- 1124/12/18(水) 23:20:38
こちらはあにまん掲示板で立っていた元スレ「ごめんねスレッタ・マーキュリー」を参考にしたSSや独自設定などを掲載するスレのその17です
最近はそれ以外の設定の4スレSSもよく掲載されています。今は一時的にスライム転生ファンタジーSSを連載中です。予想外に長くなりましたが、もうすぐ終わる予定です。
SSが掲載されない間は4スレを中心にした水星キャラや世界観についての雑談や、まったく関係ない作品の雑談などが入ります
基本となるSSは6話以降のエラン4号がスレッタを誘拐、逃避行の末監禁するストーリーになっています。現在逃避行編は終了し、監禁編を連載しています
現在の更新速度は非常に遅くなっています
以下注意事項です
・4号×スレッタ
・独自設定、捏造過多※1
・犯罪行為、残酷な描写あり
・元スレに書かれたセリフの使用※2
※1)このSSの設定はアニメ本編のものとはだいぶ剥離しているものが多いです。独自設定ばかりで、例えばオリジナルキャラが横行していたりするので、どうしても気になる方はブラウザバックしてください
※2)元スレに書かれたセリフの使用は、意図せず思わぬ使い方をしている可能性があります。その際はお申し出くだされば、出来る限り修正をかけます - 2124/12/18(水) 23:21:25
- 3124/12/18(水) 23:21:45
元スレを参考にスレ主が書いたSSスレその1~10はこちら↓
[閲注・CP注]SS ごめんねスレッタ・マーキュリー(4号×スレッタ)|あにまん掲示板これはあにまん掲示板で立っていた元スレ「ごめんねスレッタ・マーキュリー」を参考にしたSSを掲載するスレです6話以降のエラン4号がスレッタを誘拐、逃避行の末監禁するストーリーになっています参考にした元ス…bbs.animanch.com[閲注・CP注]SS ごめんねスレッタ・マーキュリー(4号×スレッタ)その2|あにまん掲示板これはあにまん掲示板で立っていた元スレ「ごめんねスレッタ・マーキュリー」を参考にしたSSを掲載するスレのその2です6話以降のエラン4号がスレッタを誘拐、逃避行の末監禁するストーリーになっています。現在…bbs.animanch.com[閲注・CP注]SS ごめんねスレッタ・マーキュリー(4号×スレッタ)その3|あにまん掲示板これはあにまん掲示板で立っていた元スレ「ごめんねスレッタ・マーキュリー」を参考にしたSSや独自設定などを掲載するスレのその3です6話以降のエラン4号がスレッタを誘拐、逃避行の末監禁するストーリーになっ…bbs.animanch.com[閲注・CP注]SS ごめんねスレッタ・マーキュリー(4号×スレッタ)その4|あにまん掲示板これはあにまん掲示板で立っていた元スレ「ごめんねスレッタ・マーキュリー」を参考にしたSSや独自設定などを掲載するスレのその4です6話以降のエラン4号がスレッタを誘拐、逃避行の末監禁するストーリーになっ…bbs.animanch.com[閲注・CP注]SS ごめんねスレッタ・マーキュリー(4号×スレッタ)その5|あにまん掲示板こちらはあにまん掲示板で立っていた元スレ「ごめんねスレッタ・マーキュリー」を参考にしたSSや独自設定などを掲載するスレのその5です6話以降のエラン4号がスレッタを誘拐、逃避行の末監禁するストーリーにな…bbs.animanch.com[閲注・CP注]SS ごめんねスレッタ・マーキュリー(4号×スレッタ)その6|あにまん掲示板こちらはあにまん掲示板で立っていた元スレ「ごめんねスレッタ・マーキュリー」を参考にしたSSや独自設定などを掲載するスレのその5です6話以降のエラン4号がスレッタを誘拐、逃避行の末監禁するストーリーにな…bbs.animanch.com[閲注・CP注]SS ごめんねスレッタ・マーキュリー(4号×スレッタ)その7|あにまん掲示板こちらはあにまん掲示板で立っていた元スレ「ごめんねスレッタ・マーキュリー」を参考にしたSSや独自設定などを掲載するスレのその7です6話以降のエラン4号がスレッタを誘拐、逃避行の末監禁するストーリーにな…bbs.animanch.com[閲注・CP注]SS ごめんねスレッタ・マーキュリー(4号×スレッタ)その8|あにまん掲示板こちらはあにまん掲示板で立っていた元スレ「ごめんねスレッタ・マーキュリー」を参考にしたSSや独自設定などを掲載するスレのその8です6話以降のエラン4号がスレッタを誘拐、逃避行の末監禁するストーリーにな…bbs.animanch.com[閲注・CP注]SS ごめんねスレッタ・マーキュリー(4号×スレッタ)その9|あにまん掲示板こちらはあにまん掲示板で立っていた元スレ「ごめんねスレッタ・マーキュリー」を参考にしたSSや独自設定などを掲載するスレのその9です。稀にそれ以外の設定の4スレSSも掲載されます基本となるSSは6話以降…bbs.animanch.com[閲注・CP注]SS ごめんねスレッタ・マーキュリー(4号×スレッタ)その10|あにまん掲示板こちらはあにまん掲示板で立っていた元スレ「ごめんねスレッタ・マーキュリー」を参考にしたSSや独自設定などを掲載するスレのその10です。稀にそれ以外の設定の4スレSSも掲載されます基本となるSSは6話以…bbs.animanch.com - 4124/12/18(水) 23:22:49
その11~16はこちら↓
[閲注・CP注]SS ごめんねスレッタ・マーキュリー(4号×スレッタ)その11|あにまん掲示板こちらはあにまん掲示板で立っていた元スレ「ごめんねスレッタ・マーキュリー」を参考にしたSSや独自設定などを掲載するスレのその11です。稀にそれ以外の設定の4スレSSも掲載されます基本となるSSは6話以…bbs.animanch.com[閲注・CP注]SS ごめんねスレッタ・マーキュリー(4号×スレッタ)その12|あにまん掲示板こちらはあにまん掲示板で立っていた元スレ「ごめんねスレッタ・マーキュリー」を参考にしたSSや独自設定などを掲載するスレのその12です。稀にそれ以外の設定の4スレSSも掲載されます基本となるSSは6話以…bbs.animanch.com[閲注・CP注]SS ごめんねスレッタ・マーキュリー(4号×スレッタ)その13|あにまん掲示板こちらはあにまん掲示板で立っていた元スレ「ごめんねスレッタ・マーキュリー」を参考にしたSSや独自設定などを掲載するスレのその13です。稀にそれ以外の設定の4スレSSも掲載されます基本となるSSは6話以…bbs.animanch.com[閲注・CP注]SS ごめんねスレッタ・マーキュリー(4号×スレッタ)その14|あにまん掲示板こちらはあにまん掲示板で立っていた元スレ「ごめんねスレッタ・マーキュリー」を参考にしたSSや独自設定などを掲載するスレのその14です。稀にそれ以外の設定の4スレSSも掲載されます。SSが掲載されない間…bbs.animanch.com[閲注・CP注]SS ごめんねスレッタ・マーキュリー(4号×スレッタ)その15|あにまん掲示板こちらはあにまん掲示板で立っていた元スレ「ごめんねスレッタ・マーキュリー」を参考にしたSSや独自設定などを掲載するスレのその15です(直前のスレは127レス目で落ちていますが、時間も経っているので14…bbs.animanch.com↓ほぼ転生スライムSS一色になってしまいました
[閲注・CP注]SS ごめんねスレッタ・マーキュリー(4号×スレッタ)その16|あにまん掲示板こちらはあにまん掲示板で立っていた元スレ「ごめんねスレッタ・マーキュリー」を参考にしたSSや独自設定などを掲載するスレのその16です最近はそれ以外の設定の4スレSSもよく掲載されています。SSが掲載さ…bbs.animanch.com - 5124/12/18(水) 23:23:32
関連スレです
書き逃げSS様です。よくお邪魔させてもらっています。数が多いので最初と最新のスレを載せておきます
最初のスレ
書き逃げSS他|あにまん掲示板・タイトル通り、SSを書き逃げしていくスレです・話を思いついたけど、書けるところがない・スレの進行を止めたくない等、投稿したいけどする場所がないとき等に使って下さい・設定だけの箇条書きでもOKです・C…bbs.animanch.com最新のスレ
【閲覧注意】書き逃げSSほか その17|あにまん掲示板【閲覧注意】とありますが、未成年の方が見ている可能性もあるので『【閲覧注意】の作品に関しては』注意書きの記載や別リンクでの書き込みをお願いします。bbs.animanch.com - 6124/12/18(水) 23:24:00
スレにて頂いた素敵な絵です。今回のスレ画像にも使わせてもらっています
便宜上スレ主が勝手に題名らしきものを付けています
ありがたいことにたくさんの絵を頂いております。正直なところ常に見せびらかしたいのですが、レスが長くなりますので、保管庫を作ってみました
花図鑑を見る2人(今回はこちらの元絵を使わせて頂きました)
↓以前に頂いた絵はこちらに纏めて保管してあります
ごめんねスレッタ・マーキュリー宝物庫
テキストシェアノートがシェアされましたnotes.yourl.jp※現在は『YOURL テキストシェア』さんを使わせて頂いています
- 7124/12/18(水) 23:24:36
【ごめんねスレッタ・マーキュリー本編SS保管庫】
基本的に閲覧注意作品となります
現在0話~35話まで掲載しています
SSをお読みになりたい場合は↓をクリックして保管庫に移動し、さらに各タイトル名をクリックして下さい
x.gd - 8124/12/18(水) 23:24:59
【ごめんねスレッタ・マーキュリー番外編SS保管庫】
本編SSでは書かれていないエピソードを時系列順に纏めたページです
物語の合間の出来事を書いた番外編は『端切れ話』、本編終了後の出来事を書いた番外編は『こぼれ話』として区別しています
新しいSSを各レスにて掲載した後は、きちんと推敲を行なった状態で番外編SS保管庫に収録する予定です
x.gd - 9124/12/18(水) 23:25:15
【水星の魔女 ごちゃ混ぜSS保管庫】
『ごめんねスレッタ・マーキュリー』のシリーズとは違う設定の水星の魔女SSを纏めたページです
4スレが多いですが、稀にそれ以外のカップリングやコンビを中心にしたSSも掲載されます
殆どが単発ものになります
x.gd - 10124/12/18(水) 23:26:31
【スレにてお世話になっているツールやサービスの紹介】
今回から新たに増えた項目です
最近お世話になるツールやサービスが増えたため、整理がてら記載することにしました
無料でお手軽に利用できるものばかりになります
↓『テレグラフ』。このスレで一番お世話になっています。NGワードなのが玉に瑕です
x.gd↓『短縮URL作成』。これがあればNGワードになっているテレグラフのURLもスレに載せられるようになります。個人的使いやすさ◎です
短縮URL作成ツール長いURLを短いURLに変換します。短縮URL押下時の広告画面なし、好きな文字列で短縮URLを発行することができます。develop.tools↓『YOURL テキストシェア』。現在宝物庫にて使用中です。画像+文章を組み合わせたSSでもお世話になる予定です
テキストを短縮リンクに変換しませんか? YoURL.jp で。エディタで編集した文章を1ページの短縮リンクに変換できます。登録の必要もありません。yourl.jp↓ここから下は以前使用していたツールやサービスになります↓
↓『Writening』。以前『テレグラフ』のURLを掲載するさいに使っていたサービスです。現在はほぼ使っていません
Writening テキストページを一瞬で作成ユーザー登録不要。テキストを入力すると、共有可能な専用URLが即座に発行されるテキスト共有サービスです。writening.net↓『blankary』。2代目の宝物庫を作る時に使っていたサービスです。現在画像を添付できないので、今後はほぼ使わなくなると思います
Write an article | Write a story | Write a blog | Publishing tool | BlankaryBlankary is a minimalist publishing tool. Write and publish with one click.blankary.com - 11124/12/18(水) 23:31:50
という訳で17度目のスレ立てになります
現在スレタイに関係ないSSを連載してしまってますが、もうすぐ終わりますのでご了承くださいませ
これからもよろしくお願いします
ではさっそくですが転生スライムの続きを載せてしまいます。スレを跨いでいるためほんの少し文章を巻き戻しておきます
【転生スライム続き】
「いやぁっ!これ、スライムなのッ?や…やだぁっ!」
今も悲鳴を上げ続けていた。迷宮での勇敢な彼女とは違う様子に、ほんの少し違和感を覚える。
目の前の恐怖と言うよりも、もっと切羽詰まったものを感じるような……。
僕はどうしても気になってしまい後ろをチラリと振り向いて、目に飛び込んできた光景に驚愕した。
なんと女の子の体に巨大スライムの一部が張り付いていた。恐ろしい事に服の端からじゅうじゅうと煙が噴いていて、すでに表面の繊維が溶けかけている状態だ。
彼女は必死になってスライムを跳ねのけようとしているが、へばりついているスライム相手ではどうしようもない。半ばパニックに陥っていた。
「やだやだ!あっち行って!ひゃあ…っ!」
───大丈夫!?くそ、ちょっと待ってて!
動揺しつつも彼女の近くに駆けつけると、草で隠れた地面の一部に穴が空いているのを発見する。器用な事に、ここから体の一部を侵入させたらしい。僕は自分が犯した過ちに気が付いた。
僕は洪水のような巨大スライムの体を遠ざけようとするあまり、彼女を中心とする広い範囲に結界を展開していた。地面を安全だと思い込んで、下には結界を張っていなかった。そこを突かれたのだ。
彼女の悲鳴が上がると共に、だんだんと風が強くなっていく。『ドラゴンのウロコ』が持ち主の危機に反応して力を解放しているのだ。
けれど排除すべき対象があまりに彼女に密着しているため、思うような効果は出ていなかった。『ドラゴンのウロコ』には元の竜の意識は入っていないはずなのに、もどかしい思いが伝わってくるようだ。
「うう~っ!おねがい、離れて~!」
彼女もスライムの体を引きはがそうと頑張っているものの、粘液の体は容易に指をすり抜けていく。
僕の目の前で、安寧の場所だった胸ポケットがボロボロに溶かされていった。 - 12二次元好きの匿名さん24/12/19(木) 08:09:43
立て乙です!
4号の安寧の場所が…!
これは許されない - 13二次元好きの匿名さん24/12/19(木) 11:40:29
こんなん許せるわけねぇよなぁ!?
- 14二次元好きの匿名さん24/12/19(木) 20:40:10
服だけ溶かすスケベスライムめ!
4号が黙っちゃいないぞ! - 15124/12/20(金) 00:43:49
うおおおお安寧の場所を奪うなんて許せないぜっ!
という訳で怒りの反撃開始……にしてもよかったんですが、その前にもうちょっとエピソードを盛ってみました(ぷちネタバレ)
もうちょっとしたら反撃開始です
それと前スレがすべて埋まっていたようです。ありがとうございます
ラスボスエピソードを盛ったように、スーパーぽよんぽよんタイムも設けようと思います
───やめろっ!
お気に入りの場所を取られた怒りより、彼女が危険に晒されている事に恐怖を感じる。このままじゃ服どころか、彼女自身も溶かされてしまうかもしれない。
僕は恐怖を抱いたまま、咄嗟にホーリーランス用の魔力をほどいて結界をもうひとつ作り上げた。へばりついたスライムを弾き飛ばせるように、彼女の体にぴったりと沿わせる形で展開する。
けれどパチンっ!という音を立てて弾かれたのは、僕が作った結界の方だった。
───え?
呆然としながら、彼女に取りついたスライムを見る。
スライムが纏う魔力光がチラリと見える。あれは結界の光だ。あらかじめ結界を張ることで、後から干渉できないようにしている。
僕はおっさん冒険者の言っていた「頭が良い」というボススライムへの評価を思い出した。
所詮はスライムだと低く見積もっていたが、僕が間違っていた。侮って良い相手じゃなかった。的確にイヤなところを突いてくる。
たぶん時間にしたら1秒も経っていなかったと思う。何の打開策も思いつかないまま呆然としていた僕は、またもや地面から侵入してきたスライムの触手に叩きのめされた。
───ぐぅっ!
初歩的なミス。さっさと地面に結界を張らないからこうなる。自分でも分かっているが、もう遅い。
【───まいき、なまいき、な、ちび。ざまあみろ、ひひひ】
どこからか不快な声が聞こえてくる。
───もしかして、スライムの声…?
返事はなかった。
その代わりに、巨大スライムの触手がものすごい速さで襲ってきた。僕が今まで見た事がなかった9つ目の『核』の光を閃かせて、流星のように。
- 16二次元好きの匿名さん24/12/20(金) 09:23:07
嫌な賢さだ…
まだ核を隠してたなんてずるいぞ! - 17124/12/20(金) 19:35:28
今日は休日だったんですがほぼ寝て過ごしてしまったスレ主です
寝る前にもう一回くらい更新したいなと思います
ボススライムは頭が良いですがずる賢い感じの頭の良さです
罠にかかった冒険者たちや所詮スライムと舐めてかかった冒険者たちを美味しい餌にしています
バチン、という音を立てて、僕の体は呆気なく地面に伏せた。四散しなかったのが嘘のように強い衝撃だった。
「スライムさんっ!」
女の子の悲鳴が聞こえる。何とか彼女の方に意識を向けると、頑丈だった衣服が見る影もないほどボロボロになっていた。
そんな状態になっているのに、彼女は顔を歪めて泣きながら、こちらに近づいて来ようとしている。
僕はせめて彼女だけでも何とかしようと、もう一度結界を張ってみた。
ぱちんっという虚しい音を立てて、スライムの結界に弾かれる。
───………。
力が抜けていく。もしかしたら『核』にダメージを受けているのかもしれない。
それでも今張っている結界だけは維持し続けようと、魔力を送り続ける。
僕らの周りに張っている結界が解除されたら、途端に巨大スライム本体がうねりを上げて襲ってくる。そうしたら僕らはもう助からない。何かの奇跡が起きない限りは、確実に。
【───まそうな、うまそうな、エサ。メスのエサ、ひさしぶり、どうしよう?】
再びスライムの声が聞こえてきた。僕に話しかけるというよりは、独り言のようだ。
どうやって食べるかを考えているのだろうか?その証拠というように、結界に侵入した触手は面白がるように彼女の様子を眺めている。
「…スライムさん!だいじょうぶ?」
纏わりつくスライムに苦労しながら、彼女が僕の元までたどり着いた。動いたことで衣服はさらに破け、一部は肌が露出している状態だ。
───きみこそ、だいじょうぶ?ごめん、僕が不甲斐ないから…。
もう形を丸く保つこともできない。僕はデロンとした不定形のまま、小さい触手を彼女にのばす。
彼女も手を伸ばしてくれる。その拍子に、かろうじて引っかかっていた『ドラゴンのウロコ』が彼女の胸ポケットの残骸から転がり落ちた。
- 18二次元好きの匿名さん24/12/20(金) 23:18:21
ヘルプミーエアリアル!!!
- 19124/12/21(土) 00:31:13
エアリアル本体が居ればこんなことには…!
という訳で続きです
先ほど見せてくれた時とは違い、効果を発揮している『ドラゴンのウロコ』はまばゆい魔力の光を放っている。
女の子はハッとして辺りを見上げた。相変わらず強く風が吹いていて、巨大スライムの巨体を近づかせまいとしている。
「この風…。エアリアルが守ってくれてたんだ」
女の子は『ドラゴンのウロコ』を大事そうに片手で拾うと、もう片方の手で僕を掬いあげた。両手を優しく合わせて、僕と『ドラゴンのウロコ』の両方をそっと抱きしめる。
こんな状況にはそぐわない穏やかな仕草に、僕は嫌な予感がしていた。
「お姉ちゃん…ごめんね。スライムさんも」
そう言って、彼女は『ドラゴンのウロコ』に魔力を込めると、ぽんと上に放り投げた。持ち主の魔力によって方向性を与えられた『ドラゴンのウロコ』は、高く高く、巨大なスライムよりも高く僕の体を風で巻きあげていく。
「エアリアル、スライムさんを守ってあげて!」
───やめて!
彼女の声に悲鳴をあげる。このまま遠くに行けば、結界へ供給する魔力の線が途切れてしまう。
僕は叫んだが、どれだけ必死になっても彼女には届かない。
代わりに答えた声があった。
【───めた、きめた。このメスに、こども、うませよう。なまいきな、ちび、おまえはみてろ】
僕を嘲笑する声と共に、結界に大きなヒビが入る。
魔力の供給が途切れ、風のアシストも無くなり、もう結界を維持する事はできなくなった。
巨大なスライムの体が、雪崩のように彼女へ殺到するのを見た。
- 20二次元好きの匿名さん24/12/21(土) 06:18:17
大ピンチー!
- 21二次元好きの匿名さん24/12/21(土) 14:05:07
このボススライム…下衆い…!
ああぁハラハラする - 22二次元好きの匿名さん24/12/21(土) 22:51:46
あかんスレッタがntrれる
- 23124/12/22(日) 01:01:52
下種なスライムによるNTRの予感に大ピンチな4号スライムです
ちなみにスレ主はいつかの雑談でNTRは書かないでおこうと誓いを立てた事があります
誓いは破られてしまうのか…!?それとも聖域(4スレ)は守られるのか…!?
こうご期待です
世界がスローモーションになる。初めての戦いをした時。強い敵と戦った時。様々な危険と遭遇した時に感じた現象だ。
勇者時代にはよくあった。
けれど、今の僕は勇者時代にも感じたことのない怒りを感じている。
魔物とも、魔族とも、魔王とも。
戦った時には感じなかった感覚が、僕を支配している。
子どもを生ませる、とスライムは言った。
おまえは見ていろ、とスライムは言った。
僕の頭に、この迷宮で行われた数々の行為が思い浮かぶ。
先ほどまで凛としていた冒険者が、泣き叫ぶ姿。
心が折れる者。
中毒になる者。
どちらにしろ、今までの人間性は破壊されることになる。その場では正気に見えたとしても、どこかが曲がり、狂っていく。
僕と一緒にいた、柔らかで、温かくて、強くて、優しくて…。そんな女の子が破壊されることになる。
巨大スライムの雪崩はまだ彼女の体に届いていない。時間精度が高まり過ぎて、まるで世界が止まっているようだ。
けれど、何もしないでいれば絶対に、いつかは終わりがやってくる。
この世の終わりのような、絶望がくる。
───そんなの絶対に、許さない。
- 24二次元好きの匿名さん24/12/22(日) 06:29:02
4号がんばれー!
- 25124/12/22(日) 15:13:36
4号への声援ありがとうございます!
後半まるまる展開を変えたせいで続きの文章が用意出来なかったスレ主です
帰ったら寝るまでにちょこちょこ書くつもりでいるので、スレを落とさないためにも保守代わりに書き込みしにきました
ではまた夜に - 26二次元好きの匿名さん24/12/22(日) 21:16:22
大切な女の子を守ろうとする4号…格好いいぜ!!
- 27124/12/23(月) 06:27:03
ちょっとのつもりが朝まで爆睡してました
ここからいよいよ4号の反撃ターンに入ります
最後まで格好良くできるかドキドキものです
怒りのままに触手を伸ばし、傍らにあった『ドラゴンのウロコ』を体の中に引き入れる。本能のままの行動だった。
『ドラゴンのウロコ』は不思議となんの抵抗もなく、一瞬で僕の体に溶けていく。
体が熱い。
ダメージを受けた『核』が急速に修復されていく。
同時に内側から、抑えきれないほどの大きな力が膨らんでいく。
『ドラゴンのウロコ』に込められていた強大な竜の力が、小さな体の中で荒れ狂おうとしている。
僕の頭に、強烈なビジョンが浮かび上がった。
このまま体を大きくするか、それとも力を高めるか。次の段階への進化の選択肢のようだった。
この荒れ狂う竜の力を使えば、すぐに僕は次の段階へ成長できる。
でも足りない。どちらを選んでも、この僕の怒りを表現するだけの力は得られない。
僕は悩むこともせず、どちらも選ばないという選択を取った。
その代わり。進化の先の、先の、先。順当に進化すればいつかは到達するだろう選択肢を選んだ。
─── 一瞬だけでいい。
───今はとにかく、あのスライムをぶっ倒せるだけの力が欲しい!!
僕の選択によって、風竜の力が指向性を持って膨れ上がる。進化の先の、先の、先。本来の僕では届きもしない頂きに向かっていく。
───風のスキルツリー、全開放。
───魔力増大。
───体力増強。
───下位核形成。
───■■化、完了。
「………」
一瞬だけのドーピングをし終えた僕は、地面めがけて突っ込んでいった。
- 28二次元好きの匿名さん24/12/23(月) 14:20:48
何化…!?
そんな無茶な進化して大丈夫なのか4号ー!! - 29二次元好きの匿名さん24/12/23(月) 23:17:22
行けーーっっ!!そこだ4号!!刺せーーっっ!!
- 30124/12/24(火) 08:13:53
書き込みや応援ありがとうございます
男4号、気になる女の子の為ならちょっとの無茶もしてみせますし、気に入らない相手には刺しに行きます
うおお~!とばかりにやってみせてくれるでしょう
スローモーションの世界は続く。
地上では女の子が恐怖に顔を強張らせながら、それでも巨大スライムに抵抗しようとナイフを構えている。
対して巨大スライムは、大津波となって今にも覆いかぶさろうとしている。僕が地上に着くまでの間に、彼女は吞み込まれてしまうだろう。
そうはさせない。僕は解放されたばかりの風の魔法を地に放った。
───ウィンドカッター!
魔力によって底上げされた刃が僕よりも早く地上に届き、スライムの体を切断する。
粘体であるスライムの性質上、鋭利な切断面ならすぐに元通りになってしまう。けれど相手の勢いを殺す事には成功した。
僅かばかりの時間を稼いだことによって、結界の有効範囲内に彼女が入る。僕はすかさず結界をかけ、彼女の体にへばりついたスライムの触手を弾き飛ばす。
欠片となったスライムが遅ればせながら結界を張るが、その頃にはもう彼女は自由になっている。僕はようやく目を丸くさせようとしている彼女の姿を視界に収めながら、次々と自分にバフを掛けていった。
防御系のバフは捨てて、すべて攻撃に回していく。体が壊れるギリギリまで魔力を込めて、それでもまだ不思議と余裕がある。
これならいける。
僕は魔力で固めた空気を踏みしめると、今まで以上の速度で巨大スライムへ突進した。
- 31二次元好きの匿名さん24/12/24(火) 18:12:05
防御を捨てた攻撃特化!かっけぇ…
- 32二次元好きの匿名さん24/12/24(火) 23:40:36
もしや人間化??何になったんだろう4号
- 33124/12/25(水) 06:25:33
メリークリスマス!
最近はすっかり更新時間が不定期になっていてすいません。ちょっとリアルが忙しくなっていました
攻撃特化かっけぇと言われてますが、実はしれっと結界は張ってたりします
思ってたのと違うな…と思われたらすいません
そして■■化が人間化なのかそうでないのかですが、今回の更新分である程度わかると思います
おそらくは、このまま突っ込むだけで巨大スライムの体をズタズタにできる。
今の僕は結界と風の障壁を同時に身にまとっている。先ほどまでの『ドラゴンのウロコ』のように優しい風ではなく、攻撃に特化した風の刃だ。剥き出しになったミキサーの刃のように触れるものを引き裂いてしまう。
それでも確実に仕留められる保障はない。こんなにも膨れ上がった肉なら、直接『核』を潰す方がいい。それも、できれば物理がいい。
───ウィンドブレイド。
僕は最後に魔法で作った剣を生成した。
魔法攻撃だけではなく物理攻撃もできる優れものだ。大きさも厚みも鋭さも、術者の意思で自由自在に変えられる。勇者時代にはよく世話になった。
すべてのピースを揃い終えて、後はただ攻撃するだけだ。
【───おう、さま?】
攻撃の直前、スライムの声が脳裏に届いた。驚いているような、戸惑っているような、不思議な声だ。
───命乞いしても、もう止まらないよ。
ロケットのように加速した僕は、夜空の星のような『核』を次々と墜としていった。
- 34二次元好きの匿名さん24/12/25(水) 11:57:20
デカスライム…スライム4を知っていたのか…?
- 35二次元好きの匿名さん24/12/25(水) 21:14:41
メリークリスマス!!✨✨お疲れ様です
剣が使えるってことは手あるのかな4号さん
でも人間に変化したのではなさそう? - 36二次元好きの匿名さん24/12/26(木) 07:26:07
🌪️🗡️
- 37二次元好きの匿名さん24/12/26(木) 18:16:22
面識があったのか人違いなのか…一体どっちなんだ…!
- 38124/12/26(木) 18:53:07
ようやく一息つけると思ったら気が抜けて体調崩しそうになったスレ主です
一日寝っぱなしでどうにか持ち直しました。寝るまでにもう一回更新したいですね
そして色々と書き込みありがとうございます。いくつかの謎は最後に予定している△△視点で分かる予定です
楽しみにお待ちください
一連、二連、三連、四連───。
九連目、女の子を人質に取ろうとしていた触手を切り裂き、中に入っていた『メイン核』を破壊する。
【───おう…】
壊された『メイン核』は、最後に強く輝いてボロボロと崩れていった。
もう巨大スライムの声は聞こえない。代わりに聞こえてくるのは四散した巨大スライムが降り注ぐ音だ。ザァーッと雨のように黒い雫が降りかかり、地面にしみ込んで消えていく。
僕はようやく降りてきた地面に足をつけながら、ほっとしたように息をついた。
守りたかった女の子は怪我もなく、目をまん丸にしたまま僕の腕に抱かれている。
「あ、あ、あの…?」
「無事でよかった」
久しぶりに自分の肉声を聞く。何だか慣れ親しんだ声とは違うように聞こえるけれど、久しく聞いていなかったので仕方ないのかもしれない。
女の子は真っ赤な顔になって、困ったように縮こまっている。
スライム視点ではない女の子は華奢で、小さくて、とても可愛く見える。もっとよく見ようと顔を近づけると、「ひゃあぁ…っ」と小動物のような鳴き声をあげたあとにぐったりとしてしまった。
「きみ…?」
呼びかけてもぐったりしたまま、どうやら気絶しているようだ。よく見ると呼吸は荒く、汗もかいて苦しそうな様子だった。
───もしかして、スライムの触手に何かされた…?
- 39二次元好きの匿名さん24/12/26(木) 22:26:44
......4号....もしかして.. ちゃんと服を着ていますか?
足の間の聖剣()を年頃の女の子にそのまま見せてはいませんか? - 40124/12/27(金) 01:47:25
投稿する直前で書き直していたので遅くなりました
ついでに前の投稿で一部間違っていた箇所がありました
途中の戦闘で巨大スライムの『核』を4つ破壊しているので、9連目ではなく5連目で『メイン核』撃破になります
後で書き直しておこうと思います
ちなみに4号の服についてはお察しの通りの状態なのですが、スレッタに4号の4号が見られていたかについては4号視点では分からないままになっています
よく考えたらここは淫獄迷宮なので、ボスである巨大スライムだって媚薬系のスキルか魔法を使えた可能性がある。
なら今の彼女は、強制的に発情状態に陥っているのかもしれない。
そう思い至った瞬間。頭がかーっと熱くなって、体温が一気に上がっていった。綺麗なお姉さんに客引きされた時よりも、ずっと心臓がドキドキしている。
なにせ発情している……かもしれない、女の子が腕の中にいるのである。それも気になっている女の子だ。しかもスライムに服を溶かされてほぼ下着姿の女の子だ。こんなの冷静になる方がムリだ。
そもそも僕の格好もまずい。巨大スライムと戦っていたのでそれどころではなかったが、よく考えたら何も身にまとっていない全裸だった。つまりつい先ほどまでの僕は女の子の前で裸で大立ち回りしていた事になる。
───え、どうしよう。
勇者時代でも感じなかった心配と興奮と恥ずかしさでどうにかなりそうになる。混乱してしまい、僕は何もできないまま棒立ちになった。
理性は彼女に状態異常回復をかけた方がいいと呼びかけている。
本能は発情状態に陥っている彼女をもっと見たいと叫んでいる。
感情は自分の間抜けな姿を彼女に見られたくないと訴えている。
どれもが同じくらいの強さで、僕に命令してくる。結果的に何を優先すべきか判断できず、時間だけが無駄に流れていく。
そうしてあらゆる意味で貴重な機会を逃したまま。
───■■化、終了…。
僕のボーナスタイムは終了した。
- 41二次元好きの匿名さん24/12/27(金) 10:25:32
戦闘中あれだけ瞬時に判断していた4号がパニックになっている…
思春期…! - 42124/12/27(金) 14:57:25
感想ありがとうございます
転生スライムの4号については肉体はともかく精神は健康な思春期男子となっております
たぶんスレ主作のどの4号よりも思春期男子してます
……。
…………。
………………。
眠っている僕に、ちょっかいをかけてくる誰かがいる。
ちょんちょん、と突かれる。
ゆさゆさ、と揺さぶられる。
僕はとても疲れていたので、まだまだ眠っていたかった。
泥のように眠る、なんてコトワザがあるけれど、今の僕はまさにその状態だ。
何を考えるでもなく、ただただこの安寧と言う名の泥に沈んでいたい。そんな気分だった。
だから無視していたのに、その誰かは僕を執拗に起こそうとしてくる。
終いには何かを突っ込んできた。
僕は突っ込まれた何かを無意識のうちにムシャムシャして、あまりの苦さとまずさにビックリした。
───うわ、まっず!
驚くあまり飛び跳ねて、自分が完全に目を覚ました事を知る。
「スライムさん!…だいじょうぶ?」
そうして同時に、心配そうにこちらを覗き込む女の子を発見した。
- 43二次元好きの匿名さん24/12/27(金) 22:19:33
やったーエリク草さんだーー!!
- 44124/12/28(土) 01:20:24
『エリク草』さんへの歓喜の声ありがとうございます
ようやく出番がもらえて『エリク草』さんも喜んでいることでしょう
4号にとっては驚きの真実となります
どきり。
『核』が振動して、女の子の姿に吸い寄せられる。
顔が赤くて、目が潤んでいて、自然と先ほどまでの彼女の様子と重なってしまう。
しかも彼女は無防備な事に、巨大スライムに服を溶かされたままの姿で草の上に座っていた。それも前かがみになっているので重たそうな胸が強調されて、魅惑の谷間があらわになっている。
下着自体は厚めのタンクトップや短めのショートパンツみたいな色気のないものなのに、中身が豊かに育っているのでギャップがすさまじい。
僕は動揺のあまりぴょっ、ぴょっ、と小さく反復横跳びすると、崩れている自分の姿に気付いてすぐにぷるるんっとまん丸ボディになった。
そのままぴょーんと上に跳ねて、僕は不定形の生きものじゃありませんけど?と一応の主張をしてみる。
そんな僕の姿を見てどう思ったのか、彼女は安心したように笑ってくれた。
「よかった。スライムさん、元気になってくれた。…よかった」
笑いながら、ポロリと涙をこぼしている。僕はあわてて彼女に近寄ると、ぴょんぴょんと跳んで元気さをアピールしようとした。
───ほら見て、僕は大丈夫だよ!
実際、自分でも不思議なほどに元気だった。つい先ほどまでぐったりと寝ていたのに、起きたらものすごく力が湧いている。
たくさん寝て休めたからだろうか?疑問に思っていると、彼女が大切そうに手のひらに乗せたものを見せてくれた。
「やっぱり『エリク草』ってすごいんだね。あと何本かあるから、もう一本食べる?」
───!あー!それは!
それは僕にしてみたらものすごく見覚えのある草だった。思い返してみれば、起きがけに食べさせられた何かも知っている味だ。
彼女が僕に差し出したものは、主食にしている草と一緒に生えていた雑草───だと思っていた───草だった。
- 45二次元好きの匿名さん24/12/28(土) 07:26:33
雑草呼ばわり草🌱
- 46二次元好きの匿名さん24/12/28(土) 15:11:51
4号さんすごいじっくりスレッタのこと見ててエリク草生える
えっち! - 47二次元好きの匿名さん24/12/28(土) 22:19:15
★
- 48124/12/29(日) 07:20:02
感想や書き込み★ありがとうございます。昨日はちょっと布団で温まろうと思ったらうっかりそのまま寝てしまいました。すいません
薬草の最上位のひとつである『エリク草』ですが、4号はずっとまずい雑草だと思っていました。これからもうっかり雑草扱いしてしまうかもしれません
食べると体力を回復させてくれるすごい草なのですが、秘密の部屋にいた時はいまいち実感がなかったようです
そしてこのお話の4号は普通にエッチな男の子です。品行方正な勇者様から解放されたので、遠慮なく欲望を解放しています
───え、ホントに雑草?…雑草が『エリク草』?
信じられなくて、ぴょいぴょいと手のひらに近づいてみる。あらゆる角度から眺めても、やっぱり秘密の部屋に生えていた雑草そのものだ。
───雑草が、『エリク草』……。
僕はショックを受けた。
何故なら『異次元収納』にはこの雑草…『エリク草』もいくつか入っているからだ。
主食の草を収納するときに混ざったモノで、選り分けるのも面倒だとそのままにしていた。きちんと数えていないが、たぶん数十単位で入っている。
少し前に休憩した時、主食の草ではなくこの雑草…『エリク草』を出していれば、それでミッションコンプリートだったのである。
あまりのショックにプルプル震えてしまう。
「やっぱりもっと欲しいのかな?はい、どうぞ」
雑そ…『エリク草』の前で懊悩していると、その姿を見て誤解した女の子が嬉しそうに雑そ…『エリク草』を差し出してきた。それも食べやすいように葉っぱを小さくちぎってくれている。
僕は呆然としながら、差し出された雑…『エリク草』の葉っぱをムシャムシャと食べた。スライムの性というか、食べられる物を近づけられるとうっかり食べてしまうのだ。
───うう~、まっずい!
まずい。とてもまずい。まずすぎる。
体の底から活力が湧いてくるのを感じながら、僕は心の中で半ベソになっていた。
- 49二次元好きの匿名さん24/12/29(日) 12:15:46
雑そ…エリク草も異次元収納に入ってたのかー!
これはショックを受けるのもやむなし… - 50二次元好きの匿名さん24/12/29(日) 21:07:38
良薬は口に苦し
- 51124/12/30(月) 06:29:00
おはようございます。今日も夜の代わりに朝の投稿になってしまいました
さすがに今日はもう一回くらいは更新したいと思います
『異次元収納』にはけっこう色々なものが入ってます
早期に『エリク草』を出していれば、巨大スライムの罠にかかることなく家に帰れていました。本人は悔しがってますがその場合は4号のパワーアップイベントもなくなってしまいます。一長一短ですね
良薬は口に苦しを体現している『エリク草』ですが、4号的にはたぶんよほどのピンチにならなければ自分から食べようとはしないと思います。スレッタが良かれと思って差し出したら食べますが、やっぱりまずい!という感想になるでしょう
でも貴重な薬草を分け与えてくれる女の子の優しさが嬉しくて、差し出してくれたものを最後まで食べ切る。
「スライムさん、おいしい?」
───すっごくまずいよ。でも、ありがとう。
僕の言葉は聞こえていないはずなのに、女の子はにっこりと笑ってくれた。
その後は『エリク草』を採取する作業をした。広い空間には所狭しと色々な草が生えていて、その中からごくわずかの『エリク草』を探し出すのだ。
僕の秘密の部屋にはポツポツと生えていた『エリク草』は、この場所ではあまり生えていないらしい。ただ女の子の言動を聞いてみると、他の種類の薬草は多いようだった。
「すごい。ここって天然の薬草園みたい」
と女の子は感心していた。
僕は何となく主食である聖属性の草を探したけれど、見える範囲では生えていなかった。秘密の部屋とここは似たような場所だと思っていたのに、植生は全然違うみたいだ。
少々がっかりしつつ、徐々に範囲を広げていく。巨大スライムが暴れた場所を避けて、草がより良く茂っている方へ移動していく。
ただ半裸の女の子が草で怪我をしたらイヤなので、草の茂みに『異次元収納』から出した毛布をそっと落としてみた。助けた冒険者から徴収したけっこう上等な毛布である。
「え、綺麗な毛布。…どうして?」
女の子は毛布を見て驚くと、すぐに誰かを探しているそぶりを見せた。他の冒険者がいると思ったのかもしれない。
───僕のものだから、遠慮なく使っていいよ!
ぴょいぴょいと毛布の上で跳ねてみる。彼女はそれでもキョロキョロと辺りを見回していたけれど、しばらくして諦めたように毛布を手に取った。マントのように羽織って、慎重に草の間を進んでいく。
- 52二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 13:08:38
やだスライムさんてば紳士…
- 53二次元好きの匿名さん24/12/30(月) 22:52:54
スライムさんもスレッタも優しいねぇ…
- 54124/12/31(火) 00:27:13
感想ありがとうございます
4号スライムは時と場合によって紳士だったり紳士じゃなかったりします
今回更新分は紳士じゃないかもしれませんが愛はあるので無問題です
そしてスレッタと4号がお互いに対して優しいのはそれぞれが微妙に異なる庇護欲を相手に抱いている為だったりします
スレッタは小さい子に対しての庇護欲を発揮して4号は気になる異性に対しての庇護欲を発揮しています
お互い認識が少しズレてしまっています。でも仲良しには変わりません
「貴重な薬草ばっかりだから、あんまり踏まないようにしないと…」
僕は体が小さいから遠慮なくフミフミしているけれど、女の子は大変そうだ。唯一残ったブーツで踏み荒らさないように、足を着ける場所も気をつけている。
そんな彼女を助けるように、小さな体を活かして歩きやすそうな場所を先導した。
そうやって『エリク草』を探しつつちょこちょこ移動していると、見覚えのある袋が落ちているのが見えた。
ぴょんと跳ねて近づくと、女の子も袋の存在に気付いたようだ。
「あっ!わたしの!」
それは縦穴に落ちる途中で手放していた荷物だった。『ドラゴンのウロコ』が起こした風で飛ばされて、思いのほか遠くへ落ちていたらしい。
女の子はすぐに駆け寄って、荷物をぎゅっと抱きしめた。
「よかった、よかったぁ…」
よく考えれば迷宮の底に半裸の女の子とスライム一匹、そうとう心細かったに違いない。ここは薬草はあっても武器も道具も食料もない。おまけに服もない。あるのは僕が落とした毛布一枚とブーツだけだったのだ。
呑気に聖属性の草を探している場合じゃなかったと、僕はちょっと反省した。
女の子はさっそく荷物の中をあさって、予備の服に着替え始めた。予備だけあって最初よりも生地が薄そうな服だったけど、下着姿よりはよっぽどいい。
何よりちゃんと胸ポケットがついているのがいい。僕にとってはとても大事なことだった。
着替え終わったのを確認して、すぐに彼女の肩にぴょんと乗る。そして何も言われていないのにいそいそと胸ポケットに入っていった。
- 55二次元好きの匿名さん24/12/31(火) 07:04:05
「4号は安寧の場所を再び手に入れた!」というDQ風のテロップが頭に浮かびました
- 56124/12/31(火) 14:54:26
感想ありがとうございます
DQ風のテロップいいですね!テロリロリンッ♪という音楽も一緒に流れていそうです
「きゃっ、スライムさん?」
彼女がビックリしているけれど、これは仕方ないことなのである。そんな言い訳をしつつ、生地が薄いせいで先ほどよりも身近に感じる熱と柔らかさにうっとりする。ついでにちょっとムニムニ動いて弾力を堪能してしまったりする。
よく考えればけっこう無体な事をしているのだが、女の子は広い心で許してくれた。
「わっくすぐったい。えへへ、その場所気に入ったんだね。もしかして、お母さんスライムを思い出すのかな?まだ赤ちゃんだもんね」
なんと僕の事を赤ちゃんスライムだと思っているらしい。確かに見た目はとても小さいけれど、中身はれっきとした成人一歩前の男子である。
でも精神年齢は外見に引っ張られると言うし、僕は……赤ん坊だったのかもしれない。ばぶぅ。
なんて感じでふざけているうちにも、彼女はせっせと『エリク草』を探している。もちろん僕もすぐにポケットから出てサポートしつつ、最終的にはけっこうな数が集まった。
「後はこれを、家に持って帰るだけ……だけど」
「………」
『エリク草』集めをしている時には元気だった女の子が、上を見上げて黙ってしまう。これからどうやって帰ればいいか途方にくれているのかもしれない。
───大丈夫だよ、こっち!
「スライムさん?」
僕はぴょいっ!とポケットから出て、ある方向へと向かった。ぴょんぴょん、時々高く跳ねて、こっちだよ、と彼女を導く。
迷宮のボス部屋には大抵帰還の魔法陣が敷いてある。ボス部屋へ到達した冒険者が自分たちや後の冒険者の為に設置したものだ。ギルドに報告すればかなりの報奨金がもらえるので、それ専門にチームを組んでいるパーティも存在している。
何度か上空からこの空間を見た時に、設置されているだろう場所はわかった。ここには縦穴のほかにひとつだけ横穴が空いている場所があるのだ。たぶん順当に攻略した際のボス部屋の入口だと思う。
案の定近づいてみたら魔法陣が設置してあった。ビックリする女の子に、得意げにぷるるんっ!と振り返る。
「すごい、スライムさん知ってたの?でも、これで帰れるね」
心の底から安心したような女の子の笑顔。僕は嬉しくなってぴょいっ!と大きく飛び跳ねた。
- 57二次元好きの匿名さん24/12/31(火) 20:51:31
赤ちゃん…赤ちゃんなら仕方ないな!
- 58二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 00:19:04
めちゃ頼れるスライムさん
いつかかっこいい!って言って貰えるといいね - 59125/01/01(水) 07:43:28
あけましておめでとうございます
今年もよろしくお願いします
その後は特に魔物に遭遇することなく迷宮の外に出ることができた。
辺りは夜になっていて、ギルドが管理している魔法石の明かりが道を照らしている。
僕はスライムになってから初めて外の世界に興味津々だ。胸ポケットから『核』を出して、きょろきょろと辺りを見回していく。
すると女の子は、「ひいぃ…っ!」と恐怖に満ちた声をあげた。
「もう夜になってるっ!どど、どうしようっ!お姉ちゃんに怒られるっ!」
ひとしきり騒いだ後。心配して顔を覗き込む僕を胸ポケットにぎゅむっと押し込むと、女の子は猛烈な勢いで走り始めた。
───え、ちょっとっ!……わあぁーっ!?
コボルトとの戦闘の時の再来だ。僕は縦横無尽に暴れる胸に挟まれたり押しつぶされたり、うっすら命の危機を感じつつも幸せな時間を過ごしたのだった。
その後も色々あった。
無事に家に着いたあとの女の子は、彼女によく似た小さな少女にお説教をされた。とても細くて小さい少女は体に見合わずパワフルで、ものすごく大きな声で女の子を叱責する。でも最後には声は小さくなって、無事でよかったと泣き始めた。
女の子も泣いていた。よく似た2人はピッタリと抱き合って、目元が腫れるまで泣き続けた。
心配して怒ってくれる人がいるのは幸せな事だ。僕はその様子を胸ポケットからこっそりと見守った。
迷宮を探索して、ボスと対決して、その後は家に着くまでダッシュして、女の子はもうクタクタだ。
小さな少女もずっと気を揉んでいたんだろう。安心したように、2人は涙を流したまま眠り始めた。
僕はぴょこりと胸ポケットから出ると、荷物と一緒に放り出されていた毛布を2人にかけた。僕の体は小さいけれど、風魔法を使えば毛布くらいはスイっと簡単に運べるのだ。
ついでに荷物の中に入っている『エリク草』も、鮮度が落ちないように『異次元収納』に仕舞っておく。起きた彼女が荷物を探ったときにこっそり戻しておけばいい。
ひととおりの仕事を終えると、僕はまた胸ポケットへ入っていった。しっくりくるポジションを探して、ゆっくり休むことにする。
───今日は大冒険だったね。おやすみ、スレッタ。
小さな少女の呼びかけで、ようやく知れた女の子の名前。
僕は大切な宝物のように彼女の名前を呟くと、世界で一番安心できる場所で眠りについたのだった。
- 60二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 11:43:10
あけおめスライム
良い奴スライム - 61二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 13:51:09
あけおめぽよんぽよん
スレッタは無事にエリク草を見つけて4号は永住の地を見つけてハッピーハッピーエンド…! - 62二次元好きの匿名さん25/01/01(水) 19:20:48
今年もよろしくぷるぷる
エリクトお姉ちゃんは「小さい少女」なんですね。てっきり2期エンディングのような黒ドレスが似合うお姉さんかと - 63125/01/02(木) 00:50:59
感想ありがとうございます
すっかりこのスレもスライムに侵食されていますが、前回で4号スライムのお話は終わりました
今回からちょっとだけオマケの△△視点を書いたあとに、ようやく本来のスレタイのSSへと戻っていく予定です
ちなみにオマケの△△視点は3人います。つまりもうしばらくスライム転生のお話にお付き合いいただくことになりそうです。すいません
あけましておめでとうございます
まさかスライムで年明けするとは思いませんでした。最初は2千文字くらいの突発ネタだったのに、気付けば4号スライム視点だけで4万字超えていました
きちんと推敲したら少しは減るかもしれませんが、更に増える可能性もあるのが恐ろしい所です
スレッタと4号、双方ともにハッピーエンドと相成りました
たぶんこれから4号が力を増やして行けば、更なる4スレ的ハッピーが舞い込んでくると思います
最終的にはゴールインです
黒ドレスが似合うお姉さんいいですね。現代パロを書く時には参考にしようかと思います
スライム転生でのエリクトお姉ちゃんは、とある理由で発育不良になっています。見た目的にはアニメの姿からちょっと縦が伸びたくらいでしょうか
姉妹2人で並んでいると、スレッタの方がお姉さんに見られてしまう感じです
転生スライムおまけの△△視点 その①【エリクト】
目の前には小さなスライムが一匹。
ツルツルとしていて、丸っこくて、つつくとプルンっと小さく震える。
綺麗な緑色をしていて、宝石も持っていて、何やら魔法の気配もする。
そんないかにも訳アリのスライムは、数日前から家に居つくことになった。
忘れもしない。妹がボクに必要な薬草を探しに行くと言って、ボクの制止も聞かずに飛び出して行ったあの日。
まんじりともせずに待つしかなかったボクの元に、妹はボロボロの姿になって帰ってきた。
出掛ける時とは違う服装、髪はぐちゃぐちゃ、体はホコリだらけ、顔は汗でべとべと、眉はへにょんと下がっていて…。
だけど欲しいものは手に入れたと、どこか誇らしい様子で報告してきた。
- 64二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 10:46:50
お姉ちゃん!お姉ちゃんも心配だったよね…
- 65二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 19:54:09
△△視点…お姉ちゃん以外の二人も楽しみだ
- 66二次元好きの匿名さん25/01/02(木) 23:55:11
お姉ちゃんとスライムの邂逅か…
- 67125/01/03(金) 01:38:34
感想ありがとうございます
心配のあまり怒ってしまうお姉ちゃんです
スレッタはあわわ…っとなりますが、4号スライムはよかったねと思いながら見ています
そして4号スライムとお姉ちゃんは今のところ何とも言えない関係ですが、指でツンツンはよくされています
あとは残りの2人の視点で4号の境遇を大体把握できるんじゃないかと思います
人選を変えればいくらでも世界は広げられると思いますが、4スレに関連する小さな世界で今回は終わる予定です
ボクは呑気なその姿にカチンときて、褒めるよりも前に怒ってしまった。長いこと説教して、妹が危ない事をしていた事が怖くなって、最後には妹が無事だった事に安心して泣きじゃくった。
妹も泣いた。ボクがお説教している時にはすでに半泣きで、ボクが泣き出すと釣られたように大泣きした。
そんな風に2人で泣いていたら、いつの間にか朝まで眠りこけてしまった。
小さなスライムを発見したのは朝になってからだ。妹の胸元がモゾモゾ動いたかと思うと、胸ポケットからぴょんと飛び出てきた。
小さくて、丸くて、見た事のないスライムだ。ビックリしていると、やぁ、とアイサツするように小さな腕を振ってくて、ますますビックリしてしまった。妹が冒険先で保護した子だと笑いながら教えてくれた。
確かに野生のスライムと違って、形も色も綺麗だし躾もしっかりされているみたいだ。おまけに宝石なんて体の中に入れている。きっと冒険者のペットの子だろうと思った。
妹はこのスライムにずいぶんと助けられたと言って、ものすごく褒めちぎっていた。迷宮(……迷宮!?)を攻略する間、ずっと心の支えになっていたみたいだ。
迷宮と聞いて正直さらにお説教したくなったけど、泣きはらした目をした妹をこれ以上怒りたくなかったので止めておいた。一度怒りが静まったのに再燃させるのもどうかと思ったし、たぶんボクの方が先に疲れて倒れてしまう。
この小さなスライムについてだけど、妹がギルドで元の飼い主を探したいと言うので、そのあいだ家で面倒を見る事になった。主に面倒を見るのは妹なんだけど、たまにはボクもこうして相手をする。
- 68二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 09:24:24
ᑕꙬ̂ᑐ.
- 69二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 14:44:53
迷宮も淫獄迷宮だし4号がいてくれてほんとによかったねぇ…
- 70二次元好きの匿名さん25/01/03(金) 17:27:14
淫獄迷宮で拾ってきたスライムと言えばエリ姉さんがすぐ4号スラを捨ててしまいそう...
- 71125/01/03(金) 19:35:42
アスキーアートや感想ありがとうございます
スレッタが4号スライムに出会わなかった場合は、たぶん最初のコボルト戦で逃げ帰っていた可能性があります
最終的に貞操は無事だった!…とNTR反対派のスレ主は断言してしまいますが、それでもしばらくお家に引きこもっていたでしょう
もちろんエリクトお姉ちゃんは今よりとても過保護になってしまいます
そして今でもちょっと過保護気味なエリクトお姉ちゃんなのですが、淫獄迷宮で育ったスライムという認識を4号スライムに持っていないので追い出される心配はなかったりします
上級冒険者の飼っていたペットスライムだと思われています
ただ中身がムッツリ男子だとバレたら色々厳しい目線に晒されてしまうので、4号スライムは頑張って無垢なスライムのフリをする必要があります
今はちょうど妹が庭で鍛錬しているので、ボクがスライムの相手をしていた。
触り心地の良さそうなスライムを、指先でちょんとつついてみる。ぷるぷる、小さく震えたあとに、なあに?と言うように体を傾けてくる。
その拍子に、キラリと中に入っている2つの宝石がきらめいた。妹は1つだけだと思っていたみたいだけど、実際には大小2つの宝石を持っているお金持ちスライムだ。
生意気だぞ、そんな意味を込めてツンツン突いてやる。
そのままグリグリと指先で可愛がっていると、そそくさと指から逃げていった。テーブルの上からぴょんと跳んで、逃げた先は中庭にある薬草畑だ。
妹の拾ったスライムはとても頭が良くて、家の敷地内から出ようとしない。迷子になってもいいように目印の魔法を施したけれど、それも必要ないくらいだ。
複数の属性の魔力の気配もするから、見た目より育っているスライムの可能性もある。…妹はか弱い赤ちゃんスライムだと思ってるようだけど。
そのスライムは、今のところとても役に立っている。妹のそばにいてくれるし、薬草畑に生えている雑草をもしゃもしゃ食べてくれる。
正直言うと、ボクの仕事も減って大助かりだ。だから元飼い主が見つかっても、家で引き取れないか交渉してもいいと思ってる。
- 72125/01/03(金) 23:08:18
エリクト視点はこれにて終了です
ボクはゆっくり椅子から立つと、薬草畑へ歩いていった。大丈夫だと思うけど、スライムが勝手に薬草を食べないか一応は見ておかないとね。
妹が採ってきてくれた最上級の『エリク草』は、すべて加工して保存してある。あれは人の手で育てられない薬草だから、家の薬草畑には植えていない。でもそれ以外の薬草だって役に立つし、薬師のボクにとっての大事な商売道具だ。
スライムの様子を見るついでに、薬草畑の手入れもしておこう。そう考えていると、畑の隅で大きな草をモシャモシャ食べているスライムがいた。
「こらっ!何を食べてるの!」
一目で雑草より大きい草だと分かったので叱ると、スライムはぴょっ!と驚いたように大きく跳ねて遠くに逃げていった。その時にスライムの咥えていた草がよく見えて、ボクは目を見開いてしまう。
「『スレタ草』…?」
それは『エリク草』と肩を並べるほどの貴重な薬草の名前だった。どこかの言葉で『唯一』という意味があって、妹の名前の由来にもなっている。
あまりに強い聖属性の力を持っている草で、一説によると『賢者の石』の材料のひとつだと言われている。ボクも専門書でしか見た事がないものだ。
薬草畑を見ると荒らされた形跡は一切ない。少なくともボクの薬草畑から引っこ抜いたものではない。
「………」
でも、貴重な『スレタ草』がその辺に生えてる訳もないし…。
「やっぱり見間違い、だよね?」
たぶん庭の隅に生えていた草でも食べてたんだろう。たまたま角度かなにかの問題で、貴重な薬草に見えたんだ。きっと。
ボクは自分の結論に納得すると、叱った事を謝るためにスライムの元へ向かっていった。
「ひゃわっ、スライムさんっ!?」
そのスライムは、庭で鍛錬していた妹の胸に飛び込んでいる。何かあるとすぐに妹の胸に隠れようとするので、とても分かりやすい子なのだった。
「おーい、スレッター。チビちゃんー」
ボクはお詫びに薬草のひとつでも食べさせてあげようと思いながら、きゃいきゃいと賑やかに騒いでいる妹たちの所へのんびりと歩いていった。
- 73二次元好きの匿名さん25/01/04(土) 07:44:31
おお4号の大好きなあの草の名前が!
アイテムの名前が判明してくのゲームっぽくて好き - 74二次元好きの匿名さん25/01/04(土) 12:48:09
お姉ちゃん薬師さんなんだ!
魔法は元から使えたのかな - 75二次元好きの匿名さん25/01/04(土) 21:29:33
何気に4号の核が増えてる…!?
- 76125/01/05(日) 00:48:36
感想や書き込みありがとうございます
4号スライム主食の聖属性の草は『スレタ草』という名前でした。つまり4号スライムはスレ(ッ)タをむしゃむしゃ食べて生きていたという訳です!
…というオチを付けるために、エリクト→エリクサー→エリク草というダジャレのような名前を頑張って考え出しました。たぶんこの薬草の名前×2が転生スライムのお話の中で一番気に入ってる設定です
エリクトお姉ちゃんは小さい頃から薬を飲んでいたので、いっそ自分で作ってしまおうと考えて薬師の道へと進んでいます
この世界の薬師や錬金術師は魔力を使って素材を加工したりするので、魔法の扱いを心得ている人が多いです。お姉ちゃんも色々と便利な魔法を使えます
ちなみにプロスペラお母さんは以前は魔法使いでしたが今は錬金術師を名乗っています
4号スライムは何気にちょっとだけレベルアップしてます。『ドラゴンのウロコ』の効果で一時的にブーストされた力ですが、実は余剰分が少しだけありました
その効果で『サブ核』が目に見えるくらいまで成長してます。ついでに風系のスキルツリーもすべて解放されたままになってます。つおい
転生スライムおまけの△△視点
その②【ベルメリア】
木製の簡素なドアを開ける。中に入ると大きなカウンターが中央にひとつ。手前には頑丈そうなテーブルが並べられていて、いくつかは食事をしている冒険者で埋まっている。
昼下がりの冒険者ギルドは、のんびりとした空気に包まれていた。
「こんにちは」
久しぶりに帰ってきたと感慨にふけりながら、カウンターの職員に挨拶をする。年若いお喋り好きな職員は、私に気付いて笑顔になった。
「こんにちは、ベルメリアさん!お久しぶりですね」
「ええ、久しぶり。さっそくだけど、薬草の買取をお願いしていいかしら」
「はい、薬草査定ならすぐに行えますよ、こちらへどうぞ」
「ありがとう」
買取専用カウンターに案内されたので、そこでいくつかの薬草を出す。暇になる昼下がりに来たのが良かったのか、すぐに査定は終了した。
「いつもながら貴重な薬草ばかりですね。個別に依頼が出されていた薬草もあったので、そちらは報酬を足しておきます」
「助かるわ」
- 77二次元好きの匿名さん25/01/05(日) 06:25:45
ベルメリアさん登場は予想外だった
続きをわくわくぷるぷる🍮 - 78125/01/05(日) 14:55:26
今回は4号関連で固めてみました
歴戦の薬草採取専門冒険者、ベルメリアさんの登場です
はきはきとした受け答えに、相変わらずだと笑みを浮かべる。ここのギルドは小さいけれど、その分それぞれの依頼もしっかりと把握していて、きちんと買取に反映してくれる。
私はカウンターに置かれた報酬を見て、ほんの少し目を開いた。
「…あら、予想よりも多いのね。もしかして薬草が不足している?」
「はい、そうなんです!」
首を傾げると、待ってましたとばかりにお喋り好きの職員は話し始める。私としても、色々と離れていた間の事を聞きたかったのでちょうどいい。
昼下がりのギルドは閑散としている。邪魔をされる心配は少ないので、安心して噂話に花を咲かせられるというものだ。
「今年はどうも不作らしくて、薬草関連の個別依頼が多く来ているんです。この辺りでは薬草採取専門の冒険者は少ないですから、余計に行きわたらなくて」
「あら、ごめんなさいね」
「あ、いえいえ、ベルメリアさんは気にしないでください。冒険者は自由にギルドを移動できる権利を持ってるんですから。それに今回の買取でだいぶ個別依頼もさばけましたし、ほんと、ベルメリア様様ですよ!」
「まぁ、上手いんだから。でも、そうね。そういう事なら、もう少し薬草を出しておくわ。実はまた別の場所に行かなければいけないの。そろそろ落ち着くと思うんだけど…」
「催促したみたいですみません。でもすごく助かります。あのぅ…『エリク草』があったりとかは…」
「今回はあまり手に入らなかったんだけど。うーん…。ひとつだけなら出せそうね」
「重ね重ね、すみません」
「いいのよ、次回は多めに採取できないか頑張ってみるわね。そうそう、何か私が離れていた間の面白いお話はない?」
「面白い話ですか?あ、とっておきのがありますよ!」
職員が待ってましたとばかりに話してくれる。それは近くのダンジョンで迷子になっていたペットスライムと、その子を保護した女の子の話だった。
飼い主を探しにギルドへ来て、その時に色々とあったらしい。
「……と、こんな感じです。ギルドはお祭り騒ぎでした」
「大変だったのねぇ」
とても興味深い、有意義な話を聞けた。私は満足してギルドを出ると、その足で昔なじみの家へと向かうことにした。
- 79二次元好きの匿名さん25/01/05(日) 22:31:53
ステータス鑑定できる人がギルドにいたら4号スライムの強さがバレちゃいそうだ
- 80125/01/06(月) 06:47:55
おはようございます
最近は寒くて布団から出たくないスレ主です
ステータス鑑定はなろうあるあるですけども、スレ主は常々他人のステータスを覗けるのってチートすぎるなと思っているので、スライム転生の世界では鑑定できる能力を持った人はその辺にほいほい居ないという設定にしています
稀に他人の能力を正確に鑑定できる人が生まれても、あれよあれよという間に国とか偉い人に抱え込まれるだろうなと思います
書いていて面白いと思ったので、ミオリネさん辺りそういうレアな能力持ちに設定してもいいかもしれません
ただ続編を書くかどうかは今のところまったくの未定だったりします
という訳で4号スライムはしばらくの間はか可愛いスライムだと思われます
土で踏み固められただけの田舎道をゆっくりと歩く。この辺りの土地はとてものどかだけれど、知り合いの家に近づくとさらに時間がゆったりとなったような錯覚を覚える。
まばらに生えている野菜や薬草、それらを目で追いつつ、太陽が昇ってから時間が経った午後のカラリとした空気を楽しむ。
今から向かっている家の主は、遠い昔に同じ師匠に師事していた姉弟子だ。色々と事情があって、町の中ではなく町の外に居を構えている。
私が姉弟子の立場でも同じように町のはずれを選んだだろう。いい年をしてふらふらしている自覚があるけれど、終の棲家はこんな所が理想なのかもしれない。
そんな益体もない事を考えている内に、道の先にちんまりとした印象の家が見えてきた。全体的に可愛らしい作りだけれど、実際には意外と広くて快適なのを知っている。
柵を開けて庭に入ると、玄関扉の前でドアノッカーをコン、コン、と叩く。
「は、はいぃ!いま開けますっ」
すぐに返事があって、赤毛の少女が顔を出した。前に見た時と変わらず元気そうで、けれど以前にはいなかった小さなスライムを肩に乗せている。
「あれ、ベルメリアさん?」
「こんにちは、スレッタさん。近くに来れたから寄ってみたの。久しぶりね」
緑色のスライムは、私の様子をジッと伺っているようだ。ギルドで聞いた話が本当だったと知って、私は少し苦笑していた。
- 81125/01/06(月) 15:20:32
スレを持たせるために書き込みしに来たスレ主です
思ったよりベルメリアさんパートが長くなってしまったので余計な会話を省くために書き直しを始めたんですが、そのせいで次回更新分をすぐに用意できなくなりました
申し訳ありません
帰ってからきちんと書き直し作業を再開いたします
何にせよあと1週間かからずに転生スライムは終えられると思います。そしたら推敲作業をして、書き逃げSSさんにも投稿する予定です
ロボどころかキャラの名前すらまともに出てない作品でけど、きっと書き逃げSSさんなら許されるはず…!
それではまた夜に - 82二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 19:08:28
肩乗りスライムさん…
仲良し可愛いねぇ - 83二次元好きの匿名さん25/01/06(月) 23:57:35
肩乗りも可愛い
- 84125/01/07(火) 01:20:09
主な生息地は胸ポケットですが、気分で肩に乗る事もある
そんな4号スライムなのでした
突然の来訪にもかかわらず、姉弟子の下の子は快く家に上げてくれた。私は魔法でさっと服と髪についていた埃を落として、彼女のあとについて行く。
その間も小さなスライムはジッと私の事を見ていた。私は普通の人とは色々と違うから、スライムの『核』を通すと何かおかしな風に見えるのかもしれない。
「そういえば、先輩は仕事中なの?」
「お母さんは、今は都会に行ってるんです。必要な薬草が足りないからって。でももうすぐ帰ってきます」
「まぁ、そうなの。必要な薬草って、もしかして『エリク草』…?」
「そうです」
「ああ…、もう少し早く帰ってくるべきだったわ。ごめんなさいね」
上の子に必要だからと、姉弟子が『エリク草』を集めているのは知っていた。だから定期的に手に入れた『エリク草』をここへ売りに来ていたのだけれど、最近は色々とあって渡せなかったのだ。
鮮度が多少落ちてもいいから、加工したものを荷物として送るべきだったかもしれない。
反省していると、元気そうな様子の上の子がひょこりと顔を見せた。
「ベルメリアさん、こんにちは!久しぶりですね」
「エリクトさん、こんにちは。…元気そうでよかったわ」
「あ、スレッタから色々と聞きました?まだ薬のストックはあるんですよ。お母さんもスレッタも、心配しすぎなんですって」
ぷぅ、と頬を膨らます様子がいとけない少女のようで、とても愛されているのが伝わってくる。
「ふふっ」
この子たちと話していると、私も温かいもので満たされたような心地になる。
「じゃあ、今日は特別にお安くしておくから、ぜひ先輩たちの心配を減らしてあげてちょうだいね」
私は冗談めかしてそう言うと、よく似た2人の姉妹たちへ笑顔を浮かべた。
- 85二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 09:38:16
( ๑ ㆆㆆ) ジーーッ
- 86125/01/07(火) 15:33:16
可愛らしいアスキーアートありがとうございます( ๑ ㆆㆆ)
きちんと『核』があるのがすごい!嬉しいです
その日はとても充実した一日になった。迷宮で手に入れた薬草や魔物の素材を渡す代わりに貴重な素材を手に入れたり、ギルドでは分からなかったスライムとの出会いの話も聞くことができた。
『エリク草』を手に入れようと、下の子が迷宮───それも若い女性が決して行くべきではない迷宮───を攻略しに行ったと聞いた時は天を仰いだものだが、ギルドで聞いた話だけでもある程度の予想はついていた。
何故なら、このスライムを迷宮の隠し部屋で匿っていたのは、この私だったからだ。
「…そう、それで元飼い主を探そうとして、ギルドでの決闘騒ぎになったのね」
「そうなんです!宝石を狙って、スライムの飼い主だって嘘をついたおバカさんがいたんだ!もちろんけちょんけちょんにしてやりましたよ、スレッタが」
「スレッタさん、強くなったのねぇ」
「えへへ」
「大騒ぎになったけど本当の飼い主は現れなくて…。だから家で引き続き面倒を見てるんです」
「…見た所テイムはされていないから、そのまま飼い続けても問題ないと思うわ。スライムもスレッタさんにとても懐いているようだしね。そうそう、名前はもうあるの?」
「すごい名前がついてますよ。スレッタ教えてあげなよ」
「えっと、えっとぉ。『エラン』って名前を付けたんです。異国の、勇者様の名前なんですよ」
- 87二次元好きの匿名さん25/01/07(火) 20:34:37
スレッタつよい!かっこいい!
ベルメリアさんが匿ってた…?!どういうことなんだ…! - 88125/01/08(水) 07:25:20
スレ主風邪っぽい症状が出てダウン中です
今日中に一回くらいは続きをあげに来ようと思いますが更新なかったらすいません - 89二次元好きの匿名さん25/01/08(水) 11:27:17
最近風邪流行ってますからね…
お身体大事に… - 90二次元好きの匿名さん25/01/08(水) 21:01:18
お疲れ様です
お身体最優先でどうか無理はなさらず……!
ベルメリアさん4号と知り合いなのかな - 91125/01/08(水) 23:21:11
書き込みありがとうございます
ご心配をおかけしつつ、一日中寝て少しは元気を取り戻したスレ主です
喉がイガイガし始めましたがだるさは軽減されたような気がします
風邪っぽい症状が一日で治るわけがないので、これから1週間くらいかけてゆっくり治していこうと思います
ベルメリアさんの事情についてはこれから語られることになります
アニメ本編を彷彿とさせる設定にしてあるので、そんなに奇をてらったものではないはずです
スレッタやエリクトに対しては優しい知り合いで、4号に対してはちょっとだけ含みのある関係という感じでしょうか
続編があっても敵にはなる事はないでしょう
私は『エラン』という名前を聞いて、驚きのあまり目を見開いた。そのままテーブルの上にいるスライムを見ると、嬉しそうにポンポンと飛び跳ねている。
スライム本人が、『エラン』という名前を付けるように誘導したのだろうか?
それとも単なる偶然だろうか?
驚いている私に、上の子が面白そうに話しかけてくる。
「この子がそばにいると勇気が湧いてくるからだって。勇者って、そんな意味でしたっけ?」
「もう、お姉ちゃん」
「いいじゃない、素敵な名前よ。…とてもこの子に似合っているわ」
何にせよ、私が便宜上に付けた呼び名より、このスライムに相応しい名前だ。
「エラン君、よろしくね」
私の言葉に、エランと名付けられたスライムは戸惑ったようにふるりと震える。
異国から連れられてきた、可哀そうな勇者の転生体。
『4号』。
これから先、私はこの子をそう呼ぶことはないだろう。
- 92二次元好きの匿名さん25/01/09(木) 08:39:37
スレッタに勇者様の名前をつけられたスライムさん…愛されてますね
- 93125/01/09(木) 15:10:35
感想ありがとうございます
スレッタが4号スライムに名前を付けた時の話はギルドの決闘騒ぎと合わせていつか別に書こうと思っています
もちろんエランと名付けられた4号スライムは大喜び。すごく愛されてる!むしろ運命!と以前にも増して前のめりになってしまうのでした
話は尽きる事無く、ありがたいことに夕飯までご馳走になってしまった。外を見ると、もうすっかり日は暮れている。
泊まればいい、と言ってくれる姉妹に首を振り、そろそろお暇しようと席を立つ。
「それじゃあまた。先輩によろしくね」
「はい、伝えておきます。貴重な薬草ありがとうございました!」
「あ、あの、また来てください」
小さなエランも警戒心を解いたようで、挨拶するようにポンと跳ねてくれる。
私は満ち足りた気分で2人の姉妹と一匹のスライムの姿を目に収めると、夜の帳の中へと進んで行った。
しばらく歩き、ある程度家から離れた所で呪文を唱える。対応した魔法陣へと跳ぶ移動魔法だ。
一瞬で視界は変わり、私の拠点のひとつである迷宮へとたどり着く。
「3号、いないの?」
生い茂る野草や薬草の間を縫うように歩いていく。以前来た時よりも薬草の数が多くなり、色つやも良くなっているように見える。
ここは通称『死なずの迷宮』と呼ばれ、命の危険が少なく安全に探索できる迷宮だった。ここに住んでいる魔物は迷宮の理に従い、生き物の血肉ではなく生気そのものを吸収するように改変される。
代わりに別の危険もあるのだが、それは仕方ない事だと割り切っている。目的の為の力を集めるためには、どうしても元となる何かが必要となってしまうのだから。
私はこの迷宮を自分の物として使っている。いわゆるダンジョンマスターだった。
- 94二次元好きの匿名さん25/01/09(木) 22:48:22
スレッタが4号スライムさんのことをどう呼ぶのか気になるな
エランさんなのかエランくんなのかはたまた呼び捨てなのか - 95二次元好きの匿名さん25/01/10(金) 08:08:11
淫獄迷宮も命の危険が少ないけど代わりに大事なもの(婉曲的な表現)失う可能性高いダンジョンでしたね…
- 96125/01/10(金) 13:49:17
感想や書き込みありがとうございます。気が付いたら半日以上寝ていたスレ主です
そういえばスレッタが4号スライムをどう呼ぶかを書いてませんでした。ここは普通に『エランさん』です
エリクトお姉ちゃんには「スライム相手にさん付け~?」とニヤニヤされますが、「勇者様の名前だから呼び捨てはちょっと…」という事でエランさんになってます
実は淫獄迷宮というのは4号スライムが勝手につけた名前で、ギルドや冒険者から呼ばれている名前は他にあったりします
そう、それは『死なずの迷宮』。つまり『淫獄迷宮=死なずの迷宮』だったのです! (ナンダッテー!
知り合いの若い女性が来れてしまうダンジョンをこんな風に改変しまうとは、ベルメリアさんもぶっ飛んでます
迷宮は巨大な生き物だ。住みやすい場所を提供して、そこへやって来た魔物や冒険者を餌にして成長している。
どこかの学者が言うには、迷宮はスライムと同じ分類の魔物らしい。
現に迷宮には必ず『核』があり、迷宮が成長すると共に『核』も成長していく。
私はこの迷宮の『核』のありかを突き止め、私好みに改造していた。
血肉を奪わずに、生命力を奪うように。
奪った生命力を、『核』ではなく薬草の成長に使うように。
そうやって育てた様々な薬草を、私は自分の実験に使っている。
すべては『賢者の石』を生み出すためだった。
『賢者の石』は錬金術の最終目標と言われ、不老不死や死者蘇生、生命に関する事ならなんでも出来ると言われている秘宝だ。
私と姉弟子の師匠であるカルド先生が作り出そうとしていたものでもある。
それがあれば人々は平等に、私たち亜人でも平穏に暮らせると信じていたのだ。
けれど蓋を開けて見れば、私たちは迫害されただけで終わってしまった。
師匠は死に、姉弟子は命からがらこの地に逃げて、私もずいぶん長い間放浪した。
ベネリット国。人間至上主義の国で、何も知らない勇者を送り出した国。
私は『賢者の石』を作れたら、まずは自分の肉体を変えようと考えている。
先生が考えていたように完璧な人間になるのではない。遠い祖先である『淫魔』へと立ちのぼり、長い寿命と強い魔力を手に入れるのだ。
そうして永遠とも呼べるほどの長い時間で実験を繰り返していく。その間にベネリット国の崩壊が見られたら、さぞ痛快な事だろう。
- 97二次元好きの匿名さん25/01/10(金) 22:51:58
エグい迷宮作るなぁベルメリアさん…
もしかしてボススライムも誰かの転生体…? - 98125/01/11(土) 00:50:38
感想ありがとうございます
ベルメリアさんは淫魔の子孫という事もあり、あまり性行為に忌避感はなかったりします
かといって性に奔放という訳ではけっしてないのですが、命を失うよりはよほどいいじゃないかと思っています
実際に迷宮の理を書き換えたあとにしばらくして、命を失う心配がないとギルドで判明した後の死なずの迷宮の人気は上がっています
代わりに大事なものを失った人も大勢いますが、それ以上に命を失わずに済む迷宮に助けられた冒険者もいるのです
そしてボススライムは誰かの転生体とかではなかったりします
4号の場合はいくつもの偶然が重なったすごいレアケースです。具体的にどんな偶然が重なったかは、最後の△△視点で分かると思います
「3号、出てきなさい」
私の言葉に、転送魔法陣近くの地面がふるりと動いた。しばらく待っていると、地面はふるふると震え始め、やがて小さな黒いスライムが顔を出す。
【───しゅじんさま】
「ああ、3号。無事だったのね」
【───わかった、こわかった。しんじゃう、おもった】
「最近のあなたは調子に乗り過ぎだったからね。だから言ったでしょう。そろそろ痛い目を見るかもしれないって」
【───おうさま、くるなんて。しらなかった】
「おうさま?4号の事?」
【───がう、ちがうもん】
ぷん、とそっぽを向いて拗ねてしまった3号に、仕方ない子だとため息を吐く。
この子は自分の『本体核』の強化をせず、『補助核』ばかりを強化させていた。おかげで体は大きくなったけれど、肝心の中身は育っていないのだ。
「機嫌を直して。私の言いつけを守って偉かったわ。本体は決して表に出ないようにと、口酸っぱく言っていたものね」
【───】
「ほら、こっちにいらっしゃい。何があったか私に見せてちょうだい」
優しい声で誘うと、3号はこちらににゅるにゅると近づいてきた。不定形の体の中で、小指の先よりも小さな『本体核』がきらりときらめく。
差し出した手のひらに3号が乗ると、私は呪文を唱えながら額に3号の体をくっつけた。
流れ出してくる記憶。
設置した罠にかかった獲物を捕食しようと動き出す3号。
いつの間にか自由になっていた小さなスライムが、女の子を守ろうと反撃してくる。
最後には『魔族化』した小さなスライムによって、3号の持っているすべての『補助核』と体を吹き飛ばされ、映像はそこで途切れていた。
- 99二次元好きの匿名さん25/01/11(土) 07:57:18
くそう何かあざと可愛いなボススライム
スレッタのこと◯ませようとしてたくせに… - 100125/01/11(土) 15:15:57
感想ありがとうございます
ボク強いぞ!と絶好調に調子に乗っていた時なのでセリフもイケイケです
ちなみにボススライム君が子供を作った経験は一度もなかったりします
もしスレッタを◯ませていたら後でめちゃくちゃベルメリアさんに怒られてショックでプルプル震えていたことでしょう
今回の更新分ですが、キリのいい所までにしようとしたらものすごく短くなりました
一応あと一回分くらいでベルメリアさんパートは終わりになる予定です
「驚いたわ…」
言葉通り、私はとても驚いていた。
小さなスライムが突然『存在進化』したことも驚いたけれど。
何よりも視覚的に強烈だったのは。
【───おうさま、まおうさま。ちいさな、まおうさま】
「そうね、魔王陛下そっくりだったわ」
魔王ケレス陛下と、勇者エランの転生体の姿がまったく同じように見えたからだ。
- 101二次元好きの匿名さん25/01/11(土) 21:57:52
ケレス陛下!?!?エラン様魔王やってたの!?
スライムさんの肉声が変わってたのケレス陛下の姿?になってたからかあ
てかボススライムくんは本体隠して身代わりを表に出してたんだね - 102125/01/12(日) 07:26:35
感想ありがとうございます
あと一回でベルメリアさんパート終わりと書いておいてなんですが、ちょこちょこ書き足してたらうっかり1000文字を軽く超えたのであと2回分になりました。すいません
ずっと存在だけ出ていた魔王の正体はエラン様(作中ではケレス様)でした!4号が勇者なら魔王はエラン様だろと安直に決めました
そして4号スライムが変身した姿と生前の勇者エランの姿はまったく別なのはその通りです。どうして魔王ケレスと一緒なのかは最後の△△視点で分かると思います
最後に4号スライムと戦っていた時のボススライム君ですが、本体はずっと地面に隠れていました。4号が『メイン核』だと思っていたのは、本当の『メイン核』よりも大きく育てた『サブ核(序列1位)』です
私はその後、勇者エランの転生体を匿っていた小部屋へと移動した。ここは物理的に繋がっている道もなく、他者が発動できる魔法陣も敷いていない完全に独立した空間になる。
それなのに、彼…エランはどこから外に出たのか。それを確かめるために来た私の目に、思っても見なかった光景が映り込んできた。
「うそ、『スレタ草』がこんなに…」
溢れるほどの聖草の姿に、思わずこの場へ来た目的も忘れて見入ってしまう。
迷宮の力のほとんどを薬草の成長に注ぎ込むようになっても、一部の薬草は中々数を増やす事ができなかった。『スレタ草』などはその典型で、最低限の数を確保するので精一杯だった。なのに、目の前には数えきれないほどの勢いで豊かに生い茂っている。
これほどの数があれば、賢者の石を作り出す実験をいくらでも繰り返せる。
「4…、エランのお陰なのかしら」
感動のあまり呆然としていると、3号が髪の中からびょんと飛び出て、壁のそばへにゅるにゅる進んで行った。
【───しゅじんさま。ここ、アナある。おくまで、つづいてる】
「…あな?ああ、壁の一部が壊れていたのね」
3号の言葉にハッとする。見ればほんの小さな隙間が空いていた。きっとエランはここから他の場所へ抜け出していたのだろう。
通常なら迷宮は壊れても半日程度で自然と自己修復するものだけれど、この迷宮は私が力の流れを改変してしまったので、傷の修復はどうしても遅くなりがちだった。後で迷宮の修復にも力を向けるよう、理を書き換えておいた方がいいかもしれない。
- 103125/01/12(日) 14:49:20
これでベルメリアさんパートは終わりです
とりあえず、応急処置だけしておこう。私が壁の穴を魔法で塞いでいると、壁から離れた3号が今度は『スレタ草』へ近づいていった。
【───れ、これ。おいしいくさ。たべていい?】
「あなた、下にあるものはすべて食べ尽くしてしまったものね。仕方ないわ、少しだけならいいわよ」
許可すると、3号は嬉しそうに『スレタ草』に飛びついた。巨体だった頃ならともかく、手のひらより小さくなった今の3号なら食いつくされる心配はない。
私は焦ることなくしっかりと穴を修復したあとに、生い茂る聖草を魔法で回収し始めた。中には『エリク草』の姿もあり、これも別に回収していく。
もちろん一部は残しておいて、また同じように増やせないか試してみるつもりだ。
一番手っ取り早いのはエランに協力してもらう事だけれど、ふと新しく考えついた事があった。
「3号、これもあげるわ」
私は聖草を食べ終わった3号に、姉弟子の家で手に入れたばかりの竜の鱗を差し出してみた。風竜ルブリスと、風竜エアリアルの2枚の鱗だ。貴重な素材だけれど、あの姉妹は快く薬草と交換してくれた。
不思議そうにしている3号に、まずはルブリスの鱗を食べさせてみる。するとまったく消化できないようで、3号は戸惑った様子をみせた。
【───べられない。たべられない。なんで?】
「竜の鱗だからね。ゆっくりでいいわよ」
通常のスライムなら消化に数か月はかかる代物だ。たとえ3号でも、数日から数週間はかかるだろう。
私はこの子を、以前よりも強く賢くなるように育て直そうと思っていた。そうしてあれほどの巨体になる前に、『存在進化』もさせてやりたいと思っていた。
その方が色々と都合がいいし、この子も迷宮の奥に押し込められるよりずっと楽しいはずだ。
「もう少ししたら、魔王陛下に献上する分の素材が溜まるの。そうしたら一緒に拝謁しに行きましょうか」
【───おうさま!まおうさま!おおきいおうさま、あえる!?】
「いい子にしてたら、会えるわよ」
【───いこ、いいこ、ぼく、いいこだもん!】
「そうね、あなたはとても良い子だわ」
今日一日でたくさんの可能性、たくさんの希望を見せられたからだろうか。
私はずいぶんと前向きに、すっきりと晴れやかな気分になっていた。
- 104二次元好きの匿名さん25/01/12(日) 16:46:42
勇者4号の全力でも魔王は倒せてなかったかぁ…
魔王様強い強すぎる - 105二次元好きの匿名さん25/01/12(日) 17:51:17
エラン様が魔王様か……
膨大な魔力で大呪文をバンバン使うけど、体力に難があって剣や接近戦は苦手なイメージです
玉座に座っている姿が絵になるかっこよさだろうな - 106二次元好きの匿名さん25/01/12(日) 22:37:56
スレタ草どんな味なんだろうか…
ちょっと興味ある - 107125/01/13(月) 00:35:29
感想ありがとうございます。今回から最後の△△視点始まりです
魔王様はそれはもうべらぼうに強かったりします。生前の勇者エランが限界まで己を鍛えても相打ちまで持って行けるかどうか分からないくらいをイメージしています。まともに倒そうとしても無駄な感じです
玉座に座って基本的に動かない。引きこもり最高!な感じの魔王様です。あまり人間用の武術を習う機会がなかったので、一対一だとあっさり組み倒されてしまう可能性があります
ただ貧弱とも違う感じです。一応、魔王様なので…
スレタ草はほんのり甘くてフルーティで食べやすい味のようです
人間とスライムでは味覚の感じ方に少し違いがあるので、スレッタがスレタ草を食べたらへにょっと眉が下がってしまうかもしれません
転生スライムおまけの△△視点
その③【魔王ケレス】
「ケレス陛下。それでよろしいでしょうか?」
「ん、よろしく頼む」
部下の報告を受けて、問題はなさそうだとそのまま頷く。それで午前の業務は終了になった。
りぃん、と鳴る鈴の音に、いっきに執務室の空気が弛緩する。
「あー、終わったぁ」
「陛下、はしたないですよ」
机に腹ばいになる俺に、部下のひとりが躊躇なく注意してくる。
「俺は重症人だぞ。もっと労わってくれてもいいじゃないか。…あ、お茶請け持ってきて」
「重症人ならそんなに元気よく伸びは致しません。…陛下、こちらをどうぞ」
「おお、秘湯に漬けた赤の魔石。管理人はよくやっているようだな。ん~、食べるはしから染み入るこの灼熱の魔力がたまらん」
「親父くさいですよ。新たに任命した若者はよくやっているようです。山小屋の管理も真面目に行っているようですから、いつでも湯治に行けますよ」
「落ち着いたら今度行くかぁ。とりあえず管理人には特別賞与を与えてやろう」
「個人で出してくださいね」
「予算から出してくれないのかよ、ケチだねぇ」
- 108二次元好きの匿名さん25/01/13(月) 06:32:53
魔王様の視点ヤッタ━━━( p゚∀゚)q━━━━!!
ON/OFFの切り替えがしっかりしてて、これは有能だ - 109125/01/13(月) 16:15:54
感想ありがとうございます
今代の魔王陛下は先代と引き続き実務能力が優れていると評判です
コツコツと内政をがんばったおかげで意外と国内は平和を保てています
ただ一部の人間の国には敵視されていてあらぬ噂を流されていたりします
スレッタのいる国は中立国ですが、度々魔国が悪い事をしてる噂が聞こえてくるので、魔王って悪いヤツなんだな…と国民に思われがちだったりします
パクパクと最上級の魔石を食べながら、特に何の生産性もないだらだらとした無駄話に花を咲かせる。
別に魔王と言っても、一部の人間が言うような残虐で暴虐で悪逆で……あとは何だったか、まぁ何にせよあらゆる悪という悪を煮詰めたような存在じゃない。
むしろその逆で、それなりに頭がよくて辛抱強くないと努められない役職だ。
大層な呼び名とは裏腹に、魔王というのは単に魔国の王という意味でしかない。少なくとも俺自身はそう思っている。
そもそも魔国は魔物が非常にわきやすい土地で、昔はかなりの無法地帯だった。まだ俺が生まれる前の、何千年も前の話になる。
力の強い魔物や魔族が幅を利かせ、大抵は個人で、または部族間で争いに明け暮れていた頃。
ひとりの魔族が立ち上がり、バラバラだった魔族を集めてひとつの集落をつくった。集落は村となり、町となり、やがては国と言っても通用するくらいの広さになった。それが魔国の始まりだ。
当時を知る老人によると、他の魔族よりも跳びぬけて腕が立ち、頭が良く、慈悲深いゴブリンだったらしい。初代魔王ともゴブリン王とも称されているその魔族は、今でも国民からとても尊敬されている。
時代を下り、いま現在。何故か初代魔王とは縁もゆかりもない俺が魔王をやっている。
「もう少し要りますか?」
「おう。…んぉ、今度は黄の魔石。びりびり来るねぇ」
コリコリと魔石を齧りつつ、どうしてこうなったのかを考える。
思い起こせば数十年前。この国に滞在して遊んでいた時に、たまたま前魔王だったババァ共と知り合ってしまったのが運の尽きだった。ちなみに代々の魔王は世襲制ではなく指名制で、指名権を持っているのは歴代魔王のみだ。
- 110二次元好きの匿名さん25/01/13(月) 22:51:11
ケレス陛下ってもしかして苦労人……?
- 111125/01/13(月) 23:41:08
感想ありがとうございます
あんまり考えていませんでしたが確かに現魔王は苦労人かもしれないです
本人的には嫌だ嫌だと口では言いつつもけっこう楽しんで魔王業やってます
一番年長のババァいわく、「あなたならば偉大なるゴブリン王の再来となりましょう」という事だったが、ニヤニヤと目が笑っていたのでどれくらい本気だったのかは分からない。たぶん俺の正体がゴブリンと並び称されるほどの下級の魔物だったので、それにかこつけてただ揶揄いたかったんだろうと思っている。
とにもかくにも、それから何度も反発や逃亡を繰り返したり説得されたり叱られたりしつつ、最終的には諦めることにして、今は大人しく魔王の座に収まっている俺がいる。
魔王となってからそれなりに時が経った。分かりやすく偉大な功績はないのだが、そこそこ平穏に国を経営できている。
……はずだった。数か月前までは。
「陛下。こちらもどうぞ」
「んー…」
今度は緑の魔石をグミグミと噛みつつ、体の中がスッキリしていく感覚を楽しむ。けれどまだまだ満足せず、同じような刺激を無尽蔵に欲しがっている自分がいた。
「これだけで予算なくなりそう。大丈夫なのかこれ」
さすがに少し心配になって、懸念が口をついて出てしまう。すると今まであれだけ辛口だった部下が、さらに青の魔石を差し出しながら首を振ってきた。
「必要経費です。勇者の襲来を受けたんですよ、あなたは」
「あれだけ重症人じゃないと言っておいてさ」
文句を言いつつ、出された魔石は嬉しいのでさっそく手を付ける。青い魔石は口の中でとろりと蕩けて、体を潤いで満たしていった。
「今頃あいつはどうしているかな」
キラキラと光る青の魔石を見ていると、連想して思い出すものがある。
「あいつとは?」
「あいつだよ、あいつ。ほら……ゆうしゃ」
「ああ、『あれ』ですか」
ただでさえ愛想のない部下の声が一段と低くなる。ムリもない。いまの俺は魔王でありつつ重症人だ。最高級の魔石をどれほど消費しても追いつかないくらいの痛手を受けている。
どうしてかと言うと、勇者に吹っ飛ばされたからだ。
…今思い返してみても胸糞悪いのだが、人間が送り込んできた勇者は、青年になりかけの子どもだった。
- 112二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 08:25:10
魔石美味しそう…青い魔石が特に美味しそう
- 113二次元好きの匿名さん25/01/14(火) 12:16:03
勇者4号が魔王倒したの(生きてます)割と最近だった
勝手に百年くらい経ってると思い込んでたぜ - 114125/01/14(火) 21:52:28
感想ありがとうございます
転生スライムもいよいよ終わりが見えてきたので、保管庫に収録&書き逃げさんに投稿するために推敲を始めました
今回は表紙として頂いたファンアートを添えたいので、テキストシェアさんを使わせてもらおうと思います
もしかしたら媒体によっては文字が小さくて見えにくかったりするかもしれません
その場合は教えて頂ければ、表紙のないテレグラフさんに差し替えたバージョンも用意しようと思います
魔石はふつうに硬い石なのですが、魔王陛下の歯にかかればこんなものです
ポリポリポリポリ、リスのように食べてしまいます
味はあるのかないのか書いているスレ主も分かりません。とりあえず魔王様は食べた事で起こる魔力の反応を楽しんでいるようです
そういえば黄の魔石を食べる時の擬音を「パリパリ」にすればよかったなと投稿してから後悔しました。後でこっそり変えておこうと思います
実は勇者4号と魔王の戦いからそんなに時間は経っていませんでした
とはいえ数か月は経っています
勇者4号がスライムに転生した直後は意識がぼんやりしていたので、その状態で一カ月か二ヵ月くらいは過ぎているはずです
その後にようやくしゃっきり覚醒して、秘密の部屋で『スレタ草』をむしゃむしゃしながら他の冒険者を助けようと奔走する事になります
今代の勇者が活動を開始した、という情報はあらかじめ掴んでいた。
人間の国王に称号を与えられ、地元で地盤固めをして、いよいよ旅に出たという所まできっちり把握していた。
その後の勇者の行動は、勇者の人となりや任命された使命によって異なってくる。
ひたすら人助けをする勇者もいれば、ひたすら魔物退治をする勇者もいる。ついでにひたすら先を急ぐ勇者もいる。
目的が魔王打倒なのか、それとも和平交渉なのか。それも勇者によって違ってくる。今代の勇者はどうだろうかと、俺は呑気に思っていた。
まだまだ魔国には遠い場所で、勇者は人助けをしながら旅をしていた。時には魔物退治をしたり、時には小さな迷宮に潜ったり、時には町に何日も滞在したりして、ゆっくりとした速度で近づいていた。
少しでも危険なそぶりを見せればすぐに討伐令を敷いてやろう。逆に和平交渉ならこっそり特使を向かわせてやろう。
そう考えていたというのに。
何をどうしたのか。気付けば勇者は魔王城にいた。
- 115125/01/15(水) 00:33:53
転生スライム前半の推敲が終わったので水星SS保管庫に入れておきました
実は転生スライムはスレッタ登場前までの話を前半として以前から出していたんですが、もう少し進んだエピソードまでを収録してあげ直してあります
残りのエピソードは推敲が終わり次第、中編、後編、番外編(△△視点)として保管庫に入れる予定です
【迷宮在住の野良スライム、ひょんなことから新米冒険者の胸ポケットにお引っ越しする事になる。───スライムに生まれ変わった元勇者の僕が可愛い女の子冒険者に拾われちゃった!?表で可愛がられ裏では無双する充実のスライム生活が始まる!───(前編)】
僕はスライム。多分スライム。
ダンジョンの壁に張り付き、びょんと跳んでは獲物に張り付く。あのスライム。
ぶよぶよの粘液で獲物を窒息させたり、酸を吐き出したりして攻撃する。あのスライム。
初心者冒険者にとっては厄介な相手。でもそれなりに場数を踏んだ熟練冒険者にはいい経験値稼ぎ。そんなスライム。
…と、そこまで自己紹介したものの、僕は自身の粘膜の体を受け入れられないでいる。具体的には手も足も付いていない状態というものに戸惑っている。スライムなのに。
どういう事かと言うと、僕には前世の記憶がある。
実は僕は元々人間で、職業は冒険者だった。しかも勇者という称号付きだった。
最後の記憶は魔王との戦いの途中で終わっている。相打ちか、敗北か。どちらにしろ人間で冒険者で勇者だった頃の僕は死んだ。
魔王との戦いのとき、僕は究極極大魔法を撃った。相手の魔力は強大で、長引くとそれだけ危険が増えていくのは分かり切っていた。だから初手から最大火力で攻撃した。
結果は死亡。
そしてスライム。
テキストシェアノートがシェアされましたnotes.yourl.jp - 116二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 08:26:15
まとめお疲れ様です!
アルティメットパフパフが格好良くなっている───!† - 117二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 17:30:01
魔王様からしたら結構なホラーだな
気づけば自分家の前にいる勇者 - 118二次元好きの匿名さん25/01/15(水) 23:38:43
★
- 119125/01/16(木) 01:35:18
感想や★ありがとうございます
─†アルティメットパフパフ†─
それは男の子の夢と希望を一心に詰め込んだ、キラキラとした素晴らしい何か
という訳で4号スライムからのイメージを文字に詰め込んでみました。もっと装飾でゴテゴテさせてもよかったんですが、あまり詰め込み過ぎても下品になるかと思ってすっきり上品に纏めてみました(?)
勇者4号はアサシン系勇者でした
魔王様からしたら恐怖でしかありません。ケレス陛下は強いからどうにかなりましたが、これが前魔王(ババア×4)のままだったら普通にやられてます
長距離を移動するには、普通は強力な目印が必要になる。それは魔法陣だったり、自らの魔力を込めた魔道具だったり、血肉を分け与えた使い魔だったり、色々だ。
けれど勇者にはそんな目印はないはずだった。裏工作で転送用の魔道具を魔王城に紛れ込ませようとしても、ヘンな魔力を発するものがあればすぐに俺が気づく事ができる。
なのにいた。
そこにいるのが自然なことのように、城の中枢に勇者がいた。
今にして思えば、勇者にはすさまじいまでの空間系魔法の素養があったんだろう。それこそ超長距離の移動を可能にするくらいに、他の追随を許さないような才能が。
勇者の気配に気づいた俺は、すぐに部下たちを避難させた。遠くから監視していた限りでは、勇者は思ったより粗暴なタチではなかったが、魔王の直接の部下ともなれば話は変わる。
勇者が近づいてくる。目くらましの魔法を使って、ゆっくりと近づいてくる。
俺は執務室から玉座に移動して勇者を待った。勇者は俺の場所が分かっているようで、足を止めることなく向かってくる。
扉が開いて、勇者が部屋に入ってきた。
「初めまして、魔王」
律儀に挨拶する勇者は、まだ少年の面影を残す子供だった。黒髪に、少々きつい眼差しの黒目。ほんの少し日焼けした肌は、彼が今まで過ごしていた冒険の日々を写し取ったようだ。
初めて真正面から見た少年の顔は、まっすぐな、誠実そうな印象を受けた。
けれど話をする為に来たわけではない事は、そのみなぎる魔力の高まりから分かった。
「勇者エラン。国王からの命を受けて、あなたの命を頂戴しに来た」
律儀な宣言。
俺は勇者の言葉に応えるように、静かに玉座から立ち上がった。
そうして、勇者との戦いが始まった。
- 120二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 06:21:54
4号の髪と目の色が黒だ!
もしかして整形前の顔のイメージですか? - 121二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 07:58:02
部下を避難させるなんて、魔王様優しい(トゥンク)
イケメンですごく強くて仕事もできて部下思いなんて、これはファンが多いに違いない - 122二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 11:49:59
>勇者が近づいてくる。目くらましの魔法を使って、ゆっくりと近づいてくる。
ここの描写めちゃくちゃ怖くて笑いました
- 123二次元好きの匿名さん25/01/16(木) 21:46:57
勇者来たら玉座行くの律儀だなぁ魔王様
- 124125/01/17(金) 02:14:57
イイ感じに文章が纏まらなくて困っているスレ主です…
そうこうしている内にものすごく眠くなってきたので、今日の所は返信だけして眠ろうと思います。申し訳ありません
勇者4号の外見イメージは、おっしゃる通りそのまま4号の整形前の顔のイメージになっています
実はスレ主は4号の本来の顔に対して強固な想いがありまして、4号の性格や佇まいに対してピッタリだと(勝手に)思っている外見イメージがあります
ただ主人公によくあるような、いわゆるなろう系主人公に多い万人受けする外見とはちょっとだけ外れています。詳細に書いてしまうと人によっては拒否反応が出るかもしれませんので、なるべくサラッと読めるように詳細はボカシて書いてみました
もしこの先もっと詳しく書くとしたら、ごめんねスレッタ・マーキュリー内でのかなり後半の描写になると思います
部下を避難させた魔王ケレス陛下ですが、歴代の魔王と比べて飛びぬけて人気があるという訳ではなかったりします
とにかく内政に力を入れているので、派手な国内外へのアピールとかがありません
国民によってはこの辺り(地味な魔王様だな…)と思われていたりします
とは言えまったく人気が無いわけではなく、魔王陛下のブロマイド(姿絵)とかのグッズは普通に魔国内で売られています
もし出すとしたらオリキャラになりますが、赤の魔石を献上した温泉の管理人さんがケレス陛下の熱狂的なファンという設定です
生前の勇者4号の行動ですが、魔王側からだととにかく不気味に見えるように書いてみました
実際はお姉さんのパフパフに期待してドキドキしてしまう思春期ボーイなんですが、そんなこと魔王側からは分からないので仕方がないのです
もし内面が駄々洩れだったとしたら、魔王様から『おもしれー男!』という扱いを受けていたでしょう
じつはこの話の魔王様はやたらと真面目なタチなので、勇者が来たら玉座で待つ。そして正々堂々と勝負する。それが魔王というものである!……という魔王の基本をきちんと押さえるようにしてます
この世界では魔王VS勇者の戦いに関しての作法ができあがる長い歴史があったりするのですが、説明が長くなりすぎるのでバッサリカットしました
ちなみにケレス陛下が魔王の基本を守らず好き勝手やってると、どこからか聞きつけてきた前魔王×4(いまだ全員健在)によってネチネチお説教の刑にされます - 125二次元好きの匿名さん25/01/17(金) 10:49:49
魔王様は勇者4号がぽよんぽよんスライムに転生したことは知ってるんだろうか…?
- 126二次元好きの匿名さん25/01/17(金) 20:08:15
魔王VS勇者の作法の書とかあったらすごい分厚そう
- 127125/01/18(土) 01:13:45
感想ありがとうございます
魔王様がぽよんぽよん4号スライムの事を知っているかどうかですが、めちゃくちゃ知っています
むしろ勇者がこうなった原因の何割かは魔王様にあります
魔王VS勇者の歴史は長いので、その時々で少しずつ作法が増えて行きました
たぶん普通に一冊の本にできるくらいは内容があります
とはいえ作法は魔王側で言い伝えられてきたものなので、人間側である勇者は特に気にせず戦ってます
正直に言うと、この時の俺は勇者との戦いを長引かせるつもりはなかった。できるだけ早く勇者を倒して、早く業務の続きに戻ろう。そんな事を考えていた。
勇者も同じ考えのようで、持っている剣でこちらに切りかかりつつ魔力を高め続けていた。
恐ろしいまでの精密な魔力操作。広範囲の究極魔法を撃つつもりだ、と俺は推測した。火か、雷か、それは分からないが、どちらにしろ既存の魔法では火力が足りない。だから勇者は俺を倒しきれるよう、魔力を上乗せ続けている。
そこまで分かりつつも、俺はまだ落ち着いていた。どれだけ強力な魔法を撃たれたとしても、生き残れる自信があったからだ。
俺の耐久力は歴代魔王の中でも群を抜いている。柔軟な毛皮も強靭な皮もない下級の魔物出身ではあるが、しぶとさは前魔王たちの折り紙付きだ。
勇者が究極魔法を撃った後、必ず隙ができる。そこを攻撃して無力化しよう。そう考えていた。
結果として、勇者との戦いはすぐに終わりを迎えることになった。
いや、あれを戦いと言っていいのだろうか。
勇者が呪文を唱える。
俺はそれを聞いた瞬間、何かの間違いかと思った。
油断せず、まっすぐな眼差しでこちらを見ている勇者の目。それは魔法を撃ったあとのことを、未来のことを考えている目だった。
けれど聞こえてきた呪文は───。
魔力が膨れ上がる。指向性を与えられ、爆発的に膨れ上がる。
俺は初めて恐怖を覚えた。
勇者が唱えたのはこの場の何もかもを塵にし得る唯一の手段。
自爆の魔法だった。
- 128二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 06:27:56
メガ●テですと!?
4号なんという戦法を選んだのか - 129二次元好きの匿名さん25/01/18(土) 13:06:31
究極極大魔法って自爆技なんです!?
まさか知らなかったのかな勇者さん