- 1二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 11:20:26
鏡台に映る、わたしの姿を見る。
白い死に装束姿のバカな女が、無表情に自分を見ていた。
やらかしたことの割に、気取り過ぎているだろうか。わざわざこんな格好で。
いや、でも補助監督のスーツ姿はきっと、白装束よりもずっと相応しくない。わたしは裏切り者だから。
室内の様子を目に焼き付けてから、未練を振り切るように自室を出た。
住み込みの補助監督用の寮の部屋、張りぼての神社仏閣、の、上の青空。もう絶対に見ることのない光景。
わたしは今から自首しに行く。
きのう、夜蛾夫妻の3人の子どもたちが、いっぺんに呪詛師に殺された。
わたしのせいだった。
子どもたちの死を狙って呪詛師に情報を流したのだ。間違いなく、わたしがやったことだった。 - 2二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 11:24:11
※おことわり※
・タイトル通りガチで閲覧注意っす!
・作者独自の設定がモリモリ登場します!
・書きながら投稿しています。投稿ペースはあまり速くないので勘弁を!
・質問、感想etc 大歓迎です! - 3二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 11:25:17
見せてもらおうか
期末勉強の息抜きとして
後でpixivにも上げてくれ - 4二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 11:27:14
- 5二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 11:43:29
弱い人間はずうっと弱いままで、やりたいことなんて思うように選べない。
そんな業界で、わたしは最初っから弱いほうの側だった。
叶うだろうか。わたしの思いは。
隠し通せるだろうか。わたしの秘密は。
秘密を秘密のままに、願った通りに死んでいけるだろうか。わたしのような、不器用な、脆弱な、心の歪んだチビが。
……我ながら、何ともいびつな視野狭窄だ。
弱者を気取ろうにも、もっと弱い子たちに害意を向けた愚か者でしかないというのに。
自己憐憫を振り切り、わたしは簡素な葬儀場の扉を開けた。 - 6二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 11:59:48
死が身近にあって、死者への未練は新たな呪いに繋がるという考えの業界だ。
葬儀場の造りはあまり手が込んでおらず、死者を悼みたい者が最低限追悼できればいいという思想が徹底されている。
よくありがちな殉職術師の葬儀よりも、参列者は多かった。
夜蛾夫妻は家族でこの高専の敷地に住み込んでいる。
まだ就学前の3姉弟はみんな素直で明るくて、独身者の多いこの高専では、ある程度可愛がられてた存在だったから。
人のざわめきと注目を無視して喪主席へ。
憔悴しきった奥さんと、その背を撫でている夜蛾正道一級術師。ぎょっとしてこちらを見ていて――
「自首しに来ました」
わたしは夜蛾夫妻にハッキリと言った。
「おととい、呪詛師に情報を流しました。そちらのおでかけの日時とナンバーを……」
いや、遠回しな言い方は止めよう。
「お子さん方が亡くなられたのは、わたしのせいです」 - 7二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 12:12:22
おととい、高専の食堂にて。
それは何てことはない会話だった。
3姉弟の末の子と、若く親しい女性の補助監督。
「あのねぇ、あした、おたんじょうびなの。ぼく、さんさい。おいわいでね、どーぶつえんにパンダみにいくの」
「そう。良かったわねぇ。お誕生日おめでとう」
翌日、夜蛾一家は私用のワゴン車で出かけた。予定通りのなんてことはないお出かけだ。
その車の真上に、工事中のビルの真上から、鉄骨が束になって降って来たのだった。
車は後部座席『のみ』がプレスされ、子ども達が即死。運転席と助手席にいた夜蛾夫婦は助かった。
表向きは不幸な建築事故として扱われ、ニュースの中に呪いの『の』の字も出ることはなかった。
ワゴン車後部座席の底面と、降って来た鉄骨から、呪符が燃えた痕跡が見つかっていた。
磁石を張り付けた物がお互い引き寄せられるように、巧妙に隠匿された呪符の、そのマーキングめがけて物体を引き寄せる術式。
明らかに、外出ルートと時間帯を事前に把握した上での呪殺だった。 - 8二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 12:13:27
すいません、急用ができました。
続きは夕方に投稿します。 - 9二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 12:33:03
- 10二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 13:34:15
安価を使うならスレタイに書いて立て直した方がいいよ
夜蛾サイド - 11二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 13:40:32
主人公で
- 12二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 15:38:34
夜蛾で
- 13二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 16:06:44
夜蛾
- 14二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 18:05:30
主人公
- 15二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 18:11:37
夜蛾
- 16二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 19:01:21
- 17二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 19:32:12
「――はぁ?」
俺の腕の中で妻がそんな声を出す。
椅子の上で術師らしくなく呆然とした俺達を尻目に、周囲の動きは早かった。――何しろ、高専関係者『しか』いないような場だ。
小柄な死に装束の身体を複数人が押さえつけ、後ろ手に呪符で縛りあげる。その女は抵抗するそぶりを見せず、されるがままだ。
「おい、ちょっと待て!!」
思考が追い付いた俺は、やっと立ち上がって詰め寄れた。
俺よりもずっと背の低く、体重も俺の半分以下であろう細身の女の、白い着物の襟首を掴んで、
「俺達、そもそも任務でお前と関わったことすら無いだろうが!? 呪われる余地がどこにあったというんだ!?」
確か零細の術師家系の生まれ、珍しく大卒新卒で今年の春に高専の補助監督になり、まだ半年も過ぎていないはずの新人のお嬢ちゃん。
――その程度のはずの女だった。どう考えても、一級術師の俺の任務にはまだ関わる立場では決してない。
俺達一家との関わりを無理矢理ひねり出せるとすれば、子ども達と食堂で何度か話したくらいだろうか。
あまり付き合いが深くない顔見知り、その程度の関係性だった。 - 18二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 19:33:46
若い女は俺を見上げて言う。
「尋問室でお話します。……すべて」
そうして座ったままの俺の妻にも視線を向ける。
「わたしの尋問役も執行人も貴方がたになるのでしょうから。たぶん」
高専の慣習を踏まえれば、なるほどその見立ては正しい。俺達が他人に委ねたりしない限りは、そうなるはずだった。 - 19二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 19:35:17
家事のため離席します。22時代に投稿を再開します。
- 20二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 22:33:58
――夜蛾御夫妻に落ち度は一切ありません。子どもたちにも、もちろんありませんでした。
呪符だらけの尋問部屋で、後ろ手に縛られた女は語る。
――そもそも、わたし、補助監督になんかなりたくなかったんです。
――普通に義務教育を受けて高校に行って大学を出て、……就職しようという段階になって、父に一般就職を徹底的に妨害されました。
――無理強いされて、高専に就職するしかなくなったんです。
――父が言うには『家同士の付き合いで、急遽今年うちの家からひとり高専に人員を出さなきゃいけなくなった。お前が出るしかない。術師の家系の務めを果たせ』と。
――就職した時から、父には、退職したいという思いを伝えていました。ずっと。
――そうしたら、父は、退職と引き換えの結婚を勝手に取りまとめてきました。
――お相手は、私から見て20歳以上年上のバツ3で、前の奥さん方は全員旦那さんの手で折檻死されていて、……それをご本人が自慢げに言い触らしているという有名な方でした。
――父は、『術師の家系の務めを果たせないのならお前はゴミだ。逃げるのなら地の果てまでも追いかけてやる』って言ってきたんです。
――だから私は決めたんです。例え私が破滅したとしても、まず第一に家の体面に大迷惑が掛かるような方法で、無理矢理にでも補助監督という立場から逃げてやろう、って。
――うちの家とは無関係の家を、無関係の方々を、とにかく巻き込もうと思いました。
――絶対に内々に済ますという決着だけは避けたくて、だから。
――わたしの破滅のために、夜蛾家の皆さんを、お子さん方の生命を、わたしは自分の意思で巻き込みました。 - 21二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 22:46:31
――いえ、最初から夜蛾家を狙っていたわけじゃないんです。
――とにかく実家関係者に大恥かかせるのが第一で、呪詛師を使ってどこか他の家を攻撃しようと思っていて。
――そんな時に、夜蛾家の一番下の坊やの言葉が、食堂で飛び込んできたんです。
――『あした、おたんじょうびなの。ぼく、さんさい。おいわいでね、どーぶつえんにパンダみにいくの』って。
――それを聞いて、その日のうちに呪詛師に話を持ちかけました。マーキング系の術式を使って人を殺した嫌疑のある、呪詛師にです。
『高専の術師一家を攻撃したくないか? 術師の家の車が、ある特定の場所を通る時間帯と、ナンバーの情報を提供できる』って。
――呪詛師は話に乗りました。マーキングの術式に必要な呪符の提供を受けて、私は夜蛾家の車に呪符を貼りました。
――だから、私は裏切り者です。
――死ぬのを承知で、子ども達を殺しました。呪詛師の共犯に違いありません。 - 22二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 23:23:34
尋問の終わりに際して、わたしは言った。
「あの。わたしを手にかける前に、実家に問い合わせて頂けませんか。うちの血筋は呪われています。むかし術師の家同士で争ったときの厄介な名残が残っているんです」
御夫婦に向けて、できる限り平板な声で。わたしの心の内に抱える秘密が露呈しないように願いながら。
「どの家だって、術師は呪力で殺さなければ呪いに成りますが、……うちの血筋に限って更に言えば、家の女が処女のまま殺された時、殺した側が呪われる」
既に、『家の体面を潰したい』というわたしの願いは、ある程度は達成されている。
御夫婦のどちらがわたしの命を奪うのであれ、そのために執行者になった方が呪われるというのはわたしの意図から多少ズレる。
奥さんの方が質問する。
「……その話をするってことは、あなたは処女なのね? どんな意図でその呪いは生まれたの? 呪いの動機が見えないけれど」
わたしは術師家系の闇を語る。わたしの身体の内にも流れる呪いの、その源流の意味。
「はい。やむなく家の女が罰され折檻され殺されなければならない時に、その女が必ず処女を散らす苦悩を味合うように、です」
「……?」
ああ、御夫婦のどちらもいまいちよく分かられてない。わたしは苦笑して続けた。
「古い術師の家はどこだって、内々で家内を粛清する歴史と機会を負っていますから。
そんな時、この呪いの存在を知っていたなら、必ず粛清対象の女を、……最低限でも指なりなんなりで処女膜散らした上で粛清するという一手間が増えますし」
「……その呪いの存在を知らないのなら、それはそれで家の中に余計な火種が生まれる、というわけね?」
「ええ」 - 23二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 23:27:27
秘匿死刑という判決は笑えるほど速やかに決まった。
処分を受ける女の側が、明らかに死を覚悟していたというのもあるだろう。
肝心の呪詛師はとうにアジトから逃げていた。その逃亡先の情報を女は知らず、これ以上尋問しても情報を得ようがなかった。
だから、今から記すのは、とある秘匿死刑のかたち。
子をすべて殺されたという報いのために、ある若い女が処女を散らし更に拷問じみた苦しみの末に死んでいった、そんな話だ。 - 24二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 23:32:01
- 25二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 23:33:45
さらに追加で
3.夜蛾夫婦が主人公に行いそうな身体的拷問について御意見ください。スレ主の技量的に書けそうなら採用します。 - 26二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 06:09:56
1 分からん
2 夜蛾
3 主人公の実家が、夜蛾が呪われないために念のため生のなか出しをおすすめしてきたシチュが見たい
奥さんいるから厳しいかもしれないけど、指で処女膜を破るだけよりは確実ですよ的な - 27二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 11:21:25
読んでる
お前何してくれとんねん…
首絞めて強 姦あたりかな…? - 28二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 12:44:38
- 29二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 16:42:19
主人公の顔イメージと設定資料が完成したので早速ご紹介
皆様のイメージとズレていなければ幸いに存じます
SS投稿は予定通り19時代の予定です
SS『チビ殺し』(R-18G・閲覧注意)主人公名前:(未設定 ※人生のほとんどのタイミングで、あだ名が『チビ』)性別:女
年齢:22歳
身長・体重:小柄。夜蛾正道の主観では、かなり低身長・体重は夜蛾の半分以下。
呪力:あり(補助監督をギリ勤められるレベル)
術式:なし
家系:零細の術師家系
経歴:高専OBではなく小中高大は普通の学校に通った。大学新卒で呪術高専東京校の補助監督に就職。しかし就職半年未満で呪詛師と通じ、とある大事件を起こした。自首したその日の内に秘匿死刑対象となる。telegra.ph - 30二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 19:57:20
投稿しようとしたら鯖落ちして書きかけのデータが消えたー……
すいません、家事に戻るため投稿延期します。22時代に復帰します - 31二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 20:04:53
- 32二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 20:11:04
- 33二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 22:51:37
このレスは削除されています
- 34二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 22:52:52
「何、その箱?」
尋問部屋に戻って来た俺を見るなり、妻はこう問うてきた。
情報の裏取りのために部屋を出ていった俺が、部屋に戻って来た時にはなぜか一抱えほどの木箱をかかえてきたのだ。気になるはずだ。
「総監部からの支給品だ。呪具ではないが凶器やら小物一式、……使い捨て前提で『使えそうな物があれば使え』だとさ」
「へぇ」
言いながら、俺は木箱を床に置いた。
自首してきたその女を、俺達が思う存分痛めつけるだろう、と、……むしろそうあるべきだ、と、誰もがごく当然視して、色々な物事が動いていた。
木箱の中をざっと見る限り、刃物やら消毒機器やら、素人が思い浮かびそうな『拷問に使いそうなもの』が一通り揃えてある。
「――それでだ、お前が供述した家系の女の呪いについてだが」
椅子に拘束されたままじっと目を閉じていたらしい女は、そこでようやく俺を見た。
「はい」
「裏は取れた。その呪いは確かに存在すると、……だが。お前の家系ひどいな。裏取りの時にあんまりな状況になったぞ」
(※ちょっとひどい誤字があったので、削除の上再投稿します) - 35二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 23:19:30
女の自首を受けて、女の家系の関係者は、即座に総監部の面々に呼び出されていた。
この場合に呼び出される関係者は、(女の実家は分家だったから)本家の主や、女の父親を指す。
呼びつけられた彼らは、総監部の重役達が集まる例の障子の部屋で、自白系の術式を念入りに浴びながら、女の犯行に誰も何一つ関与していないことを証明させられたのだという。
彼らは『家そのものが高専に叛意を持っているのではないか』という不名誉な嫌疑を、絶対に晴らさねばならなかった。
俺が裏取りのために障子の部屋に入ってきた時、嫌疑が晴れ、重役たちの嫌味と説教が終わりかけた頃合いだったらしい。
「――このような呪いが存在するのだと、本人は尋問中に言っていました。事実でしょうか」
俺は本家の主に言った。重役たちが集まる前で。
「はい、その通りです。うちの血筋の女にはそのような呪いが存在します。
あのチビを夜蛾術師が殺されるのであれば、指で膜を破るだけではなく、実際に姦淫を交わし更に精を出すのが、念のための呪い除けの観点から『だけ』言えば好ましいかと存じます。
夜蛾術師には奥様がおられますから、その観点からは難しいことでしょうが」
「分かりました。ではまた別に一点お尋ねします。……その呪いの存在を、死刑執行人の私達に、そちらの家から真っ先に自主的に申告されなかったのは何故でしょうか?」 - 36二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 23:40:30
そこで、総監部のだれかが障子の向こうから割って入った。
「つまり、呪いの存在を知らんまま当人を殴り殺すなり蹴り殺すなりしていたとしたら、手を下した夜蛾達が呪われたかもしれんということじゃろう?
そういう厄介な呪いのある女が、処女のまま死刑に処されるかもしれん状況になったのじゃ。執行人の安全のために真っ先に申告するべきじゃ、と」
「ええ、仰る通りです。……ですが、この家系の方々は何も明かされなかったようですね。
私は、殺されるはずの当人の申告があって、初めて呪いの存在を知りました。本人がわざわざ話してしまえば、生前に処女を破られるだけなのに」
そこで本家の主人が口走った。自白系の術式の効力がまだ生きている状況下で。
「え、えっとですね。仰る通り、秘匿されていた処女の呪いのこと、総監部に明かすべきだという意見は家内にあったのですよ。
……ただまあ、『真面目な一般家系出身の術師が呪われようと、何の不利益があるのか』とか、『そもそも術師の家系の女を殺しにかかる、一般家系出身の術師など呪われてしまえ』だの言い出す者がありまして」
俺は、夜蛾正道は、一般家系出身の術師である。
「あぁ゛? ……アンタら、大概クズだな」
障子の向こうのお歴々がクスクスと笑う。女の父親が本家の主人に掴みかかる。その争いを誰かが止める……。
馬鹿馬鹿しすぎていっそ哀れだった。
女の父親は三級術師で、本家の主人は準二級術師。
実力の伴わない陰謀だのプライドだの、滑稽な代物でしかないだろう。 - 37二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 23:54:15
――という総監部での出来事を、俺は全て語ってみせた。
「それは、ええ、確かにあんまりね」
「……。そんな風にやらかしたんですか、父も、本家の主様も」
聞かされた妻と女は、どちらも遠い目でうんざりした顔をする。
そして女の方は少しだけ考えを巡らせたようで、俺達におずおずと言葉を向けてきた。
「あの、虫のよすぎることだと思うのですが、縛りのご提案をよろしいでしょうか……」
「言ってみなさい」
妻の促しに女は続けた。
「『私は死ぬまでこの部屋から逃げません、貴方方には抵抗しません』
その代わり『今日明日の内に、この部屋で、貴方方夫婦のどちらかが私を殺す』
――虫の良すぎる縛りなのは自覚しています、でも、御一考頂きたいのです……」 - 38二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 23:57:12
このレスは削除されています
- 39二次元好きの匿名さん24/01/17(水) 00:00:32
(※誤字につき削除して再投稿します……)
今日の更新はここまでです 次回は明日19時代に開始します
1.何でオリ主の提案が『虫が良すぎる』のか、一緒に考えて頂けますと嬉しいです
2.夜蛾夫婦が主人公に行いそうな身体的拷問について引き続き御意見募集中です。スレ主の技量的に書けそうなら採用します。 - 40二次元好きの匿名さん24/01/17(水) 07:36:15
虫が良すぎる理由は拷問を短く済ませるためとか?
- 41二次元好きの匿名さん24/01/17(水) 11:39:42
出先から取り急ぎ失礼します
普段SS投下に使っているうちの回線がホスト規制に遭ってしまってるようです
解除されたら書き溜め分を一気に投下しますね。エタらせるつもりはないので御容赦下さい - 42二次元好きの匿名さん24/01/17(水) 21:51:09
ドキドキしてきた
- 43二次元好きの匿名さん24/01/17(水) 22:12:45
さっき俺は、一つの零細術師家系が破滅する瞬間を目撃したのだと思う。
『一級術師の家の、子ども3人を殺した個人』。『一級術師本人に、血筋からくる呪いを掛けようとした家系』。
この二つの罪を比較した時。総監部の重鎮の方々の思考回路としては、前者の方を軽く、後者の方を重く判断する。きっとそうする。
前者の場合、まだ呪力があるのかどうかすら分からない子どもばかりが落命している。後者の場合、貴重な一級術師を下らない見栄で陥れようとしたことになるので、血筋として本気で呪術界の邪魔だ、――という風に。
発動するまでの条件がピンポイントでややこしく難しい呪詛は、ひとたび発動してしまえば、その解呪も酷くややこしく難しいものとなる。
あの障子の部屋でのどなたかの指摘は、確かに正しい。
仮に俺達が何も知らされていなければ、既婚者の俺達は、この女の貞操に一切触れることなく普通に殴り死なせていただろう。
そうすれば厄介な血筋の呪いをモロに受けて、俺達の方が更に悲惨な目に遭っていたはずだ。
あの家系の術師には、隅から隅まで総監部の手入れが入ることだろう。
少なくとも、俺を陥れようとした連中は咎を受ける。家系全体が秘匿死刑というのは流石に大げさに過ぎるが、どう考えたって、今後一族丸ごと呪術界の中では身の置き所が無くなるはずだ。
もう家の体面が汚れたどころではない。どう見ても自業自得な経緯による、家系全体の破滅だった。 - 44二次元好きの匿名さん24/01/17(水) 22:15:06
そして、俺達が厄介な家系の呪いを浴びるという事態は、ほんの紙一重で防がれたのだった。この女の正直な自白によって。
「『素直な自白に免じて温情を掛けてくれ』……とでも言うつもりか? 確かに虫が良いな。今日と明日、たった2日間の拷問で勘弁してくれと」
この女への対処には、もう少し日数を見込んでいた。
秘匿死刑が決まった時、俺達の呪術師としてのスケジュールは、完全にそういう前提で組み直されている。
「あなた、虫が良いのはそれだけじゃないわね」 - 45二次元好きの匿名さん24/01/17(水) 22:16:08
妻は続けた。
「私達って、跋除や呪詛師捕縛のプロではあるけれど、拷問のプロじゃないでしょう? 縛りを結んだら、その手のプロに対処を任せるって手が塞がれる」
「あー、……そうだな」
高専では、プロの拷問系術式を持った術師は居る。
ただその術師は、この部屋ではない、専用の拷問部屋限定という場所の縛りで術の効力を上げているらしかった。
そっちの術師に女を任せるのなら、術師をここに呼ぶのではなく、女の方を動かすしかないのだ。
今、この尋問室は俺達夫婦とこの女以外は出入り禁止となっている。
さっき提案された縛りを受けた場合、本人を殺すまでこの部屋から動かせなくなる、……と考えた方がいいだろう。 - 46二次元好きの匿名さん24/01/17(水) 22:16:42
書き溜めはここまで。以後ペース落ちますので御了承下さい。
- 47二次元好きの匿名さん24/01/17(水) 22:45:41
「……どう思う?」
と、俺に向けた妻の質問。
考える。
総監部の思考回路はそれとして、俺達の思考のかたちはそれぞれ別個に存在する。
俺達は、ああいう風に圧し潰されて死んでいった子らの親として、俺達の望むように決めて良いのだ。
ここは一般社会の法廷ではない。どのようなかたちでこの女に報いるのか、俺達が決めること。
もちろん、最終的にこの女を殺すのは絶対だ。
ただ、どのように殺すかは俺達だけが決めていいことで、俺達だけで決めるべきことでもある。
俺は妻に告げた。
「お前に任せる。……お前が、腹を痛めてあの子らを産んだんだからな」
これが、俺の思考のかたち。
「……。そう」 - 48二次元好きの匿名さん24/01/17(水) 23:13:12
(※!以後、SSには痛々しい描写が入ります!※)
- 49二次元好きの匿名さん24/01/17(水) 23:15:13
妻は、座らされている女に無言で近付いた。
女の右足を乱暴に持ち上げて白足袋を脱がし、その素足を石の床に放る。
――ゴン!!
呪力を込めたブーツのかかと落としが、裸足になった右足の指に、正確に振り落とされた。
当然のように親指の爪が割れる。流れる血に構わず、硬いブーツの底がグリグリと出来立ての生傷を抉る。
「ッあ……」
女は、悲鳴を上げるのをギリギリで堪えたようだった。
息を飲み、あえいだ口元の、その顎を妻は片手で強く掴み上げた。
「縛りは結ばない。ただの約束であれば、……破ってもいい約束という形であれば飲みましょう。
『アナタは抵抗しない』、そして『私達は今日か明日の内にアナタを殺す。ただしアナタの状況を見て日数を伸ばすかもしれない』、……私が掛けられる恩情はそれだけ。
これからどうあっても、これ以上の恩情を掛けはしない。アナタはただ、やったことの報いを受けて耐えるだけの器になりなさい」
「っ、ハイ」
もう片手で首を掴み、続ける。
「追加で約束して! 『泣くな』・『慈悲を請うな』・『謝るな』、この3つ。
……私は拷問のプロじゃないからね、そんなことされると余計にムカつく自分の姿が想像つくの!!」 - 50二次元好きの匿名さん24/01/17(水) 23:20:22
- 514024/01/17(水) 23:39:10
- 52二次元好きの匿名さん24/01/18(木) 00:11:01
主人公は小柄キャラだよね?
夜蛾のモノが物理的に入りそうかで話作れないかな。穴の方を刃物で拡張するか迷うとか - 53二次元好きの匿名さん24/01/18(木) 11:30:59
保守
- 54二次元好きの匿名さん24/01/18(木) 20:54:52
帰宅が遅れました。書きながら随時投下します。
なお、今後、痛々しい描写の注意書きは省略させて頂きます。御承知おきください。 - 55二次元好きの匿名さん24/01/18(木) 21:26:41
――『泣いてはいけない』・『慈悲を求めてはいけない』・『謝ってはいけない』。
絶対的な指示を3つ、頭に全て叩き込んでからわたしはうなづいた。
返答を声に出すことはできない、気管を多少圧迫されているからだ。
暗黙の了解として『命令してはいけない』、『叫んではいけない』くらいの含意はあるだろう。もちろん『逃げてはいけない』も。
少なくとも、奥さんの方は、わたしが泣き叫ぶと火に油を注ぐことになる。
『黙って耐えて死んでいく報いの器たれ』、――自分に言い聞かせてもう一度首を縦に振った。
奥さんの手足が離れる。
「……。ありがとうございます。虫の良すぎることでも、検討して頂けて……、ゲホッ」
どうにか言い切り、なるだけうつむいて咳き込んだ。
右足は親指が完全に潰れている。まだこの程度だというのに、わたしはとんでもなく冷や汗をかいて震えている。
目を閉じる。じっとする。
辛うじて補助監督になれる程度の呪力しかなかった。術式などあるはずなかった。父は3級術師で、その実力に逆らえない程度の弱さしかなかった。
御夫婦と比べてわたしは脆い。
御二人が、やりたいことをやりたいようにやりとげるだけの強さが、果たしてわたしにあるだろうか。 - 56二次元好きの匿名さん24/01/18(木) 21:54:17
「あなた。私が思うに、……総監部で勧められた通り、念のためでも犯(ヤ)ッてしまうのが一番いいと思う。もちろん、あなたのモノが使えることが大前提だけどね」
「……。いいのか?」
「ええ。私は許容する。この状況なら、不貞なんかじゃなくて、必要な拷問というか処置だと思うの。
逆に、血筋の呪いとか、そういうことをちょっとでも気にする余地が残る方が、絶っ対的に馬鹿馬鹿しい」
「そうか。なら、俺とコイツの体格差がネックになるな」
「え?」
「モノが物理的に入らないかもしれんという事だ。コイツ、どう見てもチビだろう?」
「…………。無理しても入りそうにないなら、穴の方を切って大きくするとかどうかしらね。あの箱の中に都合のいい刃物が無いかしら」
下を向いて静かに瞑目して座っていたはずの女が、一瞬ビクリとした。妻の言う処置を無意識に想像してしまったのだろう。 - 57二次元好きの匿名さん24/01/18(木) 22:02:20
- 58二次元好きの匿名さん24/01/19(金) 07:43:33
1 手足の指全部折って切断
2 夜蛾 - 59二次元好きの匿名さん24/01/19(金) 17:36:24
主人公目線
- 60二次元好きの匿名さん24/01/19(金) 18:03:26
あらまあ
次話は夜蛾目線か主人公目線か、次にレスする人の決定でよろしくお願いします - 61二次元好きの匿名さん24/01/19(金) 18:11:21
夜蛾
- 62二次元好きの匿名さん24/01/19(金) 20:41:01
文章のアウトプットにちょっと難渋しております
気合い入れて書いてますので少々お待ちくださいませ。今晩中には形にできるかと - 63二次元好きの匿名さん24/01/20(土) 00:02:20
このレスは削除されています
- 64二次元好きの匿名さん24/01/20(土) 00:23:49
おっと、書き忘れ
・夜蛾夫婦が主人公に行いそうな身体的拷問について引き続き御意見募集中です。スレ主の技量的に書けそうなら採用します。(木箱の中の小道具とか役立てれば嬉しいです) - 65二次元好きの匿名さん24/01/20(土) 10:17:50
良スレ
- 66二次元好きの匿名さん24/01/20(土) 11:02:58
保守
- 67二次元好きの匿名さん24/01/20(土) 16:04:27
火で炙ったメスで傷口を焼く
- 68二次元好きの匿名さん24/01/20(土) 22:11:14
おまたせしました。本日更新分も予告通りTelegraph回です。
描写といいますか、私の筆力が皆様のお気に召すものであれば幸いに存じます。
SS『チビ殺し』2024/01/20投稿分人は、時に『犯される』ことで生命を落とすことがある。犯した側に殺す意図が無かったとしても、だ。例えば、強い衝撃による心臓の発作や、挿れられた際の出血が死因になった場合だ。
一般社会の刑法での『強姦致死』という罪は、そのようなケースが事実として存在することの裏返しでもあるだろう。
さっき総監部で、あの家系の当主からは射精した方がいいと勧められた。
やろうと思えば射(だ)せるとは思う。この姿勢のままおれのモノをしごけば。
『首を絞めれば、女のナカも締まる』、――どこで聞いた知識だったか。どこかの呪詛師の供述だった気がするけども。
俺は、コイツを死にたくなるほど苦しめたいとは思っているが、今殺したいとは思っていない。
一級術師の俺と、この女との力の差は大きい。加減を誤れば死なせてしまう。
犯(や)り方を少しだけ思案した。
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
今一度、女を抱え直してから少しだけ腰を落とした。…telegra.ph次回はR描写の無い回になると思います。現時点で、次回書き出しは回想シーンにするつもりでいます。
1.夜蛾夫婦が主人公に行いそうな身体的拷問について引き続き御意見募集中です。スレ主の技量的に書けそうなら採用します。(木箱の中の小道具とか役立てれば嬉しいです)
2.次回は誰目線がいいでしょうか。明日18時までのレスで多数決とします。
- 69二次元好きの匿名さん24/01/20(土) 23:25:57
主人公目線
- 70二次元好きの匿名さん24/01/21(日) 09:45:14
夜蛾の妻目線
- 71二次元好きの匿名さん24/01/21(日) 13:05:31
夜蛾
- 72二次元好きの匿名さん24/01/21(日) 18:50:04
多数決不成立ですねー
次話は誰の目線で始まるのか、次にレスする人の決定でよろしくお願いします - 73二次元好きの匿名さん24/01/21(日) 20:28:00
誰でもいいなら
夜蛾の子供 - 74二次元好きの匿名さん24/01/21(日) 21:17:22
しょくどうで、いっかのみんなでごはんたべてたときだった。
「あのねぇ、あした、おたんじょうびなの。ぼく、さんさい。おいわいでね、どーぶつえんにパンダみにいくの」
「そう。良かったわねぇ。お誕生日おめでとう」
いちばんしたのおとうとが、とおりすがりのほじょカントクさんにとつぜんはなしかけたものだから、あたしはごはんたべながらからかってあげた。
「よっぽどうれしいのねー。すきなどうぶつみにいくの。
しごとしてるおねえさんに、とつぜんはなしかけちゃダメだよ」
「チビちゃんだからな。しかたねえんだよコイツ」
うえのおとうとが、みんなにそういう。
「えー!? チビじゃないよう?」
「「チビじゃん」」
とうちゃんとかあちゃんが、いっしょにふきだした。とうちゃんが、ちゃわんをもったままいった。
「おまえらみんなチビだよ……! おれたちからみたら、な」
とうちゃんのいいかたはちょっとズルいきがしたんだけど、うまくいいかえせない。たぶんただしいんだろう。
とうちゃんも、かあちゃんも、おとなのひとだし。 - 75二次元好きの匿名さん24/01/21(日) 21:32:32
うちのくるま、うしろはこどもたちのせき。
チャイルドシートにすわって、あばれないのがおやくそく。うたうのはいいけど。
「パーンダパンダ、シロクロパンダ~」
あたしのとなりで、したのおとうとがうたってる。
このこはさいきんパンダがすき。だから、たんじょうびのおいわいはどうぶつえんになった。
「いいよね。スキなどうぶつみにいけるって」
「おねえはなにがすきなんだっけ?」
うえのおのうとがきいてくる。
「トリケラトプス。おおむかしのいきものだから、ドコのどうぶつえんにもいないの」
6さいだもん。いきたきょうりゅうは、ドコをさがしてもいないってことくらい、あたしはしってる。
「ふうん。……ねえかあちゃん、ゴリラはいるよね?」
「どうかしら? どこかの動物園にはいると思うけど、今日行く所にいるのかは知らないわ」
うえのおとうとはガーンってなった。
「えぇえー? いるといいなあ」
「動物園についたら、スタッフの人に聞いてみましょう。『ゴリラいますか』って」
うえのおとうとは、えがおにな――ズドガラガッシャグシャーン!! - 76二次元好きの匿名さん24/01/21(日) 21:40:42
- 77二次元好きの匿名さん24/01/21(日) 21:56:09
――その時。
複数の鉄骨が建築途中のビルから落下して、夜蛾家のワゴン車を直撃した。車の後部をしつこくプレスするように。
子どもたちは後ろでチャイルドシートに座るように躾けられていたから、3人の小さな身体はモロにその過酷な重量の下敷きになった。
運転席の夫、助手席の妻、この2人はいずれもとっさの呪力操作で己の身を守りはした。
ただ、車の前部の席は鉄骨の直撃を免れたから、一般人であっても助かる程度のプレスを受けた程度で済んだのだった。
子ども達は、呪力について何の訓練も手ほどきも受けていない、ただの未就学児だった。
遺体の多くの部分が、正視に堪えない惨状となった。
楽しみながら歌い語り笑っていた、その瞬間の死。
決して起こってはいけないはずの死であった。内通者した補助監督と、呪詛師による、的確な呪殺であった。 - 78二次元好きの匿名さん24/01/21(日) 22:14:22
尋問室で、3人の子を亡くしたばかりの夫婦は語る。
「コイツ、ヤワだなぁ。……しょうもない呪詛師でも、もう少し耐久性があるぞ」
衣服を整えた夫は、石の床に寝かせた女を見下ろして、呆れ顔だ。
「まあ、呪詛師は術式も呪力もあるものね。それより弱いのも納得はするけども」
失神したのだ。女は。尋問の前提として処女を散らされ精を受けた、その時に。
脈はある、息もしている、意識はない。ならば『目が覚めるのを待つ』、というのがこの夫婦の判断だった。
待っている間、部屋の外でちょっとした動きがあったようだった。
総監部の使いが、夜蛾夫婦に報告書を持ってきたのだ。
報告書の内容は、この女の父親の陳述記録。現在進行形で総監部にて詰められて白状している内容の、記録である。
「ん、うぅん……」
女がうめき声をあげて、妻が近づく。
この女の意識がはっきりしたら、最低な父親の陳述内容を、女に洗いざらいぶちまける事を決めていた。
夜蛾夫婦の間では意見が完全に一致した、決定だった。 - 79二次元好きの匿名さん24/01/21(日) 22:16:17
今日の更新はここまでです。
1.夜蛾夫婦が主人公に行いそうな身体的拷問について、意見募集は今回で〆とさせて頂きます。スレ主の技量的に書けそうなら採用します。(木箱の中の小道具とか役立てれば嬉しいです)
2.最低な父親の陳述内容について、どんな陳述だったのかを考えて頂けると嬉しいです。 - 80二次元好きの匿名さん24/01/21(日) 22:38:14
他所でも書きましたが、当作品はどんなに続けても今月27日までに物語を〆ようと考えているところです。
読者の皆様も御承知おき頂けますと有り難く存じます。 - 81二次元好きの匿名さん24/01/22(月) 08:51:37
保守
陳述内容はわからないけどろくなことじゃなさそう - 82二次元好きの匿名さん24/01/22(月) 13:53:08
このレスは削除されています
- 83二次元好きの匿名さん24/01/22(月) 21:04:28
保守
- 84二次元好きの匿名さん24/01/22(月) 21:47:15
女の両目が、眼鏡の下でゆっくりと開かれる。俺の妻は膝を付き、女の前髪を片手で鷲掴みにして引っ張りながら凄んだ。
「やーっと起きたのね。おっそいお目覚めで・す・こ・と!!」
「……ッ!」
眠気は完全に吹っ飛んだことだろう。
女は目の前の妻を見て、そばで立っている俺を見て、ついでにこの部屋と自らの姿を見て、……やっと状況を理解したように口を開いた。
「あの、わたし、どのくらい眠っていたのでしょうか……?」
「もーうすぐ5時間ってところね。寝てるんだか気を失ってるんだか、よく分からない時間だったわ。
医務室連れてくのも面倒くさいし、ドクター呼ぶのも馬っ鹿馬鹿しいし。……読み物増えたから退屈はしなかったけど」
――ちなみに反転術式使いなんて贅沢な術師は、最初から視野の外だった。何せ、今の高専に反転術式使いは不在であるから。
昔はいたらしい。入学予定者にそういう女子がいるという噂話もあるものの、現時点では高専所属の反転術式使いはゼロ。……まあ、これは完全な余談だ。
「すい「謝らない!!」――、はい」
『すいません』と言いたかったらしい言葉を妻が制した。女は小さくうなづいた。
「ところで」
妻は言葉を続ける。女の髪を掴んでいない方の妻の手、女にとっては未知のはずの紙束があった。
「アナタが寝てる間、……アナタの一族の陳述記録の速報がね、次から次から、逐一、私達のところに報告書として届けられてきたの。
アナタの縁談の経緯も、父親の口から綺麗に白状されてた。私達夫婦がドン引きする内容だったわ」 - 85二次元好きの匿名さん24/01/22(月) 21:59:56
読んでるぞ
読んでる
お気に入り保存したぞな - 86二次元好きの匿名さん24/01/22(月) 22:21:13
――そもそもあの子を養うのが苦痛でした。良い父親を演じることも苦悩の種でした。
総監部、娘が尋問されている場所とはまた別の尋問室で、縛られながら男は語った。自白系術式をふんだんに浴びながら。
――呪力はカス、術式は無い、呪術界に貢献しないどころか普通の社会に出る気満々の娘を、どうして笑顔で育てなければいけないのかという鬱屈を、ずっと腹の中で抱えていました。
――あの子が中学に上がった頃でした。
――前の奥さんを折檻死させた直後の、あの術師の方が、私にお声を掛けて来られました。
――私の娘を、あのチビを、嫁に望まれたのです。
――いいえ、望まれたのはその時すぐの婚姻ではありませんでした。
――まず、『高校・大学と育てた後、無理やり進路を曲げさせて呪術界への就職を強要すること』
――そして、『補助監督として1年ほど働かせてから、仕事上のミスを仕込んだ末にそれを論(あげつら)い、ミスに対する呪術界への誠意を示すという形で、あの方への婚姻を強要すること』
――それが、あの娘を嫁に望んだあの方のシナリオだったのです。
――心の折れたあの娘を散々汚してから折檻死させる情景を、ずっと夢見ていたのだと、その方は仰ってました。
――計画は途中で変更になりました。娘が退職を望みつづけたために、父の私が渋々縁談を取りまとめたという流れを演じることになりました。 - 87二次元好きの匿名さん24/01/22(月) 22:45:46
「……そんな、経緯だったんですね」
提示された実父の陳述記録を読む、女の手は震えていた。読み込んで、考え込んで、目を閉じて、長く息を吐いて。
「ありがとうございました。こんな自白を教えて頂きまして……」
陳述記録の紙束を妻に返し、女は深々と礼をする。
「これを読んで、アナタはどう思った?」
妻の質問に、女はしばらく考え込んだ。
「歪んでいたんだと思いました。家系も、私の父も、もちろん私も。……」
そこで言い淀んで、妻が視線で続きを求める。女はおずおずと続けた。
「要らないプライドをふりかざして、陰謀で嵌めて、見下していた対象を殺したり呪ったり、……私を含めて終わるべくして終わる家系だと、思いました」
「それは完全に同感。貴方は?」
――お、妻が俺に振ってきた。
「そうだな。おれもそう思う」
「……それでね、私はこうも思うの」
妻はまた女の前髪を掴み、告げる。言葉を刃のように鋭くして。
「アナタ、何で自殺してくれなかったの? って。うちの、あの3人のチビちゃん達を巻き込まずに、ひとり勝手に死んでくれればよかったのに、って」 - 88二次元好きの匿名さん24/01/22(月) 23:02:08
「…………」
答えられない問いをぶつけられたが故の沈黙。
妻はそんな女の目の前で、女の前髪を掴んだまま責め立てた。
「アナタにとっては望外の結果でしょうね? 恨み呪い抜いた家が勝手に自滅してくれたのですもの。
でもね、あの子達を殺めた大罪は罰は私達が下す! 家の環境に同情はしても、アナタが行ったあの殺人を私達は絶対に許さない!! 魂に刻み込んでいて!!」
「……ハイ!」
「――さて」
俺は、2人に向き合った。
「殺す前にネックになっていた処女は散らした。これからはひたすらに拷問の時間だ」
俺も、妻のように腰を下ろして、女を見る。真っ直ぐに眼を見つめて静かに凄んだ。
「覚悟はできてるんだろうな?」
女は、死装束姿のの女は、その場で土下座した。
「どんな扱いも文句なく受け入れます。受け入れるのが当然と考えています。どうか……」
言い淀み、それでも言葉は続く。
「どうか、わたしの身体が、貴方様方がやりたいことをやりきる程度の強さがありますように。……それだけが、情けないわたしの懸念です」 - 89二次元好きの匿名さん24/01/22(月) 23:08:27
- 90二次元好きの匿名さん24/01/23(火) 10:58:45
保守
- 91二次元好きの匿名さん24/01/23(火) 17:31:36
1 夜蛾
- 92二次元好きの匿名さん24/01/23(火) 18:45:11
- 93二次元好きの匿名さん24/01/23(火) 18:54:56
あと、追加で真面目なお知らせです。
これまでの更新と比べて強めの残酷な描写が、今回更新分から増えることになります。
あにまん掲示板の利用規約で『残酷な行為についての詳細な描写』が禁止行為となっている関係上、性的描写についての扱いと同様、このような描写を含むR18G回ではTelegraphでの更新を行わせて頂きます。
何卒御了承下さいませ。 - 94二次元好きの匿名さん24/01/23(火) 21:35:18
なるほど、その懸念は懸念として有りうるものだった。
コイツはあまりに脆弱で、加減に慣れない俺達が力加減を誤った時、この女は即死する。
妻は腕を組み、死装束姿の土下座を見下ろしながら静かに息を吐いた。
妻の方で言いたいことは、――無いらしい。
俺の方は、……相手の意識が落ちる前に言っておくべき事に思い至ったから、だから、言うことにした。伏せていた相手の顎を強制的に持ち上げて。
「なぁ、お前は、うちの子達が死んだあの現場、実際に見たか?」
「……。いえ」
「なら、知らないだろうな」
続く言葉は、俺の心の中から泉のように湧いた。
「原形の想像が付かないほど潰れた車も、あの時降って来た鉄骨の重量感も、……3人分の血とか肉とか脂(あぶら)とか、おまけに電子部品やらガソリンやら消火剤やら、色んな物がへばり付いたり混ぜこぜになってしまったりした、あの現場の臭いも、感触も、全て」
「……」
「見てないなりに想像はしておけ。俺達は拷問のプロじゃない、お前に与えたい苦しみの何分の一だって再現できないかもしれん。
想像して、想像して、……そして、弱いなりにでもいい、俺達の仕打ちを吞み込んでみろよ。それが、……お前が納得づくでしでかしたことの報いだろうさ」
「……。はい」
――始めよう。不慣れでも俺達が俺達の手で始末するべきケジメを。 - 95二次元好きの匿名さん24/01/23(火) 23:22:38
おまたせしました。アウトプットに難渋しておりました。
残酷描写に付きTelegraphです。
SS『チビ殺し』2024/01/23投稿分手際は、ある程度は妻と打ち合わせていた。拷問を受ける相手が長時間失神していたから、打ち合わせに充(あ)てる時間は十分にあった。石の床の上、女を仰向けに寝かせる。妻は女の太腿の上に跨(またが)るように座り、女の下半身の動きを抑えつける。
手のひらを広げさせて、それぞれの指の根元に、きつくきつく包帯を巻く。出来る限り血管を圧迫するように。妻の方も、足の指に同様の処置を行っている。
女は、気付いていただろうか。部屋の四隅のロウソクの灯の上、総監部支給品の数々が消毒のために炙られて熱されていたことに。
まずは先の長いペンチ。女の爪を根元から剥がすのに使う。
緊張から汗の湿った左手の手のひらを鷲掴みにして、爪先にあてがい、呪力を流しつつ力まかせに一気に捻る!
指から剥がすごとに意図せず震え、跳ね、動こうとする左手を俺は抑えつける。呪力を込めるのは当然忘れない。これで非力な女は抗う術を持たない。
5本全部剥がし終えたところで、圧迫止血していても当然ながらなお先端に血の滲む左手に、塩をたっぷり入れ込んだ厚地のミトンを被せる。脱げないようにミトンの根元も縛る。
「!! ヒッ! ウゥ、ツッ……」
傷口に塩を塗り…telegra.ph本日の更新はここまでです。明日の更新は、もう少し早い時間帯になると思います。
・主人公、夜蛾、夜蛾の妻が言いそうなセリフを募集します。作者の技量的に入れ込めそうなら採用します、
- 96二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 08:50:23
保守
- 97二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 19:43:51
保守
- 98二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 21:34:25
すいません、作者が風邪気味につき、本日の更新はありません。
用心のため今晩は早寝しようと思います。
復調すれば、明日は午前中に投下できるかもしれません。
リアルの生活の都合上、27日までに物語を終わらせるというラインが動かせません
今後、無理矢理描写を端折ったり、駆け足になったりするかもしれません。御理解頂けますと幸いです - 99二次元好きの匿名さん24/01/25(木) 07:00:50
保守
- 100二次元好きの匿名さん24/01/25(木) 13:42:24
すいません。ちょっとガチ目に体調を崩しました。
復調次第この作品は巻きで進めることになると思います。何卒ご承知おきください。 - 101二次元好きの匿名さん24/01/25(木) 21:13:54
保守
- 102二次元好きの匿名さん24/01/26(金) 08:02:16
保守
- 103二次元好きの匿名さん24/01/26(金) 17:14:33
どうにか復調しました。お騒がせしました。
今晩~明日にかけて巻きで更新する予定です。 - 104二次元好きの匿名さん24/01/26(金) 20:41:38
今更ながら>>95を振り返ってみて、急に登場した『ミトン』が何なのか分からない読者の方がおられるんじゃないかと不安になってきました
鍋掴み用の厚手の手袋のことです。念のため
- 105二次元好きの匿名さん24/01/26(金) 21:13:27
『謝るな』という指示。完璧にわたしが守り続けられたのかはかなり怪しいところだ。一度言いそうになったから。
『泣くな』という指示が守り抜けているのかも、相当に怪しい。たぶん、私の顔はとんでもなくグショグショになってるに違いないなら。……言うまでもなく、汗とか色々で!!
「……ヒュッ!! ア"ッ、……グュッ!!」
猿ぐつわの効能はてきめんに過ぎる。
――噛ませてなければ、みっともない声があふれ出ていたろう、奥さんの方がキレるタイプの。
無意識に手足をバタつかせてしまうほど、四肢の先端の痛みは、鋭くわたしの精神に染みる。
厚手の手袋と靴下の中には何か塗り込められているのか、いや、何も塗ってなかったとしてもわたしには判別はつかないのだけども。
御二人がわたしから離れた。わたしの手足の作業が一段落ついたらしい。
当然ながら、お二人のどちらも、傷付いたわたしに動揺するようなそぶりを見せるはずがない。
むしろ、……わたしに冷たく呆れておられるのか、この顔は。
仰向けに倒れるわたしを見下ろして、奥さんはそっけなく口を開かれた。
この部屋の、呪符だらけの壁の一面を顎でしゃくって。
「あの壁に両手をついて立ちなさい。……いま自力で歩けないなら、ハイハイしてでも壁に向かいなさい」 - 106二次元好きの匿名さん24/01/26(金) 23:15:25
- 107二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 10:26:33
保守
- 108二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 14:49:15
高専の食堂にて。
昼食を食べ終わって退出しようとテーブルの間を歩いているとき、たまたま真横のテーブルに居た子が、わたしに前触れなく話しかけてきた。
「あのねぇ、あした、おたんじょうびなの。ぼく、さんさい。おいわいでね、どーぶつえんにパンダみにいくの」
夜蛾家の末の子だ。一家全員でご飯を食べているところらしい。
親御さん二人はちょっと恐縮するように軽く会釈してくる。わたしは親御さんたちには目礼して、その子には笑顔で言ってあげた。
「そう。良かったわねぇ。お誕生日おめでとう」
その場を離れながらわたしは思う。
呪術高専という場ではちょっと不用心な気がするけれど、でも、仕方がないことだろう。
ようやく3歳になるくらいの子どもに、『個人情報を話していい相手』と『話すべきでない相手』の分別を求めるのは無理がある。
危ない呪詛師に外出の情報が漏れたりしたら、――例えば、動物園に向かう車に攻撃が向けられたりして……!! - 109二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 14:52:53
そして、わたしは閃いた。
――ちょっと待って?
――わたし、呪詛師のようにあの子ども達を呪殺できたりするのではないか?
――そうだ、今、マーキングを使って非術師を殺したらしい呪詛師の情報が高専に届いているのではなかったか!?
――まだ未対処の呪詛師だけどアジトの情報は掴めている、誰かに対処されるまえにわたしが接触したら、ひょっとしたら、たぶん、きっと。
――わたしは当然に破滅するけれど、でも。
気付かなければよかったかもしれない。いや、気付いてよかったかもしれない。
自分の性格の悪さに自嘲しながら、わたしは何気ない風に食堂を去った。
弱い人間はずうっと弱いままで、やりたいことなんて思うように選べない。
『自分がどう破滅するか』、このたった一点だけでも選びうる機会が飛び込んできたのだから、それだけでもわたしは幸運だったのだ。おそらく。 - 110二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 14:58:57
続きは今日夕方~夜に一気に投下し、SSを終わらせるつもりです。
- 111二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 23:17:22
書き上がりました。
すいません、時間が足りず、R18Gシーンはここまで書いたところでタイムアップです。
リクエストに答える部分を端折る形となり、大変申し訳ありません。
SS『チビ殺し』2024/01/27投稿分バチン! バチン! バチンバチンバチンバチン!!いっそリズミカルなほど女の頬に往復ビンタを喰らわせながら、俺は自分の逸物が滾(たぎ)り始めるのを自覚した。
呪力を帯びていない軽いつもりのビンタも、やはりそこそこダメージになるらしい。
即死させたくないなら力の加減をするしかないのだが、それはそれで気遣っているように感じてしまい、俺の小さな苛立ちは消せない。
叩かれている間も、相変わらず女は両脚を動かしていた、俺の脚に纏わりつかせようとしてくる。俺は、その動きをいなしつつ、自分のズボンと下着をずり下げた。
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
女の腕を抑え、右肩に噛みつく。血がにじんだ頃合いで口を離して、左肩も同様に。
女の脚は動きを止めないものだから、靴下の先端部分、血の滲(にじ)んだ辺りを蹴っ飛ばしておく。
女の裸の身体が、露骨に大きくビクッと震えた。これで俺の意図が通じたろうか。
女の方から俺に抱き着…telegra.ph以下、SS自体はレス型式で続きます。
- 112二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 23:18:11
――バチーン!!
「……!!」
「おい、起きろ。意識落とすの何度目だお前は」
頬を引っぱたかれて、わたしは意識を取り戻した。
露骨に見下した眼差しの夜蛾御夫妻が、わたしを見下ろしている。
「……そろそろ頃合いかしら」
「そうだな」
その会話の意味はじわじわとわたしの脳に染みてきて、……鈍(のろ)くなった思考回路でも、その意味は何とか理解できた。
猿ぐつわが外される。わたしは白装束に包まれて、赤子のように持ち上げられた。
持ち上げられたわたしの身体に、もう手足は無い。かつて四肢が生えていた辺りには、ただ止血のために焼き潰された傷跡だけがある。
床に下ろされ、呪符だらけの壁に背中を押し付けられる。旦那さんの方が膝を付き、わたしを見下して告げる。
「これで終わりだ。何か言い残すことはあるか」 - 113二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 23:18:53
補助監督になったばかりの頃の、鮮明な記憶。
無理強いられた就職でも、一応給料をもらっている以上は真面目に働こう、なんて考える程度には、わたしも初々しかった、と、思う。
先輩に連れられて案内された高専の食堂に、その一家はいた。
テーブルの中の一角、ごく自然にご飯を食べている大人2人と子ども3人の一団。
「……。ご家族連れなのですか? あの方々」
「うん、そうだね。夜蛾一級術師のご家族。この高専に一家で住み込んでるよ」
「幸せそうに所帯持たれてる術師の方々、この業界におられたんですね。
『独り身か家族関係拗らせてる方々ばっかりだ』って聞いてましたから」
先輩は吹き出した。
わたしの言ってることがあながち間違いじゃないという実感、その先輩にはあったはずだ。 - 114二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 23:19:32
その御家族とは、食堂ですれ違った時に会釈するくらいの関係になって。
そして、御家族を見れば見るほどに、その人達はわたしの中で仄かな憧れになっていった。
わたしには届かない幸せな家族の情景。対等な夫婦。なんてことのない日々の積み重ね。
――羨ましく、輝かしく、呪わしく、どれだけ手を伸ばしても届かない、家族のかたち。
だから、あのチビちゃんとの会話で悪行を閃いたその時に。
あの御家族にこそ、絶対に消せない傷跡を遺したいと感じた。
夫婦のどちらにも、忘れたくとも忘れられないトラウマを遺したいと感じた。
このまま父の意思に従えば、わたしはなんてことのない弱くチビな女で終わってしまう。
憧れの人達を汚しながらの破綻を、家と子どもを巻き込みながらのどうしようもなく醜い終焉を、わたしは願った。
この思考は、この憧れは、この敬意は、だれにも明かせないわたしの秘密だ。
詳(つまび)らかにしてしまえば、きっとこの夫婦は逆にトラウマを克服しようとしてしまう。
秘密は秘密のままでわたしは逝く。――それで、良いのだ。 - 115二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 23:20:16
「――。いえ、恩情に、かんしゃ、いたします。このていどで、すませて、いただいたんですから……」
この御二人の眼を見て遺す言葉は、これで良い。きっと、これで良い。
口を閉じて目を逸らすようにうつむくわたしの、首元と頭。呪力を帯びた、一級術師らしいたくましい手が伸びてくる。
無理に首をねじ切ろうとする力に、わたしが抵抗なんてするはずなくて―― - 116二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 23:21:20
14年後 都内 某所
その時の夜蛾正道は、一級術師で、独り身で、呪術高専東京校の学長だった。
ついでに『上層部の決定で無期限拘束されかかったものの、五条悟のおかげで生を得る』という経験を過去に得ていた。
五条悟にある種守られながら生きていたようなものだったから、『五条悟が居なくなればドサクサで生命を狙われる』という流れも、必然のものだった。
夜蛾の死刑執行人になった楽厳寺嘉伸は、京都校の方の学長だった。
保守派の重鎮で、業界の経験が長い老爺で、そうでなくとも自校の学生を守るために死刑執行人に手を挙げるような性格の呪術師で、
……そして、今、都内の路上に死に瀕する夜蛾の遺言を、たった一人で聴いていた。
――肉体の情報から魂の情報を複製するんです
――その情報を呪骸の核に入力する
――それだけでは駄目なんです
――相性の良い三つの魂を宿した核を一つの呪骸に…
――お互いの魂を常に観測させるんですよ - 117二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 23:22:41
俺のおぼろげな視野や聴覚からでも、楽厳寺学長が息を吞むのが分かった。
『肉体の情報』が誰の肉体であるのか、『三つの魂』が誰の魂であるのか、楽厳寺学長にも心当たりはあるはずだ。
業界歴が長い者は皆知っている。あの事件にまつわる、おおよその事を。
あの女の補助監督の裏切りのこと、俺の子ども達の死、俺達の手による『処刑』、ついでに派生した一族の醜態と破綻。
……それらの情報の要旨は、当時の補助監督達の間で晒し上げられるように文書回覧されたのだから。
そう、あの子は、パンダは、俺の呪いの産物だ。
あれから妻とも離別して独り身になった俺が、あの3人の子らから生み出した呪い。
――俺は、語りたいだけの『言葉』と『呪い』を目の前の学長に遺して、意識を手放した。
どこかで、俺に駆け寄って慟哭する『息子』の声が、残響のように微かに聴こえた気がする。 - 118二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 23:23:19
14年前、食堂でなんてことのない会話を交わしていたあの一家は、もう高専のどこにもいない。
――チビ殺し 了 - 119二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 00:27:45
もう日付が変わりましたので本日28日の夕方頃までには、このSSの後書きを掲載します。よろしくお願いします。
- 120二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 10:43:46
保守
- 121二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 18:24:05
おまたせしました。あとがきです。
SS『チビ殺し』 あとがき1.はじめにリクエストを出して下さった読者の皆様方の要望に完全に応えきれなかったこと、重ねてお詫び申し上げます。最終盤での体調不良がかなりの痛手になりました。
リアルの都合上どうしても完結日が動かせず、このような形となりました。
本当に申し訳ありませんでした。
2.今後の予定について
スレで最初に書いた通り、このSSは後日(1月のうちに)ハーメルンにて転載予定です。この際、ハーメルンで普段掲載している形式に沿って改稿を行うつもりです。転載先のURLは、このページ又はスレのどちらかにてお知らせします。
なお、今後執筆するであろう、他の書き手の方のキャラが絡むクロス作品は、あにまん掲示板のスレ内限りの扱いとするつもりです。
作者の感覚としては、普段のメインの投稿先がハーメルンで、今回、あにまん掲示板に足を延ばしてみたようなイメージでおります。
あにまん掲示板で自分が立てたスレの管理には責任を持ちますが、近い将来、クロス作品の執筆が完了し、立てたスレも全て過去スレとなった時には、ハーメルンに軸足を戻すつもりです。御理解下さい。
3.執筆時に考えたこと
・作者の性癖そのままに突っ走ろうとすると、…telegra.phR描写・G描写はありませんが、単純に長くなったためTelegraphにてまとめさせて頂きました。
蛇足のような拙文ですが、お楽しみ頂けましたら幸いに存じます。
- 122二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 20:33:38
あとがきに記載した以外のことでも、分からないこと等がありましたらお答えします
御気軽にお尋ねくださいませ - 123二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 22:34:33
ハーメルン掲載URLが確定したため、あとがきに追記しました。明日22:00より物語冒頭部分が閲覧可能となります。
以下、1月中に連載を全て終わらせるように順次掲載予定です。 - 124二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 08:36:43
クロス作品の投下場所としてこのスレを使うつもりですので、まだスレは保守させてくださいね
- 125二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 19:01:38
保守
- 126二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 22:02:32
- 127二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 22:46:26
URL貼り付けありがとうございます。今後は当該ページで8時間毎に話が更新される予定です。
- 128二次元好きの匿名さん24/01/30(火) 08:58:15
保守
- 129二次元好きの匿名さん24/01/30(火) 19:58:48
保守
- 130二次元好きの匿名さん24/01/31(水) 06:22:18
保守