【SS&登山解説】ヤマヲノボル【大山登山編】

  • 1二次元好きの匿名さん21/11/23(火) 21:30:26

    このスレは登山初心者であるスレ主が登山しようと思い立ち、紆余曲折あって登山布教も兼ねたマンハッタンカフェ×男トレーナーのSS及び登山解説を投稿しようとして立てたものです。
    話の展開上、台本形式を使用することがあります(主に登山解説)。
    台本形式の台詞表記は以下の通りです。
    トレーナーの発言→トレ「」
    マンハッタンカフェの発言→カフ「」
    登山はマナーを守り安全を第一に行いましょう。
    マンハッタンカフェはそこにいる。

  • 2二次元好きの匿名さん21/11/23(火) 21:30:52
  • 3二次元好きの匿名さん21/11/23(火) 21:33:21

    1/17

    【登る山について】

    土曜日正午 都内某所 喫茶店


    カフ「さて、食事も一段落付きましたし……、……登る山について話しましょうか」

    トレ「何か緊張するな……。……それでどこの山を登るんだ」


    カフ「登る山は……、大山です。神奈川県の丹沢山塊東端……、伊勢原市、秦野市、厚木市

    にまたがる標高1,252mの山でまたの名を阿夫利山、雨降り山と言います……」

    トレ「雨降り……、雨乞い信仰でもあった山なのか」


    カフ「ええ、そうです……。大山には……大山阿夫利神社という神社があり、主祭神としては大山祇大神……、大雷神……、高龗神の三柱が祀られていますが……、それ以前、古くは縄文時代から山岳信仰の対象として祭祀されていました。……特に山に雲がかかった時、雨や霧を降らすことが多いため、雨乞いの対象にもなったそうです」

    トレ「……何か凄く詳しいんだな。こう……、そういった神話系にはあまり興味がないように思っていたんだが……」


    カフ「……多分、フクキタルさんの影響ですね」

    トレ「フクキタルというと……、マチカネフクキタルか?」


    カフ「はい……、以前からもあの子関係で少し話していたりしたのですが……。……宝塚記念の後、スズカさんと仲良くなって、その流れでスズカさんと仲が良いフクキタルさんとの会話も増えて……。私が山に登っているということを知って、そういった山の歴史や山にまつわる逸話などを教えてくれるようになりました……」

    トレ「そう言えば……、神社の娘なんだっけ?詳しい筈だ」


    カフ「ええ……。それで興味が湧いて……、自分でも調べ始めて今に至るという訳です」

    トレ「何だか面白そうだな……。暇な時で良いから、色々聞かせてくれないか」


    カフ「そう、ですね……。では、良い機会があれば……」

    トレ「ああ、楽しみにしているよ」


    大山:

    大山 (神奈川県) - Wikipediaja.wikipedia.org
  • 4二次元好きの匿名さん21/11/23(火) 21:34:01

    2/17
    【標高差について】
    トレ「それで……大山を登る山に選んだ理由は何だ?もっと言えば、登山初心者がいきなり1000 m級の山に挑んでも大丈夫なのか?」

    カフ「まず、前者に関して言えば……、登るのに特別な技術が一切必要ないからです。……大山は先程述べたように丹沢山塊の東端にあることで交通の便が良く、大山阿夫利神社への参詣や紅葉狩りなどを目的とした観光客が毎年かなりの数訪れます……。そのため、麓は勿論……、登山道もかなり整備されていて体力さえあれば簡単に登ることが出来ます」
    トレ「そう言われると何かの広告で見た気がするな……」

    カフ「そして、後者に関しては……標高に対する認識が間違っています」
    トレ「標高に対する認識?」

    カフ「トレーナーさんは……、標高が1000mなら1000m上がると考えている。……合っていますか?」
    トレ「そう思っているけど……。違うのか?」

    カフ「違います……。標高は平均海水面を0mとし……、そこからの高さのことを言います。……海抜高度とも呼ばれますね」
    トレ「ああ、そうだな」

    カフ「では、ここで一つ質問です……。……登山は海抜高度0mから始まりますか」
    トレ「そんな訳……。あっ……」

    カフ「はい、そういうことです……。登るのは山頂の標高から登山口の標高を引いた分……、重要なのは標高自体ではなく標高差です……」
    トレ「何と言うか盲点だな……。言われたら納得するが、言われなければまるで気付かないというか意識すらしないな」

    カフ「どうしても、標高という言葉に引っ張られるのでしょう。ただ、この標高差も大雑把な目安にしかなりえません……。より正確なのは累積標高差です」
    トレ「累積標高差」

  • 5二次元好きの匿名さん21/11/23(火) 21:34:45

    3/17

    【累計標高差と目安について】

    カフ「登山とは言いますが……、山頂を目指して登っている途中で下ることもあります。例えば、登山経路の途中に高さ20mの下り坂があるとして一旦下り……、登ると標高自体は下る前と同じですが、20m登ったことになりますよね。そういった道中のアップダウンを合計したものを累積標高差と呼びます……」

    トレ「成程なあ……」


    カフ「……標高差の話に戻りますが、初心者は標高差600m以内、中級者は標高差1,000m前後、上級者は標高差1,500m以上が大体の目安になります……」

    トレ「標高差600mが初心者の目安なのはどういう理由なんだ?」


    カフ「一般に……標高差300mを登るまたは下りるのにかかる時間は1時間と言われています。そして、登山初心者は活動時間を4時間以内に収めるのが丁度良い塩梅であるとされているため、標高差600mが一つの目安になっています……」

    トレ「じゃあ、我々が登る予定の大山もそれくらいなのかな」


    カフ「……942mです」

    トレ「……ん?」


    カフ「標高310mにあるバス停から標高1,252mの大山山頂まで登ります」

    トレ「……数秒前に言った目安は?」


    カフ「目安に過ぎません……。……冗談です。大山には二つの出発点があります」

    トレ「二つの出発点?」


    カフ「ええ……、では、少し大山の地図を見てみましょうか。……こちらのサイトで」


    登山情報サイトYAMAKEI ONLINE:
    山好きのための登山情報サイト - ヤマケイオンライン / 山と溪谷社ヤマケイオンラインは、山と溪谷社が運営する登山情報サイト。登山地図、登山道、登山用品情報など、便利なツールを提供しています。初心者の方からベテランの方まで、登山者のニーズに幅広く応えます。www.yamakei-online.com
  • 6二次元好きの匿名さん21/11/23(火) 21:35:21

    4/17
    【登山地図について】
    トレ「このサイトは?」
    カフ「見ての通り……、登山に関する情報サイトです。『山と渓谷』という山岳雑誌を出版している【山と溪谷社】が運営しているサイトで日本国内の山のデータが纏められています……」

    トレ「へえ、こんなのがあるんだ……。コラムとかあって中々面白そうだ」
    カフ「はい……。そこそこ為になることが書いてあったりするので、時間があれば読んでみると良いかもしれません。……取り敢えず、『登山地図&計画マネージャーヤマタイム』をクリックして、『大山・東丹沢』を選択しましょう。大山周辺の地図が表示される筈です……」

    トレ「ええっと……、これか。何か赤い数字が所々に書いてあるが……」
    カフ「それらの数字は……登りと下りのコースタイムですね。大体これくらいの時間がかかるという目安で……下りの方が短いです……」

    トレ「言われてみると確かにそうなっている……。こういうものを使って、登山計画を作るんだな」
    カフ「そう、ですね……。では……、トレーナーさんも少し登山計画を作ってみましょう。『コースタイム計画をたてる』をクリックして……、バス停の大山ケーブル駅から女坂、下社、表参道16丁目、大山山頂、唐沢峠分岐、見晴台、男坂、最初のバス停の順にクリックしてみてください」

    トレ「ああ、分かった。大山ケーブル駅から――」

  • 7二次元好きの匿名さん21/11/23(火) 21:37:26

    5/17
    【コース設定とコース定数について】
    トレ「――こんな感じか?」
    カフ「ええ……、良いと思います」

    トレ「総コースタイム4時間25分、合計距離8.3 km、登りの累積標高差1302m、下りの累積標高差1296m……。総コースタイムが活動時間に相当すると考えていいのか?」
    カフ「そうですね……。説明していませんでしたが……、コースタイムは『成人男性が10kgほどの荷物を背負って無理なく歩ける、休憩を含まない所要時間』です……。……実際の登山時には休憩時間があります。それを考慮して登山計画を立てましょう……」

    トレ「それは分かるが、この計画はどうなんだ?特にこの累積標高差が初心者にとって適切か否かが分からないんだが……」
    カフ「そういう時は……コース定数ですね」

    トレ「コース定数」
    カフ「はい……、『1.8×行動時間(h)+0.3×歩行距離(km)+10.0×登りの累積標高差+0.6×下りの標高差(km)=コース定数』という式で算出され……、1-100前後の数値でコースの体力的難度を示してくれます。目安としては、10前後が初心者向き……、20前後が一般的な登山者向き……、30前後が日帰り登山且つ健脚者向き……、40以上が日帰りでは困難且つ熟練者向きとなっています……」

    トレ「なら、ちょっと電卓アプリで計算してみるか。えーと……、約24.4で一般的な登山者向きか。……少しキツくないか?」
    カフ「……かもしれません。ですが、大山はケーブルカーがあるため、標高700mにある下社から登山を始めることも出来ます。……試しに下社から先程と同じ様なコースを作ってみてください。かなり楽になる筈です……」

    トレ「どれどれ、下社から――」

  • 8二次元好きの匿名さん21/11/23(火) 21:38:52

    6/17
    トレ「――こんなものか。総コースタイム2時間45分、合計距離5.5 km、登りの累積標高差938m、下りの累積標高差934m、コース定数16.5……。一気に8も下がって初心者向きになったな」
    カフ「ええ……。今回の場合は出発点の標高が異なるというものでしたが……、登山はルート次第で大きく難易度が変わります。傾斜が急なもの、緩やかなもの、尾根を歩くもの、樹林帯を歩くもの、途中に鎖場があるもの……。そういった要素をよく検討し、作成したルートが自分の力量に見合っているかどうかを判断して、登山計画を立てましょう……」

    トレ「ああ、肝に銘じておくよ。……それで今回は後者のルートで登るのかな」
    カフ「それについてですが……、トレーナーさんが判断して下さい」

    トレ「えっ!?俺が?」
    カフ「はい、そうです」

    トレ「それは……、何でだ?」
    カフ「今回の登山は私とトレーナーさんのたった二人だけですが……、グループで行うものになります。そして、グループ登山の場合……、登山ルートは最も体力が低い人に合わせて余裕のあるものとするのが鉄則です。ですので、私よりも体力が低いトレーナーさんが無理なく登れそうなルートを選んでください……」

    トレ「成程、そうか……」
    カフ「ええ、そうです……。……それと私が選んだからと言って、この山に登らなくてはならないという訳ではありません。下社出発でも厳しいと思ったのなら、また別の山を見繕います……」

    トレ「ふーむ…………」
    カフ「……………………」

  • 9二次元好きの匿名さん21/11/23(火) 21:39:55

    7/17
    トレ「……一つ質問しても良いか」
    カフ「……何でしょう」

    トレ「カフェが最初にバス停から登っていくルートを示したのは……、俺でも登り切れると判断してのことか?」
    カフ「……トレーナーさんは学生時代に様々なスポーツを経験した。そうですよね」

    トレ「ああ、水泳、野球、剣道……。我ながら色々やったな……」
    カフ「つまり、体の効率的な動かし方をよく知っている訳です……。故に多少体力的に衰えていてもテクニックを駆使し……、所々でしっかりと休憩を挟めば、十分に登り切れる。……そう判断しました」

    トレ「……うん、よく分かった。最初に示してくれたルートで登ろう」
    カフ「……いいんですか?」

    トレ「たまには体を全力で動かすのも悪くない。そう思ったんだ」
    カフ「そう、ですか……。……分かりました、バス停からのルートで登りましょう」

    トレ「……それで登る山とルートを決定したのは良いが、登るにあたってどういう準備をすれば良いんだ?先程、店で買った以外にも色々と必要な筈だろう?」
    カフ「そうですね……。説明のために登山装備チェックリストを持ってきたので見ていきましょう」

  • 10二次元好きの匿名さん21/11/23(火) 21:40:38

    8/17
    【持ち物について】
    カフ「まず、私のトレーニングを管理しているトレーナーさんに対しては釈迦の耳に説法ですが……、最も重要なのは飲料水です。季節によって汗の量が変わるため一概には言えませんが……、汗の量、脱水量の70-80%が必要な給水量と言われています。……脱水量を計算で求めることは出来ますか?」
    トレ「ああ、それなら、『自重:体重及び装備(kg)×行動時間(h)×5(ml)』の式で算出することが出来る。仮に自重75kg(体重65kg+装備10kg)で6時間行動したとしたら、脱水量は2250ml、給水量は1575-1800mlだな」

    カフ「……ありがとうございます。その場合、予備で1000ml追加して……、2500-3000ml程度が持っていくべき水分量になりますね」
    トレ「量の他に飲料水で注意すべきことはあるか?」

    カフ「知っていると思いますが……、お茶やコーヒーには利尿作用があるため、トイレが近くなります。少量ならば気力が湧いてくるので良いですが、多量の摂取は控えましょう……。……アルコール類は判断能力や平衡感覚に支障が出るので以ての外です。また、飲料水は容器の素材と大きさに気を付けましょう……」
    トレ「容器の種類と大きさ」

    カフ「普通の金属製の水筒は重たいため……、疲れてしまいます。登山用のプラスチック製のボトル……、普通のペットボトルでも大丈夫ですので軽い素材で出来ているものを使いましょう。そして、容器の大きさに関しては……、2000mlを一本よりも500-1000mlを複数本の方が荷物全体の重量バランスを調整しやすいという利点があります……」
    トレ「成程………」

  • 11二次元好きの匿名さん21/11/23(火) 21:41:44

    10/17

    カフ「一つ目は有楽製菓が製造している『ブラックサンダー』です……。重量21gに対してカロリーは112kcalと極めて高く……、チョコレートの甘さとビスケットのくちどけであっさり食べることが出来ます」

    トレ「子どもの頃、よく食べていたな。1個30円で満腹感があったから好きだったけど、そんなに高カロリーだったのか……」


    ブラックサンダー:

    ブラックサンダー - Wikipediaja.wikipedia.org
  • 12二次元好きの匿名さん21/11/23(火) 21:42:45

    11/17

    カフ「二つ目はアメリカのマース社が製造している『スニッカーズ・ミニ』です……。『スニッカーズ・シングル』の小型版で重量20gに対してカロリーは90kcal……、ヌガーにキャラメルとピーナッツをトッピングしてミルクチョコレートで包み込んでいるので食べた時に重量感があります……。……がっつり食べたい人におすすめですね」

    トレ「豆知識だが、商品名はマース社の創業家であるマース家に所属していたウマ娘の名前が由来らしい」


    スニッカーズ:

    スニッカーズ - Wikipediaja.wikipedia.org
  • 13二次元好きの匿名さん21/11/23(火) 21:45:09

    12/17
    カフ「そして、三つ目は私のおすすめ……、コンビニのミニ羊羹です。重量60gでカロリーは175gと単位質量当たりの熱量は先述した二つに劣りますが……、気温の変化に強く、食べた時に歯がべたつかず、口の中の水分が奪われないという利点があります」
    トレ「味の種類が幾つかあるから飽きがこなさそうだな」

  • 14二次元好きの匿名さん21/11/23(火) 21:45:36

    13/17
    カフ「また、これら以外の行動食として……、甘味系では飴やグミ……、塩系ではサラミや魚肉ソーセージ、ナッツ類、柿の種……、酸味系ではハイレモンや塩分チャージタブレットなどがあります。……色んなお菓子や食品を行動食に適しているかどうかテストしてみたり、自分で食品を組み合わせて独自の行動食を作り出してみたりするのも面白そうですね」
    トレ「エネルギーのことを考えると甘味系をやや多めに、塩系と酸味系は補助として少量持っていくのが良い感じかな」

  • 15二次元好きの匿名さん21/11/23(火) 21:46:00

    14/17
    カフ「続いて、飲食物を除いた中で最も重要なコンパスと地図です。登山における遭難原因の第1位は道迷い……、分岐点を間違えたり、霧や雪といった悪天候で道を見失ったりすることで本来行くべき道を外れ、己の位置が分からなくなり、やがて疲労で倒れ、帰らぬ人となる……。そのような事態を避けるために必ず携帯しましょう」
    トレ「わ、分かった……。……ただ、どんなものを選べば良いんだ」

    カフ「コンパスはおもちゃのようなものでなければ何でも良いですが、定規付きのものがおすすめです。また、地図は昭文社の『山と高原地図』を買えばまず間違いありません」
    トレ「一応聞くが……、グーグルマップとかはどうなんだ」

    カフ「山ではインターネットに繋がらないことがあるので止めておきましょう……。スマートフォンで地図を見る場合は登山地図アプリをインストールして、予め地図をダウンロードするのが良いです。しかし、バッテリーが切れた時のことを考えますと……やはり紙の地図が一番です」
    トレ「確かにバッテリーの心配を抱えながら、地図を読むのはあまり良くなさそうだな。なるべくバッテリーを消耗しないように短時間で読むことに集中して、肝心な正確に地図を読むことがおろそかになりそうだ」

    カフ「それと『山と高原地図』には、その地図の地域の概要やコースガイドを記載した冊子が付いています……。……それを見ながら、登山計画を立てるのも良いかもしれません」

  • 16二次元好きの匿名さん21/11/23(火) 21:46:38

    15/17
    カフ「他に必須なもの……、帽子、タオル、時計、ゴミ袋、救急用品、健康保険証に関しての説明は殆ど不要ですね。帽子は日焼けと熱中症を防ぐため、タオルは汗を拭くため、時計はスマートフォン以外に正確な時間を知る術を持つため、ゴミ袋はゴミを家庭に持ち帰るため、救急用品と健康保険証は何らかのけがを負った際に速やかに治療をするためです……」
    トレ「ごくごく当たり前のことだな。……言及していないエマージェンシーコールとエマージェンシーシートと言うのは?」

    カフ「前者は笛……、後者は防寒シートのことで遭難した際に使います」
    トレ「防寒シートは夜になって気温が低下した際に起こり得る低体温症を防ぐためと分かるが、笛というのは?」

    カフ「助けを呼ぶ際に使います。……叫び続けるとかなり体力を消耗し、喉も乾きますが、笛なら呼吸するだけです。それに……人の声よりも笛の方が遠くまで音が届くと聞いたことはありませんか?」
    トレ「あー、何となく聞いたことがあるな。あれって、遭難時の知恵だったのか……」

  • 17二次元好きの匿名さん21/11/23(火) 21:48:06

    16/17
    カフ「そして、最後に絶対に忘れてはならないもの……、登山届です。これを届け出るか出ないかで遭難時の捜索隊の初動……、遭難場所の特定しやすさがかなり変わってきます。必ず出しましょう……」
    トレ「そうは言うが、どうやって作って出せば良いんだ?」

    カフ「先程使用した『YAMAKEI ONLINE』の場合……、登山計画から作成した登山計画を選び、下の方にある『登山届にする』をクリックすれば、登山届を印刷することが出来ます。それを登山する山の登山口に設置されている投函箱……、今回の大山の場合ですと『伊勢原駅前交番内』、『大山ケーブルカー駅待合室内』、『大山観光案内所』に設置されているので、そのうちのどれか一つに投函しましょう。また、電子メールでの登山届を受け付けている自治体なら電子メールで届け出ることも出来ます……」
    トレ「そんな便利な機能があるのか……。あと、登山届を作成する上で何か気を付けることはあるか?」

    カフ「作成することでというよりも当日の行動に関することになるかもしれませんが……、『登山届にルートを正確に記載し、その通りに進むこと』です」
    トレ「……当たり前のことでは?」

    カフ「そう、当たり前のことです……。……ですが、時々、それをしない登山者がいます。当日、『調子が良いから』……、『気力に満ち満ちているから』……、そんな理由で本来予定していなかったルートに進み、遭難する事例が実際にあります……」
    トレ「そんなことをされたら、捜索隊はいつまで経っても遭難者を見つけられないな……」

    カフ「ですので……、生きて帰るために余計なことはしないようにしましょう。また、これも当たり前のことですが、山に登る時は家族や知人に必ずそのことを伝えましょう……。まず始めに警察や消防に対する通報がなければ、捜索活動は行われません……。……万が一、携帯電話などの通報手段を喪失した場合、家族や知人による通報が命綱になります」
    トレ「そういうことなら、カフェは美浦寮の寮長であるヒシアマゾンに伝えることになるのかな」

  • 18二次元好きの匿名さん21/11/23(火) 21:48:58

    17/17

    カフ「ええ、そうなります……。……さて……、これで登山の準備に関する話は以上ですが……、何か質問はありますか」

    トレ「そうだな……、持ち物に関しては特にないが、登る山に関する詳細な情報を確認できる方法はないか?地図とウィキペディアだけ見ても道の険しさとか危険個所がよく分からない」


    カフ「それなら……、警察のホームページがおすすめです。地域差はありますが、今回登る大山がある神奈川県の県警ホームページの山岳情報はかなり充実していて、分かりやすいです……。過去の山岳遭難発生状況なども記載されているので登る前に確認し、気を引き締めましょう……」

    トレ「こんなページがあるのか……。しかし、事故原因を見ると下山中のものが多いな」


    カフ「登山とは言いますが……、登山の本分は下山にこそあります。詳しいことは当日に話しますが……、他に何か分からない点や疑問に思った点はありますか」

    トレ「いや、特にはない。とても分かりやすかった」


    カフ「なら、良いです……。では、最後に登る日について決めましょう……。……何もなければ、一週間後の日曜日で大丈夫ですか?」

    トレ「多分、何も予定は入っていなかった筈だ。まあ、カフェとの約束以上に優先すべき事柄はないから、何が何でも空けておこう」


    カフ「……流石に先約があれば、そちらを優先してください。それと登る日まで毎日、登山靴を履いて、慣らしておくことをお勧めします……。いきなり、慣れない靴で山を登ると余計に疲れたり、怪我をしてしまったりしますから……」

    トレ「ああ、分かった。……いや、でも、楽しみだな。もうそんな齢ではないと分かっているが、遠足みたいでワクワクする」


    カフ「ふふ……、そうですね。私も楽しみです……」

    トレ「まあ、何にせよ、今日は一日ありがとう。初心者の俺でも登山について少しは分かった気がするよ」


    カフ「そう言っていただけると幸いです。……では、そろそろ良い時間ですし、学園に戻りましょうか」

    トレ「そうだな。じゃあ、会計を済ませてくるから待っていてくれ」


    登山を楽しく安全に:
    神奈川県警察/登山を楽しく安全に 山岳遭難防止登山を安全に楽しむための情報を掲載しています。(神奈川県警察)www.police.pref.kanagawa.jp
    登山ルート危険箇所:
    神奈川県警察/登山を楽しく安全に 登山ルート危険箇所丹沢登山ルート、箱根登山ルートの危険箇所について掲載しています。(神奈川県警察)www.police.pref.kanagawa.jp
  • 19二次元好きの匿名さん21/11/23(火) 21:54:29

    えー、本来ならば、この後、大山登山中に撮った写真とともにカフェとトレーナーの取り留めのない会話を投下していく予定でしたが、未だに完成していないので本日はここまでとさせていただきます。
    22000文字超えても山頂に辿り着いていないってどういうことだよ(自問自答)。

    完成してから投下しろと言われるかもしれませんが、期間が空きすぎたので取り敢えず準備パートの延長戦だけ投下させていただきました。前スレから二週間経っても完成していないのは先々週にまた別の山に登ったからです。

    今週の土日までに続きを完成させて投下する予定です。許して下さい。

  • 20二次元好きの匿名さん21/11/23(火) 22:07:15

    やべ、ミスった

    >>10>>11の間にこれが入ります


    9/17

    カフ「次に大切なのは行動食です……。登山によって消費されるカロリーは『コース定数×自重体重及び装備(kg)』の式でおおよそ計算でき……、自重75kg(体重65kg+装備10kg)で想定するコースの場合は1,725kcalが予想消費カロリーとなります」

    トレ「何と言うか……すごくお腹が空きそうだな」


    カフ「はい……、とても空きます。そのため、高カロリーなものを所々で摂取し、エネルギーを補給する必要があります……。もっと言えば……、先述した飲料水でスポーツドリンクなどをあまり飲まない場合は行動食で塩分やミネラルを摂取しなければなりません」

    トレ「そうなると消化が良く、短時間でエネルギーに変換される糖質が良いのかな」


    カフ「ええ、その通りですが……、それに加えて嵩張らず軽い……、なるべく一口で食べきれるというものが理想ですね」

    トレ「そんな都合の良いもの……あるのか?」


    カフ「……あります。丁度、鞄の中に幾つか入っているので実物を交えて少し紹介しましょう……」

  • 21二次元好きの匿名さん21/11/23(火) 22:19:02

    投下乙です、面白かったです

  • 22二次元好きの匿名さん21/11/23(火) 22:40:15

    面白かったよ😃
    山頂どころか山にもついてないがなw。ヾ(^^ヘ)
    続きを楽しみにしてます。

  • 23二次元好きの匿名さん21/11/23(火) 22:46:11

    22000文字というのは現時点での全て合わせた文字数ですね
    本日の投下分はそのうちの約8700文字程度です
    どちらにせよ遠い

    ついでに前スレ分は約9900文字です

  • 24二次元好きの匿名さん21/11/23(火) 23:14:28

    面白い!かなり本格的な大山登山解説ですね!
    私も丹沢山系をホームマウンテンにしているので続きが楽しみです。

  • 25二次元好きの匿名さん21/11/24(水) 10:30:51

    保守

  • 26二次元好きの匿名さん21/11/24(水) 20:31:27

    保守、今日みたいな快晴の日に登りたいものですね。


    そして、カフェとトレーナーが大山を登っている時に触れる予定でしたが、遅くなるのでここで宣伝させていただきます。

    現在、大山では紅葉のライトアップとケーブルカーの夜景運転が行われています。

    どちらも11月28日(日)までとなっているので、お近くにお住まいで興味のある方はこの機会に一度足を運んでみてはいかがでしょうか。


    大山観光電鉄HP:
    ホーム | 大山観光電鉄 | 大山ケーブルカー公式ホームページwww.ooyama-cable.co.jp
  • 27二次元好きの匿名さん21/11/24(水) 23:23:56

    もういっちょ保守

  • 28二次元好きの匿名さん21/11/25(木) 09:04:07

    保守

  • 29二次元好きの匿名さん21/11/25(木) 17:01:37

    保守

  • 30二次元好きの匿名さん21/11/25(木) 21:51:34

    保守

  • 31二次元好きの匿名さん21/11/26(金) 01:36:04

    保守

  • 32二次元好きの匿名さん21/11/26(金) 09:18:35

    保守

  • 33二次元好きの匿名さん21/11/26(金) 17:24:06

    保守

  • 34二次元好きの匿名さん21/11/26(金) 17:36:46

    めっちゃ地元でびっくりしてる
    下社にあるお茶屋さんのお団子とおでんが美味しいからおすすめだよ

  • 35二次元好きの匿名さん21/11/26(金) 22:57:22

    >>34

    そこにある大学出身のものだが、毎年大山登山競技大会みたいのあったの

    楽しかったわ。今思うと頭おかしいが、まだやってんやろか・・・(遠い目)

    付近民だと遠足でもいったな大山。

  • 36二次元好きの匿名さん21/11/27(土) 08:49:05

    保守

  • 37二次元好きの匿名さん21/11/27(土) 17:10:45

    保守

  • 38二次元好きの匿名さん21/11/27(土) 21:56:05

    まだ完成していませんが、明日は天気が良いので山に登って帰ってから投下します(午後9時予定)
    一応、お茶屋前広場まで下山したところまで書けたし何とでもなる筈だ(見切り発車)

  • 39二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 04:47:49

    起床

  • 40二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 07:37:46

    遅くなった場合に備えて保守
    それと大山の紅葉ライトアップは本日が最終日です
    興味のある方は是非

  • 41二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 16:54:01

    下山

  • 42二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 20:32:13

    30分延期
    ジャパンカップとCMの結果を確かめながら読み返します

  • 43二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 21:34:32

    次の週 10月30日土曜日(登山日前日) トレセン学園トレーナー室

    トレ「カフェ、急にどうした。呼び出されたから来たが……」
    カフ「明日の登山のことで少しお話があって……。……天気のことです」

    トレ「天気」
    カフ「はい……。明日、丹沢は正午頃から雨が降ります。天気図などから恐らく小雨になるとは思うのですが……、その、トレーナーさんは大丈夫ですか」

    トレ「……その前に一般的な登山はどういう天気で行うべきものなんだ?」
    カフ「山は短時間で天候が変わりやすいので基本的に快晴の日以外は避けた方が無難です……。曇りは勿論……、雨天と降雪はその強さによりますが、命に関わります。また……、晴れの日でも雨天や降雪の翌日、翌々日は足元がぬかるんでいたりして危険です」

    トレ「成程。じゃあ、中止にするのが良いんじゃないか」
    カフ「そう……、ですね……。それが一番安全ですね……」

    トレ「――と思ったが、雨の日の登山にも興味があるな。こうして、確認しに来たということは雨の日でもやろうと思えばやれるんだろう?」
    カフ「!ええ……、十分な準備と注意があれば出来ます」
    トレ「具体的には?」

    カフ「まず……、天気に関しては雨がその日だけで尚且つ小雨であるのが最低条件です。……何日も雨が続いている場合は地盤が緩くなっている可能性があり、大変危険です。また……、ゲリラ豪雨の場合は沢で鉄砲水に巻き込まれることが考えられ、これまた危険です。今回の場合、今週はずっと晴れが続き、予想される雨も小雨であることから危険性は低いです……」
    トレ「確かに土砂崩れとかは危ないものな」

    カフ「次に装備に関しては……レインウェアとザックカバーが必須です。体を冷やさないことに重点を置きましょう」
    トレ「低体温症を避けるためだな」

    カフ「そして、最後……、注意に関しては多岐に渡るので実際の登山時に詳しく説明します。ただ……、一つ言えることは滑りやすい足場を避けることです。雨の日でも晴れの日でも滑ったり、転んだりした場合、足を怪我し、走行機能に支障が出ることが殆どです……。そうでなくても怪我による痛みで登山に集中出来ず……、更なる事故に繋がる可能性があります」
    トレ「ふーむ……、こう説明されると普通に行けそうな気がしてくるな」

  • 44二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 21:36:15

    カフ「ただ……、一般的にあまり行われることはないですね……。危険度が上り……、山頂からの眺望は期待出来ず……、体が冷える。雨の日の登山……、レインハイクを行う理由はレインウェアやギアの実地試験といったものが多いです」

    トレ「まあ、そうだろうな。特に見晴らしを期待出来ないというのは中々痛い」
    カフ「……ですが、いつもと違うなりの楽しさがあります。雨の中の閑静な登山道というのは自分と自然がより一体となったかのような……、この山には自分以外の人間は存在しないかのような……、そんな気分にさせてくれます」

    トレ「そうか……。……明日、登山を行うとして、大山は安全か?」
    カフ「絶対的な安全は保障出来ません……。しかし、大山は私のホームタウンならぬ、ホームマウンテンです……。どこに何があるかは知り尽くしているので……、安定した登山は約束出来ます」

    トレ「……うん、よく分かった。登ろう」
    カフ「……いいんですか?」

    トレ「正直、楽しみだからな。眺めが良くなくても登れるなら登りたいと思っていたんだ」
    カフ「そう、でしたか……」

    トレ「ああ、そうだ。それと明日の登山に備えてやっておくべきことは何かあるか?明日は府中駅で7時の電車に乗って、京王線、南武線、小田急線と乗り継ぎ、伊勢原駅でバスに乗って登山口に9時前に到着する予定だから、身だしなみや朝食を考えると5時頃に起きないといけないというのは知っているが……」

  • 45二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 21:39:04

    カフ「それなら……、今日の夕食を胃腸に優しい……、消化しやすいものにすることをお勧めします。油ものを登山前日に食べると胸焼けや胃もたれを起こして安眠出来ないことがあります……。寝不足の状態での登山はわざわざ事故を起こしに行くようなものですから絶対に止めましょう……」
    トレ「成程、胃腸は強くない方だから気を付けておこう」

    カフ「あと……、荷造りは登山前日に済ませておくことです。今回は大分遅く登り始めるので余裕がありますが、登る山によっては始発の電車に乗る必要があったりしますから、朝、準備する余裕は全くありません……。登山は……事前の準備が全てを決定すると言っても過言ではありません。忘れ物をしないようにしっかりとチャックリストを確認しながら収納しましょう……」
    トレ「それはもう済んでいるが……。念のため、もう一度持ち物を確認しておこう」

    カフ「それと……荷造りにもコツがあります。バックの下部には軽くあまり使わないもの(着替え)、中心よりやや上で内側……、背中側には最も重くかさばるもの(飲料水)、中心よりやや上で外側は重く使用頻度が多いもの(レインウェア、防寒着)、雨蓋には緊急時に使うまたは使用頻度が多いもの(救急用品、地図、コンパス)を入れましょう……。特に重いものが中心より上にあるか下にあるか、外側にあるか内側にあるかで疲労度がかなり変わってきます……。サイドコンプレッションストラップなどを使用して……上手く纏めましょう」
    トレ「ふむふむ……。……腰ベルトのポケットはどう使うんだ?」

    カフ「私は右側にスマートフォン……、左側に行動食(羊羹)を入れています……。……良い景色に出会った時、直ぐに撮影出来るので重宝しています」
    トレ「それはとても良さそうだな。真似させてもらおう」

    カフ「また、トレーナーさんなら分かっていると思いますが……、手足の爪をしっかり切りましょう。伸びていると岩などに引っ掛け怪我する恐れがあります……」
    トレ「流石にな。どう考えても激しい運動をするんだから………」

    カフ「他は……特にはないですね」
    トレ「そうか。では、予定通り、明日は6時半に学園正門前に集合しよう。それで良いか?」

    カフ「はい……。明日は宜しくお願いしますね」
    トレ「ああ、こちらこそ、宜しく頼むよ」

  • 46二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 21:40:59

    10月31日 日曜日(登山日) 午前6時25分 トレセン学園正門前

    トレ「さて、そろそろ、集合予定時刻だが……」
    カフ「おはようございます、トレーナーさん……」

    トレ「あっ、もう、待っていたのか。待たせてすまない」
    カフ「いえ……、私も先程来たばかりです。それにまだ5分前ですので……」

    トレ「ああ、そうだった。……少し早いが、出発するか?」
    カフ「そうですね……。あまり変わりませんが、もう行きましょう……。それと……似合っていますね、登山ウェア……」

    トレ「そうか?自分ではよく分からないが……。それより、カフェも何かこう……凄く格好良いな。黒を基調とした服とレンジャーハットがこなれているというか……、ベテランの風格を感じる……」
    カフ「……本物の登山上級者に比べれば、まだまだです。でも……、ありがとうございます」

    トレ「……あと、髪を尻尾結びにしているんだな」
    カフ「いつもの髪形だと木の枝などに引っかかる恐れがあるので……。変、でしょうか……?」

    トレ「いや、そんなことはない。ただ……、その……」
    カフ「その……?」

    トレ「……とても素敵だと思って。こんな言葉しか出ないほどに」
    カフ「……………………」

    トレ「……あれ、カフェ?どうした?急に顔を背けたりして……」
    カフ「何でも……、ないです。ただ、ちょっと、今はこちらを見ないで下さい……」

    トレ「あっ、ああ……(不味い、引かれたかな……)」
    カフ「……………………(ニヤニヤが止まりません……。早く元の表情に戻さないと……)」

    ヒシアマゾン「(寮長として念のため、お見送りに来たが……。何をやっているんだい、あの二人は……。見ているこっちの気分までどうにかなっちまいそうだよ……)」

  • 47二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 21:42:26

    10月31日 日曜日(登山日) 午前8時50分 伊勢原駅北口バス停

    カフ「一本遅れましたが……、何とか伊勢原駅に着きましたね。トレーナーさん」
    トレ「途中で腹を下してしまってすまない……。ちゃんと胃に優しいものを食べた筈なんだが……」

    カフ「……少し緊張しているのかもしれませんね」
    トレ「かもしれん……。昔から緊張するとどうにもトイレが近くなる」

    カフ「……でも、暫くはトイレの心配をする必要が無いと考えれば結構良いのかもしれません。腹痛や尿意を抱えながら山道を歩くよりも多少遅れてでもしっかりと済ませておく方が精神的にも肉体的にも安定します」
    トレ「そう言えば……、山のトイレ事情ってどうなっているんだ?今日登る大山はバス停、下社、上社と各所トイレが設置してあるみたいだが、そんな山ばかりではないだろう?」

    カフ「そうですね……。まず、大小どちらの場合も水場は避けます。その上で小さい方は植生への影響の少ない場所でします。大きい方は簡易トイレでして持ち帰るか、スコップで土中に埋めます。また、どちらの場合でも使用したトイレットペーパーやティッシュは必ず持ち帰るようにしましょう。紙類は土に分解されず、いつまでも残り続けてしまいます」
    トレ「その話は少し聞いたことがあるな。富士山のトイレでし尿が垂れ流し状態になり、トイレットペーパーが白い川のようになったと」

    カフ「ええ……。一応、今ではバイオトイレが整備され、問題が解決されたようですが、基本的は持ち帰るべきものと考えましょう。……それより、やはり曇っていますね」
    トレ「そうだな、何とか山頂まで持ってくれると良いが……。……っと、あの鳥居は?」

    一の鳥居その1

  • 48二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 21:44:30

    カフ「大山阿夫利神社の『一の鳥居』……のようなものです」
    トレ「ようなもの?」

    カフ「一般的に一の鳥居とは呼ばれていますが……、一の鳥居はここからずっと南の藤沢市の辻堂駅近くにあります。では、二の鳥居かというとそうではなく、二の鳥居はもっと先にあります……。そのため……、さしずめ1.5の鳥居と言ったところでしょうか」
    トレ「成程……。でも、こうして大きい鳥居を見ると『大山に今から行くんだ』という気持ちになって、少しテンションが上がるな」

    カフ「そう、ですね……。天気が悪くてもワクワクします……」
    トレ「……それで少し思ったんだが、大山に向かう登山者が多くないか?こうして話しながらバスを待っている間にもどんどん人が並んでいって……。昼から雨が降る筈なのに……」

    カフ「以前にも言いましたが、大山はアクセスが容易で登りやすく観光地化が進んだ山ですから……。下社までならケーブルカーで行けますし、麓には商店街もあって山に登らなくても結構楽しめます」
    トレ「いや、勿論、そのことは覚えているが、これほどまでとは思わなくてな。ちょっと面食らったんだ。……あと、この調子で人が並んでいくとバスに乗る時はすし詰めだが、いつもこんな感じなのか?」

    カフ「ええ、大山に限らず、丹沢の登山口近くの駅から出るバスは大体こんな感じです……。もっと言えば……、今日は天気が悪く遅い時間なので少ない方ですね。もっと早い時間帯だとバスを一本見送るなんてことがよくあります……」
    トレ「今回は早めに並んだから席に座れそうだが、登る前からハード過ぎないか?」

    カフ「……まあ、それも登山の醍醐味の一つということにしておきましょう。それより、バスが来ましたね……」
    トレ「そうだな、乗ろう」

    一の鳥居その2

  • 49二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 21:47:03

    午前9時30分 大山ケーブルバス停

    トレ「到着と……。かれこれ30分はバスに揺られたな。本当に座れて良かった……」
    カフ「それよりもトレーナーさん……、あれが大山ですよ」

    トレ「あれがそうなのか……。思ったよりは近くて低い感じがするな」
    カフ「雲を見た感じ……、予報通り午前中までは大丈夫そうですね。直ぐそこにトイレがあるので、用を足してから登り始めましょう……」

    トレ「ああ、分かった。……っと、何だこれは?こま?」
    カフ「『大山こま』、ですね……。縁起物でこまが良く回ることは金回りが良くなるとされ、家内安全、商売繁盛を呼びこむだとか。こまの製作技術は伊勢原市の指定無形民俗文化財にも指定されています……」

    トレ「へえ……、じゃあ、小さいものがあればお土産として買って帰ろうかな」
    カフ「お土産……。良いですね、私もフクキタルさんのために買って帰りましょう……。確か、こうした縁起物を集めるのが趣味らしいですから……」

    大山(登山時の姿)

  • 50二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 21:47:37

    大山こまの石碑

  • 51二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 21:48:27

    日本遺産の説明1

  • 52二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 21:48:54

    このレスは削除されています

  • 53二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 21:49:29

    日本遺産の説明2

  • 54二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 21:50:35

    午前9時33分 こま参道


    トレ「少し坂道を登ったら商店街のような場所に出たな」

    カフ「『こま参道』、ですね……。大山阿夫利神社へと続く参道の始まりで……道の両脇にはお食事処とお土産屋さんが立ち並んでいます……」


    トレ「中々趣があるな。……この階段をずっと登っていくのか?」

    カフ「そうですね……、終点にケーブルカーの駅があります。……ちなみに階段は362段、踊り場は27段あります。タイルに描かれているこまの数でも数えながらゆっくり登っていきましょう……」


    ゆっくり歩こう「こま参道」:
    ゆっくり歩こう「こま参道」isehara.club
  • 55二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 21:52:43

    午前9時43分 大山ケーブル山麓駅付近

    トレ「ここでこま参道は終わりか。面白そうな店ばかりで眺めながら歩いたらあっという間だったな」
    カフ「そう、ですね……。何度来てもあの雰囲気は良いものです」

    トレ「それでケーブルカーには乗らなくて、女坂を登るんだったな」
    カフ「はい……、そうです。ここから本格的な登山が始まりますが……、準備の方は大丈夫ですか?」

    トレ「ああ、大丈夫だ。いつでも行けるぞ」
    カフ「では……、ペースを合わせるため、トレーナーさんを先頭に行きましょう」

    大山ケーブル駅付近の小川

  • 56二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 21:53:37

    男坂-女坂分岐点

  • 57二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 21:54:37

    男坂-女坂分岐点2

  • 58二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 21:57:27

    午前9時50分 女坂 道中

    トレ「景色は良いが……、思ったよりも階段がきついな……。もう汗が出てきた……」
    カフ「水分補給は喉と唇を湿らせる程度のものを小まめに行いましょう……。我慢し過ぎたり、補給量が多かったりすると疲れてしまいます……。勿論、よく理解しているとは思いますが……」

    トレ「カフェのトレーナーだからな……。そう言えば……、さっき入口で見かけた……女坂の七不思議って……何だ……」
    カフ「女坂にある様々なものをそれっぽくしただけのものです……。こうして、苦労して登る登山者に対するせめてもの気休めです。……大した意味はありません」

    トレ「そう、なのか……」
    カフ「ただ……、気休めでもあるとないとでは大分違うと思います。立て看板を読んで……、不思議を見て……、気力を少しでも回復させる……。深く考えず、そういうものとして楽しみましょう……」

    トレ「そんなもの、か……」
    カフ「そんなものです……。……それとあれが一つ目の不思議のですね」

    トレ「『弘法の水』……。弘法大師に所以があるものか」
    カフ「七不思議三つの目の『爪切り地蔵』も弘法大師に所以があるものとされています。真偽のほどについては……、詮索するのは無粋というものです」

    女坂七不思議その1の立て看板

  • 59二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 21:58:30

    女坂七不思議その2の立て看板

  • 60二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 21:59:02

    女坂七不思議その3の立て看板

  • 61二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 21:59:33

    女坂七不思議その4の立て看板

  • 62二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 22:00:17

    竜神堂

  • 63二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 22:02:41

    午前9時57分 女坂 大山寺前

    トレ「大分登ってきたが……、何だか立派な石階段があるな……。……大山寺?」
    カフ「真言宗大覚寺派の寺院ですね……。大山不動とも呼ばれ、その通称の通り、本尊は不動明王……。山号は雨降山、創始者は奈良の東大寺大仏建立に携わった良弁とされています……」

    トレ「……ということは、奈良時代くらいからあったのか。何かすごいな……」
    カフ「以前にも言いましたが……、大山は縄文時代から信仰の対象でした。大山そのものを『アフリノカミ』と祀り……、山頂の磐座を『石尊権現』と祀り……、阿夫利神社と大山寺が融合……、神仏習合が行われ、『大山詣で』や神仏分離を経て今に至る。とても歴史ある場所です……」

    トレ「……ん?『アフリノカミ』?『石尊権現』?以前、阿夫利神社の祭神は大山祇大神と言っていなかったか?」
    カフ「実は以前言った祭神は明治以降の近代……、阿夫利神社(アフリジンジャ)が成立してから祀られるようになったものです。それ以前は阿夫利神社(アフリノカミノヤシロ)で当時の主祭神が『アフリノカミ』だったというだけです……」

    トレ「あー……、何と言うか、きっちりとした日本神話体系と諏訪のミシャグジのような民間信仰みたいな関係か?」
    カフ「おおむね、そのような理解で大丈夫だと思います……。それより、今はまだ緑色ですが……、もう少し後の時期になると階段の両脇にある紅葉が真っ赤になり、とても綺麗です……。特に日没後はライトアップされ、幻想的な雰囲気になります……」

  • 64二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 22:04:45

    トレ「それは良さそうだ……」
    カフ「……もし、都合が良ければ、見に行きませんか」

    トレ「そうだな。11月の後半くらいかな?」
    カフ「ええ……、そのくらいの時期ですね。マイルチャンピオンシップからジャパンカップの間くらいが良いと思います……」

    トレ「……午後から天皇賞秋がある今日もそうだが、トゥインクルシリーズに在籍していた去年だったら絶対に出来ないな。今はドリームトロフィーリーグに移籍したから夏と冬だけ集中すれば良いが……」
    カフ「そう、ですね……。去年までの三年間は本当に波乱万丈でした……」

    トレ「まあ、今年もチームの設立に新入生の育成とカフェの育成だけに集中していれば良かった今までとはまた違った大変さがあるが……。カフェのおかげで大分楽させてもらっているから、大丈夫だな」
    カフ「私のおかげ……、ですか?」

    トレ「コーヒーを振舞ったり、走法についてのアドバイスをしたりと色々やっているだろう。あれらのおかげでチームに入った新入生達がカフェの下で団結し、連帯感が生まれている。もっと言えば、俺も『あのカフェ先輩を育て上げた人なら……』ということで新入生達から信頼を得ている面がある」
    カフ「いえ、そんな……。凄いのはトレーナーさんであって、私では……。……それより、あの子達、そんなことを……」

    トレ「まあまあ、あまり険しい顔をしないでくれ。悪気があって言っている訳ではないんだ。カフェが優秀でそれで助けられている面があるのは事実なのだから……」
    カフ「……それでもです。帰ったらしっかりと話し合う必要がありますね……。ふふ……」

    トレ「(……完全に余計なことを言ってしまったな。後日、高級ニンジンを一本ずつ渡すことでお詫びとしよう……。新入生達よ、すまない……)」
    カフ「……それでどうしますか?大山寺を見ていきますか」

    トレ「……見に行くとしたら、この石階段を上るんだよな」
    カフ「ええ、そうなります……」

    トレ「……また、後日にしよう。多分、今、これを登ったら息切れする」
    カフ「では……、となりの坂道を登っていきましょう。傾斜は急ですが、階段よりは楽な筈です……」

    大山寺の石階段

  • 65二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 22:08:25

    午前10時1分 女坂 無明橋-潮音洞

    トレ「坂道を登り切ったら橋があるな……」
    カフ「あっ……。トレーナーさん、この橋は無言で渡ってください……」

    トレ「無言で?」
    カフ「はい、そうです……」

    トレ「……………………」
    カフ「……………………」

    トレ「……渡り切ったが、何だったんだ?」
    カフ「この橋は『無明橋』と言って……、七不思議の一つで話をしながら渡ると悪いことが起きると言われています。そこに立て看板もあります……」

    トレ「本当だ、忘れ物や落とし物をすると書かれている」
    カフ「ただの迷信だとは思いますが……、用心するに越したことはありません。トレーナーさんはそういったものに好かれやすいですから……」

    トレ「ああ、いつもありがとうな。本当に助かっている」
    カフ「いえ、こちらこそ……」

  • 66二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 22:09:07

    トレ「……っと、近くにもう一つ立て看板があるな。……『潮音洞』?」
    カフ「心を静めて耳を澄ませると……潮騒の音が聞こえるらしいです。私は一度も聞こえたことはありませんが……」

    トレ「ふーむ……、潮騒か………」
    カフ「……どうかしましたか?」

    トレ「いや、記憶が確かなら、昔、ここら辺は海だったなと思って」
    カフ「……本当ですか?」

    トレ「ああ、『縄文海進』と言って、最終氷期の最寒冷期後に始まった温暖化によって海面が最大で120mほど上昇したんだ。そのピークは5000-6000年前で伊勢原駅くらいの場所に海岸線があった筈だ」
    カフ「そうなんですか……。そういった話を聞くと……本当に潮騒の音が聞こえてきそうですね」

    トレ「『潮音洞からの音は古代からの音』……なんてポエミー過ぎるかな」
    カフ「私は……良いと思いますよ。少し一緒に耳を澄ませてみましょう……」

    トレ「……………………」
    カフ「……………………」

    無明橋

  • 67二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 22:09:59

    女坂七不思議その5の立て看板

  • 68二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 22:10:39

    女坂七不思議その6の立て看板

  • 69二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 22:13:01

    女坂七不思議その7はこの後の急階段を登ることに精一杯で撮影出来ませんでした。ご了承ください。
    また、その5を除いて立て看板の写真なのはこういうものは現地で実際に見た方が色々と楽しめるからです。
    画面の前の君も大山に登ろう!

  • 70二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 22:15:28

    午前10時15分 男坂-女坂分岐点

    カフ「ようやく女坂を登り切りましたが……。……大丈夫ですか?」
    トレ「」コヒュ-コヒュ-

    カフ「大丈夫では……なさそうですね。取り敢えず、適当な石に腰掛けて水を飲んで汗を拭きましょう」
    トレ「」コヒュ-コヒュ- ゴクゴク

    カフ「……落ち着きましたか?」
    トレ「少しだけ……な……。何だ、あの階段は……、体力を削り取りに来ているとしか思えなかったぞ……」

    カフ「女坂の階段は緩やかな分、長いですからね……。慣れていても結構足腰に来ます……」
    トレ「あれで緩やか……なのか……?十分急だったぞ……」

    カフ「まあ、山道ですから……。しかし、汗が凄いですね。もっと水を飲んだ方が良いのですよ」
    トレ「ああ、そうするよ……」ゴクゴク

  • 71二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 22:16:42

    カフ「(……思ったよりも体力の消耗が激しいです。休憩でどれほど回復出来るか……)」
    トレ「……よし、3分休んだし行くか!」

    カフ「えっ?」
    トレ「……うん?どうした?カフェはもう少し休憩が必要か?」

    カフ「私は大丈夫です……。それより、トレーナーさんは大丈夫ですか?先程までかなり息絶え絶えといった感じでしたけど……」
    トレ「慣れてきた!」

    カフ「あっ、そうですか……」
    トレ「それに下手に長い休憩を取ると筋肉が運動モードから休憩モードになってしまうからな。いわゆる、体が温まってきたという状態だ」

    カフ「なら……、調子が良いうちに下社へ行きましょうか。もう直ぐそこです……」
    トレ「ああ、分かった」

    男坂-女坂分岐点

  • 72二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 22:17:13

    >71

  • 73二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 22:20:41

    午前10時20分 大山阿夫利神社 下社

    トレ「これが阿夫利神社の下社か……。凄く立派だな……」
    カフ「無事に登れるようしっかり参拝しておきましょう……。それとあそこから相模湾、江の島や三浦半島を見ることが出来ます……」

    トレ「曇っていても良い景色だ……。晴れの日だと房総半島まで見えるらしいが、これでも十分だな……。……って、何だこの像?」
    カフ「『大山詣り』の像です……。江戸時代に『大山講』……、講というのは仏典を講読・研究する僧の集団、民俗宗教における宗教行事を行なう集団またはその会合を指すのですが……、この場合は大山に参詣することを目的とした地域の集まりです。大山に二つある滝で水垢離をし、頂上の石尊大権現に登り、持ってきた木太刀を神前に納め、改めて授けられた木太刀を護符として持ち帰る……というのが参詣の内容で特に鳶や職人の間で人気があったそうです……」

    トレ「像が持っている木太刀の大きさが俺の知っている木太刀のそれではないのだが……。本当にこんな大きさのものを山頂まで持って運んだのか?」
    カフ「どうもそうみたいです……。多くは長さ一間……1.8m程度ですが、7m程もある木太刀が納められたこともあったそうで……」

    トレ「7mとか重量が凄いことになりそうだな……。何だって、そんな大きさのものを納めたんだ?」
    カフ「その方が『粋』……だからそうです。私にはよく分からない世界ですが……」

    トレ「安心しろ、俺も理解出来ない。ただ、『大山詣り』についてはよく分かったよ」
    カフ「そうですか……。では……、参拝しに行きましょう」

    お茶屋前広場より

  • 74二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 22:21:27

    寄付の呼びかけ

  • 75二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 22:23:32

    下社

  • 76二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 22:24:41

    大山詣りの像

  • 77二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 22:25:36

    下社からの眺め

  • 78二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 22:26:18

    登山口案内

  • 79二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 22:32:54

    午前10時30分 表参道登山口

    トレ「この奥が登山口か……」
    カフ「はい……、先程、女坂で本格的な登山の始まりとは言いましたが……、本格的な登山道はここから始まります。足場に気を付けながら進みましょう……」

    トレ「そうは言うが、登山道を歩く上ではどんな注意が必要なんだ?」
    カフ「まず……、木の根に気を付けましょう。濡れてなくても滑りやすく不安定で引っかかりやすいです……。登山道は石が多く転がっているので……、少し転倒しただけでも大怪我を負うリスクが常にあります。……しっかりと避けましょう」

    トレ「他に避けるべき足場は?」
    カフ「浮石……、大山の場合はザレが多いです。あとは濡れた赤土……。これらも不安定で滑りやすかったり転びやすかったりするので避けましょう……」

    トレ「……浮石?ザレ?」
    カフ「浮石というのは……地面に埋まっていない石のことです。コロ石、石車、ぐり石とも言います……。そのうち、ビー玉からピンポン玉くらいの大きさのものをザレ、拳以上の大きさのものをガレと言い、それらがそれぞれ集まっている場所をザレ場、ガレ場と言います……」

    トレ「ふむふむ……。では、足場以外に注意すべきことは?」
    カフ「歩き方と挨拶です……。歩き方は大きな段差を避け、小さい段差を選び、少しずつ登る……。また、登る時に周囲に余裕があれば……、真っ直ぐではなく、ジグザグに登ることをおすすめします」

    トレ「箱根登山鉄道のスイッチバック走行みたいな感じか」
    カフ「ええ……、その理屈です。それと猫背で地面を見ながら歩くのは止めましょう……。基本、姿勢は真っ直ぐに、歩幅を小さく、足裏全体を斜面に付けてジグザクに登っていきましょう……」

  • 80二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 22:33:39

    トレ「中々難しそうだな……。……挨拶というのは?」
    カフ「単純に人としての礼儀です……。あとは万が一の目撃情報として記憶させることや当日の山の状況の情報収集という面もありますが……、牽制の意味もあります」

    トレ「牽制?」
    カフ「山というのは……本来人がいる場所ではありません。今回は有名な山ですので人気も多いですが、無名な山だと本当に人がいません……。……そういった場所で人と出会うのはかなり危ないと思っています。その時、挨拶をすることでこちらは無害であると宣言しつつ、相手が挨拶を返すか否かで同じ登山者か不審者であるのかを見分ける……。……なので、牽制です」

    トレ「夜間の街灯の少ない人気のない道で人に出会ったみたいな感覚か。確かにそれは少し驚いたり、警戒心を抱いたりするな」
    カフ「そして、先程の礼儀の話に戻りますが……、挨拶をするのはすれ違ったり、追い越したりする時です。登山者と下山者がすれ違う時は登り優先で『こんにちは』、登山あるいは下山時に追い越す……道を譲られた時は『ありがとうございます』か『お先に失礼します』、逆に譲る場合は『お先にどうぞ』といった具合です……」

    トレ「登り優先は自動車と同じ理屈かな。一度止まると動き出すのに時間がかかるから……」
    カフ「それもありますが……、下山者が転倒して落石を起こす可能性があるからです。その時に下の方で登山者が待っていた場合……、巻き込まれ、怪我を負うことがあります。それと道を譲る時の注意としては山側に身を寄せることです……。谷側にいた場合……、ちょっとした衝撃で谷底に落ちる危険性があります」

  • 81二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 22:34:49

    トレ「成程……」
    カフ「あとは臨機応変に対応することです……。相手が息切れしていたらあまり声をかけない、自分が遅くて後続から人が来たら早い段階で道を譲る、狭い道ではすれ違わず広い場所で待つ……。色々ありますが、上手くやりましょう……」

    トレ「何とかやってみよう。……それじゃあ、そろそろ行くか?」
    カフ「ええ……、行きましょう。そこの門をくぐれば始まります……」

    トレ「ああ、この門か……。…………は?」
    カフ「最初は……急傾斜な階段です。横の手すりをしっかり握りながら慎重に登っていきましょう……」

    トレ「えっ、いや……、……えっ?」
    カフ「……頑張って登りましょう」

    トレ「嘘でしょ……」
    カフ「気持ちは分かりますが……、こんな急登はここだけです。登り切ったら……、楽になります」

    最初の階段(下から)

  • 82二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 22:35:30

    最初の階段(上から)

  • 83二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 22:39:35

    午前10時40分 表参道道中(9丁目)

    トレ「かれこれ10分くらい登ったが……、思ったよりも順調だな」
    カフ「ええ……、曇りということで気温が低く、激しい運動をした体には丁度良い涼しさです。真夏の晴れの日だったら……、こうはいかないでしょう。気温もそうですが、ヤマビルもいますので……」

    トレ「そう言えば、さっき女坂の『無明橋』のたもとに注意書きと塩の入ったガラス瓶があったな。よく出るのか?」
    カフ「はい、ヤマビルの活動期は4月から11月まで……、特に生息に適した条件になる6月から9月までは生息密度も高まり、雨中及び雨後は活動が活発です……。」

    トレ「えっ、じゃあ、不味くないか?」
    カフ「不味いです……。ヤマビルは動物や人が吐く息に含まれる炭酸ガスや体温などでその存在を知り移動します……。移動速度は1分に1m程度ですが……、落ち葉などの下に潜んでいるため、休憩で地面に腰を下ろした時、足から這い上がり、吸血される……ということがあります。更に言えば……、吸血の際に吸血時の痛みをなくし、血液の凝固を妨げる『ヒルジン』という物質を出すため、吸血されていることに気付かず、傷跡から出血し続けることになります……」

    トレ「うへぇ……、想像するだけで気持ち悪くなってくる。何か対策とかないか?」
    カフ「まず……、休憩で地面に座らないことです。立ったままか、大きな岩に腰掛けることで休憩をとり、出発前に自身の足首などを確認する……。それだけでも吸血されるリスクは減ります。あとは……忌避剤を靴や衣服に塗り込むという方法もあります」

  • 84二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 22:40:02

    トレ「では、吸血された場合は?」
    カフ「塩をかけたり、ライターの火を当てたりして直ぐに除去しましょう……。ライターは……ターボライターのようなものをおすすめします。そして、少し傷口を圧迫して、血と一緒に『ヒルジン』を押し出してから消毒し、絆創膏を貼りましょう……」

    トレ「あー、昨日、LINEで『ターボライターも持ち物に入れてください』と連絡してきたのはそういうことだったんだな」
    カフ「ええ……、そういうことです。それと……吸血したヤマビルは必ず殺しましょう。血を吸ったヤマビルは産卵可能な状態となり、1匹で1から9個の卵嚢を産み、1個の卵嚢からは1から8匹のヒルが生まれます……。……つまり、最大で72匹です。ヤマビルの被害を拡大させないためにも確実に駆除しましょう……」

    トレ「……何かヤマビルに対する殺意が高くないか?噛まれたことがあるとか?」
    カフ「いえ……、そういったことは今までないのですが、見た目と動きが生理的にちょっと……、はい……」

    トレ「確かに写真でしか見たことないが、割と気持ち悪いからな……。……ヒルと言えば、バイオハザード0はやったことがあるか?リメイク版の2と3は以前、トレーナー室で一緒にやったが……」
    カフ「いえ、ありませんが……。……もしかして、B.O.W.化したヒルが出るんですか?」

    トレ「ああ、そうだが……。……今度、一緒にやるか?」
    カフ「……一旦、持ち帰って、丁寧に検討させていただきます」

  • 85二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 22:41:52

    9丁目くらいの登山道

  • 86二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 22:43:32

    午前10時45分 表参道 夫婦杉

    トレ「少し開けた場所に出たな……。……うん?立て看板?」
    カフ「それは……『夫婦杉』のものですね。そこの大きな木です……」

    トレ「樹齢五、六百年……、根元で二つに分かれているから夫婦に見立てたのか」
    カフ「ええ……、カップルで訪れるとこの杉のように長寿になるとかならないとか……」

    トレ「へえ、そうなのか」
    カフ「……あの……、トレーナーさん……」

    トレ「何だ?」
    カフ「その……、一緒に写真を撮りませんか?夫婦杉を……背景にして……」

    トレ「……ちょっと待ってくれ。深呼吸してくる」
    カフ「えっ?はい……」

    トレ「(……心を鎮めろ。カフェはまだ学生だ。上目遣いで恐らくはカップルがするようなことを提案してきたとしても動揺する必要なんてない筈だ。素数を数えるんだ、2、3、5、7、11……)」
    カフ「大丈夫……ですか?心なしか眉間に皺が寄っている気が……」

    トレ「いや……、何でもない。気のせいだ。それよりも早く写真を撮ろう(……23、29、31、37、41)」
    カフ「そう、ですね……。……撮りましょう」

    夫婦杉

  • 87二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 22:44:34

    天気の状態

  • 88二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 22:47:15

    午前11時10分 表参道 天狗の鼻突き岩(15丁目)-16丁目

    トレ「おっ……、また何か立て看板があるな」
    カフ「天狗の鼻突き岩ですね……。そこの岩の丸い穴は天狗が鼻を突いてあけたものだとか……」

    トレ「タングステン製の鼻なのかな?でも、本当にまん丸だな」
    カフ「本当にどうやって出来たんでしょう……」

    トレ「あと、現在地点は15丁目らしいが、これってどれくらいまで登ってきたことになるんだ?」
    カフ「直ぐそこの16丁目で5分の2くらいと言われていま……す。ここまでに40分……、コースタイムピッタリかかっていますから、あと60分程度で山頂ですね」

    トレ「まだ半分も行っていなかったのか。中々、しんどいな……」
    カフ「それは……そうですね。でも……、初めて山に登るにしては速い方です……」

    トレ「そうか……?なら、昔やっていた運動も無駄ではなかったか……」
    カフ「取り敢えず……、あの16丁目の石碑のところで休みましょう。行動食を食べれば元気が出ます……」

    トレ「いや……、行動食はいい……。何と言うか……、運動で胃が小さくなっている感じがする。食べても入らなさそうだし、水だけ飲むよ……」
    カフ「では、せめて、塩タブレットを舐めましょう……。……かなり汗をかいています」

    トレ「ああ、分かった……」
    カフ「(……やはり、急に大山は不味かったでしょうか。もっと近場で低い高尾山の方が良かったのでは……)」

    天狗の鼻突き岩

  • 89二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 22:47:55

    天狗の鼻突き岩の立て看板

  • 90二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 22:50:02

    16丁目の石碑

  • 91二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 22:51:31

    富士見台からの光景(晴天の日は富士山が見える)

  • 92二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 22:54:32

    午前11時35分 表参道 ヤビツ峠分道(25丁目)

    トレ「……………………」ザッザッザッ
    カフ「(――と思いましたが、どうして40分の道を25分で走破しているのでしょうか……。無言になってから、疲れている筈なのに歩くペースが速くなるというのは中々不思議です……)」

    トレ「…………」ピタッ
    カフ「あっ……」ドンッ

    トレ「……っ、すまん、急に立ち止まって悪かった」
    カフ「私は大丈夫です……。それよりも……何故、急に立ち止まったのですか?」

    トレ「いや、その、何と言うべきか……、何でも良いから話をしたくなったんだ」
    カフ「…………?」

    トレ「……さっきの休憩からここまで殆ど会話らしい会話をしていないだろう」
    カフ「ええ、そうですね……。時折、写真を撮るために立ち止まったりした以外は……」

    トレ「それって、何か……、とてももったいない気がしてな。そのことに気付いて、思わず立ち止まってしまった。すまない」
    カフ「そういうことでしたか……。……でも、何も喋らず、只並んで歩くというのも私は好きです」

  • 93二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 22:55:12

    トレ「そ、そうか?」
    カフ「ええ……、静けさが際立って私達しかいないような感じがして……」

    トレ「そうか……」
    カフ「……そうです」

    トレ「…………」
    カフ「…………」

    トレ「……行くか」
    カフ「……はい、行きましょう」

    ヤビツ峠分道(25丁目)

  • 94二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 22:56:05

    鳥居1

  • 95二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 22:57:41

    鳥居2

  • 96二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 23:00:00

    午前11時45分 大山山頂

    トレ「ここが……山頂か?」
    カフ「はい……、登頂おめでとうございます」

    トレ「予想はしていたが、曇っているせいで何も見えないな……。それに時間が結構かかった気がする……」
    カフ「眺望に関してはこんなものでしょう……。でも、時間に関しては予定よりも早いです」

    トレ「そうなのか?」
    カフ「大山ケーブルバス停から山頂までのコースタイムは2時間40分……。スタート時刻が9時30分で現在時刻が11時45分なので……、25分ほど早いです。思ったよりも健脚ですね……」

    トレ「途中、結構立ち止まって休んだ筈なんだが……。もしかして、意外と向いているのか……?」
    カフ「(コースタイムは『山と高原地図』の場合……、『40-50代の登山経験者/2-5人のパーティー/夏山の晴天時』を基準としています。今回の場合は10代の登山経験者と20代の登山未経験者の2人パーティーで秋山の曇天……、休憩時間を除いても平凡な速度のような気がしますが……。中距離を走らされるマイラーのように気付かない方が頑張ってくれるでしょう……)」

    トレ「……?カフェ、どうかしたか?」
    カフ「……いえ、何でもありません。取り敢えず、本社に参拝をして――」

    ポツ ポツポツ ポツポツポツ

    トレ「雨が……」
    カフ「――先に屋根のある場所を確保しましょう。濡れると不味いです」

    トレ「あ、ああ……。でも、結構人がいて空いている場所は……」
    カフ「……!あの木の下に行きましょう。あそこだけ枝に雨が遮られて地面が乾いています」

  • 97二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 23:01:46

    トレ「……何とか落ち着けたな」
    カフ「ですね……。思ったよりも小雨で……風も弱くて大丈夫そうです。豪雨で横殴りの雨だったら、酷いことになっていました……」グウゥゥゥ ゴロゴロゴロ

    トレ「……小雨なのに雷の音が聞こえたな」
    カフ「……大山阿夫利神社で祀られている大雷神が我々登山客の様子を見にきたのでしょう」

    トレ「それは……、畏れ多いな。何か食べ物でも供えた方が良いかな?」
    カフ「ええ……、そうした方が喜ばれるでしょう……」

    トレ「……………………」
    カフ「……………………」

    トレ「……良い時間だし、昼食を食べようか」
    カフ「食べましょう。ただ、少し待って下さい……」

    トレ「何だ?」
    カフ「えっと、確かこのあたりに……。……ありました、どうぞ」

    トレ「コーヒー……、しかも温かい……」
    カフ「サーモボトルに入れて持ってきました……。器具一式を持ち込もうとするとどうしても装備重量がかさむので……。……冷めないうちにどうぞ」

    トレ「どれどれ……。……うん、いつもの味だ」
    カフ「なら……、良かったです。それでは私も……」

    トレ「ああ、美味い……」
    カフ「………………あっ」

  • 98二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 23:02:54

    トレ「……うん?どうかしたか?」
    カフ「えっと……、その……、あの……」

    トレ「……?本当にどうした?体調でも悪いのか?」
    カフ「……私は……いつもは一人で山に登ります」

    トレ「ああ、そうだな。それが?」
    カフ「つまり……、複数人で登ることを考えていない訳です。当然、装備も単独行を考えたものとなります……」

    トレ「……よく分からないな。何が言いたい」
    カフ「……マグカップを忘れました。そもそも、持っていくことすら考えていなかったので忘れ物をしたとはまた違いますが……。とにかく、そういうことです……」

    トレ「……口付けたところを水で洗い流そうか?」
    カフ「いえ、それには及びません……。それに……トレーナーさんとなら別に嫌ではないので……」

    トレ「えっと…………」
    カフ「……………………」

    トレ「……そういうことなら、取り敢えず、飲み終わったから返すよ。それと少しトイレに行ってくる」
    カフ「分かりました……。トイレの利用時は利用料を忘れずに……」

    トレ「ああ、勿論分かっている。じゃ……」ザッザッザッ
    カフ「……………………」



    カフ「……ふふっ」

  • 99二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 23:04:05

    山頂到着

  • 100二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 23:04:52

    本社の石碑

  • 101二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 23:05:53

    山頂からの眺め1(何も見えない)

  • 102二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 23:06:43

    山頂からの眺め2(やはり何も見えない)

  • 103二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 23:07:15

    本社

  • 104二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 23:07:45

    山頂の標識

  • 105二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 23:08:15

    休憩地点

  • 106二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 23:08:53

    コーヒーと羊羹

  • 107二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 23:10:58

    このスレ見てる人いるんですかね……

    まあ良いでしょう
    連続投下して疲れたので1時間休憩します
    ……嘘です、残りを頑張って書き上げるので1時間ください

  • 108二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 23:20:25

    >>107

    ここにいるぞ!

  • 109二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 00:17:31

    見てるよ

  • 110二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 00:21:47

    もう少し待って下せえ
    あと数行で終わると思う

  • 111二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 00:52:24

    死ぬほど苦戦しているのでラストシーン以外投下します
    ラストシーンは夜明けまでに投稿します

  • 112二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 00:56:51

    午後12時05分 大山山頂

    トレ「昼食を食べて、参拝もしたし……、そろそろ下山するか?」
    カフ「ええ、正午も過ぎましたし……。丁度良いですね」

    トレ「下山のルートは雷ノ峰尾根を下って見晴台へと行くルートだったな」
    カフ「そうですね……。途中に鎖場はありますが、狭いから取り付けられているだけで危険度は殆どありません……」

    トレ「でも、下山時の事故は多いんだよな」
    カフ「はい……、一般的にも下山は登山よりも難しいと言われています。慎重に行きましょう……」

    トレ「何で、下山は登山よりも難しいんだ?」
    カフ「色々とありますが……、その一番の原因はトレーナーさんも気付いているのではないでしょうか?」

    トレ「……肉体と精神の疲労だな。実は割と足腰にきている感じがする」
    カフ「はい、登山時の疲労……。それによって、上手く足が上がらなかったり、集中力が途切れたりすることで木の根や石に引っかかったり、足場を踏み外したりします……。そのため、一歩一歩確実に意識して下っていくことが重要になります。『言うは易く行うは難し』ですが……」

    トレ「疲労以外にはどういう要因がある?」
    カフ「着地する時の衝撃です……。下り坂というのは……勢いが付きやすいです。レースの場合はそのまま走れば良いだけですが……、下山の場合は足場の確認のため、一歩一歩止まりながら下る必要があります。……つまり、下るごとに自重の全衝撃を受け止めることになる訳です。そのため、肉体的な負担は思った以上に大きく、足を挫いたり、歩き方によっては膝が痛くなったりする可能性があります……」

    トレ「では、下山時はどういう風に歩けばいいんだ?」
    カフ「まず、腰が引けた姿勢、踵からの着地、膝を使った衝撃吸収は駄目です……。転倒や膝痛に繋がる恐れがあります。……基本は足元をあまり見ず、姿勢は真っ直ぐ、足裏全体で着地し、歩幅を小さく歩くことです。また、大きい段差の場合は、真っ直ぐ下りず横向きになって下りましょう……」

  • 113二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 00:59:09

    トレ「……何だか、登山時の歩き方と似ているな」
    カフ「ええ、そうですね……。登山時の歩き方が出来ているなら、下山時の歩き方が出来るという訳です……。逆に言えば……、登山時に正しい歩き方が出来なければ、下山時にも出来ないとも言えますね。トレーナーさんは出来ていたので、大丈夫だと思います……」

    トレ「なら、何とかなりそうか。あと、足場で木の根や浮石、赤土を避けるのも同じか」
    カフ「はい……、そうですね。付け加えるなら、階段または階段状になっている場所ではその縁に着地しないことです……。滑りやすく、転倒する時は後頭部から行きます」

    トレ「……昔、似たようなことで頭を縫ったことがあるから特に気を付けておこう」
    カフ「それは……ご愁傷さまでした。……ちなみにどんな理由でそうなったのですか」

    トレ「小学生の頃、海水浴で波を被る階段を下っている途中、藻類で滑ってな……。縁で切って4針縫った」
    カフ「聞くだけでもかなり痛いですね……」

    トレ「ただ、その後、実家の近くに住んでいた祖母が見舞いとして箱のハーゲンダッツを持ってきたから、頭を切ったことなんてどうでも良くなったんだけどな。あれは美味かった……」
    カフ「……前からずっと思っていましたけど、トレーナーさんって結構図太い性格ですよね」

    トレ「そうか?褒めても何も出ないぞ?」
    カフ「別に褒めている訳では……。……いえ、もう、それで良いです」

    トレ「まあ、下山時に気を付けることはよく分かったよ。レインウェアを着たら出発しようか」
    カフ「はい……。小雨で距離が短いなら撥水加工されている服なら大丈夫という方もいますが……いつ大降りになるか分かりませんし、しっかり着込んでいきましょう。」

    トレ「ああ、分かった」
    カフ「それと……少しガスが晴れましたね。これなら少し下ったところでの見晴らしが期待できるかもしれません……」

    山頂分岐

  • 114二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 01:02:43

    下り道からの眺望

  • 115二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 01:03:30

    午後12時20分 見晴台-不動尻分岐点

    トレ「表参道と違ってこっちは階段が延々と続くんだな……」
    カフ「そうですね……。表参道に比べたら傾斜も緩やかですし……、その分植生保護のための木階段がよく整備されています」

    トレ「植生保護……。この階段は歩きやすくする目的で整備されている訳ではないのか?」
    カフ「勿論……、そういった役割もあります。しかし、一番の目的は土壌流出による植生の破壊を防ぐためです……」

    トレ「土壌流出」
    カフ「今……、私達が歩いている場所がそうであるように登山道というのは多くの人が歩くことで地面が踏み固められ、むき出しになります。そうなると雨が降った際、雨水が流れ、川のようになり浸食作用で土壌が流出していきます……。……それだけならばまだしもその川となった登山道を避けるために道の脇を歩き、その踏み跡が第二の登山道となり、時間が経つことで踏み固められ、更に土壌流出が拡大するといったことが多々あります」

    トレ「それは少し考えさせられるな……」
    カフ「はい……、そこで踏み跡ではなくはっきりと登山道と分かるように……、雨水による土壌流出を抑制するためにこうした階段や木道が整備されているという訳です」

    トレ「整備する人たちには頭が上がらないな」
    カフ「ええ、本当に……」

  • 116二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 01:04:12

    トレ「それと……階段とはまた別の話になるが、鹿に関する看板もちらほらあるんだな。……結構生息しているのか?」
    カフ「現在進行形で全国的に鹿害が問題になっていますから……。当然、この丹沢山地にも沢山います。……あと、熊も生息しています」

    トレ「えっ、熊がいるのか?」
    カフ「おおよそ30頭前後と絶滅寸前ですが……、一応います。……出会えたらラッキーですね」

    トレ「熊にはちょっと遭遇したくないな……。以前、ウィキペディアで読んだ三毛別の記事のことを考えると……」
    カフ「あれはヒグマなので北海道にしか生息していません……。本州に生息しているのはツキノワグマです。……それにどちらも臆病なので人の気配やこの熊鈴の音を感じたら基本的には離れていきます」チリン♪チリン♪

    トレ「あっ、そうなのか。それなら安心出来るな……」
    カフ「まあ、人の肉の味を覚えた熊は逆に近寄ってきたりしますが……。その場合は全力で逃げる……。……いえ、そもそも、獣害情報をよくチェックしてそういった山に立ち入らないことが一番ですね」

    トレ「……カフェ、昼食前のことで実は少し怒っているのか?その手の話は苦手だと以前言った筈だが……」
    カフ「さあ……、どうでしょう?昼食前のことかもしれませんし、ヒルについてのことかもしれません。ご想像にお任せします。……フフッ」

  • 117二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 01:05:13

    見晴台-不動尻分岐点

  • 118二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 01:06:11

    分岐点付近の眺望

  • 119二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 01:06:37

    ガレ場

  • 120二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 01:08:07

    見晴台までもう少し

  • 121二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 01:09:24

    封鎖された登山道

  • 122二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 01:12:42

    午後12時55分 雷ノ峰尾根

    トレ「大分下ってきたが……、そろそろ見晴台に着くか?」
    カフ「そうですね……、あと10分くらいでしょうか」

    トレ「おお、じゃあ、あとちょっとだな。ただ、意外と時間がかかっているような気が……」
    カフ「雨で大分ゆっくりですから……。仕方ないでしょう」

    トレ「そうだな、安全が第一だ。……それと下っていて少し思ったんだが、登山者って意外と目立つんだな。大分下の方で先を歩いていても直ぐに分かる」
    カフ「明るい青や赤は山にあまりない色ですからね……。……遭難救助で発見されやすいようわざとそういう色でデザインされているというのもあります」

    トレ「ふーむ……、じゃあ、山の中で目立たない色もあるということか?」
    カフ「ええ、あります……。具体的には、私達が着ているウェアの色……、黒色です」

    トレ「えっ、そうなのか!?上下は勿論、レインウェアも黒色にしてしまったぞ?!登山バッグは辛うじて黄緑色だが……」
    カフ「黒色は収縮色であるのに加え、影と同化しますから……。私の勝負服と同じ原理です。遠くからだと木の幹の影などと重なって見えにくくなりますし、蜂に狙われます……」

    トレ「蜂は知っていたが、そうだったのか……。……買い直した方が良いのかな?」
    カフ「そこまで無理をする必要はありません……。青色や赤色でも目立ちやすいだけで万能ではありませんから……。濃い霧などが出ていたらそれらの色でもどうにもなりません。……大事なのは各種安全対策をしっかりすることです」

  • 123二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 01:13:08

    トレ「安全対策って、具体的には?」

    カフ「捜索隊のヘリに見つけてもらうということを考えるのなら……、発煙筒やシグナルミラーがおすすめです」


    トレ「発煙筒は分かるが、シグナルミラーって何だ?」

    カフ「遭難救助用の鏡のことです……。中央に照準穴が開いていて……、それを見ながら上手い具合に太陽光を反射させてヘリに当てることで自らの位置を知らせます」


    トレ「ほー、そんなものがあるのか……」

    カフ「はい、反射光というものはかなり目立つそうです……。エマージェンシーシートのアルミ光沢もそこそこ見つけやすいとか」


    トレ「まあ、発光信号と考えたら見つけやすいのも頷けるな。帰ったら買ってみよう。……他に何かあるか」

    カフ「さっきの色の話に戻りますが……、黒以上に目立たず絶対に止めた方が良い色といいますか柄があります」


    トレ「それは?」

    カフ「迷彩色です……。樹林帯での暗い緑色や灰色、雪原での白色は風景と完全に同化して本当に見えません……」


    トレ「あー、成程……、それは納得だ。以前、狙撃手が迷彩服を着て銃を構えているのを撮影した画像をネット上で見たことあるが、全然分からなかったな」

    カフ「軍事行動ならともかく……登山は只のレジャーですから。視認性を優先しましょう……」


    山で目立つのは何色?:
    『山で目立つのは何色?』テストしてわかった、色以外の大切なポイントとは・・・ | YAMA HACK登山で最も大切な装備のひとつ、レインウエア。今回は、そんなレインウェアで少し変わったテストを実施。道迷いや怪我、体調不良で動けなくなった時に、なに「色」のレインウエアを着ていると、他の登山者やハイカー、捜索してくれる方から見つけてもらいやすいのか?という、森の中での色の見え方を確認してきました!yamahack.com
  • 124二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 01:15:09

    午後1時5分 見晴台
    トレ「見晴台に到着と……、もう1時過ぎか」
    カフ「1時間歩いたことになりますね……。そこの屋根付きのベンチで一旦休みましょう」

    トレ「ああ、でも、振り返ると凄く良い景色だな。雲が凄い勢いで風に流され、斜面にぶつかり、千切れ渦巻いている……。こう……、何か上手く言えないが……」
    カフ「……Marvelous」

    トレ「……急にどうした?」
    カフ「『奇跡的で素晴らしい、感嘆すべきさま』という意味の英単語です」

    トレ「いや、意味は分かっているが……。どういう理由で言ったんだ?」
    カフ「……マーベラスサンデーさんの真似です。以前、『世界は素晴らしいもので満ち溢れている。そして、そういうものに出会った時は素直に心の底からMarvelousと叫ぶことで心身が浄化される』という意味のことをおっしゃっていました……。……良い機会なので真似しようかなと」

    トレ「成程……。それより、マーベラスサンデーとも交友があったんだな」
    カフ「ええ……、一緒に登ったことはないですが、登山を趣味に持つナイスネイチャさんと同室ということで存在自体は知っていたのですが……。ある時、あの子が彼女の傍にいて……、気になって話しかけたら、『マーベラス空間』を展開されたので、こちらもとっさに『向こう側』を展開することで対抗して……。色々あって、仲良くなりました」

    トレ「……?…………?よく分からないが……、何も問題はなかったということで良いのか?」
    カフ「はい……、知見を共有し、彼女も私もウマ娘でマーベラスな存在であることを再認識した。ただ、それだけです……」

    トレ「ならば、良し。しかし、Marvelou』か……。……中々良い言葉だな」
    カフ「トレーナーさんも……そう思いますか?なら……、一緒に言いませんか?」

    トレ「そうだな……。……Marvelous」
    カフ「Marvelous……」

    トレ「Marvelous!」
    カフ「Marvelous……!」

    トレ「Marvelous!!」
    カフ「Marvelous……!!」

  • 125二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 01:16:11

    見晴台からの景色1

  • 126二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 01:16:47

    見晴台からの景色2

  • 127二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 01:18:18

    絆の木

  • 128二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 01:21:05

    午後1時20分 二重滝

    トレ「何か大きな橋があるな」
    カフ「あれは……二重滝の橋ですね」

    トレ「二重滝?……下社で言っていた水垢離をする滝か?」
    カフ「そうです……。二重滝は鈴川の源流で江戸時代には新年になると大工や鳶、左官などの代表者が下社に数日間籠って滝に打たれ、心身を清めてからその年の賃金について話し合ったとか……」

    トレ「……何で、賃金を決議する前に滝に打たれる必要があるんだ?」
    カフ「すみません、そこまではちょっと……。神前で誓いを立てるといった意味合いで行っていたとは推測出来ますが……」

    トレ「でも、良い景色だな。水が落ちる音も良い」
    カフ「ええ、本当に……。禊の場として神聖視されていたのも納得です」

    二重滝にかかる橋

  • 129二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 01:21:48

    二重滝

  • 130二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 01:22:39

    注意書き

  • 131二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 01:26:11

    午後1時30分 お茶屋前広場

    トレ「到着と……。ここまで帰ってくると人心地つけるな」
    カフ「そう、ですね……。……茶屋で休憩しますか?」

    トレ「そうしたいところだが、少し騒がしい感じがして落ち着かないな。……茶屋ならこま参道にもあるから、このまま一気に下ってそこで何か食べないか?」
    カフ「それなら……、良い店を知っています。そこに行きましょう」

    トレ「決まりだな。少しトイレに寄ってから男坂を下っていこうか」
    カフ「ええ、そうしましょう……。……?」

    トレ「ん?どうかしたか?」
    カフ「あの親子連れ……、どうにも気になります」

    トレ「ああ、子どもが何か言っているな。内容までは聞き取れないが……」
    カフ「……すみません、少しそこで待っていてください」

    トレ「えっ?ちょっと?」
    カフ「……………………」

  • 132二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 01:26:36

    男の子「やだやだ!!登る!!」
    父親「いやだから……、また今度にしよう?こんな天気なんだから」
    男の子「登るまで帰らない!登ろうよ!!」

    母親「ねえ、あなた、ちょっとくらいなら良いんじゃない?こんなに言っているのだから……」
    父親「うーん……、雨降っているし……。でも、低いから少しなら……?」

    カフ「すみません……、少し良いですか……?」
    父親「えっ?あっ、何です?」

    カフェ「その……、今から登られるのですか?」
    父親「あー、ちょっとどうしようかなと……。先程、下ってきた方ですよね。どう思います?」

    カフ「止めておいた方が……良いと思います。今から山頂まで登る場合……、下りてきた時には真っ暗になります。それに雨に濡れた足場は滑って危ないです……」
    父親「やっぱり、そうですよね!なっ、○○、お姉さんもこう言っていることだし、今日は止めよう?また、今度、晴れた日に登るって約束するから」

    男の子「えー……、せっかく来たのに……」
    カフ「晴れた日の方が……山頂からの眺めは綺麗ですよ。登ってきましたが、今日は雲で何も見えませんでした……」

    男の子「そうなの?お姉さん、残念だったね」
    カフ「ええ、とても苦労して登ったのに残念です……。だから、晴れの日に登った方が良いですよ」

    男の子「うん……、分かった。そうする。お父さん、帰ろう」
    父親「どうもありがとうございました。助かりました」
    母親「ありがとうございました」
    カフ「いえ……、それでは……」

  • 133二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 01:27:27

    カフ「お待たせしました……、行きましょう」
    トレ「お疲れさま、頑張ったな。……でも、少し意外だな」

    カフ「何が……ですか?」
    トレ「下りの時、あの親子と似たような恰好の人達とは何度もすれ違ったのにその時は何も言わなかったじゃないか。だから、スルーするかと思ったんだが……、どういう基準なんだ?」

    カフ「トレーナーさんの言わんとすることは分かります……。明らかに登山ウェアでもスポーツウェアでもなく、市街地を歩くような服とスニーカー、バッグを身に付けて山を登る小さいお子さんを連れた親子連れ……。確かにそういった人達とは何度もすれ違いましたね」
    トレ「つい先日、カフェが教えてくれるまで登山について何も知らなかった自分が言うべきことではないかもしれないが……、流石にああいった格好は不味くないか。せめて運動用ならまだしも……」

    カフ「不味くか不味くないかで言えば……不味いです。ですが、大山が観光名所で登山道が整備されていることを鑑みるとああいった格好の登山客が一定数発生するのはやむを得ないと言えるでしょう……。実際、私も幼い頃に両親に連れられて登山ウェアではなくスポーツウェアと運動靴で登ったことがあります……」
    トレ「そういうものなのか……。でも、それなら、尚更あの親子連れにだけ注意した理由は何だ?」

    カフ「まだ登山道に入っておらず、登る時間が遅いためで……す。登山道に一度入って登り始めると人というのは不思議なもので……どんなに辛くても山頂を目指し始めます。そういった人を忠告して止めるというのは大変な労力で効力も薄いです……。大抵煩がられて無視されます。それに登山道に足を踏み入っている時点でその人はある程度の覚悟は出来ている……。……そう思っているので何も言いません」
    トレ「成程な。あと、登る時間が遅いというのは分かるぞ。ヘッドランプを購入する際に日が落ちると危ないと説明されたからな」

  • 134二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 01:29:04

    カフ「あと、付け加えるとするならば……、傘と集団の意思でしょうか。あの親子連れはレインウェアは勿論……、合羽も着ておらず、傘を差しています。あれでは登る時に片手が塞がり非常に危険です」
    トレ「確かにそうだった。両手を使おうとすると傘は仕舞わなくてはならないが、雨に濡れるし……。そうなると低体温症の危険があるな」

    カフ「そして、集団の意思……、これが統一されてなかったです。父親は登ることを渋り、子どもは登ることに積極的で母親はどっちも付かず……。統一された意思がなければ、規律ある行動をとることは難しくなり、不和やはぐれたりする原因になります……。もし、子どもが一人で積極的に登っていって……そこで滑落なんかをしたら目も当てられません」
    トレ「今回、俺達は明確に『一緒に山頂まで登る』と決めて、歩調も合わせていたが……。そういうことを決めていなかったら、俺はカフェにどんどん引き離されて、山中に一人置き去り状態になるもんな……」

    カフ「ええ……、とにかく、そういった理由で注意しに行きました。私が何も言わずとも引き返した可能性は高かったですが……、どうしても気になったので……」
    トレ「いや、立派だよ。正直、俺も何となく気にはなったけど声をかけることが出来るかというと……。だから、きっと、声をかけたのは間違いではない筈だ」

    カフ「ありがとうございます……。トレーナーさんにそう言っていただけると、少しだけ自分が為したことに自信を持てます」
    トレ「そうか?なら良いが……。まあ、良い。行こうか」

  • 135二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 01:29:44

    分岐点再び

  • 136二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 01:32:27

    午後1時37分 男坂

    カフ「さて……、これから男坂を下っていきますが注意事項があります」
    トレ「注意事項」

    カフ「それは男坂の方が女坂と比べ、距離が短いものの傾斜が急であるということです……。また、石段の段差も大きく普通に下るのは危険です」
    トレ「じゃあ、どうすれば良い?」

    カフ「やや不格好ですが……、腰をしっかり落としながら下ってください。バランスがとりにくいなら、手を石段に添えてください。とにかく、今は滑りやすく危険です……」
    トレ「見晴台への道でも段差の大きなところは似たようなことはやっていたな………」

    カフ「それと……中盤と終盤に岩肌が露出している箇所があります。そこには特に注意しながら進みましょう……」
    トレ「分かった、行こう。………えっ、これを下るのか?」

    カフ「下ります。行きましょう……」
    トレ「ここが最後の正念場か……」

    男坂1

  • 137二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 01:33:55

    男坂からの眺め

  • 138二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 01:35:26

    男坂2

  • 139二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 01:35:48

    男坂3

  • 140二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 01:38:31

    午後2時3分 男坂-女坂分岐点

    トレ「下りきった……のか?」
    カフ「ええ……、下りきりました。あとはこま参道を通り抜けるだけです」

    トレ「長く苦しい戦いだった……、心身ともに疲れた……」
    カフ「本当にお疲れ様です……。早速、お店で何か食べましょう。結構、空腹感がある筈ですから……」

    トレ「確かにお茶屋前広場では特にそんなことなかったのに凄く腹が減っている……。何でだ?」
    カフ「緊張の糸が切れたからではないでしょうか……。お茶屋前広場の時はまだ男坂を下るというタスクが残っていたので……」

    トレ「そう言われてみたら、そうだな。不思議なものだ……」
    カフ「ええ、でも……、良いことです。下山時に事故が起きる理由は疲労によるもの……、言い換えれば疲労を完全に認識してしまった状態に陥り、動作が緩慢になることによるものです……。……ですので、完全に登山道を抜けるまで集中力が続いたトレーナーさんは下山の才能がありますね」

    トレ「そうか?それは嬉しいな」
    カフ「(逆に苦手な点も大分見えてきましたが……、今後の頑張り次第で何とでも改善出来るでしょう)」

    トレ「じゃ、雨の中立ち話もなんだし、そろそろ行こうか。カフェのお気に入りの店、楽しみだなー」
    カフ「はい……、行きましょう」

    ケーブルカー駅からの大山

  • 141二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 01:40:51

    午後2時17分 こま参道 大山ウルワシ本舗
    店員「お待たせしました。玉こんにゃくと田楽です。ごゆっくりどうぞ」

    トレ「おおっ、シンプルだが美味そうだな」
    カフ「シンプルイズベスト……です。温かいので冷えた体に丁度良いです」

    トレ「どれどれ……。……うん、だし醤油をよくしみ込んでいて美味い!」モグモグ
    カフ「田楽の方は赤味噌だれと辛子味噌だれがそれぞれかけてあって、違った味を楽しめます」モグモグ

    トレ「……………………」モグモグモグモグ
    カフ「……………………」モグモグモグモグ

    トレ「……ごちそうさま。あっという間に無くなったな……」
    カフ「ですね……。ごちそうさまでした」

    トレ「それで……この後はどうする?学園に帰るか?」
    カフ「それでも良いですが……。汗を洗い流すために温泉に入りませんか……」

    トレ「確かに大分汗をかいたな……。でも、温泉なんて近くにあるのか?」
    カフ「ええ……。伊勢原駅の一つ先に鶴巻温泉駅という駅があり、その駅名の通り、周辺に温泉が幾つもあります……」

    トレ「なら、行くか。汗もそうだが、疲労もあるしな」
    カフ「では……、早くバス停まで下りましょう。そろそろ、バスが来る時刻です」

    トレ「おっと、そうなのか。じゃあ、もう行くか」
    カフ「はい、行きましょう……」

    店員「どうも、ありがとうございましたー」

    玉こんにゃくと田楽

  • 142二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 01:41:57

    大山(下山時の姿)

  • 143二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 01:48:29

    夕方 鶴巻温泉駅周辺の温泉

  • 144二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 01:49:10

    カフ「お待たせしました……」
    トレ「ああ、ゆっくり温泉に浸かれたようで何よりだ。疲れは洗い流せたか?」

    カフ「はい……、大分楽になりました。……トレーナーさんは?」
    トレ「汗だけしか洗い流せなかったよ。明日は間違いなく筋肉痛だ。俺ももう年だな……」

    カフ「まだ20代ですよね……?」
    トレ「人は動かないと衰える一方なんだ。悲しいことに」

    カフ「なら……、これから鍛えましょう。登山で」
    トレ「そうすることにするよ。だが、登山というのはどのくらいの頻度でするものなんだ?毎日とか毎週とか言われたら、流石に体が待たないぞ」

    カフ「それは……中々難しい質問ですね。基本的に気が向いた時にやれば良いものですから……。ですが……、鍛えたいという意味ならば、月に2回くらい登ると良いらしいです」
    トレ「月に2回……、2週間に1回か」

    カフ「ええ……、そうなります。でも……、トレーナーさんは初心者ですから、月に1回でも十分だと思います」
    トレ「それなら、何とかなるかな……。しかし、あれだな、登山というのは中々不思議なものだな。歩くたびに滝汗を流し、息が上り、膝が笑い、足が震える……。おまけに死ぬ危険性もあるのにただ登山道を歩くだけで、風景を見るだけで謎の満足感がある」

    カフ「それは本当に何故でしょうね……。私も道中で息切れを起こす度に『何のために山を登っているのだろう』と自問自答しますが、答えが出るよりも先に『息が整ったから行こう』と足を動かし始めて有耶無耶になります……」
    トレ「カフェでも分からないのか」

    カフ「そう、分からない……。分からないからこそ山を登る(ヤマヲノボル)……のかもしれませんね」
    トレ「何だか深いな……」

  • 145二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 01:50:16

    カフ「それはそうと……、話は変わりますが、『両詣り』というのは知っていますか……?」
    トレ「いや、知らないな。名前から察するに大山ともう一つ何か別の山に登って参詣するというものらしいが……」

    カフ「大山の近代以降の祭神は……大山祇大神であるというのはご存じですね?」
    トレ「ああ、登っている最中にも説明されたからな。それがどうかしたのか?」

    カフ「では……、大山祇大神の娘は知っていますか?」
    トレ「それも知っている。木花之佐久夜毘売と石長比売だろう?」

    カフ「そうです……。そのうち、木花之佐久夜毘売が鎮まるとされる山にも登ることを両詣りと言います」
    トレ「待て、それって……」

    カフ「はい……、富士山です。『富士に登らば大山に登るべし、大山に登らば富士に登るべし』という言葉もあるみたいです……」
    トレ「……………………」

    カフ「今後、私達は様々な山を登っていく予定ですが……。その最終目標を富士山とするのはどうでしょうか……。……私もまだ登ったことはありません」
    トレ「……気が遠くなるような目標だが……、頑張ってみよう。ただ、その予定は初耳なのだが?」

    カフ「それは……そうです。今さっき、思いついたものですから……」
    トレ「えぇ……」

    カフ「でも、私はこれからもトレーナーさんと一緒に山を登っていきたいです。……今日、一つ改めて気付いたことがありますから」
    トレ「……それは?」

    カフ「……トレーナーさんに私が素晴らしいと思ったものを共有したいという気持ちです。それは今日だけでなくこれからも……、何年も何十年も……、私達がしわくちゃのお爺さんやお婆さんになっても……、ずっとずっと……」
    トレ「……カフェ、その先は俺に言わせてくれ」

    カフ「……どうぞ」
    トレ「俺は――」

  • 146二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 01:50:40

    この先、彼らがどんな山に登るかは分からない。
    何故、山に登るのかも分からない。
    だが、彼らは登り続ける。
    まだ見ぬ頂を求め、感動を分かち合うために。

    ヤマヲノボル大山登山編 完

  • 147二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 01:51:57

    美濃尾張!疲れた!寝る!お休み!

    起きたら後書き書きます

  • 148二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 10:13:06

    保守

  • 149二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 20:34:38

    待ってる

  • 150二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 20:59:48

    やっと追いついた!タメになるだけじゃなくて楽しいやりとりもあって飽きなかったよ!面白かった!

  • 151二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 21:58:37

    後書き
    初SSスレ(準備編)立てから三週間、無事に完走致しました。
    文字数は準備編11174文字、大山登山編34832文字、合計46006文字と書ききった自分でもかなり驚いています。普段は自作小説をのんべんだらりと執筆していますが、短期間でこれほどの文字数の文章を綴ったのは生まれて初めてです。やはり、マンハッタンカフェの力は偉大であるということでしょう。山で急登を駆け上がり、息が上がってもマンハッタンカフェを想うだけで気力が回復し、自然と足が動きます。将来的にマンハッタンカフェは人間にとって欠かせない栄養素に指定されることでしょう。間違いありません。
    そして、今回の大山登山についてですが、作中では殆ど触れていないだけで多くのヒヤリハット、無謀な試み、ガバがありました。それらを説明することで後書きとさせていただきます。これから登山を始める人はスレ主のミスを反面教師とし、楽して楽しく安全に登山をしましょう。

  • 152二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 21:59:07

    【装備について】
    まず、大山登山した際の装備は大体以下の通りです。

    飲料水3L(1L+2L:ペットボトル)、コーヒー0.5L、羊羹×4個、おにぎり2個
    トレッキングウェア一式(パンツ、長袖Tシャツ、靴下、下着上下)、登山靴(ミドルカット)
    帽子、ライトシェルジャケット、登山バッグ(約45L)、タオル、絆創膏、財布、携帯電話

    明らかに多くのものが足りていませんね。それらを挙げると以下の通りです。

    レインウェア、ヘッドライト、エマージェンシーシート、エマージェンシーコール
    地図、コンパス、救急用品、ライター、予備の電池、予備の靴紐、熊鈴

  • 153二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 21:59:44

    ……はい、三種の神器(四つ)のうち、レインウェアとヘッドライトを持っていませんでした。
    この二つは大山登山後に購入しました。準備編の53で言及しているのがそれです。
    じゃあ、どういう装備で雨の大山を歩いたのかというとライトシェルジャケットを着て、帽子を被っただけです。合羽や折り畳み傘も持っていないので雨に打たれ続けた訳です。馬鹿じゃねえの。

    幸いなことに霧のような小雨で風もなく、身に付けていた帽子、ライトシェル、パンツが全て撥水性の素材で出来ていたことで雨粒を弾くことができ、内側まで濡れることがありませんでした。ですが、帽子は出発時に忘れかけたので場合に頭全体を濡らした可能性も十分にありました。帽子だけにハットではありませんが、思い返す度、本当にヒヤリとします。

    あと、地図、コンパス、救急用品など緊急事態が起きた際の備えを全くしていませんでした。
    足りないものが多すぎますね。自分のことながら、只々呆れるばかりです。

  • 154二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 22:00:32

    【天候について】
    言うまでもないことですが、雨の日の登山は初心者におすすめ出来ません。眺めも足場も悪く、山頂からの見晴らしを登山のリターンとするならば、リスクとリターンが釣り合っていないのでそういった意味でもおすすめ出来ません。
    ただ、登山を長く続けていく中で急に天候が崩れ、雨の中を歩く必要があるといった状況に出くわすことがあると思います。そういったことを想定して、どこかのタイミングで雨の中の山を歩く訓練をする必要があるでしょう。
    ですが、本格的な登山道具を買い揃えた上での一回目の登山でやるべきではありません。
    やるとすれば、低山で登山道が整備され、登り慣れた山が多分良いと思います。
    レインハイクについてはスレ主自身初めての体験でしたので誰か教えてください。

  • 155二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 22:01:45

    【登山開始時刻について】
    住んでいる場所や交通手段にもよりますが、電車やバスの始発を基準に考えましょう。登り始めの時刻は早ければ早いほど良いとスレ主は考えています。少し甘めに見積もっても山頂に午後1時台に登頂出来ないような時刻では登山は実行すべきではありません。特に今の季節は日没が午後4時半前後とかなり早く少しでも足が鈍れば真っ暗な樹林帯を歩くことになります。今回の大山は山頂から麓までの距離が短く、午前9時登山開始でも間に合いましたが、他の山だとあまり余裕がありません。体力に自信がない方は勿論、ある方でも時間に余裕をもって登山しましょう。

  • 156二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 22:02:14

    【その他(本当に取り留めのないこと)】
    ウマ娘の始まり方は締め方にも応用出来る。そう思いました。
    最後のレスは完全に即興でしたが、上手く締めることが出来て良かったです。

    カフェの尻尾結びは以前見かけたポニテカフェのイラストに感銘を受けて採用しました。
    ですが、肝心のイラストを見失ってしまいました。
    私服で少し横を向いているイラストです。情報求む。

    お茶屋前広場のやり取りは殆ど実際にあった出来事です。
    家族構成は少し違いますが、親子連れが傘を差して午後の時間帯に登ろうか登るまいかと話し合っているところに声をかけた形です。
    傍から見たら、そこそこ装備を揃えて気が大きくなっている登山家気取りの初心者がマウント取りに行っているような構図にしかなり得ませんが、ただただ不安と恐怖の感情しかありませんでした。
    同時に過去の自分がああいった格好で山を登っていた時、周囲の人間にはどのように見られているのかをよく理解出来ました。ひたすら心臓に悪い。

  • 157二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 22:03:45

    【最後に】
    次回と次々回は確定しておりますが、それ以降は未定です。というのも、これから丹沢に雪が降り積もり始めるからです。冬山にオールシーズンの格好で挑むのは無謀を超えて自殺行為、かと言って冬山装備を揃える金はない。もっと言えば、修士論文に本格的に取り組まなければなりませんから、登山をしている暇は殆どありません。
    身体が衰えない程度にホームマウンテン、大山をちょくちょく登るつもりではいますが、SSには多分出来そうもない……というよりも今回でかなり解説してしまったので話を作る余地がありません。
    そういう訳で次回と次々回を投下したら、暫く休止します。
    あと、このスレの残りは即興したせいで書けなかった小ネタを少しずつ投下していきます。

    それでは、楽しい登山ライフを!

  • 158二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 22:04:27

    以上、後書き終わり!
    後は質問でもどうぞ
    適当に答えます

  • 159二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 22:14:09

    それと忘れないうちに

    大山など表丹沢を登る予定がある方はこれを参考にすると良いかもしれません


    表丹沢登山ガイド:
    表丹沢登山ガイド | 秦野市役所www.city.hadano.kanagawa.jp
  • 160二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 23:10:08

    保守

  • 161二次元好きの匿名さん21/11/30(火) 01:00:06

    RTA動画見ていたら同じ登山日で二度見した

    そう言えば、標識近くの小屋で料理している団体がいましたね……


  • 162二次元好きの匿名さん21/11/30(火) 06:37:45

    乙です

    カフェちゃん可愛いかったです。自分もハイキングしますが、比高400m級とかが多いので時間とか参考になりました。

    あと登山届はこういうヤツもべんりですよね

    https://www.mt-compass.com/ex_info.php

  • 163二次元好きの匿名さん21/11/30(火) 06:40:39

    登山日は…あっ
    下りの時、下社付近でup主とニアミスしています。
    こちらは山頂→見晴らし台→男坂だったので直接遭遇していないと思いますが。
    世間って狭いですね。

    次作にも期待しております。

  • 164二次元好きの匿名さん21/11/30(火) 09:04:07

    保守


    >>162

    そう言っていただけると幸いです。

    登山アプリやツールは色々ありますが、自分に合ったものを使うのが一番です。


    >>163

    あっ、本当ですか。まあ、アクセスしやすい人気の山ですからね。

    次回もどうぞご期待ください

  • 165二次元好きの匿名さん21/11/30(火) 09:21:02

    それと宣伝ですが、モンベルのグループ会社が発行している登山専門誌『岳人』12月号が発売されています。

    この12月号は安全登山を考えるということで様々な遭難のケーススタディが記載されており、スレ主のような登山初心者の方は勿論、登山に大分慣れた方でも今一度自分の山行を振り返るという意味で是非読んでおきたい代物です。

    また、ケーススタディの他に近年且つ夏山では最悪の山岳遭難事故とされるトムラウシ山遭難事故なども取り扱っているのでかなり読みごたえがあります。


    山岳雑誌『岳人』「岳(やま)」を愛するすべての人へ―。毎月15日発売の山岳雑誌『岳人』(がくじん)の公式ウェブサイトです。時代を超えて伝えたい山の魅力をみなさまにお届けいたします。www.gakujin.jp
  • 166二次元好きの匿名さん21/11/30(火) 19:17:48

    保守

  • 167二次元好きの匿名さん21/11/30(火) 23:45:55

    保守

  • 168二次元好きの匿名さん21/12/01(水) 11:17:05

    保守

  • 169二次元好きの匿名さん21/12/01(水) 21:30:57

    この時期も登れるの羨ましい
    岩手だともう雪とかあって普通の装備だと怖くなる……岩手山とか特に

  • 170二次元好きの匿名さん21/12/02(木) 02:00:14

    ほしゅ

  • 171二次元好きの匿名さん21/12/02(木) 08:48:17

    保守

  • 172二次元好きの匿名さん21/12/02(木) 19:54:01

    保守

  • 173二次元好きの匿名さん21/12/03(金) 02:52:52

    保守

  • 174二次元好きの匿名さん21/12/03(金) 14:19:36

    保守

  • 175二次元好きの匿名さん21/12/03(金) 19:11:55

    今回このSSで下りルートとして通った方である男坂はひたすら急な階段が続くためそういうのに慣れた人間でなければ上りも下りも無茶苦茶辛いのが特徴。
    ダーク・素人マンは軽率に上りで男坂を選んだことによる後悔をコントロールできない……

  • 176二次元好きの匿名さん21/12/04(土) 00:53:16

    保守
    小ネタは早くても日曜になりそう

  • 177二次元好きの匿名さん21/12/04(土) 11:32:21

    保守

  • 178二次元好きの匿名さん21/12/04(土) 22:31:39

    保守

  • 179二次元好きの匿名さん21/12/04(土) 23:39:29

    山登りやりたいと思いつつ装備一式そろえることを考えると踏み出せずにいる
    京都の愛宕山は初心者にもおすすめ。何せ総本山だから登山道が整備されていて登りやすい

  • 180二次元好きの匿名さん21/12/05(日) 00:04:42

    >>179

    スレ主はバッグ買っていないのに色々あって11万行きました

    逆に言えばこれくらいで冬山以外の日帰り登山はいつでも出来るようになった

    一つの目安にしてください

  • 181二次元好きの匿名さん21/12/05(日) 07:19:56

    保守

  • 182二次元好きの匿名さん21/12/05(日) 16:28:32

    保守
    今夜中には投下出来そう
    内容はほのぼのドロドロほのぼのです

  • 183二次元好きの匿名さん21/12/05(日) 20:47:55

    しゃあっ!投下!!

  • 184二次元好きの匿名さん21/12/05(日) 20:48:16

    「何とかここまで戻ってきたな」
    「ええ……、あとは歩いて帰るだけです」

    午後8時、鶴巻温泉で温泉に浸かった後、二人は早めの夕食を済ませてから行きとは逆の順序で電車を乗り継ぎ、トレセン学園近くの府中駅に着いた。トレセン学園の最寄り駅は府中レース場正門前駅であり、当然、そちらの方が学園との距離も近いのだが、本日は学園の直ぐ近くにある東京レース場にてGⅠ天皇賞秋が開催されるということで混雑を避けるため、二人は行きも帰りも府中駅を使うことにした。

    「……ある程度予想はしていたが、行きも帰りも人で溢れているな」
    「そう、ですね……。丁度、ライブが終わった時間帯ですから……」

     しかし、最寄りではないとは言え、府中駅も東京レース場に近く、その利用者は多い。駅前の繁華街はレース後のウイニングライブを観終わり、帰路に就く人々で溢れていた。一瞬で人の波に呑まれ、散り散りになりかけるが、マンハッタンカフェがトレーナーの手をしっかり繋いで一つになると二人は表通りから一本外れた横道に逸れ、その道を歩いて帰ることにした。

    「小雨だが、それなりに降っているな。東京の方は曇りと聞いてレインウェアをバッグに仕舞ったが、もう一度取り出すか……」
    「いえ……、それには及びません。……折り畳み傘を差しましょう」
    「傘を持っているのか?」
    「はい……、雨対策はレインウェアだけでも十分ですが、簡易的な屋根として使うことが出来るので何かと便利なんです……」

     マンハッタンカフェはバッグのチェストストラップと腰ベルトを外し、バッグを抱え込むようにすると黒い折り畳み傘を取り出して開いた。トレーナーはそれを預かるとマンハッタンカフェがバッグを背負い直すまでの間、彼女の頭上に差し続けた。

    「……お待たせしました。行きましょう……」
    「ああ、そうだな。……傘はどっちが持つ?」
    「トレーナーさんが持ってください……。あと、あまり大きくないので……」

     そう言うが早いか、マンハッタンカフェは傘を差しているトレーナーの左腕に抱きつくと腕を組み、密着した。そのことにトレーナーは驚き、反射的にカフェの腕を振りほどきかけたが、ウマ娘特有の怪力でびくともせず、逆により一層締め付けられた。

  • 185二次元好きの匿名さん21/12/05(日) 20:48:41

    「……カフェ、少し力を緩めてくれないか」
    「嫌、です……。今、私から離れようとしました……」
    「カフェの大胆な行動に驚いただけで他意はないんだ」
    「……だとしても、嫌です」

     それによって、腕に圧迫感を覚えたトレーナーは力を緩めるようカフェに頼み込む。だが、マンハッタンカフェは頑なに拒み、それどころか身体全体をトレーナーに寄せ始める。それによって、己の不利を悟ったトレーナーは説得を諦め、ゆっくりと学園へと続く道を共に歩き始めた。

    「……そう言えば、カフェ」
    「何でしょうか……」
    「以前、山に登ると『お友達』の姿や声が少しはっきりして見えると言っていたが……。今日の場合はどうだったんだ」

     道中、暇つぶしがてら『お友達』の話を振る。『お友達』に様々な特徴がある。「マンハッタンカフェに非常に良く似た容姿をしている」、「非常に速く走る」、「コーナーで驚くほどに加速する」、「柳のように柔らかい走りができる」……。その特徴の一つに「山ではいつもよりも姿や声がはっきりする」というものがある。山を登り下っている時は必死ですっかり忘れていたが、こうして落ち着いた今になってそのことが気になり、トレーナーはカフェに尋ねた。

    「それが……全く見えませんでした。……いえ、見えないというよりも……」
    「というよりも?」
    「……多分、気を遣って姿を見せなかったのだと思います。トレーナーさんとの初めての登山ですから……」
    「そうか……」

     マンハッタンカフェは少し気恥ずかしそうに顔をほころばせながらそう語る。その微笑に引き込まれたトレーナーは言葉を詰まらせ、辛うじて曖昧な言葉を返す。

    「ただ……、今日みたいな天気だと大山でも姿や声がはっきりしていたと思います」
    「標高が高いとはっきりするとは言っていたが、それ以外にも何かあるのか」
    「ええ……、大体ですが……、晴れよりも曇りや雨、昼よりも夕方や夜、夏よりも冬……。環境や山頂へと至る道がより過酷であるほど、『あの子』がはっきりと……、『向こう側』との境界が薄くなります……」

  • 186二次元好きの匿名さん21/12/05(日) 20:49:05

     淡々と『お友達』があらわれやすく、『向こう側』との境界が薄くなりやすい気象や季節、状況をマンハッタンカフェは話す。そのことをトレーナーは始め何気なしに聞いていたが、後半になるにつれ、眉間に皺を寄せ始め、顔を強張らせた。だが、歩きながら前を向いて話すマンハッタンカフェはそのことに気付かなかった。

    「……かなり危なくないか」
    「はい……、危ないです。単純に遭難事故のリスクが跳ね上がるのもそうですが……、山にいる大いなるものや良くないものに出会ってしまう確率が高まります……。……ですから、基本的には安全なルートで高い山を登ることを目標としています」
    「それは良かった。もし、いつもそんなことをしていたとしたら――」
    「……トレーナーさん?」

     次の瞬間、トレーナーはマンハッタンカフェを両手で抱きしめていた。トレーナーの突然の行動にマンハッタンカフェは戸惑い、顔が赤くなったが、その腕に込められた力の強さにトレーナーの不安を感じ取り、無言で両手をトレーナーの背中に回した。

    「……すまない、少し嫌な想像をして怖くなった」
    「いえ……、私もトレーナーさんを不安にさせるようなことを言いましたから……」

     数十秒後、落ち着いたトレーナーは腕の力を緩め、マンハッタンカフェに突然抱きしめたことを謝罪する。それに対し、マンハッタンカフェも謝るが、何となく気まずい雰囲気となり、元のように腕を組んで歩き出しても会話はなかった。雨に濡れたアスファルトが街灯を反射し、二人の影法師をたゆたうように映す。傘に打ち付ける雨粒の音と自分達の出す足音が二人にはやけに大きく感じられた。

    「……なあ、カフェ」
    「何ですか……、トレーナーさん」

     学園近くの大通りに合流したところでトレーナーはマンハッタンカフェに話しかけた。そのことにマンハッタンカフェは一瞬驚いたが、先を促した。

    「カフェは今まで一人で登山していたんだよな」
    「そう、ですね……。学園に入ってからは単独行です……」
    「これからも……、例えば、俺が休日出勤で登山出来ない時は単独行をするのか」
    「……トレーナーさん」

  • 187二次元好きの匿名さん21/12/05(日) 20:49:24

     マンハッタンカフェはその場で立ち止まり、見上げる形でトレーナーの顔と向き合う。その目つきは鋭く、柳のような眉が少しつり上がっていた。

    「思いは……、言葉にしなければ伝わりません。しっかりと……、私の目を見て言ってください」
    「それは……」
    「……それは、言えないようなことですか。それとも……、私にそれを言って引きとめるほどの価値を見出していないのですか……」
    「違う!それだけはない」

     マンハッタンカフェの言葉をトレーナーは強く、明確に否定する。そして、少し息を整え、ゆっくりと言葉を紡ぎ出した。

    「今日、雨の中を下山して……。さっき、お友達についての話を聞いて、カフェがいつもではないが、少なからず危険な、リスクが高くなりやすい登山をしていると知って怖くなったんだ。山という気軽に行くことが出来ず、己の手の届かないところで……、いつか怪我をしたり遭難したりして二度と会うことが出来なくなるんじゃないかと、そう思ったんだ」
    「……それで、何を言おうとしたのですか。分かっていますが……、はっきりと聞かせてください」
    「……単独行での登山はしないで欲しい。グループ登山が万能とは言わない。でも、一人より二人の方が幾らか安全を確保出来る。可能な限り、休日は登山のために空けておいて、鈍った体も鍛え直してついていけるようにする。だから、これから先はずっと二人で山を登らないか」

     そう言い切ったトレーナーの黒い瞳の奥には情熱と使命感、そして、狂気と独占欲が入り混じったデイサイト質の溶岩のような焔があった。その焔を確かめたマンハッタンカフェの唇はいつもとは違ってつり上がるように歪み、それからいつも通りの微笑を彼女は浮かべた。

    「ええ……、トレーナーさんがそう望むのなら……。……私はそうしましょう」
    「本当か!……いや、でも、無理しなくて良いぞ」
    「大丈夫です……。どちらかと言えば……、トレーナーさんの提案は渡りに船でしたから」
    「……渡りに船?」

  • 188二次元好きの匿名さん21/12/05(日) 20:49:50

     マンハッタンカフェの言葉にトレーナーは首を傾げる。

    「私も単独行は危険だと思っていて……、止め時を探していました。また、ここ最近……、山に登っていなかったことで少し感覚を忘れていました。そして……、トレーナーさんを鍛え上げながら、登山の感覚を取り戻すとなれば……、トレーナーさんのレベルに合わせながら山を登るのが私にとっても丁度良いです。……ですから、これからは温泉でも約束した通り、これからは二人で山に登りましょう……」
    「なら、良いのだが……」
    「それに……、私としてはトレーナーさんの方が心配でした」
    「えっ、俺がか?」

     トレーナーの言葉にマンハッタンカフェはこくりと頷く。

    「はい……、今日、山を一つ登ったことで自信が付いたと思います。それ自体は悪いことではないのですが……、それ故に『自分はもっと高い山にも登れる筈だ』と力量に見合わない登山計画を立てて登り、遭難してしまうケースが多々ありますから……」
    「ああ、そういうことか。でも、それって初心者に限った話ではないような気が……」
    「ええ……、どんな登山者にも言えることです。……だからこそ、注意して欲しいのです。身構えている時には、死神は来ません……。……その存在を忘れた頃にやってきます」
    「真理だな。そんなつもりはないが……、肝に銘じておこう」

     それから山に関する不思議な話や民話で盛り上がりながら、しばらく歩き、二人は学園の正門前に到着した。学生寮は休日の夜ということで平日よりも多くの部屋に明かりが灯っていたが、中には明日からの激しいトレーニングに備えるためか既に消灯している部屋もところどころ見受けられた。

    「では……、今日はこれでお別れですね。また明日会いましょう……」
    「ああ、そうだな。今日はありがとう。カフェのおかげで忘れられない良い一日となった」
    「それは……、私もです……。……あの、トレーナーさん」
    「何だ」
    「これを……、どうぞ」

    そう言ってマンハッタンカフェがトレーナーに手渡したのは小さな紙袋であった。その中身が何か金属で作られた軽いものであるということは手に持った感触でトレーナーにも分かったが、まるで中身を推測出来ず、マンハッタンカフェに開けても良いかとアイコンタクトをとる。マンハッタンカフェは小さく頷き、トレーナーは袋の口を留めていたテープを剥がし、中身を取り出した。

  • 189二次元好きの匿名さん21/12/05(日) 20:52:02

    「これは……、鈴か?」

     それは銅鐸型の鈴であった。鈴は革と金属で出来ており、革の部分には大山とこまと山頂標識の絵が描かれ、『大山』、『大山こま』、『標高1252m』という文字が添えられていた。

    「はい……、熊鈴です。チームの子やタキオンさん達へのお土産とは別にお店でこっそり買っておきました……。……私とお揃いです」

     マンハッタンカフェが腰ベルトのポケットから下山時にしまった熊鈴を取り出す。それはトレーナーの手中にあるものと全く同じであった。

    「カフェとお揃いか……」
    「余計な……お世話でしたか」
    「いや、そんなことはない。ただ、少し照れくさくて……。それに――」
    「……どうしました?」

     急に言葉を途切れさせたトレーナーをマンハッタンカフェは不審がる。トレーナーはしばらくの間、口をもごもごと動かし、それを言うべきか言うまいかを考えあぐねた。だが、己を見つめるマンハッタンカフェの金色の瞳に気付き、覚悟を決めて口を開いた。

    「――先を越されてしまったと思って。その、お揃いのものをプレゼントするのは」
    「えっ……、それは……」
    「多分、大分待たせることになると思うが……、待ってくれるか」
    「……はい、待っています。いつまでも、ずっと……」

     街灯に照らされた二人の影が近づき、一つに重なる。トレーナーはマンハッタンカフェの頭をそっと撫でると静かに離れた。

    「……それじゃあ、おやすみ。カフェ」
    「はい……、おやすみなさい。トレーナーさん……」

     そして、それぞれ、美浦寮とトレーナーに向かって歩き出した。明日から11月が始まる。

  • 190二次元好きの匿名さん21/12/05(日) 21:00:44

    終わり

    翌日、筋肉痛に悩むトレーナーとそれを気遣うカフェ。そして、カフェの筋肉痛に気付いたトレーナーがカフェをマッサージして変な声を出させる小ネタも思い浮かんだが、残り少ないのでお蔵入り。
    登山シチュじゃなくても良いから誰か書いても良いのよ?

    あと、残りを感想で埋めていただければ、それに勝る喜びはないです
    もっと書いて(強欲)

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