ブルーロック×サスペンス

  • 1二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 19:06:02
  • 2二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 19:06:48

    「久々の大阪!やっぱ関西やな」
    俺は空港から出てすぐに大きく深呼吸をした。
    「大阪の空気は汚いよ。世界で16番目や」
    「この汚い空気がクセになるんや」
    コロコロとスーツケースを転がし嫌味をかけてきたのは氷織羊。キックだけは非凡の男や。俺たちは監獄の幕間に故郷に帰ってきたのだ。
    「俺は伊丹駅から環状線の方行くけど、どないするん?」
    氷織は黙ったまま、人の往来を見つめている。
    「…素直じゃないやっちゃな。行くで、結構暇になるからな遠出しよか」
    家帰りたくないならそう言えや。
    「どこ行くつもりなん。烏おすすめの水飲み場?」
    「あほ、知らん場所に適当に行くのが楽しいねや」
    バスに乗って伊丹駅へそれから環状線に大阪駅で降りて直感で電車に乗る。こういうのは各停が面白い。氷織はあんまり遠出したことないだろう。どうせなら二人とも知らない場所の方が面白い。駅構内をうろついついると、マットな黒い布を被った老婆が話しかけてくる。
    「にいちゃん、占っていかないかい」
    「遠慮しとくくわ、自分の運命知ったらおもん無いから」
    大阪にはよくあることや。ホームレスやら、占い師やら、ナンパ師やら胡散臭い奴らが駅にいるのは。
    「連れの子は占ったよ」
    「最高の名前やってさ。どんなこともうまく行くらしいわ」
    「あほ、知らん奴に名前教えんなや」
    「U20の試合見た人は知ってるから、ええやん別に。結局世界に名前を轟かせたら勝手に占われるやん」
    大きなため息が出る。ああ言ったらこういう、可愛げないわ。
    「烏旅人。当たってへんかったらキレるで」

  • 3二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 19:06:59

    スレ画で誰が過労死するか察した

  • 4二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 19:08:43

    「うん、うん、なるほど烏旅人ねぇ」
    老婆の占い師は俺の名前を書いた紙をしわがれた指で撫でた。正直占いなんて嘘くさいと思っているが、老婆の占い師はなんだか雰囲気がある。貫禄だろうか。年の功ってことにしとこか。
    「うん、最悪の運勢だね。なにをやっても上手くいかない。全部大凶だ」
    老婆は全部にアクセントを込めて言った。
    「あ?自分の運命は自分で切り開く。上手くいかないやなくて上手く行かすんや。あー、アホらしい。行くで、氷織」
    なんや、占いって当たり障りのないこと言うんちゃうんか。ていうか全部上手くいかんってなんやねん。
    「占いなんて眉唾って言ったのに、怒ってるやん」
    氷織が笑う。目が嫌味ったらしいねん。

  • 5二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 19:09:58

    大阪住みだけど治安の悪い駅だとガチで変な奴めっちゃいるからな
    占いババアくらいは居ることに信憑性があるよ

  • 6二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 19:10:31

    「無人駅やん。こんなんお金払わず出る人いそうやね」
    「おい、今払うはした金ケチってサッカー選手の未来潰すなや」
    「わかってるもん」
    ふわっと涼やかな風が吹く。周りは田んぼ、もしくは林、もしくは森。緑豊かで結構なことだ。大阪にも多少は移植した方がええ。
    「どうすんの、ここから。バス停もなさそうやけど」
    「歩くに決まってるやんボケ」
    スーツケースを引く音が止まる。
    「立ち止まってても、道は進まんで」
    氷織は親指を立てて、道路に突き出した。前方から小型のトラックがガタガタと舗装されていない道を走ってくる。ヒッチハイクするつもりらしい。
    「そんな上手く行くかいな」
    鼻で笑ってやると、俺たちの目の前でトラックはぴたりと止まった。
    「にいちゃんたち、トラックの荷台だったら乗せてやるぞ」
    上手く行ってしまった。氷織を横目で確認すると、得意げな顔をして口端を上げた。
    「だって僕の運勢、最高やもん」

  • 7二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 19:10:57

    >>5

    ほんまそれな

  • 8二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 19:17:24

    氷織は助手席、俺はトラックの荷台に詰め込まれ、車は発車する。なんで俺が荷物みたいに扱われなあかんのや。おまけに道が悪く、かなり尻に振動がくる。スーツケースも飛び跳ねるから押さえつけとかなくてはいけない。しばらくケツをしばかれ続けて、トラックは趣深い平屋の前で停車した。運転手のおっちゃんと談笑しながら降りてきた氷織がトラックの荷台まで回ってくる。
    「なんや、考える人みたいなポーズとって。運勢悪くて地獄の門開けそうなん?」
    「…いつの間に仲良くなっとんねん」
    「ここの家の人、泊めてくれるねんて。良かったな「最高」の運の僕がいて」
    俺たちを下ろして、トラックが走り去る。この平屋の持ち主はあのおっちゃんじゃないらしい。
    「いらっしゃい。袴田さんから話は聞いていますよ」
    出迎えてくれたのは、品の良さそうな黒髪の女性だ。浅葱色の着物を着ていて、いかにも大和撫子という雰囲気がある。顔立ちも整っていて、乙夜がいたら確実に唾をつけてそうな美人だ。
    「すみません、突然やのにこんなよくしてもらって」
    「良いんですよ、こんな田舎に来客なんてほとんど来ませんから」

  • 9二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 19:20:55

    >>5

    天王寺駅でいきなり肩揉みしてくるおじさんに会ったことあるわ

  • 10二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 19:27:27

    わろた

  • 11二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 19:29:00

    美しい石畳を抜けて、玄関引き戸に入る。外観は昔ながらの日本家屋という出立ちだが、室内には少し違和感がある。室内も立派な和を感じるテイストなのだが、鏡が多い。一般的な家庭は玄関と洗面所と風呂場くらいかもしれないが、この家には玄関にさえ五つの鏡がついている。まぁ、女性だしいついかなる時も身だしなみに気をつけてるんやろか。
    「どうぞ、こちらでお待ちください。お茶を持って参りますので」
    通されたのはこれまた美しい和室だ。客室らしいこの部屋にも、鏡が大小五つある。それでも和の雰囲気が保たれていて、数ある鏡さえも計算されているような気もする。
    「不思議な家やな、鏡いっぱいや」
    「ふふ、よそから来た方にはよく言われます」
    背後から声をかけられる。失礼かもしれないから小声で言ったのに聞こえてたんか。
    「おわっ、すみません。」
    「いやいや、いいんですよ」
    丁寧な所作でお茶を起き、彼女は軽くお辞儀をした。
    「私、米田明美と申します」
    「俺は烏旅人です、こっちは」
    「氷織羊です。おおきに」
    出されたお茶を一口飲む。高い味するわ。
    「あー、いっぱい移動したら疲れたな」
    「ここまで連れてきたんそっちやん」
    「疲れたなら寝ててもいいですよ」
    また背後から明美さんの声が投げられる。ちょっとだけ、昼寝させてもらうか
    「今日はたまたま年に一回のお祭りがあるんですよ。それにも参加してくださいね」

  • 12二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 19:33:21

    そして俺たちは目が覚めると、仲良く背中合わせに縛られていた!
    うそやろ突然俺達をコナンの世界に巻き込むなや。
    ひんやり土っぽい床のせいでケツが冷たい。これ、ズボン土だらけちゃうん。
    「おい、氷織。起きろ俺ら騙されてたで」
    「んー」
    「んーやない、はよ起きろアホ」
    だんだん意識が覚醒してきたのか、氷織はもそもそと動き始めた。
    「あー、やばいやん烏の運が悪いから」
    「ヒッチハイクしたのはそっちやろがい!」
    「このままやと烏が焼き鳥になる」
    「アホ、ここは関西や。関西人はそんな野蛮なもん食わん。そっちこそジンギスカンコースまっしぐらやろ」
    「僕たち太らされて食べられるんかな。ヘンゼルとグレーテルやな」
    俺たちが縛られている場所は物置っぽい。薄暗く、若干埃っぽい。扉の隙間から石畳が見えるからメインの棟から少し離れているのだろう。この物置にさえ、見える範囲だが鏡が二つついている。いらんやろ。壁の突起に縄がくくりつけられている。モノを取ろうと動こうにも、突っ張って進めない仕様だ。足は比較的自由だが、最低限の長さに計算されているようで、思うように動けたりしない。
    「おい、そっちになんか鋭い尖った奴ないか」
    「ない」
    絶体絶命、あの女が戻ってくる前にここを出る。ミッションインポッシブル開始や。

  • 13二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 19:51:19

    俺たちは今、田舎町に来ている。見渡す限りの緑は普段のビル群に慣れている俺たちからするとやけに新鮮だ。
    「んー、空気が美味い!」
    大きく伸びをする蜂楽に声をかける。
    「すごいな、蜂楽のお母さん。お祭りに絵が使われるんだろ」
    「でしょでしょ。楽しみ〜」
    俺たちは片田舎で行われる祭りに蜂楽のお母さんの絵を見に来た。村おこしとして今売り出し中の画家を使った、アートと伝統の融合らしい。美術はまぁ結構得意?だと思ってるけどアート方面の知識は全くないので楽しみだ。小さいけど屋台もあるらしい。
    「すげぇな、こういうのどかな風景好きー」
    「都会っ子潔はあんまりこういう景色慣れてないか。鹿児島には結構あるぞ」
    千切はそのまま國神の横腹を突いた。
    「秋田はどう?」
    黙ってる國神にまたエルボーを喰らわす。ドンっと音が鳴ってるから結構痛そう。千切は俺と蜂楽が遊びに行く計画を立ててる時に俺も行くと入ってきたのだが、何を思ったのか行かないの一点張りの國神を無理やり連れてきたのだ。落ち込んでいるのか前と違うオーラを発してる國神をどう口説き落とすのかと思っていたが、やっぱり國神は國神だ。結局断りきれずに来た。
    「秋田は結構こんな感じだ」
    まぁ、電車でも喋ってたし満更でもないのだろう。

  • 14二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 19:55:18

    客人の息子とその仲間達として、丁重に迎えてくれた村長夫婦は人の良さそうな方々だ、
    昼間からすき焼きを振る舞ってくれるらしい。
    「えー!いいの!すき焼き♪すき焼き♪」
    真っ先に牛肉を掻っ攫ったのは蜂楽だ。
    「あ、おい蜂楽野菜もちゃんと食えよ!」
    「んま。最高だな」
    「すみません。こんなに良いもの食わせてもらって」
    國神が奥さんに頭を下げた。
    「いーのよ。ご飯もいっぱいあるから食べな食べな。こんな田舎にお客さんなんてこないから、嬉しいわぁ」
    奥さんがそれぞれの茶碗に白米を盛ってくれる。食べ盛りの男子高校生にはありがたい限りだ。
    「蜂楽くんのお母さんはすごく絵が上手いね。こりゃきっと村のみんなも感動するだろうなぁ」
    昼間からビール瓶を開け、村長は蜂楽の肩を豪快に叩いた。
    「うんにゃ、天才画家だからね!」
    「お母さん、どんな絵描いたんだ」
    千切が聞いた。質問の間も食べる手は止めない。
    「昔からこの村で信仰されている二つ頭がある白い蛇の神様がいるんだ。それを描いてもらったんだよ」
    なかなかイカつい神様だな。まるで孫に語りかけるように話す村長を見て、俺は質問してみることにした。その方が嬉しいかと思って。
    「どんな神様なんですか?」
    「その神様は昔から川の氾濫を治めてくれたり、雨を降らせてくれたりしたんだ」
    イカついけど優しい神様みたいだ。神様も見た目によらないらしい。男子高校生四人の手によって、すき焼きは着々となくなっていく。昼はすき焼き、夜は屋台。最高の1日になりそうだ。

  • 15二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 20:07:35

    「くそ、解けへんやんけ。ほんまにあの女が結んだんかこれ」
    「ちょっと尻触らんといてや」
    「触りたくて触ってへんわ!ボケ!お前も気合い入れて縄解こうとせぇ」
    「烏、カァカァうるさい。声でかい」
    必死に身を捩って縄から抜けようとするも、寝ている間にガッチリと結ばれた縄は硬い。くそ、関節外すか?そう思っていると物置の扉がカラカラと開いた。
    「あ、お前!何してくれんねん!ボケカス!地獄まで追いかけたるからな!」
    俺の反射神経の良い暴言は、明美にあっさりとスルーされた。
    「ふふ、啖呵スルーされてんで」
    「お前味方やろが」
    無視を続ける明美は手早く俺たちの縄を解き始める。あ、なんや明美さんは味方やったんか、と手のひらを返す前に、氷織が立ち上がった。
    「おい!待てや俺の縄!」
    またも無視。無視られても挫けへん。出身地大阪やぞ。
    そのまま俺はガン無視され、またも物置の扉は閉まった。後ろ手にピースする氷織、ムカつくな。絶対デコピンしたる。
    そして俺は今度は一人きり、薄暗い物置に取り残された。
    「なんなんや、これが最悪の運ってやつか…?」

  • 16二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 20:09:16

    ワンチャンまだドッキリの可能性が……無いか……頑張れ烏!!

  • 17二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 20:14:08

    「うわー、沢山いるね」
    「いや、沢山ではなくないか?」
    蜂楽が屋台が出ている通路を見てのんびりと言った。まぁ、この村では年に一度のお祭りみたいだし、人は少なくはない。けど、沢山ってほどでもない。俺の知ってるお祭りは人間缶詰みたいになるし。
    「お、都会っ子自慢か?こんなもんだろ。なぁ、國神」
    「…そうだな。俺の地元もこんなもんだったな」
    「いやいや、俺の地元だってすごく都会ってわけじゃないって!」
    すき焼きを食べてから國神はまぁまぁ饒舌になった。美味しいものは人の口をなめらかにするらしい。
    「蜂楽のお母さんの絵って何時から?」
    「8時!まだ2時間くらいある!屋台見に行こ♪たこ焼きたべたーい!」
    「お、いいねぇ」
    蜂楽はたこ焼き♪たこ焼き♪と上機嫌そうだが、途中射的を見つけそっちに興味が移ったようだ。國神を引きずって、射的の方に向かっていった。
    「じゃあ俺たちたこ焼き買いに行くか?」
    「そうだな」
    並ぶ間も無く、すぐにたこ焼きにありつける。4人分のたこ焼きを買って、近くにある色が褪せて白くなりかけているベンチに腰掛けた。
    「先食っちまおうぜ。買ったやつの特権」
    「そうだな」
    空を見上げると夕焼けの橙と夜の群青が溶け合って、すごく綺麗だなと思った。なんとなく都会より空が綺麗に見える。これ、完全に夜になったらすごく星が綺麗なんじゃないか。
    「ずっと遊びに来たかったんだ」
    千切がポツリと呟いた。表情を伺うと心底嬉しそうな、喜びを噛み締めているような、そんな表情をしていた。そんなに楽しみにしてたんだ、千切は。そう思ってくれてたなんてなんだかすごく嬉しい。
    「U20の後には國神いなかったろ?だから、この四人でちゃんと遊びたかったんだ」
    「…俺も!そう思う」
    「じゃあ、目一杯楽しもうな!」
    千切とこぶしを合わせる。最高の1日だ、今日は。

  • 18二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 20:29:18

    このレスは削除されています

  • 19二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 20:37:37

    「よっ、オラ!」
    なんとか足の上に乗せた500円玉くらいの大きさの石を蹴り上げる。狙うは鏡。俺の目線より50センチくらい上、距離は一メートルくらい離れている。俺はお前に全てを賭ける!ガシャアンと大きな音が鳴って、鏡が割れた。運ちゃうぞ。俺が積み上げてきた実力が俺を助けたんや。
    「これは非凡」
    精一杯足をのばして、割れた破片をこちらに寄せる。小さくても良い、縄を切れるなら。
    「よし、いけるでこれ」
    後ろ手に破片を掴む。ジョリジョリと徐々にだが、縄は切れている。ぬかったなアホ。非凡なサッカープレイヤーをなめるなよ。身体についた土を払い、立ち上がる。湿っぽい土はなかなか取れない。
    「よっしゃ出るで」
    木材の扉を開け、後は氷織を追いかけるだけ、そう思ったが現実はそううまく行かない。扉が開かないのだ。蹴飛ばしてみたが、かんぬきが通されているようだ。
    「はぁ、くそ。ほんまに運悪いな」
    その時俺は思い出した。尻ポケットにスマホ入れてたことを。黒いパーカーで隠れてあの女はスマホがあることに気が付かなかったかもしれない。尻を探ると、硬い感触がある。
    「ビンゴ。運ええやんけ」
    さぁて、誰に電話しようかな。俺は物置をぐるりとまわる。電話する時の癖や。関西人は電話する時ソファの周りをぐるぐるまわる習性があるんや。物置は基本的に武器になりそうなモノはあまりない。色褪せた紙とか、そんなんばっかり。紙じゃ盾にもならへんぞ。結構な年代を経験してそうな和紙を見てみるも、ごちゃごちゃした続け文字で読めへん。鉄パイプとかあったら無理やり扉壊して出るんやけどな。
    せっかくやし、これ読むか。もちろん俺が読むんちゃう。こんなん一般男子高校生は読めへん。スマホはよし、一応電波はあるな。
    「もしもし?ちょっと聞きたいことあるんやけど」

  • 20二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 20:43:30

    うんこみたいな1日を過ごす烏と楽しそうな1日過ごすE4

  • 21二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 20:53:43

    「潔!じゃじゃーん!ミルクキャラメルゲーット!」
    「お、すげぇな!蜂楽!よっ!ゴルゴ13!」
    「名スナイパー蜂楽13から潔くんにキャラメルを分けてあげよう!」
    ミルクキャラメルをゲットした蜂楽は嬉々として俺達にキャラメルを分け与える。
    「ふふふ、俺の目の前に立つんじゃない!」
    「背後じゃね?」
    目の前に立って殴るのはもう暴君だろ。
    「千切、これ」
    國神が差し出してきたのは、スプリングヘアゴムだ。プラスチックの花があしらわれていて、小学生の女の子が好きそうだ。國神13はこれを撃ち落としてきたらしい。
    「なんだ〜?俺は女児じゃねぇぞ〜」
    からかってやるといらないなら良いと手を引っ込める。
    「いーや、貰うよ。昔ねーちゃんこれ好きだったんだよな。懐かしい」
    本当にお祭りでつけてたっけ。こういうのまだ家にあるかな。
    「じゃーん。どうだ。似合ってるだろ」
    その場でやったから適当にポニーテールだが、まぁ俺だし似合ってるだろう。似合ってるって言えよと背中を叩くとパシィンといい音がした。

  • 22二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 21:00:55

    コナン一同と服部平次サイドみを感じる、好き

  • 23二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 21:17:04

    潔たちと烏たちはどう繋がるんだ

  • 24二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 21:25:56

    「潔、たこせんの具材めちゃくちゃ下に落ちてるぞ」
    「うわっほんとだやばいやばい」
    「んべー、青い舌。アバター蜂楽」
    「國神、やるよ。わたがし」
    「…飽きただけだろ」
    たくさん食べ物を買って、歩く。やっぱお祭りと言ったらこれだよな!短いアーチの橋を通る。薄暗い川に夜空が少し反射してきらりと光る。
    「8時から絵が神社でお披露目されるんだけど、おんなじ時間にこっちでもイベントやるんだって」
    蜂楽が川を見下ろして話す。
    「どうする?絵は動かないし、先にこれみる?」
    「川で何するんだ?」
    イカ焼きを開けながら千切が聞く。
    「なんかねぇ、神様のためにお肉を流すんだって船で」
    「えー、もったいねぇ〜」
    思わず文化もへったくれもない感想が出る。つい、納豆だけの期間が長くて…。
    「蛇って肉食うんだな」
    國神の言葉に俺はうんうんと頷いた。偏見だけど虫とか食べてそうだ。
    「あ、やべスマホの充電ないわ。充電器取ってくる」
    千切がくるりとUターンする。
    「え、あと15分で始まるぞ」
    「大丈夫、すぐ戻るって。行くぞ國神」
    「わ、わがままお嬢…」
    まぁ、二人ともしっかりしてるし戻って来れるか。國神は黙って着いていく。やっぱり変わってない。
    「絵、楽しみだね、潔」
    夜空を見上げる蜂楽の目は星空に負けないくらいキラキラしてる。
    「そうだな、楽しみだ」

  • 25二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 21:31:59

    アカンで烏はよ逃げなジビエにされるわコレ

  • 26二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 21:45:15

    「もしもし?乙夜か?ちょっと聞きたいことあるんやけど」
    「ちゅーす。ん?烏?今デート中だから手短に頼む」
    「あ?こっちは大変なんや、鏡だらけの怪しい家に閉じ込められてんねんぞ。ほんま、街中に浮気バレて深夜しか出歩けへんようになれ」
    「ひど、鏡だらけって何それ。ラブホ?」
    「…ラブホやった方が百万倍よかったわ」
    「閉じ込められたって何してんの、ヤバ」
    「ヤバいでほんま。あのクソ女に眠らされて縛られてんぞ」
    「え、緊縛プレイ?アガるな」
    「アガらんわボケ。ラブホちゃう言うてるやろ」
    ついつい本題から逸れる。俺はビデオカメラに切り替えた。
    「これ、読めるか。なんて書いてあるかわからんねん」
    「えー、俺勉強嫌いなんだけど」
    「読めや。忍者やろ」
    「忍者は古文必須じゃありませーん」
    沈黙。やっぱ忍者ってだけじゃ読めへんか。
    「じゃあ。現代語訳。むかーしむかしあるところに二つ頭のあるイケイケの蛇が」
    読めるんかい。
    「長い長い。時間ないからええとこだけまとめてくれ」
    「えーっと、1、蛇の神様のために毎年一回生贄を捧げる。2、美食家の神様は頭しか食べないので、残りは川に流す。3、村に平和が訪れる」
    「ナイス。流石に忍者やな」
    「なんか実家に同じようなやつあったから。お、役に立ったようでなにより」
    「おーおーデートしてきてええぞ、じゃあな」
    やけにはっきりと、木がざわめく音が聞こえる。ザワザワザワザワ、まるでこの村に足を踏み入れた間抜けな俺を嘲笑ってるかのようだ。えげつない御伽話や。俺の嫌な予感当たるなよ。
    「まず、目の前の問題から片付ける。話はそれからや」
    ぐるぐる回ってる間に発見した、ノコギリを手に持つ。少し錆びてるが、使えないこともないはずや。
    「日曜大工開始や。…俺、ええ夫になるな」

  • 27二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 21:51:23

    流石だ忍者
    でも実家に似たようなやつがあるってのが怖いぞ忍者
    お前の故郷も因習村なのか忍者

  • 28二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 22:26:45

    >>12

    なるほどね烏を食べるのが茨城だからか。誰が野蛮やと!!!

  • 29二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 22:33:46

    ここの角を曲がって右?いや左だったか。あ、あったここ、ここ。似たような平屋ばっかりでよく分かんないんだよなぁ。畑と木ばかりで道標もないし。
    玄関引き戸を開ける。
    「ただいま〜」
    「孫か」
    「今日は孫みたいなもんだろ」
    確か玄関を抜けて左の部屋に俺たちの荷物が。あれ、スーツケース?俺そんな大荷物で来てないよな。
    「千切、ここじゃねぇ」
    「え?」
    「いや、村長の家こんな鏡いっぱいなかっただろ」
    周りを見渡すと確かに鏡が沢山ある。廊下にさえ6個ある。
    「うわほんとだナルシストの家か」
    「おい、失礼なこと言うなよ」
    俺たち以外にも外から来たやついるんだな。村長はお客さんは俺たちだけって言ってたけど。感想を國神に伝えると、
    「旅行にいく準備じゃねぇか」
    と言った。確かにその可能性もある。
    「…おい、充電器取りに行くんだろ。勝手に上がったままじゃ悪いし、出るぞ」
    うーん、なにか引っかかる。俺の灰色の脳細胞がもう少しで何かを思い出しそうなんだよな。
    「あー!!わかった、わかったぞ!國神!!」
    「おい、声でかいって!不法侵入中だぞ」
    國神の焦った声が面白い。調子戻ってきてるなさては。
    「俺の名推理、聞くか?ワトソンくん」

  • 30二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 23:03:10

    連れてこられたのは、神社の境内。拝殿から少し離れたところに建つ、小さな建物の中だ。
    「…あなたには、今日のお祭りの供物になってもらいます」
    そう言う明美さんの手はブルブル震えていた。なんでそっちが震えてるねん。僕が黙っていると、ぽつりぽつりと明美さんの独白が始まった。
    「元々は、私の予定だったんです…」
    僕は返事をしなかったが、彼女はそのまま続ける。気持ちの整理に話したいだけなんだろう。
    「でも、私は、まだシねない…。村の外に、生涯を共にする約束をした人がいるから…。こんな私でも、選んでくれたの…。素敵な人だから…」
    どうして烏ではなく僕を選んだのかわからない。けれど、明美さんにとっては正解だ。烏なら必ず抵抗するから。
    「そんなにしてまで生きたいんや」
    ええな、帰りたい場所があるなんて。僕の発言はスルーされた。聞いてないようだ。
    「お祭りが終わったら袴田さんが私を外に連れ出してくれるんです…。そしたら、私は村の外で、新しい人生を、だから、だから」
    もしかして、家に帰らんで良くなるかも。僕が伊丹空港で願った通りや。

  • 31二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 23:34:44

    「なんだ、こんな田舎に謎もくそもないだろ」
    「いーや、ある。解けた!この家の鏡の謎!」
    國神ははぁとため息をついて顎で話を促した。
    「どーぞ、シャーロック千切さん」
    「おー、良い心構えだなクニガミ・H・ワトソン」
    俺はわざとらしく顎に手を当てて、ゆっくりと歩き回る。意味はない。ただの演出だ。
    「まず、この鏡達に注目してくれ」
    國神は玄関から曲がってすぐにある鏡を見た。素直なやつだ。
    「この鏡は、どの角度から見ても顔が確認できるよう位置を計算されて作られてるんだ。玄関の鏡がわかりやすいよな」
    俺たちは玄関前に移動する。四方全てに鏡がある。それから角度のついた鏡、合計五つだ。
    「顔を、確認。なんの意味があるんだ」
    その質問、待ってました。
    「ステップ・ファザー・ステップっていう小説知ってるか?それに出てくる登場人物にこの家とよく似た家に住んでる人がいるんだ」
    一呼吸おく、國神は無反応だ。
    「その人は耳が聞こえなくて、読唇術で相手と会話してるんだ。普通の会話と違わないくらい高度に。後ろから声をかけられても、鏡で相手の口の動きをみて、返事できるくらい」
    「なるほど、この家主は耳が聞こえないから、鏡だらけの家に住んでると。そう言いたいんだな?ホームズ」
    「そういうこと」
    「…名推理だな。出るぞ」
    「おーい、もっと何か反応しろよ」
    「うるせぇ、充電器取りに行くぞ」
    國神の後に続いて、鏡の家から出る。少し離れたところに立つ物置が見えた。
    「うわ、あの物置、扉空いたままじゃん。不用心だな」
    「田舎あるあるだろ」

  • 32二次元好きの匿名さん23/07/12(水) 00:59:39

    闇堕ちヒーロー、すき焼きで絆される

  • 33二次元好きの匿名さん23/07/12(水) 08:58:11

    8時になっても川にはなんの動きもない。そもそも村長などの村人たちも集まっていない。千切たちも戻ってこないし。
    「あれ?何にも始まらないなぁ。お母さん、8時からって言ってたんだけど。しょーがないから、屋台で食べ物買って、先に神社行く〜?」
    「そーだな。何食べよう。デザートにしようかな〜。あ、村長」
    村長が出っ張った腹を掻きながら、時計を気にして歩いているのが見えた。手を振るとにこやかに返してくれる。
    「8時から船を流すって聞いたんですけど」
    「あ、あー、それならちょっと準備に時間かかってるみたいなんだ」
    「そうなんだ!じゃあ神社いこ!俺チョコバナナたべよ〜♫」
    結局15分くらい屋台で遊んで、神社に向かう。
    「二人とも遅いな」
    「だいじょぶっしょ。神社で集合したらいいし!」
    「まぁ、それもそうだな」
    神社には、村人が沢山集まっている。もう蜂楽のお母さんの絵は公開されていて、村人たちは感嘆の声を上げていた。
    「うわ、すげぇ…」
    プロの世界のことは何もわからないけど、すごくかっこいい絵だと思った。繊細なタッチで描かれた伝説の蛇が拝殿の中の襖に大きく描かれている。俺が想像したより百倍かっこいい。背景は大胆な色使いだが、メインの蛇を食わず、それどころかさらに白の美しさを際立たせている。
    「すげぇな、蜂楽!うわー、これ遠くからでも見にくる価値あるなぁ!」
    蜂楽は呆然としたように襖絵を見つめている。
    「バラ、バラ」
    「どうした?蜂楽?」
    「んあ?あー、すごいよね!俺も、すっげぇ感動」
    蜂楽はニコニコと笑ったが、なんか取り繕ったように見える。
    「どうした?大丈夫か?」
    「何にもない!村の人たちの方が見たいだろうし、出よ!」
    「あ、おい蜂楽!」
    蜂楽に引っ張られ、境内を出る。全く、蜂楽は気分屋なんだから。

  • 34二次元好きの匿名さん23/07/12(水) 09:27:28

    太いかんぬきを切るのにかなり時間がかかった。もう腕痺れとる。細い隙間に無理やりノコギリ差し込んで、ひたすらにノコギリを前後させた。ほんましんど。両開きの扉で助かったわ。ノコギリを持ったまま、怒鳴り込んでやろうと平屋に戻ったが、誰もいない。とっくの昔に出たようだ。まぁ、木を切る音がかなり響いてたはずなので、居てたら逃げようとしてることに気がつかれていたと思うが。
    「どこ行ったんや、アイツ」
    解体して川に流すとしても、解体する場所がいるはず。幸い、まだ空は明るい。夕焼けと夜空がグラデーションしかけているが、まだ時間はあるはずだ。
    「行くか…」
    武器として、ノコギリは手放さない。この村の奴ら全員敵や。さてどこから行こうかな。ボコボコの道に出て思案する。クラピカ理論で行くか…?氷織のやつ、なんかわかりやすいメッセージ残してへんのかな。とりあえず右を選んで歩き出す。こんなんもう直感や。三十メートルほど歩いたところで気がついた。
    「やるやんけ、ヘンゼル」
    きっちり等間隔に、小石が道の真ん中に置かれていた。

  • 35二次元好きの匿名さん23/07/12(水) 09:40:14

    今日10時くらいまで帰ってこなくて、その間投稿できないので適当に喋って保守っといてくれたらめちゃくちゃ嬉しいです

  • 36二次元好きの匿名さん23/07/12(水) 09:54:33

    うーんこれは乙女心()わかってるな

  • 37二次元好きの匿名さん23/07/12(水) 11:19:11

    烏の台詞回し好きだわ
    軽妙洒脱っていうか、ピンチでもユーモラスな軽口を叩けるところに知性と教養の裏打ちを感じる

  • 38二次元好きの匿名さん23/07/12(水) 12:53:58

    千切さん、宮部みゆきをお読みとはいいですね

  • 39二次元好きの匿名さん23/07/12(水) 16:52:13

    >>37

    わかる、めっちゃカッコいいよね

    ジンギスカンコースとか好き

  • 40二次元好きの匿名さん23/07/12(水) 17:04:28

    烏によって前回から引き続き行われるパワハラ
    忍者パワハラ
    忍者はトイレを電気なしで行かなきゃいけないし、古文必須な模様。

  • 41二次元好きの匿名さん23/07/12(水) 19:14:14

    チョコバナナってほぼ蜂楽じゃん
    共食いみたいで可愛い

  • 42二次元好きの匿名さん23/07/12(水) 19:23:26

    続き楽しみすぎる!今回のは白宝コンビ出てこない感じなのかな?

  • 43二次元好きの匿名さん23/07/12(水) 19:26:11

    >>26

    ラブホからなかなか離れられない乙夜草

  • 44二次元好きの匿名さん23/07/12(水) 20:37:57

    「やるやんけ、ヘンゼル」
    にやられた

  • 45二次元好きの匿名さん23/07/12(水) 21:33:46

    「すげぇな蜂楽のお母さんの絵。迫力やべぇ」
    「そうだな、ほんとすげぇ。想像超えてきた」
    俺は辺りを見渡して、潔と蜂楽を探す。
    「あの二人どこいったんだろ」
    「そのうち会えるだろ。狭い村だし」
    襖絵の近くに蜂楽のお母さんがいる。顔そっくりだな。話しかけようかと思ったが、村人からの止まない質問に答えている。この絵に込めた意味とかそういうのだ。この村はあの蛇に大変厚い信仰があるらしい。まぁ、あんなカッコいい自画像、神様も喜ぶだろう。
    「まぁ、後で村長の家で合流できるし、一旦出るか!」
    せっかくなので境内も散歩する。もうすっかり暗くなっている。暗い神社ってなんか怖いと思うのは俺だけかな。人はほとんど拝殿に集まっていて、閑散としている。
    「暗いからまぁまぁ怖いなぁ」
    突然、藪に連れ込まれた。心拍数が上がる。何すんだクソがと応戦しようとしたが、連れ込んだ犯人は國神だった。何すんだ。足に草が当たって痒い。文句を言おうと口を開いた瞬間。目の前に人が通り過ぎる。ギラリと月を反射する長い刃物。國神は先にそいつを見たんだろう。咄嗟に藪に逃げたわけだ。
    「うわ、また殺人犯か?」
    「わかんねぇ、けど。悪いやつじゃなきゃ、あんな刃物持ちあるかねぇよな…」
    「やばいな、國神。俺ら事件に巻き込まれすぎ。コナンじゃん。シャーロック千切ホームズじゃなくて、江戸川豹馬にするわ」
    そういう俺に國神はため息をついた。
    「お前、神経太いな」

  • 46二次元好きの匿名さん23/07/12(水) 21:39:43

    >>12

    ここの会話おもろすぎやろ

  • 47二次元好きの匿名さん23/07/12(水) 22:17:58

    めちゃくちゃ面白くて困る
    文才がありすぎる

  • 48二次元好きの匿名さん23/07/12(水) 22:31:30

    「だから、だから…ごめんなさい」
    ブルブル震えたまま明美さんは突進してくる。手の中でギラリと包丁が光る。避けようかな。どうしようかな。隙だらけの動きや。簡単に避けられる。けど、これ避けへんかったら。

    家に帰らんで良い。

    「かわいそうやな。そんなキショい伝統守らされて」
    明美さんの腕を、烏が軽く捻り上げたらしい。僕に刺さらず、包丁は地面にカランと落ちた。
    「助けに来てくれたんや、グレーテル」
    「せやで、たくましい妹やろ。生贄なるなんてそんな感動的な死に方させたらへんで。死ぬならフィールドでシねや。凡」
    烏の大きな手のひらが目の前に近づく、思わず目を瞑るとペチンと音が鳴った。遅れてじわじわとした地味な痛みが広がる。デコピンされた。助けに来てくれたから、文句は言わへんけど。
    烏は手に奇妙な生き物を持っていた。頭が二つある、白い蛇。何これ。高く売れそうや。
    「これな、この村で祀られてる神様なんやて」
    境内でチョロチョロうごいとったわと烏は神様らしい蛇をポトリと地面に落とした。不敬なやつや。
    「なぁ、明美さん」
    「その人、耳聞こえへんから。ちゃんと目線合わせて話たったほうがええよ。お陰でバレずに石落とせたんやけどね」
    「そうなんか、明美さん」
    明美さんの顔はぐしゃぐしゃだ。せっかくの綺麗な顔を涙で濡らしている。
    「人間一人の命と引き換えに、ちっさい村を平和にしてくれるだけの神様ってケチくさい思わへん?」
    神様は地面をゆるりと動く。出口に向かおうとズルズルと這っている。やたらと弱々しい動きだ。
    「白蛇さま…」
    「生贄なんて文化今日で終いにしようや」
    烏はノコギリを手に持ち、神様に振り下ろした。二つの頭を持つ神様は、二匹の蛇になり、死ぬ前の蝉のようにジタバタと蠢いたのち動かなくなった。
    「神様やで、罰当たりやな」
    「これ以上運悪くなりようないから、ええんや」

  • 49二次元好きの匿名さん23/07/12(水) 23:33:29

    橋の欄干にもたれかかり、川を見下ろす。時刻は8時34分。まだ、川流しは始まらないらしい。蜂楽はというと先程からずっとぼんやりしているようで、口を開かない。どうしたんだろう。あんなに楽しみにしてたのに。川流しの準備に何かトラブルがあったのか、村長と日に焼けたおじさんがなにやら話し合っている。
    「よう、おっちゃんお昼ぶり」
    聞いたことある声が聞こえた。
    「烏!?なんでこんなとこに!!」
    「うわ、お前らなんでここに。こっちのセリフやわ」
    烏の後ろに氷織もいる。そちらは微笑んで手を振ってくれた。
    「烏、何、なんでノコギリ持ってんの」
    よく見るとノコギリから血が滴っている。ひえー、怖!!!流石にそんな怖いことないよな!?烏は常識人だもんな?
    烏たちの登場は予想外だったようで、日に焼けたおじさんは露骨に狼狽えている。
    「川流しの中身持ってきたったで、ほれ」
    烏が村長に投げ渡したものは、生肉のようなものだ。暗がりなのでよく見えないが、血液が付着してるのでどうやら捌かれたてのようだ。
    途端、村長は苦々しい、悔しそうな顔をした。大黒天みたいだった村長が眉間に皺を寄せ、それどころかこめかみに血管が浮き出ている。拳を握りしめて震えているが、表情から察するに怒りからくるもののようだ。
    一体何したんだよ…烏…こわ。重々しい空気が流れる中、蜂楽を横目で確認する。さっきからちょっとしょんぼりしてたのに、大丈夫かな。心配してたが、蜂楽の表情は先程と打って変わってニコニコだ。弾けるような笑顔で安心したが、なんでこの状況でニコニコなんだ?
    もしかして、何も知らないの、俺だけ?

  • 50二次元好きの匿名さん23/07/13(木) 00:05:12

    スレ主マジで最高だよ
    シリーズ化してくれ

  • 51二次元好きの匿名さん23/07/13(木) 00:37:36

    サクサク目を通せるけど内容がちゃんとある、読み応えと読み易さの両立したSSで凄く好きだな
    応援してるよ

  • 52二次元好きの匿名さん23/07/13(木) 00:58:12

    女児ヘアゴム千切、、さいこう

  • 53二次元好きの匿名さん23/07/13(木) 05:26:45

    >>52

    カワイイ(ノ≧▽≦)ノ

  • 54二次元好きの匿名さん23/07/13(木) 07:41:31

    スレ主文書うっま!面白い

  • 55二次元好きの匿名さん23/07/13(木) 08:39:32

    「貴様…白蛇様を、白蛇様を、どうなさった!!」
    「見ての通りや。ノコギリ一発で死んだで。そこらの高校生に殺される神様って随分弱っちいな。信仰足りひんのちゃう」
    まずい。村の人があの白い蛇を信じてることなんて、今日きた俺にもわかる。そんな挑発するようなこと言って、大丈夫なのか?ここは俺が収めないと、でもどっちの味方についても揉める気がする。村長は今日、すごく良くしてくれたし、烏が信頼に値する人物な事は試合でよく知ってるが、今日はなんか様子がおかしい気がする。
    「潔!どっちにするのか迷ってるの」
    「え、いや、まぁ、うん」
    「でも潔、俺が選んだ方に着いてきてくれるでしょ」
    「そりゃ蜂楽が選んだなら」
    「じゃあこっちだ潔!烏の周りが良さそう♫」
    蜂楽はぴょんと烏の肩に飛びつく。
    「おい!コラ!刃物持ってるやつに安易に飛びつくな!!ボケ!」
    「貴様ら…コケにしおって…」
    背中にじとっとした視線を感じる。
    「う、うそだろ。まじかよ」
    この村中の人が俺たちを見ている。その視線に込められてるのは、敵意。
    「ば、蜂楽。本当に烏の周りがいいの…?」
    「もち、ニコニコだよ。きっと最後にはみんなそうなる」
    「どーも味方が増えて心強い限りや」
    烏の走れという号令に反射して俺たち走り出した。
    「あのよそモンを許すな!!追いかけろ!!」
    向こうも村長の号令に飛び出してくる。人数的にはかなり不利だ。
    「やっはは♪鬼ごっこ開始だね

  • 56二次元好きの匿名さん23/07/13(木) 08:40:29

    応援してもらえて嬉しい!一生懸命書きます!

  • 57二次元好きの匿名さん23/07/13(木) 08:49:21

    ガァンガァンと鐘が鳴り響く。これは警鐘だろう。老人ばかりだと舐めていたが、なかなか良い連携プレイをしよる。
    「こっちや!こっちに駅がある!」
    先頭を走って、3人を誘導する。時々後ろを確認しているが、みんなしっかりと着いてきている。スマホで調べたところによると、終電は8時45分。クソ田舎が。
    「待って!」
    蜂楽の声が暗い畦道に響いた。
    「待ってまだお母さんも村にいる、千切も國神も!」
    「うせやろ終電8時45分やぞ!」
    きゅっと眉を八の字にする蜂楽。あーあ、もう。俺が煽ったんやから責任取らなあかんよな。
    「帰りは最悪俺の運転やから覚悟せぇよ!」

  • 58二次元好きの匿名さん23/07/13(木) 08:58:19

    烏免許あるの!?
    18歳だから取得済み!?
    さすが烏!!

  • 59二次元好きの匿名さん23/07/13(木) 09:29:11

    「あっち出たら、あの不審者と遭遇するかもな」
    「けど暗い中林を歩くのは危ない」
    國神の言うことも一理ある。どっちを歩くのにも結局危ない。
    スマホのライトで地面を照らす。
    「おい、國神。下」
    「うわ、白い蛇だな。大怪我してる」
    白い蛇は生々しく左半分が裂けて息絶えていた。可哀想だ。きっと死ぬ間際は激痛に苛まれていただろう。
    「埋めてあげようぜ」
    スコップなんか持ってないから手で土を掘る。泥だらけで汚ねぇけど、まぁすぐ村長の家に戻るし。二人で協力して蛇が埋まる程度の穴を掘り、優しく土をかける。
    「おやすみ」
    おいおい、國神。そんな優しい声蛇に掛けちゃってさ。やっぱり変わってないぜ、ヒーロー。にやにやしているのを悟られないよう、左を向いて誤魔化す。その視線の先に、また白い蛇。右側が大きく裂けている。
    「おい、國神。あれ…」
    まるでヘンゼルとグレーテルのようにぽつんぽつんと蛇の死体が雑木林に落ちている。
    「なにこれ、ひでぇ…」
    ガァンガァンと鐘が鳴っているのが聞こえた。俺の嫌な予感を知らせる警鐘のようだ。神様の残した跡を辿って辿って。抜けた先にあったのは、大量の蛇の死体に囲まれた、本殿だった。

  • 60二次元好きの匿名さん23/07/13(木) 09:33:07

    今日も10時くらいまで帰れないので、保守してくれたら嬉しいです!

  • 61二次元好きの匿名さん23/07/13(木) 09:41:45

    い、いっぱい死んでるぅ…

  • 62二次元好きの匿名さん23/07/13(木) 11:07:10

    脳内で火曜サスペンス劇場の冒頭の「チャチャチャチャッ チャチャチャチャッ チャ〜ラ〜」みたいなBGMが流れるスレ

  • 63二次元好きの匿名さん23/07/13(木) 12:35:19

    國神が終始優しくて好き

  • 64二次元好きの匿名さん23/07/13(木) 17:25:15

    蜂楽はどの時点で何に気づいたんだ

  • 65二次元好きの匿名さん23/07/13(木) 19:31:08

    絵が公開された時に「バラ、バラ」って言ってるから犠牲者の霊を見ちゃったんじゃない

    前のミステリースレでも部屋に留まってた魂に気付いてたし

  • 66二次元好きの匿名さん23/07/13(木) 20:11:18

    >>65

    蜂楽が謎に霊感強いの解釈一致

  • 67二次元好きの匿名さん23/07/13(木) 21:37:16

    ぐるりとUターンをして畦道を走る。無事でいてくれ、蜂楽のお母さん。ターンして敵陣に突っ込んできた俺たちに、村人たちは驚いて怯む。大丈夫、体力なら俺たちに武がある。けど、どうしようもう辺りも暗い。これじゃあ隠れられてたら見つからない。いや、女の人のパワーじゃいくら老人ばかりといえど、畑仕事で足腰のしっかりしている人たちに勝つのは難しいから、隠れてるのが正解だけど!
    「みんな!神社だ!そっちにお母さんがいると思う!」
    「え、でも流石にそんなとこからは逃げてるんじゃ」
    「お母さんなら、自分の作品をギリギリまで守ろうとする!」
    「よっしゃ。信じるで、息子の勘」
    閻魔大王みたいな顔をした村長と村人たちが行く手を阻む。こっちが本性なのかな。
    「逃さへんぞ」
    「よくも、俺たちの神を殺してくれたな…!」
    「おーおー殺し屋から神殺しに格上げされたな」
    こちらは体力はあるが、地の利は向こうにある。一本道で挟まれてしまった。ジリジリと村人たちが迫ってくる。皆、クワやら斧やら物騒なものを持っていて、決して許してくれないだろうことは想像に難くない。
    「どうする、田んぼ突っ切る?」
    氷織が小さく聞いた。
    「慣れへんことしたらアカン。正面突破や死なん程度に蹴飛ばしたれ!」

  • 68二次元好きの匿名さん23/07/13(木) 21:48:50

    待ってた!!!ひえええ烏かっこいい

  • 69二次元好きの匿名さん23/07/13(木) 21:52:31

    田んぼは足取られるからなナイス烏

  • 70二次元好きの匿名さん23/07/13(木) 22:01:24

    國神と千切がみた不審者烏やろ草

  • 71二次元好きの匿名さん23/07/13(木) 22:22:47

    「あちょー!」
    蜂楽が村長の太鼓腹に華麗なドロップキックを決めた。ゴロゴロ転がって田んぼに落下する様はおむすびころりんを彷彿とさせた。
    「ええやん、モハメド・アリ!」
    「アリじゃないもん!蜂だもーん!」
    「そうやないわ!アホ!」
    俺の死角から降りてきた斧に烏がノコギリで応戦する。
    「ありがとう!」
    「チッ、あかんな壊れてもうた」
    柄と刃に分かれたノコギリを投げつけ、相手が怯んだ隙に背中に回し蹴り。みんな喧嘩もできちゃうのかよ…!俺も負けてられない。人は殴ったりする勇気ないけど、サッカーの応用なら!俺は軽石を蹴り上げ、憤怒の表情でクワを振り回す男性に狙いをすませた。肩のあたりなら大丈夫なはず。ごめんなさい!足を振り抜いた瞬間、俺の足元で蠢く影が見えた。
    「あ、やば」
    そう思った時にはもうおそかった。田んぼから這い上がってきた村長の頭部に俺の右足がダイレクトシュートを決めてしまった。村長は本物のカエルのように伸びてしまった。
    「もうオタマジャクシ卒業したんか。でかいヒキガエルやね」
    「おいコラ!加減せぇ言うたやろ!本物の監獄に入るつもりか!ボケ!!」
    「ご、ごめんなさい!!」

  • 72二次元好きの匿名さん23/07/13(木) 22:26:19

    烏が無免許運転しようとしてるの最悪マジなのかボケなのかわからんくておもしろい

  • 73二次元好きの匿名さん23/07/13(木) 22:26:59

    ダイレクトシュートの勢いで頭かあ
    まあ凛も生きてるし…

  • 74二次元好きの匿名さん23/07/13(木) 22:27:30

    最高だよ潔

  • 75二次元好きの匿名さん23/07/13(木) 22:28:25

    ここぞとばかりに煽る氷織好き

  • 76二次元好きの匿名さん23/07/13(木) 22:33:09

    保守

  • 77二次元好きの匿名さん23/07/13(木) 22:51:56

    >>76

    明日の朝10時半だからでぇじょうぶだ!

  • 78二次元好きの匿名さん23/07/13(木) 22:59:26

    「ひでぇ、何これ」
    吸い寄せられるように千切が本殿に入る。一応神社らしい見た目をしているが、あまり手入れされてそうではなく、本気で蹴ったら簡単に折れそうだ。本殿ってたしか関係者以外立ち入り禁止だった気がするが。でもそんな余計な茶々入れは、おびただしい数の白い蛇の死体を見ると言えなかった。どの蛇もここから出たいというように本殿を中心に円を描くように外に向いていた。
    千切を追いかけ、本殿に入る。中は神社っぽくない、というか神様を祀っていそうなところじゃなかった。それどころか手術台のようなものや試験管、筆など、まるでマッドサイエンティストが使いそうなものばかりだ。
    本殿の中には、二つ頭のある、この村の神様がいた。チロチロと舌を出して生きているが、もうほとんど動けないくらい弱っているようだ。それもそのはずで、この神様は二つの蛇を縫い合わせて造られた人工物だからだ。素人目にも縫い目がわかる。こんなことされて長くは生きれないだろう。いや、長く生きさせる必要なんてなかったのだ。今日のお祭りを終えてくれたらそれでよかったんだろう。
    「…最低だな」
    千切は俺の言葉に反応しなかった。拳を握りしめて、細かく震えている。どう声をかけようか迷っていると、ポニーテールをふわりと靡かせて、振り返った。
    「國神、せめて埋めてあげよう。いっぱいいるからいつまでかかるかわかんないけど」
    「…おう」
    それくらいしてやらなきゃ、この蛇たちは報われない。一瞬神様として生きるよりも、長くただの蛇として生きたかっただろうから。
    蛇を腕に抱えて、外に出ようとしたその時、本殿の扉が閉まった。その後すぐにバシャバシャと水音がする。
    「おい!誰だー!開けろ!!」
    千切がドンドンと扉を叩く。
    「あ、え村長の奥さん!?」
    隙間から見えたのだろうか、千切が困惑の声を上げた。
    直後、パチパチと音がした。隙間から燃え盛る火が見える。あの水音ガソリンだったのか。
    「千切!しゃがめ!」
    呆然とする千切の肩を無理やり押さえてしゃがませる。これで多少は時間が稼げる。
    「マジかよ…」
    「千切、落ち着け」
    肩を叩いて必死に宥めようとする。こういう時はパニックが1番ダメだ。
    「マジかよ…織田信長じゃん。俺ら…」
    ………………………………………………。
    「お前、心臓に毛が生えてるのか?」

  • 79二次元好きの匿名さん23/07/13(木) 23:02:09

    流石薩摩隼人……めっちゃピンチやんけ!?

  • 80二次元好きの匿名さん23/07/13(木) 23:08:59

    このスレ主が書く千切好きだな

  • 81二次元好きの匿名さん23/07/13(木) 23:32:07

    お嬢、殺人鬼に顔目当てに殺されかけたり因習村で焼き殺されかけたりしてもヘコたれないおもしれー男

  • 82二次元好きの匿名さん23/07/13(木) 23:36:20

    心臓に毛が生えてるのか?でめちゃくちゃ笑った

  • 83二次元好きの匿名さん23/07/14(金) 00:11:57

    文章うま...
    千切メンタル強すぎて好き

  • 84二次元好きの匿名さん23/07/14(金) 07:29:48

    保守

  • 85二次元好きの匿名さん23/07/14(金) 07:31:49

    まさか人口双頭だったとは…白蛇繁殖場所もどこかにあるのかな

  • 86二次元好きの匿名さん23/07/14(金) 09:05:07

    あーー神社の階段ってなんでこんなに長いんだろう。さっき蜂楽と登った時は趣深いなと思ったのに、今はただ、もどかしいだけだ。千切と國神は心配ないかもしれないけど、蜂楽のお母さんだけは早くに助けなきゃいけない。
    階段を駆け上って、拝殿に靴のまま上がる。あまりに罰当たりだけど、どうかピンチだから許してください。
    「お母さん!大丈夫!?」
    先程まで人で賑わっていた拝殿は驚くほど閑散としていた。中には蜂楽のお母さんが一人だけ、倒れている。
    「大丈夫や、生きてはる。ていうか寝てはるだけやな」
    「よかった〜」
    「背負えるか?」
    「余裕っしょ♫」
    よかった無事で。ほっと一息ついて、思わず襖にもたれかかりそうになる。危ない危ない。この絵に魂が込められてるはずなのに、芸術家に失礼なことしそうになった。今、神様に失礼なことをしてる最中だから、これ以上失礼ポイントを重ねたくない。絵大丈夫かな?
    「え……?」
    いない。双頭の白蛇が、どこにもいない。白い蛇の絵があった場所がぽっかりとなくなって、元々の襖が剥き出しになっている。残っているのは背景色だけ。まるで神様がどこかへ行ってしまったようだ。
    ふいに手を引かれる。
    「潔くん、ここいたら危ない。なんか焦げ臭い匂いする。どっか燃えてるかもしれへん」
    「あ、うん。ごめん」
    襖絵を気にしていて気が付かなかったが、かなり焦げ臭い匂いがする。3人は襖絵どころではないようで、早々と拝殿を出て行った。
    「潔くん!急いで!」

  • 87二次元好きの匿名さん23/07/14(金) 12:14:05

    絵に神様が宿ってる…?

  • 88二次元好きの匿名さん23/07/14(金) 13:04:39

    ゆらゆら燃え盛る火が本殿を取り囲む。どんどん高くなって行ってる気がする。このままじゃ俺たちは第二の織田信長だ。あ、いや俺たち別に自分で火つけたわけじゃないけど。そしたら、普通にただの焼死体じゃね?それは嫌だ。
    「んぐっ!」
    國神が俺の口にハンカチを突っ込んできた。
    「しゃがんどけ、お嬢」
    そう言って國神は勢いをつけて、扉を蹴飛ばした。2度3度と蹴り飛ばす。もう、老朽化してそうな木材だったのも手伝って、あっさりと砕け散る。
    「すげぇな、國神。お前のことアベンジャーズに推薦するわ」
    「お前どの立場の人なんだ…いいから早く行くぞ」
    目の前には俺の肩くらいまで伸びてきた火柱が上がっている。
    國神と目を合わせると意見は一致しているようだ。このまま正面突破で火をくぐって、走って川にダイブ。無理矢理だけどこんなとこで死ぬよりマシだ。
    「よし、行こう」

  • 89二次元好きの匿名さん23/07/14(金) 16:02:11

    千切のワードセンスとメンタルが強いし國神のツッコミ全部秀逸だな

  • 90二次元好きの匿名さん23/07/14(金) 17:09:03

    「國神ー!千切ー!どこにいるんだーー!」
    あいつらほんとどこにいるんだ。神社の周りから結構離れた気がするが、まだ見つからない。もしかしてもう捕まったり…?いや、二人に限ってそんなことは…。でもあの二人は村人が俺たちの敵になった瞬間を見てない。何も知らないまま捕まってしまったのかもしれない。神社の方面の山が赤赤と燃えていることが視認できる。こんな田舎じゃ消防隊も到着が遅れるだろう。それに地元の消防団はきっと俺たちを捕えることで頭がいっぱいだろうし。いずれにせよ早く見つけないと!川にまたがる橋は、男子高校生の勢いある駆け足に耐えようと振動している。怖、老朽化進んでるんじゃないか。
    「ぷはっ!やめろよ、國神!つめてー」
    「仕返しだ。…全身ずぶ濡れなんだから、変わらないだろ」
    「それもそうだけど。あー、気持ちいいなぁ」
    橋の下から声が聞こえた。烏が呆れた顔をしながら、覗き込む。
    「……おい、二人。なにイチャついてんねん」
    「千切、國神。心配してたんだぞ」
    「そーだよ〜。危機感足りないぞ〜!危機管理能力ってやつだよ〜!」
    千切と國神は川にプカプカ浮いて遊んでいた。しかも服のまま。…ほんとに、人の気知らないで。
    「なんだと〜。俺ら修羅場潜ってきたんだよ、なぁ?もうちょっとで織田信長するところだったんだからな」
    「「おだのぶながする???」」
    蜂楽と俺は綺麗にハモった。ね、わかんないよな。
    「もしかして、あっちの燃えてる方おったん?そら大変やったなぁ」
    「そうそう!閉じ込められて燃やされかけたんだよ。まぁハルク國神が扉を破壊したから出られたけど」
    「織田信長を動詞に使うなや」
    「というか、烏と氷織も来てたのか」
    國神がシャツの水分を絞りながら聞く。國神の逞しい腕で絞られたシャツはいっぺんに水分を失い、枯れた根のようにしわしわになる。
    「うん。もう少しで僕ら注文の多い料理店されるとこやったわ」
    「なにそれ。やべー、どういうこと?」
    「話は後や。今はさっさと逃げるで」
    烏がチラリと後ろを見やると、武器を片手に闘志をむき出しにした村人が追いかけてきている。
    びしょびしょのまま橋まで上がってきた二人が仲間に加わり、鬼ごっこ再スタートだ。
    「俺と潔と氷織が前。真ん中に蜂楽。後ろに國神と千切で行くで。蜂楽のお母さんを守り切る。行くで!」

  • 91二次元好きの匿名さん23/07/14(金) 18:11:43

    最高

  • 92二次元好きの匿名さん23/07/14(金) 18:24:52

    動詞:織田信長

  • 93二次元好きの匿名さん23/07/14(金) 18:35:33

    耳をつんざくような金属音が聞こえた。正面からチェーンソーを持った大男が歩いてくる。
    「おいおい、それはナシやろ…」
    振り返ると、後ろからもそれぞれの武器を手に距離を詰めてきていた。
    「ええか、氷織。俺がこのチェーンソー男を引きつけてる間に、反対から抜け出せ。お前がしんがりでみんなを守れ」
    そう言って烏は前に出た。アホちゃうか。あんな武器持ってるやつの前に自ら出るやつおるんか。
    國神くんが、斧を持つ老人を投げ飛ばし、後ろに突破口を作る。
    「今だ!行くぞ!」
    千切くんが蜂楽くんを庇いながら、走る。潔くんも追いかけてくる村人に応戦してる。
    「氷織!烏の努力を無駄にしちゃダメだって!」
    潔くんの声は耳に入っているのに、中々身体が動かない。僕だけ、前に進めてない。
    死なんといて。嫌や。せっかく友達と遊びに来れたのに。そんなん嫌や。死んでほしくない。
    「おま…!行け言うたやろ!」
    そう思ったら、反射的に烏を突き飛ばして前に出てた。チェーンソーの刃が眼前にある。あと10センチ、7センチ。烏の焦った顔が横目に見えた。仲間を守って死ぬなんてそんなカッコいい死に方させたらへんで。君にはせいぜい、畳の上で、奥さんや孫に看取られながら、周りの人の泣き顔見ながら死ぬのが似合ってる。
    ギュル、ギュル、ギュル…ギュン…カラカラカラ
    目を開けると、空回りして停止したチェーンソーがあった。突然の不具合に使用者本人も驚いたらしく呆然としている。その隙を突かれて烏の右ストレートが叩き込まれた。
    「お前最高に運ええな」

  • 94二次元好きの匿名さん23/07/14(金) 18:46:04

    氷織の運がここにきて活きるとは…!!

  • 95二次元好きの匿名さん23/07/14(金) 21:30:21

    「助かったわ…ありがとな」
    烏が腕を引っ張って起き上がらせてくれる。
    「別に、烏のためやないし」
    「素直じゃないやっちゃ」
    立ち上がって潔くんたちの後を追う。
    「よかった!二人とも無事で」
    「これからどうする」
    「足が欲しいな。この人数乗れるくらいのやつ」
    橋を抜けて、平屋の裏に回り込む。ノンストップで走り続けたから、みんな少し疲れている。しばらく雨が降っていなかったからだろうか、どんどん火が燃え広がっているのが見える。このままじゃ危ない。
    「皆さん、こちらです」
    物陰から声が聞こえた。

  • 96二次元好きの匿名さん23/07/14(金) 21:33:27

    このレスは削除されています

  • 97二次元好きの匿名さん23/07/14(金) 21:38:43

    うおおおおおお!!

  • 98二次元好きの匿名さん23/07/14(金) 21:39:43

    「明美さん…」
    明美さんはチラリと僕らを見て歩き出す。
    烏に目線を送ると、顎で「着いていけ」と促した。
    「だ、誰」
    潔くんがこそりと聞いてきた。そうか、この四人は明美さんのこと知らんのか。
    「僕らを注文の多い料理店しようとした人」
    「え、いいのか。着いていって」
    意味を理解した千切くんが眉を寄せている。
    「多分大丈夫」
    「ええ…」
    潔くんが軽く引いているが、包丁を持ってブルブル震えていた明美さんに再び僕らを裏切ることはできない気がした。
    「これに乗って外へ出てください」
    裏路地を通って抜けた先に、ミニバンが停車してあった。用意してくれたらしい。
    烏は黙って鍵を受け取り、運転席に乗り込んだ。烏に続き、他の四人も後部座席に乗り込む。1番後ろの席に蜂楽くんのお母さんを寝かせた。
    「明美さんは乗らんでいいん?外に婚約者いるんやろ」
    助手席に乗り込む前に問いかける。あと一人くらい頑張ったら乗れそうやけど。
    「私は行きません。見せられません、こんな私を。人を殺そうと、刃物を握った私を見られたくないのです。だから、行けません」
    「そっか」
    「最後に、お願いしてもよろしいですか」
    「できる範囲やったら」
    「この手紙を、あの人に渡して欲しいのです。裏に住所を書いてます」
    頷いて、助手席に乗り込む。手を振ると、明美さんも返してくれた。
    「ほな行くで。お前らしっかりシートベルトせぇよ」
    全員がシートベルトをしたのを確認したのち、車が発車した。細い道を抜け、危なげなく左折し、太い道に合流した。
    「そういえば、烏って免許持ってたんだな。運転うま」
    潔くんが聞いた。
    「おん。プラチナ免許や。一回も事故起こしたことないで」

  • 99二次元好きの匿名さん23/07/14(金) 21:51:00

    一回も事故したことがない(ハンドル握ったことがあるとは言ってない)

  • 100二次元好きの匿名さん23/07/14(金) 21:52:46

    む、無免許………?!?!?!

  • 101二次元好きの匿名さん23/07/14(金) 21:55:08

    明美さんが手紙と住所を書いた?

  • 102二次元好きの匿名さん23/07/14(金) 22:16:16

    仮に無免許だったら初っ端から危なげなく左折できるの才能ありすぎる
    ハンドワークが上手い奴は運転も上手い……?

  • 103二次元好きの匿名さん23/07/14(金) 22:20:22

    遭難スレからやっと追いついた
    スレ主さん文章うますぎ
    読み応えあって楽しい

  • 104二次元好きの匿名さん23/07/14(金) 22:26:09

    >>101

    え?どう言うこと?頭の悪い俺のためにごめん解説して…

  • 105二次元好きの匿名さん23/07/14(金) 22:57:42

    車は問題なく走行している。プラチナ免許ってなんかすごそうだし、大丈夫だろう。
    そういえば、村人たち追いかけてこないな。
    その時の窓の外の光景は、俺は一生忘れることができない。先程まで殺意剥き出しに追いかけてきていた村人たちは全員、立ち尽くしていた。呆然としているわけではない。抜け殻のように動かない。クワや斧を握りしめたまま、俺たちの車が通り過ぎても動かない。赤赤と燃え盛る火が近くまで来ているのに、一歩も動かない彼らに、俺はえも知らぬ恐怖を感じた。別にお化けとか幽霊とかいるわけじゃないのに。
    そのまま追いかけられることはなく、車は村の外に飛び出る。
    「潔後ろ向いちゃダメだよ」
    蜂楽がそう言った瞬間、ガシャアアン!バリバリバリと大きな音が鳴った。

  • 106二次元好きの匿名さん23/07/14(金) 23:29:35

    このレスは削除されています

  • 107二次元好きの匿名さん23/07/14(金) 23:33:07

    「うわ、やべぇな。建物めっちゃ崩れてる」
    結構近くまで火の手が来ていたみたいだ。間一髪だな。
    「やべぇな國神、劇場版だわ。」
    「お前ダイヤモンドでメンタルできてるだろ」
    「お前蘭と哀ちゃんどっちの役が良い?」
    「國神が灰原はないだろー!」
    潔が腹を抱えて笑い出した。確かに國神は逞しいからな。蘭ねーちゃんの方が似合ってるか。
    「俺はーじゃあジン!ジンにして♫」
    「それじゃあ烏は平次で、氷織が和葉だな!関西弁喋るし!」
    「潔はウォッカね!」
    「えー!俺キッドがいいなぁ」
    ワイワイ盛り上がっていると國神がぽそりと口を開いた。
    「なぁ、プラチナ免許ってあったか?」
    思わずルームミラーを見ると、鏡越しに烏と目があった。
    「遅いわアホ。ボケには高速でツッコミせんかい。テンポが大事なんやぞ」
    「え…、てことは無免許ってこと…?」
    潔が恐る恐る聞く。
    「せやで。お前ら止めへんかったやんか。わざわざわかりやすくボケたのに」
    「「「「う、うそだろ!!!」」」」
    俺たち四人の声が綺麗に揃った。
    「騒ぐなや。集中力削がれる。お前らの命は俺のハンドル捌きにかかってるんやぞ」
    「お、おーぼーだぁ」
    潔がへにょへにょと座席からずり落ちる。
    「うっさい!この中やったら俺が1番マシやろが!このまま左折せんと壁まで直進したろか!!」
    ルームミラーに楽しそうに笑う氷織が写っていた。

  • 108二次元好きの匿名さん23/07/14(金) 23:50:39

    確かに車の運転はお嬢とかだとスピード出しすぎてみんなで流れ星になりかねないからな

  • 109二次元好きの匿名さん23/07/15(土) 00:03:26

    お嬢「俺の影でも踏んでろ」(法定速度越え)

  • 110二次元好きの匿名さん23/07/15(土) 00:11:05

    >>104

    説明しようとして気付いた!

    目が見えないと耳が聞こえないを間違えてました。

    すみません。

  • 111二次元好きの匿名さん23/07/15(土) 00:27:43

    車を発車して1時間。ようやく明るい街並みが見えてきた。24時間営業のコンビニに駐車して、休憩する。あー疲れた。空を見上げるとすっかりネイビーブルーに染まっていた。あの村着いた時はまだ昼やってんけどなぁ。物思いに耽っていると、頬に冷たいものが当てられた。
    「なんや、くれるんか」
    「それ以外になにがあるん」
    氷織が緑茶のペットボトルを突き出した。ちょうど飲みたかったし、受け取って一気に半分ほど飲み干す。あー、なんか飲みもんのんだのも久しぶりやな。
    「そういえば、明美さんになんか貰っとったよな」
    「あー、それな。手紙やで。恋人に渡して欲しいってさ」
    氷織の差し出した手紙を取り、裏表両方確認する。明美さんの恋人は和歌山在住らしい。
    「ふーん」
    氷織が悲しそうに目を伏せた。俺も大概素直やないな。
    「ほな、今日はもう疲れたからどっか泊まって、明後日和歌山観光と行こか」
    「…うん」
    夜空に満点の星空が広がっている。
    「今日、楽しかったわ。ありがとう」
    「アホ、明後日の方がもっと楽しいわ」

  • 112二次元好きの匿名さん23/07/15(土) 00:30:24

    一応これで完結です。
    また続編も書きたいと思っているのでその時はよろしくお願いします!
    残りのスレに感想を書いていただけると、とても喜びます。
    書いてる途中にもたくさん褒めて頂き、嬉しかったです。
    明日から随時後日談もどきを追加していきます!

  • 113二次元好きの匿名さん23/07/15(土) 00:31:01

    素晴らしい物語でした!和歌山ってことはまさか…

  • 114二次元好きの匿名さん23/07/15(土) 00:31:25

    すっごくおもしろかったです!
    後日談も続編も楽しみにしています!

  • 115二次元好きの匿名23/07/15(土) 00:33:00

    こんなに良いスレに出会えて良かった。楽しませてもらいました、スレ主ありがとう!!

  • 116二次元好きの匿名さん23/07/15(土) 00:39:38

    とっても面白かったです!
    プラチナ免許で爆笑しました!

  • 117二次元好きの匿名さん23/07/15(土) 00:46:55

    執筆おつ!!
    和歌山ってことはまさか……🐻

  • 118二次元好きの匿名さん23/07/15(土) 08:26:21

    千切と烏のテンポの良さ好き

    めっちゃ毎日舐めるようによんでました

  • 119二次元好きの匿名さん23/07/15(土) 08:28:05

    「うーん、うーん廻…?はっ!廻!!」
    三列目のシートから蜂楽お母さんが飛び上がった。今はコンビニで停車中。俺と蜂楽は唐揚げを食べている最中だった。一仕事終えた後の肉は美味い。
    「あ、起きた〜」
    蜂楽がリスみたいに頬を膨らませながらのんびりと言った。 
    「廻!!よかった無事で!!あ、世一くんも、怪我ない?本当?ならよかった」
    蜂楽のお母さんは手を伸ばして俺と蜂楽の頬を撫で回した。
    「あの、お母さん、ちょっと聞きたいことがあるんですけど」
    「どうしたの世一くん。助けてくれたんでしょう?なんでも言って」
    「あの免許持ってますか?」
    「ん?持ってるよ。それがどうかした?」
    「お願いします!!運転してください!!!」
    勢いよく頭を下げすぎてシートにぶつかる。痛い…。
    「潔、必死すぎっしょ♪」
    「蜂楽!よく考えろよ!無免だぞ、無免!やばいって」
    蜂楽に事の重大さを訴えかけていると、運転席の窓から烏が覗き込んできた。
    「なんや潔。俺の運転に不満あったんか?危険な村からここまで安全に運んだったやろ」
    「う、それはそうだけど!」
    20分くらいコンビニで休憩して、車は再び夜の街を出発する。俺なんて何もしてないのに、蜂楽のお母さんは全員にシュークリームを買ってくれた。疲れた頭に糖分は染みる。
    数年後俺が自動車免許を取りに行った時、烏の運転技術の上手さを思い知ることになるのだが、それはまた別の話だ。

  • 120二次元好きの匿名さん23/07/15(土) 08:43:51

    烏が運転めっちゃ上手いの解釈一致

  • 121二次元好きの匿名さん23/07/15(土) 09:33:08

    よく考えたらこのメンツ、唯一烏だけ3年でほか2年なのか

  • 122二次元好きの匿名さん23/07/15(土) 09:47:52

    烏も実は内心めっちゃ緊張してるけど自分が最年長だしキャラじゃないしでそれを表には出さずに冷静で余裕なフリして運転してたりするのかもしれない
    それはそれとして初回とは思えない車転がしの上手さで才能はガチである

  • 123二次元好きの匿名さん23/07/15(土) 09:52:22

    初めての運転で田舎だしマニュアルっぽいのにエンストもしないで静かに運転はめちゃくちゃ才能ある

  • 124二次元好きの匿名さん23/07/15(土) 13:26:23

    車発車から左折←なんかうまく行ってしまう。 

    免許持ってないよと案に仄めかす。←総スルー

    なので天然E4たちに退路を絶たれている

  • 125二次元好きの匿名さん23/07/15(土) 13:33:10

    ハワイで親父に習ったんじゃろ

  • 126二次元好きの匿名さん23/07/15(土) 15:09:42

    『ニュース速報です。ザザッーーーピーガガッ4日ガガッ午後9時頃、ピーザザッ村の山林から火が出ていると、警視庁や消防に通報がガガガッました。現在も消化活動は続いているものの、依然として状況は分かっていません』
    天井に吊り下げられた画質の荒いテレビからニュースが流れる。だいぶ年季が入っていて、音質も悪い上にアス比もあっていない。ここは斬鉄おすすめのラーメン屋、ではなく、斬鉄おすすめのラーメン屋がついに見つからなかった時に入った代理ラーメン屋である。年季が入りすぎて多少オンボロと言えなくもない店だが、おじいちゃん店主の作るラーメンはなかなか美味しい。
    「山火事は大変だな。延焼するから」
    餃子を食べながら、玲王が言った。咀嚼してからテレビ画面を確認する。
    「関西方面じゃん!千切と國神が行くって言ってたんだよな」
    そうなんだ。まぁ、あんな山奥の田舎に用なんてないだろうから大丈夫でしょ。それに千切も國神も多少燃えても生きてそうだし。
    「火事はヤバいな。とてもベンチャーだ」
    「danger、デンジャーな」
    玲王の箸が斬鉄のラーメンからチャーシューを奪う。
    「あー!酷い!」
    「よかったね、玲王。千切たちに着いてかなくて」
    「まぁ、お前らと先に約束してたしな。うまっ!」



    その翌日の事だった。「山林火災村民421名全員死亡」という記事を見たのは。

  • 127二次元好きの匿名さん23/07/15(土) 15:26:16

    明美さん……

  • 128二次元好きの匿名さん23/07/15(土) 15:27:25

    凪は玲王関係の危機感知カンストしてんのか?

  • 129二次元好きの匿名さん23/07/15(土) 15:34:30

    凪玲王斬鉄が巻き込まれるも見たい気持ちがあるな!

  • 130二次元好きの匿名さん23/07/15(土) 16:50:26

    ヘンゼルとグレーテルとかの軽口がその後の行動に関わってくるの面白い
    そういうプチ伏線考えられる人凄いわ

  • 131二次元好きの匿名さん23/07/15(土) 16:53:10

    次の事件はチムVトリオが巻き込まれるやつが良いな

  • 132二次元好きの匿名さん23/07/15(土) 17:05:39

    「泣いてはったね」
    緩やかな坂を下る。気分に反して、今日は快晴だ。川のせせらぎもやけに美しく、一昨日と打って変わって平和という文字が似合う日だ。
    「そら、恋人亡くして泣かへん奴はおらんやろ」
    「せやね」
    手紙を見た瞬間、明美さんの恋人は崩れ落ちた。山林火災のニュースを見て、そんな気がしていたらしい。村の因習の話はしなかった。そんな事聞きたくないやろうから。
    「立ち直れはるかな」
    「…分からんけど、ああいうのは時が解決するねん。残酷なほどにな」
    別に忘れたいと思った事ないのに、気持ちというのはどんどん年月が経つにつれ、風化していく。マリサのこと今でも好きかと問われると、イエスともノーとも言い難いくせに、マリサの彼氏とのツーショットを見かけると複雑な心境に陥った。何年も連絡とらへんかったのは俺やのに。
    そのまま会話は無く、俺たちは歩いた。
    「烏…あれ」
    ようやく道が平坦になった時、氷織が山の方を指差した。
    「うわ、熊やん。ゆっくり下がるで」
    熊はのそのそと近づいてくる。熊には勝てん。近づかんといてくれ。せっかく生き残ったんやぞ。よく見るとその熊は二足歩行だ。真っ直ぐ、よそ見せずに俺たちの方に歩いてくる。
    「走れ!」
    持っていたショルダーバックを投げつけ、氷織の肩を押す。一瞬隙は作れた。これで一人は逃げられる。
    「は?…」
    熊はショルダーバックを受け止めた。は?なんやねん人間やんけ。ゴールデンカムイでもそんな熊おらんかったわ。
    「落ち着いて。俺だ。俺」
    「は?我牙丸やんけ!脅かすなや、なんで熊みたいな格好してんねん」

  • 133二次元好きの匿名さん23/07/15(土) 17:08:13

    野生の我牙丸さんが飛び出してきた!

  • 134二次元好きの匿名さん23/07/15(土) 17:33:10

    「いや、知り合いいるの珍しくて、つい」
    「熊みたいか格好して追いかけてきたら人間は逃げる。常識や覚えとけあほんだら」
    「お詫びにごちそうする。今日は良いの取れた」
    我牙丸が取り出したのは猪肉だ。かなり大きい。こいつ狩りすんのか。
    「おすすめは生」
    「え、生肉?それは僕らにはレベル高いわぁ」
    氷織が暗に嫌だと仄めかす。俺も同意見や。
    「うん、確かに慣れてない人はお腹壊すから。今日は焼く」
    我牙丸は手際よく、火をつけ、串に刺した肉を焼き始める。分厚い肉を10分ほど焼いて、ずいと差し出す。
    「おすすめは塩。素材の味を楽しめる」
    もらった肉は野生の味がした。

  • 135二次元好きの匿名さん23/07/15(土) 18:29:57

    「あーー、極楽極楽」
    「おじさんくさいで」
    「まだ18や」
    頑張った俺たちの身体へのご褒美に、少し良い旅館をとった。疲労が温泉に溶けて出て行ってるようだ。
    昼は猪肉、夜はクエ鍋。なかなか珍しいものを食べられたので、旅行としてはかなり上出来だ。
    「明日の昼のラーメンのあとはみかんのデザート食べたい」
    「それええな」
    「あ、テケテケの場所どうする?近くやで」
    「なんやその間抜けな名前のやつ」
    「上半身しかないお化け。でもめっちゃ足速いねん」
    「お前、そんなん見に行きたいんか。俺はもうこりごりや」
    水手砲で顔にお湯をかけてやると、氷織も果敢に仕返してくる。
    「にいちゃん、あんたら心霊スポット行ってきたんじゃないのか」
    隣で入浴していた、垂れ目のおっさんが驚いたように話しかけてきた。
    「いや、行ってませんけど」
    「そうなのか。テケテケ怖いのかぁ〜」
    そう言いながらバシバシと肩を叩かれる。関西のおっさんあるあるや。
    「にいちゃんが行っても、テケテケだって裸足で逃げ出すでぇ」
    おっさんはニコニコしながら一方的に話して露天風呂から上がって行った。
    「…一体なんなんや」
    「さぁ?」

  • 136二次元好きの匿名さん23/07/15(土) 18:32:44

    なんか連れて帰ってきてた?

  • 137二次元好きの匿名さん23/07/15(土) 18:35:23

    クエおいしいよね

  • 138二次元好きの匿名さん23/07/15(土) 18:56:58

    村人の怨霊でも憑いちゃった?

  • 139二次元好きの匿名さん23/07/15(土) 19:59:22

    >>55

    この時点で何か烏の周りに見えてる蜂楽

  • 140二次元好きの匿名さん23/07/15(土) 21:18:50

    「土産は…かげろうでええか。こればら撒いとこ」
    「僕もそれでええや」
    空港でお土産を買ってないことに気がついた俺たちは売店で適当なものを見繕っている最中だ。やっぱり土産はばら撒ける個包装にかぎる。まぁまぁ可愛げある斬鉄と七星にはもうちょっと買っといたろうかな。
    「お前、えげつないもん土産にすんな…」
    氷織が手に持っているのはたこ焼きサイダーだ。ノリで仲間と飲んだことがあるが普通にまずい。ちゃんとまずい。しかもしっかりたこ焼きの味するのが気持ち悪いポイントや。
    「これ?潔くんたちにはちゃんとかげろうあげるよ」
    「じゃあ誰にやんねん」
    「カイザーとネス。あ、このお土産、七星くんに渡しといてくれへん?」
    そう言って渡されたのは空のふわんとろんだ。友達にはちゃんと美味しいものを渡すらしい。カイザーとネスは氷織的には嫌い側に入るということだろう。
    「お土産渡さへんよりなんか陰湿やな」
    「日本の珍味を楽しんで欲しいだけや」
    そういって悪戯小僧のように笑った。

  • 141二次元好きの匿名さん23/07/15(土) 23:26:36

    パクパクパクパク、パクパクパクパクパクパク。もぐもぐごっくん。
    燃え盛る火の中立ち尽くす、村人たち。潔は不思議がってたけど、別に不思議というほどのことじゃない。だって食べられてたから。白い二つ頭のある蛇がパクパクパクパクと村人たちの魂を食べていっていたから。
    よくわかんないけど、多分蛇に酷いことしたんだろうな。可哀想に潔は立ち尽くす村人に怯えてた。だから、酷い光景見たくないかなって思って「後ろ向いちゃダメ」って教えてあげた。俺って相棒想い♫
    でも全員の魂食べちゃうなんて結構怖い神様。新聞を見ながら俺はうんうん唸る。難しいから苦手なんだよな〜。次のページをめくると、ママの特集が組まれていた。今大注目のアーティストと大々的に書かれている。でっかい美術館に飾られるらしい。
    「廻〜朝ごはんできたわよ。新聞読んでるの?珍しい」
    「うん、ママのページ見てた。すごいね!でっかい美術館に進出!」
    ハイタッチを交わす。ママの後ろにいる白蛇がチロチロと舌を出している。喜んでるのかな。どうやらママの味方をしているらしい。怖い神様かと思ってたけど、俺にとっては幸運の神様、かも♫

  • 142二次元好きの匿名さん23/07/15(土) 23:34:55

    蜂楽!!!

  • 143二次元好きの匿名さん23/07/16(日) 02:03:05

    烏たち、ワンチャンあのヤバい村の怨霊とかじゃなくて我牙丸さんの所の山で熊の生き霊か何か引っ付けて来た可能性無いか?
    って思ったけどこの感じだと蛇神さん説が濃厚そうだな

  • 144二次元好きの匿名さん23/07/16(日) 02:22:21

    蜂楽ママが神様の絵描いたから味方してくれたんだね

  • 145二次元好きの匿名さん23/07/16(日) 11:02:30

    「うげっ!」
    思わず声が出た。廊下で出会った烏旅人が、怪訝な表情をして歩き去る。
    「南無三、南無三…」
    「どーしたのイガグリ」
    バシバシと強く肩を叩いてきたのは蜂楽廻だ。頭にサッカーボールを乗せて、俺の目を覗き込んでくる。
    「いや、まぁな。なんでもないんだけどな…」
    「もしかして、イガグリも見えてるの!烏の後ろにいるやつ!」
    蜂楽は嬉しそうにくるりと回った。同じ仲間がいて俺も少しホッとする。
    「蜂楽も見えてるのか!あれヤバいよな。バラバラの人間がふよふよ浮いててさぁ。除霊勧めようかな」
    バラバラの霊が憑いてることも最悪だが、その奇妙な幽霊のさらなる奇怪なポイントは。
    「うんうん!烏の周り楽しそうだよね♪みんなニコニコして踊ってる。俺も踊りたくなっちゃう♫」
    楽しそうに言うと蜂楽ボールをスイスイドリブルしながらどこかへ行った。
    「どういう神経してんだ…あいつ…。うぅー南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」

  • 146二次元好きの匿名さん23/07/16(日) 11:04:43

    今までの犠牲者の感謝の舞い…的な?

  • 147二次元好きの匿名さん23/07/16(日) 11:11:23

    人脈(霊脈?)を着実に広めていく烏旅人

  • 148二次元好きの匿名さん23/07/16(日) 11:12:39

    生贄なんて文化今日で終いにしようやしたので生贄たちに好かれている

  • 149二次元好きの匿名さん23/07/16(日) 11:35:35

    これで後日談もどきも全て終了しました。
    長いのに読んでくださって、本当にありがとうございます!
    また次の話も読んでくれたら嬉しいです!

  • 150二次元好きの匿名さん23/07/16(日) 11:42:54

    焼き鳥とジンギスカンで煽りあってるの好き。
    縛られてるのに。

  • 151二次元好きの匿名さん23/07/16(日) 11:48:27

    >>149

    お疲れ様でした

    めっちゃ面白かったです読ませてくれてありがとう

  • 152二次元好きの匿名さん23/07/16(日) 12:04:23

    烏が大阪弁だからそれに釣られて周りで生贄の霊たちが踊ってるって聞いたら龍踊りが思い浮かんだよ
    でも龍踊りを大人数揃ってやるのは楽しそうよりは「!?」って感じだから違うか

  • 153二次元好きの匿名さん23/07/16(日) 16:33:45

    烏に害はなさそうだしむしろ対幽霊防御になりそうな方々だな

  • 154二次元好きの匿名さん23/07/16(日) 17:25:56

    ネス「お土産とはカイザーに対する忠誠心まるです✴︎」
    カイザー「(ドヤ顔でシャンパングラスに入れたたこ焼きサイダーを飲む)」
    カイザー「ゴフッ!なんだこれは!クソ不味いぞ!日本の飲料は全部こんな不味いのか世一ぃ!!??」

  • 155二次元好きの匿名さん23/07/16(日) 21:14:16

    >>154

    ネスが「クソ世一ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」って言って包丁持って駆け込んできそう

  • 156二次元好きの匿名さん23/07/16(日) 22:33:15

    たくましい妹で吹いた

  • 157二次元好きの匿名さん23/07/16(日) 23:08:18

    面白かった!
    次の話あるの!?めっちゃ嬉しい

  • 158二次元好きの匿名さん23/07/17(月) 01:13:05

    >>130

    ひおりんの運もテンション上がった

  • 159二次元好きの匿名さん23/07/17(月) 09:47:21

    烏、このペースでミステリーとサスペンスを経験し続けたら最終的に背後霊で村1つ2つ作れる規模になってそう
    イガグリが泡を噴く

  • 160二次元好きの匿名さん23/07/17(月) 15:02:31

    周り燃えてても「織田信長じゃん」と言える千切豹馬さん、さすがっす

  • 161二次元好きの匿名さん23/07/17(月) 15:03:46

    烏の死なせたらへん
        ↓
    氷織の死なせたらへん
    の流れが良い

  • 162二次元好きの匿名さん23/07/17(月) 18:35:51

    すげぇ、コメ真っ赤じゃん

  • 163二次元好きの匿名さん23/07/17(月) 18:38:39

    これが劇場版ブルーロックか、、、

  • 164二次元好きの匿名さん23/07/17(月) 21:17:06

    こっちのブルーロックはアニメみたいな激しめの主題歌じゃなくて女性ボーカルの叙情豊かなエンディング流れてそう
    悲しみと爽快感のどっちも余韻を残すやつ

  • 165二次元好きの匿名さん23/07/17(月) 22:24:46

    倉木麻衣に歌ってもらうか……

  • 166二次元好きの匿名さん23/07/17(月) 23:23:53

    >>165

    もうコナンで草

  • 167二次元好きの匿名さん23/07/18(火) 09:27:46

    烏には憑いてて、氷織には憑いてないからやっぱり運が悪いんだよね

  • 168二次元好きの匿名さん23/07/18(火) 09:28:37

    最新作なら主題歌はスピッツだったな
    個人的には椎名林檎とかも合う気がする

  • 169二次元好きの匿名さん23/07/18(火) 09:41:36

    名言 チョコバナナってほぼ蜂楽

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