【幻覚】同窓会

  • 1二次元好きの匿名さん22/06/19(日) 13:30:35

    府中近郊に店をかまえるとある居酒屋。美味な一品料理が周辺で話題になっている以外は、特に何の変哲もない店舗。そこに、あるウマ娘達が集まっていた。

    「おっ、ルドルフやんけ」

    「ごめんね忙しい時に」

    「トレセンの仕事の方は良いんですか?」

    「大丈夫だ。今日は早く雑務を終わらせてきたからね」

    「そりゃ良かった」

    トレセン学園の生徒会長を務める私—――シンボリルドルフと、事前に席について待っていた四人目のウマ娘。少し前のウマ娘レースファンであれば、その顔に覚えがあるだろう。
    ビゼンニシキ、スズパレード、スズマッハ、ニシノライデン――――
    私と共にクラシックを走った同期のウマ娘達だ。この集まりは、スズパレードが企画した同窓会であった。単に久々に顔を合わせたいという理由による企画だったが、普段忙しい私自身も乗り気だった為にあっさり決まり、お互いのスケジュールを調整して今日に至る。

    「それで、どうだルドルフ。うちのヘリオスは」

    「マイルでは獅子奮迅の活躍をしている。君の言う通り素晴らしいウマ娘だったよ。ギャル語に関しては一知半解だが」

    「まぁ、そうだろうな」

    暫くは、お互いの近況についての話が続いた。ビゼンニシキはウマ娘の養成施設に所属し、後進の育成に励んでいる。ダイタクヘリオスは彼女の教え子の一人だ。スズパレードはURAに就職し、トゥインクルシリーズを盛り上げる企画をプロデュースしている。ニシノライデンは実家の蹄鉄業を継いでいた。スズマッハはテレビ局でレースの実況解説をしている。道は違えど、それぞれが新しい場所で頑張っている。それが分かっただけでも、今回の同窓会は価値があった。そして話題は私の事に移る。

    「大変でしょ?生徒会長…」

    「ああ…だが、やりがいのある仕事ではある」

    スズパレードは若干心配そうに尋ねた。彼女は仕事の性質上私と関わることが多いので、私の職務のおおよその実態は把握している。確かに自分のトレーニングと学園についての諸々の統括の両立は厳しいが、私の『夢』の実現にはこれも必須。私の『夢』。「ウマ娘誰もが幸福になれる時代」については、彼女達も知るところだ。今考えていることをつらつらと語って聞かせた。ある種傲慢かも知れないが、それでも私が目指したいものを。

  • 2二次元好きの匿名さん22/06/19(日) 13:30:56

    「そっか…相変わらずしっかりしてますね、ルドルフさんは」

    「なぁ、うちらで手伝えることあらへんか?」

    「手伝える範囲ならな」

    感心した表情のスズマッハ。協力を申し出るニシノライデン。肯定するビゼンニシキ。自分で語っておいてなんだが、ここまで協力的な反応が返ってくるとは思わなかった。昔は彼女らと衝突することもあったし、全てが肯定的な思い出ではなかったから。

    「良いのか?」

    私は問うた。なぜ彼女らは私に協力的なのかと。そうして返ってきたのは――――

    「何水臭いこと言ってるのさ。同期でしょ私達」

    「世代の代表に対して、頑張ってほしいと思うのは可笑しいですか?」

    「エゴかもしれんが、私達を打ち負かしたお前には胸を張って進んでほしいんだ」

    いや、深く考えるのは野暮だった。話はもっと単純で、それでいて嬉しいものだった。勇往邁進。私の好きな言葉だ。それでは、皆の言葉通りに進ませてもらうとしよう。私の力の及ばない所は、遠慮なく頼らせてもらおう。

    「ありがとう」

    今日は、久しぶりに心の底から笑えた気がした。

  • 3二次元好きの匿名さん22/06/19(日) 15:10:57

    シンボリルドルフ世代について
    現トレセン学園生徒会長を務める7冠ウマ娘、シンボリルドルフと同世代のウマ娘の総称。『皇帝世代』とも呼ばれる。ルドルフとクラシック世代でしのぎを削ったビゼンニシキ等有力なウマ娘はいたものの、ウマ娘レースの歴史において強い世代と評される一つ上のミスターシービー世代や一つ下のミホシンザン世代に勝利できず、シニア級GⅠ勝利はスズパレードの宝塚記念での1勝に留まる。この世代のGⅠ勝利は殆どがルドルフによるもの。故に、ルドルフのワンマンであり、他の世代に対しては相対的に弱いと称される世代でもある。

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