- 1二次元好きの匿名さん22/01/05(水) 19:51:39
春麗らかなよく晴れた日の放課後、当のウララさんは補習でうらら〜とはできていないご様子。「にんじんが40パーセントのりえきで10本、2割引で450円で、売る前は1本・・・・・・?」と頭から煙を出していました。ライスさんはそんなウララさんのためにクッキーを焼いておくと言って手に米粉を持っていました。いつものドジなのか狙ったジョークなのか判断が難しいです。
「んっ、も、もう、すこ、し・・・・・・」
図書委員でもある私はそんな2人をよそに今日も自分の仕事をこなそうとします、ですが、どうもこの学園の本棚は背が高くてかないません。背伸びをしてギリギリ届くか届かないかぐらいの高さに本を傷付けず入れるのは私にとっては至難の業。もう少し背が高ければこうやって困ることもなかったでしょうに。
身長はなかなか伸びませんが胸とお尻ばかり大きくなって───といった話をライスさんにしたら少し落ち込んでしまいました。これは少し反省すべき点ですが、彼女も私のことを胸と眼鏡と本のウマ娘と思っている節があるようなのでたまには仕返ししてあげてもいいかと少し意地悪になってしまいます。
「ロブロイ、踏み台を持ってきたよ」
そう声をかけてくれたのは私のトレーナーさん。日々のトレーニングだけでなく、図書委員のお仕事をしてるときもお手伝いしてくれる優しいトレーナーさんです。
「ありがとうございます。お借りしますね」
さっきまで届かなかった高さも、トレーナーさんがいるとほんの少し手を伸ばせば届く位置に。高さに余裕ができたら心にも余裕ができる。表紙が傷つかないよう優しく本を戻し、踏み台を降ります。───が、 - 2二次元好きの匿名さん22/01/05(水) 19:54:04
「あっ!」
気づいたときにはすでに遅し。足を踏み外した私は地面に向かって真っ逆さま。
「ロブロイっ!」
しかし地面に激突することはなく、気づけば暖かな腕の中。トレーナーさんが私を抱きとめてくれたのです。きっと私が台に登っている時もずっと気を張ってくれていたのでしょう。トレーナーさんの大人な部分に少しドキドキしてしまいました。
───トレーナーさんの顔が私の胸に埋められているのに気づくまでは。
「と、トレーナーさ、あ、ありがとう、ございます」
咄嗟に受け止めたからバランスを崩してしまったのでしょう。ですが、その事実に気づいてしまった私はついしどろもどろになりながらお礼を述べてしまいました。そして優しく地面に降ろされて、次の瞬間
「ほんっとうにすまない!」
もし日本に土下座コンテストなるものがあるならば10点満点の美しい土下座。雷の如く素早い動き、端から端までピシッと整ったフォーム、頭を地面に擦り付ける心意気。どれをとっても満点でファインさんがいたら思わず写真を撮っていたんじゃないか。そう思うくらいに完成された土下座でした。
「あ、足を踏み外したのは私ですから、トレーナーさんは悪くないです!」
そう、責められるべきは私の方。本来彼はこのようなことをする謂れはない。むしろ私に注意をするべきなはず。だのに、彼は自分の尊厳を顧みず私に謝罪の意を示した。そうなってしまえば私にできることはあなたは悪くないと言ってあげることぐらい。
「もっと俺が気をつけていればよかったんだ!なのに、ロブロイを危ない目に合わせた上にそこに顔をつけてしまうだなんて!」
こうなったトレーナーさんはもう引いてくれません。もともと妙に頑固なところがあって、普段はそれが真面目さとして出てきてくれていますがことこう言う状況に限ってはもう少し柔軟になってくれないかなと思ってしまいます。 - 3二次元好きの匿名さん22/01/05(水) 19:55:00
トレーナーさんが引いてくれない以上、譲歩しなければならないのは私の方。つまり、私は彼にあなたが悪いと言わなければならない。でもそれだけだと不公平。だから私もちょっぴり悪くなります。
「そ、そこまでいうなら、その、今度、一緒に本屋に行ってくれたら許してあげちゃうかも・・・・・・です」
許して欲しいトレーナーさんのために。そして、そんな彼を好ましく思っている自分のために。ゼンノロブロイは少しだけアクノロブロイになります。
「そ、そうか。それくらいならいくらでも!」
やっとトレーナーさんは顔を上げてくれ他のでしょう。でしょう、とあるのは私が直接彼の顔を見ることができないから。
罪悪感、ではなくデートに誘ってしまったと言う羞恥心が私の顔を覆ってしまっているから。きっと私の顔は闘牛のマントのように真っ赤でしょう。こんな顔を見られたくなくて、手に持っていた本で隠してしまっているから。
「明日はオフだったよな?もし予定が空いてるなら行こうか」
トレーナーさんの方はすっかり落ち着いたようで私に予定を確認してくれます。私の方はそれどころじゃないというのに、男の人はこういうところが鈍感です。
いつまでも黙っていては怪しまれるので、二つ返事で了承しました。あぁ、明日着て行く服を急いで見繕わないと。 - 4二次元好きの匿名さん22/01/05(水) 19:57:24
───あぁ、やってしまった。(私の中では)デートが始まって早2時間。荷物がないうちに近場のレストランで昼食を終え、本来の目的であった本屋へ。そこで見つけた話題作の続編。前作の読み応えがいかに素晴らしいものだったかを長々と語っていたら気がつくと一時間強経過して・・・・・・あっ、よく見たら時計の短針と長針が逆ですね。2時間強でした。その間ずっと前作について語ってしまいました。
「そ、その、トレーナーさん、ご、ごめんなさい!私、つい・・・・・・」
読書家あるあるではありますが、読書家でない人にとっては興味のない蘊蓄をひたすら聞かされているようなもの。恥ずかしさと申し訳なさでいっぱいいっぱいになってしまいます。
「ロブロイがそこまでお勧めしてくれる本なら、俺も読んでみたいな」
それでもトレーナーさんは呆れるどころか興味を示してくれます。気を遣ってくれただけなのかもしれないけれど、その優しい表情からそんな意図は読み取れず、本心から言ってくれているのだと安堵します。
「で、でしたら部屋に前作が、いえ、一作目からありますからぜひ!」
そして私はそんな彼に嬉しくなって、自分の持っている本のシリーズをあれよこれよと勧めてしまいます。そうして我に帰った頃には荷物がパンパンで、ウマ娘の力を持ってしても持ちすぎたなと思うくらいの重量でした。
トレーナーさんは持ってくれると言ってくれましたが、私の方が力がありますしよくよく考えると私今日お財布を一度も出していないということに気づいて申し訳なさも相まって断りました。
「大丈夫です!私、これでもウマ娘ですから!トレーナーさんより力はあります!」
・・・・・・トレーナーさんが少し落ち込んでいるように見えたのは気のせいでしょうか。 - 5二次元好きの匿名さん22/01/05(水) 19:58:08
それから数日、トレーナーさんがどうにも眠そうなので話を聞いてみると
「お勧めしてくれた夜遅くまで本が面白くて読み耽っていた」
とのことでなんだか自分のことのように嬉しくなってしまいました。トレーナーさんの感想も聞いてみると、私が思いもしていなかった部分や私と同じ部分に面白さを見出してくれて、またまた嬉しくなってつい私も興奮してしまいます。
「ではこっちの本はどうでしょうか!」
ついつい別のお気に入りの本を勧めてしまうのは読書家の悪い癖です。それに、興奮気味だったからか詰め寄ってしまって、もしかしたら身体を押し当てていたかも・・・・・・。
その日ベッドで悶える私を、ライスさんはそっとしておいてくれました。翌日米粉クッキーをもらえました。とてもおいしかったです。 - 6二次元好きの匿名さん22/01/05(水) 20:04:08
そうした日々が続き、トレーナーさんも最近はよく読書をしている姿を学園の色んな場所で見かけます。カフェテリアだったり、エントランスホールだったり。中には私が読んだことのないタイトルの本もあって、読書の輪を広げられたことに図書委員として喜びを感じました。
しかし、本をお勧めするのはいつも私の方ばかり。トレーナーさんがどんな本を読んでいるのか、私も知りたい。私にも同じ世界を共有して欲しい。あなたの世界を私にも教えて欲しい。そんな思いが口から溢れます。
「トレーナーさんのお勧めの本も、知りたいです・・・・・・」
その翌日、トレーナーさんがスーツ姿のままソファーで横になって眠っていました。いつも皺のないスーツを着こなす格好いいトレーナーさんがこんな無防備な姿でいるのはなんだか少し優越感があります。
しかしトレーナーさんがうたた寝をしてしまうだなんていったい何があったのか。ふと机の方に目をやると、一冊の本と何かのリストが。眼鏡を拭いて顔を近づけると、そのリストは消去線が引かれたたくさんの本のタイトルと、それらの感想が書かれてあり、唯一線が引かれていない本のタイトルは机の上のものと一致していました。
「トレーナーさん、私のためにわざわざこんなに・・・・・・」
ふとトレーナーさんの顔を見ると大きな隈が。きっと夜遅くまで、下手をすれば一晩中悩んでくれていたのではないでしょうか。そんな彼を寝苦しい体勢のまま寝かせていては、きっと私が物語の『英雄』のような存在になんてなれない。
・・・・・・そう理屈を付けて、トレーナー室にある毛布を被せ、彼の頭を私の太腿に。俗に言う膝枕の体勢。この無防備な寝顔を間近で見られるのは、私だけの特権。
「・・・・・・いつか、きっと私は『英雄』になってみせます。だからそれまでは、こうして甘えさせてください」
眠っているトレーナーさんには決して聞こえない私の言葉。でも、きっとこの決意は伝わっている。トレーナーさんは私が『英雄』になれるよういつだってお手伝いをしてくれている。
英雄という高みを目指すには、私は小さすぎるから。大きなあなたが支えてください。そしてあなたが疲れた時は、私にも支えさせてください。そして二人でいつかきっと、遥かなるあの高みへ───
そんな英雄を心に書き写して、私は今日も本を読む。安らかな寝息を耳にしながら。 - 7二次元好きの匿名さん22/01/05(水) 20:04:46
───目を覚ましたトレーナーさんがふと顔をあげたときに私の胸に下から埋めてしまって、また一悶着あったのは別のお話です。
- 8二次元好きの匿名さん22/01/05(水) 20:05:50めちゃくちゃ贅沢なことを言う|あにまん掲示板本棚の最上段が届かないロブロイのために踏み台を持ってきて足を踏み外したロブロイを受け止めた拍子に胸に顔を埋めてしまって土下座して謝って許してもらいたい「あ、足を踏み外したのは私ですから、トレーナーさん…bbs.animanch.com
自分で立てたこのスレの概念を我慢できなくてSSにした。
深夜に概念を打ち立てて自分でSSにしてしまえば自分の理想の物語ができる。地産地消。
俺が始めた物語だ。自分のことだ。自分で書いて、自分の手と心で残したい。そしてこの手でロブロイの円周率を測りたい。
- 9二次元好きの匿名さん22/01/05(水) 20:06:27
過去作↓
悪い子ライスとアクノロブロイ|あにまん掲示板ライス「ロブロイさん、こちらウララちゃんたちと一緒に食べる予定のにんじんぷりんでございます」ロブロイ「ふふふ、あなたも悪い子ですね、ライスさん。にんじんぷりんが1箱9個入りだからって4つあらかじめ冷蔵…bbs.animanch.com駄目じゃないライスとゼンアクノロブロイ、あとハルウララとか|あにまん掲示板ライス(ウララちゃんがバクシンオーさんと一緒に補習だから、下校までちょっと暇になっちゃった)ライス(せっかくだしトレーナー室で宿題でもしてようかな。あれ?鍵が開いてる。お兄さま、いるのかな?)ライス(…bbs.animanch.com幸せの青い薔薇ライスとチチメガネホンノロブロイ、それとサクウララとか|あにまん掲示板ウララ「ライスちゃん、がんばれー!」ロブロイ「ライスさん、がんばってください!」お兄さま「ライス、がんばれ!」ライス(みんなの声が聞こえる。ライスを応援してくれるみんなの声が)ライス「・・・・・・ライ…bbs.animanch.com【SS】大盛りライスとワルウララ、あとアクノロブロイとか|あにまん掲示板ウララ「もうすぐ夏合宿だね!楽しみ〜!」ライス「もう、まだ1ヶ月も先だよ、ウララちゃん。でも、ライスも楽しみかな」ウララ「みんなでいっぱい遊ぼうね!」ロブロイ「ダメですよ。夏を制するものはレースを制す…bbs.animanch.com年上ライスとボスノロブロイ、あとハルウララとか|あにまん掲示板ライス「あわわ、どうしよう・・・・・・」ウララ「なんかテレビの人たちがいっぱいだね!・・・なんで?」マヤノ「今日はマルゼンちゃんと会長と、あと強い人たちがいっぱい集まって模擬レースやるんだって。それで…bbs.animanch.com【SS】マシマシライスとレースノロブロイ、あとモツウララとか|あにまん掲示板ライス「き、来ちゃった・・・・・・大盛りラーメンのお店・・・今日はライス1人だし明日はオフだしロブロイさんは北海道でレースだからニンニクもいっぱい入れて大丈夫・・・」ファイン「ごきげんよう、ライスシャ…bbs.animanch.comお絵かきライスと後輩ノロブロイ、あとハルウララとか|あにまん掲示板ロブロイ「美術の課題・・・・・・どうも思ったようにいきませんね」ライス「ロブロイさん、お風呂空いたよー」ロブロイ「あ、はい。ありがとうございます」ライス「あ、勉強中だった?ごめんね」ロブロイ「いえ、大…bbs.animanch.com【SS】コロッケライスとお弁当ノロブロイ、あとハルウララとか|あにまん掲示板ウララ「ロブロイちゃん、今日お弁当なんだね!」ロブロイ「昨日ライスさんが気合いを入れて作ったコロッケがいっぱい余ってて・・・寮長さんがみんなの分のお弁当を詰めてくれたんです」スカイ「お弁当と言ったらウ…bbs.animanch.com【SS】年越しライスとメンノロブロイ、ハツウララとか|あにまん掲示板ライス「ウララちゃんたちは年末年始実家に帰ったりするの?」ウララ「わたしはトレーナーと初詣したいしオペちゃんたちとも初詣したいしこっちに残るよ」ロブロイ「私もトレーナーさんと本の初売りとか福袋とかを買…bbs.animanch.com【SS】キカサレフクキタルと相談ライス、あと代わりのハルウララとか|あにまん掲示板【第一話】マックイーン「最近皆さんからの私の扱いが本当にひどい」フク「はぁ」マックイーン「フクキタルさんに問います。メジロマックイーンと言えば?」フク「えっ?えーっと、スイーツをパクパク食べてゴールド…bbs.animanch.com【1レスSS集】ライスとロブロイ、あとハルウララとか|あにまん掲示板【紹介】ロブロイ「お二人とも、少し練習に付き合ってもらえませんか?」ライス「練習?」ウララ「なんの?」ロブロイ「図書委員として図書室の広報活動をするように言われたんです。なのでプレゼンの練習に」ライス…bbs.animanch.com【SS】トークノロブロイと喋ルウララ、あと悪い子ライスとか|あにまん掲示板ロブロイ「ウララさんは漫画を結構読みますよね?」ウララ「うん!漫画の中にあるトレーニングとかいっぱいやってるんだ!いくよ!かいおーけん!」ロブロイ「ほっほっほ、残念ですが私はまだフルパワーの20%も出…bbs.animanch.com【SS】列車ライスと機関車のロブロイ、あと電車ウララ|あにまん掲示板ウララ「しゅっしゅっぽっぽっしゅっしゅっぽっぽー」マヤノ「しゅっしゅっぽっぽっしゅっしゅっぽっぽ☆」デジタル「はうぁ、今日もウマ娘ちゃん達が尊い・・・」マヤノ「むっ、目標発見目標発見!」ウララ「切り離…bbs.animanch.com - 10二次元好きの匿名さん22/01/05(水) 20:13:04
すげえ高いレベルの幻覚
- 11二次元好きの匿名さん22/01/05(水) 20:25:00
素晴らしい、これは素晴らしいものを見ました
ありがとう、ありがとうございます - 12二次元好きの匿名さん22/01/05(水) 21:15:44
いいなぁ…穏やかな雰囲気がとてもいい…
- 13二次元好きの匿名さん22/01/05(水) 21:20:32
誇れ お前は強い
- 14二次元好きの匿名さん22/01/05(水) 23:07:06
これが昨日籾殻フィールドとか展開してたやつと同一人物なんだぜ。信じられるか?俺だけどな!
- 15二次元好きの匿名さん22/01/06(木) 00:38:07
お前かよ!
- 16二次元好きの匿名さん22/01/06(木) 10:06:31
age