ダンジョンマスター専用掲示板 SSスレ(外伝)

  • 1バフォミトラ22/03/10(木) 20:58:17

    現在のスレ

    ダンジョンマスター専用掲示板 その42|あにまん掲示板前スレhttps://bbs.animanch.com/board/407421/脳内設定スレhttps://bbs.animanch.com/board/417581/※脳内設定置き場として共用させ…bbs.animanch.com

    このスレは「ダンジョンマスター専用掲示板」の番外編みたいなものです


    イベントとは名ばかりのSS投稿及び設定投稿スレ

    尚、当作品は本スレの世界や設定とは一切関係が無く、全く接点のない多元宇宙の何処かのお話となります。

    投下する本作は一種の昔話であり、登場人物は全員がガチクズです。


    申し訳ありませんがご了承ください。


    ちなみにコチラは過去作となります

    ここだけダンジョンがある世界の掲示板イベントスレ(外伝)|あにまん掲示板偉大なる本スレhttps://bbs.animanch.com/board/255537/このスレは「ここだけダンジョンがある世界の掲示板」の番外編みたいなものですイベントとは名ばかりのSS投稿及び設…bbs.animanch.com
  • 2バフォミトラ22/03/10(木) 20:59:21

    では投下します

  • 3愚者の末路22/03/10(木) 20:59:52

    これは無限大の規模を誇る「多元宇宙」の何処かのお話。

    混沌と秩序、善と悪、神と魔といった遍く存在と多元宇宙全域を巻き込んだ大戦が終わり、新たな創世を終えた頃の記憶。

    その頃は神々と宇宙が未だ"若く"、人間を筆頭とした人型種族が繁栄と栄光を謳歌し諸々の罪と穢れが溢れ始めた頃であり、「地球」という蒼き星が生まれる遥か前の出来事──丁度、多元宇宙の歴史に残る大事件たる"大衝合"が発生し、上方次元界(天界)と下方次元界(魔界)は大いに揺れ、様々な"騒乱"が一段落した頃であろうか。

  • 4愚者の末路22/03/10(木) 21:00:20

    ──冥府──

    色彩を失った灰色の荒地が果てしなく広がる次元宇宙。この次元界には太陽や月、星、季節もなく、蔓延する疫病と暗鬱、諦め、絶望のみが存在し、この地は全ての神格、悪魔などからも見捨てられた魂が流れ着く。

    そんな呪われし永遠の絶望と不毛の地において──


    魔神バフォミトラは、総勢60万ほどの敵の大軍に囲まれ孤立していた……!!

  • 5愚者の末路22/03/10(木) 21:00:54

    ──時は暫し遡る──


    嘗てバフォミトラに敵対していた野心的なバロール・ロード(※)の変異種であった"クロアコスは、バフォミトラの圧倒的な暴力によってその栄光と領土を失い、命と引き換えに彼に隷属するデーモンの眷属となった。


    だが、"覚醒する火の蛇"の異名を有するこの悪辣な蛇は積年の恨みを晴らすべく、執念深くその時を淡々と待ち続けていた。


    今や忘却・隠された議題を司る新生魔神へと昇神を遂げたクロアコスは、バフォミトラの信頼を着実に確保しつつも彼に不満を抱く野心的なデーモンの下位者らを、蜜の如く甘い毒の舌と言葉で篭絡し、"有角公"への忠誠心を自身への忠誠心へとすり替える事で、忠実な手駒を徐々にしかし確実に増やしていった。



    ※バロールおよびバロール・ロードに関してはコチラを参照

    https://bbs.animanch.com/board/264447/?res=104

    https://bbs.animanch.com/board/264447/?res=105

  • 6愚者の末路22/03/10(木) 21:01:23

    定命の存在から見れば永遠とも思える長き時間を掛けて、離間の毒をバフォミトラの勢力に浸透させ続けた結果、勢力内に潜むクロアコスの手勢は今や42万ほどにまで膨れ上がった。

    それに加えクロアコスは、バフォミトラと敵対する強大な魔神である"アブラクサス"と密かに内通し、かの魔神との密約を取り付けた結果、サーペント・フォーク(蛇人間)の魔術師とデーモンの混成部隊から成る10万に及ぶ増援部隊を送る契約を結ぶことに成功。

    それだけに止まらず、甘言と洗脳に優れた彼は破滅界に住まうダイモン(※)の傭兵部隊とも契約を交わし、冥府の地に8万ほどの派兵を送ることを確約させる。

    これに傲慢かつ野心的なバフォミトラの娘の一人にして彼の恋人である"アモラエ"の助力と離反も加わった結果、何も知らぬバフォミトラはアブラクサス自身が率いる魔軍と抗争を行うという名目の下、自身の支配する領土から頬く離れた冥府へと誘き寄せられ、現在の状況に陥ってしまったという訳だ。


    ※ 中立にして悪の魔族。様々な死の形象を司り、魂を喰らう。

  • 7愚者の末路22/03/10(木) 21:01:44

    今やかの悪名高き"獣魔王"はその四方八方を血に飢えた60万の大軍に囲まれ、何も知らぬ第三者から見ればその命は今や風前の灯。

    戦における圧倒的な優位と地の利を得たクロアコスは、揺るぎない自身の勝利をほぼ確信し、大軍の遥か後方から嘲笑を込めてバフォミトラを盛大に煽り始める。

    『ヒャハハハハハハハ、"嘗てのあの時"と状況と立場が一変したなァ!──バフォミトラ!! 今度は貴様が無様に命乞いをして、俺の前に跪くのだ!!』

    『だが、俺は貴様の命乞いなどに耳を貸さぬ……!! 全てはこの時に為にあったのだ──惨たらしく殺して貴様の生首で祝杯を挙げてやる……!! 覚悟しろ、バフォミトラ!!』

  • 8愚者の末路22/03/10(木) 21:02:00

    遥か遠方から凄まじい怒気と怒号が灼熱の熱波の如く吹き荒れるが、当のバフォミトラ自身は"まるで何事も無かったかのように"動じず、平然としている。

    そして、退屈そうな表情を浮かべながらクロアコスの一世一代の宣誓を聞き終えると、バフォミトラは小さな声で徐々に嗤いだし、遂には無邪気な子供の様に腹を抱えて盛大に嗤い始める。

    明らかな嘲笑と侮辱が込められたその派手な笑い声は、まるで天地を引き裂く雷鳴のようであり、不気味な静寂に包まれた冥府全体に容赦なく木霊する。

  • 9愚者の末路22/03/10(木) 21:02:22

    全く予期していない反応とその笑い声から発せられる邪悪な圧により、クロアコスと60万の大軍の間に大きな動揺が広がる。

    やがて、自身に対する耐え難い侮辱を感じたクロアコスは負けじと怒号を発する。


    『……何 が 可 笑 し い!!』


    『……いやいや、失敬、失敬。 正直言って吾輩は、大変に驚き感心していたのだ──貴様のその芸人としての才になぁ!? これほど腹を抱えて笑ったのは、大昔に吾輩に挑んできた哀れな家畜共以来の事だ。』

    『………!! そうだ、良いことを思いついたぞクロアコス!? 今から吾輩の配下を辞めて、魔界で芸人をやるつもりは無いか!?──イポスの奴に頼んで支援してもらうといい!!』

    『芸人としての才能は、この吾輩が直々に保証してやろう!! 貴様のその才能ならばきっと魔界の頂点に立てるぞ──盛大に嘯く、身の程知らずの愚者としてなぁ!?』

  • 10愚者の末路22/03/10(木) 21:02:59

    『…………ッッッ!!!! こ の ク ソ 牛 がぁぁぁぁぁぁぁ!!』


    クロアコスの怒りに更なる火を注ぐような発言を終えると、バフォミトラは再び盛大に嗤い始める。

    そして、バフォミトラは哀れな弱者を諭すようにこう述べた。


    『ククク……仕方あるまいよ、吾輩は本当に可笑しくて仕方がないのだ──貴様がここまで愚かだとは、思いもしなかったぞ?』

  • 11愚者の末路22/03/10(木) 21:03:34

    『………!? それはどういう意味だ……!?』


    『……まさかとは思うが、クロアコスよ──』



    『こ の 程 度 の 戦 力 で 吾 輩 に 勝 て る と 本 気 で 思 っ て い た の か……!?』

  • 12愚者の末路22/03/10(木) 21:04:01

    威厳に満ち溢れた王者の如く堂々と宣言したバフォミトラが、何気なく指を鳴らしたその瞬間──


    ────クロアコスを除く全ての戦力が、一瞬のうちに細切れと化した─────


    筆舌に尽くしがたい惨状にさしもの新生魔神たるクロアコスも、今この場で何が起きたかを理解するのに数分ほどを要した。

    やがて、自身の想像と理解を越えた余りの現実を解した瞬間、彼は恐怖で呆然とするばかりか、何の言葉も発することができなくなってしまった……!!

  • 13愚者の末路22/03/10(木) 21:04:17

    『……何だ、貴様も案外人望が無いな──"この程度の戦力"しか、搔き集めることができないとは……。』

    『これでは下克上など夢のまた夢よなぁ……?』

    そう述べつつバフォミトラは、足の蹄で地面を軽く蹴り始める。

  • 14愚者の末路22/03/10(木) 21:04:39

    『………!!』

    その様子を目にした瞬間、クロアコスは自身に差し迫る甚大な脅威を悟る──そして

    彼は愛用している一対のファルシオンを直ちに具現化すると、続けざまに幾千幾万の暴力的な斬撃による嵐を巻き起こす。

    彼から放たれた夥しい数の斬撃は荒涼かつ不毛とした冥府を更に荒廃させ、バフォミトラへと接近するにつれ更にその威力を増してゆく。

    ───が

  • 15愚者の末路22/03/10(木) 21:05:04

    バフォミトラは自身へと迫り来る刃の嵐を避けるどころか、余裕の表情で眺めている。

    そして、猛烈な勢いで近づく"それ"に向かって彼が、剛爪による一撃を豪快に見舞うと───

    斬撃の嵐は彼の爪撃によって瞬時に一掃され、猛烈な勢いで放たれたその一撃は、遥か遠方にいるはずのクロアコスを空間ごと容赦なく引き裂く。


    『………ガハッ……!?』


    純粋かつ圧倒的な暴力によって、クロアコスの上半身と下半身が勢い良く引き裂かれると───

    バフォミトラは間髪入れずに神速の猛突撃を行い、クロアコスの上半身を3本の角で無慈悲に貫き、遥か上空へと突き飛ばす。

  • 16愚者の末路22/03/10(木) 21:05:21

    そして、バフォミトラは流れるような動作で勢いよく飛翔すると、遥か上空の彼方へと吹き飛んだクロアコスの顔面をその蹄で容赦なく踏みにじり、そのまま地上へと突き落とす。

    その光景は陰鬱かつ破滅的な冥府の上空において流れ星の如く映り、バフォミトラとクロアコスの両者は地上へと勢いよく落下し、その大地の地表はおろか岩盤をも深く突き抉る。

    冥府の遥か奥底へと落下したクロアコスは、筆舌にすら尽くしがたい激痛を味わい身悶えながらも、自身の肉体を高速再生する。

    その瞬間、底知れぬ闇に覆われた地底世界を太陽の如き光が勢いよく照らし始める。

  • 17愚者の末路22/03/10(木) 21:05:44

    『──どうだ、明るくなっただろう?』


    怯えつつ彼が光源の方向を見渡すと、バフォミトラの腰にある巻物の一つから魔力が放出されていた──どうやら奴は、周囲に光を放つ初級呪文を唱えたらしい。

    だが、強大なる魔神であるバフォミトラの魔力によって発生したその光は、通常の穏やかな光ではなく身を焦がすようにぎらついた悪しき光であり、衰弱したクロアコスの肉体に更なる苦痛を齎す。

  • 18愚者の末路22/03/10(木) 21:06:08

    『うむ、やはり光とは便利なものだ──お陰で貴様の無様な姿がよく見える……!!』


    悪意と嘲笑に満ちた嗜虐的な笑みを浮かべながら、バフォミトラはワザとらしくクロアコスを見下ろし始める。

    耐え難い屈辱的な仕打ちによりクロアコスの内側に再度、憤怒と憎悪のドス黒い炎が燃え上がると──

    高速再生で補いきれないほどの夥しい傷と負傷の数々が、瞬時に回復してゆく。

  • 19愚者の末路22/03/10(木) 21:06:38

    『……なッ!? 』

    次から次へと予想もしない自体に襲われるクロアコスが、バフォミトラの方を凝視すると腰にある別の巻物から急速に魔力が放たれており、どうやら神の力を解した高位の治療魔法を唱えているのが見て取れた。


    『身の程を知らぬ家畜による一世一代の"ショー"だ……そう簡単に終わってもらうと、吾輩としても面白くない。』

    『これで互いの立場は一先ず対等となった──正々堂々とここでケリをつけてやろう……!!』

    『それとも臆病かつ小心者の貴様は、今から尻尾を巻いてすごすごと自分の巣へと逃げ帰るかね……!?』

  • 20愚者の末路22/03/10(木) 21:07:10

    『……ッッ!! 何処までも舐め腐りやがって、畜生がァ……!! 俺に止めを刺さなかったことを未来永劫後悔させてやる!!』

    その言葉を皮切りにクロアコスは自身の限界に匹敵するほどの魔力を集約し、彼の両腕を想像を絶する業火を纏い始める。

    そして、蛇たる自身を模した構えを取ると、彼が持ちうる限りの最大奥義を速攻で放つ。

  • 21愚者の末路22/03/10(木) 21:07:35

    『魂すら残さず消し炭にしてやる……死 ね!! "魔技"───"火蛇焔殺葬燐波"!!』


    不浄なる業火が巨大な蛇として勢いよく襲い掛かり、その常軌を逸した熱により蛇の道筋はおろかその周囲にある森羅万象を情け容赦なく焼き焦がし、消滅させてゆく。

    だが、当のバフォミトラは慌てた様子も無く、初歩的な秘術呪文が記された巻物の一つを開放しながら淡々とこう述べた。

  • 22愚者の末路22/03/10(木) 21:08:10

    『……冥途の土産として教えてやろう。』

    『貴様の敗北の理由と原因は山ほどあるが、突き詰めてしまえばたった一つのシンプルな答えに辿り着くのだ…。』


    『──それはな──』


    『愚 か し く も こ の 我 に 刃 を 向 け た 事 だ……!!』


    その言葉と同時に彼が開いた巻物から、定命の存在はおろか並の神格の想像と理解を越えた暴力的な魔力の奔流が解き放たれる。


    『火球 《ファイアーボール》…!!』

  • 23愚者の末路22/03/10(木) 21:08:26

    バフォミトラが唱えたその呪文は、初級の壁を越え独り立ちした魔術師クラスの者が用いる伝統的な火の呪文であった。

    だが、その火力はバフォミトラに宿る圧倒的な神の力と魔力によって、核熱すら生ぬるく思えるほどの邪悪な火の力を宿しており、クロアコスの必殺技から放出された"紅蓮の大蛇"と彼自身を無慈悲に飲み込んでゆく。

    ──そして

  • 24愚者の末路22/03/10(木) 21:08:44

    広大無辺な地底全域に大規模な爆発と炎の嵐が巻き起こり、冥府の次元宇宙自体を情け容赦なく揺らすと、冥府の地上にポッカリと空いた巨大なクレーターから火柱が巻き起こる。

    その地獄めいた光景は"とある青き星"にて投下された、非人道的かつ無慈悲な兵器によって巻き起こる"忌まわしい雲"に酷似していた。

    やがて、戦いとは呼べぬ一方的な"大虐殺"を終えたバフォミトラは、悪しき業火が燃え盛る爆心地の中心において退屈そうに呟いた。


    『──何だ、もう終わりか。これなら"あの時"の侵入者連中の方が、まだ愉しめたぞ……?』

  • 25愚者の末路22/03/10(木) 21:08:59

    最早この場に用は無い──飽いたように冥府の地底から勢いよく飛び出すと、災害じみた揺れと火柱によって引き寄せられた無数の魔物とアンデッドがクレーター付近に集まっており、バフォミトラがそこから勢いよく出現した瞬間、

    彼らの間に想像を絶する同様と混乱が疫病の様に広がり始める。


    『『『……!? な…!? ば、バフォミトラッッ………!?』』』


    その光景を目にした瞬間、彼は"新鮮な獲物"を見つけた獣のような獰猛かつ残忍な笑みを浮かべ──

  • 26愚者の末路22/03/10(木) 21:09:40

    『これは丁度いい所に来てくれた────ま だ 血 の 渇 き が 癒 え て い な い の だ よ……!!』

  • 27愚者の末路22/03/10(木) 21:10:28

    冥府の地にて更なる"屠殺"を終えて満足したバフォミトラは、自身の本拠地である"象牙色の迷宮"に悠々堂々と帰還する。

    そして、自身の居城である"アステリオス宮殿"の一室にある禍々しい骨の玉座に座して優雅に寛いでいると、彼に仕える愛らしいワードッグの侍女がどたばたと足音を立てながら、彼へと近付く。

    『お帰りなさいませ、バフォミトラ様!!』

    『おや、"リスサアエラ"じゃないか。 お前が出迎えるとは珍しい──"シルヴェストリ"の奴はどうした?』

    『ええ~っと、シルヴェストリ様は先ほどからアモラエ様と"お話"をしておられます!!』

    『ハハハ、そうか、そうか。それなら別に良い。』

    大体の事態を察したバフォミトラは、芸術的な装飾が施され無数の宝石類が埋め込まれた純金の水煙草をくゆらしながら、一服し始める。

  • 28愚者の末路22/03/10(木) 21:10:55

    しばらくすると部屋の扉が勢いよく開き、そこから先程噂していた執事の"シルヴェストリ"が冷徹な表情を浮かべながら、部屋へと入室する。

    よく見ると彼は殺害したクロアコスと共謀してた疑惑のある娘のアモラエを、"調教した家畜"のように引きずっており、その首は鋭い棘の付いたスパイクト・チェインが容赦なく繋がれている。

    シルヴェストリによって凄惨な拷問を受けたと思わしき彼女は、苦悶と恐怖と絶望に満ちた表情と呻きを上げており、その美しい容姿は今や見る影も無い。

    『…遅くなりまして申し訳ありません、バフォミトラ様──アモラエ様と重要な"お話"をしていましたゆえ、御挨拶に上がるのが遅れてしまいました。』

  • 29愚者の末路22/03/10(木) 21:11:14

    家畜のように引きずっているアモラエの事などまるで意に介していない彼は、畏怖すべき主人であるバフォミトラに恭しく一礼をする。

    『ハハハハ、よいよい──むしろ、お前のお陰で手間が省けたわ…!!』

    上機嫌な様子で豪快に嗤うと、バフォミトラは自身を裏切った娘に対し残酷な視線を向ける。

    そして、彼はワザとらしい態度と声色と笑みを浮かべながら"裏切り者"である彼女にこう述べた。


    『おお、そこにいるのは我が愛しき娘"アモラエ"では無いか!!──今日は随分と無様な姿を晒しているなァ!?』

  • 30愚者の末路22/03/10(木) 21:11:39

    『おっと、その前にお前に詫びなければならないことがあるのだよ──そう、お前の情夫であったクロアコスについてだ……!!』

    『吾輩としたことが彼奴とお前が"ただならぬ仲"であったことを完璧に忘れてしまってなァ…勢い余って、つい"ウッカリ"殺してしまったのだよ……いやはや、年は取りたくないものだ。』


    『──でも、まぁ仕方が無いな!? 想像以上に彼奴が"弱すぎた"のが何もかも悪い!! 故に吾輩に何の罪も過ちも無いのは、自明の理よ!!』

    反省や後悔など微塵も感じられないワザとらしい演技と態度を見せながら、バフォミトラは憔悴した娘の精神と心を容赦なく蝕み抉る。

  • 31愚者の末路22/03/10(木) 21:12:02

    『……お、お父様…ゆ、赦し──』


    『嗚呼、済まぬな──今の吾輩はこれから"屠殺される家畜"の声など、一切聞こえぬのだ。』


    一切の弁明や謝罪に耳を貸さぬ父からの無慈悲な死刑宣告を告げられた瞬間、アモラエは悲鳴に近い絶叫の声を上げて泣き叫ぼうとするが──

    ──何故か声を発することができない──

  • 32愚者の末路22/03/10(木) 21:12:24

    そればかりか微かな身体の自由すらも奪われているのを悟ったアモラエは、地面に這いつくばった半死半生の芋虫の様にもがき始める。

    その様子を見たバフォミトラは、愉悦に満ちた邪悪な笑みを浮かべながら軽く指を鳴らす。

    すると虚空から"赤黒く錆付いた禍々しい鋸状の刃物"が何処からともなく現れ、音を立てながら床へと落下する。

    そして、床に落ちた"ソレ"を目にした瞬間、アモラエの表情は更なる絶望によって曇り怯え始める。

    ──何故なら"ソレ"は、自分を含めたバフォミトラの眷属達が"家畜"を"屠殺"するために用いる悪名高き拷問器具の一つであったから。

  • 33愚者の末路22/03/10(木) 21:12:46

    『正直に言って、吾輩としてはもう"お前の事などどうでもよいのだ"──ただ、貴様が怯えながら"それ"で死ぬのを寛ぎながら見たいだけなんだ。』

    その言葉とともにリスサアエラが無邪気な笑みを浮かべながら、忌まわしい拷問器具を手にする。

    彼女はこれから行う"家畜の解体ショー"を、愉しげに待ち侘びているようであり、その美しい容姿からは想像もつかないほどの狂気をその瞳に浮かべていた。


    『では、名残惜しいがお別れだ──"名も無き家畜"よ? 最期の生をゆっくりと嚙み締めながら死ぬといい──』

  • 34愚者の末路22/03/10(木) 21:13:17

    ギ…ギ…ギッ……ギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコ

        ふんふんふ~ん♪


    『ところで、シルヴェストリよ?』


    ギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコ

          ドナドナドナドナド~ナ~♪ "家畜"のと~さ~つ~♪


    『何でございましょうか?』


    ギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコ

                     タンにミノにハツにロース!! へい、らっしゃい♪


    『今回の一件でクロアコスに靡いた"裏切り者"は全て一掃できたと思われるが、まだ残党は潜んでいそうかね?』

  • 35愚者の末路22/03/10(木) 21:13:56

    ギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコ

      啼いて喚くは哀れな"子牛"~!!  へい、らっしゃい♪


    『いいえ、それらしい不穏分子はコチラで"掃除"致しましたので、これで内部に潜む獅子身中の虫は全て一掃できたかと……』


    ギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコ

                           今日のお前は焼肉だ~♪


    『そうか、ならば良い。これで暫くは内政に集中できると言うものだ──ハハハハハハハ!!』

  • 36愚者の末路22/03/10(木) 21:15:27

    先程の言葉は何処へやら──生きたまま解体されている実の娘の事など一切気にかけず、バフォミトラは執事と他愛のない談笑を行っている。


    だが、そこに──



    彼の妻であるアハズが、迷宮内の遥か上空を覆い尽す闇の帳から音も無く舞い降りる。


    https://bbs.animanch.com/storage/img/309224/390

  • 37愚者の末路22/03/10(木) 21:15:55

    ギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコ

                     淫売は~♪ ちゃっちゃと屠れ~♪  死刑──なんちゃって!!


    『……!! 何だ、アハズか。一体何の──嗚呼、アモラエの事だな!!』


    ギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコ
       
       ふんふんふ~ん♪


    『何、心配するな。ある程度の時が経過したら、吾輩が蘇生させて"再教育"を──』



    『──そんな、"取るに足らぬこと"で態々来たのではありませぬ──』

  • 38愚者の末路22/03/10(木) 21:16:18

    アハズの予期せぬに一言にさしものバフォミトラも困惑の表情を浮かべ、その真意を妻に尋ねる。

    ギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコ


    『……では、一体なんだと言うのだ?』


    ギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコ


    『……お忘れですか、我が君?──物質界の時間軸に換算すれば今年は"666年"──』


    『──かの地にて我が君を含めた"渾沌の諸王"が集う刻(とき)にございます……!!』

  • 39愚者の末路22/03/10(木) 21:16:45

    その言葉を耳にした瞬間、バフォミトラは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、その様子からは"関わりたくもない厄介毎に嫌でも首を突っ込まねばならない"という明確な不快感が見て取れた。


    『…全く、クソ忌々しい限りだ──これならクロアコスのような愚者を屠っていた方がまだマシだったわ……!!』


    ギコギコギコギコ…ギコギコギコギ…ギ……ギ…ギ……ゴトン


    忌々しげにバフォミトラが呪詛の言葉を吐き捨てると、勢いよく"ナニカ"が床に転がり落ちるような音がした。

  • 40愚者の末路22/03/10(木) 21:18:08

    お話は以上となります。

    またネタが思いついたらこんな感じのほのぼのとした作品を投下したいと思います。
    お目汚し失礼いたしました。

  • 41二次元好きの匿名さん22/03/10(木) 21:20:31

    乙でした。

    ほのぼのって何だよ(哲学)

  • 42二次元好きの匿名さん22/03/10(木) 21:22:58

    どいつもこいつも頭のネジがぶっ飛んでるじゃねぇかよ え~!!

  • 43二次元好きの匿名さん22/03/10(木) 21:32:51

    (乙でした)
    (裏切り者とはいえ実の娘にも容赦がなさすぎる……)

オススメ

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