【SS】超高速のプリンセスに花を活ける

1誕生日おめでとう22/04/13(水) 16:24:22

「あっ……日付が変わってる」
「おや、ほんとだねぇ。
じゃあこの実験で今日は終わろうか。
拘束具を外すとしよう」
腕から腕、そして足の縛りを解いていく。
既に十人以上は被害者がいそうな手際だった。

「んー……？
タキオン、私の荷物どこだったっけ」
えーと……実験から避難させておいた所までは確かにこの海馬に
記憶しているのだけど……

「ふむ？君の荷物かい？
それならあれじゃないかい？」
タキオンが指をさした方を見ると随分離れた部屋の隅だった。
自分事だがここまで傷つけたくなかったのか。
けれどそれもそのはずで、あれは贈り物だった。

「君がいつも使っているジュラルミンケースと……うん？
花かい？」
そう、花だ。
花を贈るという自分の安易なチョイスを少し恥じたが、
入手に中々苦心したことで帳消しに……はならないか。
そそくさと、花を取りながら一つの問いを念の為投げかける。

「今日が何日か……わかるかい？」
「うん？４月13日だろう？」
きょとんとした顔をした。
そうだろうなとは思っていたけど、やっぱり気にしていなかったのか。

2誕生日おめでとう22/04/13(水) 16:25:43

「今日はタキオン、君の誕生日だよ」
「……！ほう、もう一年たったのか、時の流れは速いものだねぇ。
いつかは追い越したいものだ。
…………それで、トレーナー君、要件はなんだい。
無駄話をする君ではないだろう？」

おや、察してくれた。
「純粋に祝福を送るだけだよ。
これはハルシャギクって言ってね、４月13日の誕生花なんだ。
今日ぐらいは活けてていいかい？」

「ふむ、まあ構わないが誕生花というものは幾つかあるものだろう？
何故それを選んだんだい？」
彼女は妖しく、こちらを試しているような笑みを浮かべている。
けれどお眼鏡にかなうほど高尚な理由ではなくて、ただ花言葉で私はハルシャギクを選んだ。
ハルシャギクの花言葉は「love at first sight」
意味は『一目惚れ』
私はあの日、彼女に魅せられた。
それだけである。

「ちょっと言えないかな、恥ずかしいや」
「フゥん、つまらないね」
「そこはごめんね…
タキオン、誕生日おめでとう」