【SS・閲覧注意・CP】「おーい!ライブが始まるぞ、ルフィ!」PART2

  • 1スレ主23/02/13(月) 20:33:11
  • 2スレ主23/02/13(月) 20:38:30

    現在の状況

    コビー、ブルーノ、ルフィ
    ・ライブ会場でウタ説得失敗 ブルーノとコビー撤退

    ウソップ、サニーくん、ベポ
    ・ゴードンさんの回想中

    ロー、ヘルメッポ、海賊たち
    ・戦力を集めて潜伏中

    麦わらの一味+α
    ・エレジアの城へ

    海軍
    ・エレジア到着。観客の意識戻らず。ウタ行方不明?

    五老星
    ・胃が痛い

  • 3二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 20:50:20

    立て乙

  • 4二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 21:00:10

  • 5二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 21:00:33

    即落ち回避?

  • 6二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 21:00:58

    >>5

    まだだ!

  • 7二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 21:01:01

    立て乙~

  • 8二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 21:01:28

    8

  • 9二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 21:01:38

    9

  • 10二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 21:02:49

    10

  • 11二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 21:10:41

    このレスは削除されています

  • 12誤字あったので修正23/02/13(月) 21:15:10


    ――ライブ会場


    観客を海中に沈め、かわいいものの姿に変え終えたウタは、穏やかな水面を歩きながら足元にしきりに話しかけていた。


    ウタ「驚いた? ごめん、でも大丈夫だよ。平和で自由な新時代でずっと一緒に楽しく暮らそうね!」


    ……その声を聞いている人間は、誰もいない。


    ただ一人、ルフィを除いては。



    ウタ「……またあんた? 何しに来たの」


    近づくルフィの足音に気づいたウタが不機嫌そうに声のトーンを落とす。

  • 13二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 21:49:15

    ルフィ「お前こそ何やってんだ。こいつらみんなお前のファンだろ」


    ウタ「みんなには、ちょっと姿が変わってもらっただけ。これでみーんな幸せになれるの」


    ルフィ「幸せ? こんなの……」


    ルフィ「こんなのただの“支配”じゃねェか!」



    ルフィの険しい表情にウタは涼しい微笑みを浮かべる。



    ウタ「“支配”? そんなことしないよ。“新時代”は海賊も天竜人も怪我人も、貧しい人もお金持ちもみんな平等で平和な世の中なんだから」


    ルフィ「平和? 平等? それがお前の考える“新時代”なら……」


    ルフィ「おれは、そんなもんブッ飛ばして自分の“新時代”をつくる!!!」



    宣言するルフィの全身からぶわっとオーラが立ち上り、爆発的に膨れ上がって全方位に広がった。覇気の力だ。


    水面を滑るように走った覇王色の覇気はしかし、ウタに届く前に搔き消されて、そよ風を起こすのみだった。


    ウタが作った夢の世界だ。そんなこともできるのだろう。

  • 14二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 22:24:26


    ウタ「……ふぅん……あんたも“新時代”の理想があるんだ。興味ないけど」


    前髪を揺らす微風が収まると、ウタは《私は最強》の歌で呼び出した黄金の槍を召喚して構えた。


    ウタ「海賊が考える“新時代”と、私が作る“新時代”! どっちが強いか、勝負よ!!!」



    黄金槍を一振りするとその軌道から無数の音符が飛び出してルフィに襲い掛かる。


    身体に貼りつき拘束しようとする音符を体の動きだけで躱し、ルフィは短く地面を蹴って飛び上がると空中で回転して技を繰り出した。


    ルフィ「ゴムゴムの……銃(ピストル)!!!!」


  • 15二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 22:47:35

    海賊無双2のIF√のルフィの名言来るかな

  • 16二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 23:10:24


    ウタがパチンと指を鳴らすと今度は大量の音符の戦士が飛び出してくる。


    一部はルフィの攻撃を受けて吹き飛ばされたが、代わりの戦士たちが次々に槍を構えて突進してきた。


    ルフィ「ゴムゴムの……スタンプ!!乱打(ガトリング)!!!!」


    空中から突き落とすように蹴りを繰り出し応戦するも、空飛ぶ音符兵たちが続々とルフィを取り囲む。


    一斉突撃をルフィは伸びる腹で受け止め、その反動でギュルンと弾き飛ばすと拳の暴風雨(ストーム)を繰り出した。


    ルフィ「おおおおおおおおお!!あああああああ!!!」


    猛攻で音符兵たちの包囲に穴が開いたのを見逃さず、着地と同時にギア2(セカンド)を発動、水面を蹴ってウタへ突進する。



    彼女は動じず両手を振って虹色の五線譜を生み出し、縦横無尽に行く手を阻んだ。


    足元の五線譜を踏まないようにタン、タンとステップを繰り返し、ルフィが大ジャンプするとそこを狙ったとばかりに音符兵が巨大ハンマーを打ち下ろした。


    ルフィ「ゴムゴムの鐘!!!」


    それを頭突きで跳ね除けると、反撃とばかりに両足で音符兵をがっしと掴み、体を捻って地面に叩き落とした。


    ルフィ「ゴムゴムのォ…“JETハンマ~~”!!!」


    ザバァン!!

  • 17二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 23:32:23

    落とされた衝撃で大飛沫が上がり、抉れるほど凹んだ水中のぬいぐるみ達が声無き悲鳴を上げて逃げ惑う。


    (『なんだなんだ?』『海賊の攻撃だ!』『助けて殺されるー!』『ウタ―!!』)



    ウタ「あーっ! ちょっと何すんの! やめてよ!!」


    ウタは急いで駆け寄るとぬいぐるみたちが汚れたり怪我をしていないか検分し始めた。


    しゃがんで無防備な背中を音符兵たちが庇うように護衛する。


    すっかり気がそがれたルフィは、戦闘の構えを解くと気まずそうに目をそらした。


    ルフィ「……そんなになっても守ろうとすんなら、最初っから大切にしてやれよ!」


  • 18二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 23:46:13

    ウタ「……なんで海賊のあんた言われなきゃなんないの。世の中にはいっぱい苦しんでる人がいる。私はその人たちを大事に思ってる!」


    ルフィ「お前が知らねェやつまで助ける義理なんてねェだろ」


    ウタ「あるの! 私は新時代を作る女。歌でみんなを幸せにするのが使命なの」


    ルフィ「お前はこんなのが幸せだっていうのか」


    ウタ「うるさい! 私のことわかってくれる人もいる!みんなわかってくれる!いつかきっと!」



    ルフィ「いつかっていつだよ!!」


    ルフィ「今幸せじゃねェ人間を救うんじゃなかったのか。お前が一番救われてねェじゃねェか!!!」


    ウタ「!!」

  • 19二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 00:01:07


    ウタの眦から、知らず浮かんでいた涙がひとつ、はらりと零れ落ちる。


    ルフィ「こんなことして……シャンクスは怒るぞ」


    ウタ「い……いきなり何!? シャンクスは関係ないでしょ」


    ルフィ「娘がこんなことやってるのに、シャンクスが黙ってるはずねェだろ!」


    ウタ「娘って! 私を捨てたあいつらにそんな風に思われたくない!」


    ルフィ「思ってるかもしれねェだろ!!!」


    ルフィ「俺の知ってるシャンクスは……赤髪海賊団は、そういう男たちだ。どんなに辛い時でも仲間は見捨てねェ」


    ウタ「仲間……」


    ルフィ「シャンクスはおれの恩人だ。この麦わら帽子だって、いつかシャンクスに返すと約束をした。おれは必ず約束を果たす!」


    ウタ「約束……は、はは……」

  • 20二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 00:19:19


    ――いいんだぞ、ここに残っても。


    ――世界一の歌手になったら、迎えにきてやる。







    ――置いてかないで!!


    ――なんで……なんでだよォーーーー!!!!


  • 21二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 00:31:37

    ウタ「あはは……アハハハハハハハ!!! そう……あんたはシャンクスを信じてるんだ……!」


    乾いた笑い声を上げるウタにルフィは一瞬たじろぐ。周りの空気が重く変わった気がした。


    治療をしていたぬいぐるみを置き、ウタはゆらりと立ち上がる。


    ウタ「ルフィって言ったっけ。あんたと私は一生分かり合えないよ。私を捨てたあいつのこと信じてるなら……!」


  • 22スレ主23/02/14(火) 00:33:42

    今日の更新はここまで
    もう少ししたらついにアレが…アレが…!
    あとPS3は持ってるんですが無双は未履修なので、なんか台詞が被ったら偶然と思ってください

  • 23二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 04:31:41

    トットムジカ来そうだな...

  • 24二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 08:12:28

    保守

  • 25二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 18:52:06

    期待

  • 26二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 20:10:52


    ――少し前のエレジア


    小雨がぱらぱらと降り始めていた。


    ライブ会場となったステージはがらんどうで、煌びやか映像設備も見当たらない。


    観客席では意識を失った人々が倒れ、雨に打たれていた。


    ウタはそんな中で一人、ステージから伸びた桟橋を歩いていた。


    片腕にはネズキノコが入ったバスケットを下げている。定期的に食べないと眠気が襲ってきてしまうのだ。


  • 27二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 20:45:11

    ウタ(やっぱり美味しくないなぁ……もっと食べやすかったらよかったのに)

    ウタの“ウタウタの実”の能力は体力の消耗が激しい。普段の配信なら一曲歌っただけで全身がずっしり重くなりベッドに辿り着くのもやっとになるのだが、

    このネズキノコを食べてからは体が軽く、頭もすっきりと冴えている。

    しかし体力の消耗は抑えられないため、ウタはトボトボと歩いて桟橋から小舟に乗り移り、中央の小島になっている枡席の一つに上陸した。

    ライブに来た観客たちはすべて、ウタが“ウタウタの実”の能力で作り出した“ウタウタの世界(ウタワールド)”に心を取り込まれている。

    この枡席にいる客も同じだ。例外は無い。

    オレンジ色の髪と黒い髪色の女性が、向かい合って倒れている。

    妙に体の大きな男や太った魚人、骸骨のように細身で背の高い大人や三本も武器を抱いている男。

    大きな帽子を被ったぬいぐるみに、すね毛の生えた金髪の男性。

    顔を白塗りメイクにした鼻の長い男性は、雨のせいで白粉が半分溶けて流れていた。

    中央で大口を開けて寝ている若い男性の元に辿り着くと、ウタはしゃがみ込んで頬をつんつんとつつく。

    分かっているが、起きないことを念のため確認した後、頭の下敷きになっている潰れた麦わら帽子を苦労して引っ張り出した。

  • 28二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 21:01:22

    ウタ「やだ、曲がってるじゃない……」


    付着した泥を払い、歪んだ鍔(つば)を戻し、くるりと裏返してすべりに指を引っかける。


    裏側に記された字を見て確信を得たように頷いた。


    ウタ「……うん。やっぱりシャンクスの被ってた麦わら帽子だ」


  • 29二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 23:08:09

    “ウタウタの世界”の中で見た時から気になっていたが、こうして確かめに来てよかった。

    なぜこの男が持っているのかは分からないが……そんなことはどうでもいい。

    雨に濡れた頭に、そっと麦わら帽子を乗せてみる。

    ……結んだ髪の毛に引っかかって上手く被れなかった。こんなに軽くて小さかっただろうか。

    昔はこの帽子に憧れて、欲しい欲しいと何度もねだったものだ。

    ウタ「…………」

    嫌な記憶を思い起こしそうになって、頭(かぶり)を振る。すると……


    『全員、到着しました!』『周囲に敵の姿なし』『第四班、進め!』

    人の声が遠くから聞こえて、ウタは急いで岩陰に身を寄せ姿を隠した。

    持っていた帽子は元の持ち主にぽいっと返す。

  • 30二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 23:23:54

    こっそりと岩陰から様子を覗くと、制服を着た海兵たちが武器を構えてステージに上がっているのが見えた。

    沖合に海軍の船が集結しているのは知っていたが、遂にここまで来たのか。

    海兵には指を折って数える程しか会ったことがないが、住民が二人しかいないこのエレジアでみんなゴードンとウタに親切にしてくれた。

    だが今来ているのは怖い顔をして武器を構えている……ならずものと変わらない集団だ。

    海兵を乗せた小舟が幾つか、観客席の方へと向かっている。ウタが隠れている小島の横を通り過ぎた。

    ステージの中央では、背の高いモヒカンの男が電伝虫を使って何か喋っている。きっと偉い立場なのだろう。

    モモンガ「どうした、武装偵察第四班、報告しろ!」

    モモンガ「なにィ…!? まさか、死んでいるのか!?」

    ウタ「寝てるだけ!」

    ウタは立ち上がって呼びかけた。死んでいると思われたら可哀想だ。

  • 31二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 23:50:42

    ウタ「でも起きないよ絶対に」


    枡席からジャンプして桟橋に着地する。ちょっとふらついたがやせ我慢だ。ダンスで鍛えた体幹で踏ん張り背筋を正す。


    ステージに向かって歩いてくるウタに対して周囲の海兵たちが銃を向ける。だが――


    ウタ「私を殺したら、ここにいるみんなの心は永遠に戻ってこないけど……それでもいいのかなァ」


    そう告げると、モヒカンの男がさっと手を振り、海兵たちを静止させた。やっぱり偉い人だ。


    「お嬢さん」



    ウタがステージの中央に座ると、顔に大きな傷のある着物姿の男が下駄を鳴らして現れた。


    肩に白いコートを羽織っているということは、この人も海兵なのだろう。

  • 32二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 00:00:22

    イッショウ「お嬢さんの悪魔の実の能力については、十分理解していやすよ」

    ウタ「なら説明いらないよね。はーい!帰ってー」

    ウタは片手を上に挙げてひらひらと手を振る。

    ウタ「それにさ、どうせあと少しで私はこっちから消えるんだから……」

    バスケットから2本目のネズキノコを取り出してぱくっと食べると、着物の男が怪訝そうに眉をひそめた。

    イッショウ「この匂いは……ネズキノコですかい?」

    ウタ「ん!」(頷く)

    モモンガ「ネズキノコ?」

  • 33二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 00:18:07

    このレスは削除されています

  • 34二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 00:19:26

    イッショウ「そのキノコを食べた者は眠ることができなくなり、やがて死に至る――」


    モモンガ「……貴様! 観客を巻き込んで死ぬつもりか!」


    ウタ「“死ぬ”って何?」


    確かにそのつもりだが、何も分かってない。


    ウタ「大切なのは身体より心じゃないの? 新時代はみんな一緒に“心”で生き続けるものなんだよ」


    だからここで死のうと何も変わらない。


    海兵に殺されようとも、自分でナイフを首に突き刺そうとも。


    観客や自分の身体が雨ざらしになっても、“心”さえあればいい。


    “ウタウタの世界”ではウタが望まぬ限り、雨が降ることはないのだから……


  • 35二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 00:41:05

    イッショウ「できれば血は流したくねェんで。やめてもらうことはできやせんか? 世界転覆計画を」


    ウタ「え、なにそれ?」


    仰々しい言葉が出てきてウタはきょとんとする。


    ウタ「私はみんなに幸せになってほしいだけだって」


    なんとも嚙み合わない回答に着物の男は深く溜息を吐く。


    イッショウ「どうやら話の通じる相手じゃあ、ないようですね」


    ウタ「あなたたちこそね」


    交渉決裂と見た海兵が銃を構えるのに対し、ウタは微笑むとすぅっと息を吸った。


    モモンガ「おっとォ! 歌声さえ塞げば貴様は無力だ」


  • 36二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 00:48:44

    歌を警戒した海兵たちが、何やら機械式のヘッドフォンを取り出して頭に装着した。

    あれで音を遮断するつもりなのだろう。そういうことならば、こっちも考えがある――

    イッショウ「お前さんを捕えさせていただきやす」

    着物の男が刀を抜き、一歩踏み出そうとしている。

    もはや袋の鼠。絶体絶命。万事休す。

    しかし……ウタは座ったまま余裕の笑みを浮かべた。

    ウタ「残念。もう遅いの」



    ドォン!!

  • 37二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 01:13:18

    上空から降ってきた何かがステージに激突し、周囲の海兵たちが吹き飛ばされた。


    もうもうと巻き上がる煙が引くと、二人の男がウタをかばうように両側に立っている。


    それは眠ったままのコビーとヘルメッポだった。


    イッショウ「コビー大佐!? こいつァどういう了見だい……?」


    思わず叫ぶが、コビーも、ククリ刀を構えたヘルメッポも、目を閉じたままふらふらと身体が揺れている。


    ……まさか操られているのか!?


    海兵たちが気づいた瞬間、ウタの声がライブ会場に響き渡った。


    「みんなー! 悪い人たちがいるよ! 新時代のためにみんなでやっつけよう!」


  • 38二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 01:35:28


    《みんなー! 悪い人たちがいるよ! 新時代のためにみんなでやっつけよう!》


    ルフィ「!! なんだ?」


    いきなりウタが叫んだ。すると足元の海面から黒いシミが湧き出し、雫のように浮かび上がると音符兵の姿を取った。


    武器はなぜか持たず、黒い音符兵たちは次々と現れてルフィを取り押さえようとする。


    ルフィ「わっ! くっ!」


    身体の動きだけで音符兵を避け、ウタに近づこうとするも武器を持った赤と青の音符兵の攻撃も入り混じり収拾がつかない。


  • 39二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 03:03:24

    海兵「うわっ!」


    海兵「わあっ!」


    ウタの呼びかけに応えるように、倒れていた観客たちがゆらりと起き上がり海兵たちに近づいてくる。


    腕を伸ばして身体にまとわりつき、ヘッドフォンを奪おうとする様子に気味が悪いと海兵の一人が銃を構えた。


    イッショウ「傷つけちゃいけねェ! 操られているのは罪なき一般市民だ!」



    一発でも撃てば海軍は民衆の敵になってしまう。そうなっては元も子もない。


    かくなる上は武器を使わず無力化する他ないが、イッショウやモモンガはともかく一般海兵にそんな力は無く。


    あっという間に取りつかれて幾人かのヘッドフォンが奪われてしまった。




    《ひとりぼっちには飽き飽きなの 繋がっていたいの》


    雨の中で歌姫の歌声が悲しく、遠く響く。


    《純真無垢な想いのまま Loud out Huh~》


    夢と現実、二つの世界でウタの歌唱が始まった。

  • 40二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 03:05:49

    今日の更新はここまで

  • 41二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 08:10:52

    保守

  • 42二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 08:25:28

    ここのウタはルフィの事REDと同じ様に刺すんかな

  • 43二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 17:32:22

    このSS楽しみの一つになりました!

  • 44二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 20:23:45

    《Listen up baby 消えない染みのようなハピネス》


    《君の耳の奥へホーミング 逃げちゃダメよ浴びて》


    《他の追随許さないウタの綴るサプライズ》


    ポップでダンサブルなメロディが流れる中、音符兵の群れに囲まれてウタが踊る。


    赤、黒、青の兵士たちが音に合わせて波打つように進軍する。


    リズミカルなステップに合わせてウタが口ずさむ。


    《リアルなんて要らないよね?》


  • 45二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 21:09:49

    ルフィ「……こいつらッ(ドカッ)、攻撃がッ(バシッ)、効いてねェッ!!(ズドン!)」


    音符兵たちを片っ端から殴り、捻じ伏せ、蹴り飛ばしても続々と新しいのが現れる。


    背後から手を伸ばしまとわりつく黒音符兵を振り払い、槍の攻撃を躱し、武装色を纏った拳で銃乱打しようとも、


    しばらくするとすぐに復活してしまうのだ。


    ルフィ「ッ、キリがねえ……ッ!!」



    《後で気付いたってもう遅い 入れてあげないんだから》


    《手間取らせないで be my good, good, good boys & girls》


  • 46二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 21:14:09

    《誤魔化して強がらないでもう ほら早くこっちおいで》


    静かな水面だった足元は今やぐねぐねと波打ち、踏み出した脚を絡め捕ろうとする。


    ルフィはドン!と力強く水面を踏みしめると反対の脚を天高く伸ばし、一気に振り下ろした。


    ルフィ「ゴムゴムのォ……“戦斧(オノ)”!!!!」



    ドゴォン!!!


    衝撃が波打つように伝わり、押し上げた水面が音符兵たちの身体を宙に浮かせる。


    ルフィ「からの……JET“鞭(ウィップ)”!!!」


    音速で伸びたゴムの脚で全員に足払いすると、倒れた兵たちを踏み越えてウタに接近しようとした。


    ルフィ「あああああ!!!」



    《全てが楽しいこのステージ上 一緒に歌おうよ》



    《Haha!》

  • 47二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 22:31:58

    一方の海軍。イッショウたちは操られた観客に襲われて苦戦していた。

    怪我をさせまいと鞘に収めた刀で小突き、足を払い、組み伏せても、“気絶”することない人間はじたばたと暴れる。

    いつの間にか背後に回られ隙を突かれ、ヘッドフォンを奪われたらもうおしまいだ。

    ウタの歌声に誘われて眠りに落ちてしまう。

    友が、味方が、同僚が、次々と寝返っていく様子にパニックに陥る海兵もいた。そうなったらもう思いのまま。

    ”ウタの世界(ステージ)”がそこに生まれていた。

    《この場はユートピア だって望み通りでしょ? Ha! Ha!》

    《突発的な泡沫なんて言わせない Ooh-oh-oh-yeah, oh-yeah-oh-oh》

    《慈悲深いがゆえ灼たか もう止まれない》

    《ないものねだりじゃないこの願い》

  • 48二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 23:10:04

    イッショウ(このお嬢さん……ただ者ではない!)


    モモンガ「ひるむな! 耳当てを奪われた者には再び被せろ! 歌声を塞げば止まるかもしれん!」


    モモンガ中将の一喝で辛うじて攻勢に出る海兵たち。


    しかし、それを聞いた観客はヘッドフォンを拾って次々と海中に投げ捨て始めた。


    ウタの意志一つで行動が変わる。まさにこの場は“歌姫”が制していた。



    《半端ない数多のファンサは愛 ずっと終わらない You & I ここにいる限り Hey!》


    《Trust me 超楽しい! ひひひ That’s all!》


    《心奪われてうっとりと道理もなくなってしまうほど渇望》


    《させちゃう 一抜けも二抜けもさせない させない!》


    《Ah I got a mic so you crazy for me forever!!》


  • 49二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 23:48:37

    イッショウ(やはり直接狙うしかねェんですかい……!)

    自身の“ズシズシの実”の能力を解放すれば広範囲に重力を及ぼしウタを制することができるだろう。

    しかし民衆の巻き添えは避けられない。

    かくなる上はと鯉口を切ったイッショウの背後に突如、空気開扉(エアドア)が現れ、操られたブルーノが飛び出した。

    さらに目を閉じたままのトラファルガー・ローが愛刀“鬼哭”を抜き放って攻撃を仕掛けてくる。

    二人の気配を察知したイッショウは彼らの攻撃を瞬時に躱し、観客の合間を縫って一気に前に躍り出た。

    コビーとヘルメッポが立ち塞がるが刀の柄でいなし、歌姫目掛けて突進する。

  • 50二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 23:56:31

    見聞色の覇気で視るウタの感情は、驚くほどに無邪気だった。


    世界転覆計画を目論み、まるで遊びのように民衆を操る驚異の“救世主(うたひめ)”。


    その正体が幼い子供のように”視える”ことに困惑し、一瞬迷いが生じたときにそれは起こった。


    イッショウ「!!」


    ドン!!


    横合いから来た強い攻撃を受け止め切れず、弾き飛ばされる。


    イッショウ「……っ、な…ッ!?」


    体を捻って着地し、顔を上げた彼はすさまじい気迫を浴びて言葉を失くした。


    ……この気配には覚えがある。



    『麦わら……!?』

  • 51二次元好きの匿名さん23/02/16(木) 00:08:15

    戦闘の途中ですが今日はここまで
    最近帰りが遅くなってるのでペース落ちないように気を付けます
    夢と現実の同時戦闘は一番やりたかったとこなのでもう少し続きます!

  • 52保守だ23/02/16(木) 07:51:13

    期待

  • 53二次元好きの匿名さん23/02/16(木) 15:13:05

    期待待機

  • 54二次元好きの匿名さん23/02/16(木) 20:35:47

    ガキン!!


    渾身の拳が何者かに受け止められる。


    黒い音符兵が構えた二本の剣が交差してルフィの攻撃を防いでいた。


    口元に加えた“三本目”の剣を目にして、ルフィの口から驚愕が零れる。


    ルフィ「……ゾロ!?」


    《迷わないで》


    《手招くメロディーとビートに身を任せて》


  • 55二次元好きの匿名さん23/02/16(木) 20:45:46

    このレスは削除されています

  • 56二次元好きの匿名さん23/02/16(木) 20:48:08

    モモンガ「……麦わらの一味、だと……!?」


    夢遊病のようにふらつく天竜人を警戒しながらモモンガ中将はバイザー越しに目を見開いた。


    悪名高き大海賊の首領とその幹部たちが、歌姫を取り囲むように佇んでいる。



    目の前の男”麦わらのルフィ”は、世界政府に反旗を翻し数々の土地で騒ぎを起こした極悪人だ。



    それがなぜ、歌姫のライブに……!?


    《全てが新しいこのステージ上 一緒に踊ろうよ》


    《Haha!》

  • 57二次元好きの匿名さん23/02/16(木) 22:16:11

    ウタ(もうすぐ……悪い人たちがいない、新時代がやってくる……!)


    ウタは踊り歌いながら二つの世界を並行して“視て”いた。


    一方では海軍を相手に民衆と海賊を操り、一方では夢の世界で音符兵を指揮する。


    “ウタウタの世界”の維持にも能力を使っているため負担はかなり大きいが、無理してやれないことはない。


    ウタ(……みんなが望む新時代を邪魔する悪者は、私が追い払うんだ!)


    この世は舞台だ。すべてがウタのステージで一緒に踊り狂う獣。


    現実も夢も意のままに、彼女は願いを唄にした。



    《この時代は 悲鳴を奏で 救いを求めていたの》


    《誰も気付いてあげられなかったから》



    《わたしが! やらなきゃ! だから邪魔しないで お願い…》


    《もう戻れないの だから永遠に一緒に歌おうよ》

  • 58二次元好きの匿名さん23/02/16(木) 23:06:29


    《直に脳を揺らすベース! 鼓膜ぶち破るドラム!》


    《心の臓撫でるブラス ピアノ マカフェリ 五月雨な》


    《譜割りで shout out! Doo wop wop waaah!》



    黒い音符兵の繰り出す蹴りが、三節棍が、スリングショットが、無数の腕がルフィの行く手を阻む。


    もうルフィにもわかっていた。こいつらは同じ攻撃を仕掛けてくる人形だ。


    別行動をとっている仲間たちが無事かどうか今のルフィには分からない。しかし……


    ルフィ「……おれの仲間は簡単に操られるやつらじゃねェ、お前ら全部、ニセモンだ!!!」


    左の親指を咥え思いっきり空気を吹き込んで膨らんだ“ギア3(サード)”の腕が、武装色に覆われ黒く硬化する。


    ルフィ「“ゴムゴムの”~~~~!! 象銃(エレファント・ガン)”!!!!!」



    ドッゴォン!!


    音符兵たちに向かって振り下ろす巨人の腕を、“同じ象銃”が迎え撃った。

  • 59二次元好きの匿名さん23/02/16(木) 23:56:20

    このレスは削除されています

  • 60二次元好きの匿名さん23/02/17(金) 00:19:16

    今日の更新はここまで
    すいませんもうちょっとだけ続きます

  • 61保守だ23/02/17(金) 07:49:55

    こういううのも良いな

  • 62二次元好きの匿名さん23/02/17(金) 14:01:05

    早めの保守

  • 63スレ主23/02/17(金) 20:26:48

    すいませんちょっと戦闘水増ししたくなったので>>59だけ書き直します

    ハート押してくれた方ありがとうございます

  • 64二次元好きの匿名さん23/02/17(金) 20:29:42

    黒く巨大な腕を掲げた音符兵が、ルフィと同じ攻撃をカウンターで放ったのだ。

    激突した拳の間から衝撃波が発生し、他の音符兵たちを吹き飛ばしていく。

    ウタは“ウタが視ている”姿をそのまま写し取り音符兵に変えた。だから攻撃も同じだったのだ。

    ドン!! ドォン!!! ズドォン!!!

    黒い象銃が二度、三度と撃ち合う振動で波紋が広がり、ウタの足元まで届く。

    ルフィ「うおおおおお!!!!」

    吼えながらルフィは拳を開き、黒い腕を手のひらでがっしり掴むとぐぐぐ、と前に突き出した。

    力比べでせめぎ合っていた音符兵だったが、ついに押し負けて足がじりじりと退き始める。

    ルフィは腕を前に突き出したまま走り、音符兵を次々と巻き込んで押し出しながらウタに迫った。

    ルフィ「おおおおおおおおあああああ!!!!!」

  • 65二次元好きの匿名さん23/02/17(金) 20:47:39

    《欺きや洗脳 お呼びじゃない》



    《ただ信じて願い歌うわたし》



    《から耳を離さないで》



    《それだけでいい》


  • 66二次元好きの匿名さん23/02/17(金) 21:04:36

    《Hear my true voice》


    最期のフレーズを歌い終えた彼女は、指をパチン、と打ち鳴らす。



    すると、音符兵たちの姿がぐにゃりと歪み大量の海水となってルフィに降り注いだ。


    ルフィ「ぐが……ッ!!」


    塩辛い水球の中で息が出来ずもがくルフィの象銃が小さくなり、武装色が消えていく。


    “悪魔の実”の能力者の弱点である海水に包まれて、みるみるうちに力が奪われていった。


    辛うじて首だけ外に出して咳き込むルフィに近づくと、ウタは冷ややかな眼で見下ろす。


    ウタ「あんたは私に勝てないよ」

  • 67二次元好きの匿名さん23/02/17(金) 21:41:47

    ルフィ「げほっ……おれ…は……負け…て…ねェ……!」


    歯を食いしばって顔を上げ、腕を伸ばそうとするもうねうねと海水がまとわりつき力が出せない。


    ウタ「出た、負け惜しみ。手も足も出ないくせに」


    ルフィの頭から麦わら帽子が外され、細い指先が目の下の傷跡をするりとなぞっていく。


    手を伸ばして麦わら帽子を奪ったウタはそれを小さな音符に変えると、ヘッドフォンの中に収納した。


    ルフィ「かえせ……シャンクスの……帽子……!!」


    ウタ「私が作る新時代に……あんたはいらない。じゃあね、さよなら」


    ウタは数歩下がると、さっと手を振った。


    ルフィを包んだ水球が急上昇すると、そのままライブ会場の外へと出ていく。


    そして、ぱっと水球が消えて。



    ルフィはエレジアの海に真っ逆さまに落下した。


    「ウタアァァァァァァァァ!!」



    ザバァン!

  • 68二次元好きの匿名さん23/02/17(金) 23:04:18

    ガキィン!


    ゾロの攻撃を柄で弾き返したイッショウは、大きく距離を取りながら叫んだ。


    イッショウ「動ける者は船へ戻れ! 一時撤退だ!」


    ウタの歌唱は止んだが、操られた者たちの動きは止まらない。


    迫り来るのは罪なき民衆と眠らされた海兵がほとんどで、力のある海賊たちはまるで歌姫を守るように周囲を取り囲んでいる。


    こちらから攻撃を仕掛けなければ無理に襲ってこないことだけが救いか。



    ボルサリーノ「おやおや~? 随分と早いお帰りだねェ~」


    武装偵察班が這う這うの体で戻ってくる姿をボルサリーノは肩を竦めて出迎えた。


    イッショウ「……面目次第もございやせん。兵の半分を奪われてしまいやした」


    ボルサリーノ「半分~?ほぼ壊滅状態じゃないの。そんなにあの歌姫は強いのかい~?」


    戦争ならば撤退を考える局面だが、これは制圧作戦であり討伐対象は歌姫ウタただ一人のはず。


    モモンガ中将から事情説明を聞いたボルサリーノは顎に手を当てて考え込んだ。


    ボルサリーノ「こりゃ、あの人が黙ってないねェ……」

  • 69二次元好きの匿名さん23/02/17(金) 23:27:17


    しとしとと雨が降る中、ウタはステージに立っていた。


    周りには眠っている観客と海賊、そして新たに眠らされた海兵たちがゆらゆらと身体を揺らしている。


    大勢いた海兵たちはいつの間にか撤退し、ウタに攻撃を仕掛ける者は誰もいない。


    ウタ「……ハァ、……ハァ、……は、はは……」


    激しく踊り歌い疲れた息を整え、天を仰ぐと、自然と笑いが零れた。


    ウタ「アハハ、アーッハハハハハ!!!ハ……! ゲホッ、ゲホガハッ……ゥ…ェ…ェッ」


    凄まじい疲労と眩暈にふらつきながらウタは咳き込んだ。胃の中を空にしても治まらない虚脱感に意識が闇に落ちそうになるが、


    咄嗟に握りしめたナイフの刃の痛みで正気を取り戻す。


    ウタ「……ハァ……ハァ……ね、ズキノコ……食べなきゃ……」


    ステージ端に置いたバスケットにふらふらと近寄りしゃがむと、喉を潤す飲み物もないままキノコを齧って飲み込んだ。


    ズキズキする頭の痛みは治まらないが、辛うじて意識は保っていられる。

  • 70二次元好きの匿名さん23/02/17(金) 23:32:55


    ウタ「……まだ、終われない……」


    “ウタウタの世界”でのライブはまだ終わっていない。新時代の到来まで、ウタは歌い続けなくてはならない。


    自分で用意した最高のステージで歌い切り――命が尽きるまで。



    ……時は刻一刻と過ぎていく。



    ライブが始まって5時間――――ウタは“何か”を待っていた。

  • 71二次元好きの匿名さん23/02/17(金) 23:56:37


    ――エレジア近海


    穏やかな波が立つ海の中。ルフィは必死でもがいていた。


    ルフィ「がぼ…ぶはっ! がは…っ!」


    ここは夢の世界であるにも関わらず、現実と同じように溺れてしまう。


    無意識に動かす腕が、脚が、光に包まれていくのが見えた。


    ルフィは音符に包まれ身体が縮んだトラ男の仲間の熊を思い出す。


    そしてウタの放った光を浴びたコビー、そしてブルーノが空気開扉(エアドア)の向こうに消える瞬間、薄く光っていたのを思い出した。


    あいつらと同じように、自分もそうなってしまうのか。


    ルフィ「ば……だれか…たすけ、ば…!!!」


    もう指の先に力が入らない。


    大きな波に煽られてルフィの身体が海中に飲み込まれる。


    ガボガボと泡を吐いて沈んでいくルフィの身体を……



    誰かが掬い上げた。

  • 72二次元好きの匿名さん23/02/18(土) 00:17:10

    ザバァッ


    「ふー……危なかったな、間一髪だ」


    「おい、生きてるかー? 坊主」



    自分を抱えて泳ぐ男の赤い髪から雫がぽたりと落ちる。


    ルフィは腕の中でわずかに震えた。


    それは……“自分が知っている”男の声だったのだから。



    ルフィ「……シャンクス……!?」

  • 73スレ主23/02/18(土) 00:20:04

    今日の更新はここまで
    書きたいところ全部書けました。戦闘楽しかったー!けど話の続きはまだある!
    明日の更新は夜になります

  • 74スレ主23/02/18(土) 00:25:30

    ネズキノコについての補足
    ・効能をがっつり弱くしています。眠〇打破レベル。でも食べないと眠くなる
    ・ウタちゃんずっと眠くてしんどいです

    ナイフについて
    ・バスケットの下に隠していました。主に護身と自分に使う用(NGワード避け)

  • 75二次元好きの匿名さん23/02/18(土) 09:19:51

    保守

  • 76二次元好きの匿名さん23/02/18(土) 10:25:22

    シャンクス!?!? 一体どうなってるんだ・・・
    更新めっちゃ楽しみです 最近はこのスレが生き甲斐

  • 77二次元好きの匿名さん23/02/18(土) 11:03:03

    >>67

    おお!

    初対面なのに人との距離が近いきがしていいな!

    ルフィが名前を覚えているって所とか

    続きが楽しみ!

  • 78二次元好きの匿名さん23/02/18(土) 19:25:42

    このレスは削除されています

  • 79二次元好きの匿名さん23/02/18(土) 20:39:43

    ――どこかの時間軸


    雷鳴が吼え、滝のような雨が降り注ぐ荒波の中を一艘の船が突き進んでいた。


    船上では大勢の船員が行き来して帆を畳み、荷を固定し、時折大きく揺れる看板に足を取られぬよう踏ん張っている。


    「大頭ァ! この向かい風じゃ無理でさァ! どうやっても夜明けまでかかっちまう!」


    「スネイク! 嵐が晴れる予兆はないのか!?」


    「無理だ! 積乱雲がこの先もずっと連なってる。このままだと雹が降るぞ!」


    「急ぐんだ! 船体がバラバラになってもいい、全速力で突っ込め!」


    「アイアイサー!」


    ロープを握り締めるクルーたちに激を飛ばしながら赤髪の男が操舵室に向かう。


    操舵輪を握る男は船長に軽く会釈をすると険しい顔で正面に視線を戻した。


    船窓に打ち付ける激しい雨音を聞くだけでも、この先の航路が困難を極めることがわかる。


    「焦ってもろくなことがねえぞ、お頭。少しは落ち着け」



    副船長の言葉に男は小さく溜息を吐き、赤髪の男――シャンクスは、目の前の海を見つめた。


    (間に合ってくれるといいが……)

  • 80二次元好きの匿名さん23/02/18(土) 21:04:23


    ――エレジア・旧市街


    時は少し遡る。


    ライブ会場から離脱したコビーとブルーノは、ヘルメッポが合流地点に指定した旧市街に“ドアドアの実”の能力で移動した。


    空間に小さな“空気開扉(エアドア)”が丸く描かれ、ぱかっと開くとそこから海水と小さな生き物がコロンコロンと転がり出る。


    ヘルメッポ「おっ、ようやく戻ってきたか!」


    ブルーノ「なんとか逃げられたな……」



    コビー「うう、ルフィさんが……」



    ヘルメッポ「お、お前……コビーか!? どうしたんだその姿は!」

  • 81二次元好きの匿名さん23/02/18(土) 21:20:45

    なんとコビーもブルーノも、ぬいぐるみのような小さな姿になってしまっていたのだ。


    ヘルメッポ「お前……こんなに小さくなっちまって……」


    ロー「ベポと同じか……。どうやら説得は失敗したようだな」



    ローの言葉に、コビーはヘルメッポの手の上でしゅんと頭を下げる。


    ミニコビー「はい……。観客もぼくらも、ウタの能力で姿を変えられてしまいました」


    ミニコビー「ルフィさんはぼくたちを庇って逃がしてくれました。まだライブ会場にいるはずです」


    ミニブルーノ「そっちは?」


    ローが後ろを親指で指すと、建物の奥から海賊たちが出てきた。


    ビッグ・マム海賊団のブリュレとオーブン、そしてクラゲ海賊団の面々が集まっている。


    オーブン「ちょっと待て、麦わらだと?! そいつと手を組むとは聞いていない。死んでも御免だ」



    ブリュレ「じゃあね。ウタを倒すのは勝手にやらせてもらうよ!」


    ブリュレは“ミラミラの実”の能力で鏡を出すと、オーブンと手下たちを吸い込み、自分もその中へ消えてしまった。

  • 82二次元好きの匿名さん23/02/18(土) 21:40:48

    ヘルメッポ「おい、待て!」


    ロー「チッ、麦わら屋は一体何を考えてる。あいつらがウタの弱点を見つけてくれないと勝負にならないというのに」


    ミニブルーノ「ああ……“ドアドアの能力”も、この身体じゃあ……」


    ミニコビー「そういえば、ウソップさんはどうしましたか?」


    ロー「さあな。仲間と合流しているなら一緒に戻ってくるだろう」




    ――その頃のウソップ



    ウソップ「フ゛リ゛ン゛セ゛ス゛・ウ゛タ゛に゛そ゛ん゛な゛こ゛と゛が゛あ゛っ゛た゛な゛ん゛て゛ェ~~~~~~!!!」


    サニーくん「サ゛ニ゛~~~~!!」

  • 83二次元好きの匿名さん23/02/18(土) 22:51:37

    ゴードン「そうなのだよ!わかってくれるかね!!きみも!!!」



    ウソップ・サニーくん「う゛あ゛あ゛~~~~~~!!」「サ゛ニ゛ィ~~~~!!」


    ミニベポ「……あちょー…」


    ゴードンが情感たっぷりに語る過去回想に涙する一人と一匹を、若干引いた目でベポが見守っている。


    ウソップ「ううう……ひでェよ……いくら才能があるからってエレジアに一人置き去りにするなんて……まだたったの8歳だってのに」


    サニーくん「サ゛ニ゛~~!」


    ウソップ「ズビッ……おれの親父もよォ……おれが小さい頃に出ていったっきり、ずっと放ったらかしだった。でもあんたはプリンセス・ウタのそばにずっといてあげたんだろ?」


    ウソップ「小さな頃からずっと育てて、国を滅ぼされても誓いを守って……立派だよアンタはァ!」


    ゴードン「……ウソップくん」


    号泣するウソップにぎゅっと両手を握られ、ゴードンは鼻をすすり上げながらもうなだれる。


    ゴードン「きみに話せてよかった……。だが、私は……私は、君にそう言ってもらえるような資格はない」


    ウソップ「そんなこと気にするなって! でもそうか……その『トットムジカ』ってやつだけが“ウタウタの世界”と現実とを繋ぐのなら、もうそれは使えないのか……」

  • 84二次元好きの匿名さん23/02/18(土) 23:35:55

    ――さらに時間は遡る


    コビーとブルーノの協力によって五線譜から解放されたゾロ、サンジ、ナミ、チョッパー、ブルック、ロビン、フランキー、ジンベエの8人は、エレジアの城地下に潜っていた。


    そして……


    バルトロメオ「麦わらの一味の皆さんとご一緒できるなんて、光栄だべ~~~!!」



    脱出の際に階段を上ってギリギリ追いついたバルトロメオもそこにいた。


    彼らは考古学者のロビンが調べていた、エレジアの“とある事件”の噂の調査に来たのだ。


    はるか昔にエレジアで、“ウタウタの実”の能力者が禁断の楽曲を歌い、世界を滅ぼそうとした事件。


    ロビン「もしもその時の記録が残っていれば、“ウタウタの実”の能力の弱点がわかるかもしれない」



    ゾロ「かすかすぎる望みだな」


    サンジ「ロビンちゃんを信じろこのバカマリモ!」


    ゾロ「事実だろ素敵マユゲ!」


    チョッパー「ふんふん……あっちに本がいっぱいの部屋があるって!」


    城ネズミから情報を聴き取ったチョッパーが示す方向に、地下書庫はあった。

  • 85二次元好きの匿名さん23/02/18(土) 23:38:13

    今日の更新はここまで
    しばらくは麦わらの一味&ロメ男のターンが続きます。ロメ男活躍できるかなぁ

  • 86スレ主23/02/18(土) 23:39:14

    明日の更新も夜の予定です

  • 87二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 09:30:30

    保守

  • 88二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 18:09:09

  • 89二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 19:37:25

    ゴン、ガン! バキィン!!!

    固く閉ざされた扉をゾロとサンジがぶち破り、一同は書庫内へと足を踏み入れた。

    中の空気はひんやりと冷え、小さな物音でも遠く反響するほど広大で静謐な空間が広がっている。

    ロビン「これだけ防音がしっかりしていたら、ウタの能力も届いてなさそうね」

    ジンベエ「歌声が届かぬところは大丈夫と、海軍のヤツも言っておったからの」

    ナミ「意外にホコリっぽくないのね。手入れがされている……あ、鏡」

    ブルック「ヨホホホ、これぜーんぶ昔の記録なんですか?すごいですねェ」

    天井まで敷き詰めれられた本棚の列をぐるりと見渡して、ブルックは驚いている。

    フランキー「こんなにあるのに一体どうやって探すんだよ」

    ロビン「図書目録とかないかしら。あるいは司書がいれば……」

    ぶつぶつと呟きながらロビンが書庫の棚に手を触れる。

    すると、背後から鈍い物音が響き、一同振り返った。

    チョッパー「なんだあれは!!」

  • 90二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 20:04:13

    奥に眠っていた古い彫像の目に光が入り、ゆっくり立ち上がると武器を構えてこちらに向かってきたのだ。


    その後ろには同じような彫像が眠る貯蔵庫が見えている。


    ナミ「まさか、警備システムなの!?」


    石像の目がキラリと光った瞬間、フランキーは急いでロビンを庇いジャンプした。


    直後、ビームが一直線に床を走り、二人のいた位置をジュっと焼き焦がす。


    サンジ「ロビンちゃんに何すんだ! “悪魔風脚(ディアブルジャンプ)”、“揚げ物盛合せ(フリットアソルティ)”!!!」



    ゾロ「三刀流…!!“極虎(ウルトラ)狩り”!!!」



    刀を抜いたゾロと足に炎を纏ったサンジが反撃に躍り出た。


    凄まじい斬撃と蹴撃を浴びた彫像が吹き飛ばされ、バランスを崩して倒れる。

  • 91二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 20:38:07

    フランキー「“ストロング右(ライト)”! “ウエポンズ左(レフト)”!!」



    バルトロメオ「“バリアクラッシュ”!!!」


    フランキーとバルトロメオも技を繰り出し、迫り来る彫像を防ごうとする。


    他の面々もロビンを庇うように周囲に散らばった。


    ブルック「ロビンさんは本を探してください!」


    ナミ「任せて! ロビンには指一本触れさせないから!」


    バルトロメオ「ロビン先輩、ファイトだべ~~!!」


    ロビン「みんな…!」


    仲間たちの応援を受け、一気に書庫を調べようとロビンは“ハナハナの実”の能力を解放した。

  • 92二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 20:51:14

    このレスは削除されています

  • 93二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 20:58:57

    チョッパー「柔力強化(カンフーポイント)!ハイハイハイハイッ!!」



    ナミ「蜃気楼(ミラージュ)テンポ!」



    彫像が発射したミサイルをチョッパーがいなし、ナミは光の屈折を利用して自分とロビンの姿を隠す。


    ナミの狙い通り、書庫の本に触れた攻撃対象が見えなくなった彫像たちはそれぞれ別の場所に向かって攻撃を始めた。


    ナミ「……それにしても、こんなに厳重な警備があるなんて! 一体何がここに眠ってるの?!」


    ロビン「わからないわ……エレジアが何百年と続く歴史を持っていたとしても、こんな近代的な攻撃をするシステムがあったのかしら」


    バルトロメオ「もしかして……超古代の技術ってヤツなんだべか?? あだっ!」


    ナミ「ちょっとちゃんとバリア張りなさいよ、危ないでしょ!」


    チョッパー「おいみんな! あれ!」


    チョッパーが指差した先から、今までの彫像より2倍は大きい巨像が姿を現した。

  • 94二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 21:16:02

    サンジ「悪魔風脚(ディアブルジャンプ)! 首肉(コリエ)ストライク!!!!」



    ゾロ「一刀流!“馬鬼(バキ)”!!!」



    サンジの蹴りを食らって巨像の首が落ちる。その横を飛び出したゾロの一太刀が巨像の身体を粉々に砕いた。


    さらに現れた彫像たちに対し、ブルックが魂の喪剣(ソウルソリッド)を抜き放ち床面に氷を走らせる。



    ブルック「“魂の(ソウル)バラード”!! 「アイスバーン」!!!!」


    カチーンと凍った氷床に足を取られた彫像がまとめて転倒し、バラバラに崩れた。


    さらに、構えを取ったジンベエが勢いよく片手をフランキーに突き出す。


    ジンベエ「「魚人空手」!! “鮫肌掌底”!!!」



    突き飛ばされたフランキーは空中で高速回転しながらビームをド派手に放出した。


    フランキー「“ラディカルビ~~~~ム”!!! 大回転(ジャイアントスラローム)!!!」

  • 95二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 21:37:00

    ドカドカドカーン! ズドーン!!!

    チョッパー「やばい、崩れてきた!」

    あちこちにビームが命中したせいで壁にヒビが走り、天井が崩落し始めたのだ。

    瓦礫を避けながらチョッパーが右往左往する。

    ゾロ「誰だ、こんなトコで派手にやったヤツは!」

    フランキー「スーパーすまねェ!」

    フランキーは素直に謝った。

    ナミ「ちょっと、どうすんのよ! まだ手がかり見つけてないのに!」

    サンジ「ロビンちゃん、大丈夫か!?」

    ロビン「ええ、まだ……もう少し……!!」

    ロビンは目と手を大量に生やして書庫全体を検索(サーチ)しているが、これだとヒットする資料が見つからない。

    ブルック「このままじゃ生き埋めになります! あっ私、生き埋め似合いそう!」

    バルトロメオ「うおおお~~!! ここはおれに任せるべ!!! “バリアボール”!!!!」

  • 96二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 21:55:07

    バルトロメオがバッと勢いよく印を結び、自分を中心に巨大なバリアの球を生み出した。

    落ちかけた天井も剥がれそうな壁も、バリアに押されて動きが止まる。

    チョッパー「や、やったー!」

    ナミ「これでもうしばらくは平気ね!」

    ゾロ「やるな、お前」

    バルトロメオ(ゾ、ゾロ先輩に褒められた~~~!!)

    バルトロメオは感激に滂沱した。

    サンジ「攻撃が止まった。おれたちも急いで手がかりを探そう!」

    フランキー「どうやら書庫に触れると反応するセンサーみてェなモンもバリアで遮れるみてェだな」

    バルトロメオ「べ、へへへ……でも早く探して欲しいべ。この大きさで維持するの、結構大変で……」

    冷や汗をだらだらと流しながらバルトロメオは天井を見上げる。バリアが薄くならないか監視するためだ。

    バルトロメオ「ん? なんだべ? あれは」

    ナミ「どうしたの?」

    バルトロメオ「天井に何か描いてあるべ……落書きか?」

  • 97二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 22:20:42

    ロビン「そんなはずは……はっ!」



    同じように天井を見上げたロビンが目を見開いた。


    ロビン「ニワトリ君! お手柄!」(バシッ)


    バルトロメオ「べっ!?」


    ロビン「フランキー!!」


    バルトロメオの背中を軽く叩くと、ロビンは振り返った。


    意図を察したフランキーが親指をぐっと立てる。


    フランキー「おうよ! フランキー~~~~乳首(ニップル)ライト・スペシャル!!!」



    ピカーッ!とフランキーの胸部が煌き、二つのライトが天井を明るく照らし出した。

  • 98二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 22:31:12

    そこには何かの儀式を描いたような絵画が描かれており、薄暗くて読み取り難かった文字もフランキーの乳首(ニップル)ライトでよく見えるようになった。

    ナミ(しまった、ツッコミ役のウソップがいないわ……)

    サンジ(普通に役に立ってるだと……)

    ロビンは気にせず天井の文字を読み上げていく。


    ヒトオノソレ ヒトノマヨイ

    トットムジカノ ナノモトニ

  • 99二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 22:51:40

    オビエヨ ニゲヨ トラワレヨ


    ユメノサナカニ マドエヨ タミヨ


    ウタウタノ ミノ チカラトトモニ


    ホロビノ マオウハ ヨミガエル



    そこには、“ウタウタの実”の能力により恐ろしい存在を呼び出した伝説が記されていた。


    争いの止まぬ時代、人が誰でも持つ救いの心から顕われた、誰にも侵されることのない恐ろしい魔王。


    愚かしくも“その存在”を生み出してしまった罪深さと共に。


    ……我らはここに封印する 決して覗くな 開けるな 崇めるな


    ……もしまた三度、ウタウタが現れたなら


    ……喉を掻き切り 歌わせるな


    ……さもなくば 夢と現の 双方から


    ……ウタウタの者を 弑すべし

  • 100二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 23:15:37

    ロビン「……!」

    ナミ「ロビン、何が書かれてたの?」

    ロビン「……いえ、これだけでは足りないわ。他に手掛かりが……」

    ゾロ「おい、ここ隠し扉じゃねェか」

    ゾロがコツコツと壁を叩くと、漆喰がパラパラと剥がれて木製の扉が現れた。

    中に入ってみるとそこは小さな書斎のようになっていて、書きかけの日記や空のインク壺など、最近まで使われていた形跡がある。

    ロビン「この本棚…! 『トットムジカ』の資料はここに移されてたのね」

    ジンベエ「この様子からすると、誰かが先に調べていたのかもしれんのう」

    ジンベエたちも本棚から一冊抜き取って開いてみる。するとそこには古代文字ではなく今の文体で記録が記されていた。

    ナミ「よかった、これなら私たちもロビンを手伝えるわね!」

    ブルック「ヨホホホ、では私もお手伝いましょう」

    バルトロメオ「みなさん方、早くしてけろ…!! あ、あんまり長いと、体力が……」

    フランキー「おう、すまねェなもう少し頑張ってくれィ」

    サンジ「ん? こりゃあ……」

  • 101二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 23:23:37

    戸棚を探っていたサンジは、奥に何か挟まっているのを見つけて、腕を伸ばして探った。

    引っ張って取り出したのは、箱型の道具がついた何かの貝だ。

    サンジ「……映像貝(ビジョンダイアル)? 空島の道具じゃねェか」

    チョッパー「動かせるか?」

    サンジ「ウソップなら詳しいんだがな……」

    あちこち探っていたサンジは、裏側の突起をポチっと押した。

    すると、映像貝から光が溢れ、壁に何かを映し始めた。

  • 102スレ主23/02/19(日) 23:27:33

    (ここから若干鬱いのが続くので、ワンクッション)

  • 103二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 23:46:23

    このレスは削除されています

  • 104二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 23:47:49


    ――XXXX年XX月XX日。私はこの映像を電伝虫に記録する……


    ――トットムジカの話は本当だったんだ! あの伝説の……うわっ!


    ――と、トットムジカによってよみがえった魔王が、街を破壊している! 


    ――城から離れろ! 港へ急げ!  駄目だ、そっちは危なーい!!!


    ドォン!!  ドォン!!



    ――あ、あああ……ああ、街が!港が! ……母さんっ!!!


    ――なんでだ……なんでだよ! ちくしょおおおっ!!


    ――なんで魔王なんかよみがえらせたんだ!!!


    ――……この映像を見ている人! 気を付けろ、ウタという少女は危険だ!


    ――あの子の歌は世界を滅ぼす!


    ――歌わせなきゃよかった、あの子が来たからエレジアは……!


    ――ひィッ! 化け物! く、来るな! 来るなー!! ぎゃあああああっ!!!


  • 105二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 00:01:30

    全員、言葉を失っていた。

    映像に記録されていたのは凄惨な光景だった。

    街がひとつ……いや国がひとつ、焼かれている。

    巨大な何かが燃える街を闊歩し、稲妻のような光を放って破壊の限りを尽くしていた。

    この映像を記録していた人間も、おそらく亡くなったのだろう。

    一度強い光が目の前で炸裂した後、電伝虫が転がって映像が斜めになり、それきり声が聞こえなくなった。

    チョッパー「ロ、ロビン……大丈夫か?」

    無意識に口元を手で押さえていたロビンは、我に返って小さく深呼吸をした。

    ロビン「ええ……大丈夫。それよりこの映像を調べましょう」

    ロビン「記録していた人間の言葉によると、おおよそ13年前の映像のようね」

    ジンベエ「なに!?『トットムジカ』は太古の昔に封印されたんではなかったんか?」

    ブルック「その封印が解けてしまったんでしょうねェ、13年前に」

  • 106二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 00:15:08

    映像はまだ続いていた。


    記録者の音声が聞こえなくなった後、空を横切る何者かが映ったのだ。


    ナミ「あれは……!」


    麦わら帽子を被った赤い髪の男を先頭に、数名の男たちが武器を構えて飛び去って行く。


    しばらくして、叫び声のような大声が轟いたあと、突如破壊行為は治まった。


    空から落ちてくる何かを受け止めようと走っていく男の背中が映し出される。



    降りてきたのは、小さな少女だった。


    男は両手を広げて優しく受け止めると、ひしと抱きしめているようだった。

  • 107二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 00:32:22

    その男の傍に数名が近寄り、何か話した後、男の指示で立ち去っていく。

    やがて白い礼服を血で汚した背の高い男が、少女を抱いている男の元にふらふらと歩いてきた。

    怪我をしたのか、頭に包帯を巻いている。

    『シャンクス……! ウタ……! よかった無事で……』

    ゾロ「シャンクスだと……?」

    サンジ「あの“赤髪”か!?」

    二人は揃って驚いた。映像に映っているのは、今や四皇と呼ばれるあの“赤髪のシャンクス”なのか?

    そこから一旦映像が途切れ、再び点くと、少女の姿は無く二人の男が立っているだけになっていた。

    『もう海軍が……』

    『……には黙っていてくれないか。……あまりに酷だ』

    『ああ、海軍には私の……』

    『………。おれたちだ。赤髪の………その一味、赤髪海賊団がやった。……にはそう伝えてくれ』

    『……置いていくつもりか?』

    『あいつの歌は……なんだ。……わけにはいかない。あんたの手で……』

  • 108二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 00:35:51

    『あいつの歌声に罪はない』



    遠くにいるため声はかなり聴き取りにくいが、その言葉だけははっきりと聞こえた。


    やがて赤髪のシャンクスはどこかへ去っていき、残された包帯の男だけが彼に向って叫んでいた。


    『承知した! エレジアの王ゴードンは音楽を愛していたすべての国民に誓おう』


    『必ずウタを世界中を幸せにする最高の歌い手に育て上げる!』


  • 109二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 00:47:04

    チョッパー「……封印を解いたのは、プリンセス・ウタだったんだな」


    ロビン「それで魔王を呼び起こしてしまったという真実を隠し、赤髪海賊団が滅ぼしたことにしたのね……」


    ナミ「当時有名な事件だったわね……私も新聞で読んだことあった」


    ブルック「……ん? 映像はまだあるようですね」


    ザザッとノイズが走り映像が途切れた後、再び廃墟のエレジアの様子が映し出された。


    しばらく何も起こらなかったが、やがて、転がるように走っていく小さな少女の姿が端から端へ横切っていく。


  • 110二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 01:02:35

    その後、映像は変わらなかったが、泣き叫ぶような少女の声だけが記録されていた。


    『シャンクス―!! 置いてかないでーーー!!!』


    『なんで……なんでだよ!! ああああああぁああああああーーーーー!!!!』



    映像記録が終わった後、誰もが沈黙していた。やがて、最初に口を開いたのはジンベエだった。


    ジンベエ「……悲しい出来事だったんじゃのう」


    ナミ「ウタは、赤髪海賊団に置き去りにされたって、ずっと思ってたのね……だから、『海賊嫌い』を名乗ってたのかも」


    ゾロ「コビーの言っていたことがこれで証明されたわけだ。赤髪の娘か……」


    ブルック「悲しいことを言うようですが、あのまま赤髪海賊団の一員となっていても、いずれはどこかで下ろされていたかもしれませんね……」



    バルトロメオ「……お、終わったべか……? もう、限、界……」


    バルトロメオが白目を剥いて倒れると、バリアが薄れて再び天井がミシミシと言い始めた。


    ロビン「ごめんなさい! あと少しだけ頑張ってニワトリ君!!」



    バルトロメオ「は……はい、だべ……」


    一同はバリアが消える前に急いで資料をかき集めると書庫を脱出した。

  • 111スレ主23/02/20(月) 01:08:45

    今日の更新はここまで
    ウソップとロメ男を入れ替えたため長い時間調査できました。念の為ですがトットムジカ関連は捏造です!
    映像電伝虫は映画と同じものですが、地下書庫に13年もいて平気か?餌は?となったので
    映像貝に切り替えました。また、一つではなく複数の電伝虫の映像を繋げてダビングしてあるイメージです
    きっとあの後探して見つけたんでしょうね

  • 112二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 08:15:53

    保守

  • 113二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 18:45:27

    agr

  • 114二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 18:48:38

    白目剥いて倒れたのにバリアは維持してるの有能過ぎる

  • 115二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 20:18:59

    このレスは削除されています

  • 116再投稿23/02/20(月) 20:20:30

    ――そして現在


    ブルーノとコビーがローたちと合流して十数分ほど経った後、崩れた民家の鏡の中から麦わらの一味とバルトロメオが姿を現した。


    コビー「みなさん!ご無事でしたか」


    ナミ「えっ……まさかコビー?! なんでそんなにちっさくなってんの!!?」



    コビー「あはは……これには事情が……」



    二人が話している後ろで、さらに鏡の中からオーブンとブリュレたちが出てくる。


    オーブン「チッ、戻ってくる羽目になっちまうとは……」


    ブリュレ「ごめんねオーブンお兄ちゃん……」


    実は本格的に城が崩壊を始めた際、気絶したバルトロメオを抱えた一同はブリュレの“鏡世界(ミロワールド)”へ逃げ込んでいたのだ。


    鏡の中から見ていると踏んだナミが、巧みな脅迫もとい交渉術でブリュレを説得。


    家族に会えなくなると脅されたブリュレが半泣きで全員を“鏡世界(ミロワールド)”に入れ、無事に城から脱出したのだった。

  • 117二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 20:50:14

    コビー「ロビンさん、ウタを倒す方法はわかりましたか?」


    バルトロメオを民家のベッドに寝かせた後、ロビンは静かに語り出した。


    ロビン「……昔の記録によると、“ウタウタの世界”に取り込まれた者は、自分の力で現実に帰ることはできないそうよ。絶対に」



    『えっ!?』


    ロビン「ただし、“ウタウタの実”の能力者……あるいは『トットムジカ』をよみがえらせれば……チャンスは訪れる」


    オーブン「『トットムジカ』?」


    ロビン「古代から続く、人の思いの集合体。寂しさや辛さなど、心に落ちた影。“魔王”と呼ぶときもある」


    コビー「それは兵器なんですか?」


    ロビン「……触れてはならないもの。そう伝承には書かれていたわ。何にせよ、起こしてはならない禁断の存在」


    ロー「やはり『トットムジカ』の伝説はこの土地に眠っていたのか……」


  • 118二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 21:21:02

    フランキー「おめェ知ってたのか?」


    ロー「噂程度だ。で、そのタブーを“ウタウタの実”の能力者が使った時、どんなチャンスが?」


    その言葉にロビンも、他の一味も咄嗟に口ごもってしまった。


    トットムジカがよみがえった結果を見てしまったのだから。


    ナミ「……私たち、記録を読んだわ。それによると『トットムジカ』を使い呼び出された魔王は、この“ウタウタの実”によるウタワールドだけじゃなく、現実の世界にも姿を現すみたい」



    チョッパー「そのせいで、魔王を接点としてウタワールドと現実が繋がってしまうらしいんだ」


  • 119二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 21:40:28

    ブルック「その時に、魔王を二つの世界から同時に攻撃すれば……魔王を倒しウタワールドを消すことができる」



    ブリュレ「本当かい!?」


    オーブン「上手くいったから記録として残したんだろ? やってみるしかねェ」


    ミニブルーノ「でも現実の世界じゃ誰がウタを攻撃するんだ?」


    ヘルメッポ「確かにおれたちは全員、“ウタウタの世界”にいる。現実世界のウタを攻撃できるとしたら海軍かサイファーポールぐらい……」



    コビー「無理です、一般市民を傷つける恐れがある以上、海軍は手を出せません」


    コビー「せっかくの情報ですが、現実世界に誰かいなきゃ……」


    周囲に沈黙が広がる。片方の世界で行動を起こすだけではどうにもならないのだ。


    ロー「そういやニコ屋。さっき妙な言い方をしていたな」


    ロビン「えっ?」


    ロー「【“ウタウタの実”の能力者……あるいは『トットムジカ』】……どういうことだ?」


  • 120二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 22:28:28

    ロビン「…………」



    ロビン「……可能性の一つではあるけれど、“ウタウタの実”の能力者自身も『トットムジカ』と言えるかもしれないわ」


    コビー「えっ!?」


    ロビン「彼女は自らの能力を発動する以上、現実とウタワールド両方を見ている。彼女の中で現実と夢が繋がっているから、歌うことで心を夢の世界に取り込めるのよ」


    ヘルメッポ「なるほど。歌っている時は現実から夢へ……能力が解除されれば夢から現実へ、ってわけか……」


    ロビン「そう、おそらく今は一方通行。だから万に一つとは思うのだけど……」


    フランキー「おいロビンまさか……」


    ブルック「ウタさん自身が『トットムジカ』となる可能性があるということですか!?」

  • 121二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 22:43:51

    オーブン「そうなったら魔王になったウタを倒すだけだろう」

    ブリュレ「えっ!?待ってよオーブンお兄ちゃん! そうしたらママの所に連れていけないじゃないの!」

    オーブン「だから、もしもの時の話ってだけだ!」

    ぎゃあぎゃあと騒ぐ兄妹を尻目に、ローは眉をしかめる。

    ロー「……本人がなる可能性もあるし、追い詰められて呼び出す可能性もあるってことか……厄介だな」

    コビー「どういう結果になるにしても、ぼくらが現実世界に戻るためにはウタに『トットムジカ』を呼び出してもらうしか方法がありません」

    再び沈黙が訪れる。そこへ……

    「おーい! みんな~!」

  • 122二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 23:22:03


    ナミ「ウソップ!」


    ウソップ「よかった、みんな無事だったんだな~! 心配したぞコラ!」


    サンジ「そりゃこっちの台詞だ! ルフィはどうした」


    ウソップ「ありゃ?戻ってきてないのか? 確かコビーたちと一緒に……ってえええええーー!!なんだその不思議な生き物!?」



    コビー「あ、はい。コビーです」



    ブルーノ「いまさらか」


  • 123二次元好きの匿名さん23/02/21(火) 00:37:45

    チョッパー「ウソップー!!」



    サニーくん「サニー!!」



    ごつん☆


    小さな生き物同士が頭をぶつけてぺしゃっと落ちる。


    ゾロ「なんだ、こりゃあ」


    ウソップ「そうだ、みんなに紹介しないとな。聞いて驚け! こいつはわれらが……」


    サニーくん「サニー!」


    ゾロ「は?」


  • 124二次元好きの匿名さん23/02/21(火) 00:39:22

    サンジ「サニー号だと!?」



    ナミ「かわいい~!」



    ウソップ「聞けよオイ!!」


    フランキー「一体どんな改造しやがった!?」


    再会を喜ぶ麦わらの一味の横で、ベポとローも感動の再会を果たしていた。


    ミニベポ「キャプテ~~ン!」



    ロー「ベポ!……無事でよかった」

  • 125スレ主23/02/21(火) 00:41:15

    ほのぼのしたところで今日の更新はここまで
    この後情報交換したらいよいよルフィ視点に入ります

  • 126二次元好きの匿名さん23/02/21(火) 08:12:53

    保守

  • 127二次元好きの匿名さん23/02/21(火) 17:36:42

  • 128二次元好きの匿名さん23/02/21(火) 20:33:36


    ゴードン「彼らがきみたちの仲間なのかい?」


    ベポの案内で歩いてきたゴードンが、集まっている大勢の海賊を見て驚いている。


    丁度そこへ気絶から回復したバルトロメオも現れ、ゴードンを見て首をひねった。


    バルトロメオ「誰だべ? あのおっさん」


    ウソップ「おう、お前も来てたんだな。この人はな、プリンセス・ウタの育ての親、ゴードンさんだ!」


    バルトロメオ「なぬっ!?」


    チョッパー「ええっ!?」


    プリンセス・ウタのファン二人はウソップの言葉に大きく反応している。


    ゾロ「おい、あんたはどこまで知ってる?」


    ナミ「ウタの能力や……『トットムジカ』のことも知ってるんじゃないの??」


    ゴードン「『トットムジカ』……やはりそれしか方法がないのか」


    サンジ「どういうことだ?」


    ゴードン「あれは……あの楽譜はもう焼失している」

  • 129二次元好きの匿名さん23/02/21(火) 21:35:45

    『!?』

    驚く一同に対してゴードンは語り始めた。

    ゴードン「きみたちのことだからもう調べはついているだろう。13年前の事件でのことだ」

    コビー「……赤髪海賊団がエレジアを襲ったという事件のことですか?」

    ゴードン「そうだ。表向きはそうなっているが、実際は『トットムジカ』がエレジアを滅ぼした。……そう、知っているのだろう?」

    ゴードンの問いにサイファーポールのブルーノは肯定を返す。

    ブルーノ「世界政府は“ウタウタの実”と『トットムジカ』に以前から目を付けていた」

    ヘルメッポ「海軍も、赤髪に娘がいたという情報を元に逆算して情報を集めていた。当時の記録があったからな」

    ゴードン「あの時の海軍には世話になった。国王の私が嘘をついていると知っていて尚、手を差し伸べてくれたのだからな」

    フランキー「おい、話が見えねェ! それで、『トットムジカ』はどうなったんだ?」

    ゴードン「……あれは古い楽譜に封印されていたものだ」

    ゴードン「事件が起こった後、私はその楽譜を探そうとしたが……結局見つけられなかった。きっと燃えてしまったか、原型を留めないほど破損してしまったのだろう」

    ゴードン「だが、ここは夢の世界だ。もしかしたら……」

    ロー「……ウタが持っている可能性がある!?」

  • 130二次元好きの匿名さん23/02/21(火) 23:13:33


    ウソップ「……とまあ、そのあたりはさっきおれもゴードンさんから聞いたんだけどよ」


    ウソップ「問題は現実世界との同時攻撃だろ? それについて、このキャプテン・ウソップ様に秘策があるんだ」


    チョッパー「秘策?」


    ウソップ「おうよ。ちょっと耳貸せ……ヒソヒソ」


    (数分後)


    チョッパー「えええええ~~~~~っ!!!!?」

  • 131二次元好きの匿名さん23/02/21(火) 23:50:15

    チョッパー「だだだ駄目だ!!秘策の前にそれは医者としてちょっと許可はできない!」


    ウソップ「そこを何とか!頼むよ~チョッパー様~」


    チョッパー「いやでも……うう……トラ男ォ~~」


    ロー「諦めろトニー屋。どの道夢の中だ。人体への影響なんざ考える必要はない」


    ゾロ「やることは決まったな。こっちはとにかくウタに『トットムジカ』を使わせる。それが出来ないことにはどうにもならねェ」



    ロビン「現実世界のことは海軍に頑張ってもらいましょう」



    コビー「責任重大ですね……」

  • 132二次元好きの匿名さん23/02/21(火) 23:54:24

    このレスは削除されています

  • 133二次元好きの匿名さん23/02/21(火) 23:57:22

    サンジ「どのみち『トットムジカ』を呼び出さなきゃ、世界の七割は眠ったまんまなんだ。海軍も本気出すだろ」



    ナミ「こっちはひたすら攻め続ける。現実世界で攻撃が始まって、タイミングが合えば成功ってことね」



    フランキー「よーし!ス~~パ~~任せろォ!」


  • 134二次元好きの匿名さん23/02/22(水) 00:13:10

    フランキーが拳を突き上げると、他の海賊たちもオー!と鬨の声を上げた。


    ヘルメッポ「おい!あんまり大声出すと見つかるぞ、静かに!」


    バルトロメオ「くゥ~~~っ!ビビッてたおれァ、なさけねェ! 麦わらの一味の皆さんがいれば負ける気がしねェべ!!」


    サニーくん「サニー!サニー!」

  • 135二次元好きの匿名さん23/02/22(水) 00:25:33

    ブルック「ヨホホホ、みなさん盛り上がってきましたね」



    ジンベエ「気合が入っとるのう。しかしこんな時にルフィはどこに行っとるんじゃ」



    コビー「ルフィさん……」


    コビーはぬいぐるみの身体をしゅんと縮こませる。


    ジンベエ「なァに、わしらは心配しとらんよ。ルフィなら無事に戻ってくる。うちの船長じゃからな」


    信頼が伺える発言に、コビーもそうですね、と頷いた。

  • 136スレ主23/02/22(水) 00:40:06

    今日の更新はここまで
    REDだとここが中間点になりますね。映画でゾロが今後やることをはっきり言ってます
    本作では一味に台詞分散していますがやることは同じ(はず)
    映画ではルフィとローが情報を持っていて一味はトットムジカ関連以外は関わりが薄いなと感じたので逆にしました
    ルフィはルフィでこれから大事な情報を持たせます

  • 137二次元好きの匿名さん23/02/22(水) 08:08:54

    保守

  • 138二次元好きの匿名さん23/02/22(水) 16:57:48

  • 139二次元好きの匿名さん23/02/22(水) 20:07:15

    このレスは削除されています

  • 140一行抜けたので再投稿23/02/22(水) 20:20:53


    ――エレジア・砂浜


    溺れていたルフィを助けた男は、片腕で抱えたまま悠々と泳ぎ、岸に辿り着くとルフィを砂浜の上に降ろした。


    「うへェ……ベタベタになっちまったなァ、気持ち悪ィ」


    濡れたシャツの裾を絞り、サンダルを脱ぎ、頭にかぶっていた麦わら帽子を取るとブルブルと犬のように頭を振る。


    揺れる赤髪にルフィの目は自然と釘付けになっていた。そして……


    「おっ、どうした? おれの顔に何かついてるか?」


    ルフィ「……腕がある」


    「ん?」


    口から零れた言葉に男はきょとんとまばたきをすると、腕を上げてぐっ、と力こぶを作ってみせた。


    「あるぞ。それがどうした?」



    力こぶを作った右腕を支えている……“左腕”。


    ルフィの目にははっきりと映っていた。そう、確かにそこに“ある”のだ。

  • 141二次元好きの匿名さん23/02/22(水) 21:55:19

    ……ルフィにはもう、目の前の男が偽物にしか見えなくなった。


    自分が知っている“本物”のシャンクスの左腕は、故郷・フーシャ村の近海に棲む海王類に喰われたのだ。


    その時の衝撃、混乱、苦しみ、後悔の気持ちが綯い交ぜになってぐっと奥歯をかみしめる。


    ルフィ「……おまえはだれだ」


    「ん?」


    ルフィ「お前はおれの知ってるシャンクスじゃない!! 何でソックリな格好してんだ!!!」



    半ば衝動的に叫んだ言葉を、しかし男は涼しい顔で受け止めた。


    「……ほう。坊主、おれの名を知ってるのか」


    ルフィ「坊主じゃねェ! モンキー・D・ルフィだ!」


    「モンキー・D……なるほどなァ。そういうことか」


  • 142二次元好きの匿名さん23/02/22(水) 22:02:43

    「おい、遅ェぞお頭」



    男の背後から、さらに見覚えのある別の男が現れた。


    「ベック!」


    ルフィより先に赤髪の男が名前を呼ぶ。


    さらに……


    「ガキ一人助けるのにいつまで時間かかってんだよ、お頭!」


    「おい坊主! 怪我はしてねェか。擦り傷でもあったら手当てしてやるよ。お頭はその後だ」


    「おれの心配もしろ!ホンゴウ!」


    続々と現れた男たちは、誰もかれもが赤髪の男を“お頭”と呼び、慕っている様子だ。


    男たちの肩を軽く叩き声を掛けていた男は、まだ呆然と見上げているルフィに対し、振り返って口を開いた。


    「名乗ってもらったからには、こちらも名乗り返さねェとな」


    「おれの名はシャンクス。“赤髪海賊団”の頭(かしら)をやってる。“赤髪のシャンクス”だ」


  • 143二次元好きの匿名さん23/02/22(水) 22:24:17

    シャンクス「本物だぞ?」


    ルフィ「嘘だッ!!! だって……シャンクスは……ッ」


    突如、ぐらりと倒れたルフィをシャンクスはあわてて屈んで支える。


    シャンクス「馬鹿、あんまり大声を出すからだ。それに身体が濡れたままじゃ風邪ひくぞ」


    ルフィ「うう……」


    くらくらする頭を押さえるルフィをひょいと小脇に抱え上げて、シャンクスはスタスタと歩き出した。


    シャンクス「ひとまずアジトに戻るか。うちのお姫様の機嫌が変わらないうちにな」



    『おう!』


    抱えられて揺れながら、ルフィは自分の小さくなった手足を見つめる。


    ……すっかり縮んでしまって。これではまるで子供の身体だ。


    ルフィは今、かつてシャンクス達と出会った頃よりも幼い姿になっていた。

  • 144スレ主23/02/22(水) 23:33:03

    頻繁に接続エラーになり書き込みに失敗するため今日の更新はここまでとします
    すみません。明日の分の書き溜め&画像探しをしておきます

  • 145二次元好きの匿名さん23/02/23(木) 07:25:15

    保守

  • 146二次元好きの匿名さん23/02/23(木) 16:17:41

    ほしゅ

  • 147ここからは違和感との戦い23/02/23(木) 19:42:15

    シャンクスと名乗る男が連れてきたのは、寂れた酒場だった。

    どこかフーシャ村にある酒場と同じ雰囲気を漂わせるが、優しい女店主や懐かしい常連客たちは当然いない。

    その酒場で、男たちはにぎやかに酒盛りをしていた。

    どこからか持ってきた酒樽で乾杯をし、冗談で笑い、ゲームで賭け事に興じている。

    服が渇いた後、カウンターの席にちょこんと座らされたルフィは違和感にずっと顔を顰めていた。

    ……なんというか、大人しすぎるのだ。

  • 148二次元好きの匿名さん23/02/23(木) 20:00:18

    海の男たちはもっと豪快で、馬鹿で、何かとすぐに拳で喧嘩を始める騒々しい集団なのだ。

    あまりの馬鹿騒ぎに村長が叱り飛ばすことなど日常茶飯事。

    しかし彼らが酒場に居着いたお陰で、流れ者の盗賊や山賊が村に寄り着かなくなったという側面もあった。

    まさに、功罪だ。

    だがしかし……彼らも最初からそうだったわけでは、なかった。

    ――
    ――――
    ――――――

  • 149二次元好きの匿名さん23/02/23(木) 20:18:01


    ――回想・ルフィの記憶


    その船が現れたのは、もう日が沈むかという時間帯だった。


    ドクロの旗を掲げた海賊船は、フーシャ村の桟橋に錨を降ろすと、そのまま静かに揺れていた。


    海賊どもが続々と現れると思って身構えていた村人たちは拍子抜けする。


    やがて、船から一人の男が姿を現した。


    渡板を歩いて降りてきたのは、黒いマントを羽織り麦わら帽子を被った、若い男だ。

  • 150二次元好きの匿名さん23/02/23(木) 20:50:19


    「お前ら、海賊か?」


    口火を切ったのは、7歳のルフィだった。


    いつものように山の中で特訓していた彼は、海賊船の影を見て急いで走ってきたのだ。


    不躾な物言いに村長たちが戸惑う中、怖いもの知らずのルフィは小さな拳をぐっと握る。


    「海賊なら出てけ!」


    「こ、こらルフィ……!」


    村長たちは、怒った海賊がルフィを傷つけるのではと身構えた。


    だが……男は麦わら帽子の下でルフィをまじまじと見ると、肩を竦めて笑った。


    「この村には手ごわそうな保安官がいるんだな」


  • 151二次元好きの匿名さん23/02/23(木) 21:26:33


    「?」


    「いや、おれ達は喧嘩や略奪をしに来たわけじゃない。おれはシャンクス。この船の船長だ」


    「長旅でとても疲れてるんだ。しばらく場所を借りたい。村長に話を通してくれないか」


    「変なことしたら、タダじゃおかないからな!」


    ルフィはそれだけ言い捨てると、ダッと走って村長を呼びに行った。


    それから、村長と何か話し合ったのか海賊たちはしばらく村に滞在した。


    最初の1、2日は大人しかったように思う。


    しかし、3日目を過ぎたあたりから、ルフィが船や海の事を尋ねると、ぽつぽつと話してくれるようになった。


    元々陽気な連中だったのだろう。話は次第に弾み、海がどれほど危険に満ちているか、未知と冒険に溢れているか、


    子供のルフィに大袈裟に話したのだ。


    それでルフィも次第に、海賊に憧れを持つようになった。

  • 152二次元好きの匿名さん23/02/23(木) 21:58:13

    元々、狭い村を出て冒険することを夢見ていた少年だったのだ。


    しかし、船に乗せてくれとせがむと、途端に怖い顔をして断られた。


    『お前みたいに危なっかしいやつはダメだ』


    『血の気が多すぎる。戦闘中に船番なんかできっこない』


    『特技の一つもない弱っちいガキを仲間に入れてたまるか』


    『ガキすぎるんだ。せめてあと10歳歳とったら考えてやるよ』



    散々に言われたものだ。


    しかし、それ以外の話では海賊たちはルフィを邪険にせず、真剣に取り合ってくれた。


    時折航海に出て帰ってきたあとも、冒険の話を楽しそうに話してくれた。


    海賊たちの話を聞くうちに、ルフィは広大な海への探求心を無邪気に育てていった。


    それが、あんな結果になるとは知らずに――



    ――――――

    ――――

    ――

  • 153二次元好きの匿名さん23/02/23(木) 22:25:15

    シャンクス「どうした? 腹でも空いたか。これ食っていいぞ」



    カウンターに座っている男が、自分の食事の皿をルフィの方に寄せる。


    ルフィ「……いらねェ」


    ぐ~~~っ


    『腹減ってんじゃねェか!』『ギャハハハハ!』『ガキが無理すんなよ』『おい、ミルクはいるか?』


    ルフィ「うるせ~~~~!!」



    盛大に笑われてルフィはムキーっと怒り叫んだ。いつもなら堪えるところだが、この顔の連中に言われてはたまらない。


    ルフィ「夢ん中で食っても腹一杯にもなんねェだろ!!バカにすんな!」

  • 154二次元好きの匿名さん23/02/23(木) 22:41:41

    シャンクス「なんだお前、ここが夢の中だって知ってんのか。そりゃしょうがねェなァ」



    したり顔で頷いた男は皿を手元に戻し、スプーン左手でくるりと回している。


    ベックマン「おれたちは元から夢の住人だからな。現実の人間と違って腹は膨れるのさ」



    ラッキー・ルウ「そうそう。メシがなくなることもないしな」

  • 155二次元好きの匿名さん23/02/23(木) 23:13:17

    このレスは削除されています

  • 156二次元好きの匿名さん23/02/23(木) 23:14:47

    ルフィ「夢の住人?」


    ヤソップ「ああ、そうさ。おれたちはウタが作り出した思い出の中の存在だ。“本物”ではあるが“本人”じゃねェよ」


    ライムジュース「“外”のおれたち今頃何やってんだろうなァ。懸賞金上がったか?」


    ルフィ「???」


    笑う海賊たちの中でルフィは理解しきれず首を90度に傾けている。


    シャンクス「理屈はこうだ。ウタはな、“ウタウタの実”の能力を使ってこの世界を作ってる。ここでは船も食べ物も人間も自由に生み出すことができるのさ」


    シャンクス「そういうモノはウタが眠ると能力が解除されて全部消えちまうんだが……おれたちは何度も何度も繰り返し生み出されたせいか、夢が消えても残るようになっちまったんだ」


    ベックマン「深層心理だか潜在意識だか……そういう心の深い場所におれたちは住んでて、ウタが思い出したときだけこっちに顔を出せる」


    シャンクス「最近は御無沙汰だったんだがなァ……やっぱり最後のライブに命を懸けてるせいか」


  • 157二次元好きの匿名さん23/02/23(木) 23:38:01

    このレスは削除されています

  • 158二次元好きの匿名さん23/02/23(木) 23:41:57

    “最後”という言葉にルフィは反応する。


    ルフィ「あいつやっぱり、死のうとしてるのか?」


    スネイク「『死ぬって何?』って、ウタなら言いそうだな」


    ホンゴウ「ウタは現実の肉体を捨ててこっちに籠ればみんな幸せになれると思ってる。ここには飢えも病気も苦しみも、死すらないからな」


    ルフィ「でもそんなのは自由じゃねェ」


    スネイク「“自由”……今のウタには一番遠い言葉だな。あいつは昔からずっと“自由”を奪われてる」


    シャンクス「エレジアに置き去りにされてから、生きることと歌うことしかすることがなくて……島の外にも出られなかった」


    シャンクス「本当、なんでおれたちはウタを置き去りにしちまったんだろうなァ……」



    他人事のように言って遠い目をするシャンクスに、ルフィは更に違和感を感じていた。

  • 159スレ主23/02/23(木) 23:49:55

    今日の更新はここまで
    シャンクスがこういう言い方をするのは「ウタが作った」からです。もうお分かりですね
    スレ主も違和感と戦いながら書いてます。とてもつらい
    あとルフィってどのくらい頭良くしていいんでしょうかね…

  • 160二次元好きの匿名さん23/02/24(金) 01:38:44


    ウタの心の声ってことかな

  • 161二次元好きの匿名さん23/02/24(金) 04:05:36

    こういうREDも新鮮味あって好きだ

  • 162二次元好きの匿名さん23/02/24(金) 12:40:42

    保守

  • 163二次元好きの匿名さん23/02/24(金) 20:44:52


    ルフィ「……おっさんは、『シャンクスと赤髪海賊団は国中の財宝を奪って去った』って言ってたぞ」


    ゴードンの言葉を思い出す。思えば、あの時の表情は妙に穏やかだった。


    シャンクス「そうだな。あの時確かにウタは財宝を乗せて離れていくレッド・フォース号(おれたちの船)を見た。海軍に追われてな」


    シャンクス「そりゃあもうショックだったろうなァ。あの夜のことを今でも思い返すくらいだ」


  • 164二次元好きの匿名さん23/02/24(金) 20:55:09

    シャンクス「だがおれたちは所詮、ウタの心の一部だからな。“シャンクスと赤髪海賊団(おれたち)”がどうしてそんなことをしたかは、おれたちも、ウタも分からず終いだったのさ」



    ウタが知っていること以外のことは自分たちにも分からない。目の前の男は……シャンクスはそう言っているのだ。


    シャンクス「お前はどう思う?」



    シャンクス「どうやらお前は、エレジアを出た後に“おれたち”と出会ったようだからな。お前の意見も聞いてみたい」


    シャンクス「本当に“おれたち”が、エレジアを襲ったと思うか?」


  • 165二次元好きの匿名さん23/02/24(金) 21:15:07


    しとしとと降る雨の中、ウタはステージ端に座って雨宿りしている。


    少しでも体力の消耗を減らすため、座ってじっとしている他ないのだ。


    “ウタウタの世界”の中ではぬいぐるみに姿を変えた観客を前に、ウタはライブを続けている。


    彼らもきっと分かってくれる。“この世界”がどんなに素晴らしいものかを。


    ウタ「……もう少し、あと少しで……」




    ――“新時代”がやってくる。

  • 166二次元好きの匿名さん23/02/24(金) 21:20:52

    この世界線のウタは多分真実の電伝虫を見てないから
    このシャンクス達も分からないんだな

  • 167二次元好きの匿名さん23/02/24(金) 21:45:34

    ルフィ「……そんなのわかんねェ。わかるわけがねェさ」


    その場にいたわけではない、実際に見てはいないルフィが言えることなど一つしかない。


    ルフィ「ただ、海賊は自分のやったことに後悔はしないんだ」



    ルフィはぐっと顔を上げて、海賊たちを見た。



    ――おれは おれの信念に後悔するような事は何一つやっちゃいねェ!これからもそうだ


    ――海賊なら自分の信念に従ってやったことを後悔するんじゃねえ


    ――俺が海賊の血を引いているその誇りだけは! 偽るわけにはいかねえんだ!



    そうだ、自分は、自分の仲間たちは、そういう“海賊”だ。


    それを最初にルフィに教えた海賊たちは……“赤髪海賊団”は、己の信念に生きる“海賊”だ!

  • 168二次元好きの匿名さん23/02/24(金) 22:38:11

    強い意志の宿った瞳に男は……シャンクスは、安堵のような憂いのような微笑みを浮かべる。



    シャンクス「……そうか」


    そうつぶやいた途端、ゴゥンと音がして周囲が真っ暗になった。


    ルフィ「!? なんだ、なんだ!?」


    きょろきょろと見まわしていると、再び明るくなり、一同は船の甲板の上にいた。


    さらに……


    ルフィ「!! シャンクス、傷が……!」



    顔の三本傷がみるみるうちに消えていき、今より若い青年のような顔立ちになった姿にルフィは驚いた。


    しかしシャンクス自身は動じた様子もなく、服や装備を見回している。



    シャンクス「ああ……また呼ばれるのか。それじゃ、ちょっと行ってくるわ」

  • 169二次元好きの匿名さん23/02/24(金) 23:34:11

    ルフィ「えっ?どこ行くんだ??」


    ベックマン「野暮用だ。お前はその辺に隠れてろ」


    ルフィ「うわっ!」


    若いベックマンがひょいとルフィの背中をつかみ、空の酒樽へぽいと放り投げる。


    他の一同もぞろぞろと現れて勢揃いし、甲板の上で荷や宝箱を囲み騒ぎ始めた。



    酒樽の中で縮こまったルフィが渋々と様子を見守っていると。


    ……ほあ、ほあ! ほああぁ~~!!


    不意に赤ん坊の泣き声がルフィの耳に飛び込んできた。


    騒ぐのをやめたシャンクスが声の出所をきょろきょろと探し、急いで一つの宝箱を空ける。


    すると、その中には小さな女の子がちょこんと座っていた。

  • 170二次元好きの匿名さん23/02/24(金) 23:37:47

    予想外の状況に若いシャンクスはあんぐりと口を開ける。

    シャンクス「え~~~? お前、どこからまぎれこんだ……??」

    ベックマン「まさか、あの海賊たちがどっかから攫ってきたんじゃ……」

    シャンクス「ウソだろおい!」

    頭に手を当てて大声を出すと、途端に赤ん坊は激しく泣き始めた。

    シャンクスはあわあわとしゃがみ込み、赤ん坊をなだめようとする。

    シャンクス「わかった、わかった。静かにしろ! えーと、え~~っと……」

    眉間に人差し指を当て悩み込んだシャンクスは、ふと、何か思いついて口を開いた。

    シャンクス「おーやーすーみ~赤ちゃーん~ しーずかーにね~♪」

    口から出てきたのは調子外れの、歌ともいえない子守唄のような何かだ。

    極めつけに人差し指を立てて唇に添え、しーっと仕草を行う。

    すると、赤ん坊はきょとんとした顔で泣き止み、更にはけらけらと笑い出したのだ。

  • 171二次元好きの匿名さん23/02/24(金) 23:47:48


    なんとか落ち着かせられたことにシャンクスはほっと胸をなでおろす。


    シャンクス「……これも何かの縁か」


    ラッキー・ルウ「お頭……?」


    シャンクス「何でもねェ。とりあえず近くの港まで連れていこう。何か手がかりが掴めるかもしれねェからな」


    そう言って抱き上げたシャンクスの腕の中で、幼い赤子はすぅすぅと眠っていた。

  • 172回想1/323/02/25(土) 00:02:21

    それから、ルフィの見ている前で目まぐるしく光景が切り替わった。

    赤子がたどたどしく自分で「うた」と名乗ったところ。

    船医のホンゴウに診察される様子を全員で見守っている男たち。

    寄った港の治安が最悪で赤子の手がかりを掴むどころではなかったところ。

    滞在時間が短かったのにミルクだけはきっちり確保していたこと。

    初めてウタが一人で歩いたところ。

  • 173回想2/323/02/25(土) 00:08:01

    ウタの夜泣きに悩まされ全員が寝不足になったこと。

    別の街で子守唄を歌ってあやす女性を見たこと。

    下手なりにみんなで歌って、ウタを喜ばせたこと。

    また次の港でウタを降ろせなかったこと。

    ベッドの上で海王類ごっこをやって、ベックマンに怒られたこと。

    ナイトマーケットにシャンクスと二人でこっそり行ったこと。

    口達者になったウタに全員言い負かされたこと。

    また次の港でウタを降ろせなかったこと。

  • 174回想3/323/02/25(土) 00:20:04

    お菓子の食べ過ぎでホンゴウに叱られたこと。

    ヤソップが教えたダンスで一緒に踊ったラッキー・ルウが目を回したこと。

    スネイクの眼鏡を何度も隠されたこと。

    ライムジュースが髪の毛を綺麗に結んでくれたこと。

    ボンク・パンチとモンスターと一緒に楽器を演奏したこと。

    ガブの肩車で天井に頭をぶつけたこと。

    ウタからみんなに手紙をもらったこと。

    また次の港でウタを降ろせなかったこと……

  • 175二次元好きの匿名さん23/02/25(土) 00:25:53

    一つ一つが短い場面で、終わるとすぐ次の場面にぱっと切り替わる。

    場所も船の上から宿場町へ、嵐の海へ、船室へ、また甲板へと目まぐるしい。

    そんな忙しさの中でシャンクスも、ベックマンも、他の男たちも、一切疲れた様子を見せずに言葉を喋り、体を動かしている。

    ……まるで、旅芸人の一座の寸劇をずっと覗いているようだ。

    時折その場面に出ていない人物がルフィが隠れている樽の近くにやってきて、こっそり話してくれる。

    『あれはウタが記憶を見返しているんだ』……と。

  • 176二次元好きの匿名さん23/02/25(土) 00:48:21

    記憶の中心人物であるウタの姿も赤子からすくすくと育ち、髪が伸びたり、服が変わったり、かと思えばまた戻ったりと忙しい。

    記憶が飛び飛びになるのはよくあることで、ウタもまた思い出す順番がバラバラなのだろうと、そう説明された。

    やがて情景は見覚えのある島へと移動する。エレジアだ。

    赤髪海賊団は船を停泊させると住民に話しかけ、音楽の都を散策する許可をもらった。

    街の至る所に音楽が溢れ、楽しそうな様子にウタは目を輝かせ。

    そんな愛娘の様子を見守る赤髪海賊団の表情も朗らかだった。

    彼らはとっくのとうにウタを自分たちの娘として可愛がっていたのだ。

  • 177二次元好きの匿名さん23/02/25(土) 00:53:01

    街の陽気に誘われてウタが一曲歌うと、住民たちが驚きざわめいた。


    町長らしき人物がチラシを見せて、城でコンクールが開かれていることを教えてくれた。


    ウタは「行っていい?」とシャンクスたちを見上げ、シャンクスはせっかくの機会だからと背中を押した。




    なんとウタは音楽の都のコンクールで優勝した。


    娘の歌が最高であることを知っていた海賊たちは当然だと喜び、娘の才能を褒め称えた。


    ゴードン「素晴らしい! きみの歌声はまさに世界の宝だ。ここには多くの専門家たちや楽器、楽譜が集まっている」


    ゴードン「ぜひこのエレジアにとどまって欲しい! 国を挙げて歓迎する!」


    エレジアの国王はウタを褒め称え、しきりに勧誘した。


    ウタもまんざらではなかったようだ。音楽院の施設を見学し、たくさんの楽譜を興味津々に見上げていた。

  • 178二次元好きの匿名さん23/02/25(土) 01:17:01


    シャンクス「ずいぶん楽しそうだったな。ここで歌っていたとき」


    今ルフィと出番のない男たちは、シャンクスとウタが二人きりで話している様子を見守っている。


    ルフィはとうに飽きてしまい、半分うつらつらと眠っていた。


    そうしているうちに、シャンクスはウタに何か提案をしたようだ。


    シャンクス「おれたちの前で歌うより、大勢の人たちに聴いてもらったほうが楽しかったりしないのか?」


    ウタ「そんなことないって」


    シャンクス「なァウタ。この世界に平和や平等なんてものは存在しない」



    ウタ「ん?」


  • 179二次元好きの匿名さん23/02/25(土) 01:22:48

    話の雰囲気が変わったのを察し、ルフィはぼーっとする頭で何とか耳を傾けた。


    シャンクス「だけどお前の歌声だけは、世界中のすべての人たちを幸せにすることができる」


    ウタ「何言ってるの?」


    シャンクス「いいんだぞ、ここに残っても。世界一の歌い手になったら迎えに来てやる」


    ウタ「バカ!」


    ウタ「私は赤髪海賊団の音楽家だよ!歌の勉強のためでも、シャンクスたちから離れるのは……離れるのは……っ」



    シャンクス「そうか、わかった。そうだよな。明日にはここを発とう」


    涙ぐむウタをシャンクスはゆっくり抱き寄せる。


    どこか安心した様子で、シャンクスはウタが泣き止むまで優しく背中を撫でていた……。


  • 180二次元好きの匿名さん23/02/25(土) 01:27:07

    ラッキー・ルウ「くうっ、いつ見てもこの場面は泣ける……」



    ホンゴウ「ウタはエレジアよりもおれたちを選んでくれたんだよなァ……!」



    いい歳した男たちがおいおいと涙を隠さず泣いている。


    本当にこんなやつらだったか?と首をかしげながらルフィは前に視線を戻した。


    ルフィ「……あれ?」


    いつの間にか場面が飛び、男たちがいなくなっていた。

  • 181スレ主23/02/25(土) 01:38:29

    やべえ切る所がない…!ので今日の更新はここまでです
    まさか回想がこんなに延びるとは思いませんでした。4/4巻とかワンマガとかアフタートークとか全部詰め込むから…
    ちなみに赤ん坊の頃はウタが覚えているのでなく、宴でシャンクス達から何度も聞いた内容で構成されています
    親は赤ん坊の頃の話をしつこいほど話すものです。たぶん

  • 182二次元好きの匿名さん23/02/25(土) 09:44:00

    保守

  • 183二次元好きの匿名さん23/02/25(土) 19:20:07

  • 184二次元好きの匿名さん23/02/25(土) 20:26:39


    ウタ「……え?」


    城の寝室で目を覚ましたウタが、表に出ると。


    エレジアの街並が炎に包まれていた。


    風に乗って火の粉が宙を舞い、何かが焦げたような酷い匂いが辺りに充満している。


    ウタはふらふらと丘の上を歩いた。


    しばらくすると、包帯を頭に撒いた誰かが呆然と立っている背中が見えてくる。


    ウタ「ゴードンさん……」


    ゴードン「目を覚ましたのかい」


    ウタ「何が起きたの?……シャンクス達は!?」


    ゴードン「すべて奪われた! みんな……みんな殺された!」


    ウタ「シャンクスは!?」


    ウタは半ば信じられず国王に詰め寄った。シャンクスたちがやられた!?


    ゴードン「あいつらはきみの歌声を利用してこのエレジアに近づき、財宝を奪う計画だったんだ」

  • 185二次元好きの匿名さん23/02/25(土) 20:34:20

    ウタ「あいつらって?」


    ゴードン「……赤髪海賊団だ」


    国王の口から出た信じられない言葉が、ウタに衝撃を与えた。



    居ても経ってもいられず、転げるように駆け出すウタの背中に国王の声が覆いかぶさる。


    ゴードン「きみもずっとだまされていたんだ! 赤髪海賊団とシャンクスに!」


    嘘だ! そんなことない!


    ボロボロになったエレジアの街並をウタは駆け抜け、転び、膝を擦り剝いても必死で港を目指した。


  • 186二次元好きの匿名さん23/02/25(土) 20:49:20

    港に着くと、船はもう出航していた。


    ウタ「シャンクス! 置いてかないで!」


    叫びながら走り、勢いのあまり船着き場の端から飛び出すウタの小さな身体を、辛うじて国王が引き留めた。



    海軍の船の砲撃を躱しながら、レッド・フォース号はどんどん遠ざかっていく。


    甲板の上で、赤髪海賊団が宝箱を囲んで乾杯しているのがうっすらと見えた。


    誰一人エレジアを、ウタを、振り返ろうともしない。



    ウタ「なんで……なんでだよ!! ああああああぁああああああーーーーー!!!!」


    喉が千切れるほどの絶叫が、暗い海に響き渡った。

  • 187二次元好きの匿名さん23/02/25(土) 21:03:57


    ルフィ「なんだよそれ……」


    それはルフィにも信じがたい光景だった。


    あれだけ娘を甘やかしていたシャンクスたちが、ウタを置いて去っていくなど。


    いやそれより、本当に赤髪海賊団がエレジアを……!?

  • 188二次元好きの匿名さん23/02/25(土) 21:53:19


    ザッ ザザッ  ザーーーーーッ


    驚愕する間もなく、突然目の前に砂嵐(スノーノイズ)が走り、時間が巻き戻り始めた。


    『すべて奪われた!』『シャンクス!置いてかないで!』『この世界に平和や平等なんてものは存在しない』


    『バカ!私は赤髪海賊団の音楽家だよ!』『だけどお前の歌声だけは、世界中のすべての人たちを幸せに』


    『私は、私の愚かさのためにこの記録を残そうと思う』『娘と言えどこれだけはやれねェ』『ウタ!一曲歌ってくれ!』


    まるで映像電伝虫を何度も再生するように映像が繰り返され、ルフィだけがその場に取り残される。


    ルフィ「お、おい……!」


    映像は周囲に幾つも現れて次第に渦を巻いていき、逃げ場を失ってしまう。


    ルフィ「どうしたんだ!!」

  • 189二次元好きの匿名さん23/02/25(土) 22:26:16

    『ガキはどうして寝ない!』『お前も海賊らしいこと言うようになったなァ』『ウタ!』『こいつはおれの娘だ』


    『目を覚ましてくれウタ!取り込まれるな!』『どうだウタ、上手くかけただろう』『シャンクス!怪我したの!?』


    『うたはねェ、しゃんくすがいちばんすきなの』『じゃあ将来は赤髪海賊団の音楽家だな』『ウタは怪物だ!!』



    『この映像を見ている人! 気を付けろ、ウタという少女は危険だ! あの子の歌は世界を滅ぼす!』


    知らない誰かの声が響いた途端、周囲が再び暗くなった。


    次に明るくなって見えたのは、成長したウタと先ほどの国王の姿だった。

  • 190二次元好きの匿名さん23/02/25(土) 22:37:01


    ゴードン「……そうか。あの映像を見てしまったのだね」


    ウタ「……ごめんなさい」


    ゴードン「謝らなくていい。あれは私が後世へ記録を残すために収集していたものなのだから。私の管理が甘かったのだ」


    ウタ「でも!あの映像は! エレジアを私が!!」


    ゴードン「私は今でも、あれがきみのせいだとは思っていないよ。エレジアを滅ぼしたのは『トットムジカ』だ」


    ウタ「だって私が……!」


    ゴードン「きみはあのときそこにあった楽譜を歌った、ただそれだけだ。その場にいた私が証人だ。きみは悪くない」


    ゴードン「赤髪海賊団……シャンクスも、それをわかっていた。だからきみを私に預けたんだ」


    ウタ「シャンクスが……」


    ゴードン「赤髪海賊団はきみを庇ったんだよ、ウタ。私はきみを最高の歌い手に育てると、彼らと約束したんだ」

  • 191二次元好きの匿名さん23/02/25(土) 22:55:04

    このレスは削除されています

  • 192二次元好きの匿名さん23/02/25(土) 23:29:48

    『赤髪海賊団はきみを庇ったんだよ、ウタ』


    ゴードンの言葉が空しくウタの心に反響する。



    ――私を庇って、赤髪海賊団はエレジアを出ていった。


    ――私が歌わなきゃ出ていく必要は無かった。


    ――ならやっぱり、私のせい?



    ――私のせいでみんな、みんないなくなったんじゃないか!!!


  • 193二次元好きの匿名さん23/02/25(土) 23:33:59

    暗闇の中で独りうずくまるウタに無数の音符が降り注いでいる。音符が降るたびに誰かの声がする。


    『おまえのせいだ』


    『お前がやったんだ』


    『お前の罪』


    『お前が殺したんだ』


    ウタを責める言葉が響くたび、その場に一人、一人と、人影が現れていく。


    国王ゴードン、赤髪海賊団、シャンクス、海賊、一般市民、そして――


    『こんなことして……シャンクスは怒るぞ』



    ルフィ「!?」


    自分の姿まで現れてルフィは驚いた。

  • 194二次元好きの匿名さん23/02/25(土) 23:40:35

    『シャンクスの娘なら何で海賊狩りなんかするんだ。おかしいだろ』


    ルフィ「おい!なんだお前! ニセモノか!」


    思わず走って自分の姿に近寄る。


    けれど脚を掴んで揺さぶっても、蹴っても、子供の小さな身体ではびくともせず石像のように微動だにしない。


    ルフィ「おいシャンクス! なにやってんだよ! おい!」


    シャンクスも、ゴードンも、ベックマンも、誰一人としてこちらを見ない。


    ルフィだけがこの場に取り残されている。


    ルフィ「冗談じゃねェ……お前を責めるのにおれを使うな! ここから出せよ!」


    ルフィ「こんなつまんねェ世界、いつまでも続けんなーー!!」



    怒りのままに、ルフィはウタに掴みかかろうとして……



    「ちょっと! 何してんの!」


    その腕を、小さな手に掴まれた。

  • 195スレ主23/02/26(日) 00:11:33

    今日の更新はここまで
    長かった…!でもやっと光が見えてきました。これでルフィを脱出させられる!
    次回の更新で次スレに移行します

    ちょっと補足すると偽シャンクスが「本当にエレジアを襲ったと思うか?」と聞いたのは
    ウタが他の人(ゴードン以外)にも「襲ってない」と否定して欲しかったからです
    そのように答えた場合、真実の映像電伝虫の情報が公開されました
    ルフィの回答は「わかんねェ」だったため、別のルートに入ってます

  • 196二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 02:45:22

    面白くなって来たァ!!!
    最後に幼少期ウタ出てきたな...凄く続きが気になる!

  • 197二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 03:51:54

    追いついた
    wktk

  • 198二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 12:03:12

    保守

  • 199二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 20:14:22
  • 200スレ主23/02/26(日) 20:22:27

    >>199

    忘れてたありがとう

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