オグリキャップがパイを焼くSS

  • 1藤村忠寿(本物)22/07/01(金) 19:00:38

    時間は昼の二時。場所はトレーナー室。私は椅子に座っていて、それから私は……
    お腹が空いていた。
    ただでさえお腹が空いているところに、部屋の高い壁に掛けられた時計が、のろのろ、のろのろ、針を回しているのを見ると……よりいっそう、お腹が空いてくるような気がする。

  • 2二次元好きの匿名さん22/07/01(金) 19:01:10

    おかず系かデザート系か

  • 3藤村忠寿(本物)22/07/01(金) 19:01:18

    耐えられそうになかった。回り続ける時計を見ていると、一分一秒が一時間にも一日にも思われる。
    食べられそうなものはあらかた食べつくしてしまった。トレーナーはいないしタマもいない……
    私はただ進み続ける時計をじっと睨むしか出来なかったが、それも限界が近いことは明らかだ。
    「……食べられるか?」
    そう呟いたが、私の中で答えは決まっていた。
    食べられるか食べられないかではない。もはや食べないとどうにもならない。

    私は時計の針と同じくらいのろのろと立ち上がり、脚立を持ち出して壁掛け時計を取り外すと、学園のキッチンに向かった。

  • 4藤村忠寿(本物)22/07/01(金) 19:03:27

    「取り敢えず、これは冷やしておこう……」
    コックパッドで調べた『家で簡単! フルーツパイのレシピ』の手順に従って、時計を冷蔵庫に仕舞った。
    レシピ紹介ページに飾られた完成品のパイを見ているだけで、涎が止まらなくなる……しかし画面を食べてもお腹は膨れない。私は鋼の意思で耐え、レシピを読み進める。
    「そのまま乗せる材料は、ざく切りにして一緒に冷やす……」
    学園中探しまわって、食べられそうなものを探してきた。その内からパイに乗せる材料を選び出す。
    まず、予備の蹄鉄。それからレースで手に入れた表彰状。大事なものだが、背に腹は代えられない。

    「確かにゃんこの手、だったか……」
    包丁の扱いには慣れていないので、おっかなびっくりな手つきで慎重に材料を切り始める。
    「にゃー……こうだろうか」
    タマは当たり前のように、ネギとか肉とかをあっという間に切り刻んでいたものだが、自分でやってみるととても真似できそうにない。
    「やっぱりタマは凄いな……」
    呟きながら、何とか材料を切り終えた。大きさはまばらだが、食べられなくはないだろう。

  • 5二次元好きの匿名さん22/07/01(金) 19:05:56

    おいなんかおかしいぞ

  • 6二次元好きの匿名さん22/07/01(金) 19:07:15

    「確かにゃんこの手、だったか……」
    包丁の扱いには慣れていないので、おっかなびっくりな手つきで慎重に材料を切り始める。
    「にゃー……こうだろうか」

    可愛すぎんか⋯?

  • 7藤村忠寿(本物)22/07/01(金) 19:07:34

    「次は……形が崩れるまで溶かして、ふぃりんぐ? にする」
    用意した材料は、何故かトレーナー室に大量に保管されていた目覚まし時計と、虹色に輝く人参の形の石だ。目覚まし時計の方はちょっと賭けだが、時計同士相性は悪くない筈。
    これを細かく刻んでから鍋に入れる……これが大変だった。最後の方はもうがむしゃらに、何度も包丁を振り下ろして切り刻みまくった。
    どれくらいまで細かく刻めばいいのか分からないから、取り敢えず出来る限りやるしかない。
    「……お腹空いた……」
    材料のままむしゃむしゃ食べてしまいたい衝動に駆られたが、そんなことをしたら今までの準備が水の泡だ。

    原形が無くなった時計と石を鍋に入れ、水をたっぷり。それからこれまたトレーナー室にあったオレンジ色の飲み物と砂糖で味を調えて、ぐつぐつと煮込む。
    「これもいけるな」
    煮立つのを待つ間に、オレンジの飲み物が入っていた容器を輪切りにして、さっき切った材料と一緒に置いておいた。
    「ふふっ、包丁の扱いにも少し慣れて来たぞ」
    そうするうちに、鍋から甘い匂いが漂い始めた。

  • 8二次元好きの匿名さん22/07/01(金) 19:08:04

    おい、パイ食わねぇか

  • 9藤村忠寿(本物)22/07/01(金) 19:09:56

    「このタイミングで、オーブンを210度に予熱しておく」
    冷蔵庫で冷えた時計を取り出し、用意した具材を乗せて行く。
    「つめたっ……」
    プラスチック製の壁掛け時計は、私が思っていた以上に冷え切っていた。
    なんとか調理台まで持って行くと、まず出来立てのフィリングを流し込み、その上に切った材料を丁寧に飾り付ける。
    「おお……」
    自分で言うのも何だが、具材の切り方がばらばらな所に目を瞑ればまるで店に売っているパイのような見た目だ。ひょっとして私には料理の才能があるのかもしれない。
    「トレーナーにも食べさせてあげたかったな……」
    だが今はもう、私のお腹が限界だ。仕方がない。心の中でトレーナーに謝りながら、私は最後の工程に取り掛かる。

  • 10藤村忠寿(本物)22/07/01(金) 19:12:29

    オーブンの目の前で、焼き上がるのをじっと待つ。ただ待つ。ひたすら待つ。

    オーブンの低い音と一緒に、中にある壁掛け時計が時間を刻む音が聴こえて来た。

    「さっきまでは嫌だったが……今はむしろ、心地良いな」

    期待に高鳴る胸の鼓動とシンクロするように、進む時計の針の音。これならば、いくらでも聴いていられそうだと思った。

    そして、ついにパイが焼き上がった。

  • 11二次元好きの匿名さん22/07/01(金) 19:15:44

    異食症やんけ!!

  • 12藤村忠寿(本物)22/07/01(金) 19:18:16

    「おおぉぉ……」
    焼き上がったパイは……凄かった。
    見た目はまるで山々に囲まれた、オレンジ色の湖のようだ。白い煙と一緒に甘い匂いが部屋いっぱいに広がる。
    (絶対に美味しい……!)
    私は興奮で震える手を抑えて、ナイフを取り出す。

    まずは『12』と『6』を通るよう、綺麗に二等分。
    「切る場所が分かりやすくていいな」
    ナイフを入れる度、さくり、という音と共に歯応えのありそうな感触が手に伝わってくる。
    それから『3』と『9』で切って四等分にした。
    「こんなものでいいか」
    断面から、香ばしく焼け上がったオレンジとプラスチックの匂いがいっそう強く立ち昇っている。もう我慢できない!

  • 13二次元好きの匿名さん22/07/01(金) 19:18:30

    パイってなんだっけ?

  • 14二次元好きの匿名さん22/07/01(金) 19:19:52

    パイ…パイってなんだ?

  • 15藤村忠寿(本物)22/07/01(金) 19:23:00

    「いただきます」
    手を合わせてから、パイを一切れ口に運ぶ。
    『3』から『6』までの四分の一を、一口で頬張る。
    「んーっ……」
    噛み締める度に、口の中でぱりぱりと刺激的な食感が弾けた。
    甘酸っぱいオレンジの風味を、歯ごたえのある生地とトッピングの蹄鉄が引き締めている。
    そして後味には、何の味だか分からないが優しい甘みがゆっくりと口の中一杯に広がるのだ。
    (美味しいっ……!)
    すぐに呑み込んでしまった私は、続けて『6』から『9』にも手を伸ばし、頬張る。

  • 16二次元好きの匿名さん22/07/01(金) 19:28:37

    誰かタマ呼んで来い

  • 17藤村忠寿(本物)22/07/01(金) 19:31:01

    「あれっ、オグリやん。こんなところで何して……ってそれ、何食うてんの?」
    「ほふっ……もぐっ……」
    そこでキッチンにやって来たのは、買い物に行っていたタマだった。
    「ごくり……」
    しっかりと口の中のものを呑み込んでから、返事をする。
    「タマ、奇遇だな。実は、お腹がぺこぺこで我慢できなくて……パイを焼いて食べていた」
    「オグリの手作り……! ようイメージできひんなそれって、ん? そのパイ……」
    彼女は私の食べているものに興味津々のようで、こちらに近づいてきた。お腹が空いているのだろうか?

  • 18藤村忠寿(本物)22/07/01(金) 19:35:14

    「ってこれ、トレーナー室の時計やん! いくら何でも飢えすぎやろ!」
    「見ていたらお腹が空いて、つい……今度代わりを買ってくる」
    呆れたように笑うタマに、私は一つの提案をする。
    「良かったら食べるか?」
    「お、ええの? せっかく作ったんやろ、アンタ一人で……」
    「いや……良いんだ」
    タマはお腹が空いているみたいだから。他ならぬ親友の為だ。

  • 19藤村忠寿(本物)22/07/01(金) 19:36:55

    「……そう言ってくれるのなら、貰っといたるわ!」
    「ああ。この『9』から『12』を……」
    「いやいやいや、四分の一を一口は無理やて! もっとちっこい……数字ひとつ分だけでええから」
    「そうか? タマは謙虚だな」
    私はキッチンから包丁を取り出し、『12』と『1』の間を切り取った。
    「なら、長針の付いている部分をあげよう」
    「その心遣いは良う分からんけど、取り敢えず喜んどくわ」

  • 20二次元好きの匿名さん22/07/01(金) 19:37:52

    何この……何?

  • 21藤村忠寿(本物)22/07/01(金) 19:39:08

    二人で椅子を並べて、パイを食べる。
    「どうだろうか……?」
    「ほふっ、ふっ……うん、ええやん、優しい味って感じで! ちょっと固いけどまあ時計やしな……」
    「! 良かった、喜んでもらえて!」
    やっぱり美味しいものは良い。みんなを笑顔に出来るから。

    そしてその美味しいものが自分が作ったものだと、もっと良い。
    これは、今日初めて分かった事だった。

  • 22藤村忠寿(本物)22/07/01(金) 19:40:33

    「ごちそうさま」「ごちそうさま」
    完食し、二人で同時に手を合わせる。
    「……って、ウチが一切れ食べる間にほぼ半分を……」「美味しかったからな!」
    こんなに美味しいなら、また作っても良いと思った。

    「みんなでご飯を食べるのは、やはり……良いものだな、タマ」
    皿を片付けながら、私は親友に話しかける。
    「そして自分が作ったもので喜んでもらえると……それもとても嬉しい」
    「……どうしたん、いきなり?」
    「つまり、その……」
    水を流しながら、私は自分の心を頑張って言葉へと作り替えた。
    「今度、また何か作るから……その時は、イナリやクリークやトレーナーも呼んで、皆で食べよう」
    「……ええやん。勿論ウチも呼んでくれるんやろな?」
    「勿論だ!」


    「……でもやっぱり、次はタマの作る料理が食べたいな」
    「そう言うと思っとったわ……」

  • 23二次元好きの匿名さん22/07/01(金) 19:41:51

    …………???

  • 24藤村忠寿(本物)22/07/01(金) 19:43:06

    以上です。
    お恥ずかしいことにタマもオグリも持っていないので、キャラ崩壊・人称ミスなどありましたらごめんなさい!

  • 25二次元好きの匿名さん22/07/01(金) 19:46:37

    待て
    放置したまま終わろうとするな

  • 26二次元好きの匿名さん22/07/01(金) 19:47:36

    タマがツッコミを放棄したら誰がツッコ厶んだ
    帰ってこいタマ!

  • 27二次元好きの匿名さん22/07/01(金) 19:55:39

    キャラ崩壊は間違いなくしてる

  • 28二次元好きの匿名さん22/07/01(金) 19:56:55

    イメ損おじさん俺、困惑

  • 29二次元好きの匿名さん22/07/01(金) 20:06:37

    オグリって料理できなかったっけ?

  • 30二次元好きの匿名さん22/07/01(金) 20:09:52

    キャラ崩壊というかもうちょっと前段階のところが崩壊してるんですが
    所々のオグリが可愛かったしまぁいいか…

  • 31二次元好きの匿名さん22/07/01(金) 20:11:51

    (なんだべこの...)

  • 32二次元好きの匿名さん22/07/01(金) 20:13:23

    キャラではなく概念が崩壊してない?

  • 33二次元好きの匿名さん22/07/01(金) 20:45:38

    コテはなんなんだよ

  • 34二次元好きの匿名さん22/07/01(金) 22:32:15

    時計以外の部分は平常運行なの脳が混乱する

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