君はきっと別れ際

  • 1◆TJ9qoWuqvA23/01/09(月) 19:37:16

    dice1d4=3 (3)

    1:「さようなら」と言っていた

    2:「またね」と言っていた

    3:「嫌いだよ」と言っていた

    4:「ありがとう」と言っていた


    これは君の。

    ……君と、僕らの物語だ。

  • 2◆TJ9qoWuqvA23/01/09(月) 19:37:53

    僕は部屋の壁際に目を向けた。

    ディスプレイの中、飾られた優勝レイが光沢を放つ。

    時はすっかり流れて、僕は君の背中の感触さえおぼつかない。

    なのにどうしてか、レイを見ると、別れ際の君を思い出す。

    あの冷めない熱が、まだこの手のひらにある。

    目を瞑ると、今度は景色が見えた。

    グリーングラスと褪めたブルー。

    ちょうど、ディスプレイの中の優勝レイのような。

    そのせいか、懐かしさと新鮮な気持ちが交差して、その境目にある感情がぶわりと香るのを止められなかった。


    僕と君が出会ったのは、騎手歴1 + dice1d10=7 (7) 年目のことだった。

  • 3二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 19:38:30

    あまりにも‥あまりにも‥

  • 4二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 19:39:29

    主の手腕に期待が高まる…

  • 5二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 19:41:07

    期待

  • 6◆TJ9qoWuqvA23/01/09(月) 19:46:51

    僕はうだつのあがらない騎手だ。
    父も兄2人も騎手で、それに倣うように鞭を手にした。
    だけど僕には父たちのような才能はなかったようだ。

    『あの天才── の息子』
    『上の兄2人はすでに重賞制覇、弟に期待高まる』
    『騎手のサラブレッド、最高の環境』

    名馬は必ずしも名種牡馬になるわけじゃない。
    それと同じように、名手の子が必ずしも名手になるわけじゃない。
    けど兄たちは期待にそぐわぬ活躍をして、僕だけが、落ちこぼれた。
    それでも騎手としてやっていけてたのは、偏に支えてくれるオーナーがいたからだ。
    父の代からの関係性で、そのオーナーは僕を孫のように可愛がった。
    きっといつか手に馴染む馬が現れるはずだからと、重賞勝ちもできない僕を乗せてくれる。
    そうやってズルズルと騎手を続けて8年目の秋に君と出会った。

  • 7◆TJ9qoWuqvA23/01/09(月) 19:48:14

    君は

    dice1d2=2 (2)

    1:牝馬だ

    2:牡馬だ


    馬の父は>>11 で母父は>>16 だった。

  • 8二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 19:48:56

    テイエムオペラオー

  • 9二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 19:49:09

    ディーマジェスティ

  • 10二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 19:49:29

    クワイトファイン

  • 11二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 19:49:41

    glacial gold

  • 12二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 19:49:54

    ニジンスキー

  • 13二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 19:50:17

    シンボリルドルフ

  • 14二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 19:50:30

    スペシャルウィーク

  • 15二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 19:50:44

    ロゴタイプ

  • 16二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 19:50:54

    クライムカイザー

  • 17二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 19:51:04

    ヤマニングローバル

  • 18二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 19:51:15

    スーパーホーネット

  • 19◆TJ9qoWuqvA23/01/09(月) 19:51:58

    (glacial goldで検索するとカリビアンゴールドがヒットするのだがどれが正解なのだ?)

  • 20◆TJ9qoWuqvA23/01/09(月) 19:52:41

    (USAの馬であってるのだ?)

  • 21二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 19:52:49

    引退間際に「嫌いだよ」とかステゴやマックちゃんかな?

  • 22◆TJ9qoWuqvA23/01/09(月) 19:53:29

    (ゴールドバイユー産駒グレイシャルゴールドのことであってるのだ?)

  • 23二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 19:53:34

    これ?

  • 24二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 19:54:19

    英語で調べたら海外にいますね‥

  • 25二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 19:55:38
  • 26二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 19:55:45

    安価取った人、どんな馬か教えてくれ〜

  • 27◆TJ9qoWuqvA23/01/09(月) 19:56:14

    (日本語サイトで確認できない馬は情報正確性が担保できないため見送るのだ。最低限の情報がないと最悪の場合過度なイメ損を引き起こしかねないのだ。>>11 がこの馬の情報を確認できる日本語サイトを提示できない場合、安価上で戦うのだ)

  • 28二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 19:57:15
  • 29二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 19:57:57

    オジュウチョウサン産駒の架空馬スレでもこの馬で安価とっていった人いたけど同一人物か?

  • 30◆TJ9qoWuqvA23/01/09(月) 19:59:47

    >>25

    (同じサイトをスレ主も見ているのだ。ここにはこのお馬さんのパーソナルな情報がないのだ)


    >>28

    (提供感謝するのだ。ここでわかるのはGlacial Goldが乗馬向け種牡馬ということなのだ。それ以外の戦績部分などが確認できない恐れがあり、スレ主の創作の都合上難しいのだ。よって安価上、またはカリビアンゴールドで戦うことにするのだ)

  • 31二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 19:59:52

    わ゛がん゛ね゛

  • 32二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 20:00:50

    母父クライムカイザーはギリ出来るか‥?

  • 33◆TJ9qoWuqvA23/01/09(月) 20:02:54

    (情報を探しているであろうスレ民、ありがとうなのだ。この段階で止まってて非常に申し訳ないのだ。先に進むためにもダイスで父を決めるのだ。Glacial Goldの要素を少しでも残すため、名前が似てるCaribbean Goldかもしくは安価上クワイトファインで戦うのだ)

  • 34二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 20:02:59

    追加の情報が出ないか安価取った人が何も言わなければ1のやりやすいようにしたらいいのでは?

  • 35◆TJ9qoWuqvA23/01/09(月) 20:03:21

    dice1d2=1 (1)

    1:クワイトファイン

    2:Caribbean Gold(カリビアンゴールド)

  • 36◆TJ9qoWuqvA23/01/09(月) 20:04:22

    (やっべカリビアンゴールドは牝馬だったのだ。クワイトファインになってくれてよかったのだ。それでは話を進めるのだ)

  • 37二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 20:04:36

    クワイトファイン産駒!
    そして、母父クライムカイザーは可能なのか……?

  • 38二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 20:05:27

    多分グレイシャルゴールドは不出走の馬なんじゃないかな
    パロミノの馬は乗馬用種牡馬として人気らしいし

  • 39◆TJ9qoWuqvA23/01/09(月) 20:11:24

    父はクワイトファインで母父はクライムカイザーだった。

    母は1994年生まれで、クライムカイザーのラストクロップ。

    未出走のまま繁殖入りして、その最後の仔が僕のお手馬になる君。

    君は

    dice1d4=2 (2)

    1:母の出身牧場で育ち

    2:父の出身牧場で育ち

    3:小さく古びた牧場で育ち

    4:小さく真新しい牧場で育ち


    デビュー前から

    dice1d3=1 (1)

    1:高い評価をされていた

    2:そこそこの評価をされていた

    3:まったく期待はされていなかった

  • 40二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 20:11:59

    おお!評価高い!

  • 41◆TJ9qoWuqvA23/01/09(月) 20:17:46

    馬は高い評価をされていた。

    繁殖牝馬としてはかなりの高齢出産となった母は産後の肥立ちが悪く、君を一目見ることなくこの世を去った。

    そのあと君は父クワイトファインが育った牧場に引き取られ、世話をされたんだ。

    未出走の母と142戦6勝の父。

    どうにも期待できる生まれではなかった君だけど、その馬体は

    dice1d3=2 (2)

    1:父クワイトファインに似て鹿毛の中型の馬体で

    2:母父クライムカイザーに似て黒鹿毛で足の長い馬体で

    3:父にも母父にも似ずに小柄な馬体で


    dice1d5=4 (4)

    1:蹄はやや弱いがトモのハリが良く心肺機能に優れていた

    2:足腰は丈夫だが内臓がやや弱く、その分スピードに優れていた

    3:虚弱体質ではあったが根性があり物覚えがよかった

    4:臆病で馬馴れせず育成に苦労したが丈夫で我慢強かった

    5:気性が荒く育成に大変苦労したが丈夫で我慢強かった

  • 42二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 20:18:31

    おお良かった…ロストボールコースからは外れたっぽい

  • 43◆TJ9qoWuqvA23/01/09(月) 20:25:08

    君は2歳の春、

    dice1d2=1 (1)

    1:美浦トレーニングセンターに入厩した

    2:栗東トレーニングセンターに入厩した


    小さなころから臆病で、周りをずっと気にしていて、ちらりちらりと僕を見ていた。


    君はどんなレースを走るのだろう。

    母父クライムカイザーは、1970年代のこととはいえダービー馬。

    父クワイトファインだって、その血筋にはダービー馬のトウカイテイオー、シンボリルドルフが連なる血統だ。

    中長距離に向きなのは間違いないと、先生たちは言っていた。


    オーナーも交えた話し合いの末、君は

    dice1d4=4 (4)

    1:2歳の早い段階からレースに出されることになった

    2:2歳の秋からレースに出されることになった

    3:2歳の終わりにレースに出されることになった

    4:2歳でのデビューをやめ、3歳からレースに出されることになった


    デビューしたのは

    dice1d99=39 (39)

    ~29:砂だった

    ~99:芝だった

  • 44◆TJ9qoWuqvA23/01/09(月) 20:29:23

    君の臆病さはなかなか治らなかった。

    すぐに他馬を気にするし、音も、気配も、自分の影すら怖がった。

    そのせいかゲート試験はなかなか通らず、結局先生たちは君を3歳でデビューさせることにしたんだ。

    僕は君の調教のほとんどすべてで乗っていたから、君がどんなに臆病な馬かなんて知っている。

    けど、君はここに走りに来たんだ。

    僕が鞭を握って、君に乗るためにいるように。


    ようやくゲート試験を突破した3歳の初旬。

    君は芝の

    dice1d4=4 (4)

    1:2000m未勝利戦

    2:1800m未勝利戦

    3:2400m未勝利戦

    4:1600m未勝利戦

    に出走した。鞍上も僕だった。


    そこで君は

    dice1d99=45 (45)

    (55以上で勝利)

  • 45二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 20:30:53

    掲示板には入ったかな

  • 46二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 20:41:20

    このレスは削除されています

  • 47◆TJ9qoWuqvA23/01/09(月) 20:43:42

    (誤字があったので修正して投稿するのだ)

  • 48◆TJ9qoWuqvA23/01/09(月) 20:44:02

    君のデビュー戦には多くの取材陣が来た。


    「トウカイテイオー唯一の後継種牡馬クワイトファイン産駒」


    それがネット上で呼ばれる君の名。

    本当はもっと格好良い名前があるのに、誰もが君を「クワイトファイン産駒」「テイオーの孫」と呼んだ。

    まるで僕がずっと「── の息子」「── の弟」と呼ばれているのと同じように。

    彼らはマイクを向けると、同じことを聞く。


    「勝てそうですか」


    きっとあなたたちは勝敗など求めていない。

    ただほしいのは話題性だけ。

    面白ければ良いのだろう、ゴシップと同じように。


    言いたいことが喉元までせりあがってきて、でも僕は何も言わずに微笑んだ。

    微笑むことしか、できなかった。


    レースでは1馬身差で敗れた。

    dice1d3=1 (1)

    1:逃げ馬を徹底マークして先行馬に有利な位置取りをしつつ、番手の位置につけ、直線入り口で先頭に並んだところまではよかった。けど君はすぐそばの馬に驚いて掛かり、失速してしまった。

    2:中団後方につけつつ、脚を溜めるために馬群の中でじっと待機させた。けどこれがよくなかったのだろう。他馬がストレスになった君は、早く抜け出したくて前に飛び出して、けど後ろの馬に差されてしまった。

    3:ゲート入りした時から落ち着かない雰囲気だった。嫌な予感というのは当たるもので、出遅れて後方スタート。けど馬群から離れたことでかえって落ち着いたのか、素直に追い脚を見せてくれた。それでも先頭との距離は縮められなかったのが口惜しい。


    ……馬に非があったのではない。

    単純に僕の腕が足りていなかった。

    あの時ああしてれば、という思いがゴール後すぐに湧いてきたのが、その証拠だった。

    ああ、きっと父や兄たちなら上手く君を導けたのだろう。

    君もかわいそうに、僕がいる厩舎になんて来てしまって、そのせいで僕なんかを乗せてしまって。

    初レースで興奮の収まらない君に何もできず、僕は地面ばかりをみていた。

  • 49◆TJ9qoWuqvA23/01/09(月) 20:54:44

    「── さん、お茶、入りましたけど」

    ふっと意識が浮上した。
    半開きのドアから若い女性の声が響いて、無意識に「ありがとう」と声が漏れた。
    黒髪を肩まで切りそろえたその少女は、お世話になっていたオーナーのひ孫だ。
    君と出会った頃は首が痛くなるほど身長差があったのに。
    それだけ僕らの出会いから月日が流れた証拠だろう。

    「粗茶ですが……」
    「いえ、ありがたいです」

    そこで会話は途切れた。
    昔は肩車までしたこともあるが、しばらく会っていないこともあって気まずいだろう。
    早くに少女を解放してやろうと口を開きかけて、閉じた。
    ディスプレイの中のレイを見る、彼女の横顔があまりにもあどけなかったからだ。

    「私、この部屋に入ったことあまりなくて……写真とかで見たことはあるんですけど、ひいおじいちゃんのお馬さんの中で、この馬が最後なんですよね?」
    「……うん、そうです」

    キラキラとした表情がまぶしい。
    あの頃は僕も同じ顔をしていたのだろうか。
    懐かしさがまたふっと香る。

    「あ、このレイ知ってます! これの時に乗せてもらったことがあって」

    ああ、よく覚えている。君が、彼が初めて重賞を勝った時の──。

    「このこって、最終的にG1いくつとったんでしたっけ?」

    無邪気な少女の声が、僕の背を押した。

  • 50◆TJ9qoWuqvA23/01/09(月) 20:56:03

    僕はディプレイ越しにレイに触れた。


    dice3d16=14 10 1 (25)

    1:阪神JF or 朝日杯FS or ホープフルS

    2:桜花賞 or 皐月賞

    3:優駿牝馬 or 東京優駿

    4:秋華賞 or 菊花賞

    5:天皇賞・秋

    6:ジャパンカップ

    7:有馬記念

    8:高松宮記念

    9:大阪杯

    10:天皇賞・春

    11:安田記念

    12:宝塚記念

    13:スプリンターズS

    14:マイルチャンピオンシップ

    15:フェブラリーS

    16:G1無冠(これを引いた場合は他のダイス無効)

    (限定戦以外かぶったら連覇)

  • 51◆TJ9qoWuqvA23/01/09(月) 20:56:55

    (3歳デビューのため1の勝鞍は無効となり、進行中に別のG1を取ります)

  • 52二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 20:57:24

    マイルと春天勝つのか…

  • 53二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 20:57:29

    どういう距離適性や……

  • 54二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 20:57:52

    マイルと天春でこれは適正(白目)

  • 55二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 20:58:26

    1600mと3200mのG1を勝つのか‥

  • 56二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 20:58:32

    三階級制覇するんか!?

  • 57二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 20:59:06

    騎手が上手かったらハードバージやれるんだろうけどこの語り口だとどうかなあ

  • 58二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 21:01:23

    スレ開いた瞬間のダイスからして良スレの予感してきた

  • 59二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 21:03:47

    こいつ強化トーセンラーでは……?

  • 60二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 21:05:41

    この馬って牡馬だからクワイトファイン後継種牡馬やぞ

  • 61二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 21:06:10

    スレ画無断使用か〜い

  • 62二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 21:06:49

    ダイススレかと思ったらSSスレで混乱してたのに文章上手くて芝生えちゃった

  • 63二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 21:07:52

    >>61

    無断転載のオンパレードあにまんで今更なに言うてるんや・・


    でも次からはいらすとやとかのほうがええかもしれんな、スレ主

  • 64二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 21:09:03

    この騎手が完全に脳を焼かれてるのはわかったが、クワイトファイン産駒なのでつまりそこらへんのファンの脳も焼けてるってことだな??

  • 65◆TJ9qoWuqvA23/01/09(月) 21:09:49

    >>61

    >>63

    (ネットから拾ったやつを使ってしまったのだ。次からは気を付けるのだ。ごめんなのだ)

  • 66二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 21:10:46
  • 67◆TJ9qoWuqvA23/01/09(月) 21:18:14

    「ま、そう落ち込むなよ、──。ひどい負け方をしたわけじゃない。臆病な部分を改善できれば、きっと次はうまく行く」


    デビュー当時から面倒を見てくれている先生は、そう言って僕を励ました。

    僕はあいまいに笑って鞍上から降りる。

    君はまだ興奮した様子で鼻を鳴らして、しきりに周りを気にしていた。

    気性が特別激しいわけじゃない。

    ただ臆病さゆえに周りを気にして仕方がない君は、まだまだ、あどけないだけ。

    先生の言う通り、この臆病さを改善できれば勝利を挙げられるだろう。


    君はそのまま調教を続け、春が来る前にまた未勝利戦に出た。

    dice1d99=69 (69)

    (55以上で勝利)

  • 68二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 21:19:02

    勝てたか

  • 69二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 21:22:41

    よしよし中々

  • 70◆TJ9qoWuqvA23/01/09(月) 21:26:21

    君は2度目のレースで勝利を挙げた。

    このレースでは、

    dice1d3=1 (1)

    1:逃げ馬を徹底マーキングし、番手につけつつ直線入り口で先頭に並ぶ競馬をした。君は今度は落ち着いて前だけを見ていた。

    2:中団内目につけながらも馬群から離れることで精神を落ち着かせた。これは先生と話していたことだ。そこから直線に向くと馬群を割って抜け出し、押し切る形で勝った。君は前だけを見ていた。

    3:スタートダッシュがあまりうまくない君は、出遅れて後方スタート。それでも気持ちがダレることことなくまっすぐに走ってくれた。先行馬のスピードが落ちると外目を突いて捲り勝った。君は前だけを見ていた。


    2戦目にして勝ち上がったことで、オーナーは大喜びだった。

    僕の肩をたたくと、嬉しそうに言った。


    「──くん、君、>>74

  • 71二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 21:27:50

    このままこれからもこの仔に乗ってくれないかい

  • 72二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 21:28:55

    これからも乗り続けてくれ

  • 73二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 21:29:49

    やっと巡り合えたじゃないか!

  • 74二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 21:29:51

    これからもこの馬を頼む

  • 75二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 21:31:02

    これは騎手くんうれしいやろなあ

    8年目で重賞勝ちなくてでも親兄弟がエリートなわけだからね…素質馬にあえてよかったな騎手くん…

  • 76◆TJ9qoWuqvA23/01/09(月) 21:38:52

    「── くん、君、これからもこの馬を頼む」


    オーナーの力強い激励が僕に錯覚させる。

    ああ、この馬となら高いところまでいけそうだ、と。

    すべてがそう上手くいくわけないとわかっているのに、どうしてか、返事をしてしまう。

    未来を期待する声で、「はい!」と大きく。


    それから2日後のことだ。

    未勝利戦を抜けた君の次走に、先生たちは頭を悩ませているようだ。


    「どうしようかなあ……ほら、勝った未勝利はdice1d3=1 (1) だったろ? デビューは1600mで2着だったから」


    1:2400m

    2:2000m

    3:1800m


    「重賞は抽選で弾かれるのはわかってるからな。1勝クラスで出すにしても、どこを使うか」


    季節は春。

    同世代の牡馬は月末に弥生賞やスプリングSを控え、いよいよクラシックシーズン突入と言ったところだ。

    悩む先生や調教助手を見て、僕はあの勝利後から思っていたことを言ってみることにした。


    「勝ったレースの距離から見て、今後は>>80

  • 77二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 21:40:51

    ksk

  • 78二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 21:41:25

    2000m前後がいいだろう

  • 79二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 21:42:18

    2400前後を走らせましょう

  • 80二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 21:42:36

    2000m前後のレースに出して、プリンシパルSでダービーを狙うのはどうでしょうか

  • 81二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 21:42:44

    ダービーを目指しましょう

  • 82二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 21:44:34

    決まってる勝ち鞍(マイルと天春)以外にダービー出走フラグ立ってて草
    こりゃ

    ・1600m
    ・3200m
    ・2400m

    で三階級制覇しちゃう~~!!!!

  • 83二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 21:48:55

    マイルで勝って!ダービーも勝って!長距離も勝って!種牡馬価値が完成しちまったなアア~!!
    これでリーディングサイアーはこいつのモンだぜ~!!

  • 84二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 21:52:40

    待つんだ、まだ勝ったとは誰も言っていない‥ッ!

  • 85二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 21:53:40

    もう勝つ流れで草

  • 86二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 21:56:00

    強気だけど、それなりに走れる3歳馬ならダービー目指すのはありっちゃありか

  • 87◆TJ9qoWuqvA23/01/09(月) 22:01:49

    「勝ったレースの距離から見て、今後は2000m前後のレースに出して、プリンシパルSでダービーを狙うのはどうでしょうか」

    プリンシパルSのあたりから声が小さくなってしまった。
    どうでしょうか、も小さくなりすぎて聞こえなかったかもしれない。
    どんな反応をされるのか怖くて顔を上げられず、僕はしばらく事務所の床を睨んでいた。
    たぶん数分にも満たない沈黙のはずが、やけに長く感じてしまった。
    まだ肌寒い春なのに何故か背中にじんわりと汗をかいているような気もする。
    僕は後ろで手をぎゅっと握り合わせ、長い返事をまった。
    聞こえてきたのは、深く吐かれた息だった。

    「っは~……いいじゃんか!」

    立ち上がった先生が俺の背中をバシンと叩いた。

    「ダービー! ダービーね! うん、うん! いいじゃんかダービー! 胸が躍るなあオイ!」
    「まっ、まだ出れるか決まっては、イテっ、痛いです先生……!」
    「ばっきゃろー! ダービー出るぞって思うだけでドキがムラムラしちゃうじゃんかよォ!」

    そうときまりゃ賞金積むぞ、と先生が笑った。
    弾む声を気にした調教助手の── さんが顔を出すと、先生ははしゃいだまま声を上げた。

  • 88◆TJ9qoWuqvA23/01/09(月) 22:02:00

    「おうお前! アイツの飼い葉ちょっと豪華にしろ! なんせダービー出るからな!」
    「はぁ? ダービーっすか? なんのダービーっすか?」
    「こんなに興奮してんだから日本ダービーに決まってんだろ! こいつがプリンシパルSで出走権もぎとんだよ!」

    先生、そこまでは言ってない、と否定しようとしたところで遅かった。
    目を丸くした調教助手が「マジか」と呟いて、目にもとまらぬ速さで駆けていく。

    「うちの馬がダービーでるらしい!」

    待って、まだ決まってないから。

    叫び声が舞い上がる桜に飲まれる。
    代わるように吹き抜けた春疾風が、どうか祝福であってくれと、願わずにはいられなかった。

  • 89二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 22:05:58

    2歳G1勝ちが確定してるから普通にクラシック路線行くんやろな

  • 90二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 22:06:36
  • 91二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 22:06:46

    >>89

    この馬3歳デビューで今も3歳未勝利戦勝った状態だから2歳G1とってないぞ

  • 92二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 22:07:16

    陣営仲良しでニッコリ

  • 93二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 22:07:57

    >>90

    >>91

    済まぬ、見落としてたわ

    てことは早くて皐月賞トライアルか……?

  • 94二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 22:08:33

    やはりダービーは特别なんだな…

  • 95二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 22:09:23

    >>93

    もう弥生賞目前だしこの馬の今の目標はダービーやぞ…

  • 96二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 22:12:02

    >叫び声が舞い上がる桜に飲まれる。

    >代わるように吹き抜けた春疾風が、どうか祝福であってくれと、願わずにはいられなかった。


    あにまんとかいうこんな掃き溜めで村上春樹誕生すな

  • 97二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 22:16:17

    この騎手くん好きィ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

  • 98二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 22:18:30

    応援したくなるなあ
    騎手も馬も頑張れ……

  • 99◆TJ9qoWuqvA23/01/09(月) 22:19:41

    4月。君はプリンシパルS出走に向けて賞金を積むことになった。

    鞍上は変わらず僕だ。

    この頃になると君はシャドーロールをつけるようになった。

    自分の影にさえ驚く君が、少しでも心安らかに走れるよう、厩務員の── さんが選んだ。

    これをつけてからの君は、以前と比べるとずいぶんと乗りやすくなったと思う。

    影に驚かなくなるだけでこんなに効果があるとは。

    ただ他馬のことは未だ怖がっているようで、馬群に潜る競馬は今後も慎重に教えていく必要があるだろう。

    それは別として、ほかの馬がそうであるように、君も毎日1歩ずつ、確実に成長していた。


    そして3戦目。

    dice1d99=96 (96)

    (55以上で勝利)

  • 100二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 22:20:31

    圧勝!

  • 101二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 22:25:10

    マジでダービー出場権ゲットした…

  • 102二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 22:26:23

    これプリンシパルS前の賞金稼ぎだからまだ確定してないのでは・・?違うのかな

  • 103二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 22:27:42

    >>102

    ごめん早とちりした

  • 104◆TJ9qoWuqvA23/01/09(月) 22:32:17

    「っか~! 圧勝だったなあ、オイ!」

    先生がビールジョッキをテーブルにたたきつけた。
    酒がうめえ、と喜ぶ先生に調教助手も頷く。
    僕もお茶を一気飲みしながら、君の走りを思い出していた。
    君は先行するのがうまかった。
    デビューレースも、初勝利を挙げた未勝利戦もそうだったが、君は前へ前へと行く。
    馬群が怖いからとどまりたくない。
    これが理由なのはわかっていたし、競走馬としてはよろしくない逃げの癖なのだろう。
    だがそれが今の君にとっての最適解。
    逃げる馬の番手につきながら、自分らしいペースを掴んで走れるのは利点だ。
    今回のレースはそれが如実に表れる結果だった。

    「お前もうまく乗ったな!」

    赤ら顔で先生が僕をほめる。
    否定すると「謙遜するな」と言われるが、否定する以外なにもない。
    だって僕は本当に何もしていないのだ。
    ただ君の背に乗って、鞭も振るわず、自由に走る君が進みやすいように内目のコースに寄せていただけ。
    ほとんど馬の力のよるものだし、むしろ僕が馬に教えられているようなきさえしている。
    こういう時はこう走ったらいいんだぞ、と。
    ── そういえば前に兄が言っていた。

    『名馬と呼ばれる馬はただ強いだけじゃない。俺たちに走り方を教えてくれるんだ』

    今、厩舎の隅の馬房で君は寝ているころだろうか。
    どんな夢を見ているのかな。
    見ていないのかな。

    ……僕はもう、夢うつつだった。

  • 105二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 22:33:49

    最後の一文が不穏だな……

  • 106二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 22:33:56

    シャドーロール装着・・・末はテイオーを超えるかブライアンの後継だねえ!(早とちり

  • 107二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 22:34:46

    究極はなにもしないことだと先人も言っている

  • 108二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 22:36:17

    スレ主の文才、こんなところで投稿してる場合じゃないだろと言いたくなる
    いいぞもっと投稿しろ

  • 109◆TJ9qoWuqvA23/01/09(月) 22:42:48

    その日は晴天だった。

    東京競馬場、2000m、芝左回り。


    「プリンシパルステークスだ……」


    口出したら今更緊張してきた。

    先生なんてダービーもかくやと言わんばかりに緊張している。

    僕に「落ち着け」と言っている先生は、つい数分前までスラックスのチャックが開いたままだった。


    「いいか、もうここまで来たら引き返せん。すっぱりいけ、すっぱり」

    「何をですか」

    「勝ちにだよ! ぶん獲って来い!」


    背中を押されてパドックに転び出た。

    すんでのところで踏みとどまって、君の前に立つ。

    シャドーロールを付けた横顔は、やっぱりまだあどけない。

    君は一瞬だけ僕を見た。

    けどすぐにほかの馬が気になってしまったのだろう。

    はっきりソラを使っているのがわかる仕草を見せて、僕は思わず笑ってしまった。

    ……そうだよな、臆病な君に取ったら、どんなレースだって怖い。

    怖がっているのは僕だけじゃなくて君もならば、先生の言った通り、すっぱり行くしかないだろう。


    「誰よりも早くゴールできたら、もう怖くないよ」


    きっとね。

    そう祈りを込めて手綱を握り、僕らは、優駿に続くゴールを目指した。

    dice1d99=39 (39)

    (55以上で勝利)

  • 110二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 22:43:41

    あああああ

  • 111二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 22:43:47

    うーん…さすがに難しかったか

  • 112二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 22:45:01

    ダイス神も物語を楽しんでいらっしゃる……(白目)

  • 113二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 22:47:20

    このレスは削除されています

  • 114二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 22:48:39

    結果論だけど未勝利戦と同じ距離の青葉賞ならダービーに出られたかもなあ
    本当に結果論でしかないし、そうしたらダービー勝てなさそうだけど

  • 115二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 22:49:32

    このレスは削除されています

  • 116二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 23:21:46

    騎手くんメンタル大丈夫かな

  • 117二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 00:01:53

    まぁしゃーない
    抽選でのワンチャンに掛けつつラジニケ賞あたりに切り替えてけ

  • 118二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 00:11:58

    このスレ主の架空馬、中身人ありじゃなくて騎手とか調教師とかオーナーとかの関係者目線なのがいいよね
    中身人のやつも面白いんだけど、関係者目線だから余計物語に感情移入できる

  • 119二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 00:18:15

    これはベテランSSスレ主の貫禄を感じる
    俺は詳しいんだ

    ところでスレ主の作品遡りたいんやが、人入りの架空馬のやつどのスレ?

  • 120二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 00:20:50

    スレ主単体の作品まとめそろそろ作られそう凄えペースで投稿してるでしょ多分

  • 121二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 00:28:23
  • 122二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 00:29:56

    牝馬ちゃんは感動しましたね…

  • 123二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 00:30:41

    これ入れて7作じゃないか?
    連作っていうか1スレ完結型だからなこのウインディちゃん(スレ主)

    あとこのスレ主は人入り架空馬作ってなくない?
    作ってたらすまんがスレ教えてくれ

  • 124二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 07:01:32

    保守する

  • 125◆TJ9qoWuqvA23/01/10(火) 10:04:26

    (保守ありがとうなのだ)
    (再開するのだ)

  • 126◆TJ9qoWuqvA23/01/10(火) 10:04:55

    道中は完璧に折り合えていた。

    君は大逃げする馬の番手につけて競馬を進める。

    今日は晴天だけど昨日は雨が降っていた。

    そのせいか内馬場は荒れていて、ぬかるむそこを走らせるのは臆病な気にきっと向いていない。

    だから外寄りに手綱を操って君の楽なコースを走らせていた。

    先頭にいる馬はゴールドシップ産駒。荒れた馬場を苦にしないタフな脚取り。

    彼が抜きん出て1番人気。

    対する君はここが4戦目で、前走2400mの勝ち方が評価されて、2勝馬にもかかわらず3番人気だった。

    ……君の評価に一切の色眼鏡がなかったかと聞かれたら、僕はきっと否定するだろう。

    でも仕方ないことなのだ。

    君がクワイトファイン産駒で、トウカイテイオーの孫で、シンボリルドルフの曾孫である限り。

    それは生涯ついて回る。しぶとい油汚れのように、あるいは祝福のように。


    けど、いつか、いつか、いつか。

    それを覆したいと思っている。

    僕が諦めたと口にする一方で、結局、騎手を辞めずにいる理由が、そこにあった。


    最後のコーナーを曲がる。

    さんざめく声の隙間から、ノイズ混じりの実況が聞こえたような気がした。


    「さあ最後の直線です、最後の直線に入る府中の直線! まず首を伸ばしたのは先頭1番人気の──だ! 差がなく2番手にクワイトファイン産駒──が来て、>>128

  • 127二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 10:12:59

    後方はちょっと離れました!前まではまだ5・6馬身ほどあります

  • 128二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 10:16:02

    おっとここで内、内をついて上がってきた〇〇!〇〇だ〇〇が一気に抜き去った!

  • 129二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 10:16:25

    後続も一気に突っ込んできた!

  • 130◆TJ9qoWuqvA23/01/10(火) 10:48:29

    「さあ最後の直線です、最後の直線に入る府中の直線! まず首を伸ばしたのは先頭1番人気の──だ! 差がなく2番手にクワイトファイン産駒──が来て、おっとここで内、内をついて上がってきた〇〇!〇〇だ〇〇が一気に抜き去った!」


    敢えて避けていた内側から馬が上がってきた。

    その馬は

    dice1d3=2 (2)

    1:母の父メジロマックイーン

    2:母の父シンボリルドルフ

    3:母の父マヤノトップガン

    母の父によく似た毛を風に靡かせ、颯爽と僕らを追い抜いた。


    「……着順確定しました。大どんでん返しを見せた──が1着、半馬身差2着にゴールドシップ産駒の──が、3着に……」


    ゴール後、僕は君の鞍上からなかなか降りられなかった。

    厩務員が促しても、君が重さに身を捩っても。

    誰にも見せられる顔がなくて降りられない。

    僕は、僕はこれ以上ないほど、悔しかった。


    「どうして失速したんだ」


    厩舎に戻って、馬房に入った君を前にそうポツリとつぶやいた。

    最初は無言だった僕に、先生も厩務員もオーナーすらも気遣って側を離れてくれた。

    だからここには僕と君と、それから自由気ままな他の馬たちだけ。

    他馬のことは気にしていなかった。

    ただ僕は君を見て、君の目を見て、独り言では済まない言葉を吐いて。

    君は、怯えたように短く鳴いた。


    「ああ、あそこで君が止まらなければ……走ってくれていれば……」

  • 131◆TJ9qoWuqvA23/01/10(火) 10:48:51

    違う。
    君は何も悪くない。
    わかっていた、君が驚いていたのは。
    君からすれば馬がワープしてきたようなものだったのだろう。
    シャドーロールをつけていようがそれは驚いても仕方がない。
    安定性を欠いた君は行き足が鈍って速度を落とし、気づけば6着。
    プリンシパルSからダービーへの片道チケットを手にできるのは1着馬のみだから、ダービーへの道は完全に閉ざされた。
    先生は「あの状態からよく落馬せずに戻ってきた」と笑っていたけど、本当は悔しかったに違いない。
    ダービーはあらゆるレースの中で特別だ。
    馬にとって一生に一度のレースであり、厩舎にとっても一大事。
    そのチャンスが巡ってきて、それを掴めるだろう馬だったはずなのに。

    あの時、内側に出してやればよかったのかな。
    君の足が耐えられると信じて、ぬかるみに踏み出す勇気が僕にあれば。

    「ごめんなあ……僕が乗ってさえいなければ……」

    君はきっと優駿が生まれる場所に辿り着けた。
    生涯にたった一度、その瞬間のためだけに鳴らされるファンファーレを浴びて、熱狂の渦の中に。
    それを僕が台無しにした。他の誰でもない。君でもない。僕が。

    ずるずるとその場に蹲る。
    今日この日ほど、自分が惨めだと思ったことはなかった。

  • 132二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 10:51:36

    ブンゴウウインディちゃんおはよう
    うーんおつらい

  • 133◆TJ9qoWuqvA23/01/10(火) 10:57:37

    その年のダービーは

    dice1d3=3 (3)

    1:プリンシパルS覇者が勝った

    2:皐月賞馬が勝って二冠馬になった

    3:牝馬が勝った


    僕と君は、厩舎の片隅で、ラジオ越しにそれを知った。

  • 134二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 10:57:45

    辛い展開だろうけど盛り上がったろうなこれ

  • 135二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 10:58:08

    ウワーッ!?

  • 136二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 11:00:40

    プリンシパルSを母父シンボリルドルフが制してクワイトファイン産駒(ルドルフ直系)が6着という競馬ファンの脳がちょっとだけ焼ける展開やん

  • 137二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 11:01:18

    この年の競馬はどうなってんだ!

  • 138二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 11:04:26

    ま、まあ現実もまだ母父ルドルフの子供が元気に産まれてますからね……こうなる未来もないとは言い切れないのがあの……

  • 139二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 11:29:29

    何処かの誰かがウオッカしてる...

  • 140◆TJ9qoWuqvA23/01/10(火) 12:07:25

    君は夏競馬を

    dice1d3=2 (2)

    1:全休して放牧に出された

    2:1戦だけ出走して放牧に出された

    3:休まず出走した

  • 141◆TJ9qoWuqvA23/01/10(火) 12:09:32

    出走したのは2勝クラス。

    距離は

    dice1d3=2 (2)

    1:2600m(阿寒湖特別 or 札幌日H)

    2:2200m(阿賀野川 or 木曽川特別)

    3:2000m(HTB賞 or 信濃川H)


    プリンシパルSに引き続き僕が手綱を握った。

    僕が乗ると、君は少しだけ歩様が硬くなる。

    まるであの日の言葉が君にも通じていたかのようだ。

    けど手綱を揺らせば君は真っ直ぐと歩き出して、ゲートの前に立った。


    「行こうか」


    どうしてか、僕の声の方が震えていた。


    結果

    dice1d99=65 (65)

    (55以上で勝利)

  • 142二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 12:11:53

    このレスは削除されています

  • 143◆TJ9qoWuqvA23/01/10(火) 12:12:36

    時間が少しだけ流れた。

    それは夏の暑さを引きずる初秋。

    君は厩舎に戻ってきた。

    男子三日会わざれば刮目して見よ、という慣用句がある。

    出典は三国志演義で、乱雑にまとめると「三日という僅かに思える時間でも人間は変わる」ということだ。

    確かに休養に入る前と比べて君は、どこか身体つきもしっかりしたように思えた。


    「いい顔つきになったと思わないか?」

    「そう、ですね」

    「精神的にもちくっとは成長してほしかったが、まあ、そこは長く見守ってやろう」


    そう言った先生に曖昧に笑う。

    君の次走はもう決まっていた。

    そこに向けての調教も滞りなく進む。

    僕はぼんやりとしながら、また厩舎の隅で転がる君を見た。


    dice1d99=24 (24)

    (55以上で勝利)

  • 144◆TJ9qoWuqvA23/01/10(火) 12:16:56

    夏に3勝目を挙げた君は、次走を神戸新聞杯とした。
    9月の終わり頃だというのにやけに暑い日で、君は汗から調子が悪い。
    このまま出しても良いのか先生は悩んでいたが、君は何事もなかったかのように立ち上がるから、結局レースに出ることにした。
    しかし君の走りはフラフラと危なげなく、第3コーナーを回り切る頃にはすっかり後方集団に飲まれていた。
    掲示板からも遠く離れて2桁順位。
    君は苦しそうに首を下げて、慌てて降りた僕が覗き込むと、ふいと目を逸らした。

    「──」

    名前を呼んでも馬は反応しない。
    でも僕が首筋を撫でると身体を強張らせ、頼りなさげに鳴いた。


    君は1週間の休養を挟んだ。
    涼しい風が吹く頃には体調も戻り、君はまた競馬に出るようになった。

  • 145◆TJ9qoWuqvA23/01/10(火) 12:21:55

    菊花賞の結果も、ダービー同様ラジオ越しに聞いた。

    初めは君は音のするその小さな機械に怯えていたが、ずっと厩舎に置きっぱなしにされているからかもう慣れたらしい。

    淀の坂を駆け上がっているだろう馬たちの姿を想像しながら、僕はラジオ実況に耳を傾けた。


    「先頭大逃げの──は流石に距離がもたないかズルズルと沈んでいきます!後方伸びてきたのは2番人気──だここは差し切りかちか、ッいいやそれは許さないともう1頭!もう1頭が果敢に伸びる、描く、流線形の!──ッ!ゴールイン!」


    勝ったのは

    dice1d3=2 (2)

    1:プリンシパルS勝ち馬の彼だった

    2:皐月賞勝ち馬の彼だった

    3:夏の上馬として参戦した彼だった


    その馬の鞍上は dice1d2=1 (1) (1:父/2:兄)だった。

  • 146二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 12:23:09

    辛い辛いお辛い
    早く報われてくれ

  • 147二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 12:24:22

    ダービーに勝った牝馬が三冠阻止した形になったか

  • 148二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 12:24:39

    おつらいやーつ

  • 149二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 12:26:04

    なんで騎手くんの人物造形がこんなにリアルなん・・・?えぐれる・・・ワイの心が・・・

  • 150二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 12:28:59

    >でも僕が首筋を撫でると身体を強張らせ、頼りなさげに鳴いた。


    馬は人間の言葉は理解できないが声の調子で感情を判別できると聞く…

    史実でもドトウが「オペラオー」という言葉を聞くとお世話する人間さんたちが悲しげな顔をするから「オペラオー」という言葉が嫌いだったとかどうとか


    プリンシパルで負けた時に騎手君に言われたのが残っちゃってるんだなあ

    おつらいからはよ…報われてクレメンス…

  • 151◆TJ9qoWuqvA23/01/10(火) 12:43:43

    10月の終わり、先生は君の5戦目に3勝クラスの芝3000m競走、古都ステークスを選んだ。

    1600mでデビューし、勝ち鞍は2400mとdice1d3=3 (3) と2200mの3勝しかない君が、3000m。

    1:1800

    2:2000

    3:2200


    正直厳しい戦いになるのではないか、と僕は思った。

    けど先生は「出てみないことにはわからない」と言う。

    父クワイトファインは言わずもがなだが、父の父トウカイテイオーは3000mの勝ち鞍がない。

    母父クライムカイザーも2400m以上の勝ち鞍はなく、1977年当時の天皇賞・春も5着に破れている。


    「でもな、こいつは脚が持つんだよ」


    先生は目を細めてそう言った。

    君は確かに臆病で何にでも怯えるが、虚弱なわけじゃない。

    脚に爆弾を抱えているわけでも、内臓が弱いわけでも、心肺機能に問題があるわけでもないのだ。

    全くの健康体、それどころかその父系の優駿たちとは真逆の頑丈な肉体の持ち主と言ってよかった。


    「きっと、長い距離も走ってくれるさ」


    希望を込めた言葉に、僕はもはや、頷くことしかできなかった。

  • 152◆TJ9qoWuqvA23/01/10(火) 12:48:45

    シャドーロールをつけた君が阪神の大地を踏む。

    出走する他馬はなるほど、父または母の系統が長距離に傾いた馬ばかりだった。

    この中では君は異色の存在だろう。

    人気も落ち込み、とても勝利が期待できる存在じゃない。

    でもオーナーは言う。

    慈しみと、優しさと、穏やかさに満ちる声で。


    「馬主道楽の究極はね、馬が勝つことじゃないんだ。馬が走っていることなんだよ。だから、>>154

  • 153二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 12:51:53

    楽しく走らせておいで。それで戻ってきたならそれでいいさ

  • 154二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 12:55:23

    この子を楽しんできて

  • 155二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 13:10:29

    古都Sが3000mなのは京都改修中で阪神代替開催の時だけ(それ以前は京都2400)なんだけど、この馬の世代は言われてたっけ?

  • 156◆TJ9qoWuqvA23/01/10(火) 13:25:24

    >>155

    (作中に事前説明つけずにごめんなのだ。この物語では改修後も阪神開催3000mIFなのだ。そういうことにしてほしいのだ)

  • 157◆TJ9qoWuqvA23/01/10(火) 13:47:52

    「馬主道楽の究極はね、馬が勝つことじゃないんだ。馬が走っていることなんだよ。だから、この子を楽しんできて」


    その言葉に背中を押されるように、僕らはゲートから飛び出した。

    dice1d99=86 (86)

    (25以上で勝利)

  • 158◆TJ9qoWuqvA23/01/10(火) 14:04:54

    ── それは美しい軌跡を描いた。

    重賞レースでもない。ただの3勝クラス。
    京都改修後も阪神3000mのまま据え置かれた古都ステークスの、最後のワンシーン。
    黒鹿毛の馬が懸命に前を追っていた。
    脚を回して、内目に沿って、ひたすらにゴールを追いかける。
    前を行く1番人気の背中をぴたりと捉えると、長い距離をものともしない身軽さで仕掛けた。
    馬券を握る手に汗が滲む。
    すっかり秋らしい1日のはずが、その競馬場だけはやけに暑いような気がしていた。
    そこにいる人間たちの熱気がそうさせるのだろうか。
    どこか、この熱をしっているような気もして、ふっと、思い至った。菊花賞だ。
    3歳クラシック最後の一冠。
    馬には出走資格がなかった。
    そこに至る道程は険しく、たどり着けないまま今日を迎えた。
    ああ、でも、これでよかったのだと思える。
    阪神の空は何の変哲もない秋空で、雲はあるし、太陽はかすんでいるし、特別奇麗ではないけれど。
    ゴール板を踏んで少しあと。
    ターフに立ち止まった馬が空を見上げた。
    それが何よりも美しかった。

    「これがお前の菊花賞か、──」

    なんの冠もない。
    誰も彼にかぶせるものはない。
    けど馬は3000mを駆け抜け、今日この瞬間から、オープン馬になった。

  • 159二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 14:09:15

    これでオープン入りやな

    ……リアルでクワイトファイン産駒がオープン入りは普通にお祭り騒ぎでは?


    >>156

    なるほど、理解しました。細かい点ですけど過去作で香港マイルを時代に合わせてボウル(1400m)にしてたりしたのでここはどうなんだろうと気になってしまいました

    重賞じゃなくて条件戦だし、確かにレース条件とかは普通に変わりうることですね。(消えた嵐山Sに思いを馳せながら)

  • 160◆TJ9qoWuqvA23/01/10(火) 14:22:37

    僕を乗せて帰ってきた君を、厩務員が抱きしめた。
    涙の滲む目尻を緩ませて喜ぶ。
    先生も、調教助手もオーナーも。

    「競馬の世界は厳しい。重賞にばかり目が行くが、オープンにまでたどり着ける馬が果たして何頭いるか? そこにたどり着けず散る馬のほうが多いんだ。そんな中で……クワイトファイン産駒でオープン入りは並大抵のことじゃ達成できないんだよ」

    だから僕も誇っていいんだと、先生が言う。
    次いでオーナーが僕の手を握った。

    「苦楽を共にして掴んだものだ。君がいちばん、大事にしてあげなさい」

    ……僕がいちばん、大事に?

    その時、ブルル、と君の嘶きが聞こえた。
    君は厩務員に甘えていた。
    自分が勝ったのかどうなのかは君にはわからない。
    けれど、周りの人間の嬉しそうな表情や声、仕草のすべてが、君を喜ばせているようだった。

    「──」

    君の名前を呼ぶ。君は相変わらず反応しない。
    首筋に触れるとまた身体を硬くして、伺うように僕を見た。

    「……ありがとう」

    目を見て告げた、その言葉に想いを込める。
    君は不思議そうな横顔で、僕を見つめ返していた。

  • 161二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 14:25:52

    3000勝った時点でもう祖父の無念を晴らした扱いされそう
    この後春天勝ったらオールドファンが幸せな顔で逝きかねない

  • 162◆TJ9qoWuqvA23/01/10(火) 14:55:48

    「これで晴れてオーブン馬なわけだが……実に悩ましいな」
    「2200mが2本に2400mが1本、そして今回が3000mですからね。なんというか、中長距離ではあるんでしょうけど」
    「1600mがな……2着だっただけにこいつ、やれるんじゃないかと思っちまうんだよな」

    調教助手はその言葉に苦笑いを浮かべつつ、タブレットを開いた。
    先生はそれを覗き込みながら、考え込むように深く息を吐いた。

    「長距離路線なら次走はステイヤーズS、万葉S、ダイヤモンドSに阪神大賞典で考える。重賞は弾かれそうだから、現実的にいって万葉Sか? ここを勝てたら1か月休ませて阪神大賞典からの……」

    先生は口を閉じた。
    でも言わんとしていることはわかる。
    もし万葉Sを勝って、阪神大賞典も勝てたら。
    次走はひとつしかない。

    「て、天皇賞・春……い、行ってみるかぁ~?」

    言葉尻が跳ね上がっていた。
    僕も何も言えずにいると、調教助手が口を開いた。

  • 163◆TJ9qoWuqvA23/01/10(火) 14:56:05

    「なに怯んでるんすか。行けるところまでいきましょうよ。俺たちが一番、信じてやりましょうよ。……それに、俺たちがこんな不安がってちゃ、あいつ繊細なんだからますます走らなくなりますよ」


    調教助手の言葉はもっともだ。

    先生も同じことを思ったんだろう、眉を少しだけ下げると申し訳なさそうな顔でうなずいた。


    「……ん! そうだな。夢物語だと思ってる場合じゃないよな……ヨシ、行くぞ!」

    「まあその前に路線決めないとなんすけど」

    「んっん~! そこに戻っちゃうか~! ……中距離なら中山金杯スタートで、金鯱賞からの大阪杯! んで、もしマイルできるんなら京都金杯スタートで、ダービー卿チャレンジからの安田記念だな!」


    オーナーにも相談してみるか、と先生がまじめな顔で電話をかけ始めた。


    「…‥‥──と、いうわけなんですけど、オーナーはどう思いますか?」

    「そうだな……>>165

  • 164二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 14:59:51

    行っちゃうか春天。そっちのほうがファンも喜ぶだろう

  • 165二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 15:06:14

    行こう、春天。僕は、春の淀を走るあの子と君が見たい。

  • 166二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 15:12:31

    春天か
    賞金積めなくてもワンチャン出られるしな

  • 167◆TJ9qoWuqvA23/01/10(火) 15:18:28

    「そうだな……行こう、春天。僕は、春の淀を走るあの子と君が見たい」

    電話口は先生のはずなのに、そのセリフは僕を指していた。
    先生は何も言わずに僕に携帯電話を渡す。
    震える手で受け取って、僕は耳に当てた。

    「僕、まだ1回も、重賞は……」
    「知っているとも。でも僕は君が、君とあの子が淀の坂を駆け上がってくるところが見たいよ」

    ずっと信じてくれるオーナーだった。
    僕が期待外れだとわかると早々に離れていった、その他の賢明なオーナーとは違う。
    彼は成長の遅い僕を見捨てずにいてくれた、祖父のようだった。

  • 168◆TJ9qoWuqvA23/01/10(火) 15:18:42

    「許してくれますか」

    口が勝手に動く。

    「僕が『諦める』ことを諦めても、許してくれますか……っ」

    今更だと思う。
    所詮、父にも兄たちにも届かないと勝手に諦めたフリをして、そのくせ騎手に縋っていた。
    そんな僕が、また夢を見てもいいんだろうか。
    諦めずに、何度でも挑戦してもいいのだろうか。
    きっと僕じゃなくて別の誰かを乗せたほうが、君はもっとずっと高みへ行ける。
    でも許されるなら僕は。
    僕は君と高みへ行きたい。

    「僕も、その他の誰も君に許しを与えることはできない」

    心臓が凍る。でも。

    「君だけが君を許せる」

    なら許そうと思う。
    僕が夢を見ることを、僕自身が。

    美しい紅葉が散っていく。
    まもなく君は、4歳になる。

  • 169二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 15:23:51

    騎手くんがゆっくり成長してる…

  • 170◆TJ9qoWuqvA23/01/10(火) 15:36:47

    年明け。

    4歳馬になった君のもとにはdice1d999=746 (746) 通のファンレターが届いた。

    勝利を祈願するお守りもdice1d999=572 (572) 個届いているし、僕たち関係者宛にもいくつか届いている。

    ただでさえ少ないクワイトファイン産駒の中で初のオープン馬である君は、SNSでも高い人気があるようだ。

    ファンによる似顔絵の作成や、手作りグッズなどがネット上で公開されているらしい。

    ある日、SNSを楽しんでいる上の兄からそう教えてもらった。


    そんな君の新しい1年は、万葉Sからスタートした。

    中京競馬場、3000m、芝左周り。

    ここでの君はシャドーロールに加えて耳カバー付きのメンコを装着した。

    去年以上に知名度や注目度が上がったせいか、君は大声で呼び掛けられるようになった。

    そのせいか最近の君は音に敏感になっていて、少し乗り辛い。

    それを解消するためのものだった。


    「リラックスしてるな」


    もちろん返事はない。

    けど迷いなくゲートへと進んでいく姿に、小さく安心した。


    そして君は、君と僕はターフを駆ける。

    夢を追いかけて。

    dice1d99=95 (95)

    (25以上で勝利)

  • 171二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 15:41:56

    圧勝!

  • 172二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 15:43:32

    ユメヲカケル・テイオーの孫が夢を駆けてるの感動文すぎるだろ

  • 173◆TJ9qoWuqvA23/01/10(火) 15:55:28

    「よくやった、よくやったよくやった、よくやった~!」


    喜びを爆発させた先生が僕を抱きしめる。

    中年に抱きしめられる趣味はないと思いつつ、僕はそっと抱き返した。


    「これで次走は阪神大賞典だ!」


    バッと離れた先生が僕の肩を掴んでそう言った。

    僕も今度は、迷いのない表情でうなずく。

    君は少し離れた位置で、静かに抱きしめられていた。


    その2か月後。3月。

    僕らは阪神大賞典の舞台に来ていた。

    古都Sと同じコースで行われるこのレースで、君はdice1d3=3 (3) 人気。

    重賞勝ちはないけれど、古都S、万葉Sと同距離における安定感を支持された形だろうか。

    神戸新聞杯以来の重賞レースだったが、不思議と緊張感はなかった。

    それよりも、だ。

    ここを勝てば天皇賞・春への道が開ける。

    そのことで頭がいっぱいだった。

    だけど僕がずっと動揺していたら君が驚いてしまう。

    冷静になるように努めて、それから、僕らはゲートを飛び出した。


    dice1d99=97 (97)

    (25以上で勝利)

  • 174二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 15:56:23

    これはステイヤーですわ(白目)

    こっからどうやってマイルCSいくんや・・!

  • 175二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 16:13:21

    クワイトファインの仔が重症取ったあああ…(炭化)

  • 176二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 16:14:03

    ダイスがデレてる....!?

  • 177二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 16:15:38

    >>175

    アカン、脳がもう焼き焦げとる

    これは重症ですわ

  • 178二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 16:18:44

    もうこの時点ですでになんか涙出てきた

  • 179◆TJ9qoWuqvA23/01/10(火) 16:31:31

    その日の歓声を僕が忘れることはなかった。
    競馬場に響くのは君の名前と、僕の名前。
    騎手8年目で君と出会い、10年目の今年、僕は初めて重賞を制したのだ。
    ずっとトンネルの中で暮らして、たった今、初めて日の光を浴びたかのような。
    爽快で、暑くて、苦しくて切なくて、嬉しいのに痛くて、叫びだしたくなるような。

    「ありがとう」

    ぎゅ、と鞍上から君を抱きしめると、君はまた身体を強張らせた。
    けど僕を振り落とすことなく、好きにさせてくれる。
    歓声が少しかすんで落ち着いて、そして僕の涙が乾くまでずっと。
    僕は君の鞍上から降りなかった。

    ウィナーズサークルではオーナーがニコニコと笑って待っていた。
    おめでとう、と口が形を作る。
    そういいたいのは僕なのに、声を作ろうとしたら涙があふれ出てきそうで、ただ無言で頭を下げた。

  • 180◆TJ9qoWuqvA23/01/10(火) 16:31:42

    「じーちゃ、おんまさ!」

    厩務員に連れられて君が現れると、あたりから控えめな歓声があがった。
    その中に、小さな少女の声も混ざっていた。
    オーナーのひ孫にあたる彼女はずいぶんと小さい。
    聞けばまだ幼稚園生だというから納得だ。
    君に乗りたがる少女に根負けして、最後の写真を撮るとき、オーナーは君の背中に彼女を乗せた。
    想像以上に視界が高くて驚いたのだろう。
    少女はむんず、と耳カバーを付けた君の両耳を掴んだ。
    その光景を見ていた僕らの脳裏に、いやな光景が浮かんだ。
    驚いた君が少女を振り落としてしまう光景だ。
    だが息を呑んだのも数秒で、君は暴れることなく、そのまま少女を乗せてくれていた。

    「撮りまーす! 3、2、1、ピース!」

    幼い少女に合わせた軽快な音頭で最後の1枚をとった。
    耳を掴まれたままの君は横顔は、少しだけ笑っているように見えた。

  • 181◆TJ9qoWuqvA23/01/10(火) 16:42:09

    それから間もなく。君は初めてのG1に足を踏み入れた。

    天皇賞・春。

    京都競馬場、3200m、芝右回り。

    これまでのレースより200m長いその道程を、君は進んでいく。

    たくさんの人の夢と希望と、僕を乗せて。


    ただ、ただ、どこまでも遠くへ。


    dice1d99=13 (13)

    (25以上で勝利/25以下の場合【トラブル】イベント発生)

  • 182二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 16:43:08

    ああああああ…

  • 183二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 16:44:40

    ここでトラブル持っていく愉悦ダイスめ...

  • 184◆TJ9qoWuqvA23/01/10(火) 16:52:08

    天皇賞・春で君はいつも通りの競馬をスタートさせた。

    先導する逃げ馬にぴたりと張り付いた好位追走。

    けれど君は、

    dice1d3=2 (2)

    1:落鉄の影響で走りが乱れてしまい後続集団に呑まれてしまった。そうしてパニックになった君は内ラチに突っ込んで怪我を負い、競争中止となった。

    2:追い上げた馬に競り掛けられたのがストレスになったようで斜行。その最中に右足を捻ってしまったようだった。

    3:ラスト400mの段階で心房細動が発症し、競争中止となってしまった。

  • 185二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 16:55:08

    シルヴァーソニックするくらいで済んでほしかった…
    大丈夫だろうか

  • 186◆TJ9qoWuqvA23/01/10(火) 16:55:10

    君が捻った右脚は幸い重傷ではなかったようだ。

    しかし先生は念のためといって、君を休ませることにした。

    dice1d3=2 (2)

    1:1か月間の休養

    2:半年間の休養

    3:5歳からのリスタートのため全休

  • 187◆TJ9qoWuqvA23/01/10(火) 17:13:10

    君は半年間休養することになった。

    そうして戻ってきたのは紅葉の美しい9月の終わりごろ。

    そのころには同世代の牡馬は天皇賞・秋やジャパンカップの準備を進めていて、君だけが出遅れた形だった。


    「おかえり、──」


    君は相変わらず馬房の隅で寝転がっている。

    長い休養明けの馬は、大半が走る気力をなくすらしい。

    だが君は凛々しい顔で戻ってきた。

    あんなにおびえていた自分の影にも、他馬の嘶きにも鳥の囀りにも、ただの一度も怯まない。

    まっすぐと立つ姿が、なぜか、どんな重賞馬よりも頼もしく思えた。


    「……次はマイルだよ」


    脚を捻った馬の調子を見て、先生はマイル路線でリスタートすることに決めた。


    「長いところを使うのは調子を見てから追々な」


    そう言った先生の顔は、少しだけやつれているようだった。


    秋の初戦はG2・富士ステークス。

    東京競馬場、1600m、芝左回り。

    大胆な距離短縮に、先生は方々から非難されたらしい。

    でも君は短い距離を走れないわけじゃない。

    僕も先生も、そう強く信じていた。


    dice1d99=11 (11)

    (25以上で勝利)

  • 188◆TJ9qoWuqvA23/01/10(火) 17:22:39

    富士Sで君は6着だった。

    休養明けとしては決して悪くない数字だ。

    理想は確かに勝利だったけど、今回は敗因がはっきりしていた分、悲壮感はない。


    「幸い、回避馬が出たことでマイルCSには出れる。問題は1600mの走り方を──に教える方法だ。富士Sでは番手に付いたまではいい。でも加速のタイミングが距離に合ってなかった。わかるな?」

    「はい」


    敗因は加速のタイミング。

    君は明らかに長距離のタイミングで脚を伸ばす癖ができていて、それが富士Sでも出てしまった。


    「マイルCSではガシっと追い込んでいけ。大丈夫、今のあいつなら、多少追われたところで怯えて止まったりなんかしないから」


    こくりと頷く。

    そしてレース前日。

    僕らに最悪の知らせが舞い込んできた。


    dice1d99=1 (1)

    ~49:オーナーが重病で入院

    ~99:オーナーが事故で入院

  • 189◆TJ9qoWuqvA23/01/10(火) 17:28:31

    「オーナーが重病を……!?」
    「ああ。しばらく競馬場行けなるから悪い、って本人から連絡があったよ」

    オーナーは高齢だ。
    もうじき三十路になる俺を孫扱いできるほどで、ひ孫の少女だっている。
    いつ倒れてもおかしくない人だったが、ほとんど馬への情熱だけで生きながらえているような人だった。

    「退院はいつ頃ですか」

    僕がそう聞くと、先生は少しだけ言い淀んで、それから言った。

    「もって1年ちょっとだそうだ」

    僕が息を呑むのと、遠くの厩舎から鳴き声が聞こえたのは、ほぼ同時だった。

  • 190◆TJ9qoWuqvA23/01/10(火) 17:35:27

    それから君の調教にはさらに熱が入ったように思う。

    坂路の回数を増やし、苦手な併せ馬も積極的に使った。

    君は追うごとに練度を高め、仕上がっていく。

    マイルCS当日のパドックでは、君の美しい馬体を多くの競馬ファンがほめていた。


    「負けられないな」


    ゴール板を踏む瞬間まで誰が勝者かなんてわからない。

    だから闘志を燃やして走るのだろう。

    父も、兄たちも、僕も、そして君も。


    「……行こうか」


    今日も君から返事はない。

    でもそれでいい。

    踏みしめた一歩の重みが、きっとすべてだ。


    dice1d99=78 (78)

    (10以上で勝利)

  • 191二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 17:37:50

    春天惨敗・怪我で長期欠場からの復帰戦負けで次のG1勝利は紛れもなくテイオーの血ですわ

  • 192◆TJ9qoWuqvA23/01/10(火) 18:01:03

    『クワイトファイン産駒・──がマイルチャンピオンシップ(G1)を制覇』

    そう見出しが躍る号外を、先生は大事そうに抱きしめた。
    今頃、オーナーのもとにも届いているのだろうか。
    オーナー不在のウィナーズサークルにたたずむ、君の姿が。

    シンボリルドルフからトウカイテイオーへ。
    ミスターシービーからオーロラテルコへ。
    その2頭からクワイトファインへと引き継がれていった血。
    そして失意のまま引退した77年ダービー馬クライムカイザーの執念の血。
    どんな名馬であっても血をつなぐのは容易じゃない。
    それを痛いほどファンに叩きつけた血の集大成が、きっと君なのだろう。
    でも君がすべてじゃない。君だけが答えじゃない。
    幾重にも重なった誰かの努力の先に、ただ、君が立っていて。
    そして僕らは出会った。

    「──」

    今日も君は振り返らない。
    そうだ。そのままでいい。
    進もう。
    君と僕とで。次の軌跡を探しに。

    そうしてまた、春が来た。

  • 193◆TJ9qoWuqvA23/01/10(火) 20:31:33

    君は5歳になった。
    ちょうど1年前、君はまだオープン馬ですらなかったのに。
    過去と思うにはまだ新鮮な記憶の淵で、4歳の君が頭を擡げる。
    僕もその頃はただの四流騎手だった。
    君と共に走り、君と共に勝ち、君と共に負け。
    君と共に痛み、君と共に治し、君と共に立つ。
    そうして掴んだもの全てが、君なしには為し得なかったものばかりで構成されている。

    僕は今も、プリンシパルSの後、君を苦しめたことを後悔している。
    君は僕がみてきた馬の中で一番繊細で、柔らかい輪郭をなぞるような、そんな臆病な馬だったから。
    だから僕の感情の全てに気づいてしまったのだろう?
    重賞も勝ったことない落ちぶれ騎手のくせに夢を見て、僕のせいで敗れたのに君を詰った。
    あの醜いものに触れてから、君は僕が近くにいると身体を強張らせるようになったんだ。
    でも君のすごいところは、それでも僕を振り落とさなかったことだ。
    僕という醜い人間から、逃げようとはしなかったことだ。
    そして僕の感情が育つのを、待ってくれていたことだ。

    今更、ごめんと言っても通じないかもしれない。
    それでも僕はいつか、君と目を合わせて言いたい。

    「あの時は本当にごめん」

    そこからもう一度、君と歩き出したいんだ。
    それがいつになるかはわからないけれど。
    その時も僕らが一緒に走っているかはわからないけれど。
    心を通じ合わせて、同じ景色を見上げたいと思う。
    だから僕は、いつかやってくるその日のために息をする。
    君の鞍上で、もがきながら、足掻きながら、息をするのだ。

  • 194◆TJ9qoWuqvA23/01/10(火) 20:32:01

    ── そしてまた、時が巡り、3月。

    僕らは阪神大賞典の舞台に立った。


    「久々の3000mだね、──」


    君はやっぱり返事をしない。

    けど闘志の高さを表すように足を踏み鳴らし、頭を上げる。

    僕からは見えない。

    でもわかる。君の瞳はきっと、輝いている。


    dice1d99=53 (53)

    (10以上で勝利)

  • 195二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 20:34:40

    今度こそ春天いけるか

  • 196二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 20:35:19

    このレスは削除されています

  • 197◆TJ9qoWuqvA23/01/10(火) 20:40:46
  • 198二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 20:41:22

    うめ

  • 199二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 20:44:18

    うめ

  • 200◆TJ9qoWuqvA23/01/10(火) 20:45:25

    閲覧ありがとうなのだ

オススメ

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