【SS・閲覧注意・CP】「おーい!ライブが始まるぞ、ルフィ!」PART3

  • 1スレ主23/02/26(日) 20:03:51
  • 2スレ主23/02/26(日) 20:05:36
  • 3二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 20:08:20

    現在の状況

    ルフィ(子供化)
    ・赤髪海賊団と遭遇。ウタもいる?

    麦わらの一味+バルトロメオ
    ・トットムジカ資料、映像貝記録解析の後、合流

    ロー、コビメッポ、ブルーノ、その他海賊
    ・ウタ打倒の手がかり待ち、麦わらの一味と合流

    ウソップ、サニーくん、ベポ
    ・ゴードンさんと一緒に麦わらの一味と合流

    海軍
    ・そろそろ動き出す

    五老星
    ・海軍さっさとせい

  • 4二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 20:11:42

    縦乙

  • 5二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 20:13:47

    5

  • 6二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 20:15:01

    立て乙!
    待ってました!

  • 7二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 20:19:57

    7

  • 8二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 20:24:19

    たて乙
    展開が気になる!

  • 9二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 20:30:33

    「危ないじゃないの!」


    声と共にぐいっと引っ張られて振り返った先にいたのは。


    先程レッド・フォース号に向かって泣き叫んでいた小さな少女のウタだった。


    ルフィ「えっ? あ…」


    二人いる??


    咄嗟に後ろを向くと、そこにうずくまっていた大人のウタの姿は既に無く。


    周囲もいつの間にか元の酒場に戻っていた。


    ルフィ「いてててて!! おい何すんだ!!!」



    「それはこっちの台詞よ! 何勝手なことしてんの! あの状態の“私”に触ったら取り込まれてたわよ」


  • 10二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 20:35:25

    ルフィ「お……お前には触ってんじゃねェか! 痛え!はなせ!!」



    凄い力で握られていた腕がぱっと放されて、ルフィは急いで距離を取った。


    黄色のワンピースを着たその少女は、両手を腰に当ててふんぞり返っている。


    「あたしは!“私”が作った記憶の中のあたしだから問題ないの。そんなことも知らないわけ?」


    シャンクス「まあまあ、ウタ。こいつはさっき来たばかりだからな、知らなくて当然だ」



    左目に三本の傷跡と、髭のある顔に戻ったシャンクスが、少女の頭にぽんと手を置いた。

  • 11二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 20:45:52

    ウタ「甘やかしちゃだめよシャンクス! こういうのは最初が肝心なの」


    シャンクス「ああ、それもそうだな。うちのお姫様はかしこいな」



    ウタ「ふふん、当然でしょ!」



    ルフィ「すっげェ甘やかしてる……」



    思わずルフィがツッコミを入れる程、男は少女に甘々だった。

  • 12二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 21:43:47


    ベックマン「なんだウタ、先に戻ってたのか」


    ウタ「ベック! ヤソップ、スネイク、ライム、ラッキー・ルウもお疲れ!」


    ヤソップ「おう、お疲れ」


    スネイク「今日はこれで終いか?」


    ウタ「んーどうだろう……最後に大きいのが残ってるんじゃないかな。走馬灯ってやつ?」


    ライムジュース「あーそりゃ大がかりだな」


    ラッキー・ルウ「ま、それまでは暇ってことだな。メシにしようぜ!」



    男たちは再び席に戻って騒ぎ始めた。

  • 13二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 22:06:46

    腕の痺れがやっと治まったルフィは、少女に近づくとずいっと顔を寄せた。


    ルフィ「おいお前、さっさとおれを元に戻せ!」


    ウタ「失礼なガキね。お前じゃなくて“ウタ”って名前があるんですけど。特別に呼ぶの許してあげるわ」



    ルフィ「うるせー! 誰が呼ぶか!」



    ウタ「じゃああたしもガキって呼ぶわ。ガーキ!ガキ!!」


    ルフィ「なんだとー!」

  • 14二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 22:32:26

    シャンクス「二人とも、同い年同士仲良くしなさい」



    父親の諫める声に娘は心外だと言わんばかりに口角を下げる。


    ウタ「あたし現実では21だもん! あんたは?」


    ルフィ「……19」


    ウタ「ふっ、勝った。あんたより2歳もお姉さんよ」



    得意げに勝利宣言するウタに、ぐぬぬ……と歯ぎしりするルフィ。


    逆転できる要素のない勝負を挑まれるのは反則だ。

  • 15二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 22:57:02

    ウタ「……そうね、あんたがあたしとの勝負で一度でも勝ったら、考えてあげなくもないけど」


    ルフィ「勝負?」


    ウタ「そう。まずは駆けっこよ! 港まで先に着いた方が勝ち!」


    言うが早いかウタはダッシュで酒場を出ていってしまった。


    いきなりのことにぽかんとするルフィ。


    が、次の瞬間、ハッと気づいて急いで追いかけた。


    ルフィ「こらー! ズルすんなーーー!!!」


    ウタ「海賊との真剣勝負にズルも何もないでしょー!」



    酒場の扉の向こうから、叫ぶルフィとウタの声が聞こえてくる。

  • 16二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 23:01:27

    置いて行かれた男たちは顔を見合わせると、どっと笑った。


    シャンクス「だーっはっはっは! あいつら仲いいじゃねェか」



    ベックマン「歳の近いガキとの交流は久しぶりなもんで、ウタもはしゃいでるな」



    ラッキー・ルウ「ナメられないように喧嘩腰で行くから、嫌われてばかりだったもんなァ」



    ヤソップ「おれの息子も歳が近いんだがなァ……会わせてやりたかったぜ」


  • 17スレ主23/02/26(日) 23:14:51

    切りがいいので今日の更新はここまで
    毎度のことですがスレ落ち回避の保守にご協力ありがとうございます。とても助かってます
    続きが楽しみと言ってもらえたり、他のスレで紹介してもらえるのは嬉しいですね
    (そのスレいつの間にか消えてましたが…)
    明日か明後日の更新でこの世界がどうなってるのか、現実の動きとかが出てくると思います。乞うご期待

  • 18二次元好きの匿名さん23/02/27(月) 08:09:57

    保守

  • 19二次元好きの匿名さん23/02/27(月) 17:01:09

    期待待機

  • 20二次元好きの匿名さん23/02/27(月) 20:30:56


    ルフィ「待てェー!ちくしょー!」


    ルフィは必死で走った。ゴムの手足を伸ばせば楽勝のはずなのに、この体はぴくりとも伸びず歩幅も小さい。


    ルフィより少しばかり背の高いウタはあっという間に先へ行ってしまい、時折こちらを振り返って挑発するように顔の両横で手を振っている。


    ルフィ「ふぐぐ……! なら……“ギア2”(のつもり)!」


    ルフィは息を詰めて体勢を変え、足で地面を何十回も蹴った。



    ぐん、とスピードの上がったルフィに驚いたウタは、くるりと背を向け一目散にゴールを目指す。

  • 21二次元好きの匿名さん23/02/27(月) 21:16:41

    ルフィは懸命に地面を蹴ったが……


    ルフィ「……~~~っぐあああみじけえええ~~~!!!あし!!!」


    蹴り続けるだけの筋力もない子供の脚ではいつまでも続かず、終いには道端の砂利に滑って顔からドテン!と転んでしまった。


    結果、ウタの勝利。



    ルフィ「ぜェ…はァ…ぜェ…はァ……」


    ウタ「あらら、大丈夫~?」


    地面に大の字に寝転がっているルフィに近寄り膝を曲げて見下ろすウタ。


    思った以上に動かない身体に辟易しながらルフィはぐぐ、と顎を上げて見返した。


    ルフィ「ぜェ…はァ……う…るせェ…!まだ勝負はついてねェだろ……!」


    ウタ「しぶといわね~。なら、次の勝負でわからせてあげる」

  • 22二次元好きの匿名さん23/02/27(月) 22:11:49

    このレスは削除されています

  • 23二次元好きの匿名さん23/02/27(月) 22:14:58


    ウタ「身長対決!」


    背比べで約2cmウタが高かった。


    ウタ「腕力対決!」


    腕相撲勝負、2勝3敗でルフィの負け。


    ウタ「かわいさ対決!」



    審査員:赤髪海賊団による満場一致でウタの大勝利。



    ルフィ「えこひいきだ!!」

  • 24二次元好きの匿名さん23/02/27(月) 22:20:21

    >>23

    最後はまぁ

    ドンマイ!

  • 25二次元好きの匿名さん23/02/27(月) 22:28:37

    ウタ「じゃあ、モノマネ対決!」


    ウタ「二日酔いで起きられなくなるからって、ベックマンにお酒を没収された時のシャンクスの真似!」


    ウタ「『ベックぅ~~~!』」



    『ギャハハハハ!!』『似てる~!』『上手いぞウター!』『お頭そっくりだ~!』


    シャンクス「うるせー!お前ら後で覚えてろよ!!」



    ルフィ「ふぬぬぬ…!モノマネならおれだって得意だぞ!サンジの真似!」


    ルフィ「『肉くったのお前かー!!』」スパー

  • 26二次元好きの匿名さん23/02/27(月) 22:47:42


    ウタ「サンジ?誰それ?」


    ルフィ「おれの仲間だ。一流の料理人だぞ!」


    ウタ「ふーん、そうなの。でも、赤髪海賊団にはラッキー・ルウがいるもの、羨ましくないわ」


    ラッキー・ルウ「ウェヘヘヘ、いきなる褒められると照れるぞ」



    ウタ「というか、あたしたちが知らない相手のモノマネで勝とうなんて何考えてるのよ」


    ルフィ「ぐぬぬぬぬ……」

  • 27二次元好きの匿名さん23/02/27(月) 23:34:52


    ウタ「どう?これでわかったでしょ。あんたがあたしに勝てないってこと」


    ルフィ「まだだ!まだ決着はついてねェ!!」


    ウタ「しょうがないわね……」


    その後、何回勝負してもルフィはウタに負け続けた。


    チキンレースでは無限にチキンを増やされ。


    ナイフ投げでは的を持ったモンスターが動き回り。(ウタの時は止まった)


    ポーカーやブラックジャックではイカサマ祭り。


    ルフィ「ちくしょう……なんで勝てねェんだ……」



    本当はこんな勝負、投げ出してしまいたい。


    けれど、この場から逃げ出そうとするとなぜか足が逆方向に向いて戻ってしまうのだ。


    このままでは仲間の安否もわからない。脱出の手がかりも掴めない。


    こんなことしている間に刻一刻と時間は過ぎていくというのに……――

  • 28二次元好きの匿名さん23/02/28(火) 00:26:49


    シャンクス「なんだ、時間を気にしてるのか? 心配しなくてもここでの時間は5分も経ってないぞ」


    うんうんと悩むルフィに対して男がそんなことを告げる。


    ベックマン「夢と現実での時間の流れは異なるからな。ここでの時間はあってないようなものだ」



    そういえばコビーもそんなことを言っていた気がする。


    ――夢の中での時間の流れが現実と同一とは限りません。


    ――ぼくらがこうして過ごしている時間が、現実ではたったの5分ってこともあるかもしれません。


    ウタ「さっきの“私”の回想だって、ほんの一瞬思い出してただけよ」



    ウタ「ここはね、現実からも夢からも切り離された心の世界。心のクローゼット」


    ウタ「ここにあたしたちがいることは“私”も知らないわ。だって忘れてるもの」

  • 29二次元好きの匿名さん23/02/28(火) 00:48:54


    ウタ「子供の頃の思い出って、忘れててもずっと心に残ってたりするでしょ?」


    ウタ「“私”には“ウタウタの世界”もあるからクローゼットの距離はとても近くて、すぐ取り出せる場所にあったの」


    ウタ「でも“私”は、もう要らないって捨てちゃった」


    ウタ「『子供の頃の思い出はもういらない。これからはファンの皆と新しい時代を作るんだ』って」


    ウタ「そう決めた時に……子供のあたしも切り離されちゃった」


    ウタ「そのまま消えちゃいそうなところを、シャンクスが拾ってくれたの」


  • 30二次元好きの匿名さん23/02/28(火) 00:52:29


    ウタ「だからあたしは、いつまでもシャンクスが好きなあたしでいられる。“私”が今どう思ってようと変わらないわ」


    ウタ「ってそれより、いつまで迷ってんの?あんたの手番よ!」


    ルフィ「う~~~~ん……これだ!」



    ルフィがめくったトランプの数字は、ハートのQとスペードのA。


    神経衰弱の勝負中だった。


    ウタ「はい残念。次は私の番ね。ハートのQとクラブのQ、それとスペードのAにダイヤのAね。はいおしまい!」


    ルフィ「あーッ!!そこさっきおれがめくったやつ!!」


    ウタ「そういうルールなんだから当然でしょ!?あんたちゃんと聞いてたの??」


    ルフィ「もうひと勝負だ!」


    勝負の決着はまだまだ着かなかった。

  • 31二次元好きの匿名さん23/02/28(火) 01:08:11


    ――エレジア・ライブ会場


    次第に小降りになってきた雨の中。


    うずくまっていたウタはふと顔を上げた。



    ウタ「……きた」


    ゆっくり立ち上がると、そばで眠っていた海賊や観客たちもゆらりと起き上がる。


    ステージの上からは、先程以上の大量の海兵が武器を構えて押し寄せてくるのが見えた。


    その後方には、白のコートを羽織ったサングラスの人物がいる。


    ボルサリーノ「さて歌姫。大人しく捕まってくれないかねェ~」


  • 32スレ主23/02/28(火) 01:24:18

    今日の更新はここまで
    子ウタの話をルフィはほぼ聞いてません。それどころではないので。
    ルフィがここに落とされた理由は前スレの「私が作る新時代にあんたはいらない」が全てなんですが、
    通常ウタが眠れば能力が解除されて元に戻るところを、今回は眠らないので危うく忘れたままになるところでした。
    シャンクスが拾わなかったら海に沈んだままでしたね

  • 33二次元好きの匿名さん23/02/28(火) 02:47:31

    このまま183連敗するまで勝負してそうだな...

  • 34二次元好きの匿名さん23/02/28(火) 08:14:32

    保守

  • 35二次元好きの匿名さん23/02/28(火) 15:36:02

  • 36二次元好きの匿名さん23/02/28(火) 20:46:29

    酒場の窓の外が薄暗くなっても、彼らは勝負を続けていた。


    ウタ「さあ、これで56戦56勝!あたしの勝ちよ!」


    ルフィ「今のはおれが勝ってたぞ!」


    ウタ「あたしの方が早かったに決まってるでしょ! ま、あんたもなかなかの手際だったし、良くて引き分けね」


    二人はロープを使った早結び対決をしていた。


    こればかりはルフィも船上で経験があるため実力が拮抗していたが、手指の短さが勝敗を分ける結果となった。


    ルフィ「ふん!なら次はお前に勝つ!」



    ウタ「もうしないわよ」


    ルフィ「えっ!?」


    ウタ「なんであたしがいつまでもあんたと勝負してなきゃいけないのよ!あたしには仕事があるの」



    そう言うと、ウタは座っていた椅子から降りて外へと歩き出した。

  • 37二次元好きの匿名さん23/02/28(火) 22:16:30

    ルフィも急いでその後を追う。


    ルフィ「お前! 負けそうになったからって勝負を降りるなんて卑怯だぞ!」


    ウタ「なにが卑怯よ!これは海賊の勝負って言ったでしょ? 勝った方が偉いのよ」


    ルフィ「ぐぬぬぬぬ……!」


    シャンクス「ウタ」



    呼ばれて振り返ると、シャンクスが二人が結んだロープを手に持って立っていた。

  • 38保守だ23/02/28(火) 22:23:38

    期待

  • 39二次元好きの匿名さん23/02/28(火) 22:24:52

    左手には綺麗に結ばれたロープ、右手には無骨だがぎゅっと強く結ばれたロープ。


    両手に一本ずつ持って吊り上げると、左のロープの結び目がはらりと解けて落ちた。


    ウタ「えっ? ええ~~~っ!?」


    シャンクス「ウタのロープはきちんと結べてなかったようだな」


    ルフィ「よっしゃ! 勝ったァァ!!」



    初勝利に湧くルフィに対しウタはぎりりと歯ぎしりする。


    ウタ「結んだのが早かったのはあたしよ!引き分け!」



    ルフィ「ちゃんと結べてたのはおれだ! 勝ち!」


    ウタ「引き分け!!」


    ルフィ「勝ち!!!」


    ウタ「引き分け!!!!」


  • 40二次元好きの匿名さん23/02/28(火) 23:23:52

    シャンクス「はァ……いい加減にしろ」


    シャンクスが剣の鞘でコツン、コツン、と二人の頭を小突いた。


    ウタ「いたっ! 子供に剣を使うなんて海賊の風上にも置けないぞ、シャンクス!」



    シャンクス「ばーか。今のは愛の鞭ってやつだ」



    ルフィ「鞭じゃなくて剣だったぞ……」


    頭を押さえてボヤくルフィ。ゴムの身体じゃないので普通に痛かった。


    ウタ「もう、愛だなんてェ♡ 私を愛してるってこと? シャンクスぅ」



    頬を染めたウタがシャンクスの脚にまとわりつく。


    ルフィは少し羨ましく思ったが、もう子供ではないので我慢した。


    と同時に、懐かしさを覚える。


    フーシャ村に赤髪海賊団がいた頃はみんなの肩や背中によじ登り、笑ったり叱られたりしたものだ。

  • 41二次元好きの匿名さん23/02/28(火) 23:45:44

    ウタ「あ~、シャンクスに愛されて嬉しいから歌っちゃお! みんな、準備はいい?」

    ウタはシャンクスから離れると、広場の真ん中でくるくると回って機嫌良く両手を上げた。

    『よしきた!』『ウタのステージだな』『楽器もってこい!』

    声を聞いて表に出てきた海賊たちが、やんややんやと囃し立てる。

    その様子に、大人のウタが歌っていたライブを思い出した。

    ルフィ「あいつも歌うのか?」

    ボンク・パンチ「知らないのか? 海賊には歌が付き物なんだぞ」

    ウタ「そう! あたしは赤髪海賊団の音楽家、ウタ! みーんなが自由になれる新時代を、歌で作る女よ」

  • 42二次元好きの匿名さん23/03/01(水) 00:32:04

    シャンクス「さあ、うちの音楽家のステージだ!」


    しゃがんでルフィの肩に手を置き、シャンクスがウタを見るように促す。


    どこからか流れるピアノの旋律に合わせて、ウタはゆっくりと歌い始めた。



    《この風は どこからきたのと》


    《問いかけても 空は何も言わない》



    《この歌は どこへ辿り着くの》


    《見つけたいよ 自分だけの答えを》



    《まだ知らない海の果てへと 漕ぎ出そう》


  • 43二次元好きの匿名さん23/03/01(水) 00:40:14


    大人のウタが歌った時のような、豪華な演奏も派手な舞台演出もない。


    ともすれば煩く騒ぎ出す海の男たちが静まり返る中、たった一人、澄んだ歌声で唄うウタ。


    ルフィは、どこか心を揺さぶられる思いがした。


    ルフィ「この曲……」



    そうだ、確かあの時……


    ――

    ――――

    ――――――

  • 44二次元好きの匿名さん23/03/01(水) 00:55:39


    ――回想・ルフィの記憶


    フーシャ村に赤髪海賊団が滞在していた頃。


    いつものように山で修行をしていたら、いつの間にか日が暮れてしまった。


    ……そうだ、今日はシャンクスたちが船で帰ってくる日だった!


    急いで山を下りたルフィはそのまま酒場へ向かったが、もうすっかり暗くなって人気もなく、マキノが店じまいを始めていた。


    マキノ「あらルフィ。今日は遅かったのね」


    ルフィ「シャンクスたちは?」


    マキノ「もう船に戻ったわ。ああでも、シャンクスさんはまだ飲んでるかしら」


    小首をかしげるマキノの横をすりぬけて、ルフィは酒場に入った。


  • 45二次元好きの匿名さん23/03/01(水) 01:18:40

    窓際のテーブル席に一人座って、椅子をゆっくり揺らしている男がそこにいた。


    テーブルの上には空の酒瓶が何本も立っている。


    シャンクス、と声を掛けようとして、ルフィは立ち止まった。


    奥の方から、何か声が聞こえてきたからだ。



    シャンクス「……たーった、ひとつの、ゆめ……、決してゆずれ……な…い……」


    低く響くその歌は、決して上手いとはいえないものだったが、それでもルフィの耳に強く残った。


    いつも陽気に歌うビンクスの酒とは、違うメロディ。


    初めて聞くその歌は、いったい何なのだろう。

  • 46二次元好きの匿名さん23/03/01(水) 01:34:47

    「今は一人にしてやってくれねェか」


    背中をポンと押されて、振り返るとベックマンが立っていた。


    手を引かれて酒場を出た後、ルフィはむん、と顔を上げる。


    ルフィ「シャンクスは、一体どうしたんだ?」



    ベックマン「男はたまに一人で飲みたいときがあるのさ」



    ルフィ「……歌ってるのは?」


    ベックマン「人間、他人に喋れねェ事も一つや二つ、あるものさ」


    ルフィ「なんだよそれ……ベックマンも言えないのか?」


    ベックマン「お頭が言わねェんならな」


    なんだかのけ者にされた気がして、ルフィはムッとした。


    けれど、二人が聞かれたくないことなのだろうというのは、なんとなく分かったのだ。

  • 47二次元好きの匿名さん23/03/01(水) 01:40:45

    ルフィ「わかった。もう聞かねェ」

    ベックマン「悪いな」

    ルフィ「いいってことよ!」

    その場は、そう言ってベックマンと別れた。


    いつか、大人になったら教えてもらおう。

    そう思ったことを、すっかり忘れていた……――

    ――――――
    ――――
    ――

  • 48二次元好きの匿名さん23/03/01(水) 01:51:41


    《ただひとつの夢 決して譲れない》


    《心に帆を揚げて 願いのまま進め》



    《いつだって あなたへ 届くように 歌うわ》


    《大海原を駆ける 新しい風になれ》



    同じ曲、同じ歌だった。


    ルフィの頭の中で、今やっと、目の前にいる海賊たちと『赤髪海賊団』が繋がったのだ。


    一番を歌い終わったウタは、男たちの傍へ行き一緒に歌うように促している。


    ボンク・パンチがフィドルを鳴らし、ライムジュースがビートを刻み。


    ラッキー・ルウとヤソップが肩を組んで体を揺らすと、他の海賊たちも集まって大口を開けて合唱し始めた。



    シャンクスも楽しそうに歌っている。


  • 49二次元好きの匿名さん23/03/01(水) 02:00:56

    あの日、一人で歌っていたシャンクスの面影はどこにもない。


    でもきっと、あの日のシャンクスは、このシャンクスから続く姿なのだろう。そんな風に思った。


    《どこまでもあなたへ 届くように 歌うわ》


    ウタはシャンクスの隣で身体を揺らし、楽しそうに笑っている。


    彼女にとっての歌は、みんなで唄うものなのだ。


    視線で促されて、気が付くと、ルフィも口を開いていた。


    《大海原を駆ける 新しい風になれ》


  • 50二次元好きの匿名さん23/03/01(水) 02:14:04

    今日の更新はここまで
    当初の予定ではウタの歌を聴いてシャンクスを思い出す程度だったんですが…なぜ一緒に歌ってるんです?
    ま、いいや。海賊は歌うもの。ワンマガの小説でも歌ってますし。ワンマガはいいぞ

  • 51保守だ23/03/01(水) 07:55:55

    可愛い

  • 52二次元好きの匿名さん23/03/01(水) 13:56:38

  • 53二次元好きの匿名さん23/03/01(水) 20:28:37

    ――最後のフレーズを唄い、歌が終わりを迎える。


    『よかったぞウター!』『やっぱりうちの歌姫は最高だ!』

    海賊たちは互いの背中を叩き合い、大きなごつい手で小さな歌姫に賞賛の拍手を贈った。

    その歌姫はというと。

    ウタ「……すー……すー……」

    柱の陰に座ってこくりこくりと舟を漕いでいた。

    小さな唇が薄く開き、安らかな寝息を立てている。

    ルフィ「……なんで寝てんだ?」

    しゃがんで顔を覗き込みながら、ルフィは指先でつんつんと肩をつつく。

  • 54二次元好きの匿名さん23/03/01(水) 21:28:47

    やっぱとりあえずつんつんするんだな

  • 55二次元好きの匿名さん23/03/01(水) 22:02:39


    シャンクス「思いっきり歌うといつも寝ちまうのさ。よっぽど楽しかったんだろうなァ」


    シャンクスは着ていたマントでウタを包むと両腕でひょいと抱き上げた。


    柔らかい頬を胸に預け、すっぽり丸く収まる姿はまるでそこが定位置であるかのように見える。


    シャンクス「……一度でも勝ったら、教えてやる約束だったな」


    愛おしく背中を撫でながら、シャンクスは顔を上げる。


    シャンクス「この世界は“夢”だ。夢だからこそ、肉体より精神の影響を受けやすい」


    シャンクス「お前がずっと子供の姿でいるのは、ウタの能力に“精神(こころ)“が負けているからだ。だから逆に、“精神(こころ)“を強く持てば反発できる」

  • 56二次元好きの匿名さん23/03/01(水) 22:06:27


    ルフィ「……そんな簡単でいいのか?」


    今まで駄目だったのにそんな精神論で解決できるのかと、ルフィは心配そうに眉を顰める。


    実際、何度やっても出られなかったし、ルフィはウタに負け続けた。


    シャンクス「心だってずっと同じ強さじゃないさ。弱い時もあればたわむ時もある。海の波と同じだ」



    シャンクス「今この世界には、たくさんの“心”が集まってる。ウタが“ウタウタの実”の能力で呼び寄せた人々の“心”だ」


    シャンクス「これだけ大勢の人間が“ウタウタの世界”に来るのは初めてだからな。どっかかしらで綻びが起こっていても不思議じゃない」


    シャンクス「例えば、おれたちがこうして好きに行動できていること、とかな」

  • 57二次元好きの匿名さん23/03/01(水) 23:31:01

    ルフィ「!」



    ニッと笑ってシャンクスはウタを右腕で抱えたまま、左腕を前に突き出す。


    シャンクス「ウタの心から生まれたおれたちァここから出ようなんて思わねェが、部外者のお前ならできるだろう」


    シャンクス「強く願え。お前のなりたい姿に」




    ――お前がなりたいのは何だ?

  • 58二次元好きの匿名さん23/03/02(木) 00:35:22


    ルフィ「おれは……おれは……!!」


    シャンクスの被っている麦わら帽子に自然と目が吸い寄せられる。



    その麦わら帽子に誓った。


    いつか必ず返しに行くと。



    海賊のように自由に生き、世界中を冒険したいと願って、航海に出て。



    仲間と出会い、果てを知り。



    強さを知り、弱さを知った。


  • 59二次元好きの匿名さん23/03/02(木) 00:42:38

    左目の下がチリチリと痛む。心臓の音がドントットと鼓動を打つ。


    なりたいもののために。作りたい世界のために。


    ……欲しいもののために!



    ルフィ「おれは……海賊王に!」



    「海賊王に、おれは、なる!!!!!」

  • 60二次元好きの匿名さん23/03/02(木) 01:16:21


    シャンクス「なるほど、それがお前の今の姿か」


    19歳の姿に戻ったルフィは、海賊らしい二角帽を被り、分厚い黒のレザージャケット、腰には剣を身に着けていた。


    身体はゴムに戻り、髪の毛から足先まで全身に力がみなぎっている。


    今のルフィは“麦わらの一味”の船長、モンキー・D・ルフィだ。


    ルフィ「おれは行くぞ」


    シャンクス「ああ」


    踵を返そうとしたルフィは、しかし一度だけ立ち止まった。


    シャンクスの腕の中で眠る少女をちらりと見る。


    ルフィ「礼は言わねェ」


    シャンクス「当然だ」


    ルフィ「おれはあいつをぶっとばすぞ」


    シャンクス「やれるものならやってみろ。おれたちの娘は強いぞ?」


    シャンクスの後ろで男たちが、赤髪海賊団が挑発するように笑っている。

  • 61二次元好きの匿名さん23/03/02(木) 01:30:16

    このレスは削除されています

  • 62再投稿23/03/02(木) 01:33:57

    ルフィはそれに乗らなかった。戦う理由はない。

    背を向けると、両足に力を込めて天に飛び上がる。

    そして、眼下の海賊たちには目もくれずに空を蹴ってライブ会場に向かった。



    ウタ「……シャンクス」

    シャンクス「おっ、ウタ。もう狸寝入りはいいのか?」

    腕の中でもぞもぞと動く娘をしっかり抱え直して、シャンクスはにやにやと笑った。

    シャンクス「わざと結び目を緩くして勝たせてやることもなかったろうに。いいのか?」

    ウタ「……うるさい。引き分けよ」

    まだ眠そうにまばたきすると、少女は“海賊”が去って行った空を見上げた。


    夢と現実、最初から相容れない存在だ。

    心のクローゼットに紛れ込んだ異物を、ただ元の場所に返したに過ぎない。

    ここはあたしと赤髪海賊団の、幸せな思い出

    そういう閉じた世界に……自由を望む『あいつはいらない』のだから。

  • 63スレ主23/03/02(木) 01:49:37

    今日の更新はここまで

    まとめるの難しかった…!次回は現実側と麦わらの一味視点に戻る予定です

    使いたい画像に合わせて描写を変えることは度々あるんですが、

    >>53についてはどこをつつくか迷って結局肩にしました。(指差すだけの案もあった)

    鼻ツンするには好感度が足りないかなーと。仮にやるとしてもむぎゅって押し潰すか鼻を摘まんで喧嘩になると思います

  • 64保守だ23/03/02(木) 07:55:34

    保守

  • 65二次元好きの匿名さん23/03/02(木) 17:00:28

    シャンクス遅いなー

  • 66二次元好きの匿名さん23/03/02(木) 20:44:38

    上へ、上へ!


    ルフィはひたすら上を目指して跳んでいた。その方向が正しいと感じたからだ。


    跳べることに疑問を抱くことなく、ただ『できる』と信じて前を向く。それだけでよかった。


    やがてルフィは天井から海の中へと突っ込み、一気に通り抜ける。


    ザバン、と飛び出したのはライブ会場後方の海上だった。



    ここまで来るとルフィにも見聞色の覇気で気配が掴めるようになる。


    会場の方角に馴染みのある気配を複数、感じ取った。


    ルフィ「あいつらだ……!!」

  • 67スレ主23/03/03(金) 00:05:58

    すいません時系列整理して変なとこあったので文章直してます
    更新は明日

  • 68保守だ23/03/03(金) 07:54:59

    保守

  • 69二次元好きの匿名さん23/03/03(金) 13:55:00

    期待

  • 70二次元好きの匿名さん23/03/03(金) 20:40:13

    ルフィはぱっと笑顔になり、そのまま会場へ向かおうとして……


    ドォン!


    突如、目の前の空に黒いインクを落としたような染みが広がった。

    まわりの空気の温度が一気に下がり、気圧差で起こった風でジャケットがバサバサとはためく。

    ルフィ「っ! なんだ……?」

    広がった染みは徐々に空を覆っていき、やがて世界全体が闇に落ちる。

    会場の中心から青黒いモヤが渦巻いて立ち上り、何かを形作っていくのが見えた。

    ルフィの直感が、あれはおそろしいものだと訴えかけている。

    眼前の闇から、何かとんでもないものが生まれようとしていた。

  • 71二次元好きの匿名さん23/03/03(金) 21:21:28


    ――ライブ会場


    時は少し遡る。


    作戦会議を終えた“麦わらの一味”と海賊・海軍連合は、音符兵に見つからぬようこっそり森を抜けてライブ会場へ向かった。


    会場までは無事にたどり着けたが……


    サンジ「……なんだありゃ?」



    ナミ「海に沈んでる……!?」



    柱の影から覗くと、客席全てが沈んだ水面の上でウタが一人、数十名の海兵に囲まれているのが見えた。


    彼らは現実世界でウタに眠らされた兵士たちだ。



    ウタ「ねえ海兵さん、もう諦めなよ。私には勝てないってわかったでしょ?」


  • 72二次元好きの匿名さん23/03/03(金) 22:02:21

    『う…うるさい!』『だからと言って職務を放棄するわけにはいかん!』


    『わけのわからん妙な力を使いやがって……』『歌姫ウタは我々が討伐する!』『おれたちをここから出せ!』


    ウタ「出られないよ。みんなは私とここで、ずーっと楽しく暮らすの。それが新時代なんだよ」


    ウタ「もうつらいことはないし、仕事もしなくていいの」


    『黙れ!民衆を惑わす魔女め!』


    兵士の一人が銃を発砲する。


    しかしその弾丸は命中する前に音符になってかき消された。


    ウタ「だからァ……そういうの意味ないんだって」



    パチン、と指を鳴らすと、海兵たちの武器がシャボン玉に変わり次々と割れて消えた。


    『な……っ!』『おれの銃が!』

  • 73二次元好きの匿名さん23/03/03(金) 22:29:29

    ウタ「はーい静かにできない悪い大人は、歌になっててね」



    四方八方から虹色の五線譜が伸び、海兵をまとめて拘束するとそのままポン、ポンとカモメのぬいぐるみに変えてしまった。


    あっという間に制圧されてしまう様子に、ヘルメッポは冷や汗を流す。


    ヘルメッポ「なんてこった……海軍があんなにあっさりやられちまうなんて……」



    コビー「海軍はウタを正式に討伐対象としたようですね。でなければあんなにたくさんの武装した兵がいるはずがありません」


    コビー「きっと現実世界でも戦いが起こっているんだと思います」

  • 74二次元好きの匿名さん23/03/03(金) 23:03:33


    ロー「やつが現実世界に気を取られているならチャンスだ。一気に仕掛ければいい」


    バルトロメオ「でもどうするんだべ!? こっからは距離があるし、隠れられるような遮蔽物もねェべ」


    ブリュレ「ならアタシの鏡で……」


    オーブン「お前が近くに行かなきゃ話にならんだろうが。それに、いざと言うときの退路も必要だ」


    コビー「そうですね。やはりここは……ブルーノさんの“ドアドアの実”の力をお借りしましょう」


    期待の視線を浴びたブルーノは、小さく溜息を吐いた。


    ブルーノ「……使えるのはせいぜいあと一回。ドアは自分の体の大きさまでだ。それ以上は難しい」


  • 75二次元好きの匿名さん23/03/03(金) 23:39:01


    コビー「ではここにいるブルーノさん、ベポさん、サニーさんとぼくの4人で奇襲をかけましょう」


    コビー「ウタが怯んだところへ全員で一斉攻撃を仕掛けます!」


    サニーくん「サニー!」



    ゾロ「奇襲作戦か、いいねえ」



    ウソップ「……なあ、それなら先にウタの注意を引く役がいた方がいいんじゃねェか? おれが囮になるよ」


  • 76二次元好きの匿名さん23/03/03(金) 23:59:37

    『えっ!?』


    ウソップの発言に全員の注目が集まる。


    チョッパー「ウソップ……一人で大丈夫か?」


    ウソップ「なァに平気さ。ファンの気持ちとこの戦いは別だ」



    ウソップ(……それに、おれの半端な覚悟のせいでルフィに迷惑かけちまったしな)


    いまだ姿を見せないルフィは無事だろうか。


    ウソップ(いや、きっと無事でいる!) 


    ウソップ(たとえ何があったって、あいつは何度でも立ち上がってきた男だ!)


    ウソップは固く信じていた。


    それならば、彼が帰ってくるまで自分たちのやるべきことをするだけだ。


    コビー「……わかりました。ウソップさんが良いと思ったタイミングで合図を送ってください」


    コビー「ぼくたちが飛び出した後は、ヘルメッポさんと他の海賊のみなさんが続きます!」


    ウソップ「おう、任せたぜ!」


    にかっと笑ってサムズアップをしたウソップは、振り返るとウタに向かって駆け出した。

  • 77スレ主23/03/04(土) 00:10:07

    今日の更新はここまで
    おかえりウソップ視点。そしてトットムジカへの布石を着々と積み上げていきます
    時間についてですが、映画より少し前倒しになってます
    チキンレースやバリアボールゴロゴロがなかったせいですね

  • 78二次元好きの匿名さん23/03/04(土) 00:51:00

    おかえりゴット視点。
    頑張れゴッド ウソップ

  • 79二次元好きの匿名さん23/03/04(土) 08:56:38

    保守

  • 80保守だ23/03/04(土) 19:39:16

    がんばれゴッド

  • 81二次元好きの匿名さん23/03/04(土) 20:30:16

    『どうしてだよ、ウタ!』『ファンだったのに!』『ウタ様~!』

    海兵をすべてぬいぐるみに変えたとき、そんな声がウタの耳に届いた。

    いや、それ以前から観客の、民衆の声がウタに常に届いている。

    『今日ライブだって聞いてたが、嘘だろ…』『あたしの赤ちゃんが!』『おい、鍋に火かけっぱなしなんだぞ!』

    『船の舵どうするんだよ!』『警備の仕事が…』『陛下!陛下御無事ですか!』『キャンキャン!』


    『どういうことだ…?』『映像電伝虫でライブを見てた人も、ぬいぐるみに??』『やり過ぎだよウタ!』

    『駄目だよこんなんじゃ、暴君と変わらないよ!』『救ってくれると信じてたのに!』『帰りたいよォ』

    『何だこれ、ただのライブじゃねェの?』『ウタって誰?』『さぁ?知らね』『歌より脱げよ女ァ!』

    『これだから男は!』『ウタに失礼なこと言わないで!』『あんなやついらないわ!』『ア゛ァ!?そっちこそくたばれ!』

  • 82二次元好きの匿名さん23/03/04(土) 20:33:58

    (歌より脱げはウタが世界政府と海軍に釘刺すシーンのアップで下から上にスライドした時に少し思ったとか言えない)

  • 83オカズ目的の人もいたようで23/03/04(土) 20:56:43


    ウタ「……どうして。どうして? みんな喧嘩しないでよ……」


    ウタ「“新時代”は、誰もが幸せな、平和な世界なんだよ…?」


    映像電伝虫での限られた相手としか交流したことのないウタは、大勢の民衆の言葉に困惑しきっていた。


    世界には、海賊に虐げられている人と、そうでない人がいることは知っている。


    しかし、“それ以外の人”が何を考えているかには思い至らなかったのだ。


    いつの間にか“虐げられている人”の声ばかりに耳を傾けていたから……


  • 84二次元好きの匿名さん23/03/04(土) 21:50:48

    ゴードンも、海賊も、定期船で来る海兵たちも、こんなことは教えてくれなかった。

    いや、“自分で知る”しかなかったのだ――

    『ウタ!』

    『助けてウタ!』

    『どうにかしてよウタ!!』

    ウタ「やめて……」

    ウタ「もう、やめてよ……」

  • 85二次元好きの匿名さん23/03/04(土) 22:02:07


    ドドドォン!ドォン!ドォン!


    ボルサリーノ「おんやァ? 心なしか動きが鈍ってきたようだねェ~」



    攻撃を仕掛けていた“黄猿"ボルサリーノはそんな感想を洩らした。


    海軍は“歌姫ウタ”を説得不可能とみなし、サカズキ元帥の命令の下、全線力を投入しウタを亡き者にしようとしていた。


    攻撃対象である歌姫ウタは今、枡席の一つを陣取り防御態勢を敷いている。


    ステージを囲む観客席に散らばる眠ったままの観客たちは、相変わらず海兵にまとわりつきヘッドフォンを奪おうとするが、


    それ以外の攻撃を仕掛けてくるのはもっぱら操られた海兵たちだった。

  • 86二次元好きの匿名さん23/03/04(土) 22:11:07


    イッショウ「いい加減、大人しくしてもらえねェか…ッ!!」


    コビーとヘルメッポの連続攻撃を刀一本でいなしているのはイッショウだ。


    海軍大将に鍛えられたという彼らの実力は操られていようと本物だ。


    腕の筋を、足の腱を斬れば動きは止まるのだろうか。いや、それでも命令によっては動こうとするだろう。

  • 87二次元好きの匿名さん23/03/04(土) 22:46:40


    モモンガ「ハァッ!!」


    モモンガ中将はオーブンとブリュレ率いるビッグ・マム海賊団の手下たちと戦闘している。


    いくら彼が手練れであろうと耳を塞いだ上、操られた市民がいる中での集団戦は不利だった。


    モモンガ「くそっ、歌姫め…!!」

  • 88二次元好きの匿名さん23/03/04(土) 22:50:52


    ウタ「……っ」


    現実世界で海軍を相手取るウタは、苦戦を強いられていた。


    再び海兵が現れて攻撃が再開した際、“ウタウタの実”の能力で一斉に眠らせたまでは良かった。


    そこから更に後続が現れ、こちらに向けて発砲し始めたのだ。


    ――みんなを殺すつもりなの!?




    ボルサリーノ「“八尺瓊勾玉”」


    ウタ「!!」


    縦縞スーツの大男が大きく飛び上がって構えているのが見える。


    またあの光の雨が降ってくる!?

  • 89二次元好きの匿名さん23/03/04(土) 23:09:22

    このレスは削除されています

  • 90二次元好きの匿名さん23/03/04(土) 23:10:35

    ウタがさっと右手を振ると、緑の短髪の男が刀を抜いて躍り出た。



    どういう理屈かは知らないが抜刀の勢いで光の攻撃を弾き、相手に打ち返している。


    撃ち返せる範囲になかった光は、鶏冠頭の男が出した“バリア”によって観客への攻撃は未然に防がれた。


    その間も光の雨は降り注ぎ、他の海賊たちがさまざまな方法で防御するが圧倒的に不利だ。


    このままではいずれやられてしまう。



    ウタは苦し紛れに叫んだ。


    ウタ「……正義を名乗る海軍が、罪もない人を殺すつもりなの!」


    ウタの叫びを知ってか知らでか。ボルサリーノは皮肉げに唇を歪めた。


    ボルサリーノ「犠牲を伴わない正義などありえない」


    ボルサリーノ「辛いねェ~、子供一人を止めるために何万人も犠牲にするのは」


  • 91二次元好きの匿名さん23/03/04(土) 23:30:19


    現実世界では劣勢を強いられ、“ウタウタの世界”では民衆に咎められる。


    護っているはずの人たちに責められる……その状況は予想以上にウタを蝕んでいた。


    ……守らなきゃ。 『ここから出せよ!』


    ……救わなきゃ。 『お願い!おうちに帰して!』



    ……助けなきゃ。


    ……助けて。



    ……助けてみんな……シャンクス……!





    「やいやいやい! プリンセス・ウタァ!!」

  • 92二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 00:39:32

    ハッと顔を上げると、トゲトゲした衣装に身を包んだ男がこちらにバタバタ走ってくるのが見えた。



    確か見覚えがある。さっき追い払った麦わら帽子の男と一緒に行動していたやつだ。


    相手をするのも億劫とばかりにウタは音符兵を生み出し差し向ける。


    ウソップ「待った待ったァ! 戦う気はない!」


    音符兵に囲まれてぎょっとした男は慌てて急ブレーキをかけて止まった。


    開いた両手を前に突き出しているのは、これ以上は近づかないというポーズだろうか。


    ウタ「……なに。何の用?」


    ウソップ「おいおい何の用とはご挨拶だなァ。おれはライブのチケットを買った正当な観客だぜ?」


    ウソップ「プリンセス・ウタの歌を聴きに来たに決まってるじゃねェか」

  • 93スレ主23/03/05(日) 00:52:29

    すまん時間切れ!ウソップの活躍は明日です
    民衆の声の一部はたまたま見たアイドル系の配信のコメントを元に脚色しています
    本人に言っちゃダメなことも書かれてたせいか後日非公開になってましたが

  • 94二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 06:50:14

    ゴッド・ウソップが時間稼ぎしてくれてる間にルフィが戻って来れたら良いんだが...

  • 95二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 10:29:24

  • 96二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 16:20:35

    保守

  • 97二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 20:35:01

    ウソップ(……さあて初っ端から大嘘ついちまったが、こっからどうする……?)

    ウソップ(何でもいい、考えろ……話しながらでも考えるんだキャプテン・ウソップ……!)

    一定の距離を保ってウタと対峙するウソップは、高鳴る鼓動を抑えながら務めて平静を保とうとした。

    自分たちの最終目的は、ウタに『トットムジカ』を使わせること。

    そのための奇襲作戦であり、ウタに危機感を与えなければならないのだ。

    目的を違えてはいけない。

    すー、はー、と深呼吸して、ウソップはお調子者の仮面を被る。

    大丈夫、ここは自分の狙撃が届く範囲で、ウタに警戒心を抱かせない距離。

    読み通りだ。

  • 98二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 21:12:01


    ウタ「……海賊はやめる気ないんでしょ? なら私の歌なんて必要ないんじゃないの」


    堂々と胸を張るウソップに敵意はないと見たのか、話し合いには応じてくれるようだ。


    ただし警戒は解けていない。上々だとウソップはほくそ笑んだ。


    ウソップ「なんて、って悲しいこと言うじゃねェか。プリンセス・ウタは世界の歌姫だろ?」


    ウソップ「その歌声は世界中に届いてるんだ」


    ウソップ「海軍にも、一般市民にも、おれたち海賊にも……それこそ“四皇”みてェな大海賊にだって届いてるはずさ」


    ウタ「大海賊……」


    ウソップ「知ってるだろ、“赤髪海賊団”。おれはそこの船長“赤髪のシャンクス”の側近をやってる“追撃者(チェイサー)”ヤソップの息子だ」


    “赤髪の娘(ウタ)”に届くように、名前の部分は殊更ゆっくり発言してみせる。


    ウソップ(まずは持ってるカードを全部見せる! らしくねェが、情報ってのは使いどころが肝心だ)


    ウソップ(プリンセス・ウタに生半可な“ウソ”はきっと通じねェ。そして上手い“ウソ”ってのは真実の中にほんの少し混ぜるだけでいい)


    ウソップ(いまは“真実(こころ)”で真っ向勝負だ……!)


  • 99保守だ23/03/05(日) 21:43:55

    心理戦さすがだわ

  • 100二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 21:54:29


    ヤソップの名を聞いたウタは、ぴくりと眉を動かした。後ろ髪がゆっくりと下がっていく。


    ウソップ(よし、効いてるぞ……!)


    ウソップ「おれの親父は、おれがまだ小さいガキの頃に村を出て赤髪海賊団に入ったんだ。病弱なお袋とガキのおれを置いてな」


    ウソップ「そっから後のことは……ひょっとするとあんたの方が詳しいんじゃねェかな。どうだ?おれの親父カッコいいだろ?」


    ウタ「……」


    ウソップ「……なんてな。へへっ、まあ親父のことはさておき、色々あって成長したおれも海賊になって海に出た」


    ウソップ「それは決して誰かを傷つけるためじゃなく、おれ自身の夢のためだ」


    ウソップ「だけどな……結果として誰かを悲しませたり、傷つけたことはあったと思ってる」


    ウソップ「今の仲間たちと離れ離れになっちまったことがあって……一人で寂しいと思ってた時にプリンセス・ウタ、あんたの歌を聴いたんだ」

  • 101二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 22:16:12


    びっくりしたぜ。突然映像電伝虫に姿が映ったんだからな。


    あん時の曲は……確か『私は最強』だったな。すげェと思った。


    聴いていると力が漲ってきて自分が最強になった気分になれるんだ。


    ――《さぁ、怖くはない 不安はない》


    ――《私の夢は みんなの願い》


    ――《歌唄えば ココロ晴れる》


    ――《大丈夫よ 私は最強!》

  • 102二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 22:34:01

    落ち込んだとき、何度も力を貰ったよ。


    そん時さ、プリンセス・ウタはきっと世界を救う人なんだって、掛け値なしにそう思った。



    歌でみんなに勇気を与えて、明日も頑張ろうって気持ちにさせる。


    本当に辛くて立ち直れない時は、その悲しみに寄り添うことができる。


    気持ちを押し殺してしまっていても、感情を揺さぶることができる。


    あんたの歌にはそういう力があるんだ。

  • 103二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 22:45:05


    みんなが言ってる救世主ってのは……そういう“心を扶ける”ことなんじゃねェかなって思うんだよな。


    ウタに世界を変えてもらうんじゃなくて、一緒に立ち上がるんだ。


    そりゃそういうことが出来ないつらい環境にいるやつもきっと大勢いるだろう。


    そういう時には、プリンセス・ウタの歌が心の避難所になるんだ。


    現実を簡単に変えることは難しい。けれど、何かきっかけがあれば、時代は動く!

  • 104二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 22:51:54

    ウタ「……」



    ――なァウタ。この世界に平和や平等なんてものは存在しない


    ――だけどお前の歌声だけは、世界中のすべての人たちを幸せにすることができる


  • 105二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 22:57:13

    ウソップ「けどさァ、おれたちばかりが助けてもらってちゃダメだよな」



    ウソップ「こういうのは助け合いだ。おれたちファンだって、プリンセス・ウタを扶けられるはずさ」


    両手を広げて、ウソップは高らかに宣言する。


    ウソップ「頼りきりじゃなくて、一緒に頑張ろうじゃねェか!」



    ウソップ(うおおお、おれ相当恥ずかしいこと言ってるゥ~~顔から火が出る~~でも止まるなァ~~~~!)


    内心ダメージを負っているウソップであった。

  • 106二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 23:40:58

    『……そうね。私たちウタに頼りっぱなしだったかもしれない』『だからこんなことに……』『お、おれは悪くねェぞ!ウタが勝手にやったんだ』


    『まだそんなこと言ってる!』『ウタ様……』『今までごめんねウタ』『わたしウタの力になりたい!』


    観客たちの中にも、そんな声がちらほらと現れるようになった。


    ウタは黙してその声を聴いている。


    ウタ「……あんたの言いたいこと、なんとなく分かったよ」



    ウタ「でもね」



    ウタ「もうそんな段階とっくに過ぎてるんだよなァ……!!」


  • 107スレ主23/03/05(日) 23:44:23

    今日の更新はここまで
    ウソップの活躍を盛ったぞ…!何となく彼は私が最強が好きそうだと勝手に思ってます
    あと心理戦は成功してますのでご安心を

    そして今日で書き始めてから1ヶ月が経ちました。まだトットムジカも出てない…だと…
    終わってるつもりで夜の予定を入れてしまったので、明日の更新遅れるかもです

  • 108二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 23:44:23

    ヒッ

  • 109二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 23:57:12

    遅すぎたかぁ


    >>107

    大丈夫です!みんなハッピーになるまで見届け&守ります!

  • 110保守だ23/03/06(月) 07:47:18

    期待

  • 111二次元好きの匿名さん23/03/06(月) 13:09:38

    このレスは削除されています

  • 112二次元好きの匿名さん23/03/06(月) 21:00:50


    ――折しもそのとき。


    ウタは泣きながら銃に倒れた観客の傷口を必死に押さえていた。


    ウタ「しっかりして!もうすぐ新時代なんだよ!?」



    千切ったアームカバーの布が両手のひらの下でみるみるうちに赤く染まっていく。


    ……自分のミスだ。“ウタウタの世界”に耳を傾けて油断しなければ。


    ちゃんと庇えてさえいれば……!


    意識がないまま駆け寄ってきた二人の医者が応急処置を施そうとするが、出血が多くこのままでは死に至るだろう。


    ウタは奥歯を食いしばりキッと海兵を睨みつけた。


    ウタ「……ゆるさない」


  • 113二次元好きの匿名さん23/03/06(月) 21:24:15


    宙に浮かぶボルサリーノは見上げるウタを無感動に見下ろしている。


    ボルサリーノ「哀しいのかい~? でも自分で巻き込んだんだろう」


    ボルサリーノ「自分のやったことには責任持たなきゃねェ~」


    ボルサリーノ「十三年前と同じように」

  • 114二次元好きの匿名さん23/03/06(月) 21:55:54

    ――ゆるさない。


    ――ゆるさない、ゆるさない!!



    なんでもっと早く決めなかった! もっと早く新時代に行っていれば!!


    待つんじゃなかった。全部連れていこうなんて思わなきゃよかった!!




    ぜんぶ“おまえ/わたし”が悪いんだ!!!


  • 115二次元好きの匿名さん23/03/06(月) 22:26:30

    ウソップ「うわっ!な、なんだ!?」


    ウタを中心に黒い波紋が広がり、ウソップの着ていた服装がみるみるうちに変化した。


    黒を基調としたレザーの上下にファスナーの付いたブーツ。大きな黄色い帽子とトゲトゲしたバングルのおまけつきだ。


    ウソップだけではない。


    ゾロ「うおっ」


    ナミ「きゃあっ」


    身を隠していた他の海賊やコビー、ヘルメッポ、ブルーノも同じく黒の衣装に変えられていた。


    ロー「まさか、気づかれたのか!?」


    動揺する海賊たちの後ろで、一緒についてきていたゴードンが苦しそうに唇を噛む。


    ゴードン「ウタ……」


  • 116二次元好きの匿名さん23/03/06(月) 22:38:33


    ウタ「……悪い人たちには悪い印を。もっと早くつけておくんだった」


    ウタ「……そうでしょ?」



    ――『トットムジカ』たち。



    そう呟くと、ウタの周りに色とりどりの音符が渦巻き始めた。


    時に相手を拘束し、時に幸せを与え、音符兵を作り、ウタの能力の源となっていた音符たち。



    ウソップ「……! まさか、それが『トットムジカ』なのか……!?」


    ウタ「へえ、知ってるんだ。それもゴードンに聞いたのかな」

  • 117二次元好きの匿名さん23/03/06(月) 22:53:17


    私ね、覚えてるんだ。十三年前のあの日のこと……全部。


    唄った歌のメロディも、順番も、演奏の音も、楽譜の配置も何もかも。


    これは最後に唄った楽譜の歌。今でもはっきり思い出せる。


    だから……ずっと心の中で唄ってた。

  • 118二次元好きの匿名さん23/03/06(月) 23:01:48


    ウタ「……その身が尽きるまで奏でよ」


    《夢見うつつ崇めよ》


    《全てを照らし出す光を》


    《いざ無礙に Blah Blah Blah……!》

  • 119二次元好きの匿名さん23/03/06(月) 23:13:05


    《その傲岸無礼な慟哭を! 残響激励すら忘却を!》


    《さあ 混沌の時代には終止符を!》


    《いざ無礙に Blah Blah Blaaaaah!!!》



    ウソップ「うっ……くそっ……!」


    ウタを中心に巻き起こる暴風に巻き込まれないようにウソップは帽子を押さえ重心を低くして耐えた。


    ウソップ(結局合図を送れなかった……! でも正解かもな!これじゃあ身体の小さいやつらは吹き飛ばされちまう)


    作戦は失敗したが、結果として『トットムジカ』を呼び出すことに成功した。


    しかし……これは『魔王』なのか??


    渦巻く音符の一つ一つが繋がっていき、黒い鎖で覆われた巨大な塊がウタを乗せて浮かび上がっていく。


    真上の空に黒いインクを落としたような染みがばっと広がり、じわじわと空を覆いつくしていく。


  • 120二次元好きの匿名さん23/03/06(月) 23:46:06


    同じころ、現実世界では黒々としたオーラのようなものがライブ会場を中心に渦巻いていた。


    “歌姫ウタ”の全身全霊の歌声に呼応するようにオーラは巨大化し、屋根を突き破って自らを膨張させていく。


    モモンガ「なんということだ……。発動してしまった」



    モモンガ「“ウタウタの実”の能力者が歌うことで実体化する、古の魔王――『トットムジカ』!!」


    ボルサリーノ「困ったねェ。せっかく用意したコレもああなったら意味ないねェ~」



    脳髄に届くような音の洪水にうんざりしながら、用済みになったヘッドフォンを外し指先から出した光線で破壊する。


    この歌は人を眠りにつかせないが、代わりにどんなに塞ごうと直接音を届けようとしているようだった。

  • 121二次元好きの匿名さん23/03/06(月) 23:54:56

    ――聖地マリージョア


    ルッチ「音声が切れません」


    スイッチを何度もカチカチと押しても、音声だけでなく映像も途切れることがない。


    映像電伝虫は完全に“ウタウタの世界”に取り込まれていた。


    五老星「もういい。『トットムジカ』が発動したら歌声で“ウタウタの世界(ウタワールド)”に引きずり込まれることもないだろう」


    五老星「意味がないのだ……魔王によって、現実とウタワールドは繋がってしまったのだから」


  • 122スレ主23/03/07(火) 00:29:12

    今日の更新はここまで
    トットムジカまわりも色々設定変えてしまってるんですが、13年間同居してたことは今日決まりました。なんでだ
    事件の前後は覚えてても最中の記憶だけ無かったウタちゃんなので、現実世界でも一度だけ声に出そうとしましたが
    ゴードンをビビらせてしまったため以降歌ってないです。1フレーズでやめた

  • 123二次元好きの匿名さん23/03/07(火) 07:55:29

    期待

  • 124二次元好きの匿名さん23/03/07(火) 09:02:38

    赤髪海賊団とルフィが来るまでどうにか凌ぐしか無いなぁ

  • 125二次元好きの匿名さん23/03/07(火) 16:57:34

  • 126二次元好きの匿名さん23/03/07(火) 20:55:40


    ゴードン「嗚呼……やはり! ウタは覚えていた! 楽譜も必要なかった……」


    大きな身体を身を縮こまらせながらゴードンが嘆いている。


    ゴードン「一度だけフレーズを唄ったあの時に、ちゃんと伝えていれば……!」


    サンジ「嘆いてても始まらないぜ、ゴードンさんよ」


    騎士のようなサーベルを下げたサンジが庇うように前に立つ。


    サンジ「あんたの予想は当たって、『トットムジカ』は姿を現した。大成功だ。あの魔王を倒せばおれたちは現実へ帰れる」


    ゾロ「倒せたらの話だがな」


    サンジ「なんだ弱気か?マリモ」


    ゾロ「言ってろぐる眉」


    茶々を入れたゾロが刀を抜いて駆け出していく。ウソップに合流する心づもりのようだ。

  • 127二次元好きの匿名さん23/03/07(火) 21:29:10

    コビー「……仕方ありません。作戦変更です! トットムジカを攻撃しましょう!」


    『おう!』


    海賊たちが次々と魔王に向かっていく横でサンジがゆっくり煙草に火をつける。


    サンジ「これからおれたちは魔王を倒しに行く。ウタちゃんから見りゃおれたちはみんな敵だ。海賊だしな」


    サンジ「だけど育ての親のあんたは……あんただけは味方でいてやんな」


    そう言うと煙草を咥えてサンジは飛び出していった。


  • 128告解1/423/03/07(火) 23:32:26


    《雨打つ心 彷徨う何処》


    《枯れ果てず湧く願いと涙》


    《解き放つ 呪を紡ぐ言の葉》



    わかってる。わかってるよ、みんな。


    みんなが幸せになる新時代は――私じゃ、作れないってこと。



    ゴードンはこの歌を『封印された歌』だって言った。


    二度と口にしてはいけない、とも。


    どうしてそんなことを言うのか、知りたくて。


    だから地下の書庫で調べたの。


  • 129告解2/423/03/07(火) 23:39:34


    ――そうか。あの映像を見てしまったのだね。


    ――謝らなくていい。私の管理が甘かったのだ。


    ――エレジアを滅ぼしたのは『トットムジカ』だ。


    ――赤髪海賊団はきみを庇ったんだよ、ウタ。



    ……『トットムジカ』を唄ったのは、私。


    だから赤髪海賊団は私を捨てた……。


    私の歌は最高だと言ってくれたのに……。……なのに! 


    赤髪海賊団に私の居場所はもう、なかったんだ……。


  • 130告解3/423/03/07(火) 23:44:23


    ――ありがとう、ウタ!


    ――ウタのおかげで元気になったよ!



    ある日、新種の映像電伝虫を拾って、みんなと話せるようになったとき。やり直せるって思ったんだ。


    こんな私でも、誰かの力になれるって……!




    ――お願い、ウタ!


    ――あなたしか、あなたしかいないんです!



    私で力になれるなら喜んで!!




    ……だから一緒に頑張ろうなんて言わないで。


    私の歌が必要だって、言って?


  • 131告解4/423/03/07(火) 23:49:30


    みんなを巻き込んだのは、私のせい。私の責任だ。


    だから絶対に守る!救ってみせる!


    消えろ、海軍!! ここからいなくなれ!!!!!



    《無条件 絶対 激昂なら Singing the song!》


    《如何せん罵詈雑言でも Singing the song!》


    《有象無象の Big Bang 慈しみ深く》


    《怒れ 集え 謳え 破滅の譜を!!!》

  • 132二次元好きの匿名さん23/03/08(水) 00:24:02


    イッショウ「急げ! 一般市民の避難を最優先だ!!」


    海兵たちは夢遊する観客たちをどうにかこうにか抑えて船へと連れていく。


    沖合で包囲していた軍艦からは『トットムジカ』に向けて大砲が何度も撃ち込まれた。


    しかし着弾と同時に弾が消えてしまい、ダメージ一つ与えられない。


    『トットムジカ』は黒い渦の中から道化師のような風貌を顕わすと、その目から強力なビーム光線を放ち軍艦を破壊し始めた。


    ドォン! ドォォン!


    [二番船、大破!] [十三から十五番艦の船体に穴が!]


    [第九番艦、操舵不能!] [二十七番艦、…!][十二…!] [このままでは、戦列を維持できません!!]


    ボルサリーノ「やれやれ、おっそろしいねェ~『魔王』ってのは」



    ボルサリーノも“ピカピカの実”の能力で『トットムジカ』に攻撃を続けているが、牽制になっているかすら掴めない。


    ボルサリーノ「やっぱりあの歌姫を殺るしか方法はないのかねェ…」

  • 133二次元好きの匿名さん23/03/08(水) 01:29:04

    一方の“ウタウタの世界”では。


    ナミ「ウソップ!」


    ウソップ「ナミ、すまねェ! 合図の前に『トットムジカ』を呼び出されちまった」


    ナミ「いいわよそんなこと! それよりこいつ……」



    魔法の天候棒(ソーサリー・クリマタクト)を構えながら海賊姿のナミが。


    ベポ「アイヤー!キャプテーン!!」


    ロー「ベポ! ……くっ、近づかせないつもりか!」


    吹き飛ばされそうになったベポを片手でがっちり掴み引き寄せている黒ジャケットのローが。


    天まで膨れ上がった『トットムジカ』の巨体を見上げる。


    他の麦わらの一味やオーブン・ブリュレ、クラゲ海賊団たちも攻撃しようと試みるが、


    曲から生まれた音符の戦士や『トットムジカ』自身の腕に払われ、容易には近づけない。


    ロー「クソッ、やはりウタを同時攻撃しなければだめなのか……」


  • 134二次元好きの匿名さん23/03/08(水) 01:31:00


    『もうやめてウタ!』『ウタ!聞こえてる??』『この世界は、なんか違う!』


    『ウタァ!!!』


    ぬいぐるみ姿の観客たちが必死で声を上げるが、『トットムジカ』の上で歌い続けるウタには届かない。


    さらに、ライブ会場を覆っていた海水がかき消えていくと同時に、市街地や城までがまるで砂のように崩れ始めた。



    ウソップ「エレジアが……消えていく!?」

  • 135スレ主23/03/08(水) 01:36:41

    今日の更新はここまで。次回やっと増援が!

    そしてアマプラでREDの配信始まってますね。入会済みなので非常にありがたい
    劇場へは何度も足を運んでますがトットムジカの第一→第二の切り替わりタイミングだけ分かんなかったので
    配信で見直して次の構成の参考にします

  • 136二次元好きの匿名さん23/03/08(水) 08:11:36

    保守

  • 137保守だ23/03/08(水) 12:12:57

    レッド見て二次創作を見るループが始まった...

  • 138二次元好きの匿名さん23/03/08(水) 21:08:14


    “ウタウタの世界”を構成していたすべての要素が崩れ、砂になり、魔王の身体へ“戻ってゆく”。


    それはまるで、『トットムジカ』にすべての力を与えようとしているかのようだった。


    さらに音符兵たちが王を守る騎士の如く、邪魔者を排除しようと襲い掛かって来る。


    サンジが蹴撃で退け、フランキーが剛拳を振るい、ゾロが剣圧で疾風を起こして薙ぎ払った。



    そのまま『トットムジカ』の鍵盤のような腕を駆け上がり、次々に音符兵を蹴散らしていく。


    ブルックとヘルメッポがその後に続き、正面ではブリュレの鏡の中から現れたオーブンが熱風拳(ヒートデナッシ)をお見舞いする。


    ナミの使役するゼウスの雷がジンベエの技に絡みつき、凄まじい威力の正拳が炸裂するが、


    爆炎の中から現れた指先がまるで飴玉を転がすかのようにピン、とジンベエを弾いた。


    ジンベエ「ぬわっ!」


    ロビン「ジンベエ!」


    バウンドして飛んで行くジンベエの巨体をロビンのスパイダーネットが辛うじて捕らえる。


    ジンベエ「すまんな、助かったわい……。しかしなんてやつじゃ、攻撃がまるで通じとらん」

  • 139二次元好きの匿名さん23/03/08(水) 22:15:08

    ウソップ「同時攻撃しようにも音符兵が邪魔で近づけねェし、あの腕で攻撃を全部防いじまう」


    ウソップ「どうする!?」


    コビー「……危険ですが、ウタに直接ダメージを与えられれば……! ぼくたちが行きます!ブルーノさん!」


    ブルーノ「……片道切符だぞ!」


    ブルーノが小さな空気開扉(エアドア)を開き、コビーとベポとチョッパー、サニーくんを急いで中に押し込んだ。



    『トットムジカ』の頭頂部で歌い踊るウタの背後にドアが開くと、もつれ合うように飛び出た小さな軍団が襲い掛かる。


    チョッパー「毛皮強化(ガードポイント)!!」


    ブルーノ「はぁっ!」


    ベポ「アーイーーッ!」


    コビー「覚悟ーッ!!」

  • 140二次元好きの匿名さん23/03/08(水) 22:48:17

    ウタの背中から生えた黒い翼が難なく攻撃を弾き、羽ばたき一つで四人をまとめて吹き飛ばす。


    「うわっ!」「がっ!」「ぐうっ!」「ギャッ!」


    しかし、攻撃はこれで終わりではなかった。


    サニーくん「サニィーーーッ!!!」



    ズドンッ!


    最後に飛び出したサニーくんの口がぱかっと開き、ミニガオン砲を放った。


    ウタの眼前で爆発が巻き起こり、周囲が煙幕に覆われる。


    ウタ「…ッ、ゲホっ!」



    まともに煙を浴びたウタはたまらず咳き込んだ。


    ゾロ「……歌声が止んだ!?」


    オーブン「風もおさまったぞ」


    ヘルメッポ「よし、今だ!!」

  • 141二次元好きの匿名さん23/03/08(水) 23:59:23

    このレスは削除されています

  • 142二次元好きの匿名さん23/03/09(木) 00:02:01

    しかし……


    サニーくん「!?」


    煙の中から伸びた左手がサニーくんの胴体をガッと掴んだ。


    ウタ「……やってくれたね」



    周囲が徐々に晴れていくと、一同の目にサニーくんを片手で捕えているウタの姿が映る。


    ナミ「サニー!?」


    コビー「サニーさん!」


    吹き飛ばされて転がり落ちた四人はブルックやフランキーに回収されたが、再びあの場所まで行く術(すべ)がない。


    なぜなら、



    ギリャャャャャァァァァl!!!


    『トットムジカ』が吼え、活動を再開したからだ。


    鍵盤の手足が2本から4本に増え、巨体はさらに膨れ上がり山一つほどの大きさになっている。


    道化師のような風貌の口元に牙が生え、見上げる人間をあざ笑うように大きな顎を開いていた。

  • 143二次元好きの匿名さん23/03/09(木) 00:27:08

    喉の調子を取り戻したウタが左手に力を籠めると、黒い音符が現れサニーくんにまとわりついていく。


    サニーくん「サ、サニィ……」


    黒い音符まみれになったサニーくんの手足は本物のぬいぐるみと同じように動かせなくなってしまった。


    フランキー「やめろ! サニーを離せェ!」



    “風来噴射(クー・ド・プー)”で飛び上がったフランキーが“ストロング右(ライト)”を伸ばすが、『トットムジカ』の腕に弾かれてしまう。


    ウタ「これで悪いことはできなくなったでしょ?」


    ウタ「大丈夫、あなたもちゃんと“新時代”に連れて行ってあげる……」


    動かなくなったサニーくんを腕に抱え、もう一度唄おうと口を開いたときだった。



    うおおおおおおおお!!!!!

  • 144二次元好きの匿名さん23/03/09(木) 01:50:43

    漆黒に覆われた天(そら)から声が響いた。


    流れ星のような光が一筋、『トットムジカ』めがけて降ってくる。


    風をまとったそれは一人の人間の形をしていた。


    ルフィ「おおおおおおおおああああああああ!!!!!」


    声に気づいた『トットムジカ』が落下してくるルフィに向かって大きな両腕を伸ばそうとする。


    ザン!


    しかし、その腕は後方から放たれた赤い斬撃によって阻まれた。


    ルフィは指先を咥えて大きく息を吹き込み、膨れ上がった巨大拳を勢いのままに打ち下ろす。


    ルフィ「"象銃(エレファント・ガン)”!!」



    ドォン!!

  • 145二次元好きの匿名さん23/03/09(木) 01:53:05

    『トットムジカ』の脳天に拳が直撃する。


    ダメージこそ与えられていないが振動が頭部全体に伝わり、サニーくんを抱えたウタの身体がわずかに浮かび上がった。


    ルフィ「ふんっ!」


    その隙を見逃さずルフィは反対の腕を長く伸ばし、サニーくんごとウタをぐるぐる巻きにしてしまう。


    ウタ「えっ?」


    ルフィ「おれの仲間を……返してもらうぞ!!」


    そしてそのまま、ルフィは『トットムジカ』の上から飛び降りた。ウタを道連れにして。


    ウタ「きゃああああああああっ!!」


  • 146二次元好きの匿名さん23/03/09(木) 02:10:32

    今日の更新はここまで
    かっこいい合流の仕方難しい…!でも空から降ってくるのはお約束なのでやりたかった(満足)

  • 147二次元好きの匿名さん23/03/09(木) 05:17:33

    保守

  • 148二次元好きの匿名さん23/03/09(木) 12:25:49

    >>145

    いい演出

  • 149保守だ23/03/09(木) 13:24:56

    >>140

    これってガオン砲だったんだ

  • 150スレ主23/03/09(木) 20:35:37

    >>149

    JUMP j BOOKS版ノベライスだとガオン砲、みらい文庫では描写なしでした

    なお実際はどう見ても尻尾から爆発してます

  • 151二次元好きの匿名さん23/03/09(木) 20:41:24

    墜落しながら上がる悲鳴にお構いなしに、ルフィはゴムの身体で着地するとボヨン、と跳ねた。


    腕の中にいるサニーくんを取り返してぽいっとウタを放り出すと、離れた場所へ再着地して急いで音符を手で払っていく。


    ルフィ「サニー、サニーしっかりしろ!おい!」


    サニーくん「……サ、サニィ……サニー!」



    音符が取れたサニーくんはぷるぷると全身を震わせたあと、元気に片手を上げた。


    ルフィ「よかった……!」



    ウタ「いたた……なんなの……?」


    放り出されたウタが腰をさすりながら起き上がると、クラゲ海賊団たちが周囲を取り囲んでいた。


    エボシ「さあて、大人しくしてもらおうじゃねェか……ウタちゃん」

  • 152二次元好きの匿名さん23/03/09(木) 23:12:44


    ウソップ「ルフィー! 遅せェじゃねーかコノヤロ~!」


    いの一番に駆け寄ったウソップが飛びついてがしっと肩を組む。


    難なく受け止めたルフィは集まった仲間たちを見回して笑顔を向けた。


    ルフィ「悪ィ、なんか変なトコに落ちちまってさ。みんな無事か?」


    ゾロ「ああ。こっちは一足先におっぱじめてたところだ」


    顎をしゃくって示す先にはこちらに向かって腕を伸ばす『トットムジカ』が。


    オーブンが“熱風拳(ヒートデナッシ)”で弾こうと試みるも、質量を増した鍵盤が圧し潰すように襲い掛かり、距離を取らざるを得なかった。


    オーブン「おい!感動の再会は後にしろ!」


    ルフィ「あいつの倒し方は?」


    ロビン「『トットムジカ』はこちらと現実世界との同時攻撃でしか倒せないの。現実ではおそらく海軍が攻撃を仕掛けているはずよ」


    ルフィ「うっし、じゃあこっちからはずっと殴ってりゃいいんだな!」

  • 153二次元好きの匿名さん23/03/09(木) 23:23:23

    このレスは削除されています

  • 154再投稿23/03/09(木) 23:25:08


    コビー「やはりみなさん同じことを考えるんですね……」


    バルトロメオ「くゥ~っ、麦わらの一味のみなさんもルフィ先輩もさすがだべ!」


    ルフィ「おう、ロメ男、お前も来てたんだな」


    遠巻きに見ながら感涙するバルトロメオに気づいたルフィが二カッと笑って手を振る。


    バルトロメオ「ファファファ、ファンサ!? ありがたき幸せだべ~~!!」



    さらに滂沱の涙を流すバルトロメオの背後で、突然それは起こった。


    「ぐわっ!」「があっ!」

  • 155二次元好きの匿名さん23/03/10(金) 01:30:40

    拘束しようと手を伸ばしたクラゲ海賊団は、ウタによって生み出された音符兵にまとめて弾き飛ばされた。


    槍を構えた音符兵に護衛される中、ウタがゆっくりと立ち上がる。


    ロー「…っ! やつに唄わせるな!“ROOM”!」


    唇の動きにいち早く気づいたローが“オペオペの実”の能力を展開した。


    ロー「“シャンブルズ”!」



    コビー「うわっ!」


    最速でウタとコビーの位置を入れ替えると、状況を察したバルトロメオが急いで印を結ぶ。


    バルトロメオ「“バリアボール”!!“サウンド”!!!」


    黄金のバリアが二人の周囲を覆うと、海賊たちを攻撃していた音符兵は次々と姿を消していった。


    バルトロメオ「ウタ様! これで歌声は外に届かねえべ!」

  • 156二次元好きの匿名さん23/03/10(金) 02:18:29

    「よっしゃあ!」「やったぜ!」「ざまあみろ!」


    歓声を上げた海賊たちは、残るは『トットムジカ』だけだと離れていった。


    バリア内のバルトロメオは油断なく警戒する。


    あの魔王がウタを奪いに来るかもしれない。


    逆にバリアの中のウタが激しく抵抗するかもしれない。


    しかし……


    ウタは、その場でただ茫然と立ち尽くすのみだった。


    彼女は見てしまったのだ。


    位置を変えられたことで偶然視界に入った、『トットムジカ』の背中側にいる――彼らの姿を。




    ――シャン……クス。みんな……

  • 157二次元好きの匿名さん23/03/10(金) 02:46:21

    ――アハハハハッ!アハハハハ!!アハハハハハ!!!


    ナミ「!?なに?」


    ロビン「この声……まさかバリアの中から!?」



    聴こえないはずの声が全員の耳に届いてしまっている。


    耳を塞いでも、バリアで閉じても、まるで空間全体に降り注ぐかのようにあちこちでウタの声が反響している。


    ウソップ「これってまさか……ライブの時と同じ……!?」

  • 158二次元好きの匿名さん23/03/10(金) 02:48:49


    ――いたんだ! ベックもルウもホンゴウさんもヤソップもガブもパンチもモンスターもスネイクもライムも!シャンクスも!!


    ――私の中にずっと!


    ――だから来ないんだ!ずっと面影ばかり追い求めてるから……私が愚か者だから!


    ――だから捨てられたんだ!!




    ブルック「……気を付けてください! 何か来ます!」




    《ᚷᚨᚺ ᛉᚨᚾ ᛏᚨᚲ ᚷᚨᚺ ᛉᚨᚾ ᛏᚨᛏ ᛏᚨᛏ ᛒᚱᚨᚲ》

    gah zak tak gah zak tat tat braaaaak!

  • 159二次元好きの匿名さん23/03/10(金) 03:13:51


    《ᚷᚨᚺ ᛉᚨᚾ ᛏᚨᚲ ᚷᚨᚺ ᛉᚨᚾ ᛏᚨᛏ ᛏᚨᛏ ᛒᚱᚨᚲ》

    gah zak tak gah zak tat tat braaaaaaaaaak!


    呪い(まじない)いのような祝詞を唱えると、ウタの身体が漆黒の音符に覆われていく。


    無数の音符は大きな渦を作り、先程見たのと同じように巨大な何かを形成していった。



    同時に、『トットムジカ』にも変化が訪れる。


    手足が6本に増え、鋭い黄金の爪が生じ、背中には漆黒の大きな翼が現れて宙に羽ばたいた。


    巨躯はは二倍、三倍と増大し、今まで見たこともない大きさに膨れ上がっている。


    頭上の帽子は王冠となり二匹の竜の頭を従えて、破壊の魔王たる圧倒的な姿をもって世界に君臨していた。



    コビー「なんですか、これ……」


    ぬいぐるみの小さな身体でコビーは慄く。



    そこには――『トットムジカ』が2体、存在していた。

  • 160スレ主23/03/10(金) 03:27:22

    今日の更新はここまで
    ロメ男は無事です。無事です!バリア壊す描写をうっかり入れ忘れました
    次回ちょっと補足します

  • 161二次元好きの匿名さん23/03/10(金) 08:16:37

    保守

  • 162保守だ23/03/10(金) 13:02:07

    >>150

    情報どうも

  • 163二次元好きの匿名さん23/03/10(金) 20:19:16

    ギャア゙ア゙ア゙ア゙ア゙
    二体のトットケーキ!?!!

  • 164二次元好きの匿名さん23/03/10(金) 20:49:02

    バルトロメオは決して油断していなかった。


    しかしバリアを維持するためとはいえ、ウタへ直接攻撃しなかったことは事実。


    その間にウタは何かに気づいたように怯え、戸惑い、両手で顔を覆うと震え出した。


    ……そして、次の瞬間には顔を上げて笑い出したのだ。



    ――アハハハハッ!アハハハハ!!アハハハハハ!!!




    バルトロメオ「ウ……ウタ様!?」


    歌声でもないのにバリアが音波でビリビリと振動する。


    嫌な予感にバリアの強度を高めようとしたところで、それは起こった。



    《ᚷᚨᚺ ᛉᚨᚾ ᛏᚨᚲ ᚷᚨᚺ ᛉᚨᚾ ᛏᚨᛏ ᛏᚨᛏ ᛒᚱᚨᚲ》


    gah zak tak gah zak tat tat braaaaak!


    バリィィン!!


    バリア全体に大きな亀裂がピシピシと走ったかと思うと、粉々に砕けてしまった。


    バルトロメオ「おれの……完全バリアが……」

  • 165二次元好きの匿名さん23/03/10(金) 21:26:05

    このレスは削除されています

  • 166二次元好きの匿名さん23/03/10(金) 21:28:10

    “無敵”のバリアを“無敵”の魔王の概念が上書きしたのだ。


    呆然とするバルトロメオの前で漆黒の翼を羽ばたかせて飛び立ったウタは、黒い渦に飲み込まれながら高らかに歌声を上げた。


    そして――



    今、2体の『トットムジカ』がルフィたちの目の前にいた。


    オーブン「なんだこれは! 魔王が増えるなんて聞いてないぞ!」


    ブルーノ「おい、こんなのとどうやって戦うんだ……!」


    フランキー「お前らとりあえず散開しろ!散れ! 囲まれるとヤバいことになるぞ!」


    フランキーの声でオーブンとクラゲ海賊団はバラバラの方向に走った。しかし、


    『トットムジカ』の巨大な羽ばたき一つで凄まじい旋風が巻き起こり、吹き飛ばされて一箇所に集められてしまう。


    折しもそこは、2体のトットムジカが向かい合う絶好の挟み撃ちの場所だった。

  • 167二次元好きの匿名さん23/03/11(土) 00:42:25

    ブリュレ「ひ、避難するやつはこっちへおいで!」


    大急ぎでブリュレが鏡を出し、手下や巻き込まれた観客たちを吸い込んでいく。


    間一髪、『トットムジカ』が放つビームの集中砲火から逃れることができた。


    他の面子も大量に生み出された音符兵や羽ばたきの暴風に行く手を阻まれている。


    ヘルメッポ「なんてこった……現実世界だけじゃなく、こっちでも同時攻撃しなきゃならないのか!?」



    ナミ「もしかして現実にも2体……? きゃっ!この…! きっと海軍だけじゃ手が足りないわ!」



    飛来する音符兵の槍攻撃を避けつつナミがお返しにサンダーブリード=テンポをお見舞いする。


    ロビン「……ウタは今、自分の生命力をを削って魔王とウタワールドを維持しているわ。こんなやり方をしたら、命がもたない!」


    ウソップ「……だったらさっさと『トットムジカ』を倒してプリンセス・ウタを解放しなくちゃな。おい、チョッパー!」


    吹き飛ばされないようゴードンやミニベポたちと固まっていたチョッパーが、ウソップの呼びかけにぎょっとする。


    ウソップ「“アレ”をやるぞ!」

  • 168スレ主23/03/11(土) 00:44:15

    ちょっと少ないですが今日の更新はここまで
    明日の分書き溜めます

  • 169二次元好きの匿名さん23/03/11(土) 11:18:45

    保守

  • 170保守だ23/03/11(土) 18:26:29

    クソ楽譜が増えてる...

  • 171二次元好きの匿名さん23/03/11(土) 20:38:35

    ウソップ「おーい! みんなちょっとこっち来い!」

    音符兵に反撃していたルフィ、サンジ、ゾロ達もウソップの呼びかけに集まってきた。

    チョッパー「……どうしてもやるのか?」

    ウソップ「ああ! だからチョッパー、預けてたやつを出してくれ!」

    チョッパー「……本当に本当の特別なんだからな!」

    そう言ってチョッパーは帽子を外し、中から布包みを取り出した。

    包みを解いて現れたのは、ピンク色の耳を持つ小さなキノコの束。

    ルフィ「なんだこれ?」

    ウソップ「こいつはネズキノコだ!」

    ――
    ――――
    ――――――

  • 172二次元好きの匿名さん23/03/11(土) 20:53:03

    ――回想・ウソップの記憶


    ゾロ「ネズキノコ?」


    ウソップ「ああ。ゴードンさんが言うところによると、こいつは“ウタウタの世界”で“ある効果”が出るそうなんだ」



    ゴードン「うむ。あれは二か月ほど前のことだった……」


    ウソップ「ゴードンさん、話は手短に!」


    ゴードン「あ、ああ……ウタが部屋の中でぐるぐると歩き回っていたので、声を掛けたんだが一向に返事がなくてね……」


    ゴードン「かと思えばいきなりベッドに倒れて驚いたんだが、すぐに起きたウタが、自分が何をしていたかとしきりに尋ねてきたんだ」


    ゴードン「聞けば、ウタワールドの中で実験をしていたと言っていた」


    コビー「実験を?」


    ゴードン「ああ。眠れなくなるキノコを夢の中で食べたらどうなるか、ということだったが……。その時は、あまり危険なことをしないようにと叱った話を、ウソップくんにしたんだ」


    ブルーノ「……まさか秘策というのはそれか?」


    ウソップ「その通り!現実で眠ったままのおれたちを動かせるなら、同時攻撃のチャンスはある!」

  • 173二次元好きの匿名さん23/03/11(土) 21:08:55

    フランキー「なんだ、ネズキノコで目を覚ませるんじゃねェのかよ」


    コビー「それに現実の身体はウタに支配されているはずですよ?」


    ウソップ「それも破れるかもしんねェだろ? 何せ自分の身体だ、他人が動かすよりずっと言うこときいてくれるはずさ!」


    ロビン「ウソップ……残念だけどそれだけじゃ根拠が足りないわ」


    ウソップ「おれもそれは分かってる! だからこれは、色々試してダメだった時の秘策なんだよ」


    サンジ「調理もできねェ毒キノコに頼らなきゃならんとは……微か過ぎる希望だな」



    ゾロ「おう、ウソップが信用ならねェってのかこの素敵マユゲ」


    サンジ「なんだとクソマリモ!! ってこの流れ前にやったな……?」

  • 174二次元好きの匿名さん23/03/11(土) 21:31:52


    チョッパー「だだだ駄目だ!!ネズキノコには覚醒作用の他に毒性もあるんだぞ! 秘策の前にそれは医者としてちょっと許可はできない!」


    ウソップ「そこを何とか!頼むよ~チョッパー様~」


    チョッパー「いやでも……うう……トラ男ォ~~」


    ロー「諦めろトニー屋。どの道夢の中だ。人体への影響なんざ考える必要はない」


    ウソップはあちこち回って摘んできた小さなネズキノコの山を布で包む。


    ウソップ「そんなに心配なら、こいつはチョッパーが預かっててくれよ。必要になったら言うからさ」


    チョッパー「う~~~ん……わかった!そこまで言うなら預かる! けど、本当に必要になるまでは出さないからな!」


    ウソップ「おう!」


    ゾロ「やることは決まったな」


    ――――――

    ――――

    ――

  • 175二次元好きの匿名さん23/03/11(土) 23:02:27

    ウソップ「かくかくしかじか、というわけでこいつを食べりゃ現実のおれたちを動かせるかもしれないって話だ!」


    オーブン「前にも聞いたが、本当に眉唾物の話だな……」


    ロー「それでも何もしないよりマシだ。あのウタの命が尽きる前に『トットムジカ』を倒さなきゃおれたちは出られない」


    ブルック「そうですね……それに、彼女に時間はもう……」


    ネズキノコを囲んで悩む一同。


    その横合いからにゅっと手が伸びて、キノコをひとつ摘まむとひょいとルフィが口に放り込んだ。


    ナミ「ルフィ!?」



    ルフィ「よふわはんねェへろ、うほっふがいうなはしんひへみふふゃふぇーはろ(よくわかんねェけど、ウソップが言うなら信じてみるっきゃねーだろ)……うげェまじィ……」


    ゴクン、と飲み込んであまりのまずさに顔を歪めるルフィ。


    チョッパー「全部食べる必要はないぞ!ほんのひと齧りでいいんだ!」


    ルフィ「あーマズかった。よし!じゃあ同時攻撃ができるか、やってみっか!」


    そう言うと、ドン!と“ギア2”を使って加速し、片方の『トットムジカ』に接近する。


    ウソップも慌ててキノコを飲み込み“黒カブト”を構えた。


    ウソップ「言い出しっぺのおれがビビってちゃ世話ないぜ! いくぞ!必殺“緑星”!!!」

  • 176二次元好きの匿名さん23/03/12(日) 00:05:06

    このレスは削除されています

  • 177再投稿23/03/12(日) 00:11:12


    ルフィ「“ゴムゴムの”ォ!!!“象銃乱打(エレファントガトリング)”!!!!」


    ルフィの放つ巨大な拳の乱打が、音符兵を蹴散らし突き進んでいく。


    同時にウソップの放った弾がもう片方の『トットムジカ』へ飛んで行くが、盾を構えた音符兵たちの密集陣形に阻まれてしまった。


    ウソップ「あっ!ちくしょう……」


    ウソップ「やっぱり音符兵をどうにかしないと遠距離攻撃は難しいか……!」


    フランキー「諦めんなウソップ! 道ならおれたちが作ってやるぜ!」


    ジンベエ「そうじゃ! 通じるまで何度でも撃てばいいんじゃ!」


    ネズキノコを齧ったフランキーやジンベエ、ゾロとサンジも援護に飛び出していく。


    ロビンやナミもいつでも攻撃できるように自身の武器を構えた。


    ルフィ「うおおおおお!!!!」



    音符兵の防衛を突破し、ルフィが『トットムジカ』に迫ろうという時だった。



    「手伝うか、ルフィ」

  • 178二次元好きの匿名さん23/03/12(日) 00:42:34

    声と共に紅い彗星が飛来し、もう片方の『トットムジカ』に攻撃を繰り出した。

    ドォン!

    ルフィが最後に打ち放った“象銃(エレファント・ガン)”と、巨大な斬撃が同時にヒットする。

    すると、双方の『トットムジカ』が体勢を崩しのけぞったのだ。

    ブルック「効きました!」

    コビー「現実世界と同時だったんだ!」

  • 179二次元好きの匿名さん23/03/12(日) 02:09:32


    同じ頃。


    [2体目の『トットムジカ』が!うわっ!うわあァァー!……ザーッ]


    海軍は大混乱に陥っていた。


    ただでさえ1体で手一杯のところに、新たな“2体目”が空間を割って現れたのだ。


    『トットムジカ』が作り出した力場はエレジア全土を包み込んで広がり、沖合の軍艦までも飲み込んでいく。



    飲み込まれた中は上も下も存在せず、軍艦は宙に浮いたまま『トットムジカ』の周囲を漂っていた。


    ボルサリーノ「こりゃァ……まずいかもしれないねェ」


    大量の音符兵が海兵の乗った船に近づこうとするのを光速移動しながら防ぐボルサリーノの額にも汗が浮かんでいた。


    少将以下の海兵たちが救護に回る中、彼らの護衛に飛び回っていれば疲労も覚える。


    イッショウ「ここは魔王を止めるのが先かもしれやせん」


    救助の指揮を執っていたイッショウは、身をひるがえして『トットムジカ』に迫った。

  • 180二次元好きの匿名さん23/03/12(日) 02:35:23


    イッショウ「"重力刀(ぐらびとう)”!!!“猛虎”!!!」


    イッショウの繰り出した横薙ぎの一撃が、2体の『トットムジカ』を同時に捉える。


    しかし、当たった瞬間に消えてしまい、無傷の魔王がそこに聳え立つばかりだった。



    カリファ「聞こえますか!ウタが召喚した『トットムジカ』とは別に、ウタと一体化した『トットムジカ』が新たに出現! 海軍は防衛で手一杯です」


    一方その頃、エレジアの水道橋の上でカリファは吹き飛ばされないようにしがみつきながら電伝虫に報告を入れていた。


    カリファ「至急救援を……えっ? わ、わかりました」


    返ってきた指示に驚きながらも、カリファは乱れた髪を整えて仕事道具を入れた鞄を開いた。


    カリファ「風向きは追い風、距離約20メートル、風速は……」


    カチャカチャと組み立てたのは銃の形をした信号弾の発射装置だ。


    用意したものを薬莢に詰めて装填し、狙いを定めて発射する。


    パァン


    撃った弾は『トットムジカ』からは逸れて、ライブ会場のステージに向かって飛んで行く。


    カリファ「……尋問用の覚醒薬なんて、何に使うの?」

  • 181二次元好きの匿名さん23/03/12(日) 02:44:18

    カリファの疑問を他所に、ステージの真上で信号弾は弾けた。


    もくもくと煙が上がる中、小さなきらきらとした粒が観客席に降り注いでいく。


    それは、ネズキノコの胞子だった。



    ステージにはウタに操られたままの海賊たちが手持ち無沙汰にふらふらと身体を揺らしていた。


    近づけば攻撃してくるが離れれば無害のため、海兵は彼らを放置していたのだ。


    そこに胞子がきらきら降ってくる。



    寝息とともに胞子を吸い込んだ海賊たちの動きがぴたりと静止した。


    次の瞬間、起こったことに驚きを隠せずカリファは口を開く。


    カリファ「なっ…!海賊たちが、海賊たちが『トットムジカ』に攻撃を開始しました!」

  • 182二次元好きの匿名さん23/03/12(日) 03:03:59

    “麦わらのルフィ”が他の海賊に先立ち、魔王に急接近する。


    拳を“ゴムゴムの実”の能力で巨大化させると、武装色に染まった剛腕の連打を『トットムジカ』に向けて繰り出した。


    しかし、一つとして効果がない。


    無駄に思える攻撃が尽きかけた時、遠方から何か飛んできた。


    「三叉槍“土竜(もぐら)”!!」


    飛来した槍と“麦わら”の攻撃が同時に魔王に届く。


    ドォン!


    瞬間、魔王は体勢を崩し大きくのけぞった。


    ギャアアアァァァ!


    イッショウ「攻撃が効いた!?まさか……」


  • 183二次元好きの匿名さん23/03/12(日) 03:06:18

    ボルサリーノ「あれェ~?珍しい顔がいるねェ」



    大将たちは攻撃が来た方向を見て驚く。


    そこには“ビッグ・マム海賊団”の最強と謳われる将星・“カタクリ”が立っていた。


    モモンガ「ビッグ・マムの息子が何の用だ!」



    モモンガ中将の呼びかけに、カタクリは毅然と答える。


    カタクリ「妹を、家族を助けに来た!!」

  • 184スレ主23/03/12(日) 03:11:22

    今日の更新はここまで
    カタクリお兄ちゃん現着!そして遅刻してる人らがいますね…
    実はネズキノコの毒性を極限まで弱くしたのはこの展開のためでした
    悪者にされがちなネズキノコですが、毒薬変じて薬となる。たまには活躍していいじゃんと思いまして

  • 185二次元好きの匿名さん23/03/12(日) 10:26:31

  • 186保守だ23/03/12(日) 12:32:57

    >>184

    ネズキノコって食いまくったら死ぬんじゃなかたっけ

  • 187映画本編ではそうですね23/03/12(日) 20:06:47

    カタクリは騒ぐ海軍を他所にステージに降り立つと、立ったまま寝ているブリュレに近づいた。


    カタクリ「ブリュレ! おい、ブリュレ!」


    途端に鋭い蹴りが飛び出すが、難なく躱しながら妹に向かってカタクリは呼びかけ続ける。


    カタクリ「ブリュレ……! オーブンお前がついていながら何事だ!」


    見聞色で覗いてみても曖昧な先の事象しか見えない。つまり、未来がまだ確定していないということだ。


    しかもどうやら自分はあの魔王と戦わねばならないらしい。一体どういうことだ!?


  • 188二次元好きの匿名さん23/03/13(月) 03:20:06

    『トットムジカ』がのけぞったのを見て、ルフィはさらに攻撃をしようと拳を繰り出した。しかし、


    ルフィ「ぐあっ!」


    死角から伸びた鍵盤の腕に殴られて後方へ吹き飛ばされてしまう。


    辛うじて制動をかけて踏みとどまると、前方からのんきな声が降りてきた。


    シャンクス「おいおい、あれだけ大口を叩いておいてその程度か?」



    ラッキー・ルウ「お頭だってさっきの一撃、大したことなかっただろ」


    シャンクス「うっせェ、久しぶりの戦闘なんだ。肩慣らしくらいさせろ」

  • 189二次元好きの匿名さん23/03/13(月) 03:22:55


    ナミ「あ、あんたたちは……?」


    驚くナミに銃を肩に担いだベックマンがウィンクで答える。



    ベックマン「詳細は省くが、加勢に来たと言ったら信じるか? この坊主とはさっき知り合った仲だ」


    サンジ「増援か? なんだか知らんが助かったぜ!」


    フランキー「あいつどっかで見覚えが……?」


    年若いシャンクスを見てフランキーは首をひねっている。

  • 190二次元好きの匿名さん23/03/13(月) 03:31:24

    このレスは削除されています

  • 191二次元好きの匿名さん23/03/13(月) 03:34:10


    ルフィ「……いいのか?」


    じっと睨むルフィに気づいたシャンクスは笑って麦わら帽子を目深に被る。


    シャンクス「おれたちがいた“あの場所”も魔王に飲み込まれちまった。だから出てこれたんだが……」


    シャンクス「あいつの心に戻れないってことは、そういうことなんだろう。だったら勝手にやってやるさ」


    シャンクス「それに……」


    シャンクス「娘の窮地に駆けつけたくなるのが、親ってものだろう?」


  • 192二次元好きの匿名さん23/03/13(月) 03:44:59


    ヤソップ「しっかし、夢と現実の同時攻撃が必要たァ驚いたぜ。知ってたらあの時どうにかできてたかなァ」


    頭にバンダナを巻いた男が腕組みする姿をウソップは思わず二度見した。


    ウソップ「……親父? ウソだろどうしてこんなところに?!」


    ヤソップ「お?そこにいるのはもしや愛しの我が息子ウソップか? 大きくなったなァ!」


    ウソップ「親父~!……ってそんな軽く挨拶されてたまるかァ!!今までどこにいやがった!?」



    ヤソップ「はっはっは、すまねェが感動の再会は“本物のおれ”とやってくれ」


    ヤソップ「今のおれたちの最優先は、『トットムジカ』を倒すことだ。分かるか?」


    ウソップ「お、おう……」

  • 193二次元好きの匿名さん23/03/13(月) 03:51:38

    ヤソップに諭され落ち着きを取り戻したウソップは、軽く深呼吸して戦闘態勢に戻った。


    ヤソップ「十三年前にも相手したが『トットムジカ』はあの手足が曲者だ。あれをどうにか押さえつけてから本体を叩くしかねェ」


    ウソップ「同時攻撃の連携が必要ってことだな。よし! おーいルフィー!」


    振り返ったルフィに向かってぐっと親指を立てる。


    意図を理解したルフィは頷き、仲間たちに呼びかけた。


    ルフィ「野郎ども!今からおれたちは“偽赤髪海賊団”と協力してあいつを倒す!気合入れろォ!!」



    シャンクス「偽者でもやりようはあるさ。野郎ども、こっちも気合いれろォ!!」


    『おう!!!』

  • 194スレ主23/03/13(月) 04:02:24

    今日の更新はここまで
    どこで切るか迷ってたらこんな時間に。現実との連携まで持っていきたかった…
    次回の更新で次スレに移行します

  • 195二次元好きの匿名さん23/03/13(月) 08:08:45

    保守

  • 196保守だ23/03/13(月) 10:07:27

    熱い展開になってきました

  • 197二次元好きの匿名さん23/03/13(月) 17:55:56

    頑張れ

  • 198スレ主23/03/13(月) 20:24:11
  • 199二次元好きの匿名さん23/03/13(月) 23:14:31

    次スレ乙

  • 200二次元好きの匿名さん23/03/13(月) 23:40:38

    200‼︎
    次スレに行ってきます。

オススメ

このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています