【ssスレ】チリ婦人とドッペル婦人 2.5スレ目

  • 1二次元好きの匿名さん24/04/04(木) 13:52:50

    前スレ(2)が消えとる!という訳で、はばかりながら立てなおしました。


    ↓前々スレにもある通り、この世界は登場人物たちの性格や立ちふるまいが反転した本編後の世界です。(アオハルは除く)

    【※性格改変注意】チリ婦人、ヤブからアーボック【ssスレ】|あにまん掲示板https://bbs.animanch.com/board/3001788/こちらの概念からインスピレーションをお借りして、他スレでssを書いていた者です。ssスレとして立て直しました。↓私のスレh…bbs.animanch.com

    それに伴い、本編の流れも細かい差異が生まれています。(大筋や結末などは同じ)


    ↓世界観を知っていただくパイロット版的な……

    チリ婦人、ヤブからアーボック | Writening「へえ、なかなかやるじゃねえか」 「ネモこそ。ただの口が悪い引きこもりじゃなかったんだね」 「言うねえ。負けてから吠えづらかくんじゃねえぞ」 アカデミーの広場。即席のバトルコートでにらみ合うネモとアオ…writening.net

    チリ→精神年齢が9歳児のアホ。


    ポピー→しっかり者で口うるさい保護者。時々黒さを見せる


    アオキ→人情に厚い熱血漢。仕事とチャンプル住人とのふれあいが生きがい。業務をサボったら承知しませんよ!


    ハッサク→クールで痛烈な皮肉屋だが、いざと言う時には優しさをチラ見せするタイプ


    オモダカ→感情に素直なよわよわ乙女。精神年齢が近いチリが大好き。


    革命戦士カキツバタ(に振り回されるネリネ) | Writening「おぅ、ネリネじゃねぇかぁ!」 昼休みまえの廊下。後ろから声をかけられたネリネは、食堂に向かう歩みを止めて、直立不動でカキツバタに向き直った。 「お疲れ様です、先輩!」 「そんな、堅くならなくていい…writening.net

    カキツバタ→長○力。


    ネリネ→活発でひたむきなアホの子


    アカマツ→ドライ。料理は上手いが、フライパン握るなら本を読む。


    タロ→なれなれしいギャル。


    スグリ→紫髪がデフォ。ガラや口は悪いが、根は素直で物分かりがいい。休学中の気弱な姉がいる。

  • 2二次元好きの匿名さん24/04/04(木) 13:54:44

    書き上がった所までライトニングでまとめ→part6後半以降は、余暇を見て直投下のち、キリのいいところでまとめる方針です。

    ↓イメージ画像

  • 3二次元好きの匿名さん24/04/04(木) 13:59:22
  • 4二次元好きの匿名さん24/04/04(木) 14:09:29

    >>3

    ご協力ありがとうごさいます……!

    ただ、既存の部分にも細かな改筆をしているので、新たにこちらで書かせていただきますネ……


    お気遣い感謝です!

  • 5二次元好きの匿名さん24/04/04(木) 14:13:31
  • 6二次元好きの匿名さん24/04/04(木) 14:15:51

    このレスは削除されています

  • 7二次元好きの匿名さん24/04/04(木) 14:16:31

    このレスは削除されています

  • 8二次元好きの匿名さん24/04/04(木) 14:21:42
  • 9二次元好きの匿名さん24/04/04(木) 14:26:08

    ↓part6 後編
    さて。肝心のコルサとAチリの勝負だが、結果はAチリの辛勝であった。
    パシャリ!
    「次のジムからは、こうは行きませんからね……」
    しかし、仮にも(違う時空でだが)四天王を務めるAチリに善戦したはずのコルサだったが、バトルコートで彼女との記念撮影に応じながらも、両手で顔を覆って泣いている。
    「ああ、いやその……あそこまでとは小生も……」
    「いや、コルサさんホンマ強かったですって。ウソッキーが……その……倒れてくれへんかったら、チリちゃん負けとりましたもん……」
    撮影係のBチリからスマホを受け取ったAチリも、それを見つめている、いつもの毒舌を忘れたハッサクも気まずそうだ。
    じめんの使い手であるAチリが、くさタイプに勝った。とはいえ。勝因となったのは、彼女の戦略もさる事ながら、Bコルサの抱える大きな弱点であった。
    彼ら……コルサと草ウソッキーの致命的な弱点は、ほのお、ひこうタイプやどく、こおり技などではなく、主の行きすぎた放任主義の結果、主従が逆転してしまっている事だった。
    『ほ、ほら!ウソッキー!くさむすびだ!終わったらチュロスあげるから!』
    『ケッ』
    Aチリのために考案された、互いの切り札1体のみによる一本勝負。度重なる主の指示にも、座り込んだウソッキーは微動だにしない。
    ウソッキーにこれほどふてくされた顔ができるのか……顔を引きつらせるAチリと外野の一行。Aチリの目の前に鎮座するドオーも、退屈からかウトウトし始めた。
    『け、来えへんならコッチから行くでー』
    『あー!ほら、ウソッキー!来るって!あーあ、負けちゃうかもなあ。どうしようかなあ!』
    気の毒がるように苦笑いを浮かべた相手から、ドオーを起こしがてら掛けられた発破に、わざとらしく驚いたコルサ。
    『ファーア……』
    主の懇願に、あくびをしたウソッキーの腰がようやく上がった。
    『チッ』
    舌打ちと同時に、残像と化したウソッキーが、素早い一撃をドオーにお見舞いした。
    『くっ……!けっこう重たいの喰らってもうたな……!』
    これは心からの呟き。今は互いにテラスタルしている。効果はばつぐんだ。

  • 10二次元好きの匿名さん24/04/04(木) 14:32:18

    相手を少しだけ見くびっていたAチリは、すぐに認識を改めた。くさむすびは相手が重いほど威力があがる。
    『3発……耐えて4発……!マジで行かな持たへんな……!』
    独りごちたチリは、相対した者をたじろがせる、リーグでの険しい顔つきになった。
    『しゃあなし!イチかバチかや!ドオー!アクアブレイク!』
    Aチリは20パーセントの可能性に賭けることにした。水をまとってぶつかるドオーの身体。効果はいまひとつだ。ウソッキーはビクともしていない。が、防御が下がった。
    「狙いどおりや……!」
    シャツとお揃いの黒い右手が、ガッツポーズに握りしめられる。
    『なるほど!しまった!油断した!』
    『勝負は、最後まで分からんもんですよ』
    頭を抱えるコルサに、ニヤリと笑いかけたAチリ。
    『負けるなウソッキー!もう一度くさむす……』
    指示を叫びきらずに、コルサの目が点になった。そして、Aチリも同じく。
    『アー……』
    たった今まで痛がる素振りも見せなかったウソッキーが、突然バレリーナよろしくクルクルと回転しだした。そして。
    『ヤーラーレーター。グヘエ』
    アクアジェットが炸裂した部位をわざとらしく抑えつつ、ウソッキーはバタリと大の字に倒れた。
    『チュロス』
    『なっ、ウソだろう!?ピンピンしていたじゃないか、今!?』
    目を閉じたままのウソッキーを抱きかかえ、ユサユサと揺さぶるコルサ。
    『ド、ド?』
    鈍感なはずのドオーも、おや?と小首を傾げている。
    『……コルサさん。この子、絶対ふて寝ですわ……』
    コルサに歩み寄り、ウソッキーを見下ろしたAチリが、おずおずと漏らした。
    『な、にいい!?』
    また始まったか……と漏らした見物客が、1人、また1人と去っていく。
    『み、みなさん待ってください!決着はまだですよ!?』
    『……あー……』
    自分たち一行のみとなったバトルコートをキョロキョロと見回し、両目を横線にしたAチリが、半泣きでしゃがみこむコルサへと気まずげに問うた。
    『チ、チリちゃんら……どないすれば?』
    グスリと鼻を鳴らしたコルサ。無言のまま立ち上がり、Aチリの手にバッジを握らせた彼は、そのまま乙女のように顔を抑えた。

  • 11二次元好きの匿名さん24/04/04(木) 14:36:31

    「ナハハ。戻ったでー」
    しょぼくれたコルサが加わり、再びBチリの愛車に戻った一行。一足さきに戻っていたリップとキハダが、ポケモンセンターの前でハグしあっていた。
    「そ、そうか。次はセルクルタウンだったな」
    Aチリの声にハグを解き、目尻を拭いながら、鼻が詰まった声で平静を装ったキハダ。迷路の小屋での決意をリップから伝えられたようだった。
    「カエデさんは、どないな人ですか?」
    「ま、まあ……取っ付きやすい人ではありません。ジムチャレンジの1番目にコルサさんが推されているくらいには……」
    「さ、さいですか……」
    Bの世界の住人は、Aの世界と中身が真逆。忘れかけていた法則に嫌な予感がするAチリは、眉間にシワを寄せた。
    「その、害がある人ではありませんのよ。悪いのは口だけで、ガツンと言い返せば黙りますし……」
    「……あの女にぶつける毒、すでに思いついておりますよ」
    ミニクーパーの左側にモトトカゲを寄せてほくそ笑むハッサク。その後ろについたポピー。
    「自分も、ドッペル婦人との勝負が楽しみです!」
    闊達に微笑み、ミニの右側でモトトカゲにまたがったアオキ。その後ろにはAチリが座る。
    「キハダちゃん、ライドポケモン持ってる?」
    「ああ。むろん」
    「リップ、乗ってみたい!」
    「なっ、いいのか?ポケモンに触れるのは苦手なはずでは……」
    「うふっ。リップも、ドッペルちゃんみたいに風を切りたくなっちゃった」
    「……わかった。しっかり捕まっておけ」
    淡い笑顔とともに出されたモトトカゲに2ケツしたキハダとリップ。アオキ達とハッサク達に挟まれ、ミニの後ろに待機した。
    「カエデさんの強さは本物ですから、お気をつけて!」
    そう言うなり、コルサも己のモトトカゲにまたがった。ミニの両側に2匹。後ろに並ぶ2匹。ハッサクが漏らしたように、ますます誰かの護衛のようだ。
    後ろ半分を取り囲まれたミニの中には、運転手のBチリと助手席のオモダカ。そして、スペースに余裕ができた後部座席にレホール。史料や本をかたわらに重ねた彼女は、手に取ったそれらと真摯な面もちでにらめっこしている。

  • 12二次元好きの匿名さん24/04/04(木) 14:42:16

    「( >д<) レッツ……カーッ!ケホッケホッ!」

    窓の外に向けて咳きこんだBチリの口から、ワラの破片が吹き出した。

    「リップさんに取ってもらった破片、まだ残っていましたか!ああ、よしよし」

    あの交通事故未遂から髪を整えたオモダカ。彼女に背中をひとしきり叩かれ、やっと落ち着いたBチリの眼差しが、フロントガラスを鋭く見抜いた。

    「(`・ω・´) ……レッツゴー!」

    ボウルに来た時と同じ配置に、新たなメンバーを加えた一行は、次なるジムがあるセルクルタウンへと向かった。

  • 13二次元好きの匿名さん24/04/04(木) 14:45:02

    セルクルタウン。
    「オーッホッホッホ!!このわたしに、チャレンジ?10年早くてよドッペル婦人!この街から出る者の運命は、ふたつに1つ!わたしの美しさに魅了されて抜け殻になるか、傲慢の鼻をへし折られるか……」
    手の甲を口元に当てて長々と口上を述べるカエデを、ハッサクが止めた。
    「やかましい。こちらは時間が惜しい。相変わらず性悪ですね。アナタなど、どこのポニータの骨とも知れない異性に引っかかって結婚詐欺にでもお遭いなさい。」
    「……うぅ……なによ。からかっただけじゃないのよお……」
    よわよわしく嘆き、涙ぐんでうなだれるカエデ。
    出会って10秒で振る舞いをコロコロ変える彼女に、Aチリは苦笑いするしかなかった。
    ……ジムチャレンジ。巨大なオリーブの実ボールをゴールまで運ぶ事。
    「オホホホ!!うまく運べるかしらあ?行く手を阻むのは、腕利きの元ラガーマンよ!」
    コースの外から聞こえるカエデの高笑い。
    「ムチャ言うなってええ!!」
    ジリ、と構える屈強な男たちを前に、ボールにしがみついたままAチリが吠える。
    その時。カエデのそばに忍びより、Aチリの真後ろに控えたBチリが。

    「(`・ 3 ・´) プッ!」
    細長い筒から勢いよく息を吹き出すや、鋭利に研がれた石の矢がボールに直撃した。
    パン!!!
    「えっ!?のわあああ!!」
    穴から空気を噴射したボールは、Aチリを乗せたまま凄まじい速度で滑空するボール。少しずつ直径を凹ませながらも、無事?ゴールの籠へと叩き込まれた。
    「何さらしとんねん、このアホおおお!!」
    ゴール地点のAチリが、今度はBチリに吠えた。
    だが、一部始終を見ていたラガーマンや観客たちは拍手喝采である。
    「( *¯꒳¯ )……フッ」
    柵の外で誇らしげなBチリ。ドラムのスティックのごとく指先で筒をクルクル回している。
    「なっ!?こんなのダメ!無効よ!!反則に決まってるじゃない!?」
    「やかましいぞー!!成功だああ!!」
    「そうだそうだ!!あんたが言った通り、ドッペルさん以外は『手を』出してないだろうが!!」
    「そんなんだから、いつまで経っても良い人と出会えないんだぞおお!!」
    「そ、そんなぁ……」
    彼女の日ごろの性格ゆえか、腹いせ混じりに叫ぶ観客の怒声に、Bチリへと詰め寄っていたカエデはメソメソと地面にしなだれた。

  • 14二次元好きの匿名さん24/04/04(木) 14:53:10

    お次はカラフジム。だが、ジムチャレンジはマリナードの市場で行われるらしい。
    「な、なんやここ……!」
    黒い幕で覆われた市場は、Aチリの記憶より何倍も広い。布をめくって一行が中に入ると、そこには2つの厨房を前に、無数の観客がひしめき合っていた。
    「こ、これは、キッチンというよりも……」
    「まるでコロシアムみたい……!」
    「リップが知ってる、いっちばんカイデーなTV局のスタジオよりも広いわ……!」
    キハダとレホール、リップも息をのむ。
    「確か、ハイダイさんにジムリーダーをお願いしてから、すぐに市場の増築の申請が来ましたっけ……」
    眉間に指をやったオモダカが独りごちていると、消防士が主役の映画を思わせるような、荘厳なクラシック曲が流れてきた。
    〜〜♪ 〜〜♪
    「この曲は、確かバックドラフ……」
    眉間を押さえたまま、オモダカが呟きかけた時。
    「さて。長らく、お待たせしました!」
    横に並んだ2つの厨房の間から、ドライアイスの煙とともに恰幅のいい人影がせり上ってきた。
    「ハ、ハイダイさんかいな!?」
    熱狂する観客に混じりながら、Aチリが仰天した。光沢のあるタキシードに緋色のマント。四天王が身につけるのと似た黒い手袋。A世界のハイダイとは、服装も物腰も予想以上にかけ離れている。しかも。
    「……私が率いる美食の殿堂、ハイダイ倶楽部プロデュースのジムチャレンジへ、よーくーぞお見えになりました!」

    とどめに、一人称が「私」。

    独特のイントネーションとともに差し出されたハイダイの右手。観客がいっせいに後ろを振り返った。
    「わーたしの記憶が確かならばぁ?鏡写しの2人のチリさんを連れた、オモダカ嬢ご一行が本日の挑戦者!」
    2人のチリに驚いてか、あるいは大物ゲストに驚いてか、観客は「うおお……!」とざわめいた。
    ハイダイが観客を両手のひらで制すると同時に、フェードアウトするクラシック曲。
    「ドッペルさん!この人のジムチャレンジは、料理対決ですわ!」
    「ポピー、いかにも!さて。先ほどハッサクさんから連絡を頂いた私は、1時間ほどジムを閉め、思案に思案を重ねていました。」

  • 15二次元好きの匿名さん24/04/04(木) 15:02:07

    ミュージカル俳優を彷彿とさせる語り口や身振り手振りに、ポカンと聞き入る一行。
    「私が抱える鉄人シェフたちは、いずれも百戦錬磨の強者。しかし、オモダカ嬢ご一行は料理の道ではアマチュア。一体どうすればフェアなジムチャレンジになるかと……」
    大げさに頭を捻ったハイダイは、数拍おいてから二の句を継いだ。
    「そこで私は、あるメニューをテーマに据えました!」
    彼の大仰な手振りがピタリと止まった。両腕を広げたまま、正面の観客とオモダカ一行を見つめる荒波のような容貌。
    「家庭やお店で、皆さんも絶対に1度は口にした事のある、パルデアのソウルフード!」
    まさか……!絶対そうだよ!観客が活気づきだした。
    「さあ、今日のテーマはこれだい!!」
    ひときわ大きな叫びとともに、パチンと打ち鳴らされたハイダイの指。すると、彼の足下から食材を乗せた大きなな台が生えてきた。
    「今日のテーマは、サンドイッチ!」
    大小や長さ、焼き色が様々なパン達、みずみずしいレタスやトマト、ツヤツヤのリンゴ、瓶詰めされたピクルス、雪のように真っ白な卵、モモンのみのようにピンクでしなやかな断面を見せるボンレスハムの塊……
    「(*゚0゚*) ホオオオ……!」
    「す、すごい……!」
    驚嘆したBチリとオモダカ。
    観客の歓声もボルテージを上げている。
    「……どれもこれも、最高の素材じゃないか」
    観客の合間から台に飛びついたキハダは、卵や野菜を1つ1つ手に取って感心している。
    「その通り!カラフジムのチャレンジ内容は、『鉄人シェフに負けない極上の料理を作れ』!審査員は観客の皆さま、そして私・ハイダイです!」
    「は、ハードルが上がりすぎでは?」
    ピラミッド型に積まれた食材の頂点を見つめながら、オモダカが猫背で固まった。
    「理事長。ジムチャレンジの内容は知らないの?」
    「視察では勝負がメインなんです。書類で簡単な概要は見ていましたが、実際に受けるとなると緊張しますね……」
    人差し指を口の下にあてがったレホールの素朴な疑問に、ポリポリとこめかみを搔くオモダカ。
    「さあ!ではさっそく!蘇るがいい、鉄人シェフ!」
    右側の厨房を指し示すハイダイの号令。全身を黄色いコック服に包み、仁王立ちする口ひげの男が床から上がっていた。

  • 16二次元好きの匿名さん24/04/04(木) 15:04:36

    このレスは削除されています

  • 17二次元好きの匿名さん24/04/04(木) 15:09:30

    こ、この人……確かゴイスーな洋食の達人……!」
    張りつめたリップの声に生唾をのむ一同。
    「心配ない。こちらには栄養学のプロがいる」
    「それに、サンドイッチの腕ならトップの右にでる方はパルデアにはいません!」
    腕を組んで余裕のキハダ、誇らしげにフンと仰け反るポピー。
    「なお、オモダカ嬢ご一行にはハンデが与えられます!我らが鉄人シェフは1人で調理に臨みますが、皆さんは役割を分担して構いません!」
    「では、トップが指示を出してください!自分たちはその通りに動きましょう!」
    「OKです!三人よれば文殊の知恵って奴ですね!」
    そなえられたフリフリの腰巻きを身につけ、アオキとコルサは左側の厨房に立っている。早くも準備万端だ。
    「誰が、どの工程を行うか!料理には知恵も不可欠です!時間は20分!素材は使い放題!では、オモダカ嬢たち!そして鉄人シェフ!
    アレ・キュイジーヌ!!(調理開始!!)」
    ハイダイの野太く力強いカロスの古い言葉に、右の鉄人が食材へと動き出す。と同時にオモダカが口火を切った。
    「まずは卵の攪拌を!カエデさん。お客さんとハイダイさん、ついでにわたくし達の分まで!お願いできますか!」
    しょーがないわねえ……とこぼしたカエデが台に向かい、大きな籠に卵を手際よく詰めこんでいく。
    「具材は何にいたしますの?」
    「もちろん、チリが大好きなアレです!ポピーはハムの用意をお願いします!」
    「承知しました!」
    ピシッと敬礼したポピーが、カエデと入れ替わりで台に向かう。背伸びをして太いボンレスハムを器用にたぐりよせた彼女は、抱きしめながらいそいそと戻ってきた。

  • 18二次元好きの匿名さん24/04/04(木) 15:18:45

    ※追記
    ハイダイ→美食を求める老若男女の集い「ハイダイ倶楽部」の主催。同名の高級飯店の料理人とオーナーも務める。

    ピーマンとパプリカが苦手で、ハイダイ倶楽部のPVでかじった時は吐きそうになっていたらしい。(元ネタご本人の、料理の○人opの逸話より)

  • 19二次元好きの匿名さん24/04/04(木) 15:58:31

    >>17

    「……勝者!オモダカ嬢ご一行!!」

    どわああ!と観客が湧いた。鳴り止まない拍手。


    鉄人シェフのサンドイッチも美味しかったけど……!

    オモダカさん達のハムタマゴの方が、あったかい味だった……!


    中には、涙を流して喜ぶ観客もいる。ようやく歓声が鳴りやむと、キッチンコロシアムには、すすり泣く声のみが残った。


    「……世界で芸術として認められているのは、全部で7つだと言われています。

    建築、絵画、彫刻、音楽、舞踏、文学、そして映画……」


    厨房の間――食材の前に立ったハイダイが、ジムチャレンジを粛々と結んでいく。

    「ですが、料理も第8の芸術に値すると私は確信しています。何故なら……」

    ハイダイの拳が、自身の胸を叩いた。

    「本能を揺さぶり、感動を与える。それが芸術なのですから!」

    左の厨房で頷くコルサとハッサク。

    「そう!両者の明暗を分けたのは、供する相手を想う『心』!観客の皆さんを泣かせたチャレンジャーは、オモダカ嬢たちが初めてです!」

    黄色のコックも、大きく首を上下させる。


    「ではコロシアムの皆さま、大きな拍手でお送りください!ドッペル婦人!カラフシティのバトルコートでお会いしましょう!!」

    反対側から近寄ってくる鉄人サカイと代わる代わる握手を交わしたオモダカ達は、ハムタマゴの包みを片手に、彼のエスコートでスタジアムを後にした。

    黒い幕と青空を背景にしながら、Aチリのスマホに記念撮影がまた1枚。


    「(*´▽`*) チーズ!」

    パシャリ!

  • 20二次元好きの匿名さん24/04/04(木) 17:34:53

    「私の記憶がたしかならばぁ、上質な生地にも負けないコシと粘りのある戦いぶりでしたぁ!」
    「ホンマに負ける思いましたわ……!やっぱ、こっちのジムリーダー達も実力は本物や……!」
    今回もAチリの辛勝。効果ばつぐんな技で何度も突かれたが、持たせたたべのこしが功を奏した。
    あとはどくどくで粘りきり、何とか勝利をもぎ取ったのだ。
    「ハイダイさんって、詩的な例えがお好きなのね!」
    「ミュージカル俳優と力士、料理人の間で揺れ、3番目を選びました!」
    「どうりで!面白いしゃべり方だなあって!」
    ミニの後部に加わった新メンバーへと、笑顔で応じるレホール。だが、彼の大きな身体にシートを半分以上は占領され、隣で史料を読む手つきもいささか窮屈そうだ。
    「……ホウエン……3匹の……災厄……森羅万象の神……」
    「レホール先生。何かお調べですか?」
    助手席からオモダカが首をかしげる。
    「ブルーベリー学園のブライアさんって居たじゃない?あの人から送られた史料を読んでいるの」
    レホールの手と太ももには、数々の悪の組織や幻のポケモンたちが引き起こした、他の地方での事件や災厄が箇条書きされたクリップどめの紙の束。
    「教え子くんも調べたんだって!スグリくん、だっけ。あの子が書いたページも、上手くまとまっててとっても読みやすいわ!
    ……2ページに15、6回は『信じるのは非常にシャクだが』って言葉が挟まってるけど」
    ペラリ、ペラリとページをめくりつつ、レホールは苦笑いでつけ足した。車外では、恒例となっている次のジムについてのやりとりが飛び交っている。
    「いよいよ次はチャンプルジムですね!いやあ、腕がなりますよ!!」
    モトトカゲを繰りながら力強い顔と口調で気を吐くアオキ。彼が比較的マトモだと分かっているAチリも、後ろで安心している様子だ。
    「……ドッペルさん、ご注意を。
    アオキさんは、ジムチャレンジや実技テストが関わると少しだけ変になりますので……」
    「へっ!?」
    ポピーの言葉に、Aチリの安堵は数秒でとぎれた。
    「変だなんて……!住人やチャレンジャーの皆さんに、少しでもリラックスして喜んでもらおうと……」
    「アオイさんなんてドン引きしていたじゃありませんか!大きな水槽の中で息を止めながらチャレンジャーと勝負なんて……何が『水中クン○カ』ですの!?そのうえリーグでは、手持ちを倒されるたびに熱湯風呂!」

  • 21二次元好きの匿名さん24/04/04(木) 17:40:15

    このレスは削除されています

  • 22二次元好きの匿名さん24/04/04(木) 17:43:17

    >>20

    「……小生とトップが視察で見た時は、手持ちを倒される度に、スライスしたマトマのみを1切れずつ食べてましたです。トップ、半泣きで止めていましたね」

    Aチリの顔が、ポピーとハッサクの非難にゲンナリと青ざめていく。

    「やっぱ……こっちのアオキさんも、結構なアホやないですか……」

    「い、いえいえ!ご安心ください!今回は無茶はおこないませんので!」

    それきり、車外も沈黙に包まれた。


    宝食堂には、観客とAチリのどよめきが響いている。

    「何ですのん!?ア、ア、アオキさん!?」

    「違う〜。今のじぶ……オレ様は、ダース・ラリーだ!」

    ポケモンセンターそばに着くなり、『10分してから宝食堂に来てください!いいですか!すぐにはダメですよ!』と一行に念を押して町に走っていったアオキ。

    「(*'ᗜ'*) カッコイイ!」

    「すごい……もしかして手作り!?」

    Bチリとリップのスマホがバトルコートを連写した。

    「ダース・ラリー?さんとやら!アオキを何処にやったのですか!?」

    「トッ……オモダカ、安心しろ〜!ドッペル婦人がオレ様に勝てば解放してやる〜!」

    そして、10分後に一行が向かったバトルコートには、アオキと入れ替わるように謎の人物が立っていた。

    「スター団のみなさんにお願いし……奴らを脅して作らせた甲冑だぁ〜!重さ30kg!総額うん十万〜!」

    「もう、どこから突っ込んだらええねんコレ!?」

    ラリーと対峙するAチリも狼狽えている。全身から顔にいたるまでを、鉄板と長い手袋、兜のようなヘルメットに包んだ黒ずくめの怪人物。マントを羽織った背中には大きなボンベ。

  • 23二次元好きの匿名さん24/04/04(木) 17:45:17

    アオキさんを返せ!アオキさんはどこだ!と、ギャラリーの少年少女たちからも悲喜こもごもの叫びが上がった。いつもよりはマシで良かったわ……と、ため息をつく女将の声も聞こえてくる。
    「さあ!ドッペル婦人、ボールを取れ……!そ、それ、それし……そ……」
    ラリーが突然、喉元を押さえた。ガチャン!!
    「ど、どないしたん!?」
    「コヒュー……コヒュー……」
    コートの床に這いつくばり、小刻みに震えだしたラリー。どうやらコスチュームの中で苦しんでいるらしい。
    心配したコルサとレホール、そして観客の少年が1人、外からコートに上がってきた。
    「どうしたのアオキさん!?具合悪いのかしら!」
    カチャカチャとレホールに頷くラリー。
    「どこか怪我をされているのでは!?」
    コルサには否定の横振り。
    「……せ、せ、背中を……!」
    長い黒手袋が指さす先には、大きなボンベ。

    「ツマミを……3に……!」
    力なく訴えるラリー。
    少年がオロオロとボンベを見やると、甲冑のうなじへ繋がる管の横にあるダイヤル。ツマミの目盛りが0を示している。
    「3だね!?分かったよラリーさん!」
    人が好いらしい少年の指が、目盛りを3.0に導いた。ラリーの痙攣が止まり、息づかいが整っていく。
    「危なかった〜!ありがとう〜!上半身は隙間なく溶接してあるのだ〜!ですから〜!酸素が無ければ〜!オレ様は死ぬぅ〜!」
    「それ欠陥品やないですか!?」
    Aチリのキレのあるツッコミに、観客たちの一部がゲラゲラ笑った。

  • 24二次元好きの匿名さん24/04/04(木) 19:38:26

    あげ

  • 25二次元好きの匿名さん24/04/04(木) 21:48:18

    食堂入ったら暗黒卿が立ってるの想像してワロタ
    しかも呼吸困難で4にそうなってるの草

  • 26二次元好きの匿名さん24/04/05(金) 00:46:56

    >>23

    「よかったわ、アオキさん!元気になったみたいね」

    「ち、違います!オレ様はダース・ラリーだ!」

    レホールの呼びかけを拒否する、ラリーのくぐもった慌て声。

    「そうですよ!そんなに悪そうな人がアオキな訳ないでしょう!?」

    プリプリと頬を膨らませたオモダカに続いて、観衆からも「そうだそうだ!」とヤジが出た。

    「そう……だったみたいね!やだ私ったら!勘違いしてたなあ!え、えへへ!」

    ニッカリと見せた白い歯を覆い、たどたどしく笑うレホール。

    「あなたたちの目は節穴かしら!いいこと?その殿方はどう見ても……」

    「「ダースさんよ(です)」」

    「えっ。えっ?だって、声といいアオキさんと同じだし、さっきから『自分』って言いかけて……」

    「「ダースさんよッ(だッ)!!」」

    「ひぃ!ごめんなさぁい!!」

    カエデの横槍を見事に封じたレホールとコルサの形相。観客に混ざる青少年の夢を壊すわけにはいかない。

    ふだん穏やかな人間ほど、怒らせた時の剣幕は凄まじいのである。


    「ふう。では!酸素を取り戻したところで〜……」

    漆黒のヘルメットの口から、コーホー……と規則的な呼吸音が流れ始めた。鎧の中に酸素がきちんと循環している証のようだ。

    「どなたか、起こしてください!じぶ……オレ様の筋力ではどうも……」

    Bチリとオモダカ以外が、勢いよくずっこけた。膝をついた腕立て伏せの格好でプルプルふるえているラリー。

    「ええい、世話のやける!」

    「わ、私にもぉ、お任せあれ!舞台でのアルバイトで慣れていますので!」

    「「カエデさん!貴女も手伝って(ください)!」」

    「な、なんでわたしが……」

    「「お菓子作りで鍛えてるんでしょう?いいから早くッ!!」」

    「は、はいぃ!」

    白衣とマントをひるがえしたキハダとハイダイ。そしてパタパタと駆け上がったカエデ。

    一行の中から踊りでた力自慢たち、コンビネーション抜群のレホールとコルサ、そして利発な少年の介助を受けながら、ラリーは産まれたてのシキジカのごとく立ち上がった。

    「たとえ、にっくき敵であっても手を差し伸べる……!やっぱりパルデアの未来は明るいわ!」

    祈りを捧げる姿勢で手を組み、オモダカはキラキラと感心している。

  • 27二次元好きの匿名さん24/04/05(金) 00:50:58

    「(*´罒`*)シシシシシシシシシシ」
    この状況がツボにハマったのか、爆笑するBチリは、ラリーが立ち上がるまでの一部始終と、棒立ちで猫背となり、口の端をヒクつかせたAチリの勇姿を己のスマホに録画していた。
    「ありがとうございま……礼を言うぞトレーナーども!」
    「「い、いいえ。それほどでも!」」
    雄々しく立つラリーに、レホールとコルサが眩しく微笑んだ。
    「お礼ついでに、もう1つだけお願いがある……あります……」
    キョトンと瞬いた、彼を囲む一同。
    「相棒をくり出してから、すぐにテラスタルしますので!その間だけ、じ、オレ様の背中を押さえておいてください!オーブの圧力に、またひっくり返るかも知れませんので……!」
    「はぁ……承知してやる」
    キハダのため息を合図に、甲冑の背中と太ももの裏が一斉に支えられる。

    「さしずめ、介護の予行演習ですね」ズルル
    「うわっ。老後のアオ……ラリーさんの姿、鮮明に想像できちゃいましたわ」モグモグ
    ちゃっかりと頼んだかけそばの丼とからしむすびを素手で持ちながら、カウンターの椅子をコートに向けたハッサクとポピーが茶かした。
    「……そろそろ始めてもええですか?」
    「いつでも!おいでなすって!」
    しびれを切らし、ローファーのつま先を鳴らしていたAチリを、口調が迷走したラリー(と、背後の大人5人と1人の男の子)が迎えうつ。いよいよ勝負だと告げるラリーの口上が始まった。

  • 28二次元好きの匿名さん24/04/05(金) 00:52:36

    「おお、ビッグワン(イッシュの古語で偉大な者)、この瞬間を待ちわびたぞ!」

    「……!」
    なかなかにハリのある声質で、仁王立ちのラリーから厳かに告げられたAチリ。
    言動こそふざけているが、今までに下してきたジムリーダー達の実力を思い出し、彼のヘルメットを真顔で睨んだ。
    「ついに運命の輪は閉じる。かつては平凡なサラリーマンだったが、今やポケモンマスターだ!」

    「極めたのはアホの道でしょう、ダース」ズズズ

    出汁をすするハッサクの憎まれ口とともに、ラリーが掲げたボールの光から、アオ……ラリーの切り札であるムクホークが繰り出された。

  • 29二次元好きの匿名さん24/04/05(金) 01:20:24

    全員に平等にセリフあるのホンマ好き

  • 30二次元好きの匿名さん24/04/05(金) 02:40:43

    保守

  • 31二次元好きの匿名さん24/04/05(金) 02:54:41

    少年ww

  • 32二次元好きの匿名さん24/04/05(金) 09:33:10

    レホコルも良いな(元の性格で)

  • 33二次元好きの匿名さん24/04/05(金) 15:35:51

    このレスは削除されています

  • 34二次元好きの匿名さん24/04/05(金) 15:38:22

    「ドー!」
    ドオーの頭上に燦然とかがやく地球儀。流れるように鮮やかなテラスタルの手際。ヘルメットの中で、ラリーも思わず「かっこいい……」と囁いてしまった。
    「足もと気いつけや! ちぃと揺れるからなあ!」
    食堂中を震わせる、ドオーのじしん。
    「わわわわ!ドッペル婦人、タ、タンマ!倒れるうう!!」
    漆黒の鎧が、ヨタヨタとふらつく。そして、主とおなじく平衡感覚を失って地に落ちたムクホークは、揺れる床に全身のあちこちをぶつけては跳ねながら、悲痛な鳴き声でもんどり打っている。
    「あっ、アカン!ちょい待ち、ドオー!やりすぎやって!ストーップ!!」
    我に返ったAチリは、床を叩き鳴らすドオーを大声で制止した。ラリーは右半身を下に横たわっている。ジムチャレンジ用にレベルを落としてあったムクホークは一撃で倒れた。
    「す、すんません!加減まちがえてもうた!アオ……ラリーさん、大丈夫です!?」
    グッタリと倒れたままのラリー。
    「……お疲れさまです、ムクホーク」
    「キィー……」
    重い手つきで掲げられたボールの光が、ひんしのムクホークを吸い取った。
    「……ドッペル婦人。この鎧を取ってくれぬか?」
    「それじゃバレてまう!」
    「ジムチャレンジをクリアしたビッグワンの姿……ここを去る前に1度、自分自身の目で見ておきたい……」
    「ど、どうやって外せばええんですか?」
    ラリーのか弱いジェスチャーは、覆いを取るように両手でスポッと。そのイメージに従ったAチリは、ラリーの両肩に手を添えて彼を引き起こすと、尻もちをついた鎧をゆっくりと真上に引き抜いた。
    「……見事です、ドッペル婦人」
    「アオキさん!」
    あらわになったラリー……もといアオキの上半身。ギャラリーとオモダカが目を見開く。

  • 35二次元好きの匿名さん24/04/05(金) 15:39:59

    「アナタの勝ちです……アナタは正しかった……!最後に言えてよかったです。ドッペル婦人なら自分に勝てると信じていました……」
    「アオキさん!」
    「…………」
    眠たげに瞼をとじたアオキは、仰むけに力尽きた。

    「アオキさああああん!!スーツのままは無茶やってええ!!」

    髪型を乱れに乱れさせて寝息を立てるアオキにすがりながら、天井を仰いだAチリの雄叫び。
    「行きましょう、ミス・ゲンガー!アオキを連れて!」
    涙ぐんだオモダカが、コートの外から気丈に告げた。彼女の周りは、ラリーの驚くべき正体にザワついたままだ。
    「Aチリさん、アナタはまともだと思っていたのに……」
    苦々しく顔をしかめたキハダも、茶番のマヌケさに頬を濡らしていた。
    「ま、まあ……仲良しなのは良いことよね!」
    「ア、アオキさん、レホールさんの隣でオネンネしといたほうがいいみたいね」
    その隣のレホールやリップも、反応のしかたが分からず苦笑するしかない。
    「チリちゃん、四天王でいちばん!ふざけてへんよおお!!」
    アオキにすがった姿勢のまま、先ほどと同じトーンで嘆いたAチリ。

    「( ´∀`) チーズ!」
    食堂に入る際、彼女からスマホを手渡されていたBチリが、カメラのボタンを押した。アオキの寝顔が、まるで遺影のようだった。
    パシャリ!

  • 36二次元好きの匿名さん24/04/05(金) 15:52:11

    このレスは削除されています

  • 37二次元好きの匿名さん24/04/05(金) 15:56:30

    ※ちなみにテラスタルしたアオキのムクホークにじしんが効くかどうかは不明ですが、いちおう話の展開的に通ることにしました。

  • 38二次元好きの匿名さん24/04/05(金) 16:42:17

    >>37

    (ノーマル単になるから地震通るよ)

  • 39二次元好きの匿名さん24/04/05(金) 19:43:53

    >>38

    主です。サンガツほしゅ

  • 40二次元好きの匿名さん24/04/05(金) 20:06:16
  • 41二次元好きの匿名さん24/04/05(金) 23:06:18

    >>40乙!毎回良い所で切るよな。

    ついにジムリ折り返しか・・・。消えたカキコにあったニックネーム笑った。


    マジでグルーシャが気になってたまらない。

  • 42二次元好きの匿名さん24/04/06(土) 00:51:56

  • 43二次元好きの匿名さん24/04/06(土) 01:37:39

    頑張れ

  • 44二次元好きの匿名さん24/04/06(土) 10:59:10

    保守

  • 45二次元好きの匿名さん24/04/06(土) 21:22:38

  • 46二次元好きの匿名さん24/04/07(日) 02:29:44

    ほしゆ

  • 47二次元好きの匿名さん24/04/07(日) 02:34:01

    主です!やっと規制明けた!皆さまの保守に感謝の雨あられ……

    次レスから7前編です!

  • 48二次元好きの匿名さん24/04/07(日) 02:36:18

    >>35

    午後4時40分。タイムリミットまで6時間を切った一行。

    「ああ……自分とした事が……!異性に何とはしたない真似を……!!」

    「だ、大丈夫よアオキさん!

    あんなに重たい鎧を……しかもスーツの上から着て勝負なんかしたら、誰だって疲れちゃうもの!遠慮なく枕にしちゃってて良いのに!」

    ハッコウシティの北口すぐそば――ポケモンセンター真横にあるタイル地の溜まり場に停まったミニ。その後部座席では、右側で背筋をのばしてペコペコと陳謝するアオキを、隣のレホールが懸命に制している。

    「訴訟でも示談でも何なりと!どんな裁きでも受ける所存です!」

    「いやいや!本当に気にしてないから!だから落ち着いて!ね?」

    自身に顔を向けたまま、45度に腰を曲げたアオキに、アタフタとかむりを振るレホール。この暑苦しく生真面目なサラリーマンは、

    北の急勾配から街に入ったときの衝撃で車が揺れ、(目覚める直前、ほんの10秒間だけだが)彼女の肩に頭をもたれさせた事を謝罪しているのだ。

    「よかったあ……いつものアオキだあ……!」

    チャンプルタウンを出てからというもの、悪人になってしまったアオキに気落ちし、怯えていたオモダカが、青い両手の隙間からしゃくりあげ、ポロポロと泣きはじめた。

    「え?あ、ああ!ご心配おかけしましたね!しかし、もう大丈夫です!自分を操っていたバルカン星人の洗脳は、ドッペル婦人が解いてくれましたから!」

    「まあ!」

    オモダカの泣き顔が快晴にもどった。

    サンタクロースを未だに信じる彼女のなだめ方を、長い付き合いになるアオキは熟知しているらしい。開け放たれた助手席の窓。弾んだハスキーな声が、ミニの周りで休憩しているモトトカゲたちに炸裂した。

    「ありがとうございます!!ミス・ゲンガー!!」

    「うおっ!何ですのん?唐突に!」

    ハッサクの後ろでビクッと肩を跳ねたAチリ。

    彼女の疑問に答えることなく、オモダカの顔面は右前の車内に引っこんだ。

  • 49二次元好きの匿名さん24/04/07(日) 02:39:44

    「何かを盛大に勘違いしたり早合点すると、トップ、たまにああなりますわよね」
    「おおかたアオキかレホール先生が、彼女に何かを吹きこんだのでしょうかね」
    モトトカゲを降りながら、ハッサクと彼に抱えられたポピーがヒソヒソと見合わせる。それに続いてAチリも地面に立つ。他のモトトカゲ達、そしてグリーンの車内からも降り立った一行は、モトトカゲを各々のボールに収めた。
    「(*´﹃`*)」
    「ダメです!さっきハムタマゴを食べたばかりでしょ!」
    スラックスのふくらはぎに追いすがったポピーが、ビルの軒下にあるアイス屋台に行こうとするBチリを止めている。そのやりとりに、「あっ、そうでした!」とオモダカからアオキに包みが渡された。
    「マリナードのジムチャレンジで作ったハムタマゴです!わたくし達は、ここへ来る間に食べましたので!」
    「おお!これはこれは!自分の分、取っておいてくださったんですか!」
    どうもご丁寧に、と包みを両手で受けとったアオキが直角に腰を折ったところで、一行はゾロゾロとバトルコートを目指した。
    ……モンスターボールの形に入り組んだアスファルトの路地。その外周をワラワラと回っていく12人に、住民たちの興味の目線が刺さる。 これでも十分に大所帯であるが、(すでに同行しているアオキとリップを除いて)さらに3人のジムリーダーたちの加入が確定している。
    そのうちの1人、ナンジャモからのメッセージは一言のみ。
    バトルコートにて待つ。
    Bチリは、自分たちを見下ろす巨大な電光掲示板たちに大はしゃぎだ。
    「(*゚0゚*) ホオオ! リップ!コルサン!」
    「自分のキメ顔を自分で見るのって、ちょっぴりハズいわね……」
    「チリさん!リップさんも!ナンジャモさんが待ちくたびれますわよ!」
    2人のために立ち止まった一行の中から、ポピーのお叱りが飛ぶ。メンゴメンゴ……と、Bチリの手を引いたリップが一団に戻った。
    「コルサさんって、いつ見てもパーペキなスタイルよね!」
    「いえいえ。リップさんのルックスと写真うつりには敵いませんよ!流石は本職ですよね!」
    「いやあ、じーつに素晴らしい!さあカエデよ!我がハイダイ倶楽部の宣伝も流していただくよう、ナンジャモ氏に掛け合うがいい!」
    「な・ん・で!わたしが言わなきゃならないのよ!?」
    リップとコルサ、ハイダイとカエデが歓談しながら、ゆるゆると動きだした一同。

  • 50二次元好きの匿名さん24/04/07(日) 02:42:49

    リップ監修の化粧品、コルサの展覧会、有名なスポーツシューズの宣伝、ニャオハ、ホゲータ……交互に流れる広告の中から、Aチリの目は異形のモノを見いだした。
    「アオキさんやん!?」
    今度はAチリの叫びが一行を止めた。A世界のアオキは、公共の場に顔出しなど滅多に行わない。
    だが、コルサとリップの広告の間に映っていたのは、炎と煙を立てて爆発する背景の前で、くの字に曲げた腕の甲を見せながらガッツポーズする凛々しいアオキの姿。
    「……もしかして、宝食堂かいな!」
    半袖の白い割烹着を着たアオキの下には、力強い毛筆のフォントで店名と住所、そして「この方もご用達!!」というキャッチコピーがデカデカと記されている。
    「いやあ、いつもお世話になっているお礼にと引き受けまして!パッと見、アンタの宣伝になってるじゃないかと女将さんからクレームが来ましたが……」
    照れて後頭部をかいた本人いわく、B世界のアオキは、誰かのためなら顔を晒すのも惜しまないらしい。
    「活きがいいアオキさんって、やっぱチリちゃんには不気味や……」
    「ハハハ!活きがいいとは!そんな、食材のようにおっしゃらなくても!」
    アオキが闊達に笑うのと同時に、画像に釘づけになっていたAチリと一行は再びバトルコートへと歩みを進めた。

    二本の桟橋に繋がれたバトルコートの中心には、Aチリにもおなじみのストリーマーが待ち構えていた。
    「……来ましたね」
    大きなコイルの髪飾り、パステルカラーに染まった豊かな髪の毛。どぎつい黄色と黒のツートンカラー。一行に背中を向けていたナンジャモは、落ち着きはらった声で振り返った。

  • 51二次元好きの匿名さん24/04/07(日) 02:49:47

    「し、四天王とジムリ達!アカデミーの者ども〜!/// お、お、おはコンチャロ〜!///」
    明朗に笑いながら、上着の両袖をフリフリと一行に振るナンジャモ。Aチリもよく知る挨拶だ。が、やはり彼女も様子がおかしかった。
    まず。Aチリの知るナンジャモは、決めゼリフをどもったりはしないはずだ。そして、Bジャモの顔はオクタンにも負けないほど真っ赤に茹だっている。
    「インナーもおかしないか……?」
    ファスナーの閉まった上着から覗くのは、黒いネックホルダーとシルバーのノースリーブ……ではなく。髪と同じ、淡いピンクの肩先だ。
    「この子が下に履いとるん、絶対アレよな……」
    それに、下半身にいたってはパンクな上着と完全にチグハグだ。Aチリの頭に浮かんだのは、カントー地方のとあるジムリーダーや、ホウエン地方の達人が履いている正装――袴だった。
    「あ、あなたの目玉をエレキネット……」
    キュピーンという擬音が似合う、Aチリも見知ったポーズを決めるナンジャモ。だが、一度感じた違和感はぬぐえない。
    「アナタも大変ですねえ。トップの思いつきに振り回されて……」
    「な、何者なんじ……」
    皮肉屋の彼には珍しい、本気で憐れむような優しい口ぶり。ハッサクがナンジャモの挨拶をさえぎった。
    「昼すぎにも伝えたとおり、『普段の』アナタでかまいませんよ」
    バンザイをしたまま固まったナンジャモ。彼女の顔から、徐々に赤みが抜けていった。
    「……そうでした。この外套を着ていますので、つい配信モードに……」
    「……えっ?その、もしかして自分、演技っていうか……つまり、キャラ作っとるんかいな?」
    気まずそうなオモダカを一瞬だけうかがい、コクリと頷くナンジャモ。それきり俯いた彼女を、Aチリはポカンと見つめた。
    A世界の記憶では、オフでは多少マジメとはいえ、配信での振るまいも素の彼女に近いはず。
    「オフにも関わらず……なぜ、その妙ちきりんなジャケットを羽織る必要が?」
    「鍛錬のためです」
    ハッサクの問いに顔を上げ、キッパリと答えるナンジャモ。しとやかだが芯を感じさせる涼しさ。A世界と性格が異なるなら、口調も真逆だった。
    「繊維に特殊な金属が混ぜられていまして、重量が50kgあるんですよ」
    「「ご、ごじゅっ!?」」
    Aチリとアオキの驚きが重なった。

  • 52二次元好きの匿名さん24/04/07(日) 02:53:04

    ※追記

    ナンジャモ→配信のノリはキャラ。素顔は凛とした武道家。グルーシャを兄様(にいさま)と呼んで尊敬している。

  • 53二次元好きの匿名さん24/04/07(日) 02:59:09

    「頭上に浮かんでいる、この子たちも同じく」
    垂れ下がった右袖が、己の頭上を指した。
    「それぞれ30kg。いつ何どき頭に落ちてくるか分からないという恐怖に耐え、ここぞと言う時に怖気づかないための鍛錬なんです」
    「「「ひ、ひぃぃ!?」」」
    「な、なんと非科学的な……」
    「じ、自分など、その髪飾り1つの重さで精一杯だったのに……!」
    カエデとリップ、そしてオモダカは抱き合っておののき、キハダはアングリと呆れ、アオキは、その小柄な身体からは想像もつかない彼女の馬力に身震いした。
    「では、ドッペル婦人……でしたっけ。よろしくお願いしますね」
    「お、おう。よろしゅうに……」
    真顔でピシッとお辞儀したナンジャモに戸惑うAチリ。ナンジャモの一挙手一投足は、張りつめた武人のようにきびきびとしている。
    ジム戦も折り返し。これから始まる勝負と同じく、昼の青空と茜いろの夕やけも空で競いあっている。背中合わせに離れ、お互い位置についた2人。
    バトルコートに群がっていた残りのメンバーもAチリの後ろ――コートの端に退避した。
    「……じめんタイプにでんきタイプは、圧倒的不利……。でも……エリアゼロの戦いでボロボロになった私を助けに来た時、グルーシャ兄様が教えてくれました」
    目を閉じ、直立不動で精神統一しはじめるナンジャモ。配信より何倍もおごそかな調子で、口上が粛々と述べられていく。
    「手持ちを信じ、己を信じ。人事を尽くす!そうすれば、ひらけぬ道は無いと!!」
    無表情でクールだったナンジャモの声が、熱を帯びていく。言い切った刹那。彼女の頭から落ちたコイルの髪飾り。
    ズドォン!!
    ナンジャモの両足を挟んで、バトルコートに2つのクレーターが生まれた。轟音で目を丸くするAチリ。観ている一行も同じく。

  • 54二次元好きの匿名さん24/04/07(日) 03:03:40

    「見ていてください兄様……!どんなに厳しい勝負であっても、私は一歩も引きません!」
    しかし、一瞬で真顔に戻ったAチリは、目を閉じたままのナンジャモを睨んだ。Aチリの気迫に射抜かれると同時。ナンジャモの瞳もカッと開く。
    「それが!真の強さへの道しるべ!」
    ジッパーが外された上着から袖をぬくナンジャモ。着ていたままの膨らみを保ち、鋼鉄の上着がナンジャモの背後へ垂直に落ちた。
    ズゥゥン……。
    衣服とは思えない地鳴り。Aチリの目が、また一瞬だけ点になる。
    「それが私、不肖ナンジャモの信念なのです!!」
    あらわになった、ピンクの着物に紺の袴。さながら合気道の拳士だ。
    「素顔で戦えるのは、いつぶりでしょうか!
    私は、真の強さの探求者!さあ、ドッペル婦人!これ以上の言葉は無用!あとは勝負で語りましょう!」
    凛!と微笑んだナンジャモは、配信用ではない、一同――ハッサクやキハダでさえ息をのむ美しい全力投球で、切り札のムウマージを繰り出した。
    Aチリも無言で手袋を引き締める。
    それに合わせて、手刀よろしく反り立ったナンジャモの両手が、すり足とともに前後へ構えられた。
    「参ります!ムウマージ、マジカルフレイム!」
    「ドオー、まもる!」
    ムウマージのマジカルフレイムを、ドオーが弾いた。
    「今です!ムウマージ!シャドーボール!」
    「くっ!ドオー!アクアブレイク!」
    ムウマージの攻撃が下がる。だが。とくしゅ技が主体のナンジャモの切り札には、さほど堪えてない。おそらく最初のマジカルフレイムは、いわゆる積み技や防御技に対する牽制だったのだろう。
    バトルコートには、切り札と技の名前のみが響き渡っている。

    「やはり本気のナンジャモさんは凄すぎる……」
    「同感です。技や戦術のキレに、ますます磨きがかかってますね……」
    半分こにしたハムタマゴを片手に並びたち、食べる事も忘れたアオキとコルサが呟く。
    とくせいのせいで、ナンジャモのムウマージにじしんは効果がない。そのうえ、でんきタイプに変わるよりも有利だと見たのか、テラスタルを敢えて行わないムウマージ。タイプ一致のシャドーボールが、ドオーの特防を着実に下げ、ジワジワと追いつめていく。

  • 55二次元好きの匿名さん24/04/07(日) 03:11:17

    「ナンジャモさんの動き、全てにおいて計算されつくしています……!」
    「さーなーがーらー、こだわり抜かれたカロス料理を味わっているかのよう!」
    「きっと計算や理屈だけじゃないわ。あの子、勝負のコツを本能に叩き込んでるような動きよ。そう、職人さんの勘とかみたいに」
    「当然です。人格、強さ、勝負への姿勢……小生ですら非の打ち所を見つけられない優秀なトレーナーなのですから」
    感心しきるポピーとハイダイ、レホールに、腕を組んで勝負を見つめるハッサクが誇らしげだ。

    オモダカやリップ、カエデなどは、言葉を出す余裕もなく、ただ愕然と2人を見守るばかりだ。
    「ドオー、どくどく!」
    アクアブレイクでの力押しでは倒せないと判断したAチリは、お得意のからめ手を選択した。
    「ムウマージ、シャドーボール!」
    Aチリとナンジャモの叫びは、ほぼ同時。彼女の逡巡の早さもAチリの脅威だ。
    一度でも読み間違えれば負ける。
    居合の達人どうしの取組を思わせる緊張感。だが、勝負が進むにつれ、Aチリの心は怯えるどころかますます高鳴っていった。

    楽しい、楽しい。楽しい!

    仕事として行った、ハルトとの勝負を上回るほどの高揚感。
    「ドオー!まもる!」
    「ムウマージ!マジカルフレイム!」
    「ドオー!アクアブレイクや!」

    息を荒らげながら獰猛な笑みを浮かべたAチリの全身は、久方ぶりに感じた強者と渡りあう歓喜に粟だっている。

    勝負で語り合う。ナンジャモの燃えたぎる闘志が、Aチリにも伝播していた。

    四天王の1番手、面接官……。
    さまざまな虚飾は崩れおち、いまやAチリは、目の前の乙女によって1人のトレーナーに還っていた。

  • 56二次元好きの匿名さん24/04/07(日) 03:42:42

    ※さらに追記

    万が一このスレが落ちた時にそなえ、某所にもpart1から投稿する事にしました。(シリーズ概要の下部に、このスレを引用元として明記済み)

    腑に落ちない流れやセリフなどなどを更に改筆しておく予定です。

  • 57二次元好きの匿名さん24/04/07(日) 11:10:00

    age

  • 58二次元好きの匿名さん24/04/07(日) 12:22:18

    ギャグパートからの
    落差が
    上手すぎる

  • 59二次元好きの匿名さん24/04/07(日) 13:48:22

    >>55

    2人切り札は、ともに体力があとわずか。ドオーもムウマージもゼーゼーと身体を揺さぶっている。

    「…………」

    イッシュのガンマンよろしく半分かがみ、ジリッと床を踏みならしたAチリ。しとどの汗が顔を濡らす。

    「…………」

    勝負の間じゅう武術の構えを崩さないナンジャモも、息をわずかに上げ、額のところどころに露を浮かべている。胸で手を結んで祈るオモダカも。2人と2体の対峙を、ひたすら凝視する一行も。

    「マジジャモちゃんが勝負してるよ!!」

    「うわっ鬼レアじゃん!」

    と途中から集まってきた大勢のファンたちも。

    バトルコート中が直感していた。次の一撃が勝敗をにぎる。

    「……ムウマージ」

    「……ドオー」

    ギャラリーが一斉に唾をのんだ。

    「マジカルフレイム!!」

    「アクアブレイク!!」

    たがいの指示に目を見開く両者。

    ナンジャモは初めて読みを外したウカツさに。そしてAチリは、耐えきる光明を見出した事に。

    「ムゥ……マアアアッ!!」

    「ドォッ!!」

    最後の気力を振りしぼった2体の技が、雄叫びとともに交差した。

    きりもみしながら襲いかかる炎をくぐり抜け、猛スピードでムウマージを貫くドオーの身体。ムウマージは、衝撃のあまりコートの外まで跳ね飛ばされた。

  • 60二次元好きの匿名さん24/04/07(日) 14:28:17

    「ド……」
    その場で弱々しく全身を笑わせるドオー。もはやAチリの足元に戻る力もない。だが、コンマ1ミリでひんしを免れたらしい。
    「ム……マ……」
    ナンジャモの背後――桟橋の前で地にしぼんだムウマージも同じだ。助けようと思わず手を伸ばす近くの観客に、着物の背中から「手出し無用!!」と激が飛んだ。どうにか浮かぼうとするムウマージだったが、横たわって上体を起こそうとするうちに蓄積したもうどくのダメージが襲いかかる。
    「マ……」
    細い声でパタリと倒れたムウマージ。うつむいたナンジャモが、しなやかに構えを解いて直立不動に戻った。肩ごしに向けられたボールが、後ろのムウマージを吸い込んでいく。そして。凛!とした笑みを浮かべたナンジャモの晴れやかな一声。
    「……あっぱれです!」
    バトルコート中の絶叫が天に轟いた。号泣したオモダカがAチリに飛びつく。リップも続いて駆けより、彼女を抱きしめた。
    「しゅごいい……!!今世紀で最高の勝負が、また1つうう!!」
    「やったやった!ガチのナンジャモちゃんに勝つなんてオッタマゲ!チリちゃんテラゴイスーよ!!」
    「ナ、ナハハ。PPケチらんと、あそこでシャドーボール出されたら負けとりましたわ」
    もみ合う3人に詰めよる観衆。
    「うわわっ!何すんねん!ちょい待ちーや!」
    スマートな体躯が持ちあがり、あれよあれよと胴上げが始まった。わーっしょい!!わーっしょい!!
    「ちょいちょいちょい!気い早いわ!まだジム巡り残っとるってば!!」
    緑の後ろ髪と黒いカッターシャツが、何度も宙を舞う。
    「……私も、まだまだ未熟ね」
    先ほどまでとは異なる、慈しむような微笑みを浮かべたナンジャモは汗ばんだ正装姿のまま胴上げの輪に入った。
    「自分たちも祝しましょう!ドッペル婦人の勝利を!!」
    「うふふ。よくできました。バンザーイ!」
    「しゅ、衆目の前ではしゃぐのは柄に合わないんだが……バ、バンザーイ」
    アオキとレホール、そしてキハダに合わせて、他のメンバーも大小の万歳をおくる。
    「ミス・ドッペルゲンガー。小生のどぎついお眼鏡にかなったのはアナタが4人目です。アナタは紛れもなく『本物』」
    ハッサクは腕を組んだまま。だが、そう言って控えめに微笑んだ顔は、A世界の彼を連想させる
    温かさだった。

  • 61二次元好きの匿名さん24/04/07(日) 20:50:00

    保守

  • 62二次元好きの匿名さん24/04/07(日) 23:44:24

    前スレにもレスしたけど
    イッチ真面目もいけんじゃねーか!

  • 63二次元好きの匿名さん24/04/08(月) 01:34:07

    >>60

    午後5時30分。

    「またせたな〜……」

    北口に停められたミニのもとに、ナンジャモに付き添われAチリが戻ってきた。

    「( ᐛ ) オヤ?」

    運転席からBチリが首をかしげる。

    「ナンジャモくん。その……もう少し住人の統制をですね……あれではガラルのフーリガンです」

    「返す言葉もございません。ドッペル婦人。お洋服を台無しにしていまい、大変な失敬を……」

    「あ、ああ、いや。もう済んだ事やし……ナハハ」

    勝負時の正装のまま、後部座席のハッサクにペコリと謝ったナンジャモ。その隣には、彼女と瓜二つの袴を身につけたAチリの姿が。だが、色は上下ともに濃紺。ハッコウジムでシャワーを借り、その際に譲られたものだ。

    『わーっしょい!わーっしょい!』

    決着がついた後、密集した無数の住人たちとナンジャモ、オモダカらによる胴上げは延々と続いていた。

    『あ、あの!チリちゃんら、残りのジム行かなあかんねん!そろそろ降ろしてーな!』

    たまりかねて身じろいだAチリを真下の何人かが掴みそこねたのだが、そのせいで後続のバランスが崩れ、舞いあがる彼女の身体がコートの端にどんどん寄っていった。

    『……!み、みなさん!ダメ!!』

    勢いづいた胴上げのペースは簡単には緩まない。ナンジャモの静止は、わずかに遅かった。

    『わーっしょい!わ、あ!!』

    何人かの群衆が事態に気づいて手を止めたが、すでに手遅れ。

    『わっ!?アカンアカンアカンアカン!!どわあああ!!』

    コートの縁に極限まで迫ってしまったAチリのスレンダーボディは、コートの上から真下の水面に勢いよく投げ入れられたのであった。

    「明日にでも、配信を通じて厳しく言っておきます……もちろん、キャラなど抜きで」

    「で、ですが、とっても似合っていますよ……あっ、そういえばお写真は!?」

    「(* ˊ꒳ˋ*) oh!」

    相変わらず助手席に座るオモダカの言葉に、Bチリが彼女ごしにパシャリと1枚。

  • 64二次元好きの匿名さん24/04/08(月) 01:40:16

    このレスは削除されています

  • 65二次元好きの匿名さん24/04/08(月) 01:51:10

    あっ!!」
    そういえば、チャンプルジムを出てから返してもらっていなかった。
    「……ったく……それさえあれば安全機能で……!でも、どのみち沈んだかも分からへんし……スマホもイカれとったかも知れへんし、ああもう!」
    幸と不幸を天びんに掛けたAチリは、頭を掻きむしりながら嘆いた。
    「(´・ω・`)…イル?」
    「……いや、任せとくわ。残りのジムでもベストショット頼んだで」
    手を下ろしてしなだれ、引きつった笑みを浮かべたAチリ。おそらく怒りのやり場が見つからなかったのであろう。
    「……いえ、違います!ほら!あちらのポピーさんとの写真ですよ!」
    2人のやりとりに気を取られていたオモダカが我に返った。
    「ああ!ちゃんとありますわ!」
    Aチリは、袴の隙間からソレを抜き出した。
    (余談だが……袴にはポケットがある事を、Aチリはナンジャモに聞いて初めて知った)
    水に沈んだ際、とっさに尻ポケットから水上に引き上げたため、表面が湿っている以外には無事だった。
    そして。
    「……見てください、ミス・ゲンガー!」
    オモダカの叫びに、ミニの周囲でモトトカゲをあやしていた一同も写真に集まった。
    「おん……こ、これ!」
    Aチリの顔がほころんだ。

    「アナタの髪の毛と顔ですよ!」

    まだハッキリには程遠い。だが正午の実験室で見た、Aチリの髪だったはずのシミに比べれば、彼女の頭と顔の輪郭が、少しハッキリと認められる。
    「……ジニア先生の言葉を借りるなら、これは推測だけど……」
    目を閉じたレホールが、ピクピクと跳ねる横髪をいじりながら考えこんだ。
    「ドッペルさんが、勝負を繰り返してるおかげかも知れないわね」

  • 66二次元好きの匿名さん24/04/08(月) 10:38:40

    保守

  • 67二次元好きの匿名さん24/04/08(月) 13:09:34

    >>65

    ポケモンセンターのソファーから飛ぶ声。長い脚をクロスして座るレホールへ、レンガ地の溜まり場から一同が顔を向く。

    「……車の中で読んだ、他の地方での言い伝え。悪の組織による事件……。それらには全て『戦い』が関わっている……」

    教え子を相手にする時とは違う、考古学者としての推論。

    「大地の化身と海の化身。

    2体の争いと、それに呼応して降りそそぐ無数の隕石を鎮めんと舞い降りた、救いのドラゴン。

    世界の始まりの日、強い光から生まれた神の分身。1人の男が招いた深き影と対峙し、怒りを鎮め、あるべき世界を取り戻した1人のトレーナー。

    たった1つの軋轢が生んだ、長い長い双子の闘争。それに終止符を打たんと怒り狂い、文明を焼きつくした2体のポケモンたち。


    ……それだけじゃないわ。

    大きな戦で愛するパートナーを失ったがために暴走し、不老長寿の秘法を手に入れた王……。

    1人の若者と共に親子の葛藤へと立ち向かった太陽と月の守護者……。

    ブライアさん達の史料からワタシが推測するに、

    ポケモンどうしの、そしてトレーナーどうしの心からの激突は、時に想像もつかない大いなる現象を生む!」

    言い切るが早いか目を開け、ピンと人差し指を立てたレホールがまくし立てる。

    「そして決め手は、ワタシたちが所持するテラスタルオーブ!そこに埋め込まれたわずかな結晶1つ1つに、ドッペルさんを元の世界に戻したいって1人1人の気持ちが集まって、1つの巨大な願いになりつつある!」

    「つまり……?」

    「……何がおっしゃりたいわけ?」

    難解な言いまわしに目を白黒させるオモダカの疑問を、自身のモトトカゲの脇腹に背中をあずけたカエデが仏頂面で引き受けた。

    「ああ!ややこしくってごめんね!

    つまり!この調子で、勝負やジムチャレンジを全力で楽しみましょうって事!」

    考古学者のいかめしい顔から教師に戻ったレホールは、花咲く笑みで答えた。

    「楽しむ……」

    すでにキハダの後ろにまたがっているリップが

    、モトトカゲの背中を見つめて固唾を飲んだ。

    「そう!自分らしくね!」

    「自分……らしく……」

    名実ともに四天王であるAチリを相手に、ナンジャモにも負けない勝負ができるのだろうか。ジワジワと湧きあがるプレッシャーを噛み潰すように、リップの唇が一文字に結ばれた。

    次は6番目。ベイクタウンジムである。

  • 68二次元好きの匿名さん24/04/08(月) 20:57:51

    あげほ

  • 69二次元好きの匿名さん24/04/09(火) 01:36:10

    しゅ、

  • 70二次元好きの匿名さん24/04/09(火) 02:03:13

    初見たけどクソおもろいわ
    あの鬱大長編と肩並べる双璧を成す作品だわこれ

  • 71二次元好きの匿名さん24/04/09(火) 11:20:08

  • 72二次元好きの匿名さん24/04/09(火) 17:50:23

    >>67

    ……ハッコウシティを出た一行は、同行を名乗り出た数名を残してひとまず各地に散った。アオキを含めたジムリーダーが散開した理由は2つ。まず、ハッコウシティからベイクへと行くは、パルデアの端から端までをほぼ横断する。現在かなりの大所帯になり、移動に支障をきたしかねないと判断したポピーやキハダの提案によって。

    そして何より、Aチリを除く全員にオモダカが耳打ちした、とあるサプライズに備えるためであった。

    「( *¯ ꒳¯*) 」

    海沿いの断崖を行くミニ。運転手もニヤつきが抑えられない。

    「チリ。気持ちは分かりますが、こらえてね?」

    助手席からBチリに肩をよせたオモダカの囁き。お茶目に微笑む彼女も、弾んだ語気を隠しきれていない。

    「おん?何やろ?総大将とウチ、えらい楽しそうやん」

    ミニの車内でクスクスと笑いあう2人を、モトトカゲにまたがるAチリが、敬礼ポーズで目ざとく気にとめた。

    「ふふ……一体なんでしょうね。あのお2人、お箸が転んでも笑いますから」

    背中のAチリを向きやり、ほのかにおどけるナンジャモ。着物の長い袖をはためかせる彼女も、当然オモダカから聞かされている。ミニの後ろについて洞窟に入る2匹のモトトカゲ。1匹の背中から垂れ下がるのは、色違いの着物の長い袖が4つ。それに並走するもう1匹は、不安げな面持ちのキハダが1人で駆っている。

    「……他の人には決して言いませんが、アナタに関してはもっと自信を持ちなさい。ミス・ドッペルゲンガーに勝つよりも、子供のお手玉や三輪車のほうがずっと難しい。そう己に言い聞かせるのですよ」

    車内の後ろでは、運転席の後ろでガチガチに強ばるリップを、隣のハッサクが独特の言い回しでなだめていた。

  • 73二次元好きの匿名さん24/04/09(火) 23:43:05

    今頃A世界側はどうなってるんだろうな…

  • 74二次元好きの匿名さん24/04/10(水) 09:04:54

    ほし

  • 75二次元好きの匿名さん24/04/10(水) 15:14:53

    >>73

    主ですが、ところどころBの世界とシンクロしてたら個人的には面白そうです


    ボウルタウンの階段に突然あいた謎の穴

    「角度といい寸法といい、ハッさんのセグレイブ……?いや、まさかな」


    「あ、あらあら〜?」

    チャレンジャーが普通に押してたら、いきなり割れてゴールに飛んでいく巨大オリーブに、見守ってるAカエデがキョトン


    マリナード市場の床につまれた食材の山


    「……?」

    いちばん奥の座敷に、まるでお客さんみたいに鎮座する謎の黒い甲冑を見つめるAアオキ


    みたいな笑

  • 76二次元好きの匿名さん24/04/10(水) 15:24:43

    >>72

    「違うの」

    リップの控えめな否定に、オモダカがミラーを覗く。

    「……負けるのは……怖くないんです」

    みずみずしい唇から、ポツリポツリと紡がれていく。

    「リップが怖いのは、サーナイトからも見放されるようなしょっぱい勝負にしちゃう事……」

    毒舌の矛を収めているハッサクも、助手席の大きな目も、無言で聞き入る。

    「今までのジムリーダー、どの人も最高にイカしててゴイスーだった。ドッペルちゃんと一緒にリップもジム巡りしてみたいって思うくらい……」

    淡いマニキュアの両手が、ドレスのミニスカートを握りしめた。

    「だから、とっても怖いの。ドッペルちゃんも他のジムリーダーも街の人たちも……リップがヘタこいて失望させたらどうしようって」

    「アナタほどの実力なら、そんな心配など無用だと思いますがねえ……。むしろ、しっかりすべきなのは他の面々……」


    「ねえ!リップさん!」

    「え?」

    ハッサクに割り込み、口を挟んだのはオモダカだ。

    「わたくし、ずっと悩んでる事がありまして!」

    悩みなどとは程遠い、活発な口調でオモダカが続ける。

    「素晴らしい勝負、いい勝負って一体何なんでしょうか?」

    「へっ?」

    無垢で無邪気な彼女から飛んできた、禅問答のような問い。面を喰らったリップはキョトンとミラーを向いた。

    「えっ。ああ、いえ!こ、今度、アカデミーの朝礼で月に一度のお話をする予定なんです!よ、よかったらリップさんの意見を伺おうかなって!」

    だが、今月の朝礼はすでに済んでいた。しかも、彼女が話した内容は『ハムタマゴのタマゴは完熟派かトロッと派か』。

    ニッカリと歯を見せているオモダカの目が慌ただしく泳いでいる。彼女なりにリップを励まそうとしているのだろうか。

    ハッサクはデタラメに気づいていたが、メンタルケアはサッパリだからと思い直し、頭の後ろに腕を組んで寝たフリをした。

    「いい……勝負……」

    力?

    一撃も喰らわず一体も倒されず、圧倒的な力で勝つこと?

    それとも、技?

    技やポケモンのタイプ、道具やきのみの効果その他を狂いなく暗記しつくし、機械のごとく緻密に戦うこと?

  • 77二次元好きの匿名さん24/04/10(水) 15:34:17

    このレスは削除されています

  • 78二次元好きの匿名さん24/04/10(水) 15:40:12

    >>76

    シンプルな質問。

    だが、考えれば考えるほど答えから遠ざかっていく感覚。悶々と悩むうち、はたとリップは思い至ってしまった。


    助手席の乙女から要職を任されておきながら、自分は、確固たる『自分』を持っていない……。

    コルサもカエデも、ハイダイもアオキも、そしてナンジャモも持っていた『答え』。己の欠点ズバリその物を言い当てられた心地がして、リップは頬に一筋の涙を流して絶句した。

    「あああ!すみませんすみません!」

    後ろに身を乗り出したオモダカが、オタオタと両手をかざす。スーツの懐から差しだされた白いハンカチ。

    「責めるつもりなんか微塵も……」

    目元をぬぐうリップ。返そうとするハンカチを制し、オモダカが続けた。

    「そうですねえ……さっきの勝負、どうでした?」

    「……ナンジャモちゃんの事?」

    「はい!お2人とも、なんかこう、すごく……アレだったじゃないですか?」

    「う、うん。その……2人とも強くって、美しくって、技の組み合わせとかタイミングとかもすっごく考えられてて」

    「そうじゃないんです。いえ、まあ、そうでもありましたけど……その、なんと言うか……」

    助手席の豊かな髪が左右に傾いて数秒。オモダカが言葉を選びとった。


    「とっても……楽しそう!じゃありませんでしたか?」

    「……!」

    トップチャンピオンの美声が、ある1ヶ所のみを強調している。

    質問と同じくシンプル。だが、リップには盲点だった答え。ボンヤリとミラー見つめていた彼女の目に、焦点が戻った。

  • 79二次元好きの匿名さん24/04/10(水) 16:50:18

    思えば、自分が気にして怯えていたのは周りの反応ばかり。
    どうすれば周りに一目おかれるか。
    どうすればキハダちゃんに釣り合うか。
    どう振る舞えば一部のチャレンジャーたちから侮られずに済むのか。
    「……とっても……とってもソーリーなんだけど……リップ、ジムリになってから楽しかった試しなんて、1回もなかった」
    「じゃあじゃあ!嬉しかった事でもいいですよ!」
    相手次第では、反抗的な態度に取られかねないリップの返答。しかし、途切れ途切れの言葉も意に介さず、オモダカはワクワクと問い返した。
    「……嬉しかった事……」
    スカートに顔をうつむけたリップ。彼女の脳内のスクリーンに、己の半生が流れだす。
    自分をからかってくる男児たちを木の棒で追い払うキハダ。
    大人たちに内緒で出かけた2人きりの洞窟。
    恐怖に必死で耐えながら、キハダの手持ちを借りてゲットした、人生で初めてのポケモン。
    「……山ほど、あるわよ……」
    キハダが猛勉強のすえ博士号を取った日、自分の家で朝まで泣き明かした事。
    視察に来た四天王たち――とくにオモダカとアオキから、住人たちが丹精こめて焼いた絵皿を絶賛された事。
    そこでBチリと出会い、意気投合してキハダ以外の友達が増えた事。
    ボウルタウンの迷路で、サインに飛び上がって喜んでくれたキマワリ達。自分の弱音や決意に、黙って耳を傾けてくれたAチリ。
    そんなAチリが、四天王を越えるとさえ評される本気のナンジャモを打ち破った瞬間。
    「ある……!あるわオモダカちゃん!リップにもある!ちっぽけな不安も哀しみも霞んじゃうくらいの、超ハッピーな思い出が!」
    嬉々と叫びながら上がったリップの顔。浮かんでいたのは、まるで宝物のありかを探りあてたような、驚きと確信に満ちた笑顔。
    「そうでしょう!あとは、その気持ちを全力でミス・ゲンガーにぶつけるだけです!……リップさんのお手並み、とっても楽しみにしてますね!」
    「……まかせて」
    オモダカの力強い後押しに、大きく頷くリップ。
    彼女の不安は、跡形もなく消え去った。とろけるような、だが芯がある目つきは、Aのリップと瓜二つだ。

  • 80二次元好きの匿名さん24/04/10(水) 21:18:48

    「リップさんはエスパータイプやんな……ドオーはどくタイプ持ちやし、初手でテラスタルせな速攻で負けるかも……」
    「それから、複合タイプのポケモンや多彩な技で、相手の弱点を突くのがお上手な方です」

    「そうだ。気をつけろ。かなり強い。
    以前、アイツから『あの時は手加減したのか』と聞かれた時には流石に叱り飛ばしてしまった……
    どれだけ自信が無いんだと」

    ミニの車外。グリーンの車体の後ろでは、3人による(ジム巡りでは恐らく初めて)まっとうな勝負談議が開かれている。

    なだらかな斜面を登りおえたミニ。
    そして2匹のモトトカゲは、洞窟を抜け、茜色の空に出迎えられた。

  • 81二次元好きの匿名さん24/04/10(水) 21:24:57

    ↓part7 前編まとめです!

    チリ婦人とドッペル婦人 part7 前編 | Writening午後4時40分。タイムリミットまで6時間を切った一行。 「ああ……自分とした事が……!異性に何とはしたない真似を……!!」 「だ、大丈夫よアオキさん! あんなに重たい鎧を……しかもスーツの上から着て勝負なんか…writening.net

    中編・後編に分けさせてもらいます。このパートで本当におしまいです……


    ナンジャモちゃんの反転verを考えるのが一番むずかしかった……。


    某「心まで鋼鉄に武装する」ジャモちゃんになりかけたので、慌てて軌道修正……着物と袴はマジで偶然の一致

  • 82二次元好きの匿名さん24/04/11(木) 00:32:30

    >>72

    ここのハッさんの例え方好き

  • 83二次元好きの匿名さん24/04/11(木) 09:38:50

    保守

  • 84二次元好きの匿名さん24/04/11(木) 19:11:52

  • 85二次元好きの匿名さん24/04/11(木) 23:40:20

  • 86二次元好きの匿名さん24/04/12(金) 08:45:22

  • 87二次元好きの匿名さん24/04/12(金) 16:48:20

    このスレ追うのが日々の楽しみ保守

  • 88二次元好きの匿名さん24/04/12(金) 23:56:17

  • 89二次元好きの匿名さん24/04/13(土) 09:24:22

  • 90二次元好きの匿名さん24/04/13(土) 17:39:33

  • 91二次元好きの匿名さん24/04/13(土) 21:37:25

    (主です。ホスト規制につぐネットの不具合で遅ればせました!みなさんの保守や>>87コメまじ感謝!)

  • 92二次元好きの匿名さん24/04/13(土) 21:38:59

    次レスからpart7 中編。リップ戦〜グルーシャ前までは行きたい。やや長し

  • 93二次元好きの匿名さん24/04/13(土) 21:42:20

    「この町の焼き物、よい仕事をしていますよね」

    「陶器だけではない。この町は、満天の星空も名物でな。いちど夜の天文台を登ってみるといい。ワタシでさえ息をのんだ」

    「素敵……!でも、ミス・ゲンガーと見に行けそうにないのが残念です……」

    「ちょっ……自分ら……なして……平気なん……!」

    「(´`;) ホォォウ……オオッ……」グラングラン

    広場で立ち木のポーズをとる5人の影。

    涼しい顔で私語さえ交わしているナンジャモやキハダ、オモダカに対して、AとBチリの体幹は限界寸前だった。

    Bチリに至っては、すでヨガの跡かたもなく、フィギュアスケーターのような片足立ちになってヤジロンのごとく揺れているばかりだ。


    ここ、ベイクタウンにジムチャレンジの類はない。その代わり、リップの準備が整うまでの間、キハダによるヨガ教室が広場で開かれるのが恒例である。

    「Aチリさん。腕の伸ばし方が甘いぞ。だから余計にふらつくんだ」

    「コココココ!」

    生徒と同じ4の字ポーズをとった、横ならびのキハダとチャーレムから激が飛ぶ。

    「の……のばせたら……苦労せえへ……も、もうアカン……!」

    「(>ω<;) モウダメ…… 」

    2人のチリは、同時に尻もちをついた。

    「ふふ。鍛え方が足りないようだな」

    2人の派手な転び方に、口元をうっすらと吊り上げたキハダ。

    「ふくらはぎが気持ちいいですね!」

    「それから、二の腕も良い心地です」

    「オモダカさんとナンジャモは正しく行えている証だな」

    残りの3人(と1匹)は変わらず不動のまま。

    「(*^^*) ヘイ!」

    差し出されたBチリの手が、Aチリを引き上げた。

    「お、おおきに」

    黒い手袋の甲が、紺色の着物の袖が、同時に額をぬぐう。

    「にしても……ハッサクさん、まだ戻らへんのかいな?」

    空洞そばのポケモンセンター近くに停車するなり、「私用がある」と言い残したまま、ハッサクは姿を消したままだ。

    「……おや、ミス・ドッペルゲンガー。ジム戦はまだでしたかね」

    噂をすれば。右に隣接する建物の影から、カールしたロングヘアーがヌっと現れた。

  • 94二次元好きの匿名さん24/04/13(土) 21:44:24

    「ハッサク先生、お戻りですか」
    立ち木のポーズを解き、軽くお辞儀をするキハダ。主に合わせて、隣のチャーレムもハッサクへ礼をした。
    「ハッサクさん、一体どちらへ?」
    「かまどまで。有名な陶工と写真を。それから、ジョウト風のキュウスと湯のみが欲しかったので、いくつかオーダーして参りました」
    「やはりそうでしたか。私も以前、茶の湯に使う抹茶碗を頼みましたが、逸品とよぶにふさわしい最高の出来でした」
    オモダカとナンジャモは、ハッサクと私語をかわしながらも律儀にポーズを保ったままだ。
    「しかし、よく続きますねえ。小生なら5秒で飽きてしまいますよ」
    両腕を組み、わざとらしく唸るハッサク。横のキハダが思わず苦笑する。……もしかして、ヨガが嫌で逃げとったんちゃうんか?
    邪推したAチリは、いたずらごころを発動した。
    「あーあ!チリちゃん、ハッサクさんのヨガも見てみたいなあ!」
    ツンと上を向き、これみよがしにAチリが叫ぶ。
    彼女と並び立つオモダカとナンジャモが、4の字ポーズのまま「えっ」と横を向いた。
    「ミス・ゲンガー。ハッサクさんは鍛える必要など……」
    「せやかて総大将、四天王の長やで?4人の中でいっとう強いんやで?そら体幹も鬼つよ……」

    「オモダカさん。Aチリさんは知らないんだろう」
    神妙なキハダのトーン。
    乗ってくるかツッコまれるか。どちらかを期待していたAチリの煽りが止まった。
    「……おん?」
    「……いいか、Aチリさん。
    ワタシ達の世界では、以前、アカデミーの教師陣で相撲大会が開かれたんだ」
    ありましたねえ……と目を伏せる4の字オモダカ。
    「校長先生の思いつきで。むろん男性陣のみで、だが」
    オモダカの相づちを受けながら、キリッとした口調でキハダの回想が続く。
    「……サワロという教師がいる。身長は2m、体重は100kgを超える。人気悪役レスラーと二足のワラジを履く、フィジカルの怪物だ」
    Aチリの喉が、ゴクリと鳴った。
    「決勝戦は、サワロ先生とハッサク先生。取り組みが始まるなり、サワロ先生が全力のぶちかましを決めた……どうなったと思う?」

  • 95二次元好きの匿名さん24/04/13(土) 21:49:07

    「そ、そら倒れる……わな……下手すりゃ吹き飛ぶ」
    「そうだとも。吹き飛んだ。……サワロ先生がな」
    「……へっ?」
    「くの字に折れ曲がり、グラウンドの地面を転がったサワロ先生は、そのまま用具入れの小屋に叩き込まれた。言っておくが、ここまでハッサク先生は仁王立ちのままだ」
    「わたくし、サワロ先生も凄いと思います……。『ちくしょう!』って叫びながら、残骸から無傷で這い出てきましたから……」
    「フン。くされ故郷での非効率きわまる鍛錬が、あのような形で功を奏すとはね」
    「……あっ」
    唖然としていたAチリは、ハッサクの憮然としたボヤきで思い至った。
    「……竜の一族や」
    1人1人の実力が、各地のジムリーダーや四天王に匹敵すると言われる修羅の集まり。その長の子……
    「そ、そらヨガも要らんわな……」
    呆気に取られているAチリをよそに、ハッサクが立ち木の2人を茶化しだした。
    「ほらほら、先に足を着いたら負けゲーム。頑張れ、頑張れ」
    「……ふふっ、た、大将……笑わせないで……いただけますか?重心が……!」
    「わ、わたくしも流石に疲れてきました……」
    オモダカとナンジャモの足が、同時に地面へ着いた。
    「鼻の差でナンジャモくんの勝ちですかね。トップもなかなか……いかがですか、解説のキハダ先生」
    「えっ?ああ、いや。ワタシには何とも」
    「うふふ……大将ったら。ギャロップレースじゃないんですから」
    「わたくしの方が耐えてましたよ!」
    認めた相手たちにはおどけるらしいハッサク。不慣れなジョークに戸惑うキハダ。ジョウト撫子のように着物の袖を口にあてて笑うナンジャモ。フンスとそっくり返るオモダカ。Bの世界の面々も、Aと形は違えど仲はいい。
    Aチリがくすぐったげに鼻を鳴らしたのと同時に。
    「準備がととのいました!天文台のバトルコートへ!」
    ベイクジムの職員が広場にやってきた。
    「まったく。ようやくですか」
    「リップ、プレッシャーに負けなければいいが……」
    「うふふ!大丈夫ですよキハダ先生!わたくしがおまじないをかけておきましたから!」
    「お、おまじない?」
    「( -ω-) yes、magic……」
    おのおの独りごち、雑談しながら広場を去る6人。

  • 96二次元好きの匿名さん24/04/13(土) 21:51:23

    「リップさんの切り札、確かフラージェスよな!」
    「えー……それが……」
    「おん?」
    一同を先導しながら、バツが悪そうに職員がうつむいた。
    「『切り札じゃないけど、とってもメンゴ』とリップさんから伝言が……」

    バトルコートには、すでに観客が詰めかけていた。しかし、肝心のリップが見当たらない。
    「……もしや、逃げ」
    「リップは断じてそんな奴ではありません!」
    「……失礼」
    コートの外。ハッサクの不吉な言葉を、カミソリの剣幕でキハダがさえぎる。
    「……」
    コートに立っている紺色の着物も、腕を組んでリップを待ちかまえる。だが、クセである貧乏ゆすり――ナッペ山にそなえて履かされた袴の下のブーツは、いっさい音を鳴らさない。
    ポケモンと向き合いたい。哀しみに振り回されたくない。Aチリは、ボウルタウンで聞かされた彼女の決意を信じている。
    「大丈夫大丈夫……おまじないおまじない……」
    祈るように手を組み、つぶやくオモダカ……すると。
    「はい。キャッチコピーは『何も足さない、何も引かない』で……あっ、い、いったん切ります」
    Aチリの背後から現れたリップ。キハダの顔が満開にほころんだ。

  • 97二次元好きの匿名さん24/04/13(土) 21:55:06

    どよめきが歓声に変わっていく。スマホをしまい、急々とコートに入ったリップ。
    「ドッペルちゃん!お客さんも!待たせてメンゴ!頼まれてた案件、すっかり忘れてて!」
    「ええって。こっちのリップさんも、えらい引っ張りだこやなあ!」
    周囲にパチンと両手を拝んだリップは、Aチリの言葉に和らいだのか、合掌をといて「んふっ」と笑った。
    「……それに、リップが今から出す子は、切り札じゃないの。それもすっごくソーリー……」

    「かまへんよ」

    「だけど……」

    Aチリの脳内は、AベイクジムやAブルーベリーでの記憶を頼りに、リップの手持ちを必死に反芻していた。
    「だけど。リップにとっては、他の子に負けないくらい……いいえ。世界でいちばんラブリーな子!」
    キハダが、まさか……と息を吐く。
    「チャーレムちゃん!出番よ!」
    「ココココ!」
    Aチリは目を見はった。たしかに切り札ではない。そればかりか……。伝言を聞いたAチリも一行も、知らず知らずのうちに「勝負用のポケモンの中から1体選ぶだろう」と思い込んでいたのだ。

    「ソ、ソイツは!」
    刮目したキハダの叫び。とともに、彼女の白衣の内側で、1個のモンスターボールが強く震えた。
    「リップが、生まれて初めて捕まえたポケモン。キハダちゃんとお揃いの子」
    キッパリとした口調で、リップのまつ毛が一行を見つめる。
    「オモダカちゃん。リップにとって最高のハッピーは、キハダちゃんと出会えた事!キハダちゃんなしでハッピーな人生なんてありえなかった!
    今度はリップが恩返しする番!このカイデーな想い、ドッペルちゃんとドオーちゃんにぶつけてみる!」
    「お前……!」
    キハダのクールな顔がくしゃりと歪んだ。
    「なるほど」と唸り、ニヤリと笑うハッサク。
    「リップさん!えいやっ!ですよ!!」
    観客にまぎれ、頭たかくサムズアップしたオモダカの叫び声。それにつられた観衆も、いっせいに叫びだした。
    リップさああん!負けんなああ!ドオーなんて怖くないぜー!!大きな声援を全身に浴び、長いまつ毛がAチリに向きなおる。

  • 98二次元好きの匿名さん24/04/13(土) 22:05:42

    「この子、勝負には滅多に出さないけど、リップのボディーガードで慣れてるから油断はノンノンよ!」
    立てた人差し指を口元で振る。ますますA世界のリップを思わせるふるまい。アウェーの雰囲気に苦笑いしたAチリは、着物と袴を一回転させた。
    「ドオーも出番やで!」
    「ドォー!」
    先手をとったのはドオー。ナンジャモのアドバイスを受け、せんせいのツメを持たせてある。テラスタルしたドオーの、小手調べのアクアブレイク。が、数百kgはあるハズの身体が、相手の胸板で受け止められた。
    「ド、ドォ!?」
    ダメージに耐えながら顔をしかめたチャーレム。その両手が、ドオーの側頭をわし掴む。
    「チャーレムちゃん!しねんのずつき!」
    「……んんん!ハァッ!!」
    エコーのかかった雄叫び。
    ズドン!!
    振りかぶったチャーレムの頭部が、ハンマーのように勢いよく下ろされた。ドオーの全身が、主の足元まで猛スピードでずり下がる。だが、こうかばつぐんはまぬがれ、何とか動けそうだ。
    「自分、やるやんけ」
    中かがみのAチリが、ジャリと地面に踏んばった。
    「ほなら、ちぃーと揺らしたらなアカンな!」
    「……来る!」
    リップの合図。チャーレムが床を踏みしめる。
    「ドオー、じしん!」
    揺れる天文台。ドオーの全身が大地をしたたかに打ちつけるたび、チャーレムが呻いた。
    「グ……グウゥ……!」
    「耐えて!チャーレムちゃん!リップがついてるから!」
    自身もよたつきながら、膝をつくチャーレムを鼓舞するリップ。
    「耐えよったか……リップさん。チリちゃん、まだ本意気やないで!」
    「クッ……!」
    ギラリと睨むAチリの眼光。
    キハダは思う。少し前の彼女なら、悲鳴を上げてたじろいでいたはず。だが、今のリップは一歩もひかない。
    「……リップはジムリーダーだもん!グルーシャちゃんやライムさんに負けないくらいゴイスーなんだから!」
    Aチリの気迫に負けじと、精一杯に鋭いまなざしで目を合わせるリップ。その意気に応えるように、満身創痍のチャーレムが立ち上がった。

  • 99二次元好きの匿名さん24/04/13(土) 22:20:38

    「キハダちゃん!見てて!チャーレムちゃんに贈る、とびっきりの超・マジックマキアージュ!!」
    右手に掲げられたテラスタルオーブへと、光が満ちていく。リップが祈るように額を当てて数秒。
    まばゆい虹色の輝きが、チャーレムの頭上に高々と投げあげられた。

    「ココココ!」
    「チャーレムちゃん!じこさいせい!」
    目をつぶり、精神統一したチャーレムのキズが癒えていく。体力は満タン。勝負はふりだしに戻った。
    「……甘くみとったわ」
    赤い瞳孔が狭くなる。
    「じしん!」
    天文台が再び揺れる。だが、じしんも収まらないうちに飛び上がったチャーレムの拳が、空中で弓のごとく振り抜かれた。
    「れいとうパンチ!」
    ドオーの眉間を撃ち抜く、重力にまかせた零下の殴打。こうかはばつぐんだ!
    「おもろなってきたな……!」
    ナンジャモとぶつかった時と同じ、獰猛な笑み。Aチリにとって、今のリップは紛れもない強者だった。
    「リップ……!キレイだ……!ワタシが見た中で……いちばん……輝いている……!」
    膝を折り、その場に泣き崩れているキハダ。
    その姿を周りにみとめられ、リップへの声援は最高潮に達した。
    じしん、じこさいせい、まもる、れいとうパンチ……。リップは、5回のじこさいせい、そしてみきりを犠牲に、ドオーのじしんのppを0に封じ込めた。
    「まっずいわ……!まもる!」
    だがAチリも、まもるによる先読みやドオーの並外れた耐久力によって、チャーレムのれいとうパンチのppを、あと1回にまで削っている。
    「チャーレムちゃん!れいとう!パンチ!」
    「アクアブレイク!こうなりゃ、根比べや!」
    空中で激突する身体と拳。床を滑って後退する両者。
    「ド……ド……」
    「ココココ……」
    ドオーも、膝をついたチャーレムも全身で息をしている。両者の体力は、のこりわずか。

  • 100二次元好きの匿名さん24/04/13(土) 22:32:07

    「……クッ……リップもゲキヤバ……!」
    「ドオー、きばりや!アクアブレイク!」
    ツメの効果で、Aチリがせんせいを取った。
    「だけど。サイのコウよ!奥の手を出せるなんて!!」
    「ッ!?」
    しかし、Aチリは失念していた。チャーレムの技には出されていない枠が1つだけある。
    「……チャーレムちゃん!きしかいせい!!」
    「!!」
    Aチリの目が皿のごとく開いた。
    最後の力を振りしぼり、飛んでくるドオーへと駆け出したチャーレム。
    「ドオオオオ!!」
    「ッシャアアアア!!」
    223kgの弾丸と、キレイな飛び蹴りが交差した。
    位置が入れ替わり、地に立った両者。
    「……ココココ……」
    先に倒れたのはチャーレム。
    「ド……」
    ドオーも、それから数秒遅れて床に突っ伏した。
    「チャーレムちゃん!」
    「ドオー!」
    互いの切り札にすがりつく2人。チャーレムは完全に昏倒している。だが、ドオーには辛うじて意識があった。
    「ド……」
    「…………」
    ヨロリと立ち上がったリップは、かざしたボールにチャーレムを収めた。そして。
    「う、う、うわあああああん!!」
    「リップ!リップ!!」
    ギャラリーをかき分け、キハダがバトルコートに踊りこむ。
    「わた、わたし、また、負け、ちゃった」
    「何を言ってる!お前は!負けてなどいない!!」
    一人称も忘れ、少女座りでくずおれた幼なじみを、キハダは軋むほど抱きしめた。

  • 101二次元好きの匿名さん24/04/13(土) 22:36:43

    「……リップさん。勝負はチリちゃんの勝ちかもしれん」
    自身もドオーを収めたAチリが、泣きじゃくるリップにかがみ込む。
    「せやけど、トレーナーとしてはリップさんの圧勝やで。勝ちも勝ち。チリちゃんホンマ、トレーナー失格や。」
    「そ、そんな事」
    「最後、きしかいせい出したやろ。
    あの時な、チリちゃんガッツリ油断しててん。力押しでいけるってな。」
    手の甲で涙をぬぐっていたリップの目が、ハッとAチリに向けられた。
    「あの時のウチ、思いっきり叱ってやりたいわ。『チャーレムの技、もう1つ残っとるやろ!』『ドオーの打たれ強さにアグラかいてどないすんねん』ってな」
    アカデミー生やチャレンジャーをさとす時のような、柔和な口ぶり。
    「この調子できばりや。リップさんの強さ……四天王の露払い、チリちゃんのお墨付きや!」
    四天王の露払い……を耳打ちしたAチリは、いたずらっぽくリップに微笑んだ。
    「……うん!」
    んふっ、と細まった目から露がこぼれた。だが、その心から哀しみの雨は上がったようだ。
    それでは!チリさんのご親戚?の勝利!そして、リップさんのご健闘をたたえ!ばんざーーい!ばんざーーい!!
    どこからともなく張り上げられた音頭。昼の名残は消えさり、空は夕焼け一色である。
    だが、Aチリたち一行にとっては、生まれ変わったジムリーダーを祝福する朝焼けに見えた。腕をくみ頷いているナンジャモ。
    「よっ!お色気担当!」とおどけるハッサク。相手を対等だと認めた証。
    「グスッ……チリ……ぎねんしゃぢゅえいは、だいじょうぶ……ですが……?」
    「(*°ㅁ°) ハッ!」
    涙と鼻水でつまり倒したオモダカに促され、Bチリは万歳の間をぬってコートに入った。
    「(* ˊ꒳ˋ*) バンザーイ!」
    「あっ、ドッペルちゃん!後ろ後ろ!」
    「ああ、せや!ほらほらキハダさん!シャッタータイムですよ!」
    「……今は、このままにさせておいてくれ」
    「(*^^*) チーズ!」
    パシャッ!
    左端と右側でピースを決めるAチリとリップ。そして、幼なじみに抱きついたままの白衣の背中。

  • 102二次元好きの匿名さん24/04/14(日) 08:05:36

    いいバトルだ

  • 103二次元好きの匿名さん24/04/14(日) 16:24:49

  • 104二次元好きの匿名さん24/04/14(日) 23:54:31

  • 105二次元好きの匿名さん24/04/15(月) 09:57:29

  • 106二次元好きの匿名さん24/04/15(月) 10:37:46

    (主です。リップさん技5つ使っとる!みきりは無しで!まとめでは修正しておきます)

  • 107二次元好きの匿名さん24/04/15(月) 10:39:42

    >>101

    「いつもいつでも 上手く 行くなんて……♪」

    午後6時15分。Aチリのタイムリミットまで、約4時間。ジム巡りも佳境だ。

    「(* ˊ꒳ˋ*)ソリャ ソウジャ♪」

    ベイクジムから借りた、分厚く黒いケープと手袋を身につけている5人。一同を乗せたミニクーパーは、ついにナッペ山へとタイヤを踏み入れた。

    車内ですし詰めとなっている女性陣は、さながらお通夜帰りのような出で立ちだ。


    「ミス・ゲンガー!チリも!お上手すぎませんか!?」

    「ナハハ……おおきに!歌うまい自覚はあらへんのやけどなあ」

    「さあさあ、次はどなたが行きます?」

    「ワ、ワタシはパスだ……」

    「キハダ先生、そんな事おっしゃらないで!それじゃあ、わたくしとデュエットしてみません?」

    だが、そんなシックな服飾とは裏腹に、ミニの中では、5人による歌合戦が繰り広げられていた。

    オモダカの童謡、Aチリ(とBチリの絶妙な合いの手による)アニメソング、リップのアイドル歌謡……

    「歌えない……ことはない。だが、リップ以外の前では……歌唱の経験が……」

    「キハダちゃん、おフルな歌謡曲がとっても上手いのよ!」

    「なっ、コラ、リップ!」

    「へえ……!ますます気になりますね!」

    「(* ˊ꒳ˋ*) シング! ウタオウ!」

    後部座席の真ん中へオモダカとBチリの催促が飛ぶ。

    「貴様ら、もれなく上手かっただろうが!」

    「なるほどお……ハードルが上がって緊張しているんですねえ……?」

    「そ、そうではない!だから、その……人前で歌うのが小っ恥ずかしいんだって!」

    ニヤつくオモダカに図星をつかれ、顔を赤く染めるキハダ。彼女に助け舟をだそうと、右端のスラッとした着物の手があがった。

  • 108二次元好きの匿名さん24/04/15(月) 10:41:08

    「……では、私が参りましょうか」
    「おや!まさかのナンジャモさんが!」
    「あまり上手くはありませんが……」
    「ご謙遜なさらず!配信で拝聴していますよ!」
    「やったぁ!ジャモちゃんの生歌だなんて!」
    はしゃぐオモダカとリップを見ながら、後回しにされたキハダは内心でホッとした。
    「……ええと。では、今回は素で歌いますね。小さい頃に観ていた児童アニメの主題歌なんですが……」
    だが、キハダは知らなかった。
    「……コホン。参ります……」
    ハードルは更に上がり倒し、
    自身も結局、有名歌手であるシンイチの「ミナモ岬」を歌わされる羽目になることを。

    ……♪切り裂いた 町が燃え 震えるジョウトに〜

    「う、うんまあ……!」
    Aチリも一同とともに唖然とする。もちろんキハダも。

    ♪闇を蹴散らして 大義をしめすの〜だ〜!

    配信での萌え声とは一線を画す、透き通っていながら力強い音色。口元をおさえたオモダカとリップは、早くも涙腺に来ている。

    ♪は・し・れ!音速の〜!
    「「「セ・キ・エーイ過激団〜!!」」」

    どうしよう、とうずくまるキハダと、運転に没頭するBチリを除く3人による合唱。

    ミニから響くこもった歌声。
    車を後ろから追いかけている普段着のハッサクは、短いマントをはためかせながら、
    車内を譲ろうとするキハダを、異性を理由に断って本当に良かった……と、モトトカゲの上で安堵するのだった。

  • 109二次元好きの匿名さん24/04/15(月) 10:44:00

    「……だから言ったじゃないか……」
    逃げるように車外に飛びでたキハダは、両手で顔を覆った顔をフォレトスばりに赤く沸騰させている。フリッジの寿司屋そばで降り立ち、ジムを目指している一行。
    「い、いえいえ!お上手だったじゃないですか!あのビブラートは誰にも真似できません!」
    「……上がっていただけだ……!」
    オモダカの慰めも逆効果らしい。憮然ともらし、キハダはますますうつむいた。

    「あらまあ!いらっしゃい!お寒い中ようこそ!」
    暗さが増しつつある夕空を照らすような、明るく暖かなトーン。ジムの前で出迎えたライムは、一行が着くのを入口で待ってくれていた様子だ。
    「ライムさん!?」
    「ええ!ケープの下が黒いシャツ……じゃなくて紺色の着物みたいだけど、貴女がドッペルさんね!」
    カールした太ましい横髪、品のいい紫のセーターに肌色のカーディガン。
    「あ、ああ。ワケあっておジャンにしてしもうて……」
    「あらまあ。でも、その格好もお似合いよ!
    ……オモダカさん。クラベルさんともども、わたしの姉がお世話になっておりますわね!」
    Aチリは数えるほどしか見かけた記憶はないが、その容貌は、まぎれもなくアカデミー教師のタイムそのもの。
    「いえいえ、わたくし達の方こそ!お姉さまの手腕には驚かされてばかりで……」

    想像。あくまで想像であるが。Aチリの脳裏には、教科書を叩きつけて教壇をへし折ったり、
    スマホで通話する生徒の髪の毛を、音速のチョーク投げで刈り飛ばすラッパーの姿がありありと浮かんだ。
    「……あら、いけない!早速ジムチャレンジにご招待するわね!リラックスして、幽々と!いきましょう!」
    ライムが手先で指した、ジムの前にそびえ立つステージ。そこにはアンプやスピーカーの代わりに、金管の棒やトランペットを持った奏者たちが10名ほど。
    タキシード姿で構える楽団が、今か今かとチャレンジの開始を待っていた。

  • 110二次元好きの匿名さん24/04/15(月) 18:48:15

    そうかこの姉妹逆になるのか

  • 111二次元好きの匿名さん24/04/15(月) 22:42:11

    リップさんの所ガチでウルっとしかけた・・・・・・。そこ拾うか!

  • 112二次元好きの匿名さん24/04/15(月) 23:00:11

    111だけど頑張って。。。
    何スレまで伸びようが最後まで追うから。クソミソに面白いss久しぶりやわ

  • 113二次元好きの匿名さん24/04/16(火) 07:37:02

  • 114二次元好きの匿名さん24/04/16(火) 12:11:48

    >>109

    ※追記


    ライム→ジムリーダーいちの人格者。


    ラッパーと兼業する姉・タイムよりも教師に向いているのでは?と噂する声も多い。

  • 115二次元好きの匿名さん24/04/16(火) 12:13:43

    「はっ、はっ、結構……しんどい……!」
    ステージの上。、Aチリの口元から白いモヤが小刻みに上がっている。
    「本物のトレーナーは、どんな時でも冷静に!幽々と対応しなくちゃいけないの!それじゃあ、いよいよお待ちかね。次はわたしとの勝負ですよ〜!」
    息を弾ませるAチリは、ジムチャレンジの難易度に思いのほか消耗していた。相手の切り札――ゴーストストリンダー(ロー)が、特別に手強いワケではない。が、フリッジジムのチャレンジ内容は、「歌いながら勝負する事」。
    それも、リズムに乗り遅れたり歌詞を間違えたら1ターン休み。 複雑なルールと意地悪なお題が、Aチリとドオーの忍耐と持久力を試す。
    「わたしからのお題は童謡です!ドッペル婦人、『サッちゃん』の2番から先ってご存知?」
    「!」
    Aチリは、思いがけないツキに恵まれた。
    ミニの助手席で、まさにオモダカが歌っていた「サッちゃん」。しかもフルコーラス!
    『……ナナのみ、やんな!?』
    まさに零れざいわい。
    無言の口のランゲージだけで、オモダカへと問うAチリ。観客の中から、キラーメのような髪がブンブンと頷いた。
    「それじゃあ、行きますよ!」
    勝負に背中を向けた指揮者の棒が、きびきびと生オケを演奏させはじめる。
    「……サッちゃんはね♪ ストリンダー、たたりめ!」
    「……ナナのみ 大好き ほんとだよ♪ ドオー、じしん!」
    「まあ……!だけど ちっちゃいから……」
    運を手繰りよせればこちらの物。
    「さびしいな♪サッちゃん♪ドオー、アクアブレイク!」
    歌の終わりと同時に、Aチリはライムに快勝する事ができた。

  • 116二次元好きの匿名さん24/04/16(火) 12:16:35

    このレスは削除されています

  • 117二次元好きの匿名さん24/04/16(火) 12:17:50

    「およしなさいチリ。まさか、最後のジムまで手押しで行こう、などとは申しませんよね?」
    「Σ( ˙꒳​˙ ;)」
    モトトカゲの上から機先を制されたBチリは、テールランプの前でガックリとうなだれた。
    今は午後6時45分。
    愛車を押して向かおうとも、ナッペジム攻略には間に合うかもしれない。
    だが、その後のお楽しみ――オモダカに耳打ちされたサプライズを楽しむ余裕がなくなる。
    「普段はジムにチェーンがあるんだけど、同じように困ってたトラックの人にあげちゃったのよねえ……」
    困ったように呟く後部座席のライム。しばし考える一同。すると、ライムの隣に座るナンジャモが、凛と声を上げた。
    「兄様を呼びましょう」

    『何だと!分かった!今ナッペ山に入った所だ!すぐ迎えに行くから待ってろ!うおおお……雪山でこそ、燃えろおおお……』
    ミニの外でたむろする一行。浮かんだスマホが、ナンジャモの袴のポケットに引っ込んだ。スピーカーモードではないにも関わらず、一同に聞こえるほどの暑苦しい雄叫び。
    「……こっちのグルーシャって、どんな性格なん?」

  • 118二次元好きの匿名さん24/04/16(火) 12:27:41

    訝しそうに顔をしかめたAチリは、彼を慕っているらしいナンジャモへ思わず聞いた。
    「……ポケモンを愛し、手持ちを信じ、己に克つ……。勝負の道を極めんと、頂点をめざす男。それが兄様です!」
    無言で空を見あげたAチリは、来たるべきギャップに圧倒されまいと、Bグルーシャの人格を想像しはじめる。
    「……チリちゃんらの反対。ってことは、相当な熱血漢?やったりしてな」
    「そ、相当どころじゃないわ。ゲキヤバよ。あの子はリップたちみたいなパンピーの次元なんか超えてる!」
    青ざめながら、かむりを振ったリップ。
    「ナンジャモくんが四天王を超える逸材だとすれば、彼はトップをも超えます。……実力『だけ』はね」
    頭痛に苛まれるように、こめかみの凹みを左手で挟んだハッサク。
    「……ほーん」
    「とにかく、ものすっごく元気に満ちあふれた人ですよ!」
    「そんな生ぬるい物ではありませんよ、トップ。アレは『パルデアの核弾頭』です。もしくは、歩く危険物」
    「そないにヤバい奴なんですか……?」
    こめかみを抑えたままのハッサクの言葉を、褒め言葉と解釈したのだろうか。
    着物とおなじ桃色に顔を染めたナンジャモが、「兄様……」とウットリ呟いた。
    沈黙に包まれた一行。通話から5分と経たないうちに、遠くから足音が聞こえてきた。

    シャシャシャシャシャシャシャ……!

    「兄様の靴の音……!」

    めったに真顔を崩さないナンジャモが、乙女の微笑みでフリッジタウンから飛び出した。

    一同もいっせいに町から歩みでる。

    雪が舞う道の遠くから、人影がぐんぐんと近づいてきた。
    「ウィンターアアア!!ヒート!!!」
    謎の雄叫びをこだまさせ、一行の前で急停止した男。
    「はあ、はあ、人命救助!!」
    「「( ゚д゚)」」
    この世界で初めて、Aチリの顔がBチリとシンクロした瞬間である。目の前の男――十中八九まちがいなくグルーシャの身なり。そのあまりの素っとん狂さ。そして、自分が知る彼とのあまりの落差に、理解不能へおちいったAチリは、とうとう壊れたように笑いだした。

  • 119二次元好きの匿名さん24/04/16(火) 12:39:08

    「ナーハハハハハ!!ナーハハハ……!」

    「おい、おい。Aチリさん……何がおかしいんだ……」

    大粒の涙をボロボロ流し、苦しそうに腹を抱えるAチリ。さしものキハダも怯えた様子で気にかけている。

    「た、た、助けてくれええ……!ナハハハハハ!」

    「その通り!だから助けに来たんだ!」

    「兄様あ!」

    雄々しい兄がわりへと満開の笑顔で抱きつくナンジャモ。

    桃色の着物を受け止めた、雪山用の黄色いジャケット。

    口元を隠す赤と青のツートンのマフラー、ワッペン付きのズボンと長靴。だが、その姿は明らかに異質。

    「ナハハハハハ!さ、さ、最後ぐらい、穏やかに終わらせてくれやああ!うわあああん!」

    何故なら。

    滝のような汗の湯気を顔中から昇らせているグルーシャ。

    その背中には、

    スヤスヤ眠るツンベアーが、ガッチリと紐でおんぶさせられていたからである。

  • 120二次元好きの匿名さん24/04/16(火) 12:55:56

    ※追記

    グルーシャ→ジムリーダー最後の砦。勝負の道に魂をこめた男。

    現役時代は冷めた性格だったが、

    ポケモン勝負にどハマりし挫折を乗りこえた事で、熱血を通り越した何かに変貌。強さと身体能力だけはパルデア1。

    マジメにバトらぬ奴らには、身体に覚えさせるぞ!

  • 121二次元好きの匿名さん24/04/16(火) 13:31:07

    (>>116を修正しました。ややこしくなってすみません……)


    「お見事!まさか2番から先も知ってる人がいるなんて!」

    「いやあ、総大将のおかげですわ!張っとった山が、たまたま当たっただけで……」

    「ハッ!もしかしてオモダカちゃん……あの歌合戦、ジムチャレンジの練習だったとか?」

    「えっ。ええ、も、もちろん!アハハハ……」

    「……小生の顔に免じて、そういう事にしてやってください、リップさん。ミス・ドッペルゲンガーも」

    「ナ、ナハハ。さすがですわ、総大将!」

    「……ウソだ。100パーセントその場のノリだったじゃないか……」

    「うふふ。皆さん賑やかで楽しいわ!」

    ライムを加え、歓談しながら寿司屋のそばに戻る一行。だが、ここでトラブルが発生した。

    「(; ・`д・´) ワ、what !?」

    「……どうしたんだろうか、チリさん……」

    「分から、ないわ……。リップ、車の事なんかサッパリで……」

    「ですが、エンジンはかかっておりますね」

    「そもそも、雪山に車で登るのが無茶やろ……」

    車の後ろで、2匹のモトトカゲに乗る4人も怪しそうだ。Bチリがアクセルを何度ふめども、彼女の愛車は一向に前へと動かない。鳴るのはエンジンの呻き声と、タイヤが雪を削るシャリシャリという音のみ。

    Aチリがジムに挑んでいる間、ますます厚さを増した積雪。アゴに拳を当て、助手席でソワソワと狼狽えているオモダカ。

    地面にタイヤをとられたミニは、フリッジタウンの出入り口で立ち往生する羽目になったのだ。

    「タイヤが空回りしとるんちゃう!?」

    ミニの後ろ、ハッサクと2ケツするAチリの叫び。

    「メイビー……」と唸ったBチリは、ミニの外に踊り出た。

    「(゜д゜) ハッサン、プッシュ!」

    グリーンのお尻に両手を添えながら、後ろのハッサクに催促するBチリ。

  • 122二次元好きの匿名さん24/04/16(火) 16:56:46

    >>119

    「ナンジャモ!速度は大丈夫か!!」

    「はい兄様!もっと速くても良いぐらいです!」

    ハッサクの後ろにまたがるAチリは、背後を見やりながら、開いた口が塞がらなかった。

    ジグザグに入り組んだ山道を登る一行。モトトカゲは3匹に増えている。

    オモダカとBチリ、その後ろにライム。キハダとリップ。ハッサクとAチリ。そして、そんな3匹のモトトカゲを後ろから追うのは、ミニクーパーの底を背中にくくり付け、二人三脚でひた走るグルーシャとナンジャモであった。

    「いいだろう!さすがボクの一番弟子!このままジムを目指すぞ!!」

    「はい!兄様と一緒ならどこまでも!」

    「どこまでも行ってもらっては困ります。大人しくジムで下ろしなさい」

    前を向いたままのハッサクが、小気味よい呼吸を立てている背後をたしなめた。もちろんだが、ミニは無人である。しかし、Bチリが愛好する鉄の塊は1トンを超える重さだ。

    「リップさんが言ったパンピーを超えとるって意味、分かった気するわ……」

    「でしょ……?グルーシャちゃんってタフ過ぎて、リップ的にはヤヤコワなの……」

    「でも、持ち前のパワーを人のために活かしてくれてるみたいだし、とっても良い子よねえ!」

    「そうですね、ライムさん!グルーシャさんは、颯爽と来てくれるヒーローなんです!

    この間も、オトシドリがわたくしに落としてきた岩を素足で蹴り返して、見事に追いはらってくれたんですよ!」

    「強さと人間性は及第点……

    そこに、スノーボーダー時分の落ちつきが加われば、もろ手を挙げて小生の後釜に推せるのですがね……」

    ボヤくハッサクの後ろで、Aチリは想像してみた。元の世界のサムい彼も、火がつけばBグルーシャのような熱いタフマンになるのだろうか。

    ツンベアーをかつぎ、車をかつぎ、岩を裸足で蹴り返す……頼もしくはありそうだが、違う意味で近寄りがたい……

    脳がショートしそうになったAチリは、いらぬ雑念を消そうと頭を振った。

  • 123二次元好きの匿名さん24/04/16(火) 23:08:23

    あげほしゅ。
    ウインターヒート!!で元ネタ分かって爆笑しちまったわ

  • 124二次元好きの匿名さん24/04/17(水) 06:54:33

    グルーシャwwwwwwww

  • 125二次元好きの匿名さん24/04/17(水) 13:02:41

    ほしゅ

  • 126二次元好きの匿名さん24/04/17(水) 15:24:33

    このレスは削除されています

  • 127二次元好きの匿名さん24/04/17(水) 15:28:15

    >>122

    ナッペ山の頂上へといたる最後の上り坂。小さな峰の合間から、モンスターボールを模した白いシンボルが光っている。


    「さあて!ドッペルくん、いよいよだな!!」


    車を背中に目をほころばせ、汗だくのグルーシャが独りごちた。


    広い坂を登りおえ、ジムを見下ろす高台にたどり着いた一行。


    「よし!この辺りでいいだろう!ドッペルくん、覚悟しろよ!ボクの勝負は真剣だ!ハッハッハッ!」


    ポカンと見はるポケモンセンターの受付や店員の目など気にせず、雄々しく笑ったグルーシャは、ナンジャモとともに身体のロープを解くと、ゆっくりと背中の車を下ろした。ズウン……という地鳴りが、山道の木々につもった雪をふるい落とす。

    「いつ来ても、まるでシンオウにいるみたい……」

    全身を包むほど長いケープのフードから、白い吐息を漏らすリップ。ジムとバトルコートを見下ろす6名の全身を、山頂のこごえる風が強く打ちつけている。

    「ごめんなさい、マフラーも用意してあげれば良かったわね……」

    「い、いえ。お気になさらず!」

    厚手のケープや手袋でも防ぎきれない極寒に、オモダカの声も、他のメンバーの身体も少しばかり震えている。

    「ドッペル婦人。兄様との戦いに備えましょう!さあ、脱いで」

    「うぇっ!?ちょっ、アカン!凍死してまう……って、ア、アレ?」

    しかし。雪に慣れているライムや、日ごろから鍛えているナンジャモ。そして、彼女にケープを外されたAチリは平然としていた。

    「何やこれ!ちっとも寒くあらへん!」

    「でしょう?その紺の着物には、防寒対策が施されているんです」

    以前まではソレに頼っていました……と、しみじみ腕組みしたナンジャモ。

  • 128二次元好きの匿名さん24/04/17(水) 15:32:15

    「:( ;´꒳`;): ウウゥ……サムサム」
    「ハッハッハッ!チリさんも寒いか!」
    一同の中でもひときわ震えるBチリに、グルーシャが豪快に笑いかける。
    「でもねえ。この厳寒がねえ。ボクにとっては天国なんだよ!!」
    グルーシャは、おもむろに上着のジッパーを外した。
    「チリさん。コレを着ておくといい!」
    「( ゚д゚)……サ、サムクネーノ?」
    「いいんだいいんだ!ボクは極度の暑がりでねえ、この上着は修行のために着ているんだよ!」
    ボタンを外してファサッと脱がれたジャケットが、Bチリにそっと掛けられた。
    ホクホク顔のBチリ。うらやましい……と、ちょっぴり眉をひそめるナンジャモ。しかし、そんな彼女たちとは対照的に、Aチリは驚きを隠せなかった。
    「グ、グルーシャ……それ、平気なん……?」
    グルーシャのジャケットの下からは、リーグのマークが左胸に刻まれた白い柔道着。
    「ボクの勝負服はコレだから!いやあ、爽やかな涼しさが身を切るよ!」
    まごつくAチリを意に介さず、テキパキとベルトを外したグルーシャは、あれよあれよとズボンを脱ぎ、長いマフラーを躊躇なく解いた。
    「さあて。ドッペル婦人。少々、準備運動に付き合ってほしい」
    防寒着である長靴までも脱ぎ捨てたグルーシャ。
    「ア、ア、アホちゃうん……自分……」
    彼の強靭さを知らないAチリが、アゴが外れんばかりに呆れたのも無理はない。
    やれやれ、と眉をへの字に首を振るハッサク。
    準備はバッチリみたいねえ、と微笑むライム。
    ワクワクと胸の前で両手をにぎるオモダカ、ナンジャモ。
    ポイポイと脱ぎ捨てられた防寒着。
    その下から現れたグルーシャの姿は、黒帯をつけた柔道家そのものだったのだから。

  • 129二次元好きの匿名さん24/04/17(水) 15:42:51
  • 130二次元好きの匿名さん24/04/17(水) 23:10:02

    あげほしゅ

  • 131二次元好きの匿名さん24/04/18(木) 08:15:03

  • 132二次元好きの匿名さん24/04/18(木) 15:45:03

  • 133二次元好きの匿名さん24/04/18(木) 23:09:01

  • 134二次元好きの匿名さん24/04/19(金) 08:54:37

  • 135二次元好きの匿名さん24/04/19(金) 16:40:25

    主です!保守感謝!お待たせしてすみません。


    このssもとうとう最終章……ですが


    ↓性格は据え置きのガラル地方に降り立つ、あの男……の予告編(仮)です


    【※予告編?】真剣勝負、しろ!! in ガラル | Writening『勝負の道に 魂こめ〜た♪ 1人の男が 今日も行く〜♪』 ここは、ガラル地方。 交代制で務めるキルクスタウンの親子も含め、 無敵のチャンピオン・ダンデと全てのジムリーダー、 そしてリーグ委員長・ローズ…writening.net

    気晴らしに書きました。本当に書くかは謎だけど概念だけ思いついた系。


    剣盾のキャラ、動かすのムズいなあ!


    ※2人チリちゃん本編は今しばらくお待ちください!

  • 136二次元好きの匿名さん24/04/19(金) 23:29:05

    フレーヾ('ー'ゞ)( 尸ー')尸フレー

  • 137二次元好きの匿名さん24/04/20(土) 08:36:37

    保守

  • 138二次元好きの匿名さん24/04/20(土) 15:51:21

  • 139二次元好きの匿名さん24/04/20(土) 16:59:13

    >>128

    (↓part7 後編)


    ナッペ山のジムチャレンジは、グルーシャのウォーミングアップに付き合うこと。彼が蹴り飛ばしてくるゴミを袋でキャッチ、彼の動きを記憶して、その通りにダンスを踊る、などなど。

    今回はシンプルに競走である。

    往復してジムそばまで戻り、早かった方の勝ち。

    レース用に整えられた広大な山道。競走用の真っすぐな一本道には、50mごとに大きなコの字のアーチが立っている。

    「な、なあ。はよライドポケモン出し?」

    モトトカゲにまたがったAチリが、不安げに隣をうながした。

    「心配はいらん!あらゆる準備が万端だ!!」

    しかし、当のグルーシャは、スピードスケーターよろしくグッと前かがみに構えている。白い柔道着。もちろん素足。だが、寒がる様子など微塵もなく、口をへの字に引き締めて、前を睨みつけたまま微動だにしない。

    「ド、ドッペルちゃん……。グルーシャちゃん、きっとそのまま行くつもりよ……」

    目を横線にしたリップの呆れ声。

    「はあ!?」

    ブーツの金具をチャリ!と鳴らしてAチリが背中を振り向いた。

    「Aチリさん、論より証拠だ。今は相手の事よりレースに集中した方がいい」

    腕を組んで真顔のキハダからも忠告が飛ぶ。

    「……どうなっても知らんで」

    後ろから見つめる一行。

    Aチリが前を向き直ると同時に、2人の横にたつジム職員から指示があがった。


    「ピストルの音で走りだしてくださいね!

    それでは、位置について!!」

    「ムッ……!」

    うめいたグルーシャの腰が、いっそう低くなる。


    「……よーい!!」

    パン!

    両者いっせいにスタートした。

  • 140二次元好きの匿名さん24/04/20(土) 17:01:51

    「うおおおぉぉぉ……」
    並走する2人。が。互いに並んだのは、わずか2秒ほど。素足に柔道着のグルーシャの姿は、
    シャシャシャシャシャシャ……!!とけたたましく雪を踏みながら、またたく間に豆つぶほどの影と化した。
    「はあああああ!?」
    語尾が上がりたおした絶叫とともに、思いきり剥かれる赤い瞳。
    「……ぉぉぉおおおおお!!」
    豆つぶ大から人の形に戻りつつ、あれよあれよとスタート地点に戻ってきたグルーシャ。衝撃のあまり、Aチリはモトトカゲのハンドリングを誤りそうになった。
    パンパン!!
    決着をつげるピストル音。
    「競走は、ジムリーダー・グルーシャの勝利!」
    「いやあ、ハッハッハ!踏み切りが甘かったよ!あと0.5秒は早まりそうだ!」
    軽く息をあげながらも、笑顔で職員と会話するグルーシャ。Aチリは、わずか100mも進んでいない。
    「ば、ば、バケ、バケモン……!」
    モトトカゲを収めることも忘れ、酸欠のコイキングばりに口をパクつかせたAチリ。スタート地点を指さして震えている彼女に、オモダカが早足で近寄ってきた。
    「……ミス・ゲンガー。お渡しするのを忘れていました……」
    「……?」
    シュンとうつむいた彼女から渡されたのは、左上をホッチキスで留められた何枚かの紙。
    表紙には、『ナッペ山のジムリーダー・グルーシャ超人伝説!』
    題字の下では、柔道着すがたの白黒グルーシャが、こちらに向かって飛び蹴りを浴びせている。

  • 141二次元好きの匿名さん24/04/20(土) 17:21:23

    「ここまで勝ち残ったチャレンジャーさんには、わたくし自ら渡してるんです。
    その……ポピーやアオキからの提案で、心の準備をしてもらう為に。もちろん、こちら側のチャンピオン――ネモさんやアオイちゃんにも配りました!」
    モトトカゲから降りたAチリは、明朝体のタイトルを震える指でめくった。
    『ジムリーダー最後の砦。勝負の実力は、トップチャンピオン・オモダカに匹敵する逸材!

    リハビリとして始めた各種の武道や習い事、あわせて24段と3級の免許を持つ。キャッチコピーは『絶対零度のウィンターヒート!』

    背丈ほどの岩を蹴り返してもビクともしない脚力。
    怪我をした野生のクレベースをかついで雪山を登るスタミナ。
    ビリリダマがひしめく地雷原で柔道の取り組みを行う胆力。
    オモダカが繰り出したドドゲザンのドゲザンを真剣白刃取り。
    武者修行と称して、10匹のサメハダーと水泳』
    「ひっ……!?」
    読みすすめるごとに、Aチリのハスキーボイスが何度も上ずった。
    『巨大なミサイルにしがみついて軌道を変え、爆発に巻きこまれながらも、成層圏から無傷で生還……』
    「最後のミサイルは、最近打ちたてた伝説です!」
    まるで家族を自慢するように誇らしげな声も耳に入らない。
    「……アカン。あきませんわ。こんなん勝てるワケあらへん……」
    傍らに立つオモダカに、油がきれたブリキ人形のごとく、ギギギ……と顔を向けるAチリ。自身の分身――Bチリは、一行と共にのんきにグルーシャへと拍手している。
    「大丈夫です!リップさんが頑張ったように、ミス・ゲンガーも!どんなにピンチでも、えいやっ!ですよ!」
    紺の着物の両手を握りしめるオモダカ。彼女は分かっているのだろうか。Aチリが全身を震わせるのは、寒さのせいでも無ければ、じめんの天敵・こおりに対する怯えのせいだけでもない事を。

  • 142二次元好きの匿名さん24/04/20(土) 23:23:26

    なんでだろう・・・ジャパニーズチャック・ノ●スの喋り方と花江ボイスの親和性、割とあって解像度高ぇぞ・・・??

  • 143二次元好きの匿名さん24/04/21(日) 04:39:51

    age

  • 144二次元好きの匿名さん24/04/21(日) 12:39:58

    あげほしゅ

  • 145二次元好きの匿名さん24/04/21(日) 21:01:48

    ほしゅ

  • 146二次元好きの匿名さん24/04/22(月) 07:36:09

  • 147二次元好きの匿名さん24/04/22(月) 15:50:55

  • 148二次元好きの匿名さん24/04/22(月) 23:37:57

    待ってる

  • 149二次元好きの匿名さん24/04/23(火) 08:38:49

    フレーヾ('ー'ゞ)( 尸ー')尸フレー

  • 150二次元好きの匿名さん24/04/23(火) 13:55:42

    >>141

    「…………」

    バトルコートで対峙する2人。コンクリートの床をしたたかに冷やす零下のふぶき。

    しかし、素肌に薄い柔道着1枚のグルーシャは、

    Aチリの眼光にも動じす、ガラスで斬られるような寒さにさえ微動だにせず、正座をしたまま目をつぶっている。

    「ドッペル婦人。兄様の瞑想は、全力で行くという合図です……!」

    柵の外から苦しげに告げるナンジャモ。

    「……その通り。いついかなる時も……どんな相手であっても、全身全霊で迎え撃たなければならない」

    瞑想したままのグルーシャの整った唇が、噛みしめるかのごとく、じっくりと語り始めた。

    「それが、ボクだ。それが、ジムリーダー最後の門番であるグルーシャの運命(さだめ)なのだ」

    つぶられていた青い瞳が、ゆっくりと開いていく。

    「雪山は危険だ。簡単に人生のコースを狂わせる……」

    自分のよく知るグルーシャと瓜二つの口癖。Aチリは無言で聞き入る。

    「……だが!危険な場所にこそ、真の宝は眠る!」

    声を大きく張りあげ、眉を怒らせたグルーシャが、威勢よく立ち上がった。

    「ッ!」

    腰だめに身がまえたAチリ。袴の下のブーツが、ジャリ……とコートを踏みしめる。

    「真の宝とは!刹那の快楽や、虚しい栄光の事ではない!魂だ!!」

    仁王立ちから喝が放たれ、ふるえる大気。ビリビリと全身を伝わる威圧感に顔をしかめたAチリ。こめかみから、ひと筋の汗が流れた。

    「ド、ドッペルちゃん!泣いても笑っても、ここがラスイチよ!」

    「Aチリさんの勇姿、リップとともに、この目に刻み込ませてもらうよ」

    「ミス・ゲンガー!悔いを残さないよう!!」

    「焦らず!慌てず!幽々と!ですよ!」

    「最後の最後で小生を失望させる事のないよう……ご健闘くださいませ」

    「(;´・ω・) サ、サムクネーノ……?」

    柵の外から向けられる、一行からの思い思いの激励。

  • 151二次元好きの匿名さん24/04/23(火) 14:09:57

    「己の生きざま!勝負への姿勢!苦しみと向き合う勇気!それこそが勝負の真髄!!

    勝負は魂!魂は心!

    さあ、ドッペルくん!いや、外つ世界のチリさん!アンタが、パルデアリーグの最高峰で禄を喰んでいるにふさわしい者か!!

    魂に、問わせてもらうぞッッ!!とりゃあああ!!!」

    ひときわ大きな咆哮。グルーシャの両腕が、頭上に高らかと上げられた。
    「来い!ボクと真剣勝負、しろ!!」
    柔道の構え――威嚇するリングマを思わせる「大」の姿勢をとったグルーシャの右手の中から、切り札・チルタリスが飛びだした。
    「ぴいぃ♪」
    おそらくこれが、AチリにとってB世界で最後の勝負となるだろう。
    「ドオー!本意気のきばりや!!」
    袴を一回転させるAチリ。……ドオーに持たせた『じゃくてんほけん』は、
    「……りゅうのはどう!!」
    「クッ……!」
    あっさりと見抜かれていた。ドオーを襲うタイプ一致のドラゴンわざ。妹分・ナンジャモに伝授した、相手を見極め、あえてテラスタルを行わない戦略。これでは、じしんも効果がない。しかし。
    「ドオー!どくどく!」
    「ムッ、やるな!」
    グルーシャが唸る。切り札のみの1vs1。当然、交代できる控えなどいない。つまり、チルタリスのとくせい「しぜんかいふく」も意味をなさなくなる。
    「ならば次なる一手だ!チルタリス、ぼうふう!!」
    「チィーッ!!」
    「ドッ……!?」
    綿毛のような翼が一心不乱にはばたくや、コート中を荒れくるう嵐のような突風。Aチリも、ギャラリーのオモダカ達も、おもわず手の甲を顔に寄せた。
    「脳天直撃の風圧!アンタは耐えられるか!!」
    驚異の重量も何のその、全身をグルグルと回されたドオーは、全身をよたつかせつつ、自分の頭をポカポカと殴りつけている。
    「ドオー。ドオー!大丈夫かいな!?」
    ドオーはこんらんした!
    「しっかりせえ!チリちゃんらの相手はあっちや!!」

  • 152二次元好きの匿名さん24/04/23(火) 14:23:56

    このレスは削除されています

  • 153二次元好きの匿名さん24/04/23(火) 14:33:33

    Aチリの背後からの訴えも虚しく、ドオーは自分を攻撃した。
    「……やむをえん。どうぐは間違いなく『じゃくてんほけん』だろうが、もうどくが回りきる前にケリを着けねば……!」
    リングマの構えを保ったまま、柔道着の懐から出されたテラスタルオーブ。
    「どうした!今までに得た宝はそんなモノか!さあ、ドッペルくん!一挙手一投足にアンタの全てをこめるんだ!!」
    「勝つチャンスはここしかあらへん……!」
    獰猛な目つきに変わるAチリ。今回は笑みを作る余裕もない。
    「はあああっ!!」
    「キュウゥ!!」
    掛け声と同時に、ひしゃげるほどの強さで投げられたオーブ。チルタリスを結晶につつみ、こおりタイプに変化させた。
    「宣言しよう!5ターンだ!5ターン以内に必ずアンタを倒す!!」
    大の字に構えなおすグルーシャ。全身から汗のモヤをあげている。
    「……やってみぃや……隆起せえ!!」
    歯をきしませたAチリの長手袋が、渾身の力でオーブを投げ上げた。燦然ときらめく地球儀。
    「ドー!!」
    ドオーの鳴き声にも、いつにもまして覇気がみなぎっている。
    「その意気やよし!行くぞチルタリス!れいとうビーム!!」
    「アクアブレイクや!いけるかドオー!」
    「ドッ!!」
    眉間にシワをよせたドオーは、いつにも増してキリッとチルタリスを見すえている。ドオーの混乱が解けた!
    「ドオー!でかしたで!!」
    するどい冷気の一閃めがけ、負けじとドオーが飛び込んでいく。226kgの弾丸にはね飛ばされたチルタリスだが、旋回によって巧みに力を逃がし、元の位置にフワリと着地した。
    「まだまだ!ここからが正念場だ!!」
    じゃくてんほけんがビリビリに舞った。ここからは互いの読み、粘りづよさが物を言う。
    「ドオー!まもる!!」
    「ムーンフォース……しろ!!」
    「負けるか!ドオー、じしん!!」
    「ひるむなチルタリス!れいとうビィィィム!!」
    「アクアブレイク!!」
    ドオーが技を弾けば、まもるを読みきったチルタリスが冷気を叩き込む。チルタリスが弱点を突けば、相討ち覚悟のドオーが突撃をしかける。ナンジャモとの勝負が派手な剣さばきだったとすれば、この一戦はエキスパートどうしの緊迫した取り組み。
    歓声すら微塵も湧かない。コートを鳴らすのは、2人の掛け声と山を吹きすさぶ風の音ばかり。審判のジム職員も、リーグとアカデミーの7名も、勝負のゆくえを無心で見つめている。

  • 154二次元好きの匿名さん24/04/23(火) 15:49:37

    「チルタリス!もう一度、脳天直撃だ!!」
    「させへん!ドオー!行ったれ!!」
    荒れ狂うぼうふうを潜って炸裂するアクアブレイク。ドオーはこんらんを免れた。
    「……雪よ!結晶よ!ボク達にふり積もれ!!天よ!!チルタリスに最後の力をおおおお!!!」
    柔道のポーズをピタリとも乱さないまま、グルーシャが天を仰いで絶叫した。互いに満身創痍。だが、ドオーの体力が若干まさっている。
    「あとは、ひたすら責めるのみ!チルタリス!れいとうビーム!!」
    「じしん!!」
    「ドオーッ!!」
    鼻息を荒げたドオーの身体が、コートの床をこれでもかと叩き鳴らす。ぐらつく審判。支え合うトレーナーの一行。
    山頂が地響きに揺れるのと、くちばしからの冷気がドオーに炸裂するのは、ほぼ同時だった。
    「ド!!……ド」
    ズゥン!!ズゥン!ズゥン
    ……すると。あれほど強烈だったはずのじしんが、にわかに収まった。
    「……ま、まさか……!」
    赤い瞳孔を点にして、足下の切り札を眺めたAチリがワナワナと慄く。ドオーは凍りついて動けない!
    「……気をやるな。勝負はまだ終わっていない」
    「ッ………!!」
    先ほどまでとは一転して落ち着きはらった、しかし毅然としたグルーシャの呼びかけ。出かけた涙を、Aチリは着物の袖で乱暴に拭った。
    「当ったり前やろがッ!!!」
    負けは確実。それでも、自身を精いっぱいに睨みつけてくる悔しさに潤んだ瞳。

    やはり、ドッペルくんの闘志は消えていない。
    目をつぶり、しみじみと頷くグルーシャ。
    倒れたドオーが主の手元にもどるまで、彼の構えが解かれる事はなかった。
    「……素晴らしい勝負をありがとう、ドッペルくん!!」
    Aチリと同じく、ひと筋の涙がグルーシャをつたった。手向けの言葉とともに、れいとうビームが追い討ちをかける。
    「……自分、やるなあ」
    勝敗は決した。両手を握りしめ、気だるげにボールを取り出したAチリ。柔道の構えを解き、グルーシャも仁王立ちに戻る。
    トドメを刺されたドオーは、氷漬けのまま静かにボールへと収められた。

  • 155二次元好きの匿名さん24/04/23(火) 22:22:10

    「勝者、ジムリーダー・グルーシャ!」
    2人の横――コート外の中央から、審判の判定が下る。
    「…………」
    相手と対峙したまま、顔をうつむかせたAチリ。くしゃりと歪んだ両目から落ちる水滴が、コートにポタポタと染み込んでいく。
    「ミス・ゲンガー……」
    柵の外から飛びこもうとしたオモダカの肩を、無言のハッサクがかむりを降って止めた。
    「ナ、ナハハ……ウチ、最後の最後で、負けて……もう……た……!」
    ずぶ濡れの顔で一行を向きやり、作り笑いで堪えようとするAチリ。しかし、そんな虚勢も一瞬で崩れる。四天王の本分は、勝つ事ではない。
    相手に壁として立ち塞がるのが役目。それを越えられるのは、むしろ大きな喜びである。
    だが。今のAチリは、ただのチャレンジャー。いちトレーナーとして相手に負けたのだ。要職についてから久しく味わってこなかった悲しみ。悔しさ。屈辱。
    「ごめん……ごめんなドオー……!ジム巡り、ずーっと気張らせっぱなし……やったのに……!
    チリちゃ……勝たれへんかっ……!」
    紺の袴が雪に塗れるのも構わず、膝を床についたAチリ。うずくまり、ドオーの入ったボールを胸に抱く姿に、一行も悲痛そうに眉をひそめている。
    「……ドッペルくん」
    紺の着物の頭上から、仁王立ちのグルーシャが問いかけた。
    「真剣に取り組んでいたか?」
    「当たり……前や……」
    脳内を駆けまわるのは、「たら」「れば」ばかり。じゃくてんほけんではなく、ナナシのみを持たせていたら。まもるで様子見をせず、始めから攻撃をしかけていれば……
    「命がけで勝負に打ち込んでいたかッ!」
    「当たり前やぁッ!!」
    グルーシャの雄々しさを上回るほどの怒声。Aチリは、今にもつかみかからんほどの剣幕で、泰然と立ちつくすグルーシャを見上げた。
    「……そうか」
    真顔のまま腰をかがめたグルーシャ。彼の白い手が、自身の懐をまさぐった。
    「……なん、やねん……」
    柔道着から取り出されたのは、ナッペジムのバッジ。
    「受け取ってくれ。免許皆伝だ!」
    バッジを握らされたAチリの右手が、力強い微笑みとともにグルーシャの暖かな両手で包み込まれた。
    「お情けの、つもりかいな……」
    「お情け、おこぼれ……ボクが最も嫌いとする言葉だ!」
    青い髪を睨んだまま鼻をすするAチリの邪推は、曇りのない笑みで一蹴された。

  • 156二次元好きの匿名さん24/04/23(火) 22:52:20

    「思い出してほしい!ボクが、最初にぼうふうを出した時のことを!!なんと言った?」
    「……脳天、直撃?」
    「それは2回言ったな……いや違う!ボクではない!キミの言葉だ!」
    「な、なんか言うたっけ……」
    「ドオーがこんらんした時、アンタは何と言った!?」
    「……そんなん、覚えてへんよ」
    すねた口調で漏らすAチリ。悔しさと落胆に袖をぬらし、思い出すどころではない。
    「『大丈夫か』……こんらんしたドオーに向かって、アンタはこう言ったんだ!!」
    握りしめたAチリの右手を、ブンブンと縦にゆらしたグルーシャ。まるで、利発な子どもをほめるように、両目はニッコリと細まっている。
    「ボクの元まで勝ち上がった者は、今までに何人もいる。だが。いざ窮地におちいると、やれピンチだ不幸だと嘆くばかり。挙げ句の果てに、勝敗が決まった途端にふてくされ、投げ出す者だらけ。
    真っ先にパートナーの心配をする者など、ほとんどいなかったんだ」
    「あっ」
    合点が行ったように見開くAチリの目。
    「嘆かわしい事に!中には、必死に頑張っている手持ちへ向かって、心ない罵倒を浴びせた不届き者もいた。そんな奴らは、片っ端から身体に覚えさせてやったよ!
    ポケモンセンター前の斜面があるだろう?あそこから山道へ!巴投げでねえ!えいって!どいつもこいつもボウリングの玉みたいに転がっていったなあ、ハッハッハ!」
    面を食らったのは、不埒なトレーナーの存在に対してか。はたまたグルーシャの暴挙へ対してか。
    勝負バカから、(人間ばなれこそしているが)朗らかな青年へと戻ったグルーシャに、「ホンマかいな、ソレ?」とAチリが破顔する。
    『絶対零度のウィンターヒート』『パルデアの核弾頭』
    破天荒で型破りな彼が秘めていた、トレーナーとしてかけがえのない優しさ。

  • 157二次元好きの匿名さん24/04/23(火) 23:35:48

    「生き様、姿勢、勇気……大切なのは魂……肝に銘じとくわ。ホンマおおきに」
    晴ればれとしたAチリの眼差しから、すでに涙は消えていた。スクッと立ち上がったAチリの拳が、自身の左胸をトントンと叩く。
    彼女の肩をパシパシと叩くグルーシャ。勝負の緊張が、ようやくほどけた。

    「ミス・ゲンガあああ……!」
    Aチリを抱きしめに、全力疾走でコートに駆け込んできた半ベソのオモダカ。

    「ジムの制覇、大大大あっぱれです!」

    「えらいわ!ドッペル婦人に花丸満点をさしあげなきゃ!」

    「Aチリさんなら、必ず成しとげると信じていた」

    「リップもよ、キハダちゃん!
    ドッペルちゃん、サイのコウにマーベラス!!あとは元の世界に帰るだけね!」

    オモダカと組み合うAチリにゾロゾロと群がった一同も、彼女の快挙を大きな拍手でたたえた。
    そして、ハグする2人ごしに笑顔で頷くグルーシャを見やったハッサクが、

    「本当に、何と申しますか……。つくづく……つくづく!グルーシャくんの人間性と実力に、昔のクールさが戻ればどんなによろしいか!」
    Aの自身を彷彿とさせるトーンで嘆くや、一同と当のグルーシャが高らかに笑った。
    「(≧∇≦)サイゴノ!ハイ、チーズ!」

    パシャリ!Aチリを和やかに囲んだ一行を見おろす、雪山での1枚。Aチリにとっては、これが最後のポケモン勝負となった。そう、ジム巡りに関しては。

  • 158二次元好きの匿名さん24/04/24(水) 08:58:06

    「ジム巡りに関しては」おっ四天王戦か??

  • 159二次元好きの匿名さん24/04/24(水) 18:35:17

    待機

  • 160二次元好きの匿名さん24/04/24(水) 23:17:37

    (っ`・ω・´)っフレーフレー!!!

  • 161二次元好きの匿名さん24/04/25(木) 09:19:24

    保守

  • 162二次元好きの匿名さん24/04/25(木) 12:48:25

    支部も追ってるよー
    あっちのゼロエリアの飛び方わろた

    おバカだけど悪い子じゃないチリちゃん
    弱弱だけどいざって時には頼りになるオモダカさん
    口悪いけど優しいハッサクさん

    反転のしかたが上手いんだよなぁ。

  • 163二次元好きの匿名さん24/04/25(木) 16:54:42

    ……午後7時30分。いよいよ一行は、始まりの場所・てらす池を目指していた。
    「ウチほんま、よくこの子らに太刀打ちできたわ……!」
    ゴンドラの中から、前の光景に唖然とするAチリが呆独りごちた。ミニの天井に縛りつけられた細長いロープ。その余らせた2本の先端を、涼しい顔のチルタリスが両足で握り、ムウマージは口に咥えている。
    重さ1トンを超える無人の鉄塊は、飛行機にも負けない速さで進んでいた。北パルデア海の上を。
    「まったく……トップが早めに伝えていれば、こんな無茶はせずに済んだものを」
    ミニの後ろに続くのは、密集した7台の空飛ぶタクシー。元凶の半分――オモダカは、隣あったゴンドラの中のBチリと、のんきに手を振りあっている。そして、もう半分――グルーシャはというと。
    「未開の部族は実在するのか……まってろよキタカミ地方……!」
    修行用のスポーツウェアとも、ジム戦での柔道着とも違う服装で、フロントガラスをにらみながら腕を組んでいた。

    『ドッペルさん!大変なの!えっとその……池から大魔神が出てきて、それで……』
    雪山で記念撮影を終えた10秒後。オモダカのスマホに着信が入った。浮かんだスマホからの第一声は、慌てふためくレホールの声。
    『ぐざ……生贄が熱湯に放りこまれ、あちこちから炎があがり、こちらは大騒ぎだぁ!』
    相変わらず詩的な言い回しのハイダイも聞こえる。
    『とにかく一大事です!
    池から現れた怪物のせいで、コルサさんが腰を傷めるわ!自分の中性脂肪はなかなか減らないわ!』
    『とにかく、ちょっぱやで池に来い!来れば分かるさ!バカヤロー!』
    むさ苦しいアオキと、何故かいるらしいクラベルの声で通話は途切れた。
    「な、なんなん?生贄が大魔神で、腰いわしたコルサさんが中性脂肪……?」
    「とにかく、わたくし達の手助けが要るみたいですね!」
    内容が支離滅裂。だが、目を白黒させたAチリをニッコリとうながしたオモダカ。

  • 164二次元好きの匿名さん24/04/25(木) 16:58:22

    「何だと!怪物だって!?」
    「ふふ。世話がやける奴らだ」
    「もう皆、てらす池にいるみたいね!さあドッペルちゃん、リップ達もレッツラゴーしなくちゃ!」
    「さようですね。あまり待たせると野暮……失礼。小生からは、これ以上なにも」
    「(* ˊ꒳ˋ*)」
    オモダカだけではない。ボヤくキハダ。身を踊らせるリップ。何やら口を滑らせかけたハッサク。そしてBチリ。どういう訳なのか。異常事態?にも関わらず、皆がみな、一様に微笑んでいる。
    ……握った手の甲をプルプルとかざす『パルデアの核弾頭』を除いて。
    Aチリは、いかめしく首をかしげた。そう。先ほどの通話は、すでにオモダカから一同に伝えてある『とある事』を、Aチリに隠すための芝居……だったのだが。
    「ドッペル婦人が帰るまで、まだ3時間以上もあるわね!今から空港に行っても」
    「空港に行く手間も惜しい!ちょっと待っててくれ!」
    華やぐライムを、ウィンターヒートの叫びが止めた。
    「あっ!違うんですグルーシャさん!待っ……」
    手を伸ばしたオモダカの制止も間に合わず、ジムに爆走するグルーシャ。しまったああ……と、青い右手が己の顔を覆った。隣に立ったハッサクの左手も同じく。
    一度きめたらテコでも動かなくなる男。思い込んだら誰にも止められない男。よりによってグルーシャに伝え忘れるとは……。後から悔いると書いて後悔。そして、時すでに遅し。ものの30秒とたたずにバトルコートへ戻ってきたグルーシャの服装。
    「いいっ!?」
    Aチリが、両手のひらを見せながらのけぞった。
    「さあ行こう!未開の部族を捜しに!!」
    フーフーと白い鼻息を出す彼の姿は、水色の迷彩服に、黒い軍用ブーツ。後ろで1本に束ねた頭の上に緋色のベレー帽。おまけに、パンパンにふくらんだ大きなリュックサックまで担いでいる。
    「き、貴様。探検にでも行くつもりか?」
    「いかにも!通話の内容が正しければ!てらす池には、間違いなく未知の部族が住んでいる!」
    うなだれて不快そうなキハダからの当てこすりに、真剣な顔で答えたグルーシャ隊長。
    「( *°ㅁ°* ) Really!?」
    「そうだともチリさん!さあ、ナンジャモ。ムウマージを貸してくれないか!」
    「は、はい!」
    「……マ?」
    ポン!と小気味よく出されたムウマージも、キョトン顔で主を見ている。

  • 165二次元好きの匿名さん24/04/25(木) 17:03:25

    このレスは削除されています

  • 166二次元好きの匿名さん24/04/25(木) 17:11:56

    「ボクのチルタリスと力を合わせれば、チリさんの車など10分でキタカミに運べるはずだ!

    ……チリさん。ロープのような物はあるか?」

    「(*^^*) ィイエス!」

    グルーシャからの指示が飛ぶ。

    一行を引き連れミニまで戻ったBチリは、
    トランクから引き出した牽引用のロープを目の前でパン!と張ってみせた。

    「ハッハッハ、準備がいいなあ!

    では、今からお願いする通りに結んでほしい!ナンジャモはタクシーの手配を!」

    「はい兄様!すみやかに!」

    ミニクーパーの天井にテキパキと巻かれるロープを見守る一行は、グルーシャが何を考えているのかを徐々に理解しながらタクシーを待った。

    「やっぱ、サムいグルーシャのがええわああ……」

    B世界の総大将にも、変人マニアの気が多分にあるらしい。

    脱力したAチリは、ジム戦の時よろしくその場にくずおれた。

  • 167二次元好きの匿名さん24/04/25(木) 23:19:44

    いい意味で予想を裏切ってくる

  • 168二次元好きの匿名さん24/04/26(金) 07:29:03

    保守

  • 169二次元好きの匿名さん24/04/26(金) 12:52:59

    そらとぶタクシーチルタリスver

  • 170二次元好きの匿名さん24/04/26(金) 15:52:57

    >>166

    ミニクーパーと7台のタクシーが降りたったのは、池に繋がる坂道の前。

    「( ᐛ )オヤ?」

    「……とっても静かですね」

    車内のBチリとオモダカが不審がる。三角形の鳥居の向こうからは、まるで人っ子ひとりいないかのように、物音ひとつ聞こえない。

    「まさか、部族によって壊滅させられたのか……?」

    ミニの後ろから、眉間に汗を垂らしたグルーシャが唸る。

    「ま、まあ、上がって確かめてみましょう!」

    ミラーごしに困り笑いのオモダカ。リップから貸し出され、一同がナッペ山で身につけていた黒いケープは、無人の後部座席に折りたたんである。

    「1週間ぶりにしちゃ、どえらい久々にここ戻ってきた気するわ」

    「池に始まり池で終わる、か。いつかのダース・ラリーではないが、まさに運命の輪が閉じる」

    「んふふ。何だかロマンチックな例えね、キハダちゃん!」

    「油断するな!部族の戦士が待ち伏せしているかも知れん!」

    思い思いに独りごちながら、ミニクーパーに徒歩で続く一行。地面から顔を出している細長い丸太の上を、夜の闇に紛れたシックな緑の車体が、ガタガタと登っていった。


    と、池に入った瞬間。

    「うわっ、まぶしっ!?」

    木の渡しの向こうからカッと照らされた大きなストロボ。

  • 171二次元好きの匿名さん24/04/26(金) 15:57:41

    パァン!!
    「Σ(・ω・ノ)ノ」ビクッ
    続いて鳴った破裂音に、ハンドルから手を離して驚くBチリ。
    「銃声だ!伏せろ!!」
    素早く地面に這いつくばったグルーシャ。鳥居をくぐった一行……もとい、Aチリを出迎えたのは……
    「「「ジム巡り、お疲れ様(でした)(でスター)!!」」」
    「おめでとうございますドッペル婦人!アナタなら、アナタなら制覇できると……自分は……確信していましたッ……!」
    「待ってたぜコノヤロー!」
    袖を顔に当てる熱血サラリーマン。何故かいるクラベル。
    それだけでは無い。岩陰から躍り出てきたジムリーダーや教師たち、さらには大勢のアカデミー生の姿だった。
    「へっ?」
    事態が飲み込めないAチリは、クラッカーの紙リボンやふぶきを着物の肩に乗せたまま、キョトンと目をしばたかせている。
    「さぁーて!私たちの記憶が確かならば!」
    「ついに主役のお出ましですね!!」
    「おっそいわねえ!腕によりをかけたんだから、感謝しなさい!」
    ハイダイが、腰を左手でおさえたコルサが、ツンと頬をふくらませたカエデが。Aチリの袖と背中をグイグイと押し、敷地の中に招きいれる。
    「こ、これ……」
    七色の光をのぞむ岸辺には、池が見えるように配置された大きなテーブルが3台。そして看板と渡しのそばには、配膳ようのワゴンがいくつも置かれ、湯気が立つ大きな寸胴ナベやジャー、Aチリの手持ちを模したケーキやクッキー、その他ドリンクのペットボトルや水筒がズラリと並べられている。
    「ささ!特等席はこちらです!」
    コルサの案内で主役が座らされたのは、池の輝きをもっとも堪能できるⅢのならびのど真ん中。
    それも最前列だ。
    「……こないに、こないに神々しい景色があったなんて……」
    覆った両手の隙間から、涙声をもらすAチリ。いつぞやの自分を彷彿とさせられたオモダカが、背後でクスリと笑った。
    「さあ!私が腕を振るったスペシャリテはこれだい!」
    ハイダイが鍋からよそうスパイスの香り。目の前に出された銀の皿に、うっとりと見入るAチリ。彼女を囲む一同のお腹まで、クルル……と鳴った。
    「ホウエン地方の海鮮物を〜、ふんだんに!使用したカレーライス!疲れた身体でもスイスイ食べられる、程よい辛口にぃ仕上げましたぁ!さあ!ボン・アペティ!(召し上がれ!)」

  • 172二次元好きの匿名さん24/04/26(金) 16:00:34

    「先に食ってええん?」
    「いいんです!主役が口を付けなければ、パーティは始まらないでしょう?」
    テーブルクロスが垂れさがった足もとでは、腰に手をやったポピーがAチリを見上げている。
    「ほな、いただきます!」
    一口を運んだAチリ。とたんに赤い瞳を潤ませた。
    「…………んま……!んまいわ……!人生で食った……メシの中で……いっとう美味いかも……しれへん……」
    紺の着物の鼻がぐしゅりと鳴った。
    「なんと、涙を……私のカレーは、オモダカ嬢のサンドイッチと肩を並べたかな?」
    イタズラっぽく笑いかけるハイダイに、アハハ!と弾けるオモダカの声。
    「……では、わたくしたちも頂きましょうか!ミス・ゲンガーお疲れ様パーティ!彼女を囲んでお話する時間は、まだまだたっぷりあります!」
    時刻は午後8:00ちょうど。オモダカの一声で、一同はワラワラと鍋に群がりはじめた。
    「…………部族に襲われたのでは、なかったのか」
    鳥居の近くで皆のやりとりを見つめていた、ほふく姿のグルーシャも含めて。

    自宅から駆けつけたスグリと姉・ゼイユ。そして、休学しているゼイユを訪問に訪れていたブライアまで混じり、宴はますます盛況だ。
    「まったく。ゾッとしないね。いい歳をした者たちが、こんな夜半にドンチャン騒ぎとは」
    予備で用意されていたパイプ椅子に座り、喧騒を見やる姉弟とブライア。
    「……うふふ。先生、口が笑ってる」
    「なっ……いや、コレはだな……」
    「ったく、素直に楽しいって言やあいいのにさ」
    「何か言ったか!」
    「べっつにぃー」
    自分を挟み、紙コップを片手に言い合うスグリとブライア。2人のやりとりを、くすぐったげに中央で笑うゼイユ。
    「……でも、何だかうらやましいなあ」
    「…?何がだい、ゼイユくん」
    だが、思い思いにはしゃぐパルデア勢を眺める目つきは、3人そろって楽しげだ。

  • 173二次元好きの匿名さん24/04/26(金) 16:18:21

    「前は不覚を取られたが、今宵こそは!サワロ様の妙技を味わうがいい!!」
    「……妙だったのはアナタの負けっぷりでしょう、サワロ先生。」
    「いいぞお、やれやれええ!」
    「サワロ先生……また、くの字に吹き飛ばなければいいがな……」
    木の渡しを土俵がわりに、仁王立ちのハッサクへ組み付くサワロ。野次を飛ばすクラベルとともに、目を横棒にしたキハダが取り組みを見守っている。

    「クラベルさんや教師陣、それに元スター団のみなさんまで、どうしてここに?」
    「ワタシがジニア先生と校長先生に提案したの!向こうの世界で集まってる人達と鏡合わせ。
    しかも、人数に不足があったらダメなんでしょう?だから、念のために呼んでおいたわ!」
    「なるほどお!!」
    枯れ草の生えた岩場のそば。丸い小さな机でチェスを打つオモダカとレホール。だが、対局は長く続かなかった。
    「アカデミーのレホール先生とやらはアンタか!」
    「た、たしか、グルーシャ……さん?」
    「ちょっと付き合って欲しいんだが、来られるか!」
    「えっ?き、急に言われても、ワタシ、そ、その授業と研究が恋人っていうか……ヒャアア!?」
    水色の迷彩服。赤いベレー帽。汗だくのグルーシャが、顔を赤らめたレホールの腕を引っ張っていく。いきなりの出来事に、オモダカはキョトンと見守るしかなかった。

    「えー、我の推測が正しければ。間もなくここ、てらす池では……って、何だオマエら!!」
    池の浅瀬をバックに、浮かべたスマホに向かって、後ろ手を組みながらニヤニヤと話しているジニア。
    「時間がないんだ!何度もリテイクさせるんじゃない!」
    しかし、自分の前を横切った2人の人影に邪魔され、ひどく立腹している様子だ。
    「すまない!だが、アンタも一瞬だけコイツを見てくれ!!」
    岩の根元を凝視する、グルーシャの緊迫した口調。
    「た、多分ワタシのせいかもしれないけど……付き合ってあげて?」
    「やはりいた!謎の部族が住んでいる証拠を見つけたぞ!!」
    「なにぃ?」
    引きつった苦笑いのレホールとともに、頭をかいたジニアも、2人と同じく岩へかがみ込んだ。
    「この焦げ跡を見てくれ!何者かが火を炊き、儀式を行っていた証じゃないか!!」
    「あのなあ。こりゃどう見ても野生のマグマッグ……」
    しっ、と構えられたレホールの人差し指。

  • 174二次元好きの匿名さん24/04/26(金) 16:47:30

    「この地上に怪奇が、また1つ……」

    神妙な呻きとともに、グルーシャのスマホが焦げ跡をパシャリと記憶した。

    「……ところで、ジニア先生も何やってたの?スマホにブツブツ話してたみたいだけど」

    しゃがんだまま、レホールが横のジニアをポカンと向いた。

    「なに、学会に発表しようと思ってな!1人の女が平行世界に帰る瞬間を映像に残して!」

    ヒャハハハ!と高笑うジニア。
    だが、数秒だけ考え込んだレホールが、これまた苦笑いで機先を制した。

    「あのー……発想は良いと思うわ。けれど……」

    「……何だ」

    言いしぶっている様子のレホール。彼女のじれったさに、六角形のメガネがムッと顔をしかめる。

    「……旅立った後のドッペルさんまで映しておかないと、意味が無いんじゃ……」

    「……!しまったあああ!!」

    仏頂面が、みるみる驚愕に変わっていく。

    マッドドクの雄叫びが、七色の浅瀬に響いた。

  • 175二次元好きの匿名さん24/04/26(金) 23:23:11

    終わりが見えてきてさみしい

  • 176二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 08:16:23

    待ち

  • 177二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 12:20:05

    >>174

    「ドッペルちゃんって、隅から隅までチリちゃんとクリソツよね……」

    「こ、こないに見られんの、なんか恥ずいわ……」

    ほとりのテーブルでは、イスに座るAチリの両頬をリップがはさみ、彼女の目鼻顔だちを至近距離で凝視している。

    「ね、ねえ、ドッペルちゃん……1回でいいから……」

    「お、おん?」

    「チ、チューしてみていい?」

    「はあ!?」

    「ち、違うの!ホッペタによ!その、チリちゃんとプニプニ具合までクリソツなのか確かめたくって」

    「ほ、ほっぺたかいな……まあ……それぐらいなら」

    「本当!?」

    「ほ、ほら」

    キュッと目を閉じたAチリの顔が、左下に傾いた。

    「じゃ、じゃあ遠慮なく……」

    ぷちゅううう

    「……なあ、ちょい待ち」

    ううううう……

    「長い長い長いて!」

    着物の長い袖をシェイクさせ、リップを引き剥がそうとするAチリ。

    「……んふっ。クリソツどころじゃない。瓜二つだったわ」

    「さ、さよか……」

    テーブルにゲンナリと突っ伏した右頬には、鮮やかな紫のキスマーク。

    「なるほど、さすがトップモデルのコーデスキル。あえて汚しを入れるって発想……アンニュイさが増すわねん」

    2人の絡みを横のテーブルから見ていたペパーは、デコシールが施されたペンでノートにメモをとっている。


    「何が『カワバンガ!』だっつんだよボタンのアホ野郎!!」

    池に転落したサワロが犬神家と化し、相撲が無事に終わった頃。

    「あんなカスゲー、カワ・ファッキン・パモのクソバンガだぜ!!」

    渡しの向こうから、歯切れのいい罵声が聞こえてきた。カードゲームに興じているスター団の円にネモが割り込んでいく。どうやら対岸でスマックブラザーズを遊び、ボタンのガノンド○フにボロ負けしたらしい。

  • 178二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 12:23:41

    「なあ、誰か仇とってくれよ!あらゆる希望がケツの穴から抜け出していく気分だぜ!」
    「相変わらず、はしたないお嬢様ですわね……」
    手札を持った素顔のメロコが、ため息をついている。

    「……ビワ姉さま笑ってますわ。
    『ボタンちゃん、eスポーツすっごく強いもんね!』ですって」
    般若のごとき形相でネモを睨みつけるビワの言葉。彼女の感情表現は、超がつくほど不器用ゆえに、こうしてメロコやオルティガによる翻訳が不可欠なのだ。
    「ジョーカー持ってる奴は『Hell yeah』って叫べやあ!!」
    「我地獄屋持(レ)死神」
    ピーニャの雄叫びに、シュウメイが漢文で応えた。
    「……じい」
    「ハッ」
    オルティガが宙に呼びかけるや、どこからともなく執事服のイヌガヤが姿を現す。
    「ボスのお相手を。お前のマ○スならば、彼女のガノンド○フに引けをとるまい」
    「万事、じいにおまかせあれ」
    パイプチョコをくわえ、口の端でチュウチュウと吸っているオルティガ。背後の執事に指図するポーカーフェイスと言動は、さながらガラル紳士だ。
    「承知いたしました。ネモ様は立ち会いを」
    「そう来なくっちゃ……って、はっや!おいコラじじい!おいて、いくなって……」
    残像が残るほどのスピードで渡しを超えて行ったイヌガヤ。ただでさえ体力がないネモは、看板のそばで息をついている。
    「ねえ、スグくん」
    「……どした?」
    ふだんは勝手気ままのバラバラだが、いざと言う時は団結する。誰かが困っていたら、迷わず手を差し伸べる。
    「パルデアの皆さんって……何だか家族みたい、じゃないかな?」
    「おっ。ねーちゃん、言うねえ」
    「まあ、ゼイユくんが言うなら同感だね」
    「はあ!?なんだよそれ!」
    キレのあるスグリの叫びにつられ、気弱な病弱乙女も、滅多に笑わない鉄の女も破顔した。
    そして、楽しい時ほど早く過ぎる。
    こればかりは、フトゥーの言う「心」と並んで、永久不変の法則かもしれない。
    時刻は午後10時を回った。Aチリに残されたタイムリミットまで、あと20分。

  • 179二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 12:24:50

    イヌガヤがムベさんに見えるんだがww

  • 180二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 17:23:00

    >>178

    「みなさーん!あと20分ですわよー!

    ドッペルさんにプレゼントがある方は、今のうちにー!」

    響きわたるポピーの号令に、ライムのオペラ、タイムのラップが融合した即興リサイタルは中断した。2人に群がっていたメンバー、そして、Bチリがちゃっかり録画していたジムチャレンジの一部始終を鑑賞する一同もまばらに散り、自分のバッグや懐から、思い思いの品を手にAチリへと持ちよって行く。

    「今回は写実的に描いてみました!何とぞ、お納めください!」

    コルサからは、カラフルに刷られた版画と原版の板。

    「おおきに……ごっつ嬉しいですわ……!」

    バトルコートを背に、カッターシャツ姿のAチリとドオーが隣あっておどけている。

    「わたしが監修したフードプロセッサーよ!せいぜい、大事にっ……」

    涙ぐむカエデからは、Bのパルデア地方ではベストセラーとなっている、彼女じるしの調理器具。「ドッペル婦人よ!もーしも、またいつか会えたならばあ、いつでも舌鼓をうちに来るがいい!」

    ハイダイからは、「期限 : 一生」と書き足された、自身がオーナーをつとめる高級飯店の8割引きチケット。

    「長かったようで短い……しかし、やはり長かったような不思議な1週間でしたね!」

    アオキからは、後頭部に白い文字でサインの入ったダース・ラリーのヘルメット。

    「……多くは語りません。お元気で」

    寂しげに微笑むナンジャモからは、1枚の短冊。どうやら俳句か短歌らしいのだが、流れるような細い筆致は、文末の「じゃも」という文字しか判読できない。Aの世界に帰ったら、オレンジアカデミーに解読を頼んでみようか。

    「ドッペルちゃん。いいえ。もう1人のチリちゃん。アナタが来てくれたおかげで、リップは変われた。もし二度と会えなくっても、アナタの事、絶対に忘れないから!……だから」

    リップからは、物がわりの熱いハグ……からの。ぷちゅううう……

    「うひぃ!?」

    「……こっちのリップの事も、絶対に忘れないでね」

    「あ、ああ、分かっとる。こ、こないな……ユニークなリップさん、忘れるわけあらへんがな」

    Aチリの両頬に増えた、2つのキスマーク。ほんのり露を浮かべたリップの目が「んふっ」と細まった。

  • 181二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 17:26:17

    「私からはコレ!ドッペル婦人の歌声を編集して、原曲のインストに乗せてみたの!」
    ライムからは1枚のCD。円盤の表面には、ジムトレーナー戦やライムとの勝負で歌った曲名。そして、ステージで向かい合うAチリとライムの写真が刷られていた。
    「いやあ。アオキさんと被るけど、ボクもこれしか思いつかなかったものでねえ!」
    グルーシャが差し出したのは、彼が勝負用に着る柔道着。キッチリと四角に折りたたまれた中心には、マジックで太々と力強くサインが書かれている。
    「心が折れそうな時は、プレゼントを見て思い出せ!アンタには、ボク達がついている!!」
    「おおきにな。何だかんだあったけど、ホンマ……楽しかったわ」
    水色の迷彩服と握手を交わすAチリ。それに合わせて、残りのジムリーダーや四天王のポピー、ハッサクにオモダカも頷いた。
    「(*°ㅁ°)ハッ!」
    一同の背後で人差し指をたてるBチリ。
    「あっ!いけません!そうでした!」
    同じく何かを思い出したらしいオモダカ。2人は、鳥居の前に停車したミニクーパーへと走っていった。
    「みんな!あと10分です!」
    午後10時10分。タイムキーパーを務めているアオイの声が、一同に時刻をしめす。
    「( ; ´Д`) ハァハァ」
    「忘れる、所でした!」
    大慌てで戻ってきたBチリとオモダカ。
    2人の両手には、変装用という名目で買いしめた(そして結局ほとんど着用しなかった)衣服の袋が
    大量に下がっていた。
    「お、大きなカバン!それか、大きなバッグはありますか!?」
    辺りをオロオロと見渡すオモダカに、スター団と教師たちが、大きなトランクとキャリーバッグを差しだした。

  • 182二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 17:35:15

    「まとめましょう!服とお土産を全て!ミス・ゲンガーが持ちやすいように!」
    「あ、あと5分です!」
    アタッシュケースいっぱいに詰められる衣服の袋。キャリーバッグの方には、ジムリーダーからのプレゼントが収められた。
    「……いざ別れるって思うたら、ちょっとだけ寂しいなあ」
    肩がけと右手に荷物を下げ、星空を見上げたAチリ。
    「( ˘•ω•˘ )……」
    そして、彼女の荷造りを終えてからというもの、Bチリは何故か眉をしかめたまま、いつになく悲痛そうに黙りこくっている。
    「チリ。大丈夫です。またきっと会えますから」
    オモダカの慈母のように耳打ちに、コクリ……と首を縦に振るBチリ。しかし、その表情は晴れるどころか、ますますうつむいてしまった。
    「ドッペルさん。次に会えたら、またコーディネートさせてよねん」
    「次は、うちらが行くってのはどうよ!?ドッペルさんが住んでるパルデアにさ!」
    「へへっ、アホのボタンにしちゃ面白いこと思い付くじゃねーか」
    「ナッハハ。きっと大騒ぎになるで」
    Aチリに群がる親友たちが、好き好きに彼女と別れを交わす。
    「おっ、言うたな?チリちゃんのトレーニングは、ちぃーとキツイからな!」
    スター団から歩みでた参謀役・オルティガが、直立不動で紺の着物と握手する。真顔で咥えたパイプチョコとステッキ。幼い少年の紳士然とした振るまいに、Aチリは思わず微笑んだ。
    30、29、28……
    「はぁ……にしても。平行世界の旅なんて、皆に何て伝えたらええんやろ。いっそ『ムー』にでも投稿したろうかな」
    寂しさを紛らわそうとAチリがボヤく。
    「それも一興かと。しかしどう足掻いても、小生たちはアナタの投書を購読できないのが忌々しい」
    ハッサクの皮肉に、池に集まった一同がいっせいに笑った。落ちこんだままのBチリを除いて。
    10、9、8、7……
    「……ほなな。皆、ホンマにおおきに」
    「礼を言うのはワタシの方だ。リップを哀しみから救ってくれてありがとう」
    「ドッペル婦人!お達者でええ!!」
    「「「お疲れ様でスター!!」」」
    「( ;꒳; )バイバイ!バイバイ!!」
    3、2、1、0
    「……おん?」
    1、2、3……霧はまたしても起きない。

  • 183二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 17:48:56

    ↓part7後編まとめ

    チリ婦人とドッペル婦人 part7 後編 | Writeningナッペ山のジムチャレンジは、グルーシャのウォーミングアップに付き合うこと。 彼が蹴り飛ばしてくるゴミを袋でキャッチ、 彼の動きを記憶して、その通りにダンスを踊る、などなど。 今回はシンプルに競走…writening.net

    残りレスも少ないので、次スレからpart8(エピローグ)投下していきます。


    自分語りで恐縮ですが、


    カオスであって荒唐無稽にはしない事

    (一見メチャクチャな状況でも、きちんと事情や経緯があってそうなっている)


    元のキャラクターや性格を覚えておいた上で反転すること


    この2つを主に気にかけていたら、何ともつかない奇妙なssになりました笑

  • 184二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 20:22:07

    最後の最後に波乱!?

  • 185二次元好きの匿名さん24/04/27(土) 20:27:29

    >>184

    主です。お話を考えだしてすぐに思い付き、今の今まで書きたかったオチに、やっとたどり着けそうです……!


    オカルト雑誌、「オーカルチャー」でしたね……。


    ちょっと書けてから次スレ立てます。このスレは落としていただくなり、お好きにお使いください。

  • 186二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 00:14:30

    お別れムードだったのに霧は空気読みなさい

  • 187二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 09:10:08

    次スレが立ったら完結が見えるから立って欲しくないのと早く読みたいで脳内バトルしてますわ

  • 188二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 13:39:21

    次スレ立ったみたいやね

  • 189二次元好きの匿名さん24/04/28(日) 13:40:43

オススメ

このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています