【SS】叶える夢と破る夢

  • 1二次元好きの匿名さん22/07/06(水) 23:11:17

    「_トレーナーさん?」
    はっと顔を上げると、そこには心配そうにこちらを見つめる彼女がいた。
    「どうしたんスか?さっきからすごい上の空っスけど…」
    気がつけば最後に時計を確認した時から30分以上は経ち、彼女のトレーニング時間はすっかり終わっていた。
    『ごめん。ちょっとぼんやりしててさ』
    「にしては時間が長かったような…」
    『大丈夫だよ、心配しないでくれ。さあ、今日のトレーニングは終わりだ』
    「…っス。また明日!」
    そう言って帰ってゆく彼女の背中に、かけたい言葉があった。
    それは小さな夢。

  • 2二次元好きの匿名さん22/07/06(水) 23:11:34

    もう、遥か彼方の出来事。
    「やぁああああああああーーーっ!!!」
    彼女の走りに惚れた。
    そこから、彼女の夢を一緒に叶えていこうと…そう、思った。
    何度も何度も挫折しかけた。
    その度に、彼女の明るさに救われた。
    「アタシ、次は勝つっス!だから、さらに厳しいトレーニング、よろしくっス!」
    そんな彼女の夢を。
    1着を取りたいという夢を、勝ちたいという夢を、憧れを超えたいという夢を。
    一緒に叶えたいと、強く思った。

  • 3二次元好きの匿名さん22/07/06(水) 23:11:45

    1年ほど前だったか。
    トレセン学園に不審者が入ったことがあった。
    自分は襲われそうになったのだが…
    「不審者は…成敗っス!!!」
    風紀の腕章をつけた彼女が、助けに来てくれた。
    「大丈夫っスか、トレーナーさん?」
    そう言って腰の抜けた自分に手を差し伸べる彼女。
    眩しかった。
    『大丈夫だ。すぐに助けてもらったからな。流石だよ』
    「流石だなんて…褒めてもらえると嬉しいっスね!」
    あの日、一緒に夢を追いかけようと誓った気持ちは。
    …この日から、屈折してしまっていたらしい。

  • 4二次元好きの匿名さん22/07/06(水) 23:11:59

    それは数ヶ月前の出来事。
    「すみません!トレーニング遅れたっス!」
    『大丈夫だけど…何があったの?』
    「それが、もうとんでもない風紀の乱れで!トレーナーと生徒が淫らな関係になっていたっス!」
    なぜかその言葉で、心の奥が騒ぐ。
    「せめて卒業してからって、たづなさんも前わざわざ言ってたのに…トレーナーさん?なんだか複雑そうな表情をして…」
    『あ、ああ…?なんでもないぞ?』
    「…?そうっスか?」
    なんてことない、風紀委員の彼女とするには何もおかしくない会話。
    だが、なぜかずっと忘れられなかった。

  • 5二次元好きの匿名さん22/07/06(水) 23:12:11

    …数日前。ついに何かが耐えきれず言ってしまった。
    『なあ』
    「なんスか?」
    『俺のこと…好きか?』
    「?…何かあったんスか?好きっスよ!アタシの夢を一緒に追ってくれる、大切なトレーナーっス!」
    その言葉は嬉しいはず、だった。
    それでもなぜか、心が痛んだ。

  • 6二次元好きの匿名さん22/07/06(水) 23:12:23

    今日、やっと確信したんだ。
    彼女の背中に掛けたい言葉を、導き出すことができた。
    けれどその言葉をかけるわけにはいかない。
    彼女は生徒だ。自分はトレーナーだ。
    そしてなにより…彼女は「風紀委員」だ。
    決して道を踏み外そうとはしない彼女の姿勢に、自分は…
    だから、こんな言葉をかけるわけにはいかない。
    『…バンブーメモリー。君が好きだ…一人の女性として』
    こんな夢は、破り捨ててしまおう。

  • 7二次元好きの匿名さん22/07/06(水) 23:13:13

    トレウマにならないトレ→バンブーを書きたかったので書きました

  • 8二次元好きの匿名さん22/07/06(水) 23:15:31

    こういうのも好き

  • 9二次元好きの匿名さん22/07/06(水) 23:16:05

    >>8

    ありがとう

    あくまで風紀委員だから守るラインが好きなんだ

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