- 1二次元好きの匿名さん24/05/19(日) 13:09:31
憲紀と沢山の思い出を作りたい。憲紀が高専を卒業してお家に戻るまで、私達の生活のタイムリミットまで少しでも多くの思い出を残したい。2人で海を見に行った、ソファでお昼寝をした、一緒にトレーニングした(私はすぐバテた)、憲紀が私の作ったご飯を食べてくれた。どんな小さな出来事も私にとっては大事な思い出だ。憲紀が呆れるくらい、余すことなく写真を撮って、憲紀でいっぱいのアルバムに幸せになりたい。
憲紀とこの生活を初めてから色んなことが変わった。「1さん」から「1」と呼ばれるようになり、敬語は外れ、「お邪魔します」は「ただいま」になった。そして何より、憲紀が私に優しくなってきた気がする。いや憲紀は元々優しさの塊なんだけど、前は呆れ顔や眉間に皺を寄せて私を見ていた憲紀が、未だにそういった顔が大半ではあるものの最近はたまに穏やかな顔をしている気がする。そういえば最初は貴女、それからはお前と言われることが多かったけど、最近は一貫して君と呼ばれている気もする。少しずつ心を開いてくれているのかなと嬉しくなりたい。そして憲紀の変化を感じる度に、この生活が終わる日を考えて寂しくなるんだ。
私は非術師で憲紀は呪術師、それも御三家の次期当主で本来は住む世界が全く違う人。だから今こうして一緒にいられるだけでとても幸運なことで、それに憲紀が幸せになれるなら私はその横にいなくたっていい。憲紀が大好きだから。……でも憲紀はお家に帰って、本当に幸せになれるのかな。いつか来るお別れの日に、私はちゃんと笑顔で見送ることが出来るんだろうか - 2二次元好きの匿名さん24/05/19(日) 13:10:41
前スレで完結するはずだったけど規制で落としちゃったので。私達の生活の結末まで、あともう少しだけ続きます
(※夢・閲覧注意)憲紀と同棲したい再|あにまん掲示板憲紀にお世話されたいし、お世話してあげたい。1人でなんでも頑張ってしまう憲紀の世話を焼いて嫌がられる程とびきり甘やかしてあげたい。憲紀がお母さんに会えるまでの間甘えられる存在になりたい。憲紀が任務や高…bbs.animanch.com - 3二次元好きの匿名さん24/05/19(日) 13:14:19
通い妻生活を始めて変化したのは憲紀だけじゃなく私もだ。狩衣系宗教男子(糸目)にビビり倒していたのが、憲紀の安心安全男子っぷりにすっかり信頼しきって大好きになったのが1番の変化。その他にも小さな変化が幾つか。憲紀の走り込みについて行ったり弓道指南の件でみっちりしごかれたので、未だにへなちょこではあるものの当初より少し体力と筋力がついた。少しだけカッチリと膨らむようになった力こぶをこれで憲紀くんを守れるようになったかなと見せつけたら「調子に乗るな。前よりはマシになったがまだまだ君は貧弱だぞ」とバッサリ切られしゅんとしたい。
貧弱といえば、知らない男性に対する恐怖心は前より悪化してしまったような気がする。呪霊に憑かれたり怪異に魅入られたりと散々だったのもあるけど、何より憲紀が安心安全すぎて他の男性のギャップが凄いのだ。憲紀のせいで私の中の理想の男性像のハードルが爆上がりしている。こんなので私恋人とか作れるのかな、私がこれから一生誰も好きになれなかったら憲紀のせいだからね - 4二次元好きの匿名さん24/05/19(日) 13:46:32
来てしまった。月に1度の人肌恋しいモードが。ソファでコーヒーを飲みながら静かに難しそうな本を読んでいる憲紀の横に座って構ってちゃんをしたい。めちゃくちゃに撫で回して欲しい。憲紀の手にさりげなく自分の手をくっ付けたり、肩に頭を押し付けて撫でてアピールをしたい。……ん?あれ?もしかして例の憲紀甘え疑惑事件って、私の真似してた……?そう思ったら急激に恥ずかしくなってきて憲紀がびっくりして呼び止めるのも気にせず全速力で自室の布団の中へ逃げたい。恥ずかしい、恥ずかしすぎる。でも甘え方真似っ子する憲紀はめちゃくちゃ可愛いな……本当に甘え方わかんないんだな。ますます甘えさせたくなっちゃう。
その後自分が無視を決め込んでいたせいで拗ねたのだと思ったらしい憲紀が追いかけてきて、機嫌を取るようによしよしと撫でられ複雑な気分ながらもゴロゴロとイマジナリー喉を鳴らしたい。憲紀の手の心地良さには決して抗えないのだ - 5二次元好きの匿名さん24/05/19(日) 14:05:40
憲紀とプールに行きたい。この日の為に買った可愛い水着を日焼け防止のパーカーの中に忍ばせて男子更衣室から出てきた憲紀と合流したい。羽織った上着の間から憲紀の素晴らしい肉体美が覗いている。腕と背中がガッシリしてるのは服の上からでも分かってたけど、腹筋もしっかり割れてるんだ。そりゃそうだよね。とてつもなくかっこよくてドキドキするけど、私には刺激が強くて目のやり場に困りたい。
さて泳ぐぞ!とパーカーを抜いだら憲紀に「……肌を出しすぎじゃないか?」と目を逸らしながら苦言を呈されたい。え、そうかな。スカートもついてるし水着の中では露出の少ない方だと思うけど。……これは純粋ちゃん故に露出耐性がないのか、1度裸を見てしまったから気まずいのかどっちだろう。とりあえず新しい水着を褒めてもらえなかった腹いせに憲紀くんのえっちとからかったら、彼は「なっ……」と反論しようとしたものの顔を赤くして黙り込んでしまった。あ、これ後者だな。そう思ったら自分もじわじわ恥ずかしくなってきた。「じ、冗談だよ。なんかごめんね…」「……いや、私こそすまない…」とお互いに目を逸らしてぎこちなく会話をしたい - 6二次元好きの匿名さん24/05/19(日) 14:56:58
プールに入る前に日焼け止め塗らないと。日に焼けるとヒリヒリして赤くなっちゃうんだよね、水に入ったら落ちちゃうだろうけどこまめに塗り直さなきゃ。憲紀が準備運動をしている横でせっせと日焼け止めを塗って、大体塗り終わったところで憲紀に背中塗ってと日焼け止めを差し出したい。憲紀は「は?」とピシリと固まった後「……いや…私は男だぞ。むやみに女性の肌に触れるわけには…」と口ごもった、あまりの安心安全生真面目男子っぷりに思わず吹き出してムッとした顔をされたい。「何がおかしいんだ」とむくれる憲紀に「真面目すぎだよ!日焼け止め塗るだけだし私が頼んでるんだから気にしないで。他に頼める人もいないしお願い」と頼み込んだら、暫く考え込む様に無言になった後「……まぁ、君がいいと言うなら…」と渋々了承してくれた。
キャップが外される音にドキリとしていると、ひやりと日焼け止めの冷たさと憲紀の手の温もりが背中に伝わって硬直したい。余裕ぶったものの全然そんなことはないのだ、日焼け止めを塗ってもらっているだけなのにやたらと意識してしまっているのは私もなのだ。へけっ。バクバクとうるさい心臓が憲紀の手に伝わってしまわないか心配でなんとか平常心を保とうと必死になるも、日焼け止めをのばす憲紀の手のひらの感触からどうしても意識を逸らせない。でも背中に触れる憲紀の手があまりに恐る恐るとしていて、だんだん面白くなってきて平常心を取り戻したい。
そして塗り終わった憲紀から「……私も塗っておくか。1、背中を頼んでもいいか」と日焼け止めを押し付けられて立場が逆転したい。わ、わぁ…背中広…じゃなくて無心!無心にならなきゃ……筋肉すごいな……(以下塗り終わるまで無限ループ) - 7二次元好きの匿名さん24/05/19(日) 16:19:51
お互い恐る恐る日焼け止めを塗り終わったあとは今度こそプールに入りたい。2人乗りのウォータースライダーを見つけて大はしゃぎで憲紀の手を引いたら「そう引っ張らなくてもついて行ってやるから落ち着け。足を滑らせたらどうする」となだめられた。本当にどっちが歳上なのかわかったもんじゃないな、私達。
親子とカップルばかりで少し気まずい待機列に並んでいると自分達の番が回ってきた。2人乗りの浮き輪に乗ってきゃあきゃあとはしゃぎながらスライダーを下りたい。このウォータースライダー結構スピード出る!楽しい!下り終えたあとは浮き輪をぐるぐると回されたあとひっくり返されてプールに投げ出されたい。毎回思うけど大人2人乗った浮き輪をひっくり返せるお兄さん達力持ちだな。プールから顔を出したら同じく浮き上がってきた憲紀が何が起こったか分からない顔をしていて笑いたい。最初は落とされるのびっくりするよね、分かるよ。
その後はもう一度スライダーに並んだり、流れるプールで流されたり、恐る恐るお互いの日焼け止めを塗り直したり、出店で水着のままご飯を食べたりしたい。水泳って思ってる以上に疲れるから、家に着いてからはクタクタでソファに寝転びたい。ごめん今日の夜は出前取ろうね… - 8二次元好きの匿名さん24/05/19(日) 17:40:10
憲紀の弓を引くリベンジをしたい。散々筋力を鍛えさせられたので、上手く飛ばせるかはともかく弓を引けるようにはなったはず!
以前と同様ベランダに出て、教えられたフォームを思い出しながら憲紀愛用の和弓をきりきりと引いてみる。相変わらず腕は疲れるものの、震えは少なくなりある程度引いた状態でキープも出来るようになっていた。トレーニングの成果が出た嬉しさに目を輝かかせていると「なかなかいいじゃないか。よし、そのまま射ってみろ」と憲紀が穏やかに声をかけてくれた。憲紀に言われるがままに弦を引いていた手を離す。ひゅんっと風をきりながら飛んで行った矢は家の壁に当たる寸前で軌道を変え、憲紀の手の中吸い込まれていった。「コントロールはまだまだだが飛ばせたじゃないか、成長したね」と回収した矢に付着させていた血を払い嬉しそうに近寄ってくる憲紀に何それもう1回やって!!と大声を出して驚かれたい。矢がブーメランみたいにUターンして返ってきた!すごい!普通の矢はそんな軌道出来ないよね!?と大興奮の私に憲紀は「わかった、わかったから少し落ち着け」と手のひらを前に出して静止のポーズをした。その後は憲紀が弓を扱っているところを見せてもらって、3本の矢が自由自在に宙を舞い踊る姿にすごいすごいと目を輝かせたい - 9二次元好きの匿名さん24/05/19(日) 18:20:37
風呂エンカとか日焼け止め塗り合いとかそれなりにお色気要素はあるのにずっと健全なの流石のりとしというべきかそういうとこやぞというべきか
- 10二次元好きの匿名さん24/05/19(日) 18:43:48
今日暑い…暑すぎる…。半袖短パンで窓も開けているというのに、当たる風はそれなりに冷たいものの全然涼しくならない。ぐでぐでと床の上で溶けていたら突然首にひんやりとしたものが触れてぴゃ!と情けない声をあげたい。恐る恐る振り返るとバツが悪そうな顔をした憲紀が「……すまない、暑そうにしていたから冷やしてやろうと…」と私の首に手を当てていた。そっか、憲紀の術式って体温を操れるんだっけ。憲紀の手だとわかったらひんやりして気持ちよくなってきた。首へ添えられた手に「憲紀くんの手冷たくて気持ちいい」と擦り寄ると「私より君の方が余程猫みたいじゃないか」とふ、と眉を下げて笑われてドキリとしたい。な、何今の顔。ズルすぎる
- 11二次元好きの匿名さん24/05/19(日) 23:45:02
憲紀とお揃いのものを買いたい。ストラップとか、文房具とか、お洋服とか。アクセサリーはつけなそうだしなぁ。あ、ルームウェアとかもいいかも!もこもこの可愛いやつを憲紀が着てるところ見たい。絶対絶対可愛いもん。でも憲紀は絶対着てくれないだろうなぁ…お揃いしたいって買って渡したらワンチャン着てくれないかな。そう思い前から気になっていた恐竜のもこもこ着ぐるみパジャマを色違いで2着購入したい。家に届いたら憲紀に着てくださいとお願いして嫌な顔をされたい
- 12二次元好きの匿名さん24/05/20(月) 11:17:07
お願い初日は断固拒否されたものの数日粘り続けたら憲紀が折れてくれた。極めて不服という顔をしてもこもこパジャマに身を包まれている憲紀にときめきが止まらなくなりたい。本人に言ったら拗ねちゃうだろうけどドレスアップされて不機嫌になってる洋服嫌いの犬猫みたいで可愛すぎる。絶対に写真に収めたくてスマホを取り出すも「やめろ」とカメラを手で覆ったりフードを深く被ってぷいと顔を逸らしたりあらゆる手段で写真を撮られるのを回避しようとする憲紀を必死で説得したい。正直嫌がってる姿も恐竜パジャマのせいで物凄く可愛いことになっていて動画に収めたすぎる。お願いお願いと粘り続けたら憲紀は深い溜め息をついたあと「……真依達には絶対に送るなよ」と了承してくれた。大喜びであらゆるポーズ、角度で写真を撮りまくりたい。もこもこ怪獣フードの中から覗く仏頂面が可愛すぎる。
満足した後は恐竜パジャマ同士でじゃれ合いたい。もこもこの生地が気持ちよくて憲紀を撫で回して嫌がられたい。しかし冷房をガンガンに入れているとはいえこの時期にこのパジャマは暑すぎる。ぐでんと床に寝そべったところを恐竜憲紀に看病されたい。視界がメルヘンで眼福すぎて一瞬死んだのかと錯覚しちゃうな - 13二次元好きの匿名さん24/05/20(月) 20:14:16
香りは記憶に残りやすいらしい。憲紀は体臭が薄いし香水等もつけないので、する香りといえば運動をした後に少し汗と私と同じ洗剤の香りがするくらいだ。なので運動後の憲紀にくっつきに行って「離れろ。汗臭いだろう」と嫌がられたい。臭くないよと言っても「私が嫌なんだ」と言って大抵すぐに引き剥がされてしまう。それでも私と同じ香りがする憲紀が嬉しくて毎回懲りずにくっつきに行って何度でも追い払われたい
- 14二次元好きの匿名さん24/05/20(月) 22:47:06
ある日、お家の用事から帰ってきた憲紀からいい匂いがした。憲紀くん何かつけてる?と聞くと憲紀は一瞬きょとんとした後徐々に苦々しげな顔をして「……家の者に香を焚かれたんだ。父様が、お前も次期当主になる男として身嗜みを整えろと…」と答えてくれた。
お香を焚かれることの何がそんなに嫌なんだろう? 香水とか苦手なのかなと聞いてみるけどどうやらそういうわけではないらしい。憲紀から香りがするのが珍しくてすんすんと匂いを嗅ぎながら考えを巡らせる。今日は確か他の良家や分家との会合だったんだっけ…まさか次期当主としての身嗜みってそういうこと?良家の、ましてや呪術師のお家事情はよく分からないけど跡継ぎ問題は絶対あるだろうし。古い体質のお家なら側室を沢山作らせるなんてこともあるのかも。そう考えると真面目な憲紀が女性の気を引く為につけさせられた香りをよく思うわけがないよね、と能天気にいい匂いだねとくっついていた自分が最悪すぎて殴りたくなってきた。
あ~もう、わたしのバカバカ!印象サイアクだよ~と自己嫌悪でしわしわのピカチュウ顔になって憲紀から離れようとしたら「この香りが好きなのか」と声が降ってきた。返答に困ったものの私は嘘が下手なので恐る恐る正直に「え、うん…。甘めで、私はかなり好きな香りかな…」と答えたら「……そうか。君が気に入ったのなら、まぁ、たまには焚いてやってもいいか」と呟いてシャワーを浴びに行ってしまい宇宙猫になりたい。……え…?何?今の、幻聴…? - 15二次元好きの匿名さん24/05/20(月) 22:48:16
追記:憲紀がシャワーを浴びに行った後、くっついていたせいで香りが移ったのか自分から憲紀のお香の匂いがして物凄く落ち着かなかった
- 16二次元好きの匿名さん24/05/21(火) 10:01:01
保守
- 17二次元好きの匿名さん24/05/21(火) 15:07:08
空前の香りブームが到来してしまった。前から気になっていたロールオン香水とボディクリームをネットでポチりたい。家に届いた後さっそく身体に塗ってみて香りを楽しんでいると憲紀が現れて「? 甘い香りがする」と首を傾げた。ボディクリーム買ったんだよ!いい匂いでしょ〜と上機嫌に憲紀に腕を差し出したところでハッとする。そういえば前会合から帰ってきた憲紀に誰かの香水の匂いが移ってた時、凄いぐったりした顔してそそくさとシャワー浴びに行ってたな。「ああ、いい香りだね」と近寄ってくる憲紀に慌ててあんまり近付くと匂い移っちゃうよ!と言うと「? 別に構わないが」と平然と答えられて困惑したい。でも憲紀くん、香水の匂い移るの嫌なんじゃ…ごめんね、すぐ落としてくるからと続けたら憲紀は暫く考えるような素振りを見せた後「ああ…あれは分家の子女に付き纏われて疲弊していただけだ。まぁ、香りも正直好みではなかったが、別に香りもの自体が苦手なわけではないから気にしなくていい」と引き止められてホッとしたい。よかった、でも今度から香りもの買う時はちゃんと憲紀の好みを確認しよう。そう決心していると憲紀に「それに、君の香りなら別に移っても構わないよ。どうやら既に手遅れの様だしな。……いい香りだね。いつものヘアオイルの匂いもいいが、こちらも好きだ」と平然と爆弾を複数個落としながらすん、と顔を寄せられてもう何度目か分からない宇宙猫化をキメたい。キメたあと再び照れ隠しに憲紀をバシバシと叩いて喧嘩になりたい。憲紀と生活してからド天然の無自覚デレ程恐ろしいものはないと思い知りまくっている、こわい
- 18二次元好きの匿名さん24/05/21(火) 21:39:20
憲紀が任務でいない間、自分がいつからこんなにも男性に対して恐怖を感じるようになったのかを考えていた。男性そのものを怖がり始めた時期は明確には分からないけど、初めて男の人に対して生理的な嫌悪を感じたのは多分中学…いや幼稚園の頃。同じ組の男の子に、服の中に手を入れられ胸を触られた。今思えば幼稚園児のやることだし、大半の園児や大人達はすけべな悪ガキだと笑って済ませるんだろう。でも当時の私はかなり強い恐怖と気持ち悪さを感じた。この悪戯をされたのは1度だけではなかったけど、恥ずかしくて先生にも親にも誰にも相談することは出来なかった。
- 19二次元好きの匿名さん24/05/21(火) 21:47:20
もしかしたら私は男性ではなく自分に向けられる不純な欲が気持ち悪くて怖いのかもしれない。その手の嫌悪を感じたことがあるのは別に男だけに限った話じゃないし。対して面識もないのにやたらと距離感の近い人は苦手。時と場所と関係値を気にせず口を開けば性的な話をする人も苦手。人の顔や身体をジロジロと見て勝手に値踏みする下品な輩が嫌い。初対面の人間に甘い言葉を吐ける軽い頭が気持ち悪い。何も分からないのをいいことにキスをされ舌を入れられた。身体を触られた。私が通る度ジロジロと胸を見られ陰口を言われた。付き合ってもいない相手に夜2人で遊びに行こうと誘われた。バイト先で着替えている時に私がいるのを分かっていてカーテンを開けられた。まだ数回仕事であっただけの人間からのセクハラ発言に言葉を詰まらせたらノリが悪いとこちらが悪者扱いされた。同じマンションに住んでいた5つ上の小6のお姉さん。小中高の同級生男子。中学時代の塾講師。高校の先輩。同じ大学の授業で数回会っただけの人。バイト先のおじさん。会社の上司達。他社の人間達。初対面の全然知らない人達。皆、皆気持ち悪い。この世の人間がみんな憲紀みたいな人だったらいいのに
- 20二次元好きの匿名さん24/05/21(火) 21:50:19
まぁそれ抜きにしても普通にコミュ障だから誰に対しても対人恐怖発動しちゃうんだけどね。はぁ……社会不適合者すぎて死にたくなってきた。もう一生憲紀が世話してくれないかなぁ
- 21二次元好きの匿名さん24/05/21(火) 23:18:48
憲紀が帰ってきた!急いで玄関へ向かっておかえりなさいと駆け寄ると「ああ、ただいま。……何か考え事でもしていたのか」と声をかけられた。……無意識に暗い顔しちゃってたのかな。何でもないよと答えると訝しむように眉間に皺を寄せられてしまったので「やっぱり憲紀くんが世界一いい男で大好きだなって考えてただけだよ」と皺を伸ばしてあげたら「……誤魔化すな」と手を捕まえられてしまった。嘘じゃないもん。憲紀くんが1番大好きだよと続けて「知っている。……シャワーを浴びてくる」と私をあしらってすたすたリビングの扉の奥に消えて行く背中をご機嫌に見送りたい
- 22二次元好きの匿名さん24/05/22(水) 08:27:24
保守
- 23二次元好きの匿名さん24/05/22(水) 11:39:25
憲紀達と花火大会に行きたい。何故“達”なのかというと、京都校の皆さんで花火大会に行くという話に何故か私もお誘いをいただいたからだ。憲紀から「すまない、西宮達が君も連れて来いと聞かなくて…。人混みへ行くことになるが着いてきてくれるか」と申し訳なさそうに声をかけられて驚きたい。西宮さんと真依さんから断らないよなと圧をかけるメッセージが届いてさらに驚きたい。行きます、行きますってば
- 24二次元好きの匿名さん24/05/22(水) 21:53:32
花火大会当日。憲紀と一緒に会場へ向かうと先に到着していた京都校の皆さんが出迎えてくれた。こっちこっちと手招きをしている歌姫先生、私達に気付きぺこりと会釈をしてくれた新田さんと綺麗な水色の髪の女の子、ただ腕を組んで立っているだけなのに相変わらず貫禄が凄い東堂さん、そしてこちらをニヤニヤと見つめている西宮さんと真依さん。皆さんへお誘いして頂いたお礼と挨拶をすると、憲紀が三輪さんとメカ丸さんの紹介をしてくれた。三輪さんの持っていた何やら可愛らしいデザインのメカ(初見は玩具か何かのケースかと思った)から声がした時は物凄く驚いてしまった。テンヨジュバク?というものにより外を出歩くことが出来ないのだという。世の中には私が想像もつかない程大変な境遇の人が沢山いるんだなぁ、いつかメカ丸さんご本人にも会ってみたいな
- 25二次元好きの匿名さん24/05/22(水) 22:32:29
自己紹介を終えると西宮さんと真依さんに憲紀と旅行に行った時の写真はないのかと迫られた。え、何で知ってるの!?…と思ったけど、確かに憲紀が旅館の予約取った時に助言もらったって言ってた様な。
見られて困る写真もないし、最高の旅行を自慢したくなってしまったので憲紀が複雑な顔をしているのを気にせず嬉々としてスマホのアルバムを見せたい。着物姿を褒めていただけたので憲紀くんがプレゼントしてくれたんですよと言ったら、三輪さんと西宮さんは憲紀と写真を交互に見てきゃあきゃあとはしゃぎ、真依さんはドン引きしていた。確か真依さんは憲紀と同じ御三家の出身だから、この着物の値段が大体予想出来るのだろう。心中お察しするわと肩を叩いてくれた。当時の私の気持ちを分かってくれる人がいて嬉しいです… - 26二次元好きの匿名さん24/05/22(水) 23:11:21
談笑を終え花火の時間までどうするかを話し合おうとしたら、京都校の皆さんは自由行動だと言って当然のようにいくつかのグループに別れて人混みの中へと消えていってしまった。え、一緒に行動しないんだ…。憲紀と2人取り残されポカンとしていたら「私達も行くか。何処か行きたい場所はあるか?私はこういったイベントには疎いから、君が行先を決めてくれ」と憲紀に平然と声をかけられた。あんまり皆で遊びに行ったりしないんだろうか…まぁ憲紀から話聞く感じそういう仲の良さではないのかもしれない。とりあえず何かお腹に入れようと屋台を見て回る提案をしたら了承の返事と共に手を繋がれて驚きたい。私が目を丸くしているのに気付くと憲紀は「……この人混みだ。はぐれたら君が困るだろう」と顔を背けてしまった。憲紀の優しさと手の温もりに嬉しくなって上機嫌で憲紀の手を引きたい。
色々な屋台を回った後は場所取りも兼ねて、花火の見える場所にある席に座って買ったご飯や甘いものを2人でつつきたい。お腹を満たしながら席を取ったことを歌姫先生達へ連絡すると、こちらも既に席を取っているからそのまま憲紀と見てくれていいという内容のメッセージがそれぞれのグループから返ってきて再びポカンとしたい。……まさか花火すら皆で一緒に見ないとは、これもはや京都校の皆さんで来た意味あるのかな… - 27二次元好きの匿名さん24/05/22(水) 23:42:18
結局皆さんと合流しないまま花火が打ち上がり始めてしまった。大きな破裂音と歓声にビクリと肩を跳ねさせた後、振り向いた先に見えた大輪の花に目を輝かせたい。テレビ以外で花火を見るのなんてだいぶ久しぶりな気がする!やっぱり実物はより綺麗だしテンション上がるなぁ。憲紀と「綺麗だね」「ああ」と上機嫌に会話をしながら花火を眺めていると、ふとあることに気付いた。綺麗な花火の光に照らされた憲紀はもしかして最高に綺麗なんじゃないか…?突如舞い降りた天啓にわくわくで憲紀を盗み見ようとしたらこちらを向いていた憲紀と目が合ってドキリと心臓を跳ねさせたい。び、びっくりした。なんで抜群のタイミングでこっち向いてるの!?驚きと気まずさから「花火の方見なくていいの」と口走って「……ちゃんと見ている。君こそ、花火に集中しなくていいのか」とぎこちなく会話をしたい。そのまま「……花火、綺麗だね」「ああ…」と少し気まずい空気のまま2人で花火を眺めたい。目線だけを動かして花火に照らされた憲紀の横顔を盗み見たら、見惚れてしまう程綺麗だった。花火よりも君が綺麗ってこういうことなんだなぁ、うう、写真に収めたい…。でも憲紀素直に撮らせてくれないだろうなぁ…。
花火が終わった後は合流した京都校の皆さんと少しお話しをして別れた。楽しかったなぁ。今回は殆ど皆さんとは一緒じゃなかったから、また何処か、今度は皆で行きたいな。そう思いながら帰宅してスマホのメッセージを確認したら、西宮さん達から花火を見ている私達の後ろ姿や横顔の写真と動画が送られてきていて驚きたい。……ぜ、全然気づかなかった。見られてたと思うと恥ずかしすぎる。…もしかして皆さん、私に気を使って憲紀と2人きりにしてくれたのかな。そうだとしたらなんだか物凄く恥ずかしい、けど嬉しいなぁ - 28二次元好きの匿名さん24/05/23(木) 07:45:16
保守
- 29二次元好きの匿名さん24/05/23(木) 16:46:37
保守
- 30二次元好きの匿名さん24/05/23(木) 17:11:59
外出先で結婚式の最中だと思われる男女を見かけた。ウェディングドレスもいいけど白無垢も綺麗だなぁ、幸せオーラ効果なのか写真で見るよりも更に素敵に見える。素敵だねぇと憲紀と花嫁さん達を眺めながら歩きたい。憲紀はドレスと白無垢ならやっぱり白無垢派なのかな。そう思い話題を投げかけてみると「? 別に花嫁の好きな方を着ればいいと思うが。……まぁ、うちの形式は和装だろうな」と返答が返ってきた。う〜ん、憲紀らしいというか。でも四捨五入すれば好きな人なら何を着ていても綺麗だよってことかも、やっぱり憲紀は世界一いい男だなぁ(※訓練済)
欲を言うならドレスも白無垢も両方着てみたいなぁ。まぁ私の場合結婚出来るかすら怪しいけど…。そんな雑談をしながら暫く歩いていると、私のおしゃべりにただ相槌をうっていた憲紀が「……君には、白無垢よりドレスが似合うのだろうな」と真っ直ぐ前を見つめたままぽつりと呟いた。聞こえるか聞こえないかくらいの声量で零されたその言葉の意図は私には分からなかったけど、なんだか私と憲紀では住む世界が違うのだと言われているようで少し寂しかった - 31二次元好きの匿名さん24/05/23(木) 22:31:46
憲紀と花火をしたい。花火大会に行ったら久しぶりにやりたくなってしまった。近くで花火が出来る場所を調べたら、憲紀とドンキに花火を買いに行きたい。バケツと花火、ロウソクとついでに飲み物と珍しいお菓子を買った。河川敷に着いたら買ったお菓子をつまみながら憲紀と手持ち花火を楽しみたい。憲紀が危ないぞと眉を寄せるのを気にせず憲紀の手持ち花火から火をもらいたい。シガーキスとか憧れるんだけど私は煙草は吸えないから、花火でこっそり近い気分を味わいたい。
一通り遊び終えた後は締めに線香花火をしたい。なんだかんだ花火の中で線香花火が1番好きな気がする。小さくて可愛くてパチパチ弾ける火花が綺麗、音も風情があっていいよね!2人でしゃがんで静かに花火を見つめたい。花火大会同様、花火の光に照らされる憲紀の綺麗な横顔を盗み見てしっかりと目に焼き付けたい - 32二次元好きの匿名さん24/05/24(金) 08:19:08
保守
- 33二次元好きの匿名さん24/05/24(金) 15:55:35
保守
- 34二次元好きの匿名さん24/05/24(金) 21:50:18
今日は録り溜めてた推しアイドルの出演番組を見る!映画や舞台の番宣があると見れる機会が増えて嬉しいなぁ。久々に推しを摂取してホクホクになっていると、トレーニング後シャワーを浴び終えた憲紀が隣に来た。私がこんなに長い時間テレビを見ているのが珍しいのか「何を見ているんだ」と尋ねてきたので好きなアイドルが出てるの!かっこいいでしょと答えたら「……まぁ、アイドルだからな」と素っ気ない返事を返されてしまった。まぁ憲紀、美男美女とか全然興味ないしな。前も推しアーティスト(女の子)が出てる音楽番組を可愛いでしょ!と見せたらふわふわした相槌とともによく分からないという顔をされたし。憲紀から意識をテレビに戻して推しのトークに集中する。やっぱり推しは最高にかっこよくて可愛いなぁと上機嫌にテレビを見ていると、隣で画面を眺めていた憲紀が「……こういう男が好みなのか?」と零した。え、どうだろう。確かに推しの男性アイドルや俳優はこういう系統(タレ目で目がぱっちりしてて顔も言動も少し子供っぽい可愛い系)が多い気はするけど。そう答えると憲紀は「そうか」とだけ答えてリビングを後にしてしまった。の、憲紀が聞いたのに!もう少し興味持ってくれてもいいじゃん!
- 35二次元好きの匿名さん24/05/24(金) 22:51:33
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- 36二次元好きの匿名さん24/05/25(土) 06:56:55
保守
- 37二次元好きの匿名さん24/05/25(土) 10:37:48
暫くすると憲紀がリビングに戻ってきた。どうやらTOEICの教材を取りにいってたらしい。トレーニング後なんだし少しくらいのんびりすればいいのに、憲紀は真面目だなぁ。隣で教材を広げる憲紀にテレビうるさくない?私の部屋の机使ってもいいんだよと声をかけたけど「いや、ここで構わない」とノートに鉛筆を走らせてしまった。憲紀がいいならいっか…と私もテレビに向き直る。それから2時間程経って、「……1。まだ終わらないのか?」と憲紀が尋ねてきた。流石の憲紀もお勉強飽きちゃったのかな?ごめんね、この番組まで見させて…と頼むと憲紀は少し不服そうだったけど「……わかった」と再びノートに目を向けたのでホッとして私もテレビに向き直った。
番組を見終わったので憲紀にお待たせと声をかけると、待ちくたびれたのか憲紀は心なしか嬉しそうに顔を上げた。お留守番から飼い主が帰ってきた時の猫ちゃんみたいで可愛いなぁと憲紀を眺めていると私のスマホの通知が鳴った。なんだろう…えっ、推しの特番!?録画入れなきゃ!!慌ててリモコンを取ったところで、ハッとして憲紀の方を見る。ぽかんとした顔で私を見つめていた憲紀はみるみる不機嫌そうに表情を歪めると「……もういい、好きにしろ」とリビングを出て行ってしまった。他の犬に可愛いって言うと怒る実家の犬に似てる……じゃなくて!放ったらかしてごめんね憲紀くん!暇だったよね!憲紀くんが1番可愛いから!!と必死に後を追いかけたい - 38二次元好きの匿名さん24/05/25(土) 10:43:07
怒らせてしまった憲紀の機嫌を必死に取りたい。弁解の言葉をかけながら憲紀を撫で回すけど、「うるさい」「誰にでも言っているんだろう」「放っておいてくれ」とそっぽを向かれてしまいたい。か、完全に拗ねてる……。これはもしかしてヤキモチ…いや、プライドが高いのかな。前も東堂さんのこと褒めたら不機嫌になってたし。いつも散々憲紀くんが1番って言ってるのに、他の男の人相手にかっこいい可愛いとはしゃぎ倒して放ったらかされたら流石の憲紀もプライドが傷ついたのかもしれない。ごめんね、本当に憲紀くんが1番大好きだから…どうしたら信じてくれる?何でもするから許して…と情けなく許しを乞いたい。
しかし憲紀はなかなか機嫌をなおしてくれない。なでなでとご機嫌取りをする私にむすっとした顔でされるがままになっていた憲紀が、ついに痺れを切らして「……っ子供扱いするな、放っておいてくれと言っているだろう!」と私の手を振り払った。ぐらりと身体が傾いて思わずあ、と声が漏れる。反射的にぎゅっと目を瞑ったものの、いつまでも訪れない痛みに恐る恐る目を開けて時が止まりたい。私が頭を打たないように咄嗟に腕を差し込んで一緒に体勢を崩してしまったのか、憲紀に押し倒されるような形で頭を支えられていた。お互いの息がかかる程近い位置に憲紀の綺麗な顔があって心臓が大きく跳ねたい。少し身を捩っただけで唇同士が触れてしまいそうで全く動けない。大きく見開かれた憲紀の瞳が揺れている。……怒ってたのに助けてくれるなんて憲紀くんはやっぱり優しいなぁ。あまりの衝撃にどこか現実逃避をしながらお互い動くことが出来ずただ見つめ合いたい - 39二次元好きの匿名さん24/05/25(土) 10:50:26
暫くするとゆらゆらと揺れていた瞳がハッとして、憲紀が私の上から素早く飛び退いた。実際には数秒しか経っていないんだろうけど、なんだか何時間も見つめ合っていたような気がする。ドキドキとうるさい心臓を落ち着けようと胸に手を当てていると憲紀が「……すまない。頭を打つといけないと思って…」とこちらを見ずに口を開いた。ううん、憲紀くんのおかげで痛い思いしないですんだよありがとう。こちらこそごめんね…と、私も憲紀の顔を見れないまま答えたい。暫く沈黙が流れて、やがて1度深く息を吐いた憲紀が「……すまなかった。私が子供じみていた。もう怒ってはいないよ、…起き上がれるか?」と差し出してくれた手を掴んで上体を起こしたい。その後はせっかく仲直りできたのになんだか気まずくてお互い顔を見れずに過ごしたい
- 40二次元好きの匿名さん24/05/25(土) 18:23:39
憲紀と沢山触れ合いたい。
あの件以降暫くの間は少し指が触れ合うだけでお互い大袈裟に肩を跳ねさせていたものの、一定期間が経つと逆に吹っ切れてスキンシップを取るようになった。
思えばこれも通い妻生活を始めてから変化したことの1つだ。当初は手を繋ぐのも嫌がっていた憲紀は、今では自分から私の手を引いてくれるようになった。嬉しいことがあったり感情が昂ってくっつくと彼ははしたないから離れろと眉間に深く深く皺を寄せて私を引き剥がしていたけど、今だに苦言は零されるものの最近はされるがままになってくれるし、極たまに腕を回し返してくれることさえある。
その事実を再確認したら嬉しくなってきてしまって、隣にいた憲紀にぎゅうと抱き着きたい。憲紀は驚いて片目を見開いたもののすぐに仕方ないなというように息を吐いて「今日は一体なんだ」と穏やかな声色で問いかけてきた。なんでもないよ。ただ幸せだなぁと思っただけ。そう答えて擦り寄ると憲紀は「なんだそれは」と眉を下げて小さく微笑んでくれた。穏やかな憲紀の声色が好き。優しく私の髪を撫でる大きな手の温もりが好き。ああ、幸せだなぁ。この時間が永遠だったらいいのにね - 41二次元好きの匿名さん24/05/25(土) 22:33:31
そうやって憲紀と同棲を初めてから数ヶ月が経ったある日。任務へ行く憲紀をいつものように玄関まで見送って帰りを待ったけど、事前に聞いていた時間をとっくに過ぎ夜になっても彼は帰って来なかった。任務に手こずっているのかな…憲紀無事かな、大丈夫かな…。仮装代わりの恐竜パジャマに身を包み、今日の為に買っていたお菓子達をテーブルに広げていつ憲紀が帰ってきてもいいように起きて待っていた。だけど、日付が変わっても朝になっても、玄関ドアの鍵が回ることは無かった。
連絡先は交換していないから、私はただ待つことしか出来ない。つけっぱなしにしていたテレビから渋谷の惨状を告げるニュースが流れていた。思わずリモコンを叩きつける様にしてテレビの電源を切り、憲紀のいない空っぽの布団に包まる。気が遠くなりそうだ。お願い、早く、早く帰ってきて - 42二次元好きの匿名さん24/05/26(日) 08:51:00
保守
- 43二次元好きの匿名さん24/05/26(日) 14:06:15
保守
- 44二次元好きの匿名さん24/05/26(日) 21:06:17
結局憲紀が私の家に帰ってきたのは、渋谷のニュースが流れてから数日経った後だった。シャッターを下ろしたままなせいで真っ暗な和室に待ち侘びていた声が響く。ハッと勢いよく布団から飛び出して、目に入ってきた憲紀の姿に動揺したくない。
おかえりも言えず固まる私を見て憲紀は「……何だその顔は。そんなに似合っていないだろうか」とすっかり短くなった髪を撫でた。ううん、凄くかっこいいよ。でも急にどうしたの。あの制服と髪留め、お家からの指示だったんじゃ。「私はもう加茂家の人間ではない」 ……え? - 45二次元好きの匿名さん24/05/26(日) 21:11:52
憲紀は『自分が実は嫡子ではなく側室の子であること』『加茂家は乗っ取られ別の当主が立ち、庶子の自分はお払い箱だということ』『母が再婚し新しい子供と幸せな家庭を築いていたこと』『“のりとし”は加茂家の汚点である人物と同名であり、名付けたのは母であること』を淡々と語った。彼にとってあまりに残酷な話をしているのに、憲紀は喋っている間ほんの少しも表情を動かさなかった。どうしてそんななんでもないことみたいに語るの。堕ちたって何?今まで俺なんて言ってなかったじゃん。
ただ呆然とすることしか出来ない私を気にせず、憲紀は淡々と話し続ける。憲紀のお家を乗っ取った人物によって、シメツカイユウという術師同士の殺し合いが開かれたらしい。
「私はこれから鹿児島の結界へ向かうつもりだ」
「恐らく結界に入れば死滅回遊が終わるまで外には出られないだろう。此処は結界の外だ、君に会いに行くことは出来ない。……私の生死も保証は出来ない。だから」
「だから、別れを言いに来たんだ」
そう告げられてひゅ、と息を飲みたくない - 46二次元好きの匿名さん24/05/26(日) 21:19:46
突然告げられたお別れを理解することを脳が拒んでいた。でもそんな私とは対照的に憲紀は淡々と言葉を続けてしまう。
「今まで世話になった。歳上の癖に手のかかる奴だったが、君と過ごした時間は悪くなかったと思う。……さようなら、1。元気で――」訳も分からないまま憲紀の言葉を遮って彼の胸に飛びつきたい。驚いた憲紀が私の名前を呼んでいるのも耳に入らず嫌だ行かないでと泣き喚きたい。何処にも居場所がないって何?私がいるじゃん。私じゃ憲紀くんの居場所になれないの?何で行くの、何の為に戦うの、自暴自棄になってるだけなんじゃないの。
憲紀の居場所を奪った人間が憎い。憲紀の生きる道を決めた癖に、憲紀には貴女しかいなかったのに、憲紀を待っていてくれなかった彼のお母さんが憎い。憲紀に優しくしてくれない世界が憎い。そして何より、ついて行ったところで足でまといにしかならないことが分かりきっているから、ただ彼を引き留めることしかできない無力な自分が憎い。広い背中に力いっぱいしがみついてどれだけ泣き喚いても、憲紀は腕を回し返しても涙を拭ってもくれない。居場所がないなんていうなら、自分の生死はもう問題じゃないなんていうなら、私の為に生きてよ。私とずっと一緒にいてよ。本当は憲紀が戦いに行く理由を察しているのに。責任感の強い憲紀が頷いてくれるわけなんてないのに。私と憲紀達じゃ住む世界が違うのだと理解しているのに。全部わかった上でそれでも行かないでと縋り付きたい。私を見下ろしたまま無言を貫いていた憲紀はやがて「……すまない。仲間達が戦っているんだ、私だけ逃げる訳にはいかない」とだけ零して、私の頭をたった一度だけ柔く撫でた後、そっと縋りつく手を解いて私に背を向けて行ってしまった。
私、ずっと待ってるからね。憲紀くんが帰ってくるまで、この家でずっとずっと待ってるから。精一杯声を張り上げて遠ざかる背中へ叫ぶ。憲紀は一瞬だけ足を止めて、すぐに再び歩き出した。憲紀が答えてくれることも、こちらを振り返ることもなかった - 47二次元好きの匿名さん24/05/26(日) 22:33:30
- 48二次元好きの匿名さん24/05/27(月) 07:28:52
保守
- 49二次元好きの匿名さん24/05/27(月) 14:41:51
憲紀がいなくなってから1日が経った。
昨日憲紀と別れた後のことはあまり覚えていない。恐らく夜ご飯を食べる気力も湧かずわんわん泣き続けて、いつの間にか泣き疲れて眠ってしまったのだと思う。アラームをかけていなかったせいで目が覚めた時にはお昼になっていたし、顔を洗いに行ったら鏡にひどい顔をした自分が映った。……お昼ご飯を食べないと。そう頭では思っているのに、お腹は空腹を訴えているのに、どうしても身体が動かない。何をする気力も湧かない。結局一日中その場から動けずぼーっとしたままいつの間にか眠りにつきたい - 50二次元好きの匿名さん24/05/27(月) 22:36:02
憲紀がいなくなってから2日が経った。
相変わらず目が覚めたのはお昼頃だった。そろそろお腹が空きすぎて気分が悪くなってきた気がする。何かお腹に入れないと…とりあえずあれだけ大泣きしたんだからせめて水分はとらなきゃ。怠い身体を何とか起こし、手っ取り早くシリアルをお皿に出す。とても料理を作る気力は湧かなかった。頭が痛い。機械的に牛乳に浸されたそれをスプーンで掬って口に運ぶ。
憲紀は今何をしているんだろう。鹿児島に行くって言ってたっけ。此処を離れてから2日も経っているし、京都からならもうとっくに着いて、今頃は戦っているんだろうか。……憲紀、無事かな。交流会の時に見た悪夢がフラッシュバックして胃液が込み上げる。慌ててトイレに駆け込んで、せっかくお腹に入れた食事を全て戻してしまった。
憲紀は「仲間が戦っている」と言っていた。きっと憲紀だけじゃない。歌姫先生も、東堂さんも、西宮さんも、三輪さんもメカ丸さんも真依さんも新田さんも、私には生死が分からない。私の知りえないところで、今この瞬間も彼らが酷い目にあっているかもしれない。命を落としているかもしれない。それがたまらなく怖くてトイレの床に座り込んだまま泣きじゃくりたくない - 51二次元好きの匿名さん24/05/28(火) 07:45:40
保守
- 52二次元好きの匿名さん24/05/28(火) 14:49:35
保守
- 53二次元好きの匿名さん24/05/28(火) 15:13:01
憲紀がいなくなってから3日目。風邪をひいたのか熱を出してしまった。あつい、頭が痛い、喉が痛い。でももう看病してくれる人はいない。静かな部屋の中で私の咳と鼻を啜る音だけが聞こえている。きつくて心細くてまた涙が零れた。だけど拭ってくれる人はいない。じっとりと湿って冷たくなった枕が不快で寝返りをうつ。……風邪薬、まだ家にあったかな。でも今は起き上がる気力がないから探すのは後でにしよう…と2度寝をしたい
- 54二次元好きの匿名さん24/05/28(火) 22:24:33
憲紀くん、私ね。憲紀くんが幸せになれるなら私はずっと一緒にいられなくたっていいの。いつかお別れの時がきたって、憲紀くんがちゃんと幸せになれるなら、きっと最後は笑顔で見送ることが出来たと思う。
でもこれは違う。当主の座を奪われて、お家を追い出されて、術師として生きる指針を失って。不幸のどん底に落ちた憲紀は1人で死地へ向かってしまった。そんなのが憲紀の幸せであるはずがない。ねぇ憲紀くん、今何してるの。ちゃんとご飯食べてるの。ひとりぼっちでいるんじゃないの。……ちゃんと、生きてるよね?神様どうかお願いします、憲紀くんを守ってください。不幸なまま死んでしまわないで。いなくなるならせめてちゃんと幸せになってよ - 55二次元好きの匿名さん24/05/29(水) 08:11:48
保守
- 56二次元好きの匿名さん24/05/29(水) 16:12:58
憲紀がいなくなってから4日目。
昨日薬を飲んだおかげか風邪はほとんど回復した。そしたら少しだけメンタルも回復したような気がする。大丈夫、憲紀はきっと無事でいるはず!シメツカイユウが終わったらお家を取り返して、この家に報告に戻ってきてくれるはず。⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎。……あ、でも憲紀はお家嫌いなんだっけ。だったらお家を取り返したところで憲紀の幸せにはならないのかな。
とにかく、憲紀が帰ってきたとき怒られないように1人でもちゃんとしておかないと!アラームをかけて早起きしたらしっかり朝ごはんを食べて、自室でノートにペンを走らせる。1人でも頑張らなきゃ。憲紀が帰ってきたら頑張ったねって頭を撫でてもらうの。頑張らなきゃ。頑張らなきゃ - 57二次元好きの匿名さん24/05/29(水) 22:54:03
夜になると不安と心細さがまた顔を出してしまって、誰かの声を聞きたくなった。憲紀の連絡先は知らないので京都校の誰かに電話をしようとしてスマホを手に取る。でも、皆戦っててそれどころじゃないかも、それに結界って電波通るのかな。何よりもし電話がかからなかったらどうしよう。電話の先の彼らが生きている保証はどこにもないのだ。そう思ったらとても怖くて結局発信ボタンを押せずスマホを握りしめたまま泣きじゃくりたくない。
誰でもいいから声が聞きたくて実家と友人に電話をかけた。寂しさは少しだけ紛れたけど、彼女達に呪術師の話はできないのでこの不安を共有できる人はいない。結局気分が晴れないまま、憲紀達の写真を表示したスマホを握りしめて眠りたい - 58二次元好きの匿名さん24/05/30(木) 08:29:32
保守
- 59二次元好きの匿名さん24/05/30(木) 16:12:46
保守
- 60二次元好きの匿名さん24/05/30(木) 19:40:30
憲紀がいなくなってから5日目。
今日は1人でジョギングに行ってみた。外の空気を吸えば少しは気が紛れるかなと思った。それに、せっかく憲紀に鍛えてもらったのにもやしに戻っちゃったら意味ないし。憲紀が帰ってくるまで頑張ってキープしなきゃ! そうだ、もっと体力と筋力つけて待ってたら憲紀褒めてくれるかな。憲紀に「頑張ったね」と撫でてもらう想像をしながら少ない体力に鞭打って足を動かしたい。……でも、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎の帰りを一体いつまで待ち続ければいいんだろう。そんな最悪の考えが一瞬頭をよぎって足を止めたくない。大丈夫、大丈夫だもん。憲紀は絶対生きてるもん。いつか絶対私の家に帰ってきてくれるんだ、京都校の皆だってきっと――。そう自分に言い聞かせて、外なのも忘れてぼろぼろ涙を零しながら家に帰りたくない。大丈夫。大丈夫。頑張らなきゃ。頑張らなきゃ - 61二次元好きの匿名さん24/05/30(木) 22:23:40
伏せ字は「生きているかも分からない人」とかかな?憲紀はスレ主が壊れる前に帰ってきてやってくれ必要だろ……
- 62二次元好きの匿名さん24/05/31(金) 08:20:19
保守
- 63二次元好きの匿名さん24/05/31(金) 11:08:47
夢を見た。一面に咲いた白い彼岸花の中に憲紀が立っていた。憲紀は何も言わず、ただこちらをじっと見つめている。私の身体は金縛りにあったように固まって、憲紀から目をそらすこともその場から1歩も動くことも出来なかった。
幻想的で美しいその光景に見とれていると、やがて憲紀がゆっくりと口を動かした。しかしいつまでたっても何も声は聞こえてこない。なんて言ったの。そう口を動かそうとして、眉を下げて穏やかに微笑む憲紀の表情に息を飲みたくない。
このままでは憲紀が行ってしまう。そう直感的に思って、鉛のように重い身体をなんとか動かして手を伸ばす。「待って」「行かないで」と叫びたいのに声が出ない。憲紀がくるりと私に背を向けて歩き出してしまう。待ってよ、置いて行かないで!必死で追いかけるけど差は縮まらなくて、憲紀の背中がどんどん遠くなっていく。それでも夢中で追いかけ続けた。無限にも思える時間を追いかけ続けて、やがて足がもつれて転んでしまった。擦りむいた手のひらと膝から血が滲んでいるのも気にせず急いで顔をあげるけど、もう視界に憲紀の背中はない。一面の彼岸花畑もいつの間にか消えていて真っ暗な闇の中にひとりぼっちだ。のりとしくん。やっと喉から震えたか細い声が零れたけど返事はない。痛くて、寂しくて、その場にへたり込んだまま子供みたいに声をあげてわんわん泣いた。喉が張り裂けそうになるほど大声で泣き喚いた。静かな暗闇に私の泣き声だけが虚しくこだましている。寒くて寒くて仕方がなかった - 64二次元好きの匿名さん24/05/31(金) 22:09:01
保守
- 65二次元好きの匿名さん24/05/31(金) 22:22:15
憲紀がいなくなって6日。
最悪の気分で目が覚めた。アラームの音がどこか遠くで鳴っているように感じる。何もかも投げ出してしまいたくなるのをなんとか叱咤して身体を起こした。フラフラとキッチンへ向かい、お気に入りのグラノーラをお皿に出してヨーグルトと蜂蜜をかける。ボーッとしていたら蜂蜜をかけすぎてしまった。スプーンとお皿を持ってテーブルの前に座り、グラノーラを口に運ぶ。あまり味がしない。砂を食べているような気分でお皿の中のそれをなんとかお腹に詰め込んだけど、気持ちが悪くて結局数分後には戻してしまった。いつの間にかつけていたテレビの音が随分遠くに聞こえる。
テレビの電源を切って自室に移動しテキストを広げた。何かに集中して気を紛らわせたかった。でも全く内容が入ってこない。というより、なんて書いてあるのかすら頭が上手く働かない。結局勉強は諦めて布団に潜り込み翌朝まで眠ってしまいたい - 66二次元好きの匿名さん24/06/01(土) 07:47:15
保守
- 67二次元好きの匿名さん24/06/01(土) 16:26:47
保守
- 68二次元好きの匿名さん24/06/01(土) 18:51:11
7日目。
1週間が経ってしまった。シャワーを浴びながらもうダメなのかなという考えが頭をよぎりたくない。……でも、ハロウィンの時だって、1週間以上空いたけどちゃんと帰って来てくれたもん。だからきっと、今回だって……。
『私の生死も保証はできない』『別れを言いに来たんだ』『さようなら、1。元気で――』
憲紀の言葉が頭の中でぐるぐるとループする。…………もう、諦めた方がいいのかな。傍らに置かれたカミソリに手を伸ばす。グッと刃を手首に押し当てたところで、憲紀の顔が浮かんで思いとどまりたい。
駄目だ、生きなくちゃ。私が憲紀に待ってるって言ったんだ。だから辛くても絶対に待ち続けるの。たとえ憲紀がどんな姿になっていても。私がどんな姿になってしまっても。ずっとずっと、憲紀が帰って来るまで、いつまでもこの場所で - 69二次元好きの匿名さん24/06/01(土) 22:25:45
保守
- 70二次元好きの匿名さん24/06/02(日) 07:57:09
保守
- 71二次元好きの匿名さん24/06/02(日) 16:02:30
夢を見た。朝日が差し込むベッドの上で目が覚めると誰かの腕の中に抱かれていた。驚いて思わずビクリと大きく身体を跳ねさせてしまい、腕の主を起こしてしまった。んん、と眠そうな唸り声の後、よく聞き覚えのある声が私の名前を呼ぶのが頭上から聞こえて心臓がドクンと大きく跳ねる。目の前の人物の胸を押して勢いよく身体を離すと、別れた時より少し髪が伸びて顔立ちも大人びた憲紀が驚いたように私を見つめていて息が止まりたい。
言いたいことが沢山あるはずなのに、ただぱくぱくと金魚のように口を開けたり閉じたりすることしか出来ない。そんな私を見て憲紀は不思議そうに首を傾げた後「今日は休日だ、まだ眠っていてもいいんだよ」と優しく頭を撫でてくれた。久しぶりに感じた大きな手の温もりが嬉しくて、ぎゅうと彼の胸に身を寄せる。私が知っているものより少し低い憲紀の声が「今日はいつにも増して甘えただな」と穏やかに笑った。逞しい腕にそっと抱き寄せられる。ぴったりとくっついた身体から伝わる体温が心地いい。優しく頭を撫でてくれる大きな手のひらの感触が心地いい。
幸せだなぁ。安心してうとうとしてきた私が再び意識を手放そうとした時、寝室の扉の外から赤ん坊の大きな泣き声が聞こえてきた - 72二次元好きの匿名さん24/06/02(日) 16:40:43
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- 73二次元好きの匿名さん24/06/02(日) 16:44:36
驚いて固まる私とは対照的に落ち着き払った憲紀は「ああ…私があやしてくるから君はもう少し寝ていて構わないよ」とそっと身体を離すと、私の頭を一撫でして起き上がった。咄嗟に彼のシャツをギュッと掴んでしまい、驚いた顔の憲紀と目が合いたい。「どうしたんだ」と目を丸くする彼に行かないでと懇願する。思わず涙がぽろぽろと流れてきてしまって、憲紀がギョッとして近付いてきた。憲紀は大きな手で私の頬を包むと、心配そうに声をかけながら涙を拭い頭を撫でてくれた。
もうどこにも行かないで。1人にしないで。ずっと一緒にいて。憲紀を困らせたくはないのに、身勝手な言葉がボロボロとひとりでに口から零れ出てしまう。憲紀は驚いた顔をした後穏やかな笑みを浮かべて、「行かないよ」と優しい声を返すとそっと私の額に口付けた。さらり、と視界の端で揺れる前髪の奥で、憲紀がゆっくりと離れていく。「あの子を泣き止ませたらすぐに戻る。だから眠って待っていてくれ」 固まる私にそう声をかける憲紀の左手でシルバーの指輪が光っていた - 74二次元好きの匿名さん24/06/02(日) 22:33:55
憲紀と別れてから8日目。
なんだか随分と都合のいい夢を見ていた気がする。今日は比較的気力があったので3食しっかり作って食べた。憲紀が帰ってきた時に料理の腕が落ちてたらいけないし、1人でも料理はしっかりしないと。黙々と綺麗な箸使いで私の作った料理を平らげてくれる憲紀の姿を思い出しながら食事を取りたい。
涼しくなってきた頃お散歩に行ったら道中で野良猫を見かけた。細身の黒猫ちゃんだ!可愛い! おいで、としゃがんで声をかけてみたらにゃあと一鳴きして寄ってきてくれた猫ちゃんに癒されたい。顎下を撫でながら憲紀が猫になったらこんな感じかなと考えたい。……1人に耐えられなくなったら猫飼おうかな。いやでも仕事から離れてる今はともかく一人暮らしでペットは…うーん…。悩んだ末猫カフェでいいかと思いとどまりたい。
それにしてもこの子随分人懐っこいな…やめてよ離れられなくなっちゃうよぉ… - 75二次元好きの匿名さん24/06/03(月) 09:06:30
保守
- 76二次元好きの匿名さん24/06/03(月) 16:01:11
保守
- 77二次元好きの匿名さん24/06/03(月) 21:46:24
憲紀と別れてから1週間とちょっと。
家のインターホンが鳴った。今はもう夜だし、私にわざわざインターホンを鳴らして話をする程仲のいいご近所さんがいるはずもなく。宅配便も何も頼んでいない。――憲紀かもしれない!そんな期待を胸に急いでカメラを確認しに行って、表示された映像に誰も映っていないことに落胆と共に胸騒ぎを覚えたくない。
……こんな時間にイタズラ?ピンポンダッシュなんてする人本当にいるんだ…と映像を切ろうとして、再び鳴ったインターホンにビクリと肩を跳ねさせたくない。カメラにはやはり誰も映っていない。困惑する私をよそに呼び鈴は鳴り続ける。何度も。何度も何度も何度も。
流石に気味が悪くなった私が無視をしようとソファに戻ろうとした時、ピ、とカメラがひとりでに応答モードに切り替わった音に背筋が凍りたくない。
『あけてクださァい』 - 78二次元好きの匿名さん24/06/03(月) 21:51:04
――ピンポーン。
『アけてくだサぁい』
――ピンポーン。
『いるのはわかってまァす』
――ピンポーン。
『あけテくださぁい』
――ピンポーン。
『あけろ』
――ピンポーン。ピンポーン。 - 79二次元好きの匿名さん24/06/03(月) 21:53:37
ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン
- 80二次元好きの匿名さん24/06/03(月) 22:31:05
ひっ、と引きつった声が思わず私の口から漏れる。ひとりぼっちの部屋の中に木霊するインターホンの音と私を呼ぶ声に気が狂いそうで、毛布にくるまり耳を塞いでうずくまった。お願い、はやく、はやくどっか行って!恐怖でガタガタ震えながら憲紀達の日常の過酷さを思い知りたくない。
怯えて丸まっていること10分程度、うるさかったインターホンの音がぴたりと止んだ。毛布から顔を出し、ホッと胸を撫で下ろす。よかった、助かった。そう思ったのもつかの間、『おじゃマしまァす』と窓の外から聞こえてきた声に背筋が凍りたくない。私がひゅ、と息を呑むのと同時にガシャンと大きな音を立てて割れた窓ガラスとひしゃげたシャッターを呆然と見つめたくない。ぎょろりと私を見下ろす大きく虚ろな目をした異形に自分にも呪霊が見えた喜びを感じると同時に、ああ、私は今からこの怪物に殺されるんだと悟りたくない。
グシャリ、グシャリと散らばったガラスの破片を踏みながら異形がゆっくりと近付いてくる。呪霊が1歩進むたびにガタガタと音を立て家具が揺れ、置いていた食器や小物が床に落ち次々にガシャンと音をたてた。足がすくんで動けない。やめて、やめてよ。お願いだから壊さないで。憲紀くんが帰ってくる家なのに。私達の大切な思い出なのに。私と憲紀くんの家から出て行け!と今すぐ追い払いたいのに、何も出来ず恐怖に震えることしかできない自分が情けなくて恨めしくてボロボロと涙を流したくない。どうして私はどこまでも憲紀くんの役に立つことが出来ないんだろう。自己嫌悪と許容量を超えた恐怖に意識を手放しそうになった時、自身の近くで何かがぱりん、と音を立てたのが聞こえた - 81二次元好きの匿名さん24/06/03(月) 22:38:27
視線を音のした方へやると、テレビ台から落ちた写真立てが床に転がっていた。割れたガラスの奥の写真には、花畑の中に立つ私と憲紀の姿が写っている。初めて撮った憲紀とのツーショット写真だった。
ハッとして破片が刺さるのも気にせず写真立てへ手を伸ばす。本当は思い出の詰まったスマートフォンを守りたいけど、テーブルの1番遠い場所に置かれてる上に、近くに呪霊が立ち塞がっているせいで叶いそうにない。ならせめてこの写真だけでも。血の滲んだ手で縋るようにギュッと写真立てを抱き締める。
――嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ死にたくない!憲紀を此処で待つって約束したんだ。いつか必ず帰ってきてくれるもん。それまでタヒねない。死にたくない!
恐怖に固まった身体を無理やり動かし、ずりずりと無様に床を這い呪霊から逃げ出そうとする。しかしそんなことを許してくれるはずもなく、呪霊の鋭い爪が私の足を貫き、声にならない悲鳴が喉から漏れ出た。痛みでドッと汗が吹き出し、涙が更に溢れ出る。諦め悪くその辺にあった物を手当り次第投げつけるも、そんなもので呪霊が怯むはずもない。いつの間にか目前まで迫った異形が、ギラギラと牙を光らせ大きく口を開けた。もう駄目だと悟る。
今からあれに食べられるんだ。痛そうだな。痛いのは嫌だな。死ぬのは怖いな。……私が待ってるって言ったのに。約束、守れなくてごめんね。神様、どうか憲紀はこんな思いをして死にませんように。呪霊と戦う恐怖と痛みからいつか解放されますように。大切な人達といつまでも幸せに暮らせますように。
死ぬ前にもう一度だけ、憲紀に抱きしめて欲しかったなぁ… - 82二次元好きの匿名さん24/06/04(火) 07:38:33
保守
- 83二次元好きの匿名さん24/06/04(火) 15:31:08
これから襲ってくるであろう痛みを覚悟してギュッと目を閉じた時、いつの日か聞いた風をきる音が私の耳に聞こえた。ハッとして目を開く。私の上で大きく口を開けていた呪霊は、いつの間にか跡形もなく姿を消していた。
……助かった。安心感で腰が抜けてその場から立ち上がれずにいると、ぱり、とガラスを踏む音が耳に入る。音のする方を振り返って、思わずあ、と声が漏れた。
「すまない、遅くなった。……怪我はないか、1」
そう言って跪きこちらへ手を差し出す愛しい人へ、ずっとずっと言いたかったおかえりなさいを口にしたい - 84二次元好きの匿名さん24/06/04(火) 21:41:49
憲紀と色んなことを話したい。いいことも悪いことも、会えなかった時間の分だけ沢山。私の足の治療をしてもらう為にと東京へ向かう道中、憲紀の背中で揺られながらたくさん話しをしたい。穴は空いたけど貫通してるわけではないから普通のお医者さんにかかれば大丈夫だと言ったんだけど、憲紀は「その傷では暫く歩きにくいだろう。それに痕が残ったらどうする」と聞いてくれなかった。本当に高専の方々にはお世話になってばかりで申し訳ない…。生活が落ち着いたら何かお礼をさせてもらおう。そう私が零して憲紀に「……家入さんはともかく憂憂くん達の前でそれは言うなよ」と釘を刺されたい。
まずは悪いニュースから。東京のこと、メカ丸さんのこと、真依さんのこと。渋谷で起こった事件に、死滅回游のルール。そしてこれから新宿で行なわれる、呪いの王両面宿儺との決戦の話。聞けば聞くほど憲紀達の生きる世界の過酷さを思い胸が苦しくなる。本当なら皆に生きていて欲しかったけど、とりあえず憲紀が無事であったことを喜びたい - 85二次元好きの匿名さん24/06/04(火) 22:34:45
そして良いニュース!憲紀は戦線を離れてお母さん達と一緒に海外に行くらしい!お母さんとちゃんと話をして、家族を少しでも長く見守る為に決断したそうだ。「君には私だけ逃げる訳にはいかないと啖呵を切っておいて、情けない話だが…」と申し訳なさそうに話す憲紀にそんなことないよと喜びの声をあげたい。憲紀くんにとって1番大事なのはお母さんなんだもん。それを守るっていう憲紀くんらしい決断も、憲紀くんが危険から離れることも私にとっては物凄く嬉しいよ。そう言葉をかけたら憲紀は「そうか」と少しホッとしたような声を出した。
……そっか。憲紀くん、お母さんと一緒に暮らせるんだ。ちゃんと幸せになれるんだ。憲紀との生活が終わってしまうのは寂しいけど、それ以上に嬉しくて憲紀の首に擦り寄りたい。憲紀は「擽ったいよ」と笑った。なんだか別れる前よりも少し雰囲気が柔らかくなったような気がする。
お見送りに行ってもいい?と声をかけると、憲紀は何かを考えるように黙り込んでしまった。え、迷惑だったかな。ごめんね、嫌なら行かないから忘れてというと憲紀はハッとして「……嫌なわけがないだろう。ああ、構わないよ。君が来てくれるなら嬉しい」と答えてくれた。よかった、迷惑じゃなかったみたいだ。ホッと胸を撫で下ろしたい。
その後も憂憂さんという男の子と合流するまで、たくさんたくさん、憲紀とおしゃべりをしたい - 86二次元好きの匿名さん24/06/04(火) 23:31:12
空港で憲紀達のお見送りをしたい。
大阪の空港で待ち合わせをした。保安検査場の前で憲紀達が来るのを待つ。やがて現れた憲紀は私に気付くと、家族達を先に行かせて私の元に向かって来てくれた。遠くで会釈をしてくれている憲紀の家族達に会釈を返す。
「待たせてすまない。見送りに来てくれてありがとう」 穏やかな表情をした憲紀と目を合わせたい。下の子、可愛いね。憲紀くんお兄ちゃんになるんだ。「ああ。まだ兄になる実感はあまり湧いていないが…」お父さん、いい人そうだったね。「ああ。私をすぐに受け入れてくれた。その恩を仇で返さないよう、良い息子でいなくてはな」 そう家族の話しをする憲紀は、とても幸せそうだった。
その後も少し雑談をして、数分が経った。本当は物凄く寂しいし名残惜しいけど、憲紀のご家族をあまり待たせるわけにもいかない。憲紀くん、幸せになってね。そう言って握手をしようと憲紀に手を差し出したい。「ありがとう」と微笑んでそっと私の手を握った憲紀の手を絶対、絶対だからね!と握り返しぶんぶん振りたい。「君こそ」と憲紀は笑った。
そして決意が揺らがないうちにお別れしようと手を離そうとして、ギュッと私の手を握ったまま動かない憲紀に困惑したい - 87二次元好きの匿名さん24/06/04(火) 23:51:57
や、やめてよ。せっかく笑顔でお別れしようと思ってたのに。そんなことされたら別れられなくなっちゃうよ。じわりと浮かんできた涙を必死に堪えて、平然を装ってどうしたのと声をかけたい。憲紀は暫くじっと握った手を見つめて黙り込んだ後、やがて決心したようにひとつ息を吐くと「連絡先を教えてくれないか」とだけ零した。……そっか、そういえば憲紀とは交換してなかったな。断る理由もないので喜んでスマホを取り出し番号とアカウントを教えたい。えへ、連絡先に憲紀の名前がある。嬉しい!憲紀は私の連絡先の入ったスマホを見つめると「ありがとう。……向こうに着いてひと段落したら、電話をかけてもいいか」と言った。いいの?嬉しいなと私が答えるのとほぼ同時に、憲紀に抱き寄せられて心臓が止まりたい。
憲紀の体温が私の身体に伝わっていく。耐えきれなくなった涙が零れ落ちて、ギュッと憲紀の背に腕を回し返した。「……必ず連絡する。待っていてくれ」うん。「今までありがとう。本当に世話になった」うん。私こそ、今まで一緒に生活してくれてありがとう。「……君に会えて、よかったと思う」……そっか。嬉しいなぁ。私も、憲紀くんと出会えて本当によかったよ。
人目を気にする余裕もなく抱きしめ合うこと数分。保安検査場の通過を催促するアナウンスが響いた。「……すまない。もう行かないと」 憲紀が呟く。うん。今まで本当にありがとう。海外でも元気でね。大好きだよ。そう言うと憲紀は腕の力を強めた後、「……ああ。君も元気で」とゆっくり身体を離した - 88二次元好きの匿名さん24/06/04(火) 23:54:21
じゃあね、元気でね。絶対絶対、幸せになってね。ボロボロと涙を零しながら笑顔で手を振りたい。憲紀は「さようなら、1。……また会おう」と穏やかな笑みを浮かべ手を振ると、背を向けて歩いていった。また会おう。そう言ってくれたことが嬉しくて、人目もはばからず更にボロボロ涙を零したい。大丈夫、今度は悲しくないお別れだ。保安検査場への入り口を通った憲紀がこちらを振り返り、小さく手を振ってくれた。憲紀の姿が見えなくなるまで笑顔で手を振り続けたい。
憲紀と別れたあとは展望デッキに行って憲紀達の乗った飛行機が飛んで行くのを見送りたい。離陸した飛行機がどんどん高度を上げていく。やがてその姿が見えなくなった瞬間、堰を切ったようにわんわん大泣きしたい。
さようなら憲紀くん、幸せになってね - 89二次元好きの匿名さん24/06/05(水) 08:19:26
保守
- 90二次元好きの匿名さん24/06/05(水) 16:27:48
保守
- 91二次元好きの匿名さん24/06/05(水) 18:10:15
憲紀くん、お誕生日おめでとう!
そう言うとスマホの奥から「ああ、ありがとう」と穏やかな声が聞こえた。
時が経つのは早いもので、憲紀と別れてからもう数ヶ月が経つ。空港を後にした2~3週間後、憲紀は約束通り海外から電話をかけてきてくれた。それからというもの、憲紀はほぼ毎日のように私に電話をかけてくれていて、お互いの近況報告などをするこの通話は今では2人の日課になっている。
どう?海外生活にはもう慣れた?
「そうだな、だいぶ勝手はわかってきたが、まだまだ慣れないことも多い。完璧に順応するにはもう暫くかかりそうだ」
そっか。新しい家族達とはどう?ちゃんとお兄ちゃんやれてる?
「ああ。父は柔和な人でね。おかげで思っていたよりすぐ彼らに馴染むことが出来た。下の子も素直ないい子だよ。……私がいい兄になれているかはわからないが…」
そう苦笑を零す憲紀に憲紀くんなら大丈夫だよと返したい - 92二次元好きの匿名さん24/06/05(水) 18:17:14
そっか、憲紀くん、新しい家族と上手くやれてるんだ。一緒に生活をしていた時に憲紀のお家に対する苦悩を見続けていたから、新しい家族お父さん達が憲紀にとって優しいものであることは私にとっても物凄く喜ばしいことだ。
嬉しさを噛みしめていると「君が、私にしていたまじないがあるだろう」と憲紀が零した。ああ、外出前に手を握ってたやつ?と返すと肯定の声が返ってくる。憲紀は続けて、私がしていたルーティンを今は新しい家族達にしてもらっているのだと話してくれた。身体に染み付いてしまっていて、ないとなんだか落ち着かなかったのだという。微笑ましさと嬉しさから調子に乗って私がいなくて寂しかったんだと軽口を叩いたら憲紀に無言を返されて傷つきたい。せ、せめて否定してくれたってたっていいじゃん…。無言が1番傷つくし恥ずかしいよ。
そう思って何か言ってよぉ…と弱々しい声を零すと、暫くの沈黙の後「……ああ、そうだな。君がいなくて、少し物足りなく感じることもある」と声が聞こえてきて思わずスマホを落としたい。
ゴンッ!と大きな音が響いて、スマホから「どうした!?大丈夫か」と慌てた声が聞こえてきた。なんとかスマホを拾い耳に当て、憲紀くんもしかしてイタリアにいる?と聞きたい。本当にどこでそんなこと覚えてきたんだろう、憲紀のくせに。……あ、もしかして彼女でも出来たのかな?そう思い口にすると憲紀は数秒固まった後「どうしてそう思ったんだ」と不可解そうな声を返したのであれぇ?となりたい - 93二次元好きの匿名さん24/06/05(水) 18:20:34
「……私に相手がいて欲しいのか?」とムッとした声を出す憲紀にそうじゃなくて、急に恋愛ドラマみたいなこと言い出すから…と弁解したい。なんだそれはと呆れた声を出した憲紀は「今は勉学と此方の生活に馴染むことで精一杯だ、色恋にうつつを抜かしている暇はない」「……それに、今の私は地位のないただの男だ。日本にいた頃は学生の身であってもそこそこの収入があったが、海外は呪霊が少なくそうもいかない。このような不安定な身で恋人を作るなど不誠実だろう」と心底心外だというように続けた。うーん、相変わらず拝みたくなる程の安心安全生真面目男子っぷりだなぁ。憲紀くんって結婚を前提にお付き合いしてくださいとか言うタイプでしょと軽口を叩いたら「タイプもなにもそれが普通じゃないのか」と返ってきて、あまりのらしさに笑いたい。
ひとしきり笑っていると「そういう君はどうなんだ」と憲紀が聞いてきた。思わずえ、憲紀くん恋バナとかするんだ意外と零すと「私だけ聞かれるのは不公平だろう」とムスッとした声が返ってくる。いないよ、そう簡単に私に相手が出来ると思う? そう答えると憲紀は少し間をあけた後「それもそうだな」と答えたので、少しは否定してよ!と口を尖らせたい。確かにいい女じゃない以前に男性苦手だから仕方ないんだけどさぁ… - 94二次元好きの匿名さん24/06/05(水) 18:28:58
そうだ!男性といえば、ちょっとずつ苦手を克服出来るように頑張ってるんだよ。初対面の人はまだ萎縮しちゃうけど、職場や取引先の男性とはだいぶ緊張せず話せるようになったし。出先で声をかけられてもお断りに成功する回数が増えてきたの!そう得意気に話したら「よかったじゃないか、頑張っているんだね」と褒められて嬉しくなりたい。えへへと嬉しさにデレデレしていたら「……でも、あまり無理に克服する必要もないんじゃないか」と憲紀が零して驚愕したい。一緒に生活してた頃には1人で対処できるように治せって言ってたのに。そう言うと「いや、その……君の場合変に男に慣れ過ぎても、ろくでもない奴に引っかかりそうだなと」と返され、そんなことないもん!!と反論しようとするも自覚があってぐうの音も出なくなりたい
- 95二次元好きの匿名さん24/06/05(水) 18:32:10
ぐぬぬ、と黙り込んでいると、話を切り出すように憲紀が私の名前を呼んだ。
「こっちでの生活が落ち着いたら、一度日本に帰国しようと思うんだ。生き残った皆に顔を合わせに行きたい」
「……君に伝えたいこともある。何時になるかは分からないが、必ず会いに行く。だから、それまで待っていてくれるか」
穏やかで真剣な声色で話されたそれらの言葉が嬉しくてじわりと涙ぐみたい。それを誤魔化すようにじゃあそれまでタヒねないねと返して「縁起でもないことを言うな」と怒られたい。
憲紀くんに救われた命だもん。憲紀くんが待てって言うならいくらでも待つよ。そう答えると憲紀は「……そうか。君がそう言ってくれるなら嬉しい」と優しい声を出した。前はこんなことを言うと「その命を危険にさらしたのも私だ」としょんぼりしていた憲紀も、憲紀くんは悪くないよと刷り込み続けたおかげか素直に感謝を受け取ってくれるようになった。……この家の修繕費も「私の責任だ」と憲紀が譲らなくて、結局全額払われちゃったしなぁ。憲紀に会う時までにいっぱい稼いで、今まで施してもらった分を返さなければと決意したい。
……そっか。またいつか、会えるんだ。嬉しいな。楽しみだな - 96二次元好きの匿名さん24/06/05(水) 18:35:51
それにしても、伝えたいことって今じゃ駄目なの?
「……ああ、今の私じゃ駄目なんだ。だから、伝えられるようになるまで待っていてくれ」
何それ、変なの。……あのね、未だにね、家の中で憲紀くんを探しちゃう時があるんだ。
「……奇遇だな。私も間違えて君の名を呼んでしまうことがある」
ふふっ、そうなんだ。なんか嬉しいな。私達、一緒にいた時間は1年にも満たないのに。不思議だね。
「そうだな。たった数ヶ月なのに、もっと長い間共にいた様に感じるよ。…………」
…………はやく、憲紀くんに会いたいな。
「! ……ああ。一刻も早く君に会えるよう、努力しよう」
あはは、ありがとう。大丈夫、ちゃんと待ってるよ。……憲紀くん、今日も電話してくれてありがとうね。
「……いいんだ。私も、君の声が聞きたかったから」 - 97二次元好きの匿名さん24/06/05(水) 18:36:36
「……もう、こんな時間か。そろそろ切るよ。…おやすみ1、また明日」
うん、また明日。おやすみ憲紀くん。 - 98二次元好きの匿名さん24/06/05(水) 18:38:44
海外にいる憲紀と毎日電話をしたい。毎晩決まった時間にかかってくる電話をウキウキと上機嫌で待ちたい。電話をするのが難しい時は時間をずらしたりメッセージでやり取りをしたりして、毎日欠かさず連絡を取りたい。
ありがとう憲紀くん。憲紀くんのいないお家はやっぱり寂しいけど、憲紀くんのおかげで今は毎日が楽しいの。
私達の共同生活は終わってしまったけど、憲紀が幸せなら私も幸せだ。それに毎日憲紀の声が聞けているし。なにより、また会おうって言ってくれたもんね。
憲紀と再び会える日を楽しみに。いつか必ず訪れるその日を、ずっとずっと待ち続けたい。
憲紀と同棲したい 【完】 - 99二次元好きの匿名さん24/06/05(水) 18:39:56
- 100二次元好きの匿名さん24/06/05(水) 18:41:17
最後に。
憲紀、お誕生日おめでとう。生まれてきてくれてありがとう。きっと貴方以上に好きになれる人は私には生涯現れないと思います。
憲紀のこれからの人生が幸福に満ちたものでありますように!
ここまで見てくださってありがとうございました - 101二次元好きの匿名さん24/06/05(水) 19:06:57
- 102二次元好きの匿名さん24/06/05(水) 21:20:52
乙!
- 103二次元好きの匿名さん24/06/05(水) 22:04:29
ふらっと読んだらすごい量に圧倒されている
文才すげーなスレ主