その帽子、似合ってるね【SS】

1二次元好きの匿名さん21/11/13(土) 13:42:51

「あはは……そう、かな」

　休憩のために立ち寄った喫茶店の角の席、彼女は照れくさそうに帽子を目深にかぶって顔を伏せる。
　帽子のつばに隠れて表情は窺えないが、鼻の頭がすこし赤くなっているのが、わかりやすくて可愛らしい。
　『この帽子可愛いかも』
　彼女にとってはきっと、深い考えなどない何気ない一言。
　けれど、「確かに」と同意したくなる彼女にぴったりの柄の帽子。
　『いやいや、帽子が可愛いと思っただけで、私なんかには似合わないって……』
　きっと似合うと、遠慮する彼女を押しきって、その帽子を購入した。帽子を被る時に、ウマ娘の耳が邪魔になってしまわないよう穴を空けるのは慣れたものだ。
『やっぱえぐいって……あんたのそれ』
　ハサミを使ってじょきじょきと刃を入れていく様子を彼女は、顔を少し青くして引き気味に笑っていた。
　普通だと思うんだけどなぁ……。
『できたよ～』
　切り口が解れないように軽く縫って彼女に帽子を手渡す。
　赤い布地に細い緑のストライプが入ったキャスケット帽。
　やっぱり彼女にはこの色がよく似合う。
　一緒に帽子を被って、手を繋いで喫茶店を後にする。
　日はまだ高い。隣ではにかむ『彼女』と今日をまだまだ楽しもう。