- 1二次元好きの匿名さん21/10/05(火) 22:41:49一般社会ウマ娘|あにまん掲示板引退後にトレセン学園の外で生活する娘とか、トレセン学園に入学するための生活を描いたりとか、オリジナルウマ娘でウマ娘ワールドを広げるSSとかないかのぉ……ワシは死ぬ前に一度は貧乏な家庭でレースなんて夢の…bbs.animanch.com
誰も一般社会で生活するウマ娘SSについて教えてくれなかった……悲しいのぉ……
聞き方が悪かったのかもしれないかもしれんの
だから、ちょっとこんな感じのが読みたいって例を書いてみたから今から投下するぞ
なんとなく雰囲気を掴んだら似たようなSSをワシに教えてくれるかのぉ……
画像は特に内容とは関係ない
- 2二次元好きの匿名さん21/10/05(火) 22:42:37
レースの道から退き、早一年が経過した。
最初はトレーニングを行わなくてもいい事や、レースとは別種の仕事のプレッシャーに戸惑っていた。
でも一年も経てばそれは当たり前になっていて、周囲にウマ娘が一人もいない会社に入社した事で自分がウマ娘である事さえ夢だったかのような気持ちになっていた。
最近は恋愛も順調で、最近出会った優しい彼と仕事終わりにデート。
よく回ったアルコール。会話がはずみ、終電を逃した。
そして店を出たあと、向かう先はホテル街。
このまま結婚して、退社して、子供ができて、極々一般的な、幸せを手に入れるのかぁ。
そんな風に漠然と思っていた。
「おかーさん! 何してるの、こんな所で!」
「えっ……えぇっ!?」
「今日はすぐ帰ってきてくれるって言ってたよね! 誰、この男の人!」
道端で、突然、女の子が意味不明な事をまくし立ててきた。
年は小学生くらいだろうか。整えられれば綺麗であろう肩まで伸びた、所々跳ねてしまっている黒い髪。首周りが伸びていて、裾丈は膝まであって袖丈が長くて手が隠れてしまっている古臭いTシャツ。
そんなどことなく薄汚さを感じさせてしまうウマ娘が、通りの薄暗い夜道の外灯に照らされながら、怒りを携えてこちらを睨みつけていた。
どうすれば返答に迷っているうちに横にいたはずの彼は何処かへ消えてしまい、通行人の視線は厳しさを増していく。
耐えかねて、私は咄嗟に女の子を抱きかかえて近くの公園に逃げ込んだのであった。 - 3二次元好きの匿名さん21/10/05(火) 22:44:09
「はぁ……はぁ……」
アルコールが入った身で全力疾走したのはこれが初めての経験であった。痛む頭を思わず抑える。
久々に走ったからか、ほんの短い距離しか走ってないのに汗が溢れて息は切れた。
少し、ショックだ。
下に向いた蛇口から垂れる水を口に流し込み、膝に手をついて地面に向かって一息つく。
「おぉすごい。お姉さん走るの早いねー、レース経験者?」
さっきまで怒り狂っていたはずの少女は、今ではしゃがんで顎に手をあてながらニヤニヤとこちらを見て笑っていた
「あ、貴女、さっきは一体なんのつもり――」
「あの男、パチンコ屋に昼間っから入り浸りのクズだよ」
「……へっ?」
「スーツとか時計とか、いかにも金持ちです、って見せつけるために偽ブランド品をごちゃごちゃ身につけてさ。しっかし、まだあんなのにひっかかるのがいるんだねー」
「ちょっと待って、どういう、事?」
女の子は一瞬真顔になったあと、心底呆れたように大きくため息を吐いた。
「えーっと……一度でもあの男の家、行った事ある?
普段飲みに行く店は? 最初は高級なお店に行ったかもしれないけどさ、最近は精々そこらのレストランとかでしょ?
騙されてるんだよお姉さん。あいつの目的は、ウマ娘と子供作る事。
もしかしちゃって娘がレースで勝ってくれれば人生大勝利っていうギャンブル感覚のクズ男なんだよ」
そう、言われてみれば思い当たる節はあった。というか、そんないや、えーっ!?
「……本当に気づいてなかったんだ」
よもや、よもやだ。本当にそんな人間がいるなんて、自分に寄ってくるなんて思いもしなかった。
だって私は、所詮中央で一度も勝てなくて、レースから逃げ出したウマ娘なのだから。
- 4二次元好きの匿名さん21/10/05(火) 22:44:55
ウマ娘世界は怖いなあ
- 5二次元好きの匿名さん21/10/05(火) 22:46:12
「……君、詳しいんだね」
「まぁねっ。私のパパもあいつと同類だからさ」
いかん、やらかした。
「あーっ! えーっと!」
「はは、いいよぉ気にしなくて。別にお姉さんが知らないだけでそういうウマ娘って珍しくないしさ。私のクラスにもおんなじような子、いるし」
そう言って女の子は立ち上がり、伸びをした。
「じゃ、私はそろそろ帰るけど、お姉さんは?」
「……どうしよう、かな。はは」
終電はもう無い。精一杯強がって笑ってみせてはいるが、本当はすごく怖い。
もしかしたら、自分はあのまま変な男に捕まって骨の髄までしゃぶり尽くされていたかもしれないのだ。
まだ近くにあの男がいる、そう思うだけで体が震えた。
「ねえ、お姉さん」
女の子は私に手を差し出しながら、
「よかったら一緒に来ない? 時間潰せる場所、知ってるよ」
そう言った。
といった感じでなんやかんやあって親交を深めて女の子に才能を見出して女の子をレースの道に導く話とか
そういうのが読みたいんや - 6二次元好きの匿名さん21/10/05(火) 22:49:05
俺バカな百合厨だからよぉ…退廃的世界で傷を舐め合うロリおね物にしか見えねぇぜ
続けてくれ - 7二次元好きの匿名さん21/10/05(火) 22:53:21
ここまで書けばワシの好みにあうSSをあにまん民なら教えてくれるはずじゃ……
自家発電は老骨には辛いんじゃ…… - 8二次元好きの匿名さん21/10/05(火) 23:31:39
ちょっとズレるけど、レースから退いたトレセン学園生徒の受け皿みたいな中高一貫校があるんじゃないかと思ってる
・農業畜産コース(トレセン学園の食材を賄う指定農場へ就職斡旋あり)
・漁業コース(URAが農水省とかかわり深いため、この2つが特に大所帯)
・土木建設コース
・工業コース
・自衛官コース
・警官コース
・進学コース(大学に推薦枠あり)
ただし一定以上の学力がなければ編入できないため、練習ばかりで勉学をおろそかにするとレースを諦めた後の進路に困ることになる
みたいな感じ
これでSS書けないかと思ってるけど、なかなかまとまらない - 9二次元好きの匿名さん21/10/05(火) 23:39:34
ワシはそういうのももっと見たいんじゃ……
ワシの妄想じゃと貧困層ウマ娘はそんなサポート体制の整った学園の学費はとてもじゃないと払えん……
悲しいなあ……助けてお姉さん……
ついでにお姉さんも救われてほしい……
- 10二次元好きの匿名さん21/10/05(火) 23:41:12
俺の想像するウマ娘世界にはこういうウマ娘警官がいて、世間からの信頼も高いイメージなのじゃ
#ウマ娘 騎馬警官イクノ - モルダーのイラスト - pixivイクノは引退後警察官になりそうという妄想www.pixiv.net - 11二次元好きの匿名さん21/10/05(火) 23:44:48
ある程度世間から隔絶された場所で青春を過ごすからなんか世間ずれした子はいて、悪い男にやんわり搾取されてるのはありそう。
- 12二次元好きの匿名さん21/10/05(火) 23:45:09
- 13二次元好きの匿名さん21/10/05(火) 23:53:17
- 14二次元好きの匿名さん21/10/05(火) 23:56:05
そうしてウマ娘に対する思想教育が行き過ぎた結果、ウマ娘に対する檻のような社会がうまれ、それから脱出しようとするウマ娘達の物語が生まれるところまで妄想した
- 15二次元好きの匿名さん21/10/05(火) 23:57:07
- 16二次元好きの匿名さん21/10/05(火) 23:59:11
- 17二次元好きの匿名さん21/10/05(火) 23:59:25
このレスは削除されています
- 18二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 00:06:58
このレスは削除されています
- 19二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 05:57:21
- 20二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 06:24:14
裾上げやほつれ直しなんかの他に人用の服に尻尾穴とか開けてウマ娘用に直したりする小さな仕立て屋のお店やってるウマ娘
親バカなお父さんの跡を継いだのでレジ横には娘はこんなレースで勝ちました!って新聞のきりぬきや写真が飾られている地元に愛される店なんだ…
体動かす仕事も考えたけどウマ娘にこの服どうしても着たかったんだ!ありがとう!って言われるといつもこの道選んで良かったって思うんだ - 21二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 06:48:45
これだけで簡単な短編1本分の価値がありますね……
- 22二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 11:30:44
なぜだれもワシにSSを教えてくれないのか
ワシは辛い、耐えられない
なぜせっかくの休みの午前中から自家発電しなければならないのか
これ以上自家発電を繰り返したら腰が爆発してしまう
せっかく自家発電したし、例の続きの例を投下するから、
はやくワシにSSを教えてあにまん民 - 23二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 11:31:09
他の者に言えば、やはり私は間抜けだ、大間抜けだと呆れられるだろう。
さっきまで男に騙されていたばかりだというのに、今度はもっと怪しい女の子に手を引かれている。
通りから路地裏に入り、ビルの裏口のような場所から屋内に入る。そこから地下に向かうエレベーターに乗り込んで……あれ、もしかしてまたなにか騙された?
エレベーターが止まる。扉が開くと同時に、差し込んできた強い光に一瞬目が眩んだ。
慣れてくると目に飛び込んできた光景に、胸の奥がざわめいた。
「どう? びっくりしたでしょ」
「これって――、ターフ?」
地下とは思えない広大な空間。
天井に吊り下げられた幾つもの大照明が太陽のように地下を照らしている。
そしてそんな中、円形に設置されたコースを駆ける、ウマ娘たち。
間違いない、ここはレース場だ。地下の、それも非公式の。
女の子に促されるままにターフに近寄る。よく見れば本物ではなく、人工の物だった。いや、当たり前か、地下なんだから。
観客はおらず、コースを走るウマ娘たちも和気藹々といった面付き。どうやら私は、地下ウマ娘たちの練習にお邪魔してしまったようであった。 - 24二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 11:31:29
「おや、おかえりマリー」
練習中のウマ娘が一人こちらに気づき、駆け寄ってきた。女の子はマリーと呼ばれ、足元に転がるボトルを手に取り、彼女に投げ渡した。
「ただいま、姐御」
姐御と女の子によばれた彼女は、およそレースに参加する娘とは思えないようなウマ娘に見えた。
まだまだ美しかったが、顔には深くなりそうなシワが刻まれていた。もう年齢的に、レースに参加しても勝てるような肉体ではないはずだ。
「お客さん連れてきちゃったけど、平気?」
「客ぅ?」
そういって彼女はこちらを怪訝そうに見てきて、目が合いそうになってあわてて視線をそらした。
「誰だい」
「昼間っからパチンコ屋に入り浸っているナンパ屋に騙されてたお姉さん」
女の子がそう言った瞬間彼女は爆笑して、無遠慮に距離を詰めてきたかと思うと突然肩をぶっ叩かれた。
「まぁじか!? あんなわかりやすいのに引っかかるヤツがあるかい! ははは!」
いや、もう、今すぐターフに穴掘って埋まりたい。いや、人工芝には穴ほれないし、ここは既に地下なのだけれども。
「朝までここに置いとかせてもらってもいい?」
「あぁ。今日はレースも無いし、客席で寝転がってたとしても誰も文句言わねえはずさ。ま、酔っぱらい共のゲロやらなんやら染み付いてるとは思うけどな」
そう言って、彼女はまた練習に戻っていった。 - 25二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 11:33:59
それから女の子と二人並んでコースの端っこに座って、練習風景を眺めていた。
人工芝は硬い、と聞いた事がある。彼女たちが独特な滑るようなストライドで走っているのも、足を壊さないためだろう。妙に厚底の蹄鉄も、クッション性を高めている物に違いない。
練習内容もスピードというよりもスタミナを重視しているように見える。
体を壊さないように長くレースを続けるための練習、といったところだろうか。
「お姉さん。ずーっと、考えてる事、口から漏れてるよ」
「えへぇっ!? ほあっ、いやぁ……お恥ずかしいところを……」
「今更ぁ?」
また笑われてしまった。
「やっぱり、お姉さんレースやってたんだ?」
やはり幼いころからの経験というものは意図せずとも出てしまうのか。こうして実際に走っているところを目の当たりにしてしまえば、自ずとレースについて考え始めてしまうのは。
「まぁ……、昔ね」
「名前きいてもいい? もしかしたら聞いたことあるかも」
「えぇ? いやだよ。有名じゃなかったし、調べられても恥ずかしいし……」
「だーから、今更」
「えっと、んー……じゃあ……先に貴女の名前を教えて?」
「マリハナ」
「マっ!?」
「ビールの原料にホップってあるでしょ。あれ、毬花(マリハナ)って言うんだってさ」
どうやら彼女の父親の実家がホップ農家出身で、そう名付けられたらしい。誰も止めなかったのだろうか。
「みんなからは『マリー』って呼ばれてるよ。さ、次はお姉さんの番だ」
「私は――」
「――貴女、もしかして『トワイライト・フロウ』? 中央にいた」
近くをたまたま通りかかったグループの一人が、そう言った。
中央その言葉が出た瞬間、刺すような緊張感が急激に地下を満たしていき――尻尾が、逆毛立つのを感じた。
「レースをやっていたとは思ったけど、まさか中央でやってたの!? お姉さん、すごいウマ娘だったんだねぇ!」
隣にいるマリーは感じていないのか、この空気を。無邪気に瞳を輝かせてこちらを見つめている。
続々と集まってくる地下ウマ娘たち。やがて彼女たちの影に囲まれてしまう。
逆光で表情が見えづらいが、笑っていない事だけは確かだった。
汗が頬を伝った。 - 26二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 11:35:04
「着替えたか。じゃあ靴はこれ履きな」
そう言うや否や、地下ウマ娘の一人はこちらに靴を投げつけるとすたすたゲートに入っていった。
どうして……こうなった。
どうして私は、夜中に、地下で草レースなんてする羽目になんてなってるんだろうか。
「悪いね、急なお願いだってのにきいてもらっちゃって」
「え、えへぇ! だ、大丈夫ですよ!」
振り向いて、無理やり笑ってみせる。
だが、姐御と呼ばれた彼女の顔は全く笑っておらず、何の感情も浮かんでいない瞳がこちらをじいっと見下ろしていた。自分の口元が引きつっていくのを感じる。
「わ、私も、久しぶりに走りたいな―って、ちょうど、お、おも、思ってたんですよぉ」
「そうかい。なら良かった」
いや、こんな状況になって断れるわけがないだろ。バーカ!
「二つ忠告しといてやる。
一つ、スパートは最終直線まで我慢しな。コーナーからじゃ足への負担がでかすぎる」
「はぁ」
「二つ、本気を出せ。いいな? 本気を出せ」
「……はぁ」
そう言って、姐御と呼ばれていた彼女はゲートを操作する発バ機の前に立った。 - 27二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 11:35:20
「それでは模擬レースを始める! トワイライト・フロウ、三番ゲートに入んな!」
口が乾く。喉が渇く。み、水、は、さっき飲んだからこれ以上飲むと支障が出る。
ゲートに入る直前、ちらりと他のゲートを見やる。
全員、こちらを睨みつけていた。
あっ、これ私死ぬのでは? レース中の事故に見せかけて殺されてしまうのでは?
「早くしな!」
「はいっ!!」
ゲートに入った。
ゲートに入ったその瞬間、さっきまでの恐怖心、雑念、周囲からの敵意、その他一切合切が消えていった。
脳裏に浮かぶのはコースのレイアウト、ゲートに入る前に見えたウマ娘たちの姿、そして先程まで見ていた練習風景。
距離は1600。直線入ってすぐに急な坂。緩やかにコーナーを下った後、直線。
なるほど。コーナーから本気を出すとクッション性のある靴とはいえ、下りの加速で人工芝を踏んだ衝撃を吸収しきれないのか。
一番の彼女は確か、コーナーを抜けるタイミングでよれる癖がある。
二番の彼女は体が小さく、コースの取り合いに弱い。
四番の彼女は気性が荒く、併走中にわざと体をぶつけているのを何度も見た。
五番の彼女は一番早い。でもハード目の練習をしていたから、体力が残り少ないだろう。
六番の彼女は頭が良さそう。様子をみて、終盤追い上げてくるタイプかな。
なるほど、なるほど、……なるほど。
よし、決めた。 - 28二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 11:36:17
わくわくが止まらなかった。元とはいえ、中央で走っていたウマ娘が走るのを目の前で見れるだなんて思いもしなかったから。
中央のレースを見に行きたい、連れてってなんて言った所でまぁ無駄だった。
かといって勝手に見に行こうとしても、隣町に行く程度の電車賃すら無いのだからレース場までの運賃なんて逆立ちしても出てこない。
――中央のウマ娘は私たちとは次元が違う。
地下の誰かがそう言った。
ゲートに入る直前までのフロウお姉さんの姿を見ている限りじゃとてもそんな強そうなウマ娘には見えなかった。
だがどうだ、ゲートに入ったお姉さんはまったくの別人だった。
さっきまでわいわい騒いでいた地下の姉さん達が急に静かになってしまった。
火にかけられて沸騰した湯が一瞬で凍りついたかのような感覚だった。
いつもは他のウマ娘たちを怒鳴り散らしている姐御も、緊張しているようだった。
そしてゲートが開き――、勝負はすぐに動いた
スタート直後、四番の姉さんがすぐに体を寄せに行った。それをフロウお姉さんはほんの少し出遅れてすぐに外から抜き去っていく。
四番の姉さんは想定外の事で体制を崩し、危うく二番の姉さんと接触しかけた事で二人ともペースを乱し、大きく集団から離される。
これでまず二人脱落。
一番の姉さん、五番の姉さん、フロウお姉さん、六番の姉さんの順でコーナーに入っていく。
六番の姉さんは坂でわざと順位を落としてフロウお姉さんの後ろについた。
地下で一番頭のいい六番の姉さんはそれでも勝てると思ったんだろう。
でも! フロウお姉さんはその上を行っていた。
コーナー途中で五番の姉さんが垂れてきたのに、ギリギリまで後ろで速度を合わせて彼女が垂れてきているのを六番の姉さんに隠した。
そして五番の姉さんが限界を迎えるのを見た瞬間、加速。六番の姉さんにとってみれば目の前のフロウお姉さんが急加速したかと思ったら急減速した五番の姉さんが逆噴射して突っ込んできたように見えた事だろう。
そして最後に残った一番の姉さんがよれた瞬間、勝負は決まった。 - 29二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 11:36:50
抜けた最終直線。
圧倒的強者が、滑るようなストライドで飛び込んできた。
「すごい……」
これが本当のレース!
これが中央のウマ娘なんだ!
気づいたら走り出していた。
もっと近くで見たかった。
目の前を抜けようとするお姉さんについていこうとする足を止められなかった。
近くで見るフロウお姉さんの体はすごかった。
練習してなかったって話なのに、どうしてこんなにも力が溢れて、輝いているんだろう!
「すごい、すごい! すごーい!!」
一瞬、フロウお姉さんと並ぶ。一瞬、目があった。
フロウお姉さんはゴールを駆け抜けていき、圧倒的大差で勝利した。
次に、地下では初めて聞く、爆発的な歓声が湧いた。
地下のウマ娘たちしかいないのに、それには普段の観客がいる時の何倍もの熱がこもっているように感じた。
姉さんたちがフロウお姉さんに駆け寄って行って、その戦いぶりを称える。
別にみんなフロウお姉さんを本気で敵視していたわけじゃない。
中央でのレースの、ほんの断片でもその身で味わってみたかっただけなのだ。
もみくちゃにされるフロウお姉さんは、またレース前までの情けない姿に戻っていた。
「あーあ……もっと見たかったな」
そういえば、さっきのはなんだったのかな。
フロウお姉さんと目があった時、フロウお姉さんの顔が――
何か、怖いものでも見たかのように驚いていたのは。 - 30二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 11:37:43
「あー……あったま痛い……今日が土曜でよかったよ」
レースのあと、無理やり飲みにつきあわされた。
飲めや歌えや、どんちゃん騒ぎ。練習はしてたけど終ぞお披露目する事のなかったうまぴょいまでやらされた。
そんなこんなで気づいたら全員潰れていた。
起こさないようにこっそりとエレベーターに乗り込んで、地下を後にした。
外に出ると既に夜は明けていて、路地を抜けて通りに戻れば今まで通りの日常だった。
「やっ、おはよう。フロウお姉さん」
「ひいっ!? ま、マリー、ちゃん?」
「いいよぉ、マリーで」
「マリー……は、こんな朝からどうしたの」
訊くと、マリーは背負ったランドセルを見せつけるようにくるりと一回転してみせた。
「学校だよ。今日は土曜だから、午前だけね」
そう言って大きく口を開いてあくびをしていた。
「あんなに夜遅くまで起きて、居眠りとかしないの?」
「ははっ、するに決まってんじゃん」
ケラケラと笑ってマリーは歩き出す。向かう方向が駅へ向かう道と同じだったので、ついていく。
「勉強はちゃんとしなきゃだめだよ。トレセンの中等部にだって学力試験はあるんだし……」
「は? 何言ってんの? 私はトレセンなんて行かないよ」 - 31二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 11:37:59
「――えっ?」
その言葉はあまりにも想定外だった。
「な、なんで!?」
「行けるわけないじゃん。受かる受からないは別として、どっからそんな金出んのさ」
「奨学金を申請するとか!」
「日々の練習とかレースにかかる消耗品とか考えたらどう考えてもそれだけじゃ生活できないでしょ。
ていうか、どうしたの? そんなムキになって」
「あ、いや……ごめん、ね?」
「変なフロウお姉さん」
そう言ってマリーは交差点で駅とは違う方向に歩道橋を駆け上がる。
「じゃあね! もう変な男に引っかからないでよね!」
そう言って、彼女は疾風の如く去っていった。
歩道橋を駆け上がる瞬間、私には一瞬彼女の未来が見えたような気がした。
「マリー……、マリハナ」
夜中の一戦、私はスパートで全力を出した。
ブランクがあるとはいえ、そんじょそこらのウマ娘には負けないスピードだったはずだ。
それにマリーは、幼い子供の身で、一瞬とはいえ併走してみせたのだ。
爆発的な加速、キレ、トップスピード。とても尋常のモノではない。
もしこのまま成長すれば――いや、やめよう。
首を振る。言ってたではないか、マリーはトレセンに行かないと。
それに私も、もうレースに関わる気はなかったはずだ。
「……はぁ、帰って寝よ」
大きくため息を吐いて、駅へ向かってとぼとぼ歩き始める。
――小さな体に、強大な力を秘めたウマ娘の夜明けは、酒の臭いがした。
- 32二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 11:40:21
ワシがガバ例を提示したんだからあにまん民もたとえガバでも何かを教えてくれるはずじゃ
頼むぞ皆のもの - 33二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 12:08:54
- 34二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 17:14:38
期待しつつ保守
- 35二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 17:25:20
キタちゃんもダイヤちゃんも競馬場や学校に通ってない時は多分死ぬ程トレーニング積んでたんだよね
トレセン学園に入る前から選別は始まっているんだ…… - 36二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 17:52:43
素晴らしすぎるんだが?
理想のSSはここにある
続けてくれ - 37二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 18:45:42
お前も書くかワシにss教えるんだよぉ!
- 38ワシ21/10/06(水) 23:54:55
夜まで待ったのに、なんで誰もSSを教えてくれないのか
適当に妄想した設定を教えてくれるだけでも死ぬほど嬉しいんじゃが……
仕方ないから例の例の例として続き投下するけど、ワシ、悲しい - 39ワシ21/10/06(水) 23:56:08
「フロウ君、今度の日曜なんだけどさ、一日空いてるかい?」
「はい……はい?」
おかしいと思ったのだ。普段そんなに関わりのない課長が、私をランチに誘ってきて、その上ごちそうするなんて言い出すなんて。
絶対裏があるに違いない、そうは思ったけど今月は色々と入用で金銭的に厳しかった。
そう、仕方がなかったのである。
「いやね、うちの娘が初めてレースに出るんだけど、是非君に娘を見てもらいたいんだ」
「えっと、なぜ、でしょう?」
「君、もともとレースに出てただろう? そんな君の目から見て、うちの娘がトレセンで通用するかどうか確かめてほしいんだよ」
いやぁ……ついに会社でもきたか。
この頼みはきつい。本当にきついのだ。
中央にいた時は何度かそういう話があった。暇な時走る姿を見てほしいとか、軽くでいいからトレーニングをつけて欲しいとか。
本当にそれで走る才能があれば何も問題は無い。気持ちよく送り出すだけだ。
でも、もしそうじゃなかったら? しかも相手は会社の上司の娘なのだ。
もしこれで課長の娘に才能がなかったら、私はなんて答えれば良いのか。
本当に迂闊だった。普段からもっと周りとコミュニケーションをとっておくべきだった。
そうすれば、課長の娘がウマ娘だって前もって知れたかもしれないし、こうしてランチを先んじて奢られる事もなかったはずだ。
「わかりました。今度の日曜、ですね」
「おぉ、引き受けてくれるか! ありがとう、フロウ君!」
今はこうして課長は満面の笑みだが、もしかしたらこれが百八十度逆のものになるかもしれない。そうならない事を、祈るばかりであった。
あぁ、窓から差し込む光が眩しいなあ。 - 40ワシ21/10/06(水) 23:56:43
「……ん?」
何か、さっきからカウンターの裏からこっちを誰かがちらちら覗いているような……。
「あっ」
目が合った。そして、反応してしまった。
「やっぱり……! フロウさんじゃないっすか!」
あのウマ娘、まさか――!
「私のこと覚えてますか!? ほら、四番ゲートにいた――」
「ちょっと待って! はい、ストップ!」
勢いよく何もかも突っ込んでくる彼女を、こちらも手を突き出して制する。
今こいつ何を言おうとした!
課長は何事かと私と彼女の間で視線を右往左往させていて、そんな課長の存在に彼女も気づく。
少し落ち着きを見せて、その場で停止してくれた。
「お知り合いかい?」
「へえっ! その、まぁ、はい」
課長は「ふうん、そうかい」と四番ゲートの彼女を一瞥しただけで、席を立った。
「私は先に社に戻るから、日曜は頼んだよ。詳細は後で教えるから」
そう言って、四番ゲートの彼女を連れてレジに向かい、会計を済ますと店から去っていった。 - 41ワシ21/10/06(水) 23:59:01
もし、以前私が地下レース場なんかに行った事が、しかも草レースとはいえそこで走った事がバレたら――、
一発で人生詰む。問答無用で。
「いやまさかフロウさんが店に来るなんて思いもしなかったっすよ」
突然訪れた災害、四番ゲートの彼女はステップを踏み様な軽やかな足取りで戻ってきて、向かいの席に座った。
「……えっと、昼間はここで働いてるので?」
「はい。そんで夜は地下です」
「大変、では?」
「そりゃ大変ですけどね。家にガキが三人いるし、旦那と地下の収入だけじゃとてもとても」
「そう、なんですねぇ、へぇー」
「えぇ。まぁでも、ここの店主なんですけど、私が他所でレースやってた時の同期でして」
どうやら食生活の面について、彼女はこの店から援助を受けているらしい。
安い割に量が多い事も気になっていたが、この店はどうやら自分で田んぼやら畑やらを持っているらしく、そこから色々都合をつけているとか。
昼間は店を手伝ったり、時間があれば一日農作業の手伝い。
そして夜は地下。
それらすべてに加えて、彼女には子供の世話がある。
もし私がそんな環境に置かれたら、忙しさで死んでしまうかもしれない。
「おい! 何サボってやがる、働け!」
店主と思われるウマ娘の怒号が飛ぶ。
「やべっ。そんじゃフロウさん、また!」
そうして、彼女は仕事に戻っていった。
見送って、茶をすすって、一息つく。
ふと、マリーの顔を思い浮かべてしまう。
まだ幼いのに深夜に街を出歩いていたマリーは、何をしていたのだろうか。
お金が無いという話だったし、もしかしたら、何か仕事でも手伝わされていたのだろうか。
それで、もし。もし、お金があれば、彼女は――。
いやいや、やめよう、意味ない意味ない。
「ごちそうさまでした」
あまり会いたく無い人はいるが、この店は正直捨てるには惜しいほど安くて美味しい。
また来よう。両手を合わせて、そう思った。 - 42ワシ21/10/07(木) 00:01:33
レースを引退してまともな職につけなかった子供が多いウマ娘は食費だけで家計を圧迫しそうじゃのう……
もしかしたらウマ娘用のフードバンクみたいな仕組みもあるかもしれんが、
足りるとは到底思えんし……
四番ゲートの彼女みたいなのはむしろ恵まれているような気がするのう…… - 43二次元好きの匿名さん21/10/07(木) 06:01:12
保守
- 44二次元好きの匿名さん21/10/07(木) 13:56:14
保守?
- 45二次元好きの匿名さん21/10/07(木) 16:38:43
もっと明るい話はないのか……?
- 46ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/07(木) 19:17:32
暗い話も、明るい話も、どっちも読みたいのじゃが……
もしかして誰も知らない可能性が……? - 47ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/07(木) 23:54:00
ガバ文章書き続けて二日目
例だけで一万字突破したんじゃがどういうこと?
例の例の例の例を投下するけど、そろそろワシも他の人の読みたいんじゃが? - 48ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/07(木) 23:57:20
「トワイライトフロウさん! 本日はわざわざお越しいただきありがとうございます!」
「こっ、こちらこそよろしく、お願いします。あと、フロウで、いいですよ」
「はいっ! フロウさん! 私の事もニアとお呼びください!」
課長の娘さん、シトラティタニア――ニアちゃんは小学生とは思えないほどにしっかりした子であった。
今日のレースの舞台となる市営レース場の門前で到着した私を母親と共に出迎え、会場に向かいながら自己紹介と今日のレースについて説明してくれた。
本日行われる市民レースはこの辺りでは歴史ある大会の一つで、他市からもウマ娘が集まる割りと大きな大会だ。
そしてこの市民大会で優秀な成績を収めた者は、一月後に行われる県主催のレースに優先的に出走できるという事になっているそうだ。
年齢に応じていくつかの部に分かれており、ニアちゃんが出るのは小学生の部になる。
小学生の部はダート左回り1400mの平坦。本日は晴れ、バ場状態は良。夏が終わり、暑さは薄れ、初秋の風が気持ち良い絶好のレースびより。
ニアちゃんは母親に似た芦毛を持つ、美しい子だった。
小学生にしては恵まれた身長、体格。
――課長は単に私のお墨付きが欲しかっただけなのか? それとも単なる自慢か。
バ場に入り、スタート前の準備運動で既にシトラティタニアは格の違いを周囲に見せつけていた。 - 49ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/08(金) 00:01:37
「おめでとう。良い走りだったよ」
「はいっ! ありがとうございます!」
二位に五バ身という差をつけてニアちゃんは勝った。
走りきった後も息一つ切らしておらず、スタミナ面はまだまだ余裕がありそうだ。
「これからのトレーニング、手を抜かず頑張って。そうすれば問題ないと思うよ」
「はいっ!」
そう言ってあげると嬉しそうに遠くで見ていた母親に駆け寄っていき、
嬉しそうにぴょんぴょんと飛び跳ねて報告をしていた。
実に初々しくて――、見ていて苦しくなってくる。
確かに彼女は有望だが、はっきり言って彼女ほどの才能は珍しいものでは無い。
今後彼女がどういう道を歩むのかはわからない。
だが、今のみたいな無邪気な笑顔を浮かべていられるほど、
順風満帆なレース生活を送れないだろう事は想像できた。
――そう、本番のレースで勝つには才能があることや、頭が良いだけじゃだめなんだ。
他をねじ伏せられるだけの、圧倒的な武器が必要なんだ。
久しぶりに嗅いだダートのにおいが、苦々しい記憶を私に思い出させた。 - 50ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/08(金) 00:03:24
『――それでは、次のレースです。1番、マリハナ。2番……』
「へっ?」
マリ、ハナ?
「マリハナ!?」
ゲートから少し遠いため顔までははっきりと見えないが、ゲートの上の隙間から見える飛び跳ねた黒髪はたしかに彼女のものだった。
「フロウさん。マリハナをご存知なんですか?」
気づけば横にニアちゃんが戻ってきていて、私と同じように目をこらしてゲートの方を見つめていた。
「ちょっと縁があって。マリー……ハナの事を知ってるの?」
「えぇ、まあ。最近噂になっていたのを聞いた程度ですが」
「噂」
「レースに出た事がないのに、この辺りの小学生で最強だと言われてるウマ娘です」
「レースに出たことが無い、のに?」
「それがどういった理由からかは知りません。まぁ、噂話を聞いただけなので」
「……そっか」
あの時、地下で見せた爆発的な超加速と、今の私のスパートと同等のスピード。
最高速の維持はできなさそうだが、それでも――。 - 51ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/08(金) 00:05:09
――結果、マリーはこのレースに勝った。
所詮は小学生のレース。見ていたのは保護者関係者くらいだろうか?
終わった後は軽い拍手が起きたくらいで流れるように次のレースの準備に移っていった。
だがマリーに注目してさえいれば、
このレースがどれだけ異常極まりない結末を迎えていたかを誰もが理解する事ができた。
「なん、ですか、あれ」
ニアちゃんは驚愕に目を見開いて、退場していくマリーから視線を離せずにいた。
私はマリーを知っていた。だからまだ、こうして落ち着きを装える。
ゴールまで200m。団子状態の集団。
マリーは集団最後尾にいて、集団の前に出るコースなどは存在しなかった。
マリーは、そこから大外に出ると一瞬で全員を抜き去り、ゴールを決めた。
レース展開やコース取りなど関係なく、己の武器一つで、一切合切をねじ伏せる。
あれこそ――、本物の、レースの才能と呼ぶに相応しい物なのだろう。 - 52ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/08(金) 00:10:55
「や、やあ。お疲れ様、マリー。見てたよ」
レース後、一人、水道で顔を洗うマリーを見つけて後ろから声をかけた。
振り向いたマリーは一瞬ぽかんとこちらを見た後、慌てて服の両袖で顔の水分を拭った。
「フ、フロウお姉さん? 見てたって、もしかして――」
「うん、貴女のレース」
マリーは顔を真っ赤にして両手で顔を抑えて、蹲ってしまった。
「来るなら、来るって言ってくださいよぉ!」
「いや、私貴女の連絡先も、レースに出る事も知らなかったし」
「そんなこと知らない! 知らないっ!」
うんうんと唸り続けるマリー。
どうしたものかと悩んでいると、やがてマリーはぽつりと言った。
「……本当は、もっと前の、良い位置につこうと思ってたんだよ」 - 53ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/08(金) 00:12:20
「うん」
「スタートで押されちゃって、そのままズルズル位置を落としちゃって……全く良いレースじゃあ無かったよねぇ……」
マリーは苦笑した。
「……そうね」
マリーの横に並んで、しゃがんで、膝に肘をついて手に顎を乗せる。
「はっきり言っちゃえば、酷すぎて、ただただバカにしたくなるかな」
「うっ……」
「でもそんなレースで貴女は勝った。今はそれでいいんじゃない?」
そう言うと、マリーは顔を覆った手の指の隙間を広げて、こちらを見上げてきた。
「……いいの?」
「初めてのレースならあんなもんでしょ。勝っただけ上出来」
マリーの頭に手を乗せる。
うわっ、湿ってる。もしかして、頭から水ぶっかけて自然乾燥してるの?
仕方ないのでポケットからハンカチを取り出し、それで頭のてっぺんを拭ってやる。
「痛い」
「ご、ごめん」
「んぅ……いいよ、許す」
こうして見れば、ころころ感情が移り変わる、素直でかわいいウマ娘だ。
ういやつういやつと、調子にのって頭をこすり続けたら流石に「もういい!」と手ではらわれてしまった。 - 54ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/08(金) 00:13:09
「そういえば、なんで私の初めてのレースだって知ってたの?」
「え? あぁ、聞いたから」
「誰に」
「今日のレースを見てほしいって頼まれた子に」
「ふーん。その子、名前は?」
「シトラティタニアちゃん……、なんで?」
「……いや、べぇっつにぃ」
え? なんでどんどん不機嫌に? 私、何か変な事でも言ってるかな……。
「まあ、いいや。それじゃ、私そろそろいくね? 来月の県のレースも頑張って」
立ち上がり、腰を伸ばす。最近座る事が増えたからとにかく腰がつらい。
「来月のレースもそうだけどさ、色んなレースに出て、実績を積み重ねていったら……もしかしたらトレセンからスカウトされたりして、特待生になれるかもね」
「特待、生?」
「学費も寮費も食費も、消耗品代だって、全部学園が払ってくれるって事」
「全部……」
そう言ったマリーは俯いて黙り込んで、ぱっと顔を上げた。
「フロウお姉さんは、私がこの後もずっと、レースに勝てると思う?」
その真剣な瞳に、一瞬息をのんで――、答えた。
「勝てる」
そう言うと、マリーは私の言葉を噛みしめるように反復して、笑った。
しかしその一月後の、県主催レース当日。
マリーはその姿を見せなかった。 - 55ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/08(金) 00:20:36
早くワシがこんな例なんて書かなくてもいいように誰かSSの存在教えてくれたり、
設定投下とかしてくれないかのう…… - 56二次元好きの匿名さん21/10/08(金) 00:33:04
- 57二次元好きの匿名さん21/10/08(金) 00:49:55
昔人間をウマ娘がゆえに傷つけてしまって(不本意で、事故で)色々拗らせたウマ娘が、レースに集中できなくなってトレセン学園を辞めざるを得なくなって普通の学校に通うことになって、「人間と関わるとろくな事がない」(本心は傷つけたくないだけで必死に取り繕ってる)とできるだけ人と関わらずに学校生活を送ろうとするけど、陽キャの優しい子(もちろん普通の学校なので人間)がガンガン絡んで来て最初は拒絶したけど少しずつ絆されていくお話とかどう?
- 58ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/08(金) 06:50:57
- 59二次元好きの匿名さん21/10/08(金) 12:59:35
保守
- 60ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/08(金) 21:59:46
ウマ娘の市民レースでもウィニングライブみたいなのはあるのかのう
小学生のウィニングライブなんて見たら微笑ましくてほっぺが爆発するかもしれんのう……
盗撮被害が深刻化してそうな世界じゃな - 61二次元好きの匿名さん21/10/09(土) 01:43:36
トワイライトフロウの話普通に読みたいから続きはよ
俺も書いたけど会話文に勝手に解釈違い起こして独白だけになっちまったわよ - 62ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/09(土) 05:43:54
- 63二次元好きの匿名さん21/10/09(土) 08:48:23
- 64二次元好きの匿名さん21/10/09(土) 08:57:51
- 65二次元好きの匿名さん21/10/09(土) 13:46:31
市場でバイトしてる娘がマグロまるごと担いで走ってるところをばんバレースのトレーナーにスカウトされたりとか妄想ネタはあるけど文才は無い…
- 66二次元好きの匿名さん21/10/09(土) 20:47:17
全然勝てないって嘆くモブウマ娘
しかし1着では無いだけで安定して入着はしているので周りのガチで勝てない娘達からは「何あいつ」的な目で見られてる
みたいな
しかし名有り連中みたいな心の強さとかは無いので周りの声とかもイマイチ届かないので態度を改められないんだ
的なのは妄想してた - 67ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/09(土) 20:55:10
ワシだって書いた事無いSS頑張って書いてるんだから、頑張ってばんバ娘書いて?
それはそうと、帯広はいい所じゃ
ばんえい競馬があるし、飯も美味い。特に焼き肉が安くて美味い。
六花亭の本店もある。二回の喫茶店は綺麗でいい所じゃ。
北海道で1,2を争うほど有名なサウナもあるし、キャンプ場も町の中心から割と近い
久々に行きたいけど、遠すぎるのう……
- 68ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/09(土) 23:39:29
ぼちぼち妄想する人が増えてきたのう
ワシの例なんか保守程度に考えてくれていいからもっと妄想してほしいんじゃ
というわけで保守で例の例の例の例の例でも出すかの
一体あと何回例を連ねればよいのか、ワシにも分からん - 69ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/09(土) 23:42:23
タバコと酒の臭いが充満する空間というのは、どうしてか心が落ち着く。人によっては耐え難い悪臭らしいが、私にとっちゃ幼いころから慣れ親しんだ日常の香りだ。
女将さんの店は今日の夜も満員御礼。ひっきりなしに注文が飛び交うが、そんな中でも女将さんは出前用の料理まで作るのだ。もしかしたら手が四本あるかもしれない。もし女将さんが人じゃなかったら困るので、料理中はカウンターの中を見ない事にしている。
使い捨ての容器にしっかり詰め込まれたご飯、人参多めの肉野菜炒め。それが三十ずつ。女将さんは保温リュックに手際よく、隙間ができないように詰め込んでいく。
「おいおい、とんでもねえ量じゃねえか! こんなに子供に持たせて大丈夫か?」
お客さんの一人が女将さんに問いかける。
「あぁ!? 大丈夫だよ! マリーにゃこれの倍持たせた事だってあるよ! なぁ!?」
そうねぇ。重すぎて信号で止まりきれずに飛び出して車に轢かれかけたっけ。
「これってあれだろ? 今流行ってる……あれだ、ウーマ―イーツってやつ」
「もう酔ってんのかい? こんな田舎でそんな事やってるヤツがいるわけないだろ! マリーはうちの出前担当だよ……マリー、いつまで食ってんだ!」
ごはんをかきこみ、味噌汁で流し込む。私には地面に足がつかないほど高い椅子から飛び降りて、椅子はちゃんとカウンターに戻す。
「よい、しょっ」
弁当入りリュックを背負い上げれば、まあまあな重さだった。が、走る分には問題ない。
「はは、後ろから見るとリュックが勝手に動いてるみてぇだ」
「がんばってな! 気をつけていけよ!」
「給料でてんのか? もし出てなかったらおれ達にチクれよ!」
「給料も、まかないも出してるよ!」
陽気なお客さん達と女将さんの陽気な掛け合いを横目に、店を出ようとする。
「あぁ、そうだよマリー! あんた昨日、レースで勝ったんだってね! お祝いで、今日から給料アップだ!」
「本当!?」
「次のレースもがんばんな!」
他のお客さん達もいっぱいお祝いしてくれた。そして沢山のビールを注文していた。
――乾杯、乾杯。おめでとうマリー。マリハナの勝利に乾杯。
私もみんなに沢山ありがとうを返して、店をあとにした。 - 70ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/09(土) 23:44:03
さて、地下の姉さん達が出走前に食べる大切な食事だ。温かいうちに届けてあげたい。
人通りが多い所は避けて、裏道から大通りへ。徐々にスピードを乗せて、ウマ娘専用道路に出たら一気に加速。
なるべくリュックを揺らさないように、身体が左右に傾かないように重心を意識しながら走る。昔は横を走る他の人にぶつかってしまった事もあったが、今はそんな事もなくなった。
道行く緩やかなスピードで走るウマ娘達の隙間を縫うように走る。だがウマ娘専用道路は三人が横に並べる程度の道だ。当然、普通には追い越せないタイミングがある。
そういう時は――本当はいけない事だが車道にはみ出て追い越す。
「貴女、危ないじゃない!」
「ごめんなさいねぇ!」
当然注意されるが、適当に謝って走り去る。
そうして、順調に進んでいても必ず信号が目の前に姿をあらわす。
信号に近づいたら必ず減速を開始する。問題がなければまた加速し、赤に変わるなら停止。そして青に変わると同時に全力でトップスピードに戻す。
あとは目的地までひたすらこれの繰り返し。
こんな事を出前のたびにやっていれば、嫌でもストップ・アンドゴーとは友達になってしまった。 - 71ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/09(土) 23:49:14
地下レース場の入り口には、入場開始前だというのに既に人だかりがあった。
年齢は様々だが、基本的に男しかいない。
まぁ地下レースは『男性向け』のレースなのだから、そういう物だ。
「ほらそこ、押さない! 列を乱すな! オラァそこ、喧嘩すんな!」
「はいはーい。お疲れ様ぁ」
警備員の兄さんの横を抜けて、関係者用のエレベーターで地下におりる。
エレベーターの扉が開くと、一気に大喧騒が広がる。狭い通路を動き回るスタッフたち。
キレた怒声が飛び交い、養生テープが空を舞い、機材が右へ左へ動きまわる。
レース前になると普段は静かな地下もこの通りだ。
「通るよー、はい通るよー」
大人達の中で埋もれないよう、声を出しながら手を上に精一杯あげて前に進む。
そうすれば、皆なんとか避けてくれる。
進んだ先、バ場に繋がる開けたスペースではレースを前にした姉さん達が思い思いの方法でその時を待っていた。
本バ場入場まであと二時間といったところだろうか?
まだ和やかなムードが流れているが、これが直前ともなれば緊張感でとても近づけなくなる。
以前食事の配達が遅れた時は本当に酷い目にあった。
本当にね。もうあんな怖い目にあうのは御免だねぇ……。
「姐さん。お待たせ」
スペースの中程で他のスタッフと打ち合わせをしている姐さんに声をかける。
「ご苦労さんマリー。そこに並べていってくれ」
姐さんが指差した机の上に、リュックから弁当を取り出して並べていく。
あとは各自でご自由にどうぞ、といった感じだ。
あとは事務室で代金を頂戴して、店に帰るだけ――。
「――帰る前にトレーナー室に寄りな。トレーナーが、話があるってさ」
「おじさんが?」
レース前にどうしたんだろうか? 珍しい事もあるものだ。
- 72ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/09(土) 23:55:52
ウマ娘という機動力があるのだから、出前をやってる店は多そうじゃのう……
ウマ娘の道路上での扱いは軽車両と同じあつかいかの
一応当スレのガバ例は道路交通法違反を推奨してるわけではない
安心安全運転を皆心がけて欲しいぞ
あと、地下レースの内容に関しては皆の想像に任せるんじゃ - 73二次元好きの匿名さん21/10/10(日) 04:08:48
保守
- 74二次元好きの匿名さん21/10/10(日) 11:46:11
- 75二次元好きの匿名さん21/10/10(日) 19:43:41
食事回りもそうだが、馬と言う生物によるインフラがない状態なのにこちら側の日本のような環境にあるって事は
車輪自体はウマ娘に引いてもらう古代のチャリオッツとかはあっただろうから自動車等はあるけど
恐らくは発展の代償みたいな感じで人類自体の数が少ない感じなのかしらね - 76ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/11(月) 00:21:14
- 77二次元好きの匿名さん21/10/11(月) 03:26:25
アニメで見られるような食事が普通にできる環境的に人類自体の数がこちらの地球より少な目で
男女比率だけで言うなら1:1.5で女子の出生率の方が少しだけ高いんじゃないかな
で、五人に一人がウマ娘で他の業種に就いてるケースが多くレースに出れるタイプは1%居るかいないかぐらい
……やめよう。マジでやめないと世界ごとに判断基準を理解してないのに無理にこちらの感覚で貶める事になってしまう - 78二次元好きの匿名さん21/10/11(月) 11:53:55
保守
- 79二次元好きの匿名さん21/10/11(月) 16:50:28
地下レースのシステムはこちらの闇レースのイメージとは裏腹に
めちゃくちゃ洗練されていて、理性的というか、ぶっちゃけこちらの競馬システムとか
(ギャンブルで破滅する感じではなく、中毒になるポイントがこちらの人類と違ってる感じ) - 80ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/11(月) 22:56:24
- 81二次元好きの匿名さん21/10/11(月) 23:23:57
そっちかー
ウマ娘世界の通常人類種もウマ娘に対してある程度都合よい生き物として、ウマ娘の願望を優先しやすい性質を本能に据えてるとか思い込んでたわ
……ある意味願望を叶えてるかな?
アレな隠語としてサクラウマとか、ありそうでアカンな
- 82二次元好きの匿名さん21/10/12(火) 03:00:51
保守
- 83二次元好きの匿名さん21/10/12(火) 11:33:34
保守
- 84二次元好きの匿名さん21/10/12(火) 17:33:08
このスレが落ちてしまう...
- 85二次元好きの匿名さん21/10/12(火) 20:02:36
センパイはウマ娘だった。レースで走る方じゃなく、軍バと言われる
古代においてはチャリオッツと呼ばれる戦車を引き背後を人間に任せながら戦争での突破力をになったウマ娘の方。
戦争の近代化により大火力を生身で運用すること自体は容易でも、直線での機動力を重視されなくなったので
軍バと呼ばれる彼女達は自然と都市部の警察に所属するようになっていった。
レースバは異臭や騒音に対しての耐性が若干低いが、軍バに求められるのは胆力というか鈍感さである。
プロポーズをここで仕掛けたいが、鈍感力を発揮されない事を祈りたいものだ―――― - 86ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/12(火) 23:55:28
君らは早くSSを書くか社会について妄想する作業に戻りなさい
ここはワシがガバ例の例の例の例の例の例で保守するから…… - 87ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/12(火) 23:58:35
何度も地下レース場を訪れた事があっても、トレーナー室に入るのは初めてだった。
数回ノックすると「どうぞ」と入室の許可がでたので中に入る。
四方を壁に囲まれた、物置のように薄暗く狭い部屋だった。
左の壁一面を埋め尽くすモニター類にはレース場内の様々な場所が映し出されていた。
右の壁一面には、地下に所属するお姉さん達の体調データや付箋まみれのプリントなどが隙間なくピン留めされていた。
そして奥には仕事用の机と壁にかけられたホワイトボード。
日付が沢山書かれているからスケジュール表だろうか。おじさんは、そのホワイトボードに何かを書き込んでいる途中であった。
ママとパパが死んだあと、私の引き取り手に名乗り出てくれたのはこのおじさんだけだった。
トレーナーといっても、地下のトレーナーっていうのは給料は安い上に仕事も深夜まであって、帰宅はいつも私が寝ている時。
本当に、よく私なんかを引き取ってくれたなと思う。
一応は生活の面倒を見てくれてるし、優しい人なんだとは思う。
けど、機械みたいで、変な人。 - 88ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/13(水) 00:02:30
おじさんはかけていたメガネを外し、目頭を指でほぐしながら歩み寄ってきた。
「市の、レースに出たそうだな。勝ったのか?」
「勝った、よ」
「そうか。おめでとう」
言葉では褒めている。でも、そこからは温かさどころか突き放すような冷たさを感じてしまう。
「そこで勝ったという事は、君は、県のレースへの優先出走権を得たと」
「うん」
「申込みは」
「その場でしたけど」
「参加費の入金は」
「それは……」
そう、財布に入っていたお金は市のレースに参加するために全部使ってしまった。
県のレースへの出場権を獲得はしたが、まだ出場が確定したわけではない事を私はすっかり忘れてしまっていた。
どうしようか考えて――
「私の貯金を、使わせてくれない、でしょうか」
そう言って、頭を下げた。
女将さんの店で稼いだ私の給料は全部おじさんに渡す事になっている。
基本は私の日々の生活でかかる事に使うためで、余ったお金は必要になった時のために貯金してもらっていた。
それを、今こそ使う時だと思った。 - 89ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/13(水) 00:04:42
パソコンの低く重い動作音だけが不気味に響く
おじさんは口を閉ざしたまま、いくらか時間が過ぎた。
沈黙に耐えかねて、少し頭をあげて、視線を上に向ける。
「ひっ」
おじさんは無表情で、目の前に立って、ただじいっと、私を見下ろしていた。
ただそれだけなのに、背筋が凍る程に怖かった。
「マリハナ、君がするべき事はなんだと思う」
「なん……何、って……」
「今、君がやるべき事は頭を下げる事じゃなくて、必要性の有無を私に考えさせるだけの材料の提供だ」
そう言っておじさんは私の両肩に手を乗せる。
「さぁ、説明してくれ。
レースに出るために、
せっかく貯めたお金を使わなければならない理由を」 - 90ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/13(水) 00:07:53
その手には、力がこもっていた。
肩が痛い、
怒っている。声音はいつもと一緒。でもおじさんは、間違いなく怒っている。
でも、なんで、ここまで怒っているのか私にはわからない。
「……わ、私はっ、レースに、出、でっ」
「レースに出てどうする?」
「れ、レースで勝って! 勝ち続けて、トレセンに、特待生で、入りたい、です!」
そこまで言うと、呆れたように、おじさんは大きくため息を吐いた。
「やけに自己評価が高いな。どうして次も勝てると思うんだ」
「それは……」
「それは?」
「勝てる、って……」
「言われたのか。誰に」
「……昔、中央でレースをやっていた人に」
おじさんは顎に手をあてて少し考えるそぶりを見せる。
「もしかしてそれは、以前、私がいないときに地下に来て、勝手にレースをやったウマ娘の事か?
トワイライトフロウと言ったか」
「そ、そうだよ! 中央でレースをやってたお姉さんが、私のレースを見てくれてて、私なら次も勝てるって!
特待生になれるって、言ってくれたんだ!」
「大して知りもしないウマ娘の言葉を、どうしてそこまで信じられる」
そしておじさんは机に置いてあったプリントを手にとり、私に見せつけてきた。
「見ろ。君が勝ったというレースの結果だ。タイムは平均タイムを超えてない。
君は、たまたま低速で動いたレースで、たまたま勝ちを拾っただけだ。
運が良かっただけの君が、次も勝てるという保証がどこにある?」
そんな、そんなの――。
言い返せずにいると、おじさんは私の肩から手を離して、背中を向ける。
「マリハナ、べつにレースに出るなとは言わない。だけど、今の君の話を聞く限りでは――レースのために貯金を切り 崩す事は許可できない」
そう言っておじさんは、私にトレーナー室から退室するよう促した。 - 91ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/13(水) 00:09:01
参加費、保険料、交通費と、後は多少の雑費。
大体一万と数千円、それがレースまでの短い期間で私が稼がないといけない金額だった。
女将さんの店で稼いだ給料はおじさんに渡す事になってる。
けど、今回昇給する分の金額を今月だけは私に渡すようにお願いした。
でもそんな昇給分だけで必要分お金を稼ぐためには、お店に出る時間を増やさなければならない。
でもあんなレースをしたからにはトレーニングの時間を増やしていかなきゃいけないし、学校はサボれない。
じゃあどうやって時間を絞り出すのか、といったら眠る時間を削るしか無かった。 - 92ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/13(水) 00:11:07
トレーニングは日の出と共に始める。
ウマ娘が全力で走れるところは家の近くには学校の校庭くらいしかない。
もちろん、ナイター設備なんてないからこの時間でとにかく走り込む。
授業中にはトレーニングの計画。図書館で借りてきた本を読み込んで、次に何をすれば良いのかをひたすら考える。時々先生に見つかってしまうけど、軽く注意する程度で見逃してくれるのはありがたかった。
放課後にまたトレーニング。ここでは走る事よりも筋トレを重視した。
それが終わればすぐ女将さんのお店へ。日付が変わるまで働いて……寝たと思ったらすぐ朝になっている。
そんな生活を続けた。
トレーニングは、すればするだけ成長を感じた。
トレーニングに付き合ってくれる友達もできたし、とても楽しかった。
大変だけど、充実していた。
何も問題ないと思えた。
でもお金は――、全然増えていなかった。
それに気づいた時点で、これまでの順風満帆な日々が錯覚であった事に気づいた
時間が進めば進むだけ。同じ日を繰り返すだけ。
一日が終わって、布団をかぶると、焦りと、恐怖がのしかかってきた。
押しつぶされてしまいそうで、気持ち悪くて、トイレに駆け込んで吐く事もあった。
もがいても、もがこうとしただけで、何も変えられず、何も変わらなかった。 - 93ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/13(水) 00:12:03
『えっ? 明日からもう一緒に走らなくていいって、なんで……?
マリーちゃん、県のレースに出るんでしょ? 追い切りだって――』
「あぁ……うん、もう大丈夫だから。今までありがとうね」
そう言って、電話を切った。
学校で自分からトレーニング相手に名乗り出てくれた良い子だった。
あの子が毎朝校庭でのトレーニングに付き合ってくれたおかげで、他のウマ娘と一緒に走るのも多少は上手くなれたと思う。
でも、もうこれで終わり。
次に、図書館の返却ポストに、ランドセルから本を取り出しては差し込んでいく。
レース理論、
走法理論、
過去のレースの記録、
調整理論に筋トレ法。
――全部返し終わったら、ランドセルが随分と軽くなってしまった。
何も入ってないのだから、当たり前か。 - 94ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/13(水) 00:14:01
あの時、フロウお姉さんの走りを見た後から、胸の奥がざわついて止まらなかった。
元とはいえ、昔は中央で走っていたウマ娘が目の前で見せてくれた、一流の走りの断片。
たったそれだけでも、私を狂わせるに十分だった。
レースを見る事も、走る事も好き。でも、自分でレースに参加しようと思った事は無かった。
レースを始めても、夢を見ても、お金が無いならいつか諦めるしかないって分かっていたから。
なのに、座ってる時も、寝てる時でも、足が勝手に動き出してしまう。
フロウお姉さんみたいに走ってみたい。すごい人達と、一緒に走ってみたい。
――あの時地下で吹き荒れた、迸る熱の中に、私も飛び込んでみたい。
気づけば市のレースにエントリーしていた。
初めてのレースで勝って、もしかしたらやれるかも、って時に、フロウお姉さんが現れて――、
私なら勝てるって言ってくれたんだ。
そんなの……普通こうなるでしょ?
トワイライトフロウは、私にとってはスーパースターなんだから。
だから……まぁ、仕方のない話だ。
「厳しいなぁ……」
勝手に浮かれて、勝手に夢を見て、勝手に傷ついた。
これは、それだけの話。 - 95ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/13(水) 00:23:01
- 96>>85続き◆FAHJFZjzvCK421/10/13(水) 00:52:32
センパイと出会ったのは大学で諸々あって所属していたサークルと言う名の邪教団を半年で脱退した直後の事であった。
彼らはもう二度とそういう活動はできないのでどうでもいいが、被害に遭った子達を放置するわけにもゆかず
手伝ってくれたサッカー373とあからさまな偽名の男が言うように素直に警察を呼ぶ方がマシと騎バ隊(そちらの世界で言う所のウマ娘で構成されたSWAT)
への直通回線へコールし、1時間ほど待った後最初に呼び掛けてくれたウマ娘がセンパイだった。
事情聴取でウマソウルだの向こう側だの自分でも正気を疑う話をながらも押収した資料で裏が取れたらしく
早々に解放された次の日に非番になったらしいセンパイとスイーツバイキングの店(ウマ娘対応!)で思ってもない再会を果たし、
そこで大学のOBである事を知って驚愕した。
(ウマ娘はほとんどがそうなのだが)どう見ても自分より一つ二つ年下にしか見えず、背も自分よりだいぶ小さい140cmギリギリにしか見えなかったのだ。
それから二度三度と行く先々で出会うようになり居酒屋で一緒に飲んで初恋は幼稚園の先生だった長身ガチムチなばんえいバだったとか
軍バは低身長が多いとかばんえいバは体格の割にあまり食べないから心配だったとかそういう話をダラダラと2年程しつつ、
レースバではないトレーナー課程、広く浅い基礎知識からどのジャンルのトレーナーになるかを選択する時期になろうとしていた。
警察ウマ娘は地域課のウマ娘(いろんなタイプがいる)かケルベロスみたいな重装甲アーマーで突撃するばんえいバのチームとBREAK-AGEの1型九郎みたいに
対物ライフルを腕力で強引にねじ伏せながら機動狙撃を行う軍バチームみたいないまげかしら
- 97二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 01:52:46
保守
- 98二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 07:32:32
- 99二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 14:35:44
- 100◆FAHJFZjzvCK421/10/13(水) 22:53:32
騎バ隊は10年程前は年に2回も出動すれば異常事態と呼ばれるほどだったが、この3年程は
謎の四足獣、奇蹄目の生物(奴らはこれこそ真のウマだとほざいてる)をあがめるカルト団体が突如勢力を増大、
先鋭化してからは一カ月に一回は日本のどこかで騎バ隊が出動する羽目になっている。
かつては合金と特殊プラスチック、強化ゴムを用いたウマニウム社製シールドと防弾・防爆性能に特化しすぎて
ノーマルこと通常人類では装備するという選択肢すら存在しない総重量80kgのばんえいバ用ヘビーアーマー、
『ブケファロスMk7』を纏ったばんえいバ部隊はノーマルでは出し切れない時速20kmの超スピードで盾を構えながら突撃するだけで
テロ部隊や肝心な時に足を引っ張ってしまうマスメディアの視線を釘付けにし、その隙間を縫うように軍バチームがばんえいバチームを殲滅せしめんとする
足場破壊や毒ガス等凶悪なトラップや人質への危害を封じ込めていた。
無関係な場所への騎バ隊通報の連発やはずれの場所にすら凶悪なトラップを仕掛けるカルト教団、
神馬(この四つの点が付いたウマの字が本来のウマの字だと奴らは言う)回帰教の手口は他にもあるが余り思い出したくもない。
悪魔祓いと称して薬でマヒさせたウマ娘の耳を切ってノーマルに食わせようとするだけならまだマシと言うだけで察して欲しい。
奴らはウマ娘は悪魔の産み出した憐れな生き物として浄化、そして本来のケモノとして支配下等に置きたいと常に願っているのだ。 - 101◆FAHJFZjzvCK421/10/13(水) 22:56:02
ウワーッ!?アラフィフッアラフィフナンデ!?
違う!書きたいのはここじゃない!!!!軍バやばんえいバ達が訓練時間が終わった後訓練施設のそばにある
市営牧場の開墾手伝いやらバーベキューしたり芋煮会したりするのが書きたかったんだ……!
そこから各区のフードバンクやら本格化前ウマ娘の講習する話がががが
- 102二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 23:03:03
このレスは削除されています
- 103二次元好きの匿名さん21/10/14(木) 00:54:11
保守
- 104二次元好きの匿名さん21/10/14(木) 03:31:07
保守
- 105二次元好きの匿名さん21/10/14(木) 10:25:37
保守
- 106二次元好きの匿名さん21/10/14(木) 16:41:02
保守
- 107二次元好きの匿名さん21/10/14(木) 16:56:14
- 108二次元好きの匿名さん21/10/14(木) 16:57:41
そういうの待ってたよ
- 109二次元好きの匿名さん21/10/14(木) 20:25:44
- 110二次元好きの匿名さん21/10/14(木) 23:32:13
やったぜ!
- 111今日別のSSも上げた10721/10/14(木) 23:39:15
- 112二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 02:32:41
同じ役職のキャラが複数出る時はやっぱりAさんBさん以外の呼び方せんと混乱するわね
- 113二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 06:12:38
格闘家のウマ娘は存在するらしいけど、打撃中心で関節技や投げ技は嫌われてるんだろうなぁ
- 114二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 12:07:18
保守
- 115二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 15:28:46
良くも悪くも世界観がフワフワしてるからな。独自の解釈でどうとでもなりそう
- 116二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 19:59:58
- 117二次元好きの匿名さん21/10/16(土) 00:19:19
- 118二次元好きの匿名さん21/10/16(土) 02:37:38
アステカセメタリーをフェイバリットにするのは禁じ手ですよね
- 119二次元好きの匿名さん21/10/16(土) 11:51:02
保守
- 120二次元好きの匿名さん21/10/16(土) 12:46:44
保守
- 121二次元好きの匿名さん21/10/16(土) 21:24:42
こちらの地球の人口はウマ娘含めて40億に満たず、林業漁業、農業を含めた一次産業人口は極めて高い
主として建築業に勤めることの多いばんえいバのお姉さんたちは平均2m30cmと言う長身から繰り出すパワーと
スタミナによって重機が入りづらい場所での作業をこなすものの、ウマ娘だけでは建築は進まない
人類(一般ヒトミミ)は建築物に高さを求め、ウマ娘は建築物に広さを求めるのだ
広くなり過ぎず高くなり過ぎずと言ったバランスはどこでも変わらない。
ウマ娘にパワーとか求める事は求めるけど肉体構造の問題から人力フォークリフトとかは言えないんだろうな
どんな現場にも最低三人はウマ娘がいて欲しい感じにはなってそうだけど - 122二次元好きの匿名さん21/10/16(土) 23:31:04
ばんえいバのお姉さんも軍バのお姉さんもおっぱいが大きいので
大きなサイズの既製品は1m20cmくらいのも作ってそう - 123ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/16(土) 23:31:32
- 124二次元好きの匿名さん21/10/16(土) 23:43:03
- 125二次元好きの匿名さん21/10/17(日) 01:25:22
ウマ娘のお巡りさんは男の子のあこがれの職業だゾ
特に軍バのお巡りさんは小さいカラダなのにムチムチしてて、小学生の男子が危ない事をしようとすると
目線を合わせていい匂いをさせながら叱ってくるので性癖がズタズタになるゾ
この間、川で溺れかけてばんえいバのお巡りさんに救出された中学生が抱き起された時の匂いで
パンツを汚す羽目になっちゃったぞ(なお、お巡りさんたちはスルーしてくれた模様) - 126二次元好きの匿名さん21/10/17(日) 11:24:18
- 127二次元好きの匿名さん21/10/17(日) 12:13:36
- 128二次元好きの匿名さん21/10/17(日) 21:12:29
ウマ娘犯罪は軽犯罪あるいは咄嗟の衝動的犯行が比較的多い
うっかりレストランや食堂のキャパシティオーバーするほどに食いつぶすのは犯罪ではないのだが
こちらのドラマやアニメ、創作では一シーズン(18話)に迂闊な飲食店経営者に注意喚起を促すために
一回は『必ず』シチュエーションが挟み込まれる。
ガッツリ食べたいと思っても一週間は前に予約をしようと言うテロップもまた。
どのような地域に生まれ育ったウマ娘であろうともウマ娘専用道路を通る事は最優先事項であり
どのような教育を受けて、あるいは受けなかったとしても彼女達は本能的にそこを通る
ウマ種の違いがあったとしても、そこを通らないとウマ娘自身が気分が悪くなるとの事。
故に道交法違反はスピード無視や信号周りの事故のケースが殆どである。 - 129二次元好きの匿名さん21/10/17(日) 21:15:26
練習設備や精度の格差
中央に対する厳しい、恵まれたなどの認識齟齬
元中央の経歴を疎む後輩ウマ娘、トレーナー、スタッフ
トレーナーとの経歴格差、成人ウマ娘故の肉体トラブル
思いつくだけでもこれだけ要素が…
流石にこれ全部盛りは無理なので取捨選択するとします
- 130二次元好きの匿名さん21/10/17(日) 23:20:51
ウマ娘による窃盗強盗事件は残念ながら年に5回はニュースを騒がせる
基本的にはウマ娘の本格化による体質の変化と親側の無理解、教育者側の勝手な期待が原因となる。
ここ10年でのウマ娘側への自制と刑罰の厳重化は法律家諸兄には周知の事であるが、
ウマ娘を違う種族と見ようとする運動、優性思想が深刻化する前に対処できた市の啓蒙政策は
この市のウマ娘市長(地方レース出身)の公共事業としての治水工事と、
(ウマ娘ではなく人類種の)サッカースタジアムの誘致と並ぶ名采配の一つだろう。
現状、反社会勢力に所属するウマ娘はこちらの日本では『未確認』である。
- 131二次元好きの匿名さん21/10/18(月) 00:52:15
保守
- 132二次元好きの匿名さん21/10/18(月) 05:31:37
保守
- 133ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/18(月) 05:48:00
ふとワクチン副反応で死にながら思ったんじゃが、ウマ娘もコロナってかかるんじゃろうか
人間から産まれてるし、かかりそうなもんじゃが
まあいいか、朝保守するかの - 134ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/18(月) 05:49:46
全ての報告を終えて、ふと窓の外を見た。
まだ空が赤みを帯びていて、それだけで涙が流れそうになる。
あぁ――オフィスの床に枕を置いて寝る生活は終わったんだ。
会社の外に出て、目の前に流れるのはごく一般的な退勤風景。それに混ざれる喜びを噛みしめる。これが定時退社の喜びだ。それを久しく、忘れてしまっていた。
他市に新しく立ち上げられた分署へ、ヘルプに行かされて数週間。
できたての分署でトラブルが起きないはずがなく、幾度となく客から呼び出し。
そうなれば、バスやタクシーを使うよりも到着が早いからと私に指示が飛ぶ。
夜中なら、他に交通機関が動いてないから当然私に指示が飛ぶ。
誰がいつ用意したかも知らない、ヒーターで温められ続けて煮詰まったコーヒーが恋しくてたまらない日々。
古代、ウマ娘は都市間を結ぶインフラの一つとして活躍したという。まさかこの現代において、同じような真似をする事になろうとはね。
まいっちゃうよね。インターネットは何処に行ったんだろうね。 - 135ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/18(月) 05:52:22
まぁ残業代は満額出るらしいし、特別給も出すって話になった。
だから、もう済んだ話として忘れることにしよう。
傷は、Umazonの欲しい物リストに適当に突っ込んだサブスクにすら上がってこないマイナー映画をぜーんぶ購入して、癒そう。
ぽちぽちと商品にチェックをいれて注文を確定していると、ぐぅとお腹が鳴った。
今から買い物をして、自炊をする気力は無かった。
かといって、折角辛い仕事を終えて定時で家に帰るのにインスタントで済ませるというのも侘びしい。
であれば、外食である。
そうすると、今ここから近くて良い店とくれば……そうだ。
あのウマ娘がいた店。えぇと……4番の……そう、彼女だ……4番さんが働いてた店。
安くて、量が多くて、美味しい。つまり良い店だ。
記憶を頼りに道を進み、見つけた。
だが、暖簾は出ておらず、外灯もついていない。
どうしたものかと思っていたら、ちょうど女将さんと思わしきウマ娘が店の外に出てきて植木に水をやりはじめた。 - 136ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/18(月) 05:54:35
「あのぅ、すみません。今日ってお店やってますか?」
「あぁ、ごめんなさいね。今日はこの後貸し切りが入ってて……持ち帰りでよければ何か作れるけど、どうします?」
あっ……そっか……。
一瞬失意の底に沈みかけたが、なんとか気持ちを切り替える。
まだ今日の定時後ゴールデンタイムが死んだわけじゃないのだ。
持ち帰りができるというのならばそうしよう。
家で映画でも見ながらここのご飯を楽しめると思えばそれはそれで良いではないか。
持ち帰り用のつまみを渡されたメニュー表から幾つか見繕う。
他にも持ち帰りの注文が入っていて、私の料理ができるまでは少し時間がかかるという。
何処で待つか聞かれたので、また戻ってくる事を伝え、一旦店を後にした。
近くのコンビニに入って、大窓の前に設置された雑誌コーナーを眺める。
久しぶりに少年漫画誌を手にとって、パラパラと中身を確認する。昔読んでいた作品が続いているのを発見して展開を確認するも、知らないキャラが増えててどんな話かもよくわからない。
次にゴシップ誌を手にとって眺めるも、胃が痛くなるようなどうでもいいネタばかりですぐ棚に戻した。
それで、何気なく窓の外を確認した。
見覚えのあるウマ娘が二人、ちょうど目の前を通りかかったのである。
「……マリー? それに――」
彼女と一緒にいたのは、課長の娘、シトラティタニア――ニアちゃんであった。 - 137ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/18(月) 06:09:30
仕事の内容に関しては多分システムのエンジニア的なあれじゃろ……
分署からリモートで運用とか保守とかできるようにしたけどなんかバグったり
ネットワークが切断されたりして結局客先に行かなきゃいけないっていうあれじゃ - 138二次元好きの匿名さん21/10/18(月) 15:02:06
- 139二次元好きの匿名さん21/10/18(月) 21:45:37
- 140二次元好きの匿名さん21/10/18(月) 22:11:23
ウマ娘は病毒耐性が高く、基礎代謝が激しいとされているがそれゆえの弊害は多々ある。
ウマ娘の病毒耐性からの恩恵としてのウマ娘抗血清が100年前は万能の解毒剤、病気の治療薬とされいくつかの悲劇も存在していたが
実際には彼女達の免疫反応に体力が持たず、血縁関係があったとしてもかなり分の悪い賭けであった。
医学医療の発展によりウマ娘に恩を返す為のスポーツ医学や整形外科のスキルツリーが伸びてきたのは幸いであった。
インフルエンザなど流行病の重症化が早く、抗生物質への耐性も高いため日頃からの体調管理を行う第三者、
トレーナーを常に必要とするという神話の時代からのウマ娘とヒトの関係の始まり二人三脚を再発見できたのだ。
ウマ娘たちがどのような職業を選ぼうとも人類からトレーナーと言う職業が消える事はないだろう。
――民明書房刊 ウマが合うわね私たち ――より抜粋
建て乙ー
- 141ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/18(月) 22:49:35
- 142二次元好きの匿名さん21/10/19(火) 02:28:02
保守
- 143二次元好きの匿名さん21/10/19(火) 07:49:05
保守
- 144二次元好きの匿名さん21/10/19(火) 12:11:50
・世界で一番遭難事故が起こる山。谷川岳。この魔の山で山岳救助の最後の砦『谷川岳警備隊』。
その中でも切り札たる存在がウマ娘のみで編成された「山岳機動援助隊」である。
その胸には谷川岳でよく見ることの出来るハクサンフウロ(白山風露)のバッジが輝いており、花言葉の「変わらぬ信頼」は部隊の標語にもなっている。
文明の利器すら拒むこの山で、助けを待ってるヒトがいる。我ら「山岳機動援助隊」が行かねば誰が行く。
というのを思いついたけど、まったく書ける気はしない。 - 145二次元好きの匿名さん21/10/19(火) 16:09:53
- 146二次元好きの匿名さん21/10/19(火) 22:31:17
- 147二次元好きの匿名さん21/10/19(火) 23:09:29
人類とウマ娘の遺伝子は現時点での科学で分かる範囲の差異はわずか0.00000002%である
かつて行われた戦争やカルト団体による愚行より70年前、単純な検査技術の洗練によりウマ娘医学は爆発的発展を遂げた。
惜しむらくはウマ娘医学の発展に最も尽力したであろう三人のウマ娘医学博士の名前を彼女らがかつて居た独裁政権国家によって
偉大な研究者の名前を記録させず、反ウマ娘を標榜していた(となっている)独裁者の家族・縁者にすり替えさせられていた※1事は歴史的にもあまりに悲しい。
学名:ホモ・サピエンス・エクウス――――ウマ娘の免疫機構は独特で、ウマ娘の臓器を移植された場合拒否反応が発生し
幾つかの例外がない限りその臓器は人間レベルに落ち着いてしまう※2
基本的にウマ娘は誰よりも早く風邪をひいてもその日のうちにすぐ治ってしまうと考えた方が医学的には辻褄は合っている。
未知の感染病が発生した場合真っ先に突入するウマ娘医療チーム、おおいぬ座シリウスを神格化したペルシャ神話のティシュトリア――雨をもたらすもの。
その彼女らの献身とその後の地域の回復の一部始終を記録した映画、『アナーヒター』※3は20年経ってもウマ娘、人類を問わず魅了する名作である。
だが、ウマ娘だけに感染する病気や薬物が現在でも存在し研究されている事実を考えると何らかの外部要因あるいは寄生虫的な『何か』を期待する研究者は多い。
研究畑に在籍しているウマ娘の数は歴史にも多く、彼女らが自身の遺体を献体することはあっても未だその『何か』はいまだつかめていない。
※1なお、海外ではその独裁国家について調べる事は法律で禁じられている。
※2幼少期、そのウマ娘と親しかった少女(あるいは少年)がウマ娘化したという話はあるが都市伝説であり、科学的根拠は存在しない。
※3水の女神アナーヒターにつきそう四人のウマ娘、「風」「雲」「雨」「霙(みぞれ)」がチームメンバーの名前と偶然にも一致したため原作伝記と映画のタイトルになった。
SF的ソレっぽさ優先で書いておりますわ……
専門知識が、と言われたら真っ先にこの世から消えないといけないのでゆるされよゆるされよ
- 148二次元好きの匿名さん21/10/20(水) 00:48:22
一日中ハーブだけかじらせたウマ娘の汗から作った石鹸って
ウマ娘の毛色ごとに作ってるのかな…… - 149二次元好きの匿名さん21/10/20(水) 01:20:34
保守
- 150ワシ21/10/20(水) 02:48:19
- 151二次元好きの匿名さん21/10/20(水) 11:45:37
ウマ娘で一番食事量が多いウマ種は順に競争バ、二番目に軍バの、三番手にばんえいバとなる
食事量はドラマや漫画、アニメなどの創作では若干誇張されているが
そちらの日本の農水省で成人男性に必要なカロリーが一日約2400kcalに対し米軍兵士が約4000kcal
ウマ娘は一食につき最低2000kcalが必要になる。
家庭環境において母子家庭であるウマ娘の比率は決して小さくはない。カロリーの確保と雇用の維持は誰にとっても急務であった。
ある地方では福祉重視の政党がフードバンクの設立を議会に要求したが、農業漁業人口の低下を恐れた議会商工会は共同で
それだけではなくウマ娘の就学兼技能補助の名目で本格化前後のウマ娘も含めての一時雇用できる法案、市営牧場を提案。
マスメディアに一時バッシングを受けるも学童保育所の設置義務と医師の派遣による循環型経済、
ニューラナークの再来と皮肉られたその市営牧場は実施されて10年。
20xx年現在、市営牧場の支援を受けた幾人かのスターレースバの登場によりどうにか存続を維持できている。
最初の方でなんか話題に出てた奴をちょろっと。……ウマ娘のフィジカル前提でも大分ひでー感あるけど
シングレのタマモクロスとかオグリもしんどかったろうな - 152二次元好きの匿名さん21/10/20(水) 21:15:01
保守
- 153二次元好きの匿名さん21/10/20(水) 23:49:45
未確認反社会人妻ウマ娘とか浮かんだけど、ウマ娘ブランドに傷がつくな
そこそこレベルのウマ娘家庭の住む家だと、団地の近所に草レースができるような広場があったりするのかな? - 154二次元好きの匿名さん21/10/21(木) 01:15:23
保守
- 155二次元好きの匿名さん21/10/21(木) 01:58:10
保守
- 156二次元好きの匿名さん21/10/21(木) 06:33:51
- 157二次元好きの匿名さん21/10/21(木) 16:38:52
保守
- 158二次元好きの匿名さん21/10/21(木) 16:42:25
- 159二次元好きの匿名さん21/10/21(木) 21:05:02
- 160二次元好きの匿名さん21/10/21(木) 23:05:55
海のウマ娘だと大航海時代のウマ娘は普通に海賊やってたりしてたイメージはあるけど
動力船がメインになった時代だとウマ娘は大和砲クラスでない限り死んだ目で弾薬装填してそう(鼓膜がダメ的な)
飛行機乗りのウマ娘は多分居るのかな? - 161ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/21(木) 23:17:20
- 162二次元好きの匿名さん21/10/22(金) 02:37:18
元々のウマミミがパタンと伏せられるので長い事ヘッドフォンじゃなくて
直接イヤホンの開発ツリーが伸びてったんじゃないかなぁ
コックピットに入る時は大きめの帽子に収めてヘルメットなりなんなりして
尻尾を腰に巻くようにして仕舞っておく感じかしら
- 163二次元好きの匿名さん21/10/22(金) 07:26:23
耐久性と遮音性、色んな人が使うっていう衛生面等考えるとオーバーイヤーのヘッドセットを使いそうではある
メンコみたいな感じで上から耳をすっぽり覆うような感じのやつで - 164二次元好きの匿名さん21/10/22(金) 17:52:51
ネタがない保守
- 165二次元好きの匿名さん21/10/23(土) 00:00:33
続きはまだかい?
保守! - 166これでいいか? 121/10/23(土) 01:26:42
中央で走る事は憧れだ。例え、一勝もあげることが出来ず逃げ出すようなウマ娘であっても
多くのウマ娘たちからすれば、中央で走ったと言う事実だけで、自分たちとは違う天上の世界話になる。
逃げ出した私みたいなみそっかすでさえ、天上人に祭り上げられ、心を許す友達はいない……。
「と言うわけで、お願いしますね」 「はい」
教育実習。トレセン学園を卒業後、一般大学へと進学し教員の道を進み始めた私は今、教育実習生となった。
東京のような一握りの大都市ならいざ知らず、殆どの地域の小学校からウマ娘のの教員は渇望されているから
絶対に失業しないし、やめられるよりはと多少のわがままも聞いてくれるのである程度ブラック労働からも逃げられる……。
そんな打算があっての教師だ。なるのは小学校教師。
中高一貫4年制(計8年)、場合によっては専門学校も兼任するトレセン学園に入る前の段階だと多くのウマ娘は普通の男の子、女の子と
混じって小学校に通う。この年頃、特に低学年なら、時折力の制御に失敗して、問題を起こすことはしばしばだ。
ウマ娘は頑丈で、繊細だ。自分のパワーに振り回されて自分の体を壊すこともあるし、他の男の子女の子たちを怪我させる
事もありうる。だから、ウマ娘の小学校教師は何処の学校でも欲しがられる。
ウマ娘の生活指導から、ちょっとしたトラブルの防止、何から何まで、ウマ娘が絡む事柄なら何でも頼れそうだから。
目の前の扉。クラス担任の男性教諭と一緒に入ろうとして
「ひゃっ!」 「こらっ!」
「尻尾もふもふしてんな!」 (このエロガキ!)
思わずそう叫びそうになって、でもゆれる尻尾を手で押さえて、口を閉じる。どうやら、遅刻しそうな男の子が廊下にいたらしい。
しかもこのクラスの子。
今更ながら、小学校教師は早まったかもしれないと思う。でも、子供は別に嫌いでは無い。このくらいなら慣れる。とはいえ、さすがにこれからこんなことが待ち受ける確信を抱くことに関して、頭が痛い。 - 167これでいいか? 221/10/23(土) 01:27:09
「あの……先生。あの子は」 「ああ、私も目をかけているんですけど、ウマ娘ですからねぇ。どうしたらいいのやら」
初めての教育実習。その1日目が終わって、私は思いも見ないウマ娘を見る。
ウマ娘なのに運動音痴なのだ。まぁ、1日中本を読んでいる子だ。いわゆる文学少女とみれば特別不思議なことでは無い
けれど、走る事が大好きなウマ娘がだ。
「あいつさ、昔はすげぇ、動き回ってたんだ」
エロガキ――竹ちゃんって皆から言われてる――がいつもあのウマ娘のことを気にかけて、色々と話しかけているのを
見たときは、エロガキ特有の女の子へのからかいかと思い、警戒していたが、特にそんなことも無く、むしろあのウマ娘の
事情を教えてくれるいい子枠だったのは自分なりに驚いたところだ。
「でもさ、あいつと遊ぶと皆つまんないんだ。足早くて音に敏感だから、鬼ごっこもかくれんぼもいっつもあいつの1人勝ち
あいつんち、びんぼーでゲームとかもそんなにねーんだよ。だから、皆つまんないんだ。だからそのうち誰もあいつと
遊ばなくなって、あいつも遊ぼうとしなくなった」
「でも君は?」 「姉ちゃんが、女の子をさみしくさせんなって。俺んちあいつの隣なんだ」
少しだけ、悲しくなった。彼女の事情はそれこそ、何処にでもありそうなモノで……ひょっとしたら自分が彼女のような目にあって
いたかもしれない。ウマ娘の数がそんなにいない地方だと、普通の男の子女の子たちに1人加わって過ごすことになる。
でも、子供たちは意外と残酷で、たった1人だけのそれは異分子として遠慮無く『遊ぶ』対象に時としてなる。
走れないウマ娘がいてもいい。運動音痴なウマ娘がいてもいい。今は竹ちゃんが気にかけてくれる。
このクラスはなんだかんだで皆いい子たちで、あの子のことをそれとなく気にかけているのも感じる。
でも、それがこの先も続くとは限らない。ウマ娘である限りその高い運動能力を勝手に期待される。そして、あの子は
勝手に期待外れにされる。 - 168これでいいか? end21/10/23(土) 01:28:08
「……何事も出来ないよりは出来た方がいいか……」
私のトレーナーだった人の口癖だった。私は芝でよく走った。でも最低限でいいからダートを走ってみろとトレーナーに指導された。
極める必要は無い。芝もダートも走れるウマ娘になる必要は無い。ただ、どういう風に体の動かし方が違うのか体感しろ。
そう言われてダートを走った。ダートだけじゃ無い。あくまでも練習とはいえ、長距離、マイル、それどころか英語学習まで。
……そして、中央で勝てず、私は逃げ出した。……私は『何も出来ない』ウマ娘だった。
トレーナーの口癖を『何も出来ない』ウマ娘であるように私は感じてしまった。ただの勘違いだ。トレーナーは必死に考えてた
必死に様々な手を取って私が勝てるように奮闘していた。でも、私の心が折れた。勝手に。
そして、中央のウマ娘として、『何も出来ない』ウマ娘になった。自分でそんな呪いをかけた。もういい加減わかってる。
「……お願いがあります」 「おや? どうしました?」
『出来ないよりは、出来た方がいい』。あの言葉は真理だと思ってる。トレーナーは正しい。
でも私の弱い心はその真理に潰されてしまった。あのウマ娘が私のようにつぶれて欲しくない。
この先、あの子が優しい環境でいられる時間は保障されていない。様々な悪意に晒される時はいつか来るだろう。
そして、私はどうしたらいいかわからない。彼女のこれから先の未来に責任がとれるような存在でも無い。
それでも……私は、一つの願いを込める。
「バ場で特別授業?」
「何人かのウマ娘はたぶんトレセンに進学します。進学しなくてもレースを見て、体感することは
一般生徒にとっても貴重な社会見学になると思います」
「……いいでしょう。今度職員会議で話し合ってみましょう――――」
――私に出来るのはこれくらいだ。あのウマ娘がバ場で走るウマ娘たちを見て、何か小さな事でいいから
つかんでくれたら……。それが、私の願いだ。
別に走らなくていい。レースに出なさいと言うつもりも無い。ただ、出来ないよりは出来た方がいい。
些細な程度であっても。その方が、あの子の可能性を広げてくれる。悪意と戦える可能性までも……。
私のやってることは無駄な行いかもしれない。ただの自己満足かもしれない。それでもと思うのだ。 - 169二次元好きの匿名さん21/10/23(土) 01:28:37
ほい、終わり。
これで終わりだから続きは無し - 170二次元好きの匿名さん21/10/23(土) 01:30:53
お姉さん教師イイゾー!ワクワクするぜ!
乙! - 171ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/23(土) 02:35:18
- 172ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/23(土) 02:37:39
「マリハナさん、ですよね?」
道端で突然声をかけられた。
ガードレールに軽く腰を乗せ、こちらに手を振るウマ娘。どこかで見た記憶がある。
体は大きいけど、ランドセルを背負っているから同じ小学生だろう。
ジャージの上からでも分かる程に、鍛えられた筋肉。
曇りのない、笑顔。
「私、シトラティタニアっていいます。あなたを市のレースでお見かけして、一度お話してみたいと思ってたんです」
あぁ――市のレースで、フロウお姉さんと一緒にいたっていうウマ娘、だったか。
「でもマリハナさん、県のレースに来なかったから……突然おしかけてごめんなさい」
「……いや、いいけどね。それで、何の用?」
「はい! 私と、レースをしてほしいんです!」
「は?」
「貴女とは是非、中央に行く前に戦ってみたいと思っていたんです」
中央。今、中央に行くと言ったのか、こいつ。
「へえ……中央に、行くんだ」
「はい。県のレースの後、以前から私に注目してくださっていた関係者の方からお誘いを受けました。それでですね……心残りがありまして」
そう言って、シトラティタニアは私にスマホの画面を見せつけてきた。
「これ、マリハナさんですよね?」 - 173ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/23(土) 02:40:05
それは車載カメラの映像だった。赤信号待ちをする車の斜め前に見えるウマ娘の背中が見える。
信号が変わると同時――、そのウマ娘は一瞬で車を置き去りにして行ってしまう。
そのウマ娘は、確かに私だった。
「たまたまこの辺りで車載カメラの映像を動画サイトに上げてる人がいて、一時バズってたらしいですね。それで貴女を知っている人がいて、噂になったんでしょう」
シトラティタニアは勝手に一人で納得して、スマホをしまう。
「本格化を前にしてこの加速、速さ。この辺りで最強じゃないかって噂された小学生。
そんなウマ娘と一度も戦わずして中央に行くのは、こう、収まりが悪いというか」
シトラティタニアが、私の前に立ちはだかる。
「やりましょう? レース。ねぇ、マリハナさん。やりましょうよ」
外灯を背にしたシトラティタニアの影が私を覆う。
ギラつく瞳が、私を捉えて離さない。
「……いいよぉ。やろっか、レース」
思わず、笑みが漏れた。
――舐めやがって。ぶちのめしてやる。 - 174ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/23(土) 02:42:53
公園に併設された、市民なら誰でも使えるナイター設備完備の有料コース。
一度も使ったことがないコースだ。一回の利用で五百円もかかるなんて、市民のためを思うなら無料にすべきではないだろうか。
シトラティタニアに、誘ったのはそっちなんだから私の分も払え、と言うと当然ですみたいな顔をして既に二人分支払った後であった。腹が立つ。
先に走っているウマ娘がいたため、順番待ち。コースの外周を軽く流して、体を温める。
同じように、私とは逆方向にコースの外周を走るシトラティタニア。
互いにぐるりと回ってスタート地点で合流し、良いタイミングでコースが空く。
シトラティタニアが内側で、私が外側。
シトラティタニアはポケットからコインを取り出して、弾いた。
――足を地面にねじ込む。姿勢を前傾に。
コインは高く上がり、
――膝を軽く曲げ、脱力。
くるくると舞って、
――視線を、前へ。
地面に落ちた。 - 175ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/23(土) 02:46:41
飛び散った砂が煌めく。
スタートは完璧。相手も同様。
勝負はダートの1200m。右回り。晴れ、良馬場。
序盤は平坦。コーナーを抜けた後に少し下って、残り400m地点からゴールまでは上り坂が続く。
まずは様子を見る。序盤から飛ばすシトラティタニアの左斜め後方に張り付く。
シトラティタニアの走りは全くブレない。コーナーに突入しても、でかい図体で器用に走る。
見事なフォーム、テクニック、そしてその体。
後ろから見ていると、シトラティタニアというウマ娘の完成度がよく分かる。 - 176ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/23(土) 02:53:12
コーナー半ばを過ぎて、シトラティタニアが動く。
ペースが更に上がり、吹き飛んでくる砂が顔面に当たる。鬱陶しい。
でも――捉えた……!
スパートには反応できた。
あとはコーナーを抜けた後の下り坂で加速して、上り坂に入る直前で抜く。
それで勝負を決め――は?
特にこれといって内側のバ場が荒れているという事はない。
なのに、シトラティタニアは直線に入って――内を開けた。
よれた――? なら、このまま内をついて、最短コースで――。
コーナーを抜け、内に入り、シトラティタニアの横に並ぶ。
シトラティタニアが一瞬顔をこちら向けた。私は、しくじって狼狽えてるであろう顔を拝めると思っていた。
だが、シトラティタニアの顔に浮かんでいた表情は、戸惑いであった。
下り坂、加速のために思い切り踏み込む。
踏み込んだ瞬間――体が沈んだ。 - 177ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/23(土) 02:55:20
「なっ――」
足が急激に重さを増す。
姿勢が、崩れる。
力が上手く伝わる感覚がない。
溶けた鉄が足にまとわりついているようだ。
シトラティタニアは下りで軽快に加速していく。
私との距離が、開いていく。
「待って」
シトラティタニアが、私よりも先へ。先へと進んでいく。
「待って――!」
こんなの私じゃない。私の足じゃない。
私はもっと早い、こんなに遅いわけがない。
なのに、なんで?
勝てるレースだった。さっきまで完全に作戦通りだったのに――。
なんで――こんなことに――。
思わず、手を前に伸ばす。
しかし何も掴めず、空を切る。
ゴールを駆け抜けるシトラティタニアが、遠かった。 - 178ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/23(土) 03:02:08
遅れてゴールを駆け抜けると、その先でシトラティタニアが私を待っていた。
顔を上げる事ができない。今自分がどんな顔をしているか分からない。
とにかく、今の顔を誰にも見られたくなかった。
俯いたままでいると、シトラティタニアの母親が現れて、突然始まる親子喧嘩。
どうやらシトラティタニアは、門限を破って私を待ち伏せ、レースを挑んできたらしい。
シトラティタニアの母親が私に謝罪する。家まで送ろうかと誘われたが、断った。
「また、やりましょう」
シトラティタニアはそう、言い残して去っていった。
また……、って。
また、って――、なに?
だって、そっちは中央に行ってしまうんだよねぇ?
あぁ――本当に、腹が立つウマ娘だ。
美しく鍛え上げられたその体も、
礼儀正しくて、屈託のない笑顔も、
ほつれ一つない綺麗なジャージも、
適切に取り替えられてすり減ってない蹄鉄も、
何もかも――……。
少し顔をあげると、幸せそうに母親と談笑しながら去っていくウマ娘の背中が見えた。
虚しさに目が潤んで、歯を食いしばったら涙が溢れた。
- 179ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/23(土) 03:12:31
レース描写とか生まれて一度もやった事ないからどうすればいいのかさっぱりじゃ
でもウマ娘題材にしている以上避けては通れないという
ウマ娘教師の尻尾をすれ違いざまに撫でたいだけの人生じゃった…… - 180二次元好きの匿名さん21/10/23(土) 12:55:13
- 181二次元好きの匿名さん21/10/23(土) 21:11:23
市営コース、市営プールみたいに、おばちゃんのたまり場になってそう
泳がず歩くように、走らず歩く
ウォーキングウマ娘 - 182二次元好きの匿名さん21/10/23(土) 22:23:50
蒼穹を駆けるウマ娘――――ギリシャの伝承ではペガサス、天マと呼ばれた海神と異国の地母神の愛娘たち
飛行機と言う乗り物が開発されて以来、それは彼女達の呼び名として非常に栄誉あるものとなっている。
開発当初、コックピットの規格が非常に小さくフロップが並の腕力では動かしづらかったため、ウマ娘に動かさせるという力業で解決することが多かった。
技術革新が起こり得る場合、個人のフィジカルと言う要素が求められる場合常にウマ娘がそこにいて補い打開の道筋を立てヒトがまとめ上げる
その歴史の積み重ねから飛行機もまたはみ出るものではなかった。
閑話休題。空を駆ける飛行機開発にウマ娘たちもまた魅せられたが、初期の飛行機レースや曲芸飛行の花形スターにウマ娘はなかなか食い込めなかった。
ヒトとの骨密度の差による重量制限であった。開発そのものには関われたものの機体の剛性とエンジンの出力が向上する1930年代までこの問題は解決しなかった。
飛行機が戦争に使われた時代、多くの陣営でウマ娘エースが誕生しまた散って行ったかはこの断章ではあえて触れない。
ただ現在も多くのペガサスたちがこの世界の蒼穹を飛び交い、歴史のタペストリーを描いているのは変わらないのである。
保守代わりに適当な偽書偽史を書くしかできない悲しみ - 183二次元好きの匿名さん21/10/24(日) 00:01:24
ウマ娘世界で初恋はだいたいウマ娘に持ってかれるけど、ばんえいバで巨女方面か巨乳方面に行くかわからないな
- 184二次元好きの匿名さん21/10/24(日) 05:02:34
ウマ娘の体温は高めだから常にホカホカ状態で冬場の朝とか近くにいると温かいが
ウマ娘臭でヤバい事になるんだろうな
電車で女性専用車両の他にウマ娘専用車両とかあるかもしれんが、エグイ事になってそう - 185二次元好きの匿名さん21/10/24(日) 05:54:37
- 186二次元好きの匿名さん21/10/24(日) 10:16:08
- 187二次元好きの匿名さん21/10/24(日) 13:10:29
- 188二次元好きの匿名さん21/10/24(日) 21:29:16
ちゃ、ちゃうねん。そんな不純なことは考えていなくて、ただたんに体温高いウマ娘たちにもみくちゃにされたいなって思っただけで
- 189二次元好きの匿名さん21/10/24(日) 23:15:06
ほしゅ
- 190二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 03:23:37
ばんえいバの筋肉は意外と柔らかく小学校や保育園でのお昼寝では冬場は人気者だが夏場では流石に避けられ
しょんぼりするばんえいバの先生の光景がよく見られる。 保守 - 191二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 08:03:47
保育園のウマ娘先生で一本書いてくれるって!?
- 192二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 17:50:43
保守!!
- 193二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 20:09:28
- 194ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/25(月) 20:13:13
じゃあ……書こうか
- 195二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 21:10:31
- 196ワシ◆h5EdoX4FNs21/10/25(月) 21:33:25
- 197二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 23:26:54
『Kelpie(ケルピー)』
それが私が勤務しているアクセサリー店の名前だ。
耳飾りや尻尾飾りなどウマ娘向けのアクセサリーを主に扱っており、一部ではトゥインクルシリーズの勝負服にも扱われている。
もちろん、私の左耳に飾られた物も当店のイチオシアイテムだ。
決して大きくはないお店だけれども、私は気に入っている。
そのお客様を見た時、私は「あれ?どこかで見たような」と思った。とはいえその風貌が変わっているというわけではない。
服装もジャケットを羽織らずベストのみという、サラリーマンにしては少しラフであることを除けばごく普通の物である。
あえて言うならば、編み上げブーツを履いていていることが少し目につくだろう。
ましてブーツの底に鋲でも打ってあるのか、歩く度に「ゴツゴツ」という重い音がすれば「おや?」と思うだろう。 - 198二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 23:28:03
「すみません。ご相談がありまして」
それは想像していたよりずっと優しげな声だった。
「はい、本日は如何なさいましたか?」
こちらも精一杯柔らかい口調でお答えする。
席にかけたその男性は暫く口をモゴモゴとした後に
「実は、私、先日婚約いたしまして」
と少し照れくさそうに頬をかきながら仰った。
「おめでとうございます!ということは本日は婚約指輪をお求めですか?」
当店はウマ娘向けのアクセサリーが多いが、決してヒト向けの物がないという訳では無い。普通の指輪やネックレス、ペンダントなども取り扱っている。
「ええ、そうなのですが……」
と彼はカバンの中から大事そうにあるものを取り出した。
「これは……、蹄鉄ですか?」
U字型のそれはかなり使い込んだのだろう、あらゆる所が削れ、すり減り、それでもなお鈍くも美しい輝きを発していた。
「はい、ご相談というのは、この蹄鉄を使って婚約指輪を作って頂きたいのです」
とりあえずここまで。 - 199二次元好きの匿名さん21/10/25(月) 23:28:35