- 1二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 11:09:47
- 2二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 11:10:35
- 3二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 11:11:09
期待
- 4二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 11:11:13
ssスレならssスレとわかるように書いてくれよ〜ん
後で検索しやすいんだよ〜 - 5二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 11:11:35
──────
「……いつの間にか、ルフィの方が背が高くなってたんだね」
わざとらしくルフィの横を通り過ぎながらそう呟いてみる。
ルフィは何も言わない。ふらふらと数歩だけ歩くと、石の台座に力なく腰掛けた。
表情は見えない。覗き込んでやろうかとも思ったけど……
……その顔を見るのがちょっとだけ怖くなって、やめた。
帽子、返してあげないとね。
現実世界なら無傷のはずだけど、ウタワールドの中の帽子は今、私の手の中にある。
さっき引き裂いた部分を直してあげる。
ウタワールドの中じゃ、直すも壊すも自由自在だ。
……その力ももうすぐ無くなっちゃうけど。
いいんだ。もう。
「…………なァ、ウタ」
「え?」 - 6122/09/16(金) 11:12:13
- 7二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 11:12:52
- 8122/09/16(金) 11:13:33
驚いた。ルフィの方から声をかけてくるなんて。
てっきりこのまま、何も言わずに見送ってくれると思ってたのに。
「ウタはよ……」
「うん」
「今いるこの世界が消えちまったら……ウタも消えちまうんだろ?」
「…………うん」
何だ、流石に分かってたか。
他のみんなが解放された今、私に残されたウタワールドは、2人っきりのこの空間だけ。
この空間が消えたら、私も消える。
「すぐにってわけじゃないけど、ルフィが目を覚ますまでは……ちょっと、キツイかな」
「………………」
「折角会えたんだし、現実の方でもちょっとは喋りたかったけど……」
「………………」
結局、ルフィと話せたのはウタワールドの中でだけ。
現実の世界では、眠っている姿しか見ていない。
しかも、あろうことがそのルフィにナイフまで突き立てようとして……
それだけが、心残り。
本当に、それだけ。
……ホントだよ? - 9122/09/16(金) 11:15:48
「……なァウタ……」
「何?」
「お前、なんでこんなことしたんだ?」
「……なんで、って?」
分からなかった。
今更になって何故そんなことを聞いてくるのか。
しかもあのルフィが。
「……言わなかったっけ?『新時代』を作るため、だよ」
「……『新時代』なァ。お前昔言ってたもんな、歌で新時代を作りたいって」
「あ、覚えてた?流石だね。そうだよ、昔からの夢だったんだ。
……でも、作れなかった。私は新時代を作る女じゃなかった」
みんなの為にいっぱい考えて、実行した新時代計画。
みんな一緒にウタワールドに残って、争いのない平和で自由な世界で暮らす。
……結局ルフィの言う通りだった。
自分では分かってたのに。こんなのは新時代じゃないって。
拒絶されて、ムキになって、みんなを怖い目に遭わせて……
これじゃ、やってることが私の嫌いな連中と変わらない。
…………あーあ。 - 10122/09/16(金) 11:18:28
「……ねえルフィ。
……私の……」
「………………」
「……私の12年って、何だったのかなぁ」
言うつもりはなかった言葉が、ついポロリと溢れた。
こんなこと、ルフィに聞いても仕方ないのに。
「………………」
きっとルフィ以外なら、「お前の歌で幸せになった人間もいる」だとか、気の利いたことを答えてくれるんだろう。
……でも、今の相手はルフィだ。
「……知らね」
ほらね。
案の定、そっけない返事が返ってきた。
……ルフィの声が震えていたような気がするのは、きっと気のせいだ。 - 11122/09/16(金) 11:20:30
「……もうちょっと考えてくれてもいいんじゃない?」
「12年は12年だろ。それに……」
「それに?」
「こっから先、50年でも60年でも生きてりゃ、まァいいことあんだろ」
…………知ってるくせに。
私がもう、その「こっから先の50年、60年」を迎える気が無い事……
もう、分かってるくせに。
相変わらずルフィの表情は見えない。いや、ルフィが見せてないだけかもしれない。
自分でも何故かは分からないけど、その姿に何だか無性に腹が立って、私も少し意地悪な質問を返してしまった。
「……じゃあさ、ルフィ。なんで今更になってそんなこと聞いてきたの?」
──もう全部、終わったのに。 - 12二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 11:23:19
これは良い釜が炊けそうな予感
- 13122/09/16(金) 11:24:29
「…………納得できねェからだ」
「納得?」
ぎゅう、とルフィが拳を握りしめる音が聞こえた気がした。
「……何それ。もう全部説明したでしょ?まだ納得できないの?」
「ああ、できねェ」
「じゃあ、あと何言えば納得してくれる?」
「……何言われてもできねェ」
「……どうしろって言うの?」
「……分かんねェ」
「………………」
埒が開かない。
こんなに子供じみた問答する様な奴だったっけ?
さっき久しぶりに会えた時、随分と大人っぽく見えたのは気のせいだったの?
「ルフィに分かんないなら私に分かるわけないじゃん。私はどうしたらいいの?」
「………………」
「……ルフィ!!」
「………………
……わがんねェよ…………!!」 - 14二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 11:24:33
つらい
- 15二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 11:25:38
納得できるわけないよな…
- 16122/09/16(金) 11:27:31
「え……」
唐突にも思えたルフィの決壊。
けど、さっき声が震えてるように感じたのは、気のせいじゃなかったんだろう。
……多分、ずっと我慢してたんだ。
絞り出したその声は、聞き取るので精一杯。
ようやく上げたルフィの顔は、それはもうひどいものだった。
「せっかぐ……また会えだのによォ……!!」
「ジャングズだぢにも、やっと会えだのによォ……!!!」
「お゛れ……ウダがごんなこどになっでるなんて知らなぐて……!!」
「……悪がっだ……あの時、サニー号にがえろうとじで……!!!」
「……ルフィ…………」
「なんで……ごんだごどになっぢまっだんだよォ……!!」
私を救うために勇敢に戦ってくれた大海賊の姿は形を潜め。
今私の目の前にいるのは、受け入れ難い事実を前に、ただ泣くことしか出来ないただの1人の幼馴染だった。 - 17122/09/16(金) 11:31:19
「……ル……フィ……
…………〜〜ッ!!」
見ていられない。見ていたくない。
本当はもう少しお姉さんっぽくも振る舞ってあげたかった。
目の前で泣いている男の子を、優しく抱きしめてあげたかった。
でももう、無理だ。これ以上今のルフィを見ていたら、私は────
「……これ!返す!!」
私にとっても大事な帽子。
もっと優しく返してあげたかったのに。
持っていた麦わら帽子を、半ば押しつける様にして頭に被せ、私はその場を去ろうとする。
もう1秒でも早く逃げたかった。その場にいたくなかった。
……なのに。
「ヴダァ!!!!」
ルフィが、私の左腕を掴んだ。
新時代を誓い合った麦わらマークが、少し歪む。 - 18二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 11:31:31
保守
- 19二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 11:31:50
サニー号に帰ろうとしたの謝るSSって何気にめずらしいから刺さる……泣いてしまう
- 20二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 11:32:45
ギスギスしたまま別れることになるのは辛いから、どうかハッピーエンドであってくれ…!!!
- 21122/09/16(金) 11:34:31
「……離して」
「嫌だ!!」
もうやめて。
「離して」
「行くな!!!」
そんな顔して引き止めないで。
そんな声で呼び止めないで。
「離して!!」
「嫌だァ!!!」
もう私は、逃げ出したいのに。
「離せ!!!」
「…………ッ!!!!」
もう私は、明日を迎えたくないのに。
「……行かねェでくれよォ……ウタ…………!!!!」
もう……私は………… - 22二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 11:37:18
イチャラブの予感
- 23122/09/16(金) 11:37:39
このまま眠れば楽になれる。
夢の世界へ逃げ出せる。
だけど、ルフィは許してくれない。
私の腕を掴むルフィの手には、ほとんど力が入っていない。
やろうと思えば、今の私でも簡単に振り解けるぐらいだった。
でも、振り解けなかった。
どんなに振り払おうとしても、私の腕は言うことを聞かない。
そもそも、振り払おうとすらできない。
もうダメだ。
ルフィのせいで、私の心がぐちゃぐちゃになってしまった。
夢の世界へ逃げ出せば、もう2度とみんなに会うことはできなくなる。
覚悟の上だった。そうだとしても逃げたかったから。
────だけど。 - 24二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 11:39:54
ギャン泣きしたことを教える
- 25122/09/16(金) 11:40:40
恥も外聞もなく、泣き叫びながら私に縋るこの幼馴染の姿を見て。
『離れたくない』──そう、願ってしまった。
もう、手遅れなのに。
今更望んでも、辛いだけなのに。
──気づけば、私も決壊していた。
「……ひどいよ……ルフィ……!!!!」 - 26二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 11:40:52
タスカレ……タスカレ……
- 27122/09/16(金) 11:44:01
「んだとォ!!?」
「ルフィのバカ!!バカ!!!バカぁ!!!
折角考えない様にしてたのにぃ!!!
なんで……なんでそんなこと言うのよぉ……!!!」
言葉も涙も、一度堰を切ってしまうともう止められない。
必死に抑え込んでいた後悔の念が、壊れた蛇口みたいに止まらなくなる。
「私だって!!ルフィやシャンクス達ともっと一緒にいたいよ!!!みんなと一緒にいたいよぉ!!!
歌だってもっと歌いたい!!!もっといろんな曲いーっぱい歌いたいよ!!!
もっと美味しいものも食べたかった!!!パンケーキ食べたかった!!!あんなキノコが最後のご飯なんていやだ!!!
ルフィも『新時代』作るんでしょ!?私もその新時代見たかった!!!ルフィが作る新時代行きたかったあぁ!!!
わああああああん!!!ルフィのバカぁ〜〜〜!!!!」 - 28二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 11:45:07
- 29二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 11:45:22
ホンゴウ!!!
- 30122/09/16(金) 11:47:13
「だったら!!!」
「でも……でも、もうダメなんだよ!!!もう……もう私は……助からない、のに……!!」
「まだ終わってねェ!!!まだここが残ってる!!!お前が生きてるって証拠じゃねェか!!!」
「もうすぐここも消えちゃうんだよ!!!薬だって捨てちゃったし……!!!」
「行かせねェ!!!」
「外の私はもう体も動かないし!!!意識だってもう殆どない!!!」
「死なせねェ!!!」
「それに!!!絶対みんなが許してくれない!!!エレジアの人たちだって、巻き込んだみんなだって!!!
シャンクスにもゴードンにも迷惑かけた!!!ルフィだってそうなんでしょ!!?私の顔なんか、もう……!!!」
「そんなワケねぇだろ!!!シャンクスだってあのおっさんだって同じだ!!!このまま行っちまうなんてそっちの方が許せねェ!!!!
絶対に!!!行かせねェ!!!!!」 - 31二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 11:48:28
なんで、こう涙腺を刺激するんだ。まだ昼間なんだぞ…
続きを待つ… - 32122/09/16(金) 11:50:23
私がどれだけ否定しようと、後悔を垂れ流そうと、ルフィは真っ向からそれを拒絶する。
否定ですらない、拒絶。
何の根拠もない、空元気に等しいそれ。
でもそれが、今の私には、グサグサと突き刺さる。
「チョッパーにもトラ男にも死ぬ気で頼んでやる!!!シャンクス達がいるんならホンゴウだっているはずだ!!!」
何を言おうと、決して折れない。
私より、私を信じてる。
「助からないワケがねェ!!!ウタはそんなに弱くねェ!!!
だから!!お前が諦めねェでくれよ!!!ウタ!!!!」
こんなにも、私を想ってくれている。
こんなにも、私を助けようと、あらん限りの声を張り上げ、力の限り手を差し伸べてくれている。
その震える手を見て、
私は、
私は。 - 33122/09/16(金) 11:53:26
完全に拭い去ったつもりだった。
抱いてはいけないと、必死に自分に言い聞かせてきたその気持ち。
それでも捨てきれなくて、心の片隅にほんの少しだけ残ってたその気持ち。
今こうしている間にも、ゴム風船みたいに膨れ上がっていくその気持ち。
そしてその気持ちが、私の中の「逃げたい」という気持ちより、遂に大きくなって──── - 34二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 11:55:51
- 35二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 11:56:29
抱かなくていいから幸せになってくれ…
- 36122/09/16(金) 11:57:52
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「……る゛ふ゛ぃ゛…………!!!!」 - 37122/09/16(金) 12:00:00
気づけば私は、ルフィに縋り付いて泣いていた。ルフィも優しく受け止めてくれている。
恥も外聞もないのは私も同じだ。元より、ここには私とルフィしかいない。
捨てる恥なんてもう何処にもない。全部吐き出してしまおう。
わあわあと泣き叫ぶ私に反応するかのように、ルフィの抱き締める力も少しずつ強くなる。
そんなに私のこと離したくなかったんだね、ちょっと……ううん。凄く、嬉しいな。
……水面に映る、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった自分の顔を見てしまえば、もう明白だった。
逃げたかった私と、逃がしたくなかったルフィの勝負。
────完敗だ。
この日、私は遂に、ルフィに初めての敗北を喫した。 - 38二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 12:16:59
映画原作のウタワールドの最後でルフィが黙ってたの、ウタの選択を尊重したというのも勿論として、実際ウタがもう助からないの見聞色で分かってたからなのかな
見聞色がウタが助かるかもしれないと言ったんならこれくらいのことになってもおかしくないかも - 39二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 12:17:46
終わりなのか…続きがあるのか…?
釜を煮込んで君を待つ! - 40二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 12:18:55
小説版の描写だと助からなかったのはわかってたけどウタが望んで逃げたとこまでは知らなかった様子
- 41122/09/16(金) 12:20:27
──────
「……ねぇルフィ」
「おう」
「……私、もうちょっとだけ頑張ってみる」
「……おう」
「……まだ薬があったら、それ飲んで、治療してもらって……
……そうだ、勝負にしようよ」
「勝負?」
「私が逃げきっちゃったら、私の勝ち。逃げきれなかったら……ルフィの勝ち。どう?」
「……その勝負はさっきおれが勝っただろ?」
「負けちゃって悔しいからもう一回!お願い!」
「……いいぞ。次も絶対負けねェ」 - 42122/09/16(金) 12:23:40
「ふふ、そう来なくちゃ。
……じゃあ、私は先に戻ってるね」
「おう。おれは助っ人呼んでくる」
「助っ人?」
「ああ、絶対負けられねェ勝負だからな」
「んー?1人で勝てる自信無いのー?」
「……ああ、無い。だから呼ぶ」
「あれ、あっさり認めたね」
「言っただろ?絶対に負けられねェって。
それに昔ウタも言ってただろ?
海賊の勝負に卑怯なんて言葉は無ェんだ」
「……そうだね。ルフィはもう立派な海賊だもんね。
…………じゃ、待ってるよ」
「……おう」 - 43122/09/16(金) 12:27:03
──────
「……ん…………」
「ウタ……目が覚めたか」
現実世界で目を覚ますと、私はシャンクスの腕の中に抱かれていた。
大きくて暖かい、私の大好きな腕の中。
「……ルフィ、は…………?」
「大丈夫だ、戻ってきた。時期に目を覚ますはずだ」
「……よかった……」
擦れる目で周りを見回してみる。
私達を取り囲んでた海軍は既にいなくなっていた。
シャンクスが追い払ってくれたのかな。
……随分ルフィと話し込んじゃったみたい。
「…………ねぇ……シャン、クス……」
「……どうした?」
「……さっきの、薬……まだ、ある…………?」 - 44122/09/16(金) 12:33:11
「…………!!
ホンゴウ!!予備の薬を!!」
「おう!!」
薬がシャンクスに投げ渡される。
よかった。第一関門はクリアだ。
「飲めるか、ウタ?」
「ん…………」
薬を受け取ろうにも、まともに腕も動かせない。
ああ、本当にもう限界なんだな……私。
「無理ならいい、動くな。飲ませてやる」
「ご……めん、ね…………」
シャンクスに飲ませてもらって、何とか飲み下すことができた。
そのシャンクスの手が、本当に優しくて……また、涙が溢れそうになる。
「……よく、飲んでくれたな。これで後は安静にして眠るだけだ」
「うん…………」
段々と意識が微睡んでいく。瞼が重くなっていく。
……また、目を開けたい。シャンクスの顔を見たいよ。
シャンクスに頭を撫でられた。
昔はよく撫でてもらったっけ。
……やっぱり、安心するなぁ。
その安心感の中で、シャンクスとホンゴウさんが何か話しているのを聞きながら、私は意識を手放した。 - 45122/09/16(金) 12:37:12
─────
「……どうなんだ、ホンゴウ」
「…………やはり、薬を飲んだのが遅すぎる。既に相当な量の毒が体に吸収されちまってる筈だ。
薬で解毒できる範囲ならあの薬も役に立つが、体の奥まで入っちまった分は、それこそ直接取り出しでもしない限りは……」
「……そうか……」
専門知識が無くとも分かる。
優秀な船医であるホンゴウでも手の施しようがない。
一言で言えば、手遅れ。ウタの状態はそう言い表すしかなかった。
折角生きたいと願ってくれたのに。
ただ見ていることしかできないシャンクスが唇を噛む。
その時だった。
『シャンブルズ』
その辺に転がっていた岩が1人の男と入れ替わるのと、シャンクスがそれに気が付いたのはほぼ同時だった。 - 46二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 12:39:35
お前は一味の船医だよほんと…
- 47二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 12:39:59
人体から薬物ぶっこぬいた実績のあるルフィの友達来たな…
- 48122/09/16(金) 12:40:03
「……邪魔するぞ」
「お前は……ルフィの友達の?」
「友達じゃねェ。それより赤髪屋、解毒剤は飲ませたのか」
「ああ、飲んでくれた。だが……」
シャンクスはか細い寝息を立てるウタを見つめる。
今にも消えてしまいそうな、あまりにも弱々しい寝息。
「いい、言わなくても分かる。ネズキノコなんて食ってからこうも長い時間経ってりゃ普通は助からねェ。
だが、解毒剤を飲んで……何より、本人にその気があるなら、まだ望みはある。
悪い様にはしねェ。赤髪屋、一旦おれに預けろ。おれも医者だ、患者を放っておくわけにはいかねェ」
悪童のような笑みを浮かべるが、この男の腕は確かだ。
何より、ルフィの友達だ。
直感でそう見抜いたシャンクスは……
「…………分かった。頼むぞ、ルフィの友達」
「だから友達じゃねェ」
娘を『死の外科医』に託すことを決めた。 - 49二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 12:41:43
改めて医者とは思えねえ酷え異名をしてるなロー
- 50二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 12:42:48
このレスは削除されています
- 51二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 12:43:26
患者の気配がして爆速で目を覚ますロー優しすぎだろ……
- 52二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 12:43:33
一味の船長と三番手の操舵手と船長の幼馴染を助ける
これはもう一味全員ポーラータング号に足向けて寝れませんわ - 53二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 12:43:50
ネズキノコの解毒剤を煎じた状態で予備含めて持ち込み、ウタのためにライブ会場から死者を出さなかったホンゴウ!
身体を侵しつくした毒をぶっこぬくロー!
そしてこの場に名医はもう一人! - 54122/09/16(金) 12:44:48
──────
「……で、お前が治療したってわけか」
「ああ」
海を往くサウザンドサニー号。その近くにはポーラータング号の姿もある。
甲板には一足早く目を覚ましたゾロと、ウタの治療を終えたローの姿があった。
「麦わら屋は?」
「まだ寝てる。この様子じゃ一番最後まで寝てるかもな」
「……そうか」
甲板の真ん中には、大きないびきを鳴らしながら眠り続けるルフィ。
果たしてどんな夢を見ているのだろうか。
「にしても、なんでお前がそこまでしてやったんだ。何か義理でもあったのか?」
「……麦わら屋に叩き起こされたんだよ。ウタ屋を助けてくれって土下座までしてな。
人の夢にまで乗り込んできてギャーギャー喚きやがって……」
「ハハ、成程な」
「トニー屋にも何か頼んでた様だが……見当たらねェな。何してんるだ?」
「ああ、チョッパーならおれより先に起きてずっと部屋に篭ってる。
何をしてるのかは知らねェが、多分あいつもルフィに叩き起こされてんだろうな」
「……全く、傍迷惑な野郎だ」 - 55122/09/16(金) 12:47:24
「……おれはそろそろ行く、麦わら屋にはこれだけ伝えておけ」
「何だ?」
「やれるだけのことはやったが、本来ならおれが目覚めた時点で既に手遅れだった。あまり期待はしてくれるな、とな」
「……ああ、分かった。伝えとく」
「じゃあな」
「あァ、ちょっと待て。おれからも一つ」
「?」
「頭の頼まれごとをやってくれた相手に、礼の一つも言えねェんなら海賊団の名折れだ。
ルフィに変わって礼を言うぜ、ありがとよ」
「……フン」
頭を下げるゾロを尻目に軽く笑うと、ローは自船に戻っていった。
ゾロは反対方向へ目をやる。シャンクス達の船、レッドフォース号が遠くに見える。
「……さっさと起きねェと行っちまうぞ、ルフィ」
「…………ん」
「!」 - 56122/09/16(金) 12:49:40
「……あれ、ここ……サニー号か?」
ゾロの呼びかけに呼応するかの様にルフィが目を覚ました。
「よく寝てたな」
「ゾロ……ウタは?シャンクスも!」
「おう」
ゾロが酒瓶で差した方へ目線を動かす。
その視界にレッドフォース号を捉えたルフィは、その視点のまま動かなくなった。
「………………」
「お前が寝てる間に行っちまった。ウタも向こうに乗ってる」
「……トラ男は?」
「さっき自分の船に戻った。治療はもう終わったらしい。お前が頼んだんだろ?」
「ああ。何か言ってたか?」
「……期待はし過ぎるな、だとよ」
「……そっか」
目線を一点に定めながら、淡々と続けるルフィ。
その姿に思うことがないわけではないが、ゾロもまた敢えて淡々と返す。
「まァ、し過ぎるなってことはしてもいいってことだろ。つっても、こっからじゃ何も見えや…………ルフィ?」
その直後だった。
突然、ルフィが膝から崩れ落ちた。 - 57二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 12:52:24
!?
- 58122/09/16(金) 12:54:06
dice1d2=1 (1)
- 59二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 12:54:39
!?!?!?
- 60122/09/16(金) 12:54:50
続きはまた夕方から夜ぐらいに
- 61二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 12:55:27
待ってダイスだけ振ってどこいくの!
- 62二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 12:56:53
おい待て!何をふった!!それだけ言っていけ!!!
- 63二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 12:57:05
外道が…
待ってます - 64二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 12:57:37
逃げるなアアア!
不安要素だけ置いて逃げるなアアア!! - 65二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 12:57:46
ちょっと君ィ!
- 66122/09/16(金) 12:58:25
- 67二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 12:58:47
このレスは削除されています
- 68二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 12:59:11
ヨシ!!!!
- 69二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 13:01:16
まって!?にげないで!?
- 70二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 13:02:25
一体なんのダイスなんだよぉ…!!
出目は1だから良い方だと思うんだけどこえーよぉ… - 71二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 13:06:37
- 72122/09/16(金) 13:20:55
- 73二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 13:35:15
- 74二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 13:36:41
あっ……ふーん…
- 75二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 14:29:49
なんだよ……何なんだよ……
- 76二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 14:30:47
マジかぁ・・・
- 77二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 14:30:57
- 78二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 14:35:07
助けてくれるとかかもしれんだろ!
- 79二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 14:37:19
- 80二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 14:38:15
え…ああ……あれだろ、河松
- 81二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 14:38:31
- 82二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 14:38:49
このレスは削除されています
- 83二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 14:40:13
- 84二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 14:42:59
このSS、凄く良かったのだ
存在する要素だけでウタを助けてくれたの、感謝するのだ - 85二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 15:56:23
めっちゃ結末が気になる…!
- 86二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 15:58:14
- 87122/09/16(金) 16:25:41
──────
レッド・フォース号。
四皇「赤髪のシャンクス」率いる赤髪海賊団が乗るこの船は今、悲痛な程の沈黙に包まれている。
真ん中には、華やかな装飾が施された棺。
海賊団の自慢の愛娘だったウタが、その中で眠っている。
「お頭、そろそろ……」
「…………ああ」
ローの治療が終わってから、シャンクスはウタの右手をずっと握り締めていた。
既のところで飲み干した解毒剤も、トラファルガー・ローの懸命な治療も、あと一歩及ばず。
ずっと触れていたからこそ、シャンクスは娘の体温がゆっくりと、しかし確実に失われていくことを感じ取ってしまう。
「………………」
────。
「…………!?」
「……? どうしたお頭」
「……今、誰か喋ったか?」
「いや、何も?」
「誰も喋ってないぜ」
「……気のせいか……?」 - 88122/09/16(金) 16:31:58
──────
暗い。
暗い。
何も見えない。
気がつくと、私は真っ暗な空間の中にいた。
さっきまで体をバラバラにされるような感覚があったけど……それはきっと気のせいじゃない。
一つだけわかるのは、ここはウタワールドではないこと。
私が作るウタワールドなら、こんなに真っ暗になることはない。
右も左も上も下も分からない、こんな寂しい空間に。
それなら、ここは何? - 89122/09/16(金) 16:35:24
………………
何となく、察した。
きっと私は、ルフィとの『勝負』に勝ったんだろう。
これで私の185連勝。
しかもこれが最期の勝負だから、私の全勝で勝ち逃げだ。
ルフィはどんな顔をするんだろう。
きっと悔しがってるんだろうな。
またルフィの負け惜しみ聞いてやりたいな。
…………
そんなこと、もう、出来ないのに。 - 90二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 16:38:32
まってまってまってまってm
- 91二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 16:39:57
いかん
- 92122/09/16(金) 16:40:07
「ルフィ」
ポツリ、と言葉が溢れる。
「…シャンクス」
ポロリ、と涙が溢れる。
一度溢れてしまったものは、やはりもう止まらない。
「シャンクス……ルフィ……
……みんなぁ…….!!!
う……うああああああああん!!!
やだあああああ!!誰かあああああ!!誰か来てよおおおおおお!!!
いやだぁ……いやだよぉ……!!みんなに会いたいよぉ……!!!」
しかし、どれだけ泣いても喚いても、その声が誰かに届くことはない。
後悔先に立たず。何もない虚空に、私の汚らしい嗚咽だけが虚しく響く。 - 93二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 16:40:24
誰にも奪えない…
- 94二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 16:41:41
えっこれえっこれどうなんの!?ねぇ!?
- 95122/09/16(金) 16:42:53
──。
「……え……?」
ふと、何かが聞こえた気がした。
そんなはずはない。だってこの空間に、音を出す存在なんて、私しか……。
──。
また聞こえた、気がした。
涙を無理やり引っ込めて、耳を澄ます。
──。
……聞き間違いじゃなかった。
聞き間違えるはずがなかった。
だって、今の声は……。
『──ウタ。』
確かに、シャンクスの声だった。 - 96二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 16:44:02
シャンクス!!ありがとうございました!!!!!!!!
- 97二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 16:44:59
来い!戻って来るんだ!!
- 98122/09/16(金) 16:45:23
「シャン、クス……?なんで……」
声は聞こえた。けど姿形はどこにもない。
もっと言えば、どこから声が聞こえたのかもわからない。
「シャンクス……シャンクス!!どこにいるの!?」
ほんの僅かな希望を頼りに、暗闇の中を探し回る。
動いてみて分かったけど、この空間は案外自由に動けるらしい。
それでも何の手がかりもなく。時たま聞こえるシャンクスの声だけが響いていた。
もしかすると、シャンクス会いたさから来てる幻聴かもしれない。
むしろ、きっとそうだ。そんなもの、聞こえるはずがないのだから────
『おっと。そっちじゃねェぞ』 - 99二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 16:46:37
エース…お前は俺たちの兄妹だ
- 100二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 16:46:59
何か最近エースウタ救うのに大活躍してんな
- 101二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 16:47:59
- 102二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 16:48:58
誰にも奪えない真っ赤な炎
- 103二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 16:49:30
駄目な弟をもっと兄貴ってのは心配なんだよ。だから弟の守りたいものは守るんだ。
- 104122/09/16(金) 16:51:33
「え……?」
今度はハッキリと聞こえた。
シャンクスともルフィとも違う、誰かの声。
「誰?誰かいるの?」
『ルフィがあんまり騒ぐもんだからつい様子を見に来ちまったよ。ウタってのはあんただな?』
「え、うん……」
『ウタって女の子がこっちに来ちまいそうだったら、誰でもいいから追い返してくれって必死でよ。というワケで、それ以上は進まないこったな』
「ルフィが……?」
ルフィが言ってた助っ人って、もしかしてこの人のこと?
こんなところにいる時点で、普通の人じゃないんだろうけど……
『ついでだ、道案内してやるよ。ちょっと熱いから気をつけろよ……』
熱い……って、何するつもりなのこの人……
『火拳!!!』 - 105二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 16:52:51
あの世への道を燃やすのに定評ある兄貴
- 106二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 16:54:04
スタンピードでももう一人の兄貴と一緒に道を作ってくれた兄貴だ、面構えが違う
- 107122/09/16(金) 16:54:23
「うわぁ!?」
突然、足元が燃え上がった。
炎はどんどん大きくなって、やがて一本の道になる。
「こ、これ……」
『この炎に沿って行けば、あんたの会いたい人に会える。あんまりぐずぐずしてると消えちまうから気をつけろよ』
「う、うん、ありがとう……」
結局誰だか分からないけど、どんな人かは何となく分かった。
『しかしルフィのやつ、こんなに可愛い幼馴染がいたとはなァ。そりゃ死なせたくないわけだ』
「……貴方は……」
『ん?おれのことは別にいいだろ?あんまりおれと喋ってるとこっちの住人になっちまうぜ。
……いつまで経っても、兄貴ってのは弟が心配なもんなんだ。例えどんなに立派になっても、な』
「………………」
『ほら、さっさと行きな。皆んなが待ってるぜ。
……ルフィを頼むよ、お姉ちゃん』
「……うん。ありがとう、ルフィのお兄さん」
『へへへ、いいってことよ』 - 108二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 16:54:29
ルフィがすぐに起きなかった理由これか!
- 109122/09/16(金) 16:58:12
(ちなみにさっきのダイスはエースを出すかどうかを決めただけだったのでそれ以上の意味はありません)
- 110二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 17:00:31
そうか。お願いしたって事はルフィも死にかけて一回ここ来てるのか…なんで?
- 111二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 17:49:41
よくやった‼︎
- 112二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 18:03:31
明日またRED行くけどこんな終わり方だった気がする…
- 113二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 18:12:01
REDの結末
こんなだった気がするのだ - 114二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 19:02:04
- 115二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 19:09:57
スタンピードに続いてラストの見せ場持って行くエースカッコよかったよな!!!!!!
- 116二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 19:16:55
え?直前に伏線としてトットムジカに攻撃入れてたじゃないですか
- 117二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 19:17:13
ローって医者って言ってるけど医術知ってる海賊で役職は船長だろ?
- 118二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 19:18:19
- 119122/09/16(金) 19:36:28
──────
炎に沿って歩いて行く。
歩いても歩いても、真っ暗なのは変わらない。
ついに炎の道が途切れてしまった。
相変わらず真っ暗なままだ。
会いたい人は、見当たらない。
さっきの人が嘘をついてた、ってことはないだろうけど……
「あ」
見つけた。
遥か遠く、暗闇に紛れて消えてしまいそうなぐらい遠く。
こちらを向いているのか、背中を向けているのか、わからないぐらい……遠く。 - 120122/09/16(金) 19:39:28
「あ……あ、あ」
走れる。
走らなきゃ。
行かなきゃ。
今ここで見失ったら、多分……いや、絶対にもう二度と会えない。それは確信できた。
「シャンクス!!待って!!シャンクス!!!」
力の限り叫び、走る。私の何処にそんな力が残っていたのかは分からない。
それでも走る。目に映るシャンクスの輪郭が、だんだんとぼやけていく。
これはきっと、涙のせいだ。そうに違いない──
「待ってえええ!!!置いてかないでええええ!!!!」 - 121122/09/16(金) 19:43:21
遂にシャンクスがほとんど見えなくなってしまった。
視界がぼやけて、前も見えない。
嫌だ。
いやだ。
まって。
おいてかないで。
「やだああああああ!!!!シャンクスうううう!!!!やあああああああ!!!!」
子供みたいに泣きじゃくりながら、それでも必死で走り続ける。
涙を拭わなきゃ。シャンクスがどっちにいるか分からない。
「ふっ……ゔ……!!!」
止まらない涙を無理やり拭い去り、もう一度前を見据えると────
──シャンクスが全速力でこっちに走ってくるのが見えた。 - 122122/09/16(金) 19:57:34
「……ぁえ?」
間抜けな声が漏れてしまった。
私より必死な形相で走ってくるシャンクス。
速さも私よりずっと速い。
「え、あ、え?」
あれ?どうなってるの?
さっきまで、シャンクスは私から遠のいて……
……なんてことを考えるのは後でいい。
シャンクスが迎えに来てくれた。
あとちょっとだ、もうちょっとで、シャンクスに手が届く。
「……シャンクス……じゃんぐずうううう!!!!」 - 123122/09/16(金) 20:01:14
遂に手を伸ばせば届く距離まで来た。
息も絶え絶えでふらつく私を、シャンクスが受け止めてくれる。
『おっと』
「はぁ……はぁ……シャンクス……
……シャンクスうぅ……!!会いたかったよぉ……!!」
さっきからずっと泣いてばっかりだ。でも、さっきまでの涙とは違う。
『……間に合ってよかった。ウタ、遅くなって済まなかった』
「……おそいよ……ばかぁ……さみしかった……!!」
『本当に済まない。それだけじゃない、謝らないといけないことが沢山ある』
「……ううん……わたしも、あやまらなきゃ……」
『お互い様ってやつか?ハハハ、確かにそうかもな。
……まあ、色々話したいこともあるが……一足先に言っておこう』 - 124122/09/16(金) 20:03:31
『……お帰り、ウタ。』
「……ただいま、シャンクス。」 - 125二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 20:05:19
シャンクスありがとうございましたほんとにマジで
- 126122/09/16(金) 20:06:24
涙はまだ止まらない。
でも、やっと心から笑えた気がした。
差し伸べられたシャンクスの手を取る。
その瞬間、真っ暗だった世界に、光が溢れ──
眩しくて、シャンクスの顔が見えなくなった。 - 127二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 20:06:41
パパーッ!!!!!!!!
- 128122/09/16(金) 20:11:50
──────
眩しくて何も見えなかった。
眩しくて、暫く目が開けられなかった。
ようやく目を開けられた。
誰かが私の顔を覗き込んでる。
大好きだった、赤色の髪。
誰かが私の手を握ってくれてる。
これはきっと、シャンクスの手だ。
……何だか、シャンクスの手が震えてる。
寒いのかな?
握り返してあげよう。
……ちゃんと力が入らない。
……私の方が寒い。
シャンクス、抱きしめてほしいな。
顔に水滴が落ちてきた。
……ちょっとしょっぱかった。
……ねえシャンクス、寒いよ。
早く抱きしめ…………
「「「ウタアアァーーーー!!!!」」」
「ぎゃあああああ!!?」 - 129122/09/16(金) 20:16:09
「ウタ!!目を覚ましたか!!大丈夫か!?痛いところとかないか!?」
「ゔぅ、ぐ、ぐるじ……」
「苦しいのか!?」
「……重い……どい、て…………」
「あっ」
大の大人達が一斉に覆い被さってきたら、そりゃ重いに決まってる。
たすけて、赤髪海賊団にころされる。
「わ、悪かったウタ、大丈夫か?」
1番最初に覆い被さってきたシャンクスが申し訳なさそうに言う。
ちょっと意地悪の一つでも言ってやろうかと思ったけど……そんな気分じゃなかった。
「うん、大丈夫。
……ホントに……ありがとう。シャンクス、みんな……」
今は、またみんなに会えたことが、心から嬉しかったから。
本当に、ありがとう。 - 130122/09/16(金) 20:49:03
──────
赤髪海賊団の歓喜の咆哮。
それは遠く離れたサニー号まで届いていた。
「ウタ……」
膝をついたまま立ち上がれないでいたルフィは、そのまま前に突っ伏する。
「……よかった……ホントに…………!!」
「あァ、よかったな」
いつの間にかゾロが隣に座っていた。
その顔は何処かいつもより優しげだった。
「ゾロ……」
「らしくねェじゃねェか、お前がそんな風に取り乱すなんてよ。一体何が見えたんだ?」
「……いや、まさか来てくれると思ってなかったからよ……」
「? トラ男の話か?」
「ルフィーー!!」
「ん?」 - 131122/09/16(金) 20:54:09
部屋から飛び出してきたのはチョッパーだった。
手には何やら薬瓶が握られている。
「出来たぞルフィ!夢の中で頼まれた治療薬だ!」
「お!もう出来たのか!ありがとなチョッパー!」
「治療薬?」
「ああ。ウタが食べたネズキノコは、仮に解毒できて生き残れたとしても体温の低下とか身体の麻痺とかの後遺症が残るんだ。
これはそれを緩和するための薬だ。すぐにってわけじゃないけど、これ飲んで安静にしてれば、後遺症は治る」
「へェ……目覚ました後のことまで考えてたのか。随分手際がいいんだな」
「当たり前だ、ウタがあんなもんで死ぬか」
「で、ウタは何処にいるんだ?」
「あっちだ」
「あっちって……あれ、もう行っちまったのか?」
「ああ、ウタもついさっき目を覚ましたみたいだ。
うし、届けるか!」 - 132122/09/16(金) 20:59:56
「行くのか?」
「いや、ウタには会いてェけど……生きてんならまずはそれでいい。それに、まだシャンクスには会えねえからな。
だからこうやって……おりゃ!!」
──────
「……ウタ……」
シャンクスが、ずっと私を離してくれない。
……ちょっと照れるけど、あったかい。うれしい。
「……!! お頭!!ルフィの船から!!」
「何?……うお!?」
ようやく顔を上げたシャンクスの目の前で、シュルシュルと伸びてきたルフィの腕が止まった。
その手には薬瓶と、メモ用紙。
「ルフィか……これは?」
『チョッパーのくすり のめ』
「…………っふ」
相変わらず汚い字だ。
その端的過ぎるメッセージに、思わず少し笑ってしまった。 - 133122/09/16(金) 21:04:11
「ルフィのとこの医者か……ウタ、飲めるか?」
「ん、大丈……夫」
まだ身体は重いけど、今度はちゃんと掴める。
ルフィの手からしっかりと受け取り、瓶の中身を一気に飲み干す。
「……にがい」
「ハハハ、良薬口に苦しって言うしな」
やっとシャンクスが笑ってくれた。
その笑顔を見て、私もまた、ちょっとだけ笑えた。
「ルフィの仲間が作ってくれた薬ならきっと大丈夫だ。後はホンゴウに診てもらって、しばらくは安静にするんだぞ」
「うん……でも、ちょっと待って」
ルフィの手に残っていたメモ用紙をひったくり、『お返事』を書いてもう一度持たせる。
……本当はルフィに会いたい。
会って謝りたいし、お礼も言いたい。
手紙なんかじゃ伝わらないぐらい、ルフィに言いたいことがいっぱいある。
……伝えたい気持ちもある。
……でも、今はやめとこう。
ルフィがこっちに来ないってことは、向こうもそう思ってるってことだ。
生きてるんなら、きっとまた会える。無理でも絶対会いに行く。
それに、今の私、ちょっとひどい。
現実世界の私は、髪もメイクも崩れちゃってるし、服だってドロドロ。
ルフィに会うなら、もうちょっとちゃんとオシャレしなきゃ。 - 134122/09/16(金) 21:11:16
ルフィの手に手紙を握らせたら、急に眠くなってきた。
さっきまでぐーすか寝てたのに。
「眠いのか?ウタ」
「うん……ちょっと」
「よし……よっと」
「わっ……」
不意にシャンクスに抱え上げられた。片手しか使えないのに、私ぐらいなら何ともないといった具合で、私の身体は軽々と持ち上がる。
「悪かった。いつまでも棺に寝かせてちゃ縁起が悪いからな。
昔お前が使ってたベッドが残ってる。成長を見越して大きめのを買ってたから、多分まだ使えると思うぞ……」
「………………」
「…………ウタ?」
「……すー…………」
そこから先のシャンクスの話は、よく覚えてない。
きっとその時の私は、シャンクスに抱えられて、安心しきった顔で眠ってたんだろうなぁ…… - 135二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 21:17:35
──────
役目を終えた右手が戻ってきた。
「ウタのやつ、何か書いてたよな……」
握らされたメモ用紙を広げ、ウタからのメッセージを読み解く。
『ルフィ。
ありがとう。
またあおうね。
はつしょうり、おめでとう。
だい──
UTA♡』
「…………」
恐らくまだまともに動かない手で書かれた、半ば崩壊しかけの字。書きかけで終わっている文章もある。
だが、だからこそ感じ取れる、ウタが生きているという紛れもない証。
その証を握りしめ、遠のいて行くレッド・フォース号を見据え、ウタに届くように、ルフィは力いっぱい叫んだ。 - 136二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 21:20:34
「違う!!!おれが185連勝中だァ〜〜!!!」
おしまい - 137二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 21:21:55
- 138二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 21:22:41
もしかしたら…俺が見たFilmREDはこれに続いてたかもしれん…
- 139二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 21:26:24
ローとエースは影のMVP
- 140二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 21:26:54
俺が見たREDはこれだった気がしてきた
- 141二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 21:29:37
お疲れ様!面白かった
- 142二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 21:31:05
- 143122/09/16(金) 21:36:46
実を言うとこのスレ見て書きたくなったんですよね
ここだけウタとルフィ最後の会話中に|あにまん掲示板ルフィが堪えきれなくなった世界bbs.animanch.com - 144二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 21:46:31
素晴らしいSSだ…
- 145二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 21:48:52
EDに私は最強が流れる方のfilmred
- 146二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 21:53:08
誰にも奪えない真っ赤な炎……
- 147二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 21:55:05
- 148二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 21:56:30
そうだったのか…そうだったかも…
- 149二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 21:57:06
個人の要望言ってどないすんねん
- 150122/09/16(金) 21:59:17
- 151二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 22:01:23
「あなたと最強」してない本編が詐欺とも言える
- 152122/09/16(金) 22:07:31
- 153二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 22:13:46
?
- 154二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 22:14:52
良かったなあルフィ
大声で泣くことが出来て - 155122/09/16(金) 22:19:00
──────
拝啓 ゴードン様
お久しぶりです、ウタです。
お元気ですか?エレジアは今、どうなっていますか?
まず、謝らないといけないことがあります。
勝手にあんなことしてごめんなさい。ゴードンに相談しなかったのは、怖かったからです。
ゴードンは優しいから、きっと私の身を案じて止めてくれる。
止められるのが怖かったから。あそこで止められてたら、自分が本当に正しいのか、分からなくなってただろうから。
まあ、そもそも正しくなかったんですけど。
それでも、私はまたいつか、自分の歌で新時代を作りたいと思っています。
もう大丈夫。あんなやり方はしないから。
今度こそ、正真正銘。私の歌で、みんなを幸せにしてみせるから。 - 156122/09/16(金) 22:23:03
それから。
私が今、こうやって手紙を書けてるのは、ルフィ達と、シャンクス達と、他にも色んな人のおかげです。
勿論、ゴードンのおかげでもあります。
ゴードンが私をちゃんと育ててくれて、私が健康優良児だったから、ギリギリ持ち堪えられた……って、チョッパー君が言ってました。
私は今、ルフィ達の船に乗っています。
最初はシャンクスの船で療養してたけど、シャンクスが「もっと広い世界を見てみたくないか?」って言ったから。
ルフィ達と一緒に行けば、今よりもっと広い世界が見られるって。
それに、他でもないルフィなら私のことを任せても安心だって。私とルフィは、そんなんじゃないのに。もう。
確かに私、エレジアの外のこと、映像電伝虫からの話でしか知りませんでした。
実際に見てみないと分からないこと、沢山ありました。
知れてよかった。私今、すっごく楽しいです。
シャンクス達と離れるのはすごく寂しかったけど……いつでも戻ってこいって言ってくれてるので、いつかは戻るつもりです。 - 157122/09/16(金) 22:26:27
近いうちにまた、みんなと一緒にエレジアへ行こうと思っています。
ゴードンとも、ちゃんと会ってお話がしたいからです。
それに、あのゴタゴタの後、そのまま出航しちゃったから、私の私物とか置きっぱなしだし。
ゴードンに限ってそんな心配はないと思うけど……出来れば私の部屋には入らないでくれたら幸いです。恥ずかしいので。
もしもう入って掃除とかしてたなら……うん、ありがとう。
それから、今いるみんなと一緒に歌った歌を込めた音貝も同封しておきます。
よければ聞いてみてください。まだ前みたいな本調子じゃないけれど、きっと前より楽しく歌えてると思うから。
それでは。
この手紙が届く頃にはもうすぐ会えると思うけど、もうちょっとだけ待っててね。
短くても、すっごい楽しかった冒険の話、聞かせてあげるから。
世界の歌姫 ウタより - 158二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 22:28:20
このレスは削除されています
- 159122/09/16(金) 22:29:33
──────
「……フフ。大切に聞かせてもらおう。
ああ、ウタの部屋に手を出さなくてよかった。
さて。皆が来るならば、国を挙げて歓迎する準備をせねば……」
本当におしまい - 160二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 22:31:24
俺の観たFilmRed はこんな話だった気がする(存在しない記憶)
確認のために明日もう一回観に行かなきゃ! - 161122/09/16(金) 22:31:50
- 162二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 22:34:21
個人的にはダイスにマジで感謝
- 163二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 22:38:45
きっとビンクスの酒なんだろな…
- 164二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 23:27:03
あとはルフィとウタの本当の再開編を書くだけだな
- 165二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 23:52:53
- 166二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 23:58:33
ダイス神仕事し過ぎだ
- 167二次元好きの匿名さん22/09/17(土) 00:10:19
神ssをありがとう…!!
- 168二次元好きの匿名さん22/09/17(土) 01:41:59
- 169122/09/17(土) 05:28:01
シャンクスのつもりだった
- 170二次元好きの匿名さん22/09/17(土) 05:32:10
おれは今日再びREDを観に行く読者
上質なSSのおかげで出来たかさぶたを抉られるのが怖くなってきた - 171二次元好きの匿名さん22/09/17(土) 05:41:22
イッチありがとうございました
- 172二次元好きの匿名さん22/09/17(土) 06:59:33
- 173二次元好きの匿名さん22/09/17(土) 07:55:47
ボロ泣きした
でも救われた
…今日RED観に行くのにどうしよう - 174二次元好きの匿名さん22/09/17(土) 08:08:45
「私の12年ってなんだったの」とか「あんなキノコが最後のご飯なんていやだ」とか、あんな結末納得できないって筆者の心の叫びが聞こえてくるようだった
魂に響くssをありがとう! - 175二次元好きの匿名さん22/09/17(土) 08:16:25
もう一回見たらもう一回読めばいい
- 176二次元好きの匿名さん22/09/17(土) 10:53:53
やっぱハッピーエンドがええんや
素晴らしいSSをありがとう - 177二次元好きの匿名さん22/09/17(土) 11:54:12
- 178二次元好きの匿名さん22/09/17(土) 18:08:31
お気に入り登録したわ
- 179二次元好きの匿名さん22/09/17(土) 19:27:32
ここの絞り出すような声が本当に好き
- 180二次元好きの匿名さん22/09/17(土) 19:29:33
後腐れもない理想的な終わり方
- 181二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 07:16:38
やっぱりハッピーエンドはいいな
- 182二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 10:18:46
面目ねェ 面目ねェ‼︎
死ぬかと思った…‼︎もうダメかと思った………‼︎! - 183二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 12:58:02
- 184二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 13:25:01
既に亡くなっている人間が死にかけている人間に「こっちに来るのは早い」と命の灯を繋げるのは良い。
- 185122/09/18(日) 16:37:26
- 186二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 16:40:21
せやね
- 187二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 16:55:58
楽しみだな!
- 188二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 16:58:14
頼みます
- 189二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 16:58:57
お願いします!!楽しみに待ってます!!
- 190二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 21:15:57
釜煮込!
- 191二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 21:48:15
油釜を煮込みながら保守
- 192122/09/18(日) 21:57:37
- 193二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 22:07:32
- 194二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 00:18:05
釜煮込君埋!!!
- 195二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 10:24:25
気がついたら次スレ立ってた
- 196二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 11:36:13
ありがとうありがとう
- 197二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 12:59:33
うめるよ
- 198二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 16:02:22
いっそのこと、渋かハーメにあげてください!!おねしゃす
- 199二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 16:38:21
まだ埋まってなかったのかこっちは
- 200二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 16:38:55
200ならハッピーエンド