マヤノ「異世界へ繋がる鏡」

[1 怪奇譚シリーズ 21/09/09(木) 22:38:06]

　テイオーちゃんテイオーちゃん。今日面白いお話しを聞いたんだ。学園の階段に鏡があるよね。あれが夜になると異世界に繋がるんだってー。面白そうだよね。今日の夜一緒にいってみない？

　同室のマヤノからそんな事を切り出されたのは今日の夕方だった。ボクもちょっと面白そうだったしその話に乗ることにした。異世界転生っていうんだっけ？そんな感じの小説をトレーナーが読んでたし気になってたんだよねー


　……という事でボクとマヤノは今日の夜に寮を抜け出して学校に向かったのだった。

　片手には懐中電灯を持って、さながら冒険の気分だ。誰もいない学園は昼間とは違い雰囲気がある。……それにこういう事も初めてじゃないしね。マヤノとボクならへっちゃらだ。何もなかったら何もなかったでボクたちだけが噂の真相を知っているっていうのはなんかみんなよりちょっぴり大人な気分になれるし。

[2 怪奇譚シリーズ 21/09/09(木) 22:51:26]

　あらかじめ開けておいた教室の扉から校舎の中に入る。たづなさんの巡回に細心の注意を払いながら中に入り窓を閉める。

　懐中電灯で照らすと夜の校舎はいつも昼間に見ているのと違ってやっぱり結構怖い。……ビビってなんかいないさ。ボクはムテキのテイオー様なんだよ。


　テイオーちゃん。マヤと手を繋ぐよ

　し、仕方ないなーマヤノは。わかったよ繋ごう。


　そんなやり取りをしながら教室を出て廊下に向かう。誰もいない事を確認すると目的の階段に向けて二人で歩いていく。確かに夜の校舎は怖いけれど特に何も起きなかった。

　時間は3時。夜更かしするとまたトレーナーに寝てないのかって言われちゃうけど……まあいいや。

　夜中の3時に校舎の2階と3階の間の鏡を見ると異世界に繋がっている……っていうお話らしい。さて……この階段を半分上がれば目的の鏡の前だ。

[3 怪奇譚シリーズ 21/09/09(木) 23:04:23]

　階段に足をかける。一段、二段、三段。四段目を踏むときに足元に変化を感じる。固い階段の感触ではなく柔らかい、すごく慣れ親しんだような足元の感覚を感じる。

　五段目、六段目。草のような感触が足首に当たる。レース場より少し長いくらいの芝の感触のような気がした。驚いて足元を照らすと普通の階段が足元にあった。

　隣のマヤノの手をギュッと握りマヤノの方を見る。マヤノはさらに足を一歩進めようとする。……でもこの感じは自然と怖くはない。不思議な感覚だ。

　九段目に上る頃には鼻で匂いを、肌で風を感じはじめていた。暖かい、そして草木の香りと混じる動物のような香り。……正直少し臭い気もするけど不快感はそんなにない。

　そして12段目に足をかける。

[4 怪奇譚シリーズ 21/09/09(木) 23:32:58]

　鏡のある方向から光を感じた。今は夜中の3時の筈なのに。さっきまで暗闇に慣れていた眼が一瞬その眩しさに眩んだ。

　マヤノの手はまだ握っている。マヤノの手の力がフッと抜ける。ドキリと心臓が高鳴る。この手を離しちゃいけないと直感的に感じてマヤノと繋いでる手を繋いでなかった方もあわせて両手で握りしめる。

　両手で手を握ったから鏡の方向じゃなくてボクの身体はマヤノの方を向いていた。……たぶんマヤノはこの時点で後のボクより深く理解っちゃったんだと思う。

　マヤノの表情は見惚れているようにも、何も感じていないようにもとれた……でもそれは苦しいとか怖いとかの表情じゃなくて……ボクもよくわかんないけどそういう表情じゃないのが余計に不味いと思った。

[5 怪奇譚シリーズ 21/09/09(木) 23:47:43]

　怖くなってきた。鏡の先が怖いんジャナクテマヤノが居なくなっちゃうような恐怖が鏡の方への好奇心より上回る。さっきマヤノの提案で手を繋いでいてほんとによかったよ。

　マヤノは鏡の方に行こうとするけどそんなに力強くではない。


　テイオーちゃん。マヤわかっちゃったよ。あの先にいるのはマヤなんだ。きっと……いや絶対にそう。隣のはきっとテイオーちゃんだね。シュッとした顔立ちと目をしたイケメンさんだ。2頭ともとても元気そうだよ。テイオーちゃんの後ろにいるのは会長さんかな。あっちの世界の会長さんもかっこいいね。

　会長？その言葉に鏡の方をボクは向いちゃった。



　鏡に写っていたのは、ロバ？ラクダ？ウシ？とりあえずそんな感じの身体をした4本脚の動物の姿だった。

[6 怪奇譚シリーズ 21/09/10(金) 00:10:32]

　ボクにはよくわかんなかったけど、たぶん目の前のヤツがボクなんだろう。ブルルと鼻を鳴らすソイツはボクの事をじっと見つめてくる。その後ろにはやけに威厳のある……気がする動物。えー全然カイチョーの方がカッコいいよー。

　そう思うと動物のボクはブルルと怒ったように鼻を奮わす。……カイチョーの方が強くてカッコいいぞ、その後ろのより。なんてったってカイチョーだからね。


　そんなやり取りを続けていると知らず知らずのうちに相手の事が理解できてしまう。なんか常識が崩れていくような感覚に襲われる。なんでボクは二本脚なんだろう？なんでボクほ服を着ているんだろう？なんでボクは……なんでボクは……

　目の前の動物のボクに近づいていくような……そんな気がした。だけれど嫌じゃない。それはそうだよ。だってボクなんだもん。

　いつの間にか鏡はいつものボク達の姿を写していた。床もふかふかな原っぱの感触じゃなくて普通の床に。窓からは少し明るくなった空が見えていた。そしてボク達はなんか……服を脱いで寝転がっていた。

　隣のマヤノも居なくなっちゃう事はなく同じように服を脱いで眠っていた。きっとあれは異世界なんだろう。鏡合わせのとっても近い別の世界。


　でもとりあえず服を着て帰ろう。もう朝になりかけてるじゃん。このままここで寝てたらみんなの笑いモノだよー。ほらマヤノ、起きて起きて。

[8 怪奇譚シリーズ 21/09/10(金) 00:27:06]

あとがたり

　その後の生活にもちょっぴり影響があった。道端に生えてる草が美味しそうに見えたり、時折、今の生活に違和感を覚えたり。マヤノの方が深刻だったけど。
　一方で少しいいことがあったとすれば少し速くなった事だった。一週間くらいは逆にうまく走れなくてスランプ気味だったんだけどその後はなにか変わったような感覚があった。

　んーでももうあの体験はいいかなー。


　アイコピー。マヤわかっちゃったよー。


　ep.鏡合わせの異世界と謎の動物

[9 二次元好きの匿名さん 21/09/10(金) 00:29:48]

自分の存在の定義があやふやになるの怖いけどなんだか幻想的でいいよね……

[10 二次元好きの匿名さん 21/09/10(金) 00:31:56]

ちょっとゾクゾクした
面白かったわ

[11 怪奇譚シリーズ 21/09/10(金) 00:34:06]

　閲覧ありがとうございます。今回はカフェさんはお休み……だって心霊じゃないし。
　学校の階段で4時に鏡を見ると自分の死に顔が写る……またいな話と異世界に繋がる13階段……みたいな話の合わせ技です。それにウマ×馬
　ウマ×馬ネタはハーメルンにある3時の怪が傑作なのでオススメです。

[12 怪奇譚シリーズ 21/09/10(金) 00:38:39]

いつもの宣伝タイム

カフェからこんな時間に呼び出された｜あにまん掲示板

ニシノフラワー「桜が咲いています」｜あにまん掲示板

ツインターボ「ターボ白い線の上だけ歩いて帰るー」｜あにまん掲示板

アドマイヤベガ「不思議な小劇場」【SS】｜あにまん掲示板

report 人工怪談の顛末｜あにまん掲示板

[13 二次元好きの匿名さん 21/09/10(金) 02:12:24]

3時の怪は6話の反転部分が好き

[14 二次元好きの匿名さん 21/09/10(金) 02:46:15]

三時の怪はなんで三時かわかる人は面白い
具体的には3時30分付近

[16 怪奇譚シリーズ 21/09/10(金) 02:54:36]

>>13

わかるー。そこも含めて本当に設定のセンスが良いしそのパターンも作れるのお上手がすぎる。

>>14

3時の怪のあの設定ちょっと強すぎるし綺麗すぎる。もうすごく引っ張られた。