【SS】ほぼ日セイちゃん 2周目

  • 1さくら◆QadlXyrFEc22/05/09(月) 00:41:12

    このスレはセイちゃん大好きな>>1ができるだけ毎日セイウンスカイのSSを書いていくスレです。


    キャラが崩れたり架空のトレーナーさんといちゃついたりしますがそれでも可な心の広い人はよかったら読んでいただけると嬉しいです。

  • 2さくら◆QadlXyrFEc22/05/09(月) 00:46:22
  • 3二次元好きの匿名さん22/05/09(月) 00:48:44

    スレ立て乙です!
    10まで保守!

  • 4さくら◆QadlXyrFEc22/05/09(月) 00:49:56

    それから前スレは考えなしに書き連ねた結果めちゃくちゃな長さになったのでこのレスを目次がわりに使いたいと思います。
    書くたびここに安価飛ばしますのでここから読みに行けるようになるかと思います。

  • 5二次元好きの匿名さん22/05/09(月) 00:55:19

    了解しました

  • 6二次元好きの匿名さん22/05/09(月) 00:59:55

    あげ

  • 7二次元好きの匿名さん22/05/09(月) 01:16:39

    保守

  • 8二次元好きの匿名さん22/05/09(月) 01:29:38

    とりあえず10まで埋めます

  • 9さくら◆QadlXyrFEc22/05/09(月) 01:38:51

    >>4


    「………………」

    「……なあ、スカイ」

    「………………」

    「前にもこんなことがあったな。あのときはニシノフラワーにトレーナーがついたときだったか。今回ソファーで丸まってるのもニシノフラワー関係だったりするのか?」

    「……そうですよぉ。セイちゃん、フラワーにフラれちゃいましてね……よよよ」

    「今回はすんなり話してくれて助かるよ。それで、フラれたっていうのは?」

    「それがですねぇ。フラワーを遊びに誘ったんですけど、トレーニングがあるからって断られちゃいまして……」

    「なるほど……ん?ちょっと待て、それは今日の話か?」

    「ええ、それがどうかしましたか?」

    「遊びに行く予定だったのも今日の話か?」

    「ええ、それがどうかしましたか?」

    「……トレーニングがあるのはうちもなんだけど。ひょっとして予定勘違いしてたのか?スカイもうっかりさんだな」

    「いえ、トレーニングよりフラワーのほうが大事なのでブッチするつもりでしたよ」

    「そこは嘘でも忘れてたことにしてくれよ!君を信じたかったのに!」

    トレーナーさんが頭を抱える。

    「まあまあ、ここは推定無罪の国ですよ。過程はどうあれトレーニングに参加してるんですから大目に見てよ」

    「参加してないよ!ソファーで丸まることをトレーニングとは呼ばないんだよ!」

  • 10さくら◆QadlXyrFEc22/05/09(月) 01:39:27

    「トレーナーさんは元気だなぁ。私より元気そうだしトレーナーさんがトレーニングしましょうよ」
    「それで君が強くなるならやってもいいけど……話が逸れたな。それで、どう考えても断られるのにニシノフラワーを遊びに誘ったのは何か理由があるんだろう?」
    「……そこも信頼してくれてるんですね。ですがここはフラワーのために黙秘権を行使させてもらいましょうか」
    「と言いつつ見当はついてるんだけどね。ニシノフラワーの学年でやってた模擬レースと関係があるんじゃないのか?」
    「トレーナーさんも意地が悪いですねぇ。……ええ、そうですよ」
    「それで結果がよくなかった彼女を励まそうとした、ってところか?」
    「……フラワーの適正じゃない、距離の長いレースに挑戦したらしいです。それで芳しくない結果だったそうです」
    「ウマ娘の距離適正は個人差がかなり大きい問題だからな……ニシノフラワーがどうかはわからないけど、本人の希望と適正が合わないなんて話も珍しくない」
    「私もそうやって話したんですけどショックが大きいみたいで」
    「……そこの折り合いは本人の問題だし外野からどうこう言えることじゃないしな。確かにそれなら遊びに行って発散するのが一番かもな」
    「フラワー真面目ですからねぇ。潰れちゃわないか心配ですよ」
    「まあそこは彼女のトレーナーがなんとかしてくれるさ。君が一人じゃないように、彼女も一人じゃないんだから」
    「出た!私あいつのこと信用してないんですけど!あんなやつよりセイちゃんのほうが頼りになるんですけどぉ!」
    「あいつとか言うなよ!彼は年下だけど気の利くいいやつだから大丈夫だよ!」

  • 11さくら◆QadlXyrFEc22/05/09(月) 01:39:38

    「トレーナーさんもたらしこまれてる……!この学園はもうダメなのか……」
    「マジで君が彼のこと悪く言うから顔合わせるの気まずいんだよ!せめて会ってから文句を言ってくれよ!」
    「嫌ですよ!……あーもういいや!フラワーも乗ってくれなかったし今日はトレーニングで発散します!」
    「君がやる気になってくれたならもうよしとするよ……」
    顔を知ってる人を嫌うのと顔も知らない人を嫌うのでは全然話が変わってくる。
    私は漠然としたフラワーのトレーナーという存在を嫌っていたいのだ。

    数日後。
    「トレーナーさん、今日は距離短縮のトレーニングもしたいです。具体的に言えばマイルでも走れるように瞬発力を鍛えていきたいです」
    「君からのそういう希望は珍しいな。もちろん構わないけど……走りたい目標レースができたのか?」
    「そういうわけではないですけど……いろいろできたほうが便利かなって」
    「……まあ新しいことをしたらなにかしら発見もあるだろう。挑戦してみようか」
    「いつも私の要望に乗ってくれてありがとうございます、トレーナーさん」
    「……それが仕事だからな。始めるよ」
    フラワーが長い距離を目指し、落ち込んでいた理由。
    なんてことはない。それは私と同じレースで走りたいからだそうだ。
    私だってマイルを走ったことあるし。フラワーだけに頑張らせはしないよ。
    いずれ来るであろう二人で走る日を夢見て、私は珍しく前向きにトレーニングを始めた。

  • 12さくら◆QadlXyrFEc22/05/09(月) 01:43:55

    二時間あれば書けるだろうと放置してた無責任なスレ主に代わって保守していただきありがとうございます……
    とりあえず目次も機能してるみたいですしここから頑張っていきます!
    というわけでこのスレではこんな感じで比較的めんどくさめ比較的恋愛攻撃力強め防御力紙装甲のセイちゃんSSを書き連ねていきますのでお口に合いましたらぜひお楽しみくださいませ。

  • 13二次元好きの匿名さん22/05/09(月) 06:42:20

    よろしくお願いします!

  • 14二次元好きの匿名さん22/05/09(月) 12:14:43

    続き更に来てる!
    セイちゃんそのうちフラワーに怒られるよ

  • 15二次元好きの匿名さん22/05/09(月) 21:19:15

    保守!

  • 16さくら◆QadlXyrFEc22/05/10(火) 01:12:14

    「トレーナーさん、少女漫画ってどのぐらい知ってます?」
    「んー……正直触れる機会がなかったからあんまりピンとこないかな。有名なやつの名前を知ってる程度か」
    「あの分類のせいで手が伸びないところはありますよねぇ。男の人が見ても面白そうなのもあるんですけど。……っとと、話題が逸れましたね。今日はトレーナーさんと、少女漫画のあるあるなシチュエーションを体験してみたいと思いまして」
    「少女漫画のあるあるって……壁ドンとか?」
    「トレーナーさん引き出しが古いですねぇ。流行に乗り遅れてますよ」
    「その古いネタに敗走したウマ娘がいたような気がするんだけど知らないか?セイウンスカイって言うんだけど」
    「昔のことばっかり話してると嫌われますよ。それでですねぇ、今クラスで流行ってる漫画でやってみたいシチュエーションがあるんですよ。協力してもらえません?」
    「まあ今日のトレーニングは終わってるし構わないよ。それでどんなのなんだ?」
    私は用意していた単行本を開き、トレーナーさんに見せつける。

  • 17さくら◆QadlXyrFEc22/05/10(火) 01:12:45

    「聞いてビックリ、『付き合ってることがバレそうになって二人ドキドキロッカーに隠れる』ってシーンです!」
    「ちょっと待ってもう嫌な予感がしてきた。最悪僕が怪我するか明日以降君がトレーニングに来なくなる気がする」
    「何がどうなってそうなるんですか!わざわざ私から持ってきてるんだから体が密着することぐらいは織り込み済みですよ!」
    「その覚悟があるならちょっと安心だけど……それにしても狭いとこが嫌いな君から出てくる提案とは思えないな」
    「トレーナーさんと一緒なら大丈夫かなと思いまして……それに、ゲート特訓にもなると思えばおいしい話じゃありません?」
    「……そこまで言うならちょっとだけな。ロッカーも完全には閉めないなら大丈夫だろう」
    そうして私たちはトレーナー室にあるロッカーへ向かった。
    「とりあえずトレーナーさんから入ってくださいよ」
    「了解……僕もそんなに背が高いほうでもないけど、僕一人で既に定員オーバーな感じなんだけど」
    「大丈夫大丈夫。完全には閉めないですし雰囲気を味わえればいいですから」
    私も入り、扉を閉める。
    「内側からロッカーを閉めるのなんて初めてですよ」
    「それ経験したことある人のほうが少ないだろ……というか案の定かなり密着するな。僕も恥ずかしくなってきた」
    「えー、トレーナーさんセイちゃんにときめいちゃってます?可愛いですねぇ……あっ」
    ガチャリ、という音とともに光がなくなる。

  • 18さくら◆QadlXyrFEc22/05/10(火) 01:13:14

    「おいおいスカイ、完全には閉めないって話だっただろう。狭いし早いところ開けてくれ」
    「そうですね。これじゃあロマンもへったくれも……あれ、えっと……暗いなぁ、トレーナーさん、ロッカーってどうやったら内側から開きます?」
    「さぁ……ロッカーの中に入ったの初めてだからわからない……」
    「………………」
    「お、落ち着けスカイ!暗いからわからないだけだよ!スマホ持ってないか?あれの明かりがあれば……」
    「なるほど!……って、私ジャージだから持ってないですよ。トレーナーさんこそ持ってないんですか?」
    「パソコンの横に置いてるな」
    「……えっと、ライターとかライトとか!なんか光るもの持ってないですか?」
    「タバコ吸わないしライトも持ってないな」
    「………………」
    「………………」
    「嫌だぁぁあ!暗いよぉ!助けてぇ!」
    「落ち着いてスカイ!ここで暴れても僕が怪我するだけだから!」
    「助けてトレーナーさん!早くここから出してぇ!」
    思わずトレーナーさんに抱きつく。
    「うん、よしよし……目が慣れたら施錠部分がわかるから出られるはずだから。ちょっと待ってね」
    トレーナーさんが優しく背中をさすってくれる。

  • 19さくら◆QadlXyrFEc22/05/10(火) 01:13:38

    「……早く慣れて。お願い」
    「……とりあえず手探りででもやってみるか。スカイ、右回りで90度ぐらい動くぞ」
    「……うん」
    「えっと……ここが留め具になってるのかな。ってことはここを……スカイ、ちょっと力を緩めてくれるか?」
    「……ごめん」
    「大丈夫だよ。もうちょっと……よし!」
    視界に光の線が射し、だんだん太くなっていく。
    「開いた……大丈夫か、スカイ?」
    「……怖かったよ。もう二度とロッカーなんて入らない」
    「僕もハラハラしたよ……特に専属トレーナーの部屋なんてほぼ来客がないし下手したら……痛い痛い、スカイ、離してくれ」
    「……もうちょっと、このままいさせて」
    「……わかった。せめてソファーに移動しようか」
    その後、門限ギリギリまでトレーナーさんにしがみついて過ごした。
    次の日、みんなは特にトラブルなく同じシーンの再現をしていたことを聞き、私の心は少し荒んだ。
    今度は閉所も暗所も関係ないシーンでリベンジしてやる……!

  • 20さくら◆QadlXyrFEc22/05/10(火) 01:15:43

    書いてる途中にやる気ダウンイベントがロッカーに閉じ込められるやつだったことを思い出しましたが勢いで突っ込みました。

    というか目次忘れてますね……ここで代用しますね。

    >>4

    >>16

  • 21二次元好きの匿名さん22/05/10(火) 03:00:43

    トレーナーさんと2人きりのロッカーは初めてだからセーフです!

  • 22二次元好きの匿名さん22/05/10(火) 12:42:19

    乙乙!

  • 23二次元好きの匿名さん22/05/10(火) 22:22:56

    余裕ぶって誘うくせにすぐテンパるクソザコセイちゃんすき

  • 24さくら◆QadlXyrFEc22/05/11(水) 00:34:20

    >>4


    「リベンジです!トレーナーさん!」

    「おお……すごい気合いだけどどうしたんだ?」

    「昨日のリベンジですよ!昨日はグダグダになってしまいましたが、今日こそドキドキするようなシチュエーションを体験するんですよ!」

    「まあ、あれじゃ消化不良だよな。君がやりたいなら付き合うよ」

    「さっすがトレーナーさん、そのノリのよさ大好きですよ!さて最初に挑戦するのは……ジャン!『コートのボタンに髪の毛が絡まって四苦八苦』です!」

    「……僕の常識が古いのかな。ピンとも来ないんだけど」

    「……そうですね。これはよく見るものではないかもです。それに私の髪は絡まるほど長くないですし無理ですね」

    「僕のスーツのボタンもわざとやらないと絡まなさそうだしな。他のはないか?」

    「そうですね、じゃあこれはどうでしょう。『男の人の腕に尻尾を巻き付ける』!」

    「これならできそうだな。でもこれどういう状況?」

    「ウマ娘のヒロインがお相手さんの所有権を主張するとき……とかですかね。他の女の子と話してるときに無意識にやってたりするといいかもです」

    「なるほどな……知らない文化もあるもんだな。それじゃ、並んで立てばいいのかな」

    「そうですね、お願いします」

  • 25さくら◆QadlXyrFEc22/05/11(水) 00:34:55

    さっそくトレーナーさんと並ぶ。
    「さて、と。それじゃあ……あれ、うまくいかないな……」
    やってみると意外と難しく、漫画でやってたみたいにうまく巻き付けることができない。
    「往復ビンタみたいになってるぞ、スカイ。痛いってほどじゃないからいいけど」
    「すみません、これ難しくて……」
    「ウマ娘の尻尾って触ったことなかったけど、サラサラしてていいな」
    「ちょっ、変なこと言わないでくださいよ!」
    尻尾が意識と関係なく動き、トレーナーさんを薙ぎ払う。
    「ぐえっ!」
    「ああ、すみませんトレーナーさん!大丈夫ですか!?」
    「うん……僕も不用意なことを言ってごめんね……にしても、ウマ娘の尻尾ってこんなに力があるんだな」
    「スペちゃんから聞いた話だと、トレーナーさんを尻尾で持ち上げようとしてる後輩さんもいるらしいですよ」
    「とんでもない話だな……これも難しそうだし他のはないか?」
    「うーん……それじゃあ、ソファーに移動してください」

  • 26さくら◆QadlXyrFEc22/05/11(水) 00:35:07

    トレーナーさんに普通に座ってもらい、私が横になって膝枕してもらう。
    「これで完成でよくないか?あと何をやるんだ?」
    「それはですね……えい!」
    少し体を起こし、トレーナーさんの胸に耳をピトッと当てる。
    「……ドクドク言ってますが早くもなく遅くもなく、普通ですね」
    「そりゃそうだよ。今日のシチュエーションはどれもピンと来ないから……」
    私もハマってるとは思わないまでも、ここまでトレーナーさんをドキドキさせられてないというのは悔しい。
    「……可愛い彼女がこんなに近くにいるのに贅沢ですね。これならどうです?」
    ままよ、と私は体を完全に起こし、トレーナーさんに正面から抱きつく。
    「スカイ!?これもやってみたいシチュエーションなのか!?」
    「違いますよ。これは私のオリジナルです」
    「ハグにオリジナルもなにもないと思うが……」
    「いちいちうるさいですよ、トレーナーさん」
    私はトレーナーさんを離し、再び胸に耳を当てる。
    「ふふっ、心臓の方が正直ですよ」
    「……そういう君はどうなんだ、スカイ?」
    「ええ、乙女の胸を触ろうって言うんですか?トレーナーさんのへんたい!」
    「ちがっ、そうじゃなくて!」
    「……とはいえ、一方的にっていうのもフェアじゃないですし……背中からならいいですよ」
    トレーナーさんに背を向けて座る。
    「……スカイ、尻尾がブンブンなってて近づけないんだけど」
    「乙女の心に触れたいっていうんならそのぐらいのトラップ乗り越えてきてくださーい」
    とはいえさっきの通り尻尾を意識して動かすのは難しい。だからこれもわざとじゃなくて。
    トレーナーさんと一緒にいる幸福感八割とトレーナーさんの前で見栄を張りたい心二割ぐらいを原動力として動いてる、んだと思う。

  • 27二次元好きの匿名さん22/05/11(水) 00:39:47

    あー可愛い
    イチャイチャは健康にいい

  • 28二次元好きの匿名さん22/05/11(水) 06:46:29

    セイちゃん可愛い!

  • 29二次元好きの匿名さん22/05/11(水) 12:18:45

    本当に可愛い

  • 30二次元好きの匿名さん22/05/11(水) 21:36:55

    可愛い!

  • 31二次元好きの匿名さん22/05/12(木) 00:54:38

    このレスは削除されています

  • 32さくら◆QadlXyrFEc22/05/12(木) 00:55:36

    >>4


    「いやー、この前買った敷物ですが悪くないですねぇ。私は直に寝転がるほうがいいと思ってましたがこれはこれは」

    「なあ、スカイ……」

    「トレーナーさんもありがとうございます。休みの日にならゴロゴロするのに付き合ってくれるって話、社交辞令かと思ってましたが本当に来てくれるとは!いつもと違った休日って感じでよきですね!」

    「その……言いにくいんだけど、もうやめにしないか?またタイミングを改めてだな……」

    「何をおっしゃいますか!せっかくトレーナーさんが来てくれたのにすぐに切り上げるなんてもったいないですよ!」

    「いや、いくら雨降ってるからってトレーナー室に敷物敷いて寝転がるのはやっぱり違うって。今度晴れたときに行くからもうやめようよ」

    「嫌です……せっかくの機会なのに……」

    今日は休みなのでゆっくりしようと思っていたところ、トレーナーさんもフリーだというのでたまには何もしないデートもいいんじゃないかと公園で過ごすという話だった、んだけど……

    「なんで今日に限ってアンウンスカイなんですか……普段の練習の日ならいくら降ってくれてもいいのに……」

    「不吉なことを言わないでくれ。本当になったらどうするんだ」

    「最近私真面目にトレーニングしてましたよね?なのになんですかこの天気!ひどくないどす!?」

    「可哀想だけど天気ばかりはどうしようもないからなぁ……そうだ、せっかくトレーニング室にいるんだし、コーヒーでも飲むか?」

    「ここのコーヒーも悪くないんですけど、芝生でゴロゴロしてるときはそのへんの自販機で買った缶コーヒーとかを飲むほうが好みです」

    「なるほど、今日はそういう気分か。ならそこで買ってくるけど何がいい?」

    「……せっかくなので一緒に行きましょう。せめて一緒に買い物気分だけでも味わってやります!」

  • 33さくら◆QadlXyrFEc22/05/12(木) 00:55:52

    というわけで、短いデートの始まり始まり。
    「やっぱり休日だと生徒もいないし雰囲気変わりますね。雨降ってて外も暗いし、お化けでも出そうですねぇ」
    「この年だとお化けとか言われても全然怖くないな。子どものときは怖くて仕方なかったのに不思議なもんだ」
    「トレーナーさん、怖かったら私に泣きついてもいいんですよ」
    「こっちの台詞だよ。……っと、もう自販機か。何がいい?」
    適当に飲み物を買ってトレーナー室に戻る。
    「で、本当の話この学校不思議な噂はけっこうあるみたいですよ。私が言うのも変な話ですが、ウマ娘自体不思議な存在ではありますしね」
    「三女神様の像のあたりはそういう話が多いって聞くな。いろんなウマ娘たちの想いがあそこには宿ってるのかもしれない」
    「そんなバカな話、って言いたいところですけど実は私も経験あるんですよね。三女神様に呼ばれたかのようにあそこに吸い寄せられて、誰かの想いを感じるんです。不思議とそのあと体がよく動くようになってて」
    「ヒントが欲しいならマンハッタンカフェのトレーナーにでも話を聞きに行くといいかもな。霊障……って言っちゃっていいのかな。とにかくよくわからない体験をしてるらしい」
    「あの人も独特な方ですしーー」
    一瞬の閃きのあと、ピシャーン!と雷が落ちる音がした。
    「わっ!……ビックリしましたねぇ、トレーナーさん」
    「ああ……って、停電か?困るってほどでもないけど暗いな」
    「そうですね……そうだ、せっかくなんで手を繋ぎません?」
    「何がせっかくなのかはわからないけど喜んで。……ひょっとしてスカイ、雷苦手なタイプなのか?」
    「いえいえまさか。トレーナーさんが怖がってると可哀想だからですよ」
    実のところお互い手を繋ぐ理由なんてどうでもいいのだ。
    相手のせいにしたいのは、つまり照れ隠しなのだが、そこは言わぬが花、ということで。

  • 34さくら◆QadlXyrFEc22/05/12(木) 00:56:37

    削除されてるのは投稿ミスなのでお気になさらず……

  • 35二次元好きの匿名さん22/05/12(木) 02:16:21

    可愛いなぁ

  • 36二次元好きの匿名さん22/05/12(木) 12:08:13

    是非ともお家デートもチャレンジしてほしい

  • 37二次元好きの匿名さん22/05/12(木) 22:08:43

    セイちゃんかわいい

  • 38さくら◆QadlXyrFEc22/05/13(金) 00:59:19

    >>4


    「ちょっとした疑問なんだけど、スカイって自転車乗れるか?」

    「え?普通に乗れますけど……なんでいきなり?」

    「いや、ウマ娘はわりと自転車に乗れない子が多いって話を聞いてさ。自分で走るほうが早いとそうなるのかなって気になって」

    「あー、そういう理由でしたか。私は遊びの一つとして乗ってましたけど、移動手段としては確かに選ばないですねぇ。カルチャーショックかもです」

    「あと尻尾を後輪に巻き込みそうで怖いよな」

    「やめてくださいよ!自転車乗るの怖くなるようなこと言うのは!」

    「でもそうか、乗れるのか……もしスカイが乗れなかったら、よくある後ろを押さえるやり取りをしてみたかったなと……」

    「この年……というよりこの体格で後ろを押さえられるのはどうなんですかね……仮に乗れなかったとしても私が恥ずかしいので嫌かもです」

    「まあスカイが嫌ならそれまでの話なんだけどな。……そういやスカイ、ニシノフラワーって自転車乗れるのかな」

    「何考えてるんですかトレーナーさん!?その欲はなんなんですか!?」

    「いやまあ冗談で……顔が怖いよスカイ」

    「綺麗な花だからってトレーナーさんまで虫みたいに寄ってかないでくださーい。全く、ただでさえこの前から……」

    「彼女のトレーナー虫だと思ってんの、君?」

    「嫌だなぁトレーナーさん、ただの比喩ですよ。……今のところは」

    「……後半は聞かなかったことにしとくよ」

  • 39さくら◆QadlXyrFEc22/05/13(金) 00:59:30

    「話が逸れましたけど、なんでそんなに自転車の後ろにこだわってたんです?私の背中なんてそんなに面白いものでもないでしょうに」
    「まあなんとなくなんだけど、僕って一人っ子だしそういうイベントに縁がなかったからさ。ちょっとやってみたかったってだけなんだよ」
    「ん?んー、そういうのって兄弟とかじゃなくて親子間のやり取りじゃないですか?それこそ体格差がないと共倒れしかねないですし」
    「……目から鱗だな」
    「嘘、マジで?トレーナーさん孤独でおかしくなりました?私というものがありながら?」
    「そんな贅沢な病みかたはしないよ……ただ、自分でも気づかないうちに自転車乗れないぐらいの子どもとの無意識の距離感が兄弟に対するものじゃなくて親子のものになってたのはけっこう衝撃だったかな」
    「よくわからないですけど……今日は私が妹やりましょうか?お兄ちゃん?」
    「魅力的な提案だけど……そうなると彼女の君がいなくなるから嫌だな」
    「……まあ、自転車支えるのはわっ……いつかトレーナーさんに子どもができたときにやってあげたらいいですよ」
    私たちの間に、という言葉を飲み込む。
    「……そのときはスカイも手伝ってくれよな」
    「っ!気が早すぎですよ!トレーナーさんのばか!」
    どうあれ、将来もし私たちの間に子どもができたら、自転車教育はなされるようだ。

  • 40二次元好きの匿名さん22/05/13(金) 12:09:54

    将来娘ちゃんの自転車教育する姿があるんだろうなぁ

  • 41二次元好きの匿名さん22/05/13(金) 22:38:31

    かわいいなぁ

  • 42二次元好きの匿名さん22/05/14(土) 11:04:53

    ほしゅ

  • 43二次元好きの匿名さん22/05/14(土) 11:16:26

    うおおめっちゃ書いてるやん!
    とりあえず最初から読んでくる!

  • 44二次元好きの匿名さん22/05/14(土) 14:21:57

    良かった、落ちてなかった!
    保守します!

  • 45二次元好きの匿名さん22/05/14(土) 18:52:51

    生きててよかったよ!

  • 46二次元好きの匿名さん22/05/14(土) 22:25:37

    保守です

  • 47二次元好きの匿名さん22/05/15(日) 00:03:54

    今日いらっしゃるかな?

  • 48さくら◆QadlXyrFEc22/05/15(日) 01:20:27

    正直昨日からずっと入れなかったので落ちたと思ってました……
    今から用意するので遅くなります、申し訳ない……

  • 49二次元好きの匿名さん22/05/15(日) 01:21:59

    大丈夫です!
    ゆっくりお待ちしてますね

  • 50さくら◆QadlXyrFEc22/05/15(日) 02:26:21

    >>4


    「トレーナーさん、間違い探しです!今日の私はいつもとどこが違うでしょう?」

    その場でくるくると回ってみせる。

    「ん?んー、パッと見でわかるところじゃなさそうだな。よし、受けて立とうじゃないか」

    よし、かかった。

    「まず髪型は……いつも通りだな。耳のメンコも髪飾りもいつも通り、と。シャンプー変えたとかか?」

    トレーナーさんが私の髪に鼻を近づけようとするので急いで回避する。

    「ちょっ……!デリカシーとかないんですか!?汗とかかいてますし恥ずかしいんですけど!」

    「ああ、すまん!つい……ちなみに正解だったり……?」

    「少なくともそれではないです。もう……」

    予想以上に恥ずかしいぞ、これ……

    「それで、他には?ほらほら、くるくるくる」

    最後まで耐えられるか心配になりつつトレーナーさんに続きを促す。

    「可愛いけど回られたらわからないよ……えい」

    「うぇ、いきなり止められたら……」

    トレーナーさんに手を掴まれた私は勢いでふらつき、意図せずトレーナーさんの肩につかまる。

    「……ダンスみたいになっちゃってますよ。口で言ってくれたら止まるので無理矢理はやめてください」

    「……申し訳ない」

    「……それで、興味があるのはセイちゃんの顔だけなんです?体には興味なしというのは寂しいなぁ」

    「煽るような言い方はやめなさい。体、というか服かな。普通のジャージだし変化なんてなさそうだけどな……」

    「ふっふっふ、さあどうですかね?」

    トレーナーさんは私の周りを回りながら見つめてくる。

    「そうだ、爪はどうだ?マニキュア塗ってるとか……」

    「どうぞご確認くださーい」

    私は何もしてない両手を差し出す。

    「……普通だな。生命線が伸びてたりは……」

    「仮に伸びてるとしてそれに気づくのはキモいですよ!フクキタルさんじゃあるまいし手相はいじれませんよ!」

  • 51さくら◆QadlXyrFEc22/05/15(日) 02:26:59

    「彼女にも無理だろさすがに。まあ冗談は置いといて、手じゃなさそうか。……それにしても、スカイの手は小さいな」
    トレーナーさんが無遠慮に手をニギニギしてくるので、恥ずかしくなって振り払う。
    「はい、ふれあいタイム終了でーす!これ以上はお金とりますよ!」
    「その関係性は不健全すぎるからダメだ。にしても手でもないとすると……足か?靴は同じだと思うけど……」
    触れないようにと気を使ってくれてるのはわかるけど、じっくりと生足を見られるのは……どうも……
    「……下心なさそうなのが私としては納得いかないかな」
    「?なんか言った?」
    「なんでもないですよ。それで、答えはわかりました?」
    「……ギブアップだ。降参降参。君のことならなんでもわかると思ったんだけど、甘かったな。答えはどこだったんだ?」
    「ふっふっふ、正解は……特にないでーす!だから甘めに採点すると気づかないっていうのは正解、ですかね?」
    「……え、ないの?」
    「ここで下着が違うとか言われるよりは納得でしょう?ま、トレーナーさんには彼女の体をなめ回すように見ることができる役得だったということでどうか一つ!」
    「まあそれが正解でも確認するわけにはいかんしな……僕が性欲の塊みたいな言われようなのはこの際置いといて……うーん……」
    「あれ?……どうされました?ひょっとして怒っちゃった?」

  • 52さくら◆QadlXyrFEc22/05/15(日) 02:27:36

    「自分でも判断つきかねる。君の変化に気づけなかったわけではない安心感、理不尽な問題に対する憤り、それはそうとして君はこういうことするよなっていう妙な納得感、可愛さに免じて許すべきか……」
    「そうですよそうですよ!可愛さに免じて……可愛さに免じて!?」
    「その反応……いいことを思いついた。スカイ、耳を貸してくれ」
    「へ?なんでしょう?」
    「……スカイ、今回の間違い探しで君の可愛さを再確認したよ。役得ってのもあながち間違いじゃないかもな。汗のにおいを気にしてたけど、君はいつも通り……」
    「ストップストップ待った待った!ななな、なんですかこれ!なんで耳元で!?」
    「手のかかってないイタズラには手のかかってないお返しだ。おそらく君の狙いだったであろう時間の浪費は果たされてしまった。今からじゃトレーニング施設も本来の予定通りに使うことができなさそうだ」

  • 53さくら◆QadlXyrFEc22/05/15(日) 02:27:51

    「わかってて乗ったんですか?お人好しというか、なんというか……」
    「いや、これは彼氏としてのプライドでもあったからな。違いに気づかずして君の彼氏を名乗るのはおこがましいし」
    「公私混同しちゃってますねぇ。私が言えたことじゃないけど」
    「結果問題は答えのないイタズラだったわけだが、僕はこれに対して愛で答えようと思う。すなわち、褒め殺しによるメンタルトレーニングだ」
    「……と、トレーナーさん、トレーニングに行くなら早くしないと……」
    「いや、今日は時間が中途半端だし予定変更だ。君の自己評価の低さがレースに悪影響を及ぼしてるんじゃないかって場面は何度かあったしな。それでも私が、で安定して戦えるならともかく、やっぱり私なんて、で競り負けるのはどうにかできるならしたいしな」
    「た、助けて……」
    「大丈夫、逃げられないようにして君を褒め続けるだけだから。本当に耐えられなくなったら今回は逃げてもいいからさ」
    「今回は!?以降続くやつなの!?」
    かくして、私の第一の目標、時間を消費してトレーニングできない流れに持っていくことは成功したけど……結論からいうと、コースを走ってるほうがマシだった。
    そして第二の目標、私をじっくり見てもらって照れてもらう、のほうは……問題って形にしたのがよくなかった。特に、足を見るときの野菜の品定めをするような目をしてたのはいまだに腑に落ちてない。……私は恥ずかしい思いをしたのに……
    「……それでスカイ、体操服越しでもわかるぐらい素晴らしく仕上がったボディーだったな。細く見えるけど引き締まっててバランスも……」
    「もう!トレーナーさんのえっち!」
    いや、えっちじゃないから困ってるんだけど。
    カウンターがなければ判定勝ちぐらいには持ち込めてたと思うんだけどな、と私は見通しの甘さを反省した。

  • 54さくら◆QadlXyrFEc22/05/15(日) 02:32:42

    インチキゲームのオチはわりと悩んで無難なところに落としてしまった感あります。
    セイちゃんが言ってたみたいにいつもと違う(いつもを知らないだろうけど)下着で誘惑するとか、いつもよりトレーナーさんが好きみたいなバカ惚気ルートも考えましたがそれ書く体力がなかったのでお口に合いましたら補完して楽しんでみてください。

  • 55二次元好きの匿名さん22/05/15(日) 02:33:12

    相変わらずの駆け引き…良きですねぇ

  • 56二次元好きの匿名さん22/05/15(日) 09:07:34

    良きですねぇ
    乙です!

  • 57二次元好きの匿名さん22/05/15(日) 15:00:32

    セイちゃんはかわいいなぁ

  • 58二次元好きの匿名さん22/05/15(日) 20:08:06

    保守

  • 59二次元好きの匿名さん22/05/16(月) 00:46:41

    あげ

  • 60さくら◆QadlXyrFEc22/05/16(月) 01:13:16

    「あつーい……トレーナーさん、ここもうちょいクーラー強めてもらえません?」
    「そうしてあげたいのはやまやまだけど君は走ってきたばかりだろう?汗もかいてるし、急に体を冷やすのはよくないから……」
    「話はわかるけど納得いかなーい!シャワー室で汗流してきたらいいですか?」
    「……いいけど、そんな手間するぐらいならもう帰ったほうがよくないか?」
    「今日はまだトレーナーさんと遊びたい気分なんです。……それじゃ、シャワー浴びてきまーす」
    「遊ぶってまだ仕事が……行っちゃった……」
    ささっと汗を流し、トレーナー室に戻る。
    「ただいま戻りましたー!湯上がりホカホカセイちゃんのお届けでーす!」
    「今日はやけにテンションが高いな。なにかいいことでもあったのか?」
    「んー……特にないですけど、理由もなく落ち込んでるよりはマシでしょう?」
    「違いないな。君が笑顔でいてくれたら僕も嬉しいし」
    「……それはこっちも同じですし……」
    「ん?スカイ、顔が赤いぞ」
    「ふ、風呂上がりだからですよ!もう……アイス貰いますね」
    「印つけてるのは選ばないでくれよ。もう売ってない限定品だから」

  • 61さくら◆QadlXyrFEc22/05/16(月) 01:13:46

    「了解了解ー、このソーダアイスいただきまーす」
    「それならいいよ。ついでに僕にも適当に一つ取ってくれないか?」
    「オッケー、なんでもいいならお揃いにしちゃいましょう!」
    アイスの封を開けかけた手を止め、同じアイスを取りトレーナーさんに手渡す。
    「それじゃ、かんぱーい、なんちって」
    袋から出したアイスをぶつけ、笑い合う。
    「んー!一汗かいたあとのアイスは格別ですなぁ」
    「全くだ。頭脳労働のあとのアイスは格別だ」
    「戦場は違えど我らともに戦うもの同士、苦労してるんだねぇ」
    「君が真面目に走ってくれたら苦労も半分くらいになるんだけどな」
    「しかし悲しきかな、指示を出す者と下働きする者の間には決して浅くない溝があるのでした……よよよ」
    「その溝に橋をかけるには両岸からの協力が必要だと思うんだけど、そちらのやる気という名の協力は得られないかな?」
    「もう!今はトレーニング真面目に終わらせてからの休憩時感なんだからネチネチ言うのやめてくださいよ!やる気下がりますよこんなの!」
    「確かに、ちゃんと走った日に言うのは違うよな、悪い。お詫びに食べかけでよければ僕のアイスあげるよ」
    「っ!……うぅ……いや!セイちゃん一本食べたらお腹いっぱいですので!トレーナーさんが食べてくださいな」
    「?あぁ、それじゃあありがたく、なのか?とりあえず僕が食べるけど……大丈夫か?」
    「……こっちの気も知らないで……」

  • 62さくら◆QadlXyrFEc22/05/16(月) 01:13:58

    わちゃわちゃ話しつつ食べ進めてるとトレーナーさんがいきなり声をあげた。
    「おっ!当たりだ!やった!」
    「ほう?トレーナーさんやりますねぇ。近くに交換できるところありましたっけ」
    「……そういやどこで交換できるんだろう、こういうの」
    「あんまり当たらないですしねぇ。えっと……お、コンビニならどこでも交換できるみたいですよ」
    「へぇ……それじゃあこの棒は君にあげるよ。大人が当たり棒持って交換しにいくの、ちょっと恥ずかしいし」
    「いいんですか?それじゃあ……」
    受け取ろうとして、トレーナーさんが食べてたアイスの棒であることに気づきしばし躊躇う。
    「………………」
    「えっと……そうか、悪かったスカイ。口をつけたものをそのまま渡すのは気分がよくないよな、洗ってくるよ」
    一人で完結してトレーナーさんは水道のほうに行ってしまった。
    なんとなく私ばかり意識してしまってるようで悔しいので、トレーナーさんを追いかける。
    「……私の、あげます」
    「え?スカイのも当たってたのか?」
    流しで棒を洗うトレーナーさんの口に私のハズレ棒を押し付ける。
    「……一回だけ真面目にトレーニングするチケットです。有効活用、してくださいね」
    「一回……いや、すまん。ありがとな、スカイ」
    「いえ……それよりトレーナーさん、顔赤くないですか?」
    「……今日は暑いからかな。そういうスカイも赤い気がするけど」
    「……夕日が当たってるからじゃないですか」
    強引すぎたかな、嫌がられてないかな、押し寄せる不安をトレーナーさんの顔の赤みで押し返す。
    アイスを食べたのに妙に暑く感じる部屋で、私たちはどうでもいい話をしばらく続けた。

  • 63さくら◆QadlXyrFEc22/05/16(月) 01:15:05

    またしても目次安価を忘れたのでここで代用です。

    名案だと思ったんですけど自分が忘れまくってちゃ世話ないですね……


    >>4

    >>60

  • 64二次元好きの匿名さん22/05/16(月) 07:25:12

    この2人ほんと可愛い

  • 65二次元好きの匿名さん22/05/16(月) 12:42:34

    可愛いなぁ

  • 66二次元好きの匿名さん22/05/16(月) 23:21:19

    保守

  • 67さくら◆QadlXyrFEc22/05/17(火) 01:35:39

    >>4


    「ねえ、トレーナーさんってなんか制汗剤とか使ってます?」

    「特に気にしてなかったけど……ごめん、汗臭かったかな」

    「いやいや、違いますよ!なんとなくトレーナーさんって落ち着く匂いがするから何か使ってるのかなと思ったんですよ!」

    「よかった……でもまあこれから暑くなるし、なんか対策考えたほうがいいかもだな。スカイは何か使ってるのか?参考にしたい」

    「私ですか?私は無香料のやつを使ってますね。人工的な匂いというか……強すぎる匂いはあんまり好きじゃなくて」

    「なら僕もそういうのは避けたほうがいいか。……聞いていいのかわからないから答えにくければ無視してくれていいんだけど、レースのときって他のウマ娘の制汗剤とかの匂いが気になったりしないか?大丈夫?」

    「あー、みんなが密集するゲートでは気になる瞬間もありますね。好きな匂いは人それぞれですから正直キツく感じることもありますけど、レースが始まるとそんなの気にしてる場合じゃないですし大丈夫ですよ」

  • 68さくら◆QadlXyrFEc22/05/17(火) 01:35:52

    「なるほどなぁ。……ウマ娘って嗅覚が鋭かったりするのかな」
    「種族単位ですか……どうなんでしょうね?他の人がどうとかわかんないですし」
    「ヒトより激しい運動をしてるし体を冷やすための汗をかく機能も備わってる。運動量や年頃を考えるとウマ娘用のデオドラント商品なんていくらでもありそうなもんだしな……どうなってるんだろう。嗅覚テストしてみるか?」
    「……前々から思ってましたけど、トレーナーさんときどき私のことをペットかなんかみたいに見てません?猫みたいとか言ってましたし」
    「……軽率な発言でした。申し訳ありません」
    「全く……私はデカい猫ちゃんじゃないんですよ。……匂いでいうなら、トレーニング後の汗をかいてる状態でもトレーナーさんは普通に接してきますけど、私としては汗臭くないかとか気になるので控えてほしいです」
    「デリカシーのないトレーナーで申し訳ない……でもスカイ、君の匂いが気になったことはないから安心してくれ」
    「その発言が既にデリカシーないような気もしますが……まあいいでしょう。ご理解いただけたなら夏の間は汗をかくようなトレーニングは控えてもらえると助かりますねぇ」
    「とんでもないことを言うな君は……汗をかくのも正常な体の機能だからそこまで嫌がらなくても、っていうのが既に老いた感性なのかな。せめてプールトレーニングを増やすとかで対応するよ」
    「暑い日には嬉しい配慮ありがとうございます。……そうなるとこの後トレーナーさんに慰謝料代わりにアイスをご馳走になろうと思ってたのはキャンセルですかね」
    「水着だからって気にしなくても。君はもっと太っても大丈夫だよ」
    「だからデリカシー!」
    結局アイスはご馳走になったしプールトレーニングも増えた。
    ……あの場では喜んじゃったけどプールはプールで恥ずかしくもあり。
    仕事とはいえトレーナーさんは全くの真面目対応だし……私だけ意識してるみたいでやだなぁ。

  • 69二次元好きの匿名さん22/05/17(火) 12:00:25

    保守!

  • 70二次元好きの匿名さん22/05/17(火) 21:38:42

    早め保守

  • 71さくら◆QadlXyrFEc22/05/18(水) 01:07:05

    >>4


    「トレーナーさん、今日は休みですし一緒に遊びに行きません?」

    「いや普通にトレーニングだよ!?勢いで誤魔化されはしないからね!?」

    「え……っと、いやいや、予定確認してくださいよ。今日は休みでしたって」

    「うそ、マジで……って、やっぱり今日はトレーニングだよ。反応を見るに勘違いみたいだけど、ほら」

    「どれどれ……ありゃ、休みなのは明日でしたか……あちゃー、完全に休みだと思ってたので準備してきてないですよ、どうしましょう」

    「今回は悪気なさそうだし……明日のコース予約が空いてるなら今日と予定を入れ換えるか」

    「すみません、勘違いしてました……」

    「気にしないで。コースの予約もとれたし、明日頑張ってくれたらそれでいいよ。それで、遊びに行きたいって話だったよな。どこか行きたいところがあるのか?」

    「え……いいんですか?予定崩しちゃってますけど……」

    「勘違いは誰にだってあるしな。遊びに行って発散しちゃおう」

    「トレーナーさん……」

    「それに、僕は明日のほうが忙しくてな……ある意味君は運が良かったよ」

    「……ありがとうございます!それじゃ、行きましょう!」

  • 72さくら◆QadlXyrFEc22/05/18(水) 01:07:38

    そうして私の希望通り水族館に遊びに行くことになった。
    「……平日なのに人が多いな。なんかイベントとかやってるのか?」
    「はい!ペンギンとふれ合えるイベント開催中なんですよ!スペちゃんが楽しかったって言っててさぁ!」
    「なんというか、君が年相応にはしゃいでる姿を見るとこっちまで嬉しくなってくるな。滅茶苦茶可愛いのにめったにお目にかかれないし」
    「むむ……せっかく水族館に来てるんですから私なんかよりお魚さんたちを見てあげてくださいよ。ほら、この大きなマグロとか!……いつか釣り上げてみたいなぁ……」
    「なになに……種類によるけど300キロを越える種類もいるらしいな」
    「……筋トレ頑張らないとですね」
    「目的はどうあれトレーニングに前向きになってくれるのは嬉しいよ」
    これまでに来たこともあるんだけど、初めて来たみたいに楽しみながら順路を進む。
    「それで、ペンギンコーナーはそろそろだっけか?」
    「確かそうですねぇ……あ、あれですあれです!」
    プールのへりに数羽のペンギンと飼育員のお姉さんがいて、同年代くらいの学生がペンギンに餌をあげていた。

  • 73さくら◆QadlXyrFEc22/05/18(水) 01:07:50

    「餌やり体験もできるのか……無制限にあげられるものでもないだろうし、体調管理とか大丈夫なのかな……」
    「まず気にするところそこですか!?素直に愛でましょうよ!」
    先客さんが去るのを見てからコーナーに向かう。
    「こんにちは~、この子達、撫でてあげてもいいですか?」
    「こんにちは。どうぞ可愛がってあげてください。そちらの……えっと、お兄様でしょうか?」
    「いえいえ、こちらはーー」
    「この子のトレーナーです。それではありがたく」
    一足遅れてペンギンを撫でに来るトレーナーさんに、恨めしい目を向ける。
    「なんですかあの返事は……ひどくないです?」
    「君は二冠取ってる自分の知名度を少しは自覚してくれ……学園ではある程度公然の秘密になってるかもしれないけど、外ではどこから話が漏れて炎上するか知れたもんじゃないんだぞ」
    「むむむ……」
    「せっかくのふれあいコーナーなんだから僕なんかよりペンギンを見てあげなよ。ほら、可愛いぞ」
    気を取り直し、ペンギンに餌をあげたり一緒に写真を撮ったり、泳いでいるところを眺めたりと楽しい時間を過ごす。
    「ん?このイベント今日までだったのか。スカイ、知ってたか?」
    「え、そうなんですか?まだもう少し続くものかと思ってました……」
    「疑ってるわけじゃないけど、今日は君の勘違いのおかげでいろいろ楽しめたな。ありがとう」
    「普段の行いが行いだとこういうときに損するんですねぇ……あーあ、セイちゃん傷ついちゃった!記念にぬいぐるみでも買ってくれないと明日以降のやる気に差し障りそうだな~!」
    「今日のスカイは要求まで可愛らしいな。それじゃあ一緒に選びに行こうか」
    ぬいぐるみ売り場で私とトレーナーさん、お揃いのペンギンを買ってもらい、水族館を後にした。
    ちなみにペンギンたちを引き離すのが可哀想ということで、二匹揃ってトレーナー室に飾ることになった。

  • 74二次元好きの匿名さん22/05/18(水) 01:11:55

    あらー水族館デートだ

  • 75二次元好きの匿名さん22/05/18(水) 07:21:48

    あげ

  • 76二次元好きの匿名さん22/05/18(水) 12:27:55

    ほしゅ

  • 77二次元好きの匿名さん22/05/18(水) 21:31:36

    早めの保守

  • 78さくら◆QadlXyrFEc22/05/19(木) 01:57:36

    >>4


    「じゃじゃーん!見てよトレーナーさん!」

    私は手に持った花をトレーナーさんに見せつける。

    「これは……なんの花だ?申し訳ないが花には疎くてな……」

    「なんと、それは残念です……実はこれ、フラワーに貰ったんだけど種類は教えてくれなかったんだよね~、『スカイさんにぴったりな花ですよ!』としか言ってくれなくて」

    「なるほど……それじゃあ君にふさわしい花言葉を調べたら逆引きできるんじゃないか?」

    「それはそうかもですけど……ちょっと恥ずかしくないです?」

    「ん……それもそうか。友達に花に詳しそうな子はいないのか?」

    「うーん……生け花好きなグラスちゃんとなんか詳しそうなキングには既に当たったんだけど、事情を話したらとたんに口をつぐんじゃってさ。おおかたフラワーの顔を立てたって感じだと思うけど……」

    「それならやっぱり僕たちで調べるべきじゃないかな。外観のヒントは……白いな。専門的なことは何もわからないからこれしか言えない」

    「私っぽい花……空とか雲とか名前に入るとか?」

    「悪いけどそんな花は聞いたことないな。やっぱり花言葉じゃないか?」

    「自分で自分っぽい花言葉考えるとか軽く地獄じゃないです!?トレーナーさんが調べてくださいよ!」

    「まあ気持ちはわかるけど……それじゃあ君はその花をここに飾れるようにしてくれ。いくら綺麗だからってそのまま置いておくわけにはいかないし」

    「とりあえずフラワーに相談してみましょうかね。鉢植えにしろ花瓶にしろここにはないですし」

  • 79さくら◆QadlXyrFEc22/05/19(木) 01:57:49

    そうして私はフラワーを探し、花壇に来た。
    幸いにしてまだトレーニングが始まっていなかったのか、フラワーは花壇のお世話をしていた。
    「よかった、まだいた。ねえフラワー、さっき貰った花をトレーナー室に飾りたいんだけど、入れ物とかお世話とか教えてくれないかな?」
    「スカイさん!さっきは押し付けるように渡してしまったけど、迷惑じゃなかったか心配してたんです!それがお世話をしてくれるだなんて……嬉しいです!」
    「ねえフラワー、私だって女の子なんだから可愛いお花を愛でる趣味ぐらいあるよ?」
    「冗談ですよ。……でも、スカイさんが興味を持ってくれたのは本当に嬉しいです!ちょうど使ってない鉢植えがあるのでお貸ししますね!水やりはーー」
    嬉しそうに説明してくれるフラワーを見ているとこちらも嬉しくなってくる。
    「……と、こんな感じです。わからないことがあればいつでも聞いてくださいね!」
    「ありがとね、フラワー。ついでに花の名前も教えてくれると嬉しいな~、なんて」
    「ごめんなさい、それはできません。……でも、スカイさんのお話なら今ごろトレーナーさんが答えにたどり着いてると思いますよ」
    ああもキラキラした笑顔を向けられては引き下がらざるをえない。
    釈然としない気分のまま鉢植えに収まった花を見る。
    白く咲き誇る様子は花より団子な私から見ても可憐で、こんな花が似合うと言われるのは悪い気はしない。
    「おかえり、スカイ。その花の名前がわかったよ。それはーー」

    後で花言葉を調べてみて、フラワーの(答えにたどり着いたということはおそらくトレーナーさんも)私に対するイメージに一言もの申したくなったが、花に罪はない。
    「私、そんないいもんじゃないんだけどな」
    苦笑しながら無邪気に咲く白い雛菊ーーデイジーに水をやる。
    せめて長く咲いててもらえるように、フラワーと相談しながらお世話しないとね。

  • 80さくら◆QadlXyrFEc22/05/19(木) 02:01:32

    よっぽど書きたいシチュエーションがあるときでもない限り最初の一言を書いた時点では基本的には何も決まってないので、書き進めつつ話を探っていく変な書き方をしてますのである程度綺麗に話を収められたら安心感があります。
    セイちゃんが持ってきた花も下調べ一切なしで出したので書きながらめっちゃ調べて考えてました。

  • 81二次元好きの匿名さん22/05/19(木) 12:32:58

    デイジーの花はセイちゃんにとって切っても切れない花ですよね

  • 82二次元好きの匿名さん22/05/19(木) 22:54:33

    良いよね…

  • 83さくら◆QadlXyrFEc22/05/20(金) 02:39:02

    >>4


    その日、私はトレーニングまでの時間を静かに過ごしたかったのでお昼寝スポットの小さな丘に来ていた。

    万が一寝過ごしたら起こしに来てもらえるようにトレーナーさんにも連絡済みだ。

    「さーてと、ひと眠りひと眠り……っと、おや?」

    どうやら先客がいるようだ。

    どうするか一瞬だけ悩み、すぐに先客の正体に気づいて隣に寝転び、声をかける。

    「意外なお客さんだねぇ。お隣失礼してもいい?」

    「あなたねぇ、寝転がってから聞く人が……まぁ、構わないわ。ここもあなたから聞いたわけだし」

    先客ーーキングは、こちらをちらっと見てすぐに顔を背けた。

    「キングもここを活用してくれてるみたいで嬉しいなぁ。……ところで、セイちゃんお悩み相談室、いります?意外と外には漏れないと評判だよ」

    「意外とじゃ困るでしょ!そこは絶対とか言いなさいよ!」

    口ではそう言いつつも、キングの顔には迷いの色があった。もうひと押しってところかな。

    「まあまあ、悩みなんてのは誰かに話すだけでも楽になるもんだよ。一人で抱えてても疲れるだけだし、今ぐらいは荷物を投げ出してお昼寝でもしようよ」

    「……あなたの言うことにも一理あるわ。くだらない話よ、子守唄にでも活用してちょうだい」

    そうしてキングは話し始めた。

  • 84さくら◆QadlXyrFEc22/05/20(金) 02:40:41

    要約すると、キングは親からの電話の苛立ちをトレーナーさんにぶつけてしまったことを後悔していて、トレーニングで顔を合わせるのも気まずいってことらしい。
    「……どうってことはないくだらない私の意地だってことぐらいわかってるわ。それでも、少し頭を冷やしたかったの」
    「……キングは真面目だねぇ。でもその口ぶりだとトレーナーさんが怒ってるとかじゃないんでしょ?それならそんなに気にしなくてもいいんじゃないの?」
    「……むしろ怒ってくれたほうが気が楽だったわ。こんなの、無抵抗な相手を一方的に攻撃してるだけじゃない。子どもの癇癪だわ」
    「………………」
    キングの言葉を受け、しばし考える。
    キングの悩みの原因は子どもみたいに怒りをぶつけたことだけじゃないな、と当たりをつける。
    「……よし。キング、あれやってよ。いつもの権利をあげるわ!ってやつ」
    「いつものやつでくくらないでよ!それにあなたはそんなの関係なく好き放題じゃないのよ!」
    「まあまあ、私に権利をちょうだいよ」
    「……なんの権利が欲しいのよ。あなたに全権託すなんて怖くてたまらないわ」

  • 85さくら◆QadlXyrFEc22/05/20(金) 02:40:54

    「信用ないなぁ、私……では改めて、今日一日キングをエスコートする権利がほしいな!」
    「はぁ!?今日一日って……私もあなたもトレーニングがあるでしょ!?」
    「いいからいいから、行こ!」
    私はキングの手をとって走り出す。
    「ちょっと、何考えてるのよ!トレーニングに出ないと……」
    「そんな気の抜けた状態でトレーニングなんて下手したら怪我するよ。リフレッシュだよ。それに……」
    私は行き先を考えながら走りつつ、言葉を続ける。
    「これは先輩としての言葉になるんだけど、急いでも焦ってもいきなり大人にはなれないもんだよ。それならそれで開き直って、今は悪ガキやっちゃいましょう!」
    キングは何かを言おうとしてそれを飲み込み、それから苦笑して、
    「……仕方ないわね。今回は乗ってあげる。そそのかされてあげるわ!」
    「それでこのあとお互いのトレーナーさんに一緒に怒られよう。そのとき、私を売らないでよ?」
    「なんでよ!今回は徹頭徹尾あなたに責があるわよ!」
    その後、競技者でもなく大人ぶるわけでもなく、年相応の少女として遊び回った。
    「……キングがサボりなんて、失望されたかしら」
    「わがままは子どもの特権だよ。今のうちに使っとかないと。それに、一流さんはこんなことでキングを見放したりなんてしないよ」
    「子どもの特権……って、一流さんって誰のことよ!人のパートナーに変なあだ名をつけないでよ!」
    「にゃはは、今度はスペちゃんたちも誘ってみんなで来たいねー」
    「……そうね、そこだけは同意しておくわ」
    ……多分これ、私あとでダブルで怒られるんだろうな。
    まあそれを今気にしても仕方ないし、今は楽しむのです。

  • 86さくら◆QadlXyrFEc22/05/20(金) 02:41:26

    おまけ

    「それで、昨日わざわざ起こしにいったのに君の姿がなかったことに申し開きはあるか、スカイ?」
    「……いやー、気が変わって別の公園で昼寝してしまいまして……連絡を忘れちゃってすみませんでした」
    「……まあいいや。君がサボるためにそういう嘘をつくとは思えないし、そういうことにしておくよ。その代わり、今日はみっちりトレーニングに取り組んでもらうからな」
    「うぇー……まあ私のミスですし甘んじて受けます。その代わり、トレーニング後に膝枕でお昼寝させてくれませんか?」
    「そろそろ暑くないか!?」
    トレーニング室から見えるトラックで、キングとそのトレーナーさんが仲良さそうにトレーニングしている様子が見えた。
    私のおかげ、なんてうぬぼれたことは思わないとしても、私にとってその光景は素直に嬉しいものだった。

  • 87二次元好きの匿名さん22/05/20(金) 09:09:50

    良き!

  • 88二次元好きの匿名さん22/05/20(金) 12:11:49

    セイちゃんとキングの関係性いいよね

  • 89二次元好きの匿名さん22/05/20(金) 20:14:29

    保守

  • 90二次元好きの匿名さん22/05/21(土) 00:18:38

    保守

  • 91さくら◆QadlXyrFEc22/05/21(土) 02:06:29

    >>4


    「つかぬことをお聞きしますが、トレーナーさんってキャンプ経験とかあります?」

    「ん、キャンプ?したことないけど……どうかしたのか?」

    「いやですね、フラワーがキャンプに行ってみたいって言っててさ。私は海はともかく山は専門外なもので、トレーナーさんが経験ありならご教授いただきたかったんです」

    「なるほどな。ゴールドシップの……いや、あそこのはまともなのじゃなさそうか。ヒシアケボノのところとかマンハッタンカフェのところ……天体観測するならアドマイヤベガのとこもあるかもか。まともなキャンプセット持ってたりしないか、今度トレーナーに相談してみるよ」

    「えっと……担当してるウマ娘さんの脚質も適正距離もバラバラなのに全員知り合いなんですか?トレーナーさんって意外と顔が広い……?」

    「担当持ちのトレーナーなんて少しでもウマ娘のために何かしたいと考えるものでな。君たちがどんな感じかは知らないけど、トレーナー同士はけっこうチームプレーみたいになってるところもあるんだよ。お互い助け合って、みたいなね」

    「よそのウマ娘からトレーニングのヒントを得てくることが多いのもそういうことでしたか……交流あるの同世代のスペちゃんのトレーナーさんたちくらいかと思ってましたよ」

    「そうなってくるといよいよ保護者会みたいにならないか……?いたっ!脛を蹴らないで!」

  • 92さくら◆QadlXyrFEc22/05/21(土) 02:07:59

    「表現として間違ってないかもですけど……」
    トレーナーさんが保護者っていうのは……というより、保護される子ども扱いされてるのが気にくわない。
    「保護者会は悪かったよ。とすると……恐妻家の、じゃなくてあいさって痛い痛い!」
    「わざとでしょ!雲みたいに温和な私を恐妻扱いはひどいですよ!」
    「温和な子は脛を蹴らないよ!……とまあ、他のところはどうなんだろうな。勝手にトレーナー側が尻に敷かれてることにしちゃったけど」
    「トレーナーさんもどんな感じか知らないんです?」
    「君たちも友達だからって大っぴらにどんなつきあい方をしてるかなんて話さないだろう?わかるのはみんながみんな自分のところのウマ娘が最強で最高だと思ってるってことぐらいだよ」

  • 93さくら◆QadlXyrFEc22/05/21(土) 02:08:13

    「最強で最高……それ、トレーナーさんもですか?」
    「もちろんだ」
    こういう直球に強いんだよな、この人……妙に素直というか……
    恥ずかしいので話題を戻そう。
    「……まあ、キングのところはトレーナーさんが尻に敷かれてるとは思いますよね」
    「……容易に想像できるな。そして奴もそれをよしとしてる感じがする」
    「キングも根はいい子だから最終的にはおしどり夫婦になりそうですけどね。そこにくるとスペちゃんのところは最初から最後まで素直な関係でしょうねぇ。スペちゃん屈託がないし」
    「………………」
    「……なんですかその目は。どうせ私は素直じゃないですよーだ」
    「僕としては君の素直じゃないところが好きだからそのままの君がいいんだけどな。素直になってくれたらそれはそれで嬉しいけど物足りないかもな」
    「むむむ、さっきから恥ずかしいことをペラペラと……」
    やられっぱなしは悔しいので反撃に移る。
    「……そういえばトレーナーさん、恐妻家とか愛妻家とか、私たちが妻になることは確定事項みたいに言ってましたね。それだけ言うってことは、幸せにしてくれるのを期待してもいいんですかねぇ」
    「同意なしに勝手に言ったのは悪かったかな……でも、君を幸せにすることは約束するよ。他のトレーナーたちもそれは一緒だと思うから友達のほうも安心していいと思う」
    「もう、本当直球には強いなぁ。……じいちゃんが元気なうちに、花嫁衣装を見せてあげたいんです」
    「スカイ……ああ、約束だ!」
    考えてみるとこの前キングに言ったのと逆のことしてるな、今日。子ども扱いに怒ったり、今じゃなくて未来のことを考えたり。
    でもまあ、子どもはえてして背伸びをしたがるものでもあるし。
    子どもや家庭はまだ想像がつかないけど、花嫁衣装はギリギリ想像の手が届く範囲にある。それが今の私のせいいっぱいの背伸びということで、ひとつ。

  • 94二次元好きの匿名さん22/05/21(土) 08:42:09

    来てる!

  • 95二次元好きの匿名さん22/05/21(土) 13:48:55

    良き良き

  • 96二次元好きの匿名さん22/05/21(土) 19:40:58

    早めの保守!

  • 97二次元好きの匿名さん22/05/21(土) 23:53:12

    保守

  • 98さくら◆QadlXyrFEc22/05/22(日) 01:29:16

    >>4


    「スカイ、君の言い分を聞く前に僕の現状を話させてもらおうじゃないか。トレーナー室で作業中だった僕は保健室からの君を引き取りに来てほしいって連絡を受けて急いできたわけだ」

    「それはそれは心配をおかけしてすみません。来てくださってありがとうございます」

    「何があったのか、トレーナーの手が必要な事態ってなんなのか、それは心配だったよ。……なのにいざ来てみれば明らかに元気になってる君がベッドから動かないから説得に来てくれって話だったんだけど、僕の今の心境がわかるか?」

    「うーん、いくら一心同体のトレーナーとウマ娘といえど、完全にお互いのことを理解するのは難しいですからねぇ」

    私は寝返りをうちながら返事をする。

    「2」

    「2?なんの数字ですか?」

    「仏の顔の残りだよ。今大人しくここを出るって言うなら水に流そうじゃないか」

    「……ギリギリを攻めたい気持ちもありますが……後が怖いので従いますよ。トレーナーさんのお仕置きはもう勘弁ですからね」

    「保険の先生がいる前で滅多なことを言うなよ!なにもしてないだろ!」

    「ってわけでお世話になりました~!また来ますね~」

    「ちょっとスカイ!……うちのウマ娘がご迷惑を……」

    トレーナーさんの追撃を食らう前にそそくさとトレーナー室に移動する。

    まだ頭痛が治ってないのが先生にバレても面倒だし、ボロが出る前に撤収撤収、と。

  • 99さくら◆QadlXyrFEc22/05/22(日) 01:29:54

    「……大人しく、はなかったけど素直に保健室を出たから約束通り水に流そう。それで、なんで保健室に行ってたんだ?初めからサボりのつもりではなかったんだろう?」
    「トレーナーさんも大概甘いですよね。利用させてもらってる私が言うのもなんですが……実は、頭が痛くて休ませてもらってたんですよ。そしたらベッドが思いの外気持ちよくてつい長居しちゃいまして……あ、本当ですからね!事ここに及んで嘘はつかないですからね!」
    「……まあ君はここで嘘はつかないよな。頭痛は仕方ないし自己判断で保健室で治してくれたのもいい判断だと思う。思う、んだけど……頭痛は治ったのか?元気そうには見えるけどそこは嘘をつく可能性があるから確認しておきたい」
    「……買いかぶり過ぎですよ。そんな堂々と休める口実を私が……手放すと思いますか?」
    「今も言葉に間があったし、何より君は内のノリと外のノリを分けるタイプだろう。保険の先生がいる前であんなことを言ってたあたり本調子とは思えない」
    「……全く、妙なところ鋭いんだから。そうですよ、今も実はまだ痛みが続いてます」

  • 100さくら◆QadlXyrFEc22/05/22(日) 01:30:11

    「わからないな。ならなんで元気な振りなんてしたんだ?今にしたってトレーナー室にわざわざ来る意味もわからないし」
    「……私だって保健室を我が物顔で使ってた罪悪感がありまして。その罰として我慢してトレーニングを受けるぐらいは覚悟してましたので」
    「答えになってるようななってないような……まあ、そんな状態の君をトレーニングさせるわけにはいかない。今日は休みだよ」
    「すみません。トレーナーさん……」
    「早く帰って休みなさい。長引くようなら病院に連れていくから連絡してくれ」
    「……今痛みの波が来てるのでちょっと休んでいってもいいですか?」
    「ああ。ひと眠りしたほうがいい場合もあるしな。ソファーを倒すから待っててくれ」
    元気な振りをしたのはトレーナーさんに迎えに来てほしかったから、なんて理由は話せるわけもないし。
    心配をかけたくないから元気な振りをしようとしたのに、保健室からの連絡が不十分で余計に心配をかけちゃってるし、見透かされてるしボロボロだなぁ、私。
    そもそもトレーナーさんなら変な芝居なんてしなくても来てくれるよね。保険の先生にも謝らないと。何から何まで空回りじゃん。
    「おいで、スカイ」
    でもまあ。
    トレーナーさんの膝枕で寝られる幸せに巡り会えたから、それでよしとしようじゃないか。
    「トレーナーさん……ごめんなさい」
    「体調不良を隠すのと保険の先生に迷惑をかけるのをこの先しないのなら、それでいいよ」
    「トレーナーさんは本当に優しいなぁ……」
    「……君の言ってた通り甘いだけだよ」
    トレーナーさんが優しく頭を撫でてくれるので、私も安心して眠りについた。

  • 101二次元好きの匿名さん22/05/22(日) 09:08:13

    良いなぁ…
    乙乙

  • 102二次元好きの匿名さん22/05/22(日) 18:24:45

    早め保守

  • 103二次元好きの匿名さん22/05/23(月) 00:01:29

    追い保守

  • 104さくら◆QadlXyrFEc22/05/23(月) 02:19:24

    >>4


    「さて、今日のトレーニングは終わりなわけだけど、君から何かあるか?スカイ」

    「特にないですね。それじゃあお疲れ様でーす……の前にトレーナーさん、明日のトレーニングメニューを教えてもらえます?」

    「ん?とりあえず今のところはスタミナをつけるためのプールトレーニングの予定だけど……どうかしたのか?」

    「いえいえ、気になっただけなんですけど……プールかぁ」

    「プールは嫌だったか?それなら他のスタミナ強化メニューに変えることもできるけどそっちのほうがいいか?」

    「いえいえ、最近ちょっと水着がキツくなってきてまして……体重は増えてないはずなんですけどねぇ」

    「キツいって一言に言ってもいろいろあるけど……さすがに深掘りして聞くのは悪いしな。普通の水着ならレシートを出してくれたら練習経費で落とせるから安心してくれ」

    「それはありがたいですねぇ!……トレーナーとしては100点満点の答えだと思いますけど、彼氏としての答えはそれじゃないと思うんですけど……」

    「え、えぇと……君はどんな水着でもきっと似合うよ、とか?」

    「0点……ってほどではないけどわりとひどいですよ!彼女が水着を買いに行くんですよ!一緒に選びに行きましょうよ!」

    「といっても競技用の水着だしそんなに種類があるわけじゃないだろ?それに行ったことないからわからないけど男がついていっていいところなのか?」

  • 105さくら◆QadlXyrFEc22/05/23(月) 02:19:52

    「なんて言うんだよ!ひどくない!?ねえキング!」
    「……私も予備の水着が欲しかったところだし付き添うのはやぶさかじゃない。そういう意味ではキングのお供を務めてくれることに感謝の言葉をあげてもいいわ……だけど、いい加減その愚痴はやめてもらえないかしら?キングの耳にタコができそうよ」
    「だってだってさあ!そうだ、キングのところはどうだったの?一流さんならついてきてくれるんじゃないの?」
    「だから人のパートナーを変なあだ名で呼ぶんじゃないわよ!そもそも今回の件はあなたがめんどくさい、それだけの話なのよ!」
    「ええ、私ってめんどくさい……?」
    「自覚なかったの!?あなたはトレーナーと付き合いはじめてから彼が気の毒になるくらいめんどくさいわよ!」
    「そんな……嫌われたくない、嫌われたくないよ……」
    「あーもう今日のあなたはどう転んでもめんどくさい!あなたなんかを選ぶ物好きなんだから、そのぐらいで今さら嫌わないでしょう!あなたの恋人をちょっとは信じてあげなさいよ!」
    「キング……」
    「はぁ……あなたってば本当自己肯定感が低すぎるのよ。あなたはこのキングと並んで語られるほどのウマ娘なのよ?自信を持ちなさいな」
    「………………」
    「とりあえず明日トレーナーに謝ることね。それでついでに水着の感想でも聞いてやればいいのよ。キングがあなたの魅力を際立たせる最高の水着を見立ててあげるから」
    「……ありがとね、キング」
    「しおらしいあなたは調子が狂うのよ。いつもの憎たらしいスカイさんのほうがマシよ」
    「言ってくれるねぇ……でもそうだよね、構ってほしいなら魅了してやるぐらいのつもりで、ってことだよね!行こう行こう!はやく一流の選ぶ水着が見たいな~」
    「そこまでは言ってな……ちょっと!待ちなさい!」
    その後二人で楽しく水着を選んだ。
    水着がキツくなってた理由は……恥ずかしいから言わない。

  • 106二次元好きの匿名さん22/05/23(月) 08:25:44

    乙女だなぁ

  • 107二次元好きの匿名さん22/05/23(月) 12:40:09

    乙乙でしたー

  • 108二次元好きの匿名さん22/05/23(月) 18:22:21

    セイちゃん水着が...

  • 109二次元好きの匿名さん22/05/24(火) 00:22:19

    胸かな?

  • 110さくら◆QadlXyrFEc22/05/24(火) 01:45:11

    コピーミスってメモが消えたんで今日は休ませてください……
    今から書き直す元気ない……

  • 111二次元好きの匿名さん22/05/24(火) 07:10:47

    あらら
    了解です!

  • 112二次元好きの匿名さん22/05/24(火) 12:43:51

    保守です

  • 113二次元好きの匿名さん22/05/24(火) 23:07:49

    ほしゅ

  • 114さくら◆QadlXyrFEc22/05/25(水) 01:40:30

    >>4


    「最近は当社比とはいえ真面目にトレーニングしてくれて助かるよ。明日もよろしくな、スカイ」

    「一言多いですがまあよしとしましょう。お疲れ様でーす。そうだ、汗かいちゃったしここで着替えてってもいいですか?」

    「ああ……ああ!?いいわけないだろ!何言ってんのスカイ!?」

    予想通りのリアクション。食いついた感触に内心笑みを浮かべる。

    「いやー、わざわざ更衣室まで行くの面倒で。ね?いいでしょ?」

    「いやいや僕いるし!窓あるから外から見えるし!恥ずかしいだろ!?」

    「えー、カーテン閉めたら大丈夫ですよぉ。それに、トレーナーさんになら、見られちゃってもいいですよ?」

    「……変なこと言ってないで早く帰りなさい」

    ここぞとばかりにたたみかける。今日は勝てる戦だ。頑張れ私!

    「ひょっとしてトレーナーさんには刺激が強すぎますかねぇ?にゃは、ドキドキさせちゃってすみません。大人しく更衣室まで行くとしますね……トレーナーさん?」

    そろそろ十分なので引き上げようとしたところ、トレーナーさんがおもむろに立ち上がり、カーテンを閉めはじめた。

    「トレーナーさん?……いきなりどうしたんですか?」

    「……これで外からは見えないし着替えてもらっていいよ。さ、いつでもどうぞ」

    「ええと、トレーナーさん?」

    「僕には見られても平気なんだろう?担当ウマ娘のコンディションを理解するのもトレーナーの立派な仕事だからな。僕には刺激が強すぎるかもしれないけど逃げずに頑張るよ」

    「いや、その……」

    「どうしたスカイ?見られても大丈夫なんだろう?ほら、いいよ」

    ……………………

    「…………やーめた」

    「スカイ?」

    「ひょっとしてトレーナーさん、真に受けちゃいました?やだなぁ、冗談ですよぉ。期待させちゃってすみません。お疲れ様でーす。そうだ、閉塞感あって嫌だからカーテン開けといてねー」

    「スカイ……もうこういうのやめない?ってもういないし……」

  • 115さくら◆QadlXyrFEc22/05/25(水) 01:40:42

    「もう、どこから突っ込めばいいのかしら……まずあなた、食いつかせてどうしたかったのよ。自分で勝利条件のわからない負け戦なんてなんで仕掛けるのよ」
    「……負けてないし。たしかに勝利とは言えないかもだけど負けてないし」
    「今回の件に限ればあなたのトレーナーもトレーナーよ。一歩間違えばクビになりかねない。まああなたが最後までやる勇気も出るとこに出るつもりもないと判断したのでしょうけど」
    「言ってくれるじゃん。ちょっとぐらい歯に衣着せてよ。せっかく相談料のコーヒー奢ってるんだからさ」
    「なるほど、一理ぐらいはあるわね。そうね……スカイさん、もうトレーナーに変なこと仕掛けるのやめなさいな」
    「変なことって何!?私はトレーナーさんをドキドキさせたいんだよぉ!」
    「なら変化球をやめなさい!あなたは今自分が恥ずかしくない代わりに行き止まりの道に突っ込んでるのよ!さっきも言ったけど今回あなたはトレーナーにどうしてほしかったのよ!」
    「………………」
    「ほら、答えられないじゃない。短絡的な色仕掛けなんて成功しても失敗してもろくなことにならないんだから、どこをゴールにするかから作戦を立てなさいな。トリックスターなんでしょ?あなた」
    「ハードルを上げてくれるなぁ……てか、キングのところはどんな感じなの?一流さんをたらしこむ手練手管を教えてよ」
    「また変なあだ名を……いや、もうそこは諦めるわ。時間の無駄。……それを聞きたいなら、別料金よ」
    「えぇー?太るよ、キング」
    「張り倒すわよあなた!」
    ともあれ課題は山積みのようで。
    無意味なちょっかいは時間の無駄なのかもしれない。あと財布も痛いし。

  • 116二次元好きの匿名さん22/05/25(水) 01:48:31

    可愛いねぇ

  • 117二次元好きの匿名さん22/05/25(水) 08:32:02

    とてもいい…

  • 118二次元好きの匿名さん22/05/25(水) 12:36:05

    保守

  • 119二次元好きの匿名さん22/05/25(水) 17:58:48

    保守

  • 120二次元好きの匿名さん22/05/26(木) 00:06:59

    保守

  • 121さくら◆QadlXyrFEc22/05/26(木) 02:49:16

    >>4


    「この時期になるともう桜の花も残ってないですねぇ。お花見とかしたかったんですが」

    「葉桜でよければ付き合うよ。敷物も前に買ったのがあるし、花見を口実にくつろぐのもいいだろう?」

    「ふむふむ……それはたいへん魅力的ですねぇ。ですが私の言うお花見というのは情報収集を目的としたウマ娘主導のものでして。葉桜で人を集めるのはなかなか難しいでしょうしねぇ」

    「あー、そういえば前にもそんなことをしてたような……君が主催してるのか、あれ?」

    「それだと来てくれない人がけっこういるだろうということで……あえて主催者をボカして有志でって体でやってますよ。まあ主に糸を引いてるのは私ですけど」

    「なるほど……ふとした疑問だけど生徒会からの注意とかは大丈夫か?あんまり大きくしすぎるとマズいんじゃ?」

    「大丈夫ですよ。基本的に会長さんは自主性を重んじる人ですし。まあやりすぎるとマズいかもですが……特に会長さんにはお見通しなんだろうな、私の存在」

    「悪いことをしてるわけじゃないんだし問題ないだろう。それで葉桜の花見、やるか?」

    「そうですね、トレーナーさんが誘ってくれたのも嬉しいですし……やりましょうか!どうせなら私たちの世代ぐらいは誘ってやりません?トレーナー陣も呼んで、ペンタデートということで!」

    「聞き慣れない言葉だな、ペンタデート……して、その心は?」

    「もったいぶっても時間の無駄ですかね。目的は大きくひとつ。私たちの中での探り合いですよ。私が主導するからこそキングやグラスちゃんはそういうことだと察するでしょうし、逆にスペちゃんやエルあたりもトレーナーさんがついてることで気づいてくれるでしょう」

  • 122さくら◆QadlXyrFEc22/05/26(木) 02:49:48

    「えっと、ちょっと待ってくれ。気づかれていいのか?君の目的が情報を掠めとることなら、気づかれてるのはマイナスにしかならないだろう」
    「……まあピンとこない話だよねぇ。ここからはトレーナーさんのことを無視してるけど、私の本心を……まあ感情論も混じるんだけど話すから素直に聞いてほしい。ここで嘘をつかないことを、約束するよ」
    「……聞かせてくれ、スカイ」
    「では僭越ながら。私はみんなが好きだ。ずっと走っていたいぐらいに、ライバルとして、友達として。さらに今はまだシニア期が始まったばかりだし、これからも、私たちはぶつかり合っていくことになるだろう」
    「……回避しようとしなければ、そうなるな」
    「その上で私の能力は……どう贔屓目に見てもみんなに勝ってるとは言えない。ならどうするか、作戦で勝つしかない。そこのところは、トレーナーさんも同意してもらえると思う」
    「僕としては君が劣ってるだなんて思わないし、思いたくもないが……強者を倒すには策を弄する必要があることは認めるよ」
    「その上で腹の探り合いであることがわかってるであろうみんなに、私が何かを考えてることをほのめかす。ここで嘘なんかつかない。今後使うつもりのある作戦を教える。そこまで含めてが、私のみんなに対する誠意だと思ってくださいな」
    「……要するに、君はみんなを出し抜こうとしてるんじゃなくて……」
    「はい。出し抜くとか抜け駆けするんじゃなく、これから戦っていくライバル同士の近況報告みたいなものがしたいなと。それに、作戦を教えたからってキングやグラスちゃんあたりは絶対に素直には受け取らないだろうからね。そこまでマイナスがあるとも思ってないよ。不確定要素を相手に与えることは、相手を有利にするだけじゃないってわけ」

  • 123さくら◆QadlXyrFEc22/05/26(木) 02:50:03

    「それをした上で、周りの現在の能力を見たいってわけか。……なるほどな、これはトレーナー陣としても予定を調整してまで参加する必要があるだろうな。五人でこれから平等な条件で戦うために、な」
    「策士としてのセイウンスカイはこの葉桜の花見に反対してる。でも、みんなの友達のセイちゃんが言うんだよ。みんなと同じ条件で戦いたいって。その上で前評判をひっくり返して私が勝ちたいって」
    「……トレーナーとして反対する理由はない。やろう!僕も手伝うよ!」
    「ありがとうございます!……でもトレーナーさんには他にしてほしいことがありまして」
    「?何をすればいい?」
    「……この同期会が終わった後の、二人きりの葉桜花見デートの予定をお願いします」
    もちろん別腹だから。
    みんなはこれからも強くなる。それでも全部ひっくり返して最後に笑うのは、私だ。

  • 124二次元好きの匿名さん22/05/26(木) 07:24:18

    ギラギラだなぁ

  • 125二次元好きの匿名さん22/05/26(木) 13:16:56

    いいなぁ

  • 126二次元好きの匿名さん22/05/26(木) 22:26:21

    デートの取り付けするの策士

  • 127二次元好きの匿名さん22/05/27(金) 00:49:49

    保守

  • 128さくら◆QadlXyrFEc22/05/27(金) 02:00:45

    >>4


    「想定外でしたね……」

    「そうだな……」

    時は少し飛んでトレーナーさんとの約束の葉桜花見デート。

    満面の笑みで緑を楽しむ、はずだったんだけど……

    「なあスカイ、自分の作戦を教えてでも手の内を明かし合おうとしてたよな……でも、あの空気ではダメだわ、仕方ないよ」

    「………………」

    言霊というものがあるとするなら我ながら厄介なことを口走ってしまったものだ。

    まさか花見の場がペンタデート、完全に自分の恋人自慢をし合うだけの場になるなんて誰が予想できただろうか。

    私の作戦は話題に上げることにすら失敗し、ただの楽しいだけの会になってしまうだなんて誰が予想できただろうか。

    「……私は負けず嫌いですから。私のトレーナーさんが最高のトレーナーであり彼氏であることを示すことのほうに天秤が傾いちゃったんです」

    策士としてのセイウンスカイはあの場にはおらず、いたのは友達としてのセイちゃんと恋にうつつを抜かす等身大の私だった。

    多分みんなも……みんなのトレーナーさん方でさえもそうであったに違いない。

  • 129さくら◆QadlXyrFEc22/05/27(金) 02:01:24

    「最初に言い出したのはアニマルマスクの野郎だったかスペシャルウィークのトレーナーだったか……僕は競りかけられても抑えてたが一流バカに火がついてのんびりさんも乗ってしまえばもう僕も戦うしかない。自分ならいざ知らず、スカイの素晴らしさを語るには余白が狭いが一番のウマ娘であることを示すことぐらいできるだろうとね。……僕もカッとなってすみませんでした」
    「そのあと飛び火したウマ娘側で私もカッとなってたので気にしないでください。いやー、キングからの攻撃が痛いのなんのって」
    「いつもキングヘイローのところに逃げてるって聞いてるからな。迷惑料と思って甘んじて受けるしかないだろう」
    「ムッとしたので一流さんってあだ名を流行らせてやりました。キングのトレーナーさんには可哀想ですが仕方ないよね」
    「君が一流さんって読んでるのは聞いてたけど、他の子にも流出したか、ドンマイだな……ところで、他のみんなにもそういうあだ名があるのか?」
    「……トレーナーさんのは不名誉なので黙秘権を行使します」
    私が、という不名誉の対象をあえてボカして説明する。
    「僕そんなに女学生にバカにされてるのかよ……凹むな」
    「まあまあ、トレーナーさんの隣には私がいますから」
    「……今はそれでよしとしておこうか」

  • 130さくら◆QadlXyrFEc22/05/27(金) 02:01:56

    「理解のあるトレーナーさんを持てて幸せだなぁ。そうだ、トレーナーさんの足の間に座っていいですか?」
    答えを聞く前に体を押し込むような形で座る。
    「おい、スカイ……」
    「ふふふ、トレーナーさんに囲まれてるみたいでいいですねぇ、これは」
    「……こうも無防備に来られると、試されてるみたいな気分になるよ」
    「……トレーナーさんなら、触ってもいいですよ」
    実際に行使されることがないであろう権利の譲渡。
    今回の作戦のゴールは後ろから抱き締めてもらうことだ。局部に触る勇気がないであろうトレーナーさんはきっとそうやって茶を濁す!
    「それじゃあ……」
    トレーナーさんは、私の尻尾を無遠慮に掴んだ。
    ふぎゃ!みたいなあんまり可愛くない悲鳴が漏れる。
    「デリカシーっていうのもちょっと違うけど!仮に尻尾を触るにしても触りかたってものがあるでしょう!どこの部位であれいきなり鷲掴みにされて不快感を覚えない部位なんてないですよ!トレーナーさんの聞き手とかで試しましょうか!?」
    「ご、ごめん……あまりにふさふさキレイだったからつい触ってみたくなって……」
    「もう……作戦失敗じゃないですか」
    「作戦があったのか?」
    「……トレーナーさんに、後ろからギューッてされるのが落としどころだと思ってました」
    「それぐらい素直に言ってくれたらいくらで
    も」
    トレーナーさんに包まれる。狭く囲われてるにも関わらず、私の心を満たすのは幸福感。

  • 131さくら◆QadlXyrFEc22/05/27(金) 02:02:55

    「いい友達を持ったな、スカイ」
    「トレーナーさんこそ、同僚に恵まれてるご様子で」
    「ふふふっ」「あははっ」
    「……それで、これで終わりでいいのか?もっと甘えてもいいんだぞ?」
    「それなら頭を撫でてください。……この先いくらでもできるんだから、今日ぐらいはのんびりいきましょう」
    「スカイ……そうだな、今日はのんびりスカイを愛でるとしようか」
    これは進んでく道の一歩。平等な条件で戦うなんて方向には舵が向かず、この先も見通しの悪い道を進んでいくことになるわけだ。
    さて、ここに芦毛の猫が一匹。地方によっては吉兆を示すこの猫は飼い主とこれからも苦難の道を戦っていくことでしょうが、心配はいりません。
    なぜなら、彼女はいつか夢で見た未来を信じてるから。そこにたどり着くことができると信じているから。
    この先に待ち受けるのは何度倒しても強くなって起き上がる熊、決して顔を下げず己の道を進む獅子、何度怪我をしても甦る不死鳥、これまでも幾度と記録を残してきた怪鳥。さらにまだ見ぬ強敵たち。

  • 132さくら◆QadlXyrFEc22/05/27(金) 02:03:48

    「芦毛の猫はさまざまな困難に立ち向かい、……って、こういうのいらないかな?」
    「いらないしなんで君が猫なんだ。似てるとはいえもっと強そうな動物にしないのか?」
    「いいんですよ」
    地力の差があることは明らか。しばらくは作戦でなんとかできてもどこかでボロが出るだろう。
    だからそれまでに、猫をかぶった何かになるか、いっそ化け猫にでもなってやるか。
    「課題は山積みですね、トレーナーさん」
    「そうだな、でも今日ぐらいは」
    「わかってきたじゃないですかトレーナーさんも!さあ日向ぼっこでもしてのんびり過ごしましょうか!」
    その瞬間、シートの上で靴下になってた私の足に、トレーナーさんがおもむろにキスをした。
    「ちょっ……トレーナーさん、こういうのは連発したら薄れますよ!わきまえてよ!」
    「それも承知の上で……それでも、戦う覚悟を決める君を支える誓いをもう一度したくなったんだ」
    「……ほいほいキスなんてしてたらそのうち悪魔かなんかと契約しちゃいそうですね」
    「君にしかしないさ。君が悪魔だっていうならそのうちじゃなくて既にだしね」
    「誰が悪魔ですか誰が!」
    勢いをつけて、トレーナーさんの鼻に唇をつける。
    「……人の足につけた唇なんて嫌ですから。これで悪魔と契約はなされちゃいましたよ。そうだな……まずはクレープを買ってきてくださいな」
    「スカイ……わかったよ。味はどうする?いつものでいいか?」
    「それでお願いします!新商品で私が好きそうなのがあればそっちで!」
    「了解!」
    素敵な未来にたどり着くことを信じているのなら、多少時間がかかろうとも関係ない。
    むしろ遠足気分で寄り道しまくりながらゆっくりたどり着いてやる。
    だからまずは。
    「ありがとね、トレーナーさん。それじゃあ一緒に食べましょー!」
    クレープを食べながら日向ぼっこを楽しもうと思う。

  • 133さくら◆QadlXyrFEc22/05/27(金) 02:10:08

    一応区切りの回として書かせてもらいました。
    投稿時間がどんどん後ろにずれてたり、ミスで出来上がったものを消したり、そもそもネタ出しにかかる時間も長くなってきていたりと私生活にも支障が出るぐらい限界が近いので、ここからはほぼ日とスレタイに張った予防線通りに投稿ペースを落とさせてもらえばと思います。
    本家のほぼ日さんはそうは言いつつ毎日更新されてるそうですが……ご理解いただきたく思います。

  • 134さくら◆QadlXyrFEc22/05/27(金) 02:14:17

    このスレの完走まではペース落としつつも頑張るつもりですので引き続きお願いします、と言いつつ無理な保守も必要ありませんので、落ちたら落ちたときぐらいの感じでお願いします
    前スレの帰省と違ってネタがもう枯渇してたらフェードアウトするかもですし、もう来ないだろってなったら落としちゃってください

  • 135二次元好きの匿名さん22/05/27(金) 09:36:52

    >>134

    了解です

  • 136二次元好きの匿名さん22/05/27(金) 12:06:04

    >>134

    了解しました、のんびりとお待ちしております。

    リクエストとか有りなのかな?と思いましたが大変そうなので生活第一にしてください!

  • 137二次元好きの匿名さん22/05/27(金) 16:16:10

    >>134

    無理せずにね

  • 138二次元好きの匿名さん22/05/28(土) 00:23:21

    ごゆっくりと

  • 139さくら◆QadlXyrFEc22/05/28(土) 01:04:45

    みなさんありがとうございます……
    今日はもう体力の限界ですが一番深刻なのネタ切れなんでリクエストはむしろありがたかったりします。
    こういうのが読みたかったってリクエストからずれるかもしれませんがくださったら嬉しいです。

  • 140二次元好きの匿名さん22/05/28(土) 07:53:49

    乙乙です

  • 141二次元好きの匿名さん22/05/28(土) 12:25:34

    >>139

    セイちゃんと動物園にてデートするのはどうです?触れ合いコーナーとかでイチャイチャして欲しい

  • 142二次元好きの匿名さん22/05/28(土) 21:56:15

    保守

  • 143さくら◆QadlXyrFEc22/05/29(日) 00:33:21

    >>141

    さっそくありがとうございます!

    明日にはなんとか……

  • 144二次元好きの匿名さん22/05/29(日) 02:18:48

    リクエスト置いとこ、耳かきされてるセイトレさんがセイちゃんをちょっとからかう話

  • 145二次元好きの匿名さん22/05/29(日) 11:59:32

    保守

  • 146二次元好きの匿名さん22/05/29(日) 15:26:50

    セイちゃんとお祭り行く話

  • 147二次元好きの匿名さん22/05/30(月) 00:07:51

    2人で寝落ちする話

  • 148さくら◆QadlXyrFEc22/05/30(月) 00:52:33

    >>4


    「こないだの水族館もだけど、動物園も久しぶりだなぁ……スカイに誘われなかったら自分からは来なかっただろうし、そういう意味でもありがとうな」

    「いやいや、お礼を言うのはこっちですって。連れてきてもらった上にチケットやお土産まで買ってもらうだなんて、頭が上がりませんよ。よっ!お大尽さま!」

    「ここまだ入り口の前なんだけど……なんか僕の知らない知らない出費予定が確定してるんだけど」

    「社会人と学生だと資産が違いますからねぇ……ここは出世払いということで、どうか!」

    「……じゃあ今後のトレーニング態度の改善に期待する代ということで」

    「やったー!トレーナーさん大好き!愛してる!」

    「ほんと現金だなぁ……って早っ!チケットまだ買ってないのにウマ娘の走力で逃げないで!」

    私が出世する頃まで一緒にいることは疑ってないトレーナーさんに少し胸が温かくなった。

    なって……テンションが上がりすぎて変なこと言っちゃったからトレーナーさんがチケットを買ってくれてる間に顔の火照りを冷ます。


    「まったく……その走力をトレーニングで活かしてもらえないものかね」

    「いやーすみません……私の中の子どもな私がはしゃいじゃいまして。トレーナーさんは何から見たいとかあります?」

    「君の希望で来たんだしスカイの回りたい順番でいいよ。あと熱中症対策兼変装なんだから帽子はちゃんと被りなさい」

    「窮屈なの苦手で……トレーナーさんの貸してくださいよ」

    「僕のか?サイズはともかく耳の穴も空いてないしよけい窮屈なんじゃないか?」

    「トレーナーさんのだから我慢できるんですよ。彼シャツならぬ彼キャップです」

    「なんじゃそりゃ、と言いたいが君が被ってくれるならまあよしとしようか」

    「あ、トレーナーさん!サンバイザー売ってますよ!私ライオンがいいのでトレーナーさんはゾウさんにしましょう!」

    「今日の君五歳ぐらいになってないか!?」

    トレーナーさんに二人分買ってもらい、結局順路に沿って回り始める。

    彼キャップもいいけど、お揃いを身につけるのに比べたら敵わない。

  • 149さくら◆QadlXyrFEc22/05/30(月) 00:53:12

    「ゾウにしてもキリンにしても、小さいときに見たきりだからか思ったより小さく感じるな。スカイはどうだ?」
    「同感ですね。こんなところで年齢を実感するとは……」
    「君はまだ老いじゃなくて成長なんだから胸を張ってたらいいよ」
    「……ナチュラルに子ども扱いされてて不服です」
    「そう言うなら今日のはしゃぎっぷりを省みてほしいな。……次はライオンか」
    「おお、いいですね!ネコ科の動物は特に好きですよ!」
    「やっぱりか。それにしても動物園の花形だけあって人が多いな。日曜なのもあるだろうけど」
    「トレーナーさん、肩車してくださいよ」
    「僕が許可するしないの前に恥ずかしくないか?」
    「……いじわる」
    人が流れてようやく私たちの番が回ってきた。
    「うわぁー、ってテンション上げたはいいものの……のんびり寝てますね」
    「オスは意外とゴロゴロ寝てるって言うからな。あ、あくびしてる」
    「こうやって見てると見かけはゴツくても猫ですねぇ……そうだ、写真撮ってくださいよ写真!」
    「ん、フラッシュたかなければ大丈夫だな。いいよ、スマホ貸して」
    私たちは交代交代でライオンと写真撮影をした。
    「この力強いライオンの姿からスカイのトレーニングに活かせそうな何かを……」
    「そこまで来たら職業病ですよ!楽しいお休みなんだから仕事は忘れて!」
    続くネコ科ゾーンの野生を忘れた大型猫ちゃんたちを見ながら歩く。
    「いいなぁ、寝てるだけでご飯にありつけるなんて……理想の生活のひとつの形じゃない?これ」
    「僕はスカイが見せ物にされるのは嫌だな」
    「見られるぐらい許容範囲ですって。学校で寝てるところ撮られるのも慣れてきましたし」
    「なんだそれ。欲しい」

  • 150さくら◆QadlXyrFEc22/05/30(月) 00:54:43

    トレーナーさんからの予想外に直球な反応に嬉しくなる。
    「キングヘイロー……いや、スペシャルウィークあたりに頼めば貰えるかな……」
    「そんだけ欲望垂れ流しといてなんで本人に直接来ないんですか!勇気だしてくださいよそこは!」
    「君が言うなよ!……それで、撮らせてもらえないか?待ち受けにするから」
    「……撮影料としてスイーツかトレーニングお休みで手を打ちましょう」
    闇取引をしながら進み、目玉イベントのコーナーにたどり着く。
    「へえ、ふれあいコーナーか。……こういうの、楽しそうだけど年を取るとおっさんが行ってもいいのかなって気持ちが先に立つんだよな」
    「今は私がいるんだから大丈夫でしょ。行きますよ!……そんなに老けてないし」
    さっそく係員さんの指示に従い、ウサギを膝の上にのせてもらう。
    「ほおぉ……ふわふわしてて温かい……」
    「気持ちはわかるけど語彙力が下がってるぞ、スカイ」
    「でも私はネコ派だから……ウサギに心を許すわけには……」
    「なんの戦いだよそれは。どっちも可愛いでいいだろう」
    続くモルモットの誘惑にも打ち克ち、お土産コーナーへと向かう。
    「君が来たがってたのになんで何かと戦ってたんだよ。素直に楽しもうよ」
    「だって……ここで100%でウサギやモルモットを可愛がってしまったら、公園のあの子達に顔向けできなくなる気がして……」
    「それは義理堅さとも違うような……ところで、モルモットって聞いちゃうと同僚の顔が……ごめん、水差すのはよくないよな」
    「そのうち七不思議の一つに数えられそうですよね、あの人」

  • 151さくら◆QadlXyrFEc22/05/30(月) 00:54:58

    「……それで、お土産ではがっつりウサギのぬいぐるみをねだってくるのはどうかと思うんだよ」
    「ぬいぐるみならいいんですよ。命がないから」
    「君のラインはよくわからないな……他のはともかくぬいぐるみは君が抱えてくれないか?おじさんが持つには可愛すぎるんだよ」
    「仕方ないなぁ……それにしても楽しかったね、トレーナーさん。今までは海派でしたけど陸も悪くないなと思いましたよ」
    「今日は妙な派閥にこだわるな」
    「トレーナーさんはどっち派です?」
    「海でも陸でもなく空派だな」
    「空?鳥とかですか?」
    「いや、芦毛で気ままな可愛い女の子だよ」
    「……っ!そ、そういう不意打ちはっ!」
    また来ようと約束をしながら帰路につく。
    翌日、動物の動きを取り入れたトレーニングを考案してきたときはさすがに恐怖が勝ったけど……それは別の話ということで。

  • 152さくら◆QadlXyrFEc22/05/30(月) 00:57:31

    141さんのリクエスト書かせてもらいました!ありがとうございます!
    自分の中のふれあいコーナーの引き出しがなさすぎてこういうのではない気がする……と思いながら書いてました。お口にあいますように……
    他の皆さんもリクエストありがとうございます!上から順番に書いていきますので気長にお待ちいただければ……

  • 153二次元好きの匿名さん22/05/30(月) 08:27:09

    デート可愛いなぁ

  • 154二次元好きの匿名さん22/05/30(月) 12:25:43

    前に読んだセイちゃん一家のお話が良かったので、福引で当てた例の温泉宿に今度は家族で泊まるって話が見てみたいです

  • 155二次元好きの匿名さん22/05/30(月) 16:31:28

    めっちゃ好きセイウンスカイ派なんだなトレーナーは!

    電車でうたた寝しちゃうセイウンスカイとかどうです?

  • 156二次元好きの匿名さん22/05/31(火) 01:26:57

    結婚式でサプライズするセイちゃん(トレーナーさんでも)が見たい!

  • 157二次元好きの匿名さん22/05/31(火) 07:41:37

    朝保守

  • 158二次元好きの匿名さん22/05/31(火) 12:25:45

    ご無理なさらず、のんびりとお待ちしてますね

  • 159二次元好きの匿名さん22/05/31(火) 14:43:59

    保守やで

  • 160二次元好きの匿名さん22/05/31(火) 17:57:01

    あげ

  • 161二次元好きの匿名さん22/05/31(火) 22:17:40

    図工とかで工作するトレセイ

  • 162二次元好きの匿名さん22/06/01(水) 01:33:37

    生徒会の手伝いするトレセイ

  • 163さくら◆QadlXyrFEc22/06/01(水) 01:54:57

    「本当にやるのか!?担当にそんなことさせるなんてやっぱり……」
    「ここまできて往生際が悪いですよトレーナーさん!ほら横になって!」
    私たちがこんなやりとりをかれこれ五分も続けている理由はというと。

    「トレーナーさん、耳掻きとか興味ありません?」
    「耳掻き?ええと……やっぱり自分の耳と構造が違うし、傷つけるのが怖いから……」
    「うーん?どういう……って!いくら私でもトレーナーさんに耳掻きを頼むほど堕落してはいませんよ!失敬な!」
    「いやそこまでは言ってないって……君が言ってるのはスキンシップとしての耳掻きってことなのかな?」
    「そうそう!私の膝枕で耳掻きされるの、ちょっとよさそうだと思いません?」
    「……魅力的なのは認める。認める、けど……ここは仮にも指導者として越えちゃいけないラインな気がする」
    「指導者としてアウトでも恋人同士なら余裕でセーフでしょう?ね?ちょっとだけでも、どう?」
    「……こういうことをしてそうなのは……おしとやかなグラスワンダーあたりからヒントをもらったか?」
    「ざんねーん、キングが耳掻き上手って話から……って、そういう話じゃなくて!据え膳食いましょうよ男なら!」
    「わざとだろうけど毎度毎度誤解を招くんだよ君の言い方は!そのうち僕が捕まるわ!」
    「私だってTPOは弁えてますよ。さ、どうぞどうぞ」

  • 164さくら◆QadlXyrFEc22/06/01(水) 01:55:35

    ってな感じで交渉難航中。
    押し押しでなんとかいきそうなところまでは来たけど、トレーナーさんの土俵際で粘ること。
    「……そうだ!こんなのやめて今日はトレーニングなんて休んでデートにでも行かないか?今日は特別だぞ!」
    「指導者としてどうとか言ったくせにそれはないでしょ!そんなに嫌ですか!?」
    「嫌というか……なんというか……」
    「?妙に歯切れが悪いですねぇ」
    「……認めるよ。恥ずかしかったんだ。でもここまでごねるのも男らしくない!一思いにやれ!そして地獄のトレーニングだ!」
    「いや、盛り上がるのはいいんですけど恋人同士のスキンシップに挑むテンションじゃないですよね……?それに地獄のトレーニング!?」
    「それじゃ、膝を借りていいか?」
    「こういうところは理性が残ってるの、逆に怖いですね……私としてはもっと気楽にリラックスしてほしかったんですが……」
    膝にトレーナーさんの頭の重みがかかる。
    「おお……膝枕ってくすぐったいんですね……」
    「ちょっとわかるけど、慣れると相手が信頼を寄せてくれてるって感じて足を貸す方も温かい気持ちになるよ」
    ジャージでよかった。スカートだと生足にトレーナーさんの息がかかってここで逃げ出してただろう。

  • 165さくら◆QadlXyrFEc22/06/01(水) 01:55:50

    「それじゃ、やっていきますよ……って、トレーナーさん普通に耳のなかきれいですね」
    「……予想してなかったところだが、耳のなかを見られるのって普通に恥ずかしいな。素っ裸見られるほうがマシかも」
    「っ!変なこと言わないでくださいよ!手元が狂ったらどうするんです!」
    「うわぁマジで怖い!ウマ娘の力で頭部が破壊されるイメージが浮かぶ!」
    「それが嫌なら大人しく寝ててください。痛かったら右手を上げてくださいねー」
    「歯医者じゃないんだから……それに今左耳見てもらってるから無理だし」
    せっかくなので耳のなかを掻き棒を使ってこそいでみる。
    汚れがなかったとしても人に耳掻きされるのは気持ちがいいとはよく聞く話だし。
    ふと見ると、トレーナーさんの耳が真っ赤になってることに気づく。
    トレーナーさんの安全に配慮し、掻き棒を抜いてからトレーナーさんの耳元で囁く。
    「みみ、真っ赤になってますよ。気持ちよかったですか?」
    「スカイ……耳元では……」
    聞き取れなかったということにして、トレーナーさんの耳に吐息を吹きかえる。
    瞬間、トレーナーさんが飛び起きた。
    予想していた反応の一つであったため落ち着いて回避し、反対側に倒れそうになるトレーナーさんを支える。
    「なっ!えっ!……ええと、まずは支えてくれてありがとう?」
    「変なとこ冷静ですねぇ。私がからかったのが悪いんですから当然の義務ですから」
    「そう考えると最低限のアフターケアな気がしてきた……でも、すごく気持ちよかったよ、ありがとう」
    直球の感謝の言葉に喜びが身体中を駆け巡る。
    「……えへへ」
    「スカイも嬉しそうだな」
    「その……素直な好意を交わし合うのがこんなにいいとは思いませんでした。私はいつも変化球に頼りすぎだったんですねぇ」
    「いや、今回のアプローチは相当な変化球だからな?……それで、だな」
    「なんでしょう?」
    「その……もう片方もお願いしていいか?」
    「もちろんです!喜んで承りますよ!」
    もう片方の耳は真面目に耳掻きをした。
    今回みたいに友達から教えてもらったボールを直球と読んでしまってもいいのか、疑問ではあるけど……真剣な交流でこそ得られる幸福感や充足感もあるもので。
    途中からトレーナーさんの顔まで赤みが差していたけれど、気づかないふりをして耳掻きを続けた。

  • 166さくら◆QadlXyrFEc22/06/01(水) 02:35:19

    おまけ

    耳掻きのやりとりがあってから一週間くらい経ったある日、トレーナー室にて。
    「なあスカイ、ウマ娘の能力改善に効果があるとされるマッサージがあるんだがどうだ?受けてみないか?」
    「マッサージといっても足つぼゴリゴリみたいな罰ゲームみたいなのもあるし怖いですねぇ……大丈夫なやつです?」
    「ああ、言い方が悪かったな。すっきり癒される系のやつだから安心してくれ」
    「えっちなやつでもないですよね?」
    「……成人男性に対する理解としてはそれでいいかもしれないけど、ここに集うトレーナーどもの鋼の意志を無礼るなよ。安心して大丈夫だ」
    「トレーナーさんになら、よかったんだけど……」
    「どこまで本気か知らないけど君が卒業するまでは絶対にそういう方向には進ませんからな。それじゃ、そこのソファーに横になってくれ。うん、仰向けがいいな」
    トレーナーさんの言葉にがっかりしたようなやりがいがあるような気分で私はソファーに横になる。
    「それじゃ、まずは腹筋の要領で上体を起こして……そうそう」
    トレーナーさんが補助をするためか隣に座る。
    「そのままゆっくり体を戻して……僕の足に頭を乗せる感じで」
    言われた通りにしたところ、ちょうど膝枕の構図が完成した。
    「なるほど、マッサージは口実で私を労うために膝枕を……トレーナーさんも策士だねぇ」
    「いや、マッサージ自体もあるから安心してくれ。……動かないでくれよ」
    瞬間、耳のなかに異物が入ってきたのを感じる。
    「ひゃっ!?なに、これ!?」
    「耳掻きだよ。あれから勉強してな。これでスカイにもお返しできるわけだ。ついでに耳の血流をよくするマッサージも勉強したからフルコースで振る舞わせてもらうよ」

  • 167さくら◆QadlXyrFEc22/06/01(水) 02:35:35

    「えっと……トレーナーさん?」
    「遠慮しないでくれよ。少なくとも僕は真剣だ。競技を行うウマ娘にとって他のウマ娘の位置を把握するにも音は重要な情報源となる。ここを侮るわけにはいかないからな」
    普通の人とウマ娘の耳掻きには一つ大きな、それも恋人同士で行うならそれこそ致命的なほどに大きな違いがある。
    それは人は耳を向けるときに顔を背けることができるけど、ウマ娘は構造上ずっと耳掻きしてくれる人の顔を見なければいけないということでして。
    最初の頃こそわざとえっちな声を出したりしてからかっていたけれど、途中からそんな余裕もなくなってきて。
    「スカイ?……スカイー?終わったよ。もう目を開けても大丈夫だよ」
    「……ありがとう、ございます……」
    「反応が固かったけどちゃんとリラックスできたか?変に緊張させちゃったならごめんな」
    ここで確信する。トレーナーさんは仕返しとかそういうのでなく純粋に好意として、あるいはスキンシップとして提案してきてたのだ。
    だとしたら返事は自ずと決まってくる。
    「とても、気持ちよかったです……恥ずかしかったけど……また、お願いします」
    こちらも素直に感謝を伝えるべきだ。恥ずかしいからって引かず、ここは直球勝負だ。
    頭がふわふわして途切れ途切れになる言葉で感謝を伝えた。
    「………………」
    なぜか返事がない。トレーナーさんも後ろを向いて固まってしまってる。
    「トレーナーさん?どうかされました?」
    「いや、君の反応が罪悪感を……いや、なんでもない。スカイ、顔赤いし、落ち着いてからここを出たほうがいいと思うぞ」
    トレーナーさんの言わんとしていることを理解し、立ち止まる。
    「……この部屋、虫が多いですねぇ。出るときにトレーナーさんが虫刺されまみれになってないといいなぁ」
    「そういう煽りは実行できる度胸をつけてからな」
    「自分でも首筋とかはキツいけど鎖骨から胸元あたりなら……」
    「君は僕をクビにしたいのか!?」
    ともあれ、以降どちらからともなく耳掻きをお互いにする日が不定期にやってくるようになった。
    ……ときどきトレーナーさんとのつきあい方が健全なものなのかちょっとだけ心配になる。

  • 168さくら◆QadlXyrFEc22/06/01(水) 02:43:05

    >>4

    >>163

    またしても安価目次つけ忘れたのでここで代用させていただきます。今回は144さんからいただいたリクエストで書かせていただきました。リクエスト文章を読み間違えていて違うものを書いてしまったのでお詫びの逆シチュエーションも書いてみましたがもうちょい練れたなと若干後悔してます……基本キャラが動くままに書いてるからおかしくなる……ともあれお口にあいますように。

    ペースが落ちても構わないのでしたらこの先も続けていきたいですね。ネタ切れの苦しみが解消された今次スレも目指せるのでは……とか調子に乗ってますが滅多なことは言わないようにしときます……書くの自体はめちゃくちゃ楽しいんですよね。

  • 169二次元好きの匿名さん22/06/01(水) 11:12:35

    新作!

  • 170二次元好きの匿名さん22/06/01(水) 12:11:52

    新作よき…。
    のんびりで構いませんので今後も見れたら嬉しいなぁ…と思ってます

  • 171二次元好きの匿名さん22/06/01(水) 15:18:38

    ゆっくり頑張ってください!

  • 172二次元好きの匿名さん22/06/01(水) 22:08:36

    保守

  • 173二次元好きの匿名さん22/06/02(木) 06:13:04

    保守

  • 174二次元好きの匿名さん22/06/02(木) 08:28:59

    あげ

  • 175二次元好きの匿名さん22/06/02(木) 12:40:27

    保守

  • 176二次元好きの匿名さん22/06/02(木) 15:08:44

    昼保守

  • 177二次元好きの匿名さん22/06/02(木) 23:37:36

    待ち

  • 178二次元好きの匿名さん22/06/03(金) 01:06:14

    セイトレセイちゃんのレストランデートとか

  • 179さくら◆QadlXyrFEc22/06/03(金) 02:04:27

    >>4


    やはり、と言うべきなのか。

    今度こそ先に来れただろうという自信は、果たしてあっさり破れ去ったのであった。

    「お、こんばんは、かな?スカイ。その浴衣、似合ってるよ」

    「……どうも。トレーナーさんはなんというか、気の抜けた格好ですね」

    「ご挨拶だな。おっさんの浴衣姿なんて誰も喜ばないさ」

    「……私は見たかったなぁ、ちょっぴりですけど」

    「……そうか。君のお願いとあらば、次の祭りまでには用意しておくよ」

    「あくまでちょっぴりですからね!ほら、嬉しそうな顔しない!」

    次のお祭りに行くことがもう決まってることはわりと嬉しかったり。

    私たちは、トレセン学園からそれなりに距離のある町のそこそこのお祭りに来ていた。

    「……ところで、場所の指定と待ち合わせにした理由がよくわからないんだけど。いや、待ち合わせにしたのはサプライズで浴衣を見せたかったならわかるんだけど、なんで学園の側の祭りにしなかったんだ?」

    「待ち合わせにしたのはそれだけじゃなくて待ち合わせ気分を味わいたかったってのもありますけどね。場所に関しては……ほら、今日トレセン学園の近くの神社でもお祭りあるでしょ?そっちだと知り合いとか多くてデートって感じにならないんじゃないかなと思いまして」

    「なるほどな。それにああも大食い娘が揃ってたら屋台巡りも不便を強いられそうだな」

    「違いないですね。私なんかは迷惑かけないほうですけど……スペちゃんあたりがいたら私たち以外の人たちは飢えることになるでしょうね」

    笑いあって屋台の通りへ足を進める。

    「何か食べたいものとかしたいことはあるか?お兄さんがお小遣いをあげよう」

    「もしかしてトレセン学園第三の兄枠トレーナー目指してます?お兄さん」

    「……失言だったのは認めるからあんまりいじらないでほしいかな……」

    「私も今日は一日妹やりましょうか?なーんて」

    「うーん……それはそれで楽しそうかもな。それじゃ行くか」

  • 180さくら◆QadlXyrFEc22/06/03(金) 02:05:00

    トレーナーさんが自然に私の右手を握る。
    「お前はあっちこっち目移りしてすぐはぐれるからな。手を離すなよ、スカイ」
    「……えー、この年でお兄さんと手を繋ぐなんて嫌だよー!私、子どもじゃないんだよ?」
    「そういうこと言ってるあたりが既にガキだな。さ、何が食いたい?」
    ……おかしい、口調は変えてみたものの普段と変わらない気がする。
    「あ!お兄さん、たこ焼きがあるよ!私食べたいなぁ」
    「よしよし買ってくるよ。すみませーん……」
    手を繋いでるので買ってくるとかではなく一緒に行くことになった。こういうところが実に締まらないなぁ。
    「……ごめん、兄キャラやめてちょっと言わせて。あんなこと本当にあるんだな……ビックリしたよ」
    「私もです。『お嬢ちゃん可愛いから一個おまけしとくよ!』だなんて……うん、悪い気分はしないですね!」
    「まあスカイが可愛いのは事実だし……痛い!手加減して蹴ってるのはわかるけどたこ焼き持ってるからやめて!そこの階段まで待って!」
    事前に話し合った結果、荷物を増やしながら歩くのは不便ということで、食べては捨てて食べては捨ててで動くことにした。
    「それじゃ、お兄さん、あーん!」
    「正気かスカイ!?たこ焼きだぞ!やけどでこの後の食べ物楽しめなくなるぞ!てか君猫舌だろう!」

  • 181さくら◆QadlXyrFEc22/06/03(金) 02:05:15

    「えー、お兄さんの愛のこもったふーふーがあれば大丈夫だと思うけどなー」
    「……よし、兄妹続けるのはここで一旦中止だ。こっから先は恋人同士でようやくギリセーフのラインだから。兄妹だとヤバいから」
    「それはわかりましたが……トレーナーさん、ふーふーしてもらえません?」
    「君のことは愛してるよ。でもこれはもはやひとつのあるあるみたいな話で……僕は君を傷つけたくないんだよ……」
    「歯切れが悪いですよ。私はトレーナーさんを信じてます。いくら猫舌な私でも食べられるように愛の魔法をかけてくれると……」
    「スカイ……よし、わかった。なんとでもなれ!」
    トレーナーさんがふーふーしてあーんしてくれたたこ焼きは、確かに表面こそ許容範囲であったものの内に熱いものを秘めたなかなかの傑物で。
    人から渡されたたこ焼きでやけどする、みたいなあるあるは例外なく私のことも傷つけたのであった。
    「……やっぱり無茶だったんだって。行儀が悪くても割って中を冷ましてから食べるべきだったんだ」
    「……でもそれじゃあーんしてもらえないじゃないですか」
    現在私の口の中はやけどだらけでひどい発音になっていますがここでは日本語訳でお送りします。
    「とりあえず冷たいもの……かき氷なんて冷やせるし楽しめるし一石二鳥じゃないか?スカイがよければ買ってくるよ」
    トレーナーさんはフットワーク軽く出店へと向かっていった。

  • 182さくら◆QadlXyrFEc22/06/03(金) 02:06:10

    今日中に完結するの無理でしたので途中まで……明日には最後まで仕上げますのでご容赦いただければと……

  • 183二次元好きの匿名さん22/06/03(金) 11:34:10

    >>182

    お待ちしてます...

  • 184二次元好きの匿名さん22/06/03(金) 15:54:11

    お祭りデートいい…。

  • 185二次元好きの匿名さん22/06/04(土) 00:02:02

    保守

  • 186二次元好きの匿名さん22/06/04(土) 07:05:07

    まち

  • 187二次元好きの匿名さん22/06/04(土) 12:00:06

    保守です

  • 188二次元好きの匿名さん22/06/04(土) 15:50:02

    昼保守

  • 189二次元好きの匿名さん22/06/05(日) 00:37:01

    保守

  • 190さくら◆QadlXyrFEc22/06/05(日) 03:24:34

    >>4


    かき氷で口を冷やしながら一服。

    私がメロン味、トレーナーさんがいちご味だ。

    「そういえばトレ……お兄さん、かき氷のシロップって色が違うだけで全部おんなじ味らしいよー」

    「君も素が出てるし兄妹はもうやめでよくないか?……かき氷か、あいにくあんまりグルメじゃないもんで味の違いとか言われてもピンとこないしなぁ。ためしに僕のと食べ比べてみるか?」

    「あ、ちょっと待って。その前に……ろうれふか?」

    私はトレーナーさんにベロを出して見せる。

    「どうって……可愛いけど」

    「そうじゃなくて!ほら、かき氷食べるとベロの色が変わるって言うじゃないですか!特に緑なんてわかりやすい色じゃないですか!?」

    「ええと……暗くてあんまりわからないんだよね……」

    トレーナーさんが私のベロをまじまじと見つめる。

    今さらになって無性に恥ずかしくなってきたな、これ。

    「言われてみたらうっすら緑な気もする、かな。僕は……っと、いちごだとわからないか。また今度明るいところで食べよう」

    「残念ですねぇ……そうだ、トレーナーさん、こっち向いて!」

    「ん?ああ……んんっ!?」

    私は遠慮なくトレーナーさんにキスをする。

    「ふぅ……緑の補色は赤ですよね。これで黒になってたり……しないかな?」

    「……やっぱり暗くてわからないけど……ひとつ言えるのは多分君の顔は今いちご色してるだろうなってことぐらいかな」

    「それはお互い様でしょう?ま、二人ともいちご味を楽しんだから仕方ないですよね」

    「そうだな。かき氷のせいだから仕方ないな」

  • 191さくら◆QadlXyrFEc22/06/05(日) 03:25:06

    人通りは少なかったとはいえ大胆なことをしてしまった気まずさから再び屋台の通りへ戻る。
    「えっと、この祭り花火があるんだっけ?」
    「みたいですね。どこか腰を据えてのんびり見たいところですが……どうします、さっきの階段に戻ってみます?」
    「うーん、人が少なかったしあの辺は見えづらいのかもな。いざとなったら肩車するよ」
    「げぇ、それは私の台詞ですよ。トレーナーさんみたいなひょろひょろに支えられるのは怖いですって」
    軽口を叩きながら歩いていると、落ち着いた雰囲気の公園を見つけた。
    「ここなんていいんじゃないですか?敷物持ってきてますよね、トレーナーさん!」
    「ここで寝るのか!?まあ敷くけど……」
    さすがに浴衣を汚すのは憚られたので敷物にゴロンと寝転がる。
    「土のにおいを直に感じられないのはマイナスですが、トレーナーさんと一緒に寝転がれるのはいいものですねぇ」
    「考えてみたら花火を寝転がってみるのは初めてだな……意外といい案だったのかもな、これ」
    「策士セイちゃんに感謝してくださいね……お、始まったみたいですね」
    夜空にパッと花が咲く。
    「フラワーやみんなも呼んで、花火大会するのも楽しそうだなぁ」
    「また花見のときみたいに企画してみるか?夏だと大きなレースは少ないし比較的集まりやすいんじゃないか?」
    「げ、口に出てました?……トレーナーさんと二人きりなのに……」
    「僕は気にしないよ。めんどくさめの君の世話をしてくれる大事な友達たちだからな」
    「なんか親目線……っていうかフラワーが私の世話してると思ってます!?さすがに抗議ですよそれは!」
    「キングヘイローあたりにはズブズブに世話になってるだろ!毎度毎度……」

  • 192さくら◆QadlXyrFEc22/06/05(日) 03:25:44

    「うーん、やっぱり花火はきれいだねぇ。写真や映像で見るのと生で見るのでは大違いだね!今日は来てよかったよ!」
    「あからさまに誤魔化してるな……まあ今は楽しい場だしな。これ以上はやめとこう……なあ、スカイ。手を繋がないか?」
    「……はい」
    おずおずと出した私の手をトレーナーさんが握る。
    「……なんでそんなに恥ずかしそうなの?」
    「だってシチュエーションが!こんなのスペちゃんだって照れるよ!」
    しばし無言で花火を眺める。
    どうせ花火の音で会話をするのは難しいしね。
    「……そろそろ終わりかな」
    「現実に引き戻されるみたいで嫌だなぁ、この時間……今日が土曜日でよかったよ」
    「明日はのんびりチューニングを日常に戻してくれな。僕は月曜の準備かな」

  • 193さくら◆QadlXyrFEc22/06/05(日) 03:25:59

    「本当ワーカホリックですよね、トレーナーさん……しんどくないんですか?」
    「君のためにできることがあるのは幸せだよ」
    「……感謝はしてるんですよ、私も」
    寝転がるトレーナーさんの腰あたりに座り、顔を近づける。
    「こんな私でよければ……お返しに貰ってやってくださいな」
    「スカイ……」
    さっきのかき氷って言い訳もない、漢字の読み方のレクチャーでもない。
    言い訳の予防線なしの口づけを、トレーナーさんに……
    「ストップ」
    トレーナーさんが私の肩をつかんで止める。
    「これ以上はお楽しみにとっておこう。今の僕たちではこの先は溺れかねない危険な道だ」
    「……私には、魅力がないんですか」
    「逆だよ。魅力的で大好きでたまらないからこそ、こんなところで中途半端に進みたくないんだ」
    「……よわむし」
    「そうだよ。似た者同士だな」
    言葉を交わしながら、これが勇気から出た行動じゃないことを再確認する。
    勢いに流されてただけだ。この先に進んでたら、きっと私も後悔してただろう。
    「……わかった、トレーナーさん浴衣の着付けかたがわからないから躊躇ったんでしょ!」
    「参ったな、バレてたか。どうにも気恥ずかしくてね」
    お互い意識して軽口を叩き合いながら撤収準備を始める。
    「……これも出世払い、ですね」
    「楽しみにしてるよ、スカイ」
    焦らず進んでるつもりでもときには前のめりになってしまうもので。
    ともあれ、手を繋いで歩いてるならもう一人が引き戻してくれる、そんな簡単なことを再認識した一日だった。

  • 194さくら◆QadlXyrFEc22/06/05(日) 03:33:49

    昨日すっぽかしてすみません……寝落ちしてました。
    とりあえずリクエスト残ってますし消化するまでは続けたいので今晩?あたりにでも次スレ立てますのでネタ切れにペースダウンとボロボロですがまだ見てくださるならとても嬉しいです。

  • 195二次元好きの匿名さん22/06/05(日) 11:44:42

    >>194

    とてもいいお祭りだぁ...

  • 196二次元好きの匿名さん22/06/05(日) 17:14:49

    >>194

    すげぇいい...次スレも待ってる

  • 197二次元好きの匿名さん22/06/06(月) 00:03:25

    お祭りデートいいなぁ
    次スレも楽しみにしてます

  • 198さくら◆QadlXyrFEc22/06/06(月) 00:40:53
  • 199二次元好きの匿名さん22/06/06(月) 01:03:53

    3スレ目おめでとうございます!
    次スレも楽しみです!

  • 200二次元好きの匿名さん22/06/06(月) 01:05:43

    ありがとうございました
    次スレも見ますね

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