エル、服を脱ぎなさい

  • 1二次元好きの匿名さん21/11/16(火) 19:02:39

    「……へ、変態がいます……」
    「何をバカなこと言ってるんですか、早く脱ぎなさい」
    「うぎゃー! だ、誰か、助けてくださーい! あっー!」

     ぎゃんぎゃんと喚く彼女を押さえつけ、無理矢理にでも脱がしていく。
     その大きく実った双丘にかかる衣服をずり下げ、がっしりと引き締まった腰に手をやる。

    「やっぱり、腫れてるじゃないですか」
    「うぅ……汚されました……もうお嫁にいけない……」
    「はいはい、よかったですね」

     頭にも腫れ物がないか、軽く叩いて確認しようか迷ったが、今は勘弁してあげることにした。
     ……ことの発端は今日のお昼休み。

    「私もナギナタというケンドーをやってみたいデス!」

     この娘はまた何を言い出すのかと思えば「しゅっしゅっ」と、何故かボクシングのポーズを取りながら頓珍漢なことを抜かしている。
     そもそも、なぎなたと剣道は全く違うもので、それぞれの歴史を作ってきた先人と、伝統を引き継ぐ今人の全てに対して無礼千万極まる発言。
     この場でわからせてやろうかとも思ったが……。

    「グラス~、私にもナギナタ教えてくださーい!」
    「まあ、いいですけど……」

     本人に悪気はないでしょうし、教えを乞われて無下に扱うのも可哀想かと思い、放課後に屋内運動場を借りて軽く指導してあげることとなった。

    「わー、私こういうの着るの初めて!」
    「少し動きにくいわね……スカイさん? どうしてそんな端っこに?」
    「私は見学~、みんなのカッコいいところ見てるからさ」

     ……一人で指導するには少し大所帯かもしれない。

  • 2二次元好きの匿名さん21/11/16(火) 19:04:40

     エルの他にも一緒にいた、スペちゃん、キングヘイローさん、セイウンスカイさんも集まっている。

    「エル? 防具はどうしたんですか?」
    「ふふん、心配ご無用! エルには必要ありません!」

     貸し出しの用具を一式人数分用意してもらい、みんな普段の装いとは違って防具をかっちりと着込んでいる。
     そんな中、一人だけ「ちちち」と指を顔の前で揺らして余裕をアピールしているバカ者が一人。

    「エル。防具を着ないなら、なぎなたは握らせませんよ?」

     なぎなたはスポーツ。原則に則って行う競技なのだ。
     まして彼女たちは全員が素人。防具も無しで長物を振らせるのは危険すぎる。私も本来なら、他人に教鞭を取れるほどの立場でもないし、安全性を欠いた指導など行うわけにはいかない。

    「なんならエルは素手でも平気デース! この鍛えられた腹筋は鉄パイプだって跳ね返します!」

  • 3二次元好きの匿名さん21/11/16(火) 19:05:54

     何をしにきたのだこの娘は。
     誰の思い付きでなぎなたを教えることになったのか、それすらも忘れたのだろうかと頭を抱える。

    「あはは……エルちゃん、グラスちゃんを困らせたらダメだよ?」
    「むぅ……でもグラスも着てないデス!」
    「私は経験者ですから」

     壁際で寝転ぶスカイさんを除いた三人がかりの説得で、なんとか防具の着用を納得させることに成功した。

    「では、お手本の通りに素振りをしてみましょう。まずはキングヘイローさん」
    「ふふ、一流のウマ娘たるもの、武芸も一流でこそよ! 見てなさい!」

     ……器用にも足の間に通したなぎなたに引っ掛かり、盛大にすっ転んだ彼女の手を引いて起き上がらせる。
     すっかり大人しくなった面の奥で、真っ赤な顔が悔しそうに歯ぎしりしているのが見えたが、今は黙っておいた方がいいだろう。

  • 4二次元好きの匿名さん21/11/16(火) 19:08:21

    「ではスペちゃん、私に向かって軽く打ち込んでみてください」
    「え、えぇっ!? で、でも危なくない……?」
    「大丈夫ですよ、全部こっちで受けますから」

     とんとん、と手に持ったなぎなたを指差して笑って見せる。

    「そ、そこまで言われたら!」

     こうしてやると、さすがのスペちゃんも負けん気に火がついたのか、中々に容赦のない力で打ち込んでくる。
     とはいえ素人の付け焼き刃。軌道も分かりやすく、単純な力任せの大振りは避けやすく受け流しやすい。
     結局、裾にかすらせることもなく、小手で軽くあしらってみせる。

    「むりぃ……」
    「…………」
    「二人ともお疲れ~」
    「……あなたも恥をかいてきなさいよ!」

     私は別に恥をかかせようとしたわけではないのだが……。
     スカイさんは一人だけ余裕そうにして、二人をからかうように隣でごろごろ転がっている。

    「では、次はエルの番ですね!」

  • 5二次元好きの匿名さん21/11/16(火) 19:10:36

    「はいはい、わかってますよ」
    「容赦はしません! いりません!」

     エルは私が教えた型とは、全く違う握り方でなぎなたをぶんぶんと振り回す。
     かなり危ないことをしているが……まあここはがつんと一発、実力で黙らせてやろう。防具も身に付けていることだし、多少の無茶なら大丈夫……。

     だが、そんな自分の認識は甘かったのだと、深く後悔することになった。
     エルは開幕と同時に高く跳躍し、前方宙返りを決めながら跳んでくるものだから、驚いて反射的に空中のエルを叩き落としてしまった。
     そんな体勢では当然、狙う方も防具の位置を正確に打つことなどできないし、彼女もろくな受け身を取れずにふっ飛んだ。

    「いてて……さすが日本の武道デスね……グラス、恐れ入りました」

     起き上がった彼女は笑って誤魔化してはいるが、確実に柔らかい部位に入った手応えがこの手に伝わった感触でわかっている。

    「エル、服を脱ぎなさい」

  • 6二次元好きの匿名さん21/11/16(火) 19:11:34

     それが今に至る経緯。
     道着の上を脱がしてみれば案の定、下脇腹に赤黒い腫れ。
     時間をおかずにこの腫れは中々まずいのではないかと冷や汗が頬を伝う。

    「保健室まで運びますから……手の空いてるスカイさんに手伝ってもらいましょう」
    「はいは~い、こんな時ぐらいはセイちゃんにお任せ!」

     スペちゃんとキングさんも心配そうに駆け寄ってくるが、二人には道具の片付けと返却をお願いし、スカイさんと二人でエルの肩をかついで保健室まで運んだのだった。

  • 7二次元好きの匿名さん21/11/16(火) 19:13:38

    「ごめんなさい、エルが言い始めたことなのに……みんなに迷惑かけました……」

     エルを保健室に運んでからしばし、ベッドでしゅんとする姿がそこにあった。
     確かに言いつけを守らずにはしゃいだ末の怪我だが、私が驚いて本気で叩いてしまったが故の怪我であることもまた事実。

    「誰も怒っていませんよ。私以外は」
    「うぅ……ごめんなさい……」

     診てもらった結果は打撲。
     軽くはなかったが、安静にして冷やしておけば大丈夫とのことだ。
     まるで入院でもしたかのように大袈裟にフルーツが山盛りになったカゴからリンゴを一つ手に取り、果物ナイフを入れる。スペちゃん達が差し入れにと急いで買ってきてくれたものだ。

    「スポーツはルールを守らないと危険が沢山です。あなたの大好きなプロレスも、私たちのレースも、同じ」
    「あむっ……ほうれすね……」

     相変わらず落ち込んだままの彼女の口にうさぎ型にカットしたリンゴを一つ放り込む。
     もしゃもしゃとリンゴを咀嚼しながら素直に返事する今の彼女は、普段とは違ってとても弱々しく見える。
     机の上に置かれたマスク。
     これが彼女の元気と力の源だ。

  • 8二次元好きの匿名さん21/11/16(火) 19:14:35

     エルコンドルパサーにとってこのマスクはとても大切なもので、いつも何をする時にも身に付けている。
     私はそのマスクを手に取り、彼女の顔にそっと被せる。

    「ほら、付けなさい。エル」
    「え……グラス……?」
    「私も未熟でした。貴方が他者の文化に触れようとしたことを素直に喜んでいれば、今ごろこんなことにはなっていなかった」

     ただ皆で楽しむように……作法など、二の次でよかった。

    「怪我をさせてしまってごめんなさい、エル」
    「グラス……」

     マスクを付けた彼女の顔にそっと手を沿え、その顔を見据える。青く透き通ったライトブルーの瞳が私を捉える。その瞳は心なしか、少し潤んでいるようで……。

    「エルちゃん! お腹大丈夫? いっぱい食べればすぐ……」
    「ちょっと! 入り口で立ち止まらないで……」
    「二人とも何……うわっ……」

  • 9二次元好きの匿名さん21/11/16(火) 19:15:39

    「…………」
    「…………」

     沈黙。
     身を乗り出してエルに顔を近づけている私、瞳を潤ませながら私を見つめるエル。
     きっと端からみた今の私たちは、とても普通ではない距離の近さなのだろう。

    「お、お、お邪魔しましたぁー!」

     何かを勘違いした同期達は、呼び止める暇もなく一瞬の嵐のようにどたどたと走り去っていった。
     さて、明日からどうしたものか……。

    「エル」
    「……私は何もんごっ!?」

     今はとりあえず、この娘の口に突っ込んで気を晴らすことにした。

  • 10二次元好きの匿名さん21/11/16(火) 19:19:26

    いいもの見させてもらいました

  • 11二次元好きの匿名さん21/11/16(火) 19:21:00

    よい……エルグラとてもいい…
    ありがとう…

  • 12二次元好きの匿名さん21/11/16(火) 19:24:35

    マスク外しエルはほんと受け受けしくて背徳的でよい……
    なんだかんだとエルを大事に思ってるグラス好き

  • 13二次元好きの匿名さん21/11/16(火) 19:27:07

    スレタイで損をしていそう

  • 14二次元好きの匿名さん21/11/16(火) 19:31:11

    エルグラはいい物だ

  • 15二次元好きの匿名さん21/11/16(火) 19:32:04

    りんごを延々口に突っ込まれるエル…

  • 16二次元好きの匿名さん21/11/16(火) 19:32:32

    なんでこう…素晴らしいシチュを次々に思いつくのだ…

  • 17二次元好きの匿名さん21/11/16(火) 19:35:22

    その口はなんだ

  • 18二次元好きの匿名さん21/11/16(火) 19:35:39

    扱いが雑なようで大事にされててちょっぴり雑なエルグラ
    雑な扱いが照れ隠しだといいよね

  • 19二次元好きの匿名さん21/11/16(火) 19:40:51

    グラエルすき

  • 20二次元好きの匿名さん21/11/16(火) 19:54:37

    オチまで完璧じゃねぇか……(遺言)

  • 21二次元好きの匿名さん21/11/16(火) 20:00:17

    セイちゃんのうわっ……が草

  • 22二次元好きの匿名さん21/11/16(火) 20:44:47

    ネタスレかと思ったらエルグラに叩き落とされた

  • 23二次元好きの匿名さん21/11/17(水) 02:30:39

    んごんごしてきた

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