――きっと、これは夢。｜あにまん掲示板

1二次元好きの匿名さん22/07/03(日) 21:04:36

　目を開いた瞬間、現実に引き戻されたかのような感覚に包まれた。
　正面にあるのは鏡。そこに映る私は、きっとこれまでのどの瞬間よりも幸せに満ちた顔をしている。
　レースの耳飾り、ケルティック・ノットのベール。クローバーがはめ込まれたティアラ、首飾りにもエメラルドがあしらわれている。視線を下ろせば腰には薔薇を抱えていて、ドレスの至るところに施された刺繍。いつか仕立てて貰った、誇りある“勝負服”を身に纏っていた。
　声をかけられて椅子から立ち上がり、右足を踏み出す。ヒールが床を叩く。脚に伝わってくる感覚は確か。これは夢ではなくて、現実なのだと胸に刻み付けられた。
　足取りは少しずつ速さを増していく。ドレスの裾が邪魔に感じるくらい、半ば走り出しているみたいだった。いくつかのドアをくぐって角を曲がる。視界の先にタキシード姿を認めると、ようやく私は立ち止まった。
　背を向ける彼に、そっと歩みを寄せる。後ろを向いて、背中を合わせた。右手で彼の左手をつついて、指を重ねた。

　合図をするまでもなく、くるりとお互い同時に振り向いた。
　目に入ってきたのは、私の隣に立って見劣りしない風格を漂わせた姿。あの日、街角で初めて出会った時と比べると見違えるほど。
　目線が合う。彼は大きく瞬きをして口を半分開くと、何も言わずに閉じてしまった。不思議に思って小首をひねっていると、彼はへなりと眉を傾けてわずかに口角を上げた。握った手に、空いた手が重ねられる。少しだけ、力が込められたような気がした。

2二次元好きの匿名さん22/07/03(日) 21:05:06

「……ねえ、何か言ってくださらないの？」
「ごめんごめん。本当に綺麗でさ、ふさわしい言葉が見つからなくて」
「私がキミのお嫁さんになるんだよ？　もっと嬉しそうにしてくれてもいいのに」
「嬉しいどころじゃないよ。でも、どちらかというと婿入りな気がしないでもないけどね」

　ふふ、と笑い合う。なんだか締まらない会話も、私たちらしいのだろう。ずっと気を張っていたら疲れてしまうもの。

「……長かったね」
「……ああ」
「ようやく……ようやくこの瞬間を迎えられて、私はとっても幸せに思っているの」
「もちろん、俺だって同じだよ」

　涙が出そうなくらい待ち望んでいた。いくつもの壁はあったけれど、ついに私たちは結ばれる。最後には皆が納得してくれて、祝ってくれている。やっぱり私は皆に愛されているんだなって、実感した。
　さあ、と繋がれた手を差し出した。彼は慣れた様子で握り直して、その手をとってくれた。もう一歩肩を寄せてみると、柔らかな表情で応えてくれた。
　これから私と彼の二人で運命を歩み、創っていくんだ。使命も責務も、幸せも苦しみも分けあって、一緒に進んでいく。一人では越えられない困難も、紡がれた絆が背中を押してくれる。
　目の前の大きな扉の向こうには、きらめく明日が待っている。隣を見上げて、もう一度顔を見合わせた。決意と覚悟と、想いの詰まった微笑みがそこにはあった。

　そうして私たちは新しい扉を開く。万雷の拍手が未来を祝福しているかのようだった。

3二次元好きの匿名さん22/07/03(日) 21:09:50

トレファイよき･･･

4二次元好きの匿名さん22/07/03(日) 21:12:12

ふゥん、やはりトレファイは最高だな。ガンにも効く。

5二次元好きの匿名さん22/07/03(日) 21:12:30

良いじゃねぇか

6二次元好きの匿名さん22/07/03(日) 21:14:13

夢の中で目を覚まして
今もファインは夢を見てるってことじゃないのか……？

7二次元好きの匿名さん22/07/03(日) 21:21:16

良いよね…

8二次元好きの匿名さん22/07/03(日) 21:33:30

素晴らしいSS書くじゃないの…

9二次元好きの匿名さん22/07/03(日) 21:35:58

あーこれは最高のやつ

10二次元好きの匿名さん22/07/03(日) 21:44:21

前作

うるせぇっ　今更止められねぇよ！　夜更かしスイッチONだ！！｜あにまん掲示板ごつごつした感触を首の下に覚えて、心地よさに包まれた意識が浮かび上がってくる。ゆっくりと身体を起こしていくと、わずかな気だるさとともに徐々に思考が起動していく。まだぼやける視界には、脱ぎ散らかした衣服…bbs.animanch.com