室
    ・本編軸のリップ(ポケモン無し)→未使用の教室で監禁
    ・犠牲軸のキハダ先生、ミモザ先生→居場所不明
    ◎重要な場所
    ・アカデミーのグラウンドの平行世界観測装置
    ・アカデミーの美術室上の教室にある座標指定コンピューター
    ・大穴内のタイムマシン
    ◎目標
    ①本編軸
    ・ジムリーダーの奪還
    ・パラドックスポケモンへの対処←NEW
    ②犠牲軸
    ・ジムリーダーの拉致
    ・チリちゃんとピクニックに行く←NEW
    ・パラドックスポケモンへの対処←NEW

    今の所はこんな感じかな?素敵なSSありがとうございます!続き楽しみにしています!

  • 100二次元好きの匿名さん23/02/18(土) 20:35:41

    素敵なss続きありがとうございます!まだバトルシーンの無いグルーシャ、本編軸ハッサク、ライム、ナンジャモ、ハルト、リップたちの活躍も楽しみになってきました!オモダカさんの圧倒的なラスボス感が素敵です!迫りくるパラドックスポケモンへの対処には本編軸と犠牲軸どちらの力も必要になりそうな展開になってきてドキドキしてきました。そんな中でもss見る限り犠牲軸のオモダカとハッサクはジムリーダー達が奪還されるくらいならここで滅びたいとか考えてそうだし…何とか大団円に持っていって欲しいな。続き楽しみにしてます!

  • 101二次元好きの匿名さん23/02/18(土) 21:20:26

    SS読んだ限り、陽動のためにネモペパボタがリーグ外で戦ってるんだっけ?
    そっちもパラポケ対処することになるのかな

  • 102二次元好きの匿名さん23/02/18(土) 22:39:59

    まとめ助かる!
    ここの作品やスレを読むのが最近の楽しみになってる

    里長ハッサクさん強かった…そしてトップが今後正気に戻ったとしても取り返しがつかないことしていて非常にお労しい…
    ジムリたちも続々とてもちと再会できてるしチャンピオンハルトくん頑張ってもらいたい!
    人物多いのにみんな魅力的で本当にすごい。続き楽しみにしてます!

  • 103二次元好きの匿名さん23/02/18(土) 23:10:09

    犠牲軸のトップ、万一正気に戻ってもこのままだと廃人コースだよ…

  • 104二次元好きの匿名さん23/02/18(土) 23:58:11

    保守

  • 105二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 00:01:10

    いつも黙ってこっそり読んでた者ですこの度歪に笑うオモダカさんが好きすぎたので台詞拝借しました
    描写的にはもっと酷い有様の容姿でしょうけど想像力が足りないので許して…
    行くとこまで行っちゃったオモダカさん好きだよ…でももうお労しやトップ、止まっていいよ…(泣)

  • 106二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 08:31:20

    >>105

    ギャーーーー神絵師様がここに

    やっぱイラストとして具現化されるのよい


    そういえば大量のパラドックスポケモンが召喚されちゃったワケだが、これ廃人チリちゃんの目に入ったらヤバいんじゃ……

    前スレにパラポケみたら暴走するみたいなレスがあったような……

  • 107二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 08:35:26

    >>99

    まとめ助かる

    >>105

    漫画風なの好きすぎて死ぬ

    迫力すごくて好き

  • 108二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 12:49:16

    >>105

    構図カッコいい…!

    禍々しいのにどこか神々しくもあるツキが最高

  • 109二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 17:07:09

    九番目に戴冠せし者が謳う時、結末は約束された。

  • 110二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 17:07:45

    リーグの正面入口の前には、よくもまあ、死屍累々と評するに相応しい光景が広がっていた。倒れ伏すリーグ制服を着たトレーナー達の中、その足でしっかりと地を踏み締めて立つのは、エリアゼロの冒険で絆を結んだ三人。即ちチャンピオン・ネモ、スター団マジボス・ボタン、テラスタルを実用化したフトゥー博士の息子のペパー。
    もう一人、三人の縁を繋ぎ暗闇を照らしたハルトを先に行かせ、自分達は陽動、或いは露払いとして戦っていたが、今し方、最後の一人の最後の一匹をネモが圧倒的な武力で叩き潰したところだった。
    「ハルト、無事かな」
    少しだけ疲れた様子のニンフィアを労わりながら、ボタンはリーグ入り口のドアを見る。
    「ハルトなら大丈夫ちゃんだろ!……って言いたいけど、四天王が中で待ち構えてたらキッツイかもなあ……。あ、でもあのポピーって子も別口から突入してるんだっけか?」
    「んー、ポピーちゃんも四天王だし確かにそこまで心配いらないかなあ。……ハッ、私もハルトと一緒に行けば本気も本気の四天王やトップと戦えたかも!?もしかしなくても勿体無いことしたー!!」
    「うーん、この」
    アレだけ散々暴れ倒しておいてまだ足りないのかこの生徒会長。ボタンはネモの様子に若干呆れていた。誰あろう、この屍の山のうち五割はネモが捩じ伏せたトレーナーである。残りは三割ボタンで二割がペパー。
    「どっちにしろここでウチらがこの人ら抑えとかないとハルト達が危ないだけだし、ネモがハルトと一緒に行ったとしたらウチとペパーだけで抑え切れんよ。そりゃウチもペパーも柔な鍛え方しとらんけども」
    「むむ……それもそっか……」
    ネモは渋々ではあるものの納得して腕を組む。

  • 111二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 17:08:47

    ポケモン達を手当てしつつ、周囲を警戒していると、リーグのドアが開いた。そこから視界に入ったのは、三人分の人影。
    「ハルト!!」
    真っ先にネモが駆け寄る。出てきたのはハルトと、ジムリーダーのライムとナンジャモだった。
    「ネモ!ボタン!ペパー!大丈夫そうでよかった……」
    「悪いね、アンタらにも苦労かけちまった」
    「チリ氏達のおかげでポケモン達取り戻せたし、助けてもらった分こっから返していくからね!」
    帽子を正すライムと、大きく余る袖を振りかざすナンジャモ。
    平行世界の観測装置を拿捕するためにアカデミーに向かうと言うハルトに、ボタン達は自分達も一緒に行こうと提案しようとして———次の瞬間。
    カッ、とリーグの屋上から閃光が広がった。眩さに一瞬怯み、眼を閉じる。再び眼を開けると、閃光の発生源と思われるところにテラスタルと酷似した輝きのエネルギーが滞留しているのを、ハルト達は知覚した。
    「何、アレ」
    普段から余裕のある笑みを湛えているナンジャモの顔が、笑顔が消えて驚愕の色に染まっていた。それほどの衝撃、それほどの異常事態。
    足音とは到底思えないような地鳴りがした。ケダモノの咆哮が轟いた。耳障りな機械音が木霊した。徐々に近付いてくるそれに、誰もが本能的に恐怖する。空を見上げて見つけたソレに、ハルト達は息を呑んだ。
    「アイツは……!!」
    ペパーがギリ、と歯を食いしばる。空を征く異形のポケモンに、パラドックスポケモンの一種、テツノコウベとテツノドクガを認めた。なんてことだ、とハルトは拳を握りしめる。

  • 112二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 17:09:23

    「……人相手もパラドックス相手も、そう変わらんか」
    ボタンがポツリと呟いた。ペパーとネモは、ボタンの意図を察して頷く。
    「ハルト達、アカデミー行くんでしょ?パラドックスポケモン達は私たちがなんとかするから、行っておいで」
    「ネモ!?」
    「オレ達は引き続き陽動ちゃんだ。装置はハルト達に任せた!」
    「ペパー!?」
    ネモとペパーはテーブルシティに通じるゲートを指差した。自分達に任せて行け、と示されて、ハルトは目線を泳がせながらしかし、意を決して。
    「ライムさん、ナンジャモさん、行きましょう」
    テーブルシティに足を向けた。
    「ま、そうこないとな。チャンピオン」
    「よーっし、任された以上、ボク張り切っちゃうぞ!」
    必然と偶然に集った英傑三人、託された想いを背負ってゲートを潜り抜けた。

  • 113二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 17:29:06

    ホームウェイ組キター!!
    相変わらず戦闘狂の生徒会長であった
    ハルトはアカデミーへ、ペパネモボタはリーグ側で戦う感じか

  • 114二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 22:25:21

    犠牲軸ハッさんがコガネのお約束ネタにのってくれた世界線
    チリ「邪魔すんでー!」
    犠牲軸ハッさん「邪魔するなら帰ってくださいですよー」
    チリ「あいよーってんなワケないやろ!」(ノリツッコミ)
    ポピー(おじちゃんがのってくれた!?)

  • 115二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 23:20:47

    ホームウェイ組だあ背中預けるならやっぱりこの子達でないと…!3人描きたかったけど画力なかった
    (あとチリちゃんの邪魔すんでーネタ好きすぎるw)

  • 116二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 00:14:15

    ペパーは自作の軽食か何か持参してきてそうだとオモタ
    オレンかモモンあたりのきのみを使った、ポケモンのHP回復や状態異常を治せる系の

  • 117二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 07:11:55

    >>116

    自レス

    おそらくSVでも象徴的な料理、サンドウィッチ

  • 118二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 18:55:00

    >>115

    漫画のような構図……イイ……

  • 119二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 18:56:49

    SSもイラストも最高すぎる

  • 120二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 19:10:49

    アカデミー行ったら犠牲軸のスター団が協力したりしてくれないかな……

  • 121二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 22:10:54

    影を踏み、影を呑む。
    足跡を踏み、足跡を解かす。
    夜明けはまだ、訪れない。

  • 122二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 22:12:07

    「何はどうあれ、まずはリップの居場所を探すのが先決だな。そもそもその為にこっちに足を踏み入れたんだから」
    グ、とキハダは座ったまま両腕を上に伸ばした。キハダの言葉にミモザとサワロも確かに、と頷く。
    「あたしたちだけで演算装置だの観測装置だのなんとかしようとしたところで、ホントにできるのか?って話だもんね。できればそういうのに強い人がいたら……居たわね生徒に」
    「ボタンさんかね?しかし彼女は確かハルトくん達と……」
    サワロが言い切る前に、キハダがガタッ、と音を立てて椅子から立ち上がった。それを見たミモザもピリ、と気配を張り詰めさせる。
    「少しだけ、おしゃべりし過ぎてしまいましたかねぇ」
    ジニアだけが、のんびりといつも通り変わりなく構えている。ミモザはジニアを二秒睨んで、椅子から立ち上がりドアを乱暴に開けた。
    「……まあ、そうよね」
    ミモザの眉間に皺が寄る。後に続いて教室の外へ身体を半分出したキハダとサワロも、警戒を滲ませて顔を顰めた。
    靴音を鳴らして現れたのは、此方の世界のミモザ。仄暗い眼でミモザ達を一瞥して、一言。
    「なんだ」
    性懲りも無く来たんだ、恥知らずね。

  • 123二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 22:12:46

    冷たい声で吐き捨てる。キハダはジャージの袖を握り込み、ミモザはギリ、と歯を食いしばった。そもそもが彼女ともう一人、此方側のキハダに辛酸を舐めさせられたことでこうなっているのだから。
    「落ち着きたまえよ。キハダ先生、ミモザ先生」
    トン、と宥めるように、安心させるようにサワロは二人の肩を軽く叩く。二人はハッとして、力んでいた身体を意識的に脱力させた。
    「ふーん、サワロ先生まで巻き込んだんだ」
    心底見下げ果てた眼で、此方側のミモザはぼやく。サワロは違う、と首を横に振り。
    「力を貸して欲しいと頼まれたのはその通りだが、我が輩は決して巻き込まれたなどとは思っていないぞミモザ先生。我が輩は我が輩の意思で此処に来たのだ」
    ハッキリと返すと、此方側のミモザは目に見えて不機嫌そうになる。これは戦闘になるな、とキハダとサワロはモンスターボールに手をかけて、しかしミモザに制された。
    「二人とも、先行っててくれます?」
    「ミモザ先生?」
    スッと一歩前に出たミモザの表情は、二人からはハッキリと窺い知れない。しかし、その声は強い意志を孕んでいた。
    「別に、少年漫画みたいに"ここはあたしに任せて先に行け!"とか言うわけじゃないけど。その、ねえ」
    右手にモンスターボール。浅く息を吐いて、ミモザは此方側のミモザの顔に目を向ける。
    「ジニア先生の話を聞いて、周りに当てられてブスくれてるそこのいじけ虫に言いたいことができた」
    ほら、構えなさいよ。ミモザはわざと犬歯が見えるように嗤い、挑発する。

  • 124二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 22:13:38

    「あんたここで戦う気でいる?あたし校舎壊したくないし壊すわけにはいかないんだけど」
    此方側のミモザは肩をすくめた。ただでさえ重要設備がオモダカの指示で設置されているアカデミー。加えて、いくつかの空き教室や準備室は食料品や医療品の備蓄に使われている。もしここで戦って、余波でそれらがお釈迦になってしまったらと思うと、養護教諭としては看過できない。しかし。
    「あんたが壊したくないし壊せなくても、あたしは知ったことじゃないのよね」
    ヒュッ、とボールを投げる。飛び出したのは、シビルドン。
    「シビルドン、窓側の壁に"かみなりパンチ"」
    ミモザの指先が、外の風景を透かし見せる窓のある壁を指す。シビルドンはミモザの指示に一切の戸惑いも躊躇もなく従い、"かみなりパンチ"で壁に大きな穴を空けた。
    流石にこれには此方側のミモザは勿論、キハダとサワロも度肝を抜かれた。ミモザは、自分以外が驚きで動けない中、此方側のミモザに向かって突っ込んでいく。
    「!?」
    「ここで戦うのが嫌なら、お望み通り移動しましょうか!!」
    ガッ、と此方側のミモザの肩を掴んで、ミモザはシビルドンの開けた穴に向かって飛び込む。今更ながら余談だが、現在キハダ達がいるのは校舎の二階部分である。
    「ミモザ先生!!」

  • 125二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 22:14:14

    我に帰ったキハダは慌てて穴から落ちようとするミモザの腕を掴もうとして、しかし一秒間に合わずその手は空を切った。その横を通り抜けたシビルドンは、主人の後を追って穴から飛び立つ。
    「いいからとっととリップさん助けてきなさいって!!あたしはこいつ殴ってから追いつくから!!」
    飛んできたシビルドンに片腕を掴ませて、ミモザは叫んだ。此方側のミモザはミモザの腕を振り解き、オニゴーリを出してその頭の上にしがみついた。
    「ホンット最悪!あんたまで脳みそ筋肉になったわけ!?」
    「料理苦手なくせに世話になったお礼がしたいからって特訓する体育会系と、友達の為にパルデア中を文字通り駆け回った歳下の学生の頑張りに影響受けて教員免許試験リトライするやつが、生半可な覚悟で腹括ってるわけないでしょ!!」
    互いにポケモンに掴まり宙に浮いたまま、戦いの火蓋が切って落とされた。

  • 126二次元好きの匿名さん23/02/21(火) 07:05:54

    SS続きや!
    今回はアカデミー側か

  • 127二次元好きの匿名さん23/02/21(火) 18:44:45

    SS大感謝!!
    アカデミー側でもバトル始まったなぁ

  • 128二次元好きの匿名さん23/02/21(火) 19:36:42

    レホール先生「並行世界に攻め入ってジムリーダーたちを奪還するだと?馬鹿を言え、このパルデアを守るために戦った彼らは、この世界の彼らしかいないのだ。その歴史をなかったことにはできん。
    あと並行世界の過去なんぞこの世界のパルデアとは別物だし別に興味はゲフンゲフン」

  • 129二次元好きの匿名さん23/02/21(火) 20:46:43

    >>128

    レホール先生ぶれなさ過ぎて一周回って安心するな

  • 130二次元好きの匿名さん23/02/21(火) 22:25:29

    盲いた眼に、星は宿るか。

  • 131二次元好きの匿名さん23/02/21(火) 22:26:37

    石畳の上に白衣姿の同じ顔をした女達が降り立つ。次の瞬間には、傍にいたはずのオニゴーリのアイアンヘッドとシビルドンのアクアブレイクがぶつかり合った。ゴッ、という音と共に技の衝撃で白衣が旗めく。
    自分自身、鏡写しのドッペルゲンガー。であるからこそお互いの手の内は知り尽くしている。だからこそ、どちらも油断はしない。
    オニゴーリのフリーズドライがシビルドンに放たれた。シビルドンは両腕に"かみなりパンチ"の電撃を纏い、それをもってして受け止める。
    「同じ轍は踏まないわよ」
    ミモザはシビルドンに"とぐろをまく"を指示する。攻撃と防御、おまけで命中も一段階上昇したシビルドンは、巻いたとぐろを解く勢いでオニゴーリにドレインパンチを叩き込んだ。オニゴーリは"こおりのつぶて"でドレインパンチの威力を弱めようとするが、止まらずゴガンッ、とオニゴーリの眼と眼の間にシビルドンの拳が捩じ込まれる。
    オニゴーリの身体が此方側のミモザの横を通り過ぎるように突き飛ばされ、壁に叩きつけられた。
    「この……っ」
    「言ったでしょ、生半可な覚悟で腹括ってないって。奪われたもの奪い返しにきたんだから、これくらいやって当然よ」
    パラ……、と壁の破片が落ちる音。オニゴーリはめり込んだ壁から抜け出てシビルドンを睨みつけるが、ダメージは余程大きかったらしい。瞬間、脱力して地面に倒れ込んだ。
    此方側のミモザはオニゴーリをボールに戻す。舌打ちして、ミモザとシビルドンを睨みつけた。意識的に余裕然とした態度のミモザだが、シビルドンとて万全のままではない。消耗して荒くなった息が、それを示していた。
    「平行世界だのなんだの言うけど、同じ向きに同じ歴史の流れが向いてるだけで別の世界なのは変わりないでしょ。それこそ、たった一つ釦掛け違えただけであたしとあんたレベルで違いが出るような」
    耳元のピアスを弄って、ミモザは言う。

  • 132二次元好きの匿名さん23/02/21(火) 22:27:24

    「こっちのキハダ先生が助けたかったリップさんって、あたし達の世界のリップさんじゃないでしょ。この世界で最期まで戦って死んだ、こっちのリップさんでしょ」
    「……———うるさいなあ!!!!」
    此方側のミモザが吼えた。まだ相対するつもりか、ボールからスリーパーを繰り出す。
    「いいじゃない!!あんたは、あんた達の世界は十分満たされてるじゃない!!あんただって念願叶って教師になれたでしょ!?そっちのキハダ先生だって、楽しくバトル学教えてるんでしょ!?もう十分じゃない!!あたし達の不幸の分だけ、あんた達の幸福を寄越してくれたっていいじゃない!!じゃないと、でないと……!!」
    スリーパーの"しねんのずつき"がシビルドンの胴体に痛烈な当たりを決めた。ゲェ、とシビルドンは衝撃で腹から逆流した胃液を吐いて、石畳に沈む。
    「自分が病気や怪我で苦しむよりも、挫折や劣等感で追い詰められるよりも、ずっとずっと苦しいことがあるなんて、知らなかった!!誰かが苦しんで、日に日に弱って狂っていくのを見るしかできないのが、ただ自分が傷付くより辛いなんて知りたくなかった!!あたし達に降りかかったのは、そういう惨劇よ!!あたし達が味わったのはそういう絶望よ!!!!」
    ぶちまけられたのは、これまで此方側のミモザが抱えていた膿。ミモザは倒れたシビルドンをボールに戻し、入れ替わるようにバチンウニを出した。
    「抱えてたものはそれで全部?」
    激昂を受けて尚、ミモザは不思議と冷静だった。いつもだったら少しくらいは狼狽えてたかもなあ、と頭の片隅で考えつつ、しかし脳の全体はクリアになっていく。
    たっぷり三秒、目を閉じる。ゆっくり瞼を持ち上げて、ミモザは。
    「じゃあ今から、その絶望ってのを取っ払っちゃおっか」
    バチッ、とバチンウニの棘から電気が散った。ミモザが"びりびりちくちく"を命じた次の瞬間。

  • 133二次元好きの匿名さん23/02/21(火) 22:29:01

    カッ、とアカデミーから見て西側、ポケモンリーグ本部から強烈な閃光が迸った。
    「———は?」
    「えっ、何?」
    此方側のミモザが心底訳がわからないという顔をして、ミモザはバッチリ決まっていたはずの出鼻を挫かれて思わず呆けてしまった。
    今の光は、一体。考える間もなく、此方側のミモザの背中を悪寒が走る。
    空に竜が、毒蛾が、亡霊が、リーグに向かって飛び去っていくのが見えた。パラドックス、とミモザは呟く。教員免許を取得してから、万が一の備えとして渡された資料でこそその存在を確認していたものの、ミモザがそれらを実際に目視するのは今が初めてだ。
    空に意識が向けられる中、テーブルシティの東側から轟音が轟いた。土煙が上がっている。此方側のミモザは顔を青褪めさせ、ヒュッ、と息を呑んだ。
    「ミモザ先生!?」
    名前を呼ばれて、ミモザはハッとする。声の方を振り返れば、友人達と共にリーグに突入していたハルトが、救出できたのだろうジムリーダーのライムとナンジャモと共に走ってきた。
    「ハルト!あんた無事だったのね。それでそっちはジムリーダーの二人……助け出せたみたいでよかったわ」
    「ミモザ先生こそ、こっちにきてたんですね。その、それで今、向こうから破壊音が……、ッ!」
    ハルトはミモザの向こう側を見て、顔を顰めた。ミモザが振り返ると、そこには身体の大きな見るからに原始的な体型のポケモンや、機械で出来た身体の無機質なポケモン達が我先にと言わんばかりに行軍していた。

  • 134二次元好きの匿名さん23/02/21(火) 22:29:28

    「参ったな、流石に数が多いんじゃないか?」
    ガシ、と髪を掻き上げてライムはぼやく。無視してアカデミーに乗り込んだ場合、リーグで迎撃体制に入っているネモ達の負担を考えると頭が痛くなる。
    ス、とナンジャモがオーバーサイズの袖を余らせて右手を挙げる。
    「ボクがアイツらの出鼻挫くよ」
    そう言ったナンジャモの表情は、普段の明るく戯けた振る舞いとは違う真剣なもので。大丈夫なのか、とライムが問えば、問題無しと応える。
    「ハルト氏は本当の本当になんかヤバいことあった時のための最終兵器みたいなとこあるし、ライム氏はお姉さんに言っておきたいことあるって言ってたじゃん?なら、特にアカデミーに重要な用事のないボクが残って防波堤役やった方がいいでしょ?ちょうどそこの白衣の先生も一緒に戦ってくれそうだし?」
    「ちょっと何勝手に決めてるの。まぁ流石に死にたくないしやるけど」
    「やるのか……」
    余って垂れ下がる袖をヒラヒラと揺らして、ナンジャモはチラとミモザを見る。ミモザは少しばかり眉を下げたが、反対するつもりはなさそうだった。
    「えっと、じゃあ、ナンジャモさん、ミモザ先生。お願いします!」
    バッ、とハルトは頭を下げて、ライムと共にアカデミーの正門へと駆けていく。それを見送ったナンジャモはタイカイデンとレントラーをボールから出して、パラドックスポケモンの一団を睨む。
    「ミモザ氏だっけ?そっちで足に根っこ生えてるみたいなってるこっちの世界のミモザ氏も含めて、アイツらやっつけるの手伝ってクレメンス〜」
    「あたしは勿論オッケーだけど。あんた、戦う気ないならさっさと逃げなさいよ。シンプル邪魔だし」
    「なっ……」
    ナンジャモはレントラーの背に跨る。ミモザはメブキジカをボールから出してその背に乗せてもらって、此方側の世界のミモザにあっち行けのジェスチャーを向けた。
    「よぉーっし!!かかってこいやパラドックスポケモン!!!!」
    ナンジャモの発破を合図に、レントラーとメブキジカが駆け出した。

  • 135二次元好きの匿名さん23/02/21(火) 23:11:25

    SS続きだー!
    これ、別世界とはいえ、自分もこうなる可能性がある、って危機感を抱く人いそうでは
    事件が収束したあと、もし自分がおかしくなったら殴ってでも止めてほしい、って友人知人に頼むなりしそう

  • 136二次元好きの匿名さん23/02/22(水) 07:08:02

    ふと思ったのだけど、
    犠牲軸の一部の人間の本気度みる限り、今回の奪還が失敗しても、時間かけてまた同じことするんじゃ……なんて想像してしまった
    だって並行世界を観測する術も、並行世界に渡り歩くための機械をつくる方法も知ってしまったし、実行できてしまったし、一度やり方を覚えたらあとは上手くいくまでそれを繰り返すだけ……なんて
    ふくつのこころが完全に悪い方向にカッ飛んだ例……

    ここまで自分で考えて頭抱えてしまった、これライムさん通じて犠牲軸ジムリたちの思いを伝えるかくらいしないと止まりそうになさそう……

  • 137二次元好きの匿名さん23/02/22(水) 17:53:28

    ほしゅ

  • 138二次元好きの匿名さん23/02/22(水) 20:42:32

    >>136

    「今回の世界がダメだったなら、次の世界へ行けばいい

    次の世界もダメだったなら、また別の世界へ、

    上手くいくまで、何度でも繰り返せばいい」

  • 139二次元好きの匿名さん23/02/22(水) 20:46:49

    前スレでメガボーマンダ竜テラスタル特盛り繰り出してくる犠牲軸ハッさんの妄想したことあるが、これ相手にしたネモちゃんめちゃ強いやつと戦える興奮で動悸ヤバそうでは

  • 140二次元好きの匿名さん23/02/22(水) 21:05:45

    ss続ききたぁ!
    ミモりんとメブキジカ描こうとして「ミモりんどのメブキだっけ…春だか秋だかだっけ?」と思って、そこから擦れてる(?)犠牲の方のミモりんのメブキが冬だったりしたら私得だななんて思った。心情の表れ的な意味の姿の差で…こじつけると復興までに心のセラピーより暖かいぬくぬく毛皮の方が犠牲世界では重宝した的な

  • 141二次元好きの匿名さん23/02/22(水) 22:37:58

    犠牲世界線のハッさんとオモダカ、原作軸の元気なチリちゃんをまだ見てないけど、見たら見たで懐かしいやらいまの廃人チリちゃんとの哀しさやらで衝撃デカそう

  • 142二次元好きの匿名さん23/02/23(木) 07:33:12

    保守

  • 143二次元好きの匿名さん23/02/23(木) 11:25:05

    スカバイブックの幻のポケモンもいつか犠牲世界概念にぶち込みたいところ

  • 144二次元好きの匿名さん23/02/23(木) 18:38:14

    保守

  • 145二次元好きの匿名さん23/02/23(木) 19:43:43

    魔法は、不可能を不可能なまま現実に変える。

  • 146二次元好きの匿名さん23/02/23(木) 19:44:14

    ガラッ、ピシャンッ、ガララッ、ピシャンッ。
    思い当たる限りの、用途の無い教室のドアを片端から開けては閉める。確認に要する時間は長くて五秒。此方の世界の自分と相対するミモザを長く独りにはさせておけないという焦りか、或いは危機感か。
    片手で足りなくなる教室のドアを開けて、そしてやっと。
    「リップ!!助けに来たぞ!!」
    「……キハダ、ちゃん?」
    キハダは最愛の幼馴染を、牢獄から連れ出した。
    爪の整えられた綺麗な手を引いて、キハダは走る。ミモザのところへ向かわねばならない。サワロは後ろを警戒している。
    「むっ」
    西側の窓、リーグの建物の輪郭が僅かに見えるそこから、強い光が一瞬差し込んだ。なんだ、と三人が顔を向けた、その時。
    物陰からルチャブルが躍り出て、キハダを襲う。まあそうくるよな、とキハダは咄嗟にリップを突き飛ばして。
    「サワロ先生!リップを頼みます!!」
    飛びかかられた勢いままに、窓を破って下に落ちた。
    「キハダちゃん!!」
    リップの手は届かない。落ちる間際に見えたキハダの表情は、笑っていた。
    「リップさん、此方へ」
    サワロはその大きな手を差し伸べる。
    「キハダ先生ならば心配いりません。今はリーグに向かい、ポケモン達を助けにいくのが最善です」
    サワロの言葉にリップは眉を顰め、しかし振り払うように頭を左右に振って。
    「エスコート、お願いするわね」
    自身の手を、サワロの手に重ねた。

  • 147二次元好きの匿名さん23/02/23(木) 19:44:47

    落下するキハダは身体を掴むルチャブルの腹を数度蹴飛ばして、ジャージを爪で裂かれながらも引き剥がす。ブレイズ種ケンタロスを出してその背に掴まり、地面に向けて。
    「ケンタロス、レイジングブル」
    落下の衝撃をレイジングブルで緩和しにかかった。ゴッ、と大きな音が鳴って、土煙を上げながらキハダを乗せたケンタロスは地面に降り立つ。蹄を鳴らして威嚇するケンタロスを宥めて、キハダはその背から降りた。
    「用件はなんだ?と聞くのは野暮だな」
    待ち構えていたのは同じジャージを着た、同じ顔の、しかし酷く窶れた女。此方の世界のキハダだった。
    「私からまたリップを奪うのか?」
    「そもそもキミのリップじゃないんだよ。私の幼馴染のリップで、私たちの世界のベイクジムのジムリーダーだ」
    平行線を辿るだけの会話を早々に切り上げて、二人のキハダが戦いの狼煙を上げた。

    廊下を駆け抜け、階段を飛ぶように降る。なるだけ早くリーグへ向かい、リップのポケモン達を救出に向かわねばならない。サワロは肩に乗せたパチリスに周囲を警戒させながら、失礼、と一言断ってリップを所謂お姫様抱っこで抱え、手すりに足をかけて一気に階段を飛び降りた。大柄な体躯故の重い落下音がして、ほんの一秒足に痺れが走ってすぐ、サワロはリップを丁寧に降ろして再び走り出した。エスコートして、とは言ったが想定を遥かに超える紳士さにリップはちょっとときめいた。尚そこに甘ったるい桃色の気配は皆無である。

  • 148二次元好きの匿名さん23/02/23(木) 19:45:21

    「サワロ先生だったかしら?もしよければ落ち着いた後でいいけれど、リップのプロデュースする男性用コスメのモデルになってもらっても?」
    「はは、光栄な話ですがこの厳つい大男に務まるかどうか……」
    「安心して。リップの魔法で普段の貴方に負けないくらい魅力的に変身させてあげるから」
    「それは楽しみですね」
    緊張を和らげる為の雑談もそこそこに、エントランスから校舎の外に出る。サワロの記憶が確かなら、リーグにはハルト達も向かっていたはずだ。此方側のジニアから聞かされた話を、平行世界の観測装置と座標演算装置のことを伝える意味でもリーグへ。
    「サワロ先生!!リップさん!!」
    「リップ!無事だったのか!!」
    大階段を駆け上がってきたのは、たった今サワロの思考に過ぎっていたハルトと、同僚タイムの妹でジムリーダーのライム。
    「ごめんなさいちょっと手短に話します!サワロ先生達はリーグの屋上から光が一瞬広がったのは見えましたか?それがオモダカさん……ええとこっちの世界のオモダカさんがなんかやったみたいで、それに釣られたパラドックスポケモンが大勢リーグに向かってて、通り道になってるテーブルシティにもいっぱい押し寄せてて……!!」
    「落ち着きなさいハルトくん。とにかく此方の理事長がパラドックスポケモンを誘き寄せたということでいいかね?」
    「はい!!」

  • 149二次元好きの匿名さん23/02/23(木) 19:45:48

    「今ナンジャモとミモザってのがパラドックス共の対処に当たってるよ。アタイらは観測装置とかいうのを押さえようと思ってるけどアンタら、特にリップはどうすんだい」
    「リップはリップのポケモンちゃんを取り戻したいんだけど……」
    「それならリーグにいるチリ達と合流するべきだね。アイツらジムリーダーのポケモン全員奪い返してるから」
    ビッ、とライムは親指でリーグの方を指す。
    流石チリちゃん、とリップは嘆息して、リーグへ視線を向けた。
    「オモダカちゃん、ホンットになりふり構ってない感じしちゃってるわね。自分達を傷付けた存在を、自分で呼び寄せて」
    リーグの方角の空に、パラドックスポケモンと思われる影がひしめく。何かに撃ち落とされるようにいくつかの影が力無く落ちていく。サワロは肩のパチリスを撫でて。
    「では、行きましょうリップさん。どちらにせよ、今のきみは戦えませんから」
    サワロの言葉に、リップは少しだけ唇の端を噛んで頷いた。

  • 150二次元好きの匿名さん23/02/23(木) 20:15:37

    SS続きだー! いつも楽しみにしております
    前回に引き続きアカデミー側
    いざって時に戦力なくて、何もできないのしんどいよな……

  • 151二次元好きの匿名さん23/02/23(木) 23:30:30

    ssきた!お姫様抱っこカッコイイ!(絶対絵になるのに画力足らなくて形にならないのが悔やまれる)
    合流したり自分とバトったりで読むのがいつも楽しみです感謝…。
    遅筆で拙いけどパラドックス迎撃ミモジャモfa。こういう対野生戦だとヒスイ式を超えるような数の暴力になりそうだなぁ

  • 152二次元好きの匿名さん23/02/24(金) 00:28:37

    流れをぶった切ってすまんやけどFA投下させてください

    尊い犠牲でした 6スレ目の>> 192のラストがあまりにも刺さりすぎて思わず描いてしまった

    勢いのまま描いちゃったせいで死ぬほど雑だし公式絵に寄せて描けないせいで自分絵キッッッツイのは重々承知だし初めてこういう場に絵を投下するので間違ってたら申し訳ないです

    もし画質悪かったりそもそも上げれてなかったら教えてくださると助かります

  • 153二次元好きの匿名さん23/02/24(金) 06:33:29

    基本的に目が濁ってるっぽい犠牲軸の面々が「今回の世界が失敗したなら次の世界へ、次の世界も失敗したならまた別の世界へ、「奪還」が成功するまで何度でも並行世界へ攻め入る、絶対に諦めない」という決意を固める瞬間だけは、真っ直ぐな済んだ瞳をしているみたいな幻覚を受信したが
    済んだ瞳でとんでもないことを決意すんなやとセルフツッコミするなどした

  • 154二次元好きの匿名さん23/02/24(金) 06:37:33

    >>153

    ×済んだ ○澄んだ

  • 155二次元好きの匿名さん23/02/24(金) 06:55:49

    >>151

    >>152

    このスレはFAの宝庫やー!!

    SSの続きも楽しみだし

    ドーナツホールPVも待機してるでー!

  • 156二次元好きの匿名さん23/02/24(金) 17:36:22

    >>153

    そういう真っ直ぐな目で歪んでるの好き

  • 157二次元好きの匿名さん23/02/24(金) 19:31:23

    SSで参戦してるハルトくんはパルデア新チャンピオンになってる(と思う。描写みおとしてたらごめん)けど、よくよく考えたらチャンピオンになっての初仕事が並行世界からの侵略の対処とかいうどちゃくそ難しい案件とかちょっとかわいそうだなと思ってしまった

  • 158二次元好きの匿名さん23/02/24(金) 20:53:30

    ポケモンデーで新しいパラポケの情報きたらここに組み込みたいね

  • 159二次元好きの匿名さん23/02/24(金) 21:01:46

    螺旋階段を登った先で、あの日のあなたに伝えたいことがある。
    螺旋階段を降った先で、あなたに逢える気がしたのだ。

  • 160二次元好きの匿名さん23/02/24(金) 21:02:49

    ガキンッ、と金属同士がぶつかり合う音が響く。その上では、頭上に宝玉を掲げる二つの蒼い石の花が、ドラゴンアローで射出されたドラメシヤよろしく高速で飛び回りテラバーストを撃ち合う。
    グルーシャは見ているだけしかできない。彼の手元には、ポケモンが一体もいない。マフラーの端の飾りを握り締めて、悔しさのあまり歯噛みする。
    空からリーグの屋上に降り立とうとするパラドックスポケモン達をアップリューとドラミドロで迎え撃つハッサクは、グルーシャの様子を気にしつつも何もできずにいた。言葉では、彼の悔しさを正しく晴らせないとわかっていたから。
    アップリューのタネマシンガンを掻い潜り、トドロクツキがオモダカのキラフロルに向かう。しまった、とハッサクがアップリューにトドロクツキを追わせるより早く。
    「キラフロル、回転しながら全方位に向けてマジカルシャイン!!」
    無茶苦茶しよる。グルーシャは素直に思ったし、それに平然と応えるキラフロルも大概バグっていた。いやまあ、マジカルシャイン自体は効果範囲の広い技であるからして、回りながら撃つことで死角をカバーするのは間違ってはいないのだろうが。これだからトップチャンピオンってやつは。トドロクツキは四倍弱点のマジカルシャインをモロ喰らって、錐揉み回転しながら堕ちていく。
    「ハッサク、脇が甘いですよ。カイリューくらい出してくださいな」
    「流石の小生もあの数を相手に三体もポケモンを出す余裕はありませんです。相手の数もイーブンならともかくですが」
    「余裕の有る無しでなくやれって言ってるんですよ」
    「急に横暴になりましたね。トチっても文句は受け付けませんからね」

  • 161二次元好きの匿名さん23/02/24(金) 21:03:27

    やれやれと肩をすくめて、ハッサクはカイリューをボールから出す。飛び出したカイリューは翼を羽ばたかせて、パラドックスポケモン達のひしめき合う空へ飛び立った。
    「カイリュー、"しんそく"」
    ゴッ、と空気を打ち破るような音と共にカイリューが加速する。一撃、テツノドクガの羽を圧し折る。二撃、ハバタクカミの顔面に尻尾のしなりを駆使した打撃が直撃した。三撃、テツノコウベの両腕の顎を竜の爪が砕き裂いた。
    えげつないな。たったの技一つ分の指示で、カイリューはパラドックスポケモンをあっという間に三体も撃破する。これが四天王、これが竜使い。グルーシャは改めて隣に立つこの美術教師に畏敬の念を抱いた。
    「やればできるじゃないですか」
    「やれと言ったのは貴女でしょう」
    「だってできるでしょう?」
    「アオキじゃないんですから鞭を入れればいくらでも走れると思わないで頂きたいものですね。小生流石にそれなりの歳なのですよ」
    「体力測定総合成績二位がなんか言ってますね」
    「一位が何抜かします?」
    戦いの片手間でやる会話か?これが。トップってこんな人だったのか、とグルーシャはちょっとだけ、オモダカを見る目を変えた。存外に、彼女も人間だったようだ。
    ストーンエッジが古傷を湛えたドドゲザンの鳩尾に突き刺さる。オモダカはそれを見逃さず、自身のドドゲザンにドゲザンを指示した。効果はいまひとつ、なれど針の穴を通すような一撃は、ドドゲザンの急所を捉え痛恨の一撃となる。古傷を湛えたドドゲザンは、遂に膝を屈して倒れた。

  • 162二次元好きの匿名さん23/02/24(金) 21:04:27

    「やっっっと倒れてくれましたねざまあみろ。そのままキラフロルも落ちてしまえ」
    「トップもしや疲れていらっしゃる?」
    「正直足ガックガクですね。あと背中も少々痛いです」
    「集中しろ!!ふざけてないと死ぬ病かアンタたち!!!!」
    遂にグルーシャの怒りの声が飛んできた。とぼけた態度で二人とも片手をひらりと振って、表情を引き締め"敵"に向き直る。
    ドドゲザンが頭部の剣を構える。キラフロルは結晶の花弁を開いてキリキリと威嚇音を鳴らす。
    此方の世界のオモダカは、倒れたドドゲザンのボールをそっと撫でて、しかし。
    「まだ、終わっていない。終わらせては、ならない」
    光の無い、深淵を写し取った眼は。
    来る、と思った次の瞬間。

    ———ゴギャンッ!!!!

    建物内への出入口のドアが、吹き飛んだ。ドシンと、或いはゴウッ、と音を立てて乗り込んできたのは。
    「またえらいことをしてくれやがりましたね、此方の世界のトップ……いや、オモダカは」
    形の崩れてしまったネクタイを正す、ノココッチと並走してきたアオキと。
    「———……ッオモダカァアアアアア!!いいかげんにしやがれですの!!!!」
    ダイオウドウに乗って、ドアの周りの壁と枠組みをアイアンヘッドでぶち破りながら、此方側のオモダカを睨みつけるポピーだった。
    ポピーが人を呼び捨てにするなんて珍しいですね。オモダカは建築物の破壊に躊躇のない四天王二人に現実逃避をした。

  • 163二次元好きの匿名さん23/02/24(金) 21:11:53

    SS続きだー!
    激戦の合間にも軽口を叩けるこれが四天王とチャンピオンの風格……!!(どこに目をつけてんだ)

  • 164二次元好きの匿名さん23/02/24(金) 22:16:10

    パルデアにもしアブソルが生息してたら、パラポケあふれ出す前に災いを知らせようと各地に出現してたのかも

  • 165二次元好きの匿名さん23/02/25(土) 00:44:34

    このレスは削除されています

  • 166二次元好きの匿名さん23/02/25(土) 00:49:06

    >>153

    自レス

    「今回の世界はダメだったか、しゃーない次の世界さがしてそっちから取り戻そう」

    「次の世界がダメでも、また別の世界を、そこもダメならさらに別の世界を。並行世界を観測する術も、渡り歩くための装置の作り方も知ることができた。ならあとは上手くいくまでリトライを繰り返すだけだ」

    みたいな会話きいたら内心でめちゃくちゃブチ切れてる廃人チリちゃんはある

    その怒りを代弁するがごとく、原作軸チリちゃんが大噴火しそうというかする


    他が自分VS自分してるなか、最初からジムリーダーの拉致に否定的で原作軸の自分に助けを求め、向こうがそれに答えたというチリちゃんたちの立ち位置はいい意味で異質だと思う

  • 167二次元好きの匿名さん23/02/25(土) 00:54:51

    ここまで来ると体力測定結果が気になってくるね
    ポピーに叱られるなんてきっと今までなかっただろうな…

  • 168二次元好きの匿名さん23/02/25(土) 01:18:24

    大将と総大将のコンビに頂点を感じざるを得ない
    犠牲者兼オモダカさんに一番近い部下であるアオキさんが犠牲軸オモダカさんにどんなことばをかけるのかと、他の方もおっしゃってたけど、犠牲軸の大将総大将が元気なチリちゃんを見た時の反応が気になって仕方ない

  • 169二次元好きの匿名さん23/02/25(土) 09:12:09

    地味に体力測定成績が気になってる人もいるようなので箸休めに

    体力測定総合成績順位表
    1.オモダカ(10段階中オール9取るタイプ)
    2.ハッサク(基本的に高水準で持久力系だけ少し落ちる)
    3.カエデ(筋力だけならオモダカ超え)
    4.リップ(地味にスタミナ狂ってる)
    5.アオキ(お前のような平凡がいるか、柔軟は死)
    6.ハイダイ(若い頃はオモダカ超え、柔軟系が死んだのでここ)
    7.チリ(上が化け物揃いすぎて目立たないが大概怪物)
    8.ライム(ライブやってるから……)
    9.ナンジャモ(なんやかんや体力自体は割とある)
    10.コルサ(種目毎の浮き沈みが激しい)
    11.グルーシャ(怪我後から体力落ちてる)
    順位除外.ポピー(年齢的にまだ発達途中)
    尚全員そこらのモブより遥かに動けるもの(現状最下位グルーシャも一部除き一般人の平均よりも成績はだいぶ上)とする

  • 170二次元好きの匿名さん23/02/25(土) 09:31:07

    自分たちのトップではないってことで名前呼びなのかな?まぁややこしいもんね

  • 171二次元好きの匿名さん23/02/25(土) 11:53:42

    >>169

    ポケモン世界の住人はやっぱ超人揃いや……

    スーパーパルデア人どもめ……

  • 172二次元好きの匿名さん23/02/25(土) 13:14:29

    ふとSS犠牲軸ジニア先生が「やっぱ並行世界の研究つづけたいなー」という研究者の好奇心を優先して観測装置まもる側につくんじゃないかと不穏な妄想に駆られてしまった……

  • 173二次元好きの匿名さん23/02/25(土) 21:45:25

    保守(ハルトのマスカーニャ以外の手持ちをどうするか考えながら)

  • 174二次元好きの匿名さん23/02/25(土) 22:37:53

    SSでの廃人チリちゃんの発言一覧
    「叱ってやって」
    「会いたい」「会ってちゃんとお別れしたい」
    「一緒に戦って」
    だったかな 見落としあったらごめん

    こうしてみると、廃人チリちゃん前に進もうとする意志はあるんだ、ただそれができないほど心の傷が深すぎるんや……

  • 175二次元好きの匿名さん23/02/25(土) 22:54:51

    >>174

    一体何を見たらここまで折れるんですかね…

  • 176二次元好きの匿名さん23/02/25(土) 22:59:18

    >>175

    彼女だって生半可なことで折れるほど弱い人じゃないと思うんや、ただそれでも折れてしまったってことは、それほどの事態に直面してしまったってことなんや

    たとえばパラポケに踏み荒らされたりしたアオキさんの無惨な亡骸(R-18G指定)を直視してしまったとか……

  • 177二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 08:11:08

    女神の天秤は動かない。
    錆びついたまま、その役目を果たさない。
    審判は、人の手に委ねられるだろう。

  • 178二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 08:12:01

    リップとサワロを見送ったライムとハルトは、自分達の目的を果たす為アカデミーのエントランスホールに足を踏み入れた。パラドックスポケモン達が押し寄せている影響か、此方の世界の学生達が大勢、偶然にも二人の後に続くように逃げ込んできた。誰も余裕がないのか、二人には目もくれない。
    「観測装置も気になるけど、先に姉さん探すか。小言の二、三は言ってやりたいしね」
    コキ、とライムは首を鳴らす。傍らにハカドッグを出して、念の為周囲を嗅覚と聴覚で警戒させる。
    教師であるタイムがいる可能性が高いのは、職員室か担任をしている1-Dの教室かのどちらかだろう、というのがハルトの推測。ライムはそれに密かに同行していた"亡霊"の証言を照らし合わせて、1-Dの教室へ向かうことにした。柄にもなく緊張して、指先から血液が引いていく感覚がする。
    道中は無言。当たり前だ。この状況下で何か空気を軽くできるような雑談などできようもないし、できるだけの話題もない。外からはパラドックスポケモンと、おそらくナンジャモ達が交戦していると思しき音が辛うじて聞こえてくる。
    「失敬するよ」
    目当ての教室のドアを、勢いよく開ける。果たして、尋人はそこにいた。
    「ライム……それに、ハルト……さん?」
    尋人、タイムはライムと、その少し後ろに控えるハルトを見て、驚いたように目を見開いた。ひらり、ライムは片手を挙げて。
    「よお、姉さん。文句と、小言と、あと伝言。ぶつけにきてやったよ」

  • 179二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 08:12:49

    ニヒルに笑う。これは武力ではなく、言霊による戦いであると、ライムは確信していた。いいや、戦いですらないかもしれない。
    教室はタイムの縄張りだ。そこにライムとハルトは土足で踏み込む。適当な席の椅子を引いて、よっこいせ、と我が物顔で座る。
    「まずはまあ、なんだ。こっち連れてこられた時に言えなかったんだけど、姉さんちょっと痩せたか?気のせいなら悪いと思うけど」
    「……どうかしら、ちゃんとご飯は食べてるのだけどね」
    ライムは帽子を取って机の上に置く。目を伏せたタイムの頬の輪郭を、自分の知る姉の姿に重ね合わせて、やっぱり痩せてるというか窶れてる気がするな、と思案した。
    「姉さんでもこんな馬鹿げたことに賛成するなんて、思っても見ないだろ。オモダカにしろハッサクにしろ、どっかトチ狂っちまってんのは姉さんなら気付いてそうなもんだけどね」
    「そうね、理事長もハッサク先生も、どこかおかしくなってしまった。それでも、お二人に魅せられた希望に、縋り付いてしまった人は大勢いるわ。私も含めて」
    「で、でもそれって、自分たちが受けた苦しみを、他の人にも押し付けるのと変わらないじゃないですか!ぼくは、そういうのはよくないと思うんです。綺麗事でも、ちゃんと自分たちの力だけで乗り越えないと……」
    ハルトが懸命に自分の考えを言葉にする。酷く抽象的だが、だからこそ純粋に真摯な考えと想いがそこには宿る。
    タイムはハルトの言葉に、その通りね、と同意した。

  • 180二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 08:13:36

    「だから、あなたたちは私たちを赦さないでね。私たちは、この先きっとどこまでも間違え続けてしまう。誰かが、その先頭を走る理事長の意志を折らない限り」
    意志あるところに道は創られる。間違った道も、また意志によって拓かれる。
    この世界は間違えた。だから、赦さないでほしい。タイムは懇願する。ライムも、タイムがそう言うだろうことは想定していた。
    「随分弱気になったもんだね」
    大きなため息を吐き出したライムは、片肘を膝に乗せて掌を頭に当てた。
    「赦す赦さないも何も、実際厄介なことに巻き込まれたとは思うけど、姉さんに恨みを抱いたりはしてないからね。他は知らないけどまあ、誰も恨んだりはしないだろ。酷い話、あって憐れむ程度だ」
    そう、ライムはこの世界の惨劇の様子を亡霊たちから語られて、まずは胸中に湧き出たのは憐憫だった。大変に、失礼な話ではあるが。
    「だから、別にそこに関して姉さんが気に病む必要はないだろ。どっちかっていうと、アタイはそうやって俯いてる姉さん見てる方がしんどい」
    背筋を緩く伸ばして足を組む。思いがけない言葉だったようで、タイムは呆気に取られた顔でライムの顔を見た。
    「まあそれはそれとして、ポケモン取り上げた上でリーグに軟禁された件についてはきっちり詰らせてもらうけどね!」
    アタイからの話は以上!ライムはパンッ、と手を叩く。胸ぐらを掴まれる程度は覚悟していたタイムは、何もされないことに拍子抜けして、自分でも自覚できるほどの間抜け面を晒してしまった。

  • 181二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 08:14:12

    「それで、こっからが伝言なんだけど」
    ス、とライムの右手の人差し指が虚空を指す。タイムとハルトの視線は、自然とライムの指先に向く。
    「"勝手に先逝って悪い。でも後悔はしてない。それから、頼むから姉さんは長生きしなよ"」
    「あ……っ」
    ボロ、とタイムの目から涙が落ちた。涙腺が決壊して、止めようとしても止まらない。ごめんなさい、と断りを入れて涙を拭く為にポケットから出したハンカチは、あっという間に用を為さなくなった。
    「先生……」
    どう声をかけるべきか、ハルトは悩んで結局言葉ではなく自分のハンカチを代わりに差し出した。
    ライムは黙ってそれを見ていた。自分が何か言葉を投げかけるべきではない。姉と呼びはしたけれど、結局のところ目の前の彼女は姉に限りなくよく似た別人。平行世界の同一人物とはそういうものだ。
    【泣けてなかった分、泣けてるならそれでいいさ】
    "亡霊"は穏やかな声で言う。ライムにしか聞こえないその言葉に、ライムは静かに同意した。
    暫く、やっとどうにかとめどなく溢れた涙が止まった頃に、タイムはまだ目尻に残る涙を指で掬って。
    「伝えてくれてありがとう、ライム。ハルトさんも、ハンカチありがとう」
    「いえ、ぼくいるだけで何もできてないですし……」
    「……ま、姉さんがこれで胸のつっかえが取れたんならアタイはそれで十分だけどね」
    「だからこそ、こんなことを頼んでしまうのは無責任かもしれないけれど……」
    タイムの表情が、ハルトもよく知っている穏やかで優しいものになる。
    「理事長を、止めて差し上げてくれるかしら」
    間違った道を間違っていると理解したまま進む、オモダカを止めてほしい。
    「はい!」
    「任せな。折よく頼れる面々も揃ってるしね」
    ハルトは力強く応えて、ライムはトンと右手で胸を叩いた。

  • 182二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 09:55:28

    保守

  • 183二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 12:05:26

    SSキター!
    犠牲軸のタイム先生は止める側についてくれたか
    やはり精神分析は必須やった……

  • 184二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 12:37:45

    SS読んだ感じ、原作軸ではハッサク先生の美術4とミモザ先生の絆イベントがあったっぽいけど、犠牲軸ではイベント発生してなかったのかな?

  • 185二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 13:00:36

    回転しながら全方位マジカルシャインという無茶ぶりをしれっとこなすオモダカさんとキラフロル、なんつーかさすがチャンピオンという言葉しか出てこねえ

  • 186二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 20:10:20

    明日ポケモンデーだしSVやパラポケの新しい情報こないかな
    来たら尊い犠牲概念にぶち込みたい

  • 187二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 22:10:12

    ヴァルキュリアは目覚めない。
    鏡の国のアリスは夢を見ない。
    ケツァルコアトルは空を飛ばない。
    ファーヴニルは宝を守らない。
    クリームヒルトは眠らない。
    土に埋もれた輝石を掘り返し、果たして誰が飲み込んだのか。

  • 188二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 22:11:00

    真っ先に我先にと飛び出して行ったアオキとポピーを追いかけて、未だ気絶したままの此方側のハッサク(簀巻き済み)と物言わぬチリをカエデとハイダイ、コルサと此方側のポピーに任せてチリは走る。一瞬見えたポピーの顔が、チリは気掛かりだったので。
    「あんなカンカンに怒っとるポピー、見たことないでホンマに」
    走りながらぼやく。ただでさえ連戦で、何度も無茶をした小さな身体は僅かな休憩を挟んだ程度で回復し切る訳もなし。それを激情と責任感と信念で強引に動かしているならば、チリがするべきことは。
    屋上のバトルコートへ続く道の先に、ぶち破られて壊れたドアが見えた。スン、とチリは全てを察して真顔になる。
    意を決して、戦場になっているであろうバトルコートへ乗り込んだ。
    いきなり風圧か何かで舞い上がった"どくびし"の一部がチリの顔スレスレを横切り、チリはかなり本気で命の危機を感じることになる。どうして、どこから出てきてどこから飛んできたこの"どくびし"は。
    「チリさん!?」
    振り返って名前を呼んだのは、一人戦力外で見ていることしかできなかったグルーシャ。皮肉にも、見ていることしかできないが故に、新たな乱入者にいち早く気付けた。
    ピクリと、声を上げたグルーシャの口から出た名前に反応したのは、此方側のオモダカ。遠目で見れば、うそ、と口が動いたのがチリにはわかった。何に対する"うそ"なのかは、察しはしつつも指摘はしない。
    「すまんグルーシャ。今どういう状況!?チリちゃんポピーとアオキさん追っかけてきたんやけど……。あとこれ、自分のポケモンらな!」
    バクバクと鳴る心臓を軽く押さえつつ、チリはグルーシャに保護したポケモンたちを返す。受け取ったグルーシャはフ、と笑って。

  • 189二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 22:11:45

    「ありがとうチリさん。これでぼくも戦える……!!」
    ヒュッ、と両手で二つのボールを天に向けて投げ、飛び出したのはモスノウとチルタリス。二匹は空で戦う三体の竜に加勢すべく、羽を、翼を羽ばたかせて舞い上がる。
    「モスノウ、"おいかぜ"!!」
    羽の氷の鱗粉を煌めかせたモスノウが、戦友の背を押す風を呼ぶ。空を舞う、チルタリスを含めた四体のドラゴンがより速く、より力強くパラドックスポケモンを翻弄した。
    マジカルシャインを放とうとするハバタクカミに、先んじてチルタリスが"れいとうビーム"を撃つ。放出できなかったエネルギーごとハバタクカミは氷漬けになり、地に落ちていく。
    冷静に相手を見極めて、グルーシャはモスノウにテツノコウベに対して"ふぶき"を撃たせた。命中七割、体感五割以下の高威力広範囲のブリザードは、テツノコウベの翼を掠めて凍りつかせるに止まりながら、その後続のテツノドクガに半減ながら直撃した。凍りついて翼が上手く動かず、バランスを崩したテツノコウベにモスノウの"むしのさざめき"が見舞われる。
    「水を得たカマスジョー……や、雪を得たツンベアーか」
    若干の苦笑いを浮かべて、チリは呟いた。
    モスノウの"おいかぜ"のおかげで、パラドックスポケモンたちを仕留める速度が上がっている。ハッサクのアップリューとドラミドロは連携で次々とパラドックスポケモンを撃墜していく。その近く、インファイトでトドロクツキをボコボコに殴り倒して地面に叩きつけているのは、アオキのムクホークだった。
    その光景を面白くなさげに見ていた此方側のオモダカは。
    「クレベース」
    ボールから新たに出したクレベースに、"ゆきなだれ"を指示した。標的は、空を自在に駆け巡るハッサクのカイリュー。

  • 190二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 22:12:27

    「っ!アカン、バクーダ!"だいもんじ"!!」
    狙いを察したチリは、バクーダを出して"ゆきなだれ"に向けて"だいもんじ"で打ち消しにかかる。とはいえ流石にトップチャンピオンのポケモン。相性有利にも関わらず全力を出してようやっと相殺できる威力である。加減しろバカ、と理不尽な怒りをチリは覚えた。
    チラ、とチリは前方でオモダカ———此方側のではなく自分たちの世界の———の隣で此方側のオモダカを睨むポピーの姿を見る。怖気がするほど静かな様子のポピーは、何故だろうか、その小さな体躯がやけに大きく見えた。
    「オモダカ」
    幼さと怒気が混ざり合った声だった。ポピーが他人を、それも仮にもトップ(と同じ顔をした人)を呼び捨てにするなんて、とチリは驚く。
    「あなたがいまなにをしているのか、わかっていますか」
    眉間に子供らしからぬ皺を寄せて、ポピーが詰る。
    「あのさんげきを、じごくを、よりにもよってあなたがまねいてどうするのですか」
    一歩、足を前に出す。チリはそういえば、ポピーはその目で此方の世界のナンジャモが遺した映像という形で、この世界で起きた惨劇の一端を見ていたのだと思い出した。
    「あなたのあいしたパルデアを、あなたのてでめちゃくちゃにするつもりですか!こたえなさい、オモダカ!!!!」
    チリも、オモダカも、アオキも、ハッサクも、グルーシャも。皆がポピーの怒号に気押された。ただ一人、此方側のオモダカは。

  • 191二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 22:13:37

    「取り戻したものをまた奪われるくらいならば、私達の手で私達諸共壊し尽くす方が、よっぽどマシでしょう」
    既に正気など失っていた。彼女が導とした北極星は堕ち、彼女が尊んだ白亜の城は崩れ落ちた。もはや、彼女は正道へは戻れないと。
    「向上心の塊で、周りにもそれを求めた貴女が呆れた話ですね」
    心底げんなりした顔で、アオキから聞き取りづらい苦言が落ちた。フゥー……、と大きく息を吐き出したアオキは、眉を吊り上げて。
    「前を見ろよ。周りを見ろよ。後ろばっかり見ていないで……失くしたものばかり見ていないで、今貴女の手の中に残ってるものを見ろよ……!!」
    アオキから普段の敬語が取れて、声も気持ちばかり張り上げて乱暴な口調になる。傍らのノココッチが尻尾を振り上げて威嚇した。
    アオキのこんな怒った顔久しぶりに見ましたね。オモダカはキョトンとしてアオキを見上げる。ポピー共々乱入されてからペースを乱され切っている気がした。
    「手の中に残っているものを見ろ?そんなことはわかっているのですよ。見ているからこそ、見てきたからこそ私は———ッ!!」
    「見ていないだろ。見ていたら、望んでないことくらいわかるはずだ。彼女は……チリさんは、一言だってそんなこと求めてはいない……!!」
    クレベースと、後に続くようにボールから飛び出したミガルーサが突進してきた。アオキはノココッチにハイパードリルでミガルーサを抑えさせ、反射的に動いたオモダカのドドゲザンがクレベースにアイアンヘッドを叩き込むのを横目で確認した。
    「そうだとしても止まるわけにはいかないのです。私達は、最期まで———!!」
    キラフロルが瞬く。仄暗い決意が、信念が此方側のオモダカの心を閉ざす。
    ポピーはもう一歩前に出て、デカヌチャンがボールから躍り出る。
    戦いが更に激化する予感が、オモダカの背中に冷たい汗を流させた。

  • 192二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 22:18:54

    SS続きだー!
    アオキさん敬語がとれた……!!

  • 193二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 22:43:01

    これ、犠牲軸ハッさんがいつ起きるかで戦況かわるんじゃないか……
    まあパラポケの大群とあっちのオモダカさんをどうにかしたとしても、犠牲軸ハッさんが待ち構えてるわけだけど……

  • 194二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 22:49:50

    そろそろ次スレかな?

  • 195二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 22:56:34

    宝を守らないファーヴニルって例えがあまりに好きすぎる。犠牲世界のハッサク先生も流石にこの惨状見たら止めに入りそう、此方のコルさんが守ったものぶっ壊されようとしてるし

  • 196二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 22:59:43

    犠牲軸タイム先生が原作ハルトくんみてすぐに名前が出てきたってことは、こっちにもハルト君いるんだろうか

    生死はともかく……


    >>195

    それはそれとしてジムリ取り戻すって意志は変わらなさそうなのが……

  • 197二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 23:01:28

    ヴァルキュリアは目覚めないって表現もステキ
    廃人チリちゃんを翼を捥がれたヴァルキュリアって表してるのセンスの塊すぎて

  • 198二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 23:05:56

    うわぁアオキさんから敬語が…!!絶対本編では取れないであろうからこそ読んでて緊張した!超個人的な事を言えばノココッチ推しなので一緒に描写されてクソ嬉しい
    素敵な場面が多くてない画力でまた筆取りたくなってしまいますですよ

  • 199二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 23:19:50
  • 200二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 23:20:34

    >>199

    ありがとうございます

    ありがとうございます……!!

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