【FILM N.G.】ルフィ「おいウタ!!」 ウタ「え!? ルフィ!?」 part7【SS】

  • 1FILM N.G.22/10/17(月) 20:17:41
  • 2FILM N.G.22/10/17(月) 20:18:14

    5つ目『ルフィ「おいウタ!!」 ウタ「え!? ルフィ!?」part5“奏血のパレード”編その2』

    ルフィ「おいウタ!!」 ウタ「え!? ルフィ!?」 part5|あにまん掲示板ONE PIECE FILM N.G. part5 “奏血のパレード”編その2前スレ『ルフィ「おいウタ!!」 ウタ「え!? ルフィ!?」part4“奏血のパレード”編その1』https://bbs.a…bbs.animanch.com

    4つ目『ルフィ「おいウタ!!」 ウタ「え!? ルフィ!?」part4“奏血のパレード”編その1』

    ルフィ「おいウタ!!」 ウタ「え!? ルフィ!?」 part4|あにまん掲示板ONE PIECE FILM N.G. part4 “奏血のパレード”編前スレ『ルフィ「おいウタ!!」 ウタ「え!? ルフィ!?」 part3 “孤独の歌姫”編その2』https://bbs.anim…bbs.animanch.com

    3つ目『ルフィ「おいウタ!!」 ウタ「え!? ルフィ!?」part3“孤独の歌姫”編その2』

    ルフィ「おいウタ!!」 ウタ「え!? ルフィ!?」 part3|あにまん掲示板ONE PIECE FILM N.G. part3 “孤独の歌姫”編その2前スレ『ルフィ「おいウタ!!」 ウタ「え!? ルフィ!?」 part2 “孤独の歌姫”編その1』https://bbs.ani…bbs.animanch.com

    2つ目『ルフィ「おいウタ!!」 ウタ「え!? ルフィ!?」part2“孤独の歌姫”編その1』

    ルフィ「おいウタ!!」 ウタ「え!? ルフィ!?」 part2|あにまん掲示板ONE PIECE FILM N.G. “孤独の歌姫”編前スレ『ルフィ「おいウタ!!」 ウタ「え!? ルフィ!?」』https://bbs.animanch.com/board/969071/http…bbs.animanch.com

    はじめ『ルフィ「おいウタ!!」 ウタ「え!? ルフィ!?」part1“はじまりの風”編 』

    ルフィ「おいウタ!!」 ウタ「え!? ルフィ!?」|あにまん掲示板 何処かの海――― サニー号の選手で昼寝をしていたルフィのもとへニュース・クーのカモメがやって来た。「……んあ?」「クー!」「ああ新聞か? でもおれ読まねえしなー。要らねえ!」「クー!?」 いつも新聞…bbs.animanch.com
  • 3二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 20:18:14

    新スレだー!!

  • 4二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 20:18:41

    復活バンザイ!

  • 5FILM N.G.22/10/17(月) 20:19:14

    タイトルをリニューアルで心機一転! 営業再開です(実質なにも変わってない)

  • 6二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 20:19:24

    やった!有難うございます!スレ主!

  • 7二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 20:21:02

    縦乙

  • 8二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 20:21:44

    >>5

    ありがとう

  • 9FILM N.G.22/10/17(月) 20:22:52

    もうpart7ですよ皆さん。ここまで読んでくれてありがとう
    今週もONE PIECEは面白かったですね。やっぱり本編は最高だぜ!!!

    それでは更新していきます!

  • 10FILM N.G.22/10/17(月) 20:26:10

     叫ぶバルトロメオ。強烈な攻撃を受けた二人が無事なのか確認しに行きたいがこの場には眠る者達と傷付いた者達が居る。守りの要である彼は軽々に動くわけにはいかないのだ。
     だが心配は杞憂だったようで二人は直ぐに瓦礫から飛び出してくる。

    「なんだ無事だったべか」
    「無事なもんかクソがっ!!!」
    「ルフィの前でわらわは無様な姿を……ッ!!! 許さぬぞ魔王めェ!!!」

     怒りで表情を険しくするローとハンコックは戦線に復帰するなり果敢にトットムジカを攻め立てる。その諦めない姿にウタは表情を僅かに顰める。

    「……だから無駄だって……!」

     トットムジカから湧き上がる力が小さな粒子となって無差別に振り撒かれる。それはまるで星の瞬きの如く輝き―――

    「言ってるでしょッ!!!」

     爆発。口から発射していた怪光線を爆弾のようにバラ撒いたその攻撃は周囲を紅蓮に染める。ウタの内側で荒れ狂う激情を形にした光景がエレジアに作られる。

     燃え盛るエレジアの街。

    「ぐッ!? ううゥ……!」

     忘れたくとも忘れられない悪夢の記憶。それに苛まれながらもウタは魔王の圧倒的な力を用いて全てを破壊していく。
     目に映る光景が遠ざかるような錯覚に陥る。膝から下の力が抜けそうになって体がふらつく。それは睡魔による症状だがウタは左手を握り締めることで痛みによる意識の覚醒を促す。

  • 11FILM N.G.22/10/17(月) 20:26:57

    「駄目……ッ! 寝るな……もっと沢山の人にわたしの声が届くまで……!」

     爆炎を引き裂いて突撃してくる“敵”を睨み付ける。

    「邪魔を……!!! しないでェええええーーッ!!!」

     拒絶の叫び。常ならただの声だったそれがトットムジカの影響で異質の力を帯びる。空間を歪ませて波及する音がローとハンコックを通過する。物理的なダメージは無く問題無く素通り出来た二人だが―――

    「な、んじゃと……これ……は……!?」
    「ッ!!?」

     意識が飛びそうになる。力が抜けた所為で突撃の勢いが急速に落ちた。

    「いけない!!? その音を聴いては駄目!!?」

     ロビンの警告はしかし遅かった。既に“音色”を聴いてしまったローとハンコックが落下を始めている。それはトットムジカにとって格好の獲物、魔王の爪が高く振り上げられる。

    「二人が危ない!!!」
    「……私にお任せを!!!」

     幾何かの休息のお陰で動けるようになったブルックが駆け出す。取り出したヴァイオリンの弦に刃を這わせ掻き鳴らされるは騒快(そうかい)なる音楽。

  • 12FILM N.G.22/10/17(月) 20:27:46

    「“パーティーミュージック”!!!」

     ウタが発した音とブルックの音がぶつかり合う。そうして弾けて飛び散った音を掻い潜るようにしてブルックは2人の元へと跳び上がる。周囲には夥しい数の音符戦士。

    「“キントーティアス”―――!!!」

     閃く高速剣。ブルックは擦れ違う音符戦士達をバラバラに斬り捨てて疾駆、そして眼前には振り下ろされようとする魔王の爪。

    「“幻想曲(ファンタジア)”!!!」

     真っ向勝負。危機に陥ったローとハンコックを救う為にブルックが選んだのは力技。

    「ぐぅううう!!?」

     だがブルックの剣はゾロの剛剣とは違い身のこなしや緩急によって発揮される柔剣。はっきり言って力押しには不向きでありトットムジカの攻撃も1秒さえ持ち堪えられない。
     しかし今はそんな僅かな時間が欲しかったのだ。

    「ありがとうブルック!!!」

     ロビンの体、ローとハンコックの体から咲き伸ばされた連なる腕が掴み合う。

    「引っ張るべェーー!!!」「姉様ァーー!!!」

     その光景はまるで綱引き。ロビンの能力によって繋がれた2人を集まった全員で一気に引き寄せる。そうしてトットムジカの攻撃圏内から退避したことを確認したブルックは爪の勢いを受け入れて後方へと吹き飛びながら退く。

    「うおおおい、トラファルガー!!? こんな時に寝るんじゃねェべ!!?」
    「……う、うるせェ……耳元で騒ぐんじゃねェ」
    「不覚……わらわとしたことが何度も……!」

     救出されたローとハンコックは見るからに眠そうな様子を見せていた。あれだけ体に漲らせていた覇気が精彩を欠き弱々しくなっている。戦闘中だと云うのに有り得ない光景。

  • 13二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 20:39:10

    叫びが歌判定になってるのタチ悪いだろ

  • 14FILM N.G.22/10/17(月) 21:05:18

    「あの子は歌で人を眠らせることが出来る!! 迂闊に聴いては彼女の術中に嵌まってしまう!!」
    「歌じゃと!? 先のいったいどこに歌など在った!?」

     ハンコックとローが聴いたのは叫びのみ。それなのに眠らされそうになったのはどういう意味だと眠気を頭を振って追い出しながら聞く。
     そこに後方まで吹き飛ばされていたブルックが戻ってきて説明をする。

    「“がなり”……シャウトとも言う物が歌には有ります。怒りや悲鳴、熱狂などのメッセージを言葉で無く音で伝える技法ですが」
    「能力の応用! 面倒な力を持ってやがる!」

     敵対したウタウタの能力の危険性を身に沁みて実感したローは拳で胸を叩いて気合いを入れ直す。
     ハンコックとローの覇気が再び肉体に満ちる。眠気は完全に飛んだようだが2人のウタへの警戒度は一層増す。

    「ある程度は覇気で防げるが続けて聴くほど抵抗が難しくなるぞ!」
    「ウタ様のウタは自然と耳を傾けたくなるべー……って、それってかなり凶悪じゃねェべか!?」

     四皇の一角を崩した実力者であるローや強さによって七武海の称号を得たハンコックレベルの覇気でさえ崩すウタの能力。まるで無敵のようにさえ思えるが―――

    「でもおかしい。彼女のウタウタは体力の消耗が激しかった筈。それなのに何故?」

     何故ここに来て“眠らせる力”を解禁してきたのか。それがロビンには解せなかった。

  • 15二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 21:11:30

    そういやハンコックも覇気ガードできておかしくないか...

  • 16FILM N.G.22/10/17(月) 23:57:08

    「……うー、イテテ……悪ィなちと気絶してた」
    「フランキー! 大丈夫なの?」
    「ああ、スーパー復活だぜ。仲間が戦ってるってのにいつまでも眠ってるわけにはいかねェからな」

     そんな時に傷付いていたフランキーが目を覚ました。彼は身を起こすとウタの方へ目を向ける。

    「トットムジカ。一国を滅ぼしたってのもフカシじゃねェ、なんちゅう暴れん坊だ―――」

     フランキーはそこで言葉を詰まらせ「……何だありゃ?」と自分が見た物が信じられないような言葉を漏らす。

    「どうしたロボ屋。何があった」
    「トラ男!? ……いやおれの見間違いかもしれねェが……」

     気を失っている間に何人も助っ人に来ていたのを知ったフランキーは驚くが、それは後回しにして今目にした異変……ウタを指差して伝える。

    「歌姫のあの“左手”……ありゃいったいどういうことだ?」

     初め誰もフランキーの言うそれが何の事かわからなかった。ウタの左手と言えばナイフによって出来た刺し傷を引き裂いたアームカバーで止血している状態だ。今になってそれを指摘するような理由など無い筈だと首を傾げ―――

    「……え? あれは!」
    「あまり……良い変化とは思えませんね」

     ロビンとブルックも気付く。ただ気付いたは良いがその異変が何を意味するのかまではわからない。

    「何が起こっているんだ!?」

     ゴードンさえ知らないウタの身に起きた異変、それは―――

  • 17FILM N.G.22/10/17(月) 23:58:07

    「『……壊す』」

     左手を覆う黒い靄。旋風に巻かれるように指先から腕へと駆け上がるそれは末端からじわじわとウタの姿を変化させていた。

    「『……壊す、全て』」

     瞳に灯る赤い輝き、そして……“黒い装束に変化した左手”。傷口を上から締め上げるような、真っ赤な薔薇の意匠が施されたそれが靄の下から現れる。 じわり、じわりと。彼女の身を黒く染めていく。

    「『わたしの邪魔をするもの……全部……全部ッ!!!』」

     エレジアに響く魔王の嗤い声。

    「『―――あ……ア……Ah……あああアアアAh―――!!!』」

     叫喚。それは地の底から震え上がらせるような声。
     絶叫の如きウタの声がトットムジカの嗤い声を塗り潰す程の大きさで放たれた。その音波はさながら津波や土石流のような勢いで周囲に拡散していく。

  • 18FILM N.G.22/10/17(月) 23:58:41

    「ッ!!! 耳栓を!!!」
     誰の発言だったかは関係無い。フランキーは理由を聞くこともせず迅速に耳栓をこの場に居る全員に行き渡るよう投げ渡す。ウタの声の危険性を十分承知していた彼等は一も二も無くそれを耳に嵌める。

    「『―――あ……ア……Ah……あああアアアAh―――!!!』」

     直後に全身に浴びる歌姫の叫び声。耳栓をしたので眠らされることは無いと誰もが思った―――

    「……なっ……!?」
    「そんな」

     意識が遠のいた。有り得ない。音は確かに防いだ筈なのにどうして? 黒く塗り潰されそうになる意識を必死に繋ぎ止めながら彼等はそう考える。考えて考えて……気付いた。
     響く音が空気を大地を震わす。“人の身”を震わす。

    「“伝導”!!? まさかそんな人の声で、こんな外で……!!?」

     オーケストラがホールで楽器を鳴り響かせる時、聴衆は腹の底にまで音が響くような感覚を覚える。それは閉じられた空間で反響した大音量が人体まで震わせることによって起きる現象。

     音とは耳だけで聴くに非ず。

     魂を揺さぶる声を持つ歌姫。そんな彼女が本気で歌えば人体を震わせ音を“体感”させるのだ。

  • 19FILM N.G.22/10/17(月) 23:59:41

    今日はここまで。次は明日の夜を予定しています

    こいつ! 戦いの中で成長している!

  • 20二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 00:07:12

    ショウジョウのウタウタバージョンってヤバくね?

  • 21二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 00:09:56

    >>20

    油断したな!!歌姫とはこういうものだ!!

  • 22二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 00:10:29

    技術の問題だったらウタにできてもおかしくないよなぁ

  • 23二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 00:21:00

    もはやトットムジカに取り憑かれてるんじゃない
    トットムジカを使いこなしていやがる!

  • 24二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 00:22:24

    ネズキノコのクソコンボは封じたけど極限まで追い詰められて進化しちゃったよ
    まぁ海賊王になる男(ルフィ)の幼馴染兼ライバルだしこれぐらいはやってくれないとなぁ!?(白目)

  • 25二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 00:27:06

    対話対話と言っておきながらウタの思想を否定することしかできなかったからね…
    まあ肯定できない内容ではあるが、やめろやめろと言われてやめられるレベルではなかった

  • 26二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 00:28:28

    終わったー⁉︎ ムリムリムリムリ‼︎こんなバケモノ!!!

  • 27二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 00:29:18

    暫定全員眠っちゃったけど
    ここから入れる保険があるんですか…!?

    保険会社クロスギルド…?

  • 28二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 02:17:01

    このレスは削除されています

  • 29二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 02:17:40

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  • 30二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 02:18:25

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  • 31二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 02:18:56

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  • 32二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 02:19:19

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  • 33二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 02:19:39

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  • 34二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 02:20:01

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  • 35二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 02:20:29

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  • 36二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 02:28:38

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  • 37二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 02:29:10

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  • 38二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 03:19:34

    なあに心配することはねえ
    ギア5と謎の力で現実世界のルフィが寝ながら起き上がって夢のルフィと同時攻撃してくれる

  • 39二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 03:31:39

    このレスは削除されています

  • 40二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 06:45:33

    ウタが映画のラスボスにふさわしいクソ性能になってる……

  • 41二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 07:01:00

    >>21

    そうだったのか…くそォ

  • 42二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 10:34:30

    また爆撃されてたのか…
    保守

  • 43二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 10:50:50

    レス爆撃ってIP規制対象外なのか?

  • 44二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 10:52:29

    >>43

    IP規制してもキャッシュやらいじれば……って感じ

  • 45二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 10:53:41
  • 46二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 10:58:40

    >>45

    thank you!

  • 47二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 11:24:57

    >>45

    すげぇ便利だなこれ

    スレミュートもありがたい

  • 48FILM N.G.22/10/18(火) 18:41:06

    ちょっと更新。もし掛けたら夜中にまた更新します

  • 49FILM N.G.22/10/18(火) 18:41:52

     全員がこの状況を打開しようとウタを目指して足掻くが……魔王はそれを嘲笑うように鍵盤の四肢を振るってねじ伏せる。
     ウタの力が増す程にトットムジカの力が増し、トットムジカの力が増す程にウタの力が増す。それは一人の能力者が振るうには大き過ぎる力。これだけの戦力が集まって尚、彼女に触れられる位置にさえ至れない。

    「“バリアボール”―――!!!」
    「“ROOM”―――!!!」

     だから彼等は攻める事を諦める。この状況を乗り切るには守りに回るしか無いと決断する。

    「“サウンド”!!!」
    「“凪(カーム)”!!!」

     二重に発生した力場が全員を包み込む。

    「くっ!!?」

     今にも眠ってしまいそうな意識を無理矢理起こしながらローとバルトロメオはウタの音波から身を守る。慣れていない、想定していなかった能力の使い方によって身動きは取れず、その姿はさながら嵐が過ぎ去るのをただ耐えるだけの哀れな鼠に見える。

  • 50FILM N.G.22/10/18(火) 18:42:07

     ローよりも前に出てバリアを張ったバルトロメオに向かってトットムジカの攻撃が集中する。“バリバリの実”の能力で作ったバリアは全ての攻撃を防ぐ。
     だがそれにも例外は有る。

    「耐えられるか人喰い屋!!?」
    「キツイべ!!? 相手の攻撃がデカ過ぎて地面ごと吹っ飛ばされそうだべェ~!!?」

     一撃ごとにバルトロメオ達の居る位置が地面ごと僅かに後ろへと動く。バリアがどれだけ堅牢でもそれ以外はそうもいかないのだ。更には罅まで入り始めたバリアを見てローは状況の悪さに舌打ちする。

    (クソ!!! やはりまだ広範囲に掛けるのは無理が在ったか!!!)

     ローの“凪(カーム)”、又の名を“お前の影響で出る音は全て消えるの術”は本来オペオペの実の覚醒によって行使される“R・ROOM(リ・ルーム)”によって個人に対してのみ効果を十全に発揮する。
     そしてバルトロメオの“バリアボール・サウンド”も本来はバリア内部の音を外部に漏らさない、対象を閉じ込めるようの技。
     つまり現在どちらの効果も不完全な状態で使っていることになる。その所為で“凪(カーム)”は音を遮断し切れず“バリア”は強度が不足し、しかも能力本人以外に対しては効力が著しく弱まっている。
     ローとバルトロメオ以外は既に意識を手放してしまっていた。つまりそれは二人の意識が閉ざされた時―――

    「死んでも寝るなよ人喰い屋ァ!!!」
    「うるせェトラファルガー!!? そんなのおれァ百も承知だべ!!! つか寝たら死ぬべこの状況ォーー!!?」

     圧倒的窮地。今、この場に居る全員の命が2人の双肩に重くのし掛かっていた。

  • 51FILM N.G.22/10/18(火) 21:36:48

     配信開始から2時間が経過。深夜を越えたと云うのにそれを見ようと電伝虫の前に集まる人々は加速度的に増えていく。それはライブに参加しようとエレジアに向かう船だけに留まらず世界の島々で起きていた。
     無論それはCP―0から報告を受けた五老星も知る事態。

    「海軍とCPはまだエレジアに到着せんのか!?」
    「そもそもライブ当日に間に合うだけ御の字だったのだ……! それがまさかこんなッ!」

     音声を切った電伝虫の映像を前にして事態の深刻さを再認識する五老星。その現状を補足するように報告に出向いたCP―0所属のロブ・ルッチが口を開く。

    「……科学部隊からの報告が正しければ現在、この配信を見ているのは世界の人口の4割に届くそうです」
    「4割だと!!? 何時だと思っている!!」
    「今尚その割合は上昇中……一時間後には5割を超える見解のようです」
    「5割の人間が消えてみろ! 社会秩序は崩壊し、世界は未曾有の混沌を迎えることになるぞ!!!」

     血を分けた家族、近所の友人、職場の同僚、行き付けの店屋……もし自身の周りからその半分以上の人々が一夜にして消えたなら―――世界はこれまでの生活を維持出来なくなるのは目に見えている。

    「……今は信じる他あるまい」

     五老星の1人は青褪めながらもそう言う。

    「本隊は間に合わずとも、一部の先行した彼等が間に合うことを」
    「大将2人に“セラフィム”か」

     祈るように拳を握り締めて声を絞り出す。

    「……世界の均衡は決して崩されてはならんのだ」

     世界の命運を分ける一夜。それを見届けるべく五老星はただじっと画面を視界に収めるのであった。

  • 52二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 00:38:59

    省エネモードとはいえ2時間はそろそろ限界じゃないですかね…

  • 53二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 00:42:01

    一気見してここまで追いついた。とんでもねぇクオリティのスレを見つけちまった。

  • 54二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 01:55:04

    なあに5割ならまだゼファー先生の方が規模がでかい
    まだ何とかなる

  • 55二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 02:14:10

    これあれだ、別ルートでパワーアップしたら本編以上に強くなったカービィラスボスだ。

  • 56二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 02:22:22

    確かハッピーエンドは確約してたよね!?


    ね!?

  • 57二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 03:43:58

    これに限らずFilm RED関連の様々なSSに影響受けて不慣れながらも初めて執筆みたいなのしてるけど、やっぱ本職は違うんやなぁ…とわからされた

  • 58二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 10:47:19

    保守

  • 59二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 11:01:15

    >>57

    しかもスレ画はスレ主製だぞ?

    この世には頑張っても勝てない人間がいると言うことを知ることが真の成長というものだ。

  • 60二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 13:26:17

    >>59

    クラッカーはあにまん見てないで早く氷を溶かせ

  • 61FILM N.G.22/10/19(水) 17:05:08

    保守感謝
    それでもおれは他の人が書いたSSが読みてえしイラストが見てえんだ
    ……本職? 本職ってなんだ?

    ちょっと書けたので投稿じゃい!

  • 62FILM N.G.22/10/19(水) 17:09:15

     ルフィは突然“ウタワールド”に現れた者達を見て驚く。

    「―――ハンコック!? それにトラ男のところの白熊! 何でここに居んだ!?」

     ハンコックとその妹達、そしてベポ。そんな予想外の顔触れが居る理由を同じくウタワールドに囚われたロビン達が説明する。

    「彼女達はライブに参加する目的でここに来たの。……あとごめんなさいルフィ。結局私達も眠らされてしまった」
    「現実じゃあトラ男とロメオが頑張ってスーパー堪えてくれてる筈だ!!!」
    「外を任されたと云うのに面目次第もございません」

     自分達の力が及ばず申し訳無いと表情を曇らせる3人にルフィは「気にすんな!!」と力強く言葉を掛ける。

    「まだ何も終わっちゃいねェ!!! おれ達が踏ん張るのはここからだ!!!」

     “ギア4(フォース)・スネークマン”に変化、攻撃力は多少下がるが手数と速度を増した技で音符戦士を叩き落としたルフィは鋭い目をウタへと向ける。

    「もう少し!!! あと少しで“何か”掴めそうな気がすんだ!!!」

     ルフィの言葉にウソップは声を上げる。

    「だから何かって何だよルフィ!!?」
    「知らねェ!!!」
    「うおおいッ!!? だからそれじゃあお前の何を手伝えば良いかわからねェって言ってるだろ!!?」

     雰囲気的に状況を打開する為の“何か”なのは確実。しかし当の本人でさえそれが何なのか把握出来ておらず仲間達は結局延々とトットムジカや音符戦士と戦闘を続けるばかり。ゾロは幾度となく魔王とぶつかり合ったボロボロの姿で咆える。

  • 63FILM N.G.22/10/19(水) 17:10:09

    「何かわかりそうならさっさと捻り出せ!!!」
    「んぎぎぎぎ~……!!」

     ルフィも必死だ。ゾロだけで無く仲間全員が長い戦いでボロボロになっている。余裕は未だ在るとは言えあまり悠長に考えてはいられないのだ。

    「ル、ルフィ! わらわにも何か手伝えることは無いか!? ここでそなたの役に立てなくては己が許せぬ!!!」

     触れた物を石化させる蹴りによって音符戦士を砕きながらハンコックがルフィの隣りに並ぶ。

    「いやー? 来てくれただけで嬉しいけど?」
    「はう♡!? い、いやしかしそれではわらわの立つ瀬が無く……♡」
    「そうは言ってもなァ~」

     首を傾げるルフィは直後、ハンコック共々トットムジカの薙ぎ払いによって「うわああ!!?」と吹き飛ばされる。既に瓦礫の山と化している場所に突っ込んだ2人は直ぐに抜け出して体勢を整える。

    「……忌々しい!!! こちらの攻撃は効かぬのにあちらはバカスカと!!!」
    「あれ? ハンコックお前今の避けられたよな? 何で一緒に吹っ飛んできてんだ?」

     それは位置的な問題。ルフィは避けられないタイミングだったがハンコックがぎりぎり避けられた位置だった。それなのに何故か一緒に吹き飛ばされたことにルフィは不思議に思う。

    「む? いやわらわも避けようと思ったのじゃが……実は直前に“これ”を見つけてしまって」

     ハンコックはそう言うと攻撃を受ける直前に“助けた”それを片手で掴んだままルフィの目の前に吊り下げる。

  • 64FILM N.G.22/10/19(水) 17:10:39

    「……は? ……ええええェ!!?」
    「ただの犬猫なら無視したんじゃが……」

     それを見たルフィは目が飛び出さんばかりに驚く。ハンコックが助けたものとは―――

    「“サ~ニ~”!!」

     デフォルメされた可愛い獅子の顔で鳴く小さな二足歩行の珍獣。

    「サニー!!? お前サニー号かァ!!?」

     チョッパーの人獣形態ような姿になった“サウザンドサニー号”がそこに居た。

  • 65二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 19:03:24

    ここでサニー
    どう関わるのか

  • 66二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 19:30:49

    来たか…!170憶のマスコット!

  • 67二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 19:47:18

    今このタイミングでサニー…?
    そういや映画でもサニーがサニー君になった理由はハッキリとは描かれなかったなあ
    まぁラストで現実に戻ってサニー号に呼びかけてもサニー君みたいに応えない事でウタはもういないと再認識するという意味はあったんですけど(曇り眼)

  • 68FILM N.G.22/10/19(水) 21:46:28

     ルフィに会えたのが嬉しいのか彼に向かってパタパタと手を伸ばして振るサニー。ルフィはハンコックから受け取ると横から見たり下から見たりしてサニーの全身を観察する。尻尾は獅子と云うより狐のようなふさふさした物だった。

    「サニ~!」

     突然のサニーの登場に精神的にも物理的にも気が抜けたルフィは“ギア4”を解除してしまう。

    「一体どうなってんだァ!?」
    「俄に信じがたいが……本当にそなたの船なのじゃな」

     ルフィに抱き付いて頭の天辺までよじ登るサニーを見ながらハンコックは「ふむ」と少し考え込むと自身が気付いたことを述べる。

    「……わらわ達が眠らされた音波はかなり強力じゃった。それこそこの島全域に届くと思わせる程に」

     事実、ウタの歌声はエレジア全てに届いていたのだろう。トットムジカによって増幅された力はそんな不可能を可能にしていた。

    「その時にそなたの船も歌を聞いたのじゃろう。故にこの世界に囚われた」
    「人間や動物以外にも効くんだな、あいつの能力」
    「サ~ニィ!」
    「くっ! ルフィに甘えおって羨ましい!」

     ルフィに撫でられているサニーをハンコックは爪を噛んで睨む。もし妹がこの場を見ていたら船に嫉妬しないでよ姉様と言っていたことだろう。

    「そういえばハンコック」
    「なんじゃルフィ?」

  • 69FILM N.G.22/10/19(水) 21:47:20

    「お前はあんまり不思議に思わねェんだな。サニーがこうして生きてんの」

     最初は驚いたが先代の船である“ゴーイングメリー号”の件も在って魂が宿る……船妖精“クラバウターマン”が憑くことは知っていたので現状を直ぐに受け入れることが出来た。しかしハンコックはそんなことなど知らない筈なのにサニーがルフィの船であると半ば確信して助けてくれた。
     ルフィのそんな疑問にハンコックは何でも無い風に答える。

    「なんじゃそんなことか。別に不思議ではない。わらわの能力は魅了した者を石に変える……つまり“生きた無機物”へと変える力じゃ。それは物には命が宿る余地が在ることの証明たり得る」
    「……?」

     ハンコックの言っている意味が分からずルフィはサニーと一緒に首を傾げる。

    「つまりじゃ! ……もし無機物に命が宿らないのであればわらわがメロメロで石化させた時点で相手は死んでなくてはおかしいという意味じゃ」
    「……ああ……つまり不思議物質ってことか」
    「う、ううゥーん……まあ、そういうことじゃ!」

     伝わったような伝わっていないような。ただこの説明を細々としても事態の解決には繋がらないと判断してハンコックは切り上げることにした。

  • 70FILM N.G.22/10/19(水) 22:21:41

    「“メロメロの実”を食わされた後の余興で前任者が石化させた者の解除をやらされたが……まあ無理じゃった。流石にそれが石化させた本人で無くばいけなかったのか、それとも能力者の死と共に石になった者も死んで“ただの石”と判断されたのかまでは知らぬが」

     ハンコックは土埃を手で軽く払うと身形を整えてトットムジカに向き直る。

    「しかしウタウタとは面白い力じゃな。形は違えど魂……心に不自由を架する点で見ればわらわの石化に近い」
    「そうなのか?」
    「うむ。こっちの死が肉体にどのような影響が出るかはわからぬが少なくとも現実の肉体が息絶えれば此方でも死ぬじゃろう? 石化した者も砕けば死ぬ」
    「――――――」

     ハンコックの言葉を聞き、ルフィは頭の中で何かが繋がったような気がした。その微かな感覚を確かな物とする為にルフィはサニーを両手に抱えると目を合わせる。

    「サニ~?」
    「……生きてる……起きる」

     ウタワールドに囚われた者は眠る。そして解放されれば目覚める。幼い頃にウタの能力で眠った時も彼女が疲れて眠ってしまえば直ぐに起きることが出来た。

    「この世界は“完璧”じゃねェ」

     掴んだ。

    「……? ルフィ、今何か言ったか―――」
    「サニー助けてくれてありがとう。あとちょっと頼む」
    「サニ~」

     ルフィはサニーをハンコックに托す。

  • 71FILM N.G.22/10/19(水) 22:22:16

    「え? ルフィ?」
    「行ってくる!!! お前が来てくれたお陰だ、本当にありがとう!!!」

     困惑するハンコックに礼を告げてルフィは迷い無く駆け出す。全速力の走りはどんどんと距離を縮めていく。向かう先は勿論決まっている。
     伸ばした手が届いたのだ。

    「“聞こえる”」

     ルフィは走る。ウタの元へ。魔王が生み出す黒い靄によって左腕が肘まで“消失”してしまっている彼女の元へ真っ直ぐに。

    「……そうだ……この世界に居ようと……おれの体はそこに在る……!」

     ずっと聞こえていた。ただ気付けなかっただけで。

    「“繋がってる”!!!」

     心臓の鼓動が二重になってルフィの胸を叩く。
     “解放”を望むように強く、強く……ルフィの心を打ち鳴らすのであった。

  • 72FILM N.G.22/10/19(水) 22:23:22

    今回の更新はここまで。次の更新は明日の夜かな?
    読んでくれた方、ありがとうございます



    反撃の時は来た

  • 73二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 22:26:01

    🥁🥁🥁

  • 74二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 23:53:02

    懐かしいな "解放のドラム"が聞こえる
    800年ぶりに聞く……!!
    間違いないそこにいるぞ

  • 75二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 03:13:30

    ほしゅ

  • 76二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 03:24:19

    万物に命宿ってたらウタワールドえらいことにならん?

  • 77二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 09:10:03

    保守

  • 78二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 12:08:15

    保守

  • 79二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 17:47:15

    保守

  • 80二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 20:51:06

    保守

  • 81FILM N.G.22/10/20(木) 23:16:50

    保守感謝。それでは投稿します

  • 82FILM N.G.22/10/20(木) 23:17:27

    「ふふ……あは!? あははははははは!!?」

     ウタは今、とても気分が良いと思った。

     能力の全力行使。ウタワールドの維持とトットムジカを召喚しての戦闘行為、そして配信映像の為に電伝虫へ幻覚を見せる。それら全てが負荷となって彼女に圧し掛かる。
     睡魔を堪えたことで発生する頭痛と吐き気が前後不覚に陥らせ、ナイフで刺し貫いた左手が激痛と痺れを訴える。それらはまるで感情が叫ぶ悲鳴の騒音となってウタを苦しめた。

     ―――だがそれも少し前までのこと。今は違う。

     トットムジカが暴れれば暴れる程に自身を惑わす“雑音”が消え、体からは重さが無くなったかのように軽くなる。顔からは血の気が引き唇は青褪め指先は震えている、それなのに心は微睡みを揺蕩うようにふわふわと心地良いと思う。
     ウタは自分の左手を見ながら呟く。

    「はぁー……『もう直ぐだ』」

     闇に呑まれ夢の世界から消えていく左手を。傷口から溢れ出す黒衣を身に纏う現実の左手を。ウタは裂けるような笑みを浮かべて見詰める。

    「『もう少し、あと少しで……わたしは皆を“新時代”に連れて行ける!』」

     夢の肉体の崩壊は肘を越えて肩にまで及び始めるが……そこに恐怖は無いと思う。何故ならその現象が自身の消失で無いと彼女は感じているから。

     トットムジカが嗤う。嗤いながら暴れ狂う。その圧倒的な力で何もかも破壊する“感覚”が心地良いと思う。

    「『待っててね皆!!』 『この辛い現実からわたしがきっと救ってみせるから!!』」

  • 83FILM N.G.22/10/20(木) 23:18:20

     感じる感じる感じる。現実の肉体が黒衣に包まれる程に“鼓動が弱まる”のを感じる。だがそれに反して意識の覚醒率は高い。

     ―――これなら目覚めながら息絶えられる―――

     それは確信。この黒衣が己の“フェーネラルドレス”になるのだと云う確信。どうしてこのような状態になったのかはわからない。おそらくトットムジカが原因だろうと思うが……意味を探ることはウタにとって何の意味も無い。
     重要なのはあれだけ待ち望んだ“新時代”が目の前まで近付いている、その一点だけ。歓喜が止めどなく溢れてくるように思う。喉奥から漏れ出す笑いが魔王のそれと重なっていく。

    「―――『それなのに』」

     ウタは笑みを浮かべて“彼”を見下ろす。

    「『ルフィは諦めてくれないんだね』」
    「…………」

     暴れ狂うトットムジカの前に立つのはルフィ。戦いの中で傷付いた姿、しかしその身に宿す覇気に一切の陰りは無く。

    「『もしかして未だ勝てる気でいるの?』」
    「当たり前だ」
    「…………」

     ルフィの迷いの無い言葉にウタの瞳が僅かに揺れる。

  • 84FILM N.G.22/10/20(木) 23:19:35

    「『……ルフィがそう思っていても、現実はもうわたしの勝ちだよ。ここからの逆転なんて無理に決まってるでしょ?』」
    「おれの限界を、お前が勝手に決めんな」
    「『負け惜しみにしか聞こえないなァ……ほら、負け惜しみ~』」

     ウタは子供の頃にルフィに対してよくからかう意味でやっていた“負け惜しみ”の仕草をする……が、左腕はもう存在しないので右手だけで爪を立てる仕草を行った。これをすると負けず嫌いのルフィは直ぐに突っかかって来たものだ。

    「…………」

     しかしウタの思惑に反してルフィは此方を見上げてくるのみ。視線は鋭いままだが動くことはしない。

    「『……本当にまだ勝つ気で居るんだね、でも184連勝は―――』」
    「ウタ」

     戦場の中に在って、ルフィの次の言葉は……

    「やるよ。183連勝。お前に」

     静かに、だが確かにはっきりと届いた。

    「『……は?』」

     ウタの笑顔が固まる。それはあの負けず嫌いなルフィの口から出た言葉だと信じられなくて、そしてそれを聞いた彼女の心には言葉に出来ない怒りが湧き上がってくる。

    「『ルフィあんた―――』」

  • 85FILM N.G.22/10/20(木) 23:21:06

     ウタが何かを言い放とうとする、その前に。

    「何勝だって構いやしねェよ」

     ルフィは強い力が込められた言葉で告げる。

    「今、この時……お前に勝てるなら!!!」

     ドン!!!

    「『ッ!!? 何!!?』」

     大きな音が響く。それままるで太鼓を強く叩いたような腹の底に響く音。

    「ウタ」

     ドットット!!!

    「『な、何なの!?』」

     その太鼓のような音はルフィから打ち鳴らされていた。
     ドンドットット♫、ドンドットット♫
     そんなドラムの音が夢の世界に響きルフィの体からはこれまでの比では無い覇気が迸る。

    「『何が起きてるの!!!』」

     世界を揺らす程の力を放ちながらルフィはウタへ告げる。

    「行くぞ。おれの全身全霊で……お前に勝つ!!! 勝って―――」

  • 86FILM N.G.22/10/20(木) 23:21:29

     ルフィの心臓がドラムを打つ。“解放のドラム”を。
     何の為に? そんなこと決まっている。

    「お前を助ける!!!」

     助けるのだ。大事な友達を。ずっとずっと“泣いている”彼女を救うために、ルフィは自身の内に秘められた力を解放する。

    「『ッ!!? ……ううゥ!!?』」

     ウタはそれがいつから目から溢れていたかなんて知らない。だが彼女は頬を伝うそれを意識から追い出すように猛る。ここで負けたらこれまでの全てが無駄になるから。
     思う。思う。思う。思い込んできたのだ。苦しくとも辛くとも。必死に自分は大丈夫だと、嬉しいのだと思い込ませたのだ。
     そうして苦痛や悲哀を心の底に沈める度に魔王の嗤い声は大きくなる。彼女が苦しめば苦しむ程に、悲しめば悲しむ程に、魔王は楽しそうに嗤うのだ。

    「『ルフィーーッ!!!』」

     そんな憐れな少女を嗤う魔王の声。それを押し返すように―――

    「アハハハハハハ!!!」

     明朗快活な笑い声が。太陽のような明るい笑い声が。

    「アハハハハハハ!!!」

     目覚めた“神”の笑い声が魔王のそれを掻き消すように、エレジアへと響き渡った。

  • 87FILM N.G.22/10/20(木) 23:22:20

    ここまで読んでいただきありがとうございました。次回の更新は明日の夜を予定しています

  • 88二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 23:24:37

    🐘!!

  • 89二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 23:27:37

    ニカさんキターーーーーーー!
    でもやっぱ突然笑い出すの文字で見ると尚怖ぇな…

  • 90二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 23:27:52

    次回の解放の戦士対隷属の魔王超楽しみ…

  • 91二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 23:35:30

    こっからの反撃開始ほんと楽しみ

  • 92二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 23:39:03

    「勝つ」ねぇ…
    それでいいのかいルフィさん…

  • 93二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 23:39:58

    >>92

    何故そう無駄に不穏な事を言うんだ

  • 94二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 23:46:43

    >>93

    安心して、夜中には『勝って救ける』という言葉がある。障害を取り除かれば助けたいモノも救けることも出来ないから。だから信じろ

  • 95二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 23:48:43

    このレスは削除されています

  • 96二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 23:56:45

    >>94

    92です

    腹くくりました信じます

    勝つとか負けるとかそんな話じゃないだろうとか思ってしまったもんで…

  • 97二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 23:59:07

    ジョイボーイが…帰ってきた……!!!!

  • 98二次元好きの匿名さん22/10/21(金) 00:01:25

    映画のルフィは最後まで勝負を拒否した
    このルフィはウタからの勝負を買って勝とうとしてる

    ただそれだけだ

  • 99二次元好きの匿名さん22/10/21(金) 00:06:46

    俺は、彼に…期待せずにはいられないんだ…

  • 100二次元好きの匿名さん22/10/21(金) 00:26:44

    バギーやら他の奴らのやらかしでヤバいことになるのは予想出来るけど…今のルフィ相手なら余裕だな(勝ったな、風呂入ってくる.

  • 101二次元好きの匿名さん22/10/21(金) 06:20:36

    昨日から滅茶苦茶象主湧いてて草保守

  • 102二次元好きの匿名さん22/10/21(金) 06:50:17

    もしかしてワイのこれ割と正解だった?

  • 103二次元好きの匿名さん22/10/21(金) 08:43:08

    これ配信画面からはどう見えるんだろ

  • 104二次元好きの匿名さん22/10/21(金) 12:48:55

    解放のリズムが 聞こえる…

  • 105二次元好きの匿名さん22/10/21(金) 13:31:34

    >>100

    やっぱクロスギルドとセラフィム一行がまだ到着してないのが不安だな

    バギー単体ならオチ担当かな…で済むんだけど

    この作者のバイタリティだと仮にトットムジカとウタの件を解決したとして、その後にこそ何か持ってきそうで怖い

  • 106二次元好きの匿名さん22/10/21(金) 20:47:54

    保守

  • 107FILM N.G.22/10/21(金) 21:21:07

    保守感謝です……反響多くてビビる。やっぱ皆ニカ好きだよね!!! 自分も好きです!!!
    それでは今日も書けた分を投稿します

  • 108FILM N.G.22/10/21(金) 21:22:58

     現実のウタは目を見開く。有り得る筈が無い光景に。

    「『何で……』」

     その光景に驚くのはウタだけでは無い。

    「何だってんだ一体!!?」
    「ええェ~~ッ!!? ルフィ先輩!!?」

     ドンドットット♫ ドンドットット♫ ……ドラムの音色と共に迸る覇気。ローとバルトロメオは突如として発生したそれに度肝を抜かれながらもその原因である男、ルフィに目を向ける。

     起き上がるルフィの体。

    「麦わら屋!!! まさか操られて!!?」
    「ぎゃ~~!!? 流石にこの状況は拙いべェ~~!!?」

     ウタウタの力を聞いたが故に眠っていた者が起き上がる事をそう判断する2人。

    「『そんな……有り得ない!!』」

     精神が“ウタワールド”に囚われている筈なのに、ウタウタの能力によって肉体の支配権は完全にウタが握っている筈なのに。

  • 109FILM N.G.22/10/21(金) 21:24:27

    「……クッ……ハハ……! アハハ!! あっひゃっひゃっひゃっ!!!」

     自分は起き上がらせていない。笑わせてなどいない。わからないわからない。トットムジカに手一杯だったとは云え支配権は未だ自分が握っているのに起き上がってきたルフィの存在にウタは混乱する。

    「『何をしたの!!? ルフィ!!!』」

     未知への恐怖がウタに攻撃という拒絶行動を取らせる。

    「『……ッ!!! そのバリアももう限界!!! この一撃で全部全部終わらせてやる!!!』」

     度重なるトットムジカの攻撃によってバルトロメオの張ったバリアも壊れる寸前。ウタは理解不能な事態諸共、この場に居る全員を魔王の一撃によって消し去ろうとする。

    「『勝つのは……』」

     止まってくれない涙を振り払うようにウタはトットムジカに命ずる。必死だった。一刻も早くルフィを倒さねばならないと焦燥に急かされた彼女は“左腕”を振り上げる。
     ウタの動きに合わせてトットムジカの腕が振り上げられた。そこに纏うのは怪光線として使っていた魔王の力。禍々しく周囲を照らす光をトットムジカは爪に宿してルフィに向ける。

    「『勝つのはわたしだ!!!』」

  • 110FILM N.G.22/10/21(金) 21:25:10

     放たれる魔爪。空間を引き千切りながら振り下ろされたそれは大気の摩擦と魔力によってまるで炎が燃え上がるように輝く。これまでで最も強力な一撃。直撃すればこのエレジアの大地を砕き割って揺るがす程の威力を秘めた破壊者の爪。

    「――――――」

     絶体絶命の状況。ローは何とか意識を振り絞り“シャンブルズ”によって退避させようとして、バルトロメオは尊敬する麦わらの一味だけでも助ける為に自分の体を盾にするように前へ出る。
     そうして恐るべき魔王の爪がバリアへと接触し、バリアが砕けた瞬間―――

    「アハハハハハハ!!! ……おりゃァああああああああ!!!」

     ルフィの黒髪が真っ白に染まり―――彼は地面を掴むと勢いよく“引っ張って伸ばした”。

    「『え?』」
    「は?」

     魔王の一撃はその破壊力に相応しい轟音立てて激突……したのだが、その魔爪はルフィの手によってグニョ~ンと伸ばされた地面によって受け止められていた。

    「『……なにそれ……』」

     おかしい。ただの地面がゴムのように引っ張り伸ばされたのもそうだが、大地を揺るがすような一撃をしっかりと受け止めきった事実が異常だった。そして異常はそれだけで終わらない。

    「しししし!!! バーーーーン!!!」
    「『ッ!!?』」

     弾き返された。ゴムなのだ、伸びれば当然“縮む”。トットムジカの爪が深くめり込んで引き伸ばされていた地面がその反動を一気に解放―――

    「『きゃああ~~!!?』」
    「ええええェ~~~~!!? スゲェ~~!!?」

     自身の力による反動を真面に受けたトットムジカが……大きな音を立てながら引っ繰り返った。
     それは魔王がこの世に生まれ落ちて初めて背中を地面に着けた瞬間であった。

  • 111FILM N.G.22/10/21(金) 21:26:49

    もっと書きたいけどちょっと明日も早いのでここまで
    明日の更新も夜になりそうですここまで読んでくれてありがとう。それではおやすみなさい

  • 112二次元好きの匿名さん22/10/21(金) 21:28:59

    最強生物にすらギャグをさせた神だ
    安心感が違う

  • 113二次元好きの匿名さん22/10/21(金) 21:34:24

    これは世界一ふざけた能力だわ

  • 114二次元好きの匿名さん22/10/22(土) 00:30:12

    最初から読んでて辛い展開の連続だっただけに、ニカルフィの大暴れがめっちゃ気持ち良い

  • 115二次元好きの匿名さん22/10/22(土) 06:32:47

    ルフィー!!!ニカー!!!早く彼女を解放してやってくれー!!!!!

  • 116二次元好きの匿名さん22/10/22(土) 08:54:19

    ウタもムジカも目ん玉飛び出ててほしい

  • 117二次元好きの匿名さん22/10/22(土) 14:11:51

    ニカは本当にすごいな…

  • 118二次元好きの匿名さん22/10/22(土) 18:48:52

    保守

  • 119二次元好きの匿名さん22/10/22(土) 20:53:17

  • 120FILM N.G.22/10/22(土) 22:21:51

    保守感謝。ちょっと書けたので上げますよー

  • 121FILM N.G.22/10/22(土) 22:23:05

    「『……うそ……』」

     ウタはトットムジカの頭から落ちないようにしがみつきながら目の前で起きた事態を飲み込めずにいた。あの無敵の魔王の背に土が付いたのだ。それはあの日のシャンクスや仲間達にだって出来なかったことであり、それはつまり今のルフィの強さは―――

    「『嘘だ!!!』」

     頭の中に浮かびそうになったその事実をウタは叫んで消し去る。

    「『トットムジカは誰にも止められない!!? 誰も勝てない!!? そうじゃなきゃ……そうじゃなきゃわたしはァ!!?』」

     トットムジカは引っ繰り返された事が腹立たしかったのか歯を食いしばる険しい表情を浮かべて跳ね起きる。そして自分を転ばせた元凶である小さな人間を睨んだ。

     ドンドットット♫ ドンドットット♫

     白。全身、炎のように揺らめき逆立つ髪から衣服に至るまで白に染め上がり吹き出る蒸気をまるで羽衣のように纏った姿は変化前の面影を残しつつも見る者に神秘的な印象を与える。
     “ギア4”とは全く違う変化を遂げたその姿こそ彼の最高到達点。打ち鳴らされる心臓のドラムが更なる“腕力”と“自由”を与える。

    「『―――ᚷᚨᚺ ᛉᚨᚾ ᛏᚨᚲ ᚷᚨᚺ ᛉᚨᚾ ᛏᚨᛏ ᛏᚨᛏ ᛒᚱᚨᚲ―――!!!』」

     そのドラムの音を真っ向から消す為にウタは歌う。体力の消耗など考えている余裕は無い。歌によって力を増強されたトットムジカは目障りなその小さな人間を壊そうと襲い掛かる。

    「しししし!!」

  • 122FILM N.G.22/10/22(土) 22:24:35

     だが彼は怯まない。大地を削りながら迫る魔王の掌を前にしてもただ楽しそうに笑うのみ。当たれば常人など容易く絶命するその一撃を―――

    「ホギャーー!?」

     真面に受けて上空へと吹き飛ばされた。

    「『……ええぇ……?』」
    「…………」

     先程見せた凄まじい能力はどうしたと聞きたくなる程に綺麗に空高く打ち上げられた彼をウタやロー達は呆然と見上げる。歌も涙も引っ込んでしまった。

    「『……まさかこれで終わりなんてこと―――』」

     あの外見の変化が虚仮おどしである筈が無いのはトットムジカを転がした力を見れば明らか。故にウタはこれで倒せたなどと思わない、思わないのだが……次に彼が起こした現象は彼女達の想像を遙かに越えてきた。
     夜空に影が掛かったのだ。トットムジカから月明かりを奪う程に大きな影が。

    「『は?』」

     その巨体は空気を震わせながら落下してくる。

    「ォオオオオーーーー!!!」
    「うわァアーー!!? でっけェルフィ先輩が落ちてきたべーー!!?」

     それは正に“巨人(ギガント)”。一般人並みだった彼の体躯がまるで巨人族かそれ以上の巨体となって上空から降ってきたのだ。
     トットムジカはデカくなったから何だと言わんばかりに彼へ向かって四肢を振るう。鍵盤状の四肢は力任せに振るうだけでも高い破壊力を秘めているのだが―――

  • 123FILM N.G.22/10/22(土) 22:25:48

    「よ~そろ~!!!」
    「『ッ!!?』」

     彼はその攻撃を両手で掴んで受け止める。それで止められるのは2本までだがそれで十分、彼は掴んだそれを力任せに引っ張ると―――トットムジカの体がまるでゴムのように“伸びた”。そして彼は伸びるに任せて引っ張り回す。
     回す回す回す。伸びる手足に引き摺られてトットムジカの体が引き摺られる。

    「『ちょちょちょちょちょっと~~~~!!?』」
    「あっひゃっひゃっひゃっ!!!」

     速度が最高潮に達しブンブンと独楽のように回転する彼とトットムジカ。ウタの悲鳴とトットムジカの唸り声が回転の影響を受けて音程を乱れさせる。視界が高速で流れていく所為で自分の目玉が遅れて付いて来るような錯覚に陥る。
     そうして勢いが十分に乗ったのを確認した彼は―――

    「ど~~……っせい!!!」
    「『うわあああああ!!?』」

     自分がやられたように今度はトットムジカを上空へと放り投げた。まるでロケットでも打ち上げたような速度だ。

  • 124FILM N.G.22/10/22(土) 22:27:31

    「『うわわわわわ!!? 高い速い高い速い高いィ~~~~!!?』」

     とんでもない速度で地上から離れていくことにウタは本能的恐怖を抱いてトットムジカの上で腹這いになる。姿勢を低くすることで誤って落ちることを避けての行為だ。

    「『馬鹿げてる!!? 一体何がどうなってルフィはあんなになっちゃったの!!? ……ぐぅ~~!! やばいやばいやばい!!! 何とか反撃を……!!!』」

     速度が落ちてきている。それは上昇がもうすぐ止まる証明。高高度での冷たい空気に晒されながらウタは必死に気持ちを落ち着けようとする。このままでは彼のペースに吞まれっきりだ。何とか落下が始まる前に状況を打開しようと思考を巡らせ―――

    「うほほーい!」
    「『……へ?』」

     少し離れた位置に彼が居た。先程までの巨人(ギガント)サイズでは無い通常サイズ……でも無かった。しかも形状は奇天烈……まん丸だった。
     風船のように体を大きく膨らませた彼はウタに向かって挨拶するように短く見える手を振る。

    「『……いやいやいや!? おかしいおかしいおかしい!? 何で浮いてんの!?』」

     同じ所に居るのはまだ理解出来る。投げた時に掴んで一緒に上がったとか色々と考えられる。しかし“浮く”のはちょっと待てと言いたくなった。空気吸って空気に浮くなよ、と。

  • 125二次元好きの匿名さん22/10/22(土) 22:44:11

    なんと爽やかな戦いか

  • 126二次元好きの匿名さん22/10/22(土) 22:47:38

    ニカ、お前除湿機名乗れ

  • 127FILM N.G.22/10/22(土) 23:57:19

     そんなウタのツッコミを聞いているのかいないのか彼は更に息を大きく吸い込み始める。

    「フーン!! スゥ~~~~……うぎぎぎぎぎ!」

     そうしてより膨らんだ体を今度は腹の辺りから捻る。ぐるぐるぐるぐると何周も捻られる胴体がはち切れそうなぐらいパンパンになる。

    「『今度は何を……ってキャア!!?』」

     ウタが警戒する、その前に彼の腕が伸びて彼女の体に巻き付く。しかも巻き付いただけで終わらず一本釣りでもするように彼はウタの身を上空へと引っ張り上げた。
     投げ出されるウタ。落下していくトットムジカ。浮遊感。

    「ハハ!!! ……ぶふぅううううーー!!!」

     彼は落下していくトットムジカを追い掛けるように吐き出す息をジェットにして飛翔、捻られた体が元に戻る反動さえも利用し回転しながら高速落下する。
     そうして遠心力と落下の勢いを得た拳を覇気による武装硬化で更に強化、途轍もない力が込められた一撃が炸裂した。

    「ふんがァアアーー!!!」

     ズドンと打ち抜くトットムジカの顔面。拳がめり込みめり込み……後頭部がぐにょ~んと伸びるぐらいめり込ませる威力の拳。殴られたことで落下速度が更に上がる。空中へと放り投げられた以上のスピードで落ちていき、エレジアの大地が近付いてくる。

     そしてまるで落雷のような勢いでトットムジカは地面に激突、地震と錯覚してしまいそうな衝撃と振動が音楽の都を包み込んだ。

  • 128FILM N.G.22/10/22(土) 23:57:42

    「『……め、めちゃくちゃだ……だけど!』」

     再び彼の腕によってぐるぐる巻きにされたウタは、ふわふわと浮く謎風船によってゆっくりと地上へと降りていく。ウタは藻掻くがぴくりとも緩まない腕を忌々しそうに睨むと直接言葉を投げ掛ける。

    「『ルフィ!! あんたが強くて不思議な力を持っているのはわかった!! でもね……!』」

     ウタは地面に落下したトットムジカに視線をやる。

    「『それでも魔王には敵わない!!! こんなに好き勝手暴れても傷一つ付けられてないのがその証拠!!!』」

     土煙から姿を現わす魔王。その傷一つ無い姿にウタは安堵と忌ま忌ましさを混ぜた皮肉気な笑みを浮かべる。

    「『どう? だからもう無駄な抵抗は止め―――』」
    「…………」
    「『……え?』」

     言葉が詰まる。ウタはそこでようやく気付いた。
     地面に下りてぐるぐる巻きだった腕を解いた彼は息を吐き出して風船も解除する。ウタはそんな彼の顔を瞳に映して驚愕を露わにする。

    「『嘘でしょルフィ……もしかしてあんた』」
    「…………」

     そう。あれだけ自由に暴れ回っていた彼、ルフィは―――

    「『ね、寝てる……!?』」
    「……Zzz……くかー……すぴー……」

     眠っていた。眠ったままの状態でルフィは今まで戦っていたのだった。

  • 129FILM N.G.22/10/22(土) 23:59:24

    今日の更新はここまで。読んでくれてありがとう。次の更新はもしかしたら明後日になるかも……すまんな

    それでは皆さん良い夢を

  • 130二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 00:02:03

    >>129

    釜を煮込んで待ってるぞ!

  • 131二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 00:03:16

    良いのだ、このウタに勝つにはこれくらいフリーダムで良いし何ならもっとハチャメチャでも許されるのだ

  • 132二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 05:39:37

    さすがモデル二カ
    やはり現実の理を変える力は凄まじいな
    信じてて良かったよ二カ様
    解放の戦士
    我らの救世主

  • 133二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 07:14:42

    ほんと自由な戦いをする

  • 134二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 10:32:00

    やっと追いついたわ
    ニカ状態での無茶苦茶なバトルが、これまでのしんどさを解放してくれて素晴らしい

  • 135二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 16:48:59

    保守

  • 136二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 21:16:07

    保守

  • 137二次元好きの匿名さん22/10/24(月) 00:02:49

    ほしゅ

  • 138二次元好きの匿名さん22/10/24(月) 06:00:55

    ほす

  • 139二次元好きの匿名さん22/10/24(月) 10:44:07

    ほしゅっしゅ

  • 140二次元好きの匿名さん22/10/24(月) 11:48:17

    保守

  • 141FILM N.G.22/10/24(月) 12:51:10

    保守センキュー。少しだけ書けたので投稿します。それを上げたら続きは夜の予定にしています

  • 142FILM N.G.22/10/24(月) 12:52:27

     ウタワールドでは現在ウソップとチョッパーがルフィを“保護”しながら必死に逃げていた。

    「ギャァアああああ~~ッ!!?」
    「死ぬゥうううう~~ッ!!?」

     連射される怪光線の弾幕に次々に襲い掛かる音符戦士。それを右へ左へ上へ下への大逃走。

    「『逃げるなァ!!!』」

     鬼気迫る形相で攻勢を強めるウタはそんな自分を止めようとトットムジカへ攻撃を仕掛けてくる麦わらの一味に舌打ちする。

    「お前らァ!!! 絶対にルフィを落とさせるんじゃねェぞ!!!」

     ゾロの三刀流がトットムジカを斬り付けた。傷付けることは出来ないが注意を自分に向けることは出来る。

    「んなことはわかってんだよクソマリモ!!! 問題はその次!!!」
    「何とかしてウソップが“見聞色”の覇気を使える時間を作るんじゃ!!!」

     サンジの飛び蹴りとジンベエの上段蹴りがトットムジカに炸裂してその進行を僅かに食い止めた。

    「ロビン! やっぱり無理!?」
    「無理みたい。やはりウタとトットムジカに直接咲かせることが出来ないわ」

     降り注ぐゼウスの雷と地面や壁から咲かせたハナハナの巨大な手足がトットムジカを翻弄する。

    「ルフィはやらせはせぬぞ!!! “芳香脚(パフューム・フェムル)”―――“閃風(ウェルテクス)”!!!」
    「手ェ貸すぜ海賊女帝!!! “風来砲(クー・ド・ヴァン)”!!!」

  • 143FILM N.G.22/10/24(月) 12:52:40

     ハンコックによる覇気を纏った回転蹴りとフランキーの空気砲がルフィを狙おうとしたトットムジカの腕を押し留める。

    「『くっ! 邪魔ばかり!!!』」

     この世界に居る全員が力を合わせて戦う。“動かなくなったルフィ”を守りながら全力で魔王へと立ち向かっていく。何とかして今のルフィを叩きたいウタは歯噛みしながら能力を行使し続ける。
     そんな凄まじい大決戦の中でルフィの安全確保の為に奔走するウソップとチョッパーは滑り込むようにして建物の中へと身を隠した。

    「うおおおおおお!!? 大丈夫か!!? 大丈夫なのかこれ!!?」
    「おおおお落ち着け落ち着け落ち着けェ~~!!?」
    「お前が落ち着けチョッパー!!?」

     動かないルフィを寝かせた2人はその周りをぐるぐる回る。

    「チョッパー!!! ルフィの奴これ本当に平気なのか!!? ヤバいんじゃねェのか!!?」
    「そんなのおれだってわかんねェよ!!?」

     混乱と動揺で一向に冷静になれない2人。それも仕方が無いのかもしれない。何故なら―――

     ドンドットット♫ ドンドットット♫

     まるで眠るように動かなくなったルフィだがその心臓の音だけは周囲を震わせる程に響いているのだから。現に心臓のドラムはこの建物をも震動させていた。

    「近くに居るだけでおれ達も痺れそうだ!!? これが心臓の出す音か!!?」
    「普通は有り得ねェよ!!? こんなデカさで心臓が拍ったら体が爆発しても不思議じゃない!!!」
    「ギャアアア~~!!? ルフィが爆発するゥうううう~~!!?」

     このような状態になってしまったルフィを前に2人はぎゃあぎゃあと泣き喚きながら何とか“魔王打倒”の為の糸口を探ろうとしていた。

     何故ウタワールドはこんな状況になっているのか? それは少し前、ルフィがウタに向かって「助ける」と告げた時よりもほんの少しだけ遡る―――

  • 144FILM N.G.22/10/24(月) 12:53:45

    ではちょっと用事が有るので。みんな読んでくれてありがとうね

  • 145二次元好きの匿名さん22/10/24(月) 19:07:48

    待機

  • 146FILM N.G.22/10/24(月) 19:58:25

     ルフィはサニーをハンコックに托して駆け出す。ウタワールド内は暴れるトットムジカによって破壊の音色が満ちていた。

    『お前らァーー!!!』

     そんな中でルフィは仲間に向かって叫ぶ。

    『“後のこと”は頼んだァーー!!!』
    『はぁ? おいルフィ! それは一体何の……って聞けコラ!!?』

     詳細が見えないルフィの言葉。当然ながら仲間達はその意味を聞こうとするのだがルフィは振り返ること無くウタに向かって一直線に向かう。

     そしてルフィの宣言が終わり“解放のドラム”が鳴り響く。

    『上がれ心臓の音!!! “ギア5(フィフス)”!!!』

     一瞬だけ、ルフィの頭髪から衣服に至るまで白く変化するとその直後―――

    『アハハハハハハ! アハハハハハハ! アハハ―――……ふぅ……』

     倒れた。何の前触れも無くルフィはその場に倒れ伏したのだ。

  • 147FILM N.G.22/10/24(月) 19:58:57

    『ルフィ!!?』

     全員がその状況に驚く。仲間達は初めはウタが何かしたのかと疑ったが彼女も予想外だったらしく表情を見ればそれは明らかだった。
     故に倒れたのはルフィ自身が何かをしたからなのだと察することが出来た。直前に「後は頼む」と云った言葉を残していたのも大きい。
     ドンドットット♫ ドンドットット♫
     倒れたのに鳴り響き続けるルフィの心臓。誰もが状況を飲み込めていない中で―――

    『何だありゃ!!?』

     異変は直ぐに起こった。
     始まりはトットムジカの“転倒”。誰もそんな攻撃はしていないのに突然仰向けに引っ繰り返ったのだ。新手の攻撃その前触れかと警戒する麦わらの一味だが……次の異変で違うことを知る。
     転倒から復帰したトットムジカ、その片腕片脚が“ゴムのように伸びた”のである。もうそこで半ば確信する……現実でルフィが戦っているのだと。

     それは現実の自分と感覚を共有している夢の世界のウタはもっと早くから知っていた。しかし“ギア5”の暴れっぷりの所為で思考が盛大に乱され対応が遅れていた。

    『『ルフィ!!!』』

     よって両者は同時に動く。ウタはルフィを仕留める為に、仲間達は彼を守る為に。

  • 148FILM N.G.22/10/24(月) 19:59:14

    『ルフィの体を守れ!!! 方法はわからねェがこいつは“現実”で戦ってる!!!』
    『最初で最後かもしれんチャンスじゃ!!!』

     トットムジカに対して唯一ダメージを通せる方法、現実世界とウタワールドでの同箇所・同時攻撃。

    『ウソップ!!! お前の“見聞色の覇気”でこっちのルフィの意識を探れ!!!』
    『お、おれェ!?』
    『もしかしたら現実のルフィの感じている景色を見られるかもしれねェ!!!』
    『ちょっと待てよ!? そんな出来る保証が―――』

     トットムジカの四肢が大地を砕くように叩き付けられる。何度も何度も何度も。

    『ぎゃああああ!!? 危ねェ~~!!?』

     その暴れっぷりはまるで少しでも早く目障りな何かを仕留めようとしているようで……それだけトットムジカとウタが何かに焦っている証拠でもあった。

    『時間が無さそうなのはおれ達もそうだが……ウタちゃんの焦り方を見るにルフィの奴、かなり暴れてやがるな』

     にやりと笑う麦わらの一味。ぐにょ~んと顔面が陥没して後頭部が伸びるトットムジカを前に彼等は“温存”していた全力を解き放つ。

    『よし!!! ルフィに続くぞお前らァ!!!』
    『『『『おおおお!!!』』』』

  • 149二次元好きの匿名さん22/10/24(月) 20:22:17

    おれたちの新時代

  • 150FILM N.G.22/10/25(火) 00:32:48

     麦わらの一味が勢いづいたのとトットムジカが現実からの影響を受けてリズムを崩されたのを見たウタは腹の底から湧き上がる怒りを感じた。

    「『舐めるなァアアああああッ!!!』」

     全身から噴き上がる黒いオーラがまるで羽のようになってウタを包み込む。

    「ッ!! 何だ!?」

     トットムジカごと包み込んだ黒い竜巻。その内で収まりきらぬエネルギーの奔流が稲妻のようになって周囲に弾ける。微かに見える影はだんだんとその姿を変えていく。
     まるで蛹。内側に在るトットムジカは羽化を待つ蟲の如く胎動する。

    「……向こうも今から本気って訳だ」

     その変化はウタワールドだけで無く現実世界にも起きていた。




    「―――『……もう手遅れだよ、ルフィ』」

     ルフィの手によってトットムジカから引き離されたウタはしかし不利な状況など一切感じさせない不敵な笑みを浮かべてそう告げる。

    「『今のわたしはトットムジカと深く繋がってる。だからわかる……』」

     左腕全体と胴の一部だった侵食が一気に広がる。地べたに座り込んでいたウタは立ち上がると黒い竜巻に飲み込まれたトットムジカに目をやり手を伸ばす。

  • 151FILM N.G.22/10/25(火) 00:34:15

    「『12年前、シャンクスでも勝てなかった魔王……それを“超える力”が目覚める!!!』」

     そう言った直後―――黒い竜巻は爆発するように弾け飛び、その内から更なる変化を遂げた魔王が姿を現わした。

    「派手に変わりやがったな……ッ!!」
    「化け物がもっととんでもない化け物になったべェ!!?」

     魔王の隻眼が赤く輝く。四本になった腕と2本の脚が地面を掴み、背中からは禍々しい黒い翼が生えて帽子の意匠が双頭の竜となる。その身から発せられる魔力は先程までの比では無く空の色さえ変化させ、エレジアを包み込んでいた特異な領域も加速度的に広がっていった。これこそが魔王トットムジカの第三楽章。息さえ凍えそうな魔力が周囲を満たす。

    「…………」

     そんな中にあってなお眠りながら立つルフィは一歩も退くこと無く魔王と相対する。そんな彼にウタは覚束ない足取りで近付くと忠告してやる。

    「『やる気なのルフィ? 止めなよ。ああなった魔王に勝てる人なんて誰も―――』」

     しかしルフィはそんな言葉など意に介さず、そもそも眠っているので聞いているのかさえ怪しいが……ウタのそれを遮るように彼女の手から“麦わら帽子”を取り上げる。それはシャンクスが被っていた物であり彼の手からルフィに預けられた大事な物。ウタは眠っていようとも無意識に取り返したのかと思ったが―――

    「……ん!」
    「『きゃ!』」

     ぽすんとウタの頭にその麦わら帽子が被せられた。ルフィの手によって。

    「『ル、ルフィ?』」
    「……しししし!!」

     困惑するウタに何も答えずルフィは歩き出す。トットムジカに向かって一歩ずつ、胸を張った堂々とした足取りで。そんな彼の背中を頭に麦わら帽子を被ったままのウタは呆然と見送る。

    「『――――――』」

    その後ろ姿が大好きだった人の姿と重なった。

  • 152FILM N.G.22/10/25(火) 00:37:05

    今日はここまで。次は夜にでも更新出来たら良いなと思っています。

    おれ達の戦いはこれからだ!!!

  • 153二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 00:37:50

    乙です
    勝ったな風呂にセラフィム入れてくる

  • 154二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 00:39:20

    登場シーンがカイドウ戦のみとはいえ、ニカ出てきたら負ける気せんな

  • 155二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 07:19:20

  • 156二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 13:22:00

    ほしゅほしゅ

  • 157二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 13:24:03

    >>154

    まぁREDだとニカが出てきても負けたんですが

  • 158二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 15:37:26

    ニカに翻弄されてシリアスを維持出来なくなってるウタに草、いいぞもっとやれ

  • 159二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 15:40:06

    >>157

    勝ちはしたぞ

    勝っただけでその先には届かなかったけど

  • 160二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 15:47:27

    >「『きゃ!』」

    必死に悪役気取ってるのにルフィの一挙手一投足ですぐメッキ剥がれちゃうウタ可愛い

  • 161二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 21:50:05

    保守

  • 162FILM N.G.22/10/25(火) 21:56:54

    ごめん! 今日は書く時間無い! 明日の夕方からにします!

    感想保守ありがとう。励みにしてます

  • 163二次元好きの匿名さん22/10/26(水) 02:32:06

    ok! ズドン!

  • 164二次元好きの匿名さん22/10/26(水) 07:21:11

    うぃ

  • 165二次元好きの匿名さん22/10/26(水) 07:22:22

  • 166二次元好きの匿名さん22/10/26(水) 13:10:30

    保守

  • 167二次元好きの匿名さん22/10/26(水) 19:30:20

    保守するべ

  • 168FILM N.G.22/10/26(水) 19:46:52

    保守感謝。夕方に投稿すると言ったな?アレは嘘になった

    ちょっと疲れて横になったらいつの間にか外が真っ暗になってたからなァーー!!!

    はいごめんね!じゃあ書いたので投稿するよ!

  • 169FILM N.G.22/10/26(水) 19:51:11

     それはまるで夢を見ているような感覚。見えるもの、聞くもの、触れるもの、全てが朧気で明瞭さは無く。

    「アッハッハッハッハ!!!」

     しかし己がすべきことはこれ以上無い程に理解出来る。ドラムの音を打つ心臓が教えてくれる。
     だからルフィはただ真っ直ぐ拳を振り抜くのだ。何度も何度も何度も。

    「おりゃりゃりゃりゃァア!!!」

     手応えは在る。だがダメージは毛ほども通っていない。巨大な存在感を放つそれに有効なダメージを与えるにはやはり特殊な方法、2つの世界からの同時攻撃が必要なのだ。

    「……ゼェ、ゼェ……! ……しししし!!」

     2つの世界で鳴り渡るドラムが動かせない筈の肉体を踊らせる。それは途切れた心と体を共鳴によって同調させて無理矢理繋げる行為。その代償は重い負担となってルフィに降り掛かる。

    「オオオオオオオオォ~~~~ッッ!!!」

     発動すれば能力者に更なる腕力と自由を与える“ギア5”、ゴムゴムの実の覚醒により遙か昔に存在した神威をその身に降ろす。使用するだけで著しく体力を消耗する到達点。それを今は1つの肉体を動かすのに“2つ”使っているに等しい状況。

  • 170FILM N.G.22/10/26(水) 19:51:24

     ドンドットット♫ ドンドットット♫

     二倍の負担。それが一度に降り掛かる肉体への影響は二倍では効かない。一歩進むごとに体力がごっそりと持って行かれるのをルフィは感じている。この状態を維持出来る時間はそう長くない。攻撃が通用しない相手に対してかなり絶望的と思える状況。

    「あっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!」

     ルフィはただ真っ直ぐに拳を振り抜くのだ。何度も何度も。
     己がすべきことはこれ以上ない程に理解している。熱く燃えたぎる心臓が教えてくれる。

     “友達(ウタ)が泣いていた”

     ルフィが命を賭ける理由などそれで十分だった。それに―――

    「お? ……ニッ!!」

     パンチで魔王の羽の一部が“千切れた”。それを感じてルフィは笑みを浮かべる。そう、彼は一人で戦っているのでは無い。
     頼れる仲間が、大事な仲間達が一緒に戦ってくれているのだから。

  • 171FILM N.G.22/10/26(水) 22:56:56

     それは偶然だった。

    「―――ん? 今、羽千切れなかったか?」

     誰かの攻撃によってトットムジカの黒翼、その一部が舞うように千切れ飛んだのだ。

    「なるほど、やっぱり同時攻撃は有効らしいな」

     一味の中でも血の気が多い者達はそれを見て凶悪な笑顔を浮かべる。攻撃が通るなら倒せる、つまり目の前の魔王は決して絶対無敵の存在では無いのだ。

    「あとはタイミングをどう合わせるか……おいウソップ!!! 頼んだぞ!!!」

     この魔王に攻撃を通す為に要となるのはウソップの見聞色であるとゾロは告げ、反撃へのピースは全て揃い後は合わせるだけだと判断した彼は“地獄の大王”を起こす。

    「―――出し惜しみはもう無しだ……“閻魔”!!!」

     その声とと共に“閻魔”がゾロから大量の覇気を吸い上げる。並みの者なら一瞬で干上がる程のそれを耐えてゾロは三刀全てに閻魔によって増幅された覇気を流す。

    「“閻王(えんおう)三刀流”」

     既に覇気によって黒く染まっていた刀が更なる妖気を纏う。内に留まり切らぬ力が雷のように刃から迸り、これよりゾロの使う剣技は全て格が上がることになる。

    「―――泣いてる女を、ルフィの幼馴染みを助ける為!」

     脚に纏う炎が揺らめく。それはサンジの思いに呼応して更なる熱を引き出す前触れ。炎の色が変わる。その色は冷たくも見えるい灼熱の“蒼炎”。

    「“魔神風脚(イフリートジャンブ)”!!!」

     魔王との戦いで過熱した脚が宿す脅威の力。行儀の出来ていない獲物を刺激的に調理する
     麦わらの一味。船長であるルフィの両翼を担う二人が消耗度外視の全力を出したことで他の者達も同じように魔王へと立ち向かう。

  • 172二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 01:28:09

    もうひと踏ん張りだ…!

  • 173二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 06:25:25

    間に合え……間に合え……間に合え……!

  • 174二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 13:06:22

    ほっす

  • 175二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 19:16:25

    保守

  • 176二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 19:33:15

    わくわくが止まらぬ!

  • 177FILM N.G.22/10/27(木) 22:33:24

    保守感謝ァ!!! 明日も早いので今書けた分を上げたら寝ます次の更新は多分明日の夜です!!!

    それではどうぞ

  • 178FILM N.G.22/10/27(木) 22:34:48

    「……落ち着けェ~、落ち着くんだキャプテン・ウソップ~!!? 冷静になって皆を助けねェと!!!」
    「」

     ウソップは外で発生する凄まじい戦闘音を聞きながらチョッパーと共にルフィを守りつつ、勝利の為のピースである“現実での光景”を手に入れる為に見聞色の覇気を使おうとしていた。

    「深呼吸だ!! 落ち着くには深呼吸が一番!!」
    「すぅーはぁーすぅーはぁー」
    「お前がしても意味無ェだろ!!?」

     チョッパーの深呼吸に突っ込むウソップ。何だかそれで逆に落ち着いてきたので結果オーライだった。

    「ま、待ってろよルフィ! 今からおれ達が助けるからな!!!」

     そうしてウソップは少しでも覇気の精度を上げる為にルフィの胸に手を置く。ドンドットット♫という心臓の鼓動が掌を伝ってウソップの体を震わせる。周囲に響かせる鼓動の音を肌で感じたことでより一層その負荷を思い知る。

    「まったくお前って奴はいっつも無茶しやがって! 付き合うおれ達の身にもなれってんだ!!!」

     そんな愚痴を溢すがウソップの顔に浮かぶ表情は笑顔。彼は目を閉じて更に集中力を高める。

    「助けようぜ皆で!!! プリンセス・ウタを……いや!」

     極限の集中が耳から入る雑音を消し去る。閉ざした視界は黒一色。聞こえるのはルフィの鼓動だけの世界でウソップは力強く言葉にする。

    「お前の幼馴染み……ウタを助けてやろうぜ!!!」

     深く沈み込んだ意識が―――繋がる。

  • 179FILM N.G.22/10/27(木) 22:35:23

     現実で激化するトットムジカとの戦い。その渦中で他者を救おうと動く男がここにも一人。

    「クソが!! どうなってやがる“切り離せねェ”ぞ!?」
    「『……無駄だよ。今のわたしはトットムジカと深く繋がってるから』」

     ルフィの手によってトットムジカから引き離され地面に座り込むウタ。その身を包む黒衣の侵食は止まらず徐々に彼女の姿を覆っていく。そんなウタを傍で診たローは彼女の生命活動がどんどん低下していることを知ると直ぐに“オペオペの実”の能力で黒衣からの切り離しを試みる……しかし結果は不発。進行を遅らせることすら出来なかった。

    「『これはトットムジカの力そのもの……他人がどうこう出来る物じゃない』」
    「うるせェ!!! 黙って座ってやがれ歌姫屋!!!」
    「ウタ様にうるせェとは何だべトラファルガー!!?」
    「ややこしくなるからお前は話しに入ってくんじゃねェよ!!?」

     ローは表情を険しくするとウタの左手を取る。傷が有る筈のそこはしかし溢れ出す魔力によって処置することも出来ない。

    「……あれが居るんじゃ手当も出来ねェってわけか」

     ローは吐き捨てるようにそう言うと立ち上がる。足を動かして向かう先はルフィと激しい戦いを繰り広げる魔王の元。

    「行く気かトラファルガー!」
    「ああ……歌姫屋のお守りは任せた」

     “ROOM”の力。本来なら空間に広げてしか使えなかった能力を“覚醒”によって物質への直接付与を可能にする。

    「“K・ROOM(クローム)”」

     改造自在の力が宿った鬼哭の刀身が数倍に伸びる。ローはそれを肩に担ぐと“シャンブルズ”で空間を跳躍―――

    「……医者の治療を邪魔するような輩は……お引き取り願おうか!」

     飛んだ先は無論、トットムジカの直ぐ近く。ルフィと肩を並べたローは共に魔王へと挑むのだった。

  • 180FILM N.G.22/10/27(木) 22:36:30

    短い更新ばかりですまぬ。じゃあおやすみ

  • 181二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 22:45:55

    >>180

    お疲れ様

  • 182二次元好きの匿名さん22/10/28(金) 05:54:00

    盛り上がってまいりました

  • 183二次元好きの匿名さん22/10/28(金) 15:28:42

    カッコいいぞ終身名誉麦わらの一味

  • 184二次元好きの匿名さん22/10/28(金) 15:59:21

    一応作者に注意喚起
    このスレが動画に無断転載される可能性あり

  • 185二次元好きの匿名さん22/10/28(金) 21:39:59

  • 186二次元好きの匿名さん22/10/28(金) 21:45:22

    >>184

    よし、消して来い

  • 187FILM N.G.22/10/28(金) 23:30:10

    保守感謝です。掲示板に繋がらなくて難儀してましたよ


    >>184

    無断転載。HAHAHA!まさかぁこんな無駄に長いの動画にしないでしょ?しないよね?

    わかんねぇ。無断転載されるとどうなるかオレにはわかんねぇ


    とりま書けた分上げます

  • 188FILM N.G.22/10/28(金) 23:31:38

    「ハァ……ハァ……フゥ……」

     眠りに落ちながら命を削るように戦うルフィ。極限状態の中で彼の脳裏にはいつか聞いた言葉が再び過ぎっていた。

     “お前は生き物の感情を感じ取る力に長けている様だ”

     それは恩人でもあり師でもあるレイリーの言葉。かつて強敵シャーロット・カタクリとの激闘の最中でも思い出したそれをルフィは再び意識に浮き上がらせていた。
     何故それを今になって思い出したのか。それはトットムジカと戦う中で発生した“現象”に起因する。

     トットムジカが放つ光線を掻い潜り蹴りを浴びせる。鍵盤状の手足に当たったそれは本物のピアノの如く音を奏でる。

    『―――誰か助けて!!―――』

     音が耳朶を打つと同時に誰かの嘆きが届く。誰かも知らない声。

    『―――海賊のせいだ……全部、全部!!!―――』

     一度だけでは無く、それは攻撃を繰り返す度に頭の中に響き渡る。

    『―――助けてくれない海軍も悪いよ……でも―――』
    『―――海賊が一番悪い!!!―――』

     それは誰の嘆き? 誰に向けられた物?

    『―――助けて、“ウタ”―――』

     奏でるは悲劇。舞台に吊り上げられるは……憐れな少女が一人。

  • 189FILM N.G.22/10/28(金) 23:32:28

    「ッ!!!」

    『―――海賊が街を襲った!』『妻が殺された!!!』『わたしの夫は海に沈められた!!!』『ああ……いつも泣いてばかりさ』『ウタちゃんの歌をずっと聴いていたいよ』『ウタちゃん!!!』『プリンセス・ウタは僕らを救ってくれる!!!』『ウタはわたし達民衆の救世主なのよ!!!』『おれを、家族を救ってくれ―――』

     悲劇の舞台に立った少女は願う。

    『―――みんなが救われる世界はないのかな?―――』

     皆の救世主になることを。
     苦痛や悲しみに満ちたこの世界に生きる大勢の人を……自分を頼りにしてくれたファンの皆の期待に応える為に。

    「……ッ!!! ~~~~ッ!!!」

     ルフィは群がる音符兵士を全方位へ向けたパンチの雨で叩き潰す。その僅かな隙を突いてトットムジカが鉄槌でも振り下ろすように腕を叩き付ける。それをルフィは頭突きで真っ向から受け止める―――また、音が鳴り響く。

    『―――いやだァーーッ!!? 置いて行かないでェーーッ!!?―――』

     それは救世主になろうと決めた少女の記憶、その根幹を形作る物。

    『―――何でだよォおおおおおおッ!!?―――』

     大好きだった家族に裏切られ捨てられた記憶。

    『シャンクスゥううううーーッ!!! ァアアああああああああああッ!!?』

     心を引き裂くような叫びがルフィの脳を揺らす。全てが彼の知らない記憶、光景。だがそれは決してただの幻なんかでは無い。

  • 190FILM N.G.22/10/28(金) 23:33:16

    「……う……あ、あァ……!」

     空気を蹴って縦横無尽に飛び回りながらルフィはトットムジカを全周囲から攻撃する。時にはその巨体を足場にして走り、攻撃を受け止め防御した反動も利用して。
     エレジアに掻き鳴らされた鍵盤の音色が轟く。

    『―――……なーんだ。やっぱりシャンクスは悪くなかったんだ―――』

     それは少女が溢した安堵の声。そして―――

    『―――わたしが……皆を殺した―――』

     絶望の声。

    『―――……い、いやっ……違う! 違うの! こ、こんな……っ……ぅうう……ああああ……ああああああああああ!!?―――」

     大好きな人に罪を押し付けていたのだと知った、自分こそが地獄を作ったの張本人なのだと知った少女の悲痛の声。

    『―――ごめん……ッ! ……ごめんなさい!! ごめんなさい!! ごめんなさい!! ごめんなさい!! ごめんなさい違うのわたしじゃないわたしは悪くっ……ううううッ!!! うあああああああああ!!? ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!! ごめんなさいごめんなさ―――』

     幾ら泣き喚いた所で戻ってくるものなど何一つ無いと云うのに少女はただ顔を覆って慟哭する。

    「おおおおああああァアーーーーッ!!!」

     その慟哭を腹の底から吐き出すようにルフィは咆える。自分目掛けて放たれた光線に向かって拳を突き出す。
     黒い稲妻が迸り光線と共に消え去る。吹き荒れる攻撃の余波の真ん中を突き抜けてルフィはトットムジカの直ぐ近くにまで接近した。

  • 191FILM N.G.22/10/28(金) 23:39:32
  • 192FILM N.G.22/10/28(金) 23:39:52

    次スレ立てた~

  • 193二次元好きの匿名さん22/10/28(金) 23:40:40

    相変わらず神絵と神SS兼ねてて釜が足らぬ…ポロッ

  • 194二次元好きの匿名さん22/10/28(金) 23:46:21

    立て乙ー、続きも楽しみにしてます

  • 195二次元好きの匿名さん22/10/29(土) 00:02:50

    埋め

  • 196二次元好きの匿名さん22/10/29(土) 00:03:44

    ようやく暗い夜が終わりに向かうのか

  • 197FILM N.G.22/10/29(土) 00:05:33

    皆で行こうぜ夜明けへ

  • 198二次元好きの匿名さん22/10/29(土) 00:06:56

    >>197

    スレ主

    あんたの言う最高に超いい夜明けには

    幸せなウタとルフィとシャンクスはいるかい?

  • 199FILM N.G.22/10/29(土) 00:10:25

    >>198

    私は…トットムジカ(悲劇の塊)はなくなった方が良いと思いますが

  • 200二次元好きの匿名さん22/10/29(土) 00:11:53

    200ならトットムジカ完全敗北

オススメ

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