ムカつく...ぽっと出のくせに調子に乗って…そうだ……!Part22

  • 1二次元好きの匿名さん23/02/07(火) 19:22:55

    オグリキャップとちゃん、さらにはちゃんの周りのあれやこれやを妄想して楽しむスレです。


    もっともっと困らせてやりましょう。

  • 2二次元好きの匿名さん23/02/07(火) 19:23:08

    過去スレ一覧

    ムカつく...ぽっと出のくせに調子に乗って...そうだ......!|あにまん掲示板大量のにんじんを押し付けてやる!https://bbs.animanch.com/img/243226/595いくら良く食べると言ってもこの量は迷惑でしょ!これで体調でも崩せばいいのよ!bbs.animanch.com
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  • 3二次元好きの匿名さん23/02/07(火) 19:24:34

    紹介スレ(裏スレ)なんだ

    こっちでは創作の質を高めたり関係あることを雑談したりする場所だったんだ

    初めての人は暇なときにでも見て欲しいんだ


    あれは「ムカつく...ぽっと出のくせに調子に乗って...そうだ......!」スレと言って|あにまん掲示板このスレから概念化してPart化したスレなんだhttps://bbs.animanch.com/board/255217/私にツンデレ(デレデレ)な後輩のイチちゃんの妄想を書き込むスレなんだとくにルー…bbs.animanch.com
    あれは「ムカつく...ぽっと出のくせに調子に乗って...そうだ......!」スレと言って Part2|あにまん掲示板このスレから概念化してPart化したスレなんだhttps://bbs.animanch.com/board/255217/私にツンデレ(デレデレ)な後輩のイチちゃんの妄想を書き込むスレなんだとくにルー…bbs.animanch.com
    あれは「ムカつく...ぽっと出のくせに調子に乗って...そうだ......!」スレと言って 2.5|あにまん掲示板このスレから概念化してPart化したスレなんだhttps://bbs.animanch.com/board/255217/私にツンデレ(デレデレ)な後輩のイチちゃんの妄想を書き込むスレなんだとくにルー…bbs.animanch.com
    あれは「ムカつく...ぽっと出のくせに調子に乗って...そうだ......!」スレと言って 3|あにまん掲示板このスレから概念化してPart化したスレなんだhttps://bbs.animanch.com/board/255217/私にツンデレ(デレデレ)な後輩のイチちゃんの妄想を書き込むスレなんだとくにルー…bbs.animanch.com
    あれは「ムカつく...ぽっと出のくせに調子に乗って...そうだ......!」スレと言って 4|あにまん掲示板このスレの紹介スレみたいな立ち位置で分裂してPart化したスレなんだhttps://bbs.animanch.com/board/255217/私にツンデレ(デレデレ)な後輩のイチちゃんの妄想を書き込…bbs.animanch.com
  • 4二次元好きの匿名さん23/02/07(火) 19:25:01
  • 5二次元好きの匿名さん23/02/07(火) 19:25:44

    1ちゃんの概要
    名前:レスアンカーワン(仮)
    愛称:イチちゃん
    親友:オグリキャップ(本人は否定)
    後はふんわり

  • 6二次元好きの匿名さん23/02/07(火) 19:26:00

    姿かたちもふんわり

  • 7二次元好きの匿名さん23/02/07(火) 19:26:21

    110ちゃんの設定
    名前:エイジセレモニー(仮) アダルトデイズ(仮)
    愛称:モニー または セレちゃん
    ルームメイト:レスアンカーワン
    あとはふんわり

  • 8二次元好きの匿名さん23/02/07(火) 19:26:35

    イチちゃんのお母さん
    あとはふんわり

  • 9二次元好きの匿名さん23/02/07(火) 19:26:48

    wikiが開設されたんだ


    過去スレを辿って過去絵等を見るのが面倒な時はここを使うと良いんだ。

    編集のお手伝いをしてくれる方を常に募集しているんだ。特にSS系

    resanchorone @ ウィキ【7/18更新】レスアンカーワンwikiへようこそ https://bbs.animanch.com/board/255217/ を発端に、ウマ娘世界に爆誕した>>1ちゃん(仮名:レスアンカーワン)のまと...w.atwiki.jp
  • 10二次元好きの匿名さん23/02/07(火) 19:27:01

    ◇ルールのようなもの◇


    前述した通りここはオグリキャップと>>1ちゃん、さらには>>1ちゃん周りのあれやこれやを妄想して楽しむスレなんだ

    あくまで楽しむ場なのであまりに直接的なセクシー表現・演出は自分の中だけに取っておいて欲しいんだ

    かといってあまりガチガチに縛ると表現が限られてしまうので、そこはあくまでも自由にというスタンスなんだ

    地産地消なら問題ないんだ

    紳士ルールというやつなんだ

    設定とかもふんわりなので、>>1ちゃんの名前はもちろん、関係性やレース成績なども貴方の思うがままなんだ

    そうしてあなたが生み出した概念や物語は何もにも代えがたい素晴らしいものなんだ

    他の人にも受け入れられるように配慮しつつ、そのうえで自分が楽しめるようにしていく、という流れなんだ

    Take it easyなんだ


    次スレは>>190に任せるんだ


    よろしくお願いするんだ

  • 11了船長23/02/07(火) 19:39:02

    建て乙です。もうすぐバレンタインですねえ

  • 12エスコンの人23/02/07(火) 19:43:04

    バレンタインネタ、この前の節分タマモニをちゃんとSSかしようか悩ましいですなあ

  • 13二次元好きの匿名さん23/02/07(火) 19:43:42

    おつおつなんだ
    ゾロ目なんだ

  • 14二次元好きの匿名さん23/02/07(火) 20:40:39

    乙なんだ バレンタインは生姜焼き

  • 15二次元好きの匿名さん23/02/07(火) 23:03:40

    前スレの>>196に素晴らしいイラストがあったんだ・・・

    夢じゃないよね?

  • 16エスコンの人23/02/07(火) 23:04:32

    Ace Combat Zero Soundtrack - Testimony 2

    タマモクロス


    生涯戦績 18戦9勝


    主な勝ち鞍 春秋天皇賞制覇(GⅠ)、宝塚記念(GⅠ)


    “白い稲妻”


    序盤こそなかなか勝利に恵まれてこなかったが、鳴尾記念(GⅢ)勝利を皮切りに破竹の連勝を重ね、“日本一のウマ娘”、“最強”の称号を手にした。


    秋シニアにおけるオグリキャップとの3番勝負は“最強の芦毛対決”として今なお語り継がれるほどの名勝負であり、名実ともに“芦毛の怪物”とって最初にして最強のライバルである。

  • 17エスコンの人23/02/07(火) 23:05:13

    オグリはうちが今まで見てきたウマ娘の中でもトップクラスに強いやつやった。
    それこそ、なんかの気まぐれに笠松でチラッとレースを覗いた時から他のやつとは一味も二味も違っとった。
    まあ、ウチも最初はおもろいヤツがおるな、くらいにしか思ってなかったんやけどな。

    せやけどそこからや。中央にきてレースを走るたんびにあいつの強さが目についた。とにかくべらぼうに強いんや。どんなレースであろうと全身全霊を尽くして走っとった。まさにレースの申し子。“怪物”なんてお上品なもんやない。本気もんの“化け物”やった。

    そんな化け物ウマ娘のそばにはいつもあの子がおった。
    そう、イチちゃんや。いつも怒ったり、笑ったり、顔赤うしたり、とにかく賑やかにな。
    気がつけば色んな奴が二人のことを見とった。レースを終える度、見守る視線が増えとったなあ。担当トレーナーもライバルもクラスメイトも、先輩後輩も問わず、挙句には食堂のおばちゃんや用務員のおっちゃんや二人のファンまでもや。

    みんな二人の漫才じみたやりとりや全力で走っとる姿を目に焼き付けようとしてた。
    ウチも━━もう少し見ていたかったんやけどなあ……。

  • 18エスコンの人23/02/07(火) 23:06:06

    ──知っとるか? ヒーローは3つに分けられる。

    誰かに勇気や希望をあたえる奴、誰よりも強い奴、常に誰かに支えてもらえる奴。
    この3つや。

    あいつは……、いや、あの二人は両方ともその資格を持っとる。

    オグリは言わずもがなやな。
    ひたすらに強くてその実力はトップクラス、いつも誰かがオグリに自分を重ねて応援しとる。それにイチちゃんをはじめに笠松の人たちや学園の連中、ファン達がいつだってあいつを支えてくれとる。あいつに声援を送っとる。
    文句なしでヒーローや。

  • 19エスコンの人23/02/07(火) 23:07:04

    一方でイチちゃんの方は、常に誰かに支えてもらえる点では当てはまる。でも、残り2つはどうか?

    お世辞にもオグリみたいに輝かしい戦績も持ち合わせとらんし、一目見て圧倒させられる程の走りも持ってない。
    でもな、イチちゃんの強さはそれじゃない。

    イチちゃんはな、とにかく我慢強いんや。根性を持っとる、それも生半可な根性やないド根性や。
    他のみんなが嫌になって投げ出してまうような状況でも、あの子は背負って前へ進む。
    たとえ100回、1000回転んでも、代わりに101回、1001回起き上がってまた走り出す子や。
    ━━何度も何度も転んで倒れてそれでも立ち上がって走るんや。
    度肝抜かれたでホンマ。

    心も体もボロボロになってなあ……。
    でも、そんな目に遭ってまで頑張り続ける姿がいつからかみんなの心の支えになっていったんや。
    みんながあの子みたいに頑張ろう、あの子に負けないように頑張ろうって。
    気がつけばみんな、あの子を応援しつつあの子に希望を見出してたんや。
    ━━ウチも含めて、な。

    ここまで聞けばもう納得したやろ?
    あの子は文句なしでヒーローや。
    おまけにあの二人はお互いがお互いにとってのヒーローや、ホンマお似合いな二人やで。

  • 20二次元好きの匿名さん23/02/07(火) 23:09:21

    ウワーッ!他称オグリ強火ファン!!

  • 21二次元好きの匿名さん23/02/07(火) 23:23:12

    タマが語り部だと妙な説得力ありますね…

  • 22二次元好きの匿名さん23/02/07(火) 23:24:39

    >>15

    (あれは過去に描いてくれた人のをコッソリ貼っただけなんだ…wikiへGO!なんだ)

  • 23エスコンの人23/02/07(火) 23:32:21

    前スレで危うくクリークママにされそうになったエスコンの人です。

    今回はめっちゃ難産だったんだ……。

  • 24二次元好きの匿名さん23/02/07(火) 23:42:17

    >>23

    とてもよかったぞ~

    エスコンゼロならタマはピクシーの立場なんだろうか

  • 25二次元好きの匿名さん23/02/08(水) 08:06:29

    >>23

    書いていただきありがとうございますなんだ!

  • 26二次元好きの匿名さん23/02/08(水) 12:36:52

    >>23

    投稿乙なんだ!

  • 27二次元好きの匿名さん23/02/08(水) 14:34:07

    ブラッキー ヤエノ タマで三人目かな?

  • 28二次元好きの匿名さん23/02/08(水) 19:01:48

    >>27

    し、シリウスシンボリ……

  • 29二次元好きの匿名さん23/02/08(水) 22:08:46

    最近wikiが充実してきたのでちょくちょく見させていただいてます・・・
    ・・・イチちゃんのかんたんレシピの鶏ステーキがマイブームなんだ

  • 30二次元好きの匿名さん23/02/08(水) 22:23:10

    (アイツ珍しく風邪ひいたらしいじゃない!熱に魘されてる間に勝利数で追い抜いてやるわ!……まあ一応見舞い行ってやるか……アイツ確か卵酒大丈夫だったわよね。お粥は叩いた梅干でも乗っけとくか)
    (あれ?)

  • 31二次元好きの匿名さん23/02/08(水) 23:46:42

    >>28

    !!!

    そうだったイチちゃんが気丈でシリウスがかっこよかったやつだ

    すまない…読み返してくる

  • 32二次元好きの匿名さん23/02/09(木) 06:22:36

    このレスは削除されています

  • 33二次元好きの匿名さん23/02/09(木) 06:25:04

    wikiの過去絵を資料にしようと思って遡っていると自分の絵が目に入って
    「え、ゲロへたじゃん」 声が出ました
    成長の証として受け取ろうと思ってたまには自分を褒めてみようと思いました

  • 34二次元好きの匿名さん23/02/09(木) 07:06:08

    このレスは削除されています

  • 35二次元好きの匿名さん23/02/09(木) 07:09:20

    このレスは削除されています

  • 36二次元好きの匿名さん23/02/09(木) 07:10:06

    こっちのイチちゃんも好き

    こういう描くのが難しいキャラデザっていつも作った人天才だなと思います

    (4回目)

  • 37二次元好きの匿名さん23/02/09(木) 07:12:17

    このレスは削除されています

  • 38二次元好きの匿名さん23/02/09(木) 07:17:53

    この大量の「このレスは削除されています」は紆余曲折の証です
    大目に見てくださいお願いしゃす

  • 39二次元好きの匿名さん23/02/09(木) 07:28:01

    このレスは削除されています

  • 40二次元好きの匿名さん23/02/09(木) 12:35:51

    ファイトなんだ!

  • 41二次元好きの匿名さん23/02/09(木) 12:48:52

    一瞬身構えちまったぜ。。。もっと描いて良いのよ

  • 42二次元好きの匿名さん23/02/09(木) 16:29:49

    オグリの事は呼び捨てにするのに
    自分は「先輩」呼びされるのがもやもやするタマと
    呼び捨てにするのが気恥ずかしくてできないモニーの
    タマモニというのはありますか?

  • 43二次元好きの匿名さん23/02/09(木) 16:33:23

    >>42

    ぜひとももう少し詳細をいただきたいですね(掛かり気味)

  • 44二次元好きの匿名さん23/02/09(木) 22:38:55

    >>43

    例えば


    「そういや、アンタもイチもオグリのことはオグリって呼ぶのに何でウチはタマ先輩なん?」

    「え?……何でって言われても。あ、やっぱり呼び捨ては不味いですか?」

    「ちゃう、ちゃう!ちょっと何でかなーって思っただけでな」


    「うーん、改めて言われると何でだろ……多分イチのせいかな」

    「イチの?」

    「イチのヤツ、オグリのこと最初から『オグリ』って呼び捨てだったんですよ、あたしもソレに釣られたのかな」

    「はあ成程な。イチに引っ張られたっちゅうことか」

    「多分ですけどね。あたし等だって誰彼構わず呼び捨てになんてしませんよ、オグリは特別ってだけです」


    「特別……モニの特別か」

    (なあモニ……その『特別』にウチは入ってないんか?)

    「……?何か言いました?」

    「いや、なんも」

    「そんなことより!なあモニ『先輩』のお願いひとつ聞いてくれへん?」

    「お願いですか?まあ、あたしにできる範囲なら」

    「なあに簡単なことや」


    「ウチのこと呼び捨てにして貰えん?」


    みたいなやつです!

    伝わりづらくて申し訳ありません!

  • 45二次元好きの匿名さん23/02/09(木) 23:04:45

    『先輩』、このチョコ——決して義理なんかじゃないです。
    だからこれからは、名前で呼んでいいですか?

  • 46二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 01:44:35

    もう既にできあがってる!?

    >>44

  • 47二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 02:44:35

    確かお風呂の後だった
    タマモ先輩の部屋に来てた時に、そう呟いた

    「なあモニちゃん」

    「なんすか」
    「いっぺんウチの名前言うてみてや」

  • 48二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 02:45:18

    「ええ…また藪から棒に…えー…タマモ先…輩?」
    「モニちゃんさあ、オグリのことは呼び捨てにしてるやんなぁ」
    「え?あーまあ、ハイ」
    「それやったらさ…なんでウチの事は呼び捨てにせえへんの?」
    「えっ」

    「…」
    なんか今ドキっとした…なんでだ…?

    「なんでって…そりゃあ先輩だからですよ」
    「ほなオグリはなんで呼び捨てなん?」
    「…うーん…ライバルの真ん前で言うのもアレなんスけど…あんまし先輩としての貫禄を感じないというか…」
    「あー…まあ…あいつ割とレース以外やとぼけーっとしとるトコはあるからなあ」
    「まあ、レースの中継とかみてるとやっぱりG1ウマ娘なんだなって感じではあるんですけどね」

  • 49二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 02:46:22

    「ほーん…それやったらウチのことも呼び捨てにしてみいや」
    「それやったらって…なんでですか」
    「あー…まあウチのことはええねん…そうそう気になるっちゅうだけやし」
    「はあ…まあそれなら」

    「…タマ…」
    待て、なんだこの気っ恥ずかしい感じは

    「も……く…ロス…」

    「…いやなんでフルネームやねん、ちゃんとタマって呼んでみい」

    「なんだ…!?なんでだ…!?いや違う、よし、ちゃんと言うぞ、ちゃんと言うぞ!」

    はあ~顔あっつ!マジで何でだ…!

  • 50二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 02:47:41

    「……た…タマ…!」

    「……お、おう…」

    「…なんスかその反応…なんで顔赤くしてんスか!」
    「…モニちゃんこそ真っ赤っかやんか」
    「これはっ…よくわからんですけども…」
    「とにかくやな…まあこれからはそっちのが違和感無いっちゅうか」
    「はぁー?いや、ムリですよ…」
    「なんでや、今言えてたやんか」
    「いや…それは…むぅ」
    「とりあえず…」

    「…いや、違う、不公平だ!」
    「は?」

  • 51二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 02:49:05

    「タマモ先輩も私のことモニちゃんって呼んでますよね、呼び捨てにしてくださいよ」
    「いや、ウチは別に」「別にってなんですか、私だって別にだったんですけど」
    「ええ…いや…」
    「なにモジモジしてんスか、さっさと呼んでくださいよ」

    「でも…」

    あっ
    なんだ、この、ああ

    この人をめちゃくちゃにしてやりたい


    「…あったま来ちゃった」
    「え、あ」

  • 52二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 02:50:41

    私はタマモ先輩の腕をつかむと
    そのままベッドの上に押し倒し
    力のまま抑え腹の上に跨り
    顔を近づけて

    「…ほら…呼んでくださいよ」
    「………」

    頬を汗が伝う

    数秒しか経ってない筈なのに、何時間も時が経ったように思える

  • 53二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 02:51:43

    …手汗が滲んできた

    「…あんま舐めとんちゃうぞ」
    「うっおぉ!」

    そう呟いた先輩は私の手から腕を抜け
    咄嗟に肩を掴み
    押し返し

    唇と唇がくっついてしまう程の距離で

    「…モニー」

    そう囁いた


    「は…………はい……」


    …うぅ…顔が溶けそうだ…

  • 54二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 02:53:46

    「…っと……あんまし後輩イジめすぎたらあかんな…」

    「…はぁ…はぁ…」
    汗を拭う
    (髪いい匂いだった…とか思ってみたり)

    「あー…顔洗ってくるわ、ウチ…」
    「……」

    今日の事は水に流そうってか

    「あの……今日の事は…」

    あほか

    なんでか腹が立った私は
    タマモ先輩の傍に歩み寄り

    「あ、あの…モニちゃん?」

    ほっぺを掴んでやった
    「ぶえ」

    (やっぱし…やわこいな…)

    そんで


    キスをしてやった

  • 55二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 02:54:58

    「…」
    「────!?」

    タマが離れようとするが
    それが反って私に火をつける

    「っ……!」
    髪がくしゃくしゃになるほど抱きしめてやった

    頭ん中がとろける感覚、あー…キスってこんな感じなんだな
    「………」

    次第にタマは抵抗する気すら滅入ってしまったようで
    「…」

    ゆっくりと
    私を抱き締め始めた


    (…あれ、どんくらいキスしてんだ私)

  • 56二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 02:56:11

    …ちょっとだけ
    我に返って

    「…ぷは……長すぎやろ」

    「ああ……すい…ません…」

    離してしまう

  • 57二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 02:57:09

    「その…」
    「…まあ…別に嫌やなかったけど…いきなりちょっとハードやないか?その……舌は」
    「……え、あれ、入れてましたっけ」
    「は!?無意識やったん!?ウチの純情返せどアホ!」
    可愛らしくボカボカ叩いてくる
    「ふふ、あ、いてて、あ、けっこう痛い」

    「ハハハ、はぁ……あー…そんじゃまあ夜も更けとるし……」
    「これ以上は…その……時間的に、ですね」
    「まあ、せやな」




    「それじゃ、また明日……タマ」

    「……ほな…モニー」

  • 58オンセンでした23/02/10(金) 02:57:50

    以上です

  • 59二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 07:32:45

    投稿乙なんだ!

  • 60二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 07:46:57

    >>42

    言い忘れてました

    この方のアイデアを参考にしました

    危ない危ない

  • 61二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 12:36:58

    素晴らしいんだ…!

  • 62二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 12:45:54

    こいつやりやがった!まさかベロチューまでいくなんて…!
    モニ―…恐ろしい娘!

  • 63二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 21:05:26

    ホントにありがとうなんだ!

  • 64了船長23/02/10(金) 21:52:25

    >>58

    >>60

    乙でした!

    イチちゃんモニちゃんのどっちが「親友」であったり「先輩後輩」の関係を越えて、ちょっとインモラルなところに飛び込む一歩を踏み出しやすいかといったら絶対モニちゃんなんすよね わかる


      死

    -DEATH-

  • 65二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 22:18:45

    >>45

    バレンタインにかこつけるタマモニいいですね!


    >>46

    思いつきなんでここまでしかできてません、申し訳ありません


    >>58

    >>60

    まさか本当にこんな素晴らしいSS書いていただけるなんて!ありがとうございます!

  • 66二次元好きの匿名さん23/02/11(土) 07:38:56

    投稿乙

  • 67二次元好きの匿名さん23/02/11(土) 15:13:49

    保守なんだ

  • 68二次元好きの匿名さん23/02/11(土) 15:23:44

    規制で書き込めずイライラしていたところに『アイカツ! 10th STORY 未来へのSTARWAY』を心臓に受けて成仏したので概念ほぼ丸ごと借りた、流れもバレンタインもガン無視しており今は反省している
    1作目からのファンの贔屓目は多分に有るけど、もし自分の拙いコレでも概念刺さった人いたら『アイカツ! 10th STORY 未来へのSTARWAY』はウマ乗りになってこの概念で刺してくるので合うと思います、暇と金と機会が有ったら見て…あわよくばトレセン学園の生徒たち幻視して…

    ウマ娘だとライトハローと先輩とか、他だと奥井雅美の『輪舞-revolution』とかこういう関係性と状況が性癖なんすよね…

  • 69了船長23/02/11(土) 15:35:01

    >>68

    王のご帰還だ それも特大の宝物を提げておられる

    ご無事でいらっしゃった 本当に良かった

    インターネットでしか面識のない方と連絡がふと途切れると、過去の経験からいらんことを邪智してしまう 良かった〜〜〜〜〜


    規制つらいわかります。自分も夜はまじで無理……

    アイカツ、友人がドハマりしていますがこんなステキなお話だったとは。片鱗だけでも胸を打つストーリーが展開されているのだろうなと思いました。DVD借りてきます

  • 70二次元好きの匿名さん23/02/11(土) 15:51:28

    >>69

    ADSL民だったから諸々の都合上docomoのホームWi-Fiにするしかなかったんだけど全部docomoなので今はわりと穴掘りクマさんの頑張り次第ですね…


    アイカツは…公式チャンネルの5分でわかる解説動画も有るけど、見なくても船長さんなら『SHINING LINE*』って曲の歌詞を見て頂ければ大体わかるんじゃないかな…?あれの歌詞が刺されば映画だけでも楽しめるかと

    トップガン見ずにマーヴェリック見る感じにはなりますが…

    TVは…流石に初代主人公だけでも2年有ってナカヤマフェスタに変わってからも1年半くらい有るので…あとコンテンツとしては多分今回の映画で終了なので…オススメしにくい…

  • 71二次元好きの匿名さん23/02/11(土) 15:52:19

    >>68

    神絵師じゃ、神絵師様のご再臨じゃ!

  • 72エスコンの人23/02/11(土) 15:57:50

    >>68

    あー、めっちゃいい(語彙力喪失)


    アイカツは見たことなかったんですけど、この絵と元ネタのPV見る限りけっこう刺さるシチュが多くて思わず前のめりになっちゃいました。


    今まですっかり忘れてたけどウマ娘にも卒業の概念あるんですよね。

    オグリやタマみたいな子ドリームトロフィーリーグっていう形で走り続けるんでしょうけど、イチモニみたいな子たちはどうなるのか想像がはかどると同時に若干卒業の切なさが湧いてくる。

  • 73二次元好きの匿名さん23/02/11(土) 16:11:20

    >>70

    補足

    あと今回の映画も円盤出るんですけど、そっちは3話に分割して収録(多分TVサイズ×3)で映画館と同じ様にぶっ通しで観れるか公式見てもよくわからなかったんですよね…

    わりと映画の一続きの構成とテンポが良かったので…


    これだけだとなんなので、過去スレの「実は着物の着付けが上手い」ってレスでモニちゃん逆変換すると馬主さんは繊維業とか呉服屋さんだったら面白いなぁとか思ったのと、アイカツとプリパラの供給でそれ系の着せたくなったので描いた着物ドレスコーデ風モニちゃんも置いときます

    でもこの子こういうイメージじゃないな…毛二ちゃんかもしれねぇ…

  • 74二次元好きのオンセン23/02/11(土) 16:23:33

    は……はわーっ、い、居るっ、はわ、はわわーっ!!!!!う、うわーーっ!!!!!!!!!!
    ウワ────────────────────……・・・・

    今深夜テンションなので余計な事を言わないようにしてでも伝えたいことがあります

    あんたの産んだ全てが大好きだす……………

  • 75エスコンの人23/02/11(土) 17:01:56

    ご報告、了船長作品、以前言っていた裏スレの分もWikiにまとめ終わりました。

    裏スレの船長作品もおすすめなものばかりですので、ぜひ

  • 76二次元好きの匿名さん23/02/11(土) 17:07:05

    >>74

    やだ…照れちゃう…(トゥンク)

    それはそうと何かUMAとUMAハンターみたいになってる様な…

    規制さえ無ければ…いや…手が遅いし変わらないな…こんにちはUMAです!


    >>75

    お疲れ様ですわ!wikiのコメ欄に画像貼れればなぁ…

    >>72

    勝手な脳内イメージだとイチちゃんが一番長いこと競技者自体は続けそうなイメージですわ

    地方に移ってもオグリンたちがドリームトロフィーから退いた後ですらずっと走り続けてヒカルアヤノヒメみたいになるイチちゃん概念

  • 77温泉好きの匿名さん23/02/11(土) 17:13:39

    あんたなんだって一日に4枚も神絵投下してんだよーーーッ!
    脳が剝れるーーーーーッ!!!ウワーーーーーーッ!!!!クソーーッチキショーーッ
    好き────────────────……‥‥・・・・・

  • 78エスコンの人23/02/11(土) 17:34:25

    >>76

    おばあちゃんイチ……だと!?


    イチばあちゃん!!


    なんでか知らないけど金栗四三が頭に浮かんだんだ。


    描いてくれてありがとうございますなんだ!!

  • 79二次元好きの匿名さん23/02/11(土) 17:53:05

    >>73

    モニーの全身像ってこんな感じかぁ


    大好きです! 今度も嘘じゃないっす!!

  • 80了船長23/02/11(土) 18:06:13

    >>70

    >>73

    >>76

    この王、自国の領土で核を撃って片端から尊死させてるんですけど?????? えっっぐい


    王の家に光回線引いてあげたい 今年の1月で終わりでしたもんねえ…… 自分がそういう仕事なのでご来店お待ちしております(????)


    和服モチーフの勝負服着るモニちゃんのイラストくっっっっっっっっっっっっっっっそ見たかったんです!!!!!!! 夢を叶えてくれてありがとうございます!!!!!!!! 

    めちゃ似合う……BEAUTIFUL......KAWAII.......SAIKOU......


    引退の時期についての話、自分も最近すごい考えちゃいます。先に引退して卒業(そもそも引退=卒業なのかしら)するタマセンパイに「行っちゃうんですか、私、タマセンパイと一緒がいいです」「ほんならもうセンパイちゃうなあ」「えっ、なんて呼んだらいいんすか」「自分で考えぇ」なんていう話を夜な夜な妄想してしまいます。

    寂しいけれどとてもとても尊いですよねえ

  • 81二次元好きの匿名さん23/02/11(土) 19:05:38

    某所に投稿中の自作小説でオグイチの存在を匂わせたくなるぐらい好きな概念なんだ
    現実でもレスアンカーワンが実在してオグリと同厩で鬼ローテで疲れて帰ってきた夫を労わって引退後に交配して仔に凱旋門賞獲って欲しかったんだ

  • 82二次元好きの匿名さん23/02/11(土) 20:46:43

    >>68

    何だこのキュンキュンする展開は…!

    全く関係なくてあれなんだけどアイカツをよく知らなくてコイカツっていうのと間違えたことあるんだ…

  • 83エスコンの人23/02/12(日) 02:26:30

    Ace Combat Zero Soundtrack - Testimony 2

    スーパークリーク


    生涯戦績 16戦8勝


    主な勝ち鞍 菊花賞(GⅠ)

          天皇賞秋(GⅠ)

          天皇賞春(GⅠ)


    “遅咲きの天才”


    無尽蔵なスタミナを武器にターフを駆け抜けた高速ステイヤー。

    オグリキャップ、イナリワンと共に“永世三強”と称されたウマ娘。


    デビュー直後から脚部不安に悩まされ思うような結果を得られなかったが、菊花賞を皮切りにGⅠを制覇するほどにまでその実力の示した。

    また、長距離レースにスピードが要求される時代を築いたウマ娘としても有名。


    現在はドリームレースにて“永世三強”をはじめとした強敵達と日々競い合っている。

  • 84エスコンの人23/02/12(日) 02:27:11

    オグリちゃんは目を離すとすぐどこか別の場所に行ってしまう子でして、特に初めての場所になると手を繋いでいないと迷子になってしまうような子なんです。
    レースの時だって、気がつけば遥か先へと駆けていて……。
    いつの間にかどこか遠くへといなくなってしまいそうな、そんな危うい子。

    でも、まるでエンジンの動かなくなった船のみたいにふらふらとどこかへ流れていってしまうようなそんなあやふやなあの子を寄る辺となって繋ぎ止めていたのはイチちゃんだったのかもしれませんね。
    オグリちゃんとイチちゃん、お互いのいる場所が不思議とよく分かるんです。
    それでいつも一緒にいて本当に仲がいいんですよ。見ているこっちが嬉しくなっちゃうくらいに。

  • 85エスコンの人23/02/12(日) 02:27:51

    イチちゃんは本当にすごい子なんです。本人はいつも否定するんですけど。
    オグリちゃんがお腹を空かせないように毎朝早起きしてお弁当を作ったり、付き合いの長い私達でさえ気がつかない様な些細なことに気がついてオグリちゃんが困っていればすぐに飛んでいって助けてあげたり。
    いつも優しくて誰かのために一生懸命になって本当にいい子なんです。

    それにとても強い子なんですよ。
    ──とても心が強い子。
    レースで負けて落ち込んでもすぐに次のことを考えられる。
    なにか失敗しちゃった事があっても一息入れてどうにかしようと思える。
    練習のときだってへとへとに疲れているのにいつも瞳に炎を灯しながら『まだだ、まだやれる』ってトレーニングを続けちゃうような子なんです。
    そんなところもオグリちゃんとそっくりで──。

  • 86エスコンの人23/02/12(日) 02:30:54

    でも、ときどきその一生懸命さが仇になることもあるんです。
    ボロボロになっても平気な顔をして前に進もうとする。何度も何度でも。
    自分が傷ついてもそれを押し隠してしまう。
    私が心配して声をかけても、こっちに心配をかけないさせないように曖昧な笑顔で強がりを言って誤魔化して。
    いつだったかそのせいで大変なことになってしまったこともありました。
    本当に無理や無茶を平気でしてしまうそんな子なんです。

    だからでしょうか、時折思うんです。この子、私が支えてあげなきゃどうなっちゃうんだろう。この子、私が支えてあげなきゃ誰が支えてくれるんだろう、って。
    私だけじゃありません。タマチャンもイナリちゃんも、もちろんオグリちゃんもきっと同じことを思っているんでしょうね。
    彼女と関わった人たちが──もちろん、皆が皆とは言いませんけど、あの子をほっておけないって思ってしまう。そんな危うい子なんですよイチちゃんは。

    でも、そんな危ういイチちゃんだからこそ誰かに希望を与えられてるんだと思います。
    辛いことがあっても、悲しいことがあっても、本人の知らないうちに誰かの心の支えになれる。
    「あの子が頑張ってるんだ負けてられない」そう思わせてくれる。
    イチちゃんはそんなすごい子なんですよ。

    ──本人は「そんなことないですよ。あまり持ち上げないでください」って否定するんですけどね。

  • 87エスコンの人23/02/12(日) 02:37:21

    ヒカルアヤノヒメ、今年も走っている事実に戦慄してる……。

  • 88エスコンの人23/02/12(日) 02:39:09

    >>81

    そんなあなたにウイニングポスト!!

    ゲームの中でイチちゃんやモニーちゃんを走らせましょう!!


    なお、私のところのイチちゃんは古馬戦線でオグリンに蹂躙されました(泣)

  • 89二次元好きの匿名さん23/02/12(日) 08:10:45

    書いてくれてありがとうなんだ!

  • 90二次元好きの匿名さん23/02/12(日) 17:47:37

    クリークはイチちゃんとよく絡むから心配してくれるの染みるぜ…

  • 91二次元好きの匿名さん23/02/12(日) 17:55:32

    イチちゃん相手だと優しいお姉さんなクリーク愛おしいんだ

  • 92エスコンの人23/02/12(日) 23:05:25

    保守がてら

    元スレ主様のSSまとめました。

  • 93二次元好きの匿名さん23/02/12(日) 23:20:02

    >>92

    乙なんですよ!

  • 94二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 07:53:17

    >>92

    まとめありがとうございます!

  • 95二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 12:37:47

    >>92

    ありがとうなんだ!

  • 96二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 19:57:06

    「そういや、アンタもイチもオグリのことはオグリって呼ぶのに何でウチはタマ先輩なん?」
    「え?何でって言われても……」
    タマ先輩からいきなりそんなことを言われたもんだから、あたしは一瞬固まってしまった。
    「あ、やっぱり呼び捨ては不味いですか?」
    ある程度親しいとはいえオグリは先輩、しかも学園でも一目置かれる存在なのだ。
    後輩のウマ娘が馴れ馴れしく呼び捨てなんて、確かに生意気だったかもしれない。

    しかし、タマ先輩はそんな意味で言ったつもりではなかったらしく
    「ちゃう、ちゃう!ちょっと何でかなーって思っただけでな」と首をぶんぶんさせながら否定した。
    そうなると純粋な疑問ということか、ちょっと安心した。

  • 97二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 19:57:41

    そうなると今度は、オグリのことを「オグリ先輩」と呼ばない理由を考えねばならないのだが
    「うーん、改めて言われると何でだろ」
    「なんか切っ掛けがあったんか?」
    タマ先輩に切っ掛けと言われたとき、ふとあたしは
    「このオグリキャップっていうのムカつく!ぽっと出のくせに!」
    などと愚痴っていたイチを思い出した。

    「多分イチのせい、ですかね」
    「イチの?」
    「あの娘、対抗心か何かからオグリのこと最初から『オグリ』って呼び捨てだったんですよ
     あたしもソレに釣られたのかな」
    理由らしい理由と言えばこのぐらいしか思いつかなかった。
    ま、いずれにせよ大した理由は無いと思うけどね。

  • 98二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 19:58:13

    「はあ成程な。イチに引っ張られたっちゅうことか」
    「多分ですけどね。あ、オグリが特別ってだけですよ。
     あたし等、誰彼構わず呼び捨てにするような失礼なウマ娘じゃありませんからね!」
    なんて冗談交じりの発言をしながらふとタマ先輩を見ると、先輩は何か考え事をしていたようだった。
    そしてその表情はどこか悲しそうに見えた。

  • 99二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 19:58:40

    「特別……ウチは……」
    タマ先輩が何か言いかけたような気がした。
    「……?何か言いました?」
    「いや、なんも」
    トクベツ。そんな言葉が聞こえたような?
    まあ、本人が何も言ってないって言うなら深く突っ込むのも野暮だろう。

  • 100二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 19:59:06

    それからしばらく沈黙が続いた後、ふとタマ先輩が
    「なあモニ!『先輩』のお願いひとつ聞いてくれへん?」
    と何か思いついたようにあたしに頼み事をしてきた。

    他ならぬタマ先輩の頼み事だ「お願いですか?いいですよ。」と二つ返事で了承。
    すると先輩は息をひと吸いして

    「なあに簡単なことや」

  • 101二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 19:59:23

    「ウチのこと呼び捨てにして貰えん?」
    と言った。

  • 102二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 20:00:15

    「……はい?」
    多分あたし今とんでもなくマヌケな顔してると思う。
    先輩が?後輩に?呼び捨てを?お願い?いや無い訳じゃないんだろうけど、何でここで?何で今?

    「おーい、おーい!モニちゃん大丈夫か―?」
    先輩の呼びかけで我に返った。
    いかんいかん、呆けてる場合じゃないぞエイジセレモニー、理由を聞くんだ、理由を。

    「何でそんなことを?」
    「嫌、なんか?」
    「ああ、いえ!嫌とかじゃなくて理由が知りたくて」
    あたしがそう言うとタマ先輩は目線を地面に落としながら
    「……モニに呼んでみて欲しいねん」と小さく呟いた。

  • 103二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 20:00:52

    可愛いなこの先輩……。じゃなくて!嗚呼、駄目だ思考がまとまらない。
    とりあえずタマ先輩は呼び捨てにされたいらしい。
    うん、とりあえずその願いを叶えてしまおう。
    考えるのはその後でもいいだろう。

    「分かりました、呼び捨てにすればいいんですね?」
    その言葉を聞いたタマ先輩は
    「そうか!呼んでくれるんか!おおきに!」と満面の笑みで顔を上げた。
    可愛いなこの先輩!

  • 104二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 20:01:20

    「じゃあ行きますよ」
    「よっしゃ来い!」
    およそ名前を呼ぶに相応しくないやり取りをした後、いよいよ先輩の名前を呼ぼうと「タ」と発声した瞬間
    あたしは言葉に詰まってしまった。

    この先の言葉が出てこない。「タマ」とたった二文字言えばそれで終わりのはずなのに。
    何故か声に出そうとすると上手くいかない。
    何をしてるんだエイジセレモニー、さっさと言ってしまえ
    お前はオグリを「オグリ」と呼べるじゃないか、それと同じで何も「特別」なことじゃない。
    目の前で顔を赤くしているこの「先輩」を呼び捨てにすればいいだけじゃないか!

    ああ、顔が熱い。

  • 105二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 20:01:51

    「タ……タマ」
    ぼうっとする頭で何とか捻りだしたソレは、どうにか先輩の耳にも入ったようで
    「お……おう」
    とこれまた返事かどうかも分からないナニカが返ってきた。

    「……」
    「……」
    何だこの沈黙、誰か何とかしてくださいよ。
    しかし、タマ先輩はもじもじしたまま一言も話さず、あたしも何も言うことができなかった。

  • 106二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 20:02:55

    しょうがない、こうなったら最後の手段だ。
    あたしはタマ先輩に気取られぬよう、後ずさりで少しづつ距離を取り
    そして一気に振り返って――走り出した。

    「おい!モニ!何で逃げるんや!」
    タマ先輩が叫びながら追いかけてくる。
    「逃げてません!」
    あたしも叫びながら走る。
    「逃げとるやろ!」
    「タマ先輩が追いかけてくるからです!」
    「ソッチが逃げるからやろ!ちゅうか『先輩』が付いとるやないか!」
    「さっき呼び捨てにしました!」
    「何で一回だけやねん!おい待て!」
    「まてませええええん!」
    走れエイジセレモニー、あんたは今タマモクロスより速いウマ娘だ。

  • 107二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 20:03:28

    おまけ
    イチとモニ
    「あ、モニ。例の噂聞いた?」
    「噂?どんな?」
    「タマ先輩に追いかけられてた娘の噂!」
    「……知らない」
    「何でもその娘、真っ赤な顔で鬼の形相したタマ先輩から逃げ切ったんだって
     結構噂になってる『タマモクロスと互角!?謎のウマ娘現る!?』って」
    「……ふーん」
    「有名なウマ娘以外にもこんな娘がいるなんて、ここはやっぱり凄い所ね」
    「お褒めに預かり光栄です……」
    「え?」
    「何でもない……」

  • 108二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 20:04:12

    以上です
    妄想を文章にするのって難しいですね
    失礼しました

  • 109二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 21:07:52

    妄想を文章にするのが物書きという生き物なんだ
    とても素晴らしいんだ

  • 110二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 21:14:48

    あのすいません、バレンタインデーセールで大安売りしていたチョコが味しなくなったんですが
    代わりに最高に苦いコーヒーが欲しくなりました。

  • 111二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 23:36:36

    しっとりロマンスとほのぼのコメディ 二つの視点から楽しめてお得な気分なんだ
    白い稲妻から逃げ切るとは照れのパワーはすごいわね

  • 112二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 08:04:05

    >>108

    素晴らしかったんだ!

  • 113二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 12:41:25

    >>108

    投稿乙でした

  • 114二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 20:21:41

    皆はオグリからチョコもらいました?
    「笑顔があれば力になる」がヒーロー然として可愛い以上に格好よかったんだ!

  • 115二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 20:32:17

    こんなん言われるイチちゃん大丈夫?

  • 116二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 20:39:20

    >>115

    これ別の意味でキュンキュンするんだ!

  • 117二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 21:16:42

    食べきれないのを見越してこれ渡すとか、あざといぞオグリ

  • 118二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 21:37:14

    >>117

    一緒に食べようという事なんですねえ

  • 119二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 22:26:48

    >>109

    >>111

    >>112

    >>113

    >>110

    ありがとうございます!

    改めていつも素敵な作品を作っていただける人や色々語り合えるこのスレに感謝です!

  • 120エスコンの人23/02/15(水) 00:30:37

    高らかに授業終わりの鐘が鳴る。
    タマモクロスは鞄の中をまさぐると目当てのものを手にして教室を飛び出した。
    そのまま廊下を駆けていくが当校の高速は“廊下は静かに走るべし”なので何の問題もない──いつも思うことながら大分変わった校則だとは思う。
    駆けながらも胸元に抱えた“それ”を大事そうにしながら決して壊さないよう慎重に運んでいく。
    今日は二月の十四日。世間的にも一大イベント。
    そう他でもない“バレンタインデー”である。
    世間の男子も女子も浮足立つこの日、彼女も例外なく浮足立っていた。
    レースとは違う心地の良い緊張感。足が地面を蹴るのに合わせて心臓が弾むかのような錯覚。
    手元のチョコレートは馴れないお菓子作りのせいで形は歪、味は単調、おまけに包装も不器用さが際立っていたが、意中の相手への気持ちはありったけに込めた最高傑作とは彼女の自己評価。
    夢心地な気分のまま、相手のクラスへひた駆ける。

  • 121エスコンの人23/02/15(水) 00:31:01



    目的地まではそんなにかからなかった。
    気持ち弾ませ、足を弾ませ、階段を降り廊下の曲がり角を曲がれば、なんて幸運だろうか彼女がそこにいた。
    声をかけようと片手を挙げ──ようとして、目の前の光景に思わず廊下の陰に隠れてしまう。
    陰から半身乗り出し息を潜めて様子をうかがえば、彼女が後輩と思われる二人の生徒に声をかけられていた。

    「モニー先輩」
    「ん? 私?」
    「はい! あの」
    「よ、よかったらこれ!!」
    「え、と……。これは?」
    「チョコレートです!」
    「──あー! 今日バレンタインか!」
    「はい!!」
    「ありがと! 食べてもいい?」
    「ど、どうぞ!」

    そうして彼女は受け取ったチョコを口に入れその味に感動していた。
    その反応に嬉々とした声を上げる後輩たち。
    自然、うしろ手に隠した自分のものと彼女の手にあるそれを比べてしまう。
    包装は可愛らしく中のチョコは売り物みたいに綺麗だ。自分のものよりもずっといいものに見える。
    和気藹々とした眼の前の光景に背を向けると、タマモクロスはほろ苦い感情を胸にその場を去っていった。

  • 122エスコンの人23/02/15(水) 00:31:49

    続く

    ……バレンタインデーに間に合わなかったんだ……。

  • 123二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 08:03:35

    投稿乙なんだ!

  • 124二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 17:46:39

    素晴らしいんだ……!

  • 125二次元好きの匿名さん23/02/16(木) 00:27:36

    保守なんだ

  • 126二次元好きの匿名さん23/02/16(木) 00:31:11

    >>122

    今さら読んだが「モニ―はモテる」よう解釈が同じ人がいてビビっている 

  • 127二次元好きの匿名さん23/02/16(木) 07:51:01

    かなり早めだけど保守なんだ

  • 128二次元好きの匿名さん23/02/16(木) 13:51:29

    >>122

    続きをお待ちしてますなんだ!

  • 129二次元好きの匿名さん23/02/16(木) 20:44:29

    >>76

    このイチちゃんが河童にも見えて愛しい…

  • 130エスコンの人23/02/17(金) 00:27:40

    >>121


    昼休み、昼食時ともなればカフェテリアもにわかに活気付く。

    その一席でタマモクロスはいささか沈んだ面持ちで頬杖をついていた。

    視線の先にはモニーに渡し損ねたチョコレート。

    それを見るとさっきの光景が目に浮かぶ。

    後輩からチョコを貰って喜ぶモニー。自分のチョコを貰ってもあんな風に喜んでくれるだろうか。

    後輩のチョコと比べてもお世辞にも綺麗とも美味しそうとも言えないチョコレート。渡したところで失望される姿しか浮かんでこない。

    そう考えると胸の奥がちくりと痛む。もやもやと重たい何かかが胸の中で一杯一杯に広がっていくのを感じる。

    息苦しさを覚えたタマモクロスは大きなため息をついた。

    「よお」

    そんな寂しげな背に威勢のいい声が投げかけられる。

    視線だけをそちらに向ければ見知った顔が2つ。

    イナリワンとスーパークリークが立っていた。

    今来たばかりなのだろう、手にしたお盆の上には熱々と湯気が漂う料理が乗っている。

    「相席してもいいかい?」

    「かまへんよ」

    いささか投げやりな言い方になってしまったが、気にした様子もなく二人は向かいに回ってくる。

    「何でえ辛気臭えツラしやがって。なんかあったのか?」

    「別にー、なんでもあらへん」

    訝しげな視線を送ってくるイナリ。

    その視線を無視して立ちあがろうとしたとき、「あら」とクリークが何かに気がついた声を上げた。

  • 131エスコンの人23/02/17(金) 00:28:13

    クリークの視線の先にはタマの手作りチョコレート。
    それにイナリも気がつくとすぐに悪戯っぽい笑みを浮かべ「何でえ、随分モテてるみたいじゃねえか」と揶揄ってくる。
    途端、苦虫を噛み潰したような苦々しさが込み上げてくる。
    否定しようとしたがクリークに割り込まれる。
    「いえ、これ確か以前タマちゃんと作ったやつじゃありませんか?」
    「ん? そうなのかい?」
    「ええ、確か昨日作るのをお手伝いさせてもらいましたし」
    「ほおー……、なんだいお前さんも隅に置けないねえ! それでいつ渡すんだい?」
    好奇心で爛々としたイナリの視線が突き刺さる。
    言葉に詰まらせながらも視線を無視してぶっきらぼう「渡さへん」と言い捨てる。
    瞬間、二人から「は?」と呆けたような声が漏れる。
    「だから! 渡さへんって言うてんねん!」
    「えぇー!? なんでですか!? あんなに頑張って作ったのに」
    「何だってええやろ別に……」
    そっぽ向いて不貞腐れたタマの様子に思わず顔を合わせる二人。
    やがて、大きくため息を吐いたイナリが言う。
    「話してみろ」
    「は?」
    「だから、話してみろって」
    「何をやねん」
    「なんかあったんだろ? 聞いてやるから話してみろって言ってるんでい!」
    「なんで話さないかんねん、アホか」
    「てやんでい!!」
    唐突に吠えるイナリに思わず体が飛び上がる。
    「お前さんのそんな景気の悪い姿をほっとけねえって言ってるんでい!! 友人を思ってのこっちの気持ちを、ちったあ察しろってんだい!!」
    上から目線のそのセリフに思わず体を前に乗り出しかける。
    機嫌が悪いからほっとけと言ってるのにそれを無視して何様のつもりだこいつは。
    耳が後ろに引き絞られるのが自分でもわかる。
    怒りの感情が口から飛び出そうになる寸前で、「タマちゃん」とクリークにまたしても止められた。

  • 132エスコンの人23/02/17(金) 00:28:28

    「無理して嫌な気持ちを押し込めるのは体にも心にも毒ですよ?」
    思わずクリークの顔を見る。
    こっちが怒気を顕にしてるというのに彼女の表情は優しい。一つも気にする様子もなく母性的な笑みをたたえてこちらの目を見つめていた。
    「私達で良ければちゃんとお話を聞きますから──ね?」
    優しい言葉に諭されたのかすっかり怒るのがバカバカしくなった。
    ドカッと椅子に座り直すと、大きくため息を吐いて廊下での出来事を話し始めた。

  • 133エスコンの人23/02/17(金) 00:28:47

    またしても続くなんだ……

  • 134二次元好きの匿名さん23/02/17(金) 08:06:47

    投稿乙なんだ!

  • 135二次元好きの匿名さん23/02/17(金) 17:38:36

    今日もありがとうなんだ

  • 136二次元好きの匿名さん23/02/17(金) 21:49:05

    タマモニ身長逆転ものとか似合いそう
    普段上から抱きかかえられたり撫でられたりのタマがモニーを抱きかかえたりなでたりするんだ

  • 137二次元好きの匿名さん23/02/17(金) 22:29:46

    「いやごめんなさい、ホントにちょっとした出来心だったんすよ・・・」
    「ゴメンですむなら警察はいらんわ。ホンマどうすんね、これ」
    やけにダボダボした制服を着た、エイジセレモニーと。
    校則違反と言われてもおかしくないほど制服のスカートが短くなってしまった、タマモクロス。
    決してふたりは制服を入れ替えたわけではない。
    入れ替わってしまったのは身長だけ。
    アグネスタキオンの研究室から手に入れた「身長が伸びる薬」「身長が縮む薬」とラベルが貼ってあった薬をうっかり飲んでしまったのが、この結果だ。

    「ほーん、いつもより視界が高いってのはええ気分やな」
    「いや、こっちは怖いっすよ。タマ先輩に見下ろされるなんて初めてですもん」
    「そうやな、今ならウチの方が体格で有利やもんな」
    「え、ちょっ、やめて」
    「なんや、いっつもモニーはウチが『やめて』って言ってもやめなかったやろ?」

  • 138二次元好きの匿名さん23/02/18(土) 00:27:56

    >>137

    続きは、続きは!? 続きはないんですか!?

    気になってこっちは8時間しか寝れないんですよ!?

  • 139二次元好きの匿名さん23/02/18(土) 08:07:54

    投稿乙なんだ!

  • 140二次元好きの匿名さん23/02/18(土) 12:46:00

    こういう時のクリークとイナリが頼りになりますね…

  • 141エスコンの人23/02/18(土) 18:14:16



    「──ちゅうわけや、話すことは全部話したで」
    ひとしきり話し終えて背もたれに全身を預ける。
    モニーにチョコを渡そうとしたこと。
    クリークに手伝ってもらってまで馴れないチョコを作ったこと。
    モニーが後輩からチョコを貰っていたこと。
    そのチョコが自分のものと比べてあまりに出来が良かったこと。
    話してみれば楽になるかと思えば別にそんなことはなかった。むしろ、情景を再び思い出したせいで余計に気持ちが沈んだ。
    やがてイナリが口を開く。
    「意気地なし」
    「はあ!?」
    「意気地なしって言ってるんでい」
    「何やとぉ!?」
    「ちょ、ちょっとイナリちゃん!?」
    「もういっぺん言ってみい!?」
    「おう、何度でも言ってやらあ。この意気地なしのヘタレ!!」
    聞き捨てならないことを言われて思わず身を乗り出すタマモ。しかし、気にする素振りも見せず腕組みしながらなおも続ける。
    「何を日和ってるんでい! 渡しゃいいじゃねえか、んなもん」
    そう言い捨てると腕組みを解いて机に肘をついて身を乗り出す。
    「だいたい、お前が相手にみすみす譲るような玉かよ。レースのときの勢いはどこ行ったんだ。話を聞いてりゃちゃんちゃらおかしいぜ。走ってるときのあのギラついた勢いが全く感じられねえ。競争相手に獲物をみすみす譲るなんざ“猟犬”の名が泣いてるぜおい」
    そこまで言われてなにか一つでも言い返してやろうと思ったのだが喉元に引っかかって出て来ない。ことごとく正論だからだ。
    クリークが心配そうにタマモとイナリの顔をきょろきょろと見比べている。
    人がわなわなと身を震わせていると何かに気がついたような素振りを見せてニヤリと口元に嫌な笑みを浮かべた。

  • 142エスコンの人23/02/18(土) 18:14:32

    「ははーん、それともあれか? お前さん」
    椅子に座り直したかと思えば顎に手をやって小馬鹿にしたように言ってみせた。
    「モニーのことが好きだって気持ちはまやかしだったってことかい?」
    「──何やと?」
    空気が変わる。熱気が一瞬に消え去って冷える。
    タマモの射るような視線がイナリに突き刺さる。
    しかし。やはりイナリは気にする素振りを見せない。それどころかどこか余裕を感じさせる。
    顔を青ざめているのはクリークただひとりだ。
    「まあ、それじゃあしょうがねえわな。そこまで本気じゃなけりゃ二の足を踏んじまうのも分からぁ。レースのそれと比べりゃ何が何でも勝ち取る必要はないもんなあ」
    瞬間、轟音が響く。
    目を丸くするクリークとイナリ。
    視線の先には机にタマモの拳が振り下ろされていた。
    もはや周囲のことなど目に入っていない。
    耳を引き絞るどころかもはや寝かせている。目尻を裂けんばかりに吊り上げ全身からありったけの怒気をイナリに向けてぶつけている。
    「じゃあしいわ!!」
    タマモの怒声が──咆哮がカフェテリア内の空気を震わせる。
    しかし、当のイナリは一向にこたえる素振りを見せない。そのことが余計にタマモの神経を逆撫でた。
    「黙って聞いてりゃべらべらべらべら好き勝手言いおって、おどれに何が分かんねん!!」
    「タマちゃん!」
    必死にクリークが止めようとするがタマモの言葉は止まらない。
    「うちがモニーちゃんを適当に思っとるやと? モニーちゃんの一番になれなくてもどうでもいいやと? ふざけんなや!! そんなん思っとるんやったら、何で今うちはこんな気持ち抱えとらないかんねん!! 本気でモニーちゃんのこと大切に思うとるから出来損ないでもチョコレート手作りして渡そう思うたんや!! それを──」
    「タマちゃん!!」
    クリークの鋭い静止の声が場を貫く。
    一瞬の静寂。
    その瞬間、聞き慣れた声がタマモの背中にかけられた。
    「──タマ先輩」
    ただ振り向くだけなのに恐ろしく時間をかけるタマモ。
    そんな様子を眺めながら悪戯っぽい笑みを絶やさないイナリ。
    ──振り返ればエイジセレモニーがそこに立っていた。

  • 143エスコンの人23/02/18(土) 18:14:52

    次で最後なんだ

  • 144了船長23/02/18(土) 22:12:54

    >>143

    心をおちょくられて憤慨するタマセンパイが美しくて……

  • 145二次元好きの匿名さん23/02/18(土) 22:26:21

    ≫≫お前が相手にみすみす譲るような玉かよ。
    イナリの言う通りだタマだけに

    「猟犬のような走り」という小ネタまでいれるとは…エスコンの人も出来る!

  • 146二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 03:49:53

    保守なんだ

  • 147>>137の続きでございます23/02/19(日) 09:09:15

    >>137

    「ほんなら、そろそろいつもの仕返しといこうやないか」

    タマモクロスは犬歯のような八重歯をのぞかせて、にやりと不敵に笑ってみせる。

    白い稲妻、と呼ばれるくらいのオーラ持ちのGⅠウマ娘。

    そんなウマ娘に壁ドンでもされようものなら、エイジセレモニーはたまったものではない。

    ましてや今は薬のせいで体格差が逆転しているのだから。


    「お、お願いですから乱暴な事だけはやめてもらえませんか」

    「そうは言うけどなぁ、これはそうそうないチャンスなんや。ウチよりもちっこくなったモニーちゃんに、好き放題イタズラできるんやからな」

    壁際に追い詰めたエイジセレモニーに、タマモクロスはわきわきと両手を伸ばす。

    まるで変質者みたい、と思ったところでどうしようもない。

    ここには他に誰もいないのだから。

    「や、やだ・・・やめて!」

    「デカい声出すなや、すぐ終わる。ウチもいつもモニーちゃんにやられてばっかしやったからな」

    がしっ、とタマモクロスの両手がエイジセレモニーの体を鷲掴みにする。

    エイジセレモニーは目をつぶって耐えるしかなかった。

    ただ、この苦しくて恥ずかしい時間が早く終わるようにと。



    「ほら、たかいたかーい! 何年ぶりやろうな、ウチのチビ達にやったのなんてだいぶ前やからな」

    「うぅ……タキオンさんに、解毒剤をお願いしておかないと……」

    自分のイタズラのせいだったため、抵抗することもできず。

    エイジセレモニーはしばらくの間、タマモクロスのおもちゃにされていた。

  • 148二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 13:11:06

    投稿乙なんだ

  • 149二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 13:43:15

    >>147

    あ、高い高いをやりたかったのねまあそうよねうんうん

    …ちょっとドキドキしながら読んでしまった事をここに告白いたします

  • 150二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 21:13:03

    可愛いんだ!

  • 151エスコンの人23/02/19(日) 22:33:25

    >>137

    >>147

    いい……、すごくいい……。

    最初アブノーマルな雰囲気を漂わせたかと思えば一転して微笑ましい情景が繰り広げられてるのがすごくいい!

    しかも普段なら出来ないようなことをやれて喜んでるタマ先輩が途方もなくかわいい。

    タマ先輩の面倒見の良さがこれでもかと短い文の中に溢れてて正直言葉にできないです。


    あ、すいませんそろそろ限界なんで横になりますね。

  • 152エスコンの人23/02/19(日) 22:33:58

    【ご報告】Part22に投稿されましたイラスト集とPart7までの温泉の人のSSをまとめました。

  • 153二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 23:37:04

    まとめ感謝なんだ
    見返してみると、意外と見逃してたイラストがあったことにびっくり
    ランドセルイチちゃんがたまりませんでした・・・
    おまわりさん私です、変質者です

  • 154二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 00:38:05

    >>153

    大変素直でよろしい。

    では、本官にご同行願います。

    cdn.netkeiba.com
  • 155二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 00:39:56
  • 156二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 08:06:08

    >>152

    いつもありがとうなんだ!

  • 157二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 17:40:17

    >>152

    まとめ乙です

  • 158了船長23/02/20(月) 18:05:26

    シニア、彼女にとってはじめての3勝クラス戦、福島、曇り。雨の予報あり。気温は低く、吐息が白く曇る。芝もしっとりと湿度を含み、パワーの必要なバ場になりそうだった。
    私は左腕にかけた、一番の手前のビニール袋に右手を傾けないよう注意深く差し込んだ。
    ポリエチレンの器の感触を探りながら、一番最初に取り出したのは「鶏きん」のもつ煮だった。早速くわえていた割り箸をゆっくりと二つに開けて、小さな声でいただきます、と唱える。パキっ、と小気味よい音が立つ。
    ゴロゴロと大きく切られた大根に、色どりとアクセントを加えてくれるネギ、主役のもつ、そして赤く載せられた七味唐辛子。私は迷いなく湯気をたてる大根に箸を伸ばし、口に含む。
    熱い。歯を差し入れると、まず最初に熱が、それに続いて香りと甘味が私の鼻孔に広がる。はふ、はふ、と外気と混ぜながら食べ進める。
    いつ、だれが食べても、きっと美味しいと感じられる素敵なもつ煮だ。少し噛み応えを楽しめるくらいのもつが、レース場にはちょうどいい。
    夢中になって箸を動かし、時折お出汁を飲んでいたら、もう無くなってしまった。お鍋いっぱいに作られたこれを食べたいところだが、致し方ない。
    とても美味しかった。ごちそうさまでした。

  • 159了船長23/02/20(月) 18:11:45

    次に取りかかったのは、「鳥風慶」の天ぷらそば。『大根おろしは2杯まで!』という注意書きが印象的な売店だ。
    醤油で味をつけた関東風の黒いお出汁の中に、お蕎麦と山菜の水煮、なめこが盛り付けられている。その横には、きちんと2杯頂いた大根おろし。
    このお蕎麦が印象的なのは、先の注意書きだけではない。具の上に載っている天ぷらも一役買っている。
    この天ぷら、その名も「会津まんじゅう天」と言う。饅頭の天ぷらだ。
    お店の人によれば、「ここいらではお蕎麦と一緒にまんじゅうを食べるのよ」とのことらしい。
    はやる気持ちを抑えて、まずはお出汁を一口。先ほどのもつ煮で食べたお味噌ベースのものとは違う、ツンと塩気がきいた醤油のお出汁。しょっぱくて美味しい。
    お蕎麦はモチモチとしているが、山菜の水煮は対照的にコリコリとしており、感触がとても楽しい。つるりと光るなめこがの粘り気が、温かさをそのまま運んでくれる。
    最後にとうとう、まんじゅう天の番だ。少しお出汁を吸って柔らかくなった衣をかじると、噛み切れなかった両端がもっちりと伸び、口の中にあんこの甘さが現れる。
    ううむ、これは、まさしくまんじゅうだ!
    口が驚く。サクサクとした上半分の衣と、真ん中のまんじゅう、下半分のふわりとした衣。衣の油の香りに挟まれた甘さが際立つが、香ばしさも負けていない。
    噛んでいても味わっていても、とても楽しい。飲み込んだあと、お出汁をまた一口すすった。
    お醤油の香りがふわりと広がったその瞬間、頭の中で何かを閃いた。
    まんじゅう天を食べ、甘さを感じたところに、すぐお出汁を飲む。甘さとしょっぱさ、あんこと醤油の香りが口の中で混ざる。
    不思議な食べ合わせだが、とてもおいしい。お互いの尖っている部分をきれいに打ち消し合って、もう一度体験したくなる味になっている。
    レースが終わった後に伝えたら『何よそれ』と言われるかもしれないけど、これは大発見だぞ――
    もつ煮と同じように、気が付けばもうお出汁まできれいに食べきってしまっていた。

  • 160了船長23/02/20(月) 18:21:48

    次のパックに取り掛かろうとした直後、耳の先にぽつっ、と冷たい衝撃を感じる。
    もしやと思い空を見上げると、黒い雲が立ち込めてきていた。慌てて右腕に下げていた傘をさそうとする。
    しかし両手に下げたビニール袋がかさばり、中々うまくきまらない。ご飯を食べられるように支えたいのだが、柄にどうしても干渉してしまう。
    どうしようか――

    「あの、お手伝いしましょうか」
    背後から男性の声がする。振り返ると、傘を小脇に抱えた30代くらいの、長いコートと帽子を被った人が私に話しかけてきていた。
    「おお、ありがとう。ぜひ頼む」
    「ええと、どっちを持ちましょうか」
    男性は私の傘とビニール袋を交互に見比べて、どちらを持とうか考えているようだった。
    「そうしたら、傘を頼む」
    「はい。分かりました」
    私の傘を手に取って静かに開き、腕を伸ばしてスペースを作ってくれた。ポツポツと傘に雨粒が当たる音が響く。
    「大丈夫そうですか、濡れていませんか」
    「ああ、ありがとう……すまないが、冷める前に食べてもいいだろうか」
    「ええ、どうかお気になさらず。ところでそれ、すごい量ですね」
    好意に甘えて焼きそばのパックを取り出し、新しく割り箸を開けて食べ始めた。

  • 161二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 18:27:20

    >>159

    まんじゅう天!?

    そういうのもあるのか…

  • 162了船長23/02/20(月) 18:28:54

    「すごい勢いで食べますね」
    「ほうはほうは」
    「あはは、食べ終わってからで結構ですよ」
    うん、とだけ頷いて素早く食べる。重たかったビニール袋も随分軽くなり、私の目の前では次のレース、ジュニア級未勝利戦に出場するウマ娘たちが、誘導ウマ娘の指示に従って真っすぐ列を作って本バ場入場をしていた。
    焼きそばを食べ終わり、空になった容器を手早くまとめて次のご飯に手を伸ばす。あんことカスタードの大判焼きが入った袋が現れる。デザートにちょうどいい。
    「そうだ、良かったらどうだろうか」
    私ばかりが食べていることに気付き、感謝の気持ちを込めて大判焼きの袋を差し出す。男性は、えっ、と目を丸くした。
    「いいんですか。あなたの大事な食事なんじゃ」
    「いや、傘を持ってもらっているのに、気づかなくてすまない。あんことカスタード、どちらが好きだろうか」
    「ありがとう。そうしたら、あんこを」
    あんこの入っている袋を彼に向ける。取り出すために中を見た彼が、ギョッとした顔になる。
    「これ、全部食べるんですか」
    「そうだ」
    「まさか、カスタードも同じ数だけ?」
    「うん」
    「ひい、ふう、みい……全部で24個も食べるつもりだったんですか?」
    「ああ。売店のおばちゃんに、これ以上はダメだと断られてしまった」
    「えっ。今までの食事に加えて、まだ食べられるんですか」
    羨ましいなあ、と彼はつぶやいて大判焼きを手に取る。ありがとう、いただきますと言って、一口かじる。私もカスタード味を取り出して、同じように食べ始めた。
    「おいしいです。ありがとうございます」
    「いいや、私の方こそありがとう」

  • 163了船長23/02/20(月) 18:31:25

    「今日はレースを見に来たのか?」
    「はい。実は、娘が走るんです」
    そう言うと、男性はかじりかけの大判焼きを持ったまま、頭の後ろに手を回す。
    「いつもは中々見に来てあげられなくて、その子も普段、レースを見に来てほしいとは言ってこなくて。でも、今日だけは絶対直接来てほしいと」
    「そうだったのか。何か、特別なレースなのか?」
    「ええ。初めての3勝クラスなんです」
    男性はとても嬉しそうに話す。そのままでも優しい目元が、さらに柔らかくなる。上気したような面持ちで話す姿に、私も思わず嬉しい気持ちになる。
    「おめでとう。きっと娘さんは、とても頑張り屋のウマ娘なんだな」
    「ええ、ええ! それはもう本当に。昔から我が強いというか、信念がありすぎるというか……でも、根性のある子です。トレセンに行く、と決まったときには全寮制なこともあって心配な気持ちにもなりましたけど、持ち前の頑固さが前向きに働いてくれたのかな、と安心しています」
    先ほどよりも少しだけ早口で言い終わると、あっ、と何かに気付いたように話すのを止め、ぺこりと頭を下げる。
    「すみません、見ず知らずの方に、つい」
    「いいや、気にしないでくれ」
    顔を上げた男性は、申し訳なさそうにしつもも、どこか誇らしげ表情をして少しだけ遠くの方を見る目になっていた。
    私のお母さんも、カサマツで私の話題が出たときに、こんなふうに話していたのだろうか――
    私もいつか、家族を持ったときには、こんなふうに話すのだろうか――
    私は、普段レースを見るときには考え付かないようなことで、しばらくの間は頭がいっぱいになっていた。

  • 164二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 18:37:39

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  • 165了船長23/02/20(月) 18:39:30

    「ただ、問題が一つあって」
    「問題?」
    「ずいぶん久しぶりにレース場に来たものですから、奥さんとはぐれてしまって」
    「それは大変だ! 迷子の館内アナウンスをしてもらおう」
    私の提案に、男性は慌てたように傘の雨粒を飛ばす。
    「いやいや、それは嫁が困ります」
    私たちが話しているうちに、後ろでは未勝利戦のレースが始まっていて、もう勝負の中盤に差し掛かっていた。

    『ミニリリー、レースを引っ張ります。その後ろに1番ローカルストリーム追走、そこから1バ身ほどの差をつけて……』

    レースに目を向ける。先頭を走るミニリリーと言う子は緊張のせいだろうか、走りが固い。
    「『今、レースを見ています』と……」
    「連絡は取れるだろうか」
    はい、と男性が頷く。
    「嫁も学生の時レースで走っていたので、私よりもここには詳しいはず」
    男性はそう言って、キョロキョロと周りを見回して、その度に傘が揺れる。どんなに見回しても他の人の傘とカッパで視界が悪く、遠くまで探すのは難しそうだった。
    思わずつられて周りを見ているうちに目の前のレースは終了し、コースチェックが行われる休憩時間になる。観客席に詰め寄せていた人たちも一度温まるためだろうか、屋内に向かって歩いていく。
    相変わらずの雨模様と傘で暗さは変わらないものの、先ほどよりも遠くまで見通せるようになった。すると、遠くの方から一人だけ、人の流れとは違う方向に――私たちの方へ向かって小走りで近づいてくる人影があった。

  • 166了船長23/02/20(月) 18:41:51

    「貴方、ここにいたの」
    「ああ、良かった。貴女、耳が濡れてしまうよ」
    雨に濡れるのも構わず、女性が傘を下ろして手を伸ばす。どうやら奥さんのようだ。男性はサッとポケットに手を伸ばし、彼女の手にハンカチを載せた。
    私は彼の言葉に、彼女がウマ娘であることにようやく気付いた。同じウマ娘の私でも見惚れてしまうほど、仕草も姿も綺麗で美しい方だ。
    傘を空いた方の手で器用に取り回し、奥さんの分のスペースも作る。
    そのスペースを自然に分け合う彼らを見て、なぜか私は、雨の日に二人で歩いたスーパーの帰り道を思い出した。
    「こちらの方は? 貴方、二つも傘を持ってきてはいなかったでしょ」
    「先ほど声をかけたんだ。両手が埋まっているのに雨に降られて困っていらしたから、手助けを」
    女性は私の両腕に下がるビニール袋――今はもうだいぶ軽くなったが――を見て、あらまあ、と驚いたような仕草を取る。
    「これ全部、あなた一人で?」
    「ああ。旦那さんには大変助けてもらった。改めてありがとう」
    男性は、いいんですよ、と緩やかな笑みを浮かべる。
    「ずいぶん食べるのね。でも、お若いウマ娘なら元気が一番だし、素敵よ」
    そう言って、口を手で隠すように笑う。

  • 167了船長23/02/20(月) 18:51:14

    『まもなく、次のレース、3勝クラスのパドックが開かれます』

    会場アナウンスが、パドックの時間を告げた。先ほどよりも人がまばらになった観客席で、私は二人に尋ねる。
    「パドックは見に行かないのか?」
    はい、と旦那さんが答えた。
    「娘から直接見える場所に立って、緊張させてしまっては良くない」
    旦那さん――もう、お父さんと呼ぶべきだろうか。彼は心を決めたように話す。
    「小さいころから、平気な顔して緊張しいな子なの。きっと今も変わってないわ」
    奥さん――お母さんが、呆れているが優しい笑顔を浮かべながらお父さんの方を向く。
    「ぐっと唇を噛み締めながら帰ってきたと思ったら、聞いても何も答えてくれないこともあったね」
    「ええ。平気だから、大丈夫だから、って言って聞かなくて。そういう時は静かにハグしてあげると素直になったのよ」
    知らなかった、とお父さんが驚く。
    「今日は必ず行くよと伝えていますし、到着した連絡も入れてありますから、これ以上プレッシャーをかける必要はないかな、と」
    二人はすこし遠くに目線を移して、息を整えるように空気を吸っている。彼らの言葉は私に説明するようにも、自分たちに語り掛けるようにも聞こえた。
    本当は見に行きたいけれど、ぐっとこらえて娘の雄姿を見守る。
    私にもしも子供がいたら、同じような気持ちになるんだろうか――

  • 168了船長23/02/20(月) 18:59:41

    「実は、私はつい二月前に引退したばかりなんだ」
    彼らの身の上話を聞いているうち、私も自分のことを打ち明けなければいけない気がした。
    「実は、今はここに居るんだが、関係者席も用意してもらっているんだ。二人の席も用意できると思う。こんな雨だし、一緒にどうだろうか」
    荷物を持ってもらった借りを返したい気持ちと、どういうわけか近い距離を感じる二人には、せめて暖かいところでレースを観戦してほしいと思った。
    私の提案に、二人は顔を見合わせてまた、静かに笑みを浮かべる。
    「ご親切にありがとう。それと、レース、お疲れ様でした。嬉しいご提案ですけど、お気持ちだけいただくわ」
    「娘をより近いところで見てあげたいし、彼女が頑張っているのに親が見下ろしているだけというのは、なんだか忍びないから」
    「でも、本当に嬉しいわ。本当にありがとう」
    お父さんは敬服するように帽子を取り、首を軽く下げる。お母さんは首を軽く横に傾け、会釈をする。この二人の所作はとても綺麗で、会話の途中でも考えが横に逸れ、こんな大人になってみたいと思ってしまう。
    「分かった。すまない」
    私も二人に真っすぐ頭を下げた。

  • 169了船長23/02/20(月) 19:14:11

    「そんな、謝らないで。私もレースを引退したときは、名残惜しくてこの人と一緒によくレース場に行っていたわ。後輩や引退していない同期の応援で」
    そうだったねえ、とお父さんが相槌を打つ。
    「自分はお付き合いの特権でレースが見れて、嬉しかったですよ。懐かしいね」
    「一歩離れたところから見るのもいいものなのよ」
    「私もそう思う。なんだか、現役のころよりも少し落ち着いた気持ちで感じられるんだ」
    うんうん、とお母さんが何度も頷く。
    「二人のウマ娘が勝てるように、私も応援している」
    「あら! ご親切にありがとう。ところで、お名前はなんていうのかしら」
    お母さんの質問に、私はいくばくか驚いてしまった。私はまだ自己紹介もしていなかったことをすっかり忘れていて、それでいて二人が私のことを知っているものだと思い込んでいたのだ。
    自分のうかつさが少し恥ずかしい。彼女のレースを見に来れたことに、浮かれ過ぎていたのかもしれない。
    「私の名前はオグ……わっ!」
    名前を言いそうになって、思わず大きな声を出した。『外出するときはまだ周りに気を付けてくださいね』と学園の広報の人たちから言われていたのをすっかり忘れていた。私が声を上げたから、驚いて二人とも目を丸くしている。
    「……あなた、大丈夫?」
    「食べ過ぎて、お腹壊しちゃいましたか」
    心配してくれる二人の言葉も頭の中を素通りする。何か、それらしい名前を思いつかなければ。
    何か、名前らしい響き。すぐには思いつけない。何かから借りてこよう。
    私の脳裏には、最近の朝トレーニングから帰ってきたときに、ベンチに座る彼女と一緒にいることの多い一匹の猫の姿が現れていた。
    「私の名前は、キンギョハツラツ、だ」

  • 170了船長23/02/20(月) 19:27:53

    「そうしたら、ハツラツちゃんかしら」
    私は胸がドキっとした。まるで自分のお母さんから呼ばれたように感じたからだ。気持ちを落ち着けるつもりでワザと強めに頷く。わざとらしすぎたのか、お父さんがぽかんとしている。
    「ハツラツさんは、どのくらいレースに出られていたんですか」
    「わ、私は――」
    答えようとするたび、広報の人たちの顔が浮かぶ。全部で32戦走ったとか、昨年の有マ記念で引退をしました、とは素直には言えなかったが、すらりと自然なウソを思いつくこともできなかった。つくづく私は、ウソが苦手だ。
    どうしたらいいだろうか――と追い詰められた矢先、ぽつっ、と鼻先に冷たい水滴が落ち、それを合図にしたかのようにして、場内にアナウンスが響き渡る。

    『お知らせします。次のレース、三勝クラスの本バ場入場が、間もなく始まります。繰り返します――』

    「ああ、もうすぐ次のレースが始まるようだ!」
    私はわざとらしく、先ほどよりも大きな声を出した。二人だけではなく、周囲の人たちの視線も感じる。
    「もうそんな時間でしたか。もうすぐだよ」
    「あっ、本当。話し相手になってくれてありがとう、ハツラツちゃん」
    まるめ込めたわけではないだろうが、二人の気を逸らすことには成功したようだった。ほっ、と胸をなでおろす。
    「こちらこそありがとう。私も、応援席に行ってくる」
    「また会いましょう、ハツラツさん」
    「またね、ハツラツちゃん」
    ほぼ同時に二人は別れの言葉を発し、バ場が良く見えるスタンドの前を目指して、人ごみの中に紛れていった。
    雨が少しずつ降り始め、お客さんが傘を差し始める。少しずつ強くなる雨の中後ろを振り返り、二人の傘が見えなくなるまで彼らを目で追っていた。

  • 171了船長23/02/20(月) 19:41:38

    関係者席に戻ると、モニーが大張りになったガラスに顔を近づけていた。
    「すごいっすねここ、コースから見上げたことはあるけど」
    「ま、ウチらが見に来たい言うたらこんな席だって用意してくれるっちゅーこっちゃな」
    タマが誇らしそうに胸を張り、モニーの側に立っている。
    「イナリちゃん、そんなに食べて大丈夫ですか?」
    「おう、クリークも食べるかい?」
    「本当ですか? そうしたら一ついただきますね」
    二人がおいなりさんを食べているところを見ると、私もお腹が減ってきて、私の気持ちに賛成するようにぐぅ、と音が鳴った。
    その音を聞いて、クリークがこちらを振り返る。
    「おかえりなさい、オグリちゃん」
    「うん、ただいま」
    「イチちゃんに会ってきたんですか?」
    「いや、素敵な夫婦と一緒にレースを見てきた」
    クリークが水筒から注いでくれた温かいお茶を受け取って、一口飲む。外にいるあの夫婦も、何か温かいものを飲んでいて欲しいと思った。
    袋に残った大判焼きを食べようとしたその時、レース開始を知らせるラッパの音が聞こえた。
    「おうオグリ、帰っとたんか。もう始まるで」
    「みんなほら、こっちこっち」
    タマとモニーの呼びかけで、私たちは席を立った。目を細めて、トラック上に設置された発バ機の1番のあたりを全員で見つめる。
    私たち5人は、誰も喋らなくなった。息をのんでゲートが開くのを待つ。
    「頑張れ、イチ」
    私の口からひとりでに漏れだした言葉が終わるのと同時に、レースは始まった。

  • 172了船長23/02/20(月) 19:49:30

    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

    『第4コーナーを回って直線、内1番、レスアンカーワン好位置につけています、4番ジュネルガーネット伸びない』

    「さぁ行っちまえ、イチぃ!」

    『1番レスアンカーワン早めの抜け出しを図る、さぁ先頭だ、その後ろコルスカンティ追走』

    「頑張って、イチちゃん!」

    『最奥からコンフュージョン追い上げてくる、スゴイ脚だ、届くか』

    「いや、これは届かん。イチちゃんの脚も残っとる。勝てるで」

    『レスアンカーワン、コンフュージョン、いやレスアンカーワンだ』

    「マジで過去一の走りじゃん、イチ!」

    『今ゴールイン! レスアンカーワン、見事優勝を飾りました! 2着コンフュージョン、3着にはコルスカンティ』

  • 173二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 20:07:22

    オグリは変装でもしてるのかしら

  • 174了船長23/02/20(月) 20:07:26

    私たちの目は、彼女にくぎ付けになっていた。全員が一丸となって、彼女の勝利を願っていた。
    彼女が先頭でゴール板を駆け抜けたあと、私たちは、まるで自分たちがレースに出走して1着を取ったかのように喜びあった。建物の4階にある関係者席からは彼女の姿が小さくしか見えなかったが、彼女を大きく映すモニターに目もくれず、私たちの視線はガラス越しに見える本物の彼女に注がれていた。
    「ひっさしぶりのウィナーズ・サークルで記念撮影や。気ん持ちええやろなあ」
    「イチのやつ、月にエラい回数走ってるからなぁ。たまには勝てないと面白味がねぇってもんよ」
    「最近ほとんど休みが合わないんだよね。ずっと出走してる感じ」
    イチとモニーのメイクデビューは、確かに遅かった。ちょうど私がGⅠレースを走るようになったくらいの時期からレースに参加しはじめ、モニーは比較的少ない回数で勝ち抜いたが、イチは少しばかり苦労していた。
    その遅れを取り戻すかのように、イチはデビューを飾ってから今日まで、猛烈な勢いでレースに登録している。トレーナーさんから無理やり休みを取らされてしまうくらいに。
    「イチちゃん、良かった」
    「うん。おめでとう、イチ」
    少しばかりふらつきながらも、スタッフの人に支えられてイチが歩き出す。ウィナーズ・サークルには、イチのトレーナーだろうか、スーツを着込んだ男性が迎え、その横には傘が二つ並んでいた。
    「よく見えねーけど、トレーナーも嬉しそー」
    「せやな。やっと勝てたから安心したやろな」
    「隣の傘は誰でぇ、あれ」
    イナリが顎に手を当てている。私はその模様から目が離せなかった。どこかで見覚えがあるような。あれは――
    「あっ!」
    私の大きな声で、全員が不思議な顔でこちらを振り返る。イナリはびっくりしすぎて少し飛び上がっていた。
    「いきなり大きな声出すんでねぇ!」
    「どしたんや、オグリ」
    「オグリちゃん?」
    「あの傘、あの夫婦は、まさか――」
    私は知らぬうちに聞いたイチの話と、とっさに考えたウソの名前を思い出して、どうしようもなく恥ずかしい気持ちになってしまった。

  • 175二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 22:11:45

    美味しそうで、あったかくて、胸いっぱいなんだ・・・!

  • 176二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 22:24:54

    ええええっそういう事だったの⁉
    びっくりしたイチちゃんの…ってことでいいの?そういうオチとはぶったまげた!

  • 177エスコンの人23/02/21(火) 01:29:29

    あああああ、もうほんとしんどい!!
    なんでこんな文章書けるの!!?
    食事描写とかイメージが鮮明にぶん殴りに来るし!

    あと、まとめやってるお陰でところどころに「あー!! あの時のか!!」ってなる描写もあってほんと尊い!!
    御両親とオグリのすれ違い描写とかもホント丁寧で……

    🤯

  • 178二次元好きの匿名さん23/02/21(火) 08:04:52

    投稿乙なんだ!

  • 179了船長23/02/21(火) 09:44:39

    >>161

    もし福島を訪れることがあれば、是非食べてみてください。アイス天ぷらとかも美味しいですよ!


    >>173

    オグリキャップさんは変装しています。していますが、「今日は変装してきた」のような説明のための文章は書かないように気を付けました。オグリキャップさんは学園の広報課のようなところから注意されたらきちんと聞きそうな印象がありますので……


    >>175

    イチちゃんはオグリを筆頭に皆を支えていて、彼女もまた、皆に支えられているいい子ですよね 

    「偽悪も露悪も、その嘘の善悪を決めるのは邪心でも高潔なる意思でもなく、その行いの結果である」 という言葉がとてもよく当てはまる ところでこれの出典がマザー・テレサかどうかご存じでないですか?(メモに書いたけど出典を書き損ねる痛恨のミス)


    >>176

    相変わらず結末が出来上がってなくて慌てて仕上げた最後の一文でミスっている(イチちゃんの両親と確定したわけじゃないのに「イチの昔話」と書いてしまった)のですが、そういうオチです!


    >>177

    実際に食べたものなので、思い起こしやすかったです。

    セルフオマージュ好きなので……お目汚し失礼しました 新しいものを作っていかねばですね!

  • 180二次元好きの匿名さん23/02/21(火) 17:41:40

    保守なんだ

  • 181二次元好きの匿名さん23/02/21(火) 21:00:48

    >>179

    気になって調べてみたけど、マザー・テレサかどうかわからなかったんだ

    でもマザー・テレサの言葉だと言われている

    『思考に気をつけなさい、それはいつか言葉になるから。

    言葉に気をつけなさい、それはいつか行動になるから。

    行動に気をつけなさい、それはいつか習慣になるから。

    習慣に気をつけなさい、それはいつか性格になるから。

    性格に気をつけなさい、それはいつか運命になるから』

    と根っこは同じ気がするんだ

    善悪はきっといつか運命(=行いの結果)に表れてしまう、というところが似ていると思うんだ

  • 182了船長23/02/21(火) 21:58:32

    超久しぶりのあとがきなんだ

    ・コンセプトは「イチちゃんが直接出てこないイチちゃんの話」と「イチちゃんの両親ってどんな人かな」の二つでした
    ・久しぶりに元の競馬ネタや競馬場などの、出典があるような、1年前スタイルのSSを書けて楽しかったです
    ・もともとは、物語全体を通して一回も「イチ」や「レスアンカーワン」と表記させず、すべて三人称で書くことで正体を隠したままにするつもりでした
     →書いてみると思ったよりインパクトにかけたので、登場人物たちにとっての主目標であり最も大事な瞬間の、イチちゃんが発走するところでオグリさんに名前を呼んでもらいました。あの子とはやっぱりイチちゃんだったのです
    ・時系列的にはオグリキャップさんが引退して2か月くらいです。ちょうど今くらいかも? 冬なので着込んでます
    ・物語中に登場する二つのお店について。どちらも福島競馬場の、自分が食べたことあるお店からもらいました
     →最初のお店は「鳥ぎん」という本当にあるフードコートのお店です。名前に鳥って入ってるのに、鶏肉のメニューがやたらすくなかったことが印象に残っています。どこの競馬場でももつ煮はウマい
     →二つ目のお店は「花月寿」という、こちらもフードコートのお店です。「花鳥風月」から使われてない文字でもじりました。まんじゅう天マジで面白美味しいのでオススメ!
      →昔は大根おろし載せ放題だったそうですが、おばちゃん曰く最近杯数制限が付いたそうです(去年の3月くらいに聞きました)
    ・イチちゃんパパママの名前とか見た目は決めてません(一時期モデル競走馬を見つけようと思ったことがありましたが、やめました)
     →唯一決めてるルールは、二人はお互いを「あなた」と呼ぶことです。こういう関係のカップルに憧れる~

  • 183了船長23/02/21(火) 21:58:45

    ・イチちゃんの幼少期については、過去に「王」が投稿された神文章をリアルに100回くらい読み直して解釈を作り、妄想しました
    ・幾多の戦いを切り抜けてきたオグリさんは、誰かの走りを見ると直感的に「緊張しているな」とか、サラッと走りを分析します。オグリさんはこういう方向の強さがカッコイイ
    ・オグリさんの偽名は、オグリキャップ号が放牧されていた牧場で飼われていた猫の名前+オグリキャップ号の幼名 を組み合わせました
    ・関係者席のモデルは、JRAが運営している各競馬場にある「馬主席」です。とても綺麗でジュース・お茶など飲み放題、とても見晴らしの良い場所です
    ・本人たちの意図せぬところで親族への「ご挨拶」が済んでしまったオグリキャップさん、この後どうなってしまうんだろう。

    「私の家族に挨拶していく?」
    「もちろんだ!……いや、待ってくれ、イチ」
    「どうしたの?」
    「その、実は、以前会ったことがあって」
    「えっ!? いつの間に」
    「ああいや、会ったと言うべきか、なんというか」
    「……ハッキリしなさいよ」
    「会ったんだが、私じゃないんだ」
    「?????」

    みたいな~?

  • 184エスコンの人23/02/22(水) 00:39:55

    >>142

    「も、モニちゃん……」

    声を震わせながら彼女の名前を呼ぶ。

    静まり返ったカフェテリアの中で呼ばれた本人は曖昧な笑みを崩さない。

    視線が自分達に集まっていることを気にするような素振りも見せず、こちらに近づいてくるモニー。

    瞳を覗き込みながらモニーが聞いた。

    「私がどうかしましたか?」

    「いや、なんちゅうか、その……」

    しどろもどろになりながら何か言おうとするもののうまく言葉にできない。

    一瞬、モニーの視線が外れた。何かに気づいたような仕草をわずかに見せると再びタマモクロスの方へ視線を向ける。

    「──ところでタマ先輩」

    口元には悪戯っぽい笑み。

    「私にチョコはくれないんですか?」

    「んぐぅっ!?」

    いきなり急所をつかれた。

    うめき声を漏らしながらも助けを求める感情と恨みがましい感情が入り混じった表情で振り返る。

    しかし、期待した光景は──助けを求めようとした者はそこには居なかった。

    こんな地獄じみた状況を作った張本人はもちろんのこと、スーパークリークすら忽然と姿を消していた──ご丁寧に食べ終わった食器も綺麗さっぱりなくなっていた。

    ──クソ!! あんのアホンダラ、逃げおったなああ!!

    ぐつぐつと腸が煮えくり返る思いをしていたが、「タマ先輩?」というモニーの一言で冷水を浴びせられたように冷静にされ一気に現実に引き戻された。

  • 185エスコンの人23/02/22(水) 00:40:27

    「いやな? そのあげようとは思っとったんやけど、そのな?」
    「……くれないんですか?」
    思考を総動員して必死に取り繕うとするが情け容赦無く一刀のもとに言い訳の山が断たれてしまう。耳をたれさせて悲しそうに視線を落とすモニー。その姿、表情がタマモクロスの心や胃をキリキリと締め付けてやまない。
    「いやいやいや!? あるにはあるんやで!? ただその渡すには忍びないっちゅーか」
    「くれないんだ……」
    「ぐうっ!!」
    「楽しみにしてたんだけどな……」
    「んぐぐぐ……」
    立て続けに繰り出される悲しみの声。その一つひとつがもはや必殺級の一撃となってタマモクロスの身に突き刺さる。
    モニーの悲壮に満ちた視線を振り切るように机に向き直るタマモクロス。
    そして、やけくそ気味に覚悟を決めるとテーブルの上にあったチョコを手に取ってモニーへと突き出した。
    「えーい!! 持ってけドロボー!! その代わりクーリングオフは一切おことわりやからなぁ!!」
    「やった!!」
    曇りがかった空に日差しが差し込んだかのように一転して眩いほどに明るい表情を見せるモニー。手を胸に上げて力強くガッツポーズ。
    「いやー、よかった~。正直、本当にもらえないかと思ってましたよー」
    さっきまでのいっそ妖艶にまで感じてしまった悲しさはどこへやら、すっかり普段の飄々とした仕草を見せてくる。
    「ふん!! 調子のいいやっちゃな。準備しとるに決まっとるやろがい!!」
    「もう、そんなに拗ねないでくださいよ~」
    「拗ねとらへんわ、ボケェ!!」
    わざとらしく肘で突かれるのを手で振り払いやはりやけくそ気味に吠える。
    それをひらりと躱しながら手元のチョコレートへと目を落としながらモニーが言った。
    「いやー、でもやっぱ嬉しいですね。こうしてもらえると」
    ──タマモクロスの思いとはまったく別の言葉を。
    「──義理チョコでも」

  • 186エスコンの人23/02/22(水) 00:40:51

    虚をつかれ、一瞬静止するタマモクロス。
    聞き間違えだろうか。
    「……今、何てった?」
    「へ? いや、義理チョコでももらえると嬉しいって」
    キョトンとこちらを見るモニー。
    なにか変なことを言ったのか不思議そうにタマモクロスを見る。
    しかし、そうしていたのも束の間。すぐにいつもの調子でヘラヘラと軽口を叩く。
    「しかし、こういうイベントに合わせてちゃんと用意してるなんてタマ先輩も結構マメな方なんですねえ」
    眼の前で感慨深そうにチョコを眺めるモニー。
    それを見ながらなんとも言い難い感情がこみ上げてくる。
    抑えることを知らずそれは喉元を通り過ぎて自然口からこぼれていた。
    「──開けてみい」
    「え? 今ですか?」
    意外そうな声を上げるモニー。
    しかし、それを無視して声を荒げるタマモクロス。
    「ええから開けてみい!!」
    「わ、分かりました!」
    ただならぬ雰囲気を感じたのか、慌てた様子で包装をといていくモニー。
    「何なんです?」と疑問を口にしながらケースの蓋を開いてみれば──。
    「──へ?」
    ガタガタに固まったハート型のチョコレート。
    表面には竜頭蛇尾の逆を行く太さでよれによれた『I LOVE YOU!!』の文字がこれでもかと大きく書かれていた。

  • 187エスコンの人23/02/22(水) 00:41:05

    目に飛び込んできたものを見て、今度はモニーがぎこちなく首をきしませる。
    「いや、あの、これ?」
    放心状態でふらふらのモニーに向けて必殺のストレートを繰り出す。
    「──本命や! 文句あっか!!」
    やけくそ気味に素っ気なく吐き捨てると、ぷいっとそっぽを向くタマモクロス。
    顔をそむけたのは真っ赤に染まった己の顔を見せたくないからか。
    カフェテリア内で二人を見ていた全員が息を飲むのが聞こえてくる。
    かと思えばなにかが倒れるような鈍い音。
    音の方へ振り向いてみれば、モニーがチョコレートを抱えたまま床にうずくまっていた。
    「ちょ!? モニちゃん!?」
    慌てて駆け寄るタマモクロス。
    体を小刻みに震わせつつも激しく主張するのをやめないモニーの尻尾と耳。
    心なしかわずかに見える横顔が真っ赤に染まっているような気がした。
    「何してんねん!? はよ起きいや!!」
    「いや、無理ですって……」
    「何が無理やねん!? こんな公の場でなにさらしてんねん!!?」
    「あ~、もうほんとひきょうですよ~。ふいうちにもほどがあるって」
    「なんの話やねん!! んな、ふにゃふにゃになっとらんと早う起きんかい!!」
    「嫌ですー!! 絶対に嫌ですー!! 乙女の純情理解してくださいよ!!! この鈍感!!」
    「おどれに言われたくないわあああ!!」
    体を引っ張って必死に引っ張るものの頑なに床から離れようとしないモニー。
    瞬間、静寂に包まれていたカフェテリア内に黄色い歓声が上がった。
    「あ、こら! なにカメラ構えとんねん!! 見世物やないぞ!! こらそこ!? 変に囃し立てんのやめんかいボケェ!! ええい、散れ散れぇ!! 見せもんちゃうぞゴラァ!!」
    タマモクロスの叫びも虚しく周囲は目の前の二人を思い思いに祝福するのだった。

  • 188エスコンの人23/02/22(水) 00:41:23


    「──たく、世話の焼けるやつだぜい」
    「もー、あそこまでやる必要ありました?」
    「てやんでい、あったりまえだろい!!! ああいう怖気づいたやつはちょっと突いてやりゃ、後は勝手に勢いで転がってくもんでい」
    「こっちは生きた心地がしませんでしたよ、も~……」
    ため息を吐くクリークを見て、「にひひ」と笑いを零しつつ、いまだ注目の的になっている二人へ視線を向ける。

    ──ま、ほどほどに楽しくやんな。末永くお幸せにってな。

    眼前の喜劇を眺めながら美味しそうにお茶をすするイナリワンだった。

  • 189エスコンの人23/02/22(水) 00:42:18

    やっと終わったんだ……。

    脳みそカラッカラ……。

  • 190エスコンの人23/02/22(水) 00:53:55
  • 191二次元好きの匿名さん23/02/22(水) 01:09:46

    >>182

    うおおお久しぶりのあとがきなんだ!イチちゃんの事かなあとは思ってたけどパパママ出てくるとは思わなかったんだ。

    とても良かった…。パパ優しそうな感じなの好きですねえ。

    あとまんじゅう天

    https://www.naka-travel.com/wp-content/uploads/2019/12/%E5%88%87%E3%82%8A%E5%88%86%E3%81%91%E3%81%9F%E3%81%BE%E3%82%93%E3%81%98%E3%82%85%E3%81%86%E5%A4%A9.jpgwww.naka-travel.com
  • 192二次元好きの匿名さん23/02/22(水) 01:14:28

    >>189

    乙なんだ、よわよわタマちゃんと後方保護者面クリークイナリはもっと流行らせるべきと思いました(しみじみ)

    上手く言語化できないけどモニちゃんこのどこにでもいる子のようなリアクションや仕草がクセになりますねえ

  • 193二次元好きの匿名さん23/02/22(水) 01:17:52

    >>190

    乙です

  • 194二次元好きの匿名さん23/02/22(水) 01:29:02

    よし、お引越しだ

  • 195二次元好きの匿名さん23/02/22(水) 01:32:08

    >>194

    では適当になにかオグリ関連でも貼りましょうか。

    この前見かけて即保存したかっこいいの

  • 196二次元好きの匿名さん23/02/22(水) 01:33:21

    リンク先

  • 197二次元好きの匿名さん23/02/22(水) 01:33:34

    >>195

    そりゃウマ娘でもこうなりますわ

  • 198二次元好きの匿名さん23/02/22(水) 01:36:18

    >>189

    ああ…次はモニオグだ

  • 199了船長23/02/22(水) 01:38:00

    >>189

    よいssでした。自分の思うモニちゃんとだいぶキャラクターが違うので、読んでいてとても新鮮で面白く、嬉しいです

    次はモニイチですね

  • 200二次元好きの匿名さん23/02/22(水) 01:39:39

    200ならモニオグ!

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