- 1121/11/14(日) 23:19:49
題名通りエイシンフラッシュと♂トレーナーさんが卒業後に同棲しながらイチャイチャするお話しと彼女たちを取り巻く方々のお話しです。徒然に書いていくので時系列はバラバラとなります。
(現役時代、別離期間、同棲告白前、告白後etc)
希にルドルフ×トレーナー、マルゼンスキー×トレーナーなどもあったりします。
以下過去スレです。
part1
お久しぶりです、トレーナーさん|あにまん掲示板「ああ、久しぶり、フラッシュ。…そんな風に君に呼ばれるのも、本当、懐かしいな」 トレーナーと呼ばれた男は眩しそうに目の前の妙齢のウマ娘をみる。フラッシュと呼ばれた女性は、懐かしむように目の前の男と視線…bbs.animanch.compart2
[SS]卒業後フラッシュとトレーナーさん|あにまん掲示板気がついたら完走してしまったようなので前作https://bbs.animanch.com/board/75583/同じかんじでフラッシュとトレーナーのイチャイチャ話を思いつき次第投下予定。ただ前回ほ…bbs.animanch.compart3
【SS】卒業後の再会を経てイチャイチャするエイシンフラッシュとトレーナーさんand more 【part3】|あにまん掲示板ありがとう。皆さんと駄弁りながらだけどパート2も完走できたみたいです。このスレは引退の時に思いを伝え損ねたけど、再会後に同棲することでトレーナーさんと燃え上がってしまったエイシンフラッシュさんアンドモ…bbs.animanch.compart4
【SS】【フラッシュ×♂トレ】卒業後の別離を経て同棲するエイシンフラッシュとトレーナーさんand more 【part4】|あにまん掲示板題名通りエイシンフラッシュと♂トレーナーさんが卒業後に同棲しながらイチャイチャするお話しと彼女たちを取り巻く方々のお話しです。希にルドルフ×トレーナー、マルゼンスキー×トレーナーなどもあったりします。…bbs.animanch.com - 2二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 23:22:46
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- 3二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 23:24:16
立て乙です!
- 4二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 23:25:29
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- 5121/11/14(日) 23:26:12
基本的に本編より後の話となります。トゥインクルシリーズ後、一年をフラッシュと共に歩んだものの引退を契機にエイシンフラッシュはドイツに帰国してマイスターへの道を歩み始めます。それから一年と半年後、再び日本で二人が寄り添うことになったというお話です。詳しくはpart1を参照のこと。
主な登場人物
・エイシンフラッシュ
メインヒロイン。別離の一年半の反動でトレーナーさんとの蜜月をたっぷり味わっている。一時期へたれていたが関係を確固たるものにしてからはグイグイ迫っている。
・トレーナーさん
エイシンフラッシュのトレーナーさん。一番の果報者。エイシンフラッシュとの時間を今は一番大事にしている。現役時代に比べるとかなりフラッシュに対して押され気味。
・チーフ
ルドルフのトレーナー。フラッシュのトレーナーさんの上長みたいなかんじ。世話焼きな一面もあったりなかったり。
・シンボリルドルフ
カイチョー。カリスマっぷりは健在。こっちもちょっと二人に気を回していたりする。元生徒会のメンバーとかフラッシュとかのパートナーとの蜜月っぷりを羨ましく思っている。
・マルゼンスキー
チャンネー。グンバツのスタイルを誇る、ルドルフとは別の意味でカリスマを誇るが引退済み。 - 6121/11/14(日) 23:31:55
皆さんありがとうございます。正直最初は一回限りのネタのつもりだったのでpart5とかになるなんてびっくりしてます。とっくに最初の投稿からの一か月過ぎてるし。
……なのでこれやったらおしまい、みたいな完結できるお話を用意していないのでボチボチやっていくと思います。 - 7二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 23:35:43
毎日の糖分摂取スレ
- 8二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 23:54:27
まだまだストックネタあるんやったね
楽しみだぁ - 9二次元好きの匿名さん21/11/15(月) 00:00:55
急かさなくても無限に供給してくれるSS作者は希少なのでどんどん書いていただきたく
- 10121/11/15(月) 00:16:46
- 11二次元好きの匿名さん21/11/15(月) 01:31:26
明日には5スレ目かな〜って油断してたら…
もう出来てる…(戦慄) - 12二次元好きの匿名さん21/11/15(月) 10:13:57
こんなんなんぼあってもいいですからね
- 13二次元好きの匿名さん21/11/15(月) 16:01:53
このレスは削除されています
- 14二次元好きの匿名さん21/11/15(月) 21:59:15
生きがい
- 15121/11/15(月) 23:10:18
- 16キャロットケーキは蕩けない0121/11/15(月) 23:48:58
時間ぴったりに終業したフラッシュは、速足で更衣室に向かう。ロッカーの前でコックコートを衣擦れの音をかすかに立ててスムーズに脱いだ彼女の他にもし他の者の目があれば驚いたことであろう。シックさを好む彼女にしては少々派手なワインレッドに豪奢な刺繡をしつらえた、実用性よりは煽情的であることを優先したような下着は、彼女の成熟した魅力をより引き立てている。白い肌とそれに映える紅を隠すような黒のブラウスの前を止める。スタイルの良さと、凛とした顔立ちが余計に際立つ。鏡の前で真剣な表情をすると、唇に薄くルージュを引く。一つ頷いて時計を確認する。落ち着いて、余裕を持って。息を整えた彼女は、その姿を見てほう、とため息をつきそうな他の同僚たちに挨拶を済ませる。
「お疲れ様!フラッシュちゃん!」
「楽しんでくるんだよ」
「トレーナーさんによろしくね」
「くうう…羨ましすぎるぜ…トレーナーさんの野郎…」
ねぎらいの言葉や激励を受けて、約束の駅前への道を歩む。同じ屋根の下に住む彼と約束したのは映画鑑賞である。駅前で合流し、軽い食事を済ませてからレイトショーを鑑賞するというスケジュールになっている。メガヒット恋愛映画キャロットケーキシリーズの外伝、「キャロットケーキはとろけて」。お子様はお断りの作品だが、勿論今のフラッシュには何の問題もない。キャロットケーキシリーズならではの糖分たっぷりの作品でありながら、大人向けな分そういうシーンも豊富で、若い恋人たちから熟年夫婦まで幅広い人気を獲得している。無二の友人であるスマートファルコンも激推しの作品である。この間、寝たふりでトレーナーさんからの告白をスルーしてしまったことを伝えた時にみっちり怒られた後に丁度いい作戦があるから!とこの映画に対してたっぷりプレゼンをされてしまったのであった。合間合間に惚気が入った上、プレゼンより惚気の方が長かったのでは、と思わないでもなかったが、自分が彼に取る作戦に有用なのは間違いない。親友の助言を無碍にする必要は何もない。翌日トレーナーさんにスケジュールを確認したところ、休日より終業後の方が都合が良さそうということになった。スケジュールに決戦になり得る日を記入し、幾重にもシミュレーションを重ねた末、今こうして本番前、彼が待つであろう駅前に向かうのであった。 - 17121/11/15(月) 23:50:54
明日に続く!
ちょっとまとまった時間とりづらくてゆっくりになるのでごめんなさい。
……っていうか今見返すと最初のころのペースがおかしい…。 - 18二次元好きの匿名さん21/11/15(月) 23:58:44
とうとう来たな!例のシーンッ!
- 19二次元好きの匿名さん21/11/16(火) 03:30:36
勝負下着は今!ここで決める!
- 20二次元好きの匿名さん21/11/16(火) 12:53:38
これは決戦の東京競馬場 芝2000m
- 21二次元好きの匿名さん21/11/16(火) 16:16:33
お互いがお互いに気があるしフラッシュはここで決める気だし
これは…勝ったな!() - 22二次元好きの匿名さん21/11/16(火) 17:45:50
ここまで準備万端のフラッシュが仕留められないわけないだろう()
- 23二次元好きの匿名さん21/11/16(火) 23:15:42
くうう…羨ましすぎるぜ…トレーナーさんの野郎…
ほんとだよ… - 24121/11/16(火) 23:39:23
- 25キャロットケーキは蕩けない0221/11/16(火) 23:40:29
待ち合わせの場所に向かうと、スーツ姿の彼がこちらを見つけて笑顔を向ける。あの頃とは違う意味で毎日顔をあわせているというのに、フラッシュの心臓は不思議と高鳴る。
「フラッシュ!」
「お待たせしました。トレーナーさん」
「いや、いつも通り時間ぴったり。流石だね。早速だけど行こうか」
はい、とうなずくと彼の横にぴったりと並ぶ。こうして横に並ぶのも慣れたもので、外から見れば恋人同士にしか見えないが、彼や彼女にその自覚は無かった。いや、フラッシュにはそう見えていて欲しいという小さな願望はあったのだが。まだ手を繋ぎながらという段階には至っていない。あの頃なら強引に手を取ってみたいなことは平然とできたと思うのだが、今となってはそれをするにはもう少し関係を深めてからではないといけないのでは、という妙な遠慮がフラッシュの中にはあった。
映画館は駅からほど近くの複合商業施設の一角にある。本格的なディナーと一緒に、というのは時間の都合もありまたの機会として、施設内のフードコートで軽食を済ませようというスケジュールが立てられている。平日ではあってもそこそこ人出の多いフードコートにて、サンドのメニューを二人で眺める。
「じゃあ、俺はこれでフラッシュはこっちでいいかな……。先に席を取っておいてくれる?」
「わかりました、お任せください」
席が埋まっているわけではないが、二人で丁度いい席を探すよりは、ということで少々離れたテーブルに腰かける。ウマホのスケジュールを再確認しながら彼を待つフラッシュ。これから先のことを妙に意識してしまう彼女だが、その意識を横から破られる。
「すみません、ちょっと隣いいっすか」
ちょっと浮ついた風情の若い男が声をかけてくる。反射ではい、と返事をすれば、その男は馴れ馴れし気な態度を取ってくる。故郷の友人にもこういうタイプはいなかったので慣れないタイプである。適当にいなすが遠慮がない。
「ひょっとして一人で映画っすか?良かったら……」
「フラッシュ!」
その声に彼女とその男が振り返ると、トレーにサンドと飲み物を乗せた清涼感のある男が笑顔を向ける。
「トレーナーさん!」
「お待たせ……えっと、彼女に何か?」
浮ついた男に優しく声をかければ、男はバツが悪そうに離れていってしまう。そりゃ男持ちかぁ、という小さな声が二人に聞こえたかどうかはわからない。 - 26121/11/16(火) 23:41:22
明日に続く!
いやほんと羨ましいなトレーナーさんの野郎…かわれよ…かわってくれよ… - 27二次元好きの匿名さん21/11/17(水) 00:17:29
んも~少し目を離したらすぐ悪い虫が寄ってくる~...
- 28二次元好きの匿名さん21/11/17(水) 00:18:28
トレーナーさんは気が気でないのでは…?
- 29二次元好きの匿名さん21/11/17(水) 00:26:25
でもここの時空のトレーナーイタリア成分抜けてよわよわだから…
- 30二次元好きの匿名さん21/11/17(水) 09:57:56
ちょっとしっとマスク多くなぁい?(頭にブーメランを刺しながら
- 31二次元好きの匿名さん21/11/17(水) 17:39:38
誰だって声かける 俺だってかける
しょうがないね… - 32二次元好きの匿名さん21/11/17(水) 17:41:24
ちょっと忘れてきてるしpart1から読み返してくるか
- 33二次元好きの匿名さん21/11/17(水) 21:05:35
- 34二次元好きの匿名さん21/11/17(水) 21:25:11
- 35121/11/17(水) 22:28:29
- 36121/11/17(水) 22:29:20
本日も続き!
今週はこの話が続きます。 - 37キャロットケーキは蕩けない0321/11/17(水) 22:31:09
フラッシュの正面に腰かけると、彼女の分と自分の分のサンドイッチとドリンクを分けながら、大丈夫だった?と心配そうに声をかける。別段危害を加えられたわけではないので、平気ですと答えると彼もほっとしたようであった。
「君が困っているように見えたから」
「ありがとうございます。本当に助かりました」
勿論、何を言ってこようと取り合うつもりはなかったが、彼が追い払ってくれたおかげでスムーズに事が運んだので助かった。スマートファルコンならばあしらうのも得意であろうが、エイシンフラッシュ自身はこういう時の対応に苦手意識がある。地元の者たちや、純粋に好意を持ってくれているファン達への対応ならば苦慮することはないのだが。トレーナーは去っていく男の背中を一瞥すると、小声でフラッシュに語り掛ける。
「良かった。余計なお世話じゃなくて。同じ男として君をデートに誘いたくなる気持ちはわかるけれども、誘うときにお相手を困らせるようではダメだね」
「……トレーナーさんは、女性をデートにお誘いしたことがあるんですか?」
耳をぴくっとさせながらこちらも小声で尋ねるフラッシュ。一瞬トレーナーは言葉に詰まる。
「え?……まあ、学生時代は少しね。って、いってもナンパみたいなことはしていないよ」
ちょっと言い訳じみた言い方で誤魔化す彼が少し可笑しくて笑い声が口の端から漏れるのを手で隠そうとする。
「でも、今、気持ちはわかるって」
意地悪な言い方をあえてしてみるフラッシュ。彼女の思惑通りに更に困った顔をみせる彼。
「もし、もしですよ?トレーナーさんが私のことを知らなくて、先刻ほどまでみたいに一人でいたら……ナンパしてみましたか?」
心臓の高鳴りを抑えながらの質問。彼が自分のことに好意を持ってくれるようになったというのを、一方的に自分だけが知っている状況で意地の悪い言い方だとは思うが、聞いてみたくなる心を抑えきれなかった。トレーナーはううん、と小さく唸る。
「……いや、しなかったかもしれないな」
「それでは、気持ちは分かるというのはお世辞ですか?」
引かないフラッシュに、そうではなくてと宥めるようにトレーナーは意味を話す。
「いや、勿論、ナンパというか、声をかけたくはなるのは間違いないと思うけれど。でも、きっと高嶺の花に見えてしまって、声をかけるのを躊躇ってしまうと思う」 - 38二次元好きの匿名さん21/11/17(水) 22:34:00
落ちが分かってても早くくっつけよ…って思ってしまうな
いつもありがとうスレ主!今日も生きていける - 39二次元好きの匿名さん21/11/17(水) 22:35:20
ありがとう…ありがとう…
- 40二次元好きの匿名さん21/11/17(水) 22:38:45
高嶺の花に見えてしまって声かけられないってのはすごくよくわかる
だがな、今の状況を見ろよトレーナーさん
オレは血涙を流すことしかできないんだ - 41キャロットケーキは蕩けない0421/11/17(水) 22:40:25
「……もう、トレーナーさんは上手なのですから」
頬をほんのりと上気させるフラッシュだが、トレーナーの目から見ても上機嫌なだけではないように見える。高嶺の花と彼に言われるのは、彼が自分のことを美しいものと思ってくれているのだから嬉しくはあるのだけれど、一方で彼を躊躇わせるような美しさなら、そんなものは要らない、なんていう声を心の内に秘めるのであった。
「と、兎も角、ちょっと俺の気配りが足りなかったな。今度はフードコートは止めにしよう」
「……トレーナーさんがこうしてついていてくだされば、何の問題もないですけれど」
いじましさを込めて告げるフラッシュの上目遣いに一瞬見とれるトレーナー。
「あ、ああ。俺でも虫除けくらいにはなれるしね」
弱っているころの卑屈さが出ていることを注意するように、フラッシュはトレーナーの鼻先を指先でつん、とつつく。
「……虫除けだなんておっしゃらないでください。せめて、騎士でいかがでしょう?」
アイスティーを口にしながら、トレーナーに注文をつけるフラッシュ。トレーナーは予想外の言葉を顔をほころばせると、彼女の前でおどけてみせる。
「こんな俺でも構わないのと言うのであれば、貴女の騎士になりましょう。レディ」
欧州の他の地域と同じく、ドイツにも恋歌は多く、ミンネザングという抒情詩群は特に著名である。これらに多く歌われるのは騎士と淑女、婦人が紡ぐ愛の歌。悲恋の歌も少なくはないが、結ばれる歌も多い。騎士と淑女が織りなす物語をトレーナーと自分に置き換える。レースで走る姿は騎士と淑女双方を兼ね備えると言われた彼女だが、トレーナーの前では態度そのものはともかく、心はすっかり淑女の方に傾いている。騎士の鎧をまとい、自分の手を取って連れ出してくれる彼――
「……フラッシュ、フラッシュ?」
想い人の声ではっとようやく我に返った彼女は、夢想に浸っていたことに気が付いて羞恥心が襲い掛かってきて小さくなる。心配する彼になんでもないです、と返す彼女。無理はよくないから帰ろうか?と提案する彼だったが、潤んだ瞳で袖を掴まれれば、提案はひっこめざるを得なかった。自分たちの認識では友達以上恋人未満、他から見ればどう見てもカップルの二人の時間は瞬く間に過ぎていく。 - 42121/11/17(水) 22:43:13
- 43二次元好きの匿名さん21/11/17(水) 23:02:10
もうメロメロじゃないですか…
- 44二次元好きの匿名さん21/11/17(水) 23:10:02
- 45二次元好きの匿名さん21/11/18(木) 01:25:50
そろそろほしい物リスト貼れ!!!!!金払わせろ!!!!!
- 46二次元好きの匿名さん21/11/18(木) 11:48:03
一生虫除けしてろ騎士様…
- 47二次元好きの匿名さん21/11/18(木) 17:54:06
あまァーーーーーーーい!!!!
- 48121/11/18(木) 22:36:28
- 49二次元好きの匿名さん21/11/18(木) 22:47:14
少しずつじゃないと甘すぎてこっちの心と身体が保たないから全然問題無いんだぜ…?
- 50キャロットケーキは蕩けない0521/11/18(木) 22:55:35
「そろそろ行こうか。チケットはもう取ってあるけど、ドリンクは確保していきたいしね」
「はい、参りましょう」
いよいよ本日のメインイベントである映画鑑賞に向かう。トレーナーが二人分のトレイを持とうとすると、フラッシュがそれを止めようとするが、トレーナーも胸を張って譲らない。
「いや、これくらいは俺にやらせてくれ。君には本当に世話になっているんだから。これも騎士の仕事だろ?」
爽やかにそういう風に言われてしまっては、彼女も強く出ることはできないので、彼の好意に甘える。
「では、お任せいたします。騎士様」
二人並んで返却口まで向かい、トレイを置いてごみを手早く捨てると、真横に並んで歓談したまま映画館のフロアに続くエスカレーターに向かう。エスカレーターからまばらにではあるが、老若問わず男女が並んでいる姿が目に入ってくる。
「やっぱり、カップルが多い作品なんだね」
「はい、ファルコンさんからも伺いました。甘酸っぱい恋愛で人気を博したキャロットケーキシリーズの外伝ですから」
指をぴんと立てて解説を始めるフラッシュ。フラッシュ自身も本編は見たことはあるが熱烈なファンというわけではないので、友人の解説の受け売りにはなってしまうのだが。
「トレーナーさんは御覧になられたことは?」
その質問にトレーナーは首を横に振る。
「話には聞いたことがあるくらいかな。ニュースとかでも話題にはなっていたし。本編見てからがいいかなとも思ったんだけど、単品で楽しめるっていうことだったよね」
「はい。続き物というわけではないので」
「そうか。普段見ないジャンルを見るっていうのも楽しみだな」
なんてことを言う二人だが、エスカレーターに乗る前の組の男女が肩を寄せ合っているのを見ると妙に意識してしまう。彼らの認識はまだ恋人未満である。一応。エイシンフラッシュからすると、彼が愛おしい、それこそ求めてやまない存在なのは間違いがない。四年を共にし、一年半の別離で悲しみを心に刻み、そして再会を経て幸福をもたらしてくれた彼への愛という点でいえば、彼女は彼の家族以外には負けないという自負すらある。その上、フラッシュは彼が告白してくれたこと、想いを寄せているという決定的な独白を聞いてしまっている。つまり両想いであるということに確信がある。 - 51キャロットケーキは蕩けない0621/11/18(木) 23:15:36
一方、フラッシュのトレーナー側から見たときには、恋愛感情をフラッシュに抱いているという自覚がもうハッキリしているにしろ、彼女から返答を貰っている状況ではない。無論、同棲まで持ち掛けてやや折れかけていた自分を支えてくれようとした彼女が並々ならぬ好意を抱いていることは流石にわかっている。わかってはいるが、それでもフラッシュからの感情が恋愛感情なのか、それ以外の感情なのかまでについては彼はまだわからずにいたのである。フラッシュからは彼に対してその好意が明白に恋愛感情、あるいはもっと生々しく貴方を欲しているということを伝えられていない。ドイツにおいては告白を経てという形を取らない文化とはいえ、日本はそうではなく言葉にすることを重んじること、また、引退を済ませていて、ウマ娘と専属トレーナーという関係ではないにしろ、言葉で明瞭にしないことにはどうしても難しい関係であることはフラッシュも重々承知している。当のフラッシュ自身、彼から「好き」という言葉を聞いて安堵に包まれたのは間違いがない。慢心は許されないと親友等に釘はしっかりさされたが、それでも彼から明白に「好き」という感情を言葉にして伝えようと思われたことに、舞い上がらざるをえなかった。あの四年目を駆け抜けはじめてからずっと心の中で刺さっていた、彼はそういう感情をひょっとして私に向けてくれないのではないか、という不安が洗い流されたのである。あとは自分から伝えれば速攻ゴールにシュートを放てるというのに、彼女は何故か迂遠なことを初めてしまったのだが。
エスカレーターから映画館のフロアに到着すれば、そこかしこにカップルの姿が。おそらく殆どがキャロットケーキシリーズ目当てのカップルなのだろう。手を繋ぐのは当たり前、腕を組みあったり、甘い雰囲気を漂わせているカップルもあれば、熟年夫婦のように佇んでいるだけで独特の雰囲気を醸し出しているものもいる。
「す、すごいな。これは……」
「は、はい、話には伺っていましたが、これほどとは…」
周囲の雰囲気に押されそうになる二人。フラッシュとトレーナーは顔をわずかの間見合わせる。
「……俺たちも、そう見えているのかな」
トレーナーが小さく呟く。はっとした彼は慌ててそれを打ち消すようなセリフを紡ぐ。
「ああ、いや、そう見えるのは君にとって迷惑だよな」 - 52121/11/18(木) 23:20:08
明日へ続く!
読んでくれている皆さん本当にありがとうございます…!
感謝です…! - 53二次元好きの匿名さん21/11/18(木) 23:35:42
「ああ、いや、そう見えるのは君にとって迷惑だよな」
クソボケがーーーーっ!! - 54二次元好きの匿名さん21/11/18(木) 23:47:06
あと一手でチェックメイトなのにぃぃぃいいいい
- 55二次元好きの匿名さん21/11/18(木) 23:54:57
押せ…押せ…っ!
- 56二次元好きの匿名さん21/11/19(金) 09:01:08
前回
おっイタリア因子戻り始めたな!
今回
おばか!へっぽこ! - 57二次元好きの匿名さん21/11/19(金) 13:29:16
このレスは削除されています
- 58二次元好きの匿名さん21/11/19(金) 21:53:47
今のタイシンなら引く手数多だよ並みにクソボケオラカス!
- 59121/11/19(金) 23:04:11
- 60キャロットケーキは蕩けない0721/11/19(金) 23:05:43
好意は持っていてくれているにしろ、恋人として見られるというのはまた別の意味合いが出来る。そういう関係ではないのに年上の自分――まして専任トレーナーとして一緒にいた相手とありもしない関係に見えてしまうなんていうのは彼女にとっては不名誉なことではないのか。いや、そもそもそんな風に見られることすらなくて、兄と妹みたいな関係に見えるのかもしれない、などと思考を巡らせるが、エイシンフラッシュはそれを一刀両断する。
「ありえません」
「……え?」
トレーナーの表情が一瞬固くなる。が、それを打ち消す一言が、ブルーの瞳で見据えるフラッシュから紡がれる。
「迷惑だなんて、ありえません」
強く言い切る彼女の言葉に、トレーナーはどきりとする。裏を返せばどういう意味になるかということを考えてしまうが、自身でそれを打ち消す。あくまで迷惑だと思っていないだけ、などと自分に言い聞かせる。逆にそれが彼女の想いを無碍にしているということにはどうしても考えが及ばない。恋心を明確に自覚していることで、逆に臆病になってしまっていることはある。そういう意味では、一時期のフラッシュと同じ病にかかっているとも言えた。彼女の専任トレーナーであった頃には、無意識にもっと歯の浮くような科白の応酬も出来ていたというのに。
「……ありがとう」
今の彼には、そんな言葉を一つ伝えるのが精いっぱいであった。目を合わせないトレーナーに、フラッシュはもう一押しを勇気を出して試みる。
「トレーナーさんは、迷惑なんですか?私とそういう関係に見えるのが」
精一杯の笑みを浮かべて小さく呟くフラッシュに更にどきりとする。彼の目から見るとフラッシュのその笑みは余裕たっぷりにこちらを試しているように見えるのだが、フラッシュ自身は割といっぱいいっぱいである。意識しなければ衒いもなく言えた科白が、意識を強めるとどうしても難しくなっているのは彼女も同じである。
「いや、そんなわけはないよ。もし、仮にそう見えるのだとしたら光栄だよ」
彼女ほどの女性をして、もし自分が傍に居るのが相応しい男に見えるのだとしたらこれほどの光栄はない。彼の本心そのものである。他が色褪せて見えるほどに今の彼女は誰よりも魅力的な女性に彼の目には映っている。
「私も同じ気持ちです」
しれっとしたフラッシュの一言が彼の鼓動を打ち鳴らす。必死に心臓の高鳴りを抑える二人。 - 61二次元好きの匿名さん21/11/19(金) 23:08:04
とても良いものでした
- 62121/11/19(金) 23:13:10
明日へ続く!
こいつらイチャイチャしまくってて先にすすまねぇ… - 63二次元好きの匿名さん21/11/19(金) 23:17:19
焦れったさを堪能しやがってこいつら!
- 64二次元好きの匿名さん21/11/19(金) 23:32:56
- 65二次元好きの匿名さん21/11/19(金) 23:39:25
Part1の時
なんでこの流れでホテルに行かなかった!ヘタレ野郎!
今
好きの意味が違ったらと思うと怖過ぎて無理…
今の関係壊したくない…行けねぇ… - 66二次元好きの匿名さん21/11/20(土) 06:58:12
保守
- 67二次元好きの匿名さん21/11/20(土) 15:11:59
ディフェンダー無しゴールキーパー棒立ちなのにお互い空振りゴールポスト連発でゴールが決まらない…!
- 68二次元好きの匿名さん21/11/20(土) 23:14:44
はぁあ〜甘い甘い
でも毎日でも摂取したいですねぇ - 69121/11/20(土) 23:28:28
- 70キャロットケーキは蕩けない0821/11/20(土) 23:29:39
「あの、お客様」
もう一歩、とフラッシュが覚悟を決めようとした瞬間、邪魔が入る。いや、ラブコメをこんなところで始める二人の方に問題はあるのだが。
心臓を二人で落ち着かせると、メニューを二人で眺める。
「どうしようか?軽食は食べたしフードはいらない?」
「そうですね。どうしましょうか……でも、映画館といったらポップコーンですよね」
「そうだね。それじゃあ……」
Sを指差そうとしたトレーナーを遮るように、フラッシュが先制する。
「せっかくですし、Lにしませんか?」
「L?」
「はい、二人で分け合えばいいかなと」
確かにその方がお得そうだ。それじゃあ、とトレーナーはポップコーンのLとドリンクのMふたつを注文する。手早く出てきたそれを受け取る。フラッシュはここは素直に自分の騎士様に甘えることにした。ピンポンパンと音がすると、場内に「キャロットケーキはとろけて」の開場案内が流れる。ゾロゾロとカップル達が列を作る。その列に二人して並ぶ。両手が塞がっている騎士様のかわりにウマホを開いてチケットを表示してスタッフに見せると、スクリーン2の方向を指示される。人の流れに沿ってそのままスクリーン2の段差をあがっていき、チケットに指示されている番号の、後方中央よりの席を見つけると、椅子を出して彼から腰かけさせる。
「ありがとう。フラッシュ」
「どういたしまして」
フラッシュに彼女の分のドリンクを渡せば、トレーナーもドリンクホルダーにトレイを固定して、手を解放する。ポップコーンを彼女に渡すか迷っていると、彼女の方から申し出があった。
「ポップコーンはトレーナーさんが持っててくださいますか?」
「ああ、わかったよ」
大き目なので多少は目障りかもしれないと考えると、自分の前に置いておいたほうがいいかとも思う。フラッシュから見れば、これはフラッシュなりの策略である。食べたばかりなのにポップコーンを頼んだのは、食欲を満たす為ではない。シェアをするということ自体が主目的である。ケーキのシェア等を昔からしてはいるが、それはそれ、これはこれ。彼が自分から手を伸ばしてくれることは考えづらいと踏んだフラッシュは即座に彼の膝の上にあったほうが色々と都合が良いと計算して、彼にお願いをしたのである。 - 71キャロットケーキは蕩けない0921/11/20(土) 23:56:42
このいじましい心を素直に彼に吐露するだけでゲームセット間違いなしだが、まるでそれではレッドカードを取られるといわんばかりにそれを避ける。ほんのちょっと臆病な恋人未満の二人を後目に、劇場が暗転してスクリーンに予告編や広告が映し出される。カメラを擬人化したようなキャラクターの逃走劇を興味深げに見るフラッシュをトレーナーが微笑ましく思っていると、映画の配給会社のロゴが流れ始める。その前にフラッシュは彼に目を合わせると、少しだけ彼がポップコーンをこちらによせる。手を拭いてから、行儀が悪くならないように一粒つまんだポップコーンを口元に運ぶ。トレーナーがその仕草を見て少しどぎまぎしてしまったことには気が付かない。トレーナーの頭によぎったのは、あの淡い色の唇に、自分の指でポップコーンを押し込んでやりたい、などというしょうもない思いである。最低だ、俺って。と自省している間に映画は始まっている。スクリーンに映っているのはシーツにくるまれた男女がお互い微笑みあっている姿。いきなりの大胆なシーンに目を見開くトレーナー。ちらっと横目でフラッシュを見ると、青い瞳を潤ませている。確かに対象年齢は高めではあったが、いきなりとは思わなかった。現状の環境の都合上、禁欲生活をずっと送っている最中の彼には少々刺激が強いといえば強い。もっとも同棲生活を送っていると、フラッシュから彼女自身が意図せぬ不意打ちを時折、いや度々仕掛けてくるので耐性自体はあがっているとも言える。
ストーリー自体はメロドラマかと思うような展開が続くが、急所を押えていて見ごたえは十二分にある。陳腐化するということはそれが有用であるから、ということをまざまざと見せつけてくるようなドラマであった。恋人同士が織りなす切ない展開に、時折ぐすっと泣くのをこらえるような声が客席から漏れる。トレーナーもわずかに目を潤ませる。誤魔化すようにポップコーンに手を伸ばすと、たまたま隣から伸びていたフラッシュの白い指と重なる。はっとこちらを見るフラッシュに、ごめんとジェスチャーで伝える。気にしないでと頭をふる彼女に安心する。その後もお互いの指が何度か重なって、そのたびにどきどきする。ポップコーンのカップの中で指がふれあい、彼女の指から自分の掌に一粒ポップコーンが押し込まれる。それにすら艶を感じる自分の節操の無さに、トレーナーは自らに呆れるのであった。 - 72121/11/20(土) 23:57:26
明日へ続く!
読んでくれる皆さんありがとー! - 73二次元好きの匿名さん21/11/21(日) 00:13:20
んん〜ナイス判断ッ!(閃光の切れ味)
この世界でも例のアイツは居るんだな… - 74二次元好きの匿名さん21/11/21(日) 00:22:43
まぁウマ娘嗅覚優れてそうだからすぐバレそうだしな
- 75二次元好きの匿名さん21/11/21(日) 07:00:54
ポップコーンみたいに弾けちゃえばいいのに
- 76二次元好きの匿名さん21/11/21(日) 13:33:28
トレーナーの妄想が思ったよりも直情的だった‥
- 77二次元好きの匿名さん21/11/21(日) 17:30:08
このトレーナーは良ぉやっとる
なかなかできへんで?フラッシュやウマ娘に囲まれながらの禁欲生活成し遂げんの - 78二次元好きの匿名さん21/11/21(日) 21:49:34
ようやっとる
- 79121/11/21(日) 22:12:58
- 80キャロットケーキは蕩けない1021/11/21(日) 22:22:13
目的といってもこちらは彼女の中ではあわよくばのミッションにはなる。しかし今の状況、彼が自分の手をとってくれている。指先から彼の体温を感じられる状況に好機が到来していることを感じた。ちらっと前方の建物を見る。城をモチーフにしたような外装。前方を行くカップルの中にも、そちらの建物に吸い込まれていくものがいる。親友であるスマートファルコンに教えられた施設である。二つ目の目的の為に用意したのは、見えないところのお洒落、素肌に纏う女の勝負服である。普段のイメージ、いや、トレセンで彼とともにいた頃には抱いていなかったであろうイメージを与えるような鮮烈なスカーレットと大人びたレース。同性ですら見惚れる彼女の抜群のスタイルを際立たせるそれを披露する為の裏のスケジュール。しかし、これを進める為にはあと一つが足りない。歩を遅くする自分に何も言わず歩調を合わせてくれる彼の心遣いが嬉しい。一方のトレーナーも、先ほどの映画のクライマックスの下りを反芻していた。まだ、この手を繋いでいる彼女にしっかり想いを伝えきれていない。普段より一歩近い距離を感じつつ、伝えるなら今しかないという思いが沸き起こってくる。彼女と同棲している以上、言葉を交わすタイミングなどは無数にあるが、好きだ、と伝えたい気持ちを押してくれる雰囲気には中々ならない。無論この二人の暮らしというのは現状ですら他人から見れば甘い生活にしか見えないのであるが、主観と客観はだいぶ異なるものである。タイミングを計りかねていると、ぴたりとフラッシュの足が止まる。
「フラッシュ…?」
振り返れば、フラッシュはじっとトレーナーの顔を見つめている。アイスブルーの瞳と視線が重なる。喧噪の中だというのに、彼女の吐息が聞こえるようであった。そのまじまじとした視線に、トレーナーは背中を押されるというより、ぐいっと引き寄せられる。
「フラッシュ……」
手を繋いだままの二人。掌の暖かさを通して、鼓動すら聞こえるような。フラッシュもこれは来る、と確信した。不足していたあと一手がついに来る。そして黒いブラウスの下に隠した勝負服の出番を覚悟する。備えあれば憂いなしとはこのこと。喉を鳴らして、彼と見つめあう。これが来たら、次は。一瞬だけ彼女は視線を外して、右手にあるホテルの看板に視線をやってしまう。が、これが致命的な失敗となる。 - 81キャロットケーキは蕩けない1121/11/21(日) 22:36:40
フラッシュの視線にまるでボクサーの余所見のように吸い寄せられてしまったトレーナーの視線。そちらにある看板に休憩、宿泊の文字をみたトレーナーは顔を真っ赤にする。そしてでかかった言葉を慌ててひっこめる。
「ご、ごめんフラッシュ、なんでもない」
「……え?」
覚悟していたフラッシュは一瞬呆然とする。が、トレーナーからしてみれば、このホテルの真ん前で彼女に言葉を伝えることなど出来るわけがない。例えばここで好きだ、なんて言おうものなら、まるで彼女とこのホテルに入ることを目的にしたような言葉に取られかねない。そんなことをしたら軽蔑される。いや、それだけで済めばまだいい方で、彼女と築き上げてきた信頼が失墜し、彼女に拒絶されることになるだろう。今のトレーナーにとって、彼女無しの生活は耐えられるわけもない。
『そういうことが目的だったんですね……。ずっと紳士だと信じていたのに。最低です……』
腕を組んで拒絶の眼差しを送り、扉を閉じてしまう彼女の姿を思わず想像して頭を振る。違う。違うんだフラッシュ。そういうことを考えていたわけではない。無論、彼もそういう欲望を全く持たないわけではないが、彼女に想いを伝えたいという気持ちに、邪念はない。大きく息を吐いて、呼吸を整えたトレーナー。ちょっと強めに彼女の腕を取ってしまう。
「か、帰ろうか」
覚悟していたのに意外な言葉が放たれて、狼狽えるフラッシュ。しかし彼は有無を言わせない切羽詰まった表情である。
「え?ええ?……は、はい、わかりました…。そう、そうですよね」
フラッシュの耳が垂れてしまっていることには気が付かず、足早に駅までの道を急ぐトレーナー。フラッシュは折角の覚悟と準備が無駄になったことは内心嘆く。彼が紳士であることは喜ばしく、そういう相手だからこそ心から愛しているというのはあるのだが、少しくらい邪念に流されて欲しいという相反する願いもある。そうでないと、自分だけが邪念を持っているようで気恥ずかしいから、彼にも少しは汚れて欲しいなんていう、フラッシュ自身にとっても我儘な願いである。足早な彼に連れられながらも新たなシミュレーションをその頭脳に走らせるエイシンフラッシュ。いつかこの指に蕩けたい。そんな願いを込めたまま繋がれた手は、二人が住まうマンションの扉までずっと離されることはなかった。 - 82121/11/21(日) 22:40:57
了!!
ちょっと速足にはなりましたが、ありがとうございます。
ちまちま書いてたから結果的に最長になってしまったかな…。
明日はちょっと更新ないかもしれません。まだちょい何書くかのアタリをつけていないのもあって。
ちょい更新ペース落ちると思いますが気長にお待ちください…! - 83二次元好きの匿名さん21/11/21(日) 22:49:47
これは言えんなぁ…
トレーナーを責めれん… - 84二次元好きの匿名さん21/11/21(日) 22:51:20
おつ
寝たフリさえしなければここで決まってたのに… - 85二次元好きの匿名さん21/11/21(日) 23:01:58
これどっちの意見も理解できるから辛いなー
でもこうゆう出来事があるからこそのあの告白があると思うと考え深いものがあるな - 86二次元好きの匿名さん21/11/22(月) 07:49:23
フラッシュの前では紳士でいたいトレーナーさん
少しくらいケダモノになってほしいフラッシュ - 87二次元好きの匿名さん21/11/22(月) 16:02:04
見てなければ行けてたのかな…
なんとなくダメな気がするけど - 88二次元好きの匿名さん21/11/22(月) 20:08:25
- 89121/11/22(月) 22:04:10
- 90蕩けないおまけ0121/11/22(月) 22:05:56
「はぁ……」
姿見の前で少しため息をつくエイシンフラッシュ。洗面所で黒いブラウスのボタンをぱちん、ぱちんとひとつづつ外して、するりと脱いで選択しやすいように整える。鏡に映る自らの肢体に夜の勝負服は映える。折角準備したのに、という思いはあるが、正直あわよくばという形にはなってしまっていた。白い肌の美しさを引き立たせるような鮮やかな赤ほどに、自分の覚悟が決まり切っていなかったことは明白である。もうちょっと、本当にもうちょっとだったと思う。もう少し粘っていれば、とエイシンフラッシュは悔やむが、逆に彼を頑なにさせてしまった可能性もあるのでそうすれば良かったかというのは一概には言えない。少し大きめに流れているテレビの音が扉を隔てて洗面室にまで聞こえると、トレーナーの存在を意識する。腰に手を当てて自らのスタイルを確認する。自分で言うのも本来憚られるものだが、エイシンフラッシュは自身の容姿とスタイルに自信がないわけではないが、ひょっとしてそういう意味で彼の趣味にそぐわないのでは、などということが頭をよぎることもある。流石のエイシンフラッシュもトレーナーが理性を保つのに苦労をしていることを察することはかなわない。テレビの音が大きめにしてあることとて、実は彼なりの対処法である。シャワー音が微かにするだけでも彼女の入浴姿を想像せざるを得ない程度にはしっかりと煩悩にあふれているので、リビングでその音が打ち消されるように対処しているのである。
「見てもらいたかったです……」
それなりに勇気を持って購入した下着ではある。友人たちの勢いに押された形であるのは否めないが。本当に見てもらいたいなら、簡単な話である。リビングまで向かえばすぐ彼がいるのだから。あるいは、ここから彼の名前を呼べば駆けつけてくれるかもしれない。もし、そうして彼にこの下着の感想を求めたらどうなるだろうか。顔を真っ赤にして可愛く目を背けてしまうかもしれない。
「……とれーなーさーん」
あえてテレビの音にかき消されるくらいの声で彼に語り掛ける。扉に手をあてて、耳をぴたっとくっつける。当然、返ってくる声はない。
「……とれーなーさーん」
下着姿のまま体を預けた扉越しに声をかける。勿論、これもリビングまで届くことは無い。
「フラッシュ?」
届くはずのない声に返答が、しかも思いの外近くから上がってびくっとする。 - 910121/11/22(月) 22:07:14
それではまた明日!
ルドルフの方もそろそろ書きたいなーとは思っているんですが。
ちょっとイチャイチャの仕方がフラッシュ組とルドルフ組の二組とも違うとは思っているので、どっちも楽しいのです。 - 92二次元好きの匿名さん21/11/22(月) 22:25:36
くっそ…かわいいなチクショウ!
- 93二次元好きの匿名さん21/11/22(月) 22:31:22
下着のしかも勝負下着のフラッシュとか見たらいくらフラトレとはいえねぇ…
- 94二次元好きの匿名さん21/11/23(火) 00:28:26
- 95二次元好きの匿名さん21/11/23(火) 09:35:59
洗濯回でも下着だけで滅茶苦茶取り乱してたから直接見てたらどうなっていたことか
- 96二次元好きの匿名さん21/11/23(火) 09:44:17
下着くらいで取り乱すとは紳士じゃないなまだまだ
- 97二次元好きの匿名さん21/11/23(火) 15:10:23
結果論とはいえあの日ボロ出してて良かった…
- 98121/11/23(火) 21:17:24
感想あり!まぁこんなの知ったらトレーナーさんはリミッター外れると思う。
感想あり!現役時代より色気ちょっと増しなフラッシュの勝負下着は危険すぎる…
いえこちらこそありがとう!目を通してくれるのめちゃ嬉しい。
感想あり!まぁ理性崩壊するよね…ここで読んでくれてる人たちでも理性を保つのは厳しいかもしれない。
感想あり!むしろ何もおもわなきゃ枯れてるレベルだと思うんだ。
感想あり!流石に同棲生活を続けていく以上どこかでは堰は切れたかと思うんだけど、一方でトレーナーさんが改めてお世話になったけどこれ以上は迷惑かけられないってなっちゃう可能性もありますしね…。
フラッシュがみっともないとこ晒しても止めれるかどうかは状況によるだろうし、短期決戦に成功してよかった。
いや、でも同棲してこれだと、フラッシュが初手でああいう手を打たなかったら本当に長期戦になったかも…。
というわけで今日はおまけの続きです。1レスです。
- 99蕩けないおまけ0221/11/23(火) 21:18:10
「と、とれーなーさん?」
「あ、いや、……俺のこと呼んでいたような気がしたのだけど。気のせいだったかな?」
「は、はい。気のせいです」
裏返った声のフラッシュに心配するが、危うく扉に手をかけそうになったトレーナーはおもいとどまった。彼女は入浴していた筈なので、あられもない姿でいることが予想される。危ない、変態扱いされるところだったと胸を撫でおろしたトレーナー。この扉を隔てた向こう、それもこの声の聞こえ方だと本当に傍に、見えないけれど彼女が居る。それを意識すると体が高揚してしまうのもやむからぬことかもしれない。白い肌にバスタオルだけ纏ったような彼女を妄想するトレーナー。邪念を振り払うように頭を振る。
「な、なにも無かったならよかった。ちょっと心配したから」
「は、はい……」
余計な心配を彼にかけてしまったことを思うとフラッシュは余計に気恥ずかしくなる。トレーナーは扉越しに少し早口で言葉を続ける。
「あ、あとフラッシュ」
「え?」
「言い忘れてたけど、今日はありがとう。楽しかったよ。映画なんて久々に見たし、それに、君と見れて良かった」
「……え?」
「あ、いや、こんなことはお風呂から出てから言えばよかったんだけど」
「いえ、その、私も同じ気持ちです。貴方と見れて楽しかったです」
「良かった。また誘ってくれるかな。悪い虫から守る騎士くらいにはなれるだろうし」
「はい、また行きましょう。是非!」
「そ、それじゃあ、」
言いたいことを勢いに任せて告げたトレーナー。足早に扉の向こうからリビングに向かっていることがフラッシュには足音からわかる。緊張が解けてほっとしてしまう彼女。胸の高鳴りは抑えきれていない。
「……落ち着かなければ」
胸に手を当てながら、深呼吸をするエイシンフラッシュ。ぱちっとホックを外し、下着をネットの中に入れる。次こそ役に立ててみせるから、今は、なんていう誓いを下着に立てたエイシンフラッシュ。実際、それは思いのほか早く役に立つことにはなったのだけれど、役立ち方は全く彼女も思いもよらぬ方向からのものとなった。勿論更にその後には正当な役立ち方もしたのだが。
ともあれ、エイシンフラッシュは、浴室でシャワーで汗と共に悶々とした気持ちを洗い流すのであった。
「沐浴する乙女と騎士様…なんて」
そう呟くところを見ると、あんまり洗い流せていなかった。 - 100121/11/23(火) 21:19:09
了!
ちょっとネタを決めかねているので、明日投下はないかもしれません!
次回また別のお話をお楽しみに! - 101二次元好きの匿名さん21/11/23(火) 21:32:46
ちょっと騎士ムーブが刺さりすぎているようですね
- 102二次元好きの匿名さん21/11/23(火) 22:12:39
所々イタリア因子戻ってんのになぜこんなに噛み合わないんだ…
- 103二次元好きの匿名さん21/11/23(火) 23:15:22
2日後に本気出す勝負下着さん
お前がMVPだ… - 104二次元好きの匿名さん21/11/24(水) 09:35:55
沐浴する乙女と騎士様…なんて
エッッッッッッッッッッ - 105二次元好きの匿名さん21/11/24(水) 09:36:38
本気出したというか不発弾というか…
- 106二次元好きの匿名さん21/11/24(水) 10:48:27
告白どころか初手同棲も言いだせてなかったらフラッシュママとファル子がキレちまうよ…
- 107二次元好きの匿名さん21/11/24(水) 11:44:44
なんで同棲が言い出せて告白は出来ないんですか?と聞かれたらそれはそう
- 108二次元好きの匿名さん21/11/24(水) 21:50:35
- 109121/11/24(水) 22:36:53
感想ありがとう!騎士様へのあこがれあってもいいよね。
感想ありがとう!トレーナーさんも頑張ってはいますけど、フラッシュへの思慕が高くなりすぎてやや戸惑っている様子
感想ありがとう!結果的にあんな形で勝負が決まるとは…いや勝負って別に勝ち負け競ってないですが
感想ありがとう!湖の乙女と騎士みたいな図もいいよね。
ドイツ旅行編とかかけたら書きたいなぁ
感想ありがとう!まさしく不発弾…!
感想ありがとう!この調子と過程して、あの時点で連れ込めてないパターンだと、上手いことフラッシュからデートのお誘いとかが難しくなっちゃいますからね…。もっとグイグイ行けば別ですが
感想ありがとう。なんでだろうね…。
こちらこそありがとー!
さて、本日は1レス投下です。ルドルフのトレーナーさんの小話。ペースが遅いので、完了まで数日かかる予定。
順次投下していきます。
- 110春0121/11/24(水) 22:39:06
トレセン学園の音楽室に夕日が差し込む。閑散としたその部屋で、ピアノの前に腰かけた男性がそっと白鍵に指を置く。ピアノの弦が叩かれる音が部屋に響く。指を滑らせて音を一つ一つ確認する。譜面台に広げた五線譜。片足でリズムを取りながらペダルを踏みつつ譜面に書かれた音符をなぞるようにピアノを弾く。体と奏でる音の双方でリズムを刻みながら強く叩く鍵盤で哀愁溢れる曲を奏でる。季節外れの春をうたう曲が終幕に向かうにつれ、口角が上がる。最後の減衰音が消えて鍵盤を沈めていた指を鍵盤から離すと、ふぅ、と満足気に息をつく。
ふとピアノを弾いていた彼は視線を感じて音楽室の入口の方を振り返ると、見知った顔の女性がいた。男性より年かさのさっぱりとした雰囲気の女性は、困った顔をしつつ答える。
「邪魔をするつもりはなかったのですけれど」
「貴女は――」
彼――シンボリルドルフのトレーナーの視線の先に居たのは、同じトレーナーとしての先輩にあたる女性である。ベテランとして周囲の人望も高い女性であるが、ルドルフのトレーナーとしては交流が深いわけではない。が、印象深い人物ではある。何故なら、彼女はシンボリルドルフのトレーナーとして選ばれる為に彼女の問いに応えようとしたたった三人の内の一人だからである。
「珍しい曲が聞こえてきたものですから」
そんな風に彼女は語る。別段、珍しい曲を弾いたつもりはないが、確かにここを普段使う生徒だったら違う曲を選ぶことが多いのかもしれない。
「ほら、大体クラシックの定番や、今時の曲を弾く子が多いものでしょう?」
「確かに…」
「私も好きですから。ピアソラ、だから、ついね」
「本当ですか」
意外なところに同好の士というものはいるものである。確かに自分の好きな曲が流れれば気になって覗くくらいはあるのかもしれない。下手の横好きを聞かせてしまったのは幾分申し訳ないが。
「謙遜なさることはないでしょうに。素敵でしたよ。全部聞いてみたいくらい」
全部、というのは四季のうち春を弾いたので、夏、秋、冬もということだろうか。自分には流石に無理である。
「そ、それはちょっと……」
「ふふ、それにしても珍しい。ルドルフは一緒ではないのですか?折角でしたら彼女にも聞かせてさしあげればいいのに」 - 111121/11/24(水) 22:40:15
明日へ続く!
ルドトレからみたルドルフの振り返りみたいな話になるかも。
それではまた明日! - 112二次元好きの匿名さん21/11/24(水) 23:55:56
ルドトレ待ってたぜ
- 113二次元好きの匿名さん21/11/25(木) 08:20:51
1さんはチャンミはフラッシュで出てるの
- 114二次元好きの匿名さん21/11/25(木) 15:37:49
中学で習った奴だ…懐かしい…
- 115121/11/25(木) 21:11:55
- 116春0221/11/25(木) 21:12:33
「勘弁してください。それは……」
下手の横好きを皇帝の審美眼で裁かれてはたまらない。それに、ここでピアノを弾いていたのはシンボリルドルフに一時的に生徒会室から追い出されたからである。そう説明すると、意外そうな顔を彼女はする。
「追い出されるとは?」
「いえ、普段は手伝いくらいはさせてくれるのですが。生徒だけで片付けたい業務があると言われましてね」
「なるほど、熱心なことです。当代の生徒会は」
「全くです」
トレーナー目線で見ると、熱心過ぎてトレーニングに割く時間が少なくなって困る、と言いたい気分になるのではと全く言いたい気持ちがないわけではないが、一方でルドルフにそれを進言しても聞き入れられることがないことは分かっているし、第一、もし聞き入れてくれたとしても彼女のメンタルを考えるとよろしくない結果を伴うことは想像に難くない。そもそも彼女の夢に賛同するものである以上、言葉とは裏腹に、ルドルフのトレーナーとしては生徒会活動をことさら抑制する気はない。むしろ応援すべき立場だと思っている。無論度を越した負担は看過できないが。
「それにしても見事なものです。今更ですが、三冠おめでとうございます」
「ありがとうございます。ルドルフに伝えておきます」
幾度もいただいた言葉だが、改めて彼女のような人物に言われると気が引き締まる。
「貴方にもですよ。いかに優れたウマ娘といえど、やはり良いトレーナーあってのものでしょうから」
褒詞に彼は少々困惑する。ルドルフの栄誉の為に尽力したことは疑いがなく、そのことはルドルフのトレーナー自身が胸を張って言えることであるが、真正面から賛辞を貰うのには慣れてはいない。加えて彼の冷静な目から見ると、ルドルフは独力で三冠を取れたのではと思えるだけのポテンシャルはある。例えば彼女があの時自分を選ばず、目の前のベテラントレーナーを選んだとしても、同じように三冠を取れたであろう。
「そう甘いものではありませんよ。レースというものは。ルドルフのトレーナーとしてもう少し胸を張っても良いのでは?」
「いえ、勇往邁進する彼女についていくのが精一杯の私ではまだまだですから」
彼女を教え導くのではなく、むしろ彼女に引っ張られているという実感の方が高い。無論ルドルフといえど瑕がないわけではないが、周囲が解決に向かわせるであろうという確信がある。 - 117121/11/25(木) 21:13:43
明日に続く!
現役時代のフラトレもちょっと今度かいてみたくなってきた…。 - 118二次元好きの匿名さん21/11/25(木) 23:47:36
- 119二次元好きの匿名さん21/11/26(金) 11:09:50
ルドルフだもんなぁ
自信持って俺のおかげですとは言えぬ… - 120二次元好きの匿名さん21/11/26(金) 12:29:05
- 121121/11/26(金) 23:26:47
四季といえばヴィヴァルディなのは仕方ないんだ。みんなが知ってるメロディですしね。
ちなブエノスアイレスの春はこういう曲です。
Primavera Porteña (A.Piazzolla) - arrangement for solo piano | Claudio Constantini
でもピアソラで有名なのだと、リベルタンゴにはなるとは思います。
PIAZZOLLA Libertango for piano solo Aki Kuroda 黒田亜樹 リベルタンゴ
まあ自力でかっちゃいそうな雰囲気ありますもんね…
介錯はだめごつ
本日も1レスですみません…!
明日はがっつりかけるといいなぁ。
- 122春0321/11/26(金) 23:28:48
彼女が抱える問題については自分が彼女に伝えるのではなく、どうしても彼女自身が気が付くのを待たねばならないのはやきもきするところでもあるが、彼女の持つ強い自尊心を考えると回答を提示してしまうのはむしろ悪手ということになりかねない。トレーニング計画等も重要だが、彼女とうまくやっていくにはそれとは別の難しさも如実に存在する。年頃の女性相手と考えると、そういうものは大なり小なり誰もが持っているものであろうので、ことさらそれを労苦というつもりもないのだが。トレーナーとしてこちらから提案する内容も、彼女とのミーティングを経ることでブラッシュアップしてから実際の計画に組み込むこととなる。トレーニング内容や量、計画については彼女の何故?に常に答えられる形にして用意してある。長期計画と短期計画、どちらも彼女の納得をえるものでなければならない。納得してくれたというのに時にそれよりオーバーワークになりがちなところは、まだ完璧にこちらを信じてもらえていないということなのだろう。
「いえ、全くルドルフの見る目は確かだったということですね。正直、私から見ると、新人の貴方にルドルフの担当が務まるのかという一抹の不安はありましたが」
正直、今でもルドルフに選ばれたということは不思議に思っている。彼女が先輩と呼ぶ大ベテランの先生か彼女、どちらかが選ばれるものだと思っていた。ただ、偶々に取材に付き合うことになって、彼女の志と彼女の求める在り方を窺い知ることが出来たから、その先を見る手伝いをほんの少ししてみたいという欲求にかられたまでである。思いのほか、その答えが皇帝のお気に召してしまったことで、今自分はシンボリルドルフのトレーナーとしていることが出来る。
「少なくとも彼女に間違った選択をした、などとは思われないよう尽力し続けるつもりです」
「ええ、皇帝のトレーナーたるもの、そうでなくては」
「……改めて言われると、新人には少々重い肩書ですね」
そう言って思わず苦笑いする。紛れもなくシンボリルドルフの名は皇帝の異名とともにトレセン学園、URAの歴史に刻まれる。既に三冠である時点で刻まれてはいるのだが、シニア期は更なる飛躍が待ち望まれている。レースに名前を刻むお歴々にすら勝る名にすることを、ルドルフと、そしてそれを支える自分には求められているということである。 - 123121/11/26(金) 23:29:32
明日へ続く!
- 124二次元好きの匿名さん21/11/27(土) 02:31:14
やっぱり全然違う曲だった!
聴き馴染みのあるヴィヴァルディも良いけどピアソラのもカッコいいな…
個人的には夏もカッコ良くて好き - 125二次元好きの匿名さん21/11/27(土) 13:07:53
このベテラントレーナー良いよね…
頑張って研究して計画表作って選ばれなくて
それでも新人に恨み言言わずに発破かけれるの人ができてるというか - 126121/11/27(土) 15:25:09
- 127春0421/11/27(土) 15:26:13
「今からでも代わってほしいです?」
「まさか」
冗談めかしたその問いには明確に首を横に振り否を返す。ルドルフのあの時見せた笑顔のその先を見るため、トレーナーとして支え続けるという誓いを破るつもりはない。無論、ルドルフ自身が新たに自らに相応しい人物を見出した時には譲ることにはなるのだろうが。それまでは全身全霊をかけてトレーナーとしての責務を全うする。その覚悟にある種の風格を見出したベテラントレーナー。
「やはり、良いウマ娘はトレーナーも成長させるということですか」
「貴女にそう見えているのでしたら、それはルドルフのおかげでしょう」
そう告げる彼に、あるいはルドルフが新人である彼を見出したというのは本当の意味でよかったのかもしれない、などという思いが彼女にはある。未練というか、もしルドルフを担当できていたらなどと思わないわけでもなかったが。一方で、少々気がかりもある。彼がルドルフを担当するに相応しいトレーナーとなっているのかもしれないが、それでも新人は新人である。新人で大きな戦果を残すものというのは度々現れるが、最初のウマ娘への想いを引きずってしまうことがあるということである。彼が最初に皇帝を引き当ててしまったことが今後の彼のトレーナー人生にどういう光と影を残すのか。が、そんな話は鬼も笑うというものであろう。まだクラシックも大きなレースが残り、最初の三年間はまだ道半ばといったところだ。
「楽しみです。ルドルフと貴方がトゥインクルシリーズを駆け抜けた後にどういう姿を見せてくれるのか」
「ルドルフであれば、前人未到の頂をお見せしよう、とでも言うでしょうか」
「貴方自身の言葉は……」
「そちらは辿り着いた時のお楽しみとさせてください。ただ、改めてルドルフに恥じるようなトレーナーにはならないとだけ」
今の自分に言えるのは、これくらいだろう。良くも悪くもルドルフに出会ってしまったことで、学園に入った時に抱いていたぼんやりとしたトレーナーとしての目標というものは掻き消えてしまった。ルドルフの笑顔の先が見たいという思いは変わらないものの、その為にどのようなトレーナーとして彼女に向き合う存在であるか、というのはルドルフのこれからによって大きく変わるものだと思う。今告げることが出来るのは気概のみである。 - 128春0521/11/27(土) 15:26:47
「先ずは、年末に先輩方の胸をお借りするつもりです」
「ふふ、私たちも皇帝の栄光の前に容易くひれ伏すつもりはありませんから」
そう、彼女の担当もルドルフの次のレースに出場することは分かっている。紆余曲折あって、特別な経緯からシニアウマ娘の古豪の一人を彼女は担当している。そういう意味では敵同士であるが、過度に敵対心をぶつけ合うような真似はトレーナー同士では滅多に起きない。闘争心はあっても和やかなものである。ふとベテラントレーナーは何かを思い出したようである。が、ルドルフのトレーナーの端末が鳴る。失礼、と端末を手に取りメッセージを確認すれば、あと10分程でトレーニングに入れる、という連絡であった。
「一件落着したようです」
「あら、折角ですから他の曲も聞いてみたかったのですけれど」
そういえば噓か真かはともかく、ピアノの音につれられたと言っていたか。
「世辞でないなら、また私が生徒会室を追い出された折にも」
「まぁ、では追い出されるのを楽しみにしないといけませんね」
苦笑しつつ、夕日が陰るグラウンドへの道を共にした。トラック付近に差し掛かると、準備運動をはじめようとするルドルフがこちらを視界にとらえれば笑顔を向ける。
「トレーナー君!…おや、そちらは選抜の時の」
「あら、覚えていてくれましたか」
「それは勿論。一度見た方の顔は忘れない、ということは抜きにしても、あの場にいらっしゃった方を忘れるなんていうことはありえません」
ルドルフにしてみても、同じ視座に立ってくれるということが本当に嬉しくて彼を選んだものの、あの場にいた三人の誰もが自身のトレーナーとして不足ない力を持っていることを確信していた。
「あら嬉しい。先輩も三冠ウマ娘にそう思われていると知ったら喜ぶかしら?」
もう一人のトレーナーの話題を口にする彼女。ベテラントレーナーにとっても、三冠持ちというのは特別であるということである。
「あんまりトレーニングのお邪魔をしてはいけないわね」
「おや、偵察なら歓迎しますが?」
やや挑発的な物言いをするルドルフ。普段取らないような皇帝の態度に、二人のトレーナーは目を見合わせる。が、ベテラントレーナーはすぐに笑顔をルドルフに向ける。
「では、お言葉に甘えて少しの間お邪魔しましょう」
「え?……」 - 129春0621/11/27(土) 15:27:55
「ふむ、呆けた顔をすべきではないと思うがね?トレーナー君。折角だから、先輩にあたる方にトレーニングを見ていただくというのも一興だろう?」
皇帝の様子に少々困惑する彼女のトレーナー。様子が普段と違うとはいえ、別段何か怒りを抱えている様子ではない。無論、気負いもない。問いただすにもどういう言い方をすれば良いものか困る。ベテラントレーナーは端で二人の様子を見つめている。いろんな意味で時間を無駄には出来ないので、やりづらさを感じつつも、予めルドルフに提示してあるトレーニングメニューを再確認させる。頷く彼女を見てから、ゆっくりウォーミングアップをさせる。ナイターの明かりに照らされたトラックをルドルフが駆ける頃には、トレーナーもいつもの調子を取り戻すのであった。それをベテラントレーナーは眩し気に見つつも、トラックを同じように駆ける自身の愛バをシミュレートするのであった。
了!
次はイチャイチャフラッシュか暴君?ルドルフかでちょっと悩み中!
それではまた! - 130二次元好きの匿名さん21/11/27(土) 16:36:31
乙です!本当に日々の楽しみです!
- 131二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 01:30:11
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- 132二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 10:54:29
イチャイチャフラッシュも暴君ルドルフもみてぇ〜!
- 133二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 19:09:30
フラッシュもルドルフもファル子も見てェ~
- 134121/11/28(日) 20:47:34
感想ありがとう!ちょっと本日は更新なしになります。
一応ネタ出し中ではあります。
1.ルドルフとマルゼンスキーのお話。
出来るだけ今の関係でいるうちはトレーナー君と一緒に居て、思い出をいっぱい作りたいと願うマルゼンスキーと、引退した後もトレーナー君はついてきてくれるものだと思い込んでたルドルフのお話。
2.エイシンフラッシュ温泉旅行計画回
エイシンフラッシュがトレーナーさんと温泉旅行計画を練る回。現役時代の思い出と、あの時はちょっと期待していましたなんてトレーナーさんに告げてしまうお話。
3.お留守番フラッシュ回
トレーナーさん出張中のお話。トレーナーさんの部屋で寝てみたりとか彼シャツチャレンジとか
しかし結ばれた後のフラッシュとフラトレは油断するとあっちにいってまうから怖い…
- 135二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 21:18:05
温泉期待
- 136二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 00:15:18
引退した後もトレーナー君はついてきてくれるものだと思い込んでたルドルフ
我此状況大好物… - 137121/11/29(月) 01:04:47
- 138二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 01:07:20
このフラトレは揃ってるって気付いてからシュシュをまともに見れない&見たら顔が赤くなるタイプじゃ〜ん!
- 139二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 07:48:45