- 1二次元好きの匿名さん23/04/29(土) 20:29:03
- 2二次元好きの匿名さん23/04/29(土) 20:29:46
過去スレ
1
【閲覧注意】尊い犠牲でした|あにまん掲示板突如エリアゼロの大穴から湧き出した未知のポケモンたちの侵攻巨大化したいわば『ぬしポケモン』と呼ばれるポケモンたちの大量発生その裏に潜む悪の組織の野望地域に根ざし見守って下さっていたジムリーダーの方々が…bbs.animanch.com2
【閲覧注意】尊い犠牲でした【その2】|あにまん掲示板……しかしながら残された爪痕はあまりにも深いものです一部地域では未だ大穴から這い出た未知のポケモンやぬしポケモンの現存が報告されています万が一それらしきポケモンを発見した場合すみやかにポケモンリーグ本…bbs.animanch.com3
【閲覧注意】尊い犠牲でした【その3】|あにまん掲示板「ハッコウジムが未配信のまま残されてたナンジャモちゃんの動画上げてくれててさ」「久しぶりにグルーシャくんの現役時代のインタビュー見返しちゃった」「有志の手によって未完成だったコルサさんの作品が発掘され…bbs.animanch.com4
【閲覧注意】尊い犠牲でした【その4】|あにまん掲示板元のスレ主じゃないけど立ててみました。迷惑だったらごめんなさい救いは…救いはないんですか?bbs.animanch.com - 3二次元好きの匿名さん23/04/29(土) 20:31:20
過去スレその2
5
【閲覧注意】尊い犠牲でした【その5】|あにまん掲示板マイクテス マイクテス…… ……お元気ですかこの声が届いた皆さま私はパルデアポケモンリーグ理事長オモダカでも皆さまの知るオモダカではありません皆さまが無事乗り越えて来た過去あるいはこれから辿る可能性の…bbs.animanch.com6
【閲覧注意】尊い犠牲でした【その6】|あにまん掲示板…………ザザッ…………なるほど、そうですかそちらの私は受け入れたのですか……彼らのいない世界を乗り越えて、未来を見据えて時折後ろを振り返りながらも、前に進む事が出来るのだと、そう言うのですね『尊い犠牲…bbs.animanch.com7
【閲覧注意】尊い犠牲でした【その7】|あにまん掲示板砂埃が舞うパティスリーもう増えることのない芸術作品二度と配信が始まらないチャンネル活気を失ったマリナード市場シャッターの閉まった宝食堂閉鎖されたライブステージ化粧品を見て悲嘆する人々沈黙が響くナッペ山…bbs.animanch.com8
【閲覧注意】尊い犠牲でした【その8】|あにまん掲示板絵とかSSとか書けないけど続きが見たくてスレ立てました…!他の人が立て直すなら消すのでよろしくお願いします…1https://bbs.animanch.com/board/1398476/2https…bbs.animanch.com - 4二次元好きの匿名さん23/04/29(土) 20:33:10
過去スレその3
9
【閲覧注意】尊い犠牲でした【その9】|あにまん掲示板なかったようなので立てました何か問題があれば消しますbbs.animanch.com10
【閲覧注意】尊い犠牲でした【その10】|あにまん掲示板いよいよ10スレ目まだまだ語りたいbbs.animanch.com11
【閲覧注意】尊い犠牲でした【その11】|あにまん掲示板それは楽園への道標か、あるいは地獄への入り口か。パルデアの大穴からパラドックスポケモンが溢れ出してきて、人々を守るために戦ったジムリーダーたちが全滅してしまった世界線を語るスレです(前スレの建て主とは…bbs.animanch.com12
【閲覧注意】尊い犠牲でした【12】|あにまん掲示板パルデアに光差す日は来るのだろうかbbs.animanch.com - 5二次元好きの匿名さん23/04/29(土) 20:34:24
- 6123/04/29(土) 20:42:26
次スレは
>>190 でお願いします
- 7二次元好きの匿名さん23/04/29(土) 21:03:41
立て乙!
- 8二次元好きの匿名さん23/04/29(土) 21:18:35
ありがとう!
- 9二次元好きの匿名さん23/04/29(土) 21:24:32
スレ立て乙ですー!
動画もうすぐ完成されそうで楽しみですね! - 10二次元好きの匿名さん23/04/29(土) 21:52:44
保守
- 11二次元好きの匿名さん23/04/29(土) 23:43:57
ほしゅー!
- 12二次元好きの匿名さん23/04/30(日) 09:47:25
保守
- 13二次元好きの匿名さん23/04/30(日) 10:39:32
悪意の火種に、岩を落とせ。
- 14二次元好きの匿名さん23/04/30(日) 10:40:16
ハカドッグが唸り声を上げて威嚇する。ストリンダーが見下ろすように睨め付けて、ラウドボーンが立て髪のような炎を轟々と焚く。彼らの前に座り込まされているのは、顔を腫らした素っ頓狂な格好の男。殴ったのはライムである。周囲には戦闘不能になったパラドックスポケモンが何体も倒れ伏していた。
「———成る程、漸くあの日の真相がはっきりしましたね」
サングラスを指で押し上げて、ネルケが息を吐く。その拍子に頭の上で揺れるリーゼントが気になって、ライムはイマイチ集中できる気がしなかった。マジで何。
「ただでさえ疲弊したパルデアをこれ以上外部から荒らされるわけにもいきませんが……貴方の御同輩を含めてこちらで捕虜とし、其方の組織に交渉するべきでしょうか……いや、捨て置かれたというのが本当であれば交渉の場に応じる理由がありませんね……理事長が正気であれば……いや、ないものねだりをしても仕方がありません……」
集中できねえ。ライムは如何にも一昔前のヤンキースタイルの壮年の男が、無駄に良い姿勢と真面目な顔で考え込む姿に頭を抱える。セロリを調味料無しで食べるような違和感と謎の既視感で脳が混乱する。助けて姉さん。
考え込むネルケと諸事情でいまいち真剣になれないライムのいるグラウンドに、訪れる影四つ。
「ライムさん!!ネルケ!!」
ライムとネルケが声に振り返る。その先にいたのは、学園の外に援軍に行ったハルトとリーグにいたはずのハイダイ。若干バツの悪そうな顔の此方側のキハダと、ネルケからすれば一体いつテーブルシティに戻ったのかと言いたくなる此方側のレホールだった。
「ハルト!外はもういいのかい?」
「こっちの世界のミモザ先生が変な奴のせいで大怪我した以外は大丈夫!ミモザ先生とキハダ先生とナンジャモさんが保健室連れてったけど!」
「あー、その変な奴ってこいつらの仲間だったりする?」
ライムが捉えた不審者を親指で指した。ハルトは、そいつです!と指差して怒りを露わにした。此方側のキハダが不審者を憎しみすら滲み出る眼で睨みつける。二、三発殴っておくか?とレホールがニヤニヤと悪どい笑みを浮かべながら煽る。しかしキハダは首を横に振って。 - 15二次元好きの匿名さん23/04/30(日) 10:41:35
「コイツらを幾ら痛めつけたところで、リップは……あの日独りで死んだリップは戻ってこないだろ」
掌からグローブを突き破って血が出そうなほど拳を握りしめて言った。それもそうか、とレホールはその意見と選択を否定しない。それがわかっていながら、平行世界からのジムリーダーの掠奪を選んだ弱さも。喪失を自覚することと、それを埋める何かを求める心は両立するものである。
それはそれとして、だ。
「で、校長は何をしているのかな」
「おっと、今のおれはネルケだぜ。そういうことにしといてくれ」
「なんて???」
リーゼントを整えるネルケに、レホールはちょっと理解が追いついていない顔をした。いやどう見ても校長だろ、と思いつつハルトへ視線を向ける。
「ハルト、校長は一体何を」
「ネルケですよ、レホール先生」
「いやでもどう見たってクラベル校長……」
「ネルケ」
「ア、ハイ」
普段通りの表情に妙な圧があった。レホールは思わず畏まって追及をやめた。多分これは突っついたらいけないやつだと判断して、そっと視線を不審者に向ける。割と人生で初めてに近い種類の敗北だった。
「どうやらそちらでもこの連中のやらかしと目的を聞き出したようだな」
「ん、ああ。パラドックスポケモン共で軍隊作ろうって魂胆だったらしいね。そのせいでアタイらジムリーダー含めて拉致だの本気の命の取り合いだのに巻き込まれて、数発ぶん殴った程度じゃまだ足りないくらいさ」
「向こう側の人間は随分血の気が多いんだな……」
「必要に迫られてるからね」
この人暴力に引くだけの感性はあったのか、と二人のやり取りを聞いていたキハダはレホールに対して割と失礼なことを考えた。好奇心を優先しがちなだけで立場があればそこに留まるだけの理性自体はある。なお現在は立場をぶん投げて好奇心に従った結果余命最短二週間の命なわけだが。
「ぐ……クソ、本隊さえ到着すれば貴様らなんぞ———へぶっ!?」
「はーい、変なこと言ってないで大人しくしててくださいね」
ハルトが負け惜しむ不審者の口に切っていないパンを突っ込んで強制的に黙らせる。失言されて誰かの地雷を踏まれても困るので。 - 16二次元好きの匿名さん23/04/30(日) 10:42:26
「オイラ達、もしかして必要なかったんだい?」
「いや、どうだろうね……。もしかしたらまだコイツらの仲間が潜んでたりしそうだし、そうでなくても空の暗さから見てパラドックスポケモンがもう来ないとも限らな———あ?」
はた、とライムが空を見上げる。一瞬気のせいかと思いかけて、しかしそうでないと確かめた。
ポケモンではない何かが、空を飛んでいる。しかも、それはこちらへ近付いてきている。どっちだ、狙いは。リーグか、アカデミーの観測装置か、或いは両方。
不審者が突っ込まれたパンをそのままにしてモゴモゴと何か喚く。ライムとハイダイはボールを構えて臨戦態勢に入った。
「———あっ」
ハルトが拍子の抜けた声を上げた。飛んでくる何かの輪郭が視認できる距離まできた辺りで、それがヘリであるとわかる。不審者が尚も喚き散らすので、レホールはパンが口に詰まった状態でよくもまあそこまで騒げるものだと感心しながらその頭を思い切り叩いた。キハダがボールを手にして空を行くヘリを睨みつけ、ネルケは立て髪の炎を逆立てて唸るラウドボーンを片手で制しつつ身構える。次の瞬間。
ヘリが、落ちた。
見える範囲でわかったのは、ヘリのプロペラが根本から折れて、揚力を失くしてそのまま落下した、ということ。気のせいでなければ、ハルトはその寸前にヘリに向かって何かが真っ直ぐ飛んでいくのが見えた気がした。
「……出オチ?」
ライムはなす術なく落ちていくヘリを見て、呆気に取られた。
「多分、ポピー嬢辺りの仕業なんだい……」
「ポピーちゃん何してるんですか」
「おい、パラシュート開いた端から飛んできた瓦礫で穴空けられて落ちてるぞ」
「レホール先生その双眼鏡は何処から???」
いつの間にか双眼鏡を手にヘリが落ちた方角を見ていたレホールが言う。
口に詰められたパンを噛みちぎって残りを捨て、口の中に残ったパンを無理矢理飲み込んだ不審者が身体を捩って暴れ出す。
「あ、テメ何してんだい!!」
「ブロスター、取り押さえろ!!」
ハイダイがボールからブロスターを出して、その砲身でもある大ハサミで取り押さえる。不審者は手にボールを持って、抑え込まれたまま投げた。 - 17二次元好きの匿名さん23/04/30(日) 10:45:02
「ヤケクソだ畜生!!潰しちまえカジリガメ!!」
不審者が叫ぶ。ボールから飛び出してきたのはカジリガメ。———但し、その体格は平均的なカジリガメの数倍を超え、小さな子供程度なら丸呑みできそうなものだった。
「はあ!?なんだあのクソデカカジリガメは!?」
「ロースト砂漠のテツノワダチと同じくらいの大きさがあるんだい!!」
ハイダイの言葉に、ハルトがハッとする。ロースト砂漠のテツノワダチといえば。まさか、このカジリガメ。
「ひでんスパイスを食べさせたな!?」
ハルトは叫んだ。適切な量であればポケモンの心身を活性化させ、ポケモンセンターですら治療困難な怪我や病気でさえ治癒出来るひでんスパイス。それを、おそらく過剰摂取させてヌシのように巨大化させたのが、あのカジリガメだと推測された。
「何処で手に入れたんだ!言え!!」
ハルトはブロスターに取り押さえられる不審者の髪を掴み上げて詰問した。不審者は痛みで眉間に皺を刻みながらも、ハルトを嘲笑うように答える。
「チ、チームリーダーには上から予めテラレイド結晶で回収したスパイスが供給される。スパイスの効能でポケモンが強化され巨大化することは調査済みだったからな。万が一が起きた時に、スパイスで巨大化させたポケモンを放って暴れさせて撤退する算段だったんだよ。あの弱っちいコライドンのせいでそれどころでなくなったがな」
「この……っ」
「落ち着けハルト。今はコイツを虐めている場合ではない」
カッとなって不審者を殴りかかったハルトを制したレホールが、巨大なカジリガメへ視線を向ける。やれやれ、まさかこんな形で他者との共闘などすることになるとは。レホールは肩をすくめて自嘲した。 - 18二次元好きの匿名さん23/04/30(日) 10:46:24
「チオンジェンを出す。全員なるべく特殊技で攻めるポケモンを出してくれ」
レホールは眼鏡を指で押し上げる。仕切り屋など柄ではないが、致し方無し。
「じゃあ、ミライドンですね。ごめんね連戦で。またお願いするよ」
「ならストリンダーだな。全員アタイのバイブスに遅れるなよ!」
「……私は特殊技を覚えたポケモンはいないな。そこのクズを代わりに抑えておく。ハイダイさん、頼みました」
「あまり無理はしなさんな、キハダさん。ブロスター、いくぞ!」
「補助はわた……おれに任せてくれ。モロバレルさん、やりますよ!」
想定外の突発レイドバトルが幕を上げる。巨大なカジリガメが咆哮し、ボールから飛び出したミライドンのハドロンエンジンでグラウンドにエレキフィールドが展開された。チオンジェンの"わざわいのおふだ"による呪詛で、カジリガメの物理的な力が削り取られる。
空は薄ら、元の青が透け始めていた。 - 19二次元好きの匿名さん23/04/30(日) 13:13:06
続ききた!うーんレホ先好きになっちゃう……
人生初体験の類の敗北で笑っちゃった、ネルケの話になると必ずこういうネルケゴリ押しの流れ来るのを既に期待すらしてしまう自分がいるw - 20二次元好きの匿名さん23/04/30(日) 13:41:42
リコロイのOPや楽しい冒険の話を見た後に
このスレ見るとすごい落差で風邪ひけるよ()
犠牲軸のパルデアには夢も冒険もありゃしねえ!!
だからってよそから奪ってくるんじゃねえ!! こんちくしょう!!!(ちゃぶ台返し) - 21二次元好きの匿名さん23/04/30(日) 14:53:26
- 22二次元好きの匿名さん23/04/30(日) 19:30:13
やっと追いついたー
SS面白…犠牲軸のハッサク先生やトップはじめ置いて行かれた人たちの嘆きに胸を打たれるし、犠牲軸のレホール先生やジニア先生が悲劇に対する嘆きからは一歩引いて自分の領分で行動してるのもすごく好き - 23二次元好きの匿名さん23/04/30(日) 20:15:53
レホ先がいい意味でブレなさ過ぎて一周 回って安心するというか
- 24二次元好きの匿名さん23/04/30(日) 21:44:06
保守
- 25二次元好きの匿名さん23/04/30(日) 22:58:15
- 26二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 06:14:27
オレアゲー
- 27二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 07:06:56
oh……
- 28二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 12:56:46
あげ
- 29二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 19:29:52
あげ
- 30二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 19:30:47
レホール先生余命宣告されてるけどなんかあの人だったら平和になった後にも普通に顔出して「あの時は大変だったな」とか振り返ってそうなんだよな
- 31二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 21:58:57
あっ…できた!保存できましたわ!!!やったぁ!
えっ掲示板に動画って貼れないの…? - 32二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 22:17:26
オレホシュー
- 33二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 22:53:39
ドーナツホールの完成をお知らせします
待っててくれてありがとう ごめんなさい
足りない画力はアイディアで埋め尽くしました
ところで
どこに投稿すればいいんだこれ…
この掲示板には貼れない…のか? - 34二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 07:10:47
ドーナツホール完成おめでとうございます!!
- 35二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 09:18:15
- 36二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 09:19:11
完成おめでとうございます!楽しみィ〜
- 37二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 18:45:57
過ぎたる力、手にすべき事能わず。
意志無き理想、叶う事能わず。 - 38二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 18:46:41
荊のロープで縛り上げられた五人の不審者グループの真正面に、ポピーが両腕を組んで仁王立ちする。その周囲で不審者グループを煽りながらぐるぐるとカバディするカエデ、グルーシャ、アオキの三人。その光景を一歩引いた場所で見ていたオモダカは頭が痛くなった。シンプルに悪夢。
「ねえねえどんな気持ち?未就学児の女の子に何もできないまま帰りの足も潰されて捕まって、ねえ今どんな気持ち?」
「現役時代のクソガキムーブ出てますよグルーシャさん」
「残念でしたね〜。意気揚々とボロボロになったパルデアにトドメ刺そうとしたのかどうか知りませんけど〜、元気いっぱいな私たちが居て残念でしたね〜。まあ殆どポピーちゃん一人にボコられてますけど〜」
「傷口にブートジョロキアペースト擦り込むのはやめて差し上げてくださいカエデさん」
「…………」
「アオキはなんか言いなさい。逆に怖い」
オモダカは眉間に人差し指を当ててため息を吐く。とても大変頭と胃が痛い。
「……ポピーも、あっちのポピーみたいにめちゃくちゃできたら、おじちゃんたちたすけられたですの……?」
「絶対やめてください。あれは所謂"彼らは特殊な訓練を受けています"というやつです」
末恐ろしいことを口走った此方側のポピーにオモダカは若干食い気味に釘を刺した。あれは本当に特殊なケースなので。
いつの間にかジムリーダー三人による悪夢のカバディは終わっていた。どうやら動きっぱなしで疲れたのと、不審者グループのリアクションが変わり映えしないことに純粋に飽きたようだ。最悪に最悪を重ねるな。オモダカは旅の恥は掻き捨てとばかりに頭のネジを外す面々に眉間の皺が深くなる。ハッサクはオモダカの心情を慮って、同情の意味を込めて肩を軽く叩いた。
「このひとたちがポピーにてもあしもでずいっぽーてきにめしゃめしゃにされたなさけないおとななのはさておいて……」
「ブートジョロキア重ね塗り!?」
「トップ話進みませんですよ」
「はい」
いっそ自分もネジをすっ飛ばしてしまおうか、そんな考えが一瞬過ぎってしかし、流石にダメだろとオモダカは頭を振った。ポピーは仁王立ちの姿勢のまま不審者グループを睨みつけて。 - 39二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 18:47:21
「きょてんのばしょをはきなさい。こんかいのそーどーをこんなにもはやくさっちできたということは、パルデアからとおくないか、パルデアのはしのはしにつくってあるかのにたくですの」
「何故貴様らに我々の機密を明かさなければならない。教えるわけがないだろう!」
「デカヌちゃん」
ス、とポピーが片手を上げたのを合図に、デカヌチャンがぬっと横から顔を覗かせてハンマーをチラつかせる。不審者グループのリーダー格と思われる男は、鈍く光るハンマーに悲鳴を上げた。
「はかなければ、あなたたちのおようふくのかなぐをぜんぶデカヌちゃんのハンマーのほしゅうぐにします」
地味に嫌な脅迫だな。グルーシャはマフラーを巻き直してキュッと口を結んだ。逆に自分たちの命の危険はないと理解した不審者グループのリーダーは、ポピーを鼻で笑う。
「なんだ、直接人を攻撃する度胸もない子供がいつまでそんな虚勢を張れるものか!我々は一切口を割らんぞ!!」
「アホらし、ですの。それはどきょうじゃなくてきょーいくのはいぼくですの」
「難しい言葉を知ってますね、ポピーさん」
ス、と殆ど気配なくアオキがポピーの背後に立つ。あら、おじちゃん。とポピーは腕を組み直したまま顔だけを上に向けた。アオキはポピーに一言断りを入れて、不審者グループのリーダー格の真正面に立つ。
「別にデカヌチャンで貴方方を叩く必要はないんですよ。そもそもポピーさんはちゃんとしたトレーナーなので、人をポケモンで攻撃しないという倫理観を持っています。ではどうするかと言えば……」
言葉の続きを切って、アオキが拳を振り抜いた。バキ、とリーダー格の左頬にアオキの血管の浮いて節くれ立った拳がめり込む。おお、と何人かが歓声を上げた。
アオキは殴った拳を開いて、プラプラと汚れを払うように揺らす。
「トレーナーが……というか人が直接殴る分にはまあ、特に問題はないんですよね。喧嘩の延長線上の暴力で、貴方方のような反社会的組織相手なら尚更」
で、まだダンマリ決め込む気ですか。
アオキの冷え切った目が不審者グループを見つめた。呻くリーダー格と怯えて細かく悲鳴と嗚咽を吐き出す四人は、ガタガタと震えていた。そのうち一人が屁理屈だ、と喚いたので、鳩尾を蹴ってやる。ぐえ、と呻いて縛られたまま蹴られた一人は蹲った。無慈悲。 - 40二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 18:48:05
「アオキ、余り痛めつけ過ぎて口を開かなくしてはいけませんですよ」
「……わかってますが」
「貴方は普段やる気がないのに、ふとした時にやりすぎるきらいがありますよ。ポピーの教育に悪いので自制するべきです」
「それは今更では?」
「本当に今更ですね」
アオキとオモダカの意見が珍しく一致した。散々暴と力と行動力でここまで突き抜けてきておいて、今更教育に悪いも何もない。そもそも一番突っ走っているのはそのポピーである。
「攻撃はしなくても、拘束にポケモンの技を使うのはモラルに反しないよね」
グルーシャはモスノウの入ったボールを手にした。カエデがそっとボールを握る手に自分の手を上から重ねてそっと降ろさせる。オーバーキルなので流石にやめときましょう。えー、別にいいじゃん。仲良しか。
「……ヘリが飛来した方角上、かつて大空のヌシであったオトシドリの縄張り周辺か、その向こう側かと推測されますが」
此方側のオモダカが言う。ほぼ全員の視線が彼女に向いて、何人かは寒気がするほど悪意のある微笑を浮かべた。
「へー、ほー、ふーん……?」
「成る程成る程〜」
「チリさんたちが戻ってきたら、全員でいきましょうか。御礼参り」
「カチコミですの?カチコミですの?」
「そこのカバディジムリーダー三人とポピー、ステイです」
グルーシャがニヤニヤと西の方角へ視線を向ける。カエデはグッと腕を上に伸ばして背伸びをし、アオキは二拍のリズムで屈伸を始めた。ポピーはそわそわと身体を揺らしてしまいにはトントンと小さくジャンプした。血の気が多い。オモダカは誰かが手綱を握らねば今すぐにでもすっ飛んでいきそうな四人を制して不審者グループに向き直る。
「……ビンゴのようですね?」
わかりやすいなあ、と流石に苦笑した。未だ蹲る一人と歯噛みして八つ当たり気味に睨み返してくるリーダー格以外の三人は、目に見えて動揺している。それでは正解ですと言っているようなものだ。オモダカは肩をすくめた。
「それでどうするトップチャンピオン———ああ、ワタシたちの方だ。此方の世界のコイツらを討伐したところでワタシたちの世界には影響ないどころか、今こうしている間にも動き出している可能性すらあるぞ」
「あ、そのことなのですが……」 - 41二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 18:48:45
オモダカは思い出したようにスマホロトムを取り出して、メッセージアプリを開く。
「此方の私ともつれ込んで此方の世界に傾れ込む前に、流石に何の言伝もなく私まで留守にするのは不味いと思いクラベル校長に連絡をしたのですが、恐らく移動する本当に直前に拾ったのでしょう。留守は任せて欲しい、という旨のメッセージが届いていまして」
オモダカがコルサにスマホの画面を見せた。そこに映っていたメッセージには。
《理事長、及びジムリーダー奪還に向かった皆様の無事の御帰還お待ちしております。留守はアカデミーとスター団にお任せください》
「ちょっと頼もし過ぎて笑いましたからね。皆さんと合流するちょっと前に気付いたのですが」
「本当に頼もしいな。スター団というと、最近STCとかいう施設を運営している思春期どもだな」
「補足するとボタンさんが一年半前に結成した組織でもありますね」
オモダカはスマホをしまう。彼らが留守を預かる以上、仮にこの不審者グループと同じ組織が自分たちの世界にもいたとして、まあ、大丈夫だろうと。
「……随分楽観視しているのですね」
此方側のオモダカが重い口を開く。オモダカはそれを受けて一瞬きょとんとして、それからクスリと笑って返した。
「確かに、少し前までならジムリーダーも四天王も、チャンピオンさえパルデアを離れなければならない事態に陥った時、誰が護るのかと不安になっていたでしょうが……」
オモダカは思いを馳せる。パルデアの未来を担う若き才能が、その枝葉を伸ばし大きく育っている今に。
「チャンピオン・ネモの言葉を借りるならば、今の彼らは相当に"実っている"と言えるでしょうね」 - 42二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 18:49:20
夢見る少女のように述べられた答えが、此方側のオモダカとハッサクの胸に鋭利なナイフのように突き刺さった。
—————————
聞いていない、聞いていない、聞いていない。上からはこんな連中のことは聞いていない!!
奇抜な格好の男が走る。後ろからはカエンジシが三匹、男を追い立てるように迫ってくる。頭上にはファイアローを中核としたヒノヤコマ数匹が、男が足を止める瞬間を今か今かと待ち構えながら飛び回っていた。骨組みが剥き出しのスロープの上から、グレンアルマとコータスが狙いを定めている。それを指揮するのは、派手な装飾を施したモトトカゲに騎乗する、星型のサングラスをかけた学生たち。
何なんだ、アイツらは。ただの不良学生じゃなかったのか!男は喚き散らして逃げ惑う。男の他に七人、ジムリーダー不在のボウルタウンにパラドックスポケモンを誘導するための人工テラピースを設置するために東一番エリアまで来ていたのに、たかが学生如きに遅れを取るなど。
ズダンッ、と男の目の前にオレンジ色の何かが降り立った。ヒィ、と悲鳴を上げて尻餅をついた男を睨み、唸り声で威嚇するそれは、非常に鍛え上げられたウインディ。その後ろからゆったりと歩いてくる華奢な体躯の少女とグレンアルマ。
「ドラゴン先生とジムリーダーのおっさんが留守だからって、勝手な真似できると思ってたのかよ」
男の前に少女が立つ。傍らに控えるグレンアルマとウインディが睨みを効かせる。男は小柄な筈の少女が余程大きく見え、自分がこの少女を恐れているのだということを否応なく思い知らされた。
「残念だったな。オレたち、マジボスから留守は頼んだって言われてんだ」
フ、と少女が鼻で笑う。男は威圧感に腰を抜かし、立てないまま叫んだ。
「お、お前!!一体何者だ!!ガキのくせに、ガキのくせに!!」
自分たちの邪魔をするお前達は何者だと。少女は顎に手を当てて、少し考えてから。
「いつもだったら、スター団炎組、チーム・シェダル団ボス……って答えてるとこなんだけどな」
こと今に限ってはこっちを名乗らせてもらうぜ。
炎のように赤いブーツが艶めいた。
「グレープアカデミー美術部の、メロコだ!!」
ビシィッ、と親指で自らを指して、少女———メロコは胸を張った。 - 43二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 19:38:52
不良()の乗ったバイクに追いかけられるのはシンプルに怖い
そして人間の炎に対する本能的な恐怖をあおるタイプのタイプポケモン
あれ? 適任? メロちゃんさすが!! - 44二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 20:19:32
- 45二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 21:23:36
テスト用に動画を一本投稿
どうやら問題無いらしいので
ユーチューブに投稿してきますね~ - 46二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 22:09:23
原作軸ではスター団がジムリ不在の街を守ってくれてる感じか
- 47二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 22:22:28
原作軸だとタイムマシンの機能成功してるから流石に犠牲軸のような大騒動にはならない....とは言えどジムリーダーやリーグの実力者たちが不在の怖いとこをしっかりスター団と教師陣で守ってくれるのは心強いよなあ......
- 48二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 22:33:39
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- 49二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 22:45:23
- 50二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 23:33:16
本当に、本当に心が抉られる作品をありがとうございます。
- 51二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 00:01:22
待ってた!!素晴らしいMADをありがとう…
- 52二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 00:09:56
なんかすげぇ…心が…抉られて…
- 53二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 00:10:54
- 54二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 01:42:49
あっあっあっあ、野生テラスタル防衛戦線、蟷螂の斧ヒーロー、不倶戴天の共闘、おきみやげ自爆特攻隊……
あっ(致命傷)
完成おめでとうございます投稿ありがとうございます寿命が縮みました!!!!!!!!!!
- 55二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 06:21:39
- 56二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 09:13:59
本当に、本当にありがとうございました!!
- 57二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 09:29:05
細かすぎ…心臓無くなっちゃった…
- 58二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 12:18:54
お待ちしておりましたですよおおおおおおおおおお
そしてお疲れ様でスターーーーーーーー!!!!!
しんどい オブ しんどい(語彙力/Zero)
途中 泣き叫ぶチリちゃんとか
野生ポケモンたち反逆のターンとか
四災たちとか
あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”(頭抱え)
- 59二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 12:32:50
「死なない想いが あるとするなら」で〈これから〉を託しに来た怪獣達、
「それで僕らは 安心なのか」で〈これまで〉紡がれてきた正義を背負って戦うヒーロー達
本当にビリビリ来た センスの塊?
この概念って…凄いんだな…製作者の南瓜さんと偉大なる先人方に感謝
- 60二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 14:44:53
- 61二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 16:34:23
(思ってたより好評みたいでビビってる)感謝
使用イラスト&ボツ集か…需要があるならやろかな
容量めちゃくちゃ圧迫してるから早めに消したいけど勿体ないし… - 62二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 18:54:29
没案や全体イラスト、拝見したいです
- 63二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 20:41:36
じゃあ…やっちゃおうかな!
使用イラストから纏めますね〜
没や設定画は量が多いので時間かかりそうだし - 64二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 22:43:11
- 65二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 23:55:40
君いつも何らかのピンチに見舞われてるね…大丈夫?投稿できた?
- 66二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 00:46:05
- 67二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 01:55:55
- 68二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 02:04:37#犠牲軸 「閲覧注意」使用イラスト集 ※原作タグつけないでね - カシミアのイラスト - pixiv1https://bbs.animanch.com/board/1398476/2https://bbs.animanch.com/board/1400350/3https://bbs.animancwww.pixiv.net
ヨシ!
ヨシ?
アカウント分けてないのは許してください
260枚投稿してやっとそのことに気づいた
もう…もう寝よう おやすみなさい
- 69二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 12:28:07
- 70二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 13:20:03
よ ん ひ ゃ く さ ん ま い
そりゃもう…投稿してからアカウント分けてないこと気づいてもやり直したくないわな
どんまいだぞ
ところで…2番サビの御三家、四災の顔模様あれだな?専用技エフェクトだな?
纏められるとわかりやすいなぁ お疲れ様でスター!
(あちこちのスレでイラスト投稿してたの君だったのかい…) - 71二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 18:17:44
ほ
- 72二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 21:11:18
あげ
- 73二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 21:15:38
本当に、本当にありがとうございました……!!
- 74二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 22:39:42
纏められて気づいた
アルクジラが木の実集めてる2つのシーン
最初はナナシ、オボン、オレン
最後はラムが転がってる
つまりこれって…雪崩に効きそうな木の実全部集めて使って駄目だった…ってこと?!
人の心!!!!!!!! - 75二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 22:50:44
こおり状態解除の為のきのみだったのか…えっ人の心とか無いんか?
- 76二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 23:09:59
一番のサビ部分でハッサク先生だけ泣けてなくて愕然と目を見開いてるの、しんどすぎんか
- 77二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 23:59:05
2番サビ後半での必ず片目は見えているホームウェイ組+ポピーちゃんと目が隠れているオモダカさんとハッサク先生の違いが、失ったけれど前を向く子供と失ったものが多すぎてめのまえがまっくらになった大人の対比みたいでめちゃくちゃしんどいです
- 78二次元好きの匿名さん23/05/05(金) 01:47:14
- 79二次元好きの匿名さん23/05/05(金) 10:01:24
まとめられることによって人の心の無さがどんどん露わになっていくの面白い(よくない)
没案もっとエグそう
まさか一回目のアイディアでこんな人心案件全部思いついてないよね?
それともまさか最初のアイディアの方がマシとか…ないよね? - 80二次元好きの匿名さん23/05/05(金) 12:56:58
ずっとボールが逆なペパーとサンドイッチアギャス達だけが癒やし
- 81二次元好きの匿名さん23/05/05(金) 18:47:53
スレチだったらすまない
前スレで犠牲ダカさんのイメソンがウlタlカlタlラlラlバlイというのを聞いた気がするけど
よくよく考えたら劇中の役割も某歌姫とそっくりなことに気づいてしまった
状況的にはT o t Mu si ca だけど…… - 82二次元好きの匿名さん23/05/05(金) 21:36:03
- 83二次元好きの匿名さん23/05/05(金) 22:03:06
星は、己が力で光り輝く術を誰に導かれずとも知っている。
- 84二次元好きの匿名さん23/05/05(金) 22:03:41
疾走感と躍動感のあるギターサウンドが、あちこちに設置されたスピーカーを通して流れている。奇妙な格好の男女三人が、響く音楽に恐怖心すら煽られながら逃げ惑っていた。
彼らを追い立てるのは、ヤミガラスを率いるドンカラスと、ニューラを率いるマニューラ。手製のスロープの上から、派手な装飾で飾ったモトトカゲに跨る学生達が連携して指揮を取る。
「クソッ、学生風情が調子に乗りやがって!!」
「バカお前、前見ろ!」
一人が顔だけを後ろに向けて苛立ちを吐き出す。もう一人がそれに注意をかけた時には既に遅かった。
「バウッ!!」
正面にマフィティフが待ち構えていた。逃げられると思うな、と言うように吼えて、グルルと唸る。三人は腰を抜かしてその場に座り込んでしまった。
ピーッ、ガガガッ。スピーカーが切り替わり、鳴り響いていた音楽が消えた。代わりに聞こえてきたのは、声変わりしたばかりと思われる少年の声。
《DJ悪事の突発ライブへようこそ!オープニングアクトの悪組、チーム・セギンによるチェイスショーは楽しんでもらえたかな?》
ざり、と地面を踏み締めてゾロアークとキリキザンが退路を塞ぐ。
《ここからはメインステージ!ボクとポケモン達のパフォーマンス、盛り上がってって!》
放送が終わる。スピーカーからは再びギターサウンドが流れ始めた。ガラガラと車輪の回る音がして、其方へ振り向くと。
電飾で飾り付けた台車を二匹のモトトカゲに引かせ、その上に立つ片手にノートパソコンを抱えた少年。その傍らに控えるのは、目付きの鋭いドドゲザン。
「さあ、準備はいいかな。永遠にチルアウトさせてあげるよ!」
ドドゲザンが台車から飛び降りた。
—————————☆
元の色がわからないほどカラフルに彩られた木々の間を必死になって走り抜けようと足掻く。方向感覚がわからない。何度この道を通ったか思い出せない。自然の迷宮に迷い込んだ、前衛的な制服に身を包んだ女は息切れしながらも何とか足を動かしていた。
ズブ、と左足が沈む。何だ、と足元へ視線を向けると、泥沼に足が取られていた。
「ヒ、ィ」
掠れた悲鳴が口から漏れる。頭上の枝葉の上に気配。キイ、キイと鳴き声がする。ガサガサと草を薙ぎ倒し枝葉を揺らす音が鼓膜を叩いた。 - 85二次元好きの匿名さん23/05/05(金) 22:04:21
ブォン、と排気音がした。
「は、ぁ……っ」
女はもう限界だった。パキ、と倒れた枯木を踏み潰して現れたのは。
「ブルルロロォオオオンッ!!」
「う、うわぁあああああああ!!!!!」
ショッキングパープルでペイントされたブロロロームだった。
「シュウメイ殿!不審な輩が人工沼に落ちたよ!」
「うむ、すぐにブロロロームを向かわせるでござる。同胞、休憩に行ってもいいのでござるよ」
「全然平気だよ!シュウメイ殿こそずっと休まずみんなの指揮を取ってるでしょう?」
ぼくが代わりに対応するからシュウメイ殿は休んで。しるしの木立の奥にあるSTC毒組、チーム・シーのアジトの最奥で指揮を取っていたシュウメイを、オタク仲間のヒロノブが押し退けて仮眠スペースに突っ込んだ。スター団員からの報告メッセージを表示していたシュウメイのスマホロトムに、代わりに報告を受ける旨を伝えて地図に視線を落とす。
「よし、シュウメイ殿が回復するまで不届者たちはぼくたちでやっつけるぞ!」
ヒロノブの喝に、周囲で工作作業をしていた団員たちがオーッ!と歓声を上げた。
—————————☆
オーロンゲの髪で縛り上げられた、独特な服装の三人組が地面に座り込まされている。それを手製の粗雑な舞台から見下ろす少年が、金のステッキの先をカンッと床に突いた。
「フェアリーの可愛くないとこ、たっぷり満喫できたか?」
少年の足元に控えるバウッツェルがワンッと吼える。三人組のうちの一人が少年を見上げて睨みつけた。子供のくせに調子に乗るな、と喚いて、しかし少年———オルティガはやれやれと肩をすくめて嘲笑した。そんな格好で、そんな有様で睨まれたって怖くはないと、有意な態度を崩さない。
オルティガはステッキを振って、近くにいたスター団員を呼びつける。
「ビワ姉のとこから来てる助っ人達に、ルクバーはもう大丈夫って伝えといて。あと、校長先生にナッペ山周りの怪しい奴は全部捕まえたって言っといて」
指示を出し終えて、オルティガは舞台から軽い足取りで飛び降りる。ペシ、とステッキの柄を空いた手のひらに叩きつけた。 - 86二次元好きの匿名さん23/05/05(金) 22:05:08
「それじゃあ、お前らのアジトの場所と目的と組織の規模、洗いざらい吐いてもらうからな」
あどけなさを感じる顔を悪どく歪めて、オルティガは宣告する。パルデアを荒らさんとする子悪党を捩じ伏せる下準備のために。
ボールから姿を現したブリムオンが、悪魔のような微笑みを浮かべた。
—————————
「グループスター2からチームシェダル、不審人物の確保完了報告きました!」
「グループスター1、チームセギンの襲撃の波は一旦落ち着いたそうです!」
「グループスター4、不審者の拘束完了!校長先生へ報告済みだそうです」
「グループスター3、チームシーのキルゾーン完成につき撤収準備に入ってます」
STC格闘組、チーム・カーフは慌ただしい。地理的に重要な街からは離れており、野生ポケモンもそれなりに強力な北2番エリアには、他のSTCで確保した不審者グループは来ていないようだった。その為、チーム・カーフ団ボスのビワは、団員達を四つのグループに分けて他のSTCへ助っ人として派遣していた。
派遣した団員達からの連絡を受け取ったビワは、現状を纏める。悪組はカラフシティと大穴を取り囲む岩山に程近い影響か、ひっきりなしに向かってくる不審者グループを一通り捌き終えたらしい。ボウルタウンの側にある炎組は、悪組ほどでないにしろ不審者の発見、拘束数が多い。毒組はシュウメイの忍者オタクが功を奏し、しるしの木立全体がトラップだらけの魔の領域と化したようだ。フェアリー組はナッペ山を越えた先とは言え、フリッジタウンとナッペジム近辺まで足を伸ばして不審者を確保、情報を吐かせるために尋問中とのこと。
「ふぅー……っ、なんとか乗り切れそう、かな」
大きく息を吐いて、ビワは椅子に腰掛けて背もたれに身体を預けた。マジボス———ボタンがジムリーダー達を奪還する為平行世界へ乗り込む、だからその間留守を頼むと請われて、ビワ達スター団は二つ返事で了承した。そして実際に、マジボス達もジムリーダーも四天王達もいないパルデアで、悪人としか言えないような連中が行動を始めた。
「マジボス達が戻ってくるまで、きっとあと少しだよね!よーっし、頑張るぞー!」
「頑張る前にビワちゃんはちょっとだけ休憩しようね」
ガシッ、とビワの肩を掴む手。ピャアッ、と悲鳴を上げて振り返れば、団員達のまとめ役であり友人のタナカがムスッとした顔で唇を尖らせていた。 - 87二次元好きの匿名さん23/05/05(金) 22:06:01
「え、あ、待ってタナカちゃん、みんなが帰ってきたらちゃんと休憩するからあの、その、手を……」
「ダーメー!そう言って絶対休まないの目に見えてるんだから。そこのキミ、ビワちゃん休憩スペースに押し込んできてー!」
「タナカちゃん〜〜!!」
団員の一人に腕を引かれてドナドナされるビワを見送って、タナカは地図を広げて目を落とす。不審者グループの目的はパルデアの大穴である可能性が高い、とクラベル校長から聞かされていた。であれば、スター団が最も力を入れて守るべきは。
「チャンプルタウン……近いのはセギンか……」
タナカはスマホロトムを起動して、グループ通話の通話先リストの一つをタップする。
「グループスター1、スター4、そのまま戻らずチャンプルタウンに向かって貰える?うん、宝食堂の女将さんには後で話つけておくから」
それだけ言って、タナカは通話を切った。
ユキノオーとヤレユータンが割れた窓ガラスとコンクリートを片付ける。危険物を除けたスペースでクラベルは髪を肩周りまで切り落とした"オモダカ"の手当てをする。
「骨折はしていないようでよかったです。理事長から"もう一人の私を看て差し上げてください"なんて連絡が来た時は流石に驚きましたが……」
困ったように笑うクラベルの顔を見ることのできない"オモダカ"は、俯いたまま視線を手首に巻かれた包帯に落としていた。
「……巻き込んで、申し訳ありません」
「巻き込んだ、とは」
「異なる歴史を歩む世界に失われたものを求めること、異なる枝葉に実る果実に手を伸ばすこと、それを止めることができなかったこと。それら、全てです」
ギリ、と下唇を噛んだ。クラベルは切れてしまいますよ、とそれを止めた。
「御自分ばかりに責任を負うのはおやめください。きっと、遅かれ早かれ起きていたことでしょうから」
「でも……!!」
"オモダカ"が顔を上げた。クラベルはそれを片手をそっと掲げて制して続ける。 - 88二次元好きの匿名さん23/05/05(金) 22:08:33
「どれだけ責任ある立場であったとしても、能力が高かったとしても、人一人が背負えるものには限界があります。貴女の背中に、世界そのものは背負えない。いいえ、誰であってもそんなことは不可能なのです」
壁に穴が空いて、吹き曝しも当然の有様のリーグを見渡す。きっと戻ってきたら、オモダカ達リーグ関係者は建物の修復と各種システムの復旧に奔走することだろう。彼ら彼女らのやり場のない感情のこもった絶叫と、予算との擦り合わせで追い詰められた悲鳴がクラベルには幻聴として聞こえていた。
穴の向こう側に見える真新しいクレーターのできた岩山は、ここで起きた戦闘の激しさを物語る。
「それに、たった独りによって救われるような世界なら、ともすれば救われない方がいいのかもしれませんよ」
「……それは、どういう」
"オモダカ"が尋ねた。クラベルは眼鏡を指で押し上げて。
「社会というものは、何人もの人が集まって形成されます。率いるものだけでは骨組みは立たず、回すものだけでは行き先を見失います。人も世界も、多くの人が手を取り合い、支え合い、同じ場所を目指して初めて本当の意味で救われるものと私は考えていますよ」
実際私も、たくさんの先生方や生徒さん達に支えられ教わりながらなんとかやってきている身ですから。そう言ってクラベルは立ち上がる。失礼しますね、と告げてからスマホロトムがポケットから飛び出て、通話を繋げた。通話相手からの話に相槌を打って、わかりました、気を付けてよろしくお願いしますと言って通話を切る。振り返ったクラベルは。
「存外、大人が思っているよりも子供はずっと強いものです。たまには、信じて任せてみるのも良いかもしれませんね」
その顔は、まごうことなき教育者であった。 - 89二次元好きの匿名さん23/05/05(金) 23:35:28
保守
- 90二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 06:22:23
オレモアゲー
- 91二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 06:27:35
此方のオモダカと"オモダカ"は別人?確か最初も最初にオモダカの三つ巴やってたよね
- 92二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 09:08:19
"オモダカ"さんはビターエンドした方じゃないやろか、取り戻す動きをする此方オモダカに猛反発してたのは覚えてる
- 93二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 09:40:38
アゲー
- 94二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 12:18:30
スター団の連携力がすごすぎて
- 95二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 19:35:15
きっとSTCでさらに鍛えられたんだろうな
ハルト君はもとより、ネモちゃん嬉々として突撃してそうだもん… - 96二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 20:16:34
アゲー
- 97二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 21:55:42
- 98二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 23:13:28#犠牲軸 「閲覧注意」描き殴ったアイディア纏め - カシミアのイラスト - pixivお終い!手伝ってくれた人、待っててくれた人、現在進行系でスレを進めていく皆さんに感謝!!どうやら精神を保つためにたくさん一人言を書いてたらしい…です読まなくても大丈夫読みたいけど字が小さい!とか汚い!www.pixiv.net
アナログのページ漁ってたら遅れました!ごめんなさい!
とにかく
俺はこれで一旦お終いです
変なタイミングで投稿したせいでスレの流れを切っちゃったのは本当に申し訳ない
ここまでありがとう また何かあったら言ってね
皆もPV作ってみたり…しない?
- 99二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 23:15:18
- 100二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 23:47:04
- 101二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 00:04:54
さ、最後の最後までおっちょこちょいと人の心のなさを見せてくれた…台風のような人だった
成長速度といい 温度差といい 密度といい 愛といい
何なんだ一体… - 102二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 00:30:04
- 103二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 02:05:46
- 104二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 02:26:02
妹さんの功績がデカい……
- 105二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 10:35:16
彼の遺志を越えて行け。
- 106二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 10:36:19
オーリムAIの話を聞いて、ネモとチリは沈黙していた。碌でもない連中のせいで、この世界はどうしようもなく傷付けられたという確証を得てしまった二人の、首謀者への怒りは如何程のものであろうか。
「さて、キミたちが知りたいことはこれで全部でいいかな」
オーリムAIはスカーレットブックを片手で抱え、二人に確かめた。
「強いて言うんなら、ハルトたちが亡くなった後は自分ずっとチリちゃんらが来るまでスリープしとったん?」
「ああ、あの日以来、内部システムで時間の経過こそ把握していたが、今日この瞬間まで誰もこのタイムマシンの部屋まで訪れることはなかった。上層のラボには、何度か人が来ていたようだが……」
「資料だけ持って行きよったかあのあんぽんたん……」
仮にも別世界線とはいえオモダカをあんぽんたん呼ばわりとは。ネモは信じられないものを見る目をした。オーリムAIも流石にこれには苦笑を禁じ得ない。
「さて、知りたいことは粗方知れただろうか。それらとキミたちの経験則を踏まえてワタシから頼みたいことがある」
オーリムAIが言う。チリとネモは僅かに身構えて目を細めた。
「キミたちはタイムマシンを停止させに来たのだろう。無秩序なパラドックスポケモンの増加を止めるべくに。その為にも、どうかワタシを完全に"破壊"してくれ」
一瞬、二人の時間が止まった。
「…………は?」
チリの間の抜けた声が部屋に溶けて消えた。
「は、破壊……って……?」
ネモの声が震える。それは、言い方こそ違えど、つまりは。
「ワタシがオリジナルが仕組んだ楽園防衛プログラムにおいて、タイムマシンの停止を求める対象を排除する機構の受け皿であることはキミたちも知っての通りだが」
オーリムAIは自身の胸に手を当てる。チリはオモダカから配られた資料で、ゼロラボで人知れず起きた闘いについて知っていた。だから、オーリムAIの求めが何に由来するのかを悟る。ああ、全くもって酷い話だと手のひらを握り締めた。
「楽園防衛プログラムは、オリジナルの執念……いや、いっそ妄執と呼んでも差し支えない代物だ。ワタシという出力装置が健在する限り、例え倒されてもプログラムは何度でも再起動し、タイムマシンを止めようとする誰かを排除するだろう」
「せやからいっそのこと、実行するための出力装置ごと使い物ならんくしてまえてか。まあ、理にはかなっとるけどもやな……」 - 107二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 10:37:15
心情的に、あまりやりたくはない。無機質な機械を破壊するだけならまだ良心の呵責もないが、オーリムAIは例えプログラムであったとしても、ヒトの形をして、ヒトと同じ思考能力を持ち、自分達と言葉を交わした相手だ。それを、壊す———否、殺すなどそう簡単にできようものか。
頭ではわかっている。オーリムAIを破壊しなければ、楽園防衛プログラムがチリとネモを襲うだろう。しかも、プログラムは歴代チャンピオンランクのデータを参照した最強の戦闘AIである。そして、今は沈黙しているボールロックシステムが、楽園防衛プログラムの起動と同時に使われないとも限らないのだ。
「自分はそれでええんか」
最後の確認だった。永遠に目覚めない覚悟があるのかを、チリは問う。
「それでオリジナルの妄執が終わるなら」
オーリムAIは確固たる意志を持って答えた。
チリは歯を食いしばって、髪を苛立ち紛れに掻き毟り、そして大きくため息を吐き出した。
「……わかった」
「チリさん!?」
意を決したチリにネモが狼狽えた。ボールロックシステムがまだ発動されていないうちに、ボールからバクーダを出す。心配そうな目でチリの顔を見上げるドンファンと、不安そうなバクーダを安心させようとチリはぎこちなく笑んだ。
「自分が求める通り、チリちゃんたちが自分を壊す。ネモは退がっとき。責任も咎も全部チリちゃんが背負うわ」
「何言ってるんですか!!」
「何もへったくれもあらへん。これしか確実にタイムマシン止める方法あらへんねやろ。なら、誰かがやらなあかんことやし、だからと言って子供にこんなクソ重いことさせられへん。せやから、大人で四天王やっとるチリちゃんがオーリムさんを壊す」
それでええんやろ、とチリはオーリムAIに確かめた。憎まれ役、嫌われ役なら面接官という立場上多少なりとも慣れはある。傷を負うのは自分だけで十分だ。
オーリムAIは無言で頷いて、スカーレットブックをチリに託す。そして、両手を広げて無抵抗の構えをとった。
チリが指を指す。バクーダが眉間に皺を寄せた。ドンファンが固唾を飲んで見守る中、ネモは膝から崩れ落ちる。
「バクーダ、"だいもんじ"……!!」
努めて冷たく吐き出された指示に従って、千二百度を超える高音の炎がオーリムAI目掛けて放たれた。 - 108二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 10:37:58
鋭く殺意すら纏う眼でゼロラボのゲート前に座り込むリップは、二人分の足音がラボの中から外へ向かって来るのを聞き取った。素早く立ち上がって、視線をゲートへ向ける。
「チリちゃん!ネモちゃん!無事!?」
「おん、この通り怪我一つあらへんよ」
ヒラ、とゼロラボから出てきたチリが片手を振る。その後ろを着いて歩くネモの表情は、何があったのだろうか、随分と暗い。
「タイムマシンどうだった?」
リップの問いかけに、チリの足が止まる。チリは少し目を伏せて、ゆるゆると頭を振って答えて曰く。
「動いとった。博士のAIが生きとって、当人に頼まれた通りにAI壊して停止させたった」
「……は?」
淡々と感情を押し殺した声で返ってきた答えに、リップは頭が追いつかなかった。タイムマシンが止まっていなかったのはわかる。その管理者である博士の人格と知能を模したAIが存在していたことも、リーグからの資料で読んだ。そのAIが、自らを壊すことを要求したというのが、わからなかった。
いや、理屈自体は察せられる。資料にはAIの人格プログラムを上書きする形で起動する楽園防衛プログラムの存在も記載されていた。それを起動させない為に、AI自体を破壊してしまえばいいというのは理論上は納得がいく。それでも、感情の面では。
「……殺したの」
「おん」
嘘偽りない回答だった。リップは目を伏せて、そう、と一言だけ言って目を伏せた。トドロクツキが心配そうに三人の顔を見回して、弱々しく鳴いた。
「この後どうするの?直帰?」
「コライドンの隠れ穴に戻る。どっちにせえ、トドロクツキ送り返したらなあかんやろ」
「ああ、それもそうだわ」
「それから、多分やけどあの隠れ穴、コライドンがこっちの世界のハルトたちの墓作っとると思う……ちゅーか、多分墓が先で、後から弱ったポケモン助けて匿っとるうちにどんどんデカなってったんやろな」
「遺体、ラボの中になかったの?」
「博士のAIが、コライドンが持ってったって証言したんよ」
「成る程」
なら追悼くらいしてあげないとね。リップの言葉にチリは静かに同意を示す。
チリが再び歩き出した。リップの横を通り過ぎて、来た道を戻ろうと二人を促す。リップは数秒伸びをして、浮かない顔のままのネモの手を引いた。 - 109二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 10:38:28
「大丈夫、ネモちゃん?」
ネモは無言で、力無く頷く。
「……博士のAIをチリちゃんが殺したこと、そんなにショックだった?」
少し目が泳いで、僅かに首を横に振った。
「子供だから傷つかないよう守られるのが、悔しい?」
ややあって、ゆっくり頷く。
「……私、全然何もできてない」
息の詰まったような声で、ネモが言う。
「2号と戦ったときも、危ないって怒りはしたけど、チリさんがあの作戦考え付いてなかったら、みんなもっと酷い大怪我してたかも知れない。ゼロラボに乗り込む時も、リップさんとトドロクツキが囮になってなかったら、あんな簡単には入れなかった。子供だから、博士のAIを壊す責任、チリさん一人に押し付けちゃった。……悔しい。私だけ、何にもできてない。私だけ、誰の力にもなれてない。悔しい……!!」
「でも、ネモちゃんが気付かなかったらタイムマシンは今も動いたままだったわ」
え、とネモは顔を上げた。
「ネモちゃんがタイムマシンが動いてるかも、って可能性に気付かなかったら、リップ達がエリアゼロに乗り込むこともなかったし、そうでなかったらあの怖ーい方のコライドンが元気いっぱいの状態で外に出ていたかも知れない。リップ達が自分の力を尽くせたのは、ネモちゃんのお陰よ」
「リップさん……」
ほら、置いてかれちゃうわよ。リップの歩幅が広くなって、ネモは思わず前のめりになる。後ろからトドロクツキが頭でネモの背中を押して、散歩気分で歩いていた。
ゼロラボに背を向けて表層を目指す一同は、それぞれ意志を固め直す。タイムマシンは止めた。博士の夢という名の妄執は終止符を打たれた。後は、此方の世界の人々の———オモダカの狂気に幕を下ろす。
テラスタル結晶が、俄かに輝きを増した。 - 110二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 11:24:28
……AIさぁん…泣
チリちゃん大人らしい対応で良いよねよくない、きっと心には負荷かかっただろうな
ネモは防衛プログラム戦経験してないとはいえハルトが戦った事は聞いてるだろうから、「ハルトは戦ったのに(殺してはいないけど)、自分は結局チリさんに任せてしまった」みたいに思うんだろうな。
ネモにとっては楽しい筈のポケモンバトルも、原作AI戦の時点で意味合いが全然違うし…原作AI戦の時点でもし戦う相手がネモだったら上手くいかなかったかもしれないとか上の読んでて思ったわ。勝てるけど思いっきり影が落ちてしまいそう - 111二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 11:55:30
イラスト動画SSの3方向から心を破壊しにかかる…
最強だな! - 112二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 12:06:50
我々のライフはもうゼロよ!!!
- 113二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 12:34:09
オススメタグに
鬱 闇 病み 病み垢 風刺 が出るくらいには真っ黒だよ Oh〜そんなに? じゃないんだよ
最後の絵もケシにとってはループし続けた過去の自分もガラクタ同然とでも言いたいのかい
花言葉まで解説してくれやがって…
紫のリンドウは「満ちた自信」?
めっちゃリップさんやんけ…なんなんもう…情緒飛ぶって…
いや描いてる本人も精神保つために一人言増やしてんのかい…なんだこの人…反動技しか持ってないの…?それともこだわりハチマキ メガネ スカーフ全部装備して もろはのずつきでも撃ってるの?
- 114二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 12:35:37
読みづらかったので文字おこしてくれてサンクス……
- 115二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 16:50:07
- 116二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 22:23:55
ドーナツホールパロの完成度もさることながら
没案や新規イラストまで見ることができて
作者が神か?アルセウスなの?? - 117二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 22:46:31
おいしれっと新しい作品を投稿して…して…
お前そのスレにもいたのかよ何なんだよもう!
「大丈夫同一人物です」じゃないんだよ!気温差で風邪引くわ! なんなの?ふんわり絵が得意なの?人の心ゼロな作品が得意なの?…なんなの????メタモン????え?え? - 118二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 22:56:37
このレスは削除されています
- 119二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 22:57:12
最近までザシディンスレにいた人間の姿か?これが…
- 120二次元好きの匿名さん23/05/08(月) 00:28:37
四災ファンスレから追っかけてた俺、血の表現を克服した姿を見てにっこり(ラストのポピー)
あのスレで鬱展開ほとんど描かなかったのは力をセーブしてたのかい? - 121二次元好きの匿名さん23/05/08(月) 07:10:42
オレアゲー
- 122二次元好きの匿名さん23/05/08(月) 12:50:43
オレモアゲー
- 123二次元好きの匿名さん23/05/08(月) 21:50:53
ほっしゅー
- 124二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 07:12:59
犠牲軸のループ概念あったけど、ループの中で
他地方の四天王やチャンピオンとかの実力者、他地方の悪の組織とかがイレギュラーとして乱入してきたループもあったりしたんだろうか - 125二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 07:15:50
献花で顔の見えないリップさん…哀で固まったままのキハダ…側について慰めるしかないミモザ…
oh... - 126二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 10:52:48
あげ
- 127二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 19:21:23
あげー
- 128二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 20:54:44
- 129二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 21:23:02
その場合場所によっては海越えられるパラポケでないと辿り着けない可能性が高いだけに全パラポケ種総進撃!!なパルデアよりは対策が立てやすいから楽っちゃ楽。ある種この世界線のパルデアが終わったのは同時多発的に弱点がバラバラのヤベー生き物が暴れ回ったせいとも言えるので
- 130二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 22:06:04
国境や海岸に並んだ攻撃特攻高いポケモンがパラドックスを撃ち落として、耐久高いポケモンがこの指とまれワイドガードリフレクター光の壁を使ってサポートする防衛戦か
- 131二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 23:55:12
保守るよ
- 132二次元好きの匿名さん23/05/10(水) 00:46:58
パルデア大惨事のせいで風評被害MAXなパラポケ達をお供に活動するポケレン主人公?(幻覚)
暴走伝ポケに出来るならパラポケもキャプチャ自体はききそうなので問題は人の目になりそう
前提をポピギャルドSSにするとパルデア壊滅したのは人災に近いとはいえ一般人にはそう見えないだろうしなぁ…(ワイルドなのは事実だし)
- 133二次元好きの匿名さん23/05/10(水) 07:10:21
一般人は最低限のパラドックス対処で精一杯だしね…
- 134二次元好きの匿名さん23/05/10(水) 16:31:01
オレアゲー
- 135二次元好きの匿名さん23/05/11(木) 00:15:03
荒廃したパルデアに派遣されたポケモンレンジャーとして
パラポケをキャプチャしながら要救助者を救出したり高難度ミッションをこなしたり……
レジェンド軸とちょっと被るな - 136二次元好きの匿名さん23/05/11(木) 00:17:31
オーリムAIもチリちゃんもネモもつらい…
- 137二次元好きの匿名さん23/05/11(木) 03:02:16
あげ
- 138二次元好きの匿名さん23/05/11(木) 10:26:05
ようやく追い付いたので保守がてら
ポケモンは怖い生き物ですってのを再確認したわ
でもそっか、共存出来たはずの世界でも奇抜軍団のせいで一歩間違ってたらこうなってたのか
ギリギリのバランスと人の優しさで成り立つ地方パルデアかぁ…… - 139二次元好きの匿名さん23/05/11(木) 18:01:44
- 140二次元好きの匿名さん23/05/11(木) 18:16:33
数十回くらい言われてるけど何か起きた時に暴で全てを粉砕して解決できる枠がいないせいで一歩間違えたら真っ逆様にドン底に落ちる地方だからね……なのに厄ネタだけは山ほどある(エリアゼロ、四災、テラパゴスなどなど')
- 141二次元好きの匿名さん23/05/11(木) 20:12:40
誰がいなくなってもダメな状況下で
失われてしまった人々が多すぎて……
しかも残された人が暴走して取り返しのつかないことをしてしまうし
世界線によっては地方のほぼ全土がパラポケ闊歩する魔境と化してしまうしで
- 142二次元好きの匿名さん23/05/11(木) 21:54:24
- 143二次元好きの匿名さん23/05/12(金) 02:11:19
ほっしゅ
- 144二次元好きの匿名さん23/05/12(金) 07:05:37
- 145二次元好きの匿名さん23/05/12(金) 11:53:43
- 146二次元好きの匿名さん23/05/12(金) 11:58:21
- 147二次元好きの匿名さん23/05/12(金) 14:20:16
- 148二次元好きの匿名さん23/05/12(金) 21:15:44
- 149二次元好きの匿名さん23/05/13(土) 04:38:09
アゲー
- 150二次元好きの匿名さん23/05/13(土) 07:14:46
よりにもよってジムリーダーが全員欠けてしまったのが……
- 151二次元好きの匿名さん23/05/13(土) 16:54:17
オレアゲー
- 152二次元好きの匿名さん23/05/13(土) 18:06:52
アオキさんとチリちゃんというトップと四天王の暴走止められる人間が脱落したのが痛手すぎたな
- 153二次元好きの匿名さん23/05/13(土) 23:36:16
ジムリ全員に恐らく市街地とかも被害受けてるんだよな…失ったものが多すぎる
犠牲軸の人たちが少しでも励まされるきっかけが何かあればいいんだが… - 154二次元好きの匿名さん23/05/14(日) 00:35:44
オレホシュー!
- 155二次元好きの匿名さん23/05/14(日) 00:37:56
葛藤が余りにも悲しい…そりゃ総意とはいってもこう思う人が何人いたことか…皆心の何処かではわかってた事なんだろうけど…
- 156二次元好きの匿名さん23/05/14(日) 09:26:15
正直そこは誰であれ二人も再起不能になったのがデカい
- 157二次元好きの匿名さん23/05/14(日) 10:38:36
呪いは、希望たり得るか。
- 158二次元好きの匿名さん23/05/14(日) 10:39:31
「失礼!!」
「ドア壊れるよ」
ガァンッ、とドア枠に叩きつけるようにミモザは医務室のドアを開いた。衝撃と反動で電気焼けした掌が刺すように痛む。その様子に冷静な言葉を投げかけるのは、擦り傷と電気焼けを全身に作ったナンジャモだった。
「お、おお……?ミモザ先生にキハダ先生、それにジムリーダーのナンジャモ……?」
「……こっちの世界のセイジ先生」
そこにいたのは、少し伸びてパサついたヒゲの、言語学教師のセイジと何人かの生徒達。目を丸くするセイジには申し訳なく思いつつ、ミモザはズカズカと医務室に足を踏み入れる。
「詳しいことは後で説明するけど、こっちのあたしが重体だからベッド一つ使わせて」
「へっ?どういう……あ、オヌシたちー!ベッド一つ空けてプリーズ!」
上手く突然の事態を飲み込めていないセイジはそれでもミモザの要望に応えて、生徒達に指示を出した。できる限りで整えられたベッドの上に、キハダが背負っていた此方側のミモザを慎重に寝かせる。
「とりあえず氷と包帯で打ち身になってるところは冷やして……擦ってるところは濡れタオルで拭うか。キハダ先生、そこの桶に水入れてきて!」
「了解した」
キハダが桶を手にして水道へ走った。その間に引き出しからビニール袋を数枚出し、医務室に添えつけられた冷蔵庫から冷却用の氷を掬って袋に詰める。タオルで氷の詰まった氷を包んで患部に当て、包帯で固定した。
「……手がヒリヒリする」
「そりゃそうだよ。自分の掌見てみな」
「あーあー聞こえなーい」
「セイジ氏」
「ガッテン承知のスケ」
此方側のセイジがミモザの手を素早く取って、掌を押した。ミモザが濁った悲鳴を上げて、膝をついてもんどり打つ。それ見た事か、とナンジャモは呆れて肩をすくめた。
そうしているうち、キハダが水を張った桶を抱えて戻ってくる。何やってるんだ、と怪訝な顔をしたキハダにナンジャモは。
「キハダ氏ー、ミモザ氏って元からこんなんなの?」
「こんなん、が何を意味するのかわかりかねるが、今現在ほど自分の身を顧みなかった覚えはないな」
「ハイになってるだけかー……」 - 159二次元好きの匿名さん23/05/14(日) 10:40:38
ナンジャモがため息を吐いた。自分も大概強敵との二連戦という極限状態にハイになっていた自覚はあるが、ミモザに関してはおそらくその自覚があんまりないのが困りもの。あの怪獣のようなパラドックスポケモンに、尻尾で薙ぎ払われていたのをバッチリ見ているのだが。
どうにか立ち上がったミモザはタオルを桶に張った水で濡らして搾る。此方側のミモザの身体についた砂や擦り傷から滲み出た血を拭い取り、傷の大きさに合わせて切ったガーゼを当ててテープで留めた。
「はぁー……一旦こんなもんかしら。目が覚めるまでは安静にしておかないと……」
ガタン、とミモザは丸椅子にのしかかるように座る。そして、そういえば今更だけどと前置きして。
「セイジ先生、どうしてここに?」
ミモザの問いかけは、キハダもナンジャモも気にはなっていた事だ。特に、キハダとミモザは此方側のセイジがジムリーダーの拉致に反対を示した側であると知っていた為、どこかに拘束されている可能性も視野に入れていたもので。
「ワシら反対派の教員はそれぞれ個別に教室に軟禁喰らっておってね。理事長はきっとワシらにレジスタンスされるのを嫌がったんだろうね。ワシ個人はワイフの身の安全自体は保証してもらえるって理事長からダイレクトに約束されたから、下手にムーブ起こしてしっぺ返し喰らうのは悪手。連絡も自由に取り合える許可も貰ったしね。だから大人しくしてたんだけど……タイム先生が」
「そういえばライム氏こっちのお姉さんに文句言ってくるとか言ってたなあ。言いくるめクリったか」
「TRPGじゃないんだぞ」
どうやら此方側のタイムが反対派の教師陣を解放して回ったと見ていいだろう。避難してきた生徒達を安心させる意味でも、彼らの力が必要なのは間違いないので。
「……セイジ氏さあ、今のこっちのオモダカ氏に関してはどう思ってる?」
ナンジャモが問うた。セイジは額に指先を当てて考えて、出した返答は。
「一人で責任も全部抱えて背負って、身動き取れないままそれでも無理矢理前へゴーイングしてるから、誰かストップかけてあげて欲しいとは思っとるわな。このままじゃ理事長、そう遠くないうちにノックダウンよ」
「それは本当にそう」 - 160二次元好きの匿名さん23/05/14(日) 10:41:39
ナンジャモは此方の世界に連れてこられた当初を思い出す。チラッとだけ顔を合わせたオモダカとハッサクの顔が、自分の知るそれよりもずっと酷いと思ったのは昨日のことのよう。隈は酷いし、肌は化粧で隠しているが荒れているようにも見えたし、スーツの襟はまともに休めていないのかよれていた。アレを見て特に問題ないと言える奴がいたら教えて欲しい。助走をつけて殴るから。
一先ずセイジらの事情と現状は把握した。こちらも誠意ある対応として、ナンジャモが自分たちの経緯を説明しようと口を開いたその時。
———ズゥンッ。
「ひゃあ!?」
「うおっ」
「わあっ!!」
「ぬぉあ!」
建物が振動した。医務室にいた生徒達は悲鳴を上げて身を縮め、ナンジャモ達は何が起きた、と窓を覗き込む。キハダが見つけたものは。
「グラウンドの、なんだアレは……!?」
怪獣映画からそのまま飛び出したかのような大きさの、巨大なカジリガメだった。
頭上から巨大な岩が雨のように降り注ぐ。巨大なカジリガメの"いわなだれ"をストリンダーのオーバードライブが迎え撃った。足元に飛び込んだミライドンは真下から"りゅうのはどう"でカジリガメの腹を押し上げる。ゲェ、と開いたカジリガメの口の中へチオンジェンの"やどりぎのたね"とモロバレルの"どくどく"が放り込まれた。
「ブロスター、足元に"みずのはどう"!!」
ドウッ、とプロスターのランチャー状のハサミから放たれた"みずのはどう"が、カジリガメの足元の地面を抉る。カジリガメがその巨体を重そうに跳躍させて後ろへ下がったところに、回り込んだストリンダーの"たたりめ"が直撃した。
「かっった……っ!!」
「でかい分体力もあるんだろうが、それにしたってガチガチすぎるんだい!」
モロバレルの"どくどく"が入って猛毒状態のカジリガメに放たれた"たたりめ"は、威力が倍加しているはずなのに堪える様子がない。これがひでんスパイスの力だとでもいうのか。
「だが無敵ではないなら問題はない。チオンジェン、カタストロフィ!!」 - 161二次元好きの匿名さん23/05/14(日) 10:42:37
どろ、とチオンジェンの足元(と言っても足などない)の影が粘性のある液体のように湧き上がる。視線がカジリガメへ向けられ、影がそれに従うように襲いかかった。影に身体を貫かれたカジリガメは、不快感と嫌悪感、激痛を振り払うように吼えてアクアブレイクで上から殴りかかる。チオンジェンは身を捩って直撃こそ回避したが、左側の身体を覆う木の葉が一掴み分ほど散った。
「どうだ、人の欲望と憎悪を煮詰めた業の味は。もっとも、キサマのひでんスパイスで肥えた舌には合わんかもしれんがな」
クツクツとレホールが嗤う。言い方が大分悪役じみてるなと思いつつ、ライムはストリンダーに"たたりめ"を指示し、カジリガメの顎下を狙った。
ミライドンがストリンダーに合わせ、イナズマドライブで上から強襲をかけた。上下から頭を挟まれたカジリガメは足を踏み鳴らし、"いわなだれ"でミライドンとストリンダーを押し除ける。僅かに足先を掠めて、ミライドンは顔を顰めた。
「モロバレルさん、ギガドレイン!!」
モロバレルが両手の傘を突き出し、深緑の波長がカジリガメに纏わりつく。植物の根が水を吸い上げるように、カジリガメの体力をモロバレルの傘が吸い上げた。
カジリガメの巨体が蹌踉めく。ズン、と後ろ足が地面に僅かに沈んで、その衝撃でグラウンドが揺れた。カジリガメは回り始めた猛毒と腹の中に巣食う"やどりぎのたね"を鬱陶しがりながら、ゴオォ、と咆哮した。
ポツリ、ハイダイは頭に水の粒が落ちたのに気付いた。まさか、と思う間もなくグラウンドに雨が降る。先の咆哮は"あまごい"であったのだと悟ったハイダイと、戦闘に参加していないキハダはその狙いに勘付いた。
「「まずい!!"すいすい"だ!!」」
二人の声が重なった。ハ!?とハルトとライムは声を上げる。カジリガメの"すいすい"は希少特性で、基本的にはテラレイド結晶で捕まえる他ない。やってくれたな、とネルケは歯噛みする。
心底マズイ、とハイダイは身体を打つ雨に紛れるように冷や汗を流す。あの巨体で"すいすい"の効果で素早さを上げた状態。そんなのが全速力で突っ込んできたらどうなることか。しかも生憎、誰も天候を変化させる技を持っていないのが痛い。 - 162二次元好きの匿名さん23/05/14(日) 10:43:13
カジリガメが姿勢を低くする。後ろ脚に力を込めて、ドォンッ、と地面を蹴ってアクアブレイクで突っ込んできた。言わんこっちゃない、とハイダイはブロスターの"はどうだん"で迎え撃つ。アクアブレイクと"はどうだん"が正面衝突して、水と波導エネルギーが爆散した。
雨と、爆散した水飛沫が霧のように視界を覆う。足元のエレキフィールドだけを頼りに、ミライドンはカジリガメの姿を探した。エレキフィールドを構成する電気が一部揺らぎ、ミライドンがそちらへ振り返ればカジリガメが再びアクアブレイクで向かってきている。ミライドンはイナズマドライブで迎撃するが、ぶつかり合った瞬間にカジリガメがダメ押すように"いわなだれ"を降らせた。
「ミライドン!!」
ハルトが叫ぶ。舌打ちしたライムがすかさずストリンダーをカジリガメに向かわせ、オーバードライブで胴体をぶち抜いた。
「まだ動けるかい?」
「全然!だよね、ミライドン!」
「アギャッス!」
ライムの言葉に強気に返したハルトとミライドンは、キッと表情を引き締めてカジリガメに向き直る。雨で冷やされた身体が戦いの興奮で熱を持つ。
青を覗かせていた筈の空を、曇天が覆っていた。 - 163二次元好きの匿名さん23/05/14(日) 17:58:37
ひょぇぇぇ…頑張って頑張って…!
巨体から出る被害がどんなもんか考えたくないよ!! - 164二次元好きの匿名さん23/05/14(日) 21:42:01
犠牲軸の概念にあいそうなアニポケソングってなんだろうか……
個人的には「そこに空があるから」が合いそうだと思う
傷つかぬ者に青空は見えない…… - 165二次元好きの匿名さん23/05/14(日) 22:36:14
あ
- 166二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 06:52:20
写り込むアヴァンギャルドが気になるのはナイショ
- 167二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 07:16:29
オレアゲー
- 168二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 10:01:54
セイジニキのワイフさんは無事だったんだ…でも多分セイジニキは例えワイフさんが亡くなっても「ロストしたものは帰ってこないし、あっちのワシのハッピーを奪っても何も解決しないわな」って言うと思うんだ…
んで誰か(説得しにきた人…キハダ先生辺り?)「随分薄情なんですね」とか心無い事言われても効きはしないんだけど、ふと奥さんのお墓の前で「ワシってヒドいヤツなのかな…」ってなるんだ… - 169二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 10:23:20
- 170二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 21:05:35
保守 全ての創作者さまに感謝
- 171二次元好きの匿名さん23/05/16(火) 03:58:24
- 172二次元好きの匿名さん23/05/16(火) 07:02:09
罰を受けるとしたら
並行世界侵攻に賛同した人はパルデアから追い出されて
反対した人は残留するとかだろうか - 173二次元好きの匿名さん23/05/16(火) 08:50:32
追放endにするならこの状況を打開できない時点で全員同じだね
- 174二次元好きの匿名さん23/05/16(火) 17:41:46
あげ
- 175二次元好きの匿名さん23/05/16(火) 19:59:59
パラポケ騒動で荒れたパルデアにポケモンレンジャー、それもトップレンジャーが派遣されてもおかしくない
- 176二次元好きの匿名さん23/05/16(火) 22:43:41
もうマジで外部からの介入がないと、誰も正しく裁けないだろ、このパルデア
- 177二次元好きの匿名さん23/05/17(水) 00:16:12
あげ
- 178二次元好きの匿名さん23/05/17(水) 04:58:07
絵師さん達やSS書いてくれる人達のおかげでこの地獄の解像度が上がる……本当にありがとう
- 179二次元好きの匿名さん23/05/17(水) 07:15:27
神SSに神イラストに神動画と宝の宝庫なスレや
- 180二次元好きの匿名さん23/05/17(水) 08:24:54
このスレの 未来は じつに明るい
いやまぁ話してる事は深淵並みの深さなんですが… - 181二次元好きの匿名さん23/05/17(水) 18:56:51
- 182二次元好きの匿名さん23/05/17(水) 19:04:36
ヒョエエ…水に沈んだり献花で顔隠されたりバーサーカーしたりリップさんも大変やな…
- 183二次元好きの匿名さん23/05/17(水) 22:54:01
こっわ…でもその恐怖の中に美しさを感じる…
- 184二次元好きの匿名さん23/05/18(木) 10:28:01
あげ
- 185二次元好きの匿名さん23/05/18(木) 19:11:29
オレモアゲー
- 186二次元好きの匿名さん23/05/18(木) 19:21:35
オレモホシュー
- 187二次元好きの匿名さん23/05/18(木) 20:01:23
SSだけでなくイラストもこなせるとはあなたが神か
- 188二次元好きの匿名さん23/05/19(金) 02:25:37
カッコイイし美しい……でも大怪我していらっしゃるんだよなあ……無理しないでリップさん……
- 189二次元好きの匿名さん23/05/19(金) 06:57:25
これだけの大惨事になったのなら、「もうこんな危険すぎる土地にいられるか!俺はパルデアを出ていく!」って別地方に出ていく人もいないとも限らないのがまた……
- 190二次元好きの匿名さん23/05/19(金) 17:13:38
ぼちぼち次スレ?
- 191二次元好きの匿名さん23/05/19(金) 20:44:41
犠牲チリちゃんの壊れた心が 犠牲軸の面々が暴走して起こした事件のただ中に放り込まれたことで、徐々に元に戻りつつあるのがなんか皮肉や……
- 192二次元好きの匿名さん23/05/20(土) 00:19:38
気付いて無かったけど190踏んでた…作ります
- 193二次元好きの匿名さん23/05/20(土) 01:09:19
- 194二次元好きの匿名さん23/05/20(土) 07:08:58
ありがとうございました!
- 195二次元好きの匿名さん23/05/20(土) 07:16:34
埋めるのだ
- 196二次元好きの匿名さん23/05/20(土) 08:49:04
かそく
- 197二次元好きの匿名さん23/05/20(土) 08:49:17
すばやさが あがった!
- 198二次元好きの匿名さん23/05/20(土) 09:09:35
うめ
- 199二次元好きの匿名さん23/05/20(土) 09:10:00
バトンタッチ!
- 200二次元好きの匿名さん23/05/20(土) 09:15:33
次スレへ レッツゴー!