雨の日、隣の貴方へ

  • 1二次元好きの匿名さん22/04/19(火) 10:47:30

     ――ぽつ、ぽつ、ぽつ。小粒の雨が窓を叩いている。数時間前から降り出した雨は今や本降りとなり、練習コースには使用禁止令が出されていた。けれど室内の施設は軒並み先客あり。私たちは予定を変更し、トレーナー室で書籍や映像による学習に勤しんでいた。
     身体が冷えないように、と淹れたふたり分の紅茶。真っ白いティーカップの中の紅い色。そこからまた、真っ白い湯気が立ち上っては消えていく。
    「……よし、準備できたよ」
     先ほど私が過去のレース映像を確認したい、と言ってからものの数分。ぼんやりとティーカップを眺めているうちにトレーナーさんが映像の準備を済ませてくれていた。
    「ありがとうございます、トレーナーさん」
     私から10センチ離れた位置にトレーナーさんが腰掛ける。
    「ブランケット、トレーナーさんも使いますか?」
     体の弱い私を気遣ってトレーナーさんがかけてくれたブランケット。持て余した布の端を持ち上げて誘ってみる。
    「いや、いいよ。アルダンのために用意したんだから。それにあまり大きいサイズじゃないでしょ?」
     何でもない風に返しながらリモコンを操作するトレーナーさんの横顔を見ていると、ちょっとしたいたずら心みたいなものが湧いて。
    「近くに寄れば大丈夫ですよ」
     私は10センチ近づいた。
     ――どき、どき、どき。鼓動が少し速くなる。
    「アルダン!?」
     慌てた様子のトレーナーさん。その姿がなんだかとてもかわいらしくて。
    「ふふっ、もっと近づけば、もっと温かいですね」
     私はまた少し近づいた。私の肌とトレーナーさんの肌が触れ合う。人肌の温かさが、熱いぐらいに感じられた。
     ――ぽつ、ぽつ、ぽつ。雨粒はまだ窓を叩いている。冷え切った空気の中、トレーナーさんの頬が赤く染まっていく。
     ――どき、どき、どき。もしかしたら、雨音は鼓動を隠してくれないかもしれない。けれど、この人に私の想いが伝わるのなら、それでもいいような気がした。

  • 2二次元好きの匿名さん22/04/19(火) 10:48:04

    トレーナーは女性想定で書きましたがどちらでも解釈できると思います
    アルダン、良いですよね

  • 3二次元好きの匿名さん22/04/19(火) 10:51:06

    詩的でとても良いSSだぁ...

  • 4二次元好きの匿名さん22/04/19(火) 11:10:32

    いい……
    読んでて心地いい……

  • 5二次元好きの匿名さん22/04/19(火) 12:27:12

    アルダンいいよね……

  • 6二次元好きの匿名さん22/04/19(火) 12:29:59

    これはいい…お気に入りに登録しといて、雨が降った時にまた読み返そう…

  • 7二次元好きの匿名さん22/04/19(火) 14:03:54

    アルダンとトレーナーさんは公式からお出しされる距離感が既に近い

  • 8二次元好きの匿名さん22/04/19(火) 15:27:45

    アルダン、お嬢様なのにちょくちょく人をからかうの可愛い

  • 9二次元好きの匿名さん22/04/19(火) 16:15:37

    アル×トレは健康寿命に良い

  • 10二次元好きの匿名さん22/04/19(火) 17:37:11

    ストーリーもいいし文の書き方もいい…

    ちょっと腕齧らせて

  • 11二次元好きの匿名さん22/04/19(火) 17:40:15

    そうそうこれだよこの雰囲気!

  • 12二次元好きの匿名さん22/04/20(水) 03:22:01

    アルダンかわいいね……

  • 13二次元好きの匿名さん22/04/20(水) 14:23:43

    アル×トレ良い……

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